(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】細胞分泌物の分析のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20240110BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240110BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240110BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240110BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240110BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240110BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12M1/00 A
C12Q1/686 Z
C12N15/13 ZNA
C12P21/08
C12Q1/6869 Z
(21)【出願番号】P 2021187332
(22)【出願日】2021-11-17
(62)【分割の表示】P 2018548883の分割
【原出願日】2017-03-17
【審査請求日】2021-11-17
(32)【優先日】2016-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】300066874
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・ブリティッシュ・コロンビア
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,カール ラース ジンギス
(72)【発明者】
【氏名】リサインゴ,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】リカルト,ヴェロニク
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/153651(WO,A1)
【文献】特表2019-508059(JP,A)
【文献】Lab Chip,2010年,Vol.10, No.11,pp.1391-1400
【文献】The Journal of Neuroscience,2016年02月03日,Vol.36, No.5,pp.1730-1746
【文献】Integrative biology,2014年,Vol.6, No.4,pp.388-398
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12M 1/00- 3/10
C12N 15/00- 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
Google
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外効果をもたらす1つ以上の抗体を同定する方法であって、
それぞれ0.6以上の平均アスペクト比(チャンバーの高さ:最小横寸法)を有する複数の異なるオープンチャンバー内に、それぞれ10~100個の細胞を含む複数の細胞集団を保持するステップにおいて、
前記複数の異なるオープンチャンバーが、マイクロ流体装置の第1の構成要素に存在し、
前記第1の構成要素が、前記マイクロ流体装置の第2の構成要素と共に可逆的なシールを形成するように構成されており、
前記複数の細胞集団のうちの少なくとも1つの個々の細胞集団が、1つ以上の抗体分泌細胞(ASC)を含み、
前記複数の異なるオープンチャンバーのうちの前記個々のオープンチャンバー又はそのサブセットが、1つ以上の読み出し粒子を含む読み出し粒子集団をさらに含む、ステップ、
前記チャンバーの内容物をインキュベートするステップ、
複数のチャンバー又はそのサブセットを、前記1つ以上のASCによって分泌された1つ以上の抗体に起因する細胞外効果の存在についてアッセイするステップにおいて、前記読み出し粒子集団又はその亜集団が、前記細胞外効果の直接的又は間接的な読み出しを提供する、ステップ、
前記細胞外効果を示す、前記複数のチャンバーの1つ以上からの細胞
集団を溶解して溶解細胞亜集団を提供するステップ、
前記溶解細胞亜集団のそれぞれの内の1つ以上の核酸を増幅するステップ、
増幅された前記1つ以上の核酸を配列決定し、1つ以上の抗体遺伝子をコードする1つ以上の核酸を同定するステップ、
前記1つ以上の抗体遺伝子をコードする前記1つ以上の核酸を発現して1つ以上の組換え抗体を作製するステップ、
1つ以上の読み出し粒子を含む読み出し粒子集団と共に、前記マイクロ流体装置で前記1つ以上の組換え抗体をインキュベートするステップ、
前記マイクロ流体装置を、前記1つ以上の抗体に起因する前記細胞外効果の存在についてアッセイするステップ、及び
前記アッセイするステップの結果に基づいて、前記1つ以上の抗体が前記細胞外効果をもたらすか否かを決定するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記読み出し粒子集団のうちの1つ以上が、1つ以上の読み出しビーズ、1つ以上の読み出し細胞、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記読み出し粒子集団のうちの1つ以上が、抗原又はエピトープで官能化されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記読み出し粒子集団のうちの1つ以上が、抗体結合部分で官能化されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体結合部分が、プロテインA、プロテインA/G、プロテインG、免疫グロブリンに結合するモノクローナル抗体、免疫グロブリンに結合するモノクローナル抗体断片、免疫グロブリンに結合するポリクローナル抗体、免疫グロブリンに結合するポリクローナル抗体断片、又はこれらの組み合わせである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞外効果が、前記1つ以上のASC又はそのサブセットによって分泌される抗体と前記読み出し粒子集団又はその亜集団との間の結合相互作用である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記結合相互作用が、抗原-抗体結合特異性相互作用、抗原-抗体結合親和性相互作用、又は抗原-抗体結合動力学相互作用である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞外効果が、アポトーシスの調節、細胞増殖の調節、読み出し粒子の形態学的外観の変化、読み出し粒子内のタンパク質の局在の変化、読み出し粒子によるタンパク質の発現、前記ASCによって誘導された読み出し細胞の細胞溶解、前記ASCによって誘導された前記読み出し細胞の細胞アポトーシス、読み出し細胞の壊死、抗体の内在化、前記ASCによる酵素中和、可溶性シグナル伝達分子の中和、又はこれらの組み合わせである、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記増幅するステップが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、cDNA末端の5’の迅速速増幅(RACE)、インビトロ転写、又は全トランスクリプトーム増幅(WTA)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記PCRが、逆転写酵素(RT)-PCR又は縮重オリゴヌクレオチドプライムPCRである、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年3月17日に出願された米国仮特許出願第62/309,663号明細書の優先権を主張するものであり、この開示は、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
細胞は、生命の基本単位であり、2つとして同じ細胞が存在しない。実際、一見同一の細胞のクローン集団は、集団内の細胞間で表現型の相違を示すことが知られている。細菌細胞から部分的に分化した細胞(例えば、成体幹細胞及び前駆細胞)から高度に分化した哺乳動物細胞(例えば、抗体分泌細胞(ASC)などの免疫細胞)に至るまでの細胞の差異が、生命の全てのレベルで存在する。細胞の状態、機能、及び応答における差異は、特に、異なる過程、異なる分化状態、エピジェネティックな変化、細胞周期効果、確率的変動、ゲノム配列の差異、遺伝子発現、タンパク質発現、及び異なる細胞の相互作用効果を含む様々なメカニズムから生じ得る。従って、単一細胞の特性をアッセイするための高感度ツールの進展に大きい関心がある。
【0003】
多くの細胞型は、生物学的機能を有するタンパク質を分泌する。例えば、異なる免疫細胞は、細胞シグナル伝達を介して作用する増殖因子、免疫の活性化又は抑制を促進するサイトカイン、及びウイルス、細菌、細胞、タンパク質、グリカン、又は他の外来攻撃を含む病原体を特異的に認識する抗体を含む様々な因子を分泌する。抗体はまた、抗癌応答又は自己免疫状態の一部として、非外来抗原(自己抗原(self-antigen)又は自己抗原(autoantigen))を認識し得る。このように、細胞によって分泌されるタンパク質の量及び/又は細胞によって分泌されるタンパク質の特性(例えば、配列、結合パートナー)を測定する能力は非常に重要である。このような測定は、この測定を使用して同じ環境又は集団内の他の細胞と比較して任意の所与の細胞によって分泌されるタンパク質の特性における差異を確認できるように、理想的には個々の細胞に対して行われる。例えば、単一又は少数のASCによって分泌される抗体の分析は、同じ分析がバルク集団で行われた場合に利用できない個々の細胞に関する情報(例えば、抗体結合性、機能的役割)を提供することができる。
【0004】
有顎脊椎動物の適応免疫系は、多種多様な抗体を産生することができる。この多様性は、様々な機序によって生み出され、このような機序には、最終的にユニークな抗体として発現される重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子において遺伝的にコードされた多様性を生み出すための可変領域遺伝子のコンビナトリアル組換えが含まれる。ヒトでは、この遺伝子組換えは、B細胞の発生中に起こり、一個体において数十億の異なる抗体を産生し得る。曝露後、曝露を認識する抗体を発現するB細胞が活性化されて増殖し、クローン関連B細胞が産生される。この増殖の間、体細胞超変異及び選択により、集団におけるいくつかの抗体の親和性が改善される。このプロセスの結果、多くの異なる抗体を発現する多様なB細胞のセットが産生される。これらのB細胞は、培地に抗体を分泌し続ける形質細胞、又は膜結合抗体を発現する記憶B細胞に成熟する。改善された特性、例えば、親和性、機能的活性を有する抗体を集団において同定するためには、個々の抗体、従ってASCを個々の細胞として研究されるべきである。
【0005】
特定の標的に結合する抗体を効率的に同定する能力、及び/又は特定の機能的役割は、研究、診断、及び治療開発に使用される抗体の作製にとって非常に重要である。最適な治療特性を有する抗体、特に表面受容体を標的とする抗体の発見は、薬物開発において深刻なボトルネックのままである。免疫に応答して、動物は、何百万もの異なるモノクローナル抗体(mAb)を産生し得る。各mAbは、抗体分泌細胞(ASC)と呼ばれる単一細胞によって産生され、各ASCは、1種類のmAbのみを産生する。従って、例えば、薬剤発見を目的とする抗体分析は、単一細胞分析に役立つ。しかしながら、たとえASCが個々に分析され、バルク集団の細胞内ではない場合であっても、単一ASCは、極少量の抗体しか産生しないため、多くの従来のアッセイ形式で分析される場合は、抗体は希薄すぎて完全に検出不能である。
【0006】
単一細胞分析法は、新規な抗体を同定する速度、スループット、及び効率を高めるためのアプローチを提供する。単一細胞抗体を特徴付ける方法における共通のテーマは、少量の閉じ込めを用いてアッセイ感度を高めることである。目的の細胞が同定されたら、これらの細胞は、これらの抗体遺伝子の配列決定を含むその後の分析、及び/又は後の実験で使用することができるより大量の抗体の発現のために回収される。単一細胞からの抗体のスクリーニング及び選択のための小型形式の例としては、プレートベースの方法(Czerkinsky et al.(1983).Journal of Immunological Methods 65(1-2),pp.109-121;Leslie et al.(1996).Faseb Journal 10(6),pp.346-346),microfluidic devices(Koster et al.(2008).Lab on a Chip 8(7),pp.1110-1115;Mazutis et al.(2013).Nature Protocols 8(5),pp.870-891;Singhal et al.(2010).Analytical Chemistry 82(20),pp.8671-8679),microprinting(Loveet et al.(2006).Nature Biotechnology 24(6),pp.703-707),and open microwell arrays(Jin et al.(2011).Nature Protocols 6(5),pp.668-676;Wrammert et al.(2008).Nature 453(7195),pp.667-U10)が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
単一ASC分析のための技術は存在するが、これらの技術には、依然として、低いスループット、感度、及び行うことができる特徴付けの種類に問題がある。本発明は、単一抗体分泌細胞の分析を実施するためのよりロバストな装置、機器、及びアッセイの分野における要望に対応する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一態様では、単一エフェクター細胞に起因する細胞外効果の分析のためのプラットフォームに関する。エフェクター細胞は、一実施形態では、生物学的因子、例えば、抗体を分泌する細胞(ASC)である。細胞外効果は、一実施形態では、細胞増殖、成長の低下、アポトーシス、溶解、分化、感染、結合(例えば、細胞表面受容体又はエピトープへの結合)、形態変化、シグナル伝達カスケードの誘導又は阻害、酵素阻害、ウイルス阻害、サイトカイン阻害、又は補体の活性化である。プラットフォームは、一実施形態では、オープンマイクロチャンバーを有する第1の構成要素、及び第2の構成要素を備える2構成要素マイクロ流体装置である。一実施形態における装置は、
図4~
図8のうちの1つに示されている装置である。
【0009】
一態様では、細胞外効果を示すエフェクター細胞を含む細胞集団を同定するための方法が提供される。この態様の一実施形態では、1つ以上の細胞集団が、第1の構成要素及び第2の構成要素を有する2構成要素マイクロ流体装置、又はオープンマイクロチャンバーを有する1構成要素装置内で分析される。この方法は、それぞれ任意選択により1つ以上のエフェクター細胞を含む、個々の細胞集団を、マイクロ流体装置の第1の構成要素に配置された複数の異なるチャンバー内に保持するステップを含み、個々の細胞集団は、個々のチャンバー内に保持される。各チャンバーは、約0.6以上、例えば、0.7以上、1以上、又は1以上であるが、約10以下のアスペクト比(最小横寸法に対する高さとして定義される)を有する。あるいは、装置の各チャンバーの平均アスペクト比は、約0.6以上、例えば、0.7以上、1以上、又は1以上であるが、約10以下である。複数のオープンチャンバーのうちの1つ以上のオープンチャンバーの内容物は、1つ以上の読み出し粒子(readout particle)を含む読み出し粒子集団をさらに含む。マイクロ流体装置の第2の構成要素は、第1の構成要素と接触すると、2つの構成要素間に可逆的シール又は可逆的部分シールを形成する。第1の構成要素及び第2の構成要素のいずれか又は両方の接触面は、微小構造、例えば、チャネル構造又はチャンバー構造を備えることができ、このようなシールが形成されると、装置の第1の構成要素の1つ以上のオープンチャンバーが閉じられ得る、又は実質的に閉じられ得る。さらに、2つ以上のオープンチャンバーは、第2の構成要素が第1の構成要素に接触すると、例えば、チャネル構造が第2の構成要素に存在する場合は相互接続され得る。この方法は、複数の細胞集団又はそのサブセット、及び1つ以上の読み出し粒子又はそのサブセットを1つ又は複数のオープンチャンバー内でインキュベートするステップ、複数の細胞集団又はそのサブセットを細胞外効果の存在についてアッセイするステップであって、読み出し粒子集団又はその亜集団が、細胞外効果の直接的又は間接的な読み出しを提供するステップ、並びにアッセイのステップの結果に基づいて、複数の細胞集団のうちの1つ以上の細胞集団内の1つ以上のエフェクター細胞が細胞外効果を示すか否かを決定するステップをさらに含む。
【0010】
一実施形態では、エフェクター細胞は、生物学的因子、例えば、抗体を分泌する細胞である。細胞外効果の存在が特定のチャンバー内で検出される限り、細胞外効果を示す特定の1つ又は複数のエフェクター細胞を最初に同定する必要はない。すなわち、細胞外効果を示す特定の細胞を同定するためにさらなる特徴付けが望まれる場合は、効果が測定されたチャンバー内のいくつか又は全ての細胞を、必要に応じて回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、単一エフェクター細胞の同定及び選択のための一実施形態のプロセスフロー図である。単一細胞は、任意の動物又は培養中の細胞の集団から得られ、任意選択によりエフェクター細胞集団が濃縮される。2構成要素マイクロ流体装置を用いるハイスループットマイクロ流体分析を使用して、単一エフェクター細胞から分泌される抗体、場合によっては異種細胞集団に存在する抗体の機能スクリーニングを行う。1回又は複数回の分析の後、細胞を回収して、抗体可変領域遺伝子を、配列決定(Vh/V1)及び/又は細胞株へのクローニングのために増幅する。このプロセスは、約100,000~約100,000,000個の細胞のスクリーニングを単一装置で行うことを可能にし、1週間後に配列が回復される。
【
図2】
図2は、マイクロ流体エフェクター細胞の濃縮方法の一実施形態のプロセスフロー図である。エフェクター細胞を、まずチャンバー当たり平均25個の細胞の濃度で添加してインキュベートし、抗体のポリクローナル混合物を調製する。アッセイされた細胞を培養するステップを用いて又は用いずに調製されたポリクローナル混合物のスクリーニングを使用して、細胞外効果(例えば、結合性、親和性、又は機能的活性)を示すチャンバーを同定する。次いで、40個の陽性チャンバーを回収して、目的の抗体を産生するエフェクター細胞を約4%含む濃縮集団を得る。濃縮集団のエフェクター細胞を、限界希釈法で第2のアレイで分析して細胞外効果を示す単一ASCを選択する。濃縮に要する時間は、約4時間であり、全スクリーニングスループットは、1回当たり約100,000~100,000,000個の細胞である。濃縮プロセスは、必要に応じて2回実施することができ、かつ各スクリーンで同じ又は異なる特性を使用することができる。
【
図3】
図3は、ヒト、ウサギ、マウス、及びラット全てのPDGFRαの細胞外ドメインのアラインメントである。(上)PDGFBBの二量体と複合体化した2つのPDGFRβの細胞外ドメイン(ECD)の構造を示すリボンダイアグラム(参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、Shim et al.(2010).Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.107,pp.11307-11312から)。PDGFRαと同様の構造が予想されるが利用できなかったため、PDGFRβが示されていることに留意されたい。(下)ヒト、マウス、ウサギ、ラット全てのPDGFRαのECDのアラインメント。ヒトアイソフォームからの変異の領域は、より明るい陰影及び「*」で示されている。実質的な変異は、抗体認識に利用可能な多数のエピトープが存在することを示し、ウサギは、ヒトから最も異なっている。
【
図4】
図4は、本明細書で提供される1つの装置の実施形態400の断面の概略図である。この装置は、本明細書では、多層上部を備えた分割装置又は多構成要素装置と呼ばれる。上部構成要素401は、プッシュダウン弁構造404及びオープンチャネル405を備える。底部構成要素402は、オープンチャンバー403を備える。
【
図5】
図5は、装置の実施形態500及び500’の断面図である。
【
図6】
図6は、移動可能な単一層上部構成要素601を備える2構成要素装置の実施形態600の断面の概略図である。上の概略図は、装置の底部構成要素のチャンバーへの流れが閉ざされていない装置の断面図である。下の概略図は、上部構成要素の移動によって密閉されたチャンバーを示している。
【
図7】
図7は、本明細書で提供される1つの装置の実施形態700の断面の概略図である。この装置は、本明細書では、単層非パターン上部を備える分割装置又は多構成要素装置と呼ばれる。
【
図8】
図8は、本明細書で提供される1つの装置の実施形態の断面の概略図である。この装置は、イメージングのために容量が押し出されるオープンチャンバーアレイを備える。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態によるマイクロ流体チャンバーの概略図であり、チャンバー内に粒子を配置するための磁場の使用を例示している。
【
図10】
図10は、テンプレートスイッチングを用いた単一細胞HV/LVアプローチの概略図である。単一細胞を微量遠心管に入れ、重鎖及び軽鎖の定常領域を標的とする多重化遺伝子特異的プライマーからcDNAを作製する。MMLV酵素のテンプレートスイッチング活性を使用して、テンプレート-スイッチングオリゴの逆相補鎖を得られたcDNAの3’末端に付加する。重鎖及び軽鎖の定常領域にアニーリングする多重化プライマー並びにコピーされたテンプレートスイッチングオリゴに相補的なユニバーサルプライマーを用いる半ネステッドPCRを使用して、cDNAを増幅し、各単一細胞アンプリコンに特異的なインデックス配列を導入する。次いで、アンプリコンをプールし、配列決定する。
【
図11】
図11は、一実施形態による、標的読み出し粒子を特異的に結合することができる生体分子を産生するエフェクター細胞を同定する方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図12】
図12は、悪性細胞には特異的に結合するが正常細胞には結合しない生体分子(例えば、抗体)を産生する少なくとも1つのエフェクター細胞を同定する方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図13】
図13は、読み出し細胞(readout cell)に結合する生体分子を産生するエフェクター細胞を同定する方法の一実施形態の上面図(右)及び断面図(左)を示し、エフェクター細胞の亜集団が官能化されて読み出し細胞としての役割を果たす。
【
図15】
図15は、一実施形態による、既知の生体分子が結合する標的エピトープ/分子をスクリーニングする方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図16】
図16は、一実施形態による、標的エピトープ/抗原に特異的に結合する抗体を産生するエフェクター細胞を同定する方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図17】
図17は、細胞溶解を定量化する方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図18】
図18は、一実施形態による、標的エピトープ/抗原に特異的に結合する抗体を産生するエフェクター細胞の存在を同定する方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図19】
図19は、細胞溶解を定量化する方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図20】
図20は、読み出し細胞の増殖を誘導する生体分子を産生するエフェクター細胞を同定する方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図21】
図21は、読み出し細胞を刺激してアポトーシスさせる生体分子を産生するエフェクター細胞の存在を同定する方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図22】
図22は、読み出しにおいて自食作用を刺激する生体分子を産生するエフェクター細胞を同定する方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図23】
図23は、サイトカインを中和する生体分子を産生するエフェクター細胞を同定する方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図24】
図24は、細胞のウイルス感染を抑制する生体分子を産生するエフェクター細胞を同定する方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図25】
図25は、本発明の一実施形態による、標的酵素の機能を阻害する生体分子を産生するエフェクター細胞の存在を同定する方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図26】
図26は、第2のタイプのエフェクター細胞を活性化し、これにより読み出し粒子に対して効果を有する分子を分泌させる分子を提示するエフェクター細胞を同定する方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図27】
図27は、第2のタイプのエフェクター細胞を活性化し、これにより読み出し粒子に対して効果を有する分子を分泌させる分子を分泌するエフェクター細胞を同定する方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図28】
図28は、同じ抗原に対する抗体であるが親和性が低い抗体を分泌する細胞を含む細胞の異種集団に存在する、高い親和性の抗体を分泌するエフェクター細胞を検出する方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図29】
図29は、異なるエピトープを提示する読み出し粒子が異なる光学特性によって識別可能である、本発明の一実施形態による、抗原に対する特異性が増加した抗体のスクリーニング方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図30】
図30は、(i)エフェクター細胞の同種又は異種集団における生体分子を分泌する細胞の同定、及び(ii)分子による影響を受ける1つ以上の細胞内化合物の分析を同時に行う方法の上面図(右)及び断面図(左)を示している。
【
図31】
図31は、本発明の一実施形態による機器の概略図である。この機器は、例えば、細胞外効果を有するエフェクター細胞を含む細胞集団を同定するための本明細書に記載の装置及び/又は方法の1つと共に使用することができる。
【
図32】
図32は、MSLによって製造された1構成要素多層マイクロ流体装置のチャネルを介して充填された後のTango(商標)CXCR4-bla U2OS細胞を示す一連の光学顕微鏡写真である。スケールバー:100μm。
【
図33】
図33は、2構成要素マイクロ流体装置の底部チャンバーに充填してから12時間後のTango(商標)CXCR4-bla U2OS細胞を示す一連の光学顕微鏡写真である。スケールバー:34μm。
【
図34】
図34の左は、100μm×100μm×150μm(深さ×幅×長さ)の寸法及び1.0のアスペクト比を有するフロースルーチャンバーから得られる流線である。流線は、チャンバーの底部に進入し、高い流速での粒子の移動及び/又は粒子の消失が起きている。
図34の右は、125μmの深さ、100μmの直径、及び1.25のアスペクト比を有する円筒形チャンバーを通る流れの流線である。流線は、チャンバーの下半分に再循環渦を示している。チャンバーは、縮尺通りには描かれていない。
【
図35】
図35は、免疫動物由来のASCを充填した後のマイクロ流体チャンバーの光学顕微鏡写真である(左パネル)。ASCは、親細胞株(陰性対照、左から3番目のパネル)と一緒に、CXCR4発現細胞と共インキュベートした。CXCR4に特異的な抗体が検出された(左から2番目のパネル)。CXCR4発現細胞株及び親細胞株の両方に結合するCXCR4に特異的でない抗体も検出され、分析から除外した(右パネル)。スケールバー:34μm。
【
図36】
図36は、3種類のインフルエンザ関連抗原:H1N1(10μmビーズ)、H3N2(5μmビーズ)、及びB系統(3μmビーズ)でコーティングされたマイクロビーズを示す光学顕微鏡写真である。ヒトB細胞を充填し、インキュベートして分泌された抗体が蓄積した後、異なるビーズのタイプに対する抗体の特異的抗体結合が、蛍光標識二次抗ヒト抗体の混合物を用いて検出され、異なる二次抗体は異なる色で標識され、それぞれが異なるアイソタイプ、IgG、IgA、及びIgMの検出に特異的である。ヒトIgGは、H1N1、H3N2、及びB系統抗原に特異的な抗体を分泌する、3種類の細胞について示されている。
【
図37】
図37は、多段階細胞外効果アッセイを用いた抗原特異的抗体の検出及び選択の実行可能性を示している。マイクロ流体チャンバーの光学顕微鏡写真が示されている。m4-1BB及びh4-1BBに特異的な抗体をプロービングした。Dylight-650で標識されたh4-1BBリガンドもチャンバー内でインキュベートして、標的特異的抗体の存在下でこのリガンドのその天然受容体への結合の潜在的な阻止を検出した。
【
図38】
図38は、蛍光標識二次抗体を用いた抗原特異的抗体の検出後のチャンバーのパネルを示している。ピクセル強度のヒストグラムは、ASCを含む中心チャンバー、並びに隣接する上部、底部、右、及び対角線(右上)チャンバーについて示される。ヒストグラムは、陽性ビーズシグナルから生じるピクセルを示すように標識され、中心チャンバーが、バックグラウンド蛍光よりも多くのピクセルを有し、これらのピクセルがより高い全強度を有することを示している。
【
図39】
図39は、生きた細菌(クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae))と共にインキュベートしたヒト試料から単離されたASCを示す光学顕微鏡写真である。IgG及びIgA結合の例は、ヒト扁桃腺及びヒト骨髄から実証される。
【
図40】
図40は、マイクロ流体装置の異なるマイクロチャンバーにおけるK562細胞の増殖を例示する一連の経時的画像を示している。スケールバー:100μm。
【
図41】
図41は、ASCを含む又はASCを含まない、毛細血管で回収された連続した個々のマイクロ流体チャンバーから生じた20のPCR反応を分離するアガロースゲルである。抗体重鎖特異的プライマーを用いて10の上の反応(H)を生じさせ、抗体軽鎖特異的プライマーを用いて10の下の反応(L)を生じさせた。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0013】
本明細書で使用される「読み出し」は、細胞外効果を報告する方法を指す。本明細書で使用される「読み出し粒子」は、ビーズ又は細胞、例えば、官能性又は特性を報告する官能性ビーズ又は細胞を含む任意の粒子を意味する、又はエフェクター細胞の細胞外効果(例えば、官能性又は特性)、若しくはエフェクター細胞の産物、例えば、抗体を決定するためのアッセイに使用される。「読み出し粒子」は、単一読み出し粒子として、又は単一アッセイチャンバー内の読み出し粒子の同種又は異種集団内に存在し得る。「読み出し粒子集団」は、1つ以上の読み出し粒子を含む。一実施形態では、読み出し粒子は、エフェクター細胞によって分泌される1つ以上の生体分子(例えば、1つ以上の抗体)に結合するように官能化されたビーズである、又は溶解の際にエフェクター細胞又はアクセサリー細胞によって放出される。単一読み出し粒子は、1つ以上の異なるタイプの生体分子、例えば、タンパク質及び/又は核酸を捕捉するように官能化することができる。1つ以上のタンパク質は、一実施形態では、1つ以上の異なるモノクローナル抗体である。一実施形態では、読み出し粒子は、抗体を産生及び/又は分泌するエフェクター細胞によって産生される抗体に結合することができるビーズ又は細胞である。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、例えば、集団における1つのエフェクター細胞の分泌産物が、エフェクター細胞のより大きい、又は異なる亜集団に効果を有する場合、あるいは、1つのエフェクター細胞の分泌産物が、捕捉の読み出しのために同じ細胞上に捕捉される場合、読み出し粒子であってもよい。
【0014】
本明細書で使用される「読み出し細胞」は、単一エフェクター細胞の存在下で、又は1つ以上のエフェクター細胞、例えば、抗体を分泌する1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団の存在下で応答を示すタイプの読み出し粒子である。様々な実施形態では、読み出し細胞は、表面抗原又は受容体(例えば、GPCR又はRTK、又はイオンチャネル)を提示する細胞である。一実施形態では、分泌分子の読み出し細胞への結合は、アッセイされた細胞外効果である。読み出し細胞は、蛍光標識されてもよいし、かつ/又は結合時に活性化される蛍光レポーターを有してもよい。
【0015】
本明細書中で使用される「エフェクター細胞」は、細胞外効果を与え得る細胞を指す。細胞外効果は、読み出し粒子に対する直接的又は間接的な効果である。細胞外効果は、エフェクター細胞、又はエフェクター細胞によって分泌される分子、例えば、シグナル伝達分子、代謝産物、抗体、神経伝達物質、ホルモン、酵素、サイトカインに起因する。一実施形態では、エフェクター細胞は、抗体などのタンパク質を分泌するか、又はT細胞受容体などのタンパク質を提示する細胞である。本明細書に記載の実施形態では、細胞外効果は、読み出し粒子又は読み出し粒子の集団若しくは亜集団の使用によって特徴付けられる。例えば、一実施形態では、細胞外効果は、読み出し細胞又は読み出しビーズ上に存在する、細胞表面受容体、イオンチャネル、又はATP結合カセット(ABC)輸送体のアゴナイズ又はアンタゴナイズである。一実施形態では、エフェクター細胞は、抗体分泌細胞(ASC)である。本発明は、本発明の方法に従ってアッセイすることができるエフェクター細胞型又は細胞集団に限定されない。本発明に使用するためのエフェクター細胞のタイプの例としては、任意の種(例えば、ヒト、マウス、ウサギなど)由来の一次抗体分泌細胞、一次記憶細胞(例えば、IgG、IgM、IgD、又は細胞の表面に提示される、若しくは形質細胞に増殖/分化する他の免疫グロブリン)、その表面にタンパク質又はペプチドを提示する樹状細胞、選択後又は融合直後のハイブリドーマ融合体、(例えば、fab領域における突然変異のライブラリーを用いて同定されたmAbの親和性成熟のため、又はFc領域に突然変異を有する同定されたmAbを用いるエフェクター機能の最適化のために)モノクローナル抗体(mAb)の1つ以上のライブラリーで(安定に又は一過性に)トランスフェクトされた細胞株、又はヒト/動物/ライブラリーから得られた増幅されたHC/LC可変領域からの重鎖(HC)と軽鎖(LC)との組み合わせでトランスフェクトされた細胞株、又はmAb(相乗効果を探すために特徴付けられた又は特徴付けられていない)を発現する細胞の組み合わせが挙げられる。他のエフェクター細胞としては、T細胞(例えば、CD8+T細胞、及びCD4+T細胞)、造血細胞、ヒト及び動物由来の細胞株、組換え細胞株、例えば、抗体を産生するようにエンジニアリングされた組換え細胞株、T細胞受容体を発現するようにエンジニアリングされた組換え細胞株が挙げられる。
【0016】
「抗体分泌細胞」又は「ASC」は、抗体を産生して分泌する任意の細胞型である。形質細胞(「形質B細胞」、「プラズマ細胞」、及び「エフェクターB細胞」とも呼ばれる)は、最終的に分化し、ASCの1つのタイプである。他のASCとしては、形質芽球、記憶B細胞の増殖によって生じる細胞、組換えモノクローナル抗体を発現する細胞株、及びハイブリドーマ細胞株が挙げられる。別の実施形態では、エフェクター細胞は、抗体以外のタンパク質を分泌する細胞である。
【0017】
本明細書中で使用される「細胞外効果」は、多くの実施形態では抗体分泌細胞(ASC)であるエフェクター細胞の細胞外である読み出し粒子に対する直接的又は間接的効果であり、細胞外効果としては、限定されるものではないが、細胞増殖の増加、増殖の減少、アポトーシス、溶解、分化、感染、結合(例えば、細胞表面受容体又はエピトープへの結合)、形態変化、シグナル伝達カスケードの誘導又は阻害、酵素阻害、ウイルス阻害、サイトカイン阻害、補体の活性化が挙げられる。一実施形態における細胞外効果は、エフェクター細胞によって分泌される目的の生体分子の標的への結合性である。別の実施形態では、細胞外効果は、第2の細胞のアポトーシスなどの応答である。一実施形態において測定される細胞外効果は、第2のエフェクター細胞又はこの第2のエフェクター細胞を含む細胞集団によって提示される効果と比較して、又は対照(陰性対照又は陽性対照)と比較して異なる(すなわち、変化)。
【0018】
特に粒子又は細胞の集団に関して、本明細書で呼ばれる「異種集団」は、異なる特徴を有する少なくとも2つの粒子又は細胞を含む粒子又は細胞の集団を意味する。この特徴は、一実施形態では、形態、サイズ、蛍光レポーター、細胞種、表現型、遺伝子型、細胞分化型、1つ以上の発現されたRNA種の配列、又は機能的特性である。
【0019】
本明細書で使用される「コーティング」は、チャンバー若しくはチャネル表面への任意の添加であり得、このコーティングは、エフェクター細胞、抗体などの分泌分子、読み出し粒子、又はアクセサリー粒子のチャンバー若しくはチャネルの表面に付着する能力を促進又は阻害する、又は細胞増殖などの生物学的プロセスを促進する。表面のコーティングは、一実施形態では、表面官能化である。コーティングは、一実施形態では、細胞;ポリマーブラシ、ポリマーヒドロゲル、自己組織化単分子膜(SAM)、光グラフト分子(photo-grafted molecule)、細胞結合性を有するタンパク質又はタンパク質断片(例えば、アクチン由来の細胞結合ドメイン、フィブロネクチン、インテグリン、プロテインA、プロテインGなど)、ポリ-L-リジンから選択される。一実施形態では、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸-(セリン)(RGD(S))ペプチド配列モチーフがコーティングとして使用される。別の実施形態では、ポリリジンは、PDMSを含むポリマーコーティングとして使用されて、静電相互作用によって細胞接着を増強する:細胞結合性を有するリン脂質、細胞結合性を有するコレステロール、細胞結合性を有する糖タンパク質、又は細胞結合性を有する糖脂質が利用される。別の実施形態では、ビオチン化生体分子を用いてPDMS表面を官能化する。ウシ血清アルブミン(BSA)もコーティングとして利用することができる。その疎水性ドメインのために、BSAは、疎水性PDMS表面上の疎水性効果によって容易に吸着して、チャンバー内のストレプトアビジンベースのコンジュゲート(タンパク質、DNA、ポリマー、フルオロフォア)のさらなる直接結合を可能にする。ポリエチレングリコールベースのポリマーはまた、それらの生体汚染特性についても知られており、PDMS表面(吸着、共有結合性グラフト)にコーティングして細胞接着を防止することができる。またポリ(パラキシキシリレン(paraxyxlylene))、例えば、パリレンCを、PDMS表面に化学蒸着(CVD)を用いて堆積させて、細胞接着を防止することができる。
【0020】
本明細書で使用される「隔離された」は、所与のチャンバーが、分析されるエフェクター細胞及び/又は読み出し粒子とマイクロ流体装置の別のチャンバーの粒子又は生体分子との実質的な汚染を許容しない状況を指す。このような隔離は、例えば、複合チャンバーの場合には、チャンバー又は1組のチャンバーを密閉することによって、チャンバー間の流体連通を制限することによって、又はチャンバー間の流体の流れを制限することによって、例えば、アスペクト比のようなチャンバーの特定の構造的特徴によって達成することができる。
【0021】
本明細書で使用される「マイクロ流体装置」は、最小寸法が1mm未満の特徴を有する流体の操作に使用される装置を指す。
【0022】
「アスペクト比」は、特段の記載がない限り、マイクロ流体の特徴、例えば、チャンバーの高さ/深さの最小横寸法に対する比率を指す。
【0023】
マイクロ流体装置は、スループット及び単一細胞感受性の問題に対処するのに有用であるが、多くの場合、マイクロスケールチャネルを介して細胞を装置に充填することは困難であり得る。より大きい細胞型、又はチャネル表面に自然に付着する細胞は、装置のアッセイチャンバーに送達される前にチャネルを詰まらせ得るため、分析を妨げ、装置の故障をもたらす。細胞の装置への非効率的な充填又は細胞の装置全体への不均一な充填は、細胞がマイクロチャネルを介してチャンバーに充填される場合にも起こり得る。さらに、細胞をマイクロチャネルを介して充填する際に、装置の入口にあるポートに「定着し」、その後分析チャンバーに入らない相当数の細胞が存在し得る。これらの問題は、ロバストな機器への細胞の充填及び分析を標準化して自動化しようとする場合に特に深刻である。この場合、操作者は、充填パラメーターをリアルタイムで調整を要求されるべきではない。さらに、細胞の充填は、接着性の細胞型、又は様々な異なる細胞ベースの抗体検出アッセイに必要とされ得る他の大きい細胞型を用いて作業する場合にも問題であり得る。
【0024】
本明細書で提供される装置及び機器は、広範な細胞型での使用に適した代替のアッセイ形式を提供することによってこの細胞の充填の問題に対処する。
【0025】
単一細胞よりも多くの細胞を収容するようにデザインされた当分野で公知の方法及び装置は、このような方法及び装置を、本明細書に記載のタイプのアッセイに適さないようにする制限を有する。例えば、細胞の生存率を維持すること、目的のエフェクター細胞を選択的に回収すること、装置内の蒸発を制限し/妨げること、実質的に同じ圧力を維持すること、交差汚染を排除することは全て問題となり得る。既知の装置構造はまた、(例えば、異なる焦点面に粒子を供給し、分解能を低下させることによって)画像化能力を制限し、本発明のスループットを低下させる(それぞれ参照によりそれらの全内容があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる、国際公開第2012/072822号パンフレット及びBocchiら(2012))。
【0026】
本明細書に記載の態様及び実施形態では、本発明の装置及びアッセイは、培地洗浄ステップ及び/又は異なる細胞型との共培養を含む。この形式は、ワイドアレイの単一細胞抗体スクリーニングアッセイを実施するために使用することができるいくつかの有利な特徴を提供する。多段階スクリーニング戦略を使用すると、このような装置及びアッセイを使用して、装置の動作ごとに数十万個の細胞をスクリーニングすることができる。本明細書に記載の方法は、広範囲のアッセイ形式を支援する高分解能顕微鏡法と両立する。さらに、本明細書に記載の装置及びアッセイ形式は、分析のために抗体分泌細胞(ASC)を固定化すると共に、培地成分の制御された交換を可能にし、これにより1つ以上の培地交換ステップを利用するアッセイを支援する手段を提供する。重要なことに、培地を交換する能力はまた、抗体分泌細胞及び他の細胞型の長期培養を可能にする。特に、本発明の装置及びアッセイは、抗体などの分泌生体分子を濃縮すると共に、分析において高い空間密度を達成する手段を提供する。
【0027】
上記の細胞充填の問題に対処することに加えて、本明細書で提供される装置及び方法は、単一細胞の細胞外効果、例えば、単一ASCによって分泌される抗体の細胞外効果を評価するための利点を提供する。例えば、本明細書に記載の装置は、スケーリング可能であり、試薬の消費量の低減及びスループットの増加を可能にし、これらが可能でなければ非実用的又は非常に高価である研究用の大きい単一細胞アッセイプラットフォームを提供する。
【0028】
理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書で提供されるナノリットルアッセイ容量によってもたらされる濃縮強化及び迅速拡散混合は、正確な細胞のハンドリング及び操作(例えば、培地条件の時空間制御)と共に、主な機能として抗体及びサイトカイン及びケモカインなどの異なるエフェクタータンパク質の分泌を含む免疫細胞(例えば、B細胞、T細胞及びマクロファージ)などのエフェクター細胞の単一細胞の分析を可能にする。
【0029】
本明細書に記載の実施形態は、それぞれが1つ以上のエフェクター細胞を含む複数の細胞集団からの多細胞アッセイを行い、これに続くその後の分析のために複数の細胞集団のうちの1つ以上の細胞集団を回収することができる機器、装置、及び方法を提供する。多細胞アッセイは、一実施形態では、集団における1つ以上の細胞の分泌産物、例えば、抗体のアッセイである。一部の実施形態では、細胞集団は、異種細胞集団である。すなわち、集団内の2つ以上の細胞は、遺伝子型、表現型、様々な組換え抗体遺伝子、様々な組換えT細胞受容体遺伝子、又はいくつかの他の特性が異なる。さらに、複数の細胞集団が1つの装置上で並行してアッセイされる場合、一実施形態では、少なくとも2つの集団は、互いに異種である(例えば、異なる数の細胞、細胞型など)。一部のアッセイの実施形態では、検出試薬(例えば、細胞受容体、読み出しビーズ、センサー、可溶性酵素などを発現する読み出し細胞)として機能する1つ以上の読み出し粒子を含む読み出し粒子集団が、読み出しシグナル(例えば、蛍光シグナル)が検出されるのに十分な濃度で、1つ以上のエフェクター細胞を含む個々の細胞集団、及び1つ以上のエフェクター細胞からの分泌産物に曝露される。読み出しシグナルは、エフェクター細胞の特性、例えば、1つ以上の読み出し粒子上の集団内の1つ以上のエフェクター細胞によって誘導される生物学的応答/細胞外効果(例えば、アポトーシス)を報告する。
【0030】
特に、エフェクター細胞は、多くの場合稀な細胞であるため、本明細書に記載の方法によってアッセイされる全ての細胞集団が必ずしもエフェクター細胞を含むものではない。例えば、何千もの細胞集団が単一装置でアッセイされる場合、一実施形態では、細胞集団のほんの一部がエフェクター細胞を含む。
【0031】
本明細書に記載の装置及びアッセイは、装置の単一アッセイチャンバーでの、1つ以上のエフェクター細胞が1つ以上の個々の細胞集団内に存在する単一細胞アッセイを提供する。重要なことに、単一エフェクター細胞の効果は、より大きい細胞集団、例えば、異種細胞集団内で検出することができる。単一アッセイチャンバー内で多細胞アッセイアプローチを行うことにより、本明細書に記載の実施形態は、以前に単一細胞アッセイで報告されたものより遥かに高いスループットで動作することができる。例えば、1,000,000個のチャンバーのアレイを実用的な基板サイズで製造し、チャンバー当たり最大100個の細胞の充填密度で使用して、実験当たり最大100,000,000個の細胞のスクリーニングスループットを達成することができる(
図1)。細胞集団が、読み出し粒子に対して細胞外効果(例えば、別の集団又は対照値と比較した細胞外効果の変化)を示すと同定されたら、一実施形態では、この細胞集団を回収し、さらに個々の細胞亜集団としてアッセイして(例えば、回収された細胞集団が限界希釈法でアッセイされる)、集団内のどのエフェクター細胞が細胞外効果に関与するかを決定する。
【0032】
本発明は、目的の特性、すなわち「細胞外効果」について個々の細胞集団(単一細胞又は少数の細胞を含み得る)をアッセイするために、小さい反応容量及び大量並行分析能力を利用する。細胞外効果は、一実施形態では、細胞集団内に存在する細胞によって分泌される抗体の特性である。細胞外効果は、特定の効果に限定されるものではなく、むしろ結合性(特異性、親和性、Kon、Koffなど)又は機能的特性、例えば細胞表面受容体のアゴニズム又はアンタゴニズムであり得る。一実施形態では、細胞外効果は、エフェクター細胞(例えば、抗体)の分泌産物によって付与される効果である。しかしながら、細胞外効果は、細胞自体の効果、例えば、エフェクター細胞の細胞表面タンパク質によって付与される効果であり得る。
【0033】
本明細書で提供される装置及び方法は、小さいほうが敏感であるという概念にある程度基づいている。本明細書で提供される装置は、それぞれが従来のプレートベースのアッセイよりも約10,000分の1~約100,000分の1の小さい体積を有する、数千、数万、又は数十万のナノリットル容積の細胞分析チャンバーを備える。これらのナノリットル又はナノリットル以下のチャンバーでは、各単一エフェクター細胞(例えばASC)は、数分以内に高濃度の分泌生体分子、例えば、抗体を産生する。一実施形態では、この濃縮効果を利用して、細胞表面受容体活性の調節(例えば、アゴニズム又はアンタゴニズム)など特定の機能的特性を有する、単一一次ASCによって産生される抗体を同定する細胞ベースのスクリーニングアッセイを実施する。濃縮効果はまた、目的の特性を実証する単一エフェクター細胞の同定を、特性を示さない他のエフェクター細胞及び非エフェクター細胞の存在下で可能にする。本明細書で提供される方法及び装置に使用するのに適した機能的細胞外効果アッセイは、本明細書に詳細に記載される。
【0034】
重要なことに、本明細書で提供されるアッセイでは、特定の特性を有する特定のエフェクター細胞又はエフェクター細胞の亜集団は、細胞外効果の存在が細胞集団を含む特定のチャンバー内で検出される限り、最初に同定される必要はない。効果が測定されるチャンバー内の一部又は全ての細胞は、細胞外効果に関与する1又は複数の特定の細胞を同定するために、例えば、限界希釈でのさらなる特徴付けのために回収することができる。本明細書に記載の実施形態では、単一細胞による細胞外効果を、同じチャンバー内の他の細胞、例えば、約2~300個の他の細胞、例えば、同じチャンバー内の約2~約250個の細胞、同じチャンバー内の約2~約150個の細胞、同じチャンバー内の約2~約100個の細胞、同じチャンバー内の約2~約50個の細胞、同じチャンバー内の約2~約30個の細胞、同じチャンバー内の約2~約20個の細胞、又は同じチャンバー内の約2~約10個の細胞の存在下で検出することができる。
【0035】
本明細書において、細胞外効果アッセイを行うようにデザインされた装置が提供される。このようなアッセイは、本明細書に記載の装置のうちの1つの装置のアッセイチャンバー内の異種細胞集団に存在する、又は単一細胞として存在する目的の単一エフェクター細胞の検出を可能にする。具体的には、チャンバーが異種細胞集団を含み、この集団内の1つ以上の細胞が抗体を分泌し(すなわち、単一反応チャンバー内の異種ASC集団)、これにより、唯1つのエフェクター細胞又はエフェクター細胞の亜集団が、所望の細胞外効果をもたらす抗体を分泌する場合、本明細書に記載の実施形態は、細胞外効果を定性的及び/又は定量的に検出するための装置及び方法を提供する。効果を示すチャンバーが同定されたら、チャンバーからの細胞集団は、下流分析のために、例えば細胞集団を限界希釈度で亜集団に分けることによって回収される。一実施形態では、細胞外効果を示す1つ以上の異種細胞集団が回収され、限界希釈でさらなるスクリーニングが行われ、どの細胞が細胞外効果に関与するかが決定される。
【0036】
単一細胞抗体を分泌する細胞(ASC)/抗体選択パイプラインの作業フローの一実施形態が
図1に示されている。この実施形態では、宿主動物が標的抗原で免疫化され、最終追加免疫の1週間後に、細胞が脾臓、血液、リンパ節、及び/又は骨髄から得られる。次いで、これらの試料は、任意選択により、フローサイトメトリー(例えば、FACS)、又は確立された表面マーカー(利用可能な場合)を用いる若しくはマイクロ流体濃縮を用いる磁気ビーズ精製によってASCについて濃縮される。次いで、得られたASC濃縮集団が、チャンバー当たり約1~約250個の細胞、例えば、チャンバー当たり約2~約100個の細胞、チャンバー当たり約10~約100個の細胞、又はチャンバー当たり約10~約50個の細胞を達成するために選択される充填濃度で、ナノリットル容量チャンバーを含む装置のアレイに充填される。一実施形態では、装置のチャンバーの80%超が細胞集団を含む。本明細書でさらに説明されるように、細胞の充填は、装置の底部構成要素のオープンチャンバーに直接充填することによって、例えば、液体カラムによって生成される静水圧によって、ピペットのようなディスペンサーを用いて流れを生じさせることによって、又は底部構成要素の上の培地を交換して、上部構成要素若しくは底部構成要素を上下に動かして流体をマイクロチャンバーに移動させることによって達成される。
【0037】
予備濃縮が行われるか否か、及びどのように行われるかによって、個々のチャンバーは、複数のASC又は単一ASCを含む、又はASCを含まないことになる。チャンバー内で細胞をインキュベートして、このチャンバーの容積内での抗体の分泌を可能にする。ASCは、典型的には、1秒当たり1000個の抗体分子の割合で抗体を分泌し、一実施形態において本明細書で提供される個々のチャンバーの容積が約2nL~約5nLのオーダーであるため、約10nMの各分泌モノクローナル抗体の濃度が、約3時間提供される(それぞれのユニークなASCは、ユニークなモノクローナル抗体を分泌する)。さらなる実施形態では、チャンバー内への試薬の送達及びチャンバー内での試薬の交換を利用して画像ベースの細胞外効果アッセイを行い、この細胞外効果アッセイは、自動顕微鏡検査及びリアルタイム画像処理を使用して読み出される。試薬は、液体カラムによって生成される静水圧によって、ピペットのようなディスペンサーを使用してマイクロチャンバーのアレイの上に流れを生じさせることによって、又は底部構成要素の上の培地を交換して、上部構成要素若しくは底部構成要素を上下に動かして流体をチャンバーに移動させることによって交換することができる。
【0038】
次いで、所望の特性(例えば、結合性、特異性、親和性、機能)を有する抗体を分泌する1つ以上のASCを含む個々のASC又は細胞集団が、個々のチャンバーから回収される。限界希釈での回収細胞集団のさらなる分析は、例えば、卓上法によって、又は本明細書に提供される別のマイクロ流体装置(例えば、
図2を参照)で行われる。あるいは、核酸を、単一配列決定反応において細胞集団から配列決定して、抗体配列を決定することができる。個々のASCがチャンバーに供給されて回収される場合には、個々のASCのさらなる分析も行うことができる。例えば、一実施形態では、さらなる分析は、配列分析及び細胞株へのクローニングのための対のHV及びLVを増幅するための単一細胞RT-PCRを含む。
【0039】
別の実施形態では、動物が免疫化された後に、細胞が脾臓、血液、リンパ節、及び/又は骨髄から得られ、この細胞は、装置の個々のチャンバーに直接充填される開始集団を構成する、すなわち、複数の細胞集団として、個々の細胞集団が各チャンバー内に存在する。次いで、個々の細胞集団のいずれかが、細胞外効果に関与する1つ以上のエフェクター細胞を含むか否かを決定するために、細胞外効果アッセイが個々のチャンバーで行われる。
【0040】
細胞外効果アッセイを行う前に、宿主動物を標的抗原で免疫化することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、一実施形態では、細胞は、宿主(ヒトを含む)の脾臓、血液、リンパ節、又は骨髄から得られ、続いてASCの濃縮が行われる。あるいは、濃縮ステップが行われず、細胞が、本明細書で提供される装置のチャンバーに直接充填される、すなわち、複数の細胞集団として、個々の細胞集団が各チャンバー内に存在する。
【0041】
本明細書で提供される方法は、任意の宿主種由来の抗体の選択を可能にする。これは、治療用抗体の発見に2つの重要な利点を提供する。第1に、マウス及びラット以外の種で機能する能力は、マウスタンパク質に対して高い相同性を有する標的に対するmAbの選択、並びにマウスと交差反応するヒトタンパク質に対するmAbの選択を可能にし、従って、容易に利用できる前臨床マウスモデルに使用することができる。第2に、マウス免疫化は、しばしば、少数のエピトープに対する免疫優性を特徴とする応答をもたらし、その結果、産生される抗体の多様性が低い;従って、他の種へ拡張することが、異なるエピトープを認識する抗体の多様性を大幅に高める。従って、本明細書に記載の実施形態では、マウス、ラット、及びウサギが免疫化に使用され、続いてこれらの免疫動物由来のASCの選択が行われる。一実施形態では、ウサギが、抗原で免疫化され、免疫化されたウサギ由来のASCが、本明細書で提供される方法及び装置を用いて選択される。当業者が理解するように、ウサギは、遺伝子変換を使用してより広い抗体多様性、より大きい物理的サイズ(より広い抗体多様性)、及びヒトからのより大きい進化的距離(より認識されたエピトープ)をもたらす、親和性成熟の独特な機構の利点を提供する。
【0042】
免疫化戦略は、一実施形態では、タンパク質、細胞、及び/又はDNA免疫化である。例えば、PDGFRαについては、哺乳動物細胞株での発現から得られた細胞外ドメイン、又は商業的供給業者(Calixar)から購入された細胞外ドメインが使用される。CXCR4については、一実施形態では、ウイルス様粒子(VLP)調製物、商業的供給業者(Integral Molecular)からの、天然構造でGPCRの高発現を有するナノ粒子が使用される。細胞ベースの免疫化は、マウス/ラットの場合は細胞株(例えば、32D-PDGFRα細胞)、及びウサギの場合はウサギ線維芽細胞株(SIRC細胞)における完全長タンパク質の過剰発現によって行われ;特定のmAbについて濃縮するために新しい細胞株が最終追加免疫で使用されるプロトコルを含む。確立された様々なDNA免疫化プロトコルが、本発明と共に使用するのに適している。DNA免疫化は、(1)タンパク質の発現及び精製の必要性を排除し、(2)抗原の天然構造を保証し、(3)他の細胞膜抗原に対する非特異的な免疫応答の可能性を低下させ、かつ(4)曝露する標的に有効であることが証明されているため、複合膜タンパク質の選択方法となる(それぞれ参照によりそれらの全内容があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる、Bates et al.(2006).Biotechniques 40,pp.199-208;Chambers and Johnston(2003).Nat.Biotechnol.21,pp.1088-1092;Nagata et al.(2003).J.Immunol.Methods 280,pp.59-72;Chowdhury et al.(2001).J.Immunol Methods 249,pp.147-154;Surman et al.(1998).J.Immunol.Methods 214,pp.51-62;Leinonen et al.(2004).J.Immunol.Methods 289,pp.157-167;Takatasuka et al.(2011).J.Pharmacol.and Toxicol.Methods 63,pp.250-257)。免疫化は、動物愛護の要件及び確立されたプロトコルに従って行われる。
【0043】
抗PDGFRα抗体は、以前にラット、マウス、及びウサギで産生され、PDGFRαの細胞外ドメインの比較により、いくつかの部位の実質的な差異が示されている(
図3)。従って、良好な免疫応答がこの抗原から得られることが期待される。抗CXCR4 mAbもまた、脂質粒子及びDNA免疫化の両方を用いて以前に作製されているため、この標的も良好な免疫応答を生じさせる可能性が高い。一実施形態では、分子アジュバントとしてのGroE1又はGM-CSFの共発現(共発現されるか、又は融合としてのいずれか)が使用される。あるいは、参照によりそれらの全内容があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる、Takatsuka et al.(2011).J.Pharmacol.and Toxicol.Methods 63,pp.250-257;及び/又はFujimoto et al.(2012)J.Immunol.Methods 375,pp.243-251に開示されているアジュバント及び免疫化スケジュールが利用される。
【0044】
本発明は、部分的に、ASCのような単一エフェクター細胞に対するアッセイを行うための、再現性が高く効率的な細胞充填プロセス用にデザインされた装置構造に関する。本明細書で提供される装置構造は:(i)細胞又は粒子の分析チャンバーへの容易で効率的な充填を可能にし、(ii)培地成分を交換する能力を維持しながら、細胞及び/又は粒子の固定化を可能にし、(iii)高解像度顕微鏡法に適合性であり、(iv)可溶性蛍光試薬からのバックグラウンド蛍光シグナルを減少させ、(v)高密度アッセイ形式を提供し、(vi)任意の所与のチャンバーからの選択された細胞又は粒子の回収を容易にし、かつ(vii)スクリーニング機器に一体化することができる。
【0045】
本明細書で提供される装置は、1回の使用につき数万個から数百万個の細胞に適応するようにデザインされている。チャンバー当たり隔離されるエフェクター細胞の数、及び装置の動作当たり隔離されるエフェクター細胞の数は、装置に充填される細胞懸濁液中の細胞の濃度、選択される特定のエフェクター細胞の細胞懸濁液中の頻度、及び装置上のチャンバーの総数によって変化する。最大で1,000,000個を超える細胞外効果アッセイチャンバーのアレイを備えた装置を製造して利用することができる。
【0046】
本明細書で提供される装置は、それぞれが1mm未満の最小寸法を含む特徴(例えば、アッセイチャンバー及び/又は流体チャネル)を含むという点で、マイクロ流体用である。しかしながら、本明細書で提供される実施形態では、装置の1つの特徴の最小寸法は、500μm未満、100μm未満、又は30μm未満である。
【0047】
本明細書で提示されるマイクロ流体装置はそれぞれ、複数のアッセイチャンバーを備える。アッセイチャンバーは、2構成要素マイクロ流体装置の単一構成要素中に存在してもよいし、又は単一構成要素装置中に存在してもよい。装置の複数の構成要素が互いに分離されている場合、及び/又は単一構成要素マイクロ流体装置が利用される場合、アッセイチャンバーは、環境に対して開放されている、すなわち、このチャンバーは、例えばピペット操作又は注入によって、上から直接アクセスすることができ、従って、本明細書では「オープンチャンバー」と呼ばれる。チャンバーは、最初は開いているが、第2の「上部」構成要素がチャンバーの上に配置されると、チャンバーは閉じたとみなされ得ることを理解されたい。
【0048】
本明細書で提供される装置のアッセイチャンバーは、一実施形態では、約50μm~約300μm、約50μm~約250μm、約50μm~約200μm、約50μm~約150μm、約50μm~約100μmの平均最小横寸法を有する。別の実施形態では、装置のアッセイチャンバーは、約50μm、約75μm、約100μm、約125μm、150μm、又は約200μmの平均最小横寸法を有する。
【0049】
本明細書で提供される装置のアッセイチャンバーは、一実施形態では、約50μm~約300μm、約50μm~約250μm、約50μm~約200μm、約50μm~約150μm、約50μm~約100μmの平均高さ(深さ)を有する。別の実施形態では、装置のアッセイチャンバーは、約50μm、約75μm、約100μm、約125μm、150μm、又は約200μmの平均高さ/深さを有する。
【0050】
装置のアッセイチャンバーは、一実施形態では、約100pL~約100nL、又は約100pL~約10nL、又は約100pL~約1nLの平均容積を有する。一実施形態では、装置のアッセイチャンバーの平均容積は、約100pL、約200pL、約300pL、約400pL、約500pL、約600pL、約700pL、約800pL、約900pL、又は約1nLである。別の実施形態では、アッセイチャンバーの容積は、約2nL、約1nL~約5nL、約1nL~約4nL、又は約1nL~約3nLである。別の実施形態では、装置のアッセイチャンバーの平均容積は、約10pL~約10nL、約10pL~約1nL、約10pL~約100pL、約500pL~約5nL、約50pL~約5nL、約1nL~約5nL、又は約1nL~約10nLである。別の実施形態では、装置のアッセイチャンバーの平均容積は、約150pL、約250pL、約350pL、約450pL、約550pL、約650pL、約750pL、約1nL、約5nL、又は約10nLである。
【0051】
本明細書で提供される装置は、一実施形態では、細胞及び/又は粒子の重力ベースの固定化を利用する。重力ベースの固定化は、非付着性細胞型の灌流を可能にし、一般に、エフェクター細胞及び/又は読み出し粒子を含むチャンバー内、このチャンバーを通る、又はこのチャンバーの上、例えば、チャンバー床上での緩衝液及び試薬の交換を可能にする。1つの装置の実施形態では、各チャンバーは、上部の上を通るアクセスチャネルを備えた立方体形状を有する。アクセスチャンバーを、装置の上部構成要素内に形成して、本明細書に記載されるように、オープンアッセイチャンバーを含む底部構成要素に整合させることができる。あるいは、アクセスチャネルを、オープンチャンバー構造に接続される装置の底部構成要素内に微細加工された溝によって形成することができる。
【0052】
装置チャンバーの充填の間に、一実施形態では、粒子(例えば、細胞又はビーズ)が、2構成要素装置の底部構成要素に位置するオープンチャンバーに直接導入され、そしてチャンバーの底部に沈降する。単一構成要素装置の実施形態では、単一構成要素は、オープンチャンバーを備える構成要素であり、従って、粒子が充填される構成要素である。多構成要素装置が利用される一実施形態では、装置の上部構成要素と底部構成要素の界面に形成されたアクセスチャネルを介して細胞を導入することができる。この場合、細胞は、流線に従って、充填の間にチャンバーを通過するが、流れが停止するとチャンバーの底部に沈降する。層流プロファイルにより、流速は、チャンバー底部付近では無視できる程度である。これは、チャネルを介して溶液を流すことによって、複合装置を灌流する場合に当てはまる。これはまた、例えば、液体リザーバーがチャンバーの上に設けられている場合、液体を穏やかにピペット操作又は吸引して底部構成要素のオープンチャンバーを介して液体を交換するときに、チャンバー内でも当てはまる。この流体構造は、チャンバーアレイの灌流、及びチャンバー内の非付着性細胞(又は読み出しビーズのような読み出し粒子)の位置を乱すことなく、対流/拡散の組み合わせによる試薬の交換を可能にする。
【0053】
一実施形態では、アッセイチャンバーを含む構成要素は、培地リザーバーがチャンバーの真上に位置することを可能にする構造を備える。培地リザーバーは、一実施形態では、蒸発を防止するため、栄養素又は他の分子をチャンバーに供給するため、細胞の生存を保証するため、及び/又は細胞の増殖培地を供給するために設けられる。リザーバー構造は、チャンバーアレイ全体又はその一部に設けることができる。別の実施形態では、複数のリザーバー構造が、細胞増殖培地などの異なる培地又はアッセイ試薬のチャンバーアレイの異なる部分への送達を可能にするために、このチャンバーアレイの異なる部分に設けられる。一実施形態では、リザーバー構造は、約1mL~約20mL、約2mL~約20mL、約3mL~約20mL、又は約4mL~約20mLの培地をチャンバーの上に供給できるように製造される。別の実施形態では、リザーバー構造は、約1mL~約15mL、又は約2mL~約15mL、又は約2mL~約15mL、又は約3mL~約15mLの培地をチャンバーの上に供給できるように製造される。複数のリザーバー構造が、単一装置上で利用される場合、このような構造は、個々のリザーバー当たり約100μL~約2mLのリザーバー容積を可能にするように製造することができる。一実施形態では、リザーバー構造が設けられる場合、培地交換は、リザーバーから吸引し、次いで、新しい培地をアレイの上からリザーバーの中に供給することによって行われる。
【0054】
本明細書で提供される装置構造は、追加的な構成要素、例えば、アクセサリー粒子又は細胞シグナル伝達リガンドがチャンバーに添加されるとき、又は灌流液又は洗浄液/培地が導入されるときに、エフェクター細胞の可溶性分泌産物(又は分泌産物の一部)がチャンバーから洗い流されないようにデザインされている。加えて、本明細書で提供される装置は、装置の個々のチャンバー間の分泌産物(例えば、抗体)の実質的な交差汚染を招くことなく、チャンバーへの構成要素の追加を可能にする。このようなチャンバーの互いに対する分離は、アスペクト比(すなわち、最小横寸法に対する高さ/深さ)が約0.6以上又は約1以上のチャンバーを製造することによって部分的に達成される。従って、本明細書で提供される装置はそれぞれ、複数のチャンバーの個々のチャンバーのそれぞれがチャンバーの最小横寸法の約60%以上の深さを有するように複数のチャンバーを備える。さらなる実施形態では、個々のチャンバーのアスペクト比(すなわち、最小横寸法に対する高さ/深さ)は、約1.1以上、約1.5以上、約2以上、約2.1以上、約2.5以上、約3以上、約4以上、又は約5以上である。別の実施形態では、装置のチャンバーの平均アスペクト比は、約0.6以上、約0.7以上、約0.8以上、約0.9以上、約1以上、約1.1以上、約1.5以上、約2以上、約2.1以上、約2.5以上、約3以上、約4以上、又は約5以上である。別の実施形態では、装置のチャンバーの平均アスペクト比は、0.6以上であるが15以下、0.8以上であるが10以下、1以上であるが10以下、1.1以上であるが10以下、1.2以上であるが10以下、1以上であるが5以下、又は1.5以上であるが10以下である。
【0055】
本明細書で提供される装置又はその一部は、ソフトリソグラフィーによって製造される。一部の実施形態では、装置は、別個の上部構成要素及び底部構成要素を備え、少なくとも1つの構成要素は、ソフトリソグラフィーによって製造される。装置は、アッセイチャンバーのイメージングを容易にするために透明又は実質的に透明である。一部の実施形態では、装置の上部構成要素及び底部構成要素はエラストマーであり、例えば、上部構成要素及び底部構成要素、又は単一構成要素は、ポリジメチルシロキサン(polydimexylsiloxane)(PDMS)から製造される。
【0056】
本明細書で提供される装置は、アッセイチャンバーのアレイを有する構成要素を備える。チャンバーの寸法は、一実施形態では、フォトレジストで画定され、次いで、チャンバーは、ソフトリソグラフィープロセスによってPDMSのようなポリマー材料から鋳造される。ソフトリソグラフィープロセス及びフォトリソグラフィーにおけるポジ型及びネガ型フォトレジストの使用は、当業者に公知であり、例えば、参照によりその全内容があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる、Xia and Whitesides(1998).Agnew.Chem.Int.Ed.Engl.37(5),pp.551-575に記載されている。チャンバーの断面は、いかなる特定の形状にも限定されず、チャンバーは、円形、楕円形、長方形、三角形、又は他の形状の断面を有するソフトリソグラフィーによって製造できるものとする。
【0057】
一部の実施形態では、インプリンティングプロセスが使用され、このプロセスでは、PDMSのような液体エラストマーを、厚いフォトレジストでパターン化されたシリコンウエハのような微細加工基板上に注ぎ、次いで、注入されたPDMSを脱気し、ガラス基板を微細加工基板の上部に置き、押し付けて過剰なポリマー材料を押し出し、加熱してPDMSを重合化し、次いで、分離するとガラス基板上に薄い成形PDMS層が残る。一実施形態では、成形チャンバーの底部とガラス基板との間のPDMS層の厚さは、約5~50μm未満である。一実施形態では、成形チャンバーの下の材料の全厚さは、主にガラス基板の厚さによって決まり、約100μm未満、200μm未満、400μm未満、又は1mm未満であり得る。薄い透明基板上に直接成形された、例えば、約0.6以上、又は約1以上、又は約1~約10の高アスペクト比のチャンバーのアレイを有する装置は、ガラス基板の底部を介した高解像度のイメージングを可能にする。本明細書で提供されるアスペクト比を有するチャンバーのアレイを備える装置は、熱エンボス加工、射出成形、反応性イオンエッチング、又は他の異方性エッチングプロセスを含む当分野で公知の他の微細加工プロセスによっても形成することができる。
【0058】
一部の実施形態では、本明細書で提供される装置は、例えばチャネルを密閉する弁を備えるマイクロ流体チャネルを画定するために、複数の層を有する「上部構成要素」を備える。さらなる実施形態では、装置の「底部構成要素」は、上記のようにソフトリソグラフィーによって製造することができるオープンチャンバーを備える。オープンチャンバーは、底部構成要素のすぐ上に上部構成要素が導入されると各構成要素の面が接触し、(小さいチャネル又は隣接するチャンバーが隣接する開口に接続されて)密閉される又は実質的に密閉され得る。
【0059】
多層を備える装置の上部構成要素は、多層ソフトリソグラフィー(MSL)(参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、Unger et al.(2000).Science 7,pp.113-116)によって製造することができる。さらに、「上部構成要素」及び「底部構成要素」の両方が、例えばソフトリソグラフィーによってエラストマー材料から製造され、これらの構成要素が1つになって非可逆的シールを形成する場合、装置の複数の構成要素は、MSLによって製造されるとして特徴付けることができる。
【0060】
全てのマイクロ流体技術の中で、MSLは、数千の一体化されたマイクロ弁を有する装置の高速で安価な試作においてユニークである(Thorsen et el.(2002).Science 298,pp.58-584)。これらの弁を使用して、ミキサー、蠕動ポンプ(Unger et al.(2000).Science 7,pp.113-116)、及び流体多重構造(Thorsen et al.(2002).Science 298,pp.58-584;Hansen and Quake(2003).Curr.Opin.Struc.Biol.13,pp.538-544)を含むより高いレベルの流体構成要素を形成することができ、従って、高レベルの一体化及びチップ上での液体のハンドリングを可能にする(Hansen et al.(2004).Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101,pp.14431-1436;Maerkl and Quake(2007).Science 315,pp.233-237)。この段落における前述の参考文献のそれぞれの開示は、参照によりそれらの全内容があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる。
【0061】
MSL製造プロセスは、十分に確立されたフォトリソグラフィー技術を利用し、マイクロエレクトロニクス製造技術に進歩をもたらす。MSLの第1のステップは、コンピューター製図ソフトウェアを使用して流路及び制御チャネルのデザインを描き、次いで、これを高解像度マスクにプリントすることである。フォトレジストで覆われたシリコン(Si)ウエハは、紫外線に曝露され、この紫外光は、マスクによって特定の領域でカットされる。フォトレジストがネガ型であるかポジ型であるかに応じて、露光領域(ネガ型)又は非露光領域(ポジ型)のいずれかが架橋し、レジストが重合する。未重合レジストは、現像液に可溶性であり、続いて洗い流される。異なるフォトレジストとスピンコーティングとを異なる速度で組み合わせることにより、シリコンウエハは、様々な異なる形状及び高さでパターン化され、様々なチャネル及びチャンバーが画定される。次いで、ウエハを型として使用して、パターンをポリジメチルシロキサン(PDMS)に転写する。一実施形態では、PDMSで成形する前のフォトレジスト層を画定した後に、型をパリレンコーティング(化学蒸着ポリ(p-キシリレン)ポリマーバリア)して成形中のPDMSの粘着を低減し、型の耐久性を高めて小さい特徴の再現を可能にする。
【0062】
MSLでは、異なる型から鋳造されたPDMSの異なる層が互いに重なり合う積層を使用して、チャネルを重なり合う層に形成する。2つ(又はそれ以上)の層は、注封プレポリマー(potting prepolymer)成分及び硬化剤成分を補完的な化学量論比で混合して加硫を達成することによって互いに結合される。
【0063】
一実施形態では、装置内の流体の流れは、例えば試薬の流れを底部構成要素のチャンバーに誘導するために、上部構成要素のチャネル内の流体に圧力を加える、外部のコンピューターでプログラム可能なソレノイドを用いて制御される。
【0064】
当業者には理解されるように、フォトレジスト層の厚さは、スピンコーティングの速度及び使用のために選択されるフォトレジストによってある程度制御することができる。アッセイチャンバーの大部分は、一実施形態では、Siウエハ上に直接配置されるSU-8 100の特徴によって画定される。当業者に公知のように、SU-8は、一般的に使用されるエポキシベースのネガ型フォトレジストである。あるいは、当業者に公知の他のフォトレジストを使用して、上記の高さのアッセイチャンバーを画定することができる。一部の実施形態では、アッセイチャンバーは、SU-8の特徴によって画定されるように、50~500μMの高さ及び50~500μMの幅を有する。
【0065】
ソフトリソグラフィー及びMSL製造技術は、広範囲の装置密度、及びチャンバー容積の製造を可能にする。本明細書で提供される装置の場合、一実施形態では、約2000~約1,000,000個の分析チャンバー、例えば、約1000~約200,000個の分析チャンバーが、単一装置、すなわち装置の底部構成要素に設けられる。エフェクター細胞分析チャンバーは、一実施形態では、約0.5nL~約4nL、例えば、約1nL~約3nL、又は約2nL~約4nLの平均容積を有する。
【0066】
本明細書で提供される装置は、エフェクター、アクセサリー、又は読み出しの種類にかかわらず、細胞の長期間の培養及び維持を可能にする(例えば、約12時間~約2週間、又は約12時間~約10日間、又は約12時間~5日間、又は約12時間~2日間、又は約1日間)。一実施形態では、底部構成要素のチャンバーのアレイは、細胞増殖培地のリザーバーで覆うことができる。別の実施形態では、上部構成要素は、PDMSエラストマーの厚い膜(例えば、厚さ約150μm~約500μm、厚さ約200μm、厚さ約300μm、厚さ約400μm、又は厚さ約500μm)を備える。この膜は、チャンバーの上に配置され、一実施形態では、培地、例えば、1mLの培地のリザーバーが膜を覆う。同様の形式が、以前に記載されている(参照によりその全内容があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる、Lecault et al.(2011).Nature Methods 8,pp.581-586)。培地リザーバーのチャンバーへの近接(浸透圧浴)は、(ガス透過性PDMS材料を通る)蒸発を効果的に阻止し、確実な細胞生存率を保証し、細胞が十分に分化しないで数日にわたって増殖する場合は、μL容積の形式と同一の増殖速度及び細胞応答でのnL容積での長期培養の達成が促進される。
【0067】
一部の実施形態では、2構成要素装置を組み立てると、チャンバーの上部を通過する流体チャネル(上部構成要素)によって接続された底部構成要素内にアッセイチャンバーの列が形成される。チャンバーは、流体がチャンバーの上に供給されたときにチャンバーの底部の流れプロファイルの速度を大幅に低減する又は遅らせる十分に高いアスペクト比でデザインされる。細胞集団又はビーズ集団の充填の間、細胞又はビーズの懸濁液が、オープンチャンバーのアレイを特徴とする装置の底部構成要素(又は単一構成要素)に直接充填される。これは、既知の数の細胞を含むある容量の細胞懸濁液を、例えばピペット操作によって、底部構成要素のオープンチャンバーアレイの上部に送達することによって達成することができる。十分な数の細胞/ビーズがアレイに導入されると、周囲の液体よりも密度の高い細胞/ビーズがチャンバーの底に沈降する。チャンバーの底部では流速が無視できるほどであるため、チャンバーの底部に達すると、細胞は、流れから効果的に隔離される。様々な実施形態では、本明細書で提供される装置は、底部構成要素のチャンバーに接続する上部構成要素のチャネルを閉じ、これにより各チャンバーを隔離することを可能にする能動マイクロ弁を備える。このような弁構造を使用して、制御され自動化された方式でアレイの特定の領域に試薬を送達することもできる。流れが再びチャンバーの上を通過すると、チャンバーの底部で細胞/ビーズが移動しない程度に十分に減弱される。しかしながら、チャンバーの上部とチャンバーの底部との間の短い長さのスケールは、拡散がアレイのチャンバー内の培地内容物を迅速に交換できるようなスケールである。このようにして、装置は、培地内容物をリフレッシュ又は交換するために必要な洗浄ステップを行う能力を保持しながら、懸濁細胞型及びビーズの固定化を可能にする。この装置の実施形態及び装置の形状の別の特徴は、チャンバーの底部がガラス基板に近接し、かつ倒立顕微鏡構成又は他の機器を使用して高品質のイメージングを可能にするようにチャンバーが製造されることである。
【0068】
チャンバーのその周囲環境からの隔離は、一実施形態では、チャンバーをその周囲環境に対して物理的に密閉することなく達成される。つまり、一実施形態では、隔離は、チャンバー間の流体連通を制限して、1つのチャンバーと隣接するチャンバーとの間の有意な汚染を排除することによって達成される。例えば、1つ以上の弁を使用する代わりに、隣接するチャンバーが、チャンバー間の拡散を制限するアスペクト比で製造され、かつ/又は油のような不混和性流体相を使用して分離され、チャンバーの入口及び/又は出口が遮断される。例えば、チャンバーは、その中の分泌産物(例えば、抗体)の分析を著しく妨げないよう、チャンバーの内外の分子の拡散が十分に遅くなるようにデザインされる。例えば、理論に拘束されることを望むものではないが、1つのチャンバーの底部から別のチャンバーの底部に移動するために分子が拡散しなければならない総最小距離がチャンバーの最小横寸法の2倍を超えるようにチャンバーがデザインされると、元のチャンバー内の読み出し粒子と相互作用する分泌分子と、隣接するチャンバー内の読み出し粒子と相互作用する分泌分子との比は、読み出し粒子との相互作用により分泌分子が読み出し粒子に結合する場合は10を超える。この条件は、最小横寸法に対する高さとして定義されるチャンバーのアスペクト比が、0.6以上、例えば、1以上、0.6以上であるが10以下、1以上であるが10以下、1.25以上であるが5以下である場合は満たされる。特に、このアスペクト比はまた、チャンバー内の細胞を維持したまま、チャンバー内の試薬の交換を可能にするのにも十分である。
【0069】
本明細書で提供される装置の実施形態は、試薬及び細胞をオープンチャンバーの内部又は外部に直接充填することによって、細胞及び試薬のハンドリング並びに各アレイのチャンバーからの細胞の回収を大幅に容易にする。
【0070】
一実施形態では、本明細書に記載の細胞外効果アッセイの1つ以上を行うための「分割」マイクロ流体装置が提供される。この分割装置は、2つの構成要素、すなわち上部構成要素及び底部構成要素を備える。底部構成要素は、細胞外効果アッセイチャンバーを備える。上部構成要素は、本明細書に記載されているように、MSLによって多層化して製造することもできる。別の実施形態では、上部構成要素は単一層である。分割装置の一実施形態が
図4に示されている。
図4は、上部構成要素401及び底部構成要素402を備える2構成要素装置400を示している。底部構成要素は、オープンチャンバー403を備える。上部構成要素は、プッシュダウン弁構造404及びオープンチャネル405を備える。
【0071】
洗浄ステップ及び灌流ステップは、本明細書に記載の細胞外効果アッセイで行われ、比較的低い圧力で行うことができ、かつ典型的には、隣接するチャンバー間のある程度の漏れによる悪影響を受けないため、この分割装置構造は、本明細書に記載の方法を行うために使用することができる。さらに、拡散経路の総距離が、分泌細胞を有するチャンバー内の分泌細胞と読み出し粒子との間の拡散経路と比較して十分長い、又は拡散経路が拡散による大量輸送を制限するように制限されている、又はこれらの両方である場合は、チャンバー間の拡散経路の存在は、チャンバー間の著しい汚染をもたらさない。従って、隣接するチャンバーは密閉を必要としない。このため、本明細書に記載の細胞外効果アッセイの1つ以上を行うための2つの別個の構成要素を備える装置が提供される:(i)高アスペクト比のチャンバーのオープンアレイを備える底部構成要素、及び(ii)底部構成要素のチャンバーのアレイに整合するようにデザインされた底部層上にオープンマイクロチャネルと、これらのマイクロチャネルを通る流れを制御するために使用することができるが、周囲環境からのチャンバーの遮断には必要ない一体化されたマイクロ弁とを備える上部流体構成要素(
図4)。上部構成要素におけるこのような多層は、例えば上述のMSLによって製造される。上部構成要素は、マイクロ弁がチャンバー間に配置されように底部構成要素に整合されて押圧され、従って作動されると、それぞれのチャンバーが互いに遮断される。また、チャネル構造を装置の底部構成要素によって画定することができ、そして上部構成要素を使用して、チャネルへの流れを妨げる膜を変形させることによってこれらのチャネルに対して作動する弁を画定することができるものとする。
【0072】
この分割マイクロ流体装置は、非分割装置、すなわち、完全に密閉された層、すなわちマイクロチャネルを介してアドレス指定する必要のあるチャンバーを備える、MSLによって製造される装置と比較して、細胞の充填を大幅に容易にする。底部構成要素のオープンチャンバーアレイは、細胞懸濁液及び/又は粒子の添加によって最初に充填される。細胞/粒子が分割装置のチャンバー内に落ち着くと、装置の上部構成要素がアレイ上に配置されて、スクリーニングに必要な流体のハンドリングステップ及びイメージングステップが行われる。アッセイが完了したら、装置の上部構成要素を再度取り外して、アレイを底部構成要素に露出させ、選択されたチャンバーから細胞又は読み出し粒子、又はその両方を回収することができる。充填手順を単純化することに加えて、この戦略はまた、薄いPDMS膜内に装置を製造する必要がないため、装置の製造を単純化する。特に、0.6以上、例えば、0.7以上、1以上のアスペクト比を有するチャンバーの使用は、チャンバーから細胞を洗い流すことなく溶液を交換する能力を維持するため、そして細胞が減少する原因であり得るチャンバー内の流れを生じさせることなく、上部基板を取り外しを可能にするため、このアプローチにとって極めて重要である。一実施形態では、オープンチャンバーを備える装置の底部構成要素のアスペクト比は、0.6以上、例えば、0.7以上、1以上であるが、約10未満である。
【0073】
別の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の細胞外効果アッセイを行うための「分割」2構成要素マイクロ流体装置が提供される。この分割装置は、2つの構成要素、すなわち上部構成要素及び底部構成要素を備える。上部構成要素は単一層を備え、かつ底部構成要素は単一層を備える。各層は、本明細書に記載のソフトリソグラフィーによって製造することができる。「2構成要素」装置は、2つの構成要素を備えるが、これらの構成要素は、MSLによって製造される単一構成要素装置内に存在する複数の「層」とは異なることも留意されたい。本明細書に記載の2構成要素装置は、可逆的結合によって形成され、個々のアッセイステップの後に分離することができるが、MSLによって製造された装置の層は、装置を破壊しないと分離することができない。
【0074】
分割装置の様々な実施形態500及び500’の概略断面図が、
図5(上側及び下側)に示されている。これらの実施形態では、多層上部を有する分割装置とは異なり、装置500の上部構成要素は、一体化された弁を備えるのではなく、チャネル構造又はフローセル構造504を備える単一層501からなる(
図5)。この型の装置は、能動弁を備えていないが、周辺制御フルイディクスと共に使用して、チャンバーアレイ全体での試薬の流れ及び交換を制御することができる。別の実施形態では、上部構成要素は、特徴のない表面を有し、かつ底部構成要素に画定されたチャネルを形成するために使用される。
【0075】
様々なフロー構造、例えば、単一広幅フローセル504(
図5の上側)、一群の「スタンドオフ」スペーサー504’を有するフローセル(
図5の下側)、及びチャネルのアレイなどを上部構成要素501及び501’に使用することができる。さらに、底部構成要素502及び502’のチャンバー503及び503’への細胞の充填は、完全な装置の組み立て前に行われるため、上部構成要素又は底部構成要素のフロー構造は、従来のマイクロ流体装置、例えばMSLによって製造されるマイクロ流体装置より狭くすることができることに留意されたい。例えば、フロー構造は、約2μm、又は5μm、10μm、又は20μmの最小寸法を有し得る。
【0076】
この幾何学的形状は、アッセイチャンバーを互いに遮断するためのマイクロ弁を備えていないが、溶液を流すことができる入口及び出口に1つ以上のチャンバーを接続する小さいチャネルの使用が、隣接するチャンバー間の拡散を遅くするのに十分であり、これにより、アッセイ性能を妨げないレベルまで交差汚染が減少する。さらに、チャンバー間の拡散輸送を最小限に抑えることに加えて、本明細書に記載のチャネルのような小さい断面を有するチャネルの使用により、インキュベーション中のチャンバー間の望ましくないあらゆる対流を抑制する高い流体インピーダンスが生じることに留意されたい。さらに、上部構成要素は、装置の上部構成要素と底部構成要素を接合するために用いられる圧力を使用して、チャンバーを接続する流路の断面を調節し、そしてチャンバーを密閉さえするようにデザインすることができる。例えば、上部構成要素は、圧力を増加することによって変形させることができ、これにより、2つの構成要素間で変形可能な膜構造を必要とすることなく、アレイを密閉することを可能にする柔軟な「スタンドオフ」構造504’を用いて製造することができる(
図5の下側)。
図5は、1つおきのチャンバーにある「スタンドオフ構造」を示しているが、この構造は、各チャンバー間に、2つおきのチャンバーなどに利用することができることに留意されたい。その開示内容が全て参照により本明細書に組み入れられる、国際公開第2014/153651号パンフレットに記載されている装置のキー機能の導入及び維持を容易にすることに加えて、この実施形態はまた、一連の巨視的弁及び流体工学を使用してアレイへの送達を制御することによって、装置の製造を大幅に単純化し、そして機器における自動化に容易に適応する。
【0077】
さらに別の実施形態では、分割装置は、(i)0.6以上、例えば、0.7以上、1以上であるが約10以下、1以上であるが約5以下の高アスペクト比のチャンバーのオープンアレイを有する底部基板構成要素、及び(ii)底部構成要素に対する上部構成要素の平行移動によってこの底部構成要素のアレイ内のチャンバーを可逆的に密閉することを可能にするようにデザインされた上部構成要素を備える。上部構成要素601及びマイクロチャンバー603を有する底部構成要素602を備える装置600などの断面概略図が
図6に示されている。この実施形態では、装置600の上部構成要素601は、装置の底部構成要素及びチャンバー603上に整合されるとアレイのチャンバー603へ溶液を送達するための流路を提供するマイクロチャネル604(
図6)の導管を備えて製造される。流体/試薬の送達後に、上部構成要素を、底部構成要素に対して平行移動させることができる(
図6の下側)。こうすると、チャネル604がチャンバーと接触しなくなり、チャンバー603が上部構成要素の表面によって密閉される(
図6の下側)。上層を平行移動させることにより、底部構成要素内のチャンバーを完全に密閉する方法が提供される。この装置にも、他の分割構成要素装置用に存在する細胞及び試薬のハンドリング並びに細胞の回収の利点が存在する。
【0078】
さらに別の分割構成要素装置の実施形態は、上部構成要素701及び底部構成要素702を備える装置700を含み、その断面図が
図7に示されている。
図7に示されているように、上部構成要素701は、パターン化されていない上部を備える。具体的には、分割構成要素装置は、(i)それぞれが0.6以上、例えば、0.7以上、又は1以上であるが約10以下、1以上であるが約5以下のアスペクト比を有するチャンバー703のオープンアレイを有する底部構成要素、及び(ii)実質的に平坦でパターン化されていない上部構成要素を備える。底部構成要素は、チャンバーアレイのチャンバー間に1つ以上の隆起部分(スペーサー)704を備える。一実施形態では、隆起部分は、当業者に公知のように、ソフトリソグラフィー及び複数のフォトレジストを用いるフォトリソグラフィーによって製造される。1つ以上の隆起部分は、2つの構成要素が接合されたときに上部構成要素と底部構成要素との間に空間を画定する。
【0079】
この実施形態では、チャンバーを通る流れは、本明細書に記載の他の分割装置と比較して制御しにくいが、それでも、アレイ全体に圧力を全体的に加えることによって、例えば、液体カラムによって生成される静水圧によって、又はピペットのようなディスペンサーを用いて流れを生じさせることによって、又は第2の部品の上の培地を交換し、次いでこの第2の部品を短時間上下に動かしてアレイへの流体の移動を引き起こすことによって達成することができる。上部構成要素を、インキュベーションの間にチャンバーのアレイの表面に直接接触させて、1つ以上のチャンバーを密閉することができる。
【0080】
一実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の細胞外効果アッセイを行うための複数のチャンバーを備えるオープンチャンバーマイクロ流体アレイが提供される。この実施形態では、アレイは、1つ以上の細胞外効果アッセイを行うときに上部構成要素なしで使用される。しかしながら、上部構成要素、例えばPDMSから製造される上部装置構成要素を、任意選択により利用して、イメージング(細胞外効果アッセイの読み出し)の間にチャンバーアレイの一部のみを覆う。このような装置800の断面の概略図が
図8に示されている。分割装置と同様に、アレイチャンバーは、細胞/粒子が流れによって絶対に妨害されない深さで製造されるが(すなわち、チャンバー803が、約0.6以上、例えば、0.7以上、1以上、1以上であるが約10以下、1以上であるが約5以下のアスペクト比を有する)、1つのチャンバーの底部から別のチャンバーの底部への拡散経路が十分に長いため、それぞれの細胞が位置するチャンバー内の粒子による細胞分泌産物(例えば、抗体)の捕捉の相対効率が、隣接するチャンバーと比較して、規定された実験条件(例えば、インキュベーション時間、ビーズの数、ビーズのサイズ、チャンバーの間隔など)で5倍を超える。
【0081】
捕捉の相対効率=RE=細胞を含むチャンバーで捕捉された、細胞を含むチャンバーの細胞分泌産物の数/隣接するチャンバーで捕捉された、細胞を含むチャンバーの細胞分泌産物の数
【0082】
この実施形態では、パターン化されていない上部構成要素801は、使用される場合は、イメージングの間、チャンバーアレイの上部に存在する大量の可溶性蛍光分子804に由来するバックグラウンド蛍光シグナルを排除する。パターン化されていない上部801のサイズは、例えばチャンバーアレイ又はその一部を覆うリザーバー内の培地を移動させることができる培地の容量を規定する。
【0083】
一例として、チャンバー内の抗体が同じチャンバー内に位置する抗体捕捉ビーズに捕捉されている場合を考える。捕捉されたら、抗体は、アレイの上部の上の溶液に添加することができる可溶性蛍光抗原に曝される、又はアレイを覆う溶液の一部又は実質的に全てを最初に除去し、続いて可溶性蛍光抗原を含む溶液を適用することによって加えられる。抗体が蛍光抗原に結合すると、ビーズに結合した抗体が、蛍光シグナルを蓄積することになる。しかしながら、ビーズの上に多量の蛍光抗原も存在し、これが、特定の蛍光シグナルを不明瞭にするバックグラウンド蛍光を生じさせることになる。イメージングの前に蛍光分子が除去されると、バルク溶液中の抗原の濃度が低下し、これによりビーズ上の結合抗体の量が、抗体-抗原相互作用のオフレートによって決まる速度で減少する。かなり強い相互作用(約1nM)でさえ、これは、アレイのイメージング時間(例えば、約10分)より短い時間フレーム内でシグナルの著しい低下を引き起こし得る。しかしながら、このバックグラウンド蛍光は、画像取得ステップの間に上部構成要素801を使用してアレイの近傍から蛍光溶液を移動させることによって、アレイを洗浄することなく除去することができる。この上部構成要素は、例えば、イメージングシステムに固定され、画像取得領域の上に配置することができ、装置は、アレイ全体の画像の取り込み中に平行移動される。
【0084】
一部の実施形態では、エフェクター細胞及び読み出し粒子は、チャンバーの1つ以上の壁のコーティング、例えば表面の官能化によってチャンバー内に分布される。一実施形態では、表面の官能化は、グラフト、共有結合、吸着、若しくは他の方法で1つ以上の分子をチャンバーの表面に付着させることによって、又は細胞又は粒子のチャンバー表面への付着が変化するようにチャンバー表面を修飾することによって行われる。本明細書で使用するためのこのような官能化の非排他的な例は、タンパク質の非特異的吸着、タンパク質の化学的結合、ポリマーの非特異的吸着、ポリマーの静電吸着、小分子の化学的結合、核酸の化学的結合、表面の酸化などである。PDMS表面官能化は、既に説明されており、これらの方法を使用して、本明細書で提供される装置の表面を官能化することができる(例えば、参照によりあらゆる目的のために本明細書に組み入れられる、Zhou et al.(2010).Electrophoresis 31,pp.2-16を参照)。本明細書に記載の表面官能化により、一実施形態では、1種類のエフェクター細胞(例えば、細胞集団内に存在するエフェクター細胞)が選択的に結合するか、又は1種類の読み出し粒子が選択的に結合する。別の実施形態では、表面官能化を使用して、チャンバー内に存在する全ての読み出し粒子を隔離する。
【0085】
さらに別の実施形態では、表面官能化であり得る表面コーティング、又は複数の異なる表面の官能化は、装置のチャンバー内に空間的に画定される。あるいは、表面官能化は、チャンバー表面全体を覆う。両方の実施形態は、エフェクター細胞及び読み出し粒子をアッセイチャンバー内の別個の位置に分布させるのに有用である。例えば、チャンバー全体が、導入される読み出し粒子の全ての種類に結合する分子で官能化される実施形態では、これらの粒子は、官能化(コーティング)表面に固定化される。別の実施形態では、複数の読み出し粒子種が導入される場合、チャンバー全体が官能化されて、1つの特定の種類の読み出し粒子のみが結合する。この実施形態では、全ての粒子は、まず本明細書に記載の方法の1つを用いて1つの領域に誘導され、粒子のサブセットが官能化領域内のチャンバー表面に付着し、続いて異なる領域に向かって力を加えることにより、官能化表面又は表面に結合しない粒子のみを移動させる。さらに別の実施形態では、装置の領域(例えば、異なるチャンバー又は単一チャンバー内の領域)が、エフェクター細胞及び/又は読み出し粒子の異なるサブセットに選択的に結合する異なる分子で官能化され、これにより、エフェクター細胞及び/又は読み出し粒子の実質的に全チャンバー表面との相互作用が誘導され、異なる粒子又は細胞型が異なる領域に分配されることになる。本明細書に記載されるように、表面官能化は、エフェクター細胞及び読み出し粒子の操作のための本明細書に記載の他の方法とは別に又は組み合わせて使用できることが意図される。複数の流体形状と共に、粒子及び細胞の隔離方法の複数の組み合わせが可能である。
【0086】
別の実施形態では、エフェクター細胞及び/又は読み出し粒子は、磁場を用いてチャンバー内に配置される。エフェクター細胞及び/又は読み出し細胞を磁気的に操作して配置するために、エフェクター細胞及び/又は読み出し細胞は、最初にこれらに結合する磁性粒子で官能化される、又はこの磁性粒子に曝露されることを理解されたい。一実施形態では、磁場は、永久磁石、電磁石、ソレノイドコイル、又は他の手段を用いて、マイクロ流体装置の外側の磁石を使用することによって外部に生成される。別の実施形態では、
図9を参照すると、磁場は、装置に一体化された、又は装置から分離された磁気構造90によって局所的に生成される。磁場は、一実施形態では、異なる時間に印加され、一実施形態では、磁場は、粒子の充填と共に印加されて、磁場に応答するエフェクター細胞及び/又は読み出し粒子の位置に影響を与える。生物学的試料の分離及び/又は精製に使用される市販のビーズ又はナノ粒子は、本明細書で提供される装置及び方法に使用することができる。例えば、「Dynabeads」(Life Technologies)は、超常磁性の単一粒径の球状ポリマー粒子であり、一実施形態では、読み出し粒子として使用される。異なる標的エピトープ又は細胞型に特異的に結合する分子と結合した磁性粒子は、当分野で周知であり、本明細書で提供される装置及び方法に使用するのにも適している。不均一特性を有する磁場が存在するときには、このような磁性粒子は、磁場の勾配に向けられる力を受ける。この勾配の力は、一実施形態では、チャンバー内の粒子を配置するために加えられる。
【0087】
1つのチャンバーに、細胞集団及び読み出し粒子又は読み出し粒子集団、及び細胞集団に対するアッセイを行うための任意選択による追加の試薬が充填されると、チャンバーは、一実施形態では、マイクロ流体装置の1つ以上の他のチャンバーから流体的に分離される。
【0088】
本明細書で提供されるように、一態様では、本発明は、細胞外効果を示すエフェクター細胞を含む細胞集団を同定する方法に関する。細胞集団が細胞外効果を示すことが決定されたら、細胞集団又はその一部が回収され、回収細胞集団が得られる。回収は、一実施形態では、本明細書の1つの装置のチャンバーにマイクロキャピラリー又はマイクロピペットでアクセスし、チャンバーの内容物又はその一部を吸引して、回収細胞集団を得ることを含む。本明細書で提供される装置は、上部構成要素で可逆的に密閉可能な底部構成要素内のチャンバーを利用するため、目的の細胞を含むチャンバーが同定されたら、その内容物が、2つの構成要素を分離してチャンバーに直接アクセスすることにより、吸引又はピペット操作によって容易に回収される。
【0089】
回収細胞集団は、一実施形態では、例えば、細胞外効果に関与する回収細胞集団からの単一エフェクター細胞又はエフェクター細胞の亜集団を同定するために、さらなる分析が行われる。回収細胞集団は、第1の細胞外効果と同じであっても異なっていてもよい第2の細胞外効果の亜集団として、限界希釈で分析することができる。次いで、第2の細胞外効果を示す細胞亜集団を、例えばRT-PCR及び/若しくは次世代配列決定などの卓上法によって、例えば、本発明の装置における第3の細胞外効果のさらなる分析のために回収することができる。あるいは、細胞集団からの核酸を配列決定して、例えば、この細胞集団の抗体配列を決定する。次いで、さらなる試験のために、この抗体をクローニングして発現させることができる。
【0090】
1つ以上のアッセイチャンバーからの1つ以上の細胞の回収は、一実施形態では、磁気分離/回収を含む。例えば、一実施形態では、アッセイチャンバーは、このチャンバー内の1つ以上の細胞に付着する磁性粒子(又は複数の磁性粒子)に曝露される。付着は、ウェル内の単一細胞、細胞の亜集団又は集団に対して選択的であってもよいし、又は非選択的、すなわち、磁石が全ての細胞に接着できてもよい。この場合、磁性粒子で標識された細胞は、磁場勾配を生成する磁気プローブに引き寄せられる。プローブは、一実施形態では、磁場をオン・オフにすることができ、除去のために細胞をプローブに付着させ、次いで、堆積中に放出されるようにデザインされている。(EasySep Selection Kit,StemCell Technologies)。
【0091】
チャンバーから回収された単一細胞又は複数の細胞は、一実施形態では、例えば、オープンマイクロウェル、微小液滴、管、培養皿、プレート、ペトリ皿、酵素結合免疫吸着スポット(ELISPOT)プレート、第2のマイクロ流体装置、(異なる領域にある)同じマイクロ流体装置などの1つ以上の容器にさらなる分析のために堆積される。容器の選択は、当業者によって決定され、下流分析及び/又は貯蔵の性質に基づく。
【0092】
一部の実施形態では、細胞由来産物又は細胞内物質は、同定されたチャンバーから単一細胞又は複数の細胞を回収する代わりに、又はこれに加えて、目的のアッセイチャンバーから回収される。例えば、アッセイチャンバーが、細胞外効果の変化を実証する細胞を有すると同定された場合、一実施形態では、このチャンバーからの分泌産物が、下流分析(例えば、配列分析)のために回収される。別の実施形態では、細胞又は複数の細胞が、マイクロ流体装置、例えば第1のアッセイが行われるチャンバー内で溶解され、この溶解物が、例えば核酸配列決定などのさらなる分析のために回収される。
【0093】
別の実施形態では、全てのチャンバー又はチャンバーのサブセットにおける細胞が、溶解試薬を用いて溶解され、次いで、所与のチャンバー又はチャンバーのサブセットの内容物が回収される。別の実施形態では、1つ又は複数の目的のチャンバー内の細胞が、この細胞から放出されるRNAを捕捉するビーズの存在下で溶解され、続いてビーズが回収される。この場合、このRNAを、回収の前又は後に逆転写酵素を用いてcDNAに変換することもできる。
【0094】
目的の1つ又は複数のチャンバーからの細胞又は細胞由来物質の回収後に、これらの物質又は細胞を分析して、単離物、又は単一細胞又は複数の細胞を同定又は特徴付ける。さらなる分析は、本明細書で提供される1つの装置(例えば、
図2を参照)、例えば国際公開第2014/153651号パンフレットで既に説明された1つの装置、又は従来の卓上法によって行うことができる。従って、本発明は、例えば、第2の細胞外効果、第3の細胞外効果、及び/又は第4の細胞外効果を示す回収細胞集団から細胞亜集団を同定するために、複数回のマイクロ流体分析を可能にする。回収細胞集団に対して細胞外効果アッセイを繰り返すことにより、この方法の使用者は、1つ又は複数の目的の機能的特徴のために高度に濃縮された細胞集団を得る。あるいは、第2の細胞外効果アッセイは行われず、細胞外効果を実証する細胞集団が回収され、例えばこの細胞集団内の抗体配列を決定するために核酸の配列決定が行われる。
【0095】
一実施形態では、細胞外効果(例えば、別の集団又は対照値と比較した細胞外効果の変化)を示す1つ以上の細胞集団を回収して、1つ以上の回収細胞集団を得る。1つ以上の個々の細胞集団をさらに分析して、観察された細胞外効果に関与する1つ又は複数の細胞を、例えば、細胞亜集団として限界希釈で決定する。一実施形態では、この方法は、本明細書に記載のマイクロ流体装置の別個のチャンバー内に、1つ以上の回収細胞集団に由来する複数の細胞亜集団を保持するステップを含む。別個のチャンバーのそれぞれは、1つ以上の読み出し粒子を含む読み出し粒子集団を含む。個々の細胞亜集団は、読み出し粒子集団と共にインキュベートされる。個々の細胞亜集団は、第2の細胞外効果についてアッセイされ、この読み出し粒子集団又はその亜集団は、第2の細胞外効果の読み出しを提供する。第2の細胞外効果は、回収細胞集団で測定された細胞外効果と同じ細胞外効果又は異なる細胞外効果であり得る。第2の細胞外効果アッセイに基づいて、第2の細胞外効果(例えば、別の集団又は対照値と比較した第2の細胞外効果の変化)を示す1つ以上の個々の細胞亜集団が同定される。次いで、一実施形態における1つ以上の個々の細胞亜集団が、さらなる分析、例えば、核酸の配列決定のために回収される。
【0096】
「細胞サブ亜集団(sub-subpopulation)」という用語は、細胞亜集団の亜集団を指すことを意味する。一実施形態では、回収された亜集団又は複数の細胞亜集団からの細胞は、細胞サブ亜集団として複数の容器に保持される。当業者であれば、細胞亜集団をさらなる亜集団に分割することができ、「サブ亜集団」という用語の使用は、この区別を行うためには必ずしも必要ではないことを理解されよう。むしろ、本明細書で提供される方法は、限界希釈度での回収細胞集団のさらなる分析を可能にする。各細胞亜集団は個々の容器内に存在する。個々の亜集団又はサブ亜集団が溶解され、それぞれの溶解細胞亜集団又は溶解細胞サブ亜集団内の1つ以上の核酸が増幅される。さらなる一実施形態では、1つ以上の核酸は抗体遺伝子を含む。
【0097】
細胞の性質、元のスクリーニングにおける細胞数、及び分析の目的によっては、本明細書で提供される装置の1つを用いた分析を含むいくつかのアプローチをこの下流分析に使用することができる。一実施形態では、エフェクター細胞集団がチャンバーから回収される場合、又は複数の集団が複数のチャンバーから回収される場合は、複数の集団のうちの各細胞が、個々の容器(例えば、個々のアッセイチャンバー)に分離され、分析が、各エフェクター細胞に対して個々に行われる。あるいは、複数のチャンバーの内容物を、例えば、集団内の抗体配列を決定するために、核酸配列の決定のような下流分析のための個々のチャンバー又は容器にプールすることができる。必要に応じて、バイオインフォマティクスを使用して重鎖と軽鎖を対にすることができる。
【0098】
エフェクター細胞の集団がチャンバーから回収される、又は複数の集団が複数のチャンバーから回収される別の実施形態では、細胞集団が、別個の領域にある同じマイクロ流体装置上に、又は第2の装置内に再導入され、細胞が、限界希釈でチャンバー内で分離される、すなわち細胞亜集団として、例えば、細胞が、チャンバー当たり約1個の細胞密度、又はチャンバー当たり約2~約10個の細胞密度で分離されて、第2の細胞外効果アッセイが行われる。下流分析は、任意のサイズの細胞亜集団、例えば、複数のチャンバーからの細胞がプールされる場合は、初期の細胞外効果細胞アッセイと同じサイズ、又はより小さい集団サイズ、例えば、1つの細胞、2つの細胞、約2~約20個の細胞、約2~約25個の細胞に対して行うことができる。読み出し粒子が、細胞亜集団を含むチャンバー内に導入され、第2の細胞外効果アッセイが行われる。細胞外効果(例えば、別の細胞集団又は対照値と比較した細胞外効果の変化)を示す細胞亜集団を含むチャンバーの内容物が、さらなる分析のために回収される。このさらなる分析は、(例えば、第3の細胞外効果アッセイ、単一細胞PCRを行うことによる)本明細書で提供される装置の1つ、卓上分析(例えば、PCR、次世代配列決定)、又はこれらの組み合わせを用いることができる。
【0099】
一実施形態では、個々の回収されたエフェクター細胞を、複数の細胞培養容器に複数の細胞を限界希釈度で分布させることによって培養液中で増殖させて、回収された細胞からクローンを得る。例えば、抗体のライブラリーを発現するようにエンジニアリングされた細胞株の複数のエフェクター細胞が、目的の1つ又は複数のチャンバー内に存在する実施形態では、1つ又は複数のチャンバーからの細胞を限界希釈して、この1つ又は複数のチャンバー内に存在する単一エフェクター細胞を分離する。次いで、単一エフェクター細胞を使用して、それぞれのエフェクター細胞のクローン集団を得る。次いで、1つ以上のクローン集団を分析して、(例えば、ELISA又は機能アッセイによって)分泌された抗体の特性を測定することによってどのエフェクター細胞が目的の抗体を産生するかを評価することができる。
【0100】
あるいは、又はこれに加えて、細胞をアッセイチャンバーから回収し、例えば限界希釈によって分離し、そして増幅して、目的の1つ以上の遺伝子、例えば、抗体をコードする遺伝子の配列決定又は増幅及び精製のための十分な物質を得る。さらに別の実施形態では、細胞をアッセイチャンバーから回収し、例えば限界希釈によって分離し、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は逆転写酵素(RT)-PCRによる単一細胞DNA又はmRNA増幅に使用し、続いて配列決定を行って目的の1つ以上の遺伝子の配列を決定する。別の実施形態では、細胞外効果を示す細胞の集団を、1つ以上のアッセイチャンバーから回収し、例えば限界希釈によって分離し、続いて目的の遺伝子の単一細胞DNA又はmRNA増幅に使用し、次いで、後の発現及び分析のためにこれらの遺伝子を別の細胞型にクローニングする。別の実施形態では、細胞集団からの核酸は、同じ反応で配列決定される。
【0101】
一実施形態では、回収細胞集団又は亜集団を分離して、例えば、これらを(又は回収細胞集団からの抗体)を動物に注入することによって生体内分析に使用する、又は培養液中で増殖する。
【0102】
一実施形態では、(例えば、本明細書で提供される装置の1つにおける第1又は第2の細胞外効果アッセイの後に)細胞外効果を示す細胞集団又は亜集団が回収され、回収された細胞の1つ以上の核酸が増幅される。増幅は、一実施形態では、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、cDNA末端の5’迅速増幅(RACE)、インビトロ転写、又は全トランスクリプトーム増幅(WTA)によって行われる。さらなる実施形態では、増幅は、逆転写(RT)-PCRによって行われる。RT-PCRは、単一細胞又は集団の複数の細胞に対して行うことができる。単一細胞から抗体遺伝子を回収するための2つの主なアプローチには、縮重プライマーを用いるRT-PCR及びcDNA末端の5’迅速増幅(RACE)PCRが含まれる。一実施形態では、RT-PCR法は、遺伝子特異的テンプレートスイッチングRT、これに続くセミネステッドPCR及び次世代アンプリコン配列決定に基づく。核酸分析も、プールされた細胞集団に対して行うことができ、続いてバイオインフォマティックアプローチで重鎖と軽鎖の抗体対を同定する。
【0103】
細胞外効果の変化を示す同定されたエフェクター細胞と共に使用するためのRT-PCR法の一実施形態が
図10に示されている。この概略図は、テンプレートスイッチング逆転写及び多重化プライマーを用いた単一細胞HV/LVアプローチを示している。この実施形態では、単一細胞が微量遠心管に入れられ、重鎖及び軽鎖定常領域を標的とする多重化遺伝子特異的プライマーからcDNAが作製される。MMLV酵素のテンプレートスイッチング活性を使用して、得られたcDNAの3’末端にテンプレート-スイッチングオリゴの逆相補体を付加する(それぞれ参照によりそれらの全内容があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる、Huber et al.(1989).J.Biol.Chem.264,pp.4669-4678;Luo and Taylor(1990).J.Virology 64,pp.4321-4328)。重鎖及び軽鎖の定常領域における多重化プライマー及びコピーされたテンプレートスイッチングオリゴに相補的なユニバーサルプライマーを用いるセミネステッドPCR(共通3’プライマー、及びRTプライマー領域内に位置する多重化ネステッドプライマー)を使用して、cDNAを増幅し、それぞれの単一細胞アンプリコンに特異的なインデックス配列を導入する。得られた単一細胞アンプリコンは、プールされ、配列決定される。
【0104】
場合によっては、マイクロ流体装置から回収された後の回収細胞集団は、単一細胞にさらに分離されないし、さらなる分析のために限界希釈もされない。例えば、チャンバーから分離された複数の細胞が、目的の抗体を分泌する細胞(例えば、他の抗体を分泌する1つ以上のさらなる細胞の集団内に存在する)を含む場合、複数の細胞を、一実施形態では、培養液中で増殖させて、複数の細胞のクローン集団を作製し、そのうちの1つ又はいくつかが所望の産物(すなわち、目的の抗体)を産生する。別の実施形態では、チャンバーから回収された複数の細胞を(マイクロ流体装置上又は回収後のいずれかで)溶解し、続いて溶解物からプールされた核酸集団を増幅し、配列決定により分析する。この場合、得られた配列のバイオインフォマティクス分析を使用して、場合により他の情報源からの情報を用いて、どの配列が目的のタンパク質(例えば、抗体)をコードしている可能性が高いかを推測することができる。重要なことに、本発明によって提供される分析方法は、回収される細胞の数が限られているため、多数の細胞のバルク分析と比較して、大幅に単純化される。この限られた数の細胞は、細胞の集団内のゲノム情報の複雑さを軽減する。
【0105】
一実施形態では、複数の細胞の増幅されたDNA配列を使用して、当業者に公知の方法に従って、不死化細胞株において組換えにより発現される配列のライブラリーを作製する。次いで、この細胞株を、場合により最初にクローンを単離することによって解析して、目的の抗体遺伝子を同定することができる。一部の例では、これらのライブラリーを使用して、目的のタンパク質複合体を生じさせる遺伝子の組み合わせについてスクリーニングする。例えば、一実施形態では、遺伝子は、完全長抗体配列を同定するために抗体遺伝子の重鎖及び軽鎖の両方を含む。このような分析の複雑さは、回収されたチャンバーからの細胞数が少ないという事実によって大幅に軽減される。例えば、細胞外効果を示すチャンバー内に10個の細胞が存在する場合は、僅か100の可能な抗体重鎖と軽鎖の対形成しか存在しない。これと比較して、バルク試料は、典型的には、数百万の可能な対形成に対応する数千もの異なる抗体配列を有する。
【0106】
一部の実施形態では、回収された細胞は、当業者に公知の方法を用いてさらに分離できる異なる細胞型を含み得る。例えば、アッセイチャンバーが、ASC及びASCを維持するために使用される線維芽細胞の両方を含む場合、ASCは、一実施形態では、例えば親和性捕捉法を用いて、回収後に線維芽細胞から分離される。
【0107】
一実施形態では、単一装置の個々のチャンバーに存在する複数の細胞集団に対してアッセイを行って、1つ以上の集団内のエフェクター細胞が、細胞の増殖を阻害する又はその他の細胞外効果を示す抗体又は他の生体分子を分泌するか否かを決定する。次いで、例えばエフェクター細胞の限界希釈でのさらなる分析のためにチャンバーの内容物を回収して、どのエフェクター細胞がその効果に関与するかを決定することができる。抗体配列はまた、当業者に公知の方法によって回収して、配列決定することができる。本明細書に記載されるように、本発明の装置は、細胞のハンドリング及び細胞の回収を大幅に容易にする。
【0108】
目的の細胞外効果を示す1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団を同定した後、細胞集団を、一実施形態では、例えば、個々のチャンバー(又は他の反応容器)内の単一細胞として、又は個々のチャンバーのより小さい集団(第1のスクリーニングと比較して)として、限界希釈であるが再び分析して、細胞外効果に関与する個々のエフェクター細胞の同一性を決定する。この2段階スクリーニング法の一実施形態が
図2に示されている。細胞外効果に関与するエフェクター細胞が同定されたら、その遺伝情報を増幅して、配列決定することができる。
【0109】
一態様では、本明細書で提供される装置及び方法は、1つ以上の他の細胞集団と比較して細胞外効果を示す細胞集団の同定を可能にする。すなわち、細胞外効果シグナルの比較は、対照値、又は装置内のその他のチャンバー又は複数のチャンバーによって示される値を用いて行われる。この態様では、個々の細胞集団は、装置の別々のチャンバー内に保持され、個々の細胞集団の少なくとも1つは、1つ以上のエフェクター細胞を含み、別個のチャンバーはそれぞれ、それぞれ1つ以上の読み出し粒子を含む読み出し粒子集団を含む。細胞集団を、細胞外効果の存在についてアッセイし、これによって、読み出し粒子集団又はその亜集団が、細胞外効果の読み出しを提供する。次いで、細胞外効果、例えば複数の残りの細胞集団のうちの1つ以上と比較して異なる効果シグナル、又は対照値を示す細胞集団を複数の細胞集団の中から同定することができる。細胞外効果を示す細胞集団が同定されたら、その集団を回収して、限界希釈度でさらにアッセイして、細胞外効果に関与する細胞集団内の1つ又は複数の細胞を同定することができる。
【0110】
本明細書で分析することができる細胞集団は、特定の型又は供給源に限定されない。例えば、一実施形態では、チャンバー内で個々の細胞集団に分けられる細胞の集団は、免疫化された又は抗原に曝露された動物から単離された末梢血単核細胞(PBMC)であり得る。別の実施形態における細胞の集団は、免疫化された又は抗原に曝露された動物から単離されたB細胞である。細胞集団の供給源は、免疫された又は抗原に曝露された動物からの全血であり得る。細胞の集団は、免疫化された又は抗原に曝露された動物からのリンパ様組織又は骨髄又は脾臓に由来し得る。ナイーブレパートリーに注目することが望ましい場合は、細胞の集団の供給源は、免疫化されていない又は抗原に曝露されていない動物に由来し得る。
【0111】
1つ以上のエフェクター細胞を任意選択により含む個々の細胞集団をアッセイして、それぞれの細胞集団が細胞外効果(例えば、別の細胞集団又は対照値と比較した細胞外効果の変化)を示すエフェクター細胞を含むか否かを決定する。加えて、エフェクター細胞を含む細胞集団は、複数のエフェクター細胞を含む必要はないし、エフェクター細胞のみの集団である必要もない。むしろ、非エフェクター細胞は、本明細書に記載の実施形態では集団に含まれる。非エフェクター細胞は、集団の大多数又は少数であり得る。エフェクター細胞を含む異種集団は、複数のエフェクター細胞を含む必要はない。むしろ、異種細胞集団は、2つの細胞が互いに異種である場合は異種である。装置チャンバー内の細胞集団は、0個のエフェクター細胞、1個のエフェクター細胞、又は複数のエフェクター細胞を含み得る。同様に、細胞亜集団は、0個のエフェクター細胞、1個のエフェクター細胞、又は複数のエフェクター細胞を含み得る。
【0112】
一実施形態における細胞外効果は、結合性(例えば、動態測定、特異性、親和性など)、又は細胞若しくは細胞によって分泌される抗体などの生体分子のその他の細胞外効果である。例えば、一実施形態では、細胞外効果は、細胞表面受容体のアゴニズム若しくはアンタゴニズム、イオンチャネルのアゴニズム若しくはアンタゴニズム、又はABCトランスポーターのアゴニズム若しくはアンタゴニズム、アポトーシスの調節、細胞増殖の調節、読み出し粒子の形態学的外観の変化、読み出し粒子内のタンパク質の局在の変化、読み出し粒子によるタンパク質の発現、アクセサリー粒子の生物活性の中和、エフェクター細胞によって誘導される読み出し細胞の細胞溶解、エフェクター細胞によって誘導される読み出し細胞の細胞アポトーシス、読み出し細胞の細胞壊死、読み出し細胞による抗体の内在化、読み出し細胞によるアクセサリー粒子の内在化、エフェクター細胞による酵素中和、可溶性シグナル伝達分子の中和、又はこれらの組み合わせである。
【0113】
目的の標的(例えば、抗原)に結合する生体分子(例えば、抗体)を分泌するエフェクター細胞の存在及び同定は、目的の標的に特異的ではない抗体を分泌する複数のエフェクター細胞を含む異種細胞集団にエフェクター細胞が存在する実施形態では容易に確認される。一実施形態では、これは、最初に、抗体を捕捉するように官能化された(例えば、プロテインG又はプロテインAで官能化された)読み出し粒子(例えば、ビーズ)上の集団の分泌された抗体の全て又は実質的に全てをチャンバー内で捕捉し、蛍光標識抗原をチャンバー内に添加し、そして粒子をイメージングして、抗原の固定化された抗体への結合による蛍光の増加の有無を検出することによって個々の装置のチャンバーで達成される。単一細胞からの抗体分泌を測定する実験を行うことによって、信頼できる検出に必要なビーズ上に捕捉された抗体の最小数の推定値を得ることができる。一実施形態では、約250個の細胞の異種集団における単一ASCから分泌される抗原特異的抗体を検出することが可能である。従って、個々の反応チャンバーに存在する細胞集団は、約2~約250個の細胞、例えば、チャンバー当たり約10~約100個の細胞、又はチャンバー当たり約10~約50個の細胞を含み得る。別の実施形態では、チャンバーは、約2~約250個のASC、又は約2~約100個のASCを含む。一実施形態では、装置のチャンバーの80%超が細胞集団を含む。上記のように、細胞集団は、エフェクター細胞以外の細胞を含み得、全ての細胞集団がエフェクター細胞を含むわけではない。これは、特に、従来の濃縮プロトコル(例えば、FACS)を、同じ細胞型の実質的に純粋な細胞集団を得るために使用することができない場合に当てはまる。
【0114】
個々の細胞又は読み出し粒子のイメージングが必要とされる一実施形態では、集団内の細胞数は、イメージングされる細胞が単層に配置されるよう、イメージングされるチャンバーの床を覆うには不十分であるように選択される。あるいは、細胞集団は、チャンバーの表面を覆う二重層を形成するには不十分な数の細胞を含む。
【0115】
一部の実施形態では、より大きい細胞の集団が、集団内の単一エフェクター細胞又は少数のエフェクター細胞に起因する細胞外効果の検出を阻害することなく、単一チャンバー内の集団内に存在し得る。例えば、一実施形態では、細胞集団内の細胞数は、2~約300個、又は約10~約300個、又は約100~約300個である。別の実施形態では、細胞集団内の細胞数は、2~約250個、又は約10~約250個、又は約100~約250個である。別の実施形態では、細胞集団内の細胞数は、2~約200個、又は約10~約200個、又は約100~約200個である。別の実施形態では、細胞集団内の細胞数は、2~約100個、又は約10~約100個、又は約50~約100個である。別の実施形態では、細胞集団内の細胞数は、2~約90個、又は約10~約90個、又は約50~約900個である。さらに別の実施形態では、細胞集団内の細胞数は、2~約80個、又は10~約80個、又は2~約70個、又は約10~約70個、又は約2~約60個、又は約10~約60個、又は約2~約50個、又は約10~約50個、又は約2~約40個、又は約10~約40個、又は約2~約30個、又は約10~約20個、又は2~約10個である。一部の実施形態では、細胞集団内の細胞の大部分は、エフェクター細胞である。
【0116】
細胞試料は、一実施形態では、数千のチャンバー内の複数の細胞集団に分離され、単一チャンバー内の個々の細胞集団が、細胞外効果についてアッセイされる。1つ以上の個々の細胞集団は、1つ以上の集団内のエフェクター細胞が細胞外効果を示す場合に同定され、回収される。細胞外効果は、使用者によって決定され、一実施形態では、抗原、細胞表面受容体、ABCトランスポーター、又はイオンチャネルとの結合相互作用である。
【0117】
本明細書で提供される方法を使用して、結合相互作用、例えば抗原親和性及び特異性に基づいて(単独の又は異種集団内の)単一エフェクター細胞を同定することができるが、本発明は、これに限定されるものではない。むしろ、細胞集団の同定は、一実施形態では、直接機能アッセイの実施によって行われる。従って、本発明は、抗原標的に対する親和性及び選択性のような結合性について「機能性抗体」を最初にスクリーニングする必要なく、「機能性抗体」を分泌する細胞集団内のASCの直接的な発見を可能にする方法及び装置を含む。
【0118】
これらの方向に沿って、本明細書の方法によって発見可能な機能性抗体及び受容体が提供される。例えば、細胞外効果に関与するエフェクター細胞の核酸が増幅され、配列決定される。この核酸は、分泌生体分子(例えば、抗体又はその断片)、又は細胞受容体若しくはその断片、例えばT細胞受容体をコードする遺伝子である。抗体若しくはその断片、又は細胞受容体若しくはその断片は、当分野で公知の方法によってクローニングし、かつ/又は配列決定することができる。例えば、一実施形態では、機能性抗体を分泌するASCは、標的化細胞表面タンパク質、例えば、イオンチャネル受容体、ABC輸送体、Gタンパク質共役受容体(GPCR)、チロシンキナーゼ受容体(RTK)、又は内因性グアニル酸シクラーゼ活性などの内因性酵素活性を有する受容体に結合することによって細胞シグナル伝達を調節するASCである。
【0119】
1つ又は複数のエフェクター細胞を含む細胞集団は、チャンバー内で行われる細胞外効果アッセイの結果に基づいて、チャンバー内で同定される。細胞外効果がチャンバー内の細胞に起因する場合は、細胞集団を回収して分析し、細胞外効果に関与する集団内の1つ又は複数のエフェクター細胞を決定する(例えば、
図2を参照)。次いで、エフェクター細胞が抗体を分泌する実施形態では、1つ又は複数のASCによって産生される抗体をコードするDNA配列を決定し、続いてクローニングすることができる。一実施形態では、抗体DNA配列をクローンニングし、細胞株で発現させて、さらなる検証及び前臨床試験のためのモノクローナル抗体の不死供給源を提供する。
【0120】
一実施形態では、細胞集団には、標的エピトープに結合し得る分子のライブラリーを発現するように遺伝子操作された細胞の集団、目的のcDNAライブラリーに由来する遺伝子又は遺伝子断片を発現するように遺伝子操作された細胞、様々な生物学的機能のためのレポーターで遺伝子操作された細胞、及び不死化株又は主供給源に由来する細胞が含まれる。単一細胞に由来するクローンは、一実施形態では、例えば、遺伝子サイレンシング、分化、変更された遺伝子発現、形態の変化などのために互いに対して異種である。加えて、不死化株又は主供給源に由来する細胞は、単一細胞の同一のクローンではなく、互いに対して異種であると考えられる。単一細胞に由来するが、自然に体細胞超変異が起きる細胞、又は(例えば、活性化誘導シチジンデアミナーゼの発現を誘導することなどによって)体細胞超変異が起きるようにエンジニアリングされた細胞は、クローンとはみなされず、従って、これらの細胞は、一緒に存在すると異種細胞集団とみなされる。
【0121】
細胞集団が細胞外効果を示すとして同定されたら、一実施形態では、この細胞集団は、回収細胞集団を得るために選択的に回収される。複数の細胞集団が細胞外効果を示すと同定された場合、一実施形態では、複数の細胞集団を回収してプールし、回収細胞集団を得る。回収細胞集団は、この回収細胞集団が装置に最初に充填された細胞の開始集団と比較して高いパーセンテージのエフェクター細胞を有するという点で、この開始集団と比較してエフェクター細胞が濃縮される。あるいは、細胞からの核酸を配列決定して抗体の核酸配列を決定する。
【0122】
一実施形態では、回収細胞集団の亜集団が、第2の細胞外効果の存在についてアッセイされる。第2の細胞外効果は、同定された細胞集団についてアッセイされたものと同じ効果、又は異なる細胞外効果であり得る。さらなる実施形態では、同定された集団の亜集団はそれぞれ、約1~約10個の細胞を含む。なおさらなる実施形態では、同定された集団の亜集団は、それぞれ平均1個の細胞を含む。次いで、細胞外効果を示す1つ以上の亜集団を同定して回収し、回収亜集団を得、この回収亜集団は、一実施形態では、エフェクター細胞が濃縮される。複数の細胞亜集団が同定された場合、一実施形態では、これらの細胞亜集団を回収してプールし、回収細胞亜集団を得る。次いで、回収細胞亜集団からの遺伝子情報、例えば、抗体の遺伝子配列又はその断片を単離し、増幅し、かつ/又は配列決定することができる。
【0123】
本発明で使用するための細胞集団は、供給源に限定されるものではなく、むしろ、ヒト又は他の哺乳動物を含む任意の動物に由来してもよいし、あるいはインビトロ組織培養に由来してもよい。細胞は、直接分析することができ、例えば、供給源から採取した後に、又は所望の特性(例えば、特定の抗原に結合する抗体の分泌など)を有する集団を当分野で公知の様々なプロトコル、例えば、フローサイトメトリーの使用によって濃縮した後に直接分析することができる。動物源から採取する前に、一実施形態では、動物に1回以上の免疫化が行われる。一実施形態では、フローサイトメトリーを使用して、本明細書で提供される装置の1つに充填する前にエフェクター細胞を濃縮し、このフローサイトメトリーは、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)である。エフェクター細胞、例えばASCが濃縮され、個々のアッセイチャンバーに個々の細胞集団として保持されている細胞集団が使用される場合、この個々の細胞集団は、エフェクター細胞のみで構成される必要はない。むしろ、他の細胞型が、大多数又は少数として存在してもよい。加えて、個々の細胞集団のうちの1つ以上は、エフェクター細胞を含まなくてもよい。
【0124】
当業者に公知の動物由来のASCを濃縮するためのいくつかの方法が存在し、これらの方法は、本明細書で提供される方法及び装置による分析のために細胞の集団を濃縮及び提供するために使用することができる。例えば、一実施形態では、FACSを使用して、表面マーカーCD19+CD20lowCD27hiCD38hiを用いてヒトASCを濃縮する(Smith et al.(2009).Nature Protocols 4,pp.372-384)。別の実施形態では、細胞集団は、表面マーカーを提示する細胞の磁気免疫捕捉ベースの陽性又は陰性選択によって濃縮される。別の実施形態では、プラークアッセイ(Jerne et al.(1963).Science 140,p.405)、ELISPOTアッセイ(Czerkinsky et al.(1983).J.Immunol.Methods 65,pp.109-121)、液滴アッセイ(Powel et al.(1990).Bio/Technology 8,pp.333-337)、細胞表面蛍光結合免疫吸着アッセイ(Yoshimoto et al.(2013),Scientific Reports 3,1191)、又は細胞表面親和性マトリックスアッセイ(Manz et al.(1995).Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92,pp.1921-1925)を使用して、本明細書で提供される方法の1つを行う前、又は本明細書で提供される装置の1つに開始細胞集団を充填する前にASCを濃縮する。この段落に引用された参考文献のそれぞれの開示は、参照によりそれらの全内容があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる。
【0125】
本明細書で提供される装置に関して、装置のチャンバーの全てが必ずしも細胞集団及び/又は読み出し粒子集団を含むものではなく、例えば、空のチャンバー又は部分的に充填されたチャンバーが存在してもよいことに留意されたい。
【0126】
一部の実施形態では、細胞集団における1つ以上の細胞の生存率及び/若しくは機能を支持するために、又は細胞外効果アッセイを行うために、アッセイチャンバーに存在する1つ以上のアクセサリー細胞を含み得る1つ以上のアクセサリー粒子を有することが望ましい。例えば、一実施形態では、1つ又は複数のアクセサリー細胞は、線維芽細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、キラーT細胞、抗原提示細胞、樹状細胞、組換え細胞、又はこれらの組み合わせを含む。
【0127】
アクセサリー粒子又は細胞、又はこれらを含む集団は、一実施形態では、細胞集団及び/又は読み出し粒子集団と共にチャンバーに送達される。一実施形態では、アクセサリー細胞は、チャンバーに送達される細胞集団の一部である。あるいは、又はこれに加えて、アクセサリー粒子又はアクセサリー細胞は、細胞外効果についてアッセイされる細胞集団を1つ又は複数のチャンバーに充填する前又は充填した後にチャンバーに送達される。アクセサリー粒子(例えば、細胞)は、細胞集団が充填された後にチャンバーに連続的に送達することができる。送達は、装置の上部構成要素内のマイクロチャネルによって、又はオープンチャンバーを直接充填することによって行うことができる。
【0128】
本明細書で言及される「アクセサリー粒子」は、限定されるものではないが、(i)エフェクター細胞の生存率及び/又は機能を支持する、(ii)細胞外効果を促進する、(iii)細胞外効果の測定を容易にする、又は(iv)エフェクター細胞の細胞外効果を検出するタンパク質、タンパク質断片、又は細胞を含む任意の粒子を意味する。従って、アクセサリー粒子は、可溶性分子を指し得る。
【0129】
アクセサリー粒子としては、限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、増殖因子、サイトカイン、神経伝達物質、脂質、リン脂質、炭水化物、代謝産物、シグナル伝達分子、アミノ酸、モノアミン、糖タンパク質、ホルモン、ウイルス粒子、又はこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、1つ以上のアクセサリー粒子としては、スフィンゴシン-1-リン酸、リゾホスファチジン酸、又はこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、アクセサリー粒子としては、タンパク質、タンパク質断片、ペプチド、増殖因子、サイトカイン、神経伝達物質(例えば、神経調節物質又は神経ペプチド)、脂質、リン脂質、アミノ酸、モノアミン、糖タンパク質、ホルモン、ウイルス粒子、又はエフェクター細胞分泌産物の読み出し細胞への結合時の補体経路活性化因子、又はこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、1つ以上のアクセサリー粒子は、アクセサリー分子、例えば、スフィンゴシン-1-リン酸、リゾホスファチジン酸、又はこれらの組み合わせである。
【0130】
アクセサリー細胞の一例として、一実施形態では、(抗体を分泌しない)線維芽細胞の集団が、集団内でのエフェクター細胞(例えば、ASC)の生存率を高めるために、エフェクター細胞(例えば、ASC)が濃縮された細胞集団内に含められる。別の実施形態では、NK細胞の集団をアクセサリー粒子として添加して、抗体依存性細胞媒介細胞毒性アッセイを行うことができ、このアッセイでは、NK細胞が、抗体の標的細胞の表面への結合時にこの標的細胞を攻撃して溶解する。機能的細胞アッセイが1つ以上の細胞集団に対して行われる実施形態では、1つ以上の細胞集団内のエフェクター細胞は、マイクロ流体装置のチャンバー内にある間、長期間生存可能な状態を維持する必要があることを理解されたい。このために、一実施形態では、アクセサリー粒子及び/又はアクセサリー細胞を使用して、任意選択により1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団の生存率を維持する。本明細書に記載されるように、アクセサリー粒子、例えば、アクセサリー細胞を使用して、読み出し細胞又はその集団の生存率を維持又は向上させることができる。
【0131】
本明細書に記載の実施形態の1つの利点は、単一アッセイチャンバー内の2つ以上のエフェクター細胞の分析、及び/又は他の細胞の存在下での単一又は少数のエフェクター細胞の分析が、遥かに高いアッセイスループット、従って、通常であれば効率的に検出するにはあまりにも稀であると思われる所望のエフェクター細胞の同定及び選択を可能にすることである。これは、所望の細胞型を濃縮する方法が限られている場合、又はそのような濃縮がアッセイされる細胞の生存率の低下のような有害な作用を有する場合に有利である。
【0132】
ASCは、表面マーカーに基づく濃縮を必要とすることなく、同定し、単離することができる。免疫化後のPBMCから単離されたB細胞において、ASCの頻度は、0.01%~1%であり得る。1,000,000個のチャンバーのアレイにチャンバー当たり約10~100個の細胞を充填することによって達成できる、装置の動作当たり10,000,000~100,000,000個の細胞のスループットでは、事前に一切精製することなく何千ものASCをスクリーニングすることが可能である。これは、ASCのFACS精製が細胞の生存率を低下させ得るため、マーカーが利用可能な場合でも重要である。加えて、ASCの濃縮のための適切な試薬は、目的の宿主種に利用可能でないこともあり得るため、さらなる精製なしにASCをスクリーニングする能力は、ASCの研究における進歩である。免疫化後、PBMC中の抗体分泌細胞の頻度は0.01~1%であり得、従って、本明細書で提供される装置を用いて検出可能である。従って、末梢血単核細胞(PBMC)の単離は、特定の捕捉試薬を用いずに任意の種に対して行うことができるため、本方法のいくつかは、任意の種からの目的の抗体分泌細胞の迅速かつ経済的な選択を提供する。
【0133】
ヒトの基礎レベルのASCは、一実施形態では、本明細書で提供される方法及び装置によって同定される。動物を免疫化して殆どの抗原に対して新しい抗体を産生するようにすることができるが、ヒトでは、認可されたワクチンを除き、同じ処置を幅広く行うことはできない。しかしながら、抗原に自然に曝露されたか、又はその人生のある時点でワクチン接種されたヒトは、典型的には、抗原に特異的な、低い基礎レベルの抗体分泌細胞を有する。本発明を使用して、特異的抗体を分泌する極端に稀なエフェクター細胞を多数の細胞(例えば、装置の1回の運転当たり100,000~100,000,000個を超える)から同定し、単離することができる。このような方法は、本明細書では、例えば自己免疫疾患及び自己抗体が存在し得る癌の治療薬としての機能性抗体の発見のために使用される。
【0134】
全体を通じて示されるように、本発明は、部分的に、単一装置のチャンバー内で大量に並行して行われる細胞外効果アッセイに関する。このアッセイは、細胞集団内に存在する1つ又は複数のエフェクター細胞によってもたらされる細胞外効果を測定し、検出するために行われる。読み出し粒子の集団又はその亜集団は、細胞外効果の読み出しを提供する。例えば、本明細書に記載の方法は、細胞外効果をもたらさない約250個の細胞(例えば、約2~約100個の細胞、又は約2~約50個の細胞)までのバックグラウンドにおいて、細胞外効果、例えば所望の抗原に特異的な抗体の分泌をもたらすエフェクター細胞を含む異種細胞集団の同定を可能にする。
【0135】
一実施形態では、本明細書に記載の方法が行われる細胞集団は、1つ又は複数のASCを含み、読み出し粒子の集団又は亜集団は、1つ又は複数の標的エピトープを提示する。一実施形態における読み出し粒子の集団は、1つ又は複数のエピトープによって抗体を捕捉するように官能化されたビーズの集団である。あるいは、又はこれに加えて、読み出し粒子の集団は、抗体のFc領域に特異的であり、従って、異なるエピトープを有する抗体間の区別をしない。読み出し粒子の集団又は亜集団は、一実施形態では、例えば、ELISAアッセイを行うために、標的エピトープを含む蛍光コンジュゲート分子で標識される。蛍光ベース抗体及びサイトカインビーズアッセイは、当分野で公知であり、例えば、それらの開示の全てが参照により本明細書に組み入れられる、Singhal et al.(2010).Anal.Chem.82,pp.8671-8679、Luminex(登録商標)Assays(Life Technologies)、BD(商標)Cytometric Bead Arrayを参照されたい。これらの方法を使用して、エフェクター細胞が読み出し粒子に対して細胞外効果を実証するか否かを決定することができる。
【0136】
さらに、本明細書に記載されるように、装置の個々のチャンバーは、チャンバー内の試薬交換が可能で、これによりチャンバー間の交差汚染が排除される、又は実質的に排除されるように構築される。これは、個々のチャンバーでの細胞培養を可能にすると共に、例えば抗原及び二次抗体の交換によるそれぞれの結合複合体の標識、これに続くイメージングによる、単一チャンバーにおける複数の細胞外効果、例えば単一チャンバーでのユニークな抗原結合事象及び/又は単一チャンバーでの他の細胞外効果の検出を可能にする。これらの一連のアッセイステップでは、各反応が洗浄ステップの後に連続的に行われるため、同じフルオロフォアを用いてアッセイを行うことができる。あるいは、異なるフルオロフォアを使用して、1つのアッセイチャンバー内で異なる細胞外効果を連続的に又は並行に検出することができる。例えば、実質的な交差汚染なしに試薬交換を達成するために、1以上のアスペクト比(最小横寸法に対する高さとして定義される)を有するチャンバーが製造される。一実施形態では、装置の複数のチャンバーの平均アスペクト比は、約0.6以上、約0.7以上、約0.8以上、約0.9以上、約1以上、約1.5以上、約2以上、約2.5以上、約3以上、約3.5以上、約4以上、約4.5以上、約5以上、約5.5以上、約6以上である。さらに他の実施形態では、装置の複数のチャンバーの平均アスペクト比は、約1以上であるが10以下、又は約1以上であるが約9以下、又は約1以上であるが約8以下である。
【0137】
一実施形態では、読み出し粒子集団は、読み出し細胞の少なくとも一部がその表面上に標的エピトープを提示する読み出し細胞集団である。一実施形態では、読み出し細胞集団又はその亜集団は、生きていて生存能力がある。別の実施形態では、読み出し細胞集団又はその亜集団は固定される。上記の考察から認識されるように、抗体結合がアッセイされる場合、「抗体結合」は、1つ又は複数のエフェクター細胞の細胞外効果とみなされる。抗体結合は、例えば、1つ以上の蛍光標識された二次抗体による細胞の染色によって検出することができる。別の実施形態では、読み出し粒子又は読み出し細胞上の標的エピトープへの抗体の結合は、読み出し細胞の死滅、又は本明細書で論じられるその他の読み出し細胞の応答(例えば、生体分子の分泌、細胞シグナル伝達経路の活性化又は阻害)を引き起こす。
【0138】
読み出し細胞は、特徴、例えば、形態、サイズ、表面付着性、運動性、及び蛍光応答によって区別することができる。例えば、一実施形態では、読み出し細胞の集団が、それらの表面上又は細胞内で標識されて、読み出し細胞が応答を示すか否かを決定する。例えば、カルセイン、カルボキシフルオレセインスクシニルエステル(carboxyfluorescein succinymyl ester)レポーター(CFSE)、又はGFP/YFP/RFPレポーターを使用して、細胞外受容体及び細胞内タンパク質及び他の生体分子を含む1つ以上のレポーター細胞を標識することができる。
【0139】
一部の実施形態では、読み出し粒子集団は、異種読み出し粒子集団、例えば、異種読み出し細胞集団である。例えば、1つ又は複数のASCが細胞集団内に存在する場合、この集団内の個々の読み出し粒子は、異なる標的エピトープを提示する、又は2種類の細胞受容体を提示することができる(例えば、GPCR、又はRTK、又はイオンチャネル、又は2つ以上のGPCRなどの異なるクラスの複数の種を含むこれらの組み合わせ)。従って、細胞外効果の特異性、例えば標的エピトープに対する抗体の特異性、又は特定の細胞表面受容体の阻害を評価することができる。別の実施形態では、細胞集団内のエフェクター細胞はASCであり、読み出し粒子集団は、全ての抗体(例えば、Fc領域特異的)を非特異的に捕捉する異種ビーズ集団、及びユニークな標的エピトープに特異的なビーズ集団を含む。
【0140】
一実施形態では、細胞外効果の読み出し及び/又は測定を容易にするためにアクセサリー粒子が提供される。全体を通じて記載されるように、細胞外効果は、エフェクター細胞分泌産物(例えば、抗体)によって示される効果を含む。例えば、一実施形態では、読み出し細胞の溶解の測定を容易にするために、NK細胞がアクセサリー粒子として提供される。この実施形態では、細胞外効果は、エフェクター細胞によって分泌される抗体が前述の読み出し細胞に結合する場合の、NK細胞による、特異的エピトープ又は細胞受容体に結合する読み出し細胞の溶解を含む。
【0141】
一実施形態では、1つ以上のサイトカインが、アクセサリー粒子として使用される。アクセサリー粒子として使用することができるサイトカインの例としては、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、腫瘍壊死因子が挙げられる。一部の実施形態では、アクセサリー分子は、読み出し細胞によって産生される。一部の実施形態では、サイトカインが、アクセサリー粒子として使用され、以下の表1に示される1つ以上のサイトカインである。別の実施形態では、以下の1つ以上のサイトカインがアクセサリー粒子として使用される:インターロイキン(IL)-1α、IL-1β、IL-1RA、IL18、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、白血病阻害因子、オンコスタチンM、インターフェロン(IFN)-α、IFN-β、IFN-γ、CD154、リンホトキシンβ(LTB)、腫瘍壊死因子(TNF)-α、TNF-β、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-βの様々なアイソフォーム、エリスロポエチン、巨核球増殖発達因子(MGDF)、Fms関連チロシンキナーゼ3リガンド(Flt-3L)、幹細胞因子、コロニー刺激因子-1(CSF-1)、マクロファージ刺激因子、4-1BBリガンド、増殖誘導リガンド(APRIL)、分化クラスター70(CD70)、分化クラスター153(CD153)、分化クラスター178(CD17)8、グルココルチコイド誘導TNF受容体リガンド(GITRL)、LIGHT(TNFリガンドスーパーファミリーメンバー14、HVEMリガンド、CD258とも呼ばれる)、OX40L(CD252とも呼ばれ、CD134のリガンドである)、TALL-1、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、腫瘍壊死因子様アポトーシス弱誘導因子(TWEAK)、TNF関連活性化誘導サイトカイン(TRANCE)、又はこれらの組み合わせ。
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
一実施形態では、アクセサリー粒子は、読み出し細胞の応答を刺激するように機能するサイトカイン又は他の因子である。例えば、読み出し細胞は、1つ又は複数のエフェクター細胞と共にインキュベートし、読み出し細胞に影響を与え得るサイトカインでパルスすることができる。あるいは、又はこれに加えて、読み出し粒子に影響を与え得るサイトカイン分泌細胞が、アクセサリー細胞としてチャンバーに供給される。エフェクター細胞分泌産物によって分泌されるサイトカインの中和は、一実施形態では、読み出し細胞に対するサイトカインの期待される効果の非存在によって検出される。別の実施形態では、アクセサリー粒子が提供され、このアクセサリー粒子は、1つ以上の読み出し細胞に感染させることができるウイルスであり、このウイルスの中和が、このウイルスによる読み出し細胞の感染の減少として検出される。
【0147】
本明細書に記載されるように、一実施形態では、本明細書で提供される方法及び装置で識別可能な細胞外効果は、機能的効果である。機能的効果は、一実施形態では、アポトーシス、細胞増殖の調節、読み出し粒子の形態的外観の変化、複数の読み出し粒子の凝集の変化、読み出し粒子内のタンパク質の局在の変化、読み出し粒子によるタンパク質の発現、読み出し粒子によるタンパク質の分泌、細胞シグナル伝達カスケードの誘発、エフェクター細胞によって分泌される分子の読み出し細胞の内在化、又は読み出し粒子に影響を与えることができるアクセサリー粒子の中和である。
【0148】
細胞外効果が、細胞集団を含むチャンバー内で確認されたら、その集団を回収し、回収細胞集団の亜集団について下流アッセイを行って、どのエフェクター細胞が測定された細胞外効果に関与するかを決定することができる。あるいは、回収された集団を配列決定して、集団内のエフェクター細胞の抗体配列を決定することができる。一実施形態における下流アッセイは、第1の細胞外効果アッセイと同じ装置で行われる。しかしながら、別の実施形態では、下流アッセイ、例えば卓上単一細胞逆転写酵素(RT)-PCR反応は装置で行われる。一実施形態では、同定され回収されたエフェクター細胞の抗体遺伝子配列を単離し、クローニングし、そして発現させて新規な機能性抗体を提供する。
【0149】
単一ASCの機能的細胞外効果を、本明細書で提供される方法及び装置によって測定可能であるが、親和性、結合性、及び特異性も、エフェクター細胞の「細胞外効果」、例えばエフェクター細胞分泌産物の効果として測定することができる。例えば、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、Dierks et al.(2009).Anal.Biochem.386,pp.30-35によって提供される結合アッセイを本明細書で提供される装置で使用して、ASCが特定の標的に結合する抗体を分泌するか否かを決定することができる。
【0150】
別の実施形態では、細胞外効果は、抗原に対する親和性又は結合動力学であり、参照によりあらゆる目的のために本明細書に組み入れられる、Singhal et al.(2010).Anal.Chem.82,pp.8671-8679に記載されている方法を使用して細胞外効果をアッセイする。
【0151】
一実施形態では、複数の細胞外効果の並行分析が、複数のタイプの読み出し粒子を利用することによって1つのチャンバー内で行われる。あるいは、又はこれに加えて、複数の機能的効果の並行分析が、少なくとも2つの異なるチャンバーにおいて異なる読み出し粒子を利用することによって単一マイクロ流体装置で行われる。
【0152】
読み出し粒子は、一部の実施形態では、分子、例えば酵素である。一実施形態では、読み出し粒子は、可溶性分子として存在するか、又はチャンバー表面若しくはチャンバー内の別の物理的支持体につながれた酵素である。この場合、読み出し粒子の酵素活性を阻害する抗体の結合が、一実施形態では、蛍光シグナル又は比色シグナル又は沈殿反応を含む酵素活性を報告するシグナルの減少によって検出される。
【0153】
一実施形態では、細胞集団内の1つ又は複数のエフェクター細胞が細胞外効果を示すか否かの判定は、細胞集団を含むアッセイチャンバーの光学顕微鏡検査法及び/又は蛍光顕微鏡検査法の使用を含む。従って、本発明の一実施形態は、読み出し粒子集団を単一平面内に維持して、顕微鏡による粒子のイメージングを容易にすることを含む。一実施形態では、チャンバー内の読み出し粒子集団は、装置の材料又はその一部(例えば、ガラス又はPDMS)によってイメージングされる単一平面内に維持して、チャンバーの1つ又は多数の高解像度画像を形成する。一実施形態では、高解像度画像は、同等の光学機器(レンズ及び対物レンズ、照明及びコントラスト機構など)を備えた標準的な顕微鏡形式を使用して達成されるものと同等の画像である。
【0154】
細胞集団及び読み出し粒子集団は、(例えば、液体カラムによって生成される静水圧によって、チャンバー上に直接充填することによって、ピペットのようなディスペンサーを用いて流れを生成することによって、又は底部構成要素の上の培地を交換して、上部構成要素若しくは底部構成要素を上下に動かして流体をマイクロチャンバーに移動させることによって、異なる溶液又は同じ溶液で)チャンバーに同時に充填することができる。あるいは、エフェクター細胞及び読み出し粒子が、チャンバー内に連続的に充填される。当業者であれば、細胞集団は、読み出し粒子をチャンバーに充填する前に(又は後に)チャンバーに供給できることを理解されよう。しかしながら、読み出し粒子集団及び細胞集団を混合物として一緒に供給することも可能である。アクセサリー粒子の場合と同様に、読み出し粒子は、装置の底部構成要素に直接、すなわち、オープンチャンバーに直接、又は装置の上部構成要素のチャネルによって直接充填することができる。このように、装置の構造により、充填がどのように行われるかが決まる。
【0155】
実施形態では、個々の読み出し粒子集団及び細胞集団は、装置の単一チャンバー内に保持される。一実施形態では、チャンバーは、例えばチャンバー間の汚染を最小限にするために、個々の細胞集団及び読み出し粒子集団も含む装置の他のチャンバーから実質的に分離される。分離は、流体構造を用いて又は用いずに行うことができる。例えば、一実施形態では、装置の上部構成要素は、その下に薄い膜を有する制御チャネルを備えることができる。チャンバーを接続する底層チャネルに接合されると、弁が出現し得る。あるいは、上部構成要素は、底面にあるオープンチャネル構造及び上部を通過する制御ラインを備える「プッシュダウン」形状に構成することができる。
【0156】
しかしながら、本明細書で提供される方法を行うためには完全な分離は必要ない。一実施形態では、分離が望ましい場合、分離は流体分離を含み、チャンバーの流体分離は、例えば、平行移動可能な装置を使用することによって、それらを物理的に密閉することによって達成される(例えば、
図6参照)。しかしながら、別の実施形態における分離は、チャンバー間の流体連通を制限することにより、対流又は拡散のいずれかによる装置の1つのチャンバーと別のチャンバーとの間の汚染を排除することによって、チャンバーを物理的に密閉しなくても達成される。例えば、チャンバーの形状(例えば、特定のアスペクト比)は、チャンバー間の対流輸送を抑制して、同じチャンバー内のエフェクター細胞と読み出し粒子との間の距離が、その他のチャンバー内のエフェクター細胞と読み出し粒子との間の距離よりも遥かに小さくなるように選択することができ、これにより、任意の所与のチャンバー内の読み出し粒子上への分泌分子の拡散及びこの分泌分子の蓄積が、確実に主にそのチャンバー内のエフェクター細胞からとなる。
【0157】
細胞外効果アッセイを行うために、任意選択により1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団及び読み出し粒子集団が、チャンバー内で一緒にインキュベートされ、これらのインキュベーションが、各装置内で大量に並行して行われる。追加のインキュベーションステップを、例えば、アクセサリー粒子のような成分がチャンバーに添加される場合に行うことができること、並びに最初のインキュベーションステップを、読み出し粒子の添加の前に、かつ/又は読み出し粒子が細胞集団を含むチャンバーに添加された後に行うことができることを理解されたい。
【0158】
例えば、インキュベーションステップは、細胞集団を健康に保つための培地交換及び/又は細胞洗浄ステップを含み得る。インキュベーションはまた、細胞外効果アッセイを行うために使用されるアクセサリー粒子(例えばアクセサリー分子)の添加を含み得る。
【0159】
インキュベーションステップは、一実施形態では、チャンバーの1つ以上の特性、例えば、湿度、温度、及び/又はpHを制御して、細胞生存率(エフェクター細胞、アクセサリー細胞、又は読み出し細胞)を維持し、かつ/又はチャンバー内の細胞の1つ以上の機能的特性、例えば、分泌、表面マーカーの発現、遺伝子発現、シグナル伝達機構などを維持するステップを含む。一実施形態では、インキュベーションステップは、1つ又は複数のチャンバー内又はその上(例えば、チャンバー表面の上)に灌流流体を流すステップを含む。灌流流体は、チャンバー内のエフェクター細胞及び/又は読み出し細胞の種類に応じて選択される。例えば、一実施形態における灌流液は、細胞生存率を維持するため、例えば、枯渇した酸素を補充するため若しくは老廃物を除去するために、又は細胞状態を維持するため、例えば、必須のサイトカインを補充するため、又は所望の効果をアッセイするのを助けるため、例えば、蛍光検出試薬を添加するために選択される。還流を使用して試薬を交換して、例えば、複数の細胞外効果について連続的にアッセイすることもできる。
【0160】
別の実施形態では、細胞集団をインキュベートするステップは、1つ又は複数のチャンバー内又はその上(例えば、チャンバー表面の上)に灌流流体を流して読み出し粒子(例えば、読み出し細胞)の細胞応答を誘導するステップを含む。例えば、一実施形態におけるインキュベートするステップは、細胞集団を含むチャンバーにシグナル伝達サイトカインを含む流体を添加するステップを含む。インキュベートするステップは、周期的、連続的、又はこれらの組み合わせであり得る。例えば、灌流流体を1つ又は複数のアッセイチャンバーに流すステップは、周期的又は連続的であるか、又はこれらの組み合わせである。一実施形態では、インキュベーション溶液の流れは、例えば、圧縮空気、シリンジポンプ、又は重力を用いた流れの調節によって圧力駆動される。
【0161】
装置内の個々のチャンバーに細胞集団及び読み出し粒子集団が供給されたら、集団内の細胞が読み出し粒子集団又はその亜集団に対して細胞外効果を示すか否かを決定する方法が行われる。次いで、細胞集団及び読み出し粒子集団及び/又はそれらの亜集団を必要に応じて検査して、集団内の細胞が細胞外効果を示すか否かを決定する。細胞外効果の存在がチャンバー内で検出されるのであれば、細胞外効果を示す1つ又は複数の特定の細胞をチャンバー内で同定する必要はない。一実施形態では、細胞集団が細胞外効果を示すとして同定されたら、細胞集団を回収して、細胞外効果に関与する特定のエフェクター細胞を同定する。別の実施形態では、細胞集団が細胞外効果(例えば、別の細胞集団又は対照値と比較した細胞外効果の変化)を示すと同定されたら、細胞集団が回収され、この細胞集団からの核酸が増幅され、配列決定される。
【0162】
細胞外効果は、一実施形態では、エフェクター細胞によって産生されるタンパク質(例えば、抗体又はその断片)と読み出し粒子、例えばビーズ又は細胞との間の結合相互作用である。一実施形態では、集団内の1つ以上のエフェクター細胞は、抗体分泌細胞(ASC)であり、読み出し粒子は、標的エピトープを有する抗原を含む。細胞外効果は、一実施形態では、対照レベル又は細胞の第2の集団によって示されるレベルと比較した、抗原に対する異なる結合である。あるいは、細胞外効果の変化は、特定の抗原に対して親和性が調節された抗体を分泌するエフェクター細胞の存在である。すなわち、結合相互作用は、抗原-抗体結合特異性、抗原-抗体結合親和性、及び抗原-抗体結合動力学の1つ以上の尺度である。あるいは、又はこれに加えて、細胞外効果は、アポトーシスの調節、細胞増殖の調節、読み出し粒子の形態的外観の変化、読み出し粒子内のタンパク質の局在の変化、読み出し粒子によるタンパク質の発現、アクセサリー粒子の生物活性の中和、エフェクター細胞によって誘導される読み出し細胞の細胞溶解、エフェクター細胞によって誘導される読み出し細胞の細胞アポトーシス、読み出し細胞の壊死、抗体の内在化、アクセサリー粒子の内在化、エフェクター細胞による酵素中和、可溶性シグナル伝達分子の中和、又はこれらの組み合わせである。
【0163】
複数の読み出し粒子は、それぞれの読み出し粒子に固有の1つ以上の特性、例えば、フルオロフォアのタイプ、様々なレベルの蛍光強度、形態、サイズ、及び表面染色によって区別することができる。
【0164】
エフェクター細胞を含む細胞集団と共にインキュベートされたら、読み出し粒子集団又はその亜集団を調べて、細胞集団内の1つ以上のエフェクター細胞が1つ以上の読み出し粒子に対する細胞外効果(例えば、別の細胞集団又は対照値と比較した細胞外効果の変化)を直接的又は間接的に示すか否かを決定する。この効果を示す細胞集団が同定され、次いで、下流分析のために回収される。全体を通じて示されるように、細胞外効果の存在がアッセイチャンバー内で検出されるのであれば、1つ以上の読み出し粒子に対する細胞外効果を示す特定のエフェクター細胞を同定する必要はない。
【0165】
一部の実施形態では、1つ以上のエフェクター細胞が、生体分子、例えば、抗体を分泌し、分泌された生体分子の細胞外効果が、細胞外効果を実証する細胞集団を検出するために、1つ又は複数の読み出し粒子(例えば、読み出し細胞)について評価される。別の実施形態では、細胞外効果は、T細胞受容体の効果、例えば抗原への結合である。
【0166】
一実施形態では、読み出し粒子集団は、cDNAライブラリーを発現するようにエンジニアリングされた細胞を含む読み出し細胞の異種集団であり、これによりcDNAライブラリーは、複数の細胞表面タンパク質をコードする。抗体のこれらの細胞への結合を使用して、標的エピトープに結合する抗体を分泌する細胞を回収する。
【0167】
一部の実施形態では、1つ以上の読み出し粒子は、標的抗原を提示又は発現する読み出し細胞を含む。さらなる実施形態では、1つ又は複数のナチュラルキラー細胞が、測定される細胞外効果(溶解)を容易にするアクセサリー細胞としてチャンバーに供給される。アクセサリー細胞は、チャンバーに読み出し粒子が充填される前に、又は読み出し粒子が充填された後に、細胞集団、読み出し粒子と共にチャンバーに供給することができる。ナチュラルキラー細胞が利用される一実施形態では、ナチュラルキラー細胞は、エフェクター細胞によって産生された抗体が結合した1つ以上の読み出し細胞を標的とする。従って、細胞外効果は、ナチュラルキラー細胞による1つ以上の読み出し細胞の溶解を含み得る。溶解は、生存色素、膜完全性色素(membrane integrity dye)、蛍光色素の放出、酵素アッセイなどによって測定することができる。
【0168】
一部の実施形態では、細胞外効果は、読み出し粒子に影響を与えることができるアクセサリー粒子(又はアクセサリー試薬)、例えば、少なくとも1つの読み出し細胞の応答を刺激するように作用するサイトカイン(アクセサリー粒子)の中和である。例えば、読み出し粒子細胞に影響を与えることができるサイトカイン分泌細胞をチャンバーにさらに供給することができる。エフェクター細胞によって分泌されるサイトカインの中和は、読み出し細胞に対するサイトカインの予想される効果、例えば増殖の非存在として検出することができる。別の実施形態では、アクセサリー粒子は、読み出し細胞を感染させることができるウイルスであり、このウイルスによる中和が、このウイルスによる読み出し細胞の感染の減少として検出される。
【0169】
一部の実施形態では、1つのエフェクター細胞の細胞外効果は、第2のエフェクター細胞の活性化(例えば、第2のエフェクター細胞による抗体又はサイトカインの分泌)を誘導し、次いで、少なくとも1つの読み出し細胞における応答を誘発することができる。
【0170】
一実施形態では、本明細書で提供される装置の1つのチャンバー内で分離された細胞集団は、モノクローナル抗体を分泌するASCを含む。一実施形態では、読み出しビーズベースのアッセイが、抗体を分泌しない1つ以上のさらなる細胞のバックグラウンド中で、抗体を分泌するASCの存在を検出する方法で使用される。例えば、ビーズベースのアッセイが、一実施形態では、細胞集団内のASCを検出する方法で利用され、その抗体が、目的の標的エピトープに結合しない抗体を分泌する1つ以上の追加のASCの存在下で、目的の標的エピトープに結合する。
【0171】
別の実施形態では、標的細胞に特異的に結合する抗体の能力が評価される。
図11を参照すると、アッセイは、少なくとも1つのエフェクター細胞182(ASC)に加えて、少なくとも2つの読み出し粒子、例えば、読み出し細胞181及び186を含む。読み出し細胞181は、(自然に又は遺伝子工学によって)その表面上に目的の既知の標的エピトープ、すなわち標的エピトープ183を発現するが、読み出し細胞186は、標的エピトープ183を発現しない。2つのタイプの読み出し細胞181及び186は、識別可能な蛍光マーカー、他の染色、又は形態によって、それら同士を、及びエフェクター細胞182と区別することができる。エフェクター細胞182は、読み出し細胞181及び186と同じチャンバー内で抗体184を分泌する。エフェクター細胞182によって分泌される抗体184は、標的エピトープ183によって読み出し細胞181に結合するが、読み出し細胞186には結合しない。二次抗体を使用して、抗体184の読み出し細胞181への選択的結合を検出する。次いで、アッセイチャンバーをイメージングして、読み出し細胞181及び/又は読み出し細胞186に結合する抗体184が生じたか否かを決定する。
【0172】
このようなアッセイを使用して、高分解能顕微鏡法を用いて読み出し細胞上又はその内部に結合する抗体の位置を評価することもできる。この実施形態では、読み出し粒子は、結合特異性及び/又は局在性を評価するために、異なる粒子のタイプ(例えば、細胞タイプ)又は異なる方法(例えば、透過化処理及び固定化によって)で調製された粒子/細胞を含む。例えば、このアッセイを使用して、生細胞上の標的の天然の立体構造及び固定細胞上の変性型に結合する抗体を同定することができる。あるいは、アッセイを使用して、異なるブロックされたエピトープを有する読み出し粒子の異なる集団を用いて最初に分子の他の部分を既知のエピトープに対する抗体でブロックすることによって、標的分子上のエピトープの位置を決定することができる。
【0173】
別の実施形態では、個々の異種読み出し粒子集団、(例えば、悪性細胞及び正常細胞を含む読み出し細胞集団)及び個々の細胞集団(個々の細胞集団の少なくとも1つがエフェクター細胞(例えば、ASC)を含む)が、本明細書で提供される1つの装置の複数のアッセイチャンバー(例えば、1000個を超えるチャンバー)に供給される。例えば、
図12を参照すると、1つ以上の悪性読み出し細胞425への結合及び読み出し細胞の集団における健常読み出し細胞426への結合の非存在を使用して、目的の抗体を産生する1つ以上のエフェクター細胞、すなわち、集団内の1つ以上の悪性細胞に特異的な抗体428を産生するエフェクター細胞427を含む細胞集団を同定する。チャンバー内の2つのタイプの読み出し細胞425及び426は、少なくとも1つの特性、例えば、蛍光、様々なレベルの蛍光強度、形態、サイズ、表面染色、アッセイチャンバーにおける位置によって識別可能である。次いで、細胞を個々のチャンバー内でインキュベートし、イメージングして、1つ以上のチャンバーが細胞外効果を示す細胞集団、すなわち悪性読み出し細胞には結合するが健常読み出し細胞には結合しない抗体を含むか否かを決定する。
【0174】
次いで、存在する場合、悪性読み出し細胞425には結合するが健康な読み出し細胞426には結合しない抗体を分泌する1つ以上のASCを含む細胞集団を回収して、チャンバー内の抗体の配列を検索する、又は集団内の個々の細胞に対して他の下流アッセイ、例えば、集団内のどのASCが所望の結合性を有するかを決定するアッセイを行うことができる。従って、本明細書に記載の1つ以上の方法によって発見された新規な機能性抗体が提供される。悪性読み出し細胞425上のエピトープは、既知であっても未知であってもよい。
【0175】
一実施形態では、単一細胞型は、エフェクター細胞及び読み出し細胞の両方として機能し得る。
図13を参照すると、このアッセイは、例えば、表面マーカー及び目的の分子432に対する四量体抗体433、又はビオチン化抗体に結合する細胞上の親和性マトリックスを使用して、表面上の目的の分子432を捕捉するように共に官能化されたエフェクター細胞430及び読み出し細胞431で行われる。
図14を参照すると、四量体抗体複合体は、細胞に結合する抗体(A)435と、細胞から分泌される抗体に結合する抗体(B)436とからなり、この抗体AとBは、この抗体A及びBのFc部分に結合する2つの抗体437によって結合されている。このような四量体抗体複合体は、当分野で記載され(参照によりその全内容があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる、Lansdorp et al.(1986).European Journal of Immunology 16,pp.679-683)、市販されている(Stemcell Technologies,Vancouver Canada)。これらの四量体を用いて、分泌された抗体が捕捉され、細胞の表面に連結され、従って、エフェクター細胞も読み出し粒子として機能する。細胞の表面に結合されたら、これらの抗体は、例えば蛍光標識された抗原の添加によって、結合についてアッセイすることができる。例えば、特定の標的に結合するモノクローナル抗体を分泌する細胞を含むチャンバーを同定しようとする場合は、エフェクター細胞から分泌される抗体を、適切な捕捉剤を用いてこれらのエフェクター細胞の表面に捕捉することができ、その他は、チャンバーに残る。従って、再び
図13を参照すると、エフェクター細胞430は、読み出し細胞としても機能することができる、すなわち、目的の分子432を分泌するエフェクター細胞は、読み出し細胞431よりも効率的に目的の分子を捕捉することができることを理解されたい。
【0176】
一実施形態では、細胞外効果アッセイは、複数のアッセイチャンバーで並行して行われ、これらのチャンバーにおける読み出し粒子集団は異種(例えば、異種読み出し細胞集団)であり、各チャンバーにおける細胞集団は実質的に同種であり、実質的に同種の各集団内の個々のエフェクター細胞はそれぞれ同じ抗体を産生する。さらなる実施形態では、読み出し粒子は、エフェクター細胞によって分泌される抗体の標的エピトープを決定するために、タンパク質又はタンパク質断片のライブラリーを発現するように遺伝子操作された読み出し細胞である。
図15を参照すると、アッセイの一実施形態は、抗体191を分泌する複数のエフェクター細胞190を含む。アッセイは、エピトープ196、197、198、及び199をそれぞれ提示する読み出し細胞192、193、194、及び195を含む異種読み出し細胞集団をさらに含む。エフェクター細胞190は、読み出し細胞192、193、194、及び195に向かって拡散する抗体191を分泌する。抗体191は、標的エピトープ198によって読み出し細胞194に結合するが、読み出し細胞192、193、又は195には結合しない。二次抗体を使用して、抗体191の読み出し細胞194への選択的結合を検出することができる。
【0177】
次いで、読み出し細胞194(又は別のエピトープ)に結合する抗体191を分泌する細胞集団を装置から回収して、さらなるアッセイを行うことができる。
【0178】
一実施形態では、チャンバーにおける細胞集団内のASCが標的細胞の細胞溶解を活性化するか否か、すなわち抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を活性化するか否かを決定するために、アッセイが個々の装置のチャンバー内で並行して行われる。ADCCは、免疫系のエフェクター細胞が、標的細胞を溶解する細胞媒介性免疫防御機構であり、この標的細胞の膜表面抗原が、特異的抗体、すなわち本明細書で提供される特定のアッセイチャンバー内のASCによって分泌される抗体によって結合される。古典的なADCCは、ナチュラルキラー(NK)細胞によって媒介される。しかしながら、マクロファージ、好中球、及び好酸球もADCCを媒介することができ、本明細書では、ADCC細胞外効果アッセイに使用されるアクセサリー細胞として提供することができる。
【0179】
本明細書で提供されるADCCアッセイの一実施形態は、1つ又は複数のエフェクター細胞、読み出し細胞集団(その表面に目的のエピトープを有する)、及びアクセサリー細胞としてのNK細胞を含む細胞集団を含む。アッセイを行って、細胞集団からのASCが、NK細胞による標的細胞の攻撃及びこれらの溶解を誘導するか否かを決定する。
図16を参照すると、例示された実施形態は、それぞれ抗体202及び203を分泌するASC 200及び201を含む細胞集団を含む。例示された実施形態は、それぞれエピトープ206及び207を提示する読み出し細胞204及び205を含む異種読み出し細胞集団をさらに含む。ASC 200及び201は、読み出し細胞204及び205に向かって拡散する抗体202及び203を分泌する。抗体202は、標的エピトープ207を介して読み出し細胞205に結合するが、読み出し細胞204には結合しない。抗体203は、読み出し細胞204及び205のいずれにも結合しない。NK細胞208は、読み出し細胞205が抗体202によって結合されて読み出し細胞205が死滅するが、非結合読み出し細胞204は単独のままであることを検出する。
【0180】
当業者であれば、NK細胞が、読み出し細胞へのアクセス(例えば、光アクセス)を容易にするようにチャンバーに添加される場合、NK細胞を、エフェクター細胞の読み出し細胞とのインキュベーションの間又はその後にチャンバーに添加できることを理解されよう。一実施形態におけるNK細胞(又は別のタイプのアクセサリー細胞)は、装置の底部構成要素に直接的に、すなわち直接的にオープンチャンバーに添加される。あるいは、又はこれに加えて、NK細胞(又は別のタイプのアクセサリー細胞)が、装置の上部構成要素に形成されたマイクロチャネルを介してチャンバーに添加される。NK細胞は、アクセサリー細胞の異種集団、例えば、末梢血単核細胞に由来し得る。NK細胞は、動物由来又はヒト由来の細胞株に由来してもよく、ADCC活性を高めるためにエンジニアリングされる。当業者であれば、このアッセイが、ADCCを媒介することができる他の造血細胞型、例えば、マクロファージ、好酸球、又は好中球を用いて行うことができることをさらに理解されよう。この場合、マクロファージ、好酸球、又は好中球は、アッセイにおけるアクセサリー細胞である。ADCCを媒介することができる細胞型はまた、ADCC活性を高めるか、又は標的細胞上の抗体の結合時にシグナルを報告するようにエンジニアリングされた動物由来又はヒト由来の細胞株であり得る。後者では、標的細胞はアクセサリー粒子であり、ADCCを媒介する細胞は読み出し粒子である。
【0181】
ADCC細胞外効果アッセイは、
図16に示されているように、単一細胞(例えば、単一エフェクター細胞)、同種細胞集団、又は異種細胞集団に対して行うことができる。同様に、ADCCアッセイは、
図16に示されているように、単一読み出し細胞、同種読み出し細胞集団、又は異種読み出し細胞集団で行うことができる。しかしながら、多くの場合、読み出し細胞のランダムな死滅に起因する偽陽性の検出を回避するために、複数の読み出し細胞でADCCアッセイを行うことが望ましい。
【0182】
細胞溶解は、一実施形態では、クローン原性アッセイによって、膜完全性色素の添加によって、細胞内蛍光分子の減少によって、又は溶液中への細胞内分子の放出によって定量される。放出された生体分子は、溶液中で直接測定可能であるか、又は測定のために読み出し粒子上に捕捉される。場合によっては、酸化還元アッセイ用の基質又は酵素アッセイ用の基質のような追加のアクセサリー分子が添加される。
図17を参照すると、例えば、第1の生体分子502を分泌するエフェクター細胞500及び第1の生体分子502を分泌しない第2のエフェクター細胞501を含む細胞集団が、読み出し細胞503及び読み出し粒子504を含む異種読み出し粒子集団、並びにアクセサリー粒子(例えば、ナチュラルキラー細胞505)の存在下でインキュベートされる。第1の生体分子502の読み出し細胞503への結合は、読み出し細胞503の溶解を引き起こすナチュラルキラー細胞505の動員を誘導する。細胞の溶解時に、第2の生体分子506が、読み出し細胞503から放出されて、例えば分子507によって第2の生体分子506を捕捉するように官能化された異なるタイプの読み出し粒子である読み出し粒子504上に捕捉される。分子507は、一実施形態では、抗体又は酵素のようなタンパク質、反応基、及び/又は核酸である。捕捉される第2の生体分子506は、タンパク質、酵素、炭水化物、又は核酸のような読み出し細胞503内に存在する任意の分子であり得る。第2の生体分子506の読み出し粒子504への結合は、一実施形態では、蛍光アッセイ、比色アッセイ、生物発光アッセイ、又は化学発光アッセイを用いて定量される。このアッセイは、例えば、捕捉される生体分子506が異なる光学特性を有する産物に基質を変換する酵素である場合は、読み出し粒子504上で直接的に、又は周囲の溶液中で間接的に行われる。このアッセイを、本明細書で提供される1つの装置の複数のチャンバー内で行って、チャンバーのいずれかが、細胞溶解を誘導する生体分子(例えば、抗体)を分泌するエフェクター細胞を含むか否かを決定する。
【0183】
ADCCアッセイは当分野で公知であり、成分は市販されている。例えば、フローサイトメトリー用のGuava Cell Toxicity Kit(Millipore)、ADCC Reporter Bioassay Core Kit(Promega)、ADCC Assay(GenScript)、LIVE/DEAD Cell Mediated Cytotoxicity Kit(Life Technologies)、及びDELFIA細胞毒性アッセイを利用することができる。
【0184】
別の実施形態では、細胞外効果アッセイは、補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイである。1つのCDCの実施形態では、古典的な補体経路によって読み出し細胞の溶解を誘導するのに必要かつ/又は十分な可溶性因子の存在下で、読み出し細胞に結合する細胞集団内のASC(又はASCの分泌された抗体)の存在を同定するための方法が提供される。従って、このアッセイは、一実施形態では、ASCによって分泌される抗体が古典的な補体経路によって1つ以上の標的細胞の溶解を刺激するか否かを決定することである。
【0185】
CDCアッセイは、少なくとも1つのエフェクター細胞及び少なくとも1つの読み出し細胞を含み、1つのCDCの実施形態が
図18に示されている。この実施形態は、それぞれ抗体212及び213を分泌するエフェクター細胞210及びエフェクター細胞211を含む細胞集団を含む。例示された実施形態は、それぞれエピトープ216及び217を提示する読み出し細胞214及び読み出し細胞215を含む異種読み出し細胞集団をさらに含む。エフェクター細胞210及び211は、読み出し細胞214及び215に向かって拡散する抗体212及び213を分泌する。抗体212は、標的エピトープ217によって読み出し細胞215に結合するが、読み出し細胞214には結合しない。抗体213は、読み出し細胞214及び215のいずれにも結合しない。酵素C1 218、アクセサリー粒子、及び古典的補体経路によって細胞の溶解を誘導するのに必要な可溶性因子の1つは、読み出し細胞215と抗体212との複合体には結合するが、非結合読み出し細胞214は単独のままである。読み出し細胞215と抗体212との複合体への酵素C1 208の結合は、古典的補体経路によって細胞の溶解を誘導するのに必要なさらなる可溶性因子を含む古典的(class)補体経路を誘導し(不図示)、読み出し細胞215の破裂及び死滅をもたらす。
【0186】
読み出し細胞の溶解を誘導するために必要かつ/又は十分な可溶性因子(すなわち、アッセイに必要なアクセサリー粒子)が、読み出し細胞へのアクセスを容易にするようにチャンバーに添加される場合、この可溶性因子は、エフェクター細胞の読み出し細胞とのインキュベーションの間又はその後にチャンバーに添加される。このようなアクセサリー粒子は、上述されたように、上部装置構成要素又は底部装置構成要素によってチャンバーに添加することができる。本明細書で提供されるCDCアッセイは、
図18に示されているように、単一エフェクター細胞、同種エフェクター細胞集団、又は異種細胞集団に対して行うことができる。同様に、CDCアッセイは、
図18に示されているように、単一読み出し細胞、同種読み出し細胞集団、又は異種読み出し細胞集団で行うことができる。しかしながら、多くの場合、読み出し細胞のランダムな死滅に起因する偽陽性の検出を回避するために、読み出し細胞集団でCDCアッセイを行うことが望ましい。
【0187】
補体経路による細胞溶解が、当業者に公知の方法に従って定量される。例えば、細胞溶解は、クローン原性アッセイによって、膜完全性色素の添加によって、細胞内蛍光分子の減少によって、又は溶液中への細胞内分子の放出によって定量される。放出された生体分子は、溶液中で直接測定されるか、又は読み出し粒子上に捕捉される。場合によっては、酸化還元アッセイ用の基質又は酵素アッセイ用の基質のような追加のアクセサリー分子が添加され得る。
図19を参照すると、例えば、第1の生体分子512を分泌するエフェクター細胞510及び第1の生体分子512を分泌しない第2のエフェクター細胞511を含む細胞集団が、異種読み出し粒子、例えば、読み出し細胞513及び読み出し粒子514の存在下、アクセサリー粒子515(例えば、補体タンパク質)の存在下でインキュベートされる。アクセサリー粒子515の存在下で生体分子512が読み出し細胞513に結合すると、読み出し細胞513が溶解する。細胞の溶解時に、第2の生体分子516が放出され、例えば分子517によって生体分子516を捕捉するように官能化された第2のタイプの読み出し粒子である読み出し粒子514上に捕捉される。分子517は、タンパク質、抗体、酵素、反応基、及び/又は核酸のような1つ以上のタイプの分子であり得る。捕捉される生体分子516はタイプに限定されない。むしろ、捕捉される生体分子516は、タンパク質、酵素、色素、炭水化物、又は核酸のような読み出し細胞513内に存在する任意の分子である。第2の生体分子516の読み出し粒子514への結合は、蛍光アッセイ、比色アッセイ、生物発光アッセイ、又は化学発光アッセイを用いて定量される。このアッセイは、例えば、捕捉される生体分子516が、異なる光学特性を有する産物に基質を変換する酵素である場合は、読み出し粒子514上で直接的に、又は周囲の溶液中で間接的に行うことができることを理解されたい。
【0188】
別の実施形態では、単独のエフェクター細胞又は細胞集団内のエフェクター細胞が、細胞増殖を調節するか否かを決定するためのアッセイが提供される。具体的には、このアッセイを使用して、エフェクター細胞が生体分子、例えば、読み出し細胞の増殖速度を調節するサイトカイン又は抗体を分泌するか否かを決定する。
図20を参照すると、例示された実施形態は、それぞれ生体分子222及び223を分泌するエフェクター細胞220及びエフェクター細胞221を含む細胞集団を含む。例示された実施形態は、読み出し細胞224を含む同種読み出し細胞集団をさらに含む。エフェクター細胞220及び221は、読み出し細胞224に向かって拡散する生体分子222及び223を分泌する。生体分子222は、読み出し細胞224に結合して、この読み出し細胞224(点線で示されている)の増殖を誘導するが、生体分子223は読み出し細胞224に結合しない。チャンバーの顕微鏡イメージングを使用して、生体分子に曝露されていない他のチャンバー内の細胞に対する読み出し細胞224の増殖を評価する。
【0189】
細胞増殖調節アッセイは、任意選択により1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団を用いて行うことができる。上記のように、一部の実施形態では、エフェクター細胞が稀であること、及び/又は本明細書で提供される装置の1つに最初に充填される開始集団での濃縮が困難であることから、全ての細胞集団がエフェクター細胞を含むわけではない。本発明は、1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団を同定することによって、これらの稀な細胞の同定を可能にする。
【0190】
細胞増殖調節アッセイはまた、単一読み出し細胞、又は単一チャンバー内の異種読み出し細胞集団で行うことができる。しかしながら、多くの場合、より正確な増殖速度の測定を可能にするために、同種読み出し細胞集団で細胞増殖調節アッセイを行うことが望ましい。
【0191】
細胞増殖調節アッセイは、一実施形態では、細胞増殖を阻害する生体分子を産生する細胞をスクリーニングするのに適合されている。別の実施形態では、この方法は、読み出し細胞の増殖速度を調節する、すなわち増加又は減少させる分子を産生する細胞をスクリーニングするのに適合されている。増殖速度は、一実施形態では、光学顕微鏡画像の手動若しくは自動細胞計数、蛍光を発する細胞の全蛍光強度、希釈色素(例えば、CFSE)で標識された細胞の平均蛍光強度、核染色、又は当業者に公知のその他の方法によって測定される。
【0192】
増殖を測定するための市販のアッセイには、alamarBlue(登録商標)Cell Viability Assay、CellTrace(商標)CFSE Cell Proliferation Kit、及びCellTrace(商標)Violet Cell Proliferation Kit(いずれもLife Technologies製)が含まれ、これらはいずれも、本明細書に記載の方法及び装置と共に使用することができる。
【0193】
別の実施形態では、別の細胞のアポトーシス、すなわち、読み出し細胞又はアクセサリー細胞のアポトーシスを誘導する1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団を選択するためのアポトーシスアッセイが提供される。さらなる実施形態では、この方法を使用して、生体分子、例えば、読み出し細胞又はアクセサリー細胞のアポトーシスを誘導するサイトカイン又は抗体を分泌するエフェクター細胞の存在を同定する。
図21を参照すると、このアッセイは、生体分子232を分泌するエフェクター細胞230及び生体分子233を分泌するエフェクター細胞231を含む細胞集団を含むチャンバー内で行われる。このチャンバーは、読み出し細胞234を含む同種読み出し細胞集団をさらに含む。エフェクター細胞230及びエフェクター細胞231は、読み出し細胞234に向かって拡散する生体分子232及び233を分泌する。生体分子232は、読み出し細胞234に結合して読み出し細胞234のアポトーシスを誘導するが、生体分子233は読み出し細胞に結合しない。一実施形態では、チャンバーの顕微鏡イメージングを使用して、当分野で公知のアポトーシスの染色及び他のマーカー(例えば、アネキシン5、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)媒介dUTPニック末端標識、ミトコンドリア膜電位破壊など)を含めることを潜在的に用いてアポトーシスを評価する。一実施形態では、市販の色素又はキットを用いた細胞死を、例えば、ヨウ化プロピジウム(PI)、LIVE/DEAD(登録商標)Viability/Cytotoxicity Kit(Life Technologies)、又はLIVE/DEAD(登録商標)Cell-Mediated Cytotoxicity Kit(Life Technologies)を用いて測定する。
【0194】
アポトーシスアッセイは、一実施形態では、単一エフェクター細胞を含む細胞集団、任意選択により1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団、又は1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団に対して行われる。一実施形態では、アポトーシスアッセイは、単一読み出し細胞、又は異種読み出し細胞集団で行われる。しかしながら、多くの場合、より正確なアポトーシスの評価を可能にするために、同種読み出し細胞集団でアポトーシスアッセイを行うことが望ましい。
【0195】
別の実施形態では、本明細書で提供される装置及びアッセイを使用して、生体分子、例えば、読み出し細胞の自食作用を誘導するサイトカイン又は抗体を分泌するエフェクター細胞を同定する。この方法の一実施形態が
図22に示されている。この実施形態では、エフェクター細胞441及びエフェクター細胞442を含む細胞集団がアッセイされ、このエフェクター細胞441は生体分子443を分泌する。例示された実施形態は、標的エピトープ449を提示する第1の読み出し細胞444及び標的エピトープを欠いた第2の読み出し細胞445を含む異種読み出し細胞集団をさらに含む。エフェクター細胞441は、第1の読み出し細胞444及び第2の読み出し細胞445に向かって拡散する生体分子443を分泌する。生体分子443は、第1の読み出し細胞444に結合し、第1の読み出し細胞444の自食作用を誘導するが、生体分子443は、第2の読み出し細胞445に結合しない。一実施形態では、チャンバーの顕微鏡イメージングを使用して、当分野で公知の自食作用レポーターでエンジニアリングされた細胞株を用いて自食作用を評価する(例えば、FlowCellect(商標)GFP-LC3 Reporter Autophagy Assay Kit(U2OS)(EMD Millipore)、Premo(商標)Autophagy Tandem Sensor RFP-GFP-LC3B Kit(Life Technologies))。
【0196】
一実施形態では、自食作用アッセイは、単一エフェクター細胞を含む細胞集団、任意選択により1つ以上のエフェクター細胞含む細胞集団、又は1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団に対して行われる。一実施形態では、自食作用アッセイは、単一読み出し細胞、又は異種読み出し細胞集団、又は同種読み出し細胞集団で行われる。このアッセイは、一実施形態では、同種読み出し細胞集団で行われる。
【0197】
別の実施形態では、エフェクター細胞の存在を同定する方法、又は公知の生体分子、例えばサイトカインの能力を阻害して読み出し細胞に応答を誘導する生体分子、例えば抗体を分泌するエフェクター細胞を選択するための方法が提供される。この応答は、タイプによって限定されない。例えば、一実施形態における応答は、細胞死、細胞増殖、レポーターの発現、形態の変化、又は方法の使用者によって選択されるその他の応答から選択される。この方法の一実施形態が
図23に示されている。
図23を参照すると、例示された実施形態は、それぞれ生体分子242及び243を分泌するエフェクター細胞240及びエフェクター細胞241を含む細胞集団を含む。例示された実施形態は、読み出し細胞244を含む同種読み出し細胞集団をさらに含む。エフェクター細胞240及び241は、抗体242及び243を分泌し、これらの抗体は、チャンバー内の培地中に拡散する。このチャンバーは、サイトカイン245でパルスされ、このサイトカインは、通常は、読み出し細胞244に対して既知の効果を有する。抗体242は、サイトカイン245に結合し、これにより、これらのサイトカインが読み出し細胞244に結合するのが防止される。従って、予想される応答は観察されず、エフェクター細胞240及び241の1つが、サイトカイン245が読み出し細胞244を刺激して応答させる能力を中和することができる抗体を分泌していることを示している。
【0198】
一実施形態では、サイトカイン中和アッセイを使用して、読み出し細胞上に存在するサイトカインの受容体を標的とする生体分子を産生するエフェクター細胞を含む細胞集団の存在を同定する。この場合、読み出し細胞244上のサイトカイン245の受容体246への抗体、例えば、抗体242の結合は、応答が刺激されないように、サイトカインと受容体の相互作用を遮断する。サイトカイン受容体は、別の実施形態では、「可溶化」又は「安定化」されており、例えば、Heptares StaR(登録商標)プラットフォームによってエンジニアリングされたサイトカイン受容体である。
【0199】
サイトカインに対する応答は、一実施形態では、限定されるものではないが、細胞死、細胞増殖、蛍光レポータータンパク質の発現、細胞成分の局在化、細胞の形態の変化、移動性、運動性、走化性、細胞凝集などを含む当分野で公知の関連するシグナル伝達の顕微鏡測定によって確認される。一実施形態では、エフェクター細胞を含むチャンバーの応答をエフェクター細胞を欠いたチャンバーと比較して、応答が阻害されるか否かを決定する。応答が阻害される場合は、チャンバー内のエフェクター細胞を、さらなる分析のために採取する。
【0200】
一実施形態では、サイトカインアッセイは、単一エフェクター細胞を含む細胞集団、任意選択により1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団、又は1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団に対して個々の装置のチャンバー内で行われる。この方法は、複数の細胞集団に対して単一装置の複数のチャンバー内で並行して行われる。一実施形態では、サイトカインアッセイは、単一読み出し細胞又は異種読み出し細胞集団で行われる。一実施形態では、この方法を同種読み出し細胞集団で行って、読み出し細胞の刺激、いやむしろその欠如のより正確な評価を可能にする。
【0201】
このようなアッセイ用の市販のサイトカイン依存性又はサイトカイン感受性細胞株の例としては、限定されるものではないが、TF-1、NR6R-3T3、CTLL-2、L929細胞、A549、HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)、BaF3、BW5147.G.1.4.OUAR.1(全てATCCから入手可能)、PathHunter(登録商標)CHO細胞(DiscoveRx)、及びTANGO細胞(Life Technologies)が挙げられる。当業者であれば、初代細胞(例えば、リンパ球、単球)もサイトカインアッセイ用の読み出し細胞として使用できることを理解されよう。
【0202】
一実施形態では、シグナル伝達アッセイを使用して、読み出し細胞の受容体に対してアゴニスト活性を有する分子(例えば、抗体又はサイトカイン)を分泌する1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団を同定する。受容体に結合したときの読み出し細胞集団への影響には、蛍光レポーターの発現、細胞内の蛍光レポーターの移動によって可視化されるシグナル伝達経路の活性化、増殖速度の変化、細胞死、形態の変化、分化、読み出し細胞の表面で発現されるタンパク質の変化などが含まれ得る。いくつかのエンジニアリングされたレポーター細胞株が市販されており、これらを使用してこのようなアッセイを行うことができる。例としては、PathHunter細胞(登録商標)(DiscoverRx)、TANGO(商標)細胞(Life Technologies)、及びEGFPレポーター細胞(ThermoScientific)が挙げられる。一実施形態では、受容体はGPCR受容体であり、読み出し細胞は、サイクリックAMP二次メッセージに応答して転写レポーターを発現するようにエンジニアリングされた細胞である。一実施形態では、この受容体はイオンチャネルであり、読み出し細胞は、カルシウム感受性蛍光色素を使用することによって効果についてアッセイされる。
【0203】
一実施形態では、ウイルス中和アッセイを行って、生体分子、例えば、ウイルスが標的読み出し細胞又は標的アクセサリー細胞に感染する能力を阻害する抗体を分泌する1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団を同定及び/又は選択する。この方法の一実施形態が
図24に示されている。
図24を参照すると、例示された実施形態は、生体分子、例えば抗体252及び253をそれぞれ分泌するエフェクター細胞250及びエフェクター細胞251を含む細胞集団を含む。例示された実施形態は、読み出し細胞254を含む同種読み出し細胞集団をさらに含む。エフェクター細胞250及び251は、生体分子、例えば、抗体252及び253を分泌し、これらの抗体は、チャンバー内の培地中に拡散する。次いで、チャンバーが、通常は読み出し細胞254に感染するウイルス255(アクセサリー粒子)でパルスされる。抗体252又は253はウイルス255に結合し、これにより、ウイルスが読み出し細胞254に結合するのを防止する。予想される感染が観察されない場合は、エフェクター細胞250又は251の1つが、ウイルス255を中和することができる抗体を分泌すると結論づけられる。
【0204】
ウイルス中和アッセイを使用して、読み出し細胞上のウイルスの受容体に結合する生体分子を産生するエフェクター細胞を同定することができる。この場合、読み出し細胞254上のウイルス255の受容体256への抗体、例えば、抗体252の結合は、ウイルスと受容体との相互作用を遮断し、これにより感染が観察されないはずである。
【0205】
ウイルス感染の評価は、当分野で公知の方法を用いて行うことができる。例えば、ウイルスは、感染後に読み出し細胞によって発現される蛍光タンパク質、ウイルス感染中にアップレギュレートされる読み出し細胞内での蛍光タンパク質の発現、ウイルス感染中に増加される読み出し粒子上で捕捉されて測定される、読み出し細胞又はアクセサリー細胞からのタンパク質の分泌、読み出し細胞又はアクセサリー細胞の死滅、読み出し細胞又はアクセサリー細胞の形態の変化、及び/又は読み出し細胞の凝集を含むようにエンジニアリングすることができる。
【0206】
一実施形態では、細胞外効果アッセイは、ウイルス中和アッセイである。一実施形態では、ウイルス中和アッセイは、単一読み出し細胞又は異種読み出し細胞集団を用いて行われる。一実施形態では、この方法は、応答する読み出し細胞の刺激、いやむしろその欠如のより正確な評価を可能にするために同種読み出し細胞集団で行われる。ウイルス中和アッセイ用の市販の細胞株は、本明細書に記載の方法及び装置と共に使用することができるMDCK細胞(ATCC)及びCEM-NKR-CCR5細胞(NIH Aids Reagent Program)である。
【0207】
別の実施形態では、細胞外効果アッセイは、酵素中和アッセイであり、エフェクター細胞が標的酵素を阻害する生体分子を提示又は分泌するか否かを決定するために行われる。この方法の一実施形態が
図25に示されている。
図25を参照すると、例示された実施形態は、生体分子、例えばタンパク質282及び283をそれぞれ分泌するエフェクター細胞280及びエフェクター細胞281を含む細胞集団を含む。例示された実施形態は、標的酵素285がコンジュゲートされた同種読み出し粒子集団、例えばビーズ284をさらに含む。しかしながら、別の実施形態では、標的酵素285は、装置の表面に連結されるか、又は可溶性である。タンパク質282及び283は、培地を通って拡散し、タンパク質282は標的酵素285に結合し、これによりこの酵素の活性を阻害するが、タンパク質283は標的酵素に結合しない。チャンバー内に存在する基質上の酵素活性の検出、いやむしろその欠如は、一実施形態では、限定されるものではないが、蛍光読み出し、比色読み出し、沈殿などを含む当分野で公知の方法によって評価される。
【0208】
別の実施形態では、単一エフェクター細胞を含む細胞集団、任意選択により1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団、又は1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団に対して、個々のチャンバーごとに酵素中和アッセイが行われる。一実施形態では、酵素中和アッセイは、個々のチャンバー内の単一読み出し粒子で行われる。一実施形態では、複数の細胞集団に対して酵素中和アッセイを行って、アッセイ応答の変化を示す細胞集団を同定する。
【0209】
別の実施形態では、第2のタイプのエフェクター粒子の活性化を誘導する分子を提示又は分泌するエフェクター細胞の存在を同定するためのアッセイが提供され、この第2のタイプのエフェクター粒子は、読み出し粒子に影響を及ぼす分子を分泌する。従って、この実施形態では、個々の細胞集団が個々のアッセイチャンバーに供給される。この方法の一実施形態が
図26に示されている。
図26を参照すると、例示された実施形態は、その表面上に分子461(例えば、抗体、表面受容体、主要組織適合遺伝子複合体分子など)を提示する1つのエフェクター細胞460を含む細胞集団を含み、この分子461は、異なるタイプの隣接エフェクター細胞、この場合はエフェクター細胞462を活性化し、これにより、読み出し粒子464によって捕捉される別のタイプの分子463(例えば、サイトカイン、抗体)の分泌を誘導する。この例では、読み出し粒子464は、抗体465又は分泌分子463に特異的な受容体で官能化される。
【0210】
別の実施形態では、エフェクター細胞は、アクセサリー粒子による活性化時に、増殖、生存率、形態、運動性、又は分化などの表現型の変化を示し得る。この場合、エフェクター細胞もまた、読み出し粒子である。この効果は、アクセサリー粒子によって、及び/又は活性化されたエフェクター細胞によるタンパク質の自己分泌によって引き起こされ得る。
【0211】
図27を参照すると、例示された実施形態は、分子471(例えば、抗体、サイトカインなど)を分泌するエフェクター細胞470を含む細胞集団を含み、この分子471は、異なるタイプの第2のエフェクター細胞、この場合はエフェクター細胞472を活性化する。エフェクター細胞472は、一旦活性化されると、読み出し粒子474によって捕捉される分子473(例えば、サイトカイン、抗体)を分泌する。この例では、読み出し粒子474は、抗体475又は分泌分子473に特異的な受容体で官能化される。
【0212】
本明細書で提供されるように、低いオフレートを有するモノクローナル抗体は、同様に同じ抗原に特異的であるがより速いオフレートを有するモノクローナル抗体の大きいバックグラウンド(同じチャンバー内)の存在下で検出可能である。しかしながら、親和性も、本明細書で提供される装置及び方法で測定可能であり、従って、オンレートも測定することができる。これらの測定は、光学系の感度及び捕捉試薬(例えば、ビーズ)の結合能力に依存する。特異性についてアッセイするために、捕捉試薬(読み出し粒子)を、所望の特異性を有する抗体にのみ結合するよう、目的のエピトープを提示するようにデザインすることができる。
【0213】
図28を参照すると、例示された実施形態は、同じ抗原に対して特異的であるが異なる親和性を有する抗体を分泌する同種細胞集団を含む。このアッセイを使用して、高い親和性を有する抗体を産生するエフェクター細胞を同定する。エフェクター細胞450及び451は、標的エピトープ(不図示)に対して低い親和性を有する抗体453及び454を分泌するが、エフェクター細胞452は、標的エピトープに対してより高い親和性を有する抗体455を分泌する。抗体453、454、及び455は、読み出しビーズ456を含む同種読み出し粒子集団によって捕捉される。次いで、読み出しビーズは、全ての抗体に結合する蛍光標識抗原(不図示)と共にインキュベートされる。非標識抗原(不図示)で洗浄すると、蛍光標識抗原は、読み出しビーズがそれらの表面上に高親和性抗体455を提示する場合にのみ残留する。
【0214】
図29を参照すると、生体分子、例えば、抗体261を分泌するエフェクター細胞260がチャンバー内に供給されている。チャンバーは、光学的に区別可能な読み出し粒子、例えば、それぞれ異なる標的エピトープ264及び265を提示するビーズ262及び263を含む読み出し粒子集団をさらに含む。抗体261は、チャンバー内で拡散し、エピトープ264には結合するが、265に結合しない。抗体261のエピトープ264への優先的結合は、一実施形態では、ビーズ262の蛍光では観察されるが、ビーズ263の蛍光では観察されない。
【0215】
図示の実施形態では、ビーズ262及び263は、交差反応性を評価するために、光学的に形状によって区別可能である。しかしながら、読み出し粒子は、他の手段、例えば、1つ以上の特性、例えば、蛍光標識(異なる蛍光波長を含む)、様々なレベルの蛍光強度(例えば、異なる蛍光強度、形態、サイズ、表面染色、及びアッセイチャンバー内の位置を有するStarfire(商標)ビーズを使用する)によっても区別可能であり得る。
【0216】
一実施形態では、ビーズ262及び263は、異なる色フルオロフォアの使用によって光学的に区別可能である。
【0217】
一実施形態では、特異性は、標的エピトープの結合のためにエフェクター細胞によって分泌される抗体と競合する抗体を含めることによって測定される。例えば、一実施形態では、抗原を提示する読み出し粒子に結合した分泌された抗体の存在を、蛍光標識された二次抗体で確認する。異なる宿主から産生され、かつ抗原上の既知の標的エピトープに結合することが知られている非標識競合抗体の後の添加により、分泌された抗体が競合抗体と同じ標的エピトープに結合する場合に限り、分泌された抗体の移動のために蛍光が減少する。あるいは、特異性は、分泌された抗体が低い特異性を有する場合、分泌された抗体の標的エピトープへの結合と競合する様々な抗原の混合物を添加することによって測定される。あるいは、特異性は、分泌された抗体をビーズ上に捕捉し、次いで、異なって標識された抗原を使用して、分泌された抗体の結合性を評価することによって測定される。
【0218】
一実施形態では、生体分子を分泌するエフェクター細胞の存在を同定する方法は、エフェクター細胞の1つ以上の細胞内化合物の存在又は非存在の分析に関連する。全体を通して記載されるように、一実施形態におけるエフェクター細胞の同定は、まず、エフェクター細胞を含む細胞集団の同定を含む。
図30を参照すると、目的の生体分子522(例えば、抗体又はサイトカイン)を分泌する少なくとも1つのエフェクター細胞型520及び目的の生体分子を分泌しない別のエフェクター細胞型521を含む細胞集団が、目的の生体分子を捕捉するように官能化された読み出し粒子523を含む読み出し粒子集団の存在下でインキュベートされる。インキュベーション期間の後、エフェクター細胞型520及び521を含む細胞集団を溶解して、集団内の細胞の細胞内容物を放出させる。読み出し粒子523はまた、目的の細胞内生体分子524(例えば、核酸、抗体のようなタンパク質)を捕捉するように官能化される。細胞溶解は、当業者に公知の様々な方法によって達成することができる。
【0219】
一実施形態では、所望の結合性を有する分泌された生体分子のポリクローナル混合物を同定するための方法が提供される。標的エピトープ、標的分子、又は標的細胞型に対して既知の親和性を有する抗体を産生するエフェクター細胞の異種混合物でアッセイを行うことができる。次いで、混合物との関係における標的の結合を、個々のエフェクター細胞のみとの関係における標的の結合と比較して、例えば混合物が効果の増強をもたらすか否かを決定することができる。
【0220】
本明細書で提供されるアッセイの一実施形態では、読み出し粒子が、アッセイチャンバー内で細胞集団と共にインキュベートされた後、蛍光測定を行って、集団内の細胞が細胞外効果を示すか否かを決定する。この実施形態では、読み出し粒子集団(又はその亜集団)が、蛍光標識され、蛍光の変化が、細胞外効果の存在及び/又はサイズに相関する。読み出し粒子集団は、直接的に又は間接的に標識することができる。当業者には理解されるように、正確なイメージング及び蛍光測定を可能にするために、読み出し粒子及びエフェクター細胞を1つの焦点面に供給するアッセイが行われる。
【0221】
一実施形態では、読み出し粒子応答が、自動化された高分解能顕微鏡法を用いて監視される。例えば、イメージングを、Axiovert 200(Zeiss)又はDMIRE2(Leica)電動倒立顕微鏡で20倍(0.4 N.A.)の対物レンズを使用することによって監視することができる。本明細書で提供される自動化顕微鏡システムを使用することにより、約30分間で、1つの明視野及び3つの蛍光チャネルを含む約4000個のチャンバーを含むアレイの完全なイメージングが可能となる。このプラットフォームは、参照によりその全内容があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる、Lecault et al.(2011).Nature Methods 8,pp.581-586に記載されているように、様々な装置のデザインに対応することができる。重要なことに、本明細書で使用されるイメージング法は、細胞への光損傷を最小限に抑えながら、効果的な陽性チャンバーで十分なシグナルを達成する。
【0222】
一実施形態では、本明細書で提供される細胞外効果アッセイは、長期間の細胞培養から恩恵を受けるため、装置内に維持されるエフェクター細胞が生存可能で健康な細胞であることが必要である。読み出し細胞又はアクセサリー細胞が細胞外効果アッセイで使用される実施形態では、これらの細胞はまた、健康な状態に維持され、生存可能で健康であることを理解されたい。本明細書で提供される流体構造は、細胞外効果アッセイを行うことができるように、エフェクター細胞及び読み出し細胞の生存率を維持するための培地条件の制御を可能にする。例えば、いくつかの細胞型は、分泌産物の蓄積に依存する自己分泌因子又はパラ分泌因子を必要とする。例えば、CHO細胞の増殖速度は、播種密度に大きく依存する。1つのCHO細胞を4nLのチャンバー内に閉じ込めることは、250,000細胞/mlの播種密度に相当し、これは、従来の大規模培養に匹敵する。これらの細胞は高い播種密度で成長するため、CHO細胞は、数日間灌流を必要としないことがある。しかしながら、他の細胞型、特にサイトカイン依存性の細胞型(例えば、ND13細胞、BaF3細胞、造血幹細胞)は、典型的には、大規模培養で高濃度に達することはなく、サイトカインの欠乏を防止するためにマイクロ流体装置での頻繁な供給が必要であり得る。サイトカインは、培地に添加されてもよいし、又はフィーダー細胞によって産生されてもよい。例えば、骨髄由来間質細胞及び好酸球は、これらによるIL-6及び他の因子の産生のために、形質細胞の生存を支持することが示されている(参照によりそれらの全内容が本明細書に組み入れられる、Wols et al.(2002).Journal of Immunology 169,pp.4213-21;Chu et al.(2011),Nature Immunology 2,pp.151-159)。この場合、灌流頻度は、栄養素欠乏を防止しながら、パラ分泌因子の十分な蓄積を可能にするように調節することができる。
【0223】
全体を通して示されるように、本発明の一態様は、任意選択により1つ以上のエフェクター細胞(例えば、ASC)を含む細胞集団が、読み出し粒子(例えば、細胞表面受容体を含む細胞)に細胞外効果を及ぼすか否かを決定する方法を提供する。一実施形態では、エフェクター細胞はASCである。細胞外効果は、一実施形態では、読み出し細胞上の細胞表面受容体(例えば、抗体分泌細胞によって分泌される抗体のアゴニスト及び/又はアンタゴニスト特性)の阻害(アンタゴニズム)又は活性化(アゴニズム)である。さらなる実施形態では、細胞外効果は、膜貫通タンパク質に対するアゴニスト効果又はアンタゴニスト効果であり、この膜貫通タンパク質は、さらなる実施形態では、Gタンパク質共役受容体(GPCR)、受容体チロシンキナーゼ(RTK)、イオンチャネル、又はABCトランスポーターである。さらなる実施形態では、受容体はサイトカイン受容体である。GPCR及びRTK以外の他の代謝調節型受容体に対する細胞外効果を評価することができる。例えば、グアニリルシクラーゼ受容体に対する細胞外効果は、細胞集団をグアニリルシクラーゼ受容体を発現する読み出し細胞集団と共にインキュベートすることによって評価することができる。
【0224】
読み出し細胞が使用される実施形態では、読み出し細胞は、生存していてもよいし、又は固定されていてもよい。一実施形態における細胞外効果は、固定された読み出し細胞の細胞内タンパク質に対する効果である。細胞外効果は、生存している又は固定された読み出し細胞の細胞外タンパク質、又は生存可能な読み出し細胞の分泌されたタンパク質で測定することもできる。
【0225】
別の実施形態では、読み出し細胞は、セリン/トレオニンキナーゼ受容体又はヒスチジンキナーゼ関連受容体を発現し、細胞外効果アッセイは、細胞受容体の結合、アゴニズム、又はアンタゴニズムを測定する。
【0226】
特定の受容体(例えば、受容体セリン/トレオニンキナーゼ、ヒスチジンキナーゼ関連受容体、又はGPCR)がオーファン受容体である、すなわち特定の受容体を活性化するためのリガンドが未知である実施形態では、本明細書で提供される方法は、オーファン受容体を発現する読み出し細胞に対して細胞外アッセイを行うことによって特定のオーファン受容体のリガンドの発見を可能にし、かつオーファン受容体を発現する読み出し細胞に対する細胞外効果(例えば、対照値と比較したオーファン受容体のアゴニズム又はアンタゴニズム)の変化の誘導に関与するエフェクター細胞を含む細胞集団又は亜集団を同定する。
【0227】
一実施形態では、読み出し細胞の表面上の細胞表面タンパク質は、膜貫通イオンチャネルである。さらなる実施形態では、このイオンチャネルは、リガンド依存性イオンチャネルであり、アッセイで測定される細胞外効果は、イオンチャネルの開閉の調節、例えば、アゴニスト結合によりイオンチャネルが開くこと又はアンタゴニスト結合によりイオンチャネルが閉じる/遮断することである。アンタゴニスト又はアゴニストは、例えば、1つ以上のエフェクター細胞によって分泌される生体分子(例えば、抗体)であり得る。本明細書に記載の細胞外効果アッセイを使用して、Cys-ループスーパーファミリー、イオンチャネル型グルタミン酸受容体、及び/又はATP依存性イオンチャネルにおけるリガンド依存性イオンチャネルを発現する細胞に対するエフェクター細胞の細胞外効果を測定することができる。アニオン性cys-ループイオン依存性チャネルの特定の例としては、GABAA受容体及びグリシン受容体(GlyR)が挙げられる。カチオン性cysループイオン依存性チャネルの特定の例としては、セロトニン(5-HT)受容体、ニコチン性アセチルコリン(nAChR)、及び亜鉛活性化イオンチャネルが挙げられる。前述のチャネルの1つ以上を読み出し細胞によって発現させて、エフェクター細胞がイオンチャネルをアゴナイズ又はアンタゴナイズすることによってそれぞれの細胞に対して細胞外効果を有するか否かを決定することができる。イオン流束の測定は、典型的には、短時間(すなわち、数秒から数分)で行われ、この測定の実施には正確な流体制御が必要である。一実施形態では、イオン流束の測定は、分泌された分子が読み出し細胞に結合することを最初に確認した後に行われる。イオン流束の測定は、カルシウム流束の指標である蛍光色素を用いて行うことができる。市販のイオンチャネルアッセイの例としては、Fluo-4-Direct Calcium Assay Kit(Life Technologies)、FLIPR Membrane Potential Assay Kit(Molecular Devices)が挙げられる。イオンチャネル発現細胞株も市販されている(例えば、PrecisION(商標)細胞株、EMD Millipore)。
【0228】
一実施形態では、読み出し細胞は、その表面上にATP結合カセット(ABC)トランスポーターを発現し、そして細胞外効果アッセイは、膜を通る基質の輸送を測定することを含む。読み出し粒子は、ビーズに固定することができるタンパク質(例えば、GenoMembrane ABC Transporter Vesicles(Life Technologies))を発現する細胞に由来する膜小胞であり得る。例えば、ABCトランスポーターは、透過性糖タンパク質(多剤耐性タンパク質)であり得、その効果は、読み出し細胞におけるカルセインの蛍光強度によって測定することができる。このようなアッセイを行うためのVybrant(商標)Multidrug Resistance Assay Kit(Molecular Probes)が市販されている。
【0229】
細胞外効果アッセイはまた、AMPA受容体(クラスGluA)、カイナイト受容体(クラスGluK)、又はNMDA受容体(クラスGluN)のようなイオンチャネル型グルタミン酸受容体を発現する読み出し細胞の使用によっても行うことができる。同様に、細胞外効果アッセイは、ATP依存性チャネル又はホスファチジルイノシトール4-5-ビスホスフェート(PIP2)-依存性チャネルを発現する読み出し細胞の使用によって行うこともできる。
【0230】
本発明は、細胞外効果の変化を示すエフェクター細胞を含む細胞集団を同定する方法を提供する。一実施形態では、この方法は、複数の個々の細胞集団を別々のアッセイチャンバーに保持するステップであって、個々の細胞集団の少なくとも1つが1つ以上のエフェクター細胞を含み、別々のアッセイチャンバーの内容物が、1つ以上の読み出し粒子を含む読み出し粒子集団をさらに含む、ステップ、個々の細胞集団及び読み出し粒子集団をアッセイチャンバー内でインキュベートするステップ、細胞外効果の存在について個々の細胞集団をアッセイするステップであって、読み出し粒子集団又はその亜集団が細胞外効果の読み出しを提供する、ステップを含む。一実施形態では、細胞外効果は、受容体チロシンキナーゼ(RTK)に対する効果、例えば、RTKへの結合、RTKのアンタゴニズム、又はRTKのアゴニズムである。RTKは、多くのポリペプチド増殖因子、サイトカイン、及びホルモンに対して高親和性の細胞表面受容体である。これまでに、ヒトゲノムで同定された約60の受容体キナーゼタンパク質が既に存在する(参照によりその全内容があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる、Robinson et al.(2000).Oncogene 19,pp.5548-5557)。RTKは、細胞プロセスを調節し、かつ多くのタイプの癌の発生及び進行において役割を果たすことが示されている(参照によりその全内容があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる、Zwick et al.(2001).Endocr.Relat.Cancer 8,pp.161-173)。
【0231】
細胞外効果がRTKに対する効果である場合は、本発明は、特定のRTKクラス又はメンバーに限定されない。およそ20種類のRTKクラスが同定され、これらのクラスのいずれか1つのメンバーに対する細胞外効果を、本明細書で提供される方法及び装置でスクリーニングすることができる。表2は、異なるRTKクラス及び各クラスの代表的なメンバーを示し、それぞれは、読み出し粒子、例えば、読み出し細胞又は小胞で発現される場合に本明細書での使用に適している。一実施形態では、表2に示されるサブクラスの1つのRTKに対して細胞外効果を有するエフェクター細胞を含む1つ以上の集団を同定するために、複数の細胞集団を並行にスクリーニングする方法が本明細書で提供される。一実施形態では、この方法は、細胞外効果を示すASCを含む1つ以上の細胞集団を回収して回収細胞集団を提供するステップ、及び回収した細胞集団を限界希釈度で1つ以上のさらなる細胞外効果アッセイをさらに行って、細胞外効果に関与するASCを同定するステップをさらに含む。この実施形態では、回収された集団は、限界希釈で亜集団に分けることができる。さらなる細胞外効果アッセイを、本明細書で提供される装置の1つ又は卓上アッセイによって行うことができる。あるいは、RTKに対して細胞外効果を示す細胞を有する細胞集団が同定されたら、細胞集団が回収され、溶解され、核酸が増幅され、そして配列決定される。さらなる実施形態では、核酸は、1つ以上の抗体遺伝子を含む。
【0232】
一実施形態では、本発明は、例えば、分泌産物、例えばモノクローナル抗体によってRTKをアンタゴナイズ又はアゴナイズする(すなわち、細胞外効果)エフェクター細胞を含む細胞集団の同定に関する。エフェクター細胞は、孤立エフェクター細胞、同種環境、又は異種環境(例えば、複数の異なるエフェクター細胞を含む)を表す。
【0233】
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
一実施形態では、RTKは、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、例えば、PDGFRαである。PDGFは、結合して様々なホモ二量体及びヘテロ二量体を形成する可溶性増殖因子(A、B、C、及びD)のファミリーである。これらの二量体は、異なる特異性を有する2つの密接に関連する受容体であるPDGFRα及びPDGFRβによって認識される。特に、PDGFαは、PDGFRαに選択的に結合して、肺線維症、肝硬変、強皮症、糸球体硬化症、及び心筋線維症を含む線維性疾患において病理学的な間葉系応答を引き起こすことが示されている(参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、Andrae et al.(2008).Genes Dev.22,pp.1276-1312を参照)。また、マウスにおけるPDGFRαの構成的活性化は、複数の器官における進行性線維症をもたらすことも示されている(参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、Olson et al.(2009).Dev.Cell 16,pp.303-313)。従って、PDGFRαを阻害する治療法は線維症の処置に高い可能性を有し、線維症は、疾患を最大40%悪化させ、かつ高齢者集団では未だ対処されていない大きな医学的問題を代表する状態である。抗体(イマチニブ及びニロチニブ)は、PDGFRαの阻害剤として研究されているが、それぞれは、c-kit及びFlt-3を含む他の中枢RTKに対して著しいオフターゲット効果を有し、多数の副作用をもたらす。従って、イマチニブ及びニロチニブは、PDGFRα及びPDGFRβを効果的に阻害することができるが、それらの副作用が、イマチニブ及びニロチニブを線維性疾患の処置において容認できないものにし、高度に特異的な抗体阻害剤の可能性が強調される。本発明は、一実施形態では、イマチニブ及びニロチニブと比較してより高いPDGFRα特異性を有する抗体を提供することによってこの問題を克服する。
【0240】
PDGFRαは、線維症の処置の標的として既に確立されている。癌の処置の初期臨床試験に入っている2つの抗ヒトPDGFRα mAbアンタゴニストが開発中である(例えば、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、Shah et al.(2010).Cancer 166,pp.1018-1026を参照)。本明細書で提供される方法は、PDGFRαに結合するエフェクター細胞の分泌産物の同定を容易にする。さらなる実施形態では、分泌産物は、癌モデル及び線維症モデルの両方において、ヒトPDGFRα及びマウスPDGFRαの両方の活性を遮断する。
【0241】
エフェクター細胞分泌産物がPDGFRαに結合するか否かを決定するための細胞外効果アッセイの一実施形態は、生存及び増殖がサイトカインIL-3に厳密に依存する懸濁細胞株(例えば、32D及びBa/F3)の使用に基づくが、ほぼ全てのチロシンキナーゼの発現及び活性化によってこの「IL-3依存」を改善することができる。このアプローチは、BCR-ABL融合癌遺伝子を評価するために最初にDailey及びBaltimoreによって使用され、そして小分子チロシンキナーゼ阻害剤のハイスループットスクリーニングに広く使用されている(例えば、それぞれ参照によりそれらの全内容があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる、Warmuth et al.(2007).Curr.Opin.Oncology 19,pp.55-60;Daley and Baltimore(1988).Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85,pp.9312-9316を参照)。シグナル伝達を監視するために、PDGFRα及びPDGFRβ(ヒト型及びマウス型の両方)を、いずれの受容体も天然では発現しないマウス造血細胞株である32D細胞(読み出し細胞)で発現させる。これにより、各経路の分離が可能となるが、これは、両方の受容体がしばしば同時発現されるため、この分離が可能でない場合は困難である。32D細胞におけるヒトPDGFRα/βの発現は、機能的PDGF誘発分裂促進応答を生じさせることが以前に確認されている(参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、Matsui et al.(1989).Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86,pp.8314-8318)。IL-3の非存在下では、32D細胞は全く分裂しないが、RTKを発現する細胞のPDGF刺激は、IL-3の必要性を低減し、顕微鏡検査によって検出可能な迅速な分裂促進応答を生じさせる。検出可能な応答は、一実施形態では、細胞増殖、形態学的変化、運動性/走化性の増加、又はアンタゴニストの存在下での細胞死/アポトーシスである。一実施形態では、光多重化方法を使用して、本明細書で提供される装置の1つにおいてPDGFRα応答及びPDGFRβ応答の両方の阻害/活性化を同時に測定する。別の実施形態では、本明細書で提供される装置の1つにおけるPDGFRα応答及びPDGFRβ応答の両方の阻害/活性化は、同じアッセイチャンバーで連続的に行われる2つの細胞外アッセイによって測定される。
【0242】
ヒト/マウスPDGFRα及びPDGFRβ(Sino Biological)の完全長cDNAは、一実施形態では、GFP又はRFPのいずれかを有するIRES配列も含む改変pCMV発現ベクターを用いて32D細胞(ATCC;CRL-11346)で発現され、これにより、それぞれ蛍光イメージングによって区別可能な2種類の「読み出し細胞」が作製される。読み出し細胞は、培地及びフィード条件を最適化するため、PDGFリガンドに対する用量反応を決定するため、及び応答の形態及び動力学を特徴付けるために特性を明らかにする。懸濁細胞(32D又はBa/F3など)の使用は、単一細胞が画像分析によって容易に同定され、そしてまた接着細胞よりも物理的に(投射面積が)より小さいため、単一チャンバーがコンフルエントに達する前に100以上の読み出し細胞を収容できるという利点を提供する。別の実施形態では、32D細胞の代わりに、32Dと同様の特性を有する別のIL-3依存性マウス細胞株であるBa/F3細胞が、読み出し細胞として使用される。32D細胞及びBa/F3細胞の両方は、骨髄に由来し、ASCのために最適化された培地でよく増殖し、ASCの維持に極めて重要な増殖因子であるIL-6を分泌する(例えば、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、Cassese et al.(2003).J.Immunol.171,pp.1684-1690を参照)。
【0243】
線維症におけるPDGFRαの役割を評価するための前臨床モデルが開発されており、これを細胞外効果アッセイに使用することができる。具体的には、後述される心臓線維症の2つのモデルを利用することができる。第1のモデルは、虚血性障害(イソプロテレノール誘発心損傷;ICD)に基づき、第2のモデルは、冠状動脈結紮誘発心筋梗塞(MI)に基づいている。損傷時に、線維化反応が、PDGFRα+/Scal+陽性前駆細胞の急速な増殖によって始まり、損傷に応答して増殖する細胞の50%以上を占め、続いてこれらの子孫がマトリックス産生PDGFRα低悪性型/Scal低悪性型筋線維芽細胞に分化する。RT-qPCRによる遺伝子発現は、α-平滑筋アクチン(αSMA)及びコラーゲンI型(Col1)を含む線維性マトリックス沈着に関連する複数のマーカーの発現を実証し、これらの発現は、(Scal+)前駆体で検出可能であるが、分化集団で実質的に上方制御される。一実施形態では、線維化の減少をもたらす前駆細胞の増殖を弱めるモノクローナル抗体を分泌するエフェクター細胞を含む細胞集団が同定される。この細胞外効果アッセイは、2つの独立したマーカー:Scal+/PDGFRα+前駆細胞及びCol1駆動GFPの早期増殖を監視することによって行われる。具体的には、MI後に、線維化反応が、PDGFRα+/Scal+前駆体での最初のGFP発現、及びその後の、出現する筋線維芽細胞集団での強度が高いGFP発現によって特徴付けられる。
【0244】
細胞外効果アッセイは、一実施形態では、GPCR細胞外効果アッセイ、例えば、GPCRの結合、アゴニズム、又はアンタゴニズムである。本明細書に記載されるように、細胞外効果は、集団内の全ての細胞にも、複数の細胞にさえも起因する必要はない。むしろ、本明細書で提供される方法は、エフェクター細胞が、数十から数百の細胞(例えば、約10~約250個の細胞、又は約10~約100個の細胞)を含む、又は約2~約50個の細胞、例えば、約2~約10個の細胞を含む異種集団内に存在する場合、単一エフェクター細胞の細胞外効果の検出を可能にする。
【0245】
GPCRは、ヒトゲノム中に800を超えるメンバーを含む、7回膜貫通型受容体のスーパーファミリーである。各GPCRは、そのアミノ末端が細胞の細胞外表面に位置し、C末端尾部が細胞質に面している。細胞の内側では、GPCRがヘテロ三量体Gタンパク質に結合する。アゴニスト結合時に、GPCRは、会合したGタンパク質の活性化をもたらす構造変化が起こる。これらの約半分は、嗅覚受容体であり、残りは、カルシウム及び代謝産物からサイトカイン及び神経伝達物質に及ぶ異なるリガンドの全てに応答する。本発明は、一実施形態では、GPCRに対して細胞外効果を有する1つ以上のASCを選択する方法を提供する。細胞外効果アッセイは、読み出し粒子、例えば読み出し細胞、又はアクセサリー粒子、例えばアクセサリー細胞上で発現され得る限り、あらゆるGPCRを利用することができる。
【0246】
特定のGPCRと自然に会合するタイプのGタンパク質は、形質導入される細胞シグナル伝達カスケードを決定する。Gq共役受容体では、受容体活性化から生じるシグナルは、細胞内カルシウムレベルの増加である。Gs共役受容体では、細胞内cAMPの増加が観察される。全てのGPCRの50%を構成するGi共役受容体では、活性化は、cAMPの産生の阻害をもたらす。エフェクター細胞の特性がGi共役GPCRの活性化である実施形態では、アデニリルシクラーゼの非特異的活性化因子で読み出し細胞を時々刺激する必要がある。一実施形態では、アデニルシクラーゼ活性化因子はフォルスコリンである。従って、1つ以上のエフェクター細胞によるGi共役受容体の活性化は、フォルスコリンによって誘発されるcAMPの増加を防止する。従って、フォルスコリンは、本明細書で提供される1つ以上のGPCR細胞外効果アッセイにおいてアクセサリー粒子として使用することができる。
【0247】
本発明は、一実施形態では、細胞集団内のエフェクター細胞(例えば、ASC)がGPCRに対して細胞外効果を示すか否かを決定するための手段を提供する。GPCRは、アッセイチャンバー内の1つ以上の読み出し粒子上に存在し、一実施形態における細胞外効果は、GPCRへの結合、例えば、実証された親和性若しくは特異性、阻害、又は活性化である。GPCRは、Heptares Therapeutics(安定化受容体、StaR(登録商標)技術)の方法によって作製されたGPCRの1つのような安定化GPCRであり得る。エフェクター細胞(例えば、ASC)は、一実施形態では、単一細胞として、又はアッセイチャンバー内の同種又は異種細胞集団内に存在する。一実施形態では、本明細書で提供される方法及び装置を使用して、表3A及び/又は表3Bに記載のGPCRの1つ、又は参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、国際公開第2004/040000号パンフレットに開示されているGPCRの1つに対して細胞外効果を実証する1つ以上の抗体を分泌する1つ以上のASCをそれぞれ含む1つ以上の細胞集団を同定する。例えば、一実施形態では、GPCRは、次のクラスの1つに属する:クラスA、クラスB、クラスC、接着、frizzled。
【0248】
別の実施形態では、細胞外効果は、内皮細胞の分化、Gタンパク質共役(EDG)受容体に対する効果である。EDG受容体ファミリーは、脂質シグナル伝達に関与し、かつリゾホスファチジン酸(LPA)及びスフィンゴシン1-リン酸(S1P)に結合する11のGPCR(S1P1-5及びLPA1-6)を含む。LPA及びS1Pを介したシグナル伝達は、細胞増殖、免疫細胞活性化、移動、浸潤、炎症、及び血管新生を含む、健康な状態及び疾患における多数の機能を調節する。このファミリーに対する強力かつ特異的な小分子阻害剤の作製にはほとんど成功しておらず、これにより、mAbが非常に魅力的な代替物となる。一実施形態では、EDG受容体は、S1P3(EDG3)、S1PR1(EDG1)であり、S1PR1(EDG1)は、乳癌、リンパ腫、卵巣癌、及び黒色腫を含む癌においてNF-κB及びSTAT3を活性化することが示され、免疫細胞輸送及び癌転移において重要な役割を果たす(参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、Milstien and Spiegel(2006).Cancer Cell 9,pp.148-15)。S1Pリガンド(ソネプシズマブ)を中和するモノクローナル抗体は、最近、進行した固形腫瘍(NCT00661414)の処置のための第II相試験を完了した。一実施形態では、本明細書で提供される方法及び装置を使用して、ソネプシズマブよりも高い親和性を有する抗体を分泌するASC、又はソネプシズマブよりも広範囲にS1Pを阻害する抗体を同定し、単離する。別の実施形態では、細胞外効果は、LPA2(EDG4)受容体に対する効果である。LPA2は、甲状腺、結腸、胃、及び乳癌、並びにこのLPA2がLPAの感受性及び有害な影響に対する主要な寄与因子である多くの卵巣腫瘍において過剰発現される。
【0249】
一実施形態では、細胞集団は、1つ以上が、読み出し粒子上に存在するケモカイン受容体に対する細胞外効果を示すか否かについてアッセイされる。さらなる実施形態では、ケモカイン受容体は、融合タンパク質又はCD184としても知られるC-X-Cケモカイン受容体4型(CXCR-4)である。CXCR4は、C-X-Cモチーフケモカイン12(CXCL12)としても知られている、免疫細胞動員に対して強い走化性を示すSDF1α(CXCL12)に結合する。DNA免疫化を使用して、この標的に対する92個のハイブリドーマを作製し、そのうちの75個が、異なる鎖の使用及びエピトープ認識を示し(Genetic Eng and Biotech news,Aug 2013)、これは、ハイブリドーマの選択が、利用可能な抗体多様性のほんの一部のみを捕捉することを示している。CXCR4/CXCL12軸を介したシグナル伝達は、腫瘍細胞の増殖、血管新生、細胞の生存に中心的役割を果たし、肝臓及び骨髄のようなCXCL12産生臓器における二次転移癌の増殖の仲介に関与することを示している(参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、Teicher and Fricker(2010).Clin.Cancer Res.16,pp.2927-2931)。
【0250】
別の実施形態では、細胞集団は、SDF1αに結合することが最近判明したケモカイン受容体CXCR7に効果を及ぼす能力についてスクリーニングされる。標準的なGタンパク質共役によってシグナル伝達するCXCR4とは異なり、CXCR7は、β-アレスチン経路によって一意にシグナル伝達する。
【0251】
別の実施形態では、GPCRは、プロテアーゼ活性化受容体(PAR1、PAR3、及びPAR4)であり、プロテアーゼ活性化受容体は、露出したN末端のトロンビン媒介切断によって活性化されるGPCRのクラスであり、線維症に関与する。さらに別の実施形態では、GPCRは、以下の表3A又は表3BのGPCRの1つである。
【0252】
結合、活性化、又は阻害の読み出しを提供するようにエンジニアリングされたGPCRを発現する細胞株は、例えば、Life Technologies(GeneBLAzer(登録商標)及びTango(商標)細胞株)、DiscoveRx、Cisbio、Perkin Elmerから市販されており、本明細書に記載のGPCR細胞外効果アッセイにおいて、例えば、読み出し細胞として使用するのに適している。
【0253】
一実施形態では、以下の受容体ファミリーの1つからのGPCRは、1つ以上の読み出し細胞上で発現され、細胞外効果は、以下のGPCRの1つ以上に対して測定される:アセチルコリン受容体、アデノシン受容体、アドレナリン受容体、アンジオテンシン受容体、ブラジキニン受容体、カルシトニン受容体、カルシウム感知受容体、カンナビノイド受容体、ケモカイン受容体、コレシストキニン受容体、補体成分(C5AR1)、コルチコトロピン放出因子受容体、ドーパミン受容体、内皮分化遺伝子受容体、エンドセリン受容体、ホルミルペプチド様受容体、ガラニン受容体、ガストリン放出ペプチド受容体、受容体グレリン受容体、胃抑制ポリペプチド受容体、グルカゴン受容体、ゴナドトロピン放出ホルモン受容体、ヒスタミン受容体、キスペプチン(KiSS1)受容体、ロイコトリエン受容体、メラニン凝集ホルモン受容体、メラノコルチン受容体、メラトニン受容体、モチリン受容体、神経ペプチド受容体、ニコチン酸、オピオイド受容体、オレキシン受容体、オーファン受容体、血小板活性化因子受容体、プロキネチネシン受容体、プロラクチン放出ペプチド、プロスタノイド受容体、プロテアーゼ活性化受容体、P2Y(プリン)受容体、リラキシン受容体、セクレチン受容体、セロトニン受容体、ソマトスタチン受容体、タキキニン受容体、バソプレッシン受容体、オキシトシン受容体、血管作動性腸管ペプチド(VIP)受容体、又は下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)受容体。
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
【0258】
【0259】
【0260】
【0261】
一実施形態では、エフェクター細胞が、表4に示される1つ以上のアッセイによってGPCRを発現する読み出し細胞に対する細胞外効果についてアッセイされる。別の実施形態では、読み出し粒子集団は、膜抽出物(Integral Molecularから入手可能)で官能化された小胞若しくはビーズ、又は安定化された可溶化GPCR(例えば、Heptares)を含む。読み出し粒子は、装置の上部構成要素に形成されたマイクロチャネルを介してチャンバーに加えられるか、又は上部構成要素と底部構成要素とを結合する前に底部構成要素のオープンチャンバーに直接加えられる。
【0262】
GPCRをリン酸化して、アレスチンと呼ばれるタンパク質と相互作用させることができる。アレスチン活性化を測定する3つの主な方法は:(i)蛍光標識アレスチン(例えば、GFP又はYFP)を用いた顕微鏡検査;(ii)酵素相補性;(iii)TANGO(商標)Reporterシステム(β-ラクタマーゼ)(Promega)の使用である。一実施形態では、TANGO(商標)Reporterシステムは、1つ又は複数の読み出し細胞に使用される。この技術は、切断可能なリンカーによって転写因子に連結されたGPCRを使用する。アレスチンは、不活性プロテアーゼ(crippled protease)に融合される。アレスチンがGPCRに結合すると、プロテアーゼ及びリンカーの高い局所濃度が、リンカーの切断をもたらし、転写因子を核内に放出して転写を活性化する。β-ラクタマーゼアッセイは、生存細胞上で行うことができ、細胞溶解を必要とせず、僅か6時間のアゴニストのインキュベーションでイメージングすることができる。
【0263】
一実施形態では、GPCRシグナル伝達のアンタゴニスト及びアゴニストの検出のために広く使用することができるβ-アレスチンGPCRアッセイを、本明細書で提供される方法及び装置を使用して、GPCRに結合する生体分子を分泌するエフェクター細胞を同定する(参照によりその全内容があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる、Rossi et al.(1997).Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94,pp.8405-8410)。このアッセイは、DiscoveRxによって現在市販されているβ-ガラクトシダーゼ(β-Gal)酵素相補性技術に基づいている。GPCR標的は、β-Gal酵素の小さいN末端断片とフレーム内で融合される。GPCRが活性化すると、β-GalのN末端配列に結合したβ-アレスチンを含む第2の融合タンパク質がGPCRに結合し、機能的β-Gal酵素が生成される。次いで、β-Gal酵素は、非蛍光基質Di-β-D-ガラクトピラノシド(FDG)をフルオレセインに迅速に変換し、大量の増幅及び優れた感度を提供する。この実施形態では、1つ以上の装置チャンバーに導入される前に、(GPCRを伴う)読み出し細胞に、細胞透過性プロ基質(pro-substrate)(アセチル化FDG)が予め充填される。プロ基質は、酢酸基のエステラーゼ切断により細胞不透過性FDGに変換される。フルオレセインは、生細胞から活発に輸送されるが、このアッセイをアッセイチャンバー内で行うことにより、蛍光産物が濃縮され、プレートベースのアッセイよりも大幅に感度が向上する。DiscoveRxは、マイクロウェル形式で使用されるこのアッセイ戦略を、GPCRの大きいパネル全体で検証した。
【0264】
一実施形態では、エフェクター細胞によるGPCRの活性化は、読み出し細胞における細胞質カルシウムの増加を検出することによって決定される。さらなる実施形態では、細胞質カルシウムの増加は、1つ以上のカルシウム感受性色素で検出される。カルシウム感受性色素は、カルシウムの非存在下で低いレベルの蛍光を有し、一旦カルシウムによって結合されると蛍光特性が増加する。蛍光シグナルは、約1分でピークに達し、5~10分の時間枠にわたって検出可能である。従って、蛍光カルシウムを用いて活性を検出するために、アゴニストの検出と添加が密接に連結される。この連結を達成するために、エフェクター細胞は、読み出し細胞の集団及び1つ以上のカルシウム感受性色素に同時に曝露される。一実施形態では、1つ以上のカルシウム感受性色素は、FLIPR(商標)カルシウムアッセイ(Molecular Devices)で提供される色素である。
【0265】
組換え発現されたクラゲ発光タンパク質であるエクオリンは、一実施形態では、機能的GPCRスクリーニング、すなわち、細胞外効果がGPCRの調節である細胞外効果アッセイで使用される。エクオリンは、セレンテラジン誘導体が添加されたときに発光シグナルを生成するカルシウム感受性レポータータンパク質である。GPCRがミトコンドリア標的型のアポエクオリンと共に発現される、エンジニアリングされた細胞株が市販されている(Euroscreen)。一実施形態では、Euroscreenから入手可能な1つ以上の細胞株が、エフェクター細胞の細胞外効果(例えば、別の細胞集団又は対照値と比較した細胞外効果の変化)を評価する方法において読み出し細胞の集団として使用される。
【0266】
一実施形態では、GPCRに対する細胞外効果は、GPCR及び環状ヌクレオチド依存性(CNG)チャネルを発現するACTOne細胞株(Codex Biosolutions)の1つを、読み出し細胞の集団として使用することによって測定する。この実施形態では、細胞外効果アッセイは、外因性の環状ヌクレオチド依存性(CNG)チャネルを含む細胞株を用いて行う。チャネルは、cAMPの細胞内レベルの上昇によって活性化され、これにより、イオン流束(しばしばカルシウム応答性色素によって検出可能)及び蛍光膜電位(MP)色素で検出することができる細胞膜脱分極が生じる。ACTOne cAMPアッセイは、蛍光マイクロプレートリーダーを用いた、細胞内cAMP変化の終点測定及び動態測定の両方を可能にする。
【0267】
一実施形態では、レポーター遺伝子アッセイを使用して、エフェクター細胞が特定のGPCRを調節するか否か(例えば、エフェクター細胞を含む細胞集団が特定のGPCRを調節するか否か)を決定する。この実施形態では、GPCRの調節は、評価される細胞外効果である。レポーター遺伝子アッセイは、一実施形態では、最小プロモーターの上流に位置する応答エレメントを活性化又は阻害し、これにより、使用者によって選択されるレポータータンパク質の発現を調節するために、カルシウム(AP1若しくはNFAT応答エレメント)又はcAMP(CRE応答エレメント)のようなGPCRセカンドメッセンジャーに基づいている。レポーターの発現は、一実施形態では、GPCRを介したシグナル伝達によって活性化される転写因子の応答エレメントに連結される。例えば、レポーター遺伝子の発現は、以下の転写因子:ATF2/ATF3/AFT4、CREB、ELK1/SRF、FOS/JUN、MEF2、GLI、FOXO、STAT3、NFAT、NFκBのうちの1つの応答エレメントに連結することができる。さらなる実施形態では、転写因子はNFATである。レポーター遺伝子アッセイは、例えばSA Biosciencesから市販されている。
【0268】
レポータータンパク質は、当分野で公知であり、例えば、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ(例えば、それぞれ参照によりそれらの全内容があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる、Paguio et al.(2006).“Using Luciferase Reporter Assays to Screen for GPCR Modulators,”Cell Notes Issue 16,pp.22-25;Dual-Glo(商標)Luciferase Assay System Technical Manual #TM058;pGL4 Luciferase Reporter Vectors Technical Manual #TM259を参照)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、β-ラクタマーゼを含む。GPCRシグナル伝達を測定するためのレポーター遺伝子アッセイは、市販されており、本明細書に記載の方法及び装置で使用することができる。例えば、Life TechnologiesのGeneBLAzer(登録商標)アッセイは、本発明での使用に適している。
【0269】
一実施形態では、レポーター細胞でのGタンパク質の過剰発現を行って、強制的にcAMP結合GPCRにカルシウムを介してシグナル伝達させ、これは、強制的な結合と呼ばれる。
【0270】
一実施形態では、Gq結合細胞株が、本明細書に記載の方法で読み出し細胞株として使用される。一実施形態では、Gq結合細胞株は、β-ラクタマーゼを介したGPCRシグナル伝達を報告する。例えば、細胞ベースのGPCRレポーター細胞株GeneBLAzer(登録商標)を利用することができる(Life Technologies)。レポーター細胞株は、分裂を停止させることもできるし、又は正常分裂細胞を含むこともできる。
【0271】
cAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)は、上述のような転写因子であり、かつGs及び/又はGi結合GPCRの一実施形態で使用される。さらなる実施形態では、フォルスコリンは、アクセサリー粒子として利用される。CREレポーターは、GFP発現を駆動するプラスミド又はレンチウイルスの形態でSA Biosciencesから入手可能であり、本明細書に記載の方法及び装置での使用に適している。例えば、一実施形態では、SA Biosciencesから入手可能なアッセイシステムを本明細書で利用して、読み出し細胞を作製する(http://www.sabiosciences.com/reporter_assay_product/HTML/CCS-002G.html)。Life Technologiesはまた、特定のGPCRを発現するCRE応答細胞株も有し、これらは、本明細書に記載の方法及び読み出し細胞で使用することができる。
【0272】
一実施形態では、細胞集団内に存在する1つ以上のエフェクター細胞が、1つ以上の読み出し細胞内のcAMPレベルの増加又は減少を検出することによって、1つ以上の読み出し細胞上に存在するGPCRを活性化又はアンタゴナイズする能力についてアッセイされる。ELISAベースのアッセイ、均一時間分解蛍光測定(HTRF)(その開示内容が全て参照により本明細書に組み入れられる、Degorce et al.(2009).Current Chemical Genomics 3,pp.22-32を参照)、及び酵素相補性を全て、本明細書で提供される装置及びアッセイと共に使用して、読み出し細胞におけるcAMPレベルを決定する。これらのcAMP検出方法のそれぞれは、実際に測定されるサイクリックAMPであるため、検出のためのcAMPを遊離させる細胞溶解を必要とする。
【0273】
全細胞内のcAMPを測定するため及び膜内でのアデニルシクラーゼ活性を測定するためのアッセイが市販されており(例えば、それぞれ参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、Gabriel et al.(2003).Assay Drug Dev.Technol.1,pp.291-303;Williams(2004).Nat.Rev.Drug Discov.3,pp.125-135を参照)、このアッセイは、本明細書で提供される装置及び方法で使用するのに適している。すなわち、1つ以上のアッセイチャンバー内の細胞集団をこれらの方法に従ってアッセイすることができる。
【0274】
Cisbio International(Codolet,France)は、時間分解蛍光共鳴エネルギー移動技術に基づいた高感度ハイスループット均一cAMPアッセイ(HTRF、その開示内容が全て参照により本明細書に組み入れられる、Degorce et al.(2009).Current Chemical Genomics 3,pp.22-32を参照)を開発し、本明細書では、このアッセイを使用して、GPCRに対する効果を示すエフェクター細胞についてスクリーニングすることができる。この方法は、細胞によって産生される天然のcAMPとcAMP標識色素(cAMP-d2)との間の競合イムノアッセイである。cAMP-d2結合は、Cryptateで標識されたMaB抗cAMPによって可視化される。特定のシグナル(すなわち、エネルギー移動)は、試料中のcAMPの濃度、この場合は、エフェクター細胞又はエフェクター細胞分泌産物によって読み出し細胞で活性化されるcAMPの量に反比例する。cAMPが測定されているときに、読み出し細胞が、検出のためのcAMPを遊離させるために最初に溶解される。このアッセイは、GS-(β2-アドレナリン、ヒスタミンH2、メラノコルチンMC4、CGRP、及びドーパミンD1)及びGi/o結合(ヒスタミンH3)受容体の両方について検証された。本明細書に記載の他のアッセイと同様に、例えば、装置の底部構成要素を露出させ、成分を含む溶液をピペット操作で底層のチャンバー上に移すことによって、成分を装置の底部構成要素のチャンバーに直接導入する、又は底部構成要素のチャンバー上を流れる第2の成分にチャネルを介して導入することができる。一実施形態では、チャンバーへの試薬/培地の送達は、液体カラムによって生成される静水圧によって、ピペットのようなディスペンサーを使用して流れを生じさせることによって、又は底部構成要素上の培地を交換して、上部構成要素若しくは底部構成要素のチャンバーを上下に動かして流体をマイクロチャンバーに移動させることによって達成される。
【0275】
蛍光偏光に基づくcAMPアッセイキットも、例えば、Perkin Elmer、Molecular Devices、及びGE Healthcareから市販されており、それぞれは、本明細書で提供される方法及び装置において細胞外効果アッセイとして使用するのに適している。従って、本発明の一実施形態は、cAMP蛍光偏光アッセイの結果に基づいてエフェクター細胞及び/又は1つ以上のエフェクター細胞を含む細胞集団を選択するステップを含む。この方法は、一実施形態では、エフェクター細胞が特定のGPCRを活性化(アゴニズム)又は阻害(アンタゴニズム)するか否かを決定するために使用される。
【0276】
一実施形態では、レーザー活性化を必要とする感受性ビーズベースの化学発光アッセイであるPerkin ElmerのAlphaScreen(商標)cAMPアッセイを本明細書で提供される装置で使用して、読み出し細胞に対する効果、特にGPCRの活性化又は阻害を有するエフェクター細胞についてスクリーニングする。
【0277】
DiscoveRx(http://www.discoverx.com)は、蛍光基質又は発光基質のいずれかを用いる特許取得された酵素(β-ガラクトシダーゼ)相補性技術に基づく、HitHunter(商標)と呼ばれる均一ハイスループットcAMPアッセイキットを提供する(それぞれ参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、Eglen and Singh(2003).Comb Chem.High Throughput Screen 6,pp.381-387;Weber et al.(2004).Assay Drug Dev.Technol.2,pp.39-49;Englen(2005).Comb.Chem.High Throughput Screen 8,pp.311-318)。このアッセイを使用して、GPCRを発現する読み出し細胞に対して細胞外効果を示すエフェクター細胞を検出することができる。
【0278】
GPCR受容体の活性化又は阻害に起因する細胞事象を検出して、読み出し細胞に対するエフェクター細胞の特性(例えば、抗体産生細胞の活性化又はアンタゴナイズする能力)を決定することもできる。例えば、Gq結合受容体の場合には、GPCRが活性化されると、Gqタンパク質が活性化され、この結果、膜リン脂質のホスホリパーゼC切断が起こる。この切断は、イノシトール三リン酸3(IP3)の生成をもたらす。遊離IP3は、小胞体の表面でその標的に結合し、カルシウムの放出を引き起こす。カルシウムは、活性化T細胞の核因子(NFAT)のような特定のカルシウム応答性転写ベクターを活性化する。従って、NFATの活性又は発現を監視することによって、読み出し細胞におけるGPCRの間接的な読み出しが確立される。例えば、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、Crabtree and Olson(2002).Cell 109,pp.S67-S79を参照されたい。
【0279】
活性化されると、全GPCRの60%超が内在化される。標識GPCRを利用して(典型的には、C末端GFPタグを用いて行われる)、受容体の分布が、一実施形態では、リガンドの存在下及び非存在下でイメージングされる。リガンドの刺激時に、通常は均一に分布した受容体が、しばしばエンドサイトーシスされた点として出現する。
【0280】
【0281】
【0282】
読み出し粒子応答は、細胞の生存に必要な条件を維持しながら複数の蛍光チャネルでのより迅速なイメージング、これに続く選択された単一細胞の自動的な回収、そしてハイスループットゲノム解析に適した回収された細胞のマイクロウェルプレートへの沈殿を可能にする機器を用いて評価することができる(
図31)。一実施形態では、機器は、コンピューター制御及びソフトウェア自動化と、精密エンコーダーを有する自動xy平行移動ステージ、電動焦点、高解像度カメラ、迅速蛍光照明システム、温度、湿度、及び二酸化炭素ガス濃度を維持するための環境エンクロージャを備えた倒立蛍光顕微鏡と、任意の選択されたチャンバーから細胞を回収するためにマイクロピペットを向けることができるロボットマイクロマニピュレーションロボットと、回収された細胞を入れることができる隣接するマルチウォールプレートとを含む。一実施形態では、機器は、細胞の回収の前に装置の上部の取り外しを可能にする2構成要素マイクロ流体装置と共に使用される。一実施形態では、装置の上部構成要素の取り外しが、機器のロボットマニピュレーターを用いて自動化される。別の実施形態では、機器を使用して、オープンアレイを含む装置内で細胞を分析し、個体片が、イメージング中にアレイの上部に培地を押し出すために配置される。一実施形態では、機器を使用して、オープンチャンバーアレイを特徴とする装置内で細胞を分析する。一実施形態では、機器は、オープンチャンバーアレイを特徴とする装置で構成され、各チャンバーは、最小の横方向の寸法よりも大きい高さ/深さを有する。一実施形態では、試薬のマイクロ流体装置への送達は、電磁弁又は蠕動ポンプを用いて自動化される。一実施形態では、機器は、画像解析ソフトウェアと共に使用され、目的のエフェクター細胞を含むチャンバーの迅速な決定を可能にする。一実施形態では、マイクロ流体、2構成要素マイクロ流体、又はオープンチャンバーアレイは、少なくとも10,000個のチャンバー、少なくとも100,000個のチャンバー、又は少なくとも1,000,000個のチャンバーを有する。一実施形態では、機器は、広視野顕微鏡対物レンズ及び高解像度カメラを使用して迅速にイメージングするように構成されているため、9個以上のチャンバーを1つの画像にイメージングすることができる。一実施形態では、機器は、広視野顕微鏡対物レンズ及び高解像度カメラを使用して迅速にイメージングするように構成されているため、約11個以上、又は約16個以上、又は約17個以上のチャンバーを1つの画像にイメージングすることができる。1つの視野にイメージングすることができるチャンバーの数は、チャンバーの総密度に依存し、チャンバーの密度が高いほど、より高い全イメージング速度が可能になることを理解されたい。本発明の文脈において、最大チャンバー密度は、少なくとも1つの細胞を収容するために必要なチャンバーの必要面積、及び細胞又はビーズとすることができる少なくとも1つの読み出し粒子によって決定される。この最小サイズは、約10μm×10μm=100μm
2であるが、実際には、チャンバー当たり2つ以上の読み出し粒子を達成する確率的充填戦略を容易にするため、チャンバー内での粒子又は細胞の分散のために十分な面積を提供してイメージングを容易にするために、及びチャンバー当たりの細胞又は粒子の数がより多いアッセイを可能にするために、より大きいチャンバー領域を有することが望ましい。約25μm×25μm、又は約50μm×50μm、又は約75μm×75μm、又は約100μm×100μm、又は約150μm×150μm、又は×約200μm×200μm、又は約300μm×300μmのチャンバーの横寸法を使用することができる。約25μmの間隔がチャンバー間に設けられる場合、これは、約400/mm
2、又は約178/mm
2、又は約100/mm
2、又は約33/mm
2、又は約20/mm
2、又は約9/mm
2のチャンバー密度に対応する。
【実施例】
【0283】
本発明は、以下の実施例を参照してさらに説明される。しかしながら、これらの実施例は、上記の実施形態と同様に、例示的なものであり、決して本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0284】
実施例1-2構成要素マイクロ流体装置への均一な充填
個々のマイクロ流体チャンバーのアレイを含む2構成要素マイクロ流体装置を充填する効率を、複数種の微小粒子を装置の底部構成要素のオープンチャンバーに充填することによってアッセイした。マイクロ流体チャンバーの寸法は、80μm×120μm×160μm(幅、長さ、高さ)であった。
【0285】
それぞれ異なる濃度のフルオロフォアで標識された直径5μmのポリスチレンビーズからなる微粒子の5つの集団を、約1,000,000ビーズ/mLの均一濃度に調製した。5つの集団のそれぞれを、等しい容積比で単一管内で一緒に混合した。合計約100,000個のマイクロビーズを含む混合物の100μLアリコートを、合計約10,000個のチャンバーを有する2構成要素マイクロ流体装置の底層の一部に導入した。これは、チャンバー当たり約10個のビーズに相当した。
【0286】
次いで、装置を20分間インキュベートして、ビーズをチャンバー内に沈殿させた。次いで、チャンバー内の培地を除去し、アレイ上に新鮮な培地を流すことによってチャンバーを洗浄した。装置の第2の層を、底部チャンバー層の上部に配置した。次いで、マイクロ流体チャンバーアレイの10,000個のチャンバーを蛍光でイメージングし、自動画像解析を使用してチャンバー内の各ビーズ型の分布を決定した。この分析は、各ビーズ型について以下の平均ビーズ数及び1チャンバー当たりの標準偏差を検出して、チャンバー全体のビーズのほぼ均一な分布を示した:
1型=0.53/チャンバー、SD=0.89;
2型=1.46/チャンバー、SD=1.4;
3型=2.45/チャンバー、SD=1.89;
4型=3.90/チャンバー、SD=2.33;
5型=2.89/チャンバー、SD=1.70。
【0287】
画像のサブセットの手動検査は、1型ビーズの低い測定頻度が、主として、画像解析ソフトウェアがこのビーズ型を検出できなかったことに起因することを示し;これは、1型ビーズが最も低い蛍光色素の濃度を有することに起因するものであった。装置の異なる領域にわたるビーズ播種密度の目視検査によって決定されるビーズ分布の空間的均一性の定性分析は、これらの特性が、ビーズを入力チャネルからマイクロ流体チャンバーに充填したときに得られた特性と比較して優れていることを示した。
【0288】
実施例2-2構成要素マイクロ流体装置への細胞の充填
接着読み出し細胞の充填を、本発明の2構成要素装置で評価し、MSLによって製造された組立済みのマイクロ流体装置への同じ細胞の充填と比較した。
【0289】
接着細胞株(Tango(商標)CXCR4-bla U2OS)の組立済みマイクロ流体装置への充填を、細胞を入口ポートから導入し、マイクロ流体チャネル(チャネル幅100μm)を介して個々のチャンバーに流入させることによって評価した。この結果、チャンバー充填の均一性が不十分であり、装置の中心における細胞濃度が高く、装置の角における細胞充填率が低く、そして隣接するチャンバー間での細胞充填密度の変動が大きかった。トリプシンを含む中程度の条件でさえも、細胞の付着によるチャネルの詰まりが観察された(
図32)。さらに、チャンバーに充填されてインキュベーションされた後に、細胞は十分に沈殿せず、ストレスに一致した形態を示した。細胞は、生存率が低く、培養の最初の24時間で殆どが死滅した。
【0290】
生存率の問題に対処し、チャンバー内での細胞のプレーティングを改善するために、Tango(商標)CXCR4-bla U2OS細胞を、入口ポートから第2の組立済みマイクロ流体装置に充填し、続いてこれらを、マイクロ流体チャネルを介して個々のチャンバーに流入させた。しかしながら、第1の装置とは対照的に、チャネル及びチャンバーを、まずポリリジンを含む培地に曝露した。ポリリジンで予めコーティングされたチャネルを介して細胞を充填しようとすると、チャネル表面に細胞が急速に付着し、チャネルが遮断され、実験が失敗した。
【0291】
2構成要素装置への接着細胞の充填を試験する第3の実験を行った。装置の底層を、まずポリリジンを含む培地で約10分間コーティングし、続いてポリリジンを含まない新鮮な培地で洗浄した。次いで、Tango(商標)CXCR4-bla U2OS細胞を、装置の底部アレイ層のチャンバーに充填し、続いて数時間かけて沈殿させた。次いで、チャンバー(幅が67μmで、長さが112μm)を新鮮な培地で洗浄し、装置の最上層を底層の上に配置して2構成要素装置を形成した。組み立てられた2構成要素装置のイメージングは、播種密度及びアレイ全体のランダムな配置に基づいて予想され得る細胞数に一致した細胞数を有するチャンバーで細胞充填の良好な均一性を示し、充填密度には明白な空間バイアスはなかった(
図33)。さらに、総細胞数がチャンバー当たりの所望の細胞数とチャンバーの総数との積にほぼ等しくなるように計算され、充填溶液中の細胞濃度及び容量の選択によって達成される細胞播種密度の制御は、チャンバー当たり約1個の細胞からチャンバー当たり約20個の細胞の間で細胞充填の制御を可能にした。接着細胞については、最適な播種密度は、チャンバーの床面積によって決定された。例えば、U2OS細胞及び横方向の寸法が67μm×112μmのチャンバーを用いると、チャンバー当たり平均して約10~15個の細胞では、均一性及び細胞をプレーティングする能力の点で良好な結果が得られた。ポリリジンでコーティングされた2構成要素装置に充填されたときに、細胞は、正常な形態を示すことが分かり、そしてストレスの兆候なしに良好な生存率で一晩培養するのに適していた。
【0292】
実施例3-培地交換中のチャンバーのアスペクト比の影響
チャンバーの培地の交換中の2構成要素マイクロ流体装置の性能に対するチャンバーのアスペクト比の影響を評価するために、一連の実験を行った。1つの実験では、アスペクト比(深さ/高さの最小の横寸法に対する比)が異なるチャンバーを有するマイクロ流体装置を試験して、細胞又はビーズを含むチャンバー上に溶液を供給することによる培地交換により、チャンバーからの細胞若しくはビーズの減少、又はチャンバー内での細胞若しくはビーズの変位が生じるか否かを決定した。
【0293】
約1のアスペクト比に対応する100μm×100μm×150μm(深さ/高さ×幅×長さ)の寸法のチャンバー及び20μm×100μm(高さ×幅)の寸法のチャネルを有する装置を異なる流量で試験した。装置の入口及び出口の流体ポートを圧力調整器に接続し、圧力を調整してチャネルを通る流量を調節した。1~3ポンド/平方インチ(PSI)のポートの差圧でチャネルを流れることによる培地交換は、チャンバーから粒子を減少させないことが分かった。これらの圧力でのチャネル当たりの体積流量(15μm×100μmのチャネル断面積)は、圧力がかかる装置の断面及びチャネルの長さに依存して、約0.1nL/秒~10nL/秒の間であると推定された。しかしながら、これらの流動圧力では、粒子(ビーズ又は細胞)がチャンバーの底部に沿って流れの方向に押され、チャンバーの下流側に集まることが観察され、結果として、イメージングには許容範囲であるが最適ではない。5~9PSIのより高い圧力では、流れによって細胞又はビーズがチャンバーから持ち上げられ、結果として、細胞に対して多段階アッセイを行う能力に悪影響を及ぼした。
【0294】
1.0を大幅に下回るチャンバーのアスペクト比では、低流量(例えば、1~3PSI)がチャンバーから細胞又はビーズを減少させることが観察された。この結果に基づいて、より高いアスペクト比のチャンバーを試験した。1.0を超えるアスペクト比が、チャンバーから粒子を減少させることなく高流量の使用を可能にすることが分かった。
【0295】
これらの結果は、異なる流量及びチャンバーのアスペクト比に起因する流れプロファイルの数値モデリングによって説明することができる。例えば、100μm×100μm×150μm(深さ×幅×長さ)の寸法のチャンバーを用いると、流れは主にチャンバーの上半分を通るが、チャンバーの底部に下降する流れがゼロではないことが分かった(
図34の左側)。高アスペクト比のチャンバーを通る流れのシミュレーションは、全てのケースで改善された性能を示し、場合によっては、質的に異なる流れプロファイルを示した。例えば、1.25のアスペクト比及び円筒形状(100μmの直径及び125μmの深さ)を有するチャンバーによってシミュレーションされた流れプロファイルを計算した(
図34の右側)。これらのシミュレーションは、得られた流れが、たとえ低流量でも高流量でも粒子の保持をもたらすチャンバー底部での再循環渦を発生させることを示している。これらの計算によると、最大15PSIの高い動作圧力は、チャンバーから粒子を減少させないが、チャンバーの底部で粒子を運動させることが判明した。これらの結果に基づいて、2構成要素装置で使用するためのチャンバーのデザインには約1以上のアスペクト比を使用するべきであると決定された。
【0296】
チャンバー内の流体力学的挙動は、主にチャンバーの上部における流速によって決定され、従って、このような高アスペクト比のチャンバーの使用は、上層に弁構造を備える2構成要素装置に制限されるが、チャンバーの上部を通る流れによって培地の交換を可能にする任意の2構成要素装置で効果的に使用することもできることに留意されたい。これらは、上部構成要素が単一流路層を有する2構成要素装置、底層と1つになったときに流れ構造を形成する隆起構造を有する2構成要素装置、又は装置の2つの構成要素の間の流れを可能にするために底層のすぐ近くに又は底層の上に配置されるスラブカバーを備えた2構成要素装置を含み得る。あるいは、高アスペクト比のチャンバーを有する底部構成要素は、特定の実験のために分離して、すなわち上層を用いずに使用することができる。この場合、高アスペクト比のチャンバーは、アレイ上の液体交換を伴う過渡流から粒子及び細胞を保護し、これによりチャンバーから粒子を移動させることなく培地を交換することが可能である。これらの実施形態では、流体リザーバーを、流体交換を可能にするためにチャンバーの上に配置することができる。
【0297】
実施例4-CXCR4細胞外効果アッセイ
本明細書に記載の装置は、読み出し細胞型に特異的に結合する抗体を分泌する単一細胞を同定するための多段階アッセイを行うための手段を提供する。
【0298】
マウスを、GPCR標的CXCR4を含むウイルス様粒子で免疫化した。マウスの脾臓から得られたASCを、2構成要素マイクロ流体装置の、それぞれ約68μmの最小横寸法及び約150μmの深さを有するチャンバーに充填し、続いて2つの読み出し細胞集団をチャンバーに充填した(
図35)。1つの読み出し細胞集団は、CXCR4を安定に発現する懸濁細胞株を含んでいた。第2の読み出し細胞集団は、CXCR4を発現しない同じ細胞株からなり、この細胞株は、受動色素(passive dye)であるカルボキシフルオレセインスクシミジルエステル(carboxyfluorescein succimidyl ester)(CFSE)で蛍光標識されていた。充填後、混合細胞集団をマイクロ流体装置中でインキュベートして、各チャンバーにおける分泌された抗体の濃縮及び特異的抗体の標的細胞への結合を可能にした。インキュベーション後、蛍光標識二次抗体を含む培地を装置全体に供給することによってチャンバーを洗浄し、この結果、この標的に特異的な抗体を産生するASCを含むチャンバー内に位置する、CXCR4を発現する細胞が選択的に染色された(
図35)。標的を発現する細胞及び標的を発現しない細胞の染色の差異を、別個のチャネルにおける受動色素の蛍光シグナルの比較によって決定した(
図35の右側)。
【0299】
実施例5-インフルエンザ抗原細胞外効果アッセイ
本明細書に記載の装置は、個々の細胞によって分泌される抗体を同時にアッセイして、それらが1つ以上の抗原に結合するか否かを決定する手段を提供する。インフルエンザの場合、この手段は、複数の系統に結合することができる抗体を同定するのに有用である。
【0300】
ヒトB細胞を、H1N1、H3N2、及びB系統の3種類の系統のインフルエンザ株由来の抗原へのそれらの結合について試験した。抗原の同一性をビーズの大きさによって決定できるように、各抗原を、異なる直径:H1N1-10μm、H3N2-5μm、及びB系統-3μmを有する異なるビーズ集団にコーティングした。細胞及びビーズの両方を2構成要素装置の底層に充填し、各チャンバー内に約3~20の各ビーズ型となるようにビーズ密度を選択し、チャンバー当たり1個未満の単一細胞を有するように細胞密度を選択した。
【0301】
装置の上部構成要素を底部構成要素に整合させ、チャンバーをインキュベートして、分泌された抗体を濃縮し、これらの抗体とそれぞれのビーズ型との効率的な相互作用が得られるようにした。インキュベーション後、チャンバーのアレイ全体に蛍光標識二次抗体を含む新鮮な培地を供給することによって、この培地でチャンバーを洗浄した。蛍光標識二次抗体は、抗ヒト抗体の混合物を含み、異なる二次抗体は異なる色で標識され、それぞれが異なるアイソタイプ、IgG、IgA、及びIgMの検出に特異的であった。次いで、チャンバーを再び洗浄して、チャンバーの上及び全体に新しい培地を供給することによって、バックグラウンド蛍光を除去した。装置をイメージングして、二次抗体で選択的に染色されたビーズを有するチャンバーを検出した。
図36は、3種類の抗原(ヒトIgG)のそれぞれに特異的な単一B細胞を含むと同定された3つの異なるチャンバーの画像を示している。
【0302】
実施例6-h4-1BB膜貫通糖タンパク質についての多重化細胞外効果アッセイ
ビーズベースのアッセイは、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーに属する2型膜貫通糖タンパク質である標的ヒト4-1BB(h4-1BB)に結合する抗体の検出を可能にするようにデザインされた。h4-1BB抗体も、マウス4-1BBに結合する能力について試験した。最後に、h4-1BB抗体を、4-1BBとその天然リガンドh4-1BBリガンドとの相互作用を遮断する能力について評価した。
【0303】
マウス抗体分泌細胞を、可溶性h4-1BBで免疫化されたマウスの脾臓及び骨髄から得た。この実験で使用されたマウスは、ヒト可変領域遺伝子を有するh4-1BB抗体を産生するように遺伝子操作されていた。分泌された抗体の定常領域に結合するようにコンジュゲートされたビーズを、チャンバー当たり約20~30個のビーズの平均濃度で2構成要素装置のチャンバーに充填した。次いで、ASCを装置に充填し、チャンバーを約2時間インキュベートして、分泌された抗体のチャンバーでの蓄積、及び分泌された抗体のビーズ上での捕捉を可能にした。
【0304】
次いで、h4-1BB(フルオロフォアで標識)及びm4-1BB(第2の放出プロフィールを有するフルオロフォアで標識)の混合物を含む溶液をチャンバーの上部に供給することによってチャンバーを洗浄した。インキュベーション後、チャンバーを両方の色でイメージングして、分泌された抗体がh4-1BB及び/又はm4-1BBに結合するか否かを決定した。結果は
図37に示されている。
【0305】
次に、チャンバーを、第3の波長範囲で放出される第3のフルオロフォアにコンジュゲートされたh4-1BBリガンドを含むチャンバーの上部に流すことによって再び洗浄した。インキュベーション後、チャンバーを第3の蛍光チャネルでイメージングして、結合h4-1BBがなおh4-1BBリガンドに結合できるか否か、又はh4-1BBと抗体との間の相互作用がこの相互作用を阻害するか否かを決定した(
図37の右側)。所望の特性(h4-1BBに結合してh4-1BBリガンド相互作用を維持する抗体)を有すると決定されたチャンバーからのASCを、装置の上部構成要素を取り外してロボット毛細管(robotic capillary)でチャンバー内容物を吸引することによってチャンバーから回収した。
【0306】
吸引されたら、選択された抗体をコードするRNAの増幅のためにチャンバーの内容物を管内に沈殿させた。得られた抗体配列を配列決定により決定した。対応するDNAインサートを発現ベクターにクローニングし、抗体の組換え発現に使用した。得られた抗体のサブセットを試験して、それらがマイクロ流体のスクリーニングから決定された特性を示すことを確認した。
【0307】
実施例7-1構成要素オープンマイクロ流体装置での抗体の検出
本明細書で提示される2構成要素装置に上部構成要素を組み込むことにより、単一細胞から分泌される抗体の分析にいくつかの利点がもたらされる。例えば、2構成要素装置は、分泌された抗体を単一チャンバーの容積に閉じ込めることにより高い感度を提供し;多段階アッセイを行うために必要な流体のハンドリングステップを容易にし;バックグラウンド蛍光を減少させてS/N比を増大させ;かつ抗体の拡散によるチャンバー間の交差汚染を防止する。
【0308】
それにもかかわらず、本明細書で提示される装置は、上部構成要素を組み込まない形式でも使用することができる。この実施例では、装置の底部構成要素(単一構成要素)に、抗原にコンジュゲートしたマイクロビーズを充填した。次に、抗体分泌細胞の集団を、チャンバー当たり約1個の細胞濃度で装置のチャンバーに充填してインキュベートし、細胞を含むチャンバー内での抗原特異的抗体のビーズ上での捕捉、及び程度は低いがこの細胞を含むチャンバーに隣接したチャンバー内での抗原特異的抗体のビーズ上での捕捉を可能にした。次いで、低濃度(約10nM)の蛍光標識二次抗体を、チャンバーを覆う溶液に添加し、約1時間インキュベートし、続いてチャンバーをイメージングした。結果は
図38に示されている。
【0309】
画像の分析は、ビーズのピクセル強度が可溶性二次抗体によって生成されるバックグラウンド蛍光よりも有意に高いチャンバー群の存在を示した。これらのチャンバー群におけるピクセル強度のヒストグラムの分析は、中心チャンバーがバックグラウンドと比較して最も高い値を有するピクセル強度を示し、このチャンバーのすぐ下及び上にあるチャンバーが次に高いレベルを示し、中心チャンバーのすぐ右及び左にあるチャンバーが続き、そして中心チャンバーの対角線上にあるチャンバーが続くことを示した(
図38)。これらの強度の差異は、各チャンバー内のビーズが(中心チャンバー内の)抗体を産生する細胞に対する近接度の差異によって説明され-この実験におけるアレイの間隔が、x座標と比較してy座標でより短く、これが、右及び左のチャンバー(x座標)と比較して上及び下のチャンバー(y座標)で強度が高いことに寄与したことに留意されたい。この分析から、中心チャンバーから、所望の特異性を有する単一抗体分泌細胞の検出及び回収を行った。抗体の同一性は、対応する抗体配列の配列決定、クローニング、及び発現によって確認された。
【0310】
単一層形式の抗体の検出では、抗体分泌細胞は、(例えば、流体リザーバーの使用によって)蛍光分子を含むチャンバー上の大きい容積の存在による、(上部構成要素が2構成要素装置で使用される場合と比較して)高いバックグラウンドの存在下、隣接するチャンバー内への拡散によって逃げる抗体が存在する場合に検出されるのに十分な抗体を産生する必要がある。これは、上部構成要素を備える装置形式を用いる同じ試料の分析が、検出される特異的抗体の数の増加をもたらし、かつチャンバー間の拡散の制限による隣接蛍光の排除及びS/N比の増大をもたらすという観察によって裏付けられた。
【0311】
実施例8-5つの抗原の多重検出
多重免疫化及びスクリーニングを行って、5種類の抗原に対するウサギモノクローナル抗体を単離した。ウサギを、約6週間にわたって5種類の抗原の混合物で免疫化した。免疫化後、血液試料を5つの抗原全てに対して力価を示すウサギから得、この試料から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。次いで、形質細胞を含む単離されたPBMCを、5種類のビーズファミリー(Starfire(商標)ビーズ、Bangs Laboratories)の混合物が予め充填されたマイクロ流体装置の底層に充填した。各ビーズファミリーを、ウサギを免疫化するために使用される5つの抗原のうちの1つにコンジュゲートし、各ファミリーは、ビーズマトリックスに含まれる蛍光色素のレベルによって光学的に区別可能であった。細胞及びビーズの充填後、2構成要素装置を組み立て、チャンバーを約2時間インキュベートして、分泌された抗体の濃縮、及び対応する抗原を有するビーズ上での特異的抗体の効率的な捕捉を可能にした。次いで、ビーズマトリックスに使用されるフルオロフォアとは光学的に異なるフルオロフォアで標識された二次抗体を含む新鮮な培地でチャンバーを洗浄した。次いで、マイクロ流体装置を2つの蛍光チャネルでイメージングし、第1のチャネルの自動リアルタイム画像解析を用いて、各チャンバー内のビーズを自動的にセグメント化し、識別した。第2の蛍光チャネルで得た画像の画像解析を用いて、抗体が異なるビーズ型のそれぞれに結合したか否かを決定した。結果は、5つの抗原全てが検出可能であることを示した。
【0312】
実施例9-肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)結合細胞外効果アッセイ
本明細書に記載の装置を、細菌病原体である肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)に対する完全ヒト抗体の発見のために使用した。抗体分泌細胞を、ヒト骨髄、扁桃腺、及びヒト血液から得た。これらの細胞のスクリーニングのために、肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)全体を、チャンバー当たり約100個の細菌濃度でマイクロ流体装置に充填した。次いで、抗体分泌細胞を装置のチャンバー内に充填し、上部構成要素を底層に整合させ、続いてインキュベートして分泌された抗体の蓄積を可能にした。ナノリットルの容積のチャンバーでの閉じ込めにより、抗体が細菌の表面に提示された抗原を認識し、続いてその細菌に結合することを可能にした。
【0313】
次いで、チャンバーを、1つがヒトIgGに特異的であり、1つがヒトIgAに特異的である2つの異なって標識された二次抗体の混合物を含む新鮮な培地をそのチャンバーの上部に流すことによって洗浄した。イメージングにより、新鮮な培地が流れている間に細菌が減少しなかったことが確認された。理論に拘束されることを望むものではないが、細菌の保持は、チャンバーの低流量及び/又は約1のアスペクト比に起因すると考えられる。
【0314】
2つの異なって標識された二次抗体の混合物を含む培地を用いる第2のインキュベーションの後、マイクロ流体装置を2色でイメージングして、細菌上の抗原に特異的な抗体を産生する単一抗体分泌細胞を含むチャンバーを同定し、これらの抗体のアイソタイプ(IgG又はIgA)を決定した。結果は
図39に示されている。
【0315】
検出後、マイクロ流体装置の上部構成要素を取り外し、選択されたチャンバーの内容物を回収した。次いで、これらの内容物をテンプレートとして使用して、対応する抗体配列を増幅した。次いで、これらの配列を合成し、クローニングし、そして発現させて組換え抗体を作製した。次いで、組換え抗体のセットを試験し、肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)に結合することを確認した。
【0316】
実施例10-単一チャンバーにおける複数の異なるASCの存在下でのモノクローナル抗体の検出
以下の実験を行って、本明細書に記載の装置及び方法が、複数の他の細胞、例えば、他の抗体分泌細胞が同じチャンバー内に存在する場合に、単一細胞によって産生されるモノクローナル抗体を単一チャンバーで検出及び分析することができるアッセイでの使用に適していることを実証した。
【0317】
ヒト試料を、細菌病原体である肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)に結合する稀な抗体についてスクリーニングした。ヒトPBMCの試料を得て、記憶B細胞の増殖及びASCへの分化を促進する活性化条件下で培養した。活性化後、2構成要素マイクロ流体装置の底部構成要素に生きた細菌を予め充填し、次いで、チャンバー当たり約50個の細胞濃度でPBMC培養からの細胞を充填した。次いで、装置をその第2の構成要素に組み付けてインキュベートし、分泌された抗体のチャンバー内での蓄積、及びこれらの抗体と細菌との相互作用を可能にした。インキュベーション後、1つがヒトIgGに特異的であり、1つがヒトIgAに特異的である2つの異なって標識された二次抗体の混合物を含む新鮮な培地をチャンバーの上部に流すことによってチャンバーを洗浄した。イメージングにより、新鮮な培地の流れている間に細菌が減少しなかったことが確認された。理論に拘束されることを望むものではないが、細菌の保持は、チャンバーの低流量及び/又は約1のアスペクト比に起因すると考えられる。
【0318】
2つの異なって標識された二次抗体の混合物を含む培地を用いる第2のインキュベーションの後、マイクロ流体装置を2色でイメージングして、細菌上の抗原に特異的な抗体を産生する単一抗体分泌細胞を含むチャンバーを同定し、これらの抗体のアイソタイプ(IgG又はIgA)を決定した。全90,000個のチャンバーの0.1%未満が、細菌に特異的な抗体を含むことが判明し、これは、約50個の他の細胞の集団内に存在する単一抗原特異的抗体分泌細胞が、いくつかのチャンバーで観察された陽性シグナルに関与することを示している。陽性チャンバーの検出に続いて、マイクロ流体装置の上部構成要素を取り外し、選択されたチャンバーの内容物を回収し、そして1つにプールして、細菌に特異的な細胞のおおよその頻度が2%(50細胞ごとに1つ)である抗体分泌細胞の濃縮された集団を形成した。次いで、この濃縮された細胞集団を限界希釈(チャンバー当たり1細胞未満)で第2の装置上で再スクリーニングし、細菌に特異的な抗体を分泌する個々の抗体分泌細胞の検出及び回収に成功した。
【0319】
実施例11-哺乳動物細胞の長期のマイクロ流体培養
以下の実施例は、本明細書に提示される2構成要素装置及び方法が、高い生存率での哺乳類細胞の長期培養を必要とする実験の実施を可能にすることを実証するために行った。マイクロ流体装置に、K562細胞の集団を充填した。装置の異なる区分には、チャンバー(チャンバーの寸法:幅200μm×長さ200μm×奥行き140μm)当たり1個の細胞から約20個の細胞までの範囲でチャンバーごとに異なる数の細胞を充填した。充填後、装置をイメージングして、各チャンバー内の細胞数を決定した。装置のチャンバーのサブセットを、明視野顕微鏡検査によって48時間監視して、各チャンバー内の細胞の増殖及び生存率を評価した。実験を通じて、チャンバーを6時間ごとに新鮮な培地で洗い流して、培地に十分な栄養素を確保し、細胞増殖を阻害し得る代謝産物を除去した。チャンバーが、強い増殖及び優れた生存率を示し、かつ細胞がコンフルエンスまで増殖したチャンバーでも強い細胞増殖が維持されたことが観察された(
図40)。
【0320】
実施例12-個々のマイクロ流体チャンバーからの細胞の回収
以下の実施例を行って、個々の装置のチャンバーからの回収が、交差汚染することも、回収された細胞の完全性を損なうこともなく達成できることを実証した。
【0321】
この実施例では、ヒト抗体分泌細胞(ASC)の集団を、分泌された抗体を捕捉するようにデザインされたマイクロビーズと共に2構成要素マイクロ流体装置の底部構成要素に存在するチャンバー内に充填し、続いて、上部構成要素を底部構成要素に整合させた。細胞を、チャンバー当たり1個未満の細胞濃度で充填した。インキュベーション後、チャンバーを、ヒトIgGに対する蛍光標識された二次抗体を含む新鮮な培地で洗浄した。この装置をインキュベートしてからイメージングして、IgGを分泌する単一細胞を有するチャンバーであるか、又は細胞を有していない対照チャンバーであるかを検出した。次いで、装置の上部構成要素を取り外し、ロボット制御微小毛細管を使用して、単一IgG分泌細胞を含むチャンバーと細胞を含まない対照チャンバーとの間で交互に10個のチャンバーの内容物を回収した。各チャンバーの内容物を別々の微量遠心管に入れ、RT-PCR反応を行ってヒト抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域を増幅した。
【0322】
増幅後、アガロースゲルにかけて、得られた増幅産物を分析した。結果は、単一細胞、すなわち単一IgG抗体分泌細胞を有するチャンバーに由来するテンプレートを含む反応は明確な重鎖及び軽鎖バンドを生成し、テンプレートを含まない全ての反応(対照チャンバー)は産物を生成しなかったことを示した(
図41)。これは、(i)細胞がチャンバーから効率的に回収され、(ii)チャンバー間の有意な交差汚染がなく、かつ(iii)回収された細胞が無傷であり、RT-PCRによる抗体遺伝子の回収を可能にするのに十分なRNAを含んでいたことを裏付けた。
【0323】
実施例13-チャンバー内での培地交換の時間的及び空間的制御
以下の実施例を行って、本明細書に提示される装置及び方法が、マイクロ流体装置の1つ以上のチャンバー内での培地交換に対する空間的及び時間的制御の実施を可能にすることを実証した。この制御は、機能的細胞外効果アッセイが高い時間分解能をイメージングに必要とする実験を行うときに特に有用であり得る。例えば、このようなアッセイは、因子、例えば抗体に曝露された細胞の溶解を監視すること、読み出し細胞内の蛍光タンパク質の転位を監視すること、刺激に応答した読み出し細胞内のイオンチャネルの流れを監視すること、刺激に応答した二次メッセージであるカルシウムの流れを監視することを含み得る。例えば、マイクロ流体単一細胞アッセイを行って、読み出し細胞に予め充填されたカルシウム感受性蛍光色素によって測定される、アゴニストの添加に応答して読み出し細胞での急速なカルシウムの流れを阻害する抗体を同定することができる。この場合、シグナルは一過性であるため、10,000個を超えるチャンバーを有する装置全体のイメージングが十分な時間分解能を提供しない可能性がある。この問題は、上部構成要素が、制御されたタイミングで装置の小区分にアゴニストを選択的に添加できるようにデザインされているため、チャンバーをアゴニスト添加後の既知の適切な時間にイメージングできる2構成要素マイクロ流体装置を使用することによって克服することができる。これは、選択されたチャンバーのサブセットのみの上を溶液が流れることを可能にする弁及びチャネル構造を上層が備える2構成要素マイクロ流体装置を用いて達成することができる。小区分の数及び小区分当たりのチャンバーの数は、アッセイの要件に依存し、流体ネットワークにデザインすることができる。あるいは、チャネルは有するが弁は有していない上部構成要素を使用して、規定数のチャンバーと連動する流体ネットワークの異なる区分のための別個の入口を有することによって同じ結果を得ることができる。あるいは、これは、アゴニストをチャンバー上に流すことができるオリフィスを備える最上層を使用することによって達成することができ、このオリフィスは、底層に対して位置が固定されるのではなく、異なる領域を露出させためにチャンバーアレイを横断することができる。あるいは、装置は、上層なしで使用することができ、ロボット制御毛細管を使用して、アレイの異なる領域にアゴニストを流すことができる。あるいは、装置は、上層なしで使用することができるが、それぞれがアッセイのための適切な数のチャンバーを有する装置の異なる小領域を分離するパーティションを含むようにデザインすることができ、異なるサブアレイのそれぞれへのアゴニストの添加は、サブアレイ上のピペット操作によって達成することができる。
【0324】
本出願を通して引用される全ての文献、特許、特許出願、刊行物、製品説明、及びプロトコルは、参照によりそれらの全内容があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる。
【0325】
本明細書に例示され議論された実施形態は、本発明を製造し使用するための本発明者らに公知の最良の方法を当業者に教示することを単に意図したものである。本発明の上記の実施形態の変更及び変形は、上記の教示から当業者に理解されるように本発明から逸脱することなく可能である。従って、本発明は、特許請求の範囲及びその等価物の範囲内で、具体的に記載された方法とは別の方法で実施できることを理解されたい。
【0326】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]抗体分泌細胞(ASC)の分泌抗体による細胞外効果を示す、ASCを含む細胞集団を同定する方法であって、
それぞれ0.6以上の平均アスペクト比(チャンバーの高さ:最小横寸法)を有する複数のオープンチャンバー内に、それぞれ10~100個の細胞を含む複数の細胞集団を保持するステップであって、前記異なる複数のオープンチャンバーが、マイクロ流体装置の第1の構成要素に存在し、前記第1の構成要素が、前記マイクロ流体装置の第2の構成要素と共に可逆的なシールを形成するように構成されており、
前記複数の細胞集団のうちの少なくとも1つの個々の細胞集団が、1つ以上のASCを含み、
前記複数のオープンチャンバーのうちの前記個々のオープンチャンバー又はそのサブセットが、1つ以上の読み出し粒子を含む読み出し粒子集団をさらに含む、ステップ、
チャンバーの内容物をインキュベートするステップ、
複数のチャンバー又はそのサブセットを細胞外効果の存在についてアッセイするステップであって、前記読み出し粒子集団又はその亜集団が、前記細胞外効果の直接的又は間接的な読み出しを提供する、ステップ、及び
前記アッセイするステップの結果に基づいて、少なくとも1つの個々の細胞集団内の1つ以上の前記ASCが前記細胞外効果を示すか否かを決定するステップを含む、方法。
[2]前記ASCが、形質細胞、B細胞、形質芽球、記憶B細胞の増殖によって産生される細胞、ハイブリドーマ細胞、抗体を産生するようにエンジニアリングされた組換え細胞、又はこれらの組み合わせである、[1]に記載の方法。
[3]前記読み出し粒子集団のうちの1つ以上が、1つ以上の読み出しビーズ、1つ以上の読み出し細胞、又はこれらの組み合わせを含む、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記複数の読み出し粒子集団又はそのサブセットが、その表面にGタンパク質共役受容体(GPCR)又は可溶化GPCRを発現する1つ以上の読み出し細胞を含み、かつ
前記細胞外効果が、GPCRのアンタゴニズム、GPCRのアゴニズム、又は前記1つ以上のASCによって分泌される抗体によるGPCRへの結合である、[1]~[3]のいずれか1に記載の方法。
[5]前記複数の読み出し粒子集団又はそのサブセットが、その表面にイオンチャネルを発現する1つ以上の読み出し細胞を含み、かつ
前記細胞外効果が、前記イオンチャネルのアンタゴニズム、前記イオンチャネルのアゴニズム、又は前記1つ以上のASCによって分泌される抗体による前記イオンチャネルへの結合である、[1]~[4]のいずれか1に記載の方法。
[6]前記読み出し粒子集団のうちの1つ以上が、抗原又はエピトープで官能化されている、[1]に記載の方法。
[7]前記読み出し粒子集団のうちの1つ以上が、抗体結合部分で官能化されている、[1]に記載の方法。
[8]前記抗体結合部分が、プロテインA、プロテインA/G、プロテインG、免疫グロブリンに結合するモノクローナル抗体、免疫グロブリンに結合するモノクローナル抗体断片、免疫グロブリンに結合するポリクローナル抗体、免疫グロブリンに結合するポリクローナル抗体断片、又はこれらの組み合わせである、[7]に記載の方法。
[9]前記複数の細胞集団が、液体カラムによって生成される静水圧によって、ディスペンサーによって、又は前記第2の構成要素若しくは前記第1の構成要素を上下に動かして流体をマイクロチャンバーに移動させることによって前記オープンチャンバーに充填される、[1]に記載の方法。
[10]前記複数の読み出し粒子集団又はそのサブセットが、液体カラムによって生成される静水圧によって、ディスペンサーによって、又は前記第2の構成要素若しくは前記第1の構成要素を上下に動かして流体をマイクロチャンバーに移動させることによって前記オープンチャンバーに充填される、[1]~[9]のいずれか1に記載の方法。
[11]前記細胞外効果が、前記1つ以上のASC又はそのサブセットによって分泌される抗体と前記読み出し粒子集団又はその亜集団との間の結合相互作用である、[1]~[10]のいずれか1に記載の方法。
[12]前記結合相互作用が、抗原-抗体結合特異性相互作用、抗原-抗体結合親和性相互作用、又は抗原-抗体結合動力学相互作用である、[11]に記載の方法。
[13]前記細胞外効果が、アポトーシスの調節、細胞増殖の調節、読み出し粒子の形態学的外観の変化、読み出し粒子内のタンパク質の局在の変化、読み出し粒子によるタンパク質の発現、前記ASCによって誘導される読み出し細胞の細胞溶解、前記ASCによって誘導される前記読み出し細胞の細胞アポトーシス、読み出し細胞の壊死、抗体の内在化、前記ASCによる酵素中和、可溶性シグナル伝達分子の中和、又はこれらの組み合わせである、[1]~[12]のいずれか1に記載の方法。
[14]前記細胞集団のうちの1つ以上を、前記複数のチャンバーのうちの1つ以上のチャンバーにおいて単一平面で維持するステップをさらに含む、[1]~[13]のいずれか1に記載の方法。
[15]前記読み出し粒子集団のうちの1つ以上を、前記1つ以上の細胞集団と同一平面で維持するステップをさらに含む、[14]に記載の方法。
[16]前記細胞外効果が検出されるチャンバーから細胞集団を回収して回収された細胞集団を得るステップをさらに含む、[1]~[15]のいずれか1に記載の方法。
[17]0.6以上の平均アスペクト比(チャンバーの高さ:最小横寸法)を有する複数の異なるオープンチャンバー内において、前記回収された細胞集団に由来する複数の細胞亜集団を保持するステップであって、前記複数の異なるオープンチャンバーが、マイクロ流体装置の第1の構成要素に存在し、前記第1の構成要素が、前記第2の構成要素と共に可逆的なシールを形成するように構成されており、
前記複数のオープンチャンバーは、前記第1の構成要素に存在し、
前記複数の細胞亜集団のうちの個々の細胞亜集団が、1つ以上の抗体分泌細胞(ASC)を含み、かつ前記複数のオープンチャンバーのうちの個々のオープンチャンバー内に保持され、
前記複数のオープンチャンバーのうちの個々のオープンチャンバー又はそのサブセットが、1つ以上の読み出し粒子を含む読み出し粒子集団をさらに含む、ステップ、
前記チャンバーの内容物をインキュベートするステップ、
前記複数のチャンバー又はそのサブセットを前記細胞外効果の存在についてアッセイするステップであって、前記読み出し粒子集団又はその亜集団が、前記細胞外効果の直接的又は間接的な読み出しを提供する、ステップ、並びに
前記アッセイするステップの結果に基づいて、前記細胞外効果を示す1つ以上のASCを含む複数の細胞亜集団の中から細胞亜集団を同定するステップをさらに含む、[16]に記載の方法。
[18]前記複数の細胞亜集団のうちの前記細胞亜集団が平均1~25個の細胞を含む、[17]に記載の方法。
[19]前記第2の構成要素がエラストマーである、[1]~[18]のいずれか1に記載の方法。
[20]前記第2の構成要素が複数の層を含む、[19]に記載の方法。
[21]前記第2の構成要素がパターン化されていない、[19]に記載の方法。
[22]前記第2の構成要素が、1つ以上の流路及び1つ以上のプッシュダウン弁構造を備える、[19]に記載の方法。