(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】エンジン冷却システムで使用されるタンク、エンジン冷却システム、および作業機械
(51)【国際特許分類】
F01P 11/00 20060101AFI20240110BHJP
F01P 3/20 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F01P11/00 C
F01P3/20 B
(21)【出願番号】P 2021527907
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2019025408
(87)【国際公開番号】W WO2020104063
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】201811398780.4
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トン、リ
(72)【発明者】
【氏名】ティアン、クオピン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ケンシン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、クシャン
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-232107(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0887523(EP,A2)
【文献】米国特許第4739730(US,A)
【文献】中国特許出願公開第101749966(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン冷却システム用のタンク(100)であって、
ハウジング(1)と、
前記ハウジングを互いに封止された排気タンク(3)と拡張タンク(4)とに分割するパーティション(2)
と、を備え、前記排気タンク(3)が、
前記エンジン冷却システムのエンジンシリンダジャケット(200)に流体接続されて、冷却水を前記排気タンク(3)に導入するように適合された第一の接続パイプ(31)と、
前記エンジン冷却システムの熱交換器(400)に流体接続されて、前記冷却水を前記熱交換器(400)に放出するように適合された第二の接続パイプ(32)と、を備
え、
前記拡張タンク(4)は、前記エンジン冷却システムに流体接続されるように適合された第三の接続パイプ(41)を備え、
前記タンクは、
前記排気タンク(3)と連通する第一の端部と、前記拡張タンク(4)内に配置された第二の端部とを有する誘導管(5)であって、それにより、前記排気タンク(3)を通って流れる前記冷却水内に含有されるガスが、前記誘導管(5)を通って前記拡張タンク(4)内に誘導される、誘導管(5)をさらに備え
、
前記排気タンク(3)が、前記排気タンク(3)の内側面に向かって突出する突起部(111)を有する底部壁(11)を備え、
前記突起部(111)が、
前記底部壁(11)から前記排気タンク(3)の前記内側面に向かって延在する二つの側壁(112)と、
前記二つの側壁(112)を接続する上壁(113)と、を備え、
前記タンクが、前記ハウジング(1)の外側に配置される少なくとも一つの補助冷却パイプ(6)をさらに備え、各補助冷却パイプ(6)は、前記二つの側壁(112)上にそれぞれ配置され、前記排気タンク(3)内に開口する二つの端部を有する、タンク(100)。
【請求項2】
前記パーティション(2)が、前記ハウジング(1)の側壁に接続された水平アーム(21)と、前記ハウジング(1)の底部壁に接続された垂直アーム(22)とを有する、L字型プレートである、請求項1に記載のタンク(100)。
【請求項3】
前記水平アーム(21)内にガス出口(23)が形成され、前記誘導管(5)の前記第一の端部が前記水平アーム(21)に接続され、前記ガス出口(23)と連通する、請求項
2に記載のタンク(100)。
【請求項4】
前記第一の接続パイプ(31)が前記ハウジング(1)の側壁上に配置され、前記第二の接続パイプ(32)が前記ハウジング(1)の底部壁(11)上に配置される、請求項1~
3のいずれか一項に記載のタンク(100)。
【請求項5】
それぞれが前記ハウジングの二つの対向する壁の間で支持する少なくとも一つの補強支持体(7)をさらに備える、請求項1~
3のいずれか一項に記載のタンク(100)。
【請求項6】
エンジン冷却システムであって、
エンジンシリンダジャケット(200)と、
前記エンジンシリンダジャケット(200)を通して冷却水をポンプ注入するためのポンプ(300)と、
請求項1~
5のいずれか一項に記載のタンク(100)と、
熱交換器(400)と、を備え、
前記ポンプ(300)が、前記エンジンシリンダジャケット(200)、前記タンク(100)、および前記熱交換器(400)を通して、前記冷却水を循環させる、エンジン冷却システム。
【請求項7】
エンジン冷却システム用の排気タンク(3’)であって、
冷却水が流れる筐体(1’)と、
前記筐体上に配置され、前記エンジン冷却システムのエンジンシリンダジャケット(200)に流体接続されて前記冷却水を前記排気タンク(3’)に導入するように適合された第一の接続パイプ(31’)と、
前記筐体上に配置され、前記エンジン冷却システムの熱交換器(400)に流体接続されて前記冷却水を前記熱交換器(400)に放出するように適合された第二の接続パイプ(32’)と、
前記排気タンク(3’)と連通する第一の端部と、前記エンジン冷却システムの拡張
タンクに接続されるように適合された第二の端部とを有する誘導管(5’)であって、それにより、前記排気タンク(3’)を通って流れる前記冷却水に含有されるガスが、前記誘導管を通して前記拡張タンク内に誘導される、誘導管(5’)と、を備え
、
前記排気タンク(3’)は、前記排気タンク(3’)の内側面に向かって突出する突起部を有する底部壁(11’)を備え、
前記突起部が、
前記底部壁(11’)から前記排気タンク(3’)の前記内側面に向かって延在する二つの側壁(112’)と、
前記二つの側壁(112’)を接続する上壁(113’)と、を備え、
前記タンクが、前記筐体(1’)の外側に配置される少なくとも一つの補助冷却パイプ(6’)をさらに備え、各補助冷却パイプ(6’)は、前記二つの側壁(112’)上にそれぞれ配置され、前記排気タンク(3’)内に開口する二つの端部を有する、排気タンク(3’)。
【請求項8】
エンジン冷却システムであって、
エンジンシリンダジャケット(200)と、
前記エンジンシリンダジャケット(200)を通して冷却水をポンプ注入するためのポンプ(300)と、
請求項
7に記載の排気タンク(3’)と、
前記エンジン冷却システムに流体接続される拡張タンクと、
熱交換器(400)と、を備え、
前記ポンプ(300)が、前記エンジンシリンダジャケット(200)、前記排気タンク(3’)、および前記熱交換器(400)を通して前記冷却水を循環させる、エンジン冷却システム。
【請求項9】
前記排気タンク(3’)と前記拡張タンクとが別個の構成要素である、請求項
8に
記載のエンジン冷却システム。
【請求項10】
前記排気タンク(3’)が前記拡張タンクと一体化されている、請求項
8に記載の
エンジン冷却システム。
【請求項11】
請求項
6および
8~10のいずれか一項に記載のエンジン冷却システムを備える、作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン冷却システムで使用されるタンク、エンジン冷却システム、およびタンクを備える作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械は、一般に、エンジンが高圧縮比を有し、かつ大量の熱を生成する重機(ローダーなど)に特に重要である、エンジンの過熱を防止するためのエンジン冷却システムを備える。
【0003】
冷却水ポンプは、冷却システムを通って流れるように冷却水を駆動するために、エンジン冷却システムに備えられている。エンジンシリンダジャケットは、エンジンシリンダの外部に備えられ、冷却水は、ポンプの動作下でエンジンシリンダジャケットを通って流れて、動作中にエンジンによって生成される熱を奪う。その後、高温冷却水が冷却される熱交換器に進入し、冷却された液体が再びポンプによってエンジンシリンダジャケットにポンプ注入され、冷却システムの循環が達成される。
【0004】
拡張水タンク/拡張タンクは、一般に、エンジン冷却システム内に備えられ、これは、エンジン冷却システムの動作中に冷却水の蒸気を受容し、冷却水を補充するために主に使用される。その結果、冷却システムの冷却水は、加熱され、膨張するときに受容室を有し、それによって冷却水の循環中に起こり得るオーバーフロー問題を解決する。冷却水が減少または収縮すると、冷却システムは、拡張タンクからの冷却水によって補充され得る。拡張タンクは、熱交換器の水タンクまたは冷却水ポンプの吸引ポートに接続することができる。
【0005】
エンジンの動作中、エンジンの燃焼チャンバ内の高圧燃焼ガスがエンジンシリンダジャケット内に消散する場合、ガス気泡が形成され得る。また、冷却水が拡張タンク内に充填されるとき、ガス気泡が混入され得る。これらの気泡は、冷却水中に混合されて、熱交換器の冷却パイプに熱応力衝撃を生じさせ、熱交換性能の低下をもたらす。さらに、これらの気泡は、冷却システムのポンプの液体供給能力に影響を与え、エンジン冷却システムに部分的な真空を生じさせる恐れがあり、その結果、稼働中にエンジンによって生成される熱は、冷却水によって適時に完全に取り除かれず、エンジンが過熱され得る。
【0006】
したがって、当技術分野で解決すべき緊急の問題は、冷却水内のガス気泡を効果的に除去すること、特に、熱交換器への熱応力衝撃を低減するために、エンジンシリンダジャケットから流れ出た後、かつ熱交換器に入る前に、冷却水内のガス気泡を除去することである。
【0007】
本発明の目的は、先行技術に存在する上記の問題および/またはその他の欠陥を解決することである。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、エンジン冷却システム用のタンクを提供する。タンクは、ハウジングと、ハウジングを互いに封止された排気タンクと、拡張タンクとに分割するパーティションとを含む。排気タンクは、第一の接続パイプおよび第二の接続パイプを含み、第一の接続パイプは、エンジン冷却システムのエンジンシリンダジャケットに流体接続されて、冷却水を排気タンクに導入するように適合され、第二の接続パイプは、エンジン冷却システムの熱交換器に流体接続されて、冷却水を熱交換器に放出するように適合される。拡張タンクは、エンジン冷却システムに流体接続されるように適合された第三の接続パイプを含む。タンクはさらに、排気タンクと連通する第一の端部と、拡張タンク内に配置された第二の端部とを有する誘導管を含み、その結果、排気タンクを通って流れる冷却水内に含有されるガスは、誘導管を通して拡張タンク内に排出される。
【0009】
本発明はさらに、エンジン冷却システム用の排気タンクを提供する。排気タンクは、冷却水が通過する筐体と、筐体上に配置され、エンジン冷却システムのエンジンシリンダジャケットに流体接続されて排気タンクに冷却水を導入するように適合された第一の接続パイプと、筐体上に配置され、エンジン冷却システムの熱交換器に流体接続されて冷却水を熱交換器に放出するように適合された第二の接続パイプと、排気タンクと連通する第一の端部と、エンジン冷却システムの拡張タンクに接続されるように適合された第二の端部とを有する誘導管と、を含み、その結果、排気タンクを通って流れる冷却水に含有されるガスが、誘導管を通して拡張タンク内に排出される。
【0010】
本発明はまた、上述のタンクまたは排気タンクを含むエンジン冷却システムを提供する。
【0011】
本発明はさらに、上述のエンジン冷却システムを含む作業機械を提供する。
【0012】
本発明の利点は、少なくとも、エンジンシリンダジャケットと熱交換器との間に設けられた排気タンクによって、熱交換器に入る前に、冷却水の中のガスを分離することが可能となり、これは、冷却水内の混入ガスによる熱交換器への衝撃を減少させ、放熱に影響を与えることを回避するという点にある。さらに、排気タンクは、エンジン冷却システムの拡張タンクに組み込まれてもよく、これにより、設置、輸送、貯蔵などを容易にする。さらに、排気タンクをエンジン冷却システムの循環経路に提供することによって、冷却水がガスから繰り返し分離され、その結果、冷却水内のガスがますます少なくなり、したがって冷却水がパージされる。さらに、排気タンク内に突起部を提供することによって、冷却水の流れが減速され、その結果、ガスが冷却水からより効果的に分離される。さらに、冷却水の温度は、排気タンクの外側の補助冷却パイプによって低下し、冷却水の熱交換を促進し、熱交換器に対する高温冷却水の影響を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の例示的な実施形態によるタンクの斜視図である。
【
図3】
図3は、線A-Aに沿った、
図2に示すタンクの断面斜視図である。
【
図4】
図4は、線B-Bに沿った、
図2に示すタンクの断面斜視図である。
【
図5】
図5は、線B-Bに沿った、
図2に示すタンクの断面平面図である。
【
図6】
図6は、線C-Cに沿った、
図2に示すタンクの断面斜視図である。
【
図7】
図7は、線C-Cに沿った、
図2に示すタンクの断面平面図である。
【
図8】
図8は、線D-Dに沿った、
図2に示すタンクの断面斜視図である。
【
図9】
図9は、線D-Dに沿った、
図2に示すタンクの断面平面図である。
【
図10】
図10は、本発明における例示的な実施形態による排気タンクの断面斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の例示的な実施形態によるエンジン冷却システムの概略原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の技術的解決策は、実施形態および添付図面と併せて、以下に詳細にさらに説明される。添付の図面を参照する本発明の実施形態の説明は、本発明の一般的な発明の概念を説明することを意図しており、本発明の限定として解釈されるべきではない。
【0015】
加えて、以下の詳細な説明において、解釈を容易にするために、開示された実施形態の包括的理解を提供するために、多くの具体的な詳細が記述されている。しかし、当然のことながら、一つまたは複数の実施形態も、これらの具体的な詳細なしに実施され得る。他の場合では、図面を簡略化するために、周知の構造およびデバイスが概略的に図示される。
【0016】
図11は、例示的なエンジン冷却システムの概略原理図を示す。冷却水は、ポンプ300の作用下でエンジン冷却システムで循環される。冷却水は、エンジンシリンダジャケット200内にポンプ注入され、冷却水と高温エンジンシリンダとの間で熱交換が発生し、その結果、冷却水の温度が上昇する。高温冷却水が熱交換器400に流れ込み、そこで冷却水が冷却され、冷却された液体が再びエンジンシリンダジャケットにポンプ注入されて冷却システム内で循環を達成する。本発明の例示的な実施形態によれば、排気タンク3は、高温冷却水が流れ出すエンジンシリンダジャケットと、冷却水が流れる熱交換器400との間のエンジン冷却システム内に配置される。冷却水は、排気タンク3に流れ込み、冷却水内のガスは冷却水から分離される。さらに、排気タンク3はまた、冷却水に対して特定の冷却効果を有する。このように、冷却水内の混入ガスによって引き起こされる熱交換器のパイプアセンブリへの熱応力衝撃は低減され、ガス気泡による冷却効果の低減も回避される。
【0017】
上述のガス排気および冷却機能は、排気タンク3がエンジンシリンダジャケット200と熱交換器400との間に配置される限り、実現され得ることが当業者によって理解されよう。排気タンク3は、エンジン冷却システムの拡張タンク4(
図1~9に示す実施形態に示すように)と一体化されてもよく、または冷却システムの循環経路に別個のタンク(すなわち、
図10に示す実施形態に示すように、拡張タンクから分離される)として配置されてもよい。
【0018】
例として、
図1~9に示す実施形態が最初に説明され、そこでは排気タンク3が拡張タンク4に組み込まれて、エンジン冷却システムで使用されるタンク100を形成する。
図1~2は、タンク100の外部斜視図を示す。
図3~9は、
図2の線A-A、B-B、C-C、D-Dに沿った斜視および/または平面断面図を示し、タンク100の内部構造をより良好に示す。タンク100は、ハウジング1、パーティション2、および誘導管5を含む。パーティションは、
図1~9に示すように、ハウジング1の内部空間を排気タンク3および拡張タンク4に分離する。排気タンク3は、第一の接続パイプ31および第二の接続パイプ32を含む。第一の接続パイプ31は、エンジン冷却システムのエンジンシリンダジャケット200に流体接続して、冷却水を排気タンク3に導入し、第二の接続パイプ32は、エンジン冷却システムの熱交換器400と流体接続して、冷却水を熱交換器400に放出する。冷却水は、第一の接続パイプ31を介して排気タンク3に入り、排気タンク3内の流れ中に、冷却水の混入ガスの一部が冷却水から漏れ出し、誘導管5を介して放出される。
図4~5に示すように、誘導管5の下端は排気タンク3内に開口し、誘導管の上端は拡張タンク4内に配置されて、排気タンク3内の冷却水から漏れ出たガスを拡張タンク4に誘導する。ガスは冷却水分子を含有するため、拡張タンクに入った後、冷却水に凝縮して戻すことができ、それによって冷却水が回収され、空気の汚染が回避される。一般の拡張タンク同様に、拡張タンク4は、冷却システムの冷却水を受容するか補充するために、エンジン冷却システムに流体接続している第三の接続パイプ41を含む。加えて、
図11に示されるように、熱交換器内のガスを拡張タンク4に放出するために、例えば、熱交換器の右タンクなどの熱交換器と拡張タンク4との間に接続パイプ401も備えられる。このように、ガスは、拡張タンク4に収集され、回収されるために冷却水に凝縮されるか、または拡張タンク4の圧力が過剰である時に、拡張タンクの排気装置(例えば、拡張タンクのカバー)を介して周囲に放出される。
【0019】
例として、
図1~9の実施形態では、パーティションはL字型プレートであり、これはハウジング1の内部を互いに封止された二つのチャンバ、すなわち、拡張タンク4および排気タンク3に分離する。L字型パーティションの水平アーム21は、ハウジング1の側壁に接続され、パーティション2の垂直アーム22は、ハウジング1の底部壁に接続され、それによって閉鎖された排気タンク3が形成される。しかしながら、様々な形状のパーティションが、タンクを拡張タンク4と排気タンク3とに分割し、排気タンク3内のガスを誘導管を通して拡張タンク4に放出することができる限り、採用され得ることは、当業者によって理解されるであろう。任意選択で、排気タンク3は、拡張タンク4の下に位置し、第一の接続パイプ31は、冷却水の排気タンク3への充填を容易にするためにハウジング1の側壁上に配置され、第二の接続パイプ32は、ハウジング1の底部壁11上に配置されて、冷却水を完全に放出する。排気タンクおよび拡張タンクはまた、水平方向に横並びに配置することができ、誘導管は、排気タンクおよび拡張タンクの上部に配置することができ、それによって、排気タンク内のガスが拡張タンク内に放出され得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0020】
図示した誘導管5は、ガスをより効果的に放出するための垂直パイプである。例として、第一の端部、すなわち、誘導管5の下端は、パーティション2の水平アーム21に接続され、ガス出口23は、水平アーム21内に形成され、ガス出口23は、誘導管5の下端と連通する。このように、排気タンク3内のガスは、誘導管5を通して最大限に排出され得る。第二の端、例えば、誘導管の上端は、拡張タンク4内に、冷却水のレベルより上に延在する。代替で、垂直パイプとしての誘導管5の下端は、排気タンク3内であるが、排気タンク3の冷却水のレベルより上に延在してもよい。当業者であれば、排気タンク3内のガスが拡張タンク4に放出され得る限り、誘導管5はまた傾斜してもよいか、または水平でさえあり得ることを理解するであろう。
【0021】
図3~9に示すように、一例として、排気タンク3はハウジング1の下部に形成され、排気タンク3の底部壁11はハウジング1の底部壁を構成する。底部壁11は、排気タンク3の内側面に向かって突出する突起部111を備え、排気タンク3内の冷却水の流れを緩衝する。第一に、突起部111は、冷却水と衝突するように備えられる。例えば、第一の接続パイプ31からの冷却水は、突起部111に衝突し、その結果、冷却水内の気泡が容易に割れ、ガスの漏出を容易にし得る。第二に、排気タンク3の中の冷却水は、第一の接続パイプ31から第二の接続パイプ32へ流れる過程で突起部111を通過し、これは冷却水の流れを遮断し、その流量を減少させる。冷却水のより低い流量では、より多くのガスがそこから漏出し得る。
【0022】
例として、冷却水の温度をさらに低下させ、熱交換器への熱応力衝撃を低減するために、補助冷却パイプ6を排気タンク上に配置してもよい。具体的には、
図3に示すように、突起部111は、底部壁11から排気タンク3の内側面に向かって延在する二つの側壁112と、二つの側壁112を接続する上壁113とを含む。二つの側壁112および上壁113は、最小の一つの補助冷却パイプ6が配置される、タンク100の外側の空間を画定する。補助冷却パイプ6のそれぞれの二つの端部は、二つの側壁112上にそれぞれ配置され、排気タンク3内に開口する。したがって、冷却水はまた、補助冷却パイプ6を介して、第一の接続パイプ31から第二の接続パイプ32へ流れることができる。補助冷却パイプ6は空気と完全に接触しているため、放熱を改善し、冷却水の温度を下げることができる。
【0023】
図3~9に示すように、少なくとも一つの補強支持体7は、ハウジングの壁を支持し、タンクの強度を高めるために、ハウジングの二つの対向する壁の間のタンク100に垂直および/または横方向に備えられる。
【0024】
上述の技術的解決策では、排気タンク3および拡張タンク4は、冷却システムを簡単に設置することができ、排気タンク内のガスを都合よく拡張タンクに移出することができ、余分な輸送パイプラインを節約できるように、一つのタンクに組み込まれる。一つのタンクは、例えば、熱交換器の上方など、拡張タンクの従来的な位置に配置されてもよい。
【0025】
しかし、当業者であれば、排気タンクが拡張タンクに組み込まれていなくてもよいことを理解するであろう。排気タンク3’がエンジン冷却システム内の別個のタンクとして備えられる実施形態についての説明は、
図10を参照して以下に詳述される。排気タンク3’は、例えば、熱交換器の液体タンク上に置かれて、熱交換器の液体タンクへの接続を容易にしてもよい。
【0026】
図1~9に示す第一の実施形態と同様に、排気タンク3’の構造は、排気タンク3の構造と実質的に同一であり、したがって、この実施形態は、別個のタンクとして排気タンク3’を示す
図10に概略的に図示されている。排気タンク3’は、別個の筐体1’を備え、冷却水は、筐体1’によって画定されるチャンバを流れる。排気タンク3’は、さらに、第一の接続パイプ31’、第二の接続パイプ32’、および筐体上に設けられた誘導管5’を含む。第一の接続パイプ31’は、エンジン冷却システムのエンジンシリンダジャケット200に流体接続されて、冷却水を排気タンク3’に導入するように適合され、第二の接続パイプ32’は、エンジン冷却システムの熱交換器400に流体接続されて、冷却水を熱交換器400に放出するように適合される。誘導管の一方の端5’は、排気タンク3’に開口し、誘導管の他方の端は、排気タンク内の冷却水から漏出されたガスを拡張タンクに誘導するために、エンジン冷却システムの拡張タンクに直接的または間接的に接続される。排気タンク3’の底部壁11’はまた、排気タンクの内側面に向かって突出し、二つの側壁112’および上壁113’を含む突起部を含み、その構造および機能は、
図1~9に示す第一の実施形態で説明されたものと同一であり、ここで繰り返されない。
【0027】
本発明はまた、排気タンク3’または上述の排気タンク3を備えるタンク100を含む、エンジン冷却システムに関する。
【0028】
さらに、本発明はまた、上述のエンジン冷却システムを備える作業機械に関し、それによって、作動中の作業機械のエンジンシリンダのより良好な放熱を可能にし、エンジンの効率を改善し、エンジンの耐用寿命を延長する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明による排気タンクの動作を以下に記載する。エンジンが稼働中であるとき、一例として、冷却水は、高温エンジンシリンダと熱を交換するためにエンジンシリンダジャケット200にポンプ注入され、冷却水の温度が上昇する。
図1~2に示すように、高温冷却水は、第一の接続パイプ31を介して排気タンク3内に注入される。
図3に示すように、注入された冷却水が突起部111の側壁112または上壁113と衝突し、ガスが冷却水から漏れ出るように、その中のガス気泡が割れる。冷却水の一部分は、上壁113を越えて、第二の接続パイプ32に流れ、流れは、ガスの漏出を容易にするための、突起部111による遮断のために減速される。冷却水のその他の部分は、補助冷却パイプ6を通って第二の接続パイプ32に流れる。補助冷却パイプ6は、タンクの外側に位置し、空気と接触しているため、冷却水をさらに冷却することができる。その後、冷却水は、
図11に示すように、第二の接続パイプ32を通って排気タンク3から流れ出て、例えば、熱交換器400の右タンクに入り、その後、冷却水は、十分な放熱および冷却が行われる熱交換器を通って流れる。冷却された液体は、例えば、熱交換器400の左タンクを通ってポンプ300の入口に流れ、ポンプ300の作用下でエンジンシリンダジャケット200に循環される。冷却水からのガスの分離はまた、ポンプ内のキャビテーションを回避し、ポンプ効率が影響を受けることを防止することによって、冷却水ポンプの動作にも有益である。
【0030】
排気タンク3内のガスは、誘導管5によって拡張タンク4内に排出される。排気ガスは、拡張タンク内の比較的低い温度により、回収されるために冷却水内に凝縮される。
【0031】
排気タンクは冷却システム内に配置され、冷却水の各サイクルに加わる。したがって、冷却水の全てのサイクルにおいて、その中のガスは排気タンク内で分離され、その結果、冷却水中のガスはますます少なくなり、冷却水がパージされる。
【0032】
拡張タンク4の存在により、冷却システムの冷却水は、高温過ぎて膨張できない時に拡張タンク内にあふれてもよく、冷却システムは、冷却水の量が不十分な時に拡張タンクからの冷却水によって補充されてもよく、それによって冷却システムの効果的な動作を達成する。
【0033】
排気タンク3’が、拡張タンクから分離されたタンクとしてエンジン冷却システム内に備えられている実施形態では、その動作は、上記と実質的に同じであり、ここで繰り返されることはない。
【0034】
本発明では、エンジンシリンダジャケットと熱交換器との間に設けられた排気タンクは、熱交換器に入る前に、冷却水内のガスを分離することを可能にし、これは、冷却水内の混入ガスによる熱交換器への衝撃を減少させ、放熱に影響を与えることを回避する。さらに、排気タンクは、エンジン冷却システムの拡張タンクに組み込まれてもよく、これは構成要素の数を減少させ、設置、輸送、貯蔵などを容易にし得る。さらに、排気タンクをエンジン冷却システムの循環経路に提供することによって、冷却水がガスから繰り返し分離され、その結果、冷却水内のガスがますます少なくなり、したがって冷却水がパージされる。さらに、排気タンク内に突起部を提供することによって、冷却水の流量が減速され、その結果、ガスが冷却水からより効果的に分離される。さらに、冷却水の温度は、冷却水の熱交換を促進し、熱交換器への冷却水の熱応力衝撃を低減する、排気タンク外部の補助冷却パイプによって低下する。
【0035】
本発明による排気タンクおよびエンジン冷却システムは、様々な作業機械(ブルドーザ、ローダ、ショベルなど)に適用することができるが、それに限定されるものではない。なぜなら、エンジン冷却システムが必要とされるいずれの場合でも使用することができるのが明らかで、冷却水内のガスを分離し、熱衝撃を低減し、放熱性能を向上させる有益な効果をもたらすことができるからである。
【0036】
本発明の範囲または精神から逸脱することなく、上記に開示された実施形態に対して当業者はさまざまな修正および変形を行うことができる。本明細書に開示された本発明の実践により、本発明の他の実施形態が、当業者には明らかになる。その中に開示される明細書および実施例は、例示としてのみ見なされ、本発明の実際の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって指定されるものとする。