(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】タイヤトレッド用組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20240110BHJP
C08C 19/25 20060101ALI20240110BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240110BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240110BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240110BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20240110BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240110BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08L15/00
C08C19/25
C08K3/013
C08K3/04
C08K3/36
C08L7/00
C08L9/00
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2021514663
(86)(22)【出願日】2018-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2018019320
(87)【国際公開番号】W WO2019220627
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-05-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】河崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】中尾 亜矢子
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-503619(JP,A)
【文献】特表2017-500402(JP,A)
【文献】特開2018-048234(JP,A)
【文献】特開2018-002986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08C,C08K,C08F,B60C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも1つのSiOR官能基
と、炭素数1~4のアルキル基によって置換されている、少なくとも1つの第三級アミン官能基とを有する第1のジエンエラストマーであって、Rが
炭素数1~4のアルキル基であり、前記SiOR官能基が前記第1のジエンエラストマーの鎖末端に位置
せず、-45℃未満のガラス転移温度を有する、スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)である、5~95phrの前記第1のジエンエラストマーと、
ポリイソプレンである、5~95phrの第2のジエンエラストマー
とを含んでなるエラストマーマトリックス;及び
- 45phrより多い補強用無機充填剤を含んでなる補強用充填剤を少なくともベースとするゴム組成物を含んでなるトレッドを有するタイヤ。
【請求項2】
前記エラストマーマトリックスが、10~90phrの前記第1のジエンエラストマーと、10~90phrの前記第2のジエンエラストマーとを含んでなるものである、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1のジエンエラストマー及び前記第2のジエンエラストマーの全含有量が90phrより多い、請求項1
又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1のジエンエラストマー及び前記第2のジエンエラストマーの全含有量が100phrである、請求項
3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記補強用無機充填剤が主にシリカを含んでなる、請求項1~
4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ゴム組成物がさらに可塑剤をベースとする、請求項1~
5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項7】
- 少なくとも1つのSiOR官能基
と、炭素数1~4のアルキル基によって置換されている、少なくとも1つの第三級アミン官能基とを有する第1のジエンエラストマーであって、Rが
炭素数1~4のアルキル基であり、前記SiOR官能基が前記第1のジエンエラストマーの鎖末端に位置
せず、-45℃未満のガラス転移温度を有する、スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)である、5~95phrの前記第1のジエンエラストマーと、
ポリイソプレンである、5~95phrの第2のジエンエラストマー
とを含んでなるエラストマーマトリックス;及び
- 45phrより多い補強用無機充填剤を含んでなる補強用充填剤を少なくともベースとするゴム組成物。
【請求項8】
前記エラストマーマトリックスが、10~90phrの前記第1のジエンエラストマーと、10~90phrの前記第2のジエンエラストマーとを含んでなるものである、請求項
7に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、タイヤトレッド用ゴム組成物の分野である。
【背景技術】
【0002】
近年、舗装路(以下、オンロード)、例えばアスファルト路上で高グリップ、特にウェットグリップを有するタイヤが自動車の使用者によって必要とされており、またタイヤ製造業者によって提案されている。
【0003】
平行して、タイヤが、轍又は未舗装路(以下、オフロード)、例えば泥及び岩などの物質から作られる轍上でも機能することは依然として重要である。
【0004】
タイヤ製造業者の目標は、単一タイヤ製品を用いて、オンロード条件下のみならず、オフロード条件下でも性能を一致させることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、研究の間に、タイヤトレッド用の特別なゴム組成物が、オンロード性能とオフロード性能との間の性能バランスの予想外の改善を可能にすることを発見した。
【0006】
本明細書中、他に特に明記されない限り、示される全ての百分率(%)は、質量百分率(質量%)である。
【0007】
「エラストマーマトリックス」という表現は、所与の組成物において、前記ゴム組成物中に存在するエラストマーの全てを意味すると理解される。
【0008】
「phr」という略語は、考慮されるゴム組成物中のエラストマーマトリックスの100質量部あたりの質量部を意味する。
【0009】
本明細書中、他に特に明記されない限り、それぞれのTgDSC(ガラス転移温度)は、規格ASTM D3418-08に従うDSC(示差走査熱量測定)による周知の方法で測定される。
【0010】
「aとbとの間」という表現によって示される値のいずれの間隔も、「a」より大きく、且つ「b」未満の値の範囲を表す(すなわち限界a及びbは除外される)が、「a~b」という表現によって示される値のいずれの間隔も、「a」から「b」まで及ぶ値の範囲を意味する(すなわち厳密な限界a及びbを含む)。
【0011】
「ベースとする」という表現は、本出願中、使用される様々な成分の反応の混合物及び/又は生成物を含んでなり、そのいくつかの成分は、組成物の様々な製造段階の間、特に加硫(硬化)の間に少なくとも部分的に一緒に反応することが可能であるか、又は一緒に反応するように意図される組成物を意味するものとして理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、Rが水素原子又は炭化水素基である少なくとも1つのSiOR官能基を有し、SiOR官能基が第1のジエンエラストマーの鎖末端に位置しない、5~95phrの第1のジエンエラストマーと、ポリイソプレンである、5~95phrの第2のジエンエラストマーとを含んでなるエラストマーマトリックス、及び45phrより多い(例えば、45~135phr)補強用無機充填剤を含んでなる補強用充填剤を少なくともベースとするゴム組成物を含んでなるトレッドを有するタイヤである。
【0013】
本発明によるタイヤのトレッドのゴム組成物は、オンロード性能とオフロード性能との間の性能バランスの予想外の改善を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のタイヤは、特に、4×4(四輪駆動)車両及びSUV(スポーツユーティリティ車両)車両を含む乗用自動車両、並びに特にバン及び大型車両(すなわちバス又は特殊車両(大型トラック、トラクター、トレーラー))から選択される工業用車両に装備されるように意図される。
【0015】
他に特に明記されない限り、それぞれの以下の態様、実施形態及び変形は、それぞれの好ましい範囲及び/又は事項を含めて、本発明の任意の他の態様、他の実施形態及び他の変形にも適用され得る。
【0016】
本発明によるタイヤのトレッドのゴム組成物は、エラストマーマトリックスをベースとする。
【0017】
「ジエン」型のエラストマー(又は大まかに「ゴム」、この2つの用語は同義語と見なされる)は、周知様式で、ジエンモノマー(共役又は非共役の2つの炭素-炭素二重結合を有するモノマー)から少なくとも部分的に誘導された(すなわち、ホモポリマー又はコポリマーの)(1つ又はそれ以上の)エラストマーとして理解されるべきである。
【0018】
これらのジエンエラストマーは、2つの分類に分類されてよい:「本質的に不飽和」又は「本質的に飽和」。一般に、「本質的に不飽和」という表現は、15%(モル%)より高いジエン由来単位(共役ジエン)の含有量を有する共役ジエンモノマーから少なくとも部分的に得られるジエンエラストマーを意味すると理解され;したがって、ブチルゴム又はEPDM型のジエン/α-オレフィンコポリマーなどのジエンエラストマーは、前述の定義下には含まれず、そして特に「本質的に飽和」なジエンエラストマー(常に15%未満の、低い又は非常に低いジエン由来単位の含有量)として記載され得る。「本質的に不飽和」なジエンエラストマーの分類において、「高度に不飽和」なジエンエラストマーという表現は、特に50%より高いジエン由来単位(共役ジエン)の含有量を有するジエンエラストマーを意味するものとして理解される。
【0019】
それはいずれの種類のジエンエラストマーにも適用されるが、タイヤ技術における当業者は、本発明が、本質的に不飽和なジエンエラストマーによって好ましく利用されることを理解するであろう。
【0020】
これらの定義を考慮すると、本発明による組成物中で使用可能であるジエンエラストマーという表現は、特に、
(a)- 好ましくは4~12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られるいずれかのホモポリマー;
(b)- 1つ又はそれ以上の共役ジエンと、互いとの、或いは好ましくは8~20個の炭素原子を有する1つ又はそれ以上のビニル芳香族化合物との共重合によって得られるいずれかのコポリマー
を意味すると理解される。
【0021】
以下は、共役ジエンとして特に適切である:1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、例えば2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエンなどの2,3-ジ(C1~C5アルキル)-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン又は2-メチル-3-イソプロプル-1,3-ブタジエン、アリール-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン又は2,4-ヘキサジエン。以下は、例えば、ビニル芳香族化合物として適切である:スチレン、オルト-、メタ-又はパラ-メチルスチレン、「ビニルトルエン」市販混合物、パラ-(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン又はビニルナフタレン。
【0022】
本発明によるタイヤのトレッドのゴム組成物中のエラストマーマトリックスは、少なくとも第1のジエンエラストマー及び第2のジエンエラストマーを含んでいる。
【0023】
第1のジエンエラストマーは、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(好ましくは、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)及びそれらの混合物からなる群から選択される)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択され得;そのようなコポリマーは、より好ましくは、スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)、イソプレン-スチレンコポリマー(SIR)及びそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、第1のジエンエラストマーはスチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)である。
【0024】
第1のジエンエラストマーは、使用される重合条件、特に変性及び/又はランダム化剤の存在又は非存在、並びに利用された変性及び/又はランダム化剤の量に依存する、いずれかの微細構造を有し得る。このエラストマーは、例えば、ブロック、統計的、連続的又はミクロ連続的エラストマーであり得、そして分散体又は溶液中で調製され得る。
【0025】
第1のジエンエラストマーは、Rが水素原子又は炭化水素基である、少なくとも1つのSiOR官能基を有する。
【0026】
「炭化水素基」という表現は、炭素及び水素原子から本質的になる一価の基を意味する。そのような基は少なくとも1つのヘテロ原子を含んでなり得、そして炭素及び水素原子によって形成された集合体が炭化水素基、例えばアルキル又はアルコキシアルキル中の主要留分を表すことが知られており;好ましくは炭素及び水素原子によって形成された集合体は、炭化水素基、例えばアルキルの全部を表す。そのようなSiOR(Rはアルキル又はアルコキシアルキルである)は、「アルコキシシラン」官能基として記載される。一方、SiOH(Rは水素原子である)は「シラノール」官能基として記載される。
【0027】
第1のジエンエラストマーに含まれるSiOR官能基は、第1のジエンエラストマーの鎖末端に位置しない。
【0028】
本発明の第2の態様は、第1の態様によるタイヤであって、第1のジエンエラストマーに含まれるSiOR官能基がペンダント基であるものであり、これは、SiOR官能基のケイ素原子が第1のジエンエラストマーのエラストマー鎖の炭素-炭素結合間に挿入されないことを意味することと等しい。例えば、ペンダントのSiOR官能基を有するジエンエラストマーは、アルコキシシラン基を有するシランによるエラストマー鎖のヒドロシリル化と、それに続いて、アルコキシシラン官能基の加水分解によってSiOR官能基を得ることによって調製される。
【0029】
本発明の第3の態様は、第1の態様によるタイヤであって、第1のジエンエラストマーに含まれるSiOR官能基がいかなるペンダント基でもないが、エラストマー鎖中に位置する、すなわち、エラストマー鎖内にあるものであり、これは、SiOR官能基のケイ素原子が第1のジエンエラストマーのエラストマー鎖の炭素-炭素結合間に挿入されることを意味することと等しい。そのようなジエンエラストマーは、欧州特許第2285852号明細書に記載の手順に従って調製される。このような第2の変形は好ましく、そして第1の態様に適用される。
【0030】
本発明の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つによるタイヤであって、第1のジエンエラストマーが、スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)であり、好ましくは、溶液中で調製されたブタジエン及びスチレンのコポリマーである溶液スチレン-ブタジエンコポリマーであるものである。
【0031】
本発明の第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つによるタイヤであって、第1のジエンエラストマーが少なくとも1つのアミン官能基、好ましくは少なくとも1つの第三級アミン官能基をさらに有するものである。
【0032】
第5の態様の好ましい実施形態によれば、第1のジエンエラストマーに含まれるアミン官能基は第三級アミン官能基であり得る。第三級アミン官能基としては、C1~C10アルキル基、好ましくはC1~C4アルキル、より好ましくはメチル又はエチル基によって置換されたアミンが挙げられるであろう。
【0033】
一般に、エラストマー、特にジエンエラストマーに含まれるそのような官能基は、エラストマー鎖末端上に位置してもよく、又はエラストマー鎖末端に位置しなくてもよく、すなわち、鎖末端から離れていてもよい。例えば、官能基を有する重合開始剤を使用して、又は官能化剤を使用してジエンエラストマーが調製される場合、第1のケースが生じる。例えば、官能基を有するカップリング剤又は星形分岐剤を使用することによってジエンエラストマーが変性される場合、第2のケースが生じる。
【0034】
本実施形態又は第5の態様の好ましい実施形態によれば、第1のジエンエラストマーに含まれるアミン官能基はペンダント基であってよい。アミン官能基のペンダント位は、周知の様式で、アミン官能基の窒素原子が第1のジエンエラストマーのエラストマー鎖の炭素-炭素結合間に挿入され得ないことを意味する。
【0035】
本発明の第6の態様は、第5の態様によるタイヤであって、SiOR官能基がアミン官能基を有するものである。
【0036】
そのようなジエンエラストマーは、エラストマー鎖、欧州特許第2285852号明細書に記載の操作手順によるアミン官能基を有するアルコキシシラン基を導入するカップリング剤によるジエンエラストマーの変性から得られ得る。以下は、例えばカップリング剤として適切である:本発明の実施形態とは無関係に、N,N-ジアルキルアミノプロピルトリアルコキシシラン、C1~C10、好ましくはC1~C4ジアルキル基、化合物3-(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3-(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、3-(N,N-ジエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3-(N,N-ジエチルアミノプロピル)トリエトキシシランが最も特に好ましい。
【0037】
本発明の第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか1つによるタイヤであって、SiOR官能基のRが炭化水素基であるものである。
【0038】
第7の態様の好ましい実施形態によれば、炭化水素基は、アルキル基、好ましくは1~12個の炭素原子を有するアルキル基、より好ましくは1~12個の炭素原子、なおより好ましくは1~6個の炭素原子、特に1~4個の炭素原子を有する分枝鎖、直鎖又は環式アルキル基、より特にメチル又はエチル基であってよい。
【0039】
本発明の第8の態様は、第1~第7の態様のいずれか1つによるタイヤであって、第1のジエンエラストマーが-40℃未満(特に-100℃~-40℃)、有利には-45℃未満(特に-90℃~-45℃)のガラス転移温度(TgDSC)を有するものである。
【0040】
本発明の第9の態様は、第1~第8の態様のいずれか1つによるタイヤであって、エラストマーマトリックスが、10~90phr、好ましくは15~85phr、より好ましくは20~80phr、なおより好ましくは25~75phrの第1のジエンエラストマーを含んでなるものである。
【0041】
第2のジエンエラストマーは、第1のジエンエラストマーとは異なるポリイソプレンエラストマーである。
【0042】
本発明の第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか1つによるタイヤであって、エラストマーマトリックスが、10~90phr、好ましくは15~85phr、より好ましくは20~80phr、なおより好ましくは25~75phrの第2のジエンエラストマーを含んでなるものである。
【0043】
本発明の好ましい実施形態によれば、第2のジエンエラストマーは、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリイソプレンであってよい。合成ポリイソプレンは、好ましくは90%より高い、より好ましくは98%より高いcis-1,4-単位の含有量(モル%)を有する合成cis-1,4-ポリイソプレンであってよい。
【0044】
本発明の第11の態様は、第1~第10の態様のいずれか1つによるタイヤであって、第2のジエンエラストマーが主に天然ゴムを含んでなる、すなわち、第2のジエンエラストマーが、第2のジエンエラストマーの100質量%あたり50質量%より多くの天然ゴムを含んでなるものである。
【0045】
本発明の第12の態様は、第1~第11の態様のいずれか1つによるタイヤであって、第2のジエンエラストマーが天然ゴムであるものである。
【0046】
本発明の第13の態様は、第1~第12の態様のいずれか1つによるタイヤであって、第1のジエンエラストマー及び第2のエラストマーの全含有量が90phrより多い、より好ましくは95phrより多いものである。
【0047】
本発明の第14の態様は、第13の態様によるタイヤであって、第1のジエンエラストマー及び第2のエラストマーの全含有量が100phrであるものである。
【0048】
本発明によるタイヤのトレッドのゴム組成物は補強用充填剤をベースとする。
【0049】
補強用充填剤は、補強用無機充填剤(例えばシリカ)、補強用有機充填剤(例えばカーボンブラック)、又はそれらの混合物を含んでなってよい。
【0050】
「補強用無機充填剤」という表現は、本明細書中、その色及びその由来(天然又は合成)にかかわらず、いずれかの無機又は鉱物充填剤を意味するものとして理解されるべきであり、カーボンブラックとは対照的に、「白色充填剤」、「透明充填剤」又は「非黒色充填剤」とも記載され、単独で、中間カップリング剤以外の手段を用いずに、タイヤの製造のために意図されるゴム組成物を強化することが可能であり、言い換えると、その強化の役割において、従来のタイヤグレードカーボンブラックと置き換えることが可能である。そのような充填剤は、一般に、その表面のヒドロキシル(-OH)基の存在によって、周知の様式で特徴づけられる。
【0051】
この充填剤の存在下での物理的状態は、それが粉末、ミクロビーズ、顆粒の形態又はいずれかの他の適切な密集化形態であるかどうかにかかわらず、重要ではない。もちろん、種々の補強用無機充填剤、好ましくは高度に分散可能なシリカ及び/又はアルミナ充填剤の混合物の補強用無機充填剤が以下に説明される。
【0052】
シリカ型、好ましくはシリカ(SiO2)及び/又はアルミナ型、好ましくはアルミナ(Al2O3)の鉱物充填剤は、補強用無機充填剤として特に適切である。
【0053】
本発明によるタイヤのトレッドのゴム組成物中の補強用充填剤は、45phrより多い(例えば45~135phr)の補強用無機充填剤を含んでなる。
【0054】
本発明の第15の態様は、第1~第14の態様のいずれか1つによるタイヤであって、補強用充填剤が、50phrより多く(例えば50~130phr)、好ましくは55phrより多く(例えば55~125phr)、より好ましくは少なくとも60phr(例えば60~120phr)の補強用無機充填剤を含んでなるものである。
【0055】
本発明の第16の態様は、第1~第15の態様のいずれか1つによるタイヤであって、補強用無機充填剤が主にシリカを含んでなり、すなわち、補強用無機充填剤が、補強用無機充填剤の100質量%あたり50質量%より多くのシリカを含んでなるものである。
【0056】
本発明の第17の態様は、第16の態様によるタイヤであって、補強用無機充填剤がシリカであるものである。
【0057】
ゴム組成物中の補強用充填剤の補強用無機充填剤は、1種のシリカ、又はいくつかのシリカのブレンドをベースとしていてもよい。使用されるシリカは、当業者に既知のいずれの補強用シリカ、特に両方とも450m2/g未満、好ましくは20~400m2/gのBET表面積及びCTAB比表面積を有するいずれの沈殿又は発熱原性シリカであってもよい。そのようなシリカは被覆されていても、されていなくてもよい。低比表面積シリカとして、Elkem Silicon MaterialsからのSidistar R300が挙げられるであろう。高度に分散可能な沈殿シリカ(「HDS」)として、例えば、Evonikからの「Ultrasil 7000」及び「Ultrasil 7005」、Rhodiaからの「Zeosil 1165 MP」、「Zeosil 1135 MP」及び「Zeosil 1115 MP」、PPGからの「Hi-Sil EZ150G」、Huberからの「Zeopol 8715」、「Zeopol 8745」及び「Zeopol 8755」、又は特許出願国際公開第03/016387号パンフレットに記載される高比表面積を有するシリカが挙げられるであろう。発熱原性シリカとして、例えば、Cabotからの「CAB-O-SIL S-17D」、Wackerからの「HDK T40」、Evonikからの「Aeroperl 300/30」、「Aerosil 380」、「Aerosil 150」又は「Aerosil 90」が挙げられるであろう。そのようなシリカは被覆されていてもよく、例えば、Cabotからの「CAB-O-SIL TS-530」はヘキサメチルジアシラゼンによって被覆されていてよく、又は「CAB-O-SIL TS-622」はジメチルジクロロシランによって被覆されていてよい。
【0058】
当業者は、カーボンブラックなどの別の性質、特に有機性の補強用充填剤が、本項に記載された補強用無機充填剤と同等に充填剤として使用されてもよいが、ただし、この補強用充填剤が、シリカなどの無機層によって被覆されているか、又は他の様式で、その表面において、充填剤とエラストマーとの間の連結を形成するためにカップリング剤の使用を必要とする官能部位、特にヒドロキシルを含んでなることを条件とすることを理解するであろう。例として、特許出願国際公開第96/37547号パンフレット及び同第99/28380号パンフレットに記載されるようなタイヤ用のカーボンブラックが挙げられてもよい。
【0059】
本発明の第18の態様は、第1~第17の態様のいずれか1つによるタイヤであって、補強用充填剤が、25phr未満(例えば0~25phr)、好ましくは20phr未満(例えば1~20phr)、より好ましくは15phr未満(例えば1.5~15phr)、なおより好ましくは10phr未満(例えば2~10phr)のカーボンブラックをさらに含んでなるものである。
【0060】
示された範囲内では、補強用無機充填剤によって提供される典型的な性能、すなわち、低い履歴現象(減少した転がり抵抗)にさらなる悪影響を及ぼすことなく、着色特性(黒色顔料剤)及びカーボンブラックの抗UV特性の利点がある。
【0061】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、補強用充填剤の全含有量は、タイヤの強化と加工性との間のバランスをより良好にするために、50~140phr、好ましくは55~135phr、より好ましくは60~130phr、なおより好ましくは65~125phrであってよい。
【0062】
補強用無機充填剤をエラストマーマトリックス、例えばジエンエラストマーに連結するために、補強用無機充填剤(その粒子の表面)とエラストマーマトリックス、例えばジエンエラストマーとの間の化学及び/又は物理的特性の満足がいく連結を提供するように意図されるカップリング剤(又は結合剤)を周知の様式で使用することが可能である。このカップリング剤は少なくとも二官能性である。特に少なくとも二官能性のオルガノシラン又はポリオルガノシロキサンを使用することができる。
【0063】
例えば国際公開第03/002648号パンフレット、同第03/002649号パンフレット及び同第2004/033548号パンフレットに記載されるような、それらの特定の構造次第で「対称的」又は「非対称的」と記載されるシランポリスルフィドを特に使用することができる。
【0064】
特に適切なシランポリスルフィドは、次の一般式(I):
(I)Z-A-Sx-A-Z
{式中、
- xは2~8(好ましくは2~5)の整数であり;
- Aは二価炭化水素基(好ましくは、C
1~C
18アルキレン基又はC
6~C
12アリーレン基、より特にC
1~C
10、特にC
1~C
4アルキレン、特にプロピレン)であり;
- Zは次式:
【化1】
(式中、
- 未置換であるか又は置換され、且つ互いに同一であるか又は異なるR
1基は、C
1~C
18アルキル、C
5~C
18シクロアルキル又はC
6~C
18アリール基(好ましくはC
1~C
6アルキル、シクロヘキシル又はフェニル基、特にC
1~C
4アルキル基、より特にメチル及び/又はエチル)を表し、
- 未置換であるか又は置換され、且つ互いに同一であるか又は異なるR
2基は、C
1~C
18アルコキシル又はC
5~C
18シクロアルコキシル基(好ましくはC
1~C
8アルコキシル及びC
5~C
8シクロアルコキシルから選択される基、より好ましくはC
1~C
4アルコキシル、特にメトキシ及びエトキシから選択される基)を表し、特に適当である)の1つに相当する}に相当し、上記の定義には制限はない。
【0065】
上記式(I)に相当するアルコキシシランポリスルフィドの混合物の場合、特に通常商業的に入手可能な混合物に関して、「x」指数の平均値は、好ましくは2~5、より好ましくは約4の分数である。しかしながら、本発明は、例えばアルコキシシランジスルフィド(x=2)で有利に実行可能である。
【0066】
シランポリスルフィドの例として、例えば、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)又はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドなどのビス((C1~C4)アルコキシル(C1~C4)アルキルシリル(C1~C4)アルキル)ポリスルフィド(特にジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)が特に挙げられるであろう。これらの化合物の中で、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2のTESPTと省略されるビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、又は式[(C2HSO)3Si(CH2)3S]2のTESPDと省略されるビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが特に使用される。好ましい例として、特許出願国際公開第02/083782号パンフレット(又は米国特許第7217751号明細書)に記載される、ビス(モノ(C1~C4)アルコキシルジ(C1~C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド(特にジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)、より特にビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられるであろう。
【0067】
アルコキシシランポリスルフィド以外のカップリング剤として、特許出願国際公開第02/30939号パンフレット(又は米国特許第6774255号明細書)及び国際公開第02/31041号パンフレット(又は米国特許出願公開第2004/051210号明細書)に記載されるものなどの二官能性POS(ポリオルガノシロキサン)又はヒドロキシシランポリスルフィド(R2=上記式(I)中OH)、或いは例えば、特許出願国際公開第2006/125532号パンフレット、同第2006/125533号パンフレット及び同第2006/125534号パンフレットに記載されるものなどのアゾジカルボニル官能基を有するシラン又はPOSが特に挙げられるであろう。
【0068】
他のシランスルフィドの例として、例えば、特許又は特許出願、米国特許第6849754号明細書、国際公開第99/09036号パンフレット、国際公開第2006/023815号パンフレット、国際公開第2007/098080号パンフレット、国際公開第2008/055986号パンフレット及び国際公開第2010/072685号パンフレットに記載されるものなどの少なくとも1つのチオール(-SH)官能基(メルカプトシランと記載される)及び/又は少なくとも1つのブロックされたチオール官能基を有するシランが挙げられるであろう。
【0069】
もちろん、特に上記特許出願国際公開第2006/125534号パンフレットに記載されるような、上記カップリング剤の混合物も使用可能である。
【0070】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、カップリング剤の含有量は、好ましくは、補強用無機充填剤、特にシリカの100質量%あたり0.5~15質量%であってよい。
【0071】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、本発明によるタイヤのゴム組成物は、15phr未満(例えば、0.1~15phr)のカップリング剤をベースとしていてもよい。
【0072】
本発明によるタイヤのトレッドのゴム組成物は、例えば、保護剤、例えば抗オゾンワックス、化学的オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、可塑剤、粘着付与樹脂、メチレン受容体(例えばフェノールノボラック樹脂)又はメチレン供与体(例えばHMT若しくはH3Mヘキサメチレンテトラミン(HMT)若しくはヘキサメトキシメチルメラミン(H3M))、硫黄をベースとするか、又は硫黄及び/又はペルオキシド及び/又はビスマレイミドの供与体をベースとする架橋系、加硫促進剤、或いは加硫活性化剤などのタイヤ用のエラストマー組成物に一般に使用される通常の添加剤の全て又は一部をベースとしていてもよい。
【0073】
本発明の第19の態様は、第1~第18の態様のいずれか1つによるタイヤであって、ゴム組成物が、可塑剤、好ましくは5phrより多い(例えば5~50phr)可塑剤、より好ましくは10phrより多い(例えば10~40phr)可塑剤をさらにベースとするものである。
【0074】
本発明の第20の態様は、第19の態様によるタイヤであって、可塑剤が、液体可塑剤、炭化水素樹脂又はそれらの混合物、好ましくは液体可塑剤及び炭化水素樹脂、より好ましくは0~30phrの液体可塑剤及び0~30phrの炭化水素樹脂、なおより好ましくは0~15phrの液体可塑剤及び5~25phrの炭化水素樹脂を含んでなるものである。
【0075】
芳香族又は非芳香族の性質にかかわらず、いずれの伸展オイル、エラストマーマトリックス、例えばジエンエラストマーに対するその可塑化特性のために既知のいずれの液体可塑剤も、エラストマー及び補強用充填剤を希釈することによってマトリックスを軟化するための液体可塑剤として使用することができる。気圧下の周囲温度(20℃)において、これらの可塑剤又はこれらのオイルは多少粘着性であり、気圧下の周囲温度(20℃)において固体である可塑化炭化水素樹脂とは対照的に、液体(すなわち、注釈として、最終的にそれらの容器の形状を取る能力を有する物質)である。
【0076】
本発明の第21の態様は、第20の態様によるタイヤであって、液体可塑剤が、液体ジエンポリマー、ポリオレフィン系オイル、パラフィン系オイル、留出物芳香族抽出物(Distillate Aromatic Extract)(DAE)オイル、中度抽出溶媒和物(Medium Extracted Solvate)(MES)オイル、処理留出物芳香族抽出物(Treated Distillate Aromatic Extract)(TDAE)オイル、残留芳香族抽出物(Residual Aromatic Extract)(RAE)オイル、処理残留芳香族抽出物(Treated Residual Aromatic Extract)(TRAE)オイル、安全残留芳香族抽出物(Safety Residual Aromatic Extract)(SRAE)オイル、鉱油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤及びこれらの化合物からなる群から選択され、好ましくは、MESオイル、TDAEオイル、ナフテン系オイル、植物油及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、MESオイル、植物油及びそれらの混合物からなる群から選択され、さらにより好ましくは、植物油及びそれらの混合物からなる群から選択されるものである。植物油は、アマニ油、ベニバナ油、ダイズ油、トウモロコシ油、綿実油、ナタネ油、ヒマシ油、キリ油、マツ油、ヒマワリ油、ヤシ油、オリーブ油、ココナツ油、ピーナツ油及びグレープシードオイル、並びにそれらの混合物からなる群から選ばれるオイル、特に、ヒマワリ油、より特に60質量%より多く、なおより特に70質量%より多く、有利には80質量%より多く、より有利には90質量%より多く、なお有利には100質量%のオレイン酸を含有するヒマワリ油から製造されてよい。
【0077】
炭化水素樹脂は、本質的に炭素及び水素をベースとし、したがって、本来、ゴム組成物、例えばジエンエラストマー組成物中で混和性である、当業者に周知のポリマーである。それらは脂肪族又は芳香族、或いは脂肪族/芳香族型であることが可能であり、すなわち、脂肪族及び/又は芳香族モノマーをベースとする。それらは天然又は合成物であることが可能であり、且つ石油ベースであっても、又は石油ベースでなくてもよい(その場合、石油樹脂の名称でも知られる)。それらは、好ましくは排他的に炭化水素であり、すなわち、それらは炭素及び水素原子のみを含んでなる。
【0078】
好ましくは、「可塑化」される炭化水素樹脂は、次の特徴の少なくとも1つ、より好ましくは全てを示す:
- 20℃よりも高い(例えば20℃~100℃)、好ましくは30℃より高い(例えば30℃~100℃)、より好ましくは40℃より高い(例えば40℃~100℃)、なおより好ましくは45℃より高い(例えば45℃~100℃)、特に少なくとも50℃の(例えば少なくとも50℃であって及び100℃未満の)TgDSC;
- 400~2000g/モル(より好ましくは500~1500g/モル)の数平均分子量(Mn);
- 3未満、より好ましくは2未満の多分散性指数(PI)(注釈:PI=Mw/Mn;Mwは質量平均分子量である)。
【0079】
炭化水素樹脂のマクロ構造(Mw、Mn及びPI)は、立体排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定される:溶媒テトラヒドロフラン;温度35℃;濃度1g/l;フローレート1ml/分;注入前に0.45μmの多孔度を有するフィルターを通過させた溶液;ポリスチレン標準によるムーア較正;直列の3本の「Waters」カラムセット(「Styragel」HR4E、HR1及びHR0.5);示差屈折計(「Waters 2410」)による検出及びその関連操作用ソフトウェア(「Waters Empower」)。
【0080】
本発明の第22の態様は、第20の態様によるタイヤであって、炭化水素樹脂が、シクロペンタジエンホモポリマー又はコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエンホモポリマー又はコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、C5留分ホモポリマー又はコポリマー樹脂、C9留分ホモポリマー又はコポリマー樹脂、アルファ-メチルスチレンホモポリマー又はコポリマー樹脂、或いはそれらの混合物からなる群から選択されるものである。より好ましくは、上記コポリマー樹脂の中で、(D)CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、(D)CPD/テルペンコポリマー樹脂、(D)CPD/C5留分コポリマー樹脂、(D)CPD/C9留分コポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族コポリマー樹脂、テルペン/フェノールコポリマー樹脂、C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、C9留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂及びそれらの混合物からなる群から選択されるものが使用される。
【0081】
「テルペン」という用語は、本明細書中、周知の様式で、α-ピネン、β-ピネン、及びリモネンモノマーを組み合わせ;好ましくはリモネンモノマーが使用される。この化合物は、周知の様式で、3種の可能性ある異性体の形態で存在する:L-リモネン(左旋性鏡像体)、D-リモネン(右旋性鏡像体)又はジペンテン、すなわち、右旋性鏡像体及び左旋性鏡像体のラセミ体。例えば、スチレン、α-メチルスチレン、オルト-、メタ-若しくはパラ-メチルスチレン、ビニルトルエン、パラ-(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、又はC9留分(若しくはより一般的にはC8~C10留分)に起因するいずれかのビニル芳香族モノマーが、例えばビニル芳香族モノマーとして適切である。好ましくは、ビニル芳香族化合物は、スチレン、或いはC9留分(又はより一般にC8~C10の留分)から得られるビニル芳香族モノマーである。好ましくは、ビニル芳香族化合物は、考慮されるコポリマー中でモル分率として表される微小モノマーである。
【0082】
上記好ましい樹脂は当業者に周知であり、且つ商業的に入手可能であって、例えば、
- ポリリモネン樹脂:DRTによる品名「Dercolyte L120」(Mn=625g/モル;Mw=1010g/モル;PI=1.6;TgDSC=72℃)又はArizona Chemical Companyによる品名「Sylvagum TR7125C」(Mn=630g/モル;Mw=950g/モル;PI=1.5;TgDSC=70℃);
- C5留分/ビニル芳香族、特にC5留分/スチレン樹脂又はC5留分/C9留分、コポリマー樹脂:Neville Chemical Companyによる品名「Super Nevtac 78」、「Super Nevtac 85」又は「Super Nevtac 99」、Goodyear Chemicalsによる品名「Wingtack Extra」、Kolonによる品名「Hikorez T1095」及び「Hikorez T1100」或いはExxonによる品名「Escorez 2101」及び「ECR 373」;
リモネン/スチレンコポリマー樹脂:DRTによる品名「Dercolyte TS 105」又はArizona Chemical Companyによる品名「ZT115LT」及び「ZT5100」である。
【0083】
他の好ましい樹脂の例として、フェノール変性α-メチルスチレン樹脂を挙げてもよい。これらのフェノール変性樹脂を特徴づけるために、既知の様式で、「ヒドロキシル価」(標準ISO 4326に従って測定され、且つmg KOH/gで表される)と記載される数値が使用されることは忘れるべきではない。α-メチルスチレン樹脂、特にフェノールで変性されたものは当業者に周知であり、且つ商業的に入手可能であり、例えば、Arizona Chemical Companyによって品名「Sylvares SA 100」(Mn=660g/モル;PI=1.5;TgDSC=53℃);「Sylvares SA 120」(Mn=1030g/モル;PI=1.9;TgDSC=64℃);「Sylvares 540」(Mn=620g/モル;PI=1.3;TgDSC=36℃;ヒドロキシル価=56mg KOH/g);及び「Sylvares 600」(Mn=850g/モル;PI=1.4;TgDSC=50℃;ヒドロキシル価=31mg KOH/g)で販売されるものである。
【0084】
これらの組成物は、カップリング剤が使用される場合、カップリング活性化剤、補強用無機充填剤の被覆用薬剤、又は周知の様式でゴムマトリックス中の充填剤の分散性を改善し且つ組成物の粘度を低下させることによって、原料状態におけるそれらの加工性を改善することのできるより一般的な加工助剤もベースとすることができ;これらの薬剤は、例えば加水分解性シラン、例えばアルキルアルコキシシラン、ポリオール、ポリエーテル、アミン又はヒドロキシル化若しくは加水分解性ポリオルガノシロキサンである。
【0085】
本発明によるタイヤのトレッドのゴム組成物は、当業者に周知の2つの連続調製段階:110℃~190℃、好ましくは130℃~180℃の最大温度までの高温での熱機械的加工又は混練の第1段階(「非生産的」段階として記載される)と、それに続く、典型的に110℃未満、例えば40℃~100℃のより低い温度での機械加工の第2段階(「生産的」段階として記載される)と、架橋又は加硫系が組み込まれる仕上げ段階を使用して、適切な混合機中で製造されてよい。
【0086】
そのような組成物の製造のために使用することができるプロセスは、例えば、そして好ましくは、次のステップ:
- 第1の段階(「非生産的」段階)の間、混合機中で補強用充填剤をエラストマーマトリックス、例えば、ジエンエラストマー中に組み込むステップであって、110℃~190℃の最大温度に達するまで、(例えば1つ又はそれ以上のステップにおいて)全てを熱機械的に混練するステップと;
- 組み合わせた混合物を100℃未満の温度まで冷却するステップと;
- その後、(「生産的」段階として記載される)第2の段階において、架橋系を組み込むステップと;
- 110℃未満の最大温度まで、全てを混練するステップと;
- 特にタイヤトレッドの一部の形態で、そのようにして得られたゴム組成物を押出成形又はカレンダー加工するステップと
を含んでなる。
【0087】
例として、第1の(非生産的な)段階は、単一熱機械的段階において実行され、その間、全ての必要な成分が、標準的な密閉式混合機などの適切な混合器中に導入され、続いて、第2のステップにおいて、例えば、1~2分の混練後、架橋系を除き、他の添加剤、任意選択的な追加の充填剤被覆剤又は加工助剤が導入される。全混練時間は、この非生産的段階において、好ましくは1~15分である。
【0088】
そのようにして得られた混合物を冷却後、次いで、一般的にオープンミルなどの外部混合機中に低温(例えば40℃~100℃)で架橋系を組み込み;次いで、組み合わせた混合物を数分間、例えば2~15分で混合する(第2の(生産的)段階)。
【0089】
架橋系は、好ましくは、硫黄及び一次加硫促進剤、特にスルフェンアミド型促進剤をベースとする。このような加硫系に、酸化亜鉛、ステアリン酸、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)などの種々の既知の二次促進剤又は加硫活性化剤が添加され、これらは、第1の非生産的段階の間及び/又は生産的な段階の間に組み込まれる。硫黄の含有量は、好ましくは0.5~10.0phrであり、且つ一次促進剤の含有量は、好ましくは0.5~5.0phrである。
【0090】
促進剤として(一次又は二次)、硫黄の存在下、エラストマーマトリックス、例えば、ジエンエラストマーの加硫の促進剤として作用することが可能ないずれの化合物、特にチアゾール型及びそれらの誘導体の促進剤、チウラム型の促進剤又はジチオカルバミン酸亜鉛も使用されてよい。これらの促進剤は、より好ましくは、(「MBTS」と省略される)2-メルカプトベンゾチアジルジスルフィド、(「CBS」と省略される)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「DCBS」)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「TBBS」)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンイミド(「TBSI」)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(「ZBEC」)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(「TBZTD」)及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0091】
そのようにして得られた最終組成物は、その後、例えば特に研究室特徴決定のために、シート又はプラークの形態でカレンダー加工されるか、或いは直接タイヤの一部として使用することが可能なゴムのプロフィール化された要素の形態で押出成形される。
【0092】
加硫(又は硬化)は、特に硬化温度、採用された加硫系及び考慮中の組成物の加硫動力学次第で例えば5~90分で変動可能である十分な時間、一般に110℃~190℃の温度において、既知の様式で実行される。
【0093】
本発明によるタイヤのトレッドのゴム組成物は、種々の配合物のいくつかのゴム組成物から形成される複合体型のトレッドの場合、本発明によるトレッドの全て又は一部のみを構成することが可能である。
【0094】
本発明は、原料状態(すなわち、硬化前)及び硬化状態(すなわち、架橋又は加硫後)の両方の上記ゴム組成物及びトレッドに関する。
【0095】
本発明は、上記ゴム組成物が複合体又はハイブリッド型、特に後者の実用寿命の間、タイヤの回転時に道路と接触するようにパターン化及び意図される、異なる配合物の2つの放射状に配置された層からなるトレッド(「キャップ-ベース」構造と記載される)の一部のみを形成する場合にも当てはまる。次いで、上記配合物のベース部分は、新しいタイヤが回転を開始する瞬間から地面と接触するように意図されるトレッドの放射状の外層、又は他方、より遅い段階で地面と接触するように意図されるその放射状の内層を構成することができる。
【0096】
本発明の第23の態様は、Rが水素原子又は炭化水素基である少なくとも1つのSiOR官能基を有し、SiOR官能基が第1のジエンエラストマーの鎖末端に位置しない、5~95phrの第1のジエンエラストマーと、ポリイソプレンである、5~95phrの第2のジエンエラストマーとを含んでなるエラストマーマトリックス;及び45phrより多い(例えば45~135phr)補強用無機充填剤を含んでなる補強用充填剤を少なくともベースとするゴム組成物である。
【0097】
本発明は次の非限定的な実施例によってさらに例証される。
【実施例】
【0098】
シリカ(補強用無機充填剤として)及びカーボンブラックのブレンドで強化されたジエンエラストマー(SiOR官能基を有するSBR)又はジエンエラストマーのブレンド(SiOR官能基を有するSBR及びポリイソプレンとして天然ゴム)をベースとする3種のゴム組成物を調製した。phrで表される種々の生成物の含有量とともに3種のゴム組成物の配合を表1に示す。
【0099】
それぞれのゴム組成物は次のように製造した:補強用充填剤、その関連カップリング剤、エラストマーマトリックス、及び加硫系以外の種々の他の成分を約60℃の初期容器温度を有する密閉式混合機中に連続的に導入し;したがって、混合機は約70%が満たされた(体積%)。次いで、熱機械的加工(非生産的段階)を1つの段階において実行し、これは165℃の最大「滴下」温度に達するまで、合計約3~4分間で続く。そのようにして得られた混合物を回収し、そして冷却し、そして次いで20~30℃において外部混合機(ホモフィニッシャー)上で硫黄及びスルフェンアミド型促進剤を組み込み、全てを適切な時間(例えば5~12分)混合した(生産的段階)。
【0100】
次に、そのようにして得られたゴム組成物を、それらの物理的又は機械的特性の測定のために、ゴムのシート(厚さ2~3mm)又は微細シートの形態で、或いは例えばタイヤ半仕上げ製品として、特にタイヤトレッドとして所望の寸法に切断及び/又は組立て後、直接使用可能であるプロフィール化された要素の形態でカレンダー加工した。
【0101】
引裂き強度の測定として、試験試料を約2.5mmの厚さで硬化されたプラークから切断した。試験の前に、(試験方向に対して垂直に)ノッチを試料中に作成した。Instron 5565 Uniaxial Testing Systemを使用して、力及び破断点伸びを測定した。クロスヘッド速度は500mm/分であった。試料を60℃で試験した。結果をベース100で表す。すなわち、値100は、参照(C-1)の破断における力(MPa)*破断点伸び(%)と等しい引裂き強度指数に任意に割り当てられ、そしてゴム組成物の値を表2に示す。値が高いほど、引裂きに対する材料の影響は低く、すなわち、オフロードの走行時の耐久性が高くなる。
【0102】
動的特性の測定において、規格ASTM D 5992-96に従って、粘度分析器(Metravib VA4000)上でそれぞれのゴム組成物のtan(δ)最大を測定した。10Hzの周波数、0℃において簡易交換シヌソイド剪断応力を受けた加硫組成物の試料(厚さ4mm及び断面積400mm2を有する円筒状試験片)の応答を記録した。0.7MPaにおける定応力で歪み振幅スイープを実行した。結果をベース100で表す。すなわち、値100は、参照(C-1)の0℃におけるtan(δ)値に任意に割り当てられ、そしてゴム組成物の値を表2に示す。値が高いほど、タイヤのウェットグリップは良好である。
【0103】
表2からの結果は、本発明によるゴム組成物(C-2及びC-3)が、参照(C-1)よりも、これらの性能の予想外に改善されたバランスを有することを実証する。
【0104】
結論として、本発明によるゴム組成物は、オンロード性能とオフロード性能との間の性能バランスの改善を可能にする。
【0105】
【0106】