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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】使用済み透析液を再生するための装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A61M1/16 161
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021504536
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019070415
(87)【国際公開番号】W WO2020025567
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】102018118564.2
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】ケラー トルステン
(72)【発明者】
【氏名】マーターストック シュテファン コンラート
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/124716(WO,A1)
【文献】特表2008-529715(JP,A)
【文献】特開2018-176033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析液を調製するための装置であって、前記装置は、第1の回路及び第2の回路を有し、前記第1の回路は、消費透析液又は真水又は他の流体を受け入れるための容器(10)と、前記容器(10)の下流側に接続されたフィルタ(20)の一次側(21)と、前記フィルタ(20)の前記一次側(21)から前記容器(10)への戻り管路(30)とを有し、前記フィルタ(20)は、前記消費透析液又は真水又は他の液体から精製水を調製するように構成されており、前記第2の回路は、前記フィルタ(20)の二次側(22)と、透析装置(100)の透析物側と、貯蔵器(200)と、前記貯蔵器(200)から前記フィルタの二次側(22)に至り、透析物又は透析物濃縮液を前記フィルタ(20)の前記二次側(22)へ供給することができる管路(K)と、前記フィルタ(20)の二次側(22)から遠ざかる、ろ過管路(F)とを有する、装置。
【請求項2】
前記透析装置(100)の前記透析物側から前記容器(10)への戻り管路(40)を含む、又は前記透析装置(100)の前記透析物側からドレーンへの管路(41’)を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記フィルタ(20)は、グラフェンフィルタである、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ろ過管路(F)は、前記フィルタ(20)の前記二次側(22)から、前記装置の平衡チャンバ(BK)及び/又は前記貯蔵器(200)に至る、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
即時使用可能な透析液又は濃縮液は、即時使用可能な透析液を調製するために用いられる前記貯蔵器(200)内に存在する、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記濃縮液は重炭酸塩濃縮液である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記貯蔵器(200)は、透析物混合装置(200)である、請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
ポンプ(51)は、前記管路(K)に配置され、前記フィルタ(20)の前記二次側(22)に所定の体積又は所定の体積流量を供給するように構成されている、請求項1から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
ポンプ(50)が、前記第1の回路内の流体の流れを生じさせるために前記第1の回路に配置される、及び/又は、前記フィルタ(20)の前記一次側(21)の圧力を設定することができる圧力除去デバイス(60)が前記第1の回路に設けられる、請求項1から8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記ポンプ(50)が、前記フィルタ(20)の前記一次側(21)の上流側で前記第1の回路に配置される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記圧力除去デバイス(60)が、前記フィルタ(20)の下流側に設けられる、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
1又は2以上のセンサが、前記第1の回路に配置されると共に前記フィルタ(20)の前記一次側(21)の上流側及び下流側に配置され、及び/又は、1又は2以上のセンサが、前記管路(K)及び/又は前記ろ過管路(F)において前記第2の回路に配置される、請求項1から11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記第1の回路に配置される前記1又は2以上のセンサは、1又は2以上の導電率測定セル(L1、L3)である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第2の回路に配置される前記1又は2以上のセンサは、1又は2以上の導電率測定セル(L2、L4)である、請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
1又は2以上の圧力測定デバイス(S1、S2)が、前記フィルタ(20)の前記二次側(22)の下流側、及び/又は、前記フィルタ(20)の前記一次側(21)の上流側に配置される、請求項1から14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記装置は透析液を除去させるための限外ろ過ポンプを有し、及び/又は、前記装置は、前記透析装置(100)への又はそこからの透析液の平衡のとれた供給及び除去のための平衡チャンバ(B)を有する、請求項1から15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記限外ろ過ポンプは、前記透析装置(100)からの前記戻り管路(40)から前記容器(10)へ透析液を除去する、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記フィルタ(20)は、ガス不浸透性であり、及び/又は、前記第2の回路は、脱ガスデバイスを有していない、請求項1から17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
前記容器(10)は、剛性容器として又はバッグとして構成され、及び/又は、前記装置は、透析装置を形成する又は透析装置の一部を形成する、請求項1から18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記容器(10)は、可撓性バッグとして構成される、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記容器(10)は、1回使用(使い捨て)の物品として構成される、請求項19又は20に記載の装置。
【請求項22】
請求項1から21の装置を用いて透析液を調製するための方法であって、溶液が、前記容器(10)から前記フィルタ(20)の前記一次側(21)へ供給され、残余分が、前記容器(10)に戻され、透析液又は透析濃縮液が、前記フィルタ(20)の二次側(22)に供給され、前記フィルタ(20)の二次側(22)で浸透水と混合される、方法。
【請求項23】
前記浸透水は、前記透析液又は透析物濃縮液と一緒に貯蔵器(200)に供給され、前記貯蔵器(200)において、透析装置(100)に供給される即時使用可能な透析液が調製される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記透析物濃縮液は、水以外に単一の導電成分のみを含有する、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
ポンプ(51)が、管路(K)に配置され、所定の体積又は所定の体積流量の透析液又は透析物濃縮液を前記フィルタ(20)の前記二次側(22)に供給する、請求項22から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記フィルタ(20)の前記二次側(22)に生じる浸透水は、供給された透析液又は透析物濃縮液と一緒に平衡チャンバ(BK)の中に導かれる、請求項22から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記フィルタ(20)の前記二次側(22)に生じる浸透水は、供給された透析液又は透析物濃縮液と一緒に前記貯蔵器(200)の中に導かれる、請求項22から26のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析液を調製するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば透析液を調製するための中央装置に接続されかつ一般に複数の透析装置に透析液を供給するように構成されている管路システムから、透析装置に即時使用可能な透析液を供給することが知られている。この代替方法として、透析装置自体で、すなわち分散的に透析液を調製する選択肢がある。透析装置の一部であるか又は別個のユニットとして設計されたROシステム(RO:逆浸透)は、超純水を調製する目的のために設けることができる。超純水は、患者治療のための即時使用可能な透析液を得るために、透析装置内で1又は2以上の濃縮液と混合される。
【0003】
この種の透析液の調製に必要な大量の水分要求量は、公知の透析装置が追加のROシステムを必要とするという結果をもたらすので、全体システムは比較的大型で重くなり、装置の輸送は困難性を伴う。この欠点は、例えば、在宅血液透析において及び患者が治療時に移動するのを可能にすることが意図された携帯ユニットに対して影響を与える。
【0004】
図5は、本発明でカバーされていない透析装置の実施形態の想定される可能性を示し、ここでは、水消費量が低減され、新しい、すなわち即時使用可能な透析液は、消費された透析液を利用する間に獲得され、これは水消費量の低減をもたらす。
【0005】
容器10の中への真水の入口は、参照番号Iで参照され、入口管路はバルブV1によって遮断可能である。消費溶液のための容器10からのドレーンは、Oで示されており、ドレーン管路はバルブV2によって遮断可能である。容器10は以下において水注入チャンバと呼ばれる場合もある。残水(stationary water)接続部又は透析バッグなどのバッグといった何らかの他の容器を有する容器10は、一般に残水接続部と共に使用することができる。容器10は、剛性又は可撓性の壁を有することができる。
【0006】
参照番号100は、好ましくは、複数の膜(好ましくは膜束)を有し、片側Dを透析物が通過し、反対側Bを血液が通過する透析装置を指す。透析装置100を通過して結果的に血液からの汚染物質で満たされた透析液は、消費透析液又は消費透析物と呼ばれる。透析装置100から管路40を通って水注入チャンバ10に戻る消費透析物は、ポンプ50で吸い込まれ、上流に配置される第1の回路である回路にポンプ送給される。
【0007】
この回路は、実質的に、ポンプ50、容器10、フィルタ20の一次側(すなわち、フィルタ膜の前方又は他のフィルタ媒体の前方セクション)、及びこれらの構成要素を接続する管路を含む圧力除去バルブ60を備える。参照番号30は、圧力除去バルブ60から容器10への戻り管路を指す。
【0008】
ポンプ60は、消費透析液を容器10からのフィルタ20の一次側21に運び、残余分をバルブ60を介して容器10のもとに運ぶ。圧力降下は、ここでバルブ60上で生じ、結果的にフィルタ20上でも圧力が生じる。この圧力又は圧力降下は、バルブ60で設定することができ、従ってフィルタ20の理想動作点に合わせることができる。
【0009】
フィルタ20の一次側21と二次側22との間の圧力勾配は、フィルタ膜を通る又は他のフィルタ媒体を通る流れが起こるという結果をもたらし、二次側22にすなわちフィルタ媒体の後に超純水の形でのろ液が存在することになる。これは、混合回路、混合容器、管路として設計することができる混合装置200に流入する。
【0010】
混合回路又は混合容器200などの中で超純水と塩基濃縮液及び酸濃縮液を含むような1又は2以上の濃縮液との混合が起こる。また、可能であれば、透析液によって透析装置100内の血液から熱が回収されないように、ここでは透析液の加熱又はポスト加熱が行われてもよい。従って二次側回路は、フィルタ20の二次側22、混合装置200、透析装置100の透析物側D、及びこれらの構成要素を接続する管路システムを備え、管路は透析装置100の透析物側Dから水注入チャンバ10のもとに通じる。
【0011】
図5から分かるように、第1及び第2の回路は、2つの閉じた直列の水回路又は液体回路である。一般にこれらの回路が2つ以上存在することができる。
【0012】
フィルタ20は、随意的にグラフェンフィルタ技術に基づくことができ、それによって、例えば、超純水は、溶存酸素なしで同時にフィルタから分離することができる。これは透析装置内の別個の脱ガス回路などのさらなる構成要素を不要にする。
【0013】
高い性能は、バルブ60を介した一次側21でのフィルタ20の「洗浄」によって得ることができ、フィルタ20の汚染を防止するか又は遅らせることができる。従って、フィルタ20の寿命が長くなる。追加的に、フィルタ20は、排水して空にすることができ、そのためにバルブ90は圧力除去バルブ60を短絡させる。この場合、液体は、バルブ90を含む迂回路に移動し、バルブ60を迂回しながらここから容器の中に戻る。
【0014】
図5からさらに分かるように、充填レベルセンサ110は容器10の中に位置する。第1の回路及び第2の回路が閉じており、従って充填レベルは同じままであるはずなので、センサが容器10の充填レベルが限界値を下回っていることを報知すると、漏れという結論が出される。バルブV1及びV2は、正常運転時に閉じている、すなわち水位の変化は起こらない。
【0015】
図5において、ポンプ50の後すなわち下流側に導電性セル70が存在する。従って、回路動作によってもたられる汚染液体の濃度が測定され、回路内の水を完全に置換する(真水循環)必要がある場合が導き出される。この置換は、バルブV1及びV2を用いて行うことができ、容器10内のレベルセンサ110を用いて体積に関して平衡させることができる。通常の透析動作において、バルブV1及びV2は閉じており、上記のようにレベルセンサ10は漏れ監視手段として用いることもできる。2つの閉回路のうちの一方が液体を失うと、このことは容器10の液位を参照して検出することができる。これは患者の安全を守る。
【0016】
フィルタ20の機能は、フィルタ20の後すなわち下流側の追加的な導電性セル80によって監視することができる。フィルタ膜又は他のフィルタ媒体の関連する損傷が生じると直ぐに、導電性イオンがフィルタ20を通過し、これは結果としてセンサ80で検出することができる。随意的に、膜間圧は、フィルタ20の下流側に位置する圧力センサ102によってフィルタ20上で監視することができ、フィルタ性能の劣化又は喪失を決定することができる。
【0017】
2つの回路は閉じているので、透析物の加熱のためのエネルギ必要量は大幅に減少する。その結果、従来技術で知られている機械よりも小さな加熱装置を用いることができる。熱交換器は、真水循環のために明らかに随意的に依然として想定することができが、コストが理由で排除することもできる。上述のように、フィルタ20の二次側22に生じる超純水は、機械の混合部分200の中に流入し、ここで、患者の血液と交換するために即時使用可能な透析液が透析装置100で利用可能になるように、例えば、重炭酸塩及び酸で濃縮される。参照記号B/Uは、平衡ユニット及び/又は消費透析液から医者の処方に対応する分体積を引き出す限外ろ過ポンプを指す。
【0018】
水よりも大きい有害物質は、依然として2段(直列)フィルタ手法によって患者から回収することができる。これらのNa及びClなどのイオンも含む透析液からの物質は、実質的に容器10内で濃縮され、真水循環の一部として流出流Oによって廃棄される。限外ろ過は、依然として、例えばドレーンに直接運ぶユニットB/UのUFポンプによって行われる。回路は閉回路なので、現在平衡チャンバを用いて行われるような体積平衡の利点を維持することができる。
【0019】
追加の脱ガス手段/脱ガス装置の要求は、ガス不浸透性のフィルタ20の特性に起因して、この設計では省くことができる。もしくは、必要であれば、使用するフィルタに応じて、図5の記号Eで示すような脱ガス制限器/脱ガス装置を上流側回路(すなわち第1の回路)に導入することもできる。しかしながら、例えば、図5の20と60との間に配置することができる分離チャンバは、空気分離チャンバとしても機能することができる。
【0020】
この時点で、図5に関して説明される全ての特徴は、独立して又は組み合わせて本発明の主題であることが指摘される。さらに、図5及び図1から4の同じ参照番号は、同じ又は同じ機能を有する要素を特徴付けることが指摘される。
【0021】
図5による構成には、容器10内の溶液の濃縮が時間と共に起こるという欠点がある。従って、処理とともに次第に濃縮される溶液は、フィルタ20の一次側21にも存在する。この溶液によってもたらされた浸透圧は、ろ液形成を妨げるのでフィルタ20でのろ過をより難しくする。一次側21での濃度が高くなると、結果的に、フィルタ20の二次側22上で十分な量の超純水を得るために、ポンプ50で生じる圧力を高めることが必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の潜在的な目的は、効率的な超純水の取得が可能になる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的は、請求項1の特徴をもつ装置によって達成される。
【0024】
従って、透析液を調製するめの第1の回路及び第2の回路を有する装置が提供され、第1の回路は、消費透析液又は真水又は他の流体を受け入れるための容器と、容器の下流側に接続されたフィルタの一次側と、フィルタの一次側から容器への戻り管路とを有し、フィルタは、消費透析液又は真水又は他の液体から精製水を調製するように構成されており、第2の回路は、フィルタの二次側と、透析装置の透析物側と、貯蔵器と、貯蔵器からフィルタの二次側に至り、透析物又は透析物濃縮液をフィルタの二次側へ供給することができる、以下で濃縮液管路と呼ばれる場合がある管路と、フィルタの二次側から遠ざかる、ろ過管路とを有する。
【0025】
一実施例によれば、貯蔵器は、重炭酸塩濃縮液などの濃縮液、又は酸濃縮液、又は即時使用可能な透析液、又は詳細には重炭酸塩濃縮液である塩基濃縮液と酸濃縮液との混合物を受け入れる。
【0026】
図5に示される構成とは違って、即時使用可能な透析液の形の又は好ましくは液体濃縮液の形のいずれかの溶液は、フィルタの二次側に供給される。このことは、フィルタ膜上の浸透圧力勾配が相応に低下して結果的にろ液のより効率的な調製が可能になるという利点を有する。
【0027】
フィルタの二次側に供給される濃縮液は、好ましくは、透析液の調製に必要な濃縮液であり、重炭酸塩を含有する濃縮液であることが特に好ましい。濃縮液が、水及び随意的に食塩以外に、重炭酸塩のような単一の導電成分のみを含有することが特に好ましい。
【0028】
フィルタは、容器内に収容された溶液から精製水(すなわち、汚染物質及びイオン又は微分子などの他の成分の含有量又は濃度がフィルタに供給された溶液のものよりも小さい水)を精製することを目的としている。フィルタは、好ましくは、超純水を精製するように構成され、これは本発明の構想の中では即時使用可能な透析液の調製に用いるのに適した水として理解される。フィルタは、単段又は複数段とすることができ、複数段では、溶液が順々に通過する。水の所望の純度を得るために直列に接続された複数のフィルタを使用することも考えられる。フィルタは、好ましくは、RO(逆浸透)又はFO(正浸透)プロセスで用いられるような中空糸モジュール又は巻きモジュールである。
【0029】
このフィルタは、好ましくは、グラフェンフィルタである。ここでは、フィルタは、フィルタ材料としてグラフェン又は酸化グラフェンなどのグラフェン派生物を含有すること、又はそのフィルタ材料がこれらの材料から成るか又は含むことができる。グラフェン又は酸化グラフェンは、気密性があるが同時に透水性があり、このことは、本発明の構想の中で、第1の回路から第2の回路へのガス流入、結果的に即時使用可能な透析液へのガス流入が起こらないという利点をもたらす。しかしながら、本発明は、これらのフィルタに限定されず、好ましくはガス不浸透性であるが液体が通過できる他のフィルタを含むこともできる。使用されるフィルタがガス不浸透性をもたない場合、例えば、空気は、脱ガス制限器によって一次側で分離することができ、次に、バルブ(好ましくは、圧力制限バルブ)を介して容器のもとに運ぶことができ、結果的に除去することができる。他の脱ガス手法も可能である。
【0030】
フィルタは、好ましくは、4つの接続部を有し、そのうちの2つは一次側、残りの2つは二次側にある。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、透析装置の透析物側から容器への戻り管路が存在し、これによって消費透析液が容器に供給される。もしくは、透析装置の透析物側からドレーンへの戻り管路が存在することができ、すなわち消費透析液は廃棄される。
【0032】
フィルタの二次側から遠ざかるろ過管路は、フィルタの二次側を装置の平衡チャンバに接続する。この場合、フィルタを通じて取得されたろ液、好ましくは超純水は、例えば、濃縮液と混合され、この混合物は、透析装置の平衡チャンバに供給される。濃縮液が重炭酸塩溶液の場合、超純水で希釈された重炭酸塩溶液は、次に、平衡チャンバに供給される。さらなるステップで、酸濃縮液は、次に、この混合物に混合すること、又は希釈された重炭酸塩溶液などは、容器の中に、例えば貯蔵器の中に充填することができ、この中には、即時使用可能な透析液に必要な所定量のさらなる濃縮液又は他の成分が存在する。
【0033】
別の実施例では、酸濃縮液及び塩基濃縮液を含む濃縮液が、フィルタのろ過側に直接供給される。この実施形態の濃縮溶液は、特に好ましいフィルタのろ過性能をもたらす。この実施形態による透析物濃縮液は、詳細には塩基濃縮液及び酸濃縮液の両方の塩基濃縮液から成る。
【0034】
また、ろ過管路は、フィルタによって取得されたろ液、好ましくは超純水が、例えば、濃縮液と混合され、この混合物透析装置の貯蔵器に供給されるように、貯蔵器と流体連通することが想定される。貯蔵器又は混合チャンバは、好ましくは、平衡チャンバの下流側で接続される。
【0035】
即時使用可能な透析液又は濃縮液、詳細には重炭酸塩濃縮液は、即時使用可能な透析液を調製するために用いられる貯蔵器の中に存在することがさらに想定される。
【0036】
貯蔵器は、好ましくは、透析物混合装置であり、その中で即時使用可能な透析液が混合され、そこから透析装置の透析物側に供給される。
【0037】
ポンプは、好ましくは、濃縮液管路に配置され、所定の体積又は所定の体積流量をフィルタの二次側に供給する。ポンプは、例えば、容積式ポンプ又は偏心式膜ポンプとすることができる。このように、完全な体積制御混合プロセスを実施することができ、これは、例えば、独立した導電率測定によって監視することができる。
【0038】
さらに、ポンプは、好ましくは、第1の回路の中の流体の流れを生じさせるために、フィルタの一次側の上流側で第1の回路に配置される。このポンプは、容器内にある流体をフィルタの一次側に運ぶ。
【0039】
代替的に又は追加的に、圧力除去デバイスは、好ましくはフィルタの下流側で第1の回路に配置することができ、これによってフィルタの一次側の圧力を設定することができる。
【0040】
フィルタの一次側の上流側及び下流側に配置される、1又は2以上のセンサ、好ましくは、1又は2以上の導電率測定セルは、装置によって実行されるプロセスを監視する又は制御するために、第1の回路に配置することができる。代替的に又は追加的に、1又は2以上のセンサ、好ましくは、1又は2以上の導電率測定セルは、濃縮液管路及び/又はろ過管路において第2の回路に配置することができる。
【0041】
1又は2以上の圧力測定デバイスは、フィルタの二次側の下流側及び/又はフィルタの一次側の上流側に配置される。このように、それぞれの回路における圧力状態について及びフィルタ膜上の膜間圧についての提示を行うことができる。
【0042】
装置は、好ましくは透析装置からの戻り管路から容器へ透析液を移動させるための限外ろ過ポンプをさらに有することができ、及び/又は、装置は、透析装置への又はそこからの透析液の平衡のとれた供給及び移動のための平衡チャンバをさらに有することができる。
【0043】
第1及び/又は第2の回路は、閉じること又は開くことができる。「開く」は、より制限された意味での回路が存在せず、むしろ、流体システムが少なくとも1箇所で排水管路を有し、これによって流体が回路から流出して廃棄されることを意味すると理解される。
【0044】
容器は、バッグとして、より詳細には可撓性バッグとして、さらに詳細には使い捨てバッグとして形成することができる。
【0045】
請求項に記載された装置は、透析装置又は透析装置の一部又は透析液を混合するための装置とすることができる。
【0046】
本発明は、本発明による装置を用いて透析液を調製するための方法に関し、溶液が、容器からフィルタの一次側へ供給され、残余分が、容器に戻され、透析液又は透析濃縮液が、フィルタの二次側に供給され、フィルタの二次側で浸透水と混合される。
【0047】
フィルタの二次側に供給される透析液又は透析物濃縮液は、好ましくは、この貯蔵器から流出して、フィルタの二次側に導かれる。
【0048】
ポンプは、濃縮液管路に配置することができ、このポンプは、所定の体積又は所定の体積流量の透析液又は透析物濃縮液をフィルタの二次側に供給する。
【0049】
さらに、フィルタの二次側に生じる浸透水は、供給された透析液又は透析物濃縮液と一緒に貯蔵器及び/又は平衡チャンバの中に導かれる。
【0050】
用語「1の(a)」及び「1つの(one)」は、可能性のある実施形態で示されたとしても必ずしも厳密に要素のうちの1つを指しておらず、複数の要素を示すこともできることが現時点で指摘される。複数形の使用は同様に目的とする要素の単数での存在を含み、逆に、単数形は同様に複数の目的とする要素を含む。
【0051】
本発明のさらなる詳細及び利点は、図面に示された実施形態を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の第1の実施形態による装置の概略的な流れ図である。
図2】本発明の第2の実施形態による装置の概略的な流れ図である。
図3】本発明の第3の実施形態による装置の概略的な流れ図である。
図4】本発明の第4の実施形態による装置の概略的な流れ図である。
図5】本発明の主題ではない別の装置の概略的な流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
上述のように、図5は、本発明の主題ではない変形例を示す。図5に従って同じ又は機能的に同じ要素は、図1から4にて同じ参照番号を有するので、図1から4に示された装置の構造に対して図5への参照がなされる。
【0054】
図1から分かるように、図1に示された装置は、管路Kが貯蔵器200から出てフィルタの二次側22に達し、この管路Kを即時使用可能な透析液が流れるという点において図5の構成とは本質的に異なっている。導電率センサL2はこの管路Kに配置される。
【0055】
ドレーン側において、ろ過管路Fは、フィルタ20の二次側22から貯蔵器200に至る。この管路は、管路Kで供給された透析物と、フィルタ20によって(例えば、ROによって)取得した超純水との混合を行う。導電率センサL4は、管路Fに配置される。
【0056】
管路52がさらに設けられており、この管路は、バルブV7によって閉じることができ、これによって貯蔵器200は管路と連通状態になり、これを通って、流体が容器からフィルタ20の一次側21に供給される。ポンプ50及び導電率センサL1は、最後に挙げた管路に配置される。従って、貯蔵器200は、バルブ開放によってフィルタ20の一次側21と連通状態になる。
【0057】
図1の装置において、フィルタをこえた質量移動又は体積転移は、導電率センサL2及びL4によって測定及び確認される。図2は、濃縮液又は濃縮液混合物、詳細には重炭酸塩の濃縮液が管路Kを通って運ばれる実施形態を示す。管路Kに設けられたポンプ51がこの目的を果たす。従って、濃縮溶液は、フィルタの二次側22に運ばれ、その導電率は、導電率センサL2によって測定される。所定量すなわち規定量のその濃縮液又は混合物は、ポンプ51によって運ばれる。この濃縮液又は混合物は、フィルタ20内で超純水と混合され、超純水は、濃縮液又は濃縮液混合物を二次側で希釈する。
【0058】
この混合物は、平衡チャンバBKに供給され、平衡チャンバは、4つのバルブで設計されると共に2つのチャンバを有し、2つのチャンバは、可動隔壁によって分離され、各々のチャンバは流入バルブ及び流出バルブを有する。
【0059】
従って、平衡チャンバBKは、超純水で希釈された濃縮液又は濃縮液混合物を受け入れる。従って、完全な体積制御混合プロセスがもたらされ、これは独立した導電率測定(導電率センサL4)によって監視することができる。即時使用可能な透析液の成分としての濃縮液のみが導電率に寄与する(図1の実施形態とは対照的に)。従って、導電率の期待値を計算することができる。導電率の期待値の調整を単純に行うことができる。
【0060】
また、目標値が平衡チャンバに供給された希釈濃縮液/濃縮液混合物の体積であり、実際値が導電率測定によってもたらされる調整又はフィードバックループを提供することも想定される。このためにフィルタの固有保持能力が重要である。管路K内の導電率の情報及び管路F内の導電率の情報を用いて、超純水の移動に起因してポンプで運ばれた体積がどの量だけ増加したか、すなわち平衡チャンバ又はその下流に接続された貯蔵器200にどれだけの量が供給されたかに関する決定を行うことができる。
【0061】
図2からさらに分かるように、フィルタ20の一次側21又はそこからつながる管路は、バルブV5が配置される管路96を介して貯蔵器200と連通状態にある。
【0062】
図3の実施形態は、合計4つの導電率センサL1-L4の点で図2の変形例とは異なっており、導電率センサL1-L4のうちの2つはフィルタの一次側21の上流側及び下流側に配置され、残りの2つは、濃縮液管路K及びろ過管路Fに配置される。流入側の導電率及び流出側の導電率の情報を用いて、プロセスをさらに検証、制御、及び監視することができる。
【0063】
圧力測定センサS1及びS2がさらに設けられており、フィルタ20の膜上の膜間圧を監視するように機能する。センサS1はフィルタ20の一次側の流入側に配置され、センサS2はろ過管路Fに配置される。各センサの値を用いて、例えばスケーリングによってフィルタFの劣化を識別すること、及びフィルタの洗浄サイクル/再生サイクルを計画して実行することができる。
【0064】
追加的に、センサS2によって十分な超純水がフィルタ20をこえて二次側22に流れているか否か、及び所望の混合関係に到達して平衡チャンバが切り替わる又はサイクル作動できるように平衡チャンバが満杯か否かを識別することができる。次に、ポンプ51によって新しい「混合サイクル」を開始することができる。
【0065】
代替的に、ポンプ51のトルク又はモータ電流を評価して所望の混合比に到達したことを識別することができる。
【0066】
導電率センサL1の値を用いて、真水循環を制御すること、すなわち容器10内の残余分が真水で置換されなければならないとき識別することができる。
【0067】
本発明は、フィルタ20の使用を全体的にカバーするだけでなく、順々にすなわち直列に接続された複数のフィルタの使用をカバーする。これはポンプ50を軽減するが複数のポンプが必要になる。
【0068】
チャンバ10は、剛性容器として又はバッグとしてデザインすることができる。
【0069】
フィルタ20は、例えば、バルブV3及び90を開放することで洗い流すこと、結果的に洗浄することができる。
【0070】
代替的に、二次側は、最初はバルブV5又はV6を介して真水で満たすことができる。しかしながら、フィルタ20及び平衡チャンバBKを介して真水で満たすことは好都合である。
【0071】
図4から分かるように、本方法は、消費透析物を容器10に戻すことなく実行することができる。この場合、消費透析物は管路40’を通って廃棄される。容器10に供給される水の消費透析液による予熱は、熱交換器WTによって行われる。
【符号の説明】
【0072】
10 容器
20 フィルタ
21 一次側
22 二次側
30 戻り管路
100 透析装置
200 貯蔵器
K 管路
F ろ過管路
図1
図2
図3
図4
図5