(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240110BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240110BHJP
H01M 4/505 20100101ALN20240110BHJP
H01M 4/525 20100101ALN20240110BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20240110BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M10/0566
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2021017270
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎也
(72)【発明者】
【氏名】大原 敬介
(72)【発明者】
【氏名】花▲崎▼ 亮
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110429252(CN,A)
【文献】国際公開第2019/131194(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0411859(US,A1)
【文献】国際公開第2014/175191(WO,A1)
【文献】特開2017-188445(JP,A)
【文献】特開2022-063677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 10/0566
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極と電解液とを含み、
前記正極は正極基材と正極活物質層とを含み、
前記正極活物質層は、前記正極基材の表面に配置されており、
前記正極活物質層は第1層と第2層とを含み、
前記第2層は、前記正極基材と前記第1層との間に配置されており、
前記第1層は第1正極活物質を含み、
前記第2層は第2正極活物質を含み、
前記第1正極活物質は、体積基準で第1粒度分布を有し、
前記第1粒度分布は単峰性であり、
前記第1粒度分布において、D90に対するD10の比は0.18から0.52であり、
前記第2正極活物質は、体積基準で第2粒度分布を有し、
前記第2粒度分布は
二峰性であ
り、
前記第2粒度分布は、第1ピークと第2ピークとを含み、
前記第1ピークは、小粒子径側に位置しており、
前記第2ピークは、大粒子径側に位置しており、
前記第2ピークのピークトップ位置における粒子径に対する、前記第1ピークのピークトップ位置における粒子径の比は、0.1から0.5である、
非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記第1粒度分布は、2μmから8μmのD50を有する、
請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記第2層の厚さに対する前記第1層の厚さの比は、0.1から0.5である、
請求項1または請求項2に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2013-093295号公報(特許文献1)は、平均粒径が互いに異なる少なくとも2種類の正極活物質粒子を含有する正極合材を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大容量の非水電解質二次電池(以下「電池」と略記され得る。)が求められている。大容量の電池においては、大面積かつ高密度の正極が使用され得る。
【0005】
正極は正極活物質層を含む。正極活物質は粉体である。多峰性の粒度分布を有する正極活物質は、高い充填性を有し得る。相対的に大きい粒子(大粒子)同士の隙間を、相対的に小さい粒子(小粒子)が埋め得るためと考えられる。多峰性の粒度分布を有する正極活物質の採用により、高密度の正極活物質層が形成され得る。
【0006】
ただし正極活物質層の密度が上昇する程、正極活物質層の空隙率が低下し得る。空隙率の低下により、電解液の浸透経路が減少し得る。さらに大面積の正極においては、電解液の浸透距離が長い傾向がある。浸透経路の減少と、浸透距離の延伸とが相俟って、電解液の浸透に長時間を要することになる。すなわち生産性が低下し得る。
【0007】
本技術の目的は、正極密度の上昇に伴う、液浸透性の低下を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本技術の構成および作用効果が説明される。ただし本明細書の作用メカニズムは推定を含んでいる。作用メカニズムは本技術の範囲を限定しない。
【0009】
〔1〕非水電解質二次電池は、正極と負極と電解液とを含む。正極は正極基材と正極活物質層とを含む。正極活物質層は、正極基材の表面に配置されている。正極活物質層は第1層と第2層とを含む。第2層は、正極基材と第1層との間に配置されている。第1層は第1正極活物質を含む。第2層は第2正極活物質を含む。第1正極活物質は、体積基準で第1粒度分布を有する。第1粒度分布は単峰性である。第1粒度分布において、D90に対するD10の比は0.18から0.52である。第2正極活物質は、体積基準で第2粒度分布を有する。第2粒度分布は多峰性である。
【0010】
本技術の正極活物質層は多層構造を有する。すなわち正極活物質層は、第1層(上層)と第2層(下層)とを含む。第1層(上層)は、第2層(下層)に比して、正極活物質層の表面側に配置されている。第2層(下層)は、第1層(上層)に比して、正極基材側に配置されている。
【0011】
上層において、正極活物質は単峰性の粒度分布を有する。該粒度分布においてD90に対するD10の比(以下「D10/D90」とも記される。)が0.18から0.52である。D10/D90は分布幅を反映していると考えられる。D10/D90が大きい程、分布幅が狭いことを示す。第1粒度分布が単峰性であり、かつ分布幅が適度に狭いことにより、粒子間の隙間が埋まり難くなり得る。その結果、上層の空隙率が上昇し、液浸透性の向上が期待される。
【0012】
下層において、正極活物質は多峰性の粒度分布を有する。その結果、正極活物質層全体として、所望の充填性が実現され得る。
【0013】
〔2〕第1粒度分布は、例えば2μmから8μmのD50を有していてもよい。
【0014】
上層の正極活物質が2μmから8μmのD50を有することにより、例えば充填性と液浸透性とのバランスが良化することが期待される。
【0015】
〔3〕第2層の厚さに対する第1層の厚さの比は、例えば0.1から0.5であってもよい。
【0016】
以下「第2層の厚さT2に対する第1層の厚さT1の比」は、「厚さ比」または「T1/T2」とも記される。厚さ比が0.1から0.5であることにより、例えば充填性と液浸透性とのバランスが良化することが期待される。
【0017】
〔4〕第2粒度分布は、第1ピークと第2ピークとを含む。第1ピークは、最も小粒子径側に位置している。第2ピークは、最も大粒子径側に位置している。第2ピークのピークトップ位置における粒子径に対する、第1ピークのピークトップ位置における粒子径の比は、例えば0.1から0.5であってもよい。
【0018】
以下「第2ピークのピークトップ位置における粒子径d2に対する、第1ピークのピークトップ位置における粒子径d1の比」は、「大小粒子径比」または「d1/d2」とも記される。大小粒子径比が0.1から0.5であることにより、例えば、充填性の向上が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における正極を示す概念図である。
【
図6】
図6は、単粒子および凝集粒子の概念図である。
【
図7】
図7は、正極活物質層の密度および含液速度と、厚さ比との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本技術の実施形態(本明細書においては「本実施形態」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は、本技術の範囲を限定しない。例えば本明細書における作用効果についての言及は、当該作用効果を全て奏する範囲内に、本技術の範囲を限定しない。
【0021】
本明細書において、「備える、含む(comprise,include)」、「有する(have)」およびこれらの変形〔例えば「から構成される(be composed of)」、「包含する(encompass,involve)」、「含有する(contain)」、「担持する(carry,support)」、「保持する(hold)」等〕の記載は、オープンエンド形式である。オープンエンド形式は必須要素(群)に加えて、追加要素(群)をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「からなる(consist of)」との記載はクローズド形式である。「実質的に・・・からなる(consist essentially of)」との記載はセミクローズド形式である。セミクローズド形式は、本技術の目的を阻害しない範囲で、必須要素(群)に加えて追加要素(群)をさらに含んでいてもよい。例えば、本技術の属する分野において通常想定される要素(例えば不可避不純物等)が、追加要素として含まれていてもよい。
【0022】
本明細書において、「…してもよい(may)、…し得る(can)」という単語は、義務的な意味「…しなければならない(must)の意味」ではなく、許容的な意味「…する可能性を有するの意味」で使用されている。
【0023】
本明細書において、単数形(「a」、「an」および「the」)は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子の集合体(粉体、粉末、粒子群)」も含み得る。
【0024】
本明細書において、例えば「2μmから8μm」および「2~8μm」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。すなわち「2μmから8μm」および「2~8μm」は、「2μm以上8μm以下」の数値範囲を示す。また、数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値および下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0025】
本明細書において、例えば「LiCoO2」等の化学量論的組成式によって化合物が表現されている場合、該化学量論的組成式は代表例に過ぎない。組成比は非化学量論的であってもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。
【0026】
本明細書における幾何学的な用語(例えば「垂直」等)は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「垂直」は、厳密な意味での「垂直」から多少ずれていてもよい。本明細書における幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。本技術の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
【0027】
<非水電解質二次電池>
図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略図である。
電池100は、任意の用途で使用され得る。電池100は、例えば電動車両において、主電源または動力アシスト用電源として使用されてもよい。複数個の電池100が連結されることにより、電池モジュールまたは組電池が形成されてもよい。電池100は所定の定格容量を有する。電池100は、例えば1Ahから200Ahの定格容量を有していてもよい。
【0028】
電池100は外装体90を含む。外装体90は、角形(扁平直方体状)である。ただし角形は一例である。外装体90は任意の形態を有し得る。外装体90は、例えば円筒形であってもよいし、パウチ形であってもよい。外装体90は、例えばAl合金製であってもよい。外装体90は、電極体50と電解液(不図示)とを収納している。外装体90は、例えば封口板91と外装缶92とを含んでいてもよい。封口板91は、外装缶92の開口部を塞いでいる。例えばレーザ溶接により、封口板91と外装缶92とが接合されていてもよい。
【0029】
封口板91に、正極端子81と負極端子82とが設けられている。封口板91に、注入口と、ガス排出弁とがさらに設けられていてもよい。注入口から外装体90の内部に電解液が注入され得る。電極体50は、正極集電部材71によって正極端子81に接続されている。正極集電部材71は、例えばAl板等であってもよい。電極体50は、負極集電部材72によって負極端子82に接続されている。負極集電部材72は、例えばCu板等であってもよい。
【0030】
図2は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
電極体50は巻回型である。電極体50は、正極10、セパレータ30および負極20を含む。すなわち電池100は、正極10と負極20と電解液とを含む。正極10、セパレータ30および負極20は、いずれも帯状のシートである。電極体50は複数枚のセパレータ30を含んでいてもよい。電極体50は、正極10、セパレータ30および負極20がこの順に積層され、渦巻状に巻回されることにより形成されている。正極10または負極20の一方がセパレータ30に挟まれていてもよい。正極10および負極20の両方がセパレータ30に挟まれていてもよい。電極体50は、巻回後に扁平状に成形されていてもよい。なお巻回型は一例である。電極体50は、例えば積層(スタック)型であってもよい。
【0031】
《正極》
正極10は、正極基材11と正極活物質層12とを含む。正極基材11は導電性シートである。正極基材11は、例えばAl合金箔等であってもよい。正極基材11は、例えば10μmから30μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層12は、正極基材11の表面に配置されている。正極活物質層12は、例えば正極基材11の片面のみに配置されていてもよい。正極活物質層12は、例えば正極基材11の表裏両面に配置されていてもよい。正極10の幅方向(
図2のX軸方向)において、一方の端部に正極基材11が露出していてもよい。正極基材11が露出した部分には、正極集電部材71が接合され得る。
【0032】
例えば、正極活物質層12と正極基材11との間に中間層(不図示)が形成されていてもよい。本実施形態においては、中間層がある場合も、正極活物質層12が正極基材11の表面に配置されているとみなされる。中間層は、正極活物質層12に比して薄くてもよい。中間層は、例えば0.1μmから10μmの厚さを有していてもよい。中間層は、例えば導電材、絶縁材等を含んでいてもよい。
【0033】
(正極活物質層)
正極活物質層12は、例えば10μmから200μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層12は、例えば50μmから150μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層12は、例えば50μmから100μmの厚さを有していてもよい。
【0034】
正極活物質層12は、例えば3.35g/cm3以上の密度を有していてもよい。正極活物質層12は、例えば3.5g/cm3以上の密度を有していてもよいし、3.6g/cm3以上の密度を有していてもよい。正極活物質層12は、例えば4g/cm3以下の密度を有していてもよいし、3.8g/cm3以下の密度を有していてもよい。なお、本明細書における正極活物質層12の密度は、見かけ密度を示す。
【0035】
正極活物質層12は正極活物質を含む。正極活物質層12は、正極活物質を含む限り、追加の成分をさらに含んでいてもよい。正極活物質層12は正極活物質に加えて、例えば導電材およびバインダ等を含んでいてもよい。導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、カーボンブラック、黒鉛、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)およびグラフェンフレークからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。導電材の配合量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば0.1質量部から10質量部であってもよい。バインダは、任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVdF-HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリアクリル酸(PAA)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば0.1質量部から10質量部であってもよい。
【0036】
(多層構造)
図3は、本実施形態における正極を示す概念図である。
正極活物質層12は多層構造を有する。すなわち正極活物質層12は、第1層1と第2層2とを含む。第2層2は、第1層1と正極基材11との間に配置されている。第1層1および第2層2は、それぞれ独立に、例えばスラリーの塗布により形成され得る。第2層2と第1層1とは順次形成されてもよい。第2層2と第1層1とは実質的に同時に形成されてよい。
【0037】
正極活物質層12は、第1層1および第2層2を含む限り、追加の層(不図示)をさらに含んでいてもよい。追加の層は、第1層1および第2層2と異なる組成を有する。例えば、第1層1と第2層2との間に追加の層が形成されていてもよい。例えば、第2層2と正極基材11との間に追加の層が形成されていてもよい。例えば、正極活物質層12の表面と、第1層1との間に追加の層が形成されていてもよい。
【0038】
第1層1は、別言すれば「上層」である。第1層1は、第2層2に比して、正極活物質層12の表面側に配置されている。第1層1は、正極活物質層12の表面を形成していてもよい。第2層2は、別言すれば「下層」である。第2層2は、第1層1に比して、正極基材11側に配置されている。第2層2は、正極基材11の表面に接していてもよい。
【0039】
第1層1は第1正極活物質を含む。第2層2は第2正極活物質を含む。第1正極活物質は、体積基準で第1粒度分布を有する。第2正極活物質は、体積基準で第2粒度分布を有する。第1粒度分布は第2粒度分布と異なる。
【0040】
(粒度分布に関する用語)
本明細書の粒度分布において、「D10」は、粒子径が小さい方からの頻度の累積が10%になる粒子径と定義される。「D50」は、粒子径が小さい方からの頻度の累積が50%になる粒子径と定義される。「D90」は、粒子径が小さい方からの頻度の累積が90%になる粒子径と定義される。「ピーク」は、頻度曲線の微分値が0(ゼロ)であり、かつ変曲点でない点を含み、かつベースラインから突出した領域を示す。「ピークトップ」はピークの頂点を示す。
【0041】
(第1粒度分布)
図4は、第1粒度分布の説明図である。
第1粒度分布は体積基準の頻度分布である。第1粒度分布は単峰性である。すなわち第1粒度分布は実質的に1個のピークからなる。第1粒度分布において、複数のピークが検出された場合、最高ピークの高さに対して1/20以下の高さを有するピークは、ピークの個数に含まれない。D90に対するD10の比(D10/D90)は0.18から0.52である。
【0042】
D10/D90は分布幅を反映していると考えられる。D10/D90が大きい程、分布幅が狭いことを示す。第1粒度分布が単峰性であり、かつ分布幅が適度に狭いことにより、粒子間の隙間が埋まり難くなり得る。その結果、上層の空隙率が上昇し、液浸透性の向上が期待される。D10/D90は、例えば0.20以上であってもよいし、0.33以上であってもよい。D10/D90は、例えば0.50以下であってもよいし、0.41以下であってもよい。
【0043】
第1粒度分布は、例えば2μmから8μmのD50を有していてもよい。第1粒度分布のD50が2μmから8μmであることにより、例えば充填性と液浸透性とのバランスが良化することが期待される。第1粒度分布は、例えば2.8μmから7.5μmのD50を有していてもよい。第1粒度分布は、例えば6.1μmから7.5μmのD50を有していてもよい。第1粒度分布は、例えば2.8μmから6.4μmのD50を有していてもよい。
【0044】
第1粒度分布は、例えば0.1μmから3μmのD10を有していてもよい。第1粒度分布は、例えば0.5μmから2μmのD10を有していてもよい。第1粒度分布は、例えば5μmから12μmのD90を有していてもよい。第1粒度分布は、例えば7.5μmから10μmのD90を有していてもよい。
【0045】
(第2粒度分布)
図5は、第2粒度分布の説明図である。
第2粒度分布は体積基準の頻度分布である。第2粒度分布は多峰性である。すなわち第2粒度分布は2個以上のピークを含む。第2粒度分布が多峰性であることにより、正極活物質層12全体として、充填性の向上が期待される。第2粒度分布は、例えば2個から5個のピークを含んでいてもよい。第2粒度分布は、例えば2個から3個のピークを含んでいてもよい。第2粒度分布は、例えば実質的に2個のピークからなっていてもよい。第2粒度分布が実質的に2個のピークからなることにより、充填性の向上が期待される。
【0046】
第2粒度分布は、第1ピークp1と第2ピークp2とを含む。第1ピークp1は、最も小粒子径側に位置している。第2ピークp2は、最も大粒子径側に位置している。第1ピークp1は、小粒子により形成されている。第2ピークp2は、大粒子により形成されている。小粒子は、大粒子に比して相対的に小さい粒子径を有する。例えば、第2粒度分布において、最高ピークが第1ピークp1であってもよい。2番目の高さを有するピークが第1ピークp1であってもよい。最高ピークが第2ピークp2であってもよい。2番目の高さを有するピークが第2ピークp2であってもよい。
【0047】
第2正極活物質は、例えば小粒子と大粒子とが混合されることにより調製され得る。すなわち第2正極活物質は、小粒子と大粒子との混合物を含んでいてもよい。小粒子のD50は、第1ピークp1のピークトップ位置における粒子径d1と近い値であると考えられる。小粒子のD50は、粒子径d1と実質的に等しくてもよい。大粒子のD50は、第2ピークp2のピークトップ位置における粒子径d2と近い値であると考えられる。大粒子のD50は、粒子径d2と実質的に等しくてもよい。
【0048】
大小粒子径比(d1/d2)は、例えば0.1から0.5であってもよい。d1/d2が0.1から0.5であることにより、例えば充填性の向上が期待される。d1/d2は、例えば0.2から0.4であってもよいし、0.2から0.3であってもよい。
【0049】
粒子径d1は、例えば2μmから6μmであってもよい。粒子径d2は、例えば12μmから20μmであってもよい。
【0050】
小粒子と大粒子との混合比は、例えば「小粒子/大粒子=1/4~4/1(質量比)」であってもよい。第2ピークp2の高さh2に対する、第1ピークp1の高さh1の比(h1/h2)は、混合比を反映していると考えられる。h1/h2は、例えば0.2から5.0であってもよい。これにより、例えば充填性の向上が期待される。
【0051】
第2ピークp2の面積S2に対する、第1ピークp1の面積S1の比(S1/S2)は、混合比を反映していると考えられる。S1/S2は、例えば0.2から5.0であってもよい。これにより、例えば充填性の向上が期待される。
【0052】
(粒度分布の測定方法)
第1粒度分布および第2粒度分布は、次の手順で測定される。例えば粘着テープ等により、第1層1の構成材料と、第2層2の構成材料とが別々に回収される。粘着テープは、例えばカプトンテープ等であってもよい。第1層1の構成材料が分散媒に分散されることにより、粒子分散液が調製される。例えば超音波分散機等が使用されてもよい。分散媒は、バインダを溶解し得る液体である。分散媒は、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等であってもよい。粒子分散液が乾燥されることにより、乾燥粉体が調製される。乾燥粉体が焼成されることにより、導電材等が実質的に除去され得る。焼成温度は、例えば200℃から300℃であってもよい。これにより粉体試料が調製される。粉体試料は、実質的に第1正極活物質からなると考えられる。約1gの水に粉末試料が分散されることにより、測定試料が調製される。測定試料がレーザ回折式粒度分布測定装置に導入されることにより、第1粒度分布が測定される。例えばマイクロトラック・ベル社製のレーザ回折式粒度分布測定装置「製品名 MT3000II」等が使用されてもよい。同装置と同等の機能を有するレーザ回折式粒度分布測定装置が使用されてもよい。第1正極活物質の第1粒度分布と同様に、第2正極活物質の第2粒度分布も測定され得る。
【0053】
(粒子形態)
第1正極活物質および第2正極活物質(以下「第1、第2正極活物質」と略記され得る。)は、任意の粒子形態を有し得る。第1正極活物質は、例えば凝集粒子を含んでいてもよい。第1正極活物質は、例えば単粒子を含んでいてもよい。第1正極活物質は、例えば実質的に単粒子からなっていてもよい。単粒子は、凝集粒子に比して割れにくい傾向がある。粒界が少ないためと考えられる。第1正極活物質が、割れにくい単粒子を含むことにより、第1層1の空隙率が上昇する傾向がある。これにより、例えば電解液の浸透経路が増加することが期待される。
【0054】
第2正極活物質は、例えば単粒子を含んでいてもよい。第2正極活物質は、例えば凝集粒子を含んでいてもよい。第2正極活物質は、例えば単粒子と凝集粒子との混合物を含んでいてもよい。第2正極活物質は、例えば、実質的に単粒子と凝集粒子との混合物からなっていてもよい。第2正極活物質が、単粒子と凝集粒子との混合物から構成されることにより、例えば充填性の向上が期待される。例えば、小粒子は単粒子を含んでいてもよい。例えば、大粒子は凝集粒子を含んでいてもよい。
【0055】
(単粒子)
図6は、単粒子および凝集粒子の概念図である。
単粒子scは、相対的に大きく成長した一次粒子である。単粒子scは「単結晶」とも称され得る。単粒子scは、粒子のSEM(Scanning Electron Microscope)画像において、外観上、粒界が確認できない粒子を示す。単粒子scは任意の形状を有し得る。単粒子scは、例えば、球状、柱状、塊状等であってもよい。例えば単粒子scは単独で存在していてもよい。例えば2個から10個の単粒子scが凝集することにより凝集体が形成されていてもよい。
【0056】
単粒子scは第1最大径を有する。「第1最大径」は、単粒子scの輪郭線上の最も離れた2点間の距離を示す。本明細書において「粒子の輪郭線」は、粒子の二次元投影像において確認されてもよいし、粒子の断面像において確認されてもよい。粒子の輪郭線は、例えば、粉体のSEM画像において確認されてもよいし、粒子の断面SEM画像において確認されてもよい。単粒子scは、例えば0.5μm以上の第1最大径を有していてもよい。単粒子scは、例えば3μmから7μmの第1最大径を有していてもよい。第1最大径の平均値は、例えば3μmから7μmであってもよい。平均値は、100個以上の単粒子scの算術平均である。100個以上の単粒子scは無作為に抽出される。
【0057】
(凝集粒子)
凝集粒子mcは、50個以上の一次粒子(単結晶)が凝集することにより形成されている。凝集粒子mcは「多結晶」とも称され得る。
【0058】
凝集粒子mcに含まれる一次粒子の個数は、凝集粒子mcのSEM画像において測定される。SEM画像の拡大倍率は、例えば10000倍から30000倍であってもよい。凝集粒子mcは、例えば100個以上の一次粒子が凝集することにより形成されていてもよい。凝集粒子mcにおいて一次粒子の個数に上限はない。凝集粒子mcは、例えば10000個以下の一次粒子が凝集することにより形成されていてもよい。凝集粒子mcは、例えば1000個以下の一次粒子が凝集することにより形成されていてもよい。一次粒子は任意の形状を有し得る。一次粒子は、例えば、球状、柱状、塊状等であってもよい。
【0059】
なお、凝集粒子mcのSEM画像においては、例えば、2個の一次粒子が重なっている場合、奥側の一次粒子が確認されない可能性もある。しかし本明細書においては、SEM画像で確認できる一次粒子の個数が、凝集粒子mcに含まれる一次粒子の個数とみなされる。
【0060】
凝集粒子mcにおいて「一次粒子」は、粒子のSEM画像において、外観上、粒界が確認できない粒子を示す。一次粒子は第2最大径を有する。「第2最大径」は、一次粒子の輪郭線上の最も離れた2点間の距離を示す。一次粒子の第2最大径は、例えば、単粒子scの第1最大径に比して小さくてもよい。一次粒子は、例えば0.5μm未満の第2最大径を有していてもよい。一次粒子は、例えば0.05μmから0.2μmの第2最大径を有していてもよい。1個の凝集粒子mcのSEM画像から無作為に抽出された10個以上の一次粒子が0.05μmから0.2μmの第2最大径を有する時、該凝集粒子mcに含まれる一次粒子の全てが0.05μmから0.2μmの第2最大径を有するとみなされ得る。一次粒子は、例えば0.1μmから0.2μmの第2最大径を有していてもよい。第2最大径の平均値は、例えば0.1μmから0.2μmであってもよい。平均値は、100個以上の一次粒子の算術平均である。100個以上の一次粒子は無作為に抽出される。
【0061】
(化学組成)
第1正極活物質は、第2正極活物質と実質的に同一の化学組成を有していてもよい。第1正極活物質は、第2正極活物質と異なる化学組成を有していてもよい。第1、第2正極活物質は、それぞれ独立に、例えば、層状金属酸化物を含んでいてもよい。層状金属酸化物は、例えば下記式(1)により表されてもよい。
【0062】
Li1-aNixMe1-xO2 (1)
【0063】
上記式(1)中、「a」は、-0.3≦a≦0.3の関係を満たす。「x」は、0.5≦x≦1.0の関係を満たす。「Me」は、Co、Mn、Al、Zr、B、Mg、Fe、Cu、Zn、Sn、Na、K、Ba、Sr、Ca、W、Mo、Nb、Ti、Si、V、CrおよびGeからなる群より選択される少なくとも1種を示す。
【0064】
第1、第2正極活物質は、それぞれ独立に、例えば、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.7Co0.2Mn0.1O2、LiNi0.7Co0.1Mn0.2O2、LiNi0.6Co0.3Mn0.1O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.6Co0.1Mn0.3O2、LiNi0.5Co0.3Mn0.2O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.5Co0.1Mn0.4O2、およびLiNi0.5Co0.4Mn0.1O2からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0065】
第1、第2正極活物質は、それぞれ独立に、例えば、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.7Co0.2Mn0.1O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、およびLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0066】
例えば、正極活物質層12が単粒子scおよび凝集粒子mcを含む時、単粒子scは凝集粒子mcと実質的に同一の化学組成を有していてもよい。単粒子scは凝集粒子mcと異なる化学組成を有していてもよい。例えば、単粒子scのNi含量は、凝集粒子mcのNi含量に比して高くてもよい。Ni含量は、例えば上記式(1)の「x」であり得る。
【0067】
(厚さ比)
厚さ比(T1/T2)は、第2層2の厚さT2に対する第1層1の厚さT1の比である。T1/T2は、例えば0.1から0.5であってもよい。T1/T2が0.1から0.5であることにより、例えば充填性と液浸透性とのバランスが良化することが期待される。T1/T2は、例えば0.2から0.4であってもよい。各層の厚さ(T1、T2)は、正極活物質層12の断面SEM画像において測定される。観察面は、正極活物質層12の厚さ方向と平行であり得る。各層の厚さは、それぞれ5箇所以上で測定される。5箇所以上の厚さの算術平均が採用される。
【0068】
《負極》
負極20は、例えば負極基材21と負極活物質層22とを含んでいてもよい。負極基材21は導電性シートである。負極基材21は、例えばCu合金箔等であってもよい。負極基材21は、例えば5μmから30μmの厚さを有していてもよい。負極活物質層22は、負極基材21の表面に配置されていてもよい。負極活物質層22は、例えば負極基材21の片面のみに配置されていてもよい。負極活物質層22は、例えば負極基材21の表裏両面に配置されていてもよい。負極20の幅方向(
図2のX軸方向)において、一方の端部に負極基材21が露出していてもよい。負極基材21が露出した部分には、負極集電部材72が接合され得る。
【0069】
負極活物質層22は、例えば10μmから200μmの厚さを有していてもよい。負極活物質層22は負極活物質を含む。負極活物質は任意の成分を含み得る。負極活物質は、例えば黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、珪素、酸化珪素、珪素基合金、錫、酸化錫、錫基合金、およびリチウムチタン複合酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0070】
負極活物質層22は負極活物質に加えて、例えばバインダ等をさらに含んでいてもよい。負極活物質層22は、例えば質量分率で、95%から99.5%の負極活物質と、残部のバインダとを含んでいてもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)およびスチレンブタジエンゴム(SBR)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0071】
《セパレータ》
セパレータ30の少なくとも一部は、正極10と負極20との間に介在している。セパレータ30は、正極10と負極20とを分離している。セパレータ30は、例えば10μmから30μmの厚さを有していてもよい。
【0072】
セパレータ30は多孔質シートである。セパレータ30は電解液を透過する。セパレータ30は、例えば100s/100mLから400s/100mLの透気度を有していてもよい。本明細書における「透気度」は、「JIS P 8117:2009」に規定される「透気抵抗度(Air Resistance)」を示す。透気度はガーレー試験法により測定され得る。
【0073】
セパレータ30は電気絶縁性である。セパレータ30は、例えばポリオレフィン系樹脂等を含んでいてもよい。セパレータ30は、例えば、実質的にポリオレフィン系樹脂からなっていてもよい。ポリオレフィン系樹脂は、例えばポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。セパレータ30は、例えば単層構造を有していてもよい。セパレータ30は、例えば、実質的にPE層からなっていてもよい。セパレータ30は、例えば多層構造を有していてもよい。セパレータ30は、例えばPP層とPE層とPP層とがこの順に積層されることにより形成されていてもよい。セパレータ30の表面に、例えば耐熱層等が形成されていてもよい。
【0074】
《電解液》
電解液は溶媒と支持電解質とを含む。溶媒は非プロトン性である。溶媒は任意の成分を含み得る。溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、メチルホルメート(MF)、メチルアセテート(MA)、メチルプロピオネート(MP)、およびγ-ブチロラクトン(GBL)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0075】
支持電解質は溶媒に溶解している。支持電解質は、例えば、LiPF6、LiBF4、およびLiN(FSO2)2からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。支持電解質は、例えば0.5mоl/Lから2.0mоl/Lのモル濃度を有していてもよい。支持電解質は、例えば0.8mоl/Lから1.2mоl/Lのモル濃度を有していてもよい。
【0076】
電解液は、溶媒および支持電解質に加えて、任意の添加剤をさらに含んでいてもよい。例えば電解液は、質量分率で、0.01%から5%の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、フルオロスルホン酸リチウム(FSO3Li)、およびリチウムビスオキサラトボラート(LiBOB)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【実施例】
【0077】
以下、本技術の実施例(本明細書においては「本実施例」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は、本技術の範囲を限定しない。
【0078】
<正極の製造>
以下の手順でNo.1からNo.13に係る正極が製造された。
【0079】
《No.1》
下記材料が準備された。
第1正極活物質:LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(D50:6.1μm)
第2正極活物質:小粒子 LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(D50:9.3μm)
大粒子 LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(D50:15.6μm)
導電材:黒鉛
バインダ:PVdF(粉体)
分散媒:NMP
正極基材:Al箔
【0080】
100質量部の第1正極活物質と、1質量部の導電材と、0.9質量部のバインダと、所定量の分散媒とが混合されることにより、第1スラリーが調製された。
【0081】
100質量部の第2正極活物質と、1質量部の導電材と、0.9質量部のバインダと、所定量の分散媒とが混合されることにより、第2スラリーが調製された。第2正極活物質の配合(小粒子と大粒子との混合比)は、「小粒子/大粒子=1/1(質量比)」であった。
【0082】
正極基材の表面に第1スラリーが塗布され、乾燥されることにより、第1層が形成された。第1層上に第2スラリーが塗布され、乾燥されることにより、第2層が形成された。厚さ比(T1/T2)は0.25であった。以上より正極活物質層(片面)が形成された。同様に、正極基材の裏面にも正極活物質層が形成されることにより、正極が製造された。
【0083】
《No.2からNo.13》
第1層および第2層の粒度分布が変更されることを除いては、No.1と同様に正極が製造された(下記表1参照)。
【0084】
<評価>
《充填性》
圧延機により正極が圧縮された。圧縮後の正極は、圧縮前の正極に比して、md(machine direction)寸法が1%増加していた。なお、厚さ比(T1/T2)は、圧縮の前後で実質的に変化していないと考えられる。圧縮後の正極から、所定面積の試料片が切り出された。マイクロメータにより試料片の厚さが測定された。試料片の厚さから、正極基材の厚さが減算されることにより、正極活物質層の厚さが求められた。試料片の面積と、正極活物質層の厚さとの乗算により、正極活物質層の見かけ体積が求められた。試料片の質量が測定された。試料片の質量から、正極基材の質量が減算されることにより、正極活物質層の質量が求められた。正極活物質層の質量が、正極活物質層の見かけ体積で除算されることにより、正極活物質層の密度が求められた。
【0085】
《液浸透性》
圧縮後の正極から、試料片が切り出された。試料片は、5cm(幅)×20cm(長さ)の平面サイズを有していた。試料片の長手方向と鉛直方向とが平行になるように、試料片が吊り下げられた。試料片において鉛直方向の先端から3cmまでの範囲が、電解液に浸漬された。電解液が浸透した部分では、試料片の表面色に変化がみられた。試料片の表面色の変化から、電解液の浸透距離が推定された。単位時間当たりの電解液の浸透距離として、含液速度が求められた。
【0086】
【0087】
<結果>
本実施例においては、上記表1の充填性(密度)が3.35g/cm3以上であり、かつ液浸透性(含液速度)が1cm/h以上である時、正極密度の上昇に伴う、液浸透性の低下が軽減されているとみなされる。
【0088】
上記表1において、下記条件が満たされる試料においては、正極密度の上昇に伴う、液浸透性の低下が軽減される傾向がみられる(No.1からNo.3、No.8からNo.13)。
・正極活物質層が多層構造である。
・第1粒度分布のピーク個数が1個である。
・第1粒度分布においてD10/D90が0.18から0.52である。
・第2粒度分布のピーク個数が2個以上である。
【0089】
図7は、正極活物質層の密度および含液速度と、厚さ比との関係を示すグラフである。
厚さ比(T1/T2)が0.1から0.5である範囲において、正極活物質層の密度と含液速度とのバランスが良好である傾向がみられる。
【0090】
本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。本技術の範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
【符号の説明】
【0091】
1 第1層、2 第2層、10 正極、11 正極基材、12 正極活物質層、20 負極、21 負極基材、22 負極活物質層、30 セパレータ、50 電極体、71 正極集電部材、72 負極集電部材、81 正極端子、82 負極端子、90 外装体、91 封口板、92 外装缶、100 電池(非水電解質二次電池)、T1,T2 厚さ、d1,d2 粒子径、h1,h2 高さ、p1,p2 ピーク、sc 単粒子、mc 凝集粒子。