(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】位置並びにヨー、ロール及びピッチの回転運動を用いて船舶の係留をモニタするシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B63B 21/00 20060101AFI20240110BHJP
B63B 43/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B63B21/00 Z
B63B43/00 Z
(21)【出願番号】P 2021522015
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 IB2019001462
(87)【国際公開番号】W WO2020161517
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-10-17
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504191741
【氏名又は名称】テクニップ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】シェルニグイン,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】シダルタ,ジョニ,エカ
(72)【発明者】
【氏名】ギョン,チョヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ホ,ジュン
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0186652(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0023366(US,A1)
【文献】特開昭62-046797(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0115622(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0084302(US,A1)
【文献】特開昭60-033189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 21/00
B63B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体式の船体と、少なくとも1本の係留ラインが連結されている係留ポイントを有するアンカーとの間に連結されている少なくとも1本の係留ラインを備えた、前記船体のための係留システムにおける変化をモニタする方法であって、
前記船体の位置決めポイントの地理的位置を決定して記録し、基準地理的位置を定め、 前記基準地理的位置での前記船体の少なくとも1つのタイプの関連する回転運動を決定して記録し、関連する基準船体回転運動を定め、
動作中の地理的位置及び関連する船体回転運動を、破損していない係留システムに対応する基準地理的位置及び関連する基準船体回転運動の基準データと比較して、前記係留ラインの剛性、前記係留ラインの予張力、前記アンカーの位置又はこれらの組み合わせの変化を示すことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記回転運動は、前記船体のヨー運動、ロール運動及びピッチ運動、並びにこれらのあらゆる組み合わせの内の少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
動作中の地理的位置及び関連する船体回転運動を前記基準地理的位置及び関連する基準船体回転運動の基準データと比較する際に、慣性運動ユニットを使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記慣性運動ユニットを使用する際に、前記慣性運動ユニットの加速度計、ジャイロスコープ及び磁気計の内の少なくとも1つを使用することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記慣性運動ユニットを使用する際に、前記慣性運動ユニットの加速度計、ジャイロスコープ及び磁気計の内の少なくとも1つを前記船体の軸芯毎に使用することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
動作中の地理的位置及び関連する船体回転運動を前記基準地理的位置及び関連する基準船体回転運動の基準データと比較する際に、前記船体のヨー運動、ロール運動及びピッチ運動又はこれらのあらゆる組み合わせの内の複数を比較することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基準地理的位置での前記船体の少なくとも1つのタイプの関連する回転運動を決定して記録し、関連する基準船体回転運動を定める際に、前記基準地理的位置での前記船体の移動の複数の自由度を決定し、
動作中の地理的位置及び関連する船体回転運動を前記基準地理的位置及び関連する基準船体回転運動の基準データと比較する際に、前記動作中の地理的位置での前記船体の移動の複数の自由度を決定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
動作中の地理的位置及び関連する船体回転運動を、破損した係留システムに対応する基準データと比較して、変化した係留ライン又はアンカーを示すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記位置決めポイントの少なくとも1つの地理的位置を衛星測位システムによって決定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記動作中の地理的位置及び関連する船体回転運動を、動作中の環境条件と無関係に前記基準地理的位置及び関連する基準船体回転運動と比較することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
慣性運動ユニットを用いて前記地理的位置の少なくとも1つを決定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記船体の動作中の地理的位置を予測される地理的位置と比較する際に、予測される地理的位置からの前記船体の変位を測定することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記船体の一組の予測される地理的位置及び関連する船体回転運動を有する前記基準データの少なくとも一部を定めるために、前記船体の地理的位置及び関連する船体回転運動を経時的に記録し、
動作中の地理的位置及び関連する船体回転運動を、前記船体の一組の予測される地理的位置及び関連する船体回転運動と比較することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記船体の地理的位置及び関連する船体回転運動を経時的に記録して、前記船体の動きの影響を直接受ける前記船体の部品の疲労を累積することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1の方法を実行するように構成されていることを特徴とするデータ処理システム。
【請求項16】
請求項1の方法を実行するために命令をデータ処理装置に与えるように構成されていることを特徴とするコンピュータソフトウェア。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記方法が、
係留された
前記船体の
前記係留ラインの剛性変化、前記係留ラインの材料変形又はこれらの組み合わせをモニタする
さらなる方法であって、
前記船体は、前記係留ラインが連結されている
前記係留ポイントを有しており、
前記船体の
前記地理的位置及び少なくとも1つのタイプの関連する
前記船体回転運動を決定し、
前記地理的位置及び関連する
前記船体回転運動の決定された変化を使用して、前記係留ラインの
前記剛性変化を決定することを特徴とする
さらなる方法
を含む前記方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、前記方法が、
前記係留ラインが連結されている
前記係留ポイントを有する係留された
前記船体のライザ/エクスポートシステムの剛性変化をモニタする
さらなる方法であって、
前記船体の
前記地理的位置及び少なくとも1つのタイプの関連する
前記船体回転運動を決定し、
前記地理的位置及び関連する
前記船体回転運動の決定された変化を使用して、前記ライザ/エクスポートシステムの
前記剛性変化を決定することを特徴とする
さらなる方法
を含む前記方法。
【請求項19】
浮体式の船体のための係留システムにおける変化をモニタするシステムであって、
前記係留システムは、前記船体と、少なくとも1本の係留ラインが連結されている係留ポイントを有するアンカーとの間に連結されている少なくとも1本の係留ラインを備えており、
前記システムは、衛星測位装置及びデータ処理システムを備えており、
前記データ処理システムは、
前記衛星測位装置から前記船体の位置決めポイントの地理的位置を決定し、
所与の地理的位置での前記船体の少なくとも1つのタイプの関連する船体回転運動を決定し、
前記船体の地理的位置及び関連する船体回転運動を予側される一組のデータと比較して、前記係留ラインの剛性又は前記アンカーの変化を示す
ように構成されていることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、浮体式船舶のための係留システムに関する。具体的には、本開示は、船体の位置に関する回転運動に基づき、海上プラットフォーム、浮体式生産貯蔵・積出ユニット及び他の船舶を含む浮体式船舶の船体のための係留システムの状態のモニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
沖合でのオイル及びガスの生産分野では、船体を備えた様々な浮体式船舶を、一般に海底からの支持が現実的ではない深い水域で使用する。このような浮体式船舶として、例えば、浮体式掘削及び/又は生産ユニット(FPU) 、深喫水フロータ(DDF ,例えばスパー)、テンションレグプラットフォーム(TLP) 、半潜水型掘削船(Semi)、浮体式生産貯蔵・積出ユニット(FPSO)、浮体式貯蔵・積出ユニット(FSO) が含まれ、他の船舶も同様に係留され得る。典型的には、生産(及び掘削)のための浮体式船舶は、船舶の船体から取り付けられた多数の係留ラインによって海底に直接係留されるか、又は介在構造体から海底のアンカーに間接的に係留される。このようなアンカーは、典型的には浮体式船舶を所望の位置に保持するパイルアンカー、サクションアンカー又は従来型の自己埋設アンカーであってもよい。船舶の一部はタレットを備えており、タレットからライザ及び他の生産設備が水面下のウェルに連結される間、船舶自体はタレットの周囲を回転してもよい。タレットは、生産設備の安定性のために係留される。係留ラインシステムは、トート型、セミトート型、トート・カテナリー型又は純粋なカテナリー型のシステムとすることが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スパーのための典型的な係留システムの例が
図1及び
図2に示されている。
図1は、浮体式船舶に使用される典型的な係留システムを示す側面略図である。
図2は、浮体式船舶と共に典型的な係留システムを示す平面略図である。船舶2 は、係留システム4 を介して流れに伴って浮かんで移動することが可能である一方、相対的に安定した位置に保持される。複数の係留ライン6 が、海底8 に径方向の外側に引っ張られて、杭又は他のアンカー装置10の係留ポイント11(例えばアイ(eye) 又は他の取付手段)に保持される。多数の係留ラインは所与の側から延びることができ、ほとんどの場合、特に
図2に示されているように船舶から多数の方向に延びることができる。
【0004】
ラインが破損しているか、若しくは海底のアンカーポイントから解けているか、又はアンカーポイントが移動しているかを決定するために係留システムをモニタすることが重要である。このようにして1本の係留ライン又はアンカーポイントが破損した場合、船舶の位置への影響は特に顕著ではない場合があるが、更なる破損が船舶を係留から解放する、及び/又は生産に非常に重要なライザ/エクスポートシステムに破損を与える場合がある前に修復処置を講じることができるために、このような破損を早期に認識する必要がある。
【0005】
従来、ダイバー又はROV による検査中に、典型的な係留システムの破損を発見している。一部のシステムは、係留ラインに沿って傾斜計を設けるか、又は船舶の下に展開されるソナーを設けることにより、係留ライン、案内/支持設備又はテンションシステムにあるロードセル又は圧縮セルによって係留ラインの完全性をモニタする。このようなモニタリングシステムは、水中又は水域の近くに配置されることを考慮すると、費用がかかり、設置及び保守が複雑であり、破損を受けやすい。
【0006】
係留システムをモニタするための更なる代替例が、米国特許出願公開第2010/0186652 号明細書に記載されている。要約書には、船舶の係留システムをモニタする方法として、係留ポイントから離れた船舶の位置決めポイントの地理的位置を決定して、船舶の向きを決定することが記載されている。その後、決定された位置決めポイントの位置及び船舶の向きから、係留ポイントの地理的位置を計算する。係留ライン又はアンカーの破損を示すために、係留ポイントの位置を係留ポイントの少なくとも1つの予測位置と比較する。地理的位置は、流れの量及び方向、風速及び風向などの環境条件によって異なるため、係留システムのモニタリングに関連する地理的位置のみでは、精度が限定され得る。
【0007】
船舶は、主に係留システムの剛性に関連した左右揺れ及び前後揺れ(水平変位)の固有周期を有する。係留システムによって、左右揺れの固有周期は方向(つまり、対象の船首が向いている方向と基準方向、例えば真北との間の角度として定められているような「向き」)に応じて変わる。様々な浮体式船舶は、様々な向きに様々な移動モードを有する。更に、
図2に示されているライザ12などのライザが典型的に設けられていることにより、より低次である程度方向に依存して固有周期の左右揺れに対して船舶が非対称的に傾く。
【0008】
2003年のテキサス州ヒューストンでのthe Offshore Technology Conference でOTC 15243-MSとして発表された「Mooring Design for Directional Spar Hull VIV」という題名の論文(https://www.onepetro.org/conference-paper/OTC-15243-MSで入手可能)には、スパーが沈められた船体の外面の周りで螺旋状のストレーキに嵌合される場合のスパー係留システムに対する渦励起振動(VIV) の影響、及び固有周期に対する影響が記載されている。この論文の2ページに、課される環境流の負荷及び方向に起因したスパーのオフセット並びに船体のVIV に起因した抗力負荷を計算する一方法論が記載されている。スパーの左右揺れの固有周期は、計算されたオフセット及び係留剛性に基づき決定され、左右揺れが係留ラインと一致しているか又は一致していないかに応じて変わる。係留システムの劣化をモニタすることを教示していない上記の論文に加えて、固有周期に関する上記の論文の態様だけでなく米国特許出願公開第2010/0186652 号明細書も、結果を達成すべく環境因子を必要とする。
【0009】
最近の米国特許第9671231 号明細書には、環境条件と無関係に固有周期の時間を使用して、浮体式船舶のための係留システムをモニタするシステム及び方法が開示されている。船舶の動きを測定することにより、固有周期を経験的且つ経時的に計算して及び/又は定めて、安全且つ無傷な係留システムの所与の地理的位置での固有周期を定めることができる。固有周期を時間に基づきモニタして、固有周期を完全なものにすることができる。係留ラインの完全性の破損、伸長、劣化などによる係留ラインの剛性の変化又はアンカーポイントの著しい変位が、異なる時間での異なる固有周期に変換される。理論値(及び/又は既に記録された値)と比較する所与の地理的位置(及び対応する向き)での固有周期をモニタすることにより、係留システムの少なくとも一部が故障しているか、又は重大な破損が発生しているかを評価することができる。所与の地理的位置(及び対応する向き)での固有周期を使用することにより、環境条件を直接考慮することが回避された。
【0010】
しかしながら、より簡素化されているが予測可能な係留モニタリングシステム及び方法を提供する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、環境条件を個別に知る必要がないヨー、ロール及び/又はピッチの一又は複数の船体回転運動を決定することにより、浮体式船舶の船体の係留システムをモニタするシステム及び方法を提供する。船体の動きを測定して所与の地理的位置での船体回転運動を特徴付けることにより、安全で無傷な係留システムの船体回転運動を経験的且つ経時的に計算する及び/又は定めることができる。例えば、ヨーをGPS モニタリングシステム又は他の位置決定システムによって決定することができ、ロール及び/又はピッチをセンサ、例えば傾斜計又は慣性測定ユニット、つまり「IMU 」としても知られている一若しくは複数の慣性運動ユニットによって経験的に決定することができる。この方法では、環境条件を個別にモニタする必要がない。むしろ、船舶船体が係留されている間に船舶船体の浮体性能を直接測定することにより、変数を決定することができる。破損した係留システムにより、ヨー、ロール及び/又はピッチの内の少なくとも1つの異なる船体回転運動が生じる。係留ラインの完全性の破損、伸長、劣化又はアンカーポイントの著しい変位は、船体のヨー、ロール及び/又はピッチの様々な値に変換される。理論値(及び/又は既に記録された値)と比較する所与の地理的位置での船体回転運動をモニタすることにより、係留システムの少なくとも一部が破損していることを評価し、少なくとも一部の実施形態では係留システムのどの部分が破損しているかを示すことが可能である。
【0012】
本開示は、浮体式の船体と、少なくとも1本の係留ラインが連結されている係留ポイントを有するアンカーとの間に連結されている少なくとも1本の係留ラインを備えた、前記船体のための係留システムにおける変化をモニタする方法であって、前記船体の位置決めポイントの地理的位置を決定して記録し、基準地理的位置を定めて、前記基準地理的位置での前記船体の少なくとも1つのタイプの関連する回転運動を決定して記録し、関連する基準船体回転運動を定め、動作中の地理的位置及び関連する船体回転運動を、破損していない係留システムに対応する基準地理的位置及び関連する基準船体回転運動の基準データと比較して、前記係留ラインの剛性、前記係留ラインの予張力、前記アンカーの位置又はこれらの組み合わせの変化を示すことを特徴とする方法を提供する。
【0013】
本開示は、係留された船体の係留ラインの剛性変化、前記係留ラインの材料変形又はこれらの組み合わせをモニタする方法であって、前記船体は、前記係留ラインが連結されている係留ポイントを有しており、前記船体の地理的位置及び少なくとも1つのタイプの関連する船体回転運動を決定し、前記地理的位置及び関連する船体回転運動の決定された変化を使用して、前記係留ラインの剛性変化を決定することを特徴とする方法を更に提供する。
【0014】
本開示は、係留ラインが連結されている係留ポイントを有する係留された船体のライザ/エクスポートシステムの剛性変化をモニタする方法であって、前記船体の地理的位置及び少なくとも1つのタイプの関連する船体回転運動を決定し、前記地理的位置及び関連する船体回転運動の決定された変化を使用して、前記ライザ/エクスポートシステムの剛性変化を決定することを特徴とする方法を更に提供する。
【0015】
本開示は、浮体式の船体のための係留システムにおける変化をモニタするシステムであって、前記係留システムは、前記船体と、少なくとも1本の係留ラインが連結されている係留ポイントを有するアンカーとの間に連結されている少なくとも1本の係留ラインを備えており、前記システムは、衛星測位装置及びデータ処理システムを備えており、前記データ処理システムは、前記衛星測位装置から前記船体の位置決めポイントの地理的位置を決定し、所与の地理的位置での前記船体の少なくとも1つのタイプの関連する船体回転運動を決定し、前記船体の地理的位置及び関連する船体回転運動を予側される一組のデータと比較して、前記係留ラインの剛性又は前記アンカーの変化を示すように構成されていることを特徴とするシステムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
特許ファイル又は出願ファイルには、少なくとも1枚のカラー図面が含まれている。一又は複数のカラー図面を含むこの特許又は特許出願公報のコピーが、請求及び必要な料金の支払いにより特許庁から提供される。
【0017】
【
図1】浮体式船舶に使用される典型的な係留システムを示す側面略図である。
【
図2】浮体式船舶と共に典型的な係留システムを示す平面略図である。
【
図3】本明細書で使用されるヨー、ロール及びピッチのx軸、y軸及びz軸の座標系を示す概略図である。
【
図4】ここに記載されている図表で参照するための船体の例示的な係留システムを示す概略図である。
【
図5】本発明の船体回転運動係留モニタリングシステムと連結された例示的な船体を示す立面略図である。
【
図6】船体係留システムの状態をモニタするために船体のヨー、ロール及び/又はピッチを使用する例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図7A】(白黒の
図7A’)
図4で参照された一又は複数の破損した係留ラインを有して水中で移動する係留システムを用いた船体のx軸の平均左右揺れ、y軸の平均前後揺れ及びz軸の平均ヨーに関して計算された回転運動モデルの例示的なプロットを示す3次元概略図表である。
【
図7B】(白黒の
図7B’)
図4で参照された一又は複数の破損した係留ラインを有して水中で移動する係留システムを用いた船体のx軸の平均左右揺れ及びy軸の平均前後揺れの
図7Aの計算された回転運動モデルの例示的なプロットを示す2次元概略図表である。
【
図8】(白黒の
図8’)
図4で参照された一又は複数の破損した係留ラインを有して水中で移動する係留システムを用いた船体のx軸の平均左右揺れ、y軸の平均前後揺れ及びz軸の平均ロールの計算された回転運動モデルの例示的なプロットを示す3次元概略図表である。
【
図9】(白黒の
図9’)
図4で参照された一又は複数の破損した係留ラインを有して水中で移動する係留システムを用いた船体のx軸の平均左右揺れ、y軸の平均前後揺れ及びz軸の平均ピッチの計算された回転運動モデルの例示的なプロットを示す3次元概略図表である。
【
図10】開示された実施形態に係る、船体回転運動を自動的に決定して船体回転運動をモニタするステップのためのコンピュータシステムの例を示す図である。
【
図11】コンピュータネットワーク上の一又は複数のサーバの内の1つとして使用されてもよい例示的なサーバを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述された図面、及び以下の具体的な構造及び機能に関する記載は、出願人の発明の範囲又は添付の特許請求の範囲を制限するために示されたものではない。むしろ、図面及び記載は、特許の保護が求められる本発明を行い使用するために当業者に教示すべく提供される。当業者は、本発明の商業上の実施形態の全ての特徴が明瞭化及び理解のために説明又は図示されていないことを認識する。本分野の当業者は、本開示の態様を組み込む実際の商業的な実施形態の開発が、開発者の商業的な実施形態の最終的な目的を達成すべく多くの実施に特有の決定を必要とすることを更に認識する。このような実施に特有の決定は、特定の実施又は場所又は時によって変わる場合があるシステム関連の制約、ビジネス関連の制約、政府関連の制約及び他の制約の順守を含み得るが、これらに限定されるものではない。開発者の努力は絶対的な意味で複雑であり手間がかかるかもしれないが、このような努力は、本開示の利点を有する本分野の当業者にとっての通常の業務である。本明細書に開示され教示された本発明は、多くの様々な調整及び代替的な形態が可能であることを理解する必要がある。「1つの」(a)のような(これには限定されないが)単数形の使用は、要素の数の制限を意図していない。更に、システムの様々な方法及び実施形態が、開示された方法及び実施形態の変形例をもたらすために互いに組み合わせられて含まれ得る。単数の要素の説明は複数の要素を含むことが可能であり、逆もまた可能である。少なくとも1つの要素の参照は一又は複数の要素を含んでもよい。更に、実施形態の様々な様態は、本開示の理解された目的に達成するために互いに関連して使用され得る。文脈状別の意味が求められない限り、「備える」(comprise)という用語、又は「備える」(comprises)又は「備えている」(comprising)のような変形は、少なくとも述べられた要素若しくはステップ又は1群の要素若しくはステップ若しくはそれらの等価物の包含を暗示しており、より多くの数、他の要素若しくはステップ又は1群の要素、ステップ若しくはそれらの等価物の排除を暗示していないことを理解すべきである。「連結された」(coupled )、「連結している」(coupling)、「連結器」(coupler )という用語及び同様の用語は、本明細書では広く使用されており、一又は複数個の部材を共に、例えば機械的に、磁気的に、電気的に、化学的に、作動的に、直接的に又は中間要素を介して間接的に固定する(securing)、結合する(binding )、接着する(bonding )、固定する(fastening )、取り付ける(attaching )、結合する(joining )、その中に挿入する(inserting therein )、その上又はその中に形成する(forming thereon or therein)、連通する(communicating)又は関連付ける(associating)ためのあらゆる方法又は装置を含んでもよく、1つの機能性部材を別の機能性部材と一体的に形成することを非限定的に更に含んでもよい。連結は、回転を含めてあらゆる方向で行われてもよい。装置又はシステムは、多くの方向及び向きに使用されてもよい。ステップの順序は、特に制限されていない場合、様々な順番であってもよい。本明細書に記載されている様々なステップは、他のステップと組み合わせられることが可能であり、述べられたステップに挿入されることが可能であり、及び/又は複数のステップに分割されることが可能である。いくつかの要素は簡略化のためにデバイス名によって特定されており、プロセッサのようなシステム又はセクションを含むと理解され、当業者に既知の関連する要素の処理システムを含み、具体的には述べられない場合がある。様々な例が、様々な機能を果たす明細書及び図面に与えられ、形状、サイズ、記載を制限しないが、本明細書に含まれる教示を仮定すれば、当業者に知られているように変わり得る例示的な構造として機能する。
【0019】
本開示は、環境条件に関係なく、船体のヨー、ロール若しくはピッチ又はこれらの組み合わせを用いて、浮体式船舶の船体のための係留システムをモニタするシステム及び方法を提供する。これらの変数は、係留ラインの完全性の簡略化されているが重要な決定要素を表す。例えば、ヨーは、GPS モニタリングシステム又は他の位置決定システムによって決定されることができ、ロール及び/又はピッチは、センサ、例えば傾斜計又は慣性測定ユニット、つまり「IMU 」としても知られている一若しくは複数の慣性運動ユニットによって経験的に決定されることができる。慣性測定ユニット(IMU )は、加速度計、ジャイロスコープ、場合によっては磁気計の組み合わせを使用して、本体の特定の力、角速度、場合によっては本体の向きを測定して報告することができる電子デバイスである。慣性測定ユニットは、一又は複数の加速度計を使用して直線加速度を検出して、一又は複数のジャイロスコープを使用して回転速度(角速度)を検出することにより作動する。一部の慣性測定ユニットは、向きの基準として一般的に使用される磁気計を更に含んでいる。典型的な構成には、ピッチ、ロール及びヨーの3つの主軸の夫々毎に1つの加速度計、ジャイロスコープ、場合によっては磁気計が含まれている。軸芯毎に加速度計及びジャイロスコープのみを使用する場合、6自由度の測定及び決定を行うことができ、軸芯毎に磁気計を追加する場合、9自由度の測定及び決定を行うことができる。この方法では、環境条件を直接モニタする必要がない。むしろ、船舶又は船舶の船体が係留されている間に船舶の船体の浮体性能を直接測定することにより、変数を決定することができる。係留ラインの完全性の破損、伸長、劣化などによる係留ラインの剛性の変化又はアンカーポイントの著しい変位は、船体のヨー、ロール及び/又はピッチの様々な値に変換される。例えば、船体のヨー、ロール又はピッチは、海の状態が低~中程度では係留ラインの完全性に関する優れた指標となり得るが、海の状態が高程度では、上記の変数の内の2以上を組み合わせて使用することにより、環境方向を知ることなく、より高い精度を得ることができる。船体のヨー角、ロール角及び/又はピッチ角を理論値(及び/又は既に記録された値)と比較して、係留システムの少なくとも一部が故障しているか、又は重大な損傷が発生しているかを評価することができる。
【0020】
図3は、本明細書で使用されるヨー、ロール及びピッチのx軸、y軸及びz軸の座標系を示す概略図である。船舶の運動は6自由度によって定められる。長手軸(船体の前-後又は船首-船尾)(x軸)、横軸(左-右又は左舷-右舷)(y軸)及び垂直軸(z軸)と称される3つの特有の軸芯があらゆる船舶にある。3つの運動は回転運動であり、3つの運動は並進運動である。長手軸、横軸及び垂直軸を中心とする3つの回転運動は夫々、ロール、ピッチ及びヨーとして知られている。ロールは、長手軸/x軸を中心とした船舶の傾斜回転である。ピッチは、横軸/y軸を中心とした船舶の上下回転である。ヨーは、垂直軸/z軸を中心とした船舶の回動回転である。長手軸、横軸及び垂直軸を中心とする3つの並進運動は、前後揺れ、左右揺れ及び上下揺れとして知られている。前後揺れは、長手軸/x軸に沿った直線運動である。左右揺れは、横軸/y軸に沿った直線運動である。上下揺れは、垂直軸/z軸に沿った垂直(上下)運動である。本発明は、船舶の係留システムをモニタすべく回転運動の使用に主に取り組んでいる。
【0021】
本発明では、係留システムの状態を決定するために船体2 の所与の位置での船体2 のヨー角、ロール角及び/又はピッチ角を単独で又は組み合わせて使用することができる。船舶2A自体が係留されるように海中に延びているライザ又は他の生産設備を有するほとんどの船舶2Aの場合、船舶の船体のヨー角、ロール角及びピッチ角は、本明細書では船体2 のヨー角、ロール角及びピッチ角として定められる。FPSOのような一部の船舶はタレット又は他の同様の生産構造体2Bを備えており、タレット又は他の同様の生産構造体2Bは自身から海中に延びているライザ及び他の生産設備を有している。これらの実施形態では、生産構造体は安定性のために一般に係留されており、船舶2Aは、生産構造体2Bに対して回転することができる。係留システムをモニタするために、生産構造体を中心としてより自由に回転する船舶2Aの動きより、生産構造体2Bの動きに注目する方がより適切である。このような実施形態では、生産構造体2Bのヨー角、ロール角及びピッチ角は、船体2 のヨー角、ロール角及びピッチ角として定められる。従って、本明細書で使用される「船体」は船舶船体、又は生産構造体が係留される場合には船舶の生産構造船体を指す。
【0022】
図4は、ここに記載されている図表で参照するための船体の例示的な係留システムを示す概略図である。この例では、船体2 が4つの係留群と共に示されている。係留群及び係留ラインの数は、使用される船舶に応じて変わり、所与の群が破損したときのヨー、ロール及びピッチの変化に関連する船体運動を示す以下の図表を説明するために例示されている。図面の向きを使用すると、係留群1(MG1) が船体の右下の位置に例示されている。係留群2(MG2) が船体の左下の位置に例示されている。係留群3(MG3) が船体の左上の位置に例示されている。係留群4(MG4) が船体の右上の位置に例示されている。
【0023】
図5は、本発明の船体回転運動係留モニタリングシステムと連結された例示的な船体を示す立面略図である。船体2 は、様々なタイプのアンカー装置10(ここでは「アンカー」)の係留ポイント11で海底8 に連結された係留ライン6 を有する係留システム4 を用いて係留されている。船体回転運動モニタリングシステム14は船体2 に連結され得る。本発明は「乾式」システムであることが想定されており、つまり、機器は水面上に設けられることができ、精密機器は例えば制御された環境に配置されてもよく、水中に設けられたシステムと比較すると、損傷の可能性が大幅に減少し、保守が容易である。或いは、船体回転運動モニタリングシステム14’の一又は複数の部分が船体から離れた場所に設けられることができ、例えばアンテナ16、ケーブル、レーザ、ファイバ又は他の通信手段を介してデータ、音声及び/又は他の送信情報若しくは受信情報のために船体と通信することができる。システム14は、あらゆる船体回転運動に関連付けられ得る船体位置を定めるための地理的位置決定デバイスを更に有することができる。例えば全地球測位システム(GPS) 又はディファレンシャル全地球測位システム(DGPS)を用いた衛星測位システム30によって地理的位置を決定することができる。
【0024】
図6は、船体の係留システムをモニタするために船体のヨー、ロール及び/又はピッチを使用する例示的な方法を示すフローチャートである。実際の船体位置及び関連する船体回転運動のデータが予測される(理論上及び/又は予め記録された)基準データと一致しているか否かを評価することがリアルタイムで可能である。船体回転運動モニタリングシステム14は、船体の船体回転運動と係留システムの状態との関係とに関してデータを処理して応答するために、プロセッサ、データベース及び入出力手段を有することができる。例えば、GPS 受信機又はDGPS受信機18を使用して、船体の地理的位置を様々な時点で追跡し、船体回転運動を時点に応じて分析することにより、その地理的位置での関連する船体回転運動を定めることができる。船体回転運動は、ヨー、ロール及び/又はピッチに関連付けられ得る。ジャイロスコープ18’を使用して、GPS 受信機18に加えて又はGPS 受信機18の代わりに方向を測定することができる。船体回転運動を測定するための、IMU を含む他のシステム及びデバイス18”を使用して、ステップ20で関連する位置での関連する船体回転運動を決定することができる。IMU は、例えば直線加速度を特に一定期間に亘って測定することにより、地理的位置の変化にも使用され得る。或いは、ステップ22で船体の既知の式及びパラメータを使用して、船体回転運動をステップ22で理論的にモデル化することができる。拡張後処理により、一定時間が経過した後、理論値を記録された実際値と置き換えることができ、従って、予測される地理的位置及び関連する船体回転運動の一般により正確で実際的な一組の基準データを得ることができる。モデル化された情報を与えて、ステップ20で決定された実際の船体回転運動と共に又は実際の船体回転運動の代わりに、ステップ24で所与の位置R
pでの船体回転運動を定めることができる。船体回転運動を定めると、システムは、ステップ26であらゆる変化に関して所与の地理的位置での動作中の船体回転運動を定期的にモニタすることができる。変化がない場合、システムは係留システムを後で再度モニタするように指示する。ステップ28で所与の地理的位置での船体回転運動に変化がある場合、システムは、ユーザ及び/又は、例えばシステムを船体制御/警報システムに連結するプロセッサ若しくは更なるアクションのための別のデバイスに変化を示すことができる。
【0025】
実際のデータが予測データと一致しないとみなされる場合、どの係留ライン又はアンカーに破損が発生したかを示すことが可能である。破損した係留システムに関して係留ラインの破損例(又は入手可能な場合は実際の値)を考慮して船体解析モデルを使用して計算された理論値を実際のデータと比較することにより、係留ライン又はアンカーを近似的に示してもよい。一部のシステムでは、他の係留ラインに自動的に変更して、係留システムの剛性を再度定めて、ひいては変化前の船体回転運動を再度定めることができる。
【0026】
係留ライン及びアンカーの破損の検出以上に、船体回転運動モニタリングシステム14は、例えばポリマーの係留ラインを使用するときに伸長/変形が生じて一又は複数の係留ラインに再度張力をかける必要があることを示すために使用され得る。例えば、船体の動作中の位置を基準位置と比較する際に、係留ラインのアンカーポイントからの船体の係留ポイントの距離を決定することができる。同様に、本発明を使用して、ライザ/エクスポートシステムの剛性の変化を関連付けることができる。更にモニタリングシステムを使用して、船体の部品の疲労を推定することができる。船体の地理的位置を平均位置周りの変化及び対応する回転運動と共に正確に記録することにより、モデル化に基づく基準データベースを使用した拡張後処理によって、船体の動きの影響を直接受ける船体の部品の疲労を累積することができる。この疲労解析により、実際の疲労消耗量を継続的に決定して、回転運動による関連する残余寿命を決定することが可能である。
【0027】
図7Aは、
図4で参照された一又は複数の破損した係留ラインを有して水中で移動する係留システムを用いた船体のx軸の平均左右揺れ、y軸の平均前後揺れ及びz軸の平均ヨーに関して計算された回転運動モデルの例示的なプロットを示す3次元概略図表である。
図7Bは、
図4で参照された一又は複数の破損した係留ラインを有して水中で移動する係留システムを用いた船体のx軸の平均左右揺れ及びy軸の平均前後揺れの
図7Aの計算された回転運動モデルの例示的なプロットを示す2次元概略図表である。図表は、所与の左右揺れ及び前後揺れに関連する船体回転運動の内の1つとしてヨーの変化を例示すべく5つのパターンを示す。パターンI(カラーで見たときの黒)は、係留ラインが無傷で設計どおりに機能しているときの船体回転運動を示す。係留ラインが無傷で設計どおりに機能しているとき、パターンIは図表の略中央に示される。パターンP1(カラーで見たときの青)は、MG1 の一又は複数の係留ラインが破損したときの変化した船体回転運動を示し、一般に船体回転運動は
図4に示されている係留概略図の左上に移される。パターンP2(カラーで見たときの緑)は、MG2 の一又は複数の係留ラインが破損したときの変化した船体回転運動を示し、一般に船体回転運動は
図4に示されている係留概略図の右上に移される。パターンP3(カラーで見たときの赤)は、MG3 の一又は複数の係留ラインが破損したときの変化した船体回転運動を示し、一般に船体回転運動は
図4に示されている係留概略図の右下に移される。パターンP4(カラーで見たときのピンク)は、MG4 の一又は複数の係留ラインが破損したときの変化した船体回転運動を示し、一般に船体回転運動は
図4に示されている係留概略図の左下に移される。
【0028】
パターンは一般に、動きが少なく海がより穏やかであることを示す中央のコアゾーン38を有する。報告する場合に調整処置を講じることができるように、海がより穏やかなコアゾーン38のヨーは、どの係留群が破損し、場合によっては深刻であるかを示すことができる。
図7A及び
図7Bに示されているように、報告する場合に調整処置を講じることができるように、海がより穏やかなコアゾーンの位置は、どの係留群が破損し、場合によっては深刻であるかを示す。より荒れている海では、左右揺れ及び/又は前後揺れが増加するので、コアゾーン38から延びている分散ゾーン40及び分散ゾーン42の分散データによって示されているように、パターンの強度が分散し始める。パターンが分散すると、パターンが重なり始めるので、異なる係留群のデータポイントが混じり合う。これらの条件下では、係留ラインの状態を決定して、係留ラインが破損している場合には一又は複数のどの係留ラインが破損しているかを決定するには、これらのモデル化された条件(及び同様に他の条件下の個々のロール及びピッチの他の回転運動)に対してヨーだけでは不十分となり得る。係留システムの完全性及びあらゆる破損した係留ラインの位置を更に明瞭化すべく、現在の回転運動に加えて又は現在の回転運動の代わりに他の回転運動の一又は複数を使用することができる。
【0029】
図8は、
図4で参照された一又は複数の破損した係留ラインを有して水中で移動する係留システムを用いた船体のx軸の平均左右揺れ、y軸の平均前後揺れ及びz軸の平均ロールの計算された回転運動モデルの例示的なプロットを示す3次元概略図表である。
図8は、
図7A及び
図7Bのヨーと同一の条件下での船体回転運動の1つとしてロールに注目しており、パターンが同様にラベル化されている。パターンは一般に、動きが少なく海がより穏やかであることを示す中央のコアゾーン38を有する。海がより穏やかなコアゾーンのロールは、調整処置を講じることができるように、どの係留群が破損し、場合によっては深刻であるかを示す。特にモデル化された条件では、より荒れている海では、左右揺れ及び/又は前後揺れが増加するので、コアゾーン38から延びている分散ゾーン40及び分散ゾーン42の分散データによって示されているように、パターンの強度が分散し始める。しかしながら、分散効果では、分散ゾーン42でのパターンP1の一部とパターンP2の一部との間の可能性がある重なり以外に、パターンは著しく重ならない。モデル化された条件では、パターンがより極端な条件で分散しても、互いに対してある程度の分離を依然として維持する。モデル化された条件下では、係留群の状態を決定して、係留群が破損している場合にはどの係留群が破損しているかを決定するには、ロールだけで十分となり得る。より高い精度が望ましい場合、係留システムの状態及びあらゆる破損した係留ラインの位置に関して更なる明瞭化のために他の回転運動パラメータの内の一又は複数を入力又は測定することができる。
【0030】
図9は、
図4で参照された一又は複数の破損した係留ラインを有して水中で移動する係留システムを用いた船体のx軸の平均左右揺れ、y軸の平均前後揺れ及びz軸の平均ピッチの計算された回転運動モデルの例示的なプロットを示す3次元概略図表である。
図9は、
図7A及び
図7Bのヨー並びに
図8のロールと同一の条件下での船体回転運動の1つとしてピッチに注目しており、パターンが同様にラベル化されている。パターンは一般に、動きが少なく海がより穏やかであることを示す中央のコアゾーン38を有する。特にモデル化された条件では、海がより穏やかなコアゾーンのピッチは係留群を対で分離するので、パターンP1及びパターンP4はパターンP2及びパターンP3から分離している。より荒れている海では、左右揺れ及び/又は前後揺れが増加するので、コアゾーン38から延びている分散ゾーン40及び分散ゾーン42の分散データによって示されているように、パターンの強度が分散し始める。しかしながら、分散効果では、一対のパターンP1及びパターンP4は、他の対のパターンP2及びパターンP3と著しく重ならない。モデル化された条件では、対のパターンがより極端な条件で分散しても、互いに対する分離を依然として維持する。モデル化された条件下では、一対の係留群の状態を決定して、一対の係留群が破損している場合にはどの係留群が破損しているかを決定するには、ピッチだけで十分となり得る。従って、実際のデータがパターンP1又はパターンP4と同様であるがパターンP2又はパターンP3ではないパターンを示した場合、オペレータは、可能性がある調整修理について係留群MG1 及び係留群MG4 に注目することを理解する。より高い精度が望ましい場合、係留システムの状態及びあらゆる破損した係留ラインの位置に関して更なる明瞭化のために他の回転運動パラメータの内の一又は複数を入力又は測定することができる。
【0031】
モデル化された条件からの結果を示す図表の例では、穏やかな海の場合の第1の解析として、係留システムの完全性に関して
図7A及び
図7Bに示されているようにヨーを解析してもよい。荒れた海では、ヨーの結果が混じり合うと、
図8に示されているようなロールが、係留群の状態の優れた指標であってもよく、係留群が破損している場合にはどの係留群を調整する必要があるかの優れた指標であってもよい。ロール解析により、パターンP1及びパターンP2から係留群MG1 若しくは係留群MG2 のいずれか又は係留群MG1 及び係留群MG2 の両方の破損状態が示されるが、
図8に示されているある条件での混じり合いにより、どちらの係留群か明瞭ではない場合、
図9に示されているようなピッチの更なる解析が役に立ち得る。
図9では、パターンP1及びパターンP2が異なる対に分離されるため、実際の結果が対の内の1つに該当する可能性があり、係留群MG1 又は係留群MG2 のどちらが破損しているかが識別される。要約すると、3つの回転運動の内の一又は複数を見ることにより、係留システムの完全性をモニタすることができる。破損した状態が発生した場合、モニタリングシステムは、報告する場合に検査して調整するために、どの係留群かを示すことができ、又は少なくともどの係留群かを絞り込むことができる。
【0032】
当然ながら、異なる数の係留群では、システムは、海洋条件による差異に加えてパターンの異なる結果、分散、重なり及びあらゆる対又は他の群を生成する。図面の図表は、係留システムの完全性を決定するために3つの船体回転運動を単独で及び/又は一若しくは複数の組み合わせで使用する概念を例示している。解析され得る回転運動の例としては、ヨー、ロール、ピッチ、ヨー及びロール、ヨー及びピッチ、ロール及びピッチ、並びにヨー、ロール及びピッチがある。
【0033】
図10は、開示された実施形態に係る、船体回転運動を自動的に決定して船体回転運動をモニタするステップのためのコンピュータシステムの例を示す。分かるように、システムは、ネットワーク接続104 を介してネットワーク106 に接続され得る少なくとも1つのユーザ処理装置102 を備えることができる。本例では、ユーザ処理装置102 はデスクトップコンピュータ、ノートブックコンピュータ、タブレット、スマートフォン又は他の処理装置であってもよく、ネットワーク接続104 は、有線及び/又は無線のネットワーク接続であってもよい。或いは、処理装置102 は、ネットワーク又はネットワークサーバとインターフェースで接続しないスタンドアロンシステムであってもよい。一又は複数のネットワークサーバ108 が、ネットワーク106 で少なくとも1つのデータベース110 と接続されてもよく、データベースは、特定の実施の制約(例えばサイズ、速度など)に応じて、ネットワークサーバ108 内に存在する内部データベース、又は(以下に示されるような)ネットワークサーバ108 から物理的に離れた場所に存在するデータベースであってもよい。尚、「サーバ」という用語は、従来のサーバ、高性能コンピュータ、ワークステーション、大型コンピュータ、スーパーコンピュータなどを含むべく本明細書で使用されている。同様に、少なくとも1つのデータベース110 は、データ、並びに船体回転運動及び船体回転運動からの変化を決定するための位置情報を含む情報を記憶することができるリレーショナルデータベース、運用データベース又は他の適切なデータベースであってもよい。
【0034】
図11は、コンピュータネットワーク106 上の一又は複数のサーバ108 の内の1つとして使用されてもよい例示的なサーバを示す。前述したように、このサーバ108 は、高性能サーバ、ワークステーション、大型コンピュータ、スーパーコンピュータなどを含む、当業者に知られているあらゆる適したデータ処理システムであってもよい。このようなサーバ108 は典型的には、サーバ108 内で情報を送るためのバス128 又は他の通信機構と、情報を処理するためにバス128 と連結されているCPU 112 とを有している。サーバ108 は、CPU 112 によって実行されるコンピュータ可読命令を記憶するためにバス128 に連結されたメインメモリ114 、例えばランダムアクセスメモリ(RAM) 又は他の動的記憶デバイスを更に有してもよい。メインメモリ114 は、CPU 112 によって実行される命令の実行中に一時的な変数又は他の中間情報を記憶するために更に使用されてもよい。サーバ108 は、CPU 112 のための静的情報及び命令を記憶するためにバス128 に連結された読み出し専用メモリ(ROM) 116 又は他の静的記憶デバイスを更に有してもよい。磁気ディスク、光ディスク又は固体記憶装置のようなコンピュータ可読記憶デバイス118 が、CPU 112 のための情報及び命令を記憶するためにバス128 に連結されてもよい。
【0035】
上記に使用されている「コンピュータ可読命令」という用語は、CPU 112 及び/又は他の部品によって実行されてもよいあらゆる命令を指す。同様に、「コンピュータ可読媒体」という用語は、コンピュータ可読命令を記憶するために使用されてもよいあらゆる記憶媒体を指す。このような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体及び伝送媒体を含むが、これらに限定されない多くの形態を有してもよい。不揮発性媒体は、例えば記憶デバイス118 のような光ディスク又は磁気ディスクを含んでもよい。揮発性媒体は、メインメモリ114 のような動的メモリを含んでもよい。伝送媒体は、バス128 のワイヤを含む同軸ケーブル、銅線及び光ファイバを含んでもよい。伝送媒体自体は、無線周波数(RF)及び赤外線(IR)のデータ通信中に生成されるような音波又は光波の形態を有してもよい。一般的な形態のコンピュータ可読媒体は、例えばフロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他の磁気媒体、CD-ROM、DVD 、他の光媒体、RAM 、PROM、EPROM 、FLASH-EPROM 、他のメモリチップ若しくはカートリッジ、又はコンピュータが読み取ることができるあらゆる他の媒体を含んでもよい。
【0036】
CPU 112 は、情報をユーザに表示するためのディスプレイ120 にバス128 を介して更に連結されてもよい。英数字及び他のキーボード、マウス、トラックボール、カーソル方向キーなどを含む一又は複数の入力デバイス122 は、情報及びコマンド選択をCPU 112 に通信するためにバス128 に連結されてもよい。ネットワークインターフェース124 は、ネットワーク106 を介してサーバ108 と他のコンピュータとの間の双方向データ通信を提供する。一例では、ネットワークインターフェース124 は、サービス総合デジタル網(ISDN)カード、又は対応するタイプの電話線にデータ通信接続するために使用されるモデムであってもよい。別の例として、ネットワークインターフェース124 は、互換性のあるLAN にデータ通信接続するために使用されるローカルエリアネットワーク(LAN) カードであってもよい。無線リンクが、ネットワークインターフェース124 を介して更に実装されてもよい。要約すると、ネットワークインターフェース124 の主な機能は、様々なタイプの情報を表すデジタルデータ流を運ぶ電気信号、電磁信号、光信号又は他の信号を送受信することである。
【0037】
開示された実施形態によれば、船体の船体回転運動を決定及び/又はモニタするためのアプリケーション126 、更に厳密に言えば、そのコンピュータ可読命令が記憶デバイス118 に更に存在してもよい。船体回転運動を決定するか、又は船体の船体回転運動との適合性をモニタするために、アプリケーション116 のためのコンピュータ可読命令が、サーバ108 のCPU 112 及び/又は他の部品によって実行されてもよい。このようなアプリケーション126 は、本明細書に開示されて記載されているアルゴリズムのステップを実行するために、当業者に知られているあらゆる適したアプリケーション開発環境及びプログラミング言語を使用して実施されてもよい。上述したように、様々な実施形態では、アプリケーション126 は、他のアプリケーションから独立して実行されてもよいスタンドアロンアプリケーションであってもよく、又は既存のソフトウェアパッケージなどへのプラグインモジュールの形態であってもよい。
【0038】
上述された本発明の一又は複数の態様を利用した他の実施形態及び更なる実施形態が、本出願人の発明の趣旨から逸脱せずに考案され得る。例えば、他のタイプの地理的位置決定デバイス、アラームなどの様々な機器、リモートセンシングのためのソフトウェア、船体制御/警報システムに連結された専用ソフトウェアなどを使用して、船体回転運動モニタリングシステムの動作及び通知を高めることができ、これは他の変形例と共に特許請求の範囲内でなされ得る。
【0039】
更に、システムの様々な方法及び実施形態が、開示された方法及び実施形態の変形例をもたらすために互いに組み合わせて含まれ得る。単数の要素の説明は複数の要素を含むことが可能であり、逆もまた可能である。少なくとも1つの要素の参照は一又は複数の要素を含んでもよい。更に、実施形態の様々な様態は、本開示の理解された目的を達成するために互いに関連して使用され得る。文脈状別の意味が求められない限り、「備える」(comprise)という用語、又は「備える」(comprises)又は「備えている」(comprising)のような変形は、少なくとも述べられた要素若しくはステップ又は1群の要素若しくはステップ若しくはそれらの等価物の包含を暗示しており、より多くの数、他の要素若しくはステップ又は1群の要素、ステップ若しくはそれらの等価物の排除を暗示していないことを理解すべきである。装置又はシステムは、多くの方向及び向きに使用されてもよい。「連結された」(coupled )、「連結している」(coupling)、「連結器」(coupler )という用語及び同様の用語は、本明細書では広く使用されており、一又は複数個の部材を共に、例えば機械的に、磁気的に、電気的に、化学的に、作動的に、直接的に又は中間要素を介して間接的に固定する(securing)、結合する(binding )、接着する(bonding )、固定する(fastening )、取り付ける(attaching )、結合する(joining )、その中に挿入する(inserting therein )、その上又はその中に形成する(forming thereon or therein)、連通する(communicating)又は関連付ける(associating)ためのあらゆる方法又は装置を含んでもよく、1つの機能性部材を別の機能性部材と一体的に形成することを非限定的に更に含んでもよい。連結は、回転を含めてあらゆる方向で行われてもよい。
【0040】
本発明は、好ましい実施形態及びその他の実施形態に関して述べられており、本発明のあらゆる実施形態が述べられているわけではない。述べられた実施形態に関する自明な調整及び変更が当業者に利用可能である。開示された実施形態及び開示されていない実施形態は、本出願人によって想到された本発明の範囲又は適用範囲を制限又は限定することを意図するものではなく、むしろ特許法に従って、本出願人は、添付の特許請求の範囲内又はこれらの等価物の範囲内に含まれる全てのこのような調整及び改良を完全に保護することを意図している。
【0041】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月22日に出願された米国仮特許出願第62/748,787 号の利益を主張するものであり、その出願全体を参照によって本明細書に組み込む。