(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】高周波多重励起データを使用した蛍光イメージングのスペクトルアンミックス
(51)【国際特許分類】
G01N 15/1429 20240101AFI20240110BHJP
G01N 15/0227 20240101ALI20240110BHJP
G01N 15/14 20240101ALI20240110BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01N15/14 B
G01N15/02 C
G01N15/14 C
G01N21/64 Z
G01N15/14 K
(21)【出願番号】P 2021555355
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 US2020022421
(87)【国際公開番号】W WO2020197787
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-10
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】バール,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】オウズリー,キーガン
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-521316(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0268981(US,A1)
【文献】特表2006-506052(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0051665(US,A1)
【文献】国際公開第2015/066552(WO,A1)
【文献】国際公開第1997/15229(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0129213(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/14
G01N 15/02
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの複数の細胞を選別するための方法であって、
ハードウェアプロセッサの制御下で、
複数の細胞を含むサンプルの細胞に関連する複数の発蛍光団からの異なる波長での蛍光放出の、時間空間内の前記複数の発蛍光団に対応する、蛍光強度データの複数のチャネルを受信することであって、前記蛍光放出は、複数の異なる光周波数を有するレーザービームで前記細胞を照射した後に引き出される、受信すること、
前記蛍光強度データの複数のチャネルから周波数空間内の複素数値を含む複数の生画像を生成すること、
前記複数の生画像の対応する複素数値のアンミックス行列を使用して、前記複数の生画像からの前記周波数空間に複素数値または実数値を含む複数のアンミックス画像を生成すること、および
前記複数のアンミックス画像に基づいて前記細胞の選別判断を決定すること
を含む方法。
【請求項2】
前記蛍光強度データの前記複数のチャネルのそれぞれについて1つ以上のチャネル位相調整を使用して、前記複数の生画像から前記周波数空間に複素数値を含む複数の位相調整画像を生成することを含み、前記複数のアンミックス画像を生成することは、前記複数の位相調整画像の対応する複素数値のアンミックス行列を使用して、前記複数の位相調整画像から前記複数のアンミックス画像を生成することを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のアンミックス画像を生成することは、
複数の位相調整画像の対応ピクセルの複素数値を含むベクトルを生成すること、
前記ベクトルに前記アンミックス行列を乗算して、アンミックス複素数値を含むアンミックスベクトルを生成すること、および
前記アンミックス複素数値を有する前記対応ピクセルを含む前記複数のアンミックス画像を生成すること
を含む、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項4】
複数の位相補正画像から補正蛍光強度データの複数のチャネルを生成することを含
み、好ましくは、補正蛍光強度データの前記複数のチャネルを生成することは、周波数空間から時間空間への変換を使用して、前記複数の位相補正画像から補正蛍光強度データの前記複数のチャネルを生成することを含み、
より好ましくは、補正蛍光強度データの前記複数のチャネルに基づいて前記細胞の特性の推定値を決定することを含み、前記選別判断を決定することは、前記細胞の前記特性の前記推定値に基づいて前記細胞の前記選別判断を決定することを含み、
さらに好ましくは、前記細胞の前記特性は、前記細胞のサイズ、2つの異なる次元における前記細胞のサイズの比率、前記細胞に関連する前記複数の発蛍光団のうちの2つ以上による蛍光放出の共局在化、細胞質および前記細胞の核のサイズの比率、前記細胞の蛍光放出の点状性の程度、前記蛍光放出の空間分布の測定値、前記細胞の位置または配向の測定値、前記細胞の偏心の測定値、参照細胞に対する前記細胞の類似性の測定値、前記細胞が前記レーザービームの焦点に存在する程度の測定値、またはそれらの組み合わせを含む、
請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
複数の細胞を含むサンプルの細胞に関連する複数の発蛍光団の異なる波長での蛍光放出を引き出すための複数の異なる光周波数を有するレーザービームを生成するように構成されたレーザー光源と、
前記複数の発蛍光団の前記蛍光放出を検出するように構成された複数の光検出器と、
実行可能命令を格納するように構成された非一時メモリと、
前記非一時メモリと通信するプロセッサであって、前記プロセッサは、
前記細胞に関連する前記複数の発蛍光団からの前記異なる波長での前記蛍光放出の、時間空間内の前記複数の発蛍光団に対応する蛍光強度データの複数のチャネルを受信し、前記蛍光放出は、前記複数の光検出器によって検出され、前記細胞が前記レーザー光源によって照射された後に前記蛍光放出が引き出され、
蛍光強度データの前記複数のチャネルから周波数空間内の複素数値を含む複数の生画像を生成し、
前記複数の生画像の対応する複素数値のアンミックス行列を使用して、前記複数の生画像から前記周波数空間に複素数値または実数値を含む複数のアンミックス画像を生成し、および
前記複数のアンミックス画像に基づいて前記細胞の選別判断を決定する
ように、前記実行可能命令によってプログラムされたプロセッサと
を含む、セルソーターシステム。
【請求項6】
蛍光強度データの前記複数のチャネルを受信するために、前記プロセッサは、
前記レーザービームに、前記細胞に関連する複数の発蛍光団の蛍光放出を引き出すために前記細胞を照射させ、および
前記複数の光検出器に前記異なる波長での前記蛍光放出を検出させて、前記時間空間内の前記複数の発蛍光団に対応する蛍光強度データの前記複数のチャネルを取得する
ように、前記実行可能命令によってプログラムされる、
請求項
5に記載のセルソーターシステム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記蛍光強度データの前記複数のチャネルのそれぞれについて1つ以上のチャネル位相調整を使用して、前記複数の生画像から前記周波数空間に複素数値を含む複数の位相調整画像を生成するように、前記実行可能命令によってプログラムされ、および
前記複数のアンミックス画像を生成するために、前記プロセッサは、前記複数の位相調整画像の前記対応する複素数値の前記アンミックス行列を使用して、前記複数の位相調整画像から前記複数のアンミックス画像を生成するように、前記実行可能命令によってプログラムされる、
請求項
5または6に記載のセルソーターシステム。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記複数の発蛍光団のそれぞれの属性に基づいて、前記複数のアンミックス画像から前記周波数空間に複素数値を含
む複数の位相補正画像を生成するように、前記実行可能命令によってプログラムされ、および
前記選別判断を決定するために、前記プロセッサは、前記複数の位相補正画像に基づいて前記細胞の前記選別判断を決定するように、前記実行可能命令によってプログラムされ
ており、
好ましくは、前記複数の位相補正画像は、前記複数の位相補正画像の前記複素数値または実数値の複数のピクセルを含む、
請求項
5~7のいずれか一項に記載のセルソーターシステム。
【請求項9】
前記複数のアンミックス画像を生成するために、前記プロセッサは、
複数の位相調整画像の対応ピクセルの複素数値を含むベクトルを生成し、
前記ベクトルに前記アンミックス行列を乗算して、アンミックス複素数値を含むアンミックスベクトルを生成し、および
前記アンミックス複素数値を有する前記対応ピクセルを含む前記複数のアンミックス画像を生成する
ように、前記実行可能命令によってプログラムされ
ており、
好ましくは、前記ベクトルは、1×n
1
のサイズを有し、前記アンミックス行列は、n
1
×n
2
のサイズを有し、および/または前記アンミックスベクトルは、1×n
2
のサイズを有する、
請求項
5~8のいずれか一項に記載のセルソーターシステム。
【請求項10】
前記複数の生画像は、第1の時間次元および第1の周波数次元に関連し、
複数の位相調整画像は、第2の時間次元および第2の周波数次元に関連し、
複数のアンミックス画像は、第3の時間次元および第3の周波数次元に関連し、および/または
複数の位相補正画像は、第4の時間次元および第4の周波数次元に関連
しており、
好ましくは、前記第1の時間次元、前記第2の時間次元、前記第3の時間次元、および前記第4の時間次元のうちの2つ以上は、前記次元に沿って同一のサイズおよび/または同一のピクセル数を有しており、
より好ましくは、前記第1の時間次元、前記第2の時間次元、前記第3の時間次元、および前記第4の時間次元は、前記同一のサイズおよび/または前記同一のピクセル数を有しており、
さらに好ましくは、前記第1の周波数次元、前記第2の周波数次元、前記第3の周波数次元、および/または前記第4の周波数次元は、m
2
のサイズおよび/またはm
2
個のピクセルを有する、
請求項
5~9のいずれか一項に記載のセルソーターシステム。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか一項に記載のサンプルの複数の細胞を選別するための方法に使用される、請求項5~10のいずれか一項に記載のセルソーターシステム。
【請求項12】
サンプルの複数の細胞を選別するための方法であって、
ハードウェアプロセッサの制御下で、
複数の異なる光周波数を有するレーザービームで複数の細胞を含むサンプルの細胞を照射して、前記細胞に関連する複数の発蛍光団の蛍光放出を引き出すこと、
異なる波長での前記蛍光放出を検出して、時間空間内の前記複数の発蛍光団に対応する蛍光強度データの複数のチャネルを取得すること、
前記蛍光強度データの複数のチャネルから、周波数空間内の複素数値の複数のピクセルを含む複数の生画像を生成すること、
前記蛍光強度データの複数のチャネルのそれぞれについて1つ以上のチャネル位相調整を使用して、前記複数の生画像から前記周波数空間に複素数値の複数のピクセルを含む複数の位相調整画像を生成すること、
前記複数の位相調整画像の対応ピクセルの前記複素数値のアンミックス行列を使用して、前記複数の位相調整画像から前記周波数空間に複素数値の複数のピクセルを含む複数のアンミックス画像を生成すること、
前記複数の発蛍光団のそれぞれの属性に基づいて、前記複数のアンミックス画像から前記周波数空間に複素数値または実数値の複数のピクセルを含む複数の位相補正画像を生成すること、および
前記複数の位相補正画像に基づいて前記細胞の選別判断を決定すること
を
含んでおり、
好ましくは、請求項5~10のいずれか一項に記載のセルソーターシステムを使用する、
方法。
【請求項13】
サンプルの複数の細胞を選別するための方法であって、
ハードウェアプロセッサの制御下で、
複数の異なる光周波数を有するレーザービームで複数の細胞を含むサンプルの細胞を照射して、前記細胞に関連する複数の発蛍光団の蛍光放出を引き出すこと、
異なる波長での前記蛍光放出を検出して、時間空間内の前記複数の発蛍光団に対応する蛍光強度データの複数のチャネルを取得すること、
前記蛍光強度データの複数のチャネルから周波数空間内の複素数値を含む複数の生画像を生成すること、
前記複数の生画像の対応する複素数値のアンミックス行列を使用して、前記複数の生画像から前記周波数空間に複素数値または実数値を含む複数のアンミックス画像を生成すること、および
前記複数のアンミックス画像に基づいて前記細胞の選別判断を決定すること
を
含んでおり、
好ましくは、請求項5~10のいずれか一項に記載のセルソーターシステムを使用する、
方法。
【請求項14】
複数の細胞を含むサンプルの細胞に関連する複数の発蛍光団の異なる波長で蛍光放出を引き出すための複数の異なる光周波数を有するレーザービームを生成するように構成されたレーザー光源と、
前記複数の発蛍光団の前記蛍光放出を検出するように構成された複数の光検出器と、
実行可能命令を格納するように構成された非一時メモリと、
前記非一時メモリと通信するプロセッサであって、前記プロセッサは、
前記レーザービームを前記細胞に照射させて、前記細胞に関連する複数の発蛍光団の蛍光放出を引き出させ、
前記複数の光検出器に前記異なる波長での前記蛍光放出を検出させて、時間空間内の前記複数の発蛍光団に対応する蛍光強度データの複数のチャネルを取得し、
蛍光強度データの前記複数のチャネルから、周波数空間に複素数値の複数のピクセルを含む複数の生画像を生成し、
前記蛍光強度データの前記複数のチャネルのそれぞれについて1つ以上のチャネル位相調整を使用して、前記複数の生画像から前記周波数空間に複素数値の複数のピクセルを含む複数の位相調整画像を生成し、
前記複数の位相調整画像の対応ピクセルの前記複素数値のアンミックス行列を使用して、前記複数の位相調整画像から前記周波数空間に複素数値の複数のピクセルを含む複数のアンミックス画像を生成し、
前記複数の発蛍光団のそれぞれの属性に基づいて、前記複数のアンミックス画像から前記周波数空間に複素数値または実数値の複数のピクセルを含む複数の位相補正画像を生成し、および
前記複数の位相補正画像に基づいて前記細胞の選別判断を決定する
ように、前記実行可能命令によってプログラムされたプロセッサと
を
含んでおり、
好ましくは、請求項1~4のいずれか一項に記載のサンプルの複数の細胞を選別するための方法に使用される、セルソーターシステム。
【請求項15】
複数の細胞を含むサンプルの細胞に関連する複数の発蛍光団の異なる波長で蛍光放出を引き出すための複数の異なる光周波数を有するレーザービームを生成するように構成されたレーザー光源と、
前記複数の発蛍光団の前記蛍光放出を検出するように構成された複数の光検出器と、
実行可能命令を格納するように構成された非一時メモリと、
前記非一時メモリと通信するプロセッサであって、前記プロセッサは、
前記レーザービームを前記細胞に照射させて、前記細胞に関連する複数の発蛍光団の蛍光放出を引き出させ、
前記複数の光検出器に前記異なる波長での前記蛍光放出を検出させて、時間空間内の前記複数の発蛍光団に対応する蛍光強度データの複数のチャネルを取得し、
蛍光強度データの前記複数のチャネルから周波数空間に複素数値を含む複数の生画像を生成し、
前記複数の生画像の対応する複素数値のアンミックス行列を使用して、前記複数の生画像から前記周波数空間に複素数値または実数値を含む複数のアンミックス画像を生成し、および
前記複数のアンミックス画像に基づいて前記細胞の選別判断を決定する
ように、前記実行可能命令によってプログラムされたプロセッサと
を
含んでおり、
好ましくは、請求項1~4のいずれか一項に記載のサンプルの複数の細胞を選別するための方法に使用される、セルソーターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、例えばサンプルの蛍光分析を介して、フローサイトメーターを流れる粒子の特性を決定するためのデバイスおよび方法に関し、より具体的には、粒子を選別する、例えば、フローサイトメーター中の細胞を、例えばそれらの特性に基づいて選別するためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異種集団からの亜集団またはたった1つの細胞の単離は、現代の生物学および生物医学において様々な用途を有する。細胞亜集団を分離するためのいくつかの従来の技術には、蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気活性化細胞選別(MACS)、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション、およびDEPアレイ選別が含まれる。これらの技術は、細胞選別用途で日常的に採用されているが、多数の欠点がある。例えば、細胞生物学のすべての分野にわたって広く使用されているFACSは、細胞内分解能が不足しているため、細胞のパラメーターの平均のみに基づいて選別判定を行う。また、細胞画像化に基づく従来の選別方法は、選別判断を行う際のその待ち時間が長いため、概してハイスループット細胞分離用途で使用することはできない。したがって、例えばフローサイトメトリーシステムにおいて、細胞を選別するための改善された方法およびシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本明細書の開示には、サンプルの複数の細胞を選別するためのシステム、デバイス、および方法の実施形態が含まれる。本方法は、ハードウェアプロセッサ(または概して仮想プロセッサなどのプロセッサ)の制御下で、複数の異なる光周波数を有するレーザービームで複数の細胞を含むサンプルの細胞を照射して、細胞に関連する複数の発蛍光団の蛍光放出を引き出すことを含む。本方法は、異なる波長での蛍光放出を検出して、時間空間内の複数の発蛍光団に対応する蛍光強度データの複数のチャネルを取得することを含むことができる。本方法は、蛍光強度データの複数のチャネルから、周波数空間内の複素数値の複数のピクセルを含む複数の生画像を生成することを含むことができる。本方法は、蛍光強度データの複数のチャネルのそれぞれについて1つ以上のチャネル位相調整を使用して、複数の生画像から周波数空間に複素数値の複数のピクセルを含む複数の位相調整画像を生成することを含むことができる。本方法は、複数の位相調整画像の対応ピクセルの複素数値のアンミックス行列を使用して、複数の位相調整画像から周波数空間に複素数値の複数のピクセルを含む複数のアンミックス画像を生成することを含むことができる。本方法は、複数の発蛍光団のそれぞれの属性に基づいて、複数のアンミックス画像から周波数空間に複素数値または実数値の複数のピクセルを含む複数の位相補正画像を生成することを含むことができる。本方法は、複数の位相補正画像に基づいて細胞の選別判断を決定することを含むことができる。
【0004】
本明細書の開示には、サンプルの複数の細胞を選別するための方法の実施形態が含まれる。本方法は、プロセッサ(例えば、ハードウェアプロセッサ、および仮想プロセッサ)の制御下で、複数の異なる光周波数を有するレーザービームで複数の細胞を含むサンプルの細胞を照射して、細胞に関連する複数の発蛍光団の蛍光放出を引き出すことを含む。本方法は、異なる波長での蛍光放出を検出して、時間空間内の複数の発蛍光団に対応する蛍光強度データの複数のチャネルを取得することを含むことができる。本方法は、蛍光強度データの複数のチャネルから周波数空間内の複素数値を含む複数の生画像を生成することを含むことができる。本方法は、複数の生画像の対応する複素数値上のアンミックス行列を使用して、複数の生画像から周波数空間に複素数値または実数値を含む複数のアンミックス画像を生成することを含むことができる。本方法は、複数のアンミックス画像に基づいて細胞の選別判断を決定することを含むことができる。
【0005】
本明細書の開示には、サンプルの複数の細胞を選別するための方法の実施形態が含まれる。本方法は、ハードウェアプロセッサの制御下で、複数の細胞を含むサンプルの細胞に関連する複数の発蛍光団からの異なる波長での蛍光放出の、時間空間内の複数の発蛍光団に対応する、蛍光強度データの複数のチャネルを受信することを含むことができる。蛍光放出は、複数の異なる光周波数を有するレーザービームで細胞を照射した後に引き出すことができる。本方法は、蛍光強度データの複数のチャネルから周波数空間内の複素数値を含む複数の生画像を生成することを含むことができる。本方法は、複数の生画像の対応する複素数値のアンミックス行列を使用して、複数の生画像からの周波数空間における複素数値または実数値を含む複数のアンミックス画像を生成することを含むことができる。本方法は、複数のアンミックス画像に基づいて細胞の選別判断を決定することを含むことができる。本方法は、時間空間における蛍光強度データの複数のチャネルの蛍光放出を引き出すために、レーザービームで細胞を照射することを含むことができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、複数の生画像は、複数の生画像の複素数値の複数のピクセルを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、蛍光強度データの複数のチャネルのそれぞれについて1つ以上のチャネル位相調整を使用して、複数の生画像から周波数空間内の複素数値を含む複数の位相調整画像を生成することを含むことができ、ここで、複数のアンミックス画像を生成することは、複数の位相調整画像の対応する複素数値のアンミックス行列を使用して、複数の位相調整画像から複数のアンミックス画像を生成することを含む。複数の位相調整画像は、複数の位相調整画像の複素数値の複数のピクセルを含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、複数の発蛍光団のそれぞれの属性に基づいて、複数のアンミックス画像から周波数空間内の複素数値を含む複数の位相補正画像を生成することを含むことができ、ここで、選別判断を決定することは、複数の位相補正画像に基づいて細胞についての選別判断を決定することを含む。複数の位相補正画像は、複数の位相補正画像の複素数値の複数のピクセルを含むことができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、複数の生画像を生成することは、時間空間から周波数空間への変換を使用して、蛍光強度データの複数のチャネルから周波数空間で複数の生画像を生成することを含む。時間空間から周波数空間への変換は、フーリエ変換を含むことができる。フーリエ変換は、離散フーリエ変換を含むことができる。離散フーリエ変換は、高速フーリエ変換を含むことができる。フーリエ変換は、スライディングウィンドウフーリエ変換を含むことができる。スライディングウィンドウフーリエ変換のスライディングウィンドウは、m1のサイズを有することができる。複数の生画像を生成することは、時間空間から周波数空間への変換を表す時間から周波数への変換行列を使用して複数の生画像を生成することを含むことができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、1つ以上のチャネル位相は、複数のチャネルのそれぞれについての、明視野位相、較正位相、および、位相オフセットを含む。1つ以上のチャネル位相調整により、明視野位相、較正位相、および、位相オフセットなどのチャネル位相を補正または考慮することができる。複数の位相調整画像を生成することは、複数のチャネルの各チャネルについて、チャネルに対応する複数の生画像のうちの生画像の複素数値を乗算して、チャネルに対応する複数の位相調整画像のうちの位相調整画像を生成することを含むことができる。1つ以上のチャネル位相調整は、複素数値を含むか、またはそれのみを含むことができる。1つ以上のチャネル位相調整は、それまたは実数値を含むことができる。複数の位相調整画像を生成することは、1つ以上のチャネル位相調整を表す1つ以上のチャネル位相調整行列を使用して複数の位相調整画像を生成することを含むことができる。本方法は、1つ以上のチャネル位相調整を決定または受信することを含むことができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、複数のアンミックス画像を生成することは、複数の位相調整画像の対応ピクセルの複素数値を含むベクトルを生成することと、ベクトルにアンミックス行列を乗算して、アンミックス複素数値を含むアンミックスベクトルを生成することと、アンミックス複素数値を有する対応ピクセルを含む複数のアンミックス画像を生成することとを含む。ベクトルは、1×n1のサイズを有することができ、アンミックス行列は、n1×n2のサイズを有することができ、および/または、アンミックスベクトルは、1×n2のサイズを有することができる。いくつかの実施形態では、複数のアンミックス画像を生成することは、対応ピクセルの複素数値の、複数の位相調整画像の対応ピクセルについての、複数のアンミックス行列のうちのアンミックス行列を使用して、複数の位相調整画像から複数のアンミックス画像を生成することを含む。複数のアンミックス行列は、m2個のアンミックス行列を含むことができる。アンミックス行列は、実数値または複素数値のみを含むことができるか、または含む。本方法は、アンミックス行列を決定または受信することを含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、複数の位相補正画像を生成することは、複数の発蛍光団のうちの発蛍光団に対して複数の発蛍光団位相補正を使用して、複数のチャネルの発蛍光団に対応する複数のアンミックス画像のうちのアンミックス画像から複数の位相補正画像のうちの位相補正画像を生成することを含む。発蛍光団についての複数の発蛍光団位相補正は、発蛍光団の属性に関連させることができる。発蛍光団の属性は、発蛍光団の寿命を含むことができる。発蛍光団についての複数の発蛍光団位相補正は、複素数値を含むことができる。本方法は、複数の寿命補正を決定または受信することを含むことができる。複数の位相補正画像を生成することは、複数の発蛍光団位相補正を表す発蛍光団についての発蛍光団位相補正行列を使用して、複数の位相補正画像を生成することを含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、本方法は、複数の位相補正画像の複素数値の実数成分に基づいて、複数の位相補正画像の複数の視覚的表現を生成することを含む。本方法は、複数の位相補正画像の複素数値の振幅に基づいて、複数の位相補正画像の複数の視覚的表現を生成することを含むことができる。選別判断を決定することは、複数の位相補正画像の複数の視覚的表現に基づいて細胞についての選別判断を決定することを含むことができる。本方法は、複数の視覚的表現から組み合わされた視覚的表現を生成することを含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、複数の生画像を生成すること、複数の位相調整画像を生成すること、複数のアンミックス画像を生成すること、および複数の位相補正画像を生成することのうちの2つ以上が、組み合わされた行列を使用して実行される。複数の生画像を生成すること、および複数の位相調整画像を生成することは、組み合わされた行列を使用して、蛍光強度データの複数のチャネルから複数の位相調整画像を生成することを含むことができる。複数のアンミックス画像を生成すること、および複数の位相補正画像を生成することは、アンミックス行列を含む組み合わされた行列を使用して、複数の位相調整画像から複数の位相補正画像を生成することを含むことができる。複数の生画像を生成すること、複数の位相調整画像を生成すること、複数のアンミックス画像を生成すること、および複数の位相補正画像を生成することは、アンミックス行列を含む組み合わされた行列を使用して、蛍光強度の複数のチャネルから複数の位相補正画像を生成することを含むことができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、本方法は、複数の位相補正画像から補正蛍光強度データの複数のチャネルを生成することを含む。補正蛍光強度データの複数のチャネルを生成することは、周波数空間から時間空間への変換を使用して、複数の位相補正画像から補正蛍光強度データの複数のチャネルを生成することを含むことができる。本方法は、補正蛍光強度データの複数のチャネルに基づいて細胞の特性の推定値を決定することを含むことができ、ここで、選別判断を決定することは、細胞の特性の推定値に基づいて細胞の選別判断を決定することを含む。細胞の特性は、細胞のサイズ、2つの異なる次元における細胞のサイズの比率、細胞に関連する複数の発蛍光団のうちの2つ以上による蛍光放出の共局在化、細胞質および細胞の核のサイズの比率、細胞の蛍光放出の点状性の程度、蛍光放出の空間分布の測定値、細胞の位置または配向の測定値、細胞の偏心の測定値、参照細胞に対する細胞の類似性の測定値、細胞がレーザービームの焦点に存在する程度の測定値、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、レーザービームは、参照レーザービームおよび複数の高周波シフトレーザービームを含む。複数の高周波シフトレーザービームの数は、m2とすることができる。参照レーザービームは、複数の高周波シフトレーザービームと空間的に重なることができる。複数の高周波シフトレーザービームのいずれも、互いに空間的に重ならない。参照レーザービームと、複数の高周波シフトレーザービームのうちの1つ以上とは、複数の発蛍光団のうちの発蛍光団の蛍光放出を引き出すことができる可能性がある。細胞を照明することは、細胞の複数の空間位置を、複数の高周波シフトレーザービームで同時に照明することを含むことができる。細胞の複数の空間位置のいずれも互いに重ならない。
【0015】
いくつかの実施形態では、複数の生画像の数、複数の位相調整画像の数、複数のアンミックス画像の数、および複数の位相補正画像の数は同一である。複数の生画像の数、複数の位相調整画像の数、複数のアンミックス画像の数、および/または複数の位相補正画像の数は、n1とすることができる。複数の生画像は、第1の時間次元および第1の周波数次元に関連させることができ、複数の位相調整画像は、第2の時間次元および第2の周波数次元に関連させることができ、複数のアンミックス画像は、第3の時間次元および第3の周波数次元に関連させることができ、および/または複数の位相補正画像は、第4の時間次元および第4の周波数次元に関連させることができる。第1の時間次元、第2の時間次元、第3の時間次元、および第4の時間次元のうちの2つ以上は、次元に沿って同一のサイズおよび/または同一の数のピクセルを有することができる。第1の時間次元、第2の時間次元、第3の時間次元、および第4の時間次元は、同一のサイズおよび/または同一のピクセル数を有することができる。第1の周波数次元、第2の周波数次元、第3の周波数次元、および/または第4の周波数次元は、m2のサイズおよび/またはm2個のピクセルを有する。いくつかの実施形態では、m2は、1/2×m1に等しい。いくつかの実施形態では、m2は、1/2×m1よりも小さい。第1の周波数次元、第2の周波数次元、第3の周波数次元、および第4の周波数次元のうちの2つ以上は、同一のサイズおよび/または同一の数のピクセルを有することができる。第1の周波数次元、第2の周波数次元、第3の周波数次元、および第4の周波数次元は、同一のサイズおよび/または同一のピクセル数を有することができる。第1の周波数次元に沿ったピクセルのサイズおよび/または数、第2の周波数次元に沿ったピクセルのサイズおよび/または数、第3の周波数次元に沿ったピクセルのサイズおよび/または数、および/または、第4の周波数次元のサイズおよび/またはピクセルの数は、複数の高周波シフトレーザービームの数と同一とすることができる。第1の周波数次元に沿ったピクセル、第2の周波数次元に沿ったピクセル、第3の周波数次元に沿ったピクセル、および/または第4の周波数次元に沿ったピクセルは、複数の高周波シフトレーザービームに対応することができる。第1の周波数次元に沿ったピクセル、第2の周波数次元に沿ったピクセル、第3の周波数次元に沿ったピクセル、および/または第4の周波数次元に沿ったピクセルは、細胞の複数の空間位置に対応することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、複数の発蛍光団のうちの2つの蛍光放出は、スペクトル的に重なる。複数の発蛍光団のうちの3つの蛍光放出は、スペクトル的に重なる。複数の発蛍光団のうちの5つの蛍光放出は、スペクトル的に重なる。複数の発蛍光団のうちの第1の発蛍光団および第2の発蛍光団の蛍光放出は、スペクトル的に重なり、複数の発蛍光団のうちの第2の発蛍光団および第3の発蛍光団の蛍光放出は、スペクトル的に重なる。第1の発蛍光団および第3の発蛍光団の蛍光放出は、スペクトル的に重なる。
【0017】
本明細書の開示には、セルソーターシステムの実施形態が含まれる。いくつかの実施形態では、セルソーターシステムは、複数の細胞を含むサンプルの細胞に関連する複数の発蛍光団の異なる波長の蛍光放出を引き出すための複数の異なる光周波数を有する光ビーム(例えば、レーザービーム)を生成するように構成された光源(例えば、レーザー光源)を含む。セルソーターシステムは、複数の発蛍光団の蛍光放出を検出するように構成された複数の光検出器を含むことができる(例えば、各光検出器は、複数の発蛍光団のうちの発蛍光団の蛍光放出を検出するように構成される)。セルソーターシステムは、実行可能命令を格納するように構成された非一時的メモリ、および非一時的メモリと通信するプロセッサを含むことができ、実行可能命令によってプログラムされたハードウェアプロセッサは、レーザービームを細胞に照射させて、細胞に関連する複数の発蛍光団の蛍光放出を引き出させる。プロセッサは、複数の光検出器に異なる波長での蛍光放出を検出させて、時間空間内の複数の発蛍光団に対応する蛍光強度データの複数のチャネルを取得するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。プロセッサは、蛍光強度データの複数のチャネルから、周波数空間内の複素数値の複数のピクセルを含む複数の生画像を生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。プロセッサは、蛍光強度データの複数のチャネルのそれぞれについて1つ以上のチャネル位相調整を使用して、複数の生画像から周波数空間に複素数値の複数のピクセルを含む複数の位相調整画像を生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。プロセッサは、複数の位相調整画像の対応ピクセルの複素数値のアンミックス行列を使用して、複数の位相調整画像から周波数空間に複素数値の複数のピクセルを含む複数のアンミックス画像を生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。プロセッサは、複数の発蛍光団のそれぞれの属性に基づいて、複数のアンミックス画像から周波数空間に複素数値または実数値の複数のピクセルを含む複数の位相補正画像を生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。プロセッサは、複数の位相補正画像に基づいて細胞の選別判断を決定するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。
【0018】
本明細書の開示には、セルソーターシステムの実施形態が含まれる。いくつかの実施形態では、セルソーターシステムは、複数の細胞を含むサンプルの細胞に関連する複数の発蛍光団の異なる波長で蛍光放出を引き出すための複数の異なる光周波数を有する光ビーム(例えば、レーザービーム)を生成するように構成された光源(例えば、レーザー光源)、複数の発蛍光団の蛍光放出を検出するように構成された複数の光検出器(例えば、各光検出器は、複数の発蛍光団のうちの発蛍光団の蛍光放出を検出するように構成されている)、実行可能命令を格納するように構成された非一時メモリ、および、非一時メモリと通信するプロセッサであって、ハードウェアプロセッサは、レーザービームを細胞に照射させて、細胞に関連する複数の発蛍光団の蛍光放出を引き出すように、実行可能命令によってプログラムされた、プロセッサを含む。プロセッサは、複数の光検出器に異なる波長での蛍光放出を検出させて、時間空間内の複数の発蛍光団に対応する蛍光強度データの複数のチャネルを取得するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。プロセッサは、蛍光強度データの複数のチャネルから周波数空間内の複素数値を含む複数の生画像を生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。プロセッサは、複数の生画像の対応する複素数値のアンミックス行列を使用して、複数の生画像から周波数空間に複素数値または実数値を含む複数のアンミックス画像を生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。プロセッサは、複数のアンミックス画像に基づいて細胞の選別判断を決定するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。
【0019】
本明細書の開示には、セルソーターシステムの実施形態が含まれる。いくつかの実施形態では、セルソーターシステムは、複数の細胞を含むサンプルの細胞に関連する複数の発蛍光団の異なる波長での蛍光放出を引き出すための複数の異なる光周波数を有する光ビーム(例えば、レーザービーム)を生成するように構成された光源(例えば、レーザー光源)、複数の発蛍光団の蛍光放出を検出するように構成された複数の光検出器(例えば、各光検出器は、複数の発蛍光団のうちの発蛍光団の蛍光放出を検出するように構成されている)、実行可能命令を格納するように構成された非一時メモリ、および、非一時メモリと通信するプロセッサであって、ハードウェアプロセッサは、細胞に関連する複数の発蛍光団からの異なる波長での蛍光放出の、時間空間内の複数の発蛍光団に対応する蛍光強度データの複数のチャネルを受信し、蛍光放出は複数の光検出器によって検出され、細胞がレーザー光源によって照射された後に蛍光放出が引き出されるように、実行可能な命令によってプログラムされたプロセッサを含む。プロセッサは、蛍光強度データの複数のチャネルから周波数空間内の複素数値を含む複数の生画像を生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。プロセッサは、複数の生画像の対応する複素数値のアンミックス行列を使用して、複数の生画像から周波数空間に複素数値または実数値を含む複数のアンミックス画像を生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。プロセッサは、複数のアンミックス画像に基づいて細胞の選別判断を決定するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、蛍光強度データの複数のチャネルを受信するために、プロセッサは、レーザービームに、細胞に関連する複数の発蛍光団の蛍光放出を引き出すために細胞を照明させ、複数の光検出器に異なる波長での蛍光放出を検出させて、時間空間内の複数の発蛍光団に対応する蛍光強度データの複数のチャネルを取得するように、実行可能な命令によってプログラムされる。複数の生画像は、複数の生画像の複素数値の複数のピクセルを含むことができる。プロセッサは、蛍光強度データの複数のチャネルのそれぞれについて1つ以上のチャネル位相調整を使用して、複数の生画像から周波数空間での複素数値を含む複数の位相調整画像を生成するように、実行可能命令によってプログラムできる。複数のアンミックス画像を生成するために、プロセッサは、複数の位相調整画像の対応する複素数値のアンミックス行列を使用して、複数の位相調整画像から複数のアンミックス画像を生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。複数の位相調整画像は、複数の位相調整画像の複素数値の複数のピクセルを含むことができる。プロセッサは、複数の発蛍光団のそれぞれの属性に基づいて、複数のアンミックス画像から周波数空間内の複素数値を含む複数の位相補正画像を生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。選別判断を決定するために、プロセッサは、複数の位相補正画像に基づいて細胞の選別判断を決定するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。複数の位相補正画像は、複数の位相補正画像の複素数値の複数のピクセルを含むことができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、ハードウェアプロセッサは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む。いくつかの実施形態では、複数の生画像を生成するために、プロセッサは、時間空間から周波数空間への変換を使用して、蛍光強度データの複数のチャネルから周波数空間で複数の生画像を生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。時間空間から周波数空間への変換は、フーリエ変換を含むことができる。フーリエ変換は、離散フーリエ変換を含むことができる。離散フーリエ変換は、高速フーリエ変換を含むことができる。フーリエ変換は、スライディングウィンドウフーリエ変換を含むことができる。スライディングウィンドウフーリエ変換のスライディングウィンドウは、m1のサイズを有することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、1つ以上のチャネル位相調整は、複数のチャネルのそれぞれについて、明視野位相、較正位相、および位相オフセットを含むチャネル位相(例えば、チャネル固有の位相)を補正または考慮する。複数の位相調整画像を生成するために、プロセッサは、複数のチャネルの各チャネルについて、チャネルに対応する複数の位相調整画像のうちの位相調整画像を生成するためにチャネルに対応する複数の生画像のうちの生画像の複素数値を乗算するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。1つ以上のチャネル位相調整は、複素数値を含むか、またはそれのみを含むことができる。1つ以上のチャネル位相調整は、実数値を含むことができる。プロセッサは、1つ以上のチャネル位相調整を受信および/または決定するように、実行可能命令によってプログラムできる。
【0023】
いくつかの実施形態では、複数のアンミックス画像を生成するために、プロセッサは、複数の位相調整画像の対応ピクセルの複素数値を含むベクトルを生成し、ベクトルにアンミックス行列を乗算して、アンミックス複素数値を含むアンミックスベクトルを生成し、および、アンミックス複素数値を有する対応ピクセルを含む複数のアンミックス画像を生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。ベクトルは、1×n1のサイズを有することができ、アンミックス行列は、n1×n2のサイズを有することができ、および/またはアンミックスベクトルは、1×n2のサイズを有することができる。複数のアンミックス画像を生成するために、プロセッサは、対応ピクセルの複素数値に対する複数の位相調整画像の対応ピクセルについて、複数のアンミックス行列のうちのアンミックス行列を使用して、複数の位相調整画像から複数のアンミックス画像を生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。複数のアンミックス行列は、m2個のアンミックス行列を含むことができる。アンミックス行列は、実数値および/または複素数値を含むことができるか、またはそれらのみを含むことができる。プロセッサは、アンミックス行列を受信および/または決定するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、複数の位相補正画像を生成するために、プロセッサは、複数の発蛍光団のうちの発蛍光団について複数の発蛍光団位相補正を使用して、複数のチャネルの発蛍光団に対応する複数のアンミックス画像のうちのアンミックス画像から複数の位相補正画像のうちの位相補正画像を生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。発蛍光団の複数の発蛍光団位相補正は、発蛍光団の属性に関連させることができる。発蛍光団の属性は、発蛍光団の寿命を含むことができる。発蛍光団についての複数の発蛍光団位相補正は、複素数値を含むことができる。プロセッサは、発蛍光団についての複数の発蛍光団位相補正を受信および/または決定するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、複数の位相補正画像の複素数値の実数成分に基づいて、複数の位相補正画像の複数の視覚的表現を生成するように、実行可能命令によってプログラムされる。プロセッサは、複数の位相補正画像の複素数値の振幅に基づいて、複数の位相補正画像の複数の視覚的表現を生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。選別判断を決定するために、プロセッサは、複数の位相補正画像の複数の視覚的表現に基づいて細胞の選別判断を決定するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。プロセッサは、複数の視覚的表現から組み合わされた視覚的表現を生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、複数の位相補正画像から補正蛍光強度データの複数のチャネルを生成するように、実行可能命令によってプログラムされる。補正蛍光強度データの複数のチャネルを生成するために、プロセッサは、周波数空間から時間空間への変換を使用して、複数の位相補正画像から補正蛍光強度データの複数のチャネルを生成するように、実行可能命令によってプログラムすることができる。プロセッサは、補正蛍光強度データの複数のチャネルに基づいて細胞の特性の推定値を決定し、ここで、選別判断を決定することは、細胞の特性の推定値に基づいて細胞の選別判断を決定することを含むように、実行可能命令によってプログラムすることができる。細胞の特性は、細胞のサイズ、2つの異なる次元における細胞のサイズの比率、細胞に関連する複数の発蛍光団のうちの2つ以上による蛍光放出の共局在化、細胞質および細胞の核のサイズの比率、細胞の蛍光放出の点状性の程度、蛍光放出の空間分布の測定値、細胞の位置または配向の測定値、細胞の偏心の測定値、参照細胞に対する細胞の類似性の測定値、細胞がレーザービームの焦点に存在する程度の測定値、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、レーザービームは、参照レーザービームおよび複数の高周波シフトレーザービームを含む。複数の高周波シフトレーザービームの数は、m2とすることができる。参照レーザービームは、複数の高周波シフトレーザービームと空間的に重なることができる。複数の高周波シフトレーザービームのいずれも、互いに空間的に重ならない。参照レーザービームと複数の高周波シフトレーザービームのうちの1つ以上とは、複数の発蛍光団のうちの発蛍光団の蛍光放出を引き出すことができる可能性がある。細胞を照明することは、細胞の複数の空間位置を、複数の高周波シフトレーザービームで同時に照明することを含むことができる。細胞の複数の空間位置のいずれも互いに重ならない。
【0028】
いくつかの実施形態では、複数の生画像の数、複数の位相調整画像の数、複数のアンミックス画像の数、および複数の位相補正画像の数は同一である。複数の生画像の数、複数の位相調整画像の数、複数のアンミックス画像の数、および/または複数の位相補正画像の数は、n1とすることができる。複数の生画像は、第1の時間次元および第1の周波数次元に関連させることができる。複数の位相調整画像は、第2の時間次元および第2の周波数次元に関連させることができる。複数のアンミックス画像は、第3の時間次元および第3の周波数次元に関連させることができる。複数の位相補正画像は、第4の時間次元および第4の周波数次元に関連させることができる。第1の時間次元、第2の時間次元、第3の時間次元、および第4の時間次元のうちの2つ以上は、次元に沿って同一のサイズおよび/または同一の数のピクセルを有することができる。第1の時間次元、第2の時間次元、第3の時間次元、および第4の時間次元は、同一のサイズおよび/または同一のピクセル数を有することができる。第1の周波数次元、第2の周波数次元、第3の周波数次元、および/または第4の周波数次元は、m2のサイズおよび/またはm2個のピクセルを有することができる。いくつかの実施形態では、m2は、1/2×m1に等しい。いくつかの実施形態では、m2は、1/2×m1よりも小さい。第1の周波数次元、第2の周波数次元、第3の周波数次元、および第4の周波数次元のうちの1つ以上は、同一のサイズおよび/または同一の数のピクセルを有することができる。第1の周波数次元、第2の周波数次元、第3の周波数次元、および第4の周波数次元は、同一のサイズおよび/または同一のピクセル数を有することができる。第1の周波数次元に沿ったピクセルのサイズおよび/もしくは数、第2の周波数次元に沿ったピクセルのサイズおよび/もしくは数、第3の周波数次元に沿ったピクセルのサイズおよび/もしくは数、ならびに/または、第4の周波数次元のサイズおよび/もしくはピクセルの数は、複数の高周波シフトレーザービームの数と同一とすることができる。第1の周波数次元に沿ったピクセル、第2の周波数次元に沿ったピクセル、第3の周波数次元に沿ったピクセル、および/または第4の周波数次元に沿ったピクセルは、複数の高周波シフトレーザービームに対応することができる。第1の周波数次元に沿ったピクセル、第2の周波数次元に沿ったピクセル、第3の周波数次元に沿ったピクセル、および/または第4の周波数次元に沿ったピクセルは、細胞の複数の空間位置に対応することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、複数の発蛍光団のうちの2つの蛍光放出は、スペクトル的に重なる。複数の発蛍光団のうちの3つの蛍光放出は、スペクトル的に重なる。複数の発蛍光団のうちの5つの蛍光放出は、スペクトル的に重なる。複数の発蛍光団のうちの第1の発蛍光団および第2の発蛍光団の蛍光放出は、スペクトル的に重なり、複数の発蛍光団のうちの第2の発蛍光団および第3の発蛍光団の蛍光放出は、スペクトル的に重なる。第1の発蛍光団および第3の発蛍光団の蛍光放出は、スペクトル的に重なる。
【0030】
本発明の様々な態様のさらなる理解は、以下に簡単に説明される関連図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態によるシステムを概略的に示す図である。
【
図2】複数のRFコームビームの断面ビームプロファイルを概略的に示す図である。
【
図3】
図2に示されるRFコームビームとトップハットビームプロファイルを有するLOビームとの重ね合わせを概略的に示す図である。
【
図4】分析中のサンプルを照らす、
図3に示される組み合わせビームを概略的に示す図である。
【
図5】仮説的発蛍光団の例示的なエネルギーレベルを概略的に示す図である。
【
図6】
図5の仮説的発蛍光団に対応する吸収曲線を概略的に示す図である。
【
図7A】蛍光放射の透過のための光ファイバを含む、本教示の実施形態による検出システムを概略的に示す図である。
【
図7B】蛍光放射が自由空間を通って伝播して複数の光検出器に到達する、本教示の実施形態による別の検出システムを概略的に示す図である。
【
図7C】本教示のいくつかの実施形態で使用するための明視野および暗視野画像生成アームを概略的に示す図である。
【
図7D】明視野画像を生成するための検出アームと、サンプルから散乱された励起放射、およびサンプルによって放出された蛍光放射の検出のための機能を統合する検出アームとを含む、本教示のいくつかの実施形態で使用するための検出システムを概略的に示す図である。
【
図8】本発明によるシステムの実施形態において光検出器によって生成された蛍光信号が増幅器によって増幅されることができ、増幅された信号が分析モジュールによって分析されて分析中のサンプルの蛍光画像を構築できることを概略的に示す図である。
【
図9A】複数のRFコームビームおよびトップハットプロファイルのLOビームからなる組み合わせビームでサンプルを照射することによって得られる蛍光信号を分析するための、本発明の実施形態による方法を示す図である。
【
図9B】複数のRFコームビームおよびトップハットプロファイルのLOビームからなる組み合わせビームでサンプルを照射することによって得られる蛍光信号を分析するための、本発明の実施形態による方法を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態による分析モジュールの例示的なハードウェア実装の選択された構成要素を概略的に示す図である。
【
図11A】複数のRFコームビームおよびトップハットプロファイルのLOビームから構成される組み合わせビームでサンプルを照射することによって得られる蛍光信号を分析するための、本発明の実施形態による別の方法を示す図である。
【
図11B】複数のRFコームビームおよびトップハットプロファイルのLOビームから構成される組み合わせビームでサンプルを照射することによって得られる蛍光信号を分析するための、本発明の実施形態による別の方法を示す図である。
【
図12A】複数のRFコームビームおよびトップハットプロファイルのLOビームから構成される組み合わせビームでサンプルを照射することによって得られる蛍光信号を分析するための、本発明の実施形態によるさらに別の方法を示す図である。
【
図12B】複数のRFコームビームおよびトップハットプロファイルのLOビームから構成される組み合わせビームでサンプルを照射することによって得られる蛍光信号を分析するための、本発明の実施形態によるさらに別の方法を示す図である。
【
図13A】単一の励起周波数でのトップハットプロファイルビームによるサンプルの照明を概略的に示す図である。
【
図13B】蛍光寿命測定および蛍光寿命イメージングを可能にする本教示の実施形態によるシステムの概略図である。
【
図14A】フローサイトメトリーシステムを通って流れる粒子の少なくとも1つの特性の推定値を決定することを示すフローチャートである。
【
図14B】フローサイトメトリーシステムを通って流れる粒子の少なくとも1つの特性の推定値を決定するための実施形態によるシステムを概略的に示す図である。
【
図14C】1つ以上の粒子特性の値に基づいてフローサイトメトリーシステムにおいて粒子をゲーティングするための実施形態による方法を示すフローチャートである。
【
図14D】2つ以上の異なる周波数チャネルにおいて、粒子、例えば細胞から放出される蛍光放射の共局在化に基づいて選別判断を行うための実施形態を示すフローチャートである。
【
図15】
図16のフローチャートに示される方法で使用される2つのチャネルおよびそれらの生成物に対応する仮説的蛍光時間周波数波形を概略的に示す図である。
【
図16】本発明の実施形態による、細胞サイズに基づく細胞選別を示すフローチャートである。
【
図17A】複数の高周波変調ビームレットを含む仮説的ビームによって照射された仮説的細胞を概略的に示す図である。
【
図17B】
図17Aに示される照明された細胞から得られた仮説的蛍光波形、ならびに蛍光波形を二乗することによって得られた波形を概略的に示す図である。
【
図18】細胞のアスペクト比に基づいて細胞を選別する方法を示すフローチャートである。
【
図19A】細胞の核および細胞の細胞質のサイズの比率を推定するための方法を示すフローチャートである。
【
図19B】細胞の核および細胞の細胞質のサイズの推定された比率に基づいて細胞を選別するための方法を示すフローチャートである。
【
図20A】細胞から放出される蛍光放射の細胞粒度を推定するための方法を示すフローチャートである。
【
図20B】細胞から放出される蛍光放射の細胞粒度を推定することに基づいて細胞を選別するための方法を示すフローチャートである。
【
図21】細胞からの蛍光放射を引き出すための
図24のフローチャートに記載された方法で採用される光ビームを変調するために使用される変調周波数を概略的に示す図である。
【
図22】細胞を選別するための本教示を組み込んだ選別システムを概略的に示す図である。
【
図23】
図22のシステムで採用される分析/制御モジュールの例示的な実装を概略的に示す図である。
【
図24】特性または粒子を決定し、その特性を使用して、実施形態による選別判断を行うための例示的方法を示すフローチャートである。
【
図25A】スペクトルアンミックスの非限定的な例示的概略図である。
【
図25B】スペクトルアンミックスの非限定的な例示的概略図である。
【
図26A】スペクトルアンミックスの非限定的な例示的結果を示す合成画像である。
【
図26B】スペクトルアンミックスの非限定的な例示的結果を示す合成画像である。
【
図27】スペクトルアンミックスの例示的方法を示すフローチャートである。
【
図28A】正方アンミックス行列を用いてスペクトルアンミックスを実行することの概略図である。
【
図28B1】非正方アンミックス行列を用いてスペクトルアンミックスを実行し、非正方アンミックス行列を決定することの概略図である。
【
図28B2】非正方アンミックス行列を用いてスペクトルアンミックスを実行し、非正方アンミックス行列を決定することの概略図である。
【
図30】スペクトルアンミックスの方法の実施形態を実装するように構成された例示的コンピューティングシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照する。図面において、同様の記号は典型的には、文脈が別様に規定しない限り、類似の構成要素を特定する。詳細な説明、図面、および特許請求の範囲に記載された例示的な実施形態は、限定することを意図していない。本明細書に提示される主題事項の精神または範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、他の変更を行うことができる。本開示の態様は、本明細書に概して記載され、図面に示されているように、様々な異なる構成で配置、置換、組合せ、分離、および設計することができ、それらのすべてが本明細書で明示的に企図され、本明細書の開示の一部とされることが容易に理解される。
【0033】
本教示は概して、フローサイトメーターにおいて細胞などの粒子の1つ以上の特性を決定し、いくつかの実施形態において粒子を選別するためにそれらの特性を使用するための方法およびシステムに関する。以下で記述される実施形態では、方法は、それらの実装のためにコンピュータプロセッサを採用する。本教示を説明するために以下で使用される様々な用語は、特に別様に記載しない限り、当技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。例えば、「発蛍光団」という用語は、励起放射による照明に応答して放射を放出することができる蛍光化合物を指すために、当技術分野におけるその慣習的な意味と一致して本明細書で使用される。
【0034】
「サイトメトリー」および「フローサイトメトリー」という用語もまた、当技術分野におけるそれらの慣習的な意味と一致して使用される。特に、「サイトメトリー」という用語は、細胞を識別および/または選別するか、さもなければ分析するための技術を指すことができる。「フローサイトメトリー」という用語は、流体フローに存在する細胞を、例えば、それらを蛍光マーカーで標識し、放射励起を介して蛍光マーカーを検出することによって、識別および/または選別、または別様に分析することができるサイトメトリー技術を指すことができる。本明細書で使用される「約」および「実質的に」という用語は、数値を含む属性に関して、10%または5%の最大変動を示すために使用される。
【0035】
細胞などの粒子の特性を決定し、粒子を選別するための本発明の教示は、様々な異なる方法で実装することができる。選別判断を行うために採用される蛍光および/または散乱データは、様々なシステムを使用することによって取得することができる。いくつかの実施形態では、粒子は、複数の高周波シフトビームレットを有する光ビームによって照射され、粒子からの蛍光が収集され、本教示に従って分析されて、選別判断を行う。本教示を組み込むことができる、粒子から蛍光データを引き出すためのそのようなシステムのいくつかの例を以下に説明し、続いて、本教示に従って粒子を選別するための方法およびシステムの詳細な説明を行う。
【0036】
例として、
図1は、粒子を選別するための本教示を組み込むことができる、サイトメトリーを実行するためのシステム10を概略的に示す。システム10は、3つの動作モードで動作することができる。以下でより詳細に記述されるように、1つの動作モードにおいて、研究中のサンプルは、例えば、レーザービームの中心周波数をシフトすることによってそれぞれを得ることができる、複数の励起周波数で同時に照射することができる。より具体的には、複数のサンプル位置は、参照レーザービーム(本明細書では局部発振器ビームとも呼ばれる)を複数の高周波シフトレーザービームと混合することによって生成されるレーザービームによって同時に照射されることができ、それにより、各サンプル位置は、参照ビームと高周波シフトビームの1つとで照射され、存在する場合は対象の発蛍光団をその位置で励起する。いくつかの実施形態では、参照ビーム自体は、レーザービームの高周波シフトを介して生成することができる。したがって、サンプルの各空間位置は、参照ビームの周波数と高周波シフトビームの1つの周波数との間の差に対応する異なるビート周波数で「タグ付け」することができる。言い換えれば、発蛍光団によって放出される蛍光放射は、ビート周波数を空間的にエンコードする。蛍光放出を検出し、その周波数成分を分析して、サンプルの蛍光画像を構築することができる。参照ビームおよび高周波シフトビームによる励起後に発蛍光団によって放出される蛍光放射を検出することは、高周波多重励起(FIRE)を使用する蛍光イメージングと呼ばれることがある。
【0037】
別の動作モードでは、サンプルは、複数の励起周波数でレーザービームによって時間間隔にわたって連続的に照射されることができる。いくつかのそのような実施形態では、励起周波数は、レーザービームを受信する音響光学偏向器(AOD)に時変駆動信号を印加することによって得ることができる。多くの実施形態では、レーザービームは、数百テラヘルツ(THz)の範囲、例えば、約300THz~約1000THzの範囲の周波数を有する。AODに印加される駆動信号は、典型的には、高周波範囲、例えば、約10MHz~約250MHzの範囲にある。AODを通るレーザービームの通過は、それぞれが異なる回折次数に対応する複数の回折ビームを生成する。0次の回折ビームは、入力レーザービームの周波数に対して周波数シフトを示さないが、高次の回折ビームは、駆動信号の周波数またはその倍数に対応する入力レーザービームの周波数に対して周波数シフトを示す。いくつかの実施形態では、駆動信号によってシフトされた入力レーザービームの周波数に対応する周波数を有する一次回折ビームが、対象の発蛍光団を、分析中のサンプルに存在する場合に励起するための励起ビームとして採用される。駆動信号が時間とともに変化すると、一次回折ビームの周波数および角度シフトも変化し、それによって、さまざまな位置でさまざまな励起周波数でサンプルを照射できるようになる。各照射位置からの蛍光放出がもしあれば、それを収集および分析して、サンプルの蛍光画像を構築することができる。
【0038】
さらに別の動作モードでは、システム10は、例えば、高周波によってレーザービームの中心周波数をシフトすることによって生成することができる単一の励起周波数によって、サンプルの複数の位置を同時に照明するように動作させることができる。例えば、サンプルの水平範囲は、単一の励起周波数でレーザービームによって照射することができる。検出された蛍光放射は、サンプル、例えば細胞/粒子の蛍光含有量を分析するために使用することができる。
【0039】
したがって、システム10の1つの利点は、とりわけ以下で記述されるが、異なる機器を利用する必要なしに、または異なる動作モードを切り替えるときにシステムにいかなる機械的変更も加える必要なしに、異なるモードで蛍光放出データを取得する際の実質的な柔軟性をそれが提供することである。
【0040】
特定の実施形態では、システムは、1つ以上の光源を含む。いくつかの例では、光源は、狭波長LED、レーザーを含むがこれらに限定されない狭帯域光源、または、組み合わされて狭帯域の照明光を生成する、1つ以上の光学バンドパスフィルタ、回折格子、モノクロメータ、もしくはそれらの任意の組み合わせに結合された広帯域光源である。特定の例では、光源は、単一波長ダイオードレーザー(例えば、488nmレーザー)などの単一波長レーザーである。いくつかの実施形態では、主題のシステムは、単一光源(例えば、レーザー)を含む。他の実施形態では、主題のシステムは、2つ以上の異なる光源、例えば3つ以上の異なる光源、例えば4つ以上の異なる光源、および5つ以上の異なる光源を含む。例えば、システムは、第1の波長を出力する第1の光源(例えば、レーザー)と、第2の波長を出力する第2の光源とを含み得る。他の実施形態では、システムは、第1の波長を出力する第1の光源、第2の波長を出力する第2の光源、および第3の波長を出力する第3の光源を含む。
【0041】
各光源は、300nm~1000nm、例えば350nm~950nm、例えば400nm~900nm、および450nm~850nmの範囲の波長を有し得る。特定の実施形態では、光源は、1つ以上の発蛍光団の吸収極大に対応する波長を有する(以下に記載されるように)。例えば、光源は、280~310nm、305~325nm、320~350nm、340~375nm、370~425nm、400~450nm、440nm~500nm、475~550nm、525~625nm、625~675nm、および650~750nmのうちの1つ以上の範囲にある波長を有する光を出力し得る。特定の実施形態では、各光源は、348nm、355nm、405nm、407nm、445nm、488nm、640nmおよび652nmから選択される波長を有する光を出力する。
【0042】
システム10は、レーザービーム14を生成するレーザー12を含む。例として、レーザービームは、約300nm~約1000nmの範囲の真空波長に対応する、約1000THz~約300THzの範囲の周波数を有することができる。レーザービームのビーム直径(例えば、ガウスレーザービームが採用される場合のビームウエスト)は、例えば約0.1mm~約10mmの範囲とすることができる。一般性を失うことなく、この実施形態では、レーザー12は、約1mmのビーム直径を伴って488nmの波長で放射を放出する。
【0043】
レーザービームの周波数は、システムが意図される特定の用途(複数可)に基づいて選択することができる。具体的には、以下でより詳細に述べるように、レーザー周波数は、例えば、放射の吸収を介して、対象の発蛍光団の電子遷移を励起するために適するようにすることができ、それにより、発蛍光団に、より低い周波数で蛍光放射を放出させる。さまざまなレーザー源を採用できる。そのようなレーザー源のいくつかの例には、限定されないが、米国カリフォルニア州サンタクララのCoherent,Inc.によって販売されているSapphire 488-SF、Genesis MX-488-1000-STM(Coherent,Inc.)、OBIS 405-LX(Coherent,Inc.)、米国カリフォルニア州サクラメントのVortran Laser Technology,Inc.によって販売されているStadus 405-250、および米国カリフォルニア州アーバインのNewport CorporationのLQC-660-110が含まれる。一般性を失うことなく、本実施形態では、レーザービームは、その伝搬方向に垂直な平面内にガウス強度プロファイルを有すると想定される。
【0044】
ミラー16は、レーザービーム14を受け取り、反射を介してレーザービームを音響光学偏向器(AOD)18に向ける。この実施形態では、AOD18は、ビーム14の伝搬方向に垂直な軸の周りの回転を可能にする、調整可能なポストホルダーマウント(A)に取り付けられる。コントローラ21の制御下で動作する直接デジタルシンセサイザ(DDS)20は、1つ以上の駆動信号をAOD18に印加することができる。例として、いくつかの実施形態では、これらの駆動信号は、約50MHz~約250MHzの周波数範囲に及ぶことができる。例えば、AODに印加される駆動信号は、約55MHz~約255MHz、例えば約60MHz~約200MHz、例えば約65MHz~約175MHz、例えば約70MHz~約150MHzおよび約75MHz~約125MHzの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、駆動信号は、約0.1MHz~約4MHzの範囲の周波数によって互いに分離され得る。例えば、駆動信号は、約0.2MHz~約3.9MHz、例えば、約0.3MHz~約3.8MHz、例えば、約0.4MHz~約3.7MHz、例えば、約0.5MHz~約3.6MHz、および約1MHz~約3.5MHzの周波数によって互いに分離され得る。この実施形態では、電子電力増幅器17は、DDS20によって生成された高周波信号を増幅して、AOD18に印加する。
【0045】
サンプルが複数の励起周波数で同時に照射される動作モードでは、RFコーム発生器20は、複数のRF駆動信号をAOD18に同時に印加する。例として、同時に印加されるRF駆動信号の数は、約20~約200の範囲とすることができる。レーザービームと駆動信号との相互作用により、それぞれがレーザー12によって生成されたレーザービームの周波数に対して駆動信号の1つに対応する周波数シフトを有する、複数の角度的に分離されたレーザービームが生成される。いずれの特定の理論にも限定されることなく、AODにおいて、圧電変換器は、結晶、例えば、石英結晶において高周波フォノンを生成することができ、そのような高周波フォノンによるレーザービームの光子の散乱は、周波数シフトされたレーザービームの生成をもたらす可能性がある。これらの周波数シフトされたビーム22の1つは、本明細書では「局部発振器」(LO)ビームと呼ばれ、周波数シフトされたビーム24の残りは、本明細書では「RFコームビーム」と呼ばれる。周波数シフトされたビームの角度分離は、例えば、約1ミリラジアン~約100ミリラジアンの範囲とすることができる。例えば、周波数シフトされたビームの角度分離は、2ミリラジアン~約95ミリラジアン、例えば3ミリラジアン~約90ミリラジアン、例えば4ミリラジアン~約85ミリラジアン、例えば5ミリラジアン~約80ミリラジアン、および10ミリラジアン~約75ミリラジアンの範囲であり得る。
【0046】
LOおよびRFコームビームは、レンズ26を通過し、それは、この実施形態では、焦点距離が約50mmの正レンズである。レンズ26を通過した後、LOレーザービームは、LOビームを異なる方向(この実施形態では、LOビームの元の伝搬方向に実質的に直交する方向)に向け直すミラー28によってインターセプトされる。ミラー28は、RFコームビームがミラー28を通らず、レンズ30(この実施形態では焦点距離200mmを有する)に伝播するように、これらのビームに対して配置される。このようにして、LOビームおよびRFコームビームは、異なる伝搬方向に沿って方向付けられる。上記で開示された方法でピックオフミラー28を使用することにより、単一のAODを利用してLOビームおよびRFコームビームの両方を生成し、以下で説明する方法でそれらを組み合わせてサンプルを照明するための励起ビームを生成することができる。複数のAOD(例えば、2つのAOD、1つはLOビームを生成し、もう1つはRFコームビームを生成する)ではなく単一のAODを使用すると、システムの設計が簡素化され、さらに、以下でより詳細に説明するように複数の個別の動作モードでシステムを効率的に使用できる。
【0047】
いくつかの実施形態では、LOビームのビームプロファイルは、RFコームビームと再び組み合わせる前に修正される。例えば、LOビームのビームプロファイルは、空間寸法、ビーム形状、強度、ビームの空間分布、またはそれらの任意の組み合わせで調整(増加または減少)され得る。特定の実施形態では、LOビームのビームプロファイルの空間寸法が修正される。例えば、ビームプロファイルは、フロー流れの長手方向軸に直交する軸に沿ってなど、1つ以上の次元でビームプロファイルを伸ばすように調整され得る。これらの実施形態による1つの例では、ビームプロファイルの空間寸法(例えば、1つ以上の寸法)は、1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば1.5倍以上、例えば2倍以上、例えば3倍以上、および5倍以上、増加され得る。これらの実施形態による別の例では、ビームプロファイルの空間寸法(例えば、1つ以上の寸法)は、1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば1.5倍以上、例えば2倍以上、例えば3倍以上、および5倍以上、減少され得る。
【0048】
他の実施形態では、LOビームのビーム形状が修正される。例えば、ビーム形状は、ビームプロファイルを1つ以上の次元で伸長するように修正され得る。特定の例では、LOビームのビーム形状は、LOビームの伝搬方向に垂直な平面で伸長される。特定の実施形態では、LOビームプロファイルの形状は、円形ビームプロファイルから、フロー流れの長手方向軸に直交する軸で伸長される楕円形ビームプロファイルに変更される。他の実施形態では、LOビームプロファイルの形状は、円形ビームプロファイルから、フロー流れの長手方向軸に直交する軸に長い寸法を有する長方形のビームプロファイルに変更される。さらに他の実施形態では、LOビームの強度が修正される。例えば、LOビームの強度は、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば1.5倍以上、例えば2倍以上、例えば3倍以上、および5倍以上、増加され得る。特定の実施形態では、LOビームの強度は、RFコームビームの強度と一致するように修正される。例えば、LOビームは、RFコームビームの強度と10%以下、例えば9%以下、例えば8%以下、例えば7%以下、例えば6%以下、例えば5%以下、例えば4%以下、例えば3%以下、例えば2%以下、例えば1%以下、例えば0.01%以下だけ異なる強度を有し得、LOビームの強度がRFコームビームと0.001%以下だけ異なる場合を含む。特定の実施形態では、LOビームおよびRFコームビームの強度は同一である。
【0049】
さらに他の実施形態では、ビームプロファイルの空間分布も修正され得る。例えば、LOビームは、LOビームの強度が1つ以上の次元でガウスではなくなるように修正され得る。例えば、LOビームは、フロー流れの縦軸に平行である第1の軸に沿ったガウス分布、および、フロー流れの縦軸に直交する第2の軸に沿った非ガウス分布を有するように修正され得る。
【0050】
屈折および回折ビーム成形プロトコルを含むがこれらに限定されない、任意のビーム成形プロトコルを採用して、LOビームのビームプロファイルを修正し得る。いくつかの実施形態では、LOビームは、トップハットビームシェイパーによって修正される。
【0051】
この実施形態では、LOビームは、別の正レンズ32(この実施形態では、約200mmの焦点距離を有する)に伝播する。レンズ26およびレンズ32の組み合わせは、トップハットビームシェイパー34の後方アパーチャを適切に満たすために、LOビームを拡大およびコリメートする。より具体的には、LOビーム22は、レンズ32を通過し、ミラー33および35によってトップハットビームシェイパー34へと反射される。
【0052】
トップハットビームシェイパー34は、ガウスLOビームの位相面を成形して、トップハット強度プロファイルの形成を可能にする。より具体的には、トップハットビームシェイパーを出るLOレーザービーム22’は、ビームスプリッタ44によって反射され、レンズ46(この実施形態では焦点距離100mmを有する)によって中間像面48に集束される。中間像面48上のレーザービームは、ビームの伝搬方向に垂直な面内の水平方向に沿ったトップハット強度プロファイルを有する。AOD18と同様に、この実施形態では、ビームスプリッタ44は、調整可能なポストホルダーマウント(B)に取り付けられる。この実施形態では、トップハットビームシェイパーは、放射の偏光がビームのトップハット方向に沿って(この実施形態では水平方向に沿って)実質的に均一であるトップハットビームプロファイルを生成する。
【0053】
様々なトップハットビームシェイパーを採用することができる。例として、非球面を有する屈折光学素子、または回折光学素子を使用して、適切な空間位相面を有するビームを生成することができ、これは、レンズによって集束された後、レンズの焦点面にトップハットプロファイルパターンを生成する。そのようなトップハットビームシェイパーには複数のフォームファクタが存在し、このアプローチのさまざまな実装が利用可能であり、本教示の様々な実施形態においてサンプルで適切なLOビーム形状を作成する。例えば、両方とも参照により全体として本明細書に組み込まれる、「レーザービームをコリメートされたフラットトップビームに変換する屈折光学システム」と題された米国特許第6,295,168号、および「長方形フラットトップビームシェイパー」と題された米国特許第7,400,457号は、本教示のいくつかの実施形態によるシステムにおいてフラットトップビームシェイパーとして採用することができるビームシェーピングシステムを開示する。採用できる市販のトップハットビームシェイパーの例には、例えば、カナダのラシーヌのOsela,Inc.によって販売されているDTH-1D-0.46deg-4mmが含まれる。
【0054】
以下でより詳細に記述されるように、水平方向に沿ってLOビームを伸ばすためのビームシェイパーの使用は、多くの利点を提供する。例えば、LOビームおよびRFコームビームの組み合わせが、サンプル位置全体にわたってLOおよびRFコームビームの強度を一致させるために、実質的に同様の照明強度で複数のサンプル位置を照明することをそれは保証でき、それにより、変調深度の高い蛍光信号の強度振幅変調が作成される。このような強度一致がない場合、イメージングシステムの視野が狭くなり、AODを駆動するすべての周波数(ピクセル)を利用できない場合がある。蛍光信号の変調深度は、サンプルの蛍光画像を再構築するシステムの能力に重要な役割を果たすので、すべてのピクセルでの励起ビート周波数の均一に高い変調深度は、システムの動作にとって特に有利である。さらに、RFコームビームを生成するためにAODに印加される電子信号の振幅は、RFコームビームを、RFコームビームおよびLOビームが重なるすべての空間位置にわたってそれらの強度がLOビームのものと等しくなるように均等化するために、ダイレクトデジタルシンセサイザの出力を制御することによって(例えば、コントローラ21を採用することによって)調整することができる。この機能は、蛍光放射の強度振幅変調の高い変調深度をそれが保証するという利点を提供する。
【0055】
再び
図1を参照すると、RFコームビーム24は、レンズ26および30の組み合わせを介して中間像面38上に画像化される。より具体的には、RFコームビーム24は、レンズ26を通過し、ミラー28を通らずにレンズ30に到達し、これは、ミラー40および42を介してRFコームビームを中間像面38に向ける。
【0056】
図2は、中間像面38における例示的な数のRFコームビームの分布を概略的に示す(一般性を失うことなく、RFコームビームの数は、説明の目的で6になるように選択される(RF1、RF2、RF3、RF4、RF5、RF6とラベル付けされている)が、他の数も採用できる)。
図2に示すように、中間像面38において、RFコームビーム24は、水平方向に沿って互いに空間的に分離されている。他の実施形態では、2つ以上のRFコームビーム24は、部分的に重なり得る。したがって、レンズ26および30の組み合わせは、角度的に分離されたRFコームビームを、水平範囲にまたがる空間的に分離されたビームのセットに変換する。
【0057】
再び
図1を参照すると、上記のように、ビームスプリッタ44は、トップハットビームシェイパー34を出るレーザービーム22’を受け取り、そのビームをレンズ46に反射し、これはそして、LOビームがトップハットビームプロファイルを示す中間像面48にビームを集束させる。ビームスプリッタはまた、中間像面38からRFコームビーム24を受け取り、そこを通るRFコームビームの通過を可能にする。レンズ46は、RFコームビーム24を中間像面48に集束させて、トップハットビームプロファイルを有するLOビームと組み合わせて、組み合わせビーム49を生成する。
【0058】
例示として、
図3は、その伝搬軸に垂直な平面内の組み合わされたビーム49の1つの例示的なプロファイルを概略的に示す。組み合わされたビームの強度プロファイルは、トップハットLOビーム(正方形で概略的に示されている)の強度プロファイルとRFコームビーム24(それぞれが円の1つで概略的に示されている)の強度プロファイルとの重ね合わせとして生成される。以下でより詳細に説明するように、LOビームとRFコームビームとのこの重ね合わせは、水平範囲に沿って、それぞれがその水平範囲に沿った1つの空間位置に対応する複数のビート周波数を提供する。サンプルの水平範囲を照射すると、サンプルのある位置から放出される蛍光放射は、振幅変調を介して、その位置を照射する放射に関連するビート周波数をエンコードする。
【0059】
再び
図1を参照すると、正レンズ50(この実施形態では200mmレンズ)および対物レンズ52は、この実施形態では調整可能なポストホルダーマウントCに取り付けられ、中間面48での画像をフローセル54を通って流れるサンプル上へと中継するための望遠鏡を形成する。この実施形態では、ミラー56は、組み合わされたビーム49をレンズ50に反射し、ダイクロイックミラー58は、組み合わされた光ビームを、それがレンズ50を通過した後、対物レンズ52に向けて反射させる。
【0060】
図4に概略的に示されるように、組み合わされたビーム49は、フローセル54を通って流れるサンプル62の複数の空間位置60を同時に照射する。したがって、各位置60は、RFコームビームの1つとトップハット形状LOレーザービームの一部との重なりによって照射される。これらの空間位置で放射は、存在する場合、サンプル内の対象の発蛍光団を励起する。より具体的には、この実施形態では、LOビームおよびRFコームビームは、複数のサンプル位置60において、発蛍光団を、例えば励起電子状態へとその電子遷移を引き起こすことを介して同時に励起する。
【0061】
いくつかの実施形態では、サンプルは、複数の細胞を同伴する流動流体を含むことができる。いくつかの場合では、細胞を1つ以上の蛍光マーカー(発蛍光団)で標識することができる。蛍光マーカーのいくつかの例には、蛍光タンパク質(例えば、GFP、YFP、RFP)、発蛍光団で標識された抗体(例えば、フルオレセインイソチオシアネート)(FITC)、フィコエリトリン(PE)、アロフィコシアニン(APC))、核酸染色(例えば、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、SYTO16、ヨウ化プロピエジウム(PI))、細胞膜染色(例えば、FMI-43)、および細胞機能色素(例えば、Fluo-4、Indo-1)が含まれるが、これらに限定されない。他の場合には、細胞内に存在する内因性発蛍光団を採用して、細胞からの蛍光放射を引き出すことができる。以下でより詳細に記述されるように、そのような外因性または内因性発蛍光団は、照明放射に応答して電子励起を受け、収集および分析される蛍光放射(典型的には、励起周波数よりも低い周波数で)を放出する。
【0062】
例示として、特定の理論に限定されることなく、
図5は、発蛍光団の基底電子状態Aならびに2つの電子励起電子状態BおよびCに対応する仮説的エネルギー準位を示す。発蛍光団は、放射エネルギーの吸収を介して、その基底電子状態(A)から励起電子状態(B)に励起することができる。そして、発蛍光団は、例えば、発蛍光団の振動モードによって媒介される無放射遷移を介して、より低い励起状態Bに緩和することができる。発蛍光団は、光学遷移を介して、より低い電子状態Cから基底状態にさらに緩和することができ、それにより、励起周波数のものよりも低い周波数で蛍光放射を放出する。この仮説的な例は、説明のみを目的として提供されており、蛍光放射を放出できる唯一のメカニズムを示すものではないことを理解する必要がある。
【0063】
多くの場合、発蛍光団は、基底状態から励起電子状態に励起される周波数の範囲にわたって電磁放射を吸収することができる。例示として、
図6は、
図5に関連して述べられた仮説的発蛍光団の吸収曲線を示す。本教示による実施形態の1つの実装では、LO周波数は、対象の発蛍光団のピーク吸収に対応する周波数と一致するように選択することができる。高周波シフトされたビームは、そのそれぞれのビート周波数によってピーク吸収から分離された周波数を持つことができる。典型的には、これらの周波数分離は、励起周波数のいかなる劣化も回避するために、発蛍光団の吸収帯域幅と比較して小さい。例として、そして例示としてのみ、破線AおよびBは、LOビームとRFコームビームの1つとの周波数を概略的に示す(図は説明を簡単にするために縮尺どおりに描かれてはいない)。LOレーザービームと描写されたRFコームビームの1つとの両方によるサンプルの空間位置の同時照明は、LOとRFコームビームとの周波数の差に対応するビート周波数で振幅変調を示す蛍光放射をもたらす。
【0064】
再び例示として、いかなる特定の理論にも限定されることなく、LOビームとRFコームビームの1つとによるその同時照明を介して発蛍光団に印加される電界は、数学的に以下のように定義することができる。
【0065】
【0066】
ここで、Ecomは組み合わされたビームの電界を示し、
ERFは、RFコームビームの1つに関連する電界の振幅を示し、
ELOは、LOビームに関連する電界の振幅を示し、
φ0は、レーザー12によって生成されるレーザービームの周波数を示し、
φRFは、RFコームビームに関連する周波数シフトを示し、
φLOは、LOビームに関連する周波数シフトを示す。
【0067】
LOおよびRFコームビームの電界の重ね合わせに応答して放出される蛍光放射の強度は、(ωRF-ωLO)に対応するビート周波数で変調を示す。したがって、LOビームとRFコームビームの1つとの重ね合わせによって照射されたサンプルの各空間位置から放射される蛍光放射は、LOビームに関連する高周波シフトとその空間位置を照らすRFコームビームに関連する高周波シフトとの差に対応するビート周波数で変調を示す。
【0068】
蛍光放出のプロセスは有限の時間(典型的には、一般的な有機発蛍光団の場合は1~10ナノ秒)を必要とするので、励起ビート周波数が高すぎる場合、放出される蛍光は高い変調深度を示さない。したがって、多くの実施形態では、励起ビート周波数は、1/τfよりもかなり低くなるように選択され、ここで、τfは、発蛍光団の特徴的な蛍光寿命である。いくつかの例では、励起ビート周波数は、1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば1.5倍以上、例えば2倍以上、例えば3倍以上、および5倍以上、1/τfよりも低くあり得る。例えば、励起ビート周波数は、0.01MHz以上、例えば0.05MHz以上、例えば0.1MHz以上、例えば0.5MHz以上、例えば1MHz以上、例えば5MHz以上、例えば10MHz以上、例えば25MHz以上、例えば50MHz以上、例えば100MHz以上、例えば250MHz以上、例えば500MHz以上、および750MHz以上、1/τfよりも低くあり得る。いくつかの実施形態では、光検出器は、照射されたサンプルからの光(例えば、蛍光などの発光)を検出するように構成される。いくつかの実施形態では、光検出器は、1つ以上の検出器、例えば2つ以上の検出器、例えば3つ以上の検出器、例えば4つ以上の検出器、例えば5つ以上の検出器、例えば6つ以上の検出器、例えば7つ以上の検出器および8つ以上の検出器を含み得る。他の光検出器の中でも、アクティブピクセルセンサー(APS)、象限フォトダイオード、イメージセンサー、電荷(change)結合デバイス(CCD)、強化電荷結合デバイス(ICCD)、発光ダイオード、フォトンカウンター、ボロメーター、熱電検出器、フォトレジスタ、太陽電池、フォトダイオード、光電子増倍管、光トランジスタ、量子ドット光伝導体またはフォトダイオード、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない任意の光検出プロトコルを採用し得る。いくつかの実施形態では、対象の光検出器は、350nm~1200nm、例えば、450nm~1150nm、例えば、500nm~1100nm、例えば、550nm~1050nm、例えば、500nm~1000nm、および400nm~800nmの範囲の光を検出するように構成される。特定の実施形態では、光検出器は、395nm、421nm、445nm、448nm、452nm、478nm、480nm、485nm、491nm、496nm、500nm、510nm、515nm、519nm、520nm、563nm、570nm、578nm、602nm、612nm、650nm、661nm、667nm、668nm、678nm、695nm、702nm、711nm、719nm、737nm、785nm、786nmまたは805nmなどの発光の放出極大で光を検出するように構成される。
【0069】
いくつかの実施形態では、サンプルによって放出される蛍光放射は、様々な異なる方法で、例えば、励起ビームの伝搬方向に垂直な光路に沿って収集することができる。他の実施形態では、蛍光放射はエピ方向に検出される。組み合わせビーム49による励起後に1つ以上の発蛍光団によって放出される蛍光放射を検出することは、高周波多重励起(FIRE)を使用する蛍光イメージングと呼ぶことができる。
【0070】
再び
図1を参照すると、この実施形態では、照射されたサンプルに存在する1つ以上の発蛍光団によって放出された蛍光放射は、対物レンズ52を通過し、ダイクロイックミラー58を透過して、光検出器64に到達する。より具体的には、この実施形態では、レンズ65は、ダイクロイックミラー58を透過した蛍光放射をスリットアパーチャ66に集束させる。スリットを透過した蛍光放射は、蛍光放出フィルタ68を通過して光検出器64に到達する。光検出器の前に配置されたスリットアパーチャ66(または後述される他の実施形態では光学フィルタ)は、面外蛍光放出を拒絶しながら、サンプルの特定の面から放出された蛍光放射の通過を実質的に可能にする。さらに、蛍光放出フィルタ68、例えば、パスバンドフィルタは、他の周波数での放射の通過を実質的に遮断しながら、光検出器64への蛍光放射の通過を可能にする。
【0071】
光検出器64は、ビート周波数の全範囲からの信号を検出および透過するために十分なRF帯域幅を有する。適切な光検出器のいくつかの例には、とりわけ、光電子増倍管、アバランシェフォトダイオード、PINフォトダイオード、およびハイブリッド光検出器が含まれるが、これらに限定されない。例として、いくつかの実施形態では、Hamamatsu Corporationによって販売されている光電子増倍管を採用することができる(例えば、R3896、R10699、H11462)。光検出器は、受信した蛍光放射の検出に応答して、信号、例えばこの実施形態ではアナログ信号を生成する。
【0072】
別の例として、
図7Aを参照すると、LOビームおよび空間的に分離されたRFコームビームによる同時照明に応答してサンプルによって放出される蛍光放射は、対物レンズ52およびダイクロイックミラー58を通過して、レンズ100を介してマルチモード光ファイバ102上に結合され、これは、近位端102aから遠位端102bまで延びている。より具体的には、光ファイバ102の近位端102aは、蛍光放射を受信するように、レンズ100の焦点面の近くに配置される。光ファイバの遠位端102bに結合されたアウトカップリングレンズ104は、ファイバを出る放射をコリメートする。
【0073】
多くの場合、サンプルを照射する励起放射は、励起周波数がサンプル中の複数の発蛍光団の吸収スペクトル内に入るように十分に広い放射吸収スペクトルを有することができる複数の発蛍光団(例えば、有機発蛍光団)を励起する。そして、各発蛍光団は異なる周波数で蛍光放射を放出する。一般性を失うことなく、説明の目的で、この実施形態では、検出システムは、4つの光電子増倍管106、108、110および112を含み、これらのそれぞれは、照射されたサンプルの励起放射によって励起される4つの発蛍光団のうちの1つによって放出される蛍光放射に対応するコリメート放射の一部を受け取る。より具体的には、ダイクロイックミラー114は、第1の周波数で発蛍光団の1つによって放出された蛍光放射を光電子増倍管106に反射する一方で、他の周波数での蛍光放射を通過させる。別のダイクロイックミラー116は、異なる第2の周波数で異なる発蛍光団によって放出された蛍光放射を光電子増倍管108に反射する一方で、第3の周波数でさらに別の発蛍光団によって放出された蛍光放射を含む残りの放射が第3のダイクロイックミラー118に到達することを可能にし、これは、その蛍光放射を光電子増倍管110に反射する。ダイクロイックミラー118は、第4の放射周波数で第4の発蛍光団によって放出された蛍光放射を含む残りの放射が通過して光電子増倍管112に到達することを可能にする。
【0074】
それぞれが4つの蛍光周波数のうちの1つを中心とする複数のバンドパスフィルタ120、122、124および126がそれぞれ、光電子増倍管106、108、110および112の前に配置される。各光電子増倍管によって検出された信号は、それぞれの蛍光周波数で蛍光画像を生成するために、以下で説明する方法で分析される。いくつかの実施形態では、複数の光検出器を使用するのではなく、単一の光検出器、例えば、単一の光電子増倍管を使用して、蛍光放射、例えば、単一の発蛍光団からの放出に対応する蛍光周波数を検出することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、サンプルがフローセルを通って流れるとき、サンプルの異なる水平行が照射され、各水平行に関連する蛍光放射が、光電子増倍管106、108、110および112などの1つ以上の光検出器によって検出される。
【0076】
図7Bは、この検出システムが光ファイバを使用するのではなく、ダイクロイックミラー58を通過する複数の発蛍光団からの蛍光放出を含む蛍光放射が自由空間を伝播して光電子増倍管106、108、および112に到達することを除いて、
図7Aに関連して上記で述べたものと同様の検出システムを概略的に示す。より具体的には、レンズ100は、蛍光放射をレンズ100および104の間に配置されたアパーチャ126に集束させ、アパーチャは焦点外れの放射を拒絶することができる。レンズ104は、アパーチャを通過する放射をコリメートし、コリメートされた放射は、
図7Aに関連して上記で述べた方法で光電子増倍管間で分配される。
【0077】
いくつかの実施形態では、システム10は、励起放射を使用して、サンプルの(サンプルがない場合にはフローセルの)暗視野画像および明視野画像を提供するように構成することができる。例として、
図7Cは、サンプルの暗視野画像および明視野画像をそれぞれ検出するための2つの検出アーム200および202を含むシステム10の実施形態を概略的に示す。
【0078】
より具体的には、検出アーム200は、フローセルを通って流れるサンプルによって散乱される励起放射の一部を受け取るように、励起放射の伝播に対して垂直に配置される。検出アーム200は、2つのレンズ204および206を含み、これらは、サンプルによって散乱された励起放射の少なくとも一部を、レンズ204によって定められた立体角へと、光電子増倍管208上に集合的に向ける。より具体的には、レンズ204は、受け取った散乱放射をコリメートし、レンズ206は、コリメートされた散乱放射を光電子増倍管208に集束させる。この実施形態では、適切なバンドパスフィルタ210が光電子増倍管208の前に配置されて、所望の周波数を有する放射が光電子増倍管208に通過することを可能にする一方で、望ましくない周波数の放射を遮断する。光電子増倍管208の出力は、当技術分野で知られている方法で、例えば、暗視野画像を生成するために以下で述べるような分析モジュールによって処理することができる。
【0079】
一方、検出アーム202は、2つのレンズ212および214を含み、レンズ212は、フローセルを出る励起放射を順方向に(フローセル54に入る励起放射の伝搬方向に実質的に沿って)コリメートし、レンズ214は、コリメートされた放射を光検出器216に集束させる。光検出器の前に配置された適切なフィルタ218、例えば、バンドパスフィルタは、実質的に他の放射周波数を遮断しつつ、光検出器216への励起周波数の透過を可能にする。光検出器216の出力は、フローセルの明視野画像を生成するために当技術分野で知られている方法で処理することができる。
【0080】
したがって、検出アーム200は、細胞を流れる流体によって散乱される励起放射を検出し、検出アーム202は、フローセルを透過する励起放射を検出する。流体がフローセルを通って流れていないとき、光電子増倍管208によって検出される信号は低く、光検出器216によって検出される信号は、フローセルを通過する励起放射の散乱がほとんどなく、したがって、励起放射の大きな割合、いくつかの場合にはすべてがフローセルを透過するため、高い。対照的に、フローセルを通る流体サンプルのフローは、サンプルによる励起放射の一部の散乱のために、光電子増倍管208によって生成される信号を増加させる可能性があり、光検出器216によって生成される信号は、フローセルを透過する励起放射のレベルが減少するにつれて減少する。
【0081】
さらなる例として、
図7Dを参照すると、本教示によるシステムの1つの実施形態では、励起放射の伝搬方向に実質的に直交する方向にフローセル54に対して配置された検出アーム220aは、サンプル中の複数の発蛍光団によって放出される蛍光放射、およびサンプルによって散乱される励起放射の両方を検出するための光検出器を含む。より具体的には、検出アーム220は、蛍光放射ならびに散乱励起放射を、集束されていない放射を拒絶するアパーチャ226に向けるレンズ222および224を含む。レンズ228は、アパーチャを通過する放射をコリメートする。ダイクロイックミラー230は、励起周波数での放射の一部を光電子増倍管232に反射して、蛍光放射を通過させながら、暗視野画像を検出する。光電子増倍管232の前に配置された適切なフィルタ232a、例えば、バンドパスフィルタは、不要な放射周波数を遮断しながら、励起周波数での放射を光電子増倍管232に通過させることを可能にする。別のダイクロイックミラー234は、第1の周波数で発蛍光団によって放出された蛍光放射を光電子増倍管236に反射する一方で、他の周波数で他の発蛍光団によって放出された蛍光放射の通過を可能にする。別のダイクロイックミラー238は、別の発蛍光団によって第2の周波数で放出された蛍光放射を光電子増倍管240に反射する一方で、さらに別の発蛍光団によって放出された蛍光放射を第3の周波数で通過させ、それは光電子増倍管242によって検出される。前の実施形態と同様、複数のフィルタ236a、240aおよび242aがそれぞれ、光電子増倍管236、240および242の前に配置されて、望ましくない放射周波数を実質的に遮断しながら、所望の周波数での放射の透過を可能にする。
【0082】
図7Dを引き続き参照すると、本教示によるシステムのこの実装は、例えば、
図7Cに関連して述べた方法で、明視野画像を生成するための別の検出アーム220bをさらに含む。より具体的には、検出アーム202は、励起放射の明視野画像を生成するために光を光検出器216に集束させる2つのレンズ212および214を含む。フィルタ218、例えば、バンドパスフィルタは、光検出器216の前に配置されて、望ましくない放射周波数を拒絶しながら、励起放射が検出器に通過することを可能にする。
【0083】
再び
図1ならびに
図8を参照すると、この実施形態では、トランスインピーダンス増幅器70は、光検出器64(または
図7A~
図7Dに関連して述べられる光検出器のそれぞれ)の出力に結合されて、光検出器によって生成される信号を増幅することができる。データ分析ユニット72(本明細書では分析モジュールまたは分析器とも呼ばれる)は、増幅された信号を受信し、信号を分析して、サンプルの蛍光画像を生成する。データ分析ユニット72は、ハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアで実装することができる。例として、検出された蛍光データを分析するための方法は、受信された蛍光信号を分析するためにプロセッサの制御下でアクセスされる分析モジュールの読み取り専用メモリ(ROM)ユニットに格納されることができる。
【0084】
以下でより詳細に述べられるように、分析方法は、時変光検出器の出力の周波数成分を決定し、それらの周波数成分に基づいてサンプルの蛍光画像を構築する。光検出器の出力の周波数成分を決定するための様々な方法を採用することができる。そのような適切な方法のいくつかの例には、フーリエ変換、ロックイン検出、フィルタリング、I/Q復調、ホモダイン検出、およびヘテロダイン検出が含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
例として、
図9Aおよび
図9Bは、サンプルの蛍光画像を生成するために分析モジュール72によって実行可能な例示的な分析を示す。ブロック(1)で、アナログ増幅信号がデジタル化され、デジタル化された蛍光データが生成される。ブロック(2)で、デジタル化されたデータの適切な部分(長さ)が分析のために選択される。例えば、サンプルの照らされた列(ここではフレームとも呼ばれる)に対応する蛍光データを分析のために選択することができる。あるいは、データフレームの一部を分析のために選択することもできる。
【0086】
ブロック(3)において、選択されたデータのフーリエ変換が実行される。例として、いくつかの実施形態では、データの高速フーリエ変換(FFT)が実行されて、データの周波数成分が決定される。いくつかのそのような実施形態では、FFTのビンは、データ取得のために選択された周波数に対応することができる。例えば、256MHzのサンプリングレートの場合、256個のサンプルは、例えばDCから128MHzなど、1MHzだけ互いに分離された周波数ビンを生成できる。FFT分析は、放出された蛍光放出が振幅変調を示すビート周波数に対応する周波数を提供する。
【0087】
図9Aおよび
図9Bを引き続き参照すると、この実施形態では、ブロック(4)において、FFTデータに存在する各周波数成分の振幅の測定値は、その周波数成分の実数成分および虚数成分の二乗和の平方根を取得することによって計算される。各周波数成分は、サンプルの特定の位置から蛍光放射を引き出すために採用されるビート周波数の1つに対応するため、周波数成分の振幅の測定値は、サンプルの水平行に沿ったその周波数成分に関連する位置のピクセル値を提供できる。このようにして、サンプルの水平行の画像のピクセル値を決定することができる。上記のブロックは、サンプルがフローセルを垂直方向に流れるときに、サンプルの水平行ごとに取得された蛍光データに対して繰り返すことができる。ピクセル値を使用して、蛍光画像を構築できる(ブロック(5))。
【0088】
上記のように、分析モジュール72は、当技術分野で知られている技術を使用して、本教示に従って、ハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアで実装することができる。例として、
図10は、増幅器70から増幅された蛍光信号を受信し、その信号をデジタル化してデジタル化された蛍光データを生成するためのアナログ-デジタル変換器1002を含む分析器72の例示的な実装を概略的に示す。分析モジュールは、計算および論理演算の実行を含む、分析モジュールの動作を制御するための中央処理装置(CPU)1004をさらに含む。分析モジュールはまた、ROM(読み取り専用メモリ)1006、RAM(ランダムアクセスメモリ)1008、およびパーマネントメモリ1010を含む。通信バス1012は、CPU1004と他の構成要素との間の通信を含む、分析モジュールの様々な構成要素間の通信を容易にする。メモリモジュールは、蛍光データおよび分析結果を分析するための命令を格納するために使用できる。例として、いくつかの実施形態では、データ分析のための命令、例えば、
図9Aおよび
図9Bに関連して記述された上記のブロックを実行するための命令を、ROM1006に格納することができる。CPU1004は、ROM1006に格納された命令を採用して、RAM1008に格納されたデジタル化された蛍光データを演算し、サンプルの蛍光画像(例えば、1次元または2次元画像)を生成する。CPU1004は、例えばデータベース内のパーマネントメモリ1010への蛍光画像の格納を成し遂げることができる。
図10に概略的に示されているように、分析モジュールは、任意選択的に、受信したデータ(例えば、蛍光データ)からピクセル強度および他の量の計算を実行するためのグラフィックス処理ユニット(GPU)1004’を含むことができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、光検出器によって生成された出力信号の周波数復調は、ロックイン検出技術を使用して達成することができる。例として、
図11Aおよび
図11Bを参照すると、そのような1つの実施形態では、増幅された蛍光信号がデジタル化され(ブロック1)、デジタル化された蛍光信号のいくつかのコピーが生成され(ブロック2)、デジタル化されたコピーの数(N)は、RFコームビームに関連する周波数の数に対応する。信号のデジタル化された各コピーに、RFコームビームの1つとLOビームとの周波数の差に等しいビート周波数に対応する周波数を持つ正弦波および余弦波を乗算して、複数の中間信号を生成する(ブロック2)。各中間信号はローパスフィルタ(ブロック3)を通過し、これは、RFコーム周波数間の周波数間隔の半分に等しい帯域幅を有する。
【0090】
RFコーム周波数の1つに対応する各ビート周波数について(言い換えれば、照射されたサンプルの空間位置に対応する各周波数について)、その周波数に対応する2つのフィルタリングされた中間信号の二乗和の平方根は、その周波数を有するLOビームおよびRFコームビームによって照射されたサンプル位置に対応する画像ピクセルの振幅の測定値として取得される(ブロック4)。いくつかの実施形態では、同じビート周波数に対応する(すなわち、同じサンプル位置に対応する)複数の蛍光データ信号を上記の方法で処理することができ、ピクセル値を平均して平均ピクセル値を得ることができる。
【0091】
サンプルがフローセルを通って垂直方向に流れるときに、サンプルの各水平行について得られた蛍光データについて、上記のブロックを繰り返すことができる。ピクセル値を使用して、蛍光画像を構築できる(ブロック5)。
【0092】
上記のロックイン検出方法は、ソフトウェア、ファームウェア、および/またはハードウェアにて実装することができる。例として、1つの実施形態では、上記のロックイン検出方法は、特に6つを超える周波数が使用される場合、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を使用して実装することができる。いくつかの実施形態では、スイスのチューリッヒのZurich Instrumentsによって販売されているHF2L-MF多周波増幅器などの多周波ロックイン増幅器を採用することができる。
【0093】
さらなる例として、いくつかの実施形態では、検出された蛍光信号の周波数復調は、バンドパスフィルタベースの画像復調技術を採用することによって達成することができる。
図12Aおよび
図12Bを参照することにより、そのような周波数復調方法の1つの実施形態では、光検出器64および増幅器70によって提供される蛍光信号がデジタル化され(ブロック1)、デジタル化された信号のいくつかのコピーが生成され(ブロック2)、デジタル化されたコピーの数(N)は、RFコームビームに関連する周波数の数に対応する。デジタル化された蛍光信号の各コピーは、RFコームビームの1つに関連するビート周波数(つまり、サンプルの特定の位置に関連するビート周波数)を中心とするバンドパスフィルタにその信号を通過させることによってフィルタリングされる(ブロック3)。より具体的には、各バンドパスフィルタは、N個のビート周波数のうちの1つを中心とし、隣接するビート周波数間の周波数間隔の半分に等しい帯域幅を有する。
【0094】
各ビート周波数での包絡線検波器を採用して、各水平線について、その周波数に対応する各ピクセルの振幅を推定する(ブロック4)。いくつかの場合では、ピクセルに関連するサンプル位置に対応する複数の蛍光信号を処理することによって得られる、そのピクセルに対応する複数のピクセル値が平均されて、平均ピクセル値が得られる。上記のブロックは、サンプルがフローセルを垂直方向に流れるときに、サンプルの水平行ごとに取得された蛍光データに対して繰り返すことができる。ピクセル値を使用して、サンプルの1次元または2次元の蛍光画像を構築できる(ブロック5)。
【0095】
分析モジュールはまた、明視野および暗視野画像データを受信および処理するように構成することができる。例えば、
図7Cおよび
図8を参照すると、分析モジュール72は、暗視野および明視野画像を生成するために、光検出器208および218から暗視野および明視野画像データを受信するようにさらに構成することができる。例えば、
図10を参照すると、例えば当技術分野で知られている方法で暗視野および明視野画像を生成するための命令は、パーマネントメモリ82に格納することができる。プロセッサ76は、これらの命令を採用して、受信した暗視野および明視野画像データを処理して画像を生成することができる。分析モジュールはまた、例えば、蛍光画像と明視野および暗視野画像の一方または両方とをオーバーレイすることによって合成画像を生成するように構成することができる。
【0096】
上記のシステム10などの本教示によるシステムによって生成された蛍光画像ならびに明視野および暗視野画像は、様々な異なる方法で使用することができる。例えば、蛍光画像を積分して、従来のフローサイトメーターによって生成されたデータに匹敵する値を生成することができる。蛍光画像を分析して、その画像を生じさせる蛍光プローブの位置を決定することもできる(例えば、プローブが核、細胞質であるか、細胞小器官に局在するか、または細胞膜の外側にあるかを決定できる)。さらに、いくつかの用途では、すべて同じ細胞から取られた、異なる蛍光バンドを検出することによって得られた複数の蛍光画像を使用して、細胞内の複数の蛍光プローブの共局在化の程度を決定することができる。さらに、とりわけ、細胞モルホロジー、細胞信号伝達、内在化、細胞-細胞相互作用、細胞死、細胞周期、およびスポットカウント(例えば、FISH)の分析は、多色蛍光、明視野、および暗視野画像を使用して可能である。
【0097】
上記のように、システム10は、少なくとも3つの異なるモードで動作することができる。上記の1つのモードでは、LOビームおよび複数のRFコームビームがサンプルの一部(例えば、水平範囲に沿って配置された位置)を同時に照射し、照射された位置から放出された蛍光放射を検出および分析して、サンプルの蛍光画像を構築する。別の動作モードでは、複数のRF駆動信号をAODに同時に印加するのではなく、駆動信号を含む周波数ランプが、レーザービームの周波数が開始周波数(f1)から終了周波数(f2)へと時間とともに変化するようにAODに印加される。周波数ランプの各駆動周波数について、レーザービームの周波数はその駆動周波数によってシフトされ、サンプルは周波数シフトされたレーザービームによって照射され、サンプルから蛍光放射を引き出す。言い換えれば、このモードでは、システムは、中心レーザー周波数からシフトされた複数の周波数で時間間隔にわたって連続的にサンプルを照射することによって、サンプルから蛍光放射を取得するように動作する。AODによって生成される周波数シフトには、同じ光路を使用してビームがサンプル全体を高速でスキャンするような角度偏向が伴う。
【0098】
より具体的には、この動作モードでは、RF周波数シンセサイザ10を採用して、AOD18に印加される駆動信号を開始周波数(f1)から終了周波数(f2)にランプする。例として、駆動信号がランプされる周波数範囲は、約50MHz~約250MHzまでとすることができる。いくつかの実施形態では、駆動信号は、約100MHz~約150MHzでランプされる。この実施形態では、駆動周波数は、例えば、高速を達成するために、時間とともに連続的に変化する。他の実施形態では、駆動周波数は、開始周波数(f1)から終了周波数(f2)まで離散的なステップで変化することができる。
【0099】
駆動周波数は、周波数シフトされたビームがミラー28を通らず、レンズ26、レンズ30、ミラー40/42、ビームスプリッタ44、レンズ46、ミラー56、レンズ50、ミラー58および対物レンズ52によって定義される光路に沿って伝播するように選択され、サンプルホルダーを通って流れるサンプルの一部を照明する。ランプレートは、好ましくは、サンプルがビームを横切って流れるときに放出される蛍光放射に基づいて生成される蛍光画像の垂直方向のぼけを改善し、好ましくは防止するために十分に速い。これは、例えば、ランプレートをサンプルの流速と一致させることによって達成できる。サンプルのレーザースポットサイズを使用して、適切なレートを推定できる。例として、1マイクロメートルのレーザースポットサイズの場合、画像のぼけを防ぐために、サンプルの流速が0.1メートル/秒の場合、1ラインのスキャン時間は10マイクロ秒以下にする必要がある。
【0100】
励起放射による照明に応答してサンプルから放出される蛍光放射は、上記の方法で収集および検出される。具体的には、
図8を参照すると、蛍光放射は、光検出器64によって検出される。検出された蛍光は、増幅器70によって増幅され、増幅された信号は、分析モジュール72によって分析されて、サンプルの蛍光画像を再構築する。画像の再構築は、開始周波数(f
1)から終了周波数(f
2)までのスキャン期間内の特定の時間に水平ピクセル位置を割り当てることによって実行される。上記の動作モードにおけるように周波数成分の振幅を分析してピクセル値を取得する場合とは対照的に、この動作モードで使用される復調アプローチは、検出された蛍光信号の時間領域値のみを使用して、画像のピクセルに値を割り当てる。サンプルが垂直方向に流れるときに本プロセスを繰り返して、サンプルの二次元蛍光画像を取得することができる。
【0101】
サンプルによって放出された蛍光放射は、もしあれば、光検出器64によって収集される。
図8を参照すると、検出された蛍光放射は、増幅器70によって増幅される。分析モジュール72は、増幅された信号を受信する。この動作モードでは、分析モジュールは蛍光信号を分析して、サンプル、例えば細胞/粒子の蛍光含有量を決定する。この動作モードではサンプルを励起するビームが1つしかないため、サンプルの励起に応答してビート周波数は生成されない。したがって、蛍光信号の周波数領域には画像情報がない。むしろ、検出された蛍光信号は、時間領域でエンコードされた画像情報を有している。この動作モードでは、検出された蛍光信号の時間値を水平方向のピクセル座標として使用し、蛍光信号のデジタル化された電圧値をピクセル値(明るさ)として使用して、画像をデジタル的に再構築できる。AODに印加される駆動周波数の各スキャンは、画像の1本の水平線(行)を生成する。画像の再構築は、サンプルが照明領域(ポイント)を流れるときに連続スキャンによって達成される。
【0102】
さらに別の動作モードでは、システム10は、例えば、高周波によってレーザービームの中心周波数をシフトすることによって生成することができる単一の励起周波数によって、サンプルの複数の位置を同時に照射するように動作させることができる。より具体的には、再び
図1を参照すると、そのような動作モードでは、単一の駆動高周波をAOD18に印加して、AOD18に入るレーザービームに対してシフトされる周波数を有するレーザービームを生成することができる。さらに、高周波レーザービームがインターセプトされ、レンズ32ならびにミラー33および35を介してトップハットビームシェイパー34に向かってミラー28によって反射されるように、周波数シフトされたレーザービームが、AODに入るレーザービームに対する角度シフトを示す。トップハットビームシェイパーを出るビームは、ビームスプリッタ44によって反射され、レンズ46によって中間像面48上に集束される。この面では、
図13Aに概略的に示されているように、レーザービーム1300は、水平方向に沿って引き伸ばされたプロファイルを示す。
【0103】
水平方向に引き伸ばされたレーザービームは、ミラー56によって正レンズ50に反射される。正レンズ50を通過した後、レーザービームは、ミラー58によって対物レンズ52に反射される。上記のように、正レンズ50および対物レンズ52は、トップハットプロファイルのレーザービームを中間像面48からフローセル54を通って流れるサンプル上に中継するための望遠鏡を形成する。
【0104】
水平方向に引き伸ばされたレーザービームは、サンプルの水平方向の範囲を照射して、対象の発蛍光団を、サンプル中に存在する場合にその水平方向の範囲に沿って励起する。したがって、この動作モードでは、サンプルの複数の水平位置が異なる励起周波数で照射される第1の動作モードとは異なり、サンプルの複数の水平位置が同じ励起周波数で照射される。この動作モードでは、ユーザは流れ過ぎる細胞または粒子の画像を取得できない。ただし、この動作モードでは、典型的には、他の2つの動作モードにおけるよりも高い光パワーをサンプルに印加でき、これは、画像が不要な場合に、より高い信号対雑音比のデータを取得するために役立つ可能性がある。この動作モードには、システムにいかなる機械的変更も加える必要がなく、単に音響光学偏向器を駆動する電子信号を変更するだけでアクセスできる。
【0105】
したがって、システム10は、サンプルから蛍光放射を引き出すために、3つの異なる動作モードで動作することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、蛍光寿命測定は、例えば、高周波シフトされた局部発振器ビームのそれぞれのビートの位相を、検出された蛍光信号のそれぞれの高周波成分の位相と比較することによって、サンプル上の各空間位置で実行することができる。例として、
図13Bは、そのような蛍光寿命測定を可能にする、上記のシステム10の修正版であるシステム10’を示す(簡潔にするために、
図1に示される特定の構成要素はこの図には示されていない)。具体的には、ビームスプリッタ44に入射するRFコームビームの一部は、ビームスプリッタによって収束レンズ400に反射される(この実施形態における例示として、レンズ400は200mmの焦点距離を有するが、他の焦点距離もまた利用される)。レンズ400は、RFコームビームのその部分を、励起ビームを検出するフォトダイオード402上に集束させる。フォトダイオード402の出力は、分析モジュール72によって受信することができる(
図8を参照)。分析モジュールは、例えば、上記の復調技術の1つを使用して、励起ビームの周波数逆多重化を提供し、励起ビーム内の各高周波成分の位相を決定することができる。これにより、検出された蛍光信号の各高周波成分について、その高周波成分の位相を比較できる参照位相を提供できる。例えば、励起信号のFFTの実数成分および虚数成分、またはロックイン型復調のI成分およびQ成分を採用できる。または、サンプル/フローセルの明視野画像を検出する検出器の出力を使用して、蛍光ビート周波数の位相を比較できる参照位相を取得できる。
【0107】
より具体的には、分析モジュール72は、例えば上記の方法で、検出された蛍光信号の周波数逆多重化を提供することができる。当業者にとって理解されるように、蛍光信号の各ビート周波数について、高周波成分の位相を励起ビームのそれぞれの参照位相と比較して、空間的に分解された蛍光寿命測定値および蛍光寿命画像を得ることができる。
【0108】
特定の実施形態では、主題のシステムは、フロー流れ中のサンプルによって放出される光を検出するために上記の光学構成を採用するフローサイトメトリーシステムを含む。特定の実施形態では、主題のシステムは、その開示が参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許番号3,960,449、4,347,935、4,667,830、4,704,891、4,770,992、5,030,002、5,040,890、5,047,321、5,245,318、5,317,162、5,464,581、5,483,469、5,602,039、5,620,842、5,627,040、5,643,796、5,700,692、6,372,506、6,809,804、6,813,017、6,821,740、7,129,505、7,201,875、7,544,326、8,140,300、8,233,146、8,753,573、8,975,595、9,092,034、9,095,494、および9,097,640に記載されているフローサイトメーターの1つ以上の構成要素を含むフローサイトメトリーシステムである。
【0109】
上記のように、いくつかの実施形態では、主題のシステムは、フローサイトメーターのフロー流れ中などの、フロー流れとして流れるサンプル中の粒子(例えば、細胞)を画像化するように構成される。フロー流れ中の粒子の流量は、0.00001m/s以上、例えば0.00005m/s以上、例えば0.0001m/s以上、例えば0.0005m/s以上、例えば0.001m/s以上、例えば0.005m/s以上、例えば0.01m/s以上、例えば0.05m/s以上、例えば0.1m/s以上、例えば0.5m/s以上、例えば1m/s以上、例えば2m/s以上、例えば3m/s以上、例えば4m/s以上、例えば5m/s以上、例えば6m/s以上、例えば7m/s以上、例えば8m/s以上、例えば9m/s以上、例えば10m/s以上、例えば15m/s以上、および25m/s以上であり得る。例えば、フロー流れのサイズ(例えば、フローノズルオリフィス)に応じて、フロー流れは、主題のシステムにおいて、0.001μL/分以上、例えば0.005μL/分以上、例えば0.01μL/分以上、例えば0.05μL/分以上、例えば0.1μL/分以上、例えば0.5μL/分以上、例えば1μL/分以上、例えば5μL/分以上、例えば10μL/分以上、例えば25μL/分以上、例えば50μL/分以上、例えば100μL/分以上、例えば250μL/分以上、および500μL/分以上の流量を有し得る。
【0110】
いくつかの態様では、粒子、例えば細胞の1つ以上の特性の推定値を提供するための方法およびシステムが開示されている。例として、
図14Aは、粒子の1つ以上の特性を決定するための本教示の実施形態による1つの例示的な方法を示すフローチャートを提示する。粒子がフローサイトメトリーシステムを通って流れるときに、粒子は高周波変調光ビームで照射され、粒子から少なくとも1つの放射応答を引き出す(ブロック1)。例として、高周波変調光ビームは、高周波によって互いにシフトされた光周波数を有する少なくとも2つのビームレットを含むことができる。いくつかの実施形態では、高周波シフトは、約10MHz~約250MHzの範囲とすることができる。例えば、高周波シフトは、約55MHz~約225MHz、例えば、約60MHz~約200MHz、例えば、約65MHz~約175MHz、例えば、70MHz~約150MHz、および、約75MHz~約125MHzの範囲とすることができる。例として、いくつかの実施形態では、高周波変調光ビームは、レーザービームを音響光学偏向器(AOD)に導入し、1つ以上の高周波で1つ以上の駆動信号をAODに印加することにより生成でき、例えば上記の方法で、前記高周波によって互いに対してシフトされる光周波数を有する複数の角度的に分離されたビームレットを生成することができる。
【0111】
いくつかの実施形態において、高周波変調光ビームによる粒子の照明に応答して粒子から引き出される放射応答は、蛍光および/または散乱放射のいずれかとすることができる。
【0112】
図14Aのフローチャートを引き続き参照すると、粒子から発せられる放射応答を検出することができ(ブロック2)、放射応答に関連する時間波形データを生成することができる(ブロック3)。上記で述べたものなどの様々な放射検出モダリティおよび検出器を使用して、引き出された放射応答を検出することができる。いくつかの実施形態では、生成される波形は、蛍光および/または散乱波形データとすることができる。波形データを処理して、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を取得できる。多くの実施形態では、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を得るための波形データのそのような処理は、波形データに基づいて粒子の画像を生成することなく実行することができる。いくつかの実施形態では、本処理には、時間波形データを変調する1つ以上のビート周波数を分析して、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を取得することが含まれる。いくつかの実施形態では、処理は、粒子の少なくとも1つの特性の推定値を取得することに関連する待ち時間が約100マイクロ秒未満であるように、十分に速く実行される。
【0113】
いくつかの実施形態では、上記の方法を使用して、とりわけ、粒子の寸法サイズ、2つの異なる次元に沿った粒子のサイズの比、粒子に関連する2つ以上のマーカーによって放出される蛍光放射の共局在、または放射応答の点状性の程度(例えば、粒子によって放出される蛍光放射の点状性の程度)のいずれかの推定値を得ることができる。
【0114】
上記の方法を使用して、様々な異なる粒子の1つ以上の特性の推定値を取得することができる。例として、粒子は、細胞、小生物(例えば、線虫c.elegan)、ビーズ、マイクロ粒子、ナノ粒子、ウイルス粒子、細菌、エキソソーム、または医薬品のいずれかとすることができる。
【0115】
図14Bは、細胞などの粒子の少なくとも1つの特性を推定するための実施形態によるシステム1400を概略的に示す。例示的なシステム1400は、高周波変調された光レーザービームでフローサイトメトリーシステムの細胞を通って流れる1つ以上の粒子を照明するための照明システム1402を含む。検出器1404は、その照明に応答して、粒子の放射応答、例えば、蛍光および/または散乱放射を検出し、放射応答を示す1つ以上の信号を生成することができる。分析器1406は、検出器から信号(複数可)を受信し、時間波形データを生成し、その波形データに対して演算して、粒子の1つ以上の特性の推定値を導出することができる。
【0116】
分析器1406は、波形データを分析するための様々な異なる方法を採用して、細胞などの粒子の1つ以上の特性の推定値を取得することができる。例として、いくつかの実施形態では、粒子は、少なくとも2つの蛍光マーカーで染色することができ、各マーカーは、高周波変調光放射による照明に応答して蛍光放射を放出するように構成される。蛍光放射を検出およびデジタル化して、それぞれがマーカーの1つに対応する蛍光波形を生成することができる。分析器は、蛍光波形に対して演算して、マーカーから発せられる蛍光放射の共局在の測定値を取得できる。具体的には、分析器は、ハイパスまたはバンドパスフィルタを少なくとも1つの波形に適用して、少なくとも1つのフィルタリングされた波形を生成し、続いて波形を点ごとに乗算して結果の乗法波形を生成し、乗法波形を積分して積分値を取得し、積分値を事前定義された閾値と比較して、共局在化の測定値を取得することができる。別の例として、いくつかの実施形態では、フローサイトメトリーシステムにおける粒子フローの方向に垂直または平行な方向に沿った粒子のサイズの推定値を得ることができる。例えば、いくつかのそのような実施形態では、粒子フローの方向に垂直な方向の粒子サイズの推定値は、高周波変調光ビームによる照明に応答して粒子が放出する蛍光放射に対応する蛍光波形を二乗し、バンドパスフィルタを二乗波形に適用し、フィルタリングされた波形を積分し、積分値を事前定義された閾値と比較することによって得ることができる。さらに、いくつかの実施形態では、分析器は、散乱データを使用して、粒子フローの方向に平行な方向の粒子のサイズの推定値を取得することができる。
【0117】
以下で述べるように、フローサイトメトリーシステムを流れる粒子の1つ以上の推定された特性を採用して、その粒子に関する選別判断に、すなわち、その粒子を選別するか否かに、到達することができる。波形データに対して演算して粒子の少なくとも1つの特性の推定値を取得するために使用できる処理方法のいくつかの例を、フローサイトメーターを流れる細胞の特性の推定値を使用してそれらの細胞に関する選別判断に到達するという内容にて以下に述べる。そのような処理方法は、細胞以外の粒子の特性の推定値を取得するために使用することができ、さらに、推定された特性は、選別目的に使用されない場合があることを理解されたい。
【0118】
関連する態様では、粒子の1つ以上の特性に基づいてフローサイトメーターを通って流れる粒子、例えば細胞の集団の自動ゲーティング(例えば、コンピュータ支援ゲーティング)のための方法が開示される。例として、そのような方法は、事前定義された範囲内にある粒子のサイズに基づいて、フローサイトメーターを通って流れる複数の粒子のサブセットをゲーティングすることができる。例えば、
図14Cのフローチャートを参照すると、そのような方法は、複数の粒子を含むサンプルをフローサイトメーターに導入すること(ブロック1)、および、1つ以上のフローサイトメーター測定値から、複数の粒子についての少なくとも1つの粒子特性の推定値を取得すること(ブロック2)を含むことができる。少なくとも1つの粒子特性を取得することは、粒子からの放射応答を引き出すために、高周波によって互いにシフトされた少なくとも2つの光周波数を有する放射でフローサイトメーターを流れるときに粒子を照射すること、粒子からの放射応答を検出して応答に関連する時間波形データを生成すること、および、前記時間波形データを処理して、前記時間波形データを変調する1つ以上のビート周波数を分析することによって前記少なくとも1つの粒子特性の値を取得することを含むことができる。本方法は、コンピュータプロセッサを介して、事前定義された範囲内にある粒子特性の値を有する1つ以上の粒子を示すゲートを識別することをさらに含むことができる。例として、事前定義された範囲内の寸法サイズ(例えば、横方向サイズ)を有する粒子をゲーティングすることができる。
【0119】
図14Bに示されるシステムなどのシステムは、上記のゲーティング方法を実行するために採用することができる。例えば、分析器3006は、例えば、高周波変調光ビームによる照明に応答してそれらの粒子によって放出される蛍光放射における1つ以上のビート周波数の分析に基づいて、複数の粒子の少なくとも1つの特性の推定値を決定し、粒子に関するゲーティング判断に到達するために、粒子の特性の推定値が事前定義された範囲内にあるか否かを決定する(例えば、決定された特性が事前定義された範囲内にある場合、粒子はゲーティングされる)ようにプログラムすることができる。いくつかの実施形態では、「混合モデル密度ゲーティングにおける近隣閾値」と題された米国特許第8,990,047号の教示は、本教示に基づいて修正されると、フローサイトメーターを流れる粒子をゲーティングするために使用することができる。米国特許第8,990,047号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
いくつかの態様において、高周波変調光放射、例えば、1つ以上の高周波によって互いに分離された2つ以上の光周波数を含む光放射ビームを介したそれらの細胞のインタロゲーションに基づいて細胞を選別するための方法およびシステムが開示される。いくつかの実施形態では、光ビームは、それぞれが別のものに対して高周波シフトを有する複数の角度的または空間的に分離されたビームレットを含むことができる。いくつかの場合では、そのようなビームを使用することにより、粒子(例えば、細胞)内の異なる位置を、異なる高周波シフトされた光周波数で照射することが可能になる。以下でより詳細に記述するように、そのような方法は、検出された信号(複数可)に基づいて蛍光画像を計算する必要なしに、光ビームによる照明に応答して細胞によって生成された時変信号を採用することによって選別判断を提供することができる。本教示による方法の様々な実施形態は、細胞を選別する内容で(例えば、フローサイトメトリーシステムにおいて)以下に記述されるが、本明細書に記載される方法はまた、小生物(例えば、線虫c.elegan)、ビーズ、マイクロ粒子、ナノ粒子、ウイルス粒子、細菌、エキソソーム、または医薬品などの他のタイプの粒子を選別するために採用することができる。いくつかの実施形態では、本教示を使用して選別することができる粒子は、約50ナノメートル~約1ミリメートルの範囲、例えば約100ナノメートル~約1マイクロメートルの範囲のサイズ(例えば、最大サイズ)を有することができる。
【0121】
さらに、多くの実施形態において、本明細書で記述される選別方法は、例えば、細胞または他の粒子が、高い粒子スループットで動作する選別装置を使用して選別されることができるように、短い待ち時間で選別判断を提供するために採用することができる(例えば、1秒あたり1000超の選別動作が実行され得る)。例として、本明細書に記載の方法を使用して、約100マイクロ秒以下、例えば、約10マイクロ秒~約100マイクロ秒の範囲、または約20マイクロ秒~約80マイクロ秒の範囲、または約30マイクロ秒~約70マイクロ秒の範囲、または50マイクロ秒、の待ち時間で選別判断を行うことができる。「待ち時間」という用語は、本明細書では、粒子、例えば細胞をインタロゲーション放射で照射することと、粒子の特性への到達、および/またはその粒子に関する選別判断との間の時間経過を示すために使用される。
【0122】
例として、
図14Dのフローチャートは、粒子から発せられる2つ以上の発蛍光団(例えば、外因性および/または内因性発蛍光団)に対応する蛍光信号の共局在化の程度に基づいて粒子(例えば、細胞)を選別するための実施形態による方法を示す。一般性を失うことなく、以下の記述では、粒子は細胞であると想定される。ブロック1において、細胞は、1つ以上の高周波によって互いに分離された2つ以上の光周波数を含む光放射ビームによる照明を介して光学的にインタロゲーションされる。いくつかの場合では、光ビームは、それぞれが別のものに対して高周波シフトを有する複数の角度的または空間的に分離されたビームレットを含むことができる。このようなビームを使用すると、細胞内の様々な位置を異なる光周波数で照射でき、これらは、1つ以上の高周波によって互いにシフトされる。光周波数は、細胞に関連すると予想される2つ以上の発蛍光団を励起するように選択できる。例えば、発蛍光団は、例えば染色を介して、細胞がタグ付けされる蛍光色素分子とすることができる。例として、いくつかの実施形態では、放射ビームの光周波数は、約300THZ~約1000THZの範囲とすることができ、光周波数間の高周波分離は、例えば、約50MHz~約250MHzの範囲とすることができる。
【0123】
そして、励起された細胞から発せられる蛍光放射は、2つ(またはそれ以上)の別個の蛍光チャネルに収集することができ、そのそれぞれは、発蛍光団の1つによって放出される蛍光放射に対応する(ブロック2)。これは、例えば、
図7Aに関連して上記で述べた検出器構成を採用することによって達成することができる。各チャネルで収集された蛍光放射はデジタル化でき(ブロック3)、信号値の時系列(蛍光強度)として表すことができる。この実施形態および他の実施形態では、蛍光放射に存在するビート周波数をエンコードすることができるそのような信号値の時系列は、時間周波数波形と呼ばれる。2つ以上の蛍光チャネルに対応するデジタル化された時間周波数波形は、時間的に同期され(ブロック4)、正規化される(ブロック5)。正規化は、例えば、各波形をその最大値で除算し、波形にスケーリングファクタを乗算することによって達成できる。
【0124】
ハイパスまたはバンドパスフィルタを少なくとも1つの波形に適用して、少なくとも1つのフィルタリングされた波形を生成することができる(ブロック6)。いくつかの実施形態では、約1MHz未満の周波数の通過を可能にし、より高い周波数を実質的に遮断するローパスフィルタが適用される。適切なローパスフィルタのいくつかの例には、時間領域有限インパルス応答(FIR)フィルタまたはフーリエ領域フィルタが含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
そして、波形を点ごとに乗算して乗法波形を取得することができ、乗法波形を積分して積分値を取得することができる(ブロック7)。例として、
図15は、1つの蛍光チャネルで検出されたフィルタリングされた正規化時系列デジタル化蛍光信号を表すアレイ1500と、アレイ1500と時間的に同期される別の蛍光チャネルで検出された、フィルタリングされた正規化時系列デジタル化蛍光信号を表すアレイ1501とを示す(簡単にするために、この例示的な例では、蛍光チャネルの数は2であるように選択され、アレイ要素の数は10であるように選択されるが、蛍光チャネルの数は2より多くあり得、アレイ要素の数は10より多くあり得ることを理解されたい)。このデータは、本明細書では時間周波数波形と呼ばれる。結果として得られるアレイ1502は、アレイ1500および1501内のデータの点ごとの乗算を介して得られる。
【0126】
各チャネルからの時間的蛍光信号は、光放射ビームの高周波分離された光周波数の干渉に対応するビート周波数を含む。そのため、そのそれぞれのデジタル化されたデータの乗算は、それらの周波数の和および差を示す。2つ以上の蛍光チャネルの信号が励起細胞内の実質的に同様の空間位置から発生する場合、それらの信号の乗算によって得られる結果の時間領域データには、励起細胞から発せられる異なる蛍光チャネルにおける信号の共局在化の程度に基づいてDCのまたはDCに近い周波数成分が含まれる。
【0127】
ブロック8において、積分された結果は、事前定義された閾値と比較されて、インタロゲーションされた細胞が、選別の基準を満たす細胞として認定されるために十分な蛍光信号の共局在化を示すか否かを決定する。例えば、積分された結果が事前定義された閾値以上の場合、細胞は選別のために選択される。そうでなければ、細胞は選別のために選択されない。
【0128】
蛍光共局在化に基づく上記の選別方法は、例えば、転座分析のために、様々な用途で使用することができる。
【0129】
別の態様において、細胞サイズの推定値に基づいてフローサイトメトリーシステムにおいて細胞を選別するための方法が提供され、細胞サイズの推定値は、細胞によって放出される蛍光放射の分析を介して得られる。例えば、本方法は、細胞から発せられる蛍光パルスの持続時間を利用して、フローの方向に沿った細胞の寸法を推定し、ローパスフィルタに蛍光信号の二乗を通過させることによって得られるローパスフィルタ処理された信号に含まれるパワーを分析し、細胞の横方向寸法(例えば、細胞フローの方向に直交する細胞の寸法)の推定値に基づいて選別判断を実行する。
【0130】
より具体的には、
図16を参照すると、1つの実施形態では、細胞は、1つ以上の高周波によって互いに分離された2つ以上の光周波数を含む光放射ビームによる照明を介して光学的にインタロゲーションされる(ブロック1)。前の実施形態と同様に、光ビームは、例えば、それぞれが別のものに対して高周波シフトを有する複数の角度的または空間的に分離されたビームレットを含むことができる。光周波数は、細胞に関連する1つ以上の外因性および/または内因性発蛍光団を励起するように選択することができる。細胞は光放射ビームを通過し、ビームによる励起に応答して蛍光を放出する。一般性を失うことなく、この実施形態では、細胞は、照明ビームを通って垂直方向に流れると想定され、放出された蛍光は、細胞のフロー方向に実質的に直交する横(水平)方向で検出される。
【0131】
そして、細胞から発せられる蛍光信号が検出され、デジタル化されて、時間周波数波形が生成される(ブロック2)。そして、検出された蛍光放射を分析して、以下で説明するように細胞サイズを推定することができる。いくつかの実施形態では、細胞から発せられる光散乱パルスの持続時間を使用して、フローの方向に沿った細胞サイズを推定することができる。
【0132】
細胞から発せられる蛍光パルスの持続時間は、インタロゲーションする光放射ビーム内の細胞の滞留時間に関連し、これはそして、フロー方向に平行な方向のビームの寸法、フロー方向の細胞サイズ、および細胞の流速に関連する。細胞を照らすビームが、直径(H)を有し、細胞の流速がVであり、細胞が、フロー方向のサイズD(例えば直径)を有する場合、サイズDは以下の関係式で近似できる。ここで、Tは検出された光パルス幅である。
D=V×T-2×H 式(2)
【0133】
したがって、ブロック3において、フロー方向の細胞サイズは、例えば上記の関係式を使用して、細胞から発せられる蛍光または光散乱パルスの時間的持続時間に基づいて推定される。
【0134】
図16のフローチャートを引き続き参照すると、細胞の横方向サイズを推定するために、デジタル化された蛍光データは二乗され(ブロック4)、バンドパスフィルタが二乗された蛍光データに適用される(ブロック5)。そして、フィルタリングされたデータが積分されて、積分されたパルスパワーの測定値が取得される(ブロック6)。積分されたパルスパワーは、細胞の横方向サイズの測定値を提供できる。より具体的には、バンドパスフィルタの帯域内にある(二乗演算の結果として生じる)異なる周波数に存在するパワーに基づいて、積分されたパルスパワーは、細胞の横方向サイズの測定値を提供することができる。
【0135】
ブロック7において、フロー方向の細胞サイズの推定値および/またはフィルタリングされたデータに関連する積分されたパルスパワーを採用して、細胞に関する選別判断を行うことができる。例えば、いくつかの実施形態では、フロー方向の推定細胞サイズを第1の閾値と比較することができ、積分されたパルスパワーを第2の閾値と比較して、選別判断を行うことができる。例として、いくつかの場合では、フロー方向の推定細胞サイズと積分されたパルスパワーとの両方がそれぞれの閾値を超えると、正の選別判断が行われる(つまり、細胞が選択される)。あるいは、選別判断は、フロー方向の細胞サイズの推定値または積分されたパルスパワーのみに依存することができる。以下でさらに述べるように、いくつかの場合では、推定された垂直および水平細胞サイズの比率を採用して、選別判断を行うことができる。
【0136】
細胞の横方向サイズの推定値に基づいて選別判断を行うことのさらなる例示として、
図17Aは、15MHzから25MHzに延ばされて1MHzずつ互いに分離された高周波変調を有する複数の高周波変調ビームレットを含む仮説的ビームによって照射された仮説的細胞を概略的に示す。破線は、照明の方向に直交する平面内の照明された細胞の断面図を概略的に示す。細胞から収集され、デジタル化された蛍光放射は、
図17Bに概略的に示されるように、デジタル化された蛍光値の時系列アレイ1700の形態とすることができる(アレイは、ここでは説明の目的でのみ示され、実際の蛍光波形に存在し得るアレイ要素の数を制限するものではない)。波形1700は、波形1701を得るために二乗される。そして、バンドパスフィルタが、二乗された蛍光波形1701に適用され、ここで、フィルタは、2つの周波数f
1およびf
2(ここで、f
2>f
1)の間の選択された変調周波数の通過を、実質的にf
1より低いまたはf
2より高い変調周波数を遮断しながら可能にする。例として、バンドパスフィルタは、FIRバンドパスフィルタとすることができるが、当技術分野で知られている他の適切なフィルタもまた採用され得る。フィルタリングされたデータは、f
1およびf
2の間の変調周波数で検出された蛍光パルスに存在する電力の指標である。そして、フィルタリングされたデータは積分されて、f
1およびf
2の間の周波数における全パルス電力の測定値が得られる。そして、この積分された結果を閾値と比較して、選別判断を行うことができる。例えば、細胞の横方向サイズは、積分された結果が事前定義された閾値よりも小さいという事実に基づいて、特定の値よりも小さいと推定できる。
【0137】
この例では、細胞サイズは、約18MHz~約21MHzの範囲の高周波変調を有する光放射による細胞の照明をもたらす。したがって、蛍光データの二乗の最大変調周波数と最小変調周波数との差は、約6MHzになる。約10MHz~約15MHzの範囲でその蛍光データの二乗の周波数差が生じる、より大きなサイズの細胞の検出が望まれる場合は、10MHz未満および15MHz超の周波数を区別するバンドパスフィルタを蛍光データの二乗に適用できる。この例では、このようなバンドパスフィルタを蛍光データの二乗に適用しても、蛍光データの二乗の変調周波数の差が10MHz未満であるため、所望の横方向サイズを有する細胞の存在を示すために十分な大きさの信号は得られない。
【0138】
細胞サイズに基づく上記の選別方法は、様々な異なる用途、例えば、循環腫瘍細胞(CTC)のサイズによる単離を有することができる。
【0139】
別の態様では、細胞のアスペクト比に基づいて細胞を選別する方法が開示されている。例えば、
図18のフローチャートを参照すると、光学的インタロゲーション領域を通過する細胞は、放射で励起され、細胞によって放出された蛍光放射が収集およびデジタル化されて(ブロック1)、デジタル化された時間周波数波形が生成される。そして、デジタル化された蛍光データを上記の方法で分析して、垂直(フロー方向に沿った)細胞サイズ(ブロック2)および水平(フロー方向に直交する方向に沿った)細胞サイズ(ブロック3)を推定する。より具体的には、細胞の垂直サイズは、細胞によって放出される蛍光または光散乱(または光透過)パルスの時間的幅を使用して推定することができ(ブロック2)、細胞の水平サイズは、例えば、蛍光データの二乗にバンドパスフィルタを適用することに基づく上記の方法を使用して推定することができる(ブロック3)。ブロック4にて、細胞の垂直方向および水平方向のサイズの推定値の比率が決定され、事前定義された閾値と比較されて、その細胞に関する選別判断が行われる。例えば、いくつかの場合では、比率が閾値を超えた場合、その細胞に関して正の選別判断を行うことができる。
【0140】
細胞のアスペクト比に基づく上記の選別方法は、例えば、細胞周期分析、DNA分析などにおいて使用することができる。
【0141】
別の態様において、その細胞質のサイズに対する細胞の核のサイズの比率を決定する方法が開示される。いくつかの実施形態では、そのような比率を採用して、選別判断を行うことができる。
図19Aのフローチャートを参照すると、そのような1つの実施形態では、細胞は2つの蛍光マーカーで標識され(例えば、染色され)、そのうちの1つは細胞膜(細胞質の境界)に存在し、他方は細胞膜に浸透して細胞質に入り、(例えば、細胞の内部機構を介して)細胞の核を染色することができる(ブロック1)。細胞膜に結合する蛍光マーカーのいくつかの例には、抗CD45-FITCまたは抗EpCAM-PEなどの膜タンパク質に結合する発蛍光団でタグ付けされた任意の抗体が含まれる。蛍光マーカーを細胞膜に結合するために採用できる他の一般的な表面タンパク質には、例えば、CD3、CD4、CD8などが含まれる。適切な核蛍光染色のいくつかの例には、ヨウ化プロピジウム、SYTO16、7-AAD、およびDAPIが含まれるが、これらに限定されない。
【0142】
そして、細胞は、両方のタイプの蛍光マーカーを励起するように放射で照射され(ブロック2)、放出された蛍光は、細胞膜から、およびその核からの蛍光放出に対応する2つのチャネルで検出およびデジタル化される(ブロック3)。細胞膜に対応する蛍光データは、例えば上記の方法で、細胞質のサイズの推定値を取得するために使用され、核に対応する蛍光データは、核サイズの推定値を取得するために使用される(ブロック4)。例えば、各チャネルにおける蛍光または光散乱パルスの幅は、例えば上記の方法で、1つの次元に沿って(すなわち、フロー方向に沿って)細胞サイズを推定するために採用することができる。さらに、細胞質または核の横方向サイズは、上記の方法でそれぞれのチャネルの蛍光データの二乗にバンドパスフィルタを適用することによって推定することができる。このバンドパスフィルタ処理されたデータを積分した結果は、閾値よりも大きいまたは小さい細胞を選別するために、事前定義された閾値と比較するための値を提供する。さらに、2次元での細胞のサイズ推定値は、例えば、垂直および水平サイズ推定値の二乗和平方根を取得することによって組み合わせることができ、合計細胞サイズの推定値に基づく選別判断に到達する。
【0143】
ブロック5において、細胞質および核のサイズ推定値の比率、例えば、垂直方向または水平方向のサイズの比率、または組み合わされたサイズの比率が得られる。
図19Bのフローチャートを参照すると、いくつかの実施形態では、例えば上記で述べられ、
図19Bのフローチャートのブロック1~5で表された方法で決定することができる、その細胞質のサイズに対する細胞の核のサイズの比率を使用して、選別判断を行うことができる。例えば、比率を事前定義された閾値と比較して、選別判断を行うことができる(ブロック6)。例として、比率が閾値を超える場合、正の選別判断が行われる(すなわち、細胞が選択される)。
【0144】
例として、核対細胞質サイズ比に基づく上記の選別方法は、循環腫瘍細胞の分類に使用することができる。
【0145】
別の態様において、細胞から放出される蛍光放射の細胞粒度(蛍光点状性)を推定する方法が開示され、これは、いくつかの実施形態において、細胞を選別するために使用されることができる。言い換えれば、細胞から放出された蛍光放射が、拡散した細胞内分布の放出中心から発せられるものとして特徴付けられるか、または細胞内にて拡散的に分布していない放出中心から発せられるものとして特徴付けられるかに基づいて選別判断を行うことができる。
【0146】
より具体的には、
図20Aに示されるフローチャートを参照すると、1つの実施形態では、1つ以上の外因性および/または内因性蛍光マーカーを有する細胞は、マーカー(複数可)から蛍光放射を引き出すように、1つ以上の高周波によって互いに分離された2つ以上の光周波数を有する光放射で照射される(ブロック1)。前の実施形態と同様に、いくつかの場合では、光ビームは、複数の角度的または空間的に分離されたビームレットを含むことができ、それらのそれぞれは、別のものに対して高周波シフトを有する。例として、
図21を参照すると、実例的で例示的な実施形態では、光放射ビームは、変調周波数f
1、f
2、f
3、f
4、f
5を含むことができ、これらは、例えば0.5MHz間隔で10MHz(f
1)~15MHz(f
5)にわたることができる。以下でより詳細に記述されるように、放出された蛍光放射の点状性は、放出された蛍光放射が、光ビームを変調するために採用されるもの以外の変調周波数(例えば、この実施形態ではf
1、f
2、f
3、f
4、f
5以外)を示す程度によって推定することができる。光ビームを変調するために使用される周波数間の周波数とすることができる他の周波数は、本明細書では「オフピクセル周波数」と呼ばれる。言い換えれば、オフピクセル周波数への蛍光パワーの「漏れ」は、放出された蛍光の点状性の程度を示す。漏れが多ければ多いほど、放出された蛍光の点状性が大きくなる。
【0147】
図20Aのフローチャートを再度参照すると、蛍光放射を収集およびデジタル化して、時間周波数波形を生成することができる(ブロック2)。ブロック3において、波形全体のフーリエ変換、例えば、高速フーリエ変換(FFT)が得られる。続いて、生成されたFFTは、例えば、時間領域波形をその最大値で除算し、波形を所望の定数で再スケーリングすることにより、細胞間比較のために固定値に正規化される(ブロック4)。FFTの「オフピクセル」ビン(すなわち、照明光放射に存在する変調周波数間の周波数に対応するビン)の合計が決定される(ブロック5)。合計は、オフピクセル周波数への蛍光パワーの「漏れ」の程度、したがって、放出された蛍光放射の点状性の程度の測定値を示す。
【0148】
図20Bを参照すると、いくつかの実施形態では、上記で述べた方法で決定でき、
図20Bのフローチャートのブロック1~5で表される、放出された蛍光放射の点状性の程度の測定値は、細胞を選別するために使用することができる。特に、ブロック6では、FFTの「オフピクセル」ビンの合計は、オフピクセル周波数に対する蛍光パワーの「漏れ」の程度を示し、事前定義された閾値と比較されて、選別判断を行うことができる。例えば、比較的高度の蛍光点状性を示す細胞を選別することが望まれる場合、合計が閾値よりも大きいと、細胞は選別(選択)される。あるいは、拡散蛍光を示す細胞を選別することが望まれる場合、合計が閾値よりも小さいと、細胞は選別される。
【0149】
放出された蛍光放射の分析に基づくそのような細胞の選別は、スポットカウント、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、細胞内輸送および局在化、ならびに液滴ベースの単一細胞分析などの、様々な用途で採用することができる。
【0150】
粒子(例えば、フローサイトメトリーシステムを流れる細胞)の選別判断を行うための上記の方法は、様々な方法で実装することができる。例として、
図22は、細胞を選別するための例示的なシステム2200を概略的に示しており、これは、選別判断を行うために本教示を採用することができる。システム2200は、複数の細胞が懸濁されている懸濁流体を貯蔵するための容器2201を含むことができる。細胞懸濁液容器2201は、入口2202を介して、例えばステンレス鋼などの剛性金属で形成することができるサンプル導管2203に流体的に結合されている。サンプル導管2203は、テーパー部分2204bを介して、より小さな直径を有する下部円筒部分2204cまで延びる上部円筒部分2204aを含む容器2204内に配置され、これは、その遠位端にノズル2205を含む。容器2204は、シース流体源2206に流体的に結合されている。音響バイブレータ2208(例えば、圧電ドライバ)は、ノズルに結合され、振動発生機2210によってエネルギーを与えられたときにノズルの振動を引き起こすように構成される。例として、振動周波数は約60kHzとすることができるが、他の振動周波数も使用できる。
【0151】
使用中、容器2201に貯蔵された懸濁流体は、入口2202を介して導管2203に導入される。容器2203を出る細胞を含む流体の薄いフローは、シース流体によって同伴され、ノズル2205に運ばれる。ノズルの振動運動は、ノズルを通るフローを、それぞれが単一の細胞粒子を含む複数の液滴Dに分割するように、当技術分野で知られている方法で構成することができる。細胞の少なくともいくつかは、1つ以上の内因性および/または外因性発蛍光団に関連しており、これらは、励起放射による照明に応答して蛍光放射を放出することができる。幅広い発蛍光団を使用できる。いくつかの場合では、発蛍光団を、細胞上の標的(例えば、受容体)を認識する抗体に付着させることができる。いくつかの場合には、発蛍光団は、細胞膜または別の細胞構造、例えば細胞核に親和性を有する化学物質に付着させることができる。さらに、いくつかの場合では、細胞を異なる発蛍光団の組み合わせで標識することができる。
【0152】
図22を引き続き参照すると、各細胞がインタロゲーション領域2212を通過するときに、照明システム2216によって生成されたレーザービーム2214によってそれは照射され、細胞に関連する1つ以上の発蛍光団から蛍光放射を引き出す。上記のように、レーザービームは、1つ以上の高周波によって互いに対してシフトされる複数の光周波数を含むことができる。例として、光ビームは、互いに対して高周波シフトを有する複数の角度的または空間的に分離されたビームレットの形態とすることができる。細胞から放出された蛍光放射は、1つ以上の光検出器を含むことができる検出システム2218によって検出することができる。検出された蛍光は、上記の方法で、分析モジュール2220によって分析して、その細胞に関する選別判断を行うことができる。
【0153】
例として、照明検出システムは、例えば、
図1~
図9に関連して上述したものとすることができる。しかし、粒子を選別するための本教示の実施は、いかなる特定の照明および検出システムの使用にも限定されないことを理解されたい。むしろ、選別判断を行うための上記の方法で使用するために必要なデータ(例えば、蛍光および/または散乱データ)を提供する限り、様々な異なるシステムを採用することができる。
【0154】
再び
図22を参照すると、システム2200は、チャージ回路2223によって励起されるチャージカラー2222をさらに含み、これは、分析モジュール2220の制御下にある。チャージカラーは、細胞液滴がカラーを通過するときに、それに正または負の電荷を付与することができる。あるいは、チャージカラーは、細胞液滴に電荷を付与することなく、それを通過させることができる。
【0155】
より具体的には、分析モジュール2220は、上記の教示を採用して、細胞に関する選別判断を行うことができる。その判断に基づいて、分析モジュールは、細胞液滴を帯電させる必要があるか否か、もし必要であれば、どの帯電極性を細胞に付与する必要があるかを決定することができる。そして、分析モジュールは、チャージ回路2223を制御して、カラー2222を介して、細胞液滴に必要な電荷を付与することができる。そして、細胞は、カラー2222の下流に配置された一対の偏向プレート2224間のギャップを通過する。電圧源2225は、プレート2224の少なくとも1つに電圧を印加して、プレート間に電界を確立する。電界は、負および正の細胞液滴の経路を異なる方向に沿って偏向させることができ、それにより、それらを、セルコレクタ2226の管2226bおよび2226cによってそれぞれ収集することができる。カラー2222によって帯電されていない細胞は、偏向されず、セルコレクタの管2226aによって捕捉される。
【0156】
分析/制御モジュール2220などの本明細書で述べられる分析/制御モジュールは、当技術分野で知られている技術を使用して、本教示に従って、ハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアにおいて様々な異なる方法で実装することができる。例として、
図23は、検出システム2218から蛍光信号(複数可)を受信し、信号(複数可)をデジタル化してデジタル化蛍光データを生成するためのアナログ-デジタル変換器2302を含む、分析/制御モジュール2220の例示的な実装2300を概略的に示す。分析/制御モジュール2300は、本教示に従って蛍光データを処理して、インタロゲーション中の細胞に関する選別判断に到達するためのプロセッサ2304をさらに含むことができる。分析/制御モジュール2300はまた、ROM(読み取り専用メモリ)2306、RAM(ランダムアクセスメモリ)2308およびパーマネントメモリ2310を含むことができる。通信バス2312は、分析モジュールの様々な構成要素間の通信を容易にする。メモリモジュールは、蛍光信号(複数可)と分析結果とを分析するための命令を格納するために使用できる。例えば、いくつかの実施形態では、本教示による選別判断に到達するために蛍光データを分析するための命令は、ROM2306に格納することができる。プロセッサ2304は、これらの命令を採用して、RAM2308に格納されたデジタル化蛍光データに対して演算して、選別判断を決定することができる。いくつかの実施形態では、プロセッサは、蛍光データに演算して選別判断に到達するために本教示に従って命令を実行するように構成されたASIC(特定用途向け集積回路)として実装することができる。この実施形態では、分析/制御モジュール2300は、インタロゲーション中の細胞に適切な電荷を付与するために、選別判断に基づいてチャージ回路に適切な信号を送信するための通信/制御モジュール2314をさらに含むことができる。
【0157】
上記のように、本教示による方法は、時間的蛍光データに対して演算して、細胞のピクセルごとの蛍光画像を形成する必要なしに、粒子(例えば、細胞)の選別判断に到達する。これにより、例えば約100マイクロ秒未満などの低い待ち時間で細胞を選別することが可能になり、よって、細胞を高速で選別することが可能になる。例えば、本教示による選別方法は、毎秒1000細胞以上の速度で、例えば、毎秒約1000~約100,000細胞の範囲で細胞を選別することを可能にすることができる。
【0158】
上記のように、いかなる特定の照明または検出技術にも限定されないが、いくつかの実施形態では、本教示による細胞選別方法は、フローサイトメトリーシステムで効果的に使用することができ、フローサイトメトリーシステムは、周波数領域多重化を採用して、それぞれが例えば2つの周波数オフセットレーザー(baser)ビームのビート化によって生成された固有の高周波で「タグ付け」されるピクセルの行を励起する。周波数領域多重化を使用すると、画像の単一行の数百ピクセルからの蛍光(または散乱)放射を検出し、例えば蛍光色または散乱方向ごとに単一の光電子増倍管(PMT)を使用して読み取ることができる。画像の行の各ピクセルの励起は固有のビート周波数で変調されるため、ピクセルレートはシステムの合計RF帯域幅に比例し、これは、100MHzを超えるピクセルレートで、ショットノイズが制限された感度を提供できる。上記のように、本教示による選別方法は、時間周波数フォーマットでエンコードされた画像データを採用して、実際に画像を計算することなく選別判断を実行することができる。
【0159】
さらに、上記のシステムは、応答照明において粒子から発せられる散乱放射に基づいて粒子(例えば、細胞)を選別するために採用することができる。散乱放射は、例えば上記の方法で検出および分析して、選別判断に到達することができる。
【0160】
さらなる例として、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、「粒子分離器」と題された米国特許第3,380,584号、「フローサイトメーターおよびフローサイトメトリー」と題された米国特許第9,034,259号、および「生物学的粒子を選別するためのシステムおよびプロセス」と題された米国特許第7,417,734号の米国特許は、本明細書に開示される選別方法およびシステムを実施するために本教示に従って改変することができる選別システムに関する情報を提供する。
【0161】
さらなる説明として、その開示が参照により本明細書に組み込まれる2019年3月22日に出願された附属書A優先権出願シリアル番号62/822,789は、本教示の様々な態様に関する追加情報を提供する。
【0162】
当業者は、本教示の範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができることを理解する。特に、上述した実施形態の様々な特徴、構造、または特性を適切な方法で組み合わせることができる。例えば、1つの実施形態に関連して述べられた検出システムは、別の実施形態で使用され得る。
【0163】
粒子特性
上記のように、いくつかの実施形態では、高周波振幅変調を有する2つ以上のビームレットが、空間的に異なる位置でサンプルを照射する。サンプルと各ビームレットとの間の相互作用により、散乱、透過、および蛍光放出信号の少なくとも1つを光学的に生成でき、これらの信号はそれぞれ、ビームレットの対応する高周波で振幅変調される。収集された信号は、変調された各ビームレットからの寄与の合計として表すことができる。
【0164】
【0165】
ここで、S(t)は収集された信号を表し、Pi(t)はi番目のビームレットに関連する時間依存の散乱、透過、または蛍光放出信号を表し、Amは、ビームレットの変調深さを表し、ωiおよびφiはそれぞれ、ビームレットの高周波変調の角周波数および位相を表す。
【0166】
粒子の画像表現は、各ビームレットを画像の異なる列に割り当て、各瞬間を画像の異なる行に割り当てることによって導き出すことができる。この画像表現は、フーリエ変換を介して収集された信号に接続される。
Im(x,y)=R・W・F・S(t) 式(4)
【0167】
ここで、Fは短時間フーリエ変換を実装する行列、Wはフーリエ成分を画像ピクセルにマッピングする行列、Rはフィルタリング、バックグラウンド減算、およびビネット補正などの任意の所望の線形画像領域後処理を実行する行列である。
【0168】
粒子の任意の線形特徴は、画像への行列乗算で表すことができる。したがって、任意の所望の線形特徴を計算する行列Mの場合、特徴は、直接、すなわち、最初に画像を計算する必要なしに、収集された信号から以下を介して計算することができる。
M・Im(x,y)=M・R・W・F・S(t)=Q・S(t) 式(5)
Q=M・R・W・F 式(6)
【0169】
ここで、Qは、現在の粒子表現から所望の線形特徴への変換を表す行列である。したがって、任意の線形特徴は、最初に例えば前処理ステップでオフラインで行列Qを計算することによって、そして例えばオンラインで式(5)に示すように内積を実行して所望の特徴を抽出することによって計算できる。多くの実施形態では、すべての特徴について、特徴へのバックグラウンド信号の寄与も差し引くことが望ましい。このプロセスは、以下のように要約できる。
計算:Q=M・R・W・F
計算:Qbkg=M・R・Wbkg・F
データの収集中に、
粒子が検出された場合には、
計算:D=Q・S(t)
そうでない場合には、
計算:Dbkg(i)=Qbkg・S(t)
計算:Dbkg=平均(Dbkg(i))
イールド:D-Dbkg
【0170】
上記のように、いくつかの実施形態では、粒子の1つ以上の計算された特徴を採用して、その粒子に関する選別判断を行うことができる。さらなる例として、
図24は、選別方法を示すフローチャートを示す。ブロック(1)で、上記のQおよびQ
bkg行列は、所望の粒子の特徴(特性)に基づいて計算できる。続いて、例えば、高周波変調された光放射で照射されたフローサイトメーターのフローセルからの散乱、透過、または放出された光信号を収集し、デジタル化することができる(ブロック2)。信号を閾値交差と比較して、信号が粒子からのものであるか否か、つまり粒子が存在したか否かを判断できる(ブロック3)。粒子が存在すると判断された場合、デジタル化された各サンプル信号にQが乗算され(ブロック4)、続いて、その結果が単一の値へと積分される(ブロック5)。バックグラウンド信号が積分値から差し引かれ(ブロック6)、粒子の所望の特徴(特性)の推定値が取得される。選別判断は、特徴の推定値を閾値と比較することによって行うことができる(ブロック7)。
図24のフローチャートを引き続き参照すると、粒子の非存在下で得られた1つ以上のデジタル化信号に、Q
bkgが乗算され(ブロック8)、いくつかのバックグラウンド測定値を平均して、ブロック6で採用されるバックグラウンド推定値を得ることができる。
【0171】
いくつかの実施形態では、受信信号の様々なモーメントを使用して、散乱、透過、または放出された放射の空間分布に関する情報を取得することができる。画像モーメントは、任意の原点からのその距離に応じてピクセルの重み付き和を表して任意の累乗で表されるクラス線形画像の特徴である。
【0172】
【0173】
各画像モーメントは、散乱、透過、または放出された光の空間分布に関する異なる情報をエンコードする。高次モーメントは、原点からのその距離に応じてより多くピクセルに重み付けし、各モーメントは信号の分布に関する異なる情報を提供する。様々な実施形態において、これらの特徴のすべては、適切なQを事前に計算することによって、測定された信号S(t)から直接、計算することができる。
【0174】
空間フーリエ成分は、以下のように定義されるMを用いて、同じ方法で計算することができる。
M(u,v)=exp(-j2π(ux+vy) 式(8)
【0175】
所望の成分は、実験の前に選択することができ、別個のQをそれぞれについて事前に計算することができる。例として、フーリエ成分を使用して、粒子が照射放射に焦点を合わせているか否かを決定することができる。
【0176】
いくつかの画像特徴は、特徴抽出の前にデータの非線形変換を伴う。そのような特徴のサブセットについては、線形特徴の非線形組み合わせとしてそれらを表すことが可能である。このような特徴の計算は、前のセクションのように最初に複数の特徴を並行して計算し、そしてその結果を非線形的に組み合わせることを含むことができる。画像モーメントの非線形の組み合わせによって表現できる多くの有用な画像特徴がある。例えば、ピクセルの重心は、1次モーメントと0次モーメントとの比率で計算できる。
【0177】
【0178】
他のいくつかの粒子特性は、このように表すことができる。網羅的ではないリストを以下の表1に示す。
【0179】
【0180】
いくつかの実施形態では、中心2次モーメントを使用して、ダブレットを区別することができる。散乱または透過された光信号の2次モーメントが高い粒子は、信号の分布がより大きいことを示す。
【0181】
共局在化および類似性
いくつかの実施形態では、粒子と参照との間の類似性は、共局在化と同じ方法で計算することができる。共局在化の場合、2つの波形は、同じ粒子を見ている異なる検出器に対応し、類似性の場合、2つの波形は、2つの異なる粒子を見ている同じ検出器に対応する。粒子と参照との間の類似性を検出するための例示的なアルゴリズムを以下に要約する。
【0182】
Rが参照粒子に対応する波形を表し、Filtが変調周波数のみを通過させるハイパスまたはバンドパスフィルタであり、Nが参照粒子の画像表現におけるピクセル数であるとする。そして、アルゴリズムには次のものが含まれる。
【0183】
【0184】
研究中の粒子に対応する各入力波形Sについて、以下の計算を行う。
【0185】
【0186】
そして、粒子の参照粒子との類似性の測定値として下記の式を返す。
【0187】
【0188】
スペクトルアンミックス
本明細書の開示には、FIRE対応イメージングフローサイトメーターから生成された画像の補償またはスペクトルアンミックスを実行するためのシステム、デバイス、および方法が含まれる。組み合わせビーム49による励起後に1つ以上の発蛍光団によって放出される蛍光放射を検出することは、高周波多重励起(FIRE)を使用する蛍光イメージングと呼ぶことができる。(例えば、バンドパスフィルタを使用して)1つの発蛍光団または色素の蛍光放射を検出するように構成された検出器によって検出される蛍光放射、放出、信号、または波形は、2つの発蛍光団の蛍光放出のスペクトルがスペクトル的に重なり得るので、別の発蛍光団の蛍光放出を含むことができる。スペクトルアンミックスには、蛍光寿命測定に基づく位相敏感分析を含めることができる。スペクトルアンミックスは、例えば、細胞選別用途のためのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)にて実装できる。
【0189】
発蛍光団が異なる寿命を有する場合、波形の蛍光信号は異なる位相を有する。異なる位相を有する蛍光信号は、実空間で単純な方法で加算されるのではなく、複素空間(実数成分と虚数成分とを含む)で加算される。いくつかの実施形態では、スペクトルアンミックスは、例えば発蛍光団の異なる位相に対して、複素空間における蛍光信号の分析を実行することを含むことができる。スペクトルアンミックスは、複素空間での蛍光信号の分析を実行して、FIREシステムに固有(例えば、チャネルごとなど)の光学系および電子機器の様々な体系的効果を説明することを含むことができる。フローサイトメーターの検出システムは、蛍光信号を検出して
図7A~
図7Bを参照して説明したように蛍光信号の複数のチャネルを生成するための複数の光検出器を含むことができる。スペクトルアンミックスが各チャネルの蛍光信号から生成されたFIRE画像(例えば、光検出器によって検出された蛍光信号から生成されたFIRE画像)にピクセルごとに適用される場合、またはスペクトルアンミックスが実行されない場合、画像は、それらの発蛍光団が異なる蛍光寿命を有するときはいつでも、異なる発蛍光団の位相寄与の違いに起因するアーチファクトを含む可能性がある。
【0190】
図25A,Bは、スペクトルアンミックス方法2500の非限定的な例示的概略図である。アクション2504で、複数の光検出器によって検出された複数のチャネルの蛍光信号を受信することができる。例えば、異なる発蛍光団に関連する(例えば、それに結合する、およびそれにコンジュゲートする)抗体は、細胞に結合することができる。発蛍光団の蛍光信号は、複数の光検出器で検出できる。例えば、1つの光検出器は、各発蛍光団の蛍光信号を検出するように構成することができる。
図25A,Bは、2つのチャネルのFIRE波形2506c1、2506c2の2つのプロット2506p1、2506p2を示す。波形2506c1、2506c2の時間次元は、各プロット2506p1、2506p2のx軸に示されている。FIRE波形2506c1、2506c2の強度は、各プロット2506p1、2506p2のy軸に示されている。各FIRE波形2506c1、2506c2は、例えば各発蛍光団が複数のチャネルとスペクトル重複しているために、各チャネル内の複数の発蛍光団からの信号を含むことができる。スペクトル重複は、チャネルについて望まれるものまたは関心があるもの以外の発蛍光団からの寄与を伴う画像(例えば、画像2510i1、2510i2)につながる可能性がある。画像の補償は、結果として得られる画像(例えば、画像2522i1、2522i2)がそれぞれ1つの発蛍光団のみの結果である(またはほとんどそうである)ように実行できる。検出された波形2506c1、2506c2は、発蛍光団の位相に敏感である。
【0191】
アクション2508で、スライディングウィンドウ高速フーリエ変換(FFT)または離散フーリエ変換(DFT)などのフーリエ変換(FT)を使用して、各チャネルの生のFT画像2510i1、2510i2を生成することができる。各生画像2510i1、2510i2は、周波数空間(例えばフーリエ空間)における複素数値のピクセル2510i1p00、2510i1p01、2510i2p00、2510i2p01のアレイ(例えば二次元アレイ)とすることができる。スライディングウィンドウ2510w1、2510w2は、図示のように重なることも、または重ならないこともできる。イメージングは、検出された波形2506c1、2506c2の複素フーリエ解析を通じて行うことができる。2510i1、2510i2で生成された画像は、複素数値を有する可能性があり、位相に敏感である(例えば発蛍光団の位相に敏感である)可能性がある。2510i1、2510i2で生成された画像の1つの次元は、FFTまたはDFTの様々な周波数ビンに対応できる。2510i1、2510i2で生成された画像の他の次元は、スライディングウィンドウFFTまたはDFTの時間次元に対応できる。
【0192】
アクション2512で、固有の位相調整を実行することができる。いくつかの実施形態では、この位相調整は、チャネルごとに変化する光学系および電子機器からの位相の寄与を最小化(例えば排除)することができる。画像空間で補償またはアンミックスを実行するために、チャネル間の光学的および電子的差異からの位相寄与は、例えば、生のFT画像にチャネル位相調整を乗算することによって最初に説明することができる。結果として得られる固有位相補正画像2514i1、2514i2のセットは、複素数値である可能性がある。フローサイトメーターの各読み出しチャネルに固有の1セットの(信号位相を補正するための)信号位相補正は、固有の位相調整に使用できる。チャネル位相は、明視野位相、較正位相、および位相オフセットを組み込むか、またはそれらを含むことができる。チャネル位相調整は、1つ以上のチャネル位相を補正または説明できる。
【0193】
アクション2516において、アンミックス動作は、アンミックス行列2516mを使用して、画像2514i1、2514i2のすべてのピクセル2514i1p00、2514i1p01、2514i2p00、2514i2p01に対して実行され、アンミックス画像2518i1、2518i2を生成することができる。補償またはアンミックスは、固有の位相補正画像2514i1、2514i2の対応ピクセル(ピクセル2514i1p00、2514i2p00、およびピクセル2514i1p01、2514i2p01など)に対して実行することができる。例えば、画像2514i1、2514i2の2つのチャネルの場合、アンミックス行列2516mは、2×2のサイズを有することができる。アンミックス行列2516mは、画像2514i1、2514i2の対応ピクセル(例えば、ピクセル2514i1p00、2514i2p00およびピクセル2514i1p01、2514i2p01など)に適用して、アンミックス画像2518i1、2518i2の対応ピクセル(ピクセル2518i1p00、2518i2p00およびピクセル2518i1p01、2518i2p01など)の値を生成することができる。対応ピクセルのアンミックス動作は、順次にまたは並行して実行できる。アンミックス画像2518i1、2518i2は、スペクトルミックスなしの(または最小または低減されたスペクトルミックスありの)発蛍光団の画像(または発蛍光団の蛍光放出から生成された画像)と見なすことができる。
【0194】
アンミックス動作は、実行されるアンミックスのタイプに依存することができる。例えば、アンミックス動作は、面積値の補償に基づくことができる。補償またはアンミックスは、複素画像値の面積または高さのデータに基づいて実行できる。アンミックス行列2516mは、手作業で、または任意の自動補償またはアンミックス手順を使用して導出されるものとすることができる。アンミックス行列2516mは、各キャリア周波数(例えば、各発蛍光団の蛍光放出を引き出すために使用される参照レーザービームまたは局部発振器ビームの周波数)について、発蛍光団の異なる蛍光寿命に起因する信号強度の違いを説明することができる。
【0195】
アクション2520で、寿命位相補正を実行することができる。画像のすべてのピクセルでアンミックスが実行された後、寿命補正を各発蛍光団に適用して、複素数値を有するピクセルを有する寿命補正された画像を生成できる。この調整により、蛍光色素の寿命に起因する位相の変化を補正できる。各発蛍光団に1セットの「寿命補正」を使用できる。これらは、例えば、既知の値を使用して、または収集されたサンプルデータの計算から、各発蛍光団の蛍光寿命から導き出すことができる。
【0196】
いくつかの実施形態では、各ピクセルの複素数の実数部を使用して、各発蛍光団の最終画像2522i1、2522i2のピクセル2522i1p00、2522i1p01、2522i2p00、2522i2p01の値を生成することができる。寿命補正された画像の各ピクセルの複素数値の実数成分、すなわち大きさを使用して、実空間の発蛍光団の最終画像2522i1、2522i2を生成することができる。寿命補正された画像の各ピクセルの複素数値の虚数成分は、破棄することも、計算しないことも可能である。異なる発蛍光団の画像を組み合わせて、例えば異なる発蛍光団の画像に異なる色を割り当て、異なる画像を色と組み合わせて細胞の画像を生成することにより、細胞の画像を生成することができる。
【0197】
いくつかの実施形態では、方法2500のアクションは、完全な線形動作を含むので、複数のアクションを統合することができる。この方法は、選別用途のためのFPGAにて実装できる。いくつかの実施形態では、方法のいくつかのアクションは、統合することができる線形動作のみを含むことができる。
【0198】
いくつかの実施形態では、方法2500は、従来の(または非画像化)レーザーから励起された発蛍光団との交差励起ミックスの場合に実装することができる。交差励起の場合のミックスの総量を測定することができる。交差励起された発蛍光団の空間分布は、従来のレーザーから励起された発蛍光団からの画像データを使用して決定することができる。追加的または代替的に、関連する細胞表面マーカーの事前知識により、適切な空間分布を含むFIREチャネルの1つを、1つ以上の交差励起発蛍光団の代替物として使用することができる。例えば、交差励起された発蛍光団が表面マーカーに付着している場合、その発蛍光団の空間分布は、FIREチャネルの1つから励起された発蛍光団を有する別の表面マーカーの空間分布と同じであると仮定することができる。
【0199】
図26A,Bは、スペクトルアンミックスの非限定的な例示的結果を示す合成画像である。
図26Aは、スペクトルアンミックスを実行せずに、フィコエリトリン(PE)と結合した抗CD16/CD56抗体、PE-テキサスレッドと結合した抗CD3抗体、PE-Cy5と結合した抗DRAQ5抗体、およびフルオレセインイソチオシアネート(FITC)と結合した抗CD4抗体で染色されたCD3+T細胞のFIRE画像の合成画像である。示されている細胞はすべてCD16/CD56陰性であったが、細胞は
図26Aにて、FITCタグ付き抗CD4抗体からPEチャネルへのスピルオーバーのために画像で陽性として現れている。
図26Bは、スペクトルアンミックス後の、
図26Aに示されるCD3+T細胞のFIRE画像の合成画像である。
図26Bは、本明細書に開示されるスペクトルアンミックス方法が、細胞の最終画像におけるこのスピルオーバーの痕跡を首尾よく排除したことを示している。
【0200】
スペクトルアンミックス方法
本明細書の開示には、セルソーターシステムの実施形態が含まれる。いくつかの実施形態では、セルソーターシステムは、複数の細胞を含むサンプルの細胞に関連する複数の発蛍光団の異なる波長の蛍光放出を引き出すための複数の異なる光周波数を有する光ビーム(例えば、レーザービーム)を生成するように構成された光源(例えば、レーザー光源)を含む。セルソーターシステムは、複数の発蛍光団の蛍光放出を検出するように構成された複数の光検出器を含むことができる(例えば、各光検出器は、複数の発蛍光団のうちの発蛍光団の蛍光放出を検出するように構成される)。セルソーターシステムは、実行可能命令を格納するように構成された非一時的メモリ、および非一時的メモリと通信するプロセッサを含むことができ、実行可能命令によってプログラムされたハードウェアプロセッサは、レーザービームを細胞に照射させて、細胞に関連する複数の発蛍光団の蛍光放出を引き出させる。コンピューティングシステムは、複数の光検出器に異なる波長での蛍光放出を検出させて、時間空間内の複数の発蛍光団に対応する蛍光強度データの複数のチャネルを取得することができる。コンピューティングシステムは、蛍光強度データの複数のチャネルから、周波数空間内の複素数値の複数のピクセルを含む複数の生画像を生成することができる。コンピューティングシステムは、蛍光強度データの複数のチャネルのそれぞれについて1つ以上のチャネル位相調整を使用して、複数の生画像から周波数空間に複素数値の複数のピクセルを含む複数の位相調整画像を生成することができる。コンピューティングシステムは、複数の位相調整画像の対応ピクセルの複素数値のアンミックス行列を使用して、複数の位相調整画像から周波数空間に複素数値の複数のピクセルを含む複数のアンミックス画像を生成することができる。コンピューティングシステムは、複数の発蛍光団のそれぞれの属性に基づいて、複数のアンミックス画像から周波数空間に複素数値の複数のピクセルを含む複数の位相補正画像を生成することができる。コンピューティングシステムは、複数の位相補正画像に基づいて、細胞の選別判断を決定することができる。
【0201】
本明細書の開示には、セルソーターシステムの実施形態が含まれる。いくつかの実施形態では、セルソーターシステムは、複数の細胞を含むサンプルの細胞に関連する複数の発蛍光団の異なる波長の蛍光放出を引き出すための複数の異なる光周波数を有する光ビーム(例えば、レーザービーム)を生成するように構成された光源(例えば、レーザー光源)、複数の発蛍光団の蛍光放出を検出するように構成された複数の光検出器(例えば、各光検出器は、複数の発蛍光団のうちの発蛍光団の蛍光放出を検出するように構成されている)、実行可能命令を格納するように構成された非一時メモリ、および、非一時メモリと通信するプロセッサであって、ハードウェアプロセッサは、レーザービームを細胞に照射させて、細胞に関連する複数の発蛍光団の蛍光放出を引き出すように、実行可能命令によってプログラムされた、プロセッサを含む。コンピューティングシステムは、複数の光検出器に異なる波長での蛍光放出を検出させて、時間空間内の複数の発蛍光団に対応する蛍光強度データの複数のチャネルを取得することができる。コンピューティングシステムは、蛍光強度データの複数のチャネルから周波数空間内の複素数値を含む複数の生画像を生成することができる。コンピューティングシステムは、複数の生画像の対応する複素数値のアンミックス行列を使用して、複数の生画像から周波数空間内の複素数値を含む複数のアンミックス画像を生成することができる。コンピューティングシステムは、複数のアンミックス画像に基づいて細胞の選別判断を決定することができる。
【0202】
本明細書の開示には、セルソーターシステムの実施形態が含まれる。いくつかの実施形態では、セルソーターシステムは、複数の細胞を含むサンプルの細胞に関連する複数の発蛍光団の異なる波長の蛍光放出を引き出すための複数の異なる光周波数を有する光ビーム(例えば、レーザービーム)を生成するように構成された光源(例えば、レーザー光源)、複数の発蛍光団の蛍光放出を検出するように構成された複数の光検出器(例えば、各光検出器は、複数の発蛍光団のうちの発蛍光団の蛍光放出を検出するように構成されている)、実行可能命令を格納するように構成された非一時メモリ、および、非一時メモリと通信するプロセッサであって、ハードウェアプロセッサは、細胞に関連する複数の発蛍光団からの異なる波長での蛍光放出の、時間空間内の複数の発蛍光団に対応する蛍光強度データの複数のチャネルを受信し、蛍光放出は複数の光検出器によって検出され、細胞がレーザー光源によって照射された後に蛍光放出が引き出されるように、実行可能命令によってプログラムされたプロセッサを含む。コンピューティングシステムは、蛍光強度データの複数のチャネルから周波数空間内の複素数値を含む複数の生画像を生成することができる。コンピューティングシステムは、複数の生画像の対応する複素数値のアンミックス行列を使用して、複数の生画像から周波数空間内の複素数値を含む複数のアンミックス画像を生成することができる。コンピューティングシステムは、複数のアンミックス画像に基づいて細胞の選別判断を決定することができる。
【0203】
図27は、スペクトルアンミックスの例示的な方法2700を示すフローチャートである。方法2700は、コンピューティングシステムの1つ以上のディスクドライブなどのコンピュータ可読媒体に格納された実行可能プログラム命令のセットで具体化され得る。例えば、
図30に示されて以下でより詳細に説明されるコンピューティングシステム3000は、一連の実行可能プログラム命令を実行して、方法2700を実装することができる。方法2700が開始されると、実行可能プログラム命令は、RAMなどのメモリにロードされ、コンピューティングシステム3000の1つ以上のプロセッサ(例えば、1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA))によって実行されることができる。方法2700は、
図30に示されるコンピューティングシステム3000に関して説明されているが、説明は例示のみであり、限定することを意図するものではない。いくつかの実施形態では、方法2700またはその一部は、複数のコンピューティングシステムによって連続的または並列的に実行され得る。方法2700のいくつかのブロックは、組み合わせて並行して実行できる。方法2700を使用して、サンプルの1つの細胞の選別判断、またはサンプルの複数の細胞の選別判断を決定することができる。
【0204】
コンピューティングシステム3000は、フローサイトメーター(例えば、
図22を参照して説明されたフローサイトメーター2200)に動作可能に結合することができる。コンピューティングシステム3000は、フローサイトメーターなどのセルソーターシステムの一部とすることができる。コンピューティングシステム3000は、光源(例えば、レーザー光源)を制御することができる。光源は、複数の異なる光周波数を有する光ビーム(例えば、組み合わせビーム49などのレーザービーム)を生成するように構成することができる。異なる光周波数は、サンプルの細胞に関連する複数の発蛍光団の蛍光放出(例えば、異なる波長での)を引き出すために使用することができる。コンピューティングシステム3000は、複数の光検出器(例えば、
図7A,Bを参照して説明した光検出器106、108、110、112)から蛍光信号を受信することができる。各光検出器は、複数の発蛍光団のうちの発蛍光団の蛍光放出を検出するように構成することができる。
【0205】
方法2700がブロック2704で開始した後、方法2700はブロック2708に進み、そこで、コンピューティングシステムは、細胞に関連する複数の発蛍光団から(例えば、異なる波長での)蛍光放出の蛍光強度データの複数のチャネルを受信することができる。例えば、複数の発蛍光団のそれぞれは、細胞に結合する細胞成分結合試薬(例えば、抗体)に結合(例えば、コンジュゲート)することができる。蛍光強度データの複数のチャネル(例えば、
図25を参照して説明された波形2506c1、2506c2)は、時間空間内の複数の発蛍光団に対応することができる。例えば、蛍光データの各チャネルは、ある期間にわたって光検出器によって検出された強度値を含むことができる。蛍光放出は、複数の光検出器によって検出することができる。例えば、
図7A,Bを参照して説明された光検出器106、108、110、112は、蛍光強度データのチャネルを検出および生成することができる)。細胞がレーザー光源によって照射された後、蛍光放出を引き出すことができる。
【0206】
いくつかの実施形態では、蛍光強度データの複数のチャネルを受信するために、コンピューティングシステムは、レーザービームに細胞を照射させて、細胞に関連する複数の発蛍光団の蛍光放出を引き出すことができる。コンピューティングシステムは、複数の光検出器に異なる波長での蛍光放出を検出させて、時間空間内の複数の発蛍光団に対応する蛍光強度データの複数のチャネルを取得することができる。
【0207】
方法2700は、ブロック2708からブロック2712に進み、ここで、コンピューティングシステムは、蛍光強度データの複数のチャネルからの周波数空間(例えば、フーリエ空間)における複素数値の複数のピクセル(例えば、
図25を参照して説明されたピクセル2510i1p00、2510i1p01、2510i2p00、2510i2p01)を含む複数の生画像(例えば、
図25を参照して説明された生画像2510i1、2510i2)を生成することができる。コンピューティングシステムは、時間空間から周波数空間への変換を表す時間から周波数への変換行列を使用して、複数の生画像を生成することができる。複数の生画像は、複数の生画像の複素数値の複数のピクセルを含むことができる。
【0208】
いくつかの実施形態では、レーザービームは、参照レーザービーム(例えば、LOビーム)および複数の高周波シフトレーザービーム(例えば、RFコームビーム24)を含む。複数の高周波シフトレーザービームの数は、m
2とすることができる。参照レーザービームは、複数の高周波シフトレーザービームと空間的に重なることができる。いくつかの実施形態では、複数の高周波シフトレーザービームのいずれも、互いに空間的に重ならない。参照レーザービームと複数の高周波シフトレーザービームのうちの1つ以上とは、複数の発蛍光団のうちの発蛍光団の蛍光放出を引き出すことができることが可能である。細胞を照射することは、細胞の複数の空間位置(または
図4を参照して説明されたサンプル62の複数の空間位置60)を複数の高周波シフトレーザービームで同時に照射することを含むことができる。いくつかの実施形態では、細胞の複数の空間位置のいずれも互いに重ならない。
【0209】
いくつかの実施形態では、複数の発蛍光団のうちの2つの蛍光放出は、スペクトル的に重なる。複数の発蛍光団のうちの3つの蛍光放出はスペクトル的に重なる。複数の発蛍光団のうちの5つの蛍光放出はスペクトル的に重なる。複数の発蛍光団のうちの第1の発蛍光団および第2の発蛍光団の蛍光放出はスペクトル的に重なり、複数の発蛍光団のうちの第2の発蛍光団および第3の発蛍光団の蛍光放出はスペクトル的に重なる。第1の発蛍光団および第3の発蛍光団の蛍光放出はスペクトル的に重なる。
【0210】
いくつかの実施形態では、複数の生画像を生成するために、コンピューティングシステムは、時間空間から周波数空間への変換を使用して、蛍光強度データの複数のチャネルから周波数空間に複数の生画像を生成することができる。時間空間から周波数空間への変換は、フーリエ変換を含むことができる。フーリエ変換は、離散フーリエ変換を含むことができる。離散フーリエ変換は、高速フーリエ変換を含むことができる。フーリエ変換は、スライディングウィンドウフーリエ変換を含むことができる。スライディングウィンドウフーリエ変換のスライディングウィンドウは、m1のサイズを有することができる。例えば、スライディングウィンドウは、5、10、20、50、100、200、500、1000、2000、5000、10000、2000、5000、10000、20000、50000、100000、200000、500000、1000000、2000000、5000000、10000000、またはこれらの値の任意の2つの間の数または範囲のデータポイントなどのm1個のデータポイント(例えば、1つのチャネルの蛍光強度データのm1個のデータポイント、例えばm1個の連続データポイント)のサイズ、またはおよそその数のサイズ、少なくともその数のサイズ、または最大でその数のサイズを有することができる。別の例として、スライディングウィンドウは、1×10-1、2×10-1、5×10-1、1×10-2、2×10-2、5×10-2、1×10-3、2×10-3、5×10-3、1×10-4、2×10-4、5×10-4、1×10-5、2×10-5、5×10-5、1×10-6、2×10-6、5×10-6、1×10-7、2×10-7、5×10-7、1×10-8、2×10-8、5×10-8、1×10-9、2×10-9、5×10-9、またはこれらの値の任意の2つの間の数または範囲の秒数などのm1秒のサイズ、またはおよそその数のサイズ、少なくともその数のサイズ、または最大でその数のサイズを有することができる。スライディングウィンドウフーリエ変換のすべてのスライディングウィンドウは、同一サイズを有することができる。スライディングウィンドウフーリエ変換のスライディングウィンドウは、2、5、10、20、50、100、またはそれ以上のサイズを有することができる。同一サイズを有するスライディングウィンドウフーリエ変換のスライディングウィンドウの数は、5、10、20、50、100、200、500、1000、2000、5000、10000、またはそれ以上とすることができる。いくつかの実施形態では、スライディングウィンドウのいずれも重ならない。いくつかの実施形態では、2つ以上のスライディングウィンドウが重なる。例えば、2つのスライディングウィンドウは、5、10、20、50、100、200、500、1000、2000、5000、10000、2000、5000、10000、20000、50000、100000、200000、500000、1000000、2000000、5000000、10000000、またはこれらの値の任意の2つの間の数または範囲のデータポイントだけ、およそその数だけ、少なくともその数だけ、または最大でその数だけ重なることができる。別の例として、2つのスライディングウィンドウは、1×10-1、2×10-1、5×10-1、1×10-2、2×10-2、5×10-2、1×10-3、2×10-3、5×10-3、1×10-4、2×10-4、5×10-4、1×10-5、2×10-5、5×10-5、1×10-6、2×10-6、5×10-6、1×10-7、2×10-7、5×10-7、1×10-8、2×10-8、5×10-8、1×10-9、2×10-9、5×10-9、またはこれらの値の任意の2つの間の数または範囲の秒数だけ、およそその数だけ、少なくともその数だけ、または最大でその数だけ重なることができる。例えば、2つのスライディングウィンドウは、スライディングウィンドウの1つの幅の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、99.9%だけ、およそその数だけ、少なくともその数だけ、または最大でその数だけ重なることができる。
【0211】
ブロック2712で複数の生画像を生成した後、方法2700はブロック2716に進み、ここで、コンピューティングシステムは、蛍光強度データの複数のチャネルのそれぞれについて1つ以上のチャネル位相調整を使用して、複数の生画像からの周波数空間における複素数値の複数のピクセル(例えば、
図25を参照して説明されたピクセル2514i1p00、2514i1p01、2514i2p00、2514i2p01)を含む複数の位相調整画像(例えば、
図25を参照して説明された位相補正画像2514i1、2514i2)を生成することができる。コンピューティングシステムは、1つ以上のチャネル位相調整を表す1つ以上のチャネル位相調整行列を使用して、複数の位相調整画像を生成することができる。
【0212】
いくつかの実施形態では、コンピューティングシステムは、蛍光強度データの複数のチャネルのそれぞれについて1つ以上のチャネル位相調整を使用して、複数の生画像から周波数空間に複素数値を含む複数の位相調整画像を生成することができる。複数の位相調整画像は、複数の位相調整画像の複素数値の複数のピクセルを含むことができる。
【0213】
いくつかの実施形態では、1つ以上のチャネル位相調整は、複数のチャネルのそれぞれについて、明視野位相、較正位相、および位相オフセットを含むチャネル位相(例えば、チャネル固有の位相)を補正する。複数の位相調整画像を生成するために、コンピューティングシステムは、複数のチャネルの各チャネルについて、チャネルに対応する複数の生画像のうちの生画像の複素数値に1つ以上のチャネル位相調整を乗算して、チャネルに対応する複数の位相調整画像のうちの位相調整画像を生成することができる。複数の位相調整画像を生成するために、コンピューティングシステムは、複数の生画像の各生画像について、生画像の複素数値に、生画像に対応するチャネルの1つ以上のチャネル位相調整を乗算して、複数の位相調整画像のうちの位相調整画像を生成することができる。
【0214】
1つ以上のチャネル位相調整は、複素数値を含むか、またはそれのみを含むことができる。1つ以上のチャネル位相調整は、1つ以上の実数値を含むことができる。チャネルのチャネル位相行列は、チャネルの1つ以上のチャネル位相調整を含むことができる。チャネル位相調整行列は、n1×n1のサイズを有することができる。いくつかの実施形態では、チャネル位相調整行列は、対角行列とすることができる。例えば、チャネル位相調整行列の対角要素のみが非ゼロである。チャネル位相調整行列の対角要素は、複素数値にすることもでき、すべて複素数値にすることもできる。複数の位相調整画像を生成するために、コンピューティングシステムは、複数のチャネルの各チャネルについて、チャネルに対応する複数の生画像のうちの生画像の各行の複素数値にチャネルのチャネル位相調整行列を乗算して、チャネルに対応する複数の位相調整画像のうちの位相調整画像の対応する行を生成することができる。複数の位相調整画像を生成するために、コンピューティングシステムは、複数の生画像の各生画像について、生画像の各行の複素数値にチャネルのチャネル行列を乗算して、複数の位相調整画像のうちの位相調整画像の対応する行を生成することができる。各チャネルの1つ以上のチャネル位相を補正するためのチャネル位相調整行列は、チャネルに対してユニークとすることができる。コンピューティングシステムは、1つ以上のチャネル位相調整を決定または受信することができる。
【0215】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる2019年3月22日に出願された優先権出願シリアル番号62/822,789の附属書Aは、位相較正を実行する(例えば、位相調整画像を生成するための)非限定的な例示的方法を示す。その開示が参照により本明細書に組み込まれる2019年3月22日に出願された優先権出願シリアル番号62/822,789の附属書Bは、多くの周波数で同時に位相を測定する非限定的な例示的方法を示す。
【0216】
方法2700は、ブロック2716からブロック2720に進み、ここで、コンピューティングシステムは、複数の位相調整画像の対応ピクセル(例えば、
図25を参照して説明されたピクセル2514i1p00、2514i2p00およびピクセル2514i1p01、2514i2p01)の複素数値についてのアンミックス行列(例えば、
図25を参照して説明されたアンミックス行列2516m)を使用して、複数の位相調整画像から周波数空間における複素数値の複数のピクセル(例えば、
図25を参照して説明されたピクセル2518i1p00、2518i2p00およびピクセル2518i1p01、2518i2p01)を含む複数のアンミックス画像(例えば、
図25を参照して説明されたアンミックス画像2518i1、2518i2)を生成することができる。各アンミックス画像は、他の発蛍光団の蛍光放出からのスペクトルミックスがない(または最小限のまたは減少したスペクトルミックスが伴う)発蛍光団の画像(または発蛍光団の蛍光放出から生成された画像)と見なすことができる。複数のアンミックス画像を生成するために、コンピューティングシステムは、複数の位相調整画像の対応する複素数値のアンミックス行列を使用して、複数の位相調整画像から複数のアンミックス画像を生成することができる。
【0217】
いくつかの実施形態では、複数のアンミックス画像を生成するために、コンピューティングシステムは、複数の位相調整画像の対応ピクセル(例えば、
図25を参照して説明されたピクセル2514i1p00、2514i2p00およびピクセル2514i1p01、2514i2p01)の複素数値を含むベクトルを生成することができる。コンピューティングシステムは、ベクトルをアンミックス行列(例えば、
図25を参照して説明されたアンミックス行列2516m)と乗算して、アンミックス複素数値(例えば、
図25を参照して説明されたピクセル2518i1p00、2518i2p00およびピクセル2518i1p01、2518i2p01の値)を含むアンミックスベクトルを生成することができる。コンピューティングシステムは、アンミックス複素数値を有する対応ピクセルを含む複数のアンミックス画像を生成することができる。ベクトルは1×n
1のサイズを有することができ、アンミックス行列は、n
1×n
2のサイズを有することができ、および/またはアンミックスベクトルは1×n
2のサイズを有することができる。例えば、n
1および/またはn
2は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、1000、またはこれらの値のいずれか2つの間の数または範囲とすることができる。複数のアンミックス画像を生成するために、コンピューティングシステムは、複数の位相調整画像の対応ピクセルについて、対応ピクセルの複素数値の、複数のアンミックス行列のうちのアンミックス行列を使用して、複数の位相調整画像から複数のアンミックス画像を生成することができる。複数のアンミックス行列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、1000、またはこれらの値の任意の2つの間の数または範囲のアンミックス行列などのm
2個のアンミックス行列を含むことができる。アンミックス行列は、実数値および/または複素数値を含むか、またはそれらのみを含むことができる。
【0218】
いくつかの実施形態では、(1)複数の光検出器の数、複数の生画像の数、および/または複数の位相調整画像の数(例えば、n1)、および(2)複数の発蛍光団の数、複数のアンミックス画像の数、および/または位相補正画像の数(例えば、n2)は同一とすることができる。いくつかの実施形態では、(1)複数の光検出器の数、複数の生画像の数、および/または複数の位相調整画像の数(例えば、n1)、および(2)複数の発蛍光団の数、複数のアンミックス画像の数、および/または位相補正画像の数(例えば、n2)は異なることができる。例えば、複数の位相調整画像の数(例えば、n1)は、複数のアンミックス画像の数(例えば、n2)よりも小さくすることができる。別の例として、複数の位相調整画像の数(例えば、n1)は、複数のアンミックス画像の数(例えば、n2)よりも大きくすることができる。例えば、複数の位相調整画像のそれぞれは、複数の光検出器の異なる光検出器によって検出された、またはそこから受信された蛍光強度データから生成されることができる(例えば、周波数空間に変換された後および/または位相調整された後に)。複数の生画像の数、複数の位相調整画像の数、および複数の光検出器の数は同一とすることができる(例えば、n1)。複数の発蛍光団の蛍光強度データは、複数の光検出器によって、またはそれらを使用して検出することができる。複数の位相補正画像のそれぞれ(および/または複数のアンミックス画像のそれぞれ)は、複数の発蛍光団のうちの1つに対応することができる。複数のアンミックス画像の数、複数の位相補正画像の数、および複数の発蛍光団の数は同一とすることができる(例えば、n2)。より多くの光検出器を使用して、より少ない発蛍光団の蛍光放出を検出することができる。例えば、10個の光検出器を使用して、8つの発蛍光団の蛍光放出の10個のチャネルの蛍光強度データを生成できる。複数のアンミックス画像のそれぞれは、複数の発蛍光団のうちの1つの発蛍光団に対応することができる。複数のアンミックス画像のそれぞれは、複数の発蛍光団のうちの1つの発蛍光団の画像とすることができる。
【0219】
正方アンミックス行列。チャネルの数が発蛍光団の数に等しい場合(例えば、面積データについて)、補償を実行できる。アンミックス行列を1回、計算して、すべてのイベントに、および各イベントのすべてのピクセルに使用できる。
図28Aは、正方アンミックス行列を用いてスペクトルアンミックスを実行することの概略図である。アンミックス行列は、スピルオーバー行列とも呼ばれる。
図28Aは、チャネルの数(3つが示され、検出器D1、D2およびD3によって収集される)および発蛍光団の数(3つが示され、FL1、FL2、およびFL3と標識される)が同一である場合に、正方アンミックス行列(すなわち正方ミックス行列の逆行列)M
-1を使用して、検出値Dからアンミックス値Fを決定することができることを示す。
図28Aに示される例では、検出器D1によって検出される蛍光放出は、発蛍光団FL1の蛍光放出の100%(例えば、D1によって検出されるFL1の蛍光放出は100%に正規化される)、発蛍光団FL2の蛍光放出の15%(例えば、100%に正規化されたD1によって検出されたFL1の蛍光放出に対して)、および発蛍光団FL3の蛍光放出の1%(例えば、100%に正規化されたD1によって検出されたFL1の蛍光放出に対して)を含む。検出器D2によって検出される蛍光は、発蛍光団FL2の蛍光放出の100%、発蛍光団FL1の蛍光放出の12%、および発蛍光団FL3の蛍光放出の0%を含む。検出器D3によって検出される蛍光は、100%の発蛍光団FL3、1%の発蛍光団FL1、および20%の発蛍光団FL2を含む。3つの発蛍光団からの蛍光放出と3つの検出器によって検出される蛍光放出との関係は、D=M×Fとして表すことができる。スペクトルアンミックスはM
-1を使用して実行できる。例えば、3つの発蛍光団Fの蛍光放出は、例えば、M
-1×Dを決定することにより、M
-1を使用して蛍光放出Dから決定することができる。
【0220】
非正方アンミックス行列。スペクトルアンミックスは、発蛍光団よりも多い(または少ない)チャネルを使用する場合に実行できる。
図28B1,B2は、非正方アンミックス行列を用いてスペクトルアンミックスを実行し、非正方アンミックス行列を決定することの概略図である。光検出器の数と発蛍光団の数とは異なる可能性があり、非正方アンミックス行列を使用して、光検出器によって検出された蛍光強度データのスペクトルアンミックスを行うことができる。
図28B1に示す例では、12個の光検出器が3つの発蛍光団の蛍光放出を検出して、12個のチャネルの蛍光強度データを生成する。蛍光強度データの各チャネルは、ブロック2712での時間空間から周波数空間への変換後、および
図27を参照して説明したブロック2716での位相調整を実行した後、画像(例えば、生画像または位相調整画像)の周波数空間に値を有する複数のピクセルを含むことができる。例えば、
図28BのD1、...、D12の各々は、
図27を参照して説明された複数の生画像または位相調整画像のそれぞれの対応ピクセルとすることができる。例えば、D1およびD2は、
図25を参照して説明された2つのチャネルの位相調整画像のピクセル2514i1p00、2514i2p00とすることができる。別の例として、D1およびD2は、
図25を参照して説明された2つのチャネルの生画像のピクセル2510i1p00、2510i2p00とすることができる。D1、...、D12は、1つの周波数ビンまたはビート周波数に対応する12個のチャネルからの12個のピクセルに対応できる。別の例として、
図28B1のD1は、異なる周波数ビン(例えば、ビート周波数の)に対応する複数のピクセルを含むことができる。同様に、D2、...、D12のそれぞれは、異なる周波数ビンに対応する複数のピクセルを含むことができる。D1、...、D12のそれぞれは、m
2×1のサイズを有することができる。
図28B2は、チャネルの数および発蛍光団の数が異なる場合、スペクトルアンミックスのために通常の最小二乗(OLS)および/または加重最小二乗(WLS)を使用してアンミックス行列を決定できることを示す。
【0221】
コンピューティングシステムは、アンミックス行列または複数のアンミックス行列(例えば、m2)を受信および/または決定することができる。いくつかの実施形態では、アンミックス行列(または複数のアンミックス行列、各周波数ビンまたはピクセル用に1つ、または2つ以上の周波数ビンまたはピクセル用に1つ)は、通常の最小二乗(OLS)、加重最小二乗(WLS)、ポアソン回帰、またはそれらの組み合わせを使用して決定することができる。他の方法を使用して、アンミックス行列を決定できる。
【0222】
通常の最小二乗。いくつかの実施形態では、アンミックス行列は、通常の最小二乗(例えば、面積データについて)で1回、決定することができ、スペクトルアンミックスに使用できる(例えば、
図28B2に示すようにハットFを決定するために)。アンミックス行列は、すべてのイベント(および各イベントのすべてのピクセル)について使用される単一の結果を使用して1回、計算できる。通常の最小二乗を使用してアンミックス行列を決定すること、および/またはそのようなアンミックス行列を使用してスペクトルアンミックスを実行することは、計算を高速にすることができる(例えば、必要な計算の数に基づいて)。
【0223】
加重最小二乗。いくつかの実施形態では、アンミックス行列は、加重最小二乗を使用して決定することができる。加重最小二乗に基づいて決定されたアンミックス行列は、ポアソンノイズを説明または補正できる(例えば、ピクセルの値の分散は値とともに増加する可能性がある)。アンミックス行列(または異なる周波数ビンまたはピクセルについての複数のアンミックス行列)は、複数の対応ピクセルごとに行列反転を介して決定されなければならない場合がある。アンミックス行列は、各イベントの行列反転を介して決定できる(例えば、異なるチャネルの複数の各対応ピクセルの値、またはスライディングウィンドウフーリエ変換の対応スライディングウィンドウからの異なるチャネルの異なる周波数ビンのすべての対応ピクセルの値)。例えば、アンミックス行列(または
図28B2の行列W)は、2つのチャネルの位相調整画像の対応ピクセル2514i1p00、2514i2p00の行列反転を介して決定でき、別のアンミックス行列は、
図25A,Bを参照して説明された2つのチャネルの対応ピクセル2514i1p01、2514i2p01位相調整画像の行列反転を介して決定できる。加重最小二乗でアンミックス行列を決定すること、および/またはそのようなアンミックス行列でスペクトルアンミックスを実行することは、通常の最小二乗でアンミックス行列を決定すること、および/またはそのようなアンミックス行列でスペクトルアンミックスを実行することよりも、より計算集約的である可能性がある。
【0224】
WLSは、重み行列Wを使用するため、OLSよりも(例えば、はるかに)計算コストが高くなる可能性がある。アンミックス行列は、イベントごとに再計算する必要があり得る。ミックス行列を計算するには、行列反転が必要であるが、これは計算コストが高くなる可能性がある。重み行列に入る重みは、各ピクセル値(または各測定値)の分散の推定値に基づくことができる。重み行列は、ピクセルごとに(または複数の各対応ピクセルごとに)異なる可能性がある。分散の計算は、FIRE測定値に固有の統計に依存する可能性がある。WLSは、すべてのイベントのすべてのピクセル(または複数の各対応ピクセル)について、異なるおよび/または新たなアンミックス行列の計算を必要とする可能性がある。
【0225】
ポアソン回帰。いくつかの実施形態では、アンミックス行列(または異なる周波数ビンまたはピクセルの複数のアンミックス行列)は、ポアソン回帰および/またはポアソンノイズモデルに基づく一般化線形モデルを使用して決定することができる。例えば、凸最適化手法などの最適化手法を使用する最尤推定(MLE)を使用してアンミックス行列を決定できる。ポアソン回帰を使用してアンミックス行列を決定することには、イベントごとの凸最適化解法を含めることができる。ポアソン回帰を使用して決定されたアンミックス行列、および/またはそのようなアンミックス行列を使用してスペクトルアンミックスを実行することは、ノイズ(例えば、チャネルごとのノイズ)を正しく説明または補正することができる。いくつかの実施形態では、ポアソン回帰を使用して決定されたアンミックス行列は、通常の最小二乗または加重最小二乗を使用して決定されたアンミックス行列よりも優れている可能性がある。ポアソン回帰を使用してアンミックス行列を決定すること、および/またはそのようなアンミックス行列を使用してスペクトルアンミックスを実行することは、加重最小二乗を使用してアンミックス行列を決定すること、および/またはそのようなアンミックス行列を使用してスペクトルアンミックスを実行することよりも、より計算集約的である可能性がある。
【0226】
図27を参照すると、ブロック2720で複数のアンミックス画像を生成した後、方法2700はブロック2724に進み、ここで、コンピューティングシステムは、複数の発蛍光団のそれぞれの属性に基づいて、複数のアンミックス画像から複数の位相補正画像を生成することができる。コンピューティングシステムは、複数の発蛍光団位相補正を表す発蛍光団についての複数の発蛍光団位相補正行列を使用して、複数の位相補正画像を生成することができる。各位相補正画像は、周波数空間内の複素数値の複数のピクセルを含むことができる。複数の位相補正画像は、複数の位相補正画像の複素数値の複数のピクセルを含むことができる。コンピューティングシステムは、複数の発蛍光団のそれぞれの属性に基づいて、複数のアンミックス画像から周波数空間内の複素数値を含む複数の位相補正画像を生成することができる。コンピューティングシステムは、発蛍光団についての複数の発蛍光団位相補正を決定または受信することができる。
【0227】
いくつかの実施形態では、各位相補正画像は、周波数空間内の実数値の複数のピクセルを含むことができる。複数の位相補正画像は、複数の位相補正画像の実数値の複数のピクセルを含むことができる。コンピューティングシステムは、複数の発蛍光団のそれぞれの属性に基づいて、複数のアンミックス画像から周波数空間に実数値を含む複数の位相補正画像を生成することができる。
【0228】
いくつかの実施形態では、複数の位相補正画像を生成するために、コンピューティングシステムは、チャネルに対応する複数の発蛍光団のうちの発蛍光団の複数の発蛍光団位相補正(例えば、寿命)を使用して、複数のチャネルのうちのチャネルに対応する複数のアンミックス画像のうちのアンミックス画像から複数の位相補正画像のうちの位相補正画像を生成することができる。いくつかの実施形態では、複数の位相補正画像を生成するために、コンピューティングシステムは、複数の発蛍光団のうちの発蛍光団の1つ以上の発蛍光団位相補正(例えば、一組の寿命補正)を使用して、複数の発蛍光団のうちの発蛍光団に対応する複数のアンミックス画像のうちのアンミックス画像から、複数の位相補正画像のうちの位相補正画像を生成することができる。発蛍光団についての複数の発蛍光団位相補正は、発蛍光団の属性に関連させることができる。発蛍光団の属性は、発蛍光団の寿命を含むことができる。発蛍光団についての複数の発蛍光団位相補正は、複素数値を含むことができる。
【0229】
複数の位相補正画像を生成するために、コンピューティングシステムは、複数のアンミックス画像の各アンミックス画像について、アンミックス画像の各行の複素数値に、発蛍光団についての発蛍光団位相補正行列を乗算して、発蛍光団に対応する複数の位相補正画像のうちの位相補正画像の対応する行を生成することができる。発蛍光団についての発蛍光団位相補正行列は、発蛍光団についての1つ以上の発蛍光団位相補正を含むことができる。発蛍光団についての発蛍光団位相補正行列は、発蛍光団についてユニークとすることができる。発蛍光団位相補正行列は、1つ以上の複素数値を含むことができ、またはそれのみを含むことができる。発蛍光団位相補正行列は、1つ以上の実数値を含むことができる。発蛍光団位相補正行列は、n2×n2のサイズを有することができる。いくつかの実施形態において、発蛍光団位相補正行列は、対角行列とすることができる。例えば、発蛍光団位相補正行列の対角要素のみが非ゼロである。発蛍光団位相補正行列の対角要素は、複素数値とすることができ、またはすべて複素数値とすることができる。発蛍光団位相補正行列は、発蛍光団ごとにユニークとすることができる。
【0230】
いくつかの実施形態では、各チャネル位相調整行列(またはチャネル位相調整)は、複素数値を有する要素を含む。各チャネル位相調整行列は、複素数値のみを有する要素を含むことができる。各チャネル位相調整行列は、実数値を有する1つ以上の要素を含むことができる(例えば、複素数値の虚数成分はゼロである)。いくつかの実施形態では、各アンミックス行列は、実数値を有する要素を含む。各アンミックス行列は、実数値のみを有する要素を含むことができる。いくつかの実施形態では、各発蛍光団位相補正行列は、複素数値を有する要素を含む。各チャネル位相調整行列は、複素数値のみを有する要素を含むことができる。各チャネル位相調整行列は、実数値を有する1つ以上の要素を含むことができる(例えば、複素数値の虚数成分はゼロである)。
【0231】
いくつかの実施形態では、各生画像は、複素数値を有するピクセルを含む。各生画像は、複素数値のみを有するピクセルを含むことができる。各生画像は、実数値を有する1つ以上のピクセルを含むことができる。いくつかの実施形態では、各位相調整画像は、複素数値を有するピクセルを含む。各位相調整画像は、複素数値のみを有するピクセルを含むことができる。各位相調整画像は、実数値を有する1つ以上のピクセルを含むことができる。いくつかの実施形態では、各アンミックス画像は、複素数値を有するピクセルを含む。各アンミックス画像は、複素数値のみを有するピクセルを含むことができる。各アンミックス画像は、実数値を有する1つ以上のピクセルを含むことができる。
【0232】
いくつかの実施形態では、各位相補正画像は、複素数値を有するピクセルを含む。各位相補正画像は、複素数値のみを有するピクセルを含むことができる。各位相補正画像は、実数値を有する1つ以上のピクセルを含むことができる。各位相補正画像は、実数値のみを有するピクセルを含むことができる。例えば、発蛍光団についての発蛍光団位相補正行列は、発蛍光団のアンミックス画像のピクセルの複素数値を実成分の軸に回転させて、それにより、発蛍光団位相補正画像の各ピクセルの虚数成分がゼロになるようにすることができる。別の例として、発蛍光団についての発蛍光団位相補正行列は、発蛍光団のアンミックス画像のピクセルの複素数値を実数成分の軸に回転させて、それにより、発蛍光団位相補正画像の各ピクセルの虚数成分がゼロに近くなって破棄される(またはまったく計算されない)ようにすることができる。
【0233】
図29は、発蛍光団位相補正を概略的に示す。発蛍光団のアンミックス画像のピクセルは、信号位相Sおよびノイズ位相Nを含む複素数値とすることができる。ピクセルの複素数値は、位相補正されることができる。発蛍光団の寿命に基づいて、発蛍光団についての発蛍光団位相(例えば、ピクセルのビート周波数に対応する発蛍光団位相)を決定し、発蛍光団位相補正に使用することができる。例えば、発蛍光団位相は、発蛍光団についての発蛍光団位相補正を決定するために使用することができるφとする(またはそれに基づく)ことができる。発蛍光団位相補正(例えば、発蛍光団位相補正行列の形態で)は、アンミックス画像のピクセルの発蛍光団位相について補正するために使用することができる。
図29は、位相補正後のピクセルの複素数値の実数成分が、ピクセルの複素数値の大きさよりも、アンミックス画像内のピクセルの複素数値の信号に、より近いことを示す。いくつかの実施形態では、より高い信号対雑音比は、発蛍光団の既知の位相に基づいて発蛍光団に対応するアンミックス画像の各ピクセルの複素数値をシフトすること(例えば、発蛍光団位相補正を伴う回転)、および発蛍光団位相補正後のピクセルの複素数値の実数成分を取ることによって達成することができる。
【0234】
図27を参照すると、いくつかの実施形態では、複数の生画像の数、複数の位相調整画像の数、複数のアンミックス画像の数、および複数の位相補正画像の数は同一である。複数の生画像の数、複数の位相調整画像の数、複数のアンミックス画像の数、および/または複数の位相補正画像の数は、n
1とすることができる。複数の生画像は、第1の時間次元および第1の周波数次元に関連させることができる。複数の位相調整画像は、第2の時間次元および第2の周波数次元に関連させることができる。複数のアンミックス画像は、第3の時間次元および第3の周波数次元に関連させることができる。複数の位相補正画像は、第4の時間次元および第4の周波数次元に関連させることができる。
【0235】
第1の時間次元、第2の時間次元、第3の時間次元、および第4の時間次元のうちの2つ以上は、次元に沿って同一のサイズおよび/または同一のピクセル数を有することができる。第1の時間次元、第2の時間次元、第3の時間次元、および第4の時間次元は、同一のサイズおよび/または同一のピクセル数を有することができる。第1の周波数次元、第2の周波数次元、第3の周波数次元、および/または第4の周波数次元は、5、10、20、50、100、200、500、1000、2000、5000、10000、2000、5000、10000、20000、50000、100000、200000、500000、1000000、2000000、5000000、10000000、またはこれらの値の任意の2つの間の数または範囲のデータポイントなどの、m2のサイズおよび/またはm2個のピクセル(またはフーリエ変換ビン)を有することができる。第1の周波数次元、第2の周波数次元、第3の周波数次元、および第4の周波数次元の1つ以上は、同一のサイズおよび/または同一のピクセル数を有することができる。第1の周波数次元、第2の周波数次元、第3の周波数次元、および第4の周波数次元は、同一のサイズおよび/または同一のピクセル数を有することができる。m2およびm1は異なる実装において異なることができる。例えば、m2は、1/2×m1と等しくすることができる。別の例として、m2は1/2×m1よりも小さい。m2および1/2×m1は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、1000、2000、5000、10000、20000、50000、100000、200000、500000、1000000、2000000、5000000、10000000、またはこれらの値のいずれか2つの間の数または範囲だけ、およそその数だけ、少なくともその数だけ、または最大でその数だけ異なることができる。
【0236】
第1の周波数次元に沿ったピクセルのサイズおよび/もしくは数、第2の周波数次元に沿ったピクセルのサイズおよび/もしくは数、第3の周波数次元に沿ったピクセルのサイズおよび/もしくは数、ならびに/または第4の周波数次元のピクセルのサイズおよび/もしくは数は、複数の高周波シフトレーザービームの数と同一とすることができる。第1の周波数次元に沿ったピクセル、第2の周波数次元に沿ったピクセル、第3の周波数次元に沿ったピクセル、および/または第4の周波数次元に沿ったピクセルは、複数の高周波シフトレーザービームに対応することができる。高周波シフトレーザービームまたはその高周波シフトレーザービームの周波数に対応しないフーリエ変換(例えば、離散フーリエ変換)のビンは破棄する(または計算されない)ことができる。第1の周波数次元に沿ったピクセル、第2の周波数次元に沿ったピクセル、第3の周波数次元に沿ったピクセル、および/または第4の周波数次元に沿ったピクセルは、細胞の複数の空間位置に対応することができる。
【0237】
いくつかの実施形態では、コンピューティングシステムは、複数の位相補正画像の複素数値の実数成分に基づいて、複数の位相補正画像の複数の視覚的表現を生成することができる。コンピューティングシステムは、複数の位相補正画像の複素数値の振幅に基づいて、複数の位相補正画像の複数の視覚的表現を生成することができる。コンピューティングシステムは、複数の位相補正画像の複数の視覚的表現から、組み合わされた視覚的表現(例えば、
図26Bに示される細胞の画像)を生成することができる。組み合わされた視覚的表現を生成するために、コンピューティングシステムは、複数の視覚的表現(または対応する発蛍光団)のそれぞれに色を割り当て、視覚的表現に割り当てられた色に基づいて複数の視覚的表現の複数の色付き視覚的表現を生成し、複数の色付き視覚的表現を組み合わせて、組み合わされた視覚的表現を生成することができる。
【0238】
方法2700は、ブロック2724からブロック2728に進み、ここで、コンピューティングシステムは、複数の位相補正画像に基づいて細胞の選別判断を決定する。選別判断を決定するために、コンピューティングシステムは、複数の位相補正画像に基づいて細胞の選別判断を決定することができる。選別判断を決定するために、コンピューティングシステムは、複数の位相補正画像の複数の視覚的表現に基づいて、細胞についての選別判断を決定することができる。選別判断を決定するために、ハードウェアプロセッサは、選別判断閾値を超える複数の位相補正画像のうちの1つ以上のピクセル数に基づいて細胞についての選別判断を決定するように、実行可能命令によってプログラムされる。選別判断の閾値は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、またはこれらの値のいずれか2つの間の数または範囲、およそその値、その値超、またはその値未満とすることができる。選別判断を決定するために、ハードウェアプロセッサは、選別判断閾値を超える複数の位相補正画像のうちの1つ以上のピクセルのパーセンテージに基づいて細胞についての選別判断を決定するように、実行可能命令によってプログラムされる。選別判断閾値は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、またはこれらの値のいずれか2つの間の数または範囲、およそその値、その値超、またはその値未満とすることができる。方法2700はブロック2732で終了する。
【0239】
ブロック2712、2716、2720、2724、および2728のうちの2つ以上を一緒に実行することができる。いくつかの実施形態では、コンピューティングシステムは、複数の生画像の生成、複数の位相調整画像の生成、複数のアンミックス画像の生成のうちの2つ以上を実行することができ、複数の位相補正画像の生成は、時間から周波数への変換行列、チャネル位相調整行列、アンミックス行列、および発蛍光団位相補正行列のうちの2つ以上を含むかまたは表す組み合わせ行列を使用して実行される。複数の生画像を生成して複数の位相調整画像を生成するために、コンピューティングシステムは、時間から周波数への変換行列およびチャネル位相調整行列を含むかまたは表す組み合わせ行列を使用して、蛍光強度データの複数のチャネルから複数の位相調整画像を生成することができる。複数のアンミックス画像を生成して複数の位相補正画像を生成するために、コンピューティングシステムは、アンミックス行列および発蛍光団位相補正行列を含むかまたは表す組み合わせ行列を使用して、複数の位相調整画像から複数の位相補正画像を生成することができる。例えば、複数の位相調整画像のピクセル(例えば、位相調整画像2514i1のピクセル2514i1p00、2514i1p01、...および位相調整画像2514i2のピクセル2514i2p00、2514i2p01、...)の対応行を行ベクトルへと組み合わせることができる。行ベクトルは、アンミックス行列および発蛍光団位相補正行列を含むかまたは表す組み合わせ行列によって乗算されて、複数の位相補正画像のピクセル(例えば、位相補正画像2522i1のピクセル2522i1p00、2522i1p01、...および位相補正画像2522i2のピクセル2522i2p00、2522i2p01、...)の対応行を含む行ベクトルを生成することができる。複数の生画像を生成し、複数の位相調整画像を生成し、複数のアンミックス画像を生成し、複数の位相補正画像を生成するために、コンピューティングシステムは、時間から周波数への変換行列、チャネル位相調整行列、アンミックス行列、および発蛍光団位相補正行列を含むかまたは表す組み合わせ行列を使用して、蛍光強度の複数のチャネルから複数の位相補正画像を生成することができる。
【0240】
いくつかの実施形態では、コンピューティングシステムは、複数の位相補正画像から、補正蛍光強度データの複数のチャネルを生成することができる。補正蛍光強度データの複数のチャネルを生成するために、コンピューティングシステムは、周波数空間から時間空間への変換を使用して、複数の位相補正画像から補正蛍光強度データの複数のチャネルを生成することができる。コンピューティングシステムは、補正蛍光強度データの複数のチャネルに基づいて、細胞の特性の推定値を決定することができる。選別判断を決定することは、本明細書に記載されるような細胞の特性の推定値に基づいて細胞の選別判断を決定することを含むことができる(
図14A、
図14C、
図14D、
図16、
図18、
図19A、
図19B、
図20A、
図20B、および
図28、またはそれらの一部を参照して記載される方法など)。細胞の特性は、細胞のサイズ、2つの異なる次元における細胞のサイズの比率、細胞に関連する複数の発蛍光団のうちの2つ以上による蛍光放出の共局在化、細胞質および細胞の核のサイズの比率、細胞の蛍光放出の点状性の程度、蛍光放出の空間分布の測定値、細胞の位置または配向の測定値、細胞の偏心の測定値、参照細胞に対する細胞の類似性の測定値、細胞がレーザービームの焦点に存在する程度の測定値、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0241】
実行環境
図30において、本明細書に開示される代謝産物、注釈、および遺伝子統合システムを実装するように構成された例示的なコンピューティングデバイス3000の一般的なアーキテクチャを示す。
図30に示されるコンピューティングデバイス3000の一般的なアーキテクチャは、コンピュータハードウェアおよびソフトウェアコンポーネントの構成を含む。コンピューティングデバイス3000は、
図30に示される要素よりもはるかに多くの(またはより少ない)要素を含み得る。しかし、可能にする開示を提供するために、これらの一般的に従来の要素のすべてが示される必要はない。図示のように、コンピューティングデバイス3000は、処理ユニット3010、ネットワークインターフェース3020、コンピュータ可読媒体ドライブ3030、入力/出力デバイスインターフェース3040、ディスプレイ3050、および入力デバイス3060を含み、これらはすべて、通信バス経由で互いに通信し得る。ネットワークインターフェース3020は、1つ以上のネットワークまたはコンピューティングシステムへの接続を提供し得る。したがって、処理ユニット3010は、ネットワークを介して他のコンピューティングシステムまたはサービスから情報および命令を受信し得る。処理ユニット3010はまた、メモリ3070との間で通信し、入力/出力デバイスインターフェース3040を介して任意選択的ディスプレイ3050についての出力情報をさらに提供し得る。入力/出力デバイスインターフェース3040はまた、キーボード、マウス、デジタルペン、マイク、タッチスクリーン、ジェスチャー認識システム、音声認識システム、ゲームパッド、加速度計、ジャイロスコープ、または他の入力デバイスなどの任意選択的入力デバイス3060からの入力を受諾し得る。
【0242】
メモリ3070は、1つ以上の実施形態を実装するために処理ユニット3010が実行するコンピュータプログラム命令(いくつかの実施形態ではモジュールまたはコンポーネントとしてグループ化される)を含み得る。メモリ3070は概して、RAM、ROM、および/または他の永続的、補助的、または非一時的なコンピュータ可読媒体を含む。メモリ3070は、コンピューティングデバイス3000の一般的な管理および動作において処理ユニット3010によって使用されるコンピュータプログラム命令を提供するオペレーティングシステム3072を格納し得る。メモリ3070は、コンピュータプログラム命令および本開示の態様を実装するための他の情報をさらに含み得る。
【0243】
例えば、1つの実施形態では、メモリ3070は、
図25を参照して説明したスペクトルアンミックス方法2500および
図27を参照して説明したスペクトルアンミックス方法2700などの、スペクトルアンミックスを実行するためのスペクトルアンミックスモジュール3074を含む。さらに、メモリ3070は、データストア3090、ならびに/または、蛍光放出または信号、生画像、位相調整画像、アンミックス画像、位相補正画像および/もしくは選別判断を格納する1つ以上の他のデータストアを含むか、またはそれらと通信し得る。
【0244】
用語
本明細書で使用される場合、「決定する」または「決定すること」という用語は、多種多様なアクションを包含する。例えば、「決定すること」は、算出、計算、処理、導出、調査、検索(例えば、テーブル、データベース、または別のデータ構造での検索)、確認などを含み得る。また、「決定すること」は、受信(例えば、情報の受信)、アクセス(例えば、メモリ内のデータへのアクセス)などを含み得る。また、「決定すること」には、解決、選択、選出、確立などを含み得る。
【0245】
本明細書で使用される場合、「提供する」または「提供すること」という用語は、多種多様なアクションを包含する。例えば、「提供すること」は、その後の検索のために記憶装置の位置に値を格納すること、少なくとも1つの有線または無線通信媒体を介して受信者に直接的に値を送信すること、値への参照を送信または格納することなどを含み得る。「提供すること」はまた、ハードウェア要素を介したエンコード、デコード、暗号化、復号化、確認、検証などを含み得る。
【0246】
本明細書で使用される場合、「選択的に」または「選択的」という用語は、多種多様なアクションを包含し得る。例えば、「選択的」プロセスには、複数のオプションから1つのオプションを決定することを含み得る。「選択的」プロセスは、動的に決定された入力、事前構成された入力、または決定を行うためのユーザが開始した入力のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実装では、選択機能を提供するためにn入力スイッチが含まれ得、ここで、nは、選択を行うために使用される入力の数である。
【0247】
本明細書で使用される場合、「メッセージ」という用語は、情報を通信する(例えば、送信または受信する)ための多種多様なフォーマットを包含する。メッセージは、XML文書、固定フィールドメッセージ、コンマ区切りメッセージなどの機械可読な情報の集合を含み得る。メッセージは、いくつかの実装では、情報の1つ以上の表現を送信するために利用される信号を含み得る。単数形で記載されていても、メッセージは、複数の部分で構成、送信、格納、受信などされ得ることが理解される。
【0248】
本明細書で使用される場合、「ユーザインターフェース」(インタラクティブユーザインターフェース、グラフィカルユーザインターフェースまたはUIとも呼ばれる)は、入力信号を受信するため、または電子情報を提供するため、または受信した任意の入力信号に応答してユーザに情報を提供するための、データフィールド、ボタン、または他のインタラクティブコントロールを含むネットワークベースのインターフェースを指し得る。UIは、ハイパーテキストマークアップ言語(HTML)、JAVASCRIPT(商標)、FLASH(商標)、JAVA(商標)、.NET(商標)、WINDOWS OS(商標)、macOS(商標)、Webサービス、またはリッチサイトサマリー(RSS)などのテクノロジを使用して、全体または一部を実装し得る。いくつかの実装では、UIは、説明された1つ以上の態様に従って通信する(例えば、データを送信または受信する)ように構成されたスタンドアロンクライアント(例えば、シッククライアント、ファットクライアント)に含まれ得る。
【0249】
本明細書で使用される場合、「データストア」は、ハードディスクドライブ、ソリッドステートメモリ、および/または、アクセスデバイス、サーバ、または説明されている他のコンピューティングデバイスなどのデバイスにアクセス可能またはそれらのデバイスによってアクセス可能な任意の他のタイプの非一時コンピュータ可読記憶媒体にて具現化され得る。データストアはさらに、または代わりに、本開示の範囲から逸脱することなく、当技術分野で知られているように、複数のローカルおよび/またはリモートストレージデバイスにわたって分散または分割され得る。さらに他の実施形態では、データストアは、データストレージウェブサービスを含むか、またはそれにて具体化され得る。
【0250】
当業者は、情報、メッセージ、および信号が、様々な異なるテクノロジおよび技術のいずれかを使用して表され得ることを理解する。例えば、上記の説明全体を通して参照され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、記号、およびチップは、電圧、電流、電磁波、磁場または粒子、光場または粒子、またはそれらの任意の組み合わせによって表され得る。
【0251】
当業者は、本明細書に開示される実施形態に関連して説明される様々な例示的な論理ブロック、モジュール、回路、およびアルゴリズムステップが、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、または両方の組み合わせとして実装され得ることをさらに理解する。ハードウェアおよびソフトウェアのこの互換性を明確に説明するために、様々な例示的なコンポーネント、ブロック、モジュール、回路、およびステップを、概してそれらの機能の観点から上記で説明している。このような機能がハードウェアとして実装されるかソフトウェアとして実装されるかは、システム全体に課せられる特定の用途および設計上の制約に依存する。熟練技術者は、特定の用途ごとに様々な方法で説明された機能を実装し得るが、そのような実装の決定は、本発明の範囲からの逸脱を引き起こすものと解釈されるべきではない。
【0252】
本明細書に記載の技術は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装され得る。このような技術は、特別にプログラムされたイベント処理コンピュータ、無線通信デバイス、または集積回路デバイスなどの様々なデバイスのいずれかにて実装され得る。モジュールまたはコンポーネントとして記述されている任意の特徴は、集積化ロジックデバイスにまとめて実装することも、ディスクリートであるが相互運用可能なロジックデバイスとして個別に実装することもできる。ソフトウェアで実装される場合、技術は、実行されると上記の方法の1つ以上を実行する命令を含むプログラムコードを含むコンピュータ可読データ記憶媒体によって少なくとも部分的に実現され得る。コンピュータ可読データ記憶媒体は、パッケージング材料を含み得るコンピュータプログラム製品の一部を形成し得る。コンピュータ可読媒体は、同期動的ランダムアクセスメモリ(SDRAM)などのランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、電気的消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、磁気または光データ記憶媒体などのメモリまたはデータ記憶媒体を含み得る。コンピュータ可読媒体は、非一時的な記憶媒体であり得る。技術は追加的にまたは代替的に、プログラムコードを命令またはデータ構造の形式で伝送または通信し、コンピューティングデバイスによってアクセス、読み取り、および/または実行することができる、伝搬信号または波などのコンピュータ可読通信媒体によって少なくとも部分的に実現され得る。
【0253】
プログラムコードは、特別にプログラムされた選別戦略プロセッサによって実行され得、これは、1つ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)、構成可能なマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または他の均等な集積またはディスクリート論理回路などの1つ以上のプロセッサを含み得る。そのようなグラフィックプロセッサは、本開示に記載された技術のいずれかを実行するように特別に構成され得る。コンピューティングデバイスの組み合わせ、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組み合わせた1つ以上のマイクロプロセッサ、または少なくとも部分的なデータ接続における任意の他のそのような構成は、上記の1つ以上の特徴を実装し得る。いくつかの態様では、本明細書で説明される機能は、エンコードおよびデコードのために構成された専用のソフトウェアモジュールまたはハードウェアモジュール内で提供され得るか、または専用の選別制御カードに組み込まれ得る。
【0254】
概して、本明細書で、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本体)で使用される用語は、概して「オープン」な用語であるものと意図されることが当業者には理解される(例えば、「含むこと」という用語は「含むがこれに限定されないこと」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む」という用語は「含むがこれに限定されない」と解釈されるべきであるなど)。導入された請求項記載物の特定の数が意図されている場合、そのような意図は請求項にて明示的に記載され、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが当業者によってさらに理解される。例えば、理解の助けとして、以下の添付の請求項には、請求項記載物の導入のための導入フレーズ「少なくとも1つ」および「1つ以上」の使用が含まれ得る。ただし、そのようなフレーズの使用は、不定冠詞「a」または「an」による請求項記載物の導入が、そのような導入された請求項記載物を含む任意の特定の請求項を、たとえ同請求項に導入句「1つ以上」または「少なくとも1つ」および「a」または「an」などの不定冠詞が含まれるとしても、そのような記載物を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではない(例えば、「a」および/または「an」は「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)。同じことが、請求項記載物を導入するために使用される定冠詞の使用にも当てはまる。さらに、導入された請求項記載物の特定の数が明示的に記載されている場合でも、当業者は、そのような記載物が少なくとも記載の数を意味すると解釈されるべきであることを認識する(例えば、他の修飾語なしの「2つの記載物」というそのままの記載物は、少なくとも2つの記載物、または2つ以上の記載物を意味する)。さらに、「A、B、およびCなどの少なくとも1つ」に類似した取り決めが使用されている場合、概して、そのような構成は、当技術分野の技術を有する者が取り決めを理解する意味で意図されている(例えば、「A、B、およびCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBを一緒に、AとCを一緒に、BとCを一緒に、および/またはA、B、Cを一緒に有するシステムなどを含むが、これらに限定されない)。「A、B、またはCなどの少なくとも1つ」に類似した取り決めが使用されている場合、概して、そのような構成は、当技術分野の技術を有する者が取り決めを理解する意味で意図されている(例えば、「A、B、またはCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBを一緒に、AとCを一緒に、BとCを一緒に、および/またはA、B、Cを一緒に有するシステムなどを含むが、これらに限定されない)。説明、特許請求の範囲、または図面のいずれにおいても、2つ以上の代替用語を提示する事実上すべての選言的な単語および/または句は、用語のうちの1つ、いずれかの用語、または両方の用語を含む可能性を企図するように理解されるべきであることが当技術分野の人々によってさらに理解される。例えば、「AまたはB」という句は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むと理解される。
【0255】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュグループの用語で説明される場合、当業者はそれによって、本開示がマーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関しても説明されることを認識する。
【0256】
当業者によって理解されるように、書面による説明を提供することに関してなど、ありとあらゆる目的のために、本明細書に開示されるすべての範囲はまた、ありとあらゆる可能なサブ範囲およびそのサブ範囲の組み合わせを包含する。リストされた範囲はいずれも、同範囲を少なくとも等半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などにブレークダウンすることを十分に記述し、可能にするものとして容易に認識できる。非限定的な例として、本明細書で記述される各範囲は、容易に下3分の1、中3分の1、上3分の1などにブレークダウンできる。当業者によっても理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」などの言語は、記載されている数を含み、続いて上記のようにサブ範囲にブレークダウンできる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は、各個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3の物品を有するグループは、1、2、または3つの物品を有するグループを指す。同様に、1~5の物品を有するグループは、1、2、3、4、または5の物品を有するグループを指し、以下同様である。
【0257】
本明細書に開示される方法は、記載された方法を達成するための1つ以上のステップまたはアクションを含む。方法のステップおよび/またはアクションは、特許請求の範囲から逸脱することなく、互いに交換され得る。言い換えれば、ステップまたはアクションの特定の順序が指定されていない限り、特定のステップおよび/またはアクションの順序および/または使用は、特許請求の範囲から逸脱することなく変更され得る。
【0258】
様々な態様および実施形態が本明細書に開示されているが、他の態様および実施形態は当業者には明らかである。本明細書に開示される様々な態様および実施形態は、例示を目的とするものであり、限定することを意図するものではなく、真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示される。
関連出願への相互参照
【0259】
35U.S.C.§119(e)に準拠して、この出願は、2019年3月22日に提出された米国仮特許出願シリアル番号62/822,789の出願日の優先権を主張し、その出願の開示が参照により本明細書に組み込まれる。