(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】分析結果の調和のための方法
(51)【国際特許分類】
G16B 40/00 20190101AFI20240110BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240110BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240110BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240110BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20240110BHJP
【FI】
G16B40/00
G01N33/53 M
G01N33/574 A
C12M1/34 B
G16Y40/20
(21)【出願番号】P 2020562071
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 US2019014529
(87)【国際公開番号】W WO2019144112
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-19
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520274035
【氏名又は名称】ファディア アクチボラゲット
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】マットソン ペール
(72)【発明者】
【氏名】アンデション カール
(72)【発明者】
【氏名】ベルナルド ジョセフ
【審査官】岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】Danni Li, et al.,Validation of a multiplex immunoassay for serum angiogenic factors as biomarkers for aggressive prostate cancer,Clinica Chimica Acta [online],2021年10月09日,Vol.413, Issues 19-20,Pages 1-15,[検索日:2023年1月5日], <URL:https://doi.org/10.1016/j.cca.2012.06.017>
【文献】[セロテック]キャリブ-ECガイド トレーサビリティ体系と不確かさを表記した酵素キャリブレータ,[online],2017年11月,第1-17ページ,[検索日:2023年1月5日], <URL:http:serotec-labo.com/img/guide/cal-EC_guide.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16B 5/00 - 99/00
G01N 33/53
G01N 33/574
C12M 1/34
G16Y 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバイオマーカーの存在および/または濃度を同じサンプルで同時に決定し、異なる分析室で得られたテスト結果と比較可能にする、多重生化学アッセイにおける生物学的サンプルからのテスト結果の調和の方法であって、前記方法は工程a)~c)、
-a)生物学的サンプル内の少なくとも2つの異なるバイオマーカー(25、26)および調和標準サンプル内の少なくとも2つの異なるバイオマーカー(27、28)の存在および/または濃度を、定義された分析機器(22)に実装された定義された多重生化学アッセイ装置(20)によって、各サンプルで独立して定量化する工程(11)、
-b)前記サンプルからのテスト結果(テスト結果
サンプル、テスト結果
調和)をコンピュータベースの決定エンジン(44)が受け取る工程(13)、および
-c)前記生物学的サンプルから受け取った前記テスト結果(テスト結果
サンプル)を変換する工程(15)であって、前記変換する工程(15)は、前記調和標準サンプルからの前記テスト結果(テスト結果
調和)を一般化単位GEに変換すること、および前記生物学的サンプルからのテスト結果(テスト結果
サンプル)を一般化単位GEに調整すること(16)を含むことを特徴とする、変換する工程(15)、
を含み、
前記工程a)~c)が特定の時間枠内で少なくとも2回繰り返され、および
前記工程a)~c)が異なる生物学的サンプルで繰り返され、異なる時点で定量化された少なくとも2つの調和標準(HSS)からのテスト結果(テスト結果
調和)を、一般化単位(GE)へ変換する前記工程(15)における入力として使用する、方法。
【請求項2】
複数のバイオマーカーの存在および/または濃度を同じサンプルで同時に決定し、異なる分析室で得られたテスト結果と比較可能にする、多重生化学アッセイにおける生物学的サンプルからのテスト結果の調和の方法であって、前記方法は工程a)~c)、
-a)生物学的サンプル内の少なくとも2つの異なるバイオマーカー(25、26)および調和標準サンプル内の少なくとも2つの異なるバイオマーカー(27、28)の存在および/または濃度を、定義された分析機器(22)に実装された定義された多重生化学アッセイ装置(20)によって、各サンプルで独立して定量化する工程(11)、
-b)前記サンプルからのテスト結果(テスト結果
サンプル、テスト結果
調和)をコンピュータベースの決定エンジン(44)が受け取る工程(13)、および
-c)前記生物学的サンプルから受け取った前記テスト結果(テスト結果
サンプル)を変換する工程(15)であって、前記変換する工程(15)は、前記調和標準サンプルからの前記テスト結果(テスト結果
調和)を一般化単位GEに変換すること、および前記生物学的サンプルからのテスト結果(テスト結果
サンプル)を一般化単位GEに調整すること(16)を含むことを特徴とする、変換する工程(15)、
を含み、
前記工程a)~c)が特定の時間枠内で少なくとも2回繰り返され、および
前記工程a)~c)が、異なる生物学的サンプル(BS)および異なる調和標準(HSS)を用いて繰り返され、異なる時点で定量化された少なくとも2つの調和標準(HSS)からのテスト結果(テスト結果
調和)を、一般化単位(GE)へ変換する前記工程(15)における入力として使用する方法。
【請求項3】
複数のバイオマーカーの存在および/または濃度を同じサンプルで同時に決定し、異なる分析室で得られたテスト結果と比較可能にする、多重生化学アッセイにおける生物学的サンプルからのテスト結果の調和の方法であって、前記方法は工程a)~c)、
-a)生物学的サンプル内の少なくとも2つの異なるバイオマーカー(25、26)および調和標準サンプル内の少なくとも2つの異なるバイオマーカー(27、28)の存在および/または濃度を、定義された分析機器(22)に実装された定義された多重生化学アッセイ装置(20)によって、各サンプルで独立して定量化する工程(11)、
-b)前記サンプルからのテスト結果(テスト結果
サンプル、テスト結果
調和)をコンピュータベースの決定エンジン(44)が受け取る工程(13)、および
-c)前記生物学的サンプルから受け取った前記テスト結果(テスト結果
サンプル)を変換する工程(15)であって、前記変換する工程(15)は、前記調和標準サンプルからの前記テスト結果(テスト結果
調和)を一般化単位GEに変換すること、および前記生物学的サンプルからのテスト結果(テスト結果
サンプル)を一般化単位GEに調整すること(16)を含むことを特徴とする、変換する工程(15)、
を含み、
前記工程a)~c)が特定の時間枠内で少なくとも2回繰り返され、および
前記工程a)~c)が、異なる生物学的サンプル(BS)または異なる調和標準(HSS)を用いて繰り返され、異なる時点で定量化された少なくとも2つの調和標準(HSS)からのテスト結果(テスト結果
調和)を、一般化単位(GE)へ変換する前記工程(15)における入力として使用する、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の方法において使用するための、多重生化学アッセイにおける生物学的サンプルからのテスト結果の調和のためのシステム(30)であって、前記システム(30)は、
-各サンプル(BS、HSS)で独立して、生物学的サンプル(BS)中の少なくとも2つの異なるバイオマーカー(25、26)および調和標準サンプル(HSS)中の少なくとも2つの異なるバイオマーカー(27、28)の存在または濃度を定量化するために両方(22、34)が適合されている、定義されたタイプの分析機器(34)に実装された定義された多重生化学アッセイ装置(22)を備え、
コンピュータベースの決定エンジン(44)は、
-前記サンプル(BS、HSS)からのテスト結果(テスト結果
サンプル、テスト結果
調和)をコンピュータベースの決定エンジン(44)が受け取る(13)ためのコンポーネント(46)、および
-前記生物学的サンプル(BS)から受け取った前記テスト結果(テスト結果
サンプル)を変換(15)するためのコンポーネント(48)であって、前記生物学的サンプル(BS)からのテスト結果を変換(15)するためのコンポーネント(48)が、前記調和標準サンプル(HSS)からのテスト結果(テスト結果
調和)を一般化単位GEに変換するよう構成され、前記生物学的サンプルのテスト結果を一般化単位GEに調整するよう構成されることを特徴とする、コンポーネント、を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、異なる研究室で得られたテスト結果を比較可能にする、多重生化学アッセイのための方法、アッセイ装置およびキットに関する。特に、本発明は、協調してテスト結果の調和とテスト設備の診断の両方を可能にする異なる対照サンプルの繰り返し使用に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学的測定は、一般に、疾患の診断、監視、および治療のガイドに使用される。ほとんどの生化学アッセイは、単一の出力を提供し、つまり、1つの規定されたバイオマーカーの存在または濃度を測定するが、多重アッセイの使用は増加している。多重アッセイでは、複数のバイオマーカーの存在または濃度は、同じサンプルの1つ以上のアリコートで本質的に同時に(例えば、同じ日または同じ週に)に決定される。各バイオマーカーは、同じ装置を使用して分析することも、バイオマーカーのセット全体を分析するために複数の装置が必要になることもある。次に、得られたデータが合わされて出力(例えば、単一のリスク推定値またはサンプルの特性を示すある種のパターン)が形成される。多重アッセイは効率を高めるが、較正手順を複雑にする。
【0003】
特定のタイプの生化学アッセイであるイムノアッセイは、タンパク質または他の抗原の存在または濃度の特異的な検出のために抗体を使用する。イムノアッセイは、競合または非競合の、固相または液相であり、分離工程を必要としてもよいし、必要としなくてもよい。検出目的のために、イムノアッセイは、標識された抗原または標識された抗体、および検出可能な反応が起こる1つ以上の部位を使用することができる。
【0004】
当業者は、生化学的アッセイからの出力が任意の性質のものである場合があることをよく知っている。バイオマーカーの濃度を出力として使用することが可能である。しかし、第IX因子タンパク質薬剤(Baxter製)について行われているのと同様に、生化学物質の量を効率単位で定義することもできる。このタンパク質が欠乏している人は、血友病B、凝固障害を有している。第IX因子は任意の酵素効率単位で定量化されるため、第IX因子の実際の濃度に関係なく、定義された量の薬物が定義された酵素活性を生成する。生化学アッセイには、出力形式と標準の複数の方法がある。一般に、出力は様々に変動する単位を有し、応答に対する直線性が変動する。この変動性は、生化学的出力結果の評価を複雑にする。複数のアッセイ結果を組み合わせる場合、状況はさらに複雑になり、異なる研究室が異なるタイプの分析機器を使用して同じアッセイを実施ししている場合には、研究室間、機器間、および機器のタイプ間での固有の変動が、全体的な変動に追加される。
【0005】
医学界は調和が必要であることを認識し、所定の研究室での所定の生化学アッセイの結果の質を制御および標準化するための手順が実施されている。多くの臨床/分析研究室では、3つのレベルでアッセイ検証を実施している。第1のレベルによると、未知のサンプルの結果を補間するための既知のデータを生成するために、通常、各アッセイには1つ以上の較正サンプルが埋め込まれている。較正曲線が所定の基準を満たさない場合、アッセイ結果は信頼できないと見なされる。第2のレベルによると、既知の特性を有する局所的に生成された陽性対照サンプルがあり、較正サンプルから独立している。較正曲線が陽性対照サンプルの既知の特性を再現できない場合、アッセイ結果は信頼できないと見なされる。第3のレベルは、「習熟度テスト」と呼ばれることが多く、外部の信頼できる当事者を使って対照を提供する。検量線が外部対照サンプルの既知の特性を再現できない場合、アッセイ結果は信頼できないと見なされる。
【0006】
第3レベルの対照の1つの例は、世界中の病理学および臨床検査医学の実践における卓越性を促進し擁護することを使命とする組織である、The College of American Pathologists(CAP)である(www.cap.org)。CAPには、臨床検査室が適切な方法で臨床検査室アッセイを実際に実施していることを保証するために、臨床検査室の外部対照へのアクセスを提供する認定プログラムがある。例えば、CAPは、総血清IgE測定を実施するすべての検査室が、いくつかの覆面外部検査室間技能試験調査の1つで満足のいく性能を実証することを要求する。このような技能試験調査は、年に数回実施される。極端なケースでは、連続した多数の調査に失敗した米国の外れ値の臨床検査室は、ライセンス取り消しの対象となる場合がある。
【0007】
Arch Pathol Lab Med.2010;134:975-982で公開されたRobert G Hamiltonによるレポート「Proficiency Survey-Based Evaluation of Clinical Total and Allergen-Specific IgE Assay Performance」に1つの例が記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。この刊行物に記載されているプログラムは、複数のサプライヤーからの設備を使用する約200の認定された臨床検査室での総IgE測定とアレルゲン特異的IgE測定の両方に関連している。同じサンプルのセットが、参加しているすべての研究室に提供され、開示で説明されているように集中的に分析された。総IgEの場合、ほとんどのアッセイは優れた性能を示しましたが、1つの技術が高レベルのIgEで体系的に低い濃度の結果を提供した(「Proficiency Survey-Based Evaluation of Clinical Total and Allergen-Specific IgE Assay Performance」の
図1)。アレルゲン特異的IgEの場合、研究室と技術との間の濃度結果の差ははるかに大きかった。ネコアレルゲンの場合、1つの技術はサンプル試料中のIgEの平均濃度が14kU/Lを超えたと報告したが、他の2つの技術は同じサンプル試料中のIgEの平均濃度が約4kU/Lであると報告していた(「Proficiency Survey-Based Evaluation of Clinical Total and Allergen-Specific IgE Assay」の
図2)。これは、認定された臨床検査室が、まったく同じサンプルについて、3倍より大きな異なるアレルゲン特異的IgEの濃度値を報告し得ることを意味する。技術間の一般的な相違は、同じ開示によると、まったく同じサンプルの最高および最低の報告された濃度値間の50%の違い(各テクノロジーの複数の臨床的に認証されたユーザーに対して平均)である。報告されている最高と最低の濃度値の間のこのような違いは、WHO/BS/2013.2220として同定される、Susan J Thorpeおよび共著者による「3rd International Standard for serum IgE Report of the international collaborative study to evaluate the candidate preparation」という開示において明らかであるように、世界保健機関(WHO)から入手可能な国際標準に照らして許容できると見なされていることに注意することが重要である。国際標準は、通常、さまざまな研究室からの結果を標準化する目的で提供される。
【0008】
IgEアッセイの研究室間で許容される変動性の潜在的な結果は、J Allergy Clin Immunol Pract.2015 Nov-Dec;3(6):833-40.doi:10.1016/j.jaip.2015.08.016に掲載された、HamiltonおよびOppenheimerによる「Serological IgE Analyses in the Diagnostic Algorithm for Allergic Disease.」などの広範な教育資料の利用可能性である。この種の教育資料は、研究室間のアッセイ結果の機能的な調和の代わりに、サイトごとに異なる可能性があるデータの解釈のためのユーザーを準備する。
【0009】
技能試験が採用されている分野の別の例は、Lab medicine(August 2008,Volume 39,Number 8;DOI:10.1309/6UL9RHJH1JFFU4PY)において発表されているWarnickと共著者による「Standardization of Measurements for Cholesterol,Triglycerides,and Major Lipoproteins」に開示されている。この出版物は、コレステロールおよび類似の分子の標準化および技能試験について議論している。この開示は、参加している研究室が実施されたテストの97%で許容基準の範囲内であるという非常に良い結果を、総コレステロールの習熟度テストが報告したことを示す。しかし、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールや高密度リポタンパク質(HDL)などのコレステロールの個々のクラスの決定はより変動性があり、テストの84~90%のみが許容基準内であった。これは、10例の患者サンプルのうち少なくとも1例が、コレステロール測定のための認められた性能許容基準外のアッセイにおいて分析されるリスクがあることを意味する。
【0010】
前立腺がんの診断および/またはリスク評価についても同様の観察が行われている。参照により本明細書に組み込まれる、Clin.Chem.2011 Jul;57(7):995-1004に掲載されたC Stephanおよび共著者によるレポート「Between-method differences in prostate-specific antigen assays affect prostate cancer risk prediction by nomograms」、doi:10.1373/clinchem.2010.151472において、ノモグラムを使用した前立腺癌リスク評価は、異なるプラットフォームから得られたPSA値を使用して評価された。この観察は、同じ多重アッセイにおいてバイオマーカー値を生成するために異なる機器プラットフォームが使用される場合に特に関連がある。
【0011】
本発明は、データを得るために使用されるアッセイ装置の数に関係なく、多重アッセイに適用可能である。すべてのデータが単一のアッセイ装置によって生成される多重アッセイの例は、参照により本明細書に組み込まれる、Arthritis Res Ther.2012 Oct 1;14(5):R201において公開されるような、Hanssonと共同執筆者によるレポート「Validation of a multiplex chip-based assay for the detection of autoantibodies against citrullinated peptides.」に開示されている。異なるアッセイ装置によってデータが生成される多重アッセイの例は、参照により本明細書に組み込まれる特許出願WO2014/079865に開示されている。
【0012】
上記の単一検体アッセイ(すなわち、血清中のPSA濃度などの1つの成分の濃度を定量化するアッセイ)の特性は複雑であるが、管理が容易である。複数の分析物を多重テストに組み合わせる場合、多重パネルに存在する各分析物について同様の問題が発生し、多重アッセイの作成と多重アッセイからのデータの解釈の両方にかなりの課題をもたらす。本発明は、多重アッセイの性能を改善するために、そのような問題を解決することを目的とする。
【発明の概要】
【0013】
一態様によれば、様々な実施形態による本発明は、調和標準とも呼ばれる外部対照サンプルの繰り返し使用により、およびアッセイ解釈に調和標準を埋め込むことにより、多重アッセイの第3レベルの制御を改善する。
【0014】
本発明の実施形態によれば、複数のバイオマーカーのセットの各々の存在および/または濃度が同じサンプル中で本質的に同時に決定される、多重生化学アッセイにおける生物学的サンプルからのテスト結果の調和方法が提供される。この方法は、定義されたタイプの分析機器に実装された定義された多重化生化学アッセイ装置によって、生体サンプルおよび調和標準サンプルにおける少なくとも2つの異なるバイオマーカーの存在および/または濃度を、各サンプルで独立して定量化することを含み、サンプルからのテスト結果をコンピューターベースの決定エンジンに受け取り、生物学的サンプルからのテスト結果を調和させる。コンピューターベースの決定エンジンを使用して、生体サンプルからのテスト結果を変換します。生物学的サンプルからのテスト結果を変換することは、少なくとも調和標準サンプルからのテスト結果を一般化単位(GE)に変換することを含む。最後に、調和標準サンプルの変換結果を使用して、生物学的サンプルの結果を一般化単位(GE)に調整する。
【0015】
一般化単位(GE)の使用は、体系的なエラーを撲滅し、研究室と技術プラットフォーム間の結果の比較可能性が向上し、結果の一元的な解釈を可能にする。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、定義されたタイプの分析機器に実装されるように適合され、各サンプルで独立して、分析機器によって定量化できる、生物学的サンプルおよび調和標準サンプル中の少なくとも2つの異なるバイオマーカーの存在または濃度を含有する、定義された多重生化学アッセイ装置が提供される。
【0017】
一実施形態によれば、生化学的アッセイ装置は、10以上の独立しかつ同時のアッセイを含み、調和標準は、アッセイの一部である少なくとも90%のバイオマーカーを含む。代替の実施形態によれば、多重アッセイの複数の態様が定期的に試験されるように、調和標準の特性を連続的に変更することが好ましい場合がある。
【0018】
一実施形態によれば、生化学的アッセイ装置は、少なくとも2つの異なるカテゴリーのリガンドが固定化された固相を含み、各カテゴリーのリガンドは、上記装置を集合的に備える単一のコンポーネントまたは複数のコンポーネントに固定化され得、
-リガンドの第1のカテゴリーは、前立腺癌(PCa)バイオマーカーに特異的に結合し、複数の異なるPCaバイオマーカー、好ましくはPSA、iPSA、tPSA、fPSA、およびhK2の少なくとも1つ、および任意選択でMSMBおよび/またはMIC-1、の各々に特異的に結合する複数の異なるリガンドを含み、および
-リガンドの第2のカテゴリーは、前立腺癌関連一塩基多型(SNPpc)に特異的に結合し、rs11672691、rs11704416、rs3863641、rs12130132、rs4245739、rs3771570、rs7611694、rs1894292、rs6869841、rs2018334、rs16896742、rs2273669、rs1933488、rs11135910、rs3850699、rs11568818、rs1270884、rs8008270、rs4643253、rs684232、rs11650494、rs7241993、rs6062509、rs1041449、rs2405942、rs12621278、rs9364554、rs10486567、rs6465657、rs2928679、rs6983561、rs16901979、rs16902094、rs12418451、rs4430796、rs11649743、rs2735839、rs9623117、およびrs138213197の少なくとも1つなど、複数の異なるSNPpcの各々に特異的に結合する複数の異なるリガンドを含む。
【0019】
一実施形態によれば、固相は、SNP関連バイオマーカー(SNPbm)に特異的に結合する固定化されたリガンドの第3のカテゴリーをさらに有し、rs1227732、rs3213764、rs1354774、rs2736098、rs401681、rs10788160、rs11067228、rs1363120、rs888663、およびrs1054564の少なくとも1つなどの、複数の異なるSNPbmの1つまたは各々に特異的に結合する1つまたは複数の異なるリガンド、例えばを含む。
【0020】
本発明の別の実施形態によれば、上記の様々な実施形態に従う生化学的アッセイ装置を含むキットが提供される。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、多重生化学アッセイにおける生物学的サンプルからのテスト結果の調和のためのシステムが提供され、このシステムは、各サンプルで独立して、生物学的サンプル中の少なくとも2つの異なるバイオマーカーと調和標準サンプル中の少なくとも2つの異なるバイオマーカーの存在または濃度を定量化するために両方が適合された、定義されたタイプの分析機器に実装された定義された多重生化学アッセイ装置と、生物学的サンプルからのテスト結果の調和のために、サンプルからのテスト結果を、コンピュータベースの決定エンジンに受け取るための手段を備えるコンピュータベースの決定エンジンと、コンピュータベースの決定エンジンを使用して、生物学的サンプルからのテスト結果を変換する手段とを備える。生物学的サンプルからのテスト結果を変換する手段は、調和標準サンプルからのテスト結果を一般化単位に変換し、生物学的サンプルの結果を一般化単位に調整するように構成される。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、命令を実行するコンピュータに、決定エンジンによって提供される方法の部分を実行させるための命令を含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【0023】
一実施形態では、コンピュータベースの決定エンジンがこのシステムに含まれる。
【0024】
一実施形態では、コンピュータベースの決定エンジンのすべてのコンポーネントは、サーバー、パーソナルコンピュータ、分析機器、またはデータ処理能力を有する任意の他の装置であり得る単一の装置に統合されたコンピュータプログラム製品によって提供される。
【0025】
一態様によれば、調和標準は、工場標準と関連付けられることができる。
【0026】
一態様によれば、調和標準の新しいバッチの供給者は、顧客への送達の前に上記の調和を実行することを要求されることができる。
【0027】
本発明の様々な実施形態の利点は、それらが、異なる研究室で得られたテスト結果間の比較を容易にすることである。
次に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態による方法のフローチャートを示す。
【
図2】本開示の実施形態による定義された多重生化学アッセイ装置を示す。
【
図3】本発明の実施形態によるシステムのブロック図を示す。
【
図4】コンピュータベースの決定エンジンのブロック図を示す。
【
図5】y軸に調和標準の平均合計PSA値(任意単位)を示し、x軸に同じ基材にある未知のサンプル(患者サンプル)の中央値合計PSA値(同じ任意単位)を示す。
【
図6】y軸に調和標準の平均MSMB値(任意単位)を示し、x軸(同じ任意単位)に同じ基材上の未知のサンプル(患者サンプル)の中央値MSMB値を示す。
【
図7】y軸上の調和標準の平均GDF-15値(任意単位)と、x軸上の同じ基材上の未知のサンプル(患者サンプル)の中央値GDF-15値(同じ任意単位)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この開示の目的のため、および明確にするために、以下の定義が行われる。
【0030】
「診断アッセイ」という用語は、病的状態の存在または特徴の検出を指す。これは、「診断方法」または「診断テスト」と交換可能に使用できる。診断アッセイは、感度および特異性が異なる場合がある。
【0031】
「予後アッセイ」という用語は、病的状態を発症するリスクの評価を指す。これは、「予後方法」または「予後テスト」と交換可能に使用できる。予後アッセイは、特定の事象が発生するかどうかについて予後を提供する場合、診断アッセイと同様であり、そのような場合、感度と特異性が異なる場合がある。そのような例の1つは、積極的な治療が必要な場合の予後アッセイの予測である。
【0032】
「アッセイ装置」という用語は、装置を集合的に含む、1つ以上のコンポーネントを含むことができる、アッセイを実行するための物理的装置を指す。
【0033】
診断ツールの有用性の1つの尺度は、一般にROC-AUC統計として知られている「レシーバー-オペレーター特性曲線下領域」である。この広く受け入れられている測定は、ツールの感度と特異性の両方が考慮される。ROC-AUC測定は、通常0.5~1.0の範囲であり、0.5の値はツールに診断値がないことを示し、1.0の値はツールに100%の感度および100%の特異性があることを示す。
【0034】
「感度」という用語は、積極的な治療を必要とするすべての対象者のうち、そのように正しく識別されている割合を指す(これは、真陽性の数を、真陽性と偽陰性の数の合計で割った値に等しい)。
【0035】
「特異性」という用語は、積極的な治療を必要としない(つまり、注意深い待機に適している)すべての対象者のうち、そのように正しく識別されている割合を指す(これは、真の陰性の数を真の陰性の数と偽陽性の数の合計で割った値に等しい)。
【0036】
「分析物」という用語は、アッセイにおいて検出および/または定量化に供される標的の生化学/バイオマーカーを指す。分析物の例は、タンパク質、オリゴヌクレオチドまたは化合物である。
【0037】
「認識要素」という用語は、特定の分析物と相互作用することができる実体を指す。認識要素の非限定的な一例は、定義された分析物に特異的に結合する抗体である。認識要素の別の非限定的な例は、定義された分析物に特異的に結合するアプタマーである。
【0038】
「バイオマーカー」という用語は、タンパク質、タンパク質の一部、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド(DNAまたはRNA)、化合物、代謝産物、異化産物、または循環細胞(1つの非限定的な例に言及すると、循環腫瘍細胞など)を指し、これらは、例えば、診断目的のために生物学的マーカーとして使用することができる。アッセイにおいて、バイオマーカーは通常、分析物である。
【0039】
「調和標準」という用語は、製造業者には知られているが、通常はユーザーには知られていない特性を有するサンプルを指す。調和標準は、多重アッセイにおいて分析される個々のアッセイまたはバイオマーカーの少なくとも50%をカバーする。
【0040】
「多重生化学アッセイ」という用語は、生物学的サンプルの提供者の状態を評価すること(非限定的な例に言及すると、癌疾患のリスクを推定することなど)の目的のために、少なくとも2つの異なるバイオマーカー値(2つの非限定的な例として、生物学的サンプル中のバイオマーカーの濃度または生物学的サンプル中のバイオマーカーの検出可能な存在など)を組み合わせるアッセイを指す。バイオマーカー値は、各々が少なくとも1つのバイオマーカー値を生成し、集合的に多重アッセイを含む、複数のアッセイコンポーネントを使用して得ることができ、または、すべての所望のバイオマーカー値を生成する1つのアッセイ装置のみを使用して得ることができるか、またはすべての所望のバイオマーカー値を協調して生成する任意の他の組み合わせを使用して、得ることができる。本開示の文脈における多重生化学アッセイは、生物学的サンプルの最長の保存時間と同様の時間枠内ですべての所望のバイオマーカー値を生成する。血漿または血清に処理される血液サンプルの場合、タンパク質バイオマーカーアッセイについては、冷蔵庫における通常の最長保存時間は約2~4週間であり、なぜなら、長期間保存する場合、サンプルの分解自体が決定されたバイオマーカー値の精度に影響を与える可能性があるからである。特定の実施形態では、多重生化学アッセイは、少なくとも10の異なるバイオマーカー値、少なくとも20の異なるバイオマーカー値、少なくとも30の異なるバイオマーカー値、少なくとも40の異なるバイオマーカー値、または少なくとも50の異なるバイオマーカー値を組み合わせる。
【0041】
一塩基多型データベース(dbSNP)は、両方とも米国にあるthe National Human Genome Research Institute(NHGRI)と共同で、the National Center for Biotechnology Information(NCBI)によって開発および主催されている、さまざまな種内および種間の遺伝的変異のアーカイブである。データベースの名前は、1つのクラスの多型(つまり、一塩基多型(SNP))のコレクションのみを意味するが、実際には、さまざまな分子変異が含まれている。すべての独特な提出されたSNPレコードは、参照SNP ID番号(「rs#」、「refSNPクラスター」)を受け取る。本願においては、SNPは主にrs#番号を使用して識別される。
【0042】
次に、本開示の実施形態による方法のフローチャートを示す
図1を参照する。
【0043】
最初の工程a)では、各サンプルBS、HSSで独立して、生物学的サンプルBS中および調和標準サンプルHSS中の少なくとも2つの異なるバイオマーカーの存在または濃度が、どちらも
図2および3を参照して以下でより詳細に説明される、定義されたタイプの分析機器に実装された、定義された多重生化学アッセイ装置によって定量化される11。
【0044】
次に、第2の工程b)では、テスト結果である、テスト結果サンプル、サンプルBS、HSSからのテスト結果調和が、変換15のためのコンピュータベースの計算エンジン44に受け取られ13、工程c)、テスト結果であるテスト結果サンプルがサンプルBSから、生物学的サンプルBSからのテスト結果であるテスト結果サンプルの調和が受け取られる。
【0045】
生物学的サンプルBSからのテスト結果であるテスト結果サンプルを変換すること15は、少なくとも調和標準サンプルHSSからのテスト結果であるテスト結果調和を一般化単位(GE)に変換することを含む。最後に、テスト結果である生物学的サンプルBSのテスト結果サンプルは、一般化単位(GE)に調整される。
【0046】
一実施形態によれば、工程a)からc)は、特定の時間枠内で少なくとも2回繰り返される。
【0047】
一実施形態によれば、工程a)からc)は、異なる生物学的サンプルを用いて繰り返され、これらの結果を使用して、異なる時点で定量化された少なくとも2つの調和標準HSSからのテスト結果調和が、一般化単位(GE)への変換15における入力として定量化される。
【0048】
一実施形態によれば、工程a)からc)は、異なる生物学的サンプルBSおよび異なる調和標準HSSを用いて繰り返され、これらの結果を使用して、異なる時点で定量化された少なくとも2つの調和標準HSSからのテスト結果調和が、一般化単位(GE)への変換15における入力として定量化される。
【0049】
非限定的な例が説明される。生物学的サンプルをアッセイして、サンプル内のバイオマーカー1からnを測定し、サンプルからのバイオマーカーの測定量をSM1からSMnとして指定し、ここで、nは2から10、20、30、40、50、またはそれ以上である。バイオマーカー1からn(またはそれ以上もしくはそれ以下のバイオマーカー)の調和サンプルは、HM1からHMnとして指定されたバイオマーカーの測定量を用いて、同じ条件(つまり、同じ研究室、機器、および操作者)でアッセイされる。コンピュータベースの決定エンジンを使用して、調和サンプル中のバイオマーカーの測定量は、調和サンプルのバイオマーカーの既知の一般化単位KGE1からKGEnとの比較、および、すべての測定された調和バイオマーカーHM1からHMnおよび既知の一般化単位KGE1からKGEnの間の違いに基づく関数/アルゴリズムの生成によって、一般化単位に変換される。次に、その関数/アルゴリズムを使用して、SM1からSMnをサンプルバイオマーカーの一般化単位、SGE1からSGEnに変換し、これは、次には、診断評価のために使用できる。
【0050】
調和は、技術と技術の違い、研究室と研究室の違い、使い捨てと使い捨ての違いを調整するために使用される。特定の研究室のHM1とHM2の両方に期待どおりの値がある場合(製造元が提供する、各調和標準でのマーカーの真の濃度)、技術間の修正のみが適用される。例えば、特定のPSA(前立腺特異抗原)プラットフォームは、5~10%減少の体系的な違いがあることが知られている。したがって、HM1およびHM2がこのような装置で測定される場合、測定されたHM1とHM2は、既知の一般化単位よりも10%低いと予想され、その結果、すべてのサンプルは、アルゴリズムの作成に使用されるデータの測定プロファイルに一致するように1.1を乗算することによる調整を必要とある。さて、HM1…HMnが散発的に期待値から逸脱すると、使い捨ての問題が発生する可能性があり、すなわち、いくつかの使い捨ては、見積もり濃度を有意に超えており、または有意に下回っている。すべてのHM1、HM2、…HMnが一貫して期待値と異なる場合、サンプルデータも同じ様式で一貫して異なると想定でき、HM1、HM2、…HMn値はサンプルデータの変換をガイドできる。例えば、HM1=0.5*期待値KGE1およびHM2=0.5*期待値KGE2の場合、すべてのサンプルに2を掛けて、一般化単位で値を生成する。したがって、簡略化したビューでは、(一般化単位サンプル値)=(測定サンプル値)/AVERAGE(HM1/KGE1;HM2/KGE2;…HMn/KGEn)。したがって、HM1=2*KGE1で他のすべてのHMn/KGEn値が同じ場合、平均=2および測定サンプルは2で除算され、予想外に高いHM1、HM2、…HMnについて調整される。明らかであるように、多重システムでは、記載されたような変換工程はかなり複雑である。
【0051】
差が小さい(所定の最小値未満)KGE1からKGEnおよびHM1からHMnは、測定システムのノイズを示し、所定の最小値未満の差(累積ノイズを反映)については、コンピュータベースの決定エンジンを、補正を適用しないようにプログラムでき、つまり、システムはノイズが制限されている。一方、差が大きいKGE1からKGEnおよびHM1からHMnの場合、コンピュータベースの決定エンジンは、大きな差(例えば、所定の最大値よりも大きい)が指摘されたときにユーザーに警告するようにプログラムされている場合があり、いくつかの警告のうちの1つを出すことができる。例えば、HM/KGE比の確率論的/ランダムな、および/または大きな変動は、ずさんなオペレーター、貧弱なおよび/または使い捨ての品質の変化などを示している可能性があり、一方、体系的で一貫した偏差は、何かが手元の研究室で体系的に異なって行われていることを示している可能性があり、その特定の研究室のKGE値の更新が必要な場合がある。HM/KGE比はまた、非限定的な例として、冬の間のアッセイ性能が夏の間のアッセイ性能とは異なるなどの季節変動を有する可能性がある。
【0052】
一実施形態によれば、工程a)からc)は、異なる生物学的サンプル(BS)または異なる調和標準(HSS)を用いて繰り返され、少なくとも2つの調和(HSS)標準からの結果(テスト結果調和)を使用することは、さまざまな時点で、一般化単位(GE)への変換(15)の入力として定量化される。
【0053】
【0054】
図2は、定義されたタイプの分析機器34で実施されるように適合され、生物学的サンプルBS中の少なくとも2つの異なるバイオマーカー25、26の存在または濃度を、および調和標準サンプルHSS中の2つの異なるバイオマーカー27、28の存在または濃度を有する、定義された多重生化学アッセイ装置22の態様を示す。多重生化学アッセイ装置22の非限定的な一例は、マイクロアレイである。マイクロアレイ22は、典型的には、固体支持体21を備え、その上に複数の認識要素25、26、27、28があり、各々は、異なる定義された分析物と特異的に相互作用し、固定化することができる。一般的に、抗体は認識要素として使用される。分析物がそれぞれの認識要素に結合した後、固体支持体を洗浄し、検出試薬を固体支持体と接触させる。検出試薬は、通常、1つ以上の分析物に結合する標識分子であり、分析物の存在をラベルを通じて検出可能にする。マイクロアレイアッセイを実行する場合、通常のワークフローは、固体支持体を生物学的サンプルと接触させ、その後10~60分間インキュベートすることである。その後、固体支持体21は、すべての標的分析物を含まない液体で洗浄される。標識された検出試薬(例えば、蛍光部分で標識された試薬)を加え、10~60分間インキュベートする。固体支持体21の最後の洗浄後、マイクロアレイ22を蛍光スキャナーで走査して、マイクロアレイ22上のどのスポットが分析物の存在を示したかを明らかにすることができる。
【0055】
次に、分析物は、
図1に関連して上述した工程a)に対応する分析機器34において量子化を受ける。
【0056】
一実施形態によれば、生化学的アッセイ装置は、少なくとも2つの異なるカテゴリーのリガンドがその上に固定化された1つ以上の固相成分21を含み、
-リガンドの第1のカテゴリーは、PCaバイオマーカーに特異的に結合し、複数の異なるPCaバイオマーカー、好ましくはPSA、iPSA、tPSA、fPSA、およびhK2の少なくとも1つ、および任意選択でMSMBおよび/またはMIC-1、の各々に特異的に結合する複数の異なるリガンドを含み、および
-リガンドの第2のカテゴリーは、SNPpcに特異的に結合し、rs11672691、rs11704416、rs3863641、rs12130132、rs4245739、rs3771570、rs7611694、rs1894292、rs6869841、rs2018334、rs16896742、rs2273669、rs1933488、rs11135910、rs3850699、rs11568818、rs1270884、rs8008270、rs4643253、rs684232、rs11650494、rs7241993、rs6062509、rs1041449、rs2405942、rs12621278、rs9364554、rs10486567、rs6465657、rs2928679、rs6983561、rs16901979、rs16902094、rs12418451、rs4430796、rs11649743、rs2735839、rs9623117、およびrs138213197の少なくとも1つなど、複数の異なるSNPpcの各々に特異的に結合する複数の異なるリガンドを含む。
【0057】
一実施形態によれば、固相21は、SNPbmに特異的に結合する固定化された第3のカテゴリーのリガンドをさらに有し、rs1227732、rs3213764、rs1354774、rs2736098、rs401681、rs10788160、rs11067228、rs1363120、rs888663、およびrs1054564の少なくとも1つなどの複数の異なるSNPbmの1つまたはそれぞれに特異的に結合する1つまたは複数の異なるリガンドを含む。
【0058】
次に
図3を参照すると、これは、マイクロアレイなどの多重生化学アッセイ装置22における生物学的サンプルからのテスト結果の調和のためのシステム30を示し、
図1において説明および図示した実施形態に関して上述した方法を実施する。
【0059】
システム30は、定義されたタイプの分析機器34に実装された定義された多重生化学アッセイ装置22を備える。生化学的アッセイ装置22と分析機器34は、両方とも、典型的には一緒に、工程a)を実施するように適合されており、すなわち、生物学的サンプルおよび調和標準サンプル中の少なくとも2つの異なるバイオマーカーの存在または濃度を、各サンプル中でそれぞれ独立して、定量化する11。システム30は、コンピュータベースの決定エンジン44をさらに備え、これは、サンプルからのテスト結果をコンピュータベースの決定エンジン44に受け取る13ためのコンポーネント46、および生物学的サンプルから受け取ったテスト結果を変換15するためのコンポーネント48を含む。これらのコンポーネント46、48は、
図4に概略的に示されている。生物学的サンプルからのテスト結果を変換15するためのコンポーネント48は、調和標準サンプルからのテスト結果を一般化単位(GE)に変換し、生物学的サンプルの未知の結果を一般化単位(GE)に調整するように構成される。
【0060】
本開示の一態様によれば、この例において決定エンジン44を定義するコンポーネント46および48は、1つ以上の汎用または専用コンピューティング装置上で実行される専用ソフトウェア(またはファームウェア)によって実装され得る。そのようなコンピューティング装置は、1つ以上の処理ユニット、例えばCPU(「中央処理ユニット」)、DSP(「デジタルシグナルプロセッサ」)、ASIC(「アプリケーション固有の集積回路」)、ディスクリートアナログおよび/またはデジタルコンポーネント、またはFPGA(「フィールドプログラマブルゲートアレイ」)などの他のプログラム可能な論理装置を備えることができる。この文脈において、決定エンジン44の各「コンポーネント」は、方法工程の概念的な同等物を指すことが理解されるべきであり、コンポーネントと、ハードウェアまたはソフトウェアルーチンの特定のピースとの間には、常に1対1の対応があるとは限らない。1つのハードウェアのピースが異なるコンポーネントで構成される場合がある。例えば、処理ユニットは、ある命令を実行するときは1つのコンポーネントとして機能するが、別の命令を実行するときは別のコンポーネントとして機能することができる。さらに、1つのコンポーネントは、ある場合においては1つの命令によって実装できるが、他のある場合においては、複数の命令で実装できる。コンピューティング装置は、システムメモリと、システムメモリを含む様々なシステムコンポーネントを処理ユニットに結合するシステムバスとをさらに含み得る。システムバスは、任意の様々なバスアーキテクチャを利用した、メモリバスまたはメモリコントローラ、周辺バス、およびローカルバスを含む数種のタイプのバス構造物のどれであってもよい。システムメモリは、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびフラッシュメモリなどの揮発性および/または不揮発性メモリの形態のコンピュータ記憶媒体を含み得る。専用ソフトウェアは、システムメモリ、または、磁気メディア、光メディア、フラッシュメモリカード、デジタルテープ、ソリッドステートRAM、ソリッドステートROMなどのコンピューティング装置に含まれているか、またはアクセス可能な他のリムーバブル/非リムーバブルの揮発性/不揮発性コンピュータストレージメディアに格納できる。コンピューティング装置は、シリアルインターフェイス、パラレルインターフェイス、USBインターフェイス、ワイヤレスインターフェイス、ネットワークアダプタなどの1つ以上の通信インターフェイスを含むことができる。例えば、キーボード、マウス、タッチスクリーン、ディスプレイ、プリンター、ディスクドライブなどを含む、通信インターフェイスを介して、1つ以上のI/O装置をコンピューティング装置に接続できる。専用ソフトウェアは、記録媒体、読み取り専用メモリ、または電気キャリア信号を含む任意の適切なコンピュータ可読媒体上でコンピューティング装置に提供できる。
【0061】
この方法の一実施形態では、(任意のカテゴリーのSNPに属する)SNPの存在または非存在の測定は、上記SNPの対立遺伝子の数を測定することを含む。一実施形態では、1つまたは2つの対立遺伝子は、上記SNPの存在に対応し、ゼロの対立遺伝子は、上記個体における上記SNPの非存在に対応する。ここで、ゼロの対立遺伝子は前記SNPのホモ接合性陰性に対応し、1つの対立遺伝子はヘテロ接合性陽性に対応し、2つの対立遺伝子はホモ接合性陽性に対応する。SNPの適切なカテゴリーには、診断または予後アッセイが関連している疾患に関連するSNP、診断または予後アッセイが関連している疾患のリスク因子に関連するSNPが含まれるが、これらに限定されない。リスク因子の非限定的な例は、タンパク質バイオマーカーのレベルおよび肥満である。
【0062】
一実施形態では、上記の方法工程a)は、PCaバイオマーカーの存在または濃度を測定するための、ELISAアッセイ装置、マイクロアレイアッセイ装置、免疫沈降アッセイ装置、免疫蛍光アッセイ装置、ラジオイムノアッセイ装置、またはマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)を使用した質量分析装置を含むがこれらに限定されない1つ以上の分析装置を使用することを含む。
【0063】
上述の実施形態と組み合わせることができる実施形態では、上述の方法は、SNPの存在または非存在の測定のために、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)を使用する質量分析装置を使用することを含む。
【0064】
一実施形態では、上記の分析機器は、PCaバイオマーカーの存在または濃度を測定するための、ELISAアッセイ装置、マイクロアレイアッセイ装置、免疫沈降アッセイ装置、免疫蛍光アッセイ装置、ラジオイムノアッセイ装置、またはマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)を使用した質量分析装置を含むがこれらに限定されない1つ以上の分析装置を含む。上述の実施形態と組み合わせることができる実施形態では、上述のアッセイ装置は、SNPの存在または非存在の測定のために、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)を使用する質量分析装置を含む。
【0065】
本発明のさらなる態様によれば、工程a)少なくとも2つのバイオマーカーの存在または濃度を測定し、任意選択で、個体における定義された疾患または状態の存在または非存在を示すための上記方法の少なくとも1つのSNPの存在または非存在を測定することを実行するためのテストキットが提供され、これは、上記の対応するアッセイ装置と、測定値を一般化単位(GE)に変換できるようにするための少なくとも1つの調和標準サンプルHSSの使用を含み、最後に、上記の疾患または状態を有する個体の可能性を推定する。
【0066】
本方法の1つの潜在的な用途は、前立腺癌の存在または非存在を決定するための診断アッセイであり、適切なバイオマーカーには、PSA、iPSA、tPSA、fPSA、およびhK2、ならびに任意選択で、MSMBおよび/またはMIC-1が含まれるが、これらに限定されず、ここで、適切なSNPには、rs582598、rs439378、rs2207790、rs1046011、rs10458360、rs7525167、rs10489871、rs7529518、rs4245739、rs4512641、rs10178804、rs11900952、rs1873555、rs10191478、rs6755901、rs6545962、rs721048、rs2710647、rs12612891、rs2028900、rs1009、rs12233245、rs6760417、rs10496470、rs10199796、rs12475433、rs16860513、rs12151618、rs3765065、rs13017302、rs12988652、rs871688、rs749264、rs3771570、rs4346531、rs6770955、rs12637074、rs2660753、rs13319878、rs6437715、rs2162185、rs1515542、rs2270785、rs9830294、rs1439024、rs6762443、rs888507、rs6794467、rs12490248、rs1477886、rs4833103、rs3796547、rs17779822、rs2366711、rs16849146、rs1894292、rs12640320、rs3805284、rs12500426、rs4699312、rs17021918、rs7679673、rs2047408、rs2647262、rs12506850、rs7658048、rs2078277、rs12505546、rs13113975、rs4246742、rs2736098、rs401681、rs11134144、rs10060513、rs40485、rs2087724、rs1482679、rs16901841、rs1295683、rs2070874、rs7752029、rs2018334、rs9358913、rs1140809、rs409558、rs3096702、rs9267911、rs2025645、rs9359428、rs6569371、rs2813522、rs1933488、rs712242、rs6934898、rs9456490、rs651164、rs3120137、rs9364554、rs9457937、rs10486562、rs10807843、rs7801918、rs6962297、rs2465796、rs6957416、rs7777631、rs2272316、rs6961773、rs2132276、rs13265330、rs16887736、rs2911756、rs2272668、rs2339654、rs1380862、rs9297746、rs12543663、rs10086908、rs16901922、rs1016343、rs17832285、rs16901979、rs4871779、rs10107982、rs16902094、rs620861、rs17467139、rs6983267、rs9297756、rs10094059、rs7818556、rs1992833、rs986472、rs12552397、rs4273907、rs4237185、rs753032、rs11253002、rs2386841、rs10795841、rs10508422、rs7075945、rs10508678、rs539357、rs10826398、rs3818714、rs7090755、rs10993994、rs4382847、rs1891158、rs10887926、rs10788160、rs6579002、rs10832514、rs7358335、rs1944047、rs3019779、rs10896437、rs12793759、rs7106762、rs7102758、rs2449600、rs585197、rs2509867、rs11568818、rs7125415、rs11601037、rs11222496、rs4570588、rs6489721、rs3213764、rs17395631、rs4423250、rs11168936、rs10875943、rs3759129、rs902774、rs1827611、rs4760442、rs11610799、rs6539333、rs11067228、rs7485441、rs6489794、rs4119478、rs17070292、rs2293710、rs17256058、rs1950198、rs2331780、rs7141529、rs12880777、rs17123359、rs785437、rs524908、rs12903579、rs7178085、rs7164364、rs896615、rs11634741、rs9972541、rs12594014、rs11631109、rs1558902、rs8044335、rs2738571、rs885479、rs385894、rs684232、rs4925094、rs17138478、rs11649743、rs2107131、rs7213769、rs12946864、rs306801、rs138213197、rs1863610、rs17224342、rs9911515、rs12947919、rs966304、rs17744022、rs7234917、rs1943821、rs2227270、rs1363120、rs888663、rs122773222、rs1054564、rs4806120、rs11672691、rs758643、rs3745233、rs6509345、rs2659051、rs2735839、rs1354774、rs2691274、rs6090461、rs2297434、rs6062509、rs2315654、rs2823118、rs2838053、rs398146、rs16988279、rs2269640、rs4822763、rs132774、rs747745、rs5978944、rs6530238、rs5934705、rs5935063、rs4830488、rs17318620、rs5945619、rs5945637、rs11091768、rs2473057、rs5918762、rs4844228、rs6625760およびrs17324573が含まれるがこれらに限定されない。
【0067】
上述の様々な実施形態による本発明は、潜在的に異なる機器プラットフォームが使用されている異なる研究室から得られたアッセイ結果の調和を提供する。調和は、アッセイ値を機器プラットフォーム全体で比較可能な一般化単位に変換することによって達成される。この方法が機能するために不可欠なことは、多重生化学アッセイ装置における実質的にすべての標的分析物の特性が1つまたはいくつかの調和標準で検証されるように設計されている調和キットの使用である。期待されるパフォーマンスからの逸脱を処理するために、1つのアッセイで生成された各結果は、一般化された単位(GE)に変換されます。ここで、複数の側面が考慮されます。現在の分析、現在の調和標準結果を以前の複数の調和標準結果と組み合わせて定量化した実験室または機器内の体系的なドリフト、および分析結果の取得に使用した機器タイプのパフォーマンスプロファイル。
【0068】
本発明の基本原理は、一態様によれば、以下のように説明することができる。様々な実施形態に従って開示および特許請求される本発明の調和方法は、異なるタイプの分析設備(機器プラットフォーム)を潜在的に使用する異なる研究室からのアッセイ出力を調和させることを目的とする。調和を達成するために、未知のサンプル(通常は患者のサンプル)の各セットは、調和標準で補完される。異なる研究室および技術は、時間とともに変化する様式で系統的に異なる可能性があることが知られているため、調和標準の結果を使用して、すべての未知のサンプルの結果を一般化単位に調整する。一般化単位の使用は、系統的な誤差の合計を排除し、研究室とテクノロジープラットフォーム間の結果の比較可能性を向上させ、結果の集中的な解釈を可能にする。したがって、すべての診断または予後またはその他の臨床決定は、一般化単位を使用して行われ、研究室または機器のタイプに関係なく、診断/予後方法の同じ性能を実現する。
【0069】
調和方法では、インフラストラクチャー/ハードウェアと一般化単位(GE)の関係を取得するために、研究質と機器それ自体の両方を特性化する必要がある。
【0070】
分析機器は、いかにしてその機器タイプからの出力が一般化単位に準拠するように変換されるかを明らかにする様式で特徴付けられる。
【0071】
一般化可能なアッセイを実施する目的のために以前に特徴付けられた分析機器を使用している研究室は、アッセイの出力に対する上記研究室インフラストラクチャーおよび標準操作手順の影響がいかにして一般化単位に準拠するように変換されるかを明らかにするように特徴付けられる必要がある。
【0072】
以前に特徴付けられたタイプの分析機器は、別の研究室がそのような機器を入手する場合、通常は、特徴付けされる必要はない。研究室における(任意の)機器の各々の新しい取り付けは、通常、上記の新しく取り付けられた機器からの出力の調和のために繰り返し研究室特性評価を必要とする。
【0073】
分析機器および研究室が一般化単位においてアッセイ出力を生成するように特徴付けられると、研究室は定義されたアッセイのために分析機器を使用し、各アッセイは、通常、1つ以上の調和標準を含む。調和標準は、多重システムの個々のアッセイの大部分についての独立した対照(第3レベルの対照)としても、アッセイ結果の一般化のための基準点としても機能するように設計されている。アッセイの完了時に、アッセイ出力(好ましくは生データ出力)は、通常、中央(デジタル)施設に転送され、そこで実際のアッセイ結果が一般化単位に変換される。変換に影響を与える要因には、現在のアッセイからの調和標準結果、同じ調和標準バッチが使用された他の研究室からの調和標準結果、機器特性、研究室特性、アッセイの操作および較正のために使用された試薬のバッチ、ならびに現在の研究室における調和標準結果の時間的進化が含まれる(しかし、これらに限定されない)。
【0074】
調和標準は常に同じ方法で構成される必要はない。多重アッセイの複数の態様が定期的にテストされるように、調和標準の特性を連続的に変更することが実際に好ましい。例えば、アッセイが血液中の4つのバイオマーカーの濃度を測定する場合、2つの異なる調和標準を設けることが合理的である可能性があり、1つは2つのバイオマーカーが高濃度で存在し、他の2つは低濃度で存在する場合であり、2つ目の調和標準は反対の濃度プロファイルを有する。各アッセイで体系的かつ定期的に(通常は毎日または毎週)調和標準を切り替えることにより、既知の高高低低(またはその逆)の濃度プロファイルを測定するテストを通じて、アッセイの機能が各アッセイで定量化されるのみならず、両方の調和標準をアッセイした後、含まれるバイオマーカーのそれぞれについて1つの既知の低濃度および1つの既知の高濃度が短い時間枠でテストされるため、アッセイのダイナミックレンジが検証される。
【0075】
多重アッセイの特定の側面を調査するために、調和標準をさらに調整することができる。例えば、新しいバッチの試薬において意図しない交差反応が疑われる場合、疑わしい問題が存在したかどうかを調査するために一連の調和標準を設計できる。同様の方法で、調和標準の同じバッチを複数の異なる研究室に配布することができ、これは、任意の特定の研究室が特定のアッセイに伴う問題を経験しているかどうかを特定するのと同様に、系統的な小さな研究室間の変動性を比較および修正することを可能にする。
【0076】
多重生化学アッセイ装置は、1つずつ較正および制御することは現実的ではない。したがって、定期的な対照サンプルと外部標準は、実装も評価も簡単ではない。調和標準を使用すると、多重対照が利用可能になり、アッセイを制御するための任意の他の試みを補完する。既知の調和標準結果プロファイルが機密に保たれている場合、それはセキュリティまたは信頼性の制御としても機能する。既知の予期される結果プロファイルとは大幅に異なる定義済みで一意に識別された調和標準の結果プロファイルの報告は、調和標準の処理中に技術的エラーが発生したか、研究室によって使用されている調和標準が偽物であることを示す。偽造試薬は分析精度を危険にさらす可能性があり、したがって患者にとって大きなリスクを構成する。
【0077】
多成分生化学アッセイ装置は、製造バッチに関係なく、すべてのバイオマーカーが同じ精度で同じダイナミックレンジでアッセイされるような様式で製造することは困難である。1つのアッセイの生産収率が95%である(つまり、20回の生産試行のうち19回は成功する)と仮定すると、同じ固体支持体上に配置された10個の個別のアッセイを含む多成分生化学アッセイ装置は、(0.95^10)*100%=59.8%の生産収率を有する。私たちが理解している限り、タンパク質は高感度で生産に使用するのが難しく、このことは多成分アッセイにおける乏しい生産収率をもたらすため、タンパク質分子が組み込まれている多成分アッセイの開発のボトルネックになっている。本発明は、未知のサンプルを評価するときに、固体支持体上で検出された偏差を調整するために調和標準が使用されるため、多成分アッセイのより低い性能をそのまま受け入れることを可能にする。非限定的な例として、調和手順による一般化単位の実装が、各々の個別のアッセイ性能要件を削減することを可能にするため、より弱いアッセイ性能を受け入れ、調和標準の使用を通して出力を修正する。初期の生産収率が95%で、調和手順の実装が収率を98%に増加する場合、同じ固体支持体上に配置された10個の個別アッセイを含む多成分アッセイの全体的な生産収率は(0.98^10)*100%=81.7%になる。このことは、個別のアッセイの生産収率のわずかな増加も、多成分アッセイの全体的な生産収率に大きな影響を与える可能性があることを意味する。調和標準の使用は、生産収率を増加させるための外部的な方法であり、既存の生産方法を変更する必要はない。
【0078】
アッセイが多数の独立したスポットを含む固体支持体上で行われる場合、各スポットは、抗体などの認識要素が取り付けられており、調和の側面もまた、アッセイの固体支持体に埋め込むことができる。例えば、複数のスポット上に同じ認識要素を付着させることが可能であり、スポットのサブセットは上記認識要素の既知の低密度を有し、他のものは上記認識要素の既知の高密度を有する。調和標準を使用してアッセイすると、スポット生成の変動性(同じ密度の複数のスポットからの結果を比較することによる)およびスポット生成の直線性(異なる密度の複数のスポットからの結果を比較することによる)を評価できる。スポット生成の直線性の変動により、アッセイのダイナミックレンジが変動する場合がある。調和標準を通じて現場でスポット生産の直線性を監視することにより、ダイナミックレンジなどの変更されたアッセイ特性を補償するために結果を調整することが可能になる。
【0079】
さらに、完全に無関係な分子を、調和標準および対応する多成分アッセイに含めることも可能である。例えば、テストがヒトにおける使用のために設計されている場合、調和標準はマウスタンパク質で補うことができ、固体支持体は、意図されたヒトバイオマーカーと、補われたマウスタンパク質の両方のアッセイを含むように設計できる。多成分アッセイおよび調和標準に埋め込まれたこのような人工アッセイは、アッセイおよび評価全体を通じて機能的な制御および定常点として機能するため、有益である。このような定常点は、患者にとって大きなリスクを構成する可能性がある、試薬の輸送、またはアッセイの性能を低下または破壊さえする可能性のある、高温での試薬や固体支持体などの移動などのコンポーネントへの外部損傷を評価するために有益である。
【0080】
たとえ本発明が、複数のバイオマーカーの濃度を推定するアッセイに主に適用可能だとしても、特定の実施形態は、遺伝子型決定アッセイなどの定性的アッセイにもまた適用可能である。非限定的な例として、多数の一塩基多型(SNP)が測定される遺伝子型決定アッセイに適用される調和標準は、真正性コントロールとして働く能力を有し、調和標準の既知の遺伝子型決定プロファイルにより、アッセイ機能および真正のアッセイを確認するために、測定された遺伝子型を既知の遺伝子型と一致させることができる。遺伝子型決定の状況では、以前に議論したものと同様に、機能的な対照として働くように、無関係な分子を埋め込んだり、無関係なSNPのアッセイを設計したりすることもできる。
【0081】
系統的エラーの抑制がいかに重要であり得るかを例解するために、前立腺癌スクリーニングの大規模集団ベースの研究の結果を再検討した。この研究では、複数のタンパク質バイオマーカー、複数のSNP、および他の複数の情報関連因子(前立腺癌の年齢や家族歴など)がリスクスコアにまとめられ、これは、本明細書において参照により組み込まれる、Lancet Oncology(November 9,2015 http://dx.doi.org/10.1016/S1470-2045(15)00361-7)」において公開された、H Gronberg および共著者による「Prostate cancer screening in men aged 50-69 years(STHLM3):a prospective population-based diagnostic study」に開示されているように、前立腺癌を検出する目的のために非常に機能的であることが判明した。この研究で使用されたタンパク質バイオマーカーは、ImmunoCAP ISAC技術(Thermo Fisher Scientific)に基づく多重プラットフォームを使用して測定された。簡単に言えば、同じ使い捨て試験装置を使用して、約70人の患者サンプル、12個のキャリブレータ、および12個の対照サンプルを測定した。感度分析では、各使い捨て装置に、すべてのサンプルおよびその上のすべてのタンパク質バイオマーカーに適用された乗法因子が与えられた。乗法因子は、定義されたスパン内で変化することが許容され、ROC-AUCの観点から診断性能を増加させるように因子が選択されました。乗法因子が0.96~1.04の間で変動することが許容された場合、つまり、各使い捨て装置が最大で4%の体系的な挑発を受けた場合、診断アッセイの性能は大幅には改善されなかった。乗法因子が0.86から1.16の間で変動することが許可された場合、つまり、各使い捨て装置が最大で16%の体系的な挑発にさらされた場合、診断アッセイの性能は0.74から約0.78に明らかに改善された。このような性能の向上は、総PSA以外の個別のバイオマーカーのいずれかの寄与よりも大きい。感度分析の結論は、Gr o nbergおよび共著者によって開示された方法は、体系的な誤差とアッセイ性能の変化が16%未満になるように、高度なレベルの制御を必要とするということである。
【0082】
Gr o nbergと共著者が実施した調査と並行して、ストックホルムの定期的な臨床検査室でのRoche Cobas装置での総PSAアッセイの性能を評価した。約2年間の対照サンプルデータは、較正試薬のバッチを変更すると、対照サンプルの合計PSA値が3~6%のオーダーでシフトする可能性があることを示した。このようなシフトだけでは、Gr o nbergによって開示されたスクリーニング方法の性能に大きな影響はないが、他の潜在的な系統誤差の原因と組み合わせると問題になる可能性がある。
【0083】
Gr o nbergおよび共著者によって実施された研究と並行して実施された別の活動は、2つの独立した機器サプライヤー、Roche CobasアナライザーとBRAHMS Kryptorアナライザー(Thermo Fisher Scientific)からの合計PSA値およびフリーPSA値を282の血液サンプルで比較した。たとえ両方のプラットフォームが通常の臨床検査室における使用が承認されているとしても、報告された値には系統的な違いが存在し、Kryptorアッセイの総PSAはCobasアッセイよりも5%大きく、Kryptorアッセイの遊離PSAはCobasアッセイよりも16%大きくなった。
【0084】
まとめると、これはGr o nbergによって開示された多重アッセイが系統誤差の厳密な制御を必要とし、広範囲に適用できるGr o nbergの方法を作成するために本発明が必要であることを示す。これは、本開示の他の箇所で議論されている、ClinChem.2011 Jul;57(7):995-1004.doi:10.1373/clinchem.2010.151472において公開されたような、C Stephanおよび共著者によるレポート「Between-method differences in prostate-specific antigen assays affect prostate cancer risk prediction by nomograms.」の所見と一致している。
【0085】
一般的な見地から、多重アッセイは、診断または予後設定で信頼度高く機能するようになるために多くの課題に直面している。多重化の特徴は、シングルプレックスアッセイと比較してデータの異なる特性を提供する。シングルプレックスアッセイは、今度は、多重データを利用するときに異なる考え方を必要とする。多重されたデータの結果は、優先的にプロファイル(パターン、指紋)として表示される場合がある。プロファイルは、相互に相対的な関係と絶対的な関係の両方を有する複数のデータポイントを構成する。パターンを比較する場合、たとえデータポイントの一部が互いにずれていても、類似性を主張できる。このことは、複数のデータポイントを含むパターンの使用が、測定された実体の個別の変動に対して本質的に堅牢であり、多重アッセイは、シングルプレックスアッセイで通常許容できるノイズよりも大きなノイズを有することを許容する。多重の冗長性特性は、参照により本明細書に組み込まれる、WO2014/079865において、前立腺癌診断の文脈で議論されてきた。アッセイのもう1つの一般的な問題は、系統的な偏差である。機器プラットフォーム間、場合によってはアッセイで使用される使い捨てアイテム間で体系的な違いが存在し、また、アッセイを実行する前の分析前の手順の変更によって引き起こされる可能性もある。系統誤差は、どのレベル(大きさまたは類似度)が結果に「正」のフラグを付けるべきかというカットオフ問題に関連するため、複雑化している。多重アッセイが診断目的で使用され、何らかの理由でアッセイのデータポイントの半分が20%上方にシフトしている場合、以前に所定のプロファイルに類似していた結果は、もはやそうではない可能性があり、アッセイの不正確な性能が生じる。本発明は、調和標準を組み込むこと、および多重データを調和標準の結果に基づいて一般化単位に変換することにより、系統的エラーに対処する。まとめると、WO2014/079865に開示されている冗長特性を考慮し、本発明の調和標準手順を実装しながらのプロファイルの使用は、より信頼性の高い多重アッセイを生じる。
【0086】
実施例1
この実施例では、STHLM3研究内で生成されたデータのサブセットが使用された。STHLM3は、参照により本明細書に組み込まれる、Lancet Oncology(Volume 16,No.16,p1667-1676December 2015)において公開された,Gronbergおよび共著者による「Prostate cancer screening in men aged 50-69 years(STHLM3):a prospective population-based diagnostic study」において記載されている。この例で使用されているデータのサブセットは、4335個体のタンパク質バイオマーカーデータ(グリーソンスコアが7未満が3585、グリーソンスコア7が617、グリーソンスコアが8以上が133)、より特に総PSA、遊離PSA、無傷のPSA、hK2、GDF-15およびMSMBの血液濃度を含んだ。血中濃度測定は、異なる抗体が基材に付着したマイクロアレイ形式を使用して行われ、患者のサンプルは基材に接触させ、その後、結合体分子のセットを基材に接触させ、この結合体分子のセットは、患者のサンプルから基材に捕捉されたさまざまなタンパク質に特異的に結合する分子を含む。結合体分子は、定量化できるように蛍光色素で標識された。
【0087】
各基材には96個の独立した同一のウェルがあり、96個の独立したサンプルを同時に処理できることを意味する。現在の実施例のデータは、較正用に12ウェル、アッセイ対照用に9ウェル(3つの対照、それぞれ3つの独立したウェルでアッセイ)、および調和標準用に3つのウェル(3つの独立ウェルで1つの標準をアッセイ)を使用して生成された。残りの72ウェルは患者のサンプルに使用された。したがって、現在の実施例で生成されたデータは約100の基材を消費し、患者のサンプルは基材全体にランダムに分布した。
【0088】
調和標準の平均値を各基材内の72の未知サンプルの中央値と比較すると、6つのタンパク質バイオマーカーのうち3つが相関関係を示した。
図5は、y軸上の調和標準(任意単位)の平均合計PSA値と、x軸上の同じ基材上の未知のサンプル(すなわち、患者サンプル)の中央値合計PSA値(同じ任意単位)を示す。調和標準の結果が平均値よりも低い場合、未知のサンプルの中央値は常に平均を下回っていた。
図6および
図7に示すように、MSMBおよびGDF-15の結果は類似していた。
【0089】
調和標準の合計PSA値が最も低い13の基材(453例の患者、そのうち69人がグリーソンスコア7で、12人がグリーソンスコア8以上)を残りのデータセットと比較すると、表Aに示されるような総PSAおよびMSMBの中央値バイオマーカー濃度が得られた。選択した13の基材でアッセイした患者の中央値PSA値は、癌の侵襲性に関係なく、残りのデータセットの良性非癌患者の中央値よりも一貫して低かった。さらに、選択した13の基材のMSMB値は、残りのデータセットと比較して、癌の侵襲性に関係なく、一貫して高かった。総PSAは前立腺癌リスクと正の関係にあり(すなわち、より高い値はより高いリスクを示す)、MSMBは負の相関がある(つまり、より低い値は癌リスクの増加を示す)ため、選択した13の基材は総PSAとMSMBの両方で逸脱した値を有し、そして同時に、リスクを不正確に隠す方法で逸脱する。
【0090】
【0091】
各基材の調和標準サンプルについて得られた値の使用を通して、アッセイによって生成された濃度値を変換することにより、13の選択された基材の系統的偏差を調整することが可能である。任意のサンプルの濃度の決定はエラーに関連するため、各基材は次の保守的な変換を使用して一般化単位に変換された。
補正係数=2/(1+(期待される調和標準値-測定された調和標準値)/(期待される調和標準値))。
【0092】
この変換は、調和標準によって示される偏差の半分のみを修正し、調和サンプルの潜在的な測定誤差を減らして一般化単位に伝播するように選択された。全体的な性能を比較して侵襲性の癌(グリーソンスコア7以上として定義)を他の癌と区別する場合、一般化単位の使用は、集団の観点から全体的な診断性能を向上しなかった。これは、(a)生成されたデータの大部分がそのまま良好であること、および(b)母集団の観点から安全な様式で汎用ユニットを実装することが可能であることを意味する。極端な場合、例えば、上記に議論した13の基材では、一般化単位が重要であり、関係する患者についての精度を改善する。したがって、個別の観点から、一般化単位は、アッセイ結果を修正し、適切なリスク推定値を生成する潜在能力を有する。全体として、このことは、本発明が、調和サンプルが系統的偏差を示す基材に対してでアッセイされる個人にとって非常に重要であり、調和サンプルが正常レベルにある基材上でアッセイされる大多数の個体にとって中程度の重要性であることを示唆している。
【0093】
本発明は、本発明者に現在知られている最良の形態を構成するその好ましい実施形態に関して説明されてきたが、当業者に明らかであるように、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更および修正を行うことができることを理解されるべきである。