(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】不安定光共振器レイアウト内の出力ビームの成形された強度プロフィールを提供するレーザーシステム及びその方法
(51)【国際特許分類】
H01S 3/08 20230101AFI20240110BHJP
H01S 3/107 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01S3/08
H01S3/107
(21)【出願番号】P 2020558617
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(86)【国際出願番号】 CZ2019050020
(87)【国際公開番号】W WO2019219101
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-04-19
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】518014874
【氏名又は名称】フィジカルニ ウースタヴ アーヴェー チェーエル ヴェーヴェーイー
【氏名又は名称原語表記】FYZIKALNI USTAV AV CR, V.V.I.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ケルナー,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ルシアネッティ,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】モチェック,トマシュ
(72)【発明者】
【氏名】ハイン,ヨアヒム
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-500432(JP,A)
【文献】米国特許第05022043(US,A)
【文献】特開2016-092420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不安定光共振器レイアウト内の出力ビーム(7)の成形された強度プロフィールを提供するレーザーシステムであって、
前記不安定光共振器に光ポンプビームを結合するためのダイクロイックミラーと、
ポンプされる領域(4)を備える活性媒質(3)であって、利得分布がそこに生成される活性媒質(3)と、を備え、
共振器内ビームは、利得変調され、前記レーザーシステムは、さらに、
反射性の凸面ミラーと、
アパーチャを導入することなく出力ビームを放出するように構成された可変偏光出力結合であって、前記出力結合は、前記不安定光共振器レイアウト内にある可変偏光出力結合と、を備える
ことを特徴とするレーザーシステム。
【請求項2】
空間成形された光ポンプビーム(6)を前記活性媒質(3)に届けるために端部からポンプされるレイアウトを更に備える請求項1記載のレーザーシステム。
【請求項3】
前記活性媒質(3)は低利得材料、好ましくは固体媒質、より好ましくはネオジウム、エルビウム、イッテルビウム、ツリウムから成るグループから選択された元素がドープされた材料でできていることを特徴とする、
請求項1又は2記載のレーザーシステム。
【請求項4】
該システムは共振器損失を変えるために少なくとも1つの能動素子及び/又は少なくとも1つの受動素子を更に備えることを特徴とする、
請求項1から3いずれか1項記載のレーザーシステム。
【請求項5】
該システムは、偏光子(8)及び偏光回転素子から成るグループから選択された出力結合手段を備えることを特徴とする、
請求項1から4いずれか1項記載のレーザーシステム。
【請求項6】
Qスイッチ又はキャビティダンプ動作モードで使用するか、又は再生増幅器として又はモード同期法で使用するための、
請求項1から5いずれか1項記載のレーザーシステム。
【請求項7】
活性媒質(3)を備える不安定光共振器レイアウト内のレーザービーム(7)のモード成形の方法であって、
空間成形された光ポンプビーム(6)を前記活性媒質(3)に届けるステップと、
前記空間的に成形された光ポンプビームをダイクロイックミラーによって前記不安定光共振器に入力結合するステップと、
励起領域を含む前記活性媒質において、前記空間的に成形された光ポンプビームと共振器内ビームを利得変調するステップであって、その中で利得分布を生成するステップと、
前記共振器内ビームを、アパーチャを導入することなく、前記不安定光共振器内で可変偏光出力結合により出力結合するステップと、を含む、方法。
【請求項8】
少なくとも1つの能動素子及び/又は少なくとも1つの受動素子を使用することで共振器損失を変えることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記レーザービーム(7)は、ビームスプリッター、偏光子(8)及び偏光回転素子から成るグループから選択された手段によって取り出されることを特徴とする請求項7又は8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不安定レーザー共振器を使用して画定され空間的に成形されたレーザービームを生成するためのレーザーシステム及び方法に関する。特に、本発明は出力ビームのシルクハット形の強度分布を生成可能なレーザーシステム及び方法に関する。より具体的には、本発明の使用法はQスイッチ動作及び/又はキャビティダンプ・モードに関し及び/又は再生増幅器及び/又はモード同期法のためのシステムとしての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーシステム内でのナノ秒パルスの生成は、どれかの光学素子への大き過ぎる影響の故にシステム内のどの光学素子へもレーザーによる損傷(LID)を避けるために出力エネルギーに応じてビームサイズを変えることを要求する。例えば、1μmに近い波長における10nsのパルス幅に対する代表的な最大影響回避値は3~10J/cm2の範囲内である。このため、1J以上の範囲内のエネルギーを達成することは、5mmを超えるビーム直径を必要とする。しかし、当業者にとってLIDの値は既知であることは言及されるべきである。
【0003】
最も簡単な形態のレーザーは、自発的な発光が発生する活性媒質と、光を活性媒質内へ反射して戻し誘導放出による増幅を引き起こす一組のミラーとから成る。
【0004】
レーザービームを生成するために、レーザー結晶により放出された光の2回の増幅パスの間の損失が活性媒質を通過する間に得られる利得より小さいように、活性媒質の周りにミラーを配置しなければならない。このようなレイアウトはレーザー共振器として知られている。レーザー共振器は安定か又は不安定であってよい。
【0005】
安定共振器は特定の空間的共振器内モードに対して毎往復後に同じ強度分布を生成するが、不安定共振器では、空間的強度分布は各往復で変わる。これは数回の往復後にキャビティからの生成されたビームの少なくとも一部分の放出を引き起こすであろう。
【0006】
安定レーザー共振器では、生成された出力ビームプロフィールはTEM00モードに対応するガウス強度分布を通常示す。このようなビームプロフィールは、例えば焦点能力の点で理想的に見えうる。それにも拘らず、そのようなビームは、非常に低い縁急峻さの故に、ビーム給送のためにまた対応する活性媒質の励起領域に比べて、比較的大きな口径の光学素子を必要とする。
【0007】
比較すると、比較的急峻な縁を持つ一定の強度レベル、いわゆるシルクハットプロフィールは、同じ最大強度レベル(光学素子LID閾値によって通常与えられる)を維持しながらそのような口径をかなり低減するのを許す。また、レーザーシステムの効率は取り出し強度と(又はパルスレーザー取り出し効率の点で)強く関連し、より高い強度はより高い取り出し効率に対応する(非特許文献1)。このため、TEM00ビームの場合のLID限定された最大効率はビームの中心でのみで達成されうる一方、シルクハットビームでは、全ビーム領域で達成されうる。従って、レーザー内のシルクハット状の強度分布の生成は非常に望ましい。
【0008】
最新の不安定共振器レイアウトはレーザー共振器が均一なキャビティ内強度分布を生成するのを可能にする。そのような共振器の基本レイアウトは2つのミラーから成り、往復毎の共振器内ビームの増幅を確立する。このため、得られるキャビティ内強度分布は活性媒質の口径を完全に満たす。このようなシステムの課題は、ビーム直径がシステム光学素子の口径に達するまで増大する事実から発生する。従って、ビームサイズを制限する方法がそのようなレイアウト内で実施されなければならない。吸収アパーチャはレーザーエネルギーを無駄にするので、不安定共振器内のビームサイズは共振器から共振器内ビームの外側部分(幾何学的手法)を放出すること(いわゆる出力結合)でたいてい制御される。
【0009】
多くの以前のレイアウトでは、空間依存出力結合は複数の共振器光学素子のうち1つのハードアパーチャであって、複数のキャビティミラー又は専用のスクラップミラーのうちの1つの口径からはみ出すようなアパーチャで達成された。これにより、共振器モードサイズは効果的に限定され、従って、効率的に活性媒質の口径における刈りこみを避ける。このようなシステムの詳細は非特許文献1に見つけることができる。このような方式の短所は、出力ビームはその一部が、例えばキャビティミラーのうちの1つによりマスクされていてキャビティモードに似ていないことである。従って、出力強度プロフィールの形状は、しばしば望ましくないトーラスなどの幾何学的形状を有する。また、マスクすることはビームプロフィールに非常に急峻な縁を作るので、重大な回折効果が伝搬する出力ビームを歪ませる。また、活性媒質の口径における刈りこみを避けるために、共振器内強度は、幾らかのマージンが含まれる必要がありその口径を完全に満たすことはできず、従って、取り出し効率を制限する。
【0010】
このようなマスキングを避けるために、部分反射ミラーをエンドミラーの1つとして含むことが提案された(特許文献1)。この手法はマスキングを除去するが、キャビティモードは内部アパーチャ径、例えばレーザー媒質の口径によってサイズが制限される必要がある。キャビティモードの拡大に応じて、このアパーチャは、取り出されずキャビティの内部増幅によってその直径をはみ出す任意の量のキャビティ内エネルギーを吸収する。キャビティ内に配置された偏光子及び波長板を使用して往復毎に幾らかの出力結合を生成する類似の手法が前に報告された。これらの構成はマスキングの問題を解決し、レーザー結晶口径を満たすことをある程度解決するが、キャビティ内に蓄えられたエネルギーの一部はシステムから取り出せず、アパーチャにより吸収されるので効率はまだ制限されている。また、アパーチャは急峻な縁を特徴とするので、回折効果がビームプロフィールを再び歪めうる。
【0011】
従って、多大な努力が急峻な縁を作ることなく、また出力エネルギーに貢献しないマスキング又は損失のない不安定キャビティ内のビームサイズを効率的に制限する方法を見つけるのに払われた。
【0012】
特許文献2では、半径方向に変化する反射率プロフィールを持つミラーであって、ガウス反射率ミラー(以後GRM)とも呼ばれるミラーが使用され、これらの問題のほとんどに対処する。GRMは超ガウスプロフィールを持つ画定された出力強度分布の生成を許す。このプロフィールは特に高次については真のシルクハットプロフィールに近い。この手法は多くの工業用高エネルギーレーザーに用途を見つけた。しかし、次に示すように、この手法は取り出し効率を制限し低利得媒質、例えばイッテルビウムをドープした利得媒質と組み合わせた使用を禁じる欠点をまだ有する。この媒質はレーザーダイオード・ポンピング及び高固有効率との非常に良い適合性のためにこの20年間大いに注目を引いた。
【0013】
GRMに基づいたシステムをレイアウトする仕方及び出力ビームプロフィールを計算する仕方の詳細な理論的導出は非特許文献2に見つけることができる。非特許文献2は以前の成果をまとめた包括的文献である。この文献によると、GRMの中心での最大反射率ρGRM(電場の振幅に応じた)が次の条件を満たす場合、中央に低強度領域のないシルクハット又は超ガウスビーム分布はそのようなレイアウトでのみ達成されうる。
【0014】
【0015】
ここで、Mはキャビティの幾何学的往復増幅率であり、PWは出力プロフィールの所望の超ガウス次数である。また、キャビティフィードバックγ(再び電場振幅に関して)は次式で与えられる。
【0016】
【0017】
これら2つの設計規則は、合致するレーザーレイアウトは低フィードバックを補うために高利得を示さなければならない、そうでないと出力ビームの超ガウス次数は強く制限されるか、或いはキャビティは低増幅率に制限され位置合わせ感度を増加させることを意味する。これは今までそのようなキャビティの使用をネオジムをドープした材料及び他の高利得媒質に限定してきた。
【0018】
この手法の別の短所は、完全キャビティモードは活性媒質にぴったり合わなければならないのでレーザーのポンプされる領域を完全には使用できず、ビームプロフィールの外側領域での取り出し効率を制限することである。また、出力結合がGRMにより実現され、往復毎にキャビティ内強度の空間的に適合した小部分を放出するので、このようなレーザーはより短いパルス長を可能にするキャビティダンプ・モードで動作できないし、再生増幅器として使用されることもできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】米国特許第4096447号明細書
【文献】欧州特許第0231050号明細書
【非特許文献】
【0020】
【文献】W. Koechner,“Solid State Laser Engineering”,Springer Science and Business Media,1999
【文献】M. Morin,“Graded reflectivity mirror unstable laser resonators” in Journal of Optical and Quantum Electronics 29(1997),pp.819-866
【発明の概要】
【0021】
本発明の目的は、アパーチャを導入することなく、それによる回折効果と追加の往復損失を緩和して不安定光共振器レイアウト内のレーザービームをモード成形するためのシステム及び方法を提示することで上記欠点を克服することである。本発明に係るレイアウトから生成される出力ビームプロフィールは均一な共振器内強度分布、従って、シルクハットビームプロフィールに類似するであろう。
【0022】
本発明の利点の別の面では、本発明はまた、低利得媒質、例えばイッテルビウムがドープされた材料の使用を許し、従って、本発明は、不安定レーザー共振器レイアウトと共に広範囲のレーザー材料の利用を可能にし、従って、より高いレーザー効率に加え新しい波長も得るのを可能にする。
【0023】
また、本発明は、一般に製造し位置合わせするのが複雑であると考えられうるGRMの必要なくシルクハット形ビームプロフィールを生成するのを許す。
【0024】
本発明の1つの態様によれば、活性媒質を備える不安定光共振器レイアウト内のレーザービームのモード成形のためのレーザーシステムが提供される。その活性媒質はポンプされる領域を備え、利得分布が光ポンプビームの空間強度プロフィールによって生成される。
【0025】
活性媒質内の光ポンプビームの強度プロフィールはいわゆる端部ポンプ構成内で実現され、これは、光ポンプビームは不安定光共振器内で共振器内ビームと平行に活性媒質を通って同じ方向に伝搬することを意味する。
【0026】
レーザーレイアウトの出力強度プロフィールの空間形状は任意の幾何学的形状、好ましくは円形、楕円形、矩形、正方形、又は六角形であってよい。この実施形態によれば、本発明は任意の幾何学的形状内でほぼシルクハット強度分布を提供する。
【0027】
本発明は、共振器内の拡張モードは活性媒質の画定された部分内だけで増幅される点で最新のシステムに優り、空間成形光ポンプビームは反転、従って、利得を生成する。
【0028】
光ポンプビームの源は任意の適切なレーザー源、好ましくはダイオードポンプエンジン、発光ダイオード、ランプ、又は別のレーザー源であってもよい。
【0029】
好適な実施形態では、光ポンプビームはシルクハット強度分布により特徴付けられる。その強度分布の縁の急峻さは、生成された出力ビーム強度プロフィールの所望の縁の急峻さに応じて変わってもよい。
【0030】
活性媒質内の空間画定された利得分布のために、ポンプビームにより生成された利得領域の外側の共振器内ビームの部分はそれ以上増幅されないであろう。共振器損失(例えば損失機構及び出力結合から生じる)及び往復毎の増幅のために、共振器内ビームのこの部分の強度は常に減少し、従って、ビーム径は制限されるであろう。アパーチャは必要ないので、追加の損失はキャビティ内で生じないし、急峻な縁の刈りこみも生じないであろう。また、共振器内ビームは光ポンプビームより大きいので、全ポンプ領域が取り出しのために使用され、従って、レーザーの高い取り出し効率を可能にする。
【0031】
好適な実施形態では、本システムは空間成形された光ポンプビームを活性媒質に届けるために端部からポンプされるレイアウトを更に備える。
【0032】
1つの実施形態では、活性媒質は低利得材料、好ましくは固体媒質、より好ましくは希土類元素がドープされた材料、例えばネオジウム、エルビウム、イッテルビウム、又はツリウムがドープされた利得媒質でできている。
【0033】
このような媒質は、ダイオードポンピング及び比較的大きい増幅帯域幅にとって理想的である長い蛍光寿命を示すことが周知であり、このためにこれらの媒質は波長可変レーザー源でまた超短パルスレーザーで使用するのに適している。GRMベース共振器構想内のこのような媒質の使用は、この構想では出力ビーム強度分布の縁の急峻さに依る最小利得が必要であるので今まで強く制限されていた。この欠点は本発明に係るシステム内で広く除去され、ほぼ共振器増幅による共振器内強度の低減だけが補われる一方、出力結合による損失は小さい可能性がある。
【0034】
別の好適な実施形態では、本システムは共振器損失を時間で変えるために能動素子及び/又は受動素子を更に備える。
【0035】
能動素子は電子制御変調器手段であり、ある実施形態では音響光学変調器、電気光学変調器(例えば、偏光光学素子と組み合わせたポッケルスセル)、機械変調器(例えば、シャッター、回転ミラー)により実現されうる。
【0036】
受動素子は共振器内強度に基づいて共振器損失を変調する。それらは、例えば可飽和吸収体(例えば、バルク吸収体又はミラー)、非線形効果(例えば、高強度において追加のレンズを生成するカー効果)により実現される。
【0037】
幾つかの実施形態では、本システムは、部分反射ミラー、又はビームスプリッター、又は偏光子及び偏光回転素子により実現されてもよい出力結合手段を備える。
【0038】
好適な実施形態では、キャビティ内レーザービームと光ポンプビームとの分離はダイクロイックミラーによって達成されうる。
【0039】
本発明の別の態様によれば、上記システムはQスイッチ又はキャビティダンプ・モードで、又は再生増幅器として又はモード同期法で動作し使用されうる。
【0040】
本発明の別の態様によれば、活性媒質を備える不安定光共振器レイアウト内のレーザービームのモード成形の方法が提供される。この方法は光ポンプビームを活性媒質内の領域に届けるステップを含み、利得分布が光ポンプビームの空間強度プロフィールによって生成される。
【0041】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの能動素子及び/又は少なくとも1つの受動素子を使用することで共振器損失を変える。このような方法は、これらの手法のいずれかを利用してレーザーから短いパルスを生成するか又はそのような共振器を再生増幅器として使用するのを許す。
【0042】
幾つかの実施形態では、レーザービームは部分反射ミラー、ビームスプリッター、偏光子及び偏光回転素子から成るグループから選択された手段によって取り出される。
【0043】
幾つかの実施形態では、光ポンプビームはダイクロイックミラーによって共振器レイアウト内へ結合される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明に従って実施された基本の共振器レイアウトを示す。
【
図2】好適な実施形態に開示されたシステムにより達成された正規化された利得分布を示す。
【
図3】異なる出力結合器反射率に対する出力ビームプロフィールを示す。
【
図4】可変出力結合を有する共振器レイアウトを示す。
【
図5】Qスイッチ又はキャビティダンプ動作のための共振器レイアウトを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
実施形態の下記の詳細な説明は請求項に係るシステムの簡潔な概要として提供される。それは本発明をどんな点でも限定せず、詳細な完全に実施可能にする開示がこの項に記載されている。同様に本発明は、そうでないと本書で記述しない限り、どんな数値パラメータ、処理装置、動作条件、及び他の変数にも限定されない。
【0046】
好適な実施形態によれば、本レーザーシステムは不安定共振器レイアウトに基づいている。不安定共振器レイアウトは
図1に示すような正ブランチ・キャビティレイアウトでありうる。
【0047】
このレイアウトは2つの球面ミラー、特にレーザーに対して反射性でポンプ放射に対して反射防止性の凹面ミラー1及び凸面出力結合ミラー2と、活性媒質3とを含む。活性媒質3内の利得分布は、好ましくは成形された光ポンプビーム6により生成される。光ポンプビーム6は好ましくは別のレーザーシステム又はダイオードレーザー源により提供されてよく、そのレイアウトはビーム成形手段を含む。
【0048】
下記では、光ポンプビーム6の形状は正方形のシルクハット形状で近似されうる。
【0049】
活性媒質3は、活性媒質3中にポンプされる領域4を備え、その領域内へ光ポンプビーム6が向けられる。領域4から共振器内ビーム5が生成され、そのプロフィールは光ポンプビーム6により生成される強度分布に類似する。
【0050】
上記で開示し
図1に示した実施形態では、光ポンプビーム6のレーザー共振器内への入力結合は凹面ダイクロイックミラー1により実現される。
【0051】
同じ実施形態では、出力結合は部分反射凸面出力結合ミラー2により提供されうる。共振器内ビーム5の透過部分はレーザー出力ビーム7を表す。
【0052】
このレイアウトによれば、半径R1の凹面ミラー1と半径R2の部分反射凸面出力結合ミラー2との距離Lは次式で与えられる。
【0053】
【0054】
往復増幅率は次式を使って計算される。
【0055】
【0056】
レーザーキャビティ内の2次元モード場は次式により近似的に計算される。
【0057】
【0058】
ここで、V(x,y)は、光軸と直交するxとy座標に応じたキャビティモードの電場強度である。従来技術では、ρ(x,y)は1より小さい値と常に考えられ、空間依存キャビティ損失(場強度の)、例えばGRMの反射率プロフィールを表す。成形方法は共振器損失の空間変調(以後、損失変調と呼ぶ)を必要とする。本発明に係る実施形態では、利得変調(以後、ウィン変調と呼ぶ)によりρ(x,y)は1より大きい値を持つ。
【0059】
図1はパラメータR1=5000mm、R2=-4000mm、M=1.25が適用された好適な実施形態を示す。
【0060】
図2は正規化された利得分布を表し、その利得分布は次数8、幅4mmの矩形超ガウス分布である。上記の正規化された利得分布は上述し
図1に示したシステムに応じたモデルシステムについて計算された。
【0061】
図3は、部分反射凸面出力結合ミラー2の異なる振幅反射率に対する正規化された出力成形レーザービーム7モードプロフィールを示す。部分反射凸面出力結合ミラー2の対応する反射率R(強度に関する)と、増幅と出力結合により生成される共振器損失を補うのに必要な最小往復利得gとが個々のグラフの上方に示されている。
【0062】
明確に示されうるように、低利得材料を支援する高フィードバックの達成を許す非常に低い出力結合の場合でも、共振器モードのウィン変調の故に成形されたレーザービーム7の中央に穴が生成されない。低出力結合の唯一の見える効果は、成形されたレーザービーム7プロフィールの周縁が不鮮明になることである。これは、光学素子がそれに応じたサイズであれば、レーザー構成において通常許容できる。また、取り出しモードの強度平坦域は常にポンプされる領域4に比べて大きいか等しいので、取り出し効率は全ポンプ領域4に亘って常に均一に分布し、従って幾何学的に制限されない。
【0063】
また、光ポンプビームプロフィール6及び生成された出力ビームプロフィール7は両方とも正方形である。実際、出力レーザービーム7強度プロフィールは、光ポンプビーム強度プロフィール6に応じた利得分布に類似した共振器内ビームプロフィール5に類似しているであろう。
【0064】
別の実施形態では、
図4及び5に示した上述したようなシステムでは、凸面出力結合ミラー2は 高反射性の凸面ミラー10により置き換えられた。出力結合は可変偏光出力結合(好ましくは本書に記述したグループから選択される)、好ましくはここに記述した偏光子8及び1/4波長板9を使って実現され、
図4に示すような特定のシステムを最適化するようにその出力結合を調整するのを許す。
【0065】
図5に示すポッケルスセル11を共振器内に追加で導入することで、このレイアウトをQスイッチング動作にも使用できる。GRMベースシステムと異なり、出力ビーム7は偏光子8から放出されるであろう。ポッケルスセル11の場合、これは、Qスイッチ動作モードでは、ポッケルスセル11は1/4波長電圧未満で動作できるので有利である。再び、ポッケルスセル11電圧を調整することで、切り替えられた状態での1往復当たりの出力結合を調整することができ、出力パルス形状及びエネルギーを最適化することができる。
【0066】
また、
図4に示すのと同じ方式はまた、ポッケルスセル11が1/4波長動作に切り替えられた場合、キャビティダンプ動作を可能にする。この場合(
図3の出力結合実施形態)、ビームプロフィールは長い縁を有するが、ほとんどの場合まだ許容できる。この動作モードでは、パルス幅は共振器の往復時間の範囲内であり、Qスイッチモードにおけるより短い。この動作モードでの縁の実際の急峻さは、レーザーシステムの利用可能な利得及び共振器内で特に増幅領域4外での損失(例えば再吸収)と関連するであろう。
【0067】
キャビティダンピングがこの共振器方式において動作可能であるので、キャビティダンプ動作モード時に出力を反対方向に伝搬させる共振器にシードパルスを注入することで、直接シーディング及び再生増幅器としての使用も可能である。原理的に、サブ往復損失変調又はモード同期手法との組み合わせも可能である。
【0068】
本発明は光学分野、特にレーザーの形状調整のためのレーザー技術分野に工業的に適用されてよい。
【0069】
特に、本発明は、広範囲のパルス/CW動作に関するパラメータ、パルスパラメータ、及び波長を有する高出力及び/又は高エネルギー級レーザーシステムを実現するために使用されてよい。このようなレーザーは、例えば他のレーザーシステム用のポンプレーザー、レーザー焼結、レーザー衝撃ピーニング、画像診断、手術などの広範囲の科学、医学、及び工業用途に適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 凹面ミラー(レーザーに対して反射性でポンプ放射に対して反射防止性の)
2 部分反射凸面出力結合ミラー
3 活性媒質
4 ポンプされる領域(活性媒質内の)
5 共振器内ビーム
6 光ポンプビーム
7 成形されたレーザービーム
8 偏光子
9 1/4波長板
10 凸面ミラー
11 ポッケルスセル