(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】二酸化ケイ素とシラノールを含む親水性水性分散液、および塗料調製物
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20240110BHJP
C01B 33/14 20060101ALI20240110BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240110BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240110BHJP
C08K 5/5419 20060101ALI20240110BHJP
C08L 35/00 20060101ALI20240110BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20240110BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20240110BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
C01B33/14
C08K3/36
C08K5/17
C08K5/5419
C08L35/00
C08L71/02
C09D17/00
C09D201/00
(21)【出願番号】P 2021531805
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2019081871
(87)【国際公開番号】W WO2020114768
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-06-13
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ペーター バウエルマン
(72)【発明者】
【氏名】サッシャ ヘルワース
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-543909(JP,A)
【文献】特開昭62-143819(JP,A)
【文献】特表2005-528454(JP,A)
【文献】国際公開第2017/009035(WO,A1)
【文献】特開2004-203735(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101517012(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0234206(US,A1)
【文献】西独国特許出願公開第02524309(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/18
C01B 33/14
C08K 3/36
C08K 5/17
C08K 5/5419
C08L 35/00
C08L 71/02
C09D 17/00
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)50重量%~80重量%の水と、
b)10重量%~30重量%の、メタノール-水混合物中で0体積%のメタノール濡れ性を有する親水性二酸化ケイ素と、
c)2重量%~25重量%の一般式R
1O((CH
2)
mO)
nH(式中、R
1は、10~25個の炭素原子を有する分岐鎖または非分岐鎖アルキルまたはアルケニルラジカルであり、m=2または3、およびn=10~50である。)で表される少なくとも1つのアルコールアルコキシレートと、
d)0.1重量%~20重量%の、一般式R
2R
3Si(OH)
2で表されるジアルキルジシラノールおよび/または一般式(II)で表されるα、ω-ジヒドロキシジアルキルシロキサンであるシラノールと、
e)0.5重量%~4重量%の、分子量が500g/mol未満の少なくとも1つのアミンおよび/またはアミノアルコールと、
f)0.1重量%~20重量%の、一般式(I)で表される少なくとも1つの共重合体と、
g)0.1重量%~6.0重量%の少なくとも1つのポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールと、
を含み、
上記数値はすべて、全体組成に対する重量百分率である、水性分散液。
【化1】
(式中、Zは、一般式(Ia)および/または(Ib)であり、
A
1は、エチレンラジカル、プロピレンラジカル、イソプロピレンラジカル、ブチレンラ
ジカルであり、
aは、0~50であり、
kは、10~30である。)
【化2】
(式中、Mは、水素、一価または二価の金属陽イオン、アンモニウムイオン、有機アミンラジカルであり、
cは、1、またはMが2価の金属陽イオンの場合は0.5であり、
Xは、-OM
cまたは-O-(C
pH
2pO)
q-R
5(式中、R
5は、H、1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素ラジカル、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素ラジカル、または6~14個の炭素原子を有する置換アルキルラジカルであり、
pは2~4、qは0~100、-NHR
6および/または-NR
6
2(式中、R
6は、R
5または-CO-NH
2である。)である。)であり、
Yは、O、NR
6であり、
bは、10~30であり、b+kは20~60である。)
【化3】
(II)
(式中、R
2およびR
3は、いずれの場合も、1~25個の炭素原子を有する分岐鎖または非分岐鎖アルキルラジカルであり、wは1より大きい整数である。)
【請求項2】
a)が、55重量%~75重量%の水であることを特徴とする請求項1記載の分散液。
【請求項3】
b)が、15重量%~25重量%の、メタノール-水混合物中で0体積%のメタノール濡れ性を有する親水性二酸化ケイ素であることを特徴とする請求項1記載の分散液。
【請求項4】
d)の重量百分率が、0.5重量%~5重量%であることを特徴とする請求項1記載の分散液。
【請求項5】
e)の重量百分率が、1.5重量%~4.0重量%
であることを特徴とする請求項1記載の分散液。
【請求項6】
e)の重量百分率が、2.0重量%~3.0重量%であることを特徴とする請求項1記載の分散液。
【請求項7】
pHが11未満であることを特徴とする、請求項1記載の分散液。
【請求項8】
pHが9以上かつ11未満であることを特徴とする、請求項1記載の分散液。
【請求項9】
pHが10以上かつ11未満であることを特徴とする、請求項1記載の分散液。
【請求項10】
前記親水性二酸化ケイ素が、カーボンアナライザLECO CS 244(LECO Corporation社製、米国 49085-2396 ミシガン州 セントジョセフ)で測定した場合、0.1%未満の炭素を含有することを特徴とする、請求項1または請求項7記載の分散液。
【請求項11】
前記親水性二酸化ケイ素が、アラニン酸リチウム法で測定した場合、1.5シラノール基/nm
2~2.7シラノール基/nm
2のシラノール基密度を有することを特徴とする、請求項1または請求項10記載の分散液。
【請求項12】
前記親水性二酸化ケイ素が最大300nmの平均粒径(d50)を有することを特徴とする、請求項1~請求項11のいずれか一項記載の分散液。
【請求項13】
前記親水性二酸化ケイ素が、30m
2/g~410m
2/gのBET表面積を有するヒュームドシリカであることを特徴とする、請求項1~請求項12のいずれか一項記載の分散液。
【請求項14】
前記二酸化ケイ素に対する前記シラノールのモル比が0.02~0.2であることを特徴とする、請求項1~請求項13のいずれか一項記載の分散液。
【請求項15】
請求項1~請求項14のいずれか一項記載の分散液を含むラッカー調製物。
【請求項16】
自動車産業におけるハイドロフィラーへの添加剤として、ならびに水性UV硬化性配合物中、水性クリアコート中および着色塗装系中の添加剤としての請求項1~請求項14のいずれか一項記載の分散液の使用。
【請求項17】
請求項1~請求項14いずれか一項記載の水性二酸化ケイ素含有分散液の製造方法であり、
11未満の前記分散液のpHで、一般式R
2R
3Si(OR
4)
2(式中、R
2、R
3およびR
4は、いずれの場合も、1~25個の炭素原子を有する分岐鎖または非分岐鎖アルキルまたはアルケニルラジカルである。)で表される少なくとも1つのジアルコキシシランを、50重量%~80重量%の水と10重量%~30重量%の親水性二酸化ケイ素とを含む混合物に添加する工程を有し、
前記ジアルコキシシランの添加中および添加後の前記分散液の温度が40℃以下であることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記ジアルコキシシランを、水と親水性二酸化ケイ素とを含む混合物に添加する工程における前記分散液のpHが、9以上かつ11未満であることを特徴とする、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記ジアルコキシシランを、水と親水性二酸化ケイ素とを含む混合物に添加する工程における前記分散液のpHが、10以上かつ11未満であることを特徴とする、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記ジアルコキシシランの添加中および添加後の前記分散液の温度が25℃未満であることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記ジアルコキシシランの添加中および添加後の前記分散液の温度が30℃未満である
ことを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項22】
使用される前記親水性二酸化ケイ素が、30m
2/g~410m
2/gのBET表面積を有するヒュームドシリカであることを特徴とする、請求項17記載の方法。
【請求項23】
使用される前記二酸化ケイ素に対する使用される前記ジアルコキシシランのモル比が0.02~0.2であることを特徴とする、請求項17~請求項22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
使用される前記親水性二酸化ケイ素と水を含む混合物が、前記親水性二酸化ケイ素を少なくとも2,000rpmの回転速度で水性混合物に添加することによって生成されることを特徴とする、請求項17~請求項23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
前記ジアルコキシシランの添加中および添加後さらに15分間、前記水性分散液を100rpm~500rpm(ディスク直径:40mm)で攪拌することを特徴とする、請求項17~請求項24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
前記ジアルコキシシランを添加した後の前記水性分散液を0℃~40℃の温度で少なくとも24時間熟成することを特徴とする、請求項17~請求項25のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性二酸化ケイ素粒子を含む基礎水性分散液、その製造方法、およびラッカー調製物におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化ケイ素含有水性分散液は、水性ラッカー配合物の粘度やその他のレオロジー特性を調整するためによく使用される。そのような分散液は、多数の異なる成分を含む。そして、とりわけ、細かくかつ可能な限り均一に分散した二酸化ケイ素粒子を含み、容易に製造でき、貯蔵安定性があり、さらに水性ラッカー配合物の多様な成分と適合性がなければならない。また、当該分散液の二酸化ケイ素含有量が多いと、結果的に輸送コストを削減することができ、さらに、ラッカー分散液に組み入れる際、ラッカー分散液はあまり多くの水で希釈されないので、有利である。
【0003】
特許文献1は、5重量%~15重量%のアルコールアルコキシレートと、0.5重量%~5重量%の少なくとも1つのアミンまたはアミノアルコールと、1重量%以下のN-メチルピロリドンとを含む疎水化二酸化ケイ素粒子を含む水性分散液を記載している。そのような分散液は、AEROSIL(登録商標)R 972などの疎水化シリカを、混錬によって分散液の液体成分に添加することにより生成される。使用される疎水化シリカの疎水性の度合いは、この場合、メタノールの濡れ性によって測定することができ、この場合、それは、メタノール-水混合物中で20体積%~80体積%のメタノール濡れ性であることが好ましい。そのような分散液は、高固体負荷で粘度が低く、かつ良好な貯蔵安定性を有する。しかしながら、疎水化シリカを含むそのような水性分散液の製造と、水性ラッカー配合物へのその組み込みとは、非常に要求が厳しい場合がある。疎水化シリカは、適切な助剤の助けさえあれば水で自然に濡らすことができるが、非常に強力で比較的長時間の混合が必要であり、当該混合は高い泡の形成によって悪化する。
【0004】
一般的に知られているように、親水性シリカは水で完全に濡らすことができ、したがって、水性分散液に非常に容易に組み込むことができる。しかし、疎水性シリカは、親水性シリカと比較して、水性ラッカー系でより優れたレオロジー特性を示すことがしばしばある。さらに、既知の親水性シリカ含有水性分散液は、多くのラッカー系と適合性がなく、したがって、ラッカーフィルムの光学特性は不十分である。
【0005】
特許文献2は、11より高いpHで二酸化ケイ素含有水性分散液を製造する方法を記載しており、当該分散液は、50℃~95℃の温度で熱的に処理される。
【0006】
特許文献3は、メタノール-水混合物中で20体積%未満のメタノール濡れ性を有する部分的に疎水性の二酸化ケイ素を含み、アミンを含まない水性分散液を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開公報第2012/062559A1号
【文献】国際公開公報第2017/009035A1号
【文献】ドイツ特許公開公報第10 2005 012409 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の技術目的は、容易に製造でき、水系ラッカー配合物と適合性が高く、得られる水性ラッカー系が良好な光学およびレオロジー特性を有する、貯蔵安定性の高充填二酸化ケイ素含有分散液を提供することである。
【0009】
また、シクロオクタメチルテトラシロキサン(D4)の含有量が少ないか、あるいはそれを全く含まない貯蔵安定性の高充填二酸化ケイ素含有分散液を提供することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下:
a)50重量%~80重量%の水、好ましくは55重量%~75重量%の水と、
b)10重量%~30重量%、好ましくは15重量%~25重量%の親水性二酸化ケイ素と、
c)2重量%~25重量%の一般式R
1O((CH
2)
mO)
nH(式中、R
1は、10~25個の炭素原子を有する分岐鎖または非分岐鎖アルキルまたはアルケニルラジカルであり、m=2または3、およびn=10~50である。)で表される少なくとも1つのアルコールアルコキシレートと、
d)0.1重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~5重量%の、一般式R
2R
3Si(OR
4)
2(式中、R
2、R
3およびR
4は、いずれの場合も、1~25個の炭素原子を有する分岐鎖または非分岐鎖アルキルまたはアルケニルラジカルである。)で表される少なくとも1つのジアルコキシシランの加水分解によって得られるシラノールと、
e)0.5重量%~4重量%、好ましくは1.5重量%~4.0重量%、特に好ましくは2.0重量%~3.0重量%の、分子量が500g/mol未満の少なくとも1つのアミンおよび/またはアミノアルコールと、
f)0.1重量%~20重量%の、一般式(I)で表される少なくとも1つの共重合体と、
g)0.1重量%~6.0重量%の少なくとも1つのポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールと、
を含み、
上記数値はすべて、全体組成に対する重量百分率である、水性分散液に関する。
【化1】
【0011】
(式中、Zは、一般式(Ia)および/または(Ib)であり、
A
1は、エチレンラジカル、プロピレンラジカル、イソプロピレンラジカル、ブチレンラジカルであり、
aは、0~50であり、
kは、10~30である。)
【化2】
【0012】
(式中、Mは、水素、一価または二価の金属陽イオン、アンモニウムイオン、有機アミンラジカルであり、
cは、1、またはMが2価の金属陽イオンの場合は0.5であり、
Xは、-OMcまたは-O-(CpH2pO)q-R5(式中、R5は、H、1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素ラジカル、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素ラジカル、必要に応じて6~14個の炭素原子を有する置換アルキルラジカルであり、pは2~4、qは0~100、-NHR6および/または-NR6
2(式中、R6は、R5または-CO-NH2である。)である。)であり、
Yは、O、NR6であり、
bは、10~30であり、b+kは20~60である。)
【0013】
有利には、本発明に係る水性分散液は、シクロオクタメチルテトラシロキサン(D4)の量が少ないか、あるいはシクロオクタメチルテトラシロキサン(D4)を含まない。シクロオクタメチルテトラシロキサン(D4)は、持続性かつ生体内蓄積性かつ毒性の物質としての危険な特性のため、環境にとって脅威である。
【0014】
米国特許公開公報第2008/0069753A1号は、親水性シリカの酸性水性分散液へのアルコキシシランの添加工程と、その後に続く得られた反応混合物の乾燥工程とを含む、疎水性二酸化ケイ素粒子の製造を記載している。
さらに、比較例では、塩基性媒体(pH=9.5)中、70℃でコロイド状二酸化ケイ素を含む水性分散液に、アルコキシシラン(オクチルトリエトキシシラン)を添加し、続いて得られた分散液を乾燥させると、疎水性二酸化ケイ素が生成されることが示されている。酸性または塩基性媒体のいずれかで生成された2つのシリカの炭素含有量は、ほとんど区別できない。これは、どちらの場合も同程度の疎水化が達成されていることを示している。
【0015】
米国特許公開公報第2008/0069753A1号の開示に照らして、全く予想外で驚くべきことだが、とりわけ、親水性シリカを含む水性分散液へのアルコキシシランの添加中に、40℃未満の比較的低い反応温度を維持し、かつpHを11未満に調整すると、依然として親水性のシリカを含む特定の混合物と、独特の特性を有するアルコキシシランの加水分解生成物が形成されることがわかった。
【0016】
したがって、本発明はさらに、二酸化ケイ素含有水性分散液の製造方法であり、11未満の前記分散液のpHで、一般式R2R3Si(OR4)2(式中、R2、R3およびR4は、いずれの場合も、1~25個の炭素原子を有する分岐鎖または非分岐鎖アルキルまたはアルケニルラジカルである。)で表される少なくとも1つのジアルコキシシランを、50重量%~80重量%の水と10重量%~30重量%の親水性二酸化ケイ素とを含む混合物に添加する工程を有し、前記ジアルコキシシランの添加中および添加後の前記分散液の温度が40℃以下(いわゆる、シラン化温度)である方法に関する。
【0017】
シラン化温度は、好ましくは40℃未満、より好ましくは30℃未満、特に好ましくは25℃未満である。
【0018】
驚くべきことだが、シラン化温度が有毒なシクロオクタメチルテトラシロキサン(D4)の形成に大きな影響を与えることが立証された。
【0019】
したがって、本発明に従って選択されたシラン化温度で、自由流動性の分散液を生成することができ、さらに、シクロオクタメチルテトラシロキサン(D4)を削減するか、あるいは防ぐことさえできる。したがって、有毒なD4の削減と防止は、本方法のさらなる利点である。
【0020】
本発明に係る分散液は、親水性二酸化ケイ素(好ましくは、アモルファス形態のもの)を含む。この二酸化ケイ素は、1つまたは複数の一般的に知られているタイプのシリカ(例:いわゆるエアロゲル、キセロゲル、パーライト、沈降シリカまたはヒュームドシリカ)を含んでいてもよい。本発明に係る分散液が、発熱性二酸化ケイ素、沈降二酸化ケイ素、ゾルゲル法で生成された二酸化ケイ素、およびそれらの混合物からなる群からの二酸化ケイ素を含む場合が好ましい。
【0021】
沈降法で調製された二酸化ケイ素(沈降シリカ)は、例えば水ガラス溶液(水溶性ケイ酸ナトリウム)と鉱酸との反応で形成される。ケイ酸ナトリウムの溶液中に、非常に小さな粒径と非常に良好な分散安定性を有する分散液を提供するコロイド状二酸化ケイ素(シリカゾル)を生成することも可能である。特に半導体基板の研磨における不利点は、ケイ酸ナトリウム出発材料を介して入り込む不純物の割合である。
【0022】
ヒュームドシリカとしても知られる発熱性二酸化ケイ素は、火炎加水分解または火炎酸化によって生成される。これには、一般に水素/酸素炎中で、加水分解性または酸化性の出発物質を酸化または加水分解することが含まれる。発熱法に使用可能な出発物質には、有機および無機物質が含まれる。そのために特に適しているのは四塩化ケイ素である。このようにして得られた親水性シリカはアモルファスである。ヒュームドシリカは一般的に凝集した構造を持つ。「凝集した」とは、生成時の最初に形成されるいわゆる一次粒子が、さらに先の反応過程において互いに強い結合を形成し、三次元ネットワークを形成することを意味すると理解されるものとする。一次粒子は、実質上細孔がなく、それらの表面に遊離ヒドロキシル基を有する。発熱性二酸化ケイ素は、コロイド状二酸化ケイ素に匹敵する非常に高い純度と一次粒子径を持つ。しかし、これらの一次粒子は、強凝集と弱凝集を経て、比較的硬い粒子を形成する。強凝集体と弱凝集体の分散は困難であることが証明されている;分散液は安定性が低く、沈降またはゲル化する傾向がある。
【0023】
本発明に係る分散液を生成するのに適したさらなる二酸化ケイ素源は、ゾルゲル法(例:エアロゲル、キセロゲルまたは同様の材料)で生成された二酸化ケイ素である。SiO2ゾル合成の出発物質は、多くの場合、シリコンアルコキシドである。そのような前駆体の加水分解とそのようにして形成された反応種間の縮合とは、ゾルゲル方法における必須の基本反応である。適切なシリコン源には、特にテトラアルキルオルトシリケート(例:テトラメチルオルトシリケートまたはテトラエチルオルトシリケート)が含まれる。テトラアルキルオルトシリケートの加水分解で形成されたアルコールの除去は、超臨界条件下(メタノールの場合、温度:239.4℃超、圧力:80.9バール超)で行われ、その結果、多孔性の高いSiO2エアロゲルが形成される。
【0024】
典型的な沈降シリカと比較して、ヒュームドシリカは粘度を上げるのにより効率的であり、低粘度樹脂により良好な懸濁液安定性を提供し、その結果、より高い透明度をもたらす。ヒュームドシリカと比較した沈降シリカの利点には、より速く、せん断力に依存しない分散、より低いコスト、コーティングまたはグレーズのより良好なプロファイル、ゲルコートのより低い多孔性がある。その結果、ヒュームドシリカと沈降シリカの混合物は、両タイプのシリカの利点を得るために多くの場面で使用される。
【0025】
しかし、1つまたは複数のヒュームドシリカが本発明に係る分散液に使用される場合が特に極めて好ましい。
【0026】
本発明に係る分散液は、10重量%~30重量%、好ましくは15重量%~25重量%の親水性二酸化ケイ素を含む。
【0027】
本明細書の文脈における「親水性」の語は、純水で完全に濡らすことができる粒子を指す。疎水性粒子は純水で濡らすことができない;それらは疎水性を有する。このような疎水性は、通常、シリカ表面に適切な非極性基を適用することによって達成され得る。シリカの疎水性の程度は、例えば国際公開公報第2011/076518A1号の5~6頁により具体的に記載されているように、そのメタノールの濡れ性を含むパラメータを介して測定することができる。純水中では、疎水性シリカが水から完全に分離し、溶媒で濡れることなく、その表面に浮く。対照的に、純粋なメタノール中では、疎水性シリカは溶媒の容積全体に亘って分布する;完全に濡れる。メタノールの濡れ性の測定では、シリカの濡れがまだ起こっていない状態、すなわち、試験混合物と接触した後、使用されたシリカの100%が濡れないまま試験混合物から分離した状態におけるメタノール-水試験混合物中のメタノールの最大含有量を測定する。メタノール-水混合物中のこのメタノール含有量(体積%)がメタノールの濡れ性と呼ばれる。このようなメタノールの濡れ性が高いほど、シリカの疎水性は高くなる。メタノールの濡れ性が低いほど、材料の疎水性は低くなる。
【0028】
本発明に係る分散液中に存在する親水性二酸化ケイ素は、メタノール-水混合物中で0体積%のメタノール濡れ性を有する。したがって、シリカは純水で完全に濡らされる。
【0029】
シリカと二酸化ケイ素とは、同義語として使用されることができる。
【0030】
本発明に係る分散液から親水性シリカを単離し、そのメタノール濡れ性を測定するために、分散液を乾燥させ、分散液の揮発性成分をすべて除去してよい。次に、得られた残留物を水で少なくとも3回繰り返し洗浄し、遠心分離によって濾液から毎回除去し、そのメタノール濡れ性について分析してよい。
【0031】
本発明の分散液は、塩基性であることが好ましく、pHが11未満、好ましくは9以上かつ11未満、特に好ましくは10以上かつ11未満である。
【0032】
UN-GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)および規則(EC)No.1272/2008(CLP規則)に準拠した危険分類「皮膚腐食性/刺激性」および「重篤な眼の損傷性/眼刺激性」に関して、これは、混合物が2以下または11.5以上の極端なpHを有する場合、皮膚を刺激するもの(カテゴリー1)、または眼に重篤な損傷を引き起こすもの(カテゴリー1)として混合物に適用される。
【0033】
したがって、本発明に係る分散液およびその生成には、人の健康と環境に対する高レベルの保護が認められる。
【0034】
本発明に係る分散液中の二酸化ケイ素粒子の数値平均粒径(d50)が300nm以下である場合、さらに有利であることが証明された。100nm~250nmの範囲が特に好ましい。数値平均粒径は、レーザ回折粒径分析によって、ISO13320:2009に準拠して測定されてよい。
【0035】
使用可能な親水性発熱性二酸化ケイ素は、20m2/g~500m2/g、好ましくは30m2/g~410m2/gのBET表面積を有する親水性発熱性二酸化ケイ素である。200±25m2/g、300±30m2/gまたは380±30m2/gのBET表面積を有する親水性発熱性二酸化ケイ素を使用することが特に好ましい。比表面積(単にBET表面積とも呼ばれる)は、DIN 9277:2014に準拠して、ブルナウアー・エメット・テラー法に従った窒素吸着によって測定される。
【0036】
本発明に係る分散液に使用される二酸化ケイ素は、最大400g/Lまで、好ましくは20g/L~300g/L、特に好ましくは30g/L~200g/L、非常に特に好ましくは40g/L~100g/Lのタンプ密度(tamped density)を有していてよい。粉状または粗粒の様々な粒状材料のタンプ密度は、DIN ISO 787-11:1995「顔料及び体質顔料の一般試験方法-第11部:タンプ容積(tamped volume)及びタンピング後の見掛け密度の測定」に準拠して測定されてよい。これには、攪拌およびタンピング後のバルク材料のかさ密度の測定が含まれる。
【0037】
本発明に係る分散液に使用される親水性二酸化ケイ素は、:OENORM G1072に準拠して、カーボンアナライザ:LECO CS 244(LECO Corporation社、米国 49085-2396 ミシガン州 セントジョセフ)で測定して、炭素含有量が0.1%未満であることが好ましい。
【0038】
本発明に係る分散液に使用される親水性二酸化ケイ素は、Journal of Colloid and Interface Science第125巻第1号、1988年9月、第62~63頁に記載のアラニン酸リチウム法で測定して、1.5~2.7シラノール基/nm2のシラノール基密度を有することが好ましい。
【0039】
本発明に係る水性分散液中の水の割合は、50重量%~80重量%、特に好ましくは55重量%~75重量%である。
【0040】
本発明に係る分散液は、N-メチルピロリドンを除いて、少なくとも1つの有機溶媒を最大10重量%までさらに含んでもよい。溶媒は、脂肪族、脂環式および芳香族炭化水素、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、ケトン、エステルおよびエーテルからなる群から選択されることが好ましい。明示的に言及できるのは、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、スチレン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メシチルオキシド、イソホロン、酢酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メチルグリコール、酢酸ブチルグリコール、酢酸エチルジグリコール、酢酸ブチルジグリコール、酢酸メトキシプロピル、酢酸エトキシプロピル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-イソプロポキシ-2-プロパノール、1-イソブトキシ-2-プロパノール、エチルグリコール、プロピルグリコール、ブチルグリコール、エチルジグリコール、ブチルジグリコール、メチルジプロピレングリコール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、およびトリエチレングリコールである。特に好ましいのは、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、およびトリプロピレングリコールである。
【0041】
本発明に係る分散液は、ラッカー産業で使用される着色顔料および結合剤をほとんど含まないことが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、二酸化ケイ素の割合は、分散液の固形分含有量の少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも98重量%である。分散液の固相がもっぱら二酸化ケイ素のみからなる実施形態が特に好ましい。
【0042】
本発明に係る分散液は、最大1重量%、好ましくは0重量%~0.5重量%のN-メチルピロリドンを含んでもよい。ただし、本発明の特に好ましい実施形態では、分散液は、N-メチルピロリドンを含まない。
【0043】
本発明に係る分散液に使用されるのは、2重量%~25重量%、好ましくは5重量%~15重量%の一般式R1O((CH2)mO)nH(式中、R1は、10~25個の炭素原子を有する分岐鎖または非分岐鎖のアルキルまたはアルケニルラジカルであり、m=2または3、かつn=10~50である。)で表されるアルコールアルコキシレートである。
【0044】
明示的に言及されるのは、CH3(CH2)10CH2O[(CH2)2O]18H、CH3(CH2)12CH2O[(CH2)2O]18H、CH3(CH2)14CH2O[(CH2)2O]18H、CH3(CH2)16CH2O[(CH2)2O]18H、CH3(CH2)10CH2O[(CH2)2O]20H;CH3(CH2)12CH2O[(CH2)2O]20H、CH3(CH2)14CH2O[(CH2)2O]20H、CH3(CH2)16CH2O[(CH2)2O]20H、CH3(CH2)10CH2O[(CH2)2O]23H、CH3(CH2)12CH2O[(CH2)2O]23H、CH3(CH2)14CH2O[(CH2)2O]23H、およびCH3(CH2)16CH2O[(CH2)2O]23Hである。
【0045】
本発明に係る分散液は、一般式R2R3Si(OR4)2(式中、R2、R3およびR4は、いずれの場合も、1~25個の炭素原子を有する分岐鎖または非分岐鎖のアルキルまたはアルケニルラジカルである。)で表される少なくとも1つのジアルコキシシランの加水分解によって得られる、0.1重量%~20重量%のシラノールを含む。
【0046】
ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、またはそれらの混合物を使用することが特に好ましい。
【0047】
本発明に係る分散液中に存在するシラノールは、好ましくは、一般式R
2R
3Si(OH)
2で表されるジアルキルジシラノール、および/または一般式:
【化3】
で表されるα、ω-ジヒドロキシジアルキルシロキサンである。
(式中、R
2およびR
3は、いずれの場合も、1~25個の炭素原子を有する分岐鎖または非分岐鎖のアルキルラジカルであり、wは1より大きい整数である。)
【0048】
本発明に係る分散液中の二酸化ケイ素に対するシラノールのモル比は、好ましくは0.01~0.5、特に好ましくは0.02~0.2、非常に特に好ましくは0.03~0.1である。
【0049】
本発明に係る分散液中のシラノールは、遊離形態で吸収されることができ、二酸化ケイ素表面に物理的に結合されることができる。この後者のタイプの結合は、シランでシリカを疎水化する場合などの化学結合とは区別される。本発明に係る分散液を乾燥させた後、残留物を水で繰り返し洗浄することにより、物理的に比較的弱く結合したシラノールを表面から簡単に除去することができる。対照的に、疎水化シリカのSiO2表面に化学的に結合したシリル基は、水で洗浄しても除去できない。
【0050】
本発明に係る分散液は、分子量が500g/mol未満の少なくとも1つのアミンおよび/またはアミノアルコールを0.5重量%~4重量%、好ましくは1.5重量%~4.0重量%、特に好ましくは2重量%~3重量%含む。
【0051】
アミンとして、例えば、アンモニア、一般式R7NH2で表される一級アミン、一般式R7R8NHで表される二級アミン、および/または一般式R7R8R9Nで表される三級アミンを使用することが可能である。式中、R7、R8、R9は、それぞれ独立して、1~25個の炭素原子を有する分岐鎖または非分岐鎖のアルキルラジカルである。
【0052】
アミノアルコールの語は、少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのヒドロキシル基を含む化合物を意味すると理解されるべきである。本発明で使用するアミノアルコールの分子量は、好ましくは50g/mol~500g/mol、特に好ましくは100g/mol~250g/molである。適切なアミノアルコールは、2-アミノエタノール、1-アミノエタノール、3-アミノ-1-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、2-アミノ-1-ブタノール、4-アミノ-1-ブタノール、1-アミノ-2-ブタノール、1-アミノ-3-ブタノール、3-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-1-シクロヘキサノール、3-アミノ-1-シクロヘキサノール、4-アミノ-1-シクロヘキサノール、2-アミノ-1-(ヒドロキシメチル)シクロペンタン、2-アミノ-1-ヘキサノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール、1-(アミノメチル)シクロヘキサノール、6-アミノ-2-メチル-2-ヘプタノール、2-アミノ-3-メチル-1-ペンタノール、2-アミノ-4-メチル-1-ペンタノール、2-アミノ-1-ペンタノール、5-アミノ-1-ペンタノール、1-アミノ-2,3-プロパンジオール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-((3-アミノプロピル)メチルアミノ)エタノール、1-(2-ジメチルアミノエトキシ)-2-プロパノール、1-(1-ジメチルアミノ-2-プロポキシ)-2-プロパノール、2-(1-ジメチルアミノ-2-プロポキシ)エタノール、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エタノール、および2-[2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エトキシ]エタノール、またはそれらの混合物である。
【0053】
N,N-ジメチルエタノールアミンおよびN,N-ジメチルイソプロパノールアミンなどのN,N-ジアルキルアルカノールアミンが特に好ましい。
【0054】
本発明に係る分散液は、0.1重量%~6.0重量%の少なくとも1つのポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールをさらに含む。平均分子量(質量平均)が100g/mol以上、特に好ましくは150g/mol~6,000g/molのポリプロピレングリコールが好ましい。
【0055】
本発明に係る分散液は、一般式(I)で表される少なくとも1つのコポリマーを0.1重量%~20重量%含む。
【化4】
【0056】
(式中、Zは、一般式(Ia)および/または(Ib)であり、
A
1は、エチレンラジカル、プロピレンラジカル、イソプロピレンラジカル、ブチレンラジカルであり、
aは、0~50であり、
kは、10~30である。)
【化5】
【0057】
(式中、Mは、水素、一価または二価の金属陽イオン、アンモニウムイオン、有機アミンラジカルであり、
cは、1、またはMが2価の金属陽イオンの場合は0.5であり、
Xは、-OMcまたは-O-(CpH2pO)q-R5(式中、R5は、H、1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素ラジカル、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素ラジカル、必要に応じて6~14個の炭素原子を有する置換アルキルラジカルであり、pは2~4、qは0~100、-NHR6および/または-NR6
2(式中、R6は、R5または-CO-NH2である。)である。)であり、
Yは、O、NR6であり、
bは、10~30であり、b+kは20~60である。)
【0058】
-(A1O)a-は、特定のアルキレンオキシドの1つのホモポリマー、またはポリマー分子内に2つ以上のモノマーがランダムに分布しているブロックコポリマーもしくはコポリマーのいずれかであってよい。単位[]bおよび[]kは、同様に、ポリマー分子内に2つ以上のモノマーがランダムに分布しているブロックコポリマーまたはコポリマーの形態であってよい。
【0059】
一価または二価の金属カチオンMとして好ましく使用されるのは、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムイオンである。有機アミンラジカルとして好ましく使用されるのは、一級、二級または三級のC1-~C20-アルキルアミン、C1-~C20-アルカノールアミン、C5-~C8-シクロアルキルアミン、およびC6-~C14-アリールアミンに由来する置換アンモニウム基である。対応するアミンの例は、プロトン化(アンモニウム)形態のメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミンである。
【0060】
好ましい実施形態では、p=2または3であり、基Xは、ポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシドに由来する。
【0061】
好ましく使用できるのは、一般式IaまたはIbで表されるコポリマーであり、式中、A1はエチレンラジカル、a=5~20、b+kの合計は、20~40の範囲である。
【0062】
さらに、消泡剤および防腐剤を本発明に係る分散液に添加することができる。分散液中のその割合は、一般に1重量%未満である。
【0063】
本発明はさらに、本発明に係る分散液を含むラッカー調製物を提供する。
【0064】
適切な結合剤は、例えば「Lackharze、Chemie、Eigenschaften und Anwendungen、D.Stoye、W.Freitag、Hanser Verlag編、ミュンヘン、ウィーン 1996年」に記載されているような、ラッカーおよびコーティング技術において慣習的な樹脂であってよい。
【0065】
例には、とりわけ、(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルのポリマーおよびコポリマー(必要に応じて、さらなる不飽和化合物(例:スチレン、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、およびエポキシ樹脂)とともに、さらなる官能基を有するもの)、さらにこれらのポリマーの任意の望ましい混合物、さらに重縮合によって生成された脂肪酸変性アルキド樹脂が含まれる。
【0066】
ポリマー成分としても使用できるのは、有機ヒドロキシル含有化合物(例:ポリアクリレート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリエーテル、ポリカーボネートおよびポリウレタンポリオール)、ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂、さらにこれらのポリマーの任意の望ましい混合物である。特に使用されるのは、水性または溶媒含有または無溶媒のポリアクリレートおよびポリエステルポリオール、ならびにそれらの任意の望ましい混合物である。
【0067】
ポリアクリレートポリオールは、ヒドロキシル含有モノマーと他のオレフィン的に不飽和のモノマー(例:(メタ)アクリル酸のエステル、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルエステル、マレイン酸およびフマル酸モノアルキルおよびジアルキルエステル、α-オレフィン、ならびに他の不飽和オリゴマーおよびポリマー)とのコポリマーである。
【0068】
本発明に係るラッカー調製物は、着色顔料および/または不活性充填剤をさらに含んでいてもよい。
【0069】
着色顔料は、有機性または無機性であってよい。例には、酸化鉛、ケイ酸鉛、酸化鉄、フタロシアニン錯体、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、バナジン酸ビスマス、スピネル混合酸化物(例:チタンクロム、チタンニッケルまたはスズ亜鉛スピネル混合酸化物)、小板状のメタリックまたは干渉顔料およびカーボンブラックが含まれる。
【0070】
本発明に係るラッカー調製物は、不活性充填剤をさらに含んでもよい。「不活性充填剤」とは、調整物のレオロジー特性にわずかな影響しか及ぼさない、当業者周知の充填剤を意味すると理解されるものとする。例としては、炭酸カルシウム、珪藻土、雲母、カオリン、チョーク、石英、およびタルクがある。
【0071】
着色顔料および/または不活性充填剤は、典型的には、調製物の総固形分に対し、合計で10重量%~70重量%、好ましくは30重量%~50重量%の割合で存在する。
【0072】
二酸化ケイ素粒子、結合剤、および必要に応じて着色顔料と不活性充填剤からなるラッカー調製物の総固形分は、ラッカー調製物の総質量に対し、10重量%~80重量%、特に好ましくは20重量%~70重量%、非常に特に好ましくは30重量%~60重量%である。
【0073】
本発明はさらに、自動車産業におけるハイドロフィラーへの添加剤として、水系UV硬化性配合物、水性クリアコートおよび着色コーティング系における添加剤としての本発明に係る分散液の使用に関する。
【0074】
本発明はさらに、11未満の分散液のpHで、一般式R2R3Si(OR4)2(式中、R2、R3およびR4は、いずれの場合も、1~25個の炭素原子を有する分岐鎖または非分岐鎖のアルキルまたはアルケニルラジカルである。)で表される少なくとも1つのジアルコキシシランを、50重量%~80重量%の水と10重量%~30重量%の親水性二酸化ケイ素とを含む混合物に添加する工程を含み、ジアルコキシシランの添加中および添加後の分散液の温度が40℃以下である、二酸化ケイ素含有水性分散液の製造方法に関する。
【0075】
分散液は、11未満、好ましくは9以上かつ11未満、特に好ましくは10以上かつ11未満のpHを有することが好ましい。
【0076】
シラン化温度は、好ましくは40℃未満、特に好ましくは30℃未満、特に好ましくは25℃未満である。
【0077】
本発明に係る方法で使用される親水性二酸化ケイ素は、好ましくは、30m2/g~410m2/gのBET表面積を有するヒュームドシリカである。
【0078】
本発明に係る方法で使用される親水性二酸化ケイ素は、粉末形であることが好ましい。
【0079】
使用される二酸化ケイ素に対する、本発明に係る方法で使用されるジアルコキシシランのモル比は、好ましくは0.02~0.2、特に好ましくは0.03~0.1である。
【0080】
上記の本発明に係る分散液は、例えば、本発明に係る方法により製造されることができる。
【0081】
本発明に係る方法は、好ましくは、ジアルコキシシランが、親水性二酸化ケイ素の微細に分散された水性混合物に添加されるように実施される。この水性混合物中の二酸化ケイ素粒子は、好ましくは、最大で300nm、特に好ましくは100nm~250nmの数値平均粒径(d50)を有する。数値平均粒径は、レーザ回折粒径分析によってISO13320:2009に準拠して測定されてよい。本発明の方法で使用される二酸化ケイ素を含む水性混合物は、少なくとも2,000rpm(ディスク直径40mm)、特に好ましくは少なくとも4,000rpm(ディスク直径40mm)の回転速度で、親水性二酸化ケイ素を水性混合物に添加することによって生成されることが好ましい。これにより、使用されるジアルコキシシランの加水分解によって形成されるシラノールが、細かく分布した二酸化ケイ素の表面に、最適に付着および/または物理的に結合することが確保される。
【0082】
シラノールを親水性二酸化ケイ素の水性混合物へ添加する際に反応混合物を撹拌すると、さらに有利であることが証明されている。
【0083】
本発明に係る方法を実施する場合、水性分散液は、ジアルコキシシランの添加中および添加後に、少なくとも100rpmかつ最大500rpm(いずれの場合もディスク直径40mm)の回転速度で攪拌される。
【0084】
本発明に係る方法、特に二酸化ケイ素およびジアルコキシシランの添加は、例えば、分散装置において実施されることができる。そのような分散装置として適切な装置には、粉状または粒状の二酸化ケイ素を水相で集中的に濡らすことができるすべての装置が含まれる。ラッカー業界では通常、この目的のためにいわゆるディゾルバーが使用される。その比較的単純な構造により、メンテナンスが少なく、かつ洗浄が容易な製造方式が可能になる。ただし、生成されるべき水性分散液に必要な粘度や充填レベルに応じて、強力分散や事後ミリング加工が依然として必要である。事後ミリング加工は、例えば、攪拌ビーズミルで実施されてよい。ただし、多くの場合、ローター/ステーターマシンを使用した強力せん断で十分である。湿潤および分散設備の便利な組み合わせは、Ystral社製のローター/ステーターマシンによって提供され、それは、粉末を吸引し、粉末吸引開口部を閉じた後、強力なせん断力によって分散させる。
【0085】
特に、空気を吸引し、したがって泡が形成され得るローター/ステーターマシンを使用する場合は、必要な水と添加剤の一部のみを最初に充填し、二酸化ケイ素の一部を組み込むことが有利であることが証明されている。組み込まれるべき二酸化ケイ素全体に対し、特定量(約25重量%~30重量%)を超える二酸化ケイ素が組み込まれると、その消泡効果は明らかである。すべての粉末を添加した後にのみ、残りの割合の水を添加する。これにより、粉末の添加開始時における最初の泡形成のために、補給容器内に十分な容量が確保される。
【0086】
本発明に係る分散液の均一性を確保するために、特に貯蔵安定性の高い充填二酸化ケイ素含有分散液の場合、成分の段階的混合が有利に行われてよい。
【0087】
本発明の特に好ましい実施形態では、ジアルコキシシラン添加後の水性分散液を、0~40℃の温度で少なくとも24時間、特に好ましくは少なくとも36時間、とりわけ好ましくは少なくとも48時間熟成する。このような熟成期間の後、例えば、ラッカーで生成された分散液を使用すると、最適なレオロジー結果が得られる。
【0088】
以下の実施例は、単に本発明を当業者に説明するために提供されており、特許請求の範囲に記載された分散液または特許請求の範囲に記載された方法のいかなる制限も構成しない。
【実施例】
【0089】
1.分散液の生成
比較例1~4、実施例3~5
初めに、ディスク直径が40mmのディゾルバー(Dispermill Vango 100、製造元:ATP Engineering B.V.社)を使用して、2,500rpm~5,000rpmかつ室温で30分かけて、ジアルコキシシラン以外の表1の分散液の液体成分すべてを混合することにより、分散液を生成した。次に、撹拌しながら二酸化ケイ素粉末を添加し、初めに、ディゾルバーを使用して、2,500rpm~5,000rpmで冷却することなく15~65分間予備分散させ、その後、ローターステーターUltra-Turrax(Polytron 6000、ディスク直径:35mm)を使用して、7,000rpm~10,000rpmで、20℃で水冷しながら、30分かけて分散させた。続いて、ディゾルバーを使用して、100rpm~500rpmで、20℃にさらに冷却しながら、ジアルコキシシランを20℃で攪拌しながら添加し、当該混合物を一定条件下、15分間さらに攪拌した。
分散液の組成およびそれらの物理化学的特性を表1にまとめた。実施例1および2は、本発明に係る分散液のプレミックスである(実施例3~5)。
従って、実施例1および2は、本発明において参考例となるものである。
【0090】
メタノールの濡れ性の測定
各分散液中に存在するシリカの疎水性を測定するために、特定の分散液(25g)を乾燥キャビネット内で40℃で72時間乾燥させた。残留物(5g)を遠心分離管内の水(30mL)に取り、振とうして均質化し、次いで遠心分離機(Sorvall RC-28S)で毎分20,000回転で2時間遠心分離した。次いで、遠心分離物を上記のようにこの方法で10回洗浄し、乾燥キャビネット内で40℃で72時間かけて乾燥させた。
メタノールの濡れ性の方法を使用して、疎水性成分となり得るものについて、残留物を試験した。
メタノールの濡れ性の測定では、いずれの場合も、0.2gの固形物質を透明な遠心分離管に量り入れた。それぞれ、10体積%、20体積%、30体積%、40体積%、50体積%、60体積%、70体積%および80体積%のメタノールを使用する8.0mLメタノール-水混合物を、秤量された各分量に添加した。密封したチューブを30秒間振とうした後、2500min
-1で5分間遠心分離した。沈殿物の体積を読み取って百分率に変換し、グラフにメタノール含有量(体積%)に対してプロットした。曲線の変曲点は、メタノールの濡れ性に対応する。
本発明に係る分散液P5-1~P5-3は、固形分含有量が約17%と高いにもかかわらず、生成後24時間で低粘度となる。
0.5sec
1での粘度(Rheometer Physica MCR 300を使用して測定、製造元:Anton Paar GmbH社、アルミニウムまたはステンレス鋼からなるサンプルチューブ、回転体CC27)は、4週間以上貯蔵しても大幅に増加しなかった(表1aを参照)。したがって、本発明に係る分散液は、取り扱いが容易であり、例えば、パイプラインを介してポンプ輸送可能な状態をキープできる。
【表1a】
【0091】
疎水性二酸化ケイ素粒子は、分散液P2、特に分散液P3に適切に分散させることはもはやできない。粒径(d
95)は、例えばP3では10,000nmを超えるため、そのような分散液は高品質のラッカーにはもはや使用できない。対照的に、本発明に係る分散液P5-1~P5-3は、容易に生成でき、粗い粒子がないので、高品質のラッカーの製造に非常に適している。
【表1】
【0092】
a:R972=BET90m2/g~130m2/gの疎水性シリカ、疎水化剤ジメチルジクロロシラン、製造元:Evonik Resource Efficiency GmbH社
b:R974=BET150m2/g~190m2/gの疎水性シリカ、疎水化剤ジメチルジクロロシラン、製造元:Evonik Resource Efficiency GmbH社
c:R976S=BET225m2/g~275m2/gの疎水性シリカ、疎水化剤ジメチルジクロロシラン、製造元:Evonik Resource Efficiency GmbH社
d:AE300=Aerosil(登録商標)300、BET300m2/gの親水性シリカ、製造元:Evonik Resource Efficiency GmbH社
e:Byk011=消泡剤、製造元:BYK Additives&Instruments社
f:TEGO DISPERS(登録商標)760W=分散剤、製造元:Evonik Resource EfficiencyGmbH社
g:Surfynol(登録商標)104E=非イオン性界面活性剤、製造元:Resource Efficiency GmbH社
h:P4を介して添加される。
i:P5-0を介して添加される。
【0093】
2.二酸化ケイ素含有分散液を用いたラッカーの製造
比較例5~8、実施例6~8
プロペラスターラー(製造元:Heidolph社)を使用して室温で1,000rpmで攪拌した水性ポリウレタンアクリレートハイブリッド分散液(Ecrothan 2012)に、表2記載の他のラッカー成分を添加し、続いて各二酸化ケイ素含有分散液を添加した。このようにして得られたラッカー分散液を1,000rpmで10分間さらに撹拌した。
水系ラッカー配合物の組成およびそれらの物理化学的特性を表2にまとめた。
【0094】
透明度(ジェットネス値)の測定
機器:Grethag Macbeth社製の濃度計D19C
クリアコートの透明度については、濃度計を使用して、乾燥ラッカーフィルムの黒色値MYで測定できる。ガラス板に適用され、黒色コーティングパネル(Q-Panel DT 36)に配置されたラッカーフィルムで測定を行った。
適用:150μmのバーアプリケーターを2mmの透明ガラスシートに適用。
乾燥条件:室温での換気および乾燥。
測定の前に、試験対象のラッカーが塗布された試験パネルの表面がきれいであることを確認した。
測定器を試験パネルの測定開口部に配置した。親指で測定ボタンを押し、測定を開始した。
黒色値MYについて、ガラス板ごとに5回の測定を行い、そこから平均値を計算した。結果を濃度計値(DB)として表示した。最小値と最大値の間の最大許容偏差は、最大でDB=0.05でなければならない。
結果を、濃度計値から次のようにして計算される黒色値MYとして示した:
MY=DB×100。
【0095】
チキソトロピー指数の測定
チキソトロピー指数の測定を、製造後24時間以内の粘度測定(測定器:Rheometer Physica MCR 300、製造元:Anton Paar GmbH社、アルミニウムまたはステンレス鋼からなるサンプルチューブ、回転体CC27)によって行った。
チキソトロピー指数T
i=0.5rpmでの粘度/500rpmでの粘度
対応する粘度値は、低下する流動曲線から取得した。
流動曲線を形成するパラメータ:
【化6】
【0096】
チキソトロピー指数は、ラッカー中の分散液のレオロジー効果の尺度である。この指数が高いほど、ラッカーが垂直面から流れ落ちる傾向が低くなる。
予想通り、二酸化ケイ素含有分散液を含むラッカーはすべて、SiO
2を含まない純粋なクリアコートよりもいくらか低い透明度(ジェットネス値)を示した(比較例5、表2)。しかし、純粋なクリアコートは、SiO
2含有ペーストで変性されたラッカーよりも実質的に低いチキソトロピー指数を示した(表2)。
本発明の分散液P5-1(実施例6)、P5-2(実施例7)、およびP5-3(実施例8)を含むラッカーは、親水性シリカAEROSIL(登録商標)300を含むがDMEAおよび/またはジアルコキシシラン(分散液P4およびP5-0、比較例7および8)または疎水化シリカAEROSIL(登録商標)R972(分散液P1、比較例6)は含まないラッカーよりも、実質的に高いチキソトロピー指数と透明度(ジェットネス)値を有していた。
親水性シリカはすべて、水性混合物に非常に簡単かつ迅速に(15分)組み込まれることができるが、一方、疎水性シリカはこれにかなり長い時間が必要である(40分~65分、比較例2~4)。
【表2】
【0097】
a:Ecrothan 2012=水性ポリウレタンアクリレートハイブリッド分散液、製造元:Michelman INC社。
b:PnB=Solvenon(登録商標)PnB、プロピレングリコールモノブチルエーテル1-ブトキシ-2-プロパノール、製造元:BASF SE社。
c:DPnB=Solvenon(登録商標)DPnB、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルブトキシジプロパノール異性体混合物、製造元:BASF SE社。
d:Tego Foamex(登録商標)805N=消泡剤、製造元:Evonik Resource Efficiency GmbH社。
e:BYK 346=シリコーン界面活性剤、製造元:BYK Additives&Instruments社。
【0098】
3.さまざまなアミン濃度のSiO
2含有水性分散液の生成
比較例4a、発明例4b~4d
初めに、ディスク直径が40mmのディゾルバー(Dispermill Vango 100、製造元:ATP Engineering B.V.社)を使用して、2,500rpm~5,000rpmかつ室温で30分かけて、ジアルコキシシラン以外の表3の分散液の液体成分すべてを混合することにより、分散液を生成した。次に、撹拌しながら二酸化ケイ素粉末を添加し、初めに、ディゾルバーを使用して、2,500rpm~5,000rpmで冷却することなく15~65分間予備分散させ、その後、ローターステーターUltra-Turrax(Polytron 6000、ディスク直径:35mm)を使用して、7,000rpm~10,000rpmで、20℃で水冷しながら、30分かけて分散させた。続いて、ディゾルバーを使用して、100rpm~500rpmで、28℃にさらに冷却しながら、ジアルコキシシランを28℃で攪拌しながら添加し、当該混合物を一定条件下、15分間さらに攪拌した。
分散液の組成およびそれらの物理化学的特性を表3にまとめた。
DMEAを使用しない比較例4aが堅固であることが示された。
最大4重量%までのDMEAを使用すれば、本発明の分散液は、処理可能な粘度を有する。
【表3】
【0099】
a:TEGO DISPERS(登録商標)760W=分散剤、製造元:Evonik Resource Efficiency GmbH社。
b:Aerosil(登録商標)300、BET=300m2/gの親水性シリカ、製造元:Evonik Resource Efficiency GmbH社。
c:水で5%に希釈した後。
d:Rheometer Physica MCR 300で測定、製造元:Anton Paar GmbH社、アルミニウムまたはステンレス鋼からなるサンプルチューブ、回転体CC27。
【0100】
4.シラン化温度を変化させたSiO
2含有水性分散液の生成と、ラッカー系での試験
比較例4c***、発明例4c、4c*、4c**
実施例4cの配合に基づいて、シラン化温度の影響を調査した(表3を参照)。
23℃、28℃、37℃および60℃のシラン化温度で反応を実施した。
分散液とラッカーの物理化学的性質は表4から明らかである。
60℃のシラン化温度は、堅固な分散液をもたらした(比較例4c***)。
本発明の実施例4c、4c*、4c**はすべてポンプ輸送可能であり、したがって主として取り扱いが容易であり、Ecrothanラッカー中でのチキソトロピーは所望の増加を示した(表4を参照)。
シラン化温度が40℃を超えると、有毒性と分類される副産物として、D
4が形成されることも実証された。D
4は、0.4ppmの信号を積分することにより、
1H-NMR分光法で測定され、DMEAは内部標準として機能する(
1H-NMR、Bruker社、600MHz、溶媒:DMSO)。
【表4】
【0101】
a:Ecrothan 2012=水性ポリウレタンアクリレートハイブリッド分散液、製造元:Michelman INC社。
b:PnB=Solvenon(登録商標)PnB、プロピレングリコールモノブチルエーテル1-ブトキシ-2-プロパノール、製造元:BASF SE社。
c:DPnB=Solvenon(登録商標)DPnB、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルブトキシジプロパノール異性体混合物、製造元:BASF SE社。
d:Tego Foamex(登録商標)805N=消泡剤、製造元:Evonik Resource Efficiency GmbH社。
e:BYK 346=シリコーン界面活性剤、製造元:BYK Additives&Instruments社。
f:Rheometer Physica MCR 300で測定、製造元:Anton Paar GmbH社、アルミニウムまたはステンレス鋼からなるサンプルチューブ、回転体CC27。