(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】作業車両、作業車両の制御装置、および作業車両の方向特定方法
(51)【国際特許分類】
E02F 3/84 20060101AFI20240110BHJP
E02F 3/85 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E02F3/84 A
E02F3/85 D
(21)【出願番号】P 2021512019
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014108
(87)【国際公開番号】W WO2020203804
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2019068988
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幸村 貴臣
(72)【発明者】
【氏名】尾尻 和也
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-103135(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083469(WO,A1)
【文献】特開2011-247652(JP,A)
【文献】特開平10-183675(JP,A)
【文献】特開平09-032032(JP,A)
【文献】特開平10-110446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/84
E02F 3/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に移動可能に車体に支持される作業機を備える作業車両の制御装置であって、
前記車体のピッチ角を取得するピッチ角取得部と、
前記車体を基準とした前記作業機の位置を算出する作業機位置算出部と、
前記ピッチ角および前記作業機の位置に基づいて、前記車体の進行方向を特定する進行方向特定部と、
前記車体の速度を取得する速度取得部と、
前記速度および前記車体の進行方向に基づいて、前記車体の位置を特定する位置特定部と、
掘削対象の目標形状を示す設計面データに基づいて、特定した前記車体の位置における前記掘削対象の目標高さを特定する目標高さ特定部と、
前記目標高さと前記進行方向とに基づいて、作業機の制御信号を出力する作業機制御部と
を備える作業車両の制御装置。
【請求項2】
前記進行方向特定部は、
前記作業機の位置が前記車体の走行装置の接地部より下方である場合に、前記車体の進行方向を、前記接地部から作業機位置へ伸びる方向に特定し、
前記作業機の位置が前記接地部より上方である場合に、前記車体の進行方向を前記ピッチ角に従った方向に特定する
請求項1に記載の作業車両の制御装置。
【請求項3】
車体と、
上下方向に移動可能に前記車体に支持される作業機と、
請求項1または請求項2に記載の制御装置と
を備える作業車両。
【請求項4】
上下方向に移動可能に車体に支持される作業機を備える作業車両の方向特定方法であって、
前記車体のピッチ角を計測するステップと、
前記車体を基準とした前記作業機の位置を算出するステップと、
前記ピッチ角および前記作業機の位置に基づいて、前記車体の進行方向を決定するステップと、
前記車体の速度を取得するステップと、
前記速度および前記車体の進行方向に基づいて、前記車体の位置を特定するステップと、
掘削対象の目標形状を示す設計面データに基づいて、特定した前記車体の位置における前記掘削対象の目標高さを特定するステップと、
前記目標高さと前記進行方向とに基づいて、作業機の制御信号を出力するステップと
を備える作業車両の方向特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両、作業車両の制御装置、および作業車両の方向特定方法に関する。
本願は、2019年3月29日に日本に出願された特願2019-068988号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブレードの刃先を設計面に追従させる作業車両が開示されている。特許文献1に開示された技術によれば、制御装置は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用して作業車両の位置を特定し、特定した位置に基づいてブレードの目標高さを決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術のようにGNSSを利用した制御は、施工現場の環境によってはGNSSの電波が受信できず、作業車両の位置を特定することができない可能性がある。そのため、GNSSに代えて自律航法によって作業車両の位置を特定することが考えられる。
【0005】
ところで、ブレードを有する作業車両は、ブレードを掘削対象に押し当てて前進するため、掘削対象からの反力により走行装置の前部が浮いた状態で走行することがある。このとき、制御装置がIMU(Inertial Measurement Unit)から読み出すピッチ角に基づいて作業車両の進行方向を斜め上方向と誤認し、ブレードを適切に制御することができなくなる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、ブレードによって地面を掘削しているときに、作業車両の進行方向を正しく特定することができる作業車両、作業車両の制御装置、および作業車両の方向特定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、作業車両の制御装置は、上下方向に移動可能に車体に支持される作業機を備える作業車両の制御装置であって、前記車体のピッチ角を取得するピッチ角取得部と、前記車体を基準とした前記作業機の位置を算出する作業機位置算出部と、前記ピッチ角および前記作業機の位置に基づいて、前記車体の進行方向を特定する進行方向特定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、作業車両の制御装置は、ブレードによって地面を掘削しているときに、作業車両の進行方向を正しく特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る作業車両の側面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る運転室の内部の構成を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る作業車両の動力系統を示す模式図である。
【
図4】第1の実施形態に係る作業車両の制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図5】車両の進行方向の特定方法を示す第1の図である。
【
図6】車両の進行方向の特定方法を示す第2の図である。
【
図7】第1の実施形態に係る自動ブレード制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〈第1の実施形態〉
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係る作業車両の側面図である。
第1の実施形態に係る作業車両100は、例えばブルドーザである。作業車両100は、車体110、走行装置120、作業機130、運転室140を備える。
【0011】
走行装置120は、車体110の下部に設けられる。走行装置120は、クローラ121、スプロケット122およびアイドラ124を備える。スプロケット122の駆動によってクローラ121が回転することで、作業車両100が走行する。スプロケット122の回転軸には、回転センサ123が設けられる。回転センサ123は、スプロケット122の回転数を計測する。スプロケット122の回転数は、走行装置120の速度に換算可能である。
【0012】
車体110には、IMU111が設けられる。IMU111は、車体110のロール方向およびピッチ方向の傾斜角と、ヨー方向の角度変位を計測する。車体座標系は、原点をアイドラ124の中心とし、車体前後方向に伸びるX軸、車体左右方向に伸びるY軸、車体上下方向に伸びるZ軸によって表される直交座標系である。X軸を中心とした車体の回転方向をロール方向、Y軸を中心とした車体の回転方向をピッチ方向、Z軸を中心とした車体の回転方向をヨー方向とする。
【0013】
作業機130は、土砂等の掘削対象の掘削および運搬に用いられる。作業機130は、車体110の前部に設けられる。作業機130は、リフトフレーム131、ブレード132、およびリフトシリンダ133を備える。
【0014】
リフトフレーム131の基端部は、車幅方向に伸びるピンを介して、車体110の側面に取り付けられる。リフトフレーム131の先端部は、ブレード132の裏面に球体関節を介して取り付けられる。これにより、ブレード132は、車体110に対して上下方向に移動可能に支持される。ブレード132の下端部には、刃先132eが設けられる。リフトシリンダ133は、油圧シリンダである。リフトシリンダ133の基端部は車体110の側面に取り付けられる。リフトシリンダ133の先端部はリフトフレーム131に取り付けられる。リフトシリンダ133が作動油によって伸縮することによって、リフトフレーム131およびブレード132が上げ方向または下げ方向に駆動する。
【0015】
リフトシリンダ133には、リフトシリンダ133のストローク量を計測するストロークセンサ134が設けられる。ストロークセンサ134が計測するストローク量は、車体110を基準とした刃先132eの位置に換算可能である。具体的には、リフトシリンダ133のストローク量に基づいて、リフトフレーム131の回転角を算出する。リフトフレーム131およびブレード132の形状は既知であるため、リフトフレーム131の回転角から、ブレード132の刃先132eの位置を特定することができる。なお、他の実施形態に係る作業車両100は、エンコーダ等の他のセンサで回転角を検出してもよい。
【0016】
運転室140は、オペレータが搭乗し、作業車両100の操作を行うためのスペースである。運転室140は、車体110の上部に設けられる。
図2は、第1の実施形態に係る運転室の内部の構成を示す図である。運転室140の内部には、シート141、コンソール142、作業機操作レバー143、走行操作レバー144、ブレーキペダル145、およびデセルペダル146が設けられる。
【0017】
コンソール142には、操作パネル、計器類およびスイッチ類が取り付けられる。オペレータは、コンソール142を視認して作業車両100の状態を確認することができる。また、オペレータは、コンソール142の操作により、掘削対象の目標形状を示す設計面を設定する。
作業機操作レバー143は、ブレード132の上げ操作または下げ操作の移動量を設定するために操作される。作業機操作レバー143は、前方へ傾けられることにより下げ操作を受け付け、後方へ傾けられることにより上げ操作を受け付ける。
走行操作レバー144は、走行装置120の進行方向を設定するために操作される。走行操作レバー144は、前方へ傾けられることにより前進操作を受け付け、後方へ傾けられることにより後進操作を受け付ける。また走行操作レバー144は、左方へ傾けられることにより左旋回操作を受け付け、右方へ傾けられることにより右旋回操作を受け付ける。オペレータは、コンソール142にて設計面を設定した後に作業機操作レバー143または走行操作レバー144を操作することで、自動ブレード制御の開始および終了を指示する。例えば、オペレータは、設計面を設定した後に、作業機操作レバー143に付随するスイッチを操作することで、自動ブレード制御の開始および終了を指示することができる。またオペレータは、設計面を設定した後に、走行操作レバー144を前方へ傾けることで自動ブレード制御の開始を指示し、その後走行操作レバー144を戻すことで自動ブレード制御の終了を指示する。
ブレーキペダル145は、走行装置120を制動させるために操作される。
デセルペダル146は、走行装置120の回転数を低減させるために操作される。
【0018】
《動力系統》
図3は、第1の実施形態に係る作業車両の動力系統を示す模式図である。
作業車両100は、エンジン210、PTO220(Power Take Off)、変速機230、アクスル240、油圧ポンプ250、比例制御弁260を備える。
【0019】
エンジン210は、例えばディーゼルエンジンである。
PTO220は、エンジン210の駆動力の一部を、油圧ポンプ250に伝達する。つまり、PTO220は、エンジン210の駆動力を、変速機230および油圧ポンプ250に分配する。
変速機230は、入力軸に入力される駆動力を変速して出力軸から出力する。変速機230の入力軸はPTO220に接続され、出力軸はアクスル240に接続される。つまり、変速機230は、PTO220によって分配されたエンジン210の駆動力をアクスル240に伝達する。
アクスル240は、変速機230が出力する駆動力をスプロケット122に伝達する。これにより、走行装置120が回転する。
油圧ポンプ250は、エンジン210からの駆動力によって駆動される。油圧ポンプ250から吐出された作動油は、比例制御弁260を介してリフトシリンダ133に供給される。
比例制御弁260は、油圧ポンプ250から吐出された作動油の流量を制御する。油圧ポンプ250は、比例制御弁260に加えて、アクスル240とスプロケット122との間に設けられた図示しないステアリングクラッチなどの他の供給先に作動油を供給してもよい。
【0020】
《制御装置》
作業車両100は、作業車両100を制御するための制御装置300を備える。
制御装置300は、運転室140内の各操作装置(コンソール142、作業機操作レバー143、走行操作レバー144、ブレーキペダル145、およびデセルペダル146)の操作量に応じて、エンジン210の燃料噴射装置、変速機230、および比例制御弁260に制御信号を出力する。
【0021】
図4は、第1の実施形態に係る作業車両の制御装置の構成を示す概略ブロック図である。制御装置300は、プロセッサ310、メインメモリ330、ストレージ350、インタフェース370を備えるコンピュータである。
【0022】
ストレージ350は、一時的でない有形の記憶媒体である。ストレージ350の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ350は、制御装置300のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース370または通信回線を介して制御装置300に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ350は、作業車両100を制御するためのプログラムを記憶する。ストレージ350に記憶される設計面データは、設計面の勾配のみを規定するデータであってよい。なお設計面データは、後述するアドホック座標系で定義されている。
【0023】
なお、他の実施形態においては、制御装置300は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ310によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0024】
プロセッサ310は、プログラムを実行することで、操作量取得部311、計測値取得部312、ブレード位置算出部313、進行方向特定部314、移動距離特定部315、位置特定部316、目標高さ特定部317、ブレード制御部318を備える。
【0025】
操作量取得部311は、コンソール142から自動ブレード制御の開始指示および終了指示を取得する。
計測値取得部312は、IMU111、回転センサ123およびストロークセンサ134からそれぞれ計測値を取得する。すなわち、計測値取得部312は、車体110のヨー角、車体110のロール角、車体110のピッチ角、スプロケット122の回転数、およびリフトシリンダ133のストローク量の計測値を取得する。計測値取得部312は、ピッチ角取得部の一例である。また、スプロケット122の回転数は、車体110の速度に換算可能であるため、計測値取得部312は、速度取得部の一例であるといえる。
【0026】
ブレード位置算出部313は、計測値取得部312が取得したリフトシリンダ133のストローク量の計測値に基づいて、車体110を基準としたブレード132の刃先132eの位置を算出する。つまり、ブレード位置算出部313は、予め記憶している車体110の寸法情報とリフトシリンダ133のストローク量の計測値から車体座標系における刃先132eの位置を算出する。
【0027】
進行方向特定部314は、ブレード位置算出部313が算出した刃先132eの位置と計測値取得部312が取得した車体110のヨー角、ロール角およびピッチ角の計測値とに基づいて、車体110の進行方向を特定する。
【0028】
図5は、車両の進行方向の特定方法を示す第1の図である。
図6は、車両の進行方向の特定方法を示す第2の図である。具体的には、車体正面方向D1と、車体座標系においてスプロケット122の直下のクローラ121(接地部)の位置Pと刃先132eとを結ぶ直線の方向D2とがなす角θが0度以上であるか否かを判定する。角θが0度以上であるということは、刃先132eの位置が、
図5に示すように、走行装置120の底面より上方にあることを示す。他方、角θが0度未満であるということは、刃先132eの位置が、
図6に示すように、走行装置120の底面より下方にあることを示す。
【0029】
角θが0度以上である場合、進行方向特定部314は、車体110のピッチ角の計測値の方向D1を、車体110の進行方向のピッチ方向成分と特定する。他方、角θが0度未満である場合、進行方向特定部314は、車体110のピッチ角の計測値に角θを加算した方向を、車体110の進行方向のピッチ方向成分と特定する。
【0030】
移動距離特定部315は、計測値取得部312が取得したスプロケット122の回転数の計測値に基づいて、所定の制御時間の間における車体110の移動距離を特定する。つまり、移動距離特定部315は、制御時間にスプロケット122の回転数から特定される車体110の走行速度を乗算することで、移動距離を特定する。
【0031】
位置特定部316は、前回の車体110の位置と、進行方向特定部314が特定した進行方向と、移動距離特定部315が特定した移動距離とに基づいて、車体110の位置を特定する。車体110の位置は、車体110の初期位置を原点とし、初期方位をX軸、鉛直方向をZ軸、X軸とZ軸に直交する方向をY軸とする座標系(以下、アドホック座標系とよぶ)で表される。位置特定部316が特定したアドホック座標系の位置は、メインメモリ330に記憶される。アドホック座標系の原点は、車体110の初期位置における、車体座標系の原点と一致させてもよい。アドホック座標系は、自動ブレード制御開始時に設定され、自動ブレード制御終了時に削除されてもよい。
【0032】
目標高さ特定部317は、メインメモリ330に記憶されたアドホック座標系における車体110の位置と、計測値取得部312が取得した速度の計測値と、進行方向特定部314が特定した進行方向と、ストレージ350に記憶されたアドホック座標系における設計面データとに基づいて、刃先132eの目標高さを特定する。
【0033】
ブレード制御部318は、ブレード位置算出部313が算出した刃先132eの位置と目標高さ特定部317が特定した目標高さとに基づいて、ブレード132を制御するための駆動指令を、比例制御弁260に出力する。例えば、ブレード制御部318は、ブレード位置算出部313が算出する刃先132eの位置の時系列から刃先132eの移動速度を算出し、現在の移動速度で刃先132eを移動させた場合の制御時間後の刃先132eの高さと目標高さとの偏差が小さくなるように、駆動指令を出力する。
【0034】
《自動ブレード制御方法》
次に、第1の実施形態に係る自動ブレード制御方法について説明する。
図7は、第1の実施形態に係る自動ブレード制御方法を示すフローチャートである。
オペレータは、自動ブレード制御による掘削作業の開始位置まで作業車両100を移動させ、ブレード132を掘削開始高さまで移動させると、コンソール142を操作し、自動ブレード制御の開始指示を入力する。
【0035】
制御装置300の操作量取得部311が自動ブレード制御の開始指示を受け付けると、計測値取得部312は、IMU111、ストロークセンサ134からそれぞれ計測値を取得する(ステップS1)。次に、位置特定部316は、現在の車体110の位置および方位に基づいてアドホック座標系を規定し、メインメモリ330にアドホック座標系における車体110の位置および姿勢を記憶させる。すなわち位置特定部316は、車体110の位置を座標(0,0,0)に設定し、車体110の方位をX軸方向に設定する。
【0036】
次に、ブレード位置算出部313は、計測値取得部312が取得したリフトシリンダ133のストローク量の計測値に基づいて、車体座標系における刃先132eの初期位置を算出する(ステップS2)。ブレード位置算出部313は、ステップS1で取得したIMU111の計測値に基づいて、刃先132eの初期位置を、車体座標系からアドホック座標系に変換する(ステップS3)。すなわち、ブレード位置算出部313は、IMU111の計測値から鉛直方向を特定し、車体110の上下方向と鉛直方向とのずれ角だけ、刃先132eの初期位置を回転させることで、アドホック座標系における刃先132eの初期位置を求める。
【0037】
次に、目標高さ特定部317は、設計面データに基づいて、ステップS3で算出した刃先132eの初期位置を通るように、アドホック座標系に設計面を規定する(ステップS4)。目標高さ特定部317は、規定した設計面は、メインメモリ330に記憶される。
【0038】
次に、操作量取得部311は、走行操作レバー144の操作量を取得する(ステップS5)。また、計測値取得部312は、IMU111、回転センサ123およびストロークセンサ134からそれぞれ計測値を取得する(ステップS6)。次に、移動距離特定部315は、ステップS6で取得した回転センサ123の計測値に基づいて、制御時間における車体110の移動距離を特定する(ステップS7)。
【0039】
次に、ブレード位置算出部313は、計測値取得部312が取得したリフトシリンダ133のストローク量の計測値に基づいて、車体座標系における刃先132eの位置を算出する(ステップS8)。次に、ステップS8で算出した刃先132eの位置に基づいて、進行方向特定部314は、車体正面方向D1と、スプロケット122の直下のクローラ121の位置Pと刃先132eとを結ぶ直線の方向D2とがなす角θを算出する(ステップS9)。進行方向特定部314は、角θが0度以上であるか否かを判定する(ステップS10)。
【0040】
角θが0度以上である場合(ステップS10:YES)、進行方向特定部314は、車体正面方向D1を、車体座標系における車体110の進行方向と特定する(ステップS11)。他方、角θが0度未満である場合(ステップS10:NO)、進行方向特定部314は、スプロケット122の直下のクローラ121の位置Pと刃先132eとを結ぶ直線の方向D2を、車体座標系における車体110の進行方向と特定する(ステップS12)。
次に、進行方向特定部314は、ステップS6で取得したIMU111の計測値に基づいて、ステップS11またはステップS12で特定した車体110の進行方向を、車体座標系からアドホック座標系に変換する(ステップS13)。
位置特定部316は、メインメモリ330に記憶されたアドホック座標系における車体110の位置と、ステップS7で特定した移動距離と、ステップS13で特定した進行方向とに基づいて、メインメモリ330に記憶された車体110の位置を更新する(ステップS14)。
【0041】
次に、目標高さ特定部317は、ステップS7で特定した移動距離と、ステップS13で特定した進行方向と、ステップS14で更新した車体110の位置とに基づいて、制御時間後の車体110の位置を予測する(ステップS15)。次に、目標高さ特定部317は、ステップS15で予測した位置と、ステップS4でメインメモリ330に記憶された設計面とに基づいて、刃先132eの目標高さを特定する(ステップS16)。
ブレード制御部318は、ステップS8で算出した刃先132eの位置とステップS16で特定した目標高さとに基づいて、ブレード132を制御するための駆動指令を、比例制御弁260に出力する(ステップS17)。
【0042】
次に、操作量取得部311は、コンソール142に自動ブレード制御の終了指示が入力されたか否かを判定する(ステップS18)。コンソール142に自動ブレード制御の終了指示が入力されていない場合(ステップS18:NO)、制御装置300は、ステップS5に処理を戻し、自動ブレード制御処理を継続する。
他方、自動ブレード制御の終了指示が入力された場合(ステップS18:YES)、制御装置300は、自動ブレード制御処理を終了する。
【0043】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態によれば、制御装置300は、車体110のピッチ角および車体110を基準としたブレードの位置に基づいて、車体110の進行方向を特定する。これにより、
図6に示すように、掘削対象からの反力により走行装置120の前部が浮いた状態で作業車両100が走行する場合にも、制御装置300は、作業車両100の進行方向を正しく特定することができる。
【0044】
また、制御装置300は、車体の速度と、特定した進行方向に基づいて車両の位置を特定する。これにより、制御装置300は、自律航法によって作業車両100の位置を特定することができる。
また、制御装置300は、ブレード132の目標高さと特定した進行方向とに基づいて、ブレード132の制御信号を出力する。これにより、制御装置300は、自立航法によって自動ブレード制御を実現することができる。なお、他の実施形態において、特定した位置情報の用途は、自動ブレード制御に限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置300は、特定した位置情報をコンソール142に表示させてもよい。
【0045】
《他の実施形態》
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。例えば、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0046】
上述した実施形態に係る作業車両100は、ブルドーザであるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業車両100は、バケット等の作業機を有するホイールローダーやグレーダなどの他の作業車両であってもよい。なお、作業車両100がホイールローダーである場合、走行装置120は車輪である。そのため、方向D1は、前輪の接地部と後輪の接地部とを結ぶ直線の方向である。方向D2は、後輪の接地部と刃先132eとを結ぶ直線の方向である。
【0047】
上述した実施形態に係る制御装置300は、方向D1と方向D2とがなす角θに基づいて、進行方向を方向D1とするか方向D2とするかを決定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置300は、刃先132eの位置が走行装置120の底面より上にあるか否かに基づいて、進行方向を方向D1とするか方向D2とするかを決定してもよい。また、車体座標系における刃先132eの位置はストロークセンサ134の計測値に基づいて定められる。そのため、他の実施形態に係る制御装置300は、ストロークセンサ134の計測値が閾値以上であるか否かに基づいて、進行方向を方向D1とするか方向D2とするかを決定してもよい。
【0048】
上述した実施形態に係る制御装置300は、ストレージ350に設計面データを記憶するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置300は、図示しない車体に設けられた通信装置により、車体外部から設計面データを受信してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の上記開示によれば、作業車両の制御装置は、ブレードによって地面を掘削しているときに、作業車両の進行方向を正しく特定することができる。
【符号の説明】
【0050】
100…作業車両 110…車体 111…IMU 120…走行装置 121…クローラ 122…スプロケット 123…回転センサ 130…作業機 131…リフトフレーム 132…ブレード 132e…刃先 133…リフトシリンダ 134…ストロークセンサ 140…運転室 141…シート 142…コンソール 143…作業機操作レバー 144…走行操作レバー 145…ブレーキペダル 146…デセルペダル 210…エンジン 220…PTO 230…変速機 240…アクスル 250…油圧ポンプ 260…比例制御弁 300…制御装置 310…プロセッサ 330…メインメモリ 350…ストレージ 370…インタフェース 311…操作量取得部 312…計測値取得部 313…ブレード位置算出部 314…進行方向特定部 315…移動距離特定部 316…位置特定部 317…目標高さ特定部 318…ブレード制御部