(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】サイドエアバッグアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/231 20110101AFI20240110BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20240110BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B60R21/231
B60R21/207
B60N2/42
(21)【出願番号】P 2021561899
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(86)【国際出願番号】 US2020029373
(87)【国際公開番号】W WO2020219584
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-18
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598122843
【氏名又は名称】オートリブ エー・エス・ピー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】ウィスコム、ディレク ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ディンズデール、チャールズ ポール
(72)【発明者】
【氏名】パリー、ドン ラリー
(72)【発明者】
【氏名】ホリデー、アンディ ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ホイールライト、テリー アラン
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-184159(JP,A)
【文献】国際公開第2010/050015(WO,A1)
【文献】特開2005-119510(JP,A)
【文献】特開2010-126017(JP,A)
【文献】特開2012-081958(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0076014(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0200278(US,A1)
【文献】特開2012-051557(JP,A)
【文献】特開2007-186133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
B60R 2/00- 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)のシート(42)のバックシート(44)に取り付けられたハウジング(102、302、502)と、
インフレータ(104、304、504)と、
前記インフレータ(104、304、504)からの膨張ガスを受け入れ、前記ハウジング(102、302、502)内にパッケージ化された状態から前記バックシート(44)の側面から前方に延びた展開状態に展開する膨張式エアバッグクッション(110、310、510)と、を備える膨張式エアバッグアセンブリ(100、300、500)であって、
前記展開状態にある前記膨張式エアバッグクッション(110、310、510)は、車両着座位置(30)に横方向に隣接して配置され、
前記膨張式エアバッグクッション(110、310、510)は、
前記膨張ガスによって膨張されて前記展開状態に配置され、前記車両着座位置(30)に着座し前記車両(10)の長手方向軸線に対して横断方向に移動する乗員(50)の肩部(52)及び骨盤部(58)のうちの1つ以上を受け入れる第1のチャンバ(130、330、530)であって、前記展開状態にある第1のチャンバ(130、330、530)は、前記車両(10)の前記長手方向軸線に対して横断方向に移動する前記乗員(50)の胸腹部領域(56)を受け入れるように配置された内側トロイダル領域(220、420、620)を画定する実質的にトロイダル形状を形成する、第1のチャンバ(130、330、530)と、
前記内側トロイダル領域(220、420、620)を覆うように配置された第1の接触パネル(125、325、525)と、
第2の接触パネルと(327、527)、を備え、
前記第1の接触パネルは、前記第1のチャンバ(130、330、530)の外周部(237、437、637)において、乗員に対向する面で当該第1のチャンバに結合され、
前記第2の接触パネル(327、527)は、前記第1のチャンバ(130、330、530)の前記内側トロイダル領域(220、420、620)の中心部を形成するように配置され、かつ前記第1のチャンバ(130、330、530)に結合されている
ことを特徴とする膨張式エアバッグアセンブリ(100、300、500)。
【請求項2】
前記第1の接触パネル(125、325、525)は、前記第1のチャンバ(130、330、530)の外周部(237、437、637)の全域に渡って結合され、
前記第1のチャンバが膨張した時に、前記第1の接触パネルの半径方向の引張力が生じるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の膨張式エアバッグアセンブリ(100、300、500)。
【請求項3】
前記膨張式エアバッグクッション(110、310、510)は、前記ハウジング(102、302、502)から展開して、前記車両着座位置(30)と車両側壁との間に配置されるように構成されている、請求項1又は2に記載の膨張式エアバッグアセンブリ(100、300、500)。
【請求項4】
前記膨張式エアバッグクッション(110、310、510)の一部分が、前記車両着座位置(30)の前方に展開するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の膨張式エアバッグアセンブリ(100、300、500)。
【請求項5】
前記展開状態では、前記第1の接触パネル(125、325、525)は、前記第1のチャンバ(130、330、530)と前記車両着座位置(30)との間に配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の膨張式エアバッグアセンブリ(100、300、500)。
【請求項6】
前記第1のチャンバ(130、330、530)の外周部(237、437、637)、及び前記第1のチャンバ(130、330、530)の内周部(238、438、638)と前記外周部(237、437、637)との間にある位置のうちの1つにおいて、前記第1の接触パネル(125、325、525)は、前記第1のチャンバ(130、330、530)と結合されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の膨張式エアバッグアセンブリ(100、300、500)。
【請求項7】
前記第1のチャンバ(130、330、530)が膨張すると、前記第1のチャンバ(130、330、530)は、前記第1の接触パネル(125、325、525)に第1の張力を形成し、前記第1の張力は、前記乗員(50)の前記胸腹部領域(56)の移動に対する第1の抵抗を提供するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の膨張式エアバッグアセンブリ(100、300、500)。
【請求項8】
前記第2の接触パネル(327、527)は、前記第1の接触パネル(125、325、525)から外側に、所定の距離だけオフセットして配置される、請求項1~7の何れか1項に記載の膨張式エアバッグアセンブリ(100、300、500)。
【請求項9】
前記第1のチャンバ(130、330、530)が膨張すると、前記第1のチャンバ(130、330、530)は、前記第2の接触パネル(327、527)に第2の張力を形成し、前記第2の張力は、前記乗員(50)の前記胸腹部領域(56)の移動に対する第2の抵抗を提供するように構成されている、請求項1~8の何れか1項に記載の膨張式エアバッグアセンブリ(100、300、500)。
【請求項10】
前記第1のチャンバ(130、330、530)が膨張すると、前記第1のチャンバ(130、330、530)は、前記第1の接触パネル(125、325、525)に第1の張力を形成し、前記第1の張力は、前記乗員(50)の前記胸腹部領域(56)の移動に対する第1の抵抗を提供するように構成され、
前記乗員(50)の前記胸腹部領域(56)の移動に対する抵抗は、移動に対する前記第1の抵抗と移動に対する前記第2の抵抗との組み合わせを含む、請求項9に記載の膨張式エアバッグアセンブリ(100、300、500)。
【請求項11】
前記第1の接触パネル(125、325、525)及び前記第2の接触パネル(327、527)は、前記第1のチャンバ(130、330、530)との組み合わせで、第2のチャンバ(540)を画定する、請求項1~10のいずれか一項に記載の膨張式エアバッグアセンブリ(100、300、500)。
【請求項12】
前記第1の接触パネル(125、325、525)及び前記第2の接触パネル(327、527)のうちの少なくとも1つは、オリフィス(508)を含む、請求項11に記載の膨張式エアバッグアセンブリ(100、300、500)。
【請求項13】
前記膨張式エアバッグクッション(110、310、510)が展開されると、空気が前記第2のチャンバ(540)に引き込まれる、請求項12に記載の膨張式エアバッグアセンブリ(100、300、500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、自動車保護システムの分野に関する。より具体的には、本開示は、衝突事象に応答して展開するように構成されたエアバッグシステムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
本実施形態は、添付図面と併せて、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から、より完全に明らかとなるであろう。添付図面は、典型的な実施形態のみを図示しており、したがって、本開示の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解した上で、実施形態は、添付図面を参照して、具体的にかつ詳細に、記載され説明される。
【0003】
【
図1A】
図1Aは、本開示の実施形態による、膨張式エアバッグアセンブリを有する車両の内部の一部分の正面図である。
【0004】
【
図1B】
図1Bは、
図1Aの膨張式エアバッグアセンブリが展開され少なくとも部分的に膨張している、車両の内部の一部分の正面図である。
【0005】
【
図1C】
図1Cは、
図1A及び
図1Bの膨張式エアバッグアセンブリが展開状態であり、乗員が膨張式エアバッグクッションと組み合っている、車両の内部の一部分の正面図である。
【0006】
【
図1D】
図1Dは、
図1A、
図1B、及び
図1Cの膨張式エアバッグアセンブリが展開状態であり、乗員が膨張式エアバッグクッションと組み合っている、車両の内部の一部分の上面図である。
【0007】
【0008】
【0009】
【
図3A】
図3Aは、本開示の第2の実施形態による、膨張式エアバッグアセンブリを有する車両の内部の一部分の正面図であり、展開され少なくとも部分的に膨張した状態にある膨張式エアバッグアセンブリを示す。
【0010】
【
図3B】
図3Bは、
図3Aの膨張式エアバッグアセンブリが展開状態であり、乗員が膨張式エアバッグクッションと組み合っている、車両の内部の一部分の正面図である。
【0011】
【
図3C】
図3Cは、
図3Aの膨張式エアバッグアセンブリが展開状態であり、
図3Bに対して乗員が膨張式エアバッグクッションと更に組み合っている、車両の内部の一部分の正面図である。
【0012】
【0013】
【0014】
【
図5A】
図5Aは、本開示の第3の実施形態による、膨張式エアバッグアセンブリを有する車両の内部の一部分の正面図であり、展開され少なくとも部分的に膨張した状態にある膨張式エアバッグアセンブリを示す。
【0015】
【
図5B】
図5Bは、
図5Aの膨張式エアバッグアセンブリが展開状態であり、乗員が膨張式エアバッグクッションと組み合っている、車両の内部の一部分の正面図である。
【0016】
【
図5C】
図5Cは、
図5Aの膨張式エアバッグアセンブリが展開状態であり、
図5Bに対して乗員が膨張式エアバッグクッションと更に組み合っている、車両の内部の一部分の正面図である。
【0017】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書の図面において全体的に記載され図示されている実施形態の構成要素が、多種多様な異なる構成で配置及び設計され得ることは、容易に理解されよう。よって、図面に示すような様々な実施形態に関する以下のより詳細な説明は、特許請求されるような本開示の範囲を限定することを意図したものではなく、単に様々な実施形態を表すものである。実施形態の様々な態様が図面に示されているが、図面は、特段に示されない限り、必ずしも縮尺どおりに描かれているわけではない。
【0020】
膨張式エアバッグアセンブリは、衝突事象中の乗員の怪我を低減又は最小化するために広く使用されている。エアバッグモジュールは、これらに限定されないが、ステアリングホイール内、ダッシュボード及び/又はインスツルメントパネル内、車両のルーフレールに隣接するサイドドア又はサイドシート内、頭上位置、又は膝若しくは脚位置に設置されている。本開示は、加齢に伴う健康問題の結果として一部の怪我のタイプ及びモードに骨がより影響を受けやすくなり得る、また側面衝突又は乗員の横方向の移動(例えば、車両の長手方向軸線を横切る)を生じさせる他の事象に巻き込まれた場合に更にそうした影響を受けやすくなり得る高齢の乗員にとって、特に有益な保護を提供し得る。以下の開示において、「エアバッグ」は、一般に、衝突事象中に乗員を保護するために、側面位置において(又は車両着座位置に概ね横方向に隣接する位置において)展開する膨張式エアバッグを指す。
【0021】
取付時には、エアバッグは、典型的には、パッケージ化された状態で(例えば、巻かれた状態で、折り畳まれた状態で、及び/又は、他のやり方で圧縮された状態で)、すなわち、コンパクトな構成で、ハウジングの内部に配置され、カバーの背後にパッケージ化された状態で保持され得る。衝突事象中、インフレータがトリガされ、これにより、エアバッグが膨張ガスで急速に充填される。エアバッグは、パッケージ化された状態から、展開状態へと、すなわち拡張した構成へと、急速に移行することができる。例えば、膨張するエアバッグは、エアバッグカバーを開放することにより(例えば、破裂シームを引き裂くことにより、あるいは、ドア状構造体を開放することにより)、ハウジングから飛び出すことができる。インフレータは、任意の適切なデバイス又はシステムによってトリガしてもよく、また、トリガは、衝突事象中に1つ以上の車両センサに応答するもの及び/又はそのような車両センサによって影響を受けるものであってもよい。
【0022】
本明細書に開示されるエアバッグアセンブリのいくつかの実施形態は、前部座席の乗員を衝撃から保護するのにより好適であり得るが、他の実施形態は、より後部の座席など前部座席以外の座席の乗員に特により好適であり得る。エアバッグアセンブリは、車両内の構造物(例えば、ドアコラム、車両側壁、又は中央コンソール)にぶつかる乗員の衝撃(体-構造物衝撃)の影響を低減することによって、衝突事象中の車両の乗員への怪我を軽減することができる。
【0023】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、特定のタイプの衝突に巻き込まれた乗員に対する、配置、衝撃からの保護、及び/又は安全性の向上をもたらすことができる。例えば、いくつかの実施形態は、車両ドライバー及び/又は助手席側ドアの隣に着席している助手席乗客を衝撃から保護するように構成することができる。特定の実施形態が好都合であることが証明され得る衝突のタイプの例としては、(1)ぶつかった物体が、乗員の車両の構造的長手方向構成要素及び/又はエンジンブロックにかみ合わない衝突、(2)乗員の車両の左又は右のいずれかの長手ビームの外側に主に衝撃力がかかっている衝突、(3)FLEE又はFREE等の衝突変形分類スキームで分類される衝突、(4)乗員の車両のぶつかった箇所が車幅の25%未満である前方衝撃衝突、(5)米国道路安全保険協会(the Insurance Institute for Highway Safety,IIHS)のスモールオーバーラップ前突試験に関して規定されている衝突、(6)米国運輸省道路交通安全局(the National Highway Traffic Safety Administration,NHTSA)の斜め衝撃試験に関して規定されている衝突のうちの1つ以上が挙げられる。
IIHSのスモールオーバーラップ前突試験及びNHTSAの斜め衝撃試験の条件は、IIHS発行の「Small Overlap Frontal Crashworthiness Evaluation Crash Test Protocol」(第2版)(2012年12月)、及びSaunders,J.、Craig,M.、Parent,D.著「Moving Deformable Barrier Test Procedure for Evaluating Small Overlap/Oblique Crashes」(SAE Int.J.Commer.Veh.5(1):172-195(2012))に開示されている。本明細書で使用するとき、衝突(衝突(crash)、衝撃など)を説明するために使用される「斜め」という用語は、前述の衝突のいずれか、及び衝撃の結果として乗員の移動方向が前方方向又は成分と横方向又は成分との両方を含む他の任意の衝突を包含することが意図される。
本開示では、斜め衝突中又は斜め衝突後の乗員の衝突後軌跡の長手方向成分は、車両前方方向に向けることができる。
【0024】
図1Aは、本開示の実施形態による、膨張式エアバッグアセンブリ100を有する車両10の内部の一部分の正面図である。側壁16(例えば、ドア)及び窓18が参考のために示されている。車両10は、少なくとも1つの車両着座位置30を含む。
図1Aの車両着座位置30は、シート42、バックシート44、及び拘束ハーネス46(例えば、シートベルト)を含むシートアセンブリ40によって画定されることができる。乗員50が、シートアセンブリ40内に示されており、乗員50の頭部51、肩部52、胸部54、胸部中心55、胸腹部領域56、及び骨盤部58が、参考のために示されている。膨張式エアバッグアセンブリ100が、バックシート44に取り付けられるか、又はそうでなければ結合することができる。
【0025】
膨張式エアバッグアセンブリ100は、ハウジング102及びインフレータ104を備える。一実施形態では、ハウジング102は、バックシート44の内部部分に取り付けてもよい。インフレータ104は、ハウジング102に結合してもよく、また部分的又は完全にハウジング102内に配置してもよい。
【0026】
図1A及び他の図は、使用される拘束ハーネス46を付けた乗員50を示す場合があるが、膨張式エアバッグアセンブリ100の動作は、拘束ハーネス46から独立しており、決して拘束ハーネス46に依存していない。
【0027】
図1Bは、車両10の内部の一部分の正面図であり、展開され少なくとも部分的に膨張している膨張式エアバッグアセンブリ100を示している。車両10の側壁16(例えば、ドア又は他のパネル)及び窓18が参考のために示されている。車両着座位置30と、シート42、バックシート44、及び拘束ハーネス46を含むシートアセンブリ40とが、参考のために示されている。乗員50は、膨張式エアバッグアセンブリ100と組み合う前の、シートアセンブリ40に着座した状態で示されている。また、肩部52、胸部54、胸部中心55、胸腹部領域56、及び骨盤部58が、参考のために示されている。
【0028】
膨張式エアバッグアセンブリ100は、膨張式エアバッグクッション110を含む。膨張式エアバッグクッション110は、インフレータポート(図示されていないが、例えば、
図2Aの206を参照)を介して膨張圧力まで膨張されることになるチャンバ130を備える。膨張式エアバッグアセンブリ100は、例えば、衝突事象に巻き込まれている車両10を検出する1つ以上のセンサによって作動されるインフレータ104の動作によって展開することができる。インフレータ104は、インフレータポート206を介して膨張式エアバッグクッション110に膨張ガス160を提供することができ、それによって膨張式エアバッグクッション110がハウジング102から展開して膨張を開始することができる。膨張式エアバッグクッション110は、バックシート44のハウジング102から前方に、車両着座位置30に隣接する位置まで配置されるように膨張することができ、より具体的には一実施形態では、車両着座位置30と車両10の側壁16との間に膨張することができる。
【0029】
膨張式エアバッグクッション110は、膨張式エアバッグクッション110が展開されたときに特定の位置に配置される領域を含んでもよい。それらの領域は、展開状態において乗員50の特定の部分を受け入れて拘束するように位置付ることができる。膨張式エアバッグクッション110は、肩部52を拘束するための上部領域134と、骨盤部58を拘束するための下部領域136とを備え得る。膨張式エアバッグクッション110は、乗員50の胸腹部領域56を拘束するための中央領域135を更に備え得る。上部領域134及び下部領域136は、乗員50の特定の部分、例えば胸腹部領域56との組み合いを回避するように構成することができる。このような上部領域134及び下部領域136による乗員の特定の部分の回避は、エアバッグクッション110と乗員50との組み合いを制限及び/又は低減し、それによって、衝突中の乗員50に対するエアバッグクッション110の衝撃を制限及び/又は低減することができる。上部領域134及び下部領域136は、チャンバ130の膨張部分であってもよい。
【0030】
また、膨張式エアバッグクッション110は、膨張式エアバッグクッション110が展開されたときに、乗員50を拘束しない位置に配置することのできる領域を含んでもよい。膨張式エアバッグクッション110は、バックシート44と側壁16との間に配置されることになる後部領域131を備えてもよい。このように、後部領域131は、衝突中に乗員50の側方向かつ後方に配置されるように位置付けることができる。膨張式エアバッグクッション110は、乗員50の前方に配置されることになる前部領域132を備えてもよい。後部領域131及び前部領域132は、チャンバ130の膨張部分であってもよい。
図1Bにおいて、後部領域131は、前部領域132の後ろに隠れている。
【0031】
中央領域135は、領域同士(例えば、上部領域134、下部領域136、後部領域131、及び前部領域132)の配置によって形成又はそうでなければ画定することができる。中央領域135は、膨張式クッション110によって形成された空隙、隙間、又は開口とすることができ、衝突事象中などエアバッグクッション110との組み合いの際に乗員50の領域との接触を回避するように構成されている。
【0032】
膨張式エアバッグクッション110は、チャンバ130に結合された接触パネル125又はセイルを備えてもよい。接触パネル125は、
図1Bに示されるように、乗員50の隣のエアバッグクッション110の横方向側面でチャンバ130に結合してもよい。接触パネル125は、接触パネル125の少なくとも一部分がチャンバ130の少なくとも一部分と乗員50との間に配置されるように位置付けてもよい。いくつかの実施形態では、接触パネル125は、接触パネル125が乗員50とチャンバ130全体との間に配置されるように位置付けてもよい。接触パネル125は、接触パネル125の周囲の一部に沿って、又は接触パネル125の全周囲に沿って、チャンバ130に結合してもよい。接触パネル125は、チャンバ130の中央領域135を横切って配置してもよい。
【0033】
チャンバ130内の膨張圧力は、乗員50が膨張式エアバッグクッション110と組み合うと、移動に対する比較的高い抵抗172を提供して、乗員50の一部分の移動を(例えば、対抗する力を加える)打ち消す。移動に対する高い抵抗172は、膨張圧力によって規定することができる。チャンバ130の上部領域134及び下部領域136は、移動に対する高い抵抗172を有することができる。
【0034】
膨張式エアバッグクッション110は、チャンバ130が膨張すると、接触パネル125に張力を形成するように構成してもよい。より具体的には、チャンバ130は、膨張すると拡張し、第1の接触パネル125とチャンバ130との間の結合部の対向する部分同士を分離させて、第1の接触パネル125に張力をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、チャンバ130は膨張すると拡張し、接触パネル125の全周囲に沿って半径方向の引張力を形成することができ、この引張力が、さらに接触パネル125における半径方向の張力を形成することができる。
【0035】
接触パネル125における張力は、移動に対するより低い抵抗174を規定し、中央領域135における乗員50の一部分の移動を打ち消す。中央領域135は、膨張式エアバッグクッション110の非膨張領域であってもよく、したがって膨張ガス160を含まなくてよい。換言すれば、中央領域135を横切るように配置された接触パネル125の両面にかかる圧力は、周囲圧力であり得る。したがって、膨張式エアバッグクッション110は、乗員50の胸腹部領域56を、中央領域135に提供される移動に対するより低い抵抗174と共働させることができる。
【0036】
乗員50の肩部52及び骨盤部58の両方は、胸腹部領域56(名称、胸郭)と比べて、骨構造からのより大きな一体強度を有することができる。特に、高齢者乗員50の胸腹部領域56は、より脆弱であり得るが、これは、高齢者乗員50が、年齢に伴う健康問題の結果として、より脆性であり得るか又は骨折しやすい骨を有するためである。上部領域134及び下部領域136によって提供される移動に対する高い抵抗172で肩52及び骨盤部58を受け入れ、中央領域135によって提供される移動に対するより低い抵抗174で胸腹部領域56を受け入れるように構成された膨張式エアバッグクッション110を用いれば、一般には乗員50に対する、具体的には胸腹部領域56に対する衝撃を低減させるように、乗員50が、膨張式エアバッグクッション110によって受け入れられ、支持される。
【0037】
図1Cは、
図1A-
図1Bの膨張式エアバッグアセンブリ100が展開状態かつ少なくとも部分的に膨張状態であり、乗員50が膨張式エアバッグクッション110と組み合っていることを示す、車両10の内部の一部分の正面図である。乗員50が、シートアセンブリ40内で車両着座位置30に示されている。乗員50の胸部54、胸部中心55、胸腹部領域56、及び骨盤部58が、シートアセンブリ40のシート42、バックシート44、及び拘束ハーネス46と同様に、参考のために示されている。乗員50が、横方向170に移動して、膨張式エアバッグクッション110と組み合っていることが示されている。より具体的には、胸部中心55が、(
図1Bに対して)横方向170にシフトしている。前部領域132は、乗員50の側方かつ前方に配置することができ、後部領域131は、乗員50の側方かつ後方に配置することができる。乗員50の肩部52は、チャンバ130の上部領域134に組み合っており、乗員50の骨盤部58は、チャンバ130の下部領域136に組み合っており、乗員50の胸腹部領域56は、中央領域135に組み合っている。換言すれば、最初にかつ同時に又はほぼ同時に、肩部52が、上部領域134の移動に対する高い抵抗172に関与することができ、骨盤部58が、下部領域136の移動に対する高い抵抗172に関与することができ、胸腹部領域56が、中央領域135の移動に対するより低い抵抗174に関与することができる。
【0038】
車両10の側壁16(例えばドア)は、反応面として機能し、膨張式エアバッグクッション110のチャンバ130に対する支持178を提供することができる。チャンバ130は、ライドダウン中に、上部領域134及び下部領域136がそれぞれ肩部52及び骨盤部58を支持するように適切に配置されたままとなることを確実にするのに役立ち得る。また、チャンバ130は、中央領域135が乗員50の胸腹部領域56を拘束するように適切に配置されたままとなること、及びライドダウン中に接触パネル125が張力を維持することを確実にするのに役立ち得る。
【0039】
図1Dは、
図1A~
図1Cの膨張式エアバッグアセンブリ100が展開状態かつ少なくとも部分的に膨張状態であり、乗員50が膨張式エアバッグクッション110と組み合っている(斜め衝突事象中の場合であり得る)ことを示す、車両10の内部の一部分の上面図である。このような斜め衝突の場合、乗員は、斜め方向171、すなわち、前方かつ側方に移動し得る。斜め衝突では、前部領域132が、乗員50を拘束し、乗員50の一部分、特に、頭部51、肩部52、胸部54、胸腹中心55、胸腹部領域56、及び骨盤部58の移動に対する高い抵抗172を提供することができる。また、斜め衝撃のいくつかの例では、膨張式エアバッグクッション110が、胸腹部領域56の移動に対してより低い抵抗174を提供することができる。
【0040】
図2Aは、非膨張状態にある
図1A~
図1Cの膨張式エアバッグクッション110の側面の側面図である。
図2Bは、膨張式エアバッグクッション110の分解斜視図である。
図2A及び
図2Bを参照すると、膨張式エアバッグクッション110は、第1の布地パネル222及び第2の布地パネル223を含み得る。図示した実施形態では、第1の布地パネル222及び第2の布地パネル223が、チャンバ130を形成する。第1の布地パネル222及び第2の布地パネル223は、単一の一体型布地パネルから形成してもよく、布地パネルは、折り目226に沿って折られ、外側結合部240及び内側結合部241に沿って結合される。外側結合部240及び内側結合部241はそれぞれ、連続シームから形成してもよい。第1の布地パネル222及び第2の布地パネル223は、外側結合部240の一部分に沿って共に封止してもよい。同様に、第1の布地パネル222及び第2の布地パネル223は、内側結合部241の一部分に沿って共に封止してもよい。いくつかの実施形態では、第1の布地パネル222及び第2の布地パネル223は、外側結合部240の全体及び/又は内側結合部241の全体に沿って共に封止してもよい。いくつかの実施形態では、外側結合部240及び/又は内側結合部241は、膨張ガス160の設備通気のために非封止部分を備えてもよい。シームは、縫い付け、接着剤、高周波溶接、若しくはテーピング、又は任意の他の好適な方法、あるいはこれらの組み合わせによって形成してもよい。
【0041】
チャンバ130は、膨張すると、内側トロイダル領域220を画定する一般的なトロイダル形状を形成することができる。内側トロイダル領域220は、中央領域135を含み得る。また、チャンバ130のトロイダル形状は、前部領域132、後部領域131、上部領域134、及び下部領域136を画定することができる。チャンバ130は、トロイダル形状の外側(例えば、第1の布地パネル222及び第2の布地パネル223のうちの1つ以上の外面上の膨張式エアバッグクッション110の最外周部)の周囲に延びている外周部237を含み得る。いくつかの実施形態では、布地パネル222、223のうちの1つ以上の一部分は、(チャンバ130の)外周部237及び外側結合部240を越えて延びている。チャンバ130はまた、トロイダル形状の内側領域220の周囲に延びている内周部238(例えば、第1の布地パネル222及び第2の布地パネル223のうちの1つ以上の外面上のチャンバ130のトロイダル形状の最内周部)を含み得る。いくつかの実施形態では、外周部237は、外側結合部240によって画定してもよく、内周部238は、内側結合部241によって画定してもよい。外周部237及び内周部238は、チャンバ130の横方向側面を画定してもよい。チャンバ130の乗員に面する側は、チャンバ130の乗員側の、外周部237と内周部238との間に延びているチャンバ130の外面の部分によって画定することができる。同様に、チャンバ130の反対側の側壁に面する側は、車両側壁16に面するチャンバ130の側面上の、外周部237と内周部238との間に延びているチャンバ130の外面の部分によって画定することができる。いくつかの実施形態では、膨張式エアバッグクッション110及び/又はチャンバ130は楕円形であってもよく、1つの断面寸法が垂直断面寸法よりも大きい。図示した実施形態では、第1の布地パネル222及び第2の布地パネル223は、内側領域220を横切るようには配置されず、内側トロイダル領域220を通る開口を残してもよい。インフレータポート206は、第1の布地パネル122及び第2の布地パネル223のうちの少なくとも1つを通過して、チャンバ130の内側に至る開口部を含み得る。換言すれば、インフレータポート206が、膨張ガスをチャンバ130に入れるように構成することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、チャンバ130は排気ベント207を備えてもよい。排気ベント207は、膨張したエアバッグクッション110との衝撃時の乗員のライドダウンを促進することができる。
【0043】
膨張式エアバッグクッション110は、第1のチャンバ130に結合された第3の布地パネル224を備えてもよい。第3の布地パネル224は、外側結合部240又は内側結合部241において第1のチャンバ130に結合することができる。いくつかの実施形態では、第3の布地パネル224は、外側結合部240と内側結合部241との間の位置で第1の布地パネル222に結合してもよい。第3の布地パネル224は、接触パネル125を画定し得る。いくつかの実施形態では、第3の布地パネル224の周囲の一部又は全周囲は、外側結合部240又は内側結合部241において、第1の布地パネル222及び第2の布地パネル223の一方又は両方に結合してもよい。いくつかの実施形態では、第1の布地パネル222、第2の布地パネル223、及び第3の布地パネル224は、共通の外周を有してもよい。いくつかの実施形態では、外側結合部240は、第1の布地パネル222、第2の布地パネル223、及び第3の布地パネル224を共に結合してもよい。他の実施形態では、第1の布地パネル222及び第2の布地パネル223の一方又は両方は、内側トロイダル120領域を横切って配置され、接触パネル125を形成してもよく、この実施形態では、第3の布地パネル224は省略される。
【0044】
図3A~
図3Cは、膨張式エアバッグアセンブリ300の実施形態の正面図であり、
図4A及び
図4Bは側面図である。この実施形態は、上述した膨張式エアバッグアセンブリ100に、ある程度の態様で類似している。したがって、同様の特徴は、同様の参照番号により示されており、先頭の桁は「3」に増分される。例えば、膨張式エアバッグアセンブリ300は、いくつかの態様で、
図1A~
図2Bの膨張式エアバッグクッション110に類似し得る膨張式エアバッグクッション310を含む。よって、同様に識別された特徴点に関して上述した関連する開示は、以下においては繰り返さない。更に、
図1A~
図1C及び
図2A~
図2Bに示される膨張式エアバッグアセンブリ100及び関連構成要素に関する特定の特徴点は、図示されなかったり、図面中の参照番号によって示されなかったり、以下の説明において具体的に説明されなかったりすることがある。しかしながら、それらの特徴点は、他の実施形態において図示した特徴点及び/又はそのような実施形態に関して説明した特徴点と、明らかに同じであってもよく、又は実質的に同じであってもよい。したがって、そのような特徴点に関連する説明は、
図3A~
図3C及び
図4A~
図4Bに示す膨張式エアバッグアセンブリ300及び関連構成要素の特徴点に対して、同等に適用することができる。
図1A~
図1C及び
図2A~
図2Bに示される膨張式エアバッグアセンブリ100及び関連構成要素に関して説明される、特徴点の任意の好適な組み合わせ及びその変形例は、
図3A~
図3C及び
図4A~
図4Bの膨張式エアバッグアセンブリ300関連構成要素と共に使用することができ、逆もまた同様である。この開示のパターンは、後続の図に示され、以下に記載される更なる実施形態に等しく適用され、先頭の桁は更に増分される。
図3Aは、膨張式エアバッグアセンブリ300が展開され少なくとも部分的に膨張している、車両10の内部の一部分の正面図である。車両10の側壁16(例えば、ドア)及び窓18が参考のために示されている。車両着座位置30と、シート42、バックシート44、及び拘束ハーネス46を含むシートアセンブリ40とが、参考のために示されている。乗員50は、膨張式エアバッグアセンブリ300と組み合う前の、シートアセンブリ40に着座した状態で示されている。肩部52、胸部54、胸部中心55、胸腹部領域56、及び骨盤部58が、参考のために示されている。膨張式エアバッグアセンブリ300は、ハウジング302及びインフレータ304を備える。一実施形態では、ハウジング302は、バックシート44(例えば、バックシート44の内部)に取り付けてもよい。インフレータ304は、ハウジング302に結合してもよく、部分的又は完全にハウジング302内に配置してもよい。
【0045】
膨張式エアバッグアセンブリ300は、膨張式エアバッグクッション310を含む。膨張式エアバッグクッション310は、インフレータポート(例えば、
図4Aのインフレータポート406を参照)を介して膨張圧力まで膨張されることになるチャンバ330を備える。膨張式エアバッグアセンブリ300は、例えば、衝突事象に巻き込まれている車両10を検出する1つ以上のセンサによって作動されるインフレータ304の動作によって展開される。インフレータ304は、インフレータポート406を介して膨張式エアバッグクッション310に膨張ガス360を提供することができ、それによって膨張式エアバッグクッション310がハウジング302から展開して膨張を開始することができる。膨張式エアバッグクッション310は、バックシート44のハウジング302から前方に、車両着座位置30に隣接する位置まで配置されるように膨張することができ、より具体的には一実施形態では、車両着座位置30と車両10の側壁16との間に膨張することができる。
【0046】
膨張式エアバッグクッション310は、膨張式エアバッグクッション310が展開されるときに、特定の位置に配置されることになる領域を含んでもよい。それらの領域は、展開状態において乗員50の特定の部分を受け入れて拘束するように位置付ることができる。膨張式エアバッグクッション310は、乗員50の肩部52を拘束するための上部領域334と、乗員50の骨盤部58を拘束するための下部領域336とを備え得る。膨張式エアバッグクッション310は、乗員50の胸腹部領域56を拘束するための中央領域335を更に備え得る。上部領域334及び下部領域336は、チャンバ330の一部分であってもよい。
【0047】
また、膨張式エアバッグクッション310は、膨張式エアバッグクッション310が展開されたときに、乗員50の一部分を拘束しない位置に配置される領域を含んでもよい。膨張式エアバッグクッション310は、バックシート44と側壁16との間に配置されることになる後部領域331を備えてもよい。このように、後部領域331は、乗員50の側方かつ後方に配置することができる。膨張式エアバッグクッション310は、乗員50の側方かつ前方に配置されることになる前部領域332を備えてもよい。
【0048】
後部領域331及び前部領域332は、チャンバ330の一部分であってもよい。
図3Aにおいて、後部領域331は、前部領域332の後ろに隠れている。
【0049】
膨張式エアバッグクッション310は、チャンバ330に結合され、チャンバ330の中央領域335を横切って配置された第1の接触パネル325又はセイルを備える。第1の接触パネル325は、
図3Aに示されるように、乗員50の隣のエアバッグクッション310の横方向側面でチャンバ330に結合してもよい。接触パネル325は、接触パネル325の少なくとも一部分がチャンバ330の少なくとも一部分と乗員50との間に配置されるように位置付けてもよい。いくつかの実施形態では、接触パネル325は、接触パネル325が乗員50とチャンバ330全体との間に配置されるように位置付けてもよい。第1の接触パネル325は、第1の接触パネル325の周囲の一部又は第1の接触パネル325の全周囲に沿って、チャンバ330に結合してもよい。
【0050】
また、膨張式エアバッグクッション310は、第2の接触パネル327を備える。第2の接触パネル327は、第1の接触パネル325からオフセットして配置してもよく、いくつかの実施形態では、第2の接触パネル327は、第1の接触パネル325と車両10の側壁16との間に配置してもよい。第2の接触パネル327は、第2の接触パネル327の周囲の一部又は第2の接触パネル327の全周囲に沿って、チャンバ330に結合してもよい。
【0051】
チャンバ330内の膨張圧力は、乗員が膨張式エアバッグクッション310と組み合うと、移動に対する比較的高い抵抗372を規定して、乗員50の一部分の移動を打ち消す(例えば、対抗する力を加える)ことができる。移動に対する高い抵抗372は、膨張圧力によって規定される。チャンバ330の上部領域334及び下部領域336は、乗員50の移動に対抗する、移動に対する高い抵抗372を提供する。
【0052】
膨張式エアバッグクッション310は、チャンバ330が膨張すると、第1の接触パネル325及び第2の接触パネル327に張力を形成するように構成してもよい。より具体的には、チャンバ330は、膨張すると拡張し、第1の接触パネル325とチャンバ330との間の結合部の対向する部分同士を分離させて、第1の接触パネル325に張力をもたらすことができる。同様に、チャンバ330は、膨張すると拡張し、第2の接触パネル327とチャンバ330との間の結合部の対向する部分同士を分離させて、第2の接触パネル327に張力をもたらしてもよい。いくつかの実施形態では、チャンバ330は膨張すると拡張し、第1の接触パネル325の全周囲及び第2の接触パネル327の全周囲に沿って半径方向の引張力を形成し、この引張力が、第1の接触パネル325及び第2の接触パネル327における半径方向の張力を形成する。
【0053】
第1の接触パネル325における張力は、乗員50の一部分の移動に対して第1のより低い抵抗374を規定し得る。したがって、膨張式エアバッグクッション310は、乗員50の胸腹部領域56を、中央領域335で提供される移動に対する第1のより低い抵抗374と共働させることができる。第2の接触パネル327における張力は、乗員50の一部分の移動に対して第2のより低い抵抗376を規定し得る。場合によっては、膨張式エアバッグクッション310は、乗員50の胸腹部領域56を、中央領域335で提供される、移動に対する第2のより低い抵抗376と共働させることができる。
【0054】
図3Bは、膨張式エアバッグアセンブリ300が展開状態かつ少なくとも部分的に膨張状態であり、乗員50が膨張式エアバッグクッション310と組み合っていることを示す、車両10の内部の一部分の正面図である。乗員50が、シートアセンブリ40内で車両着座位置30に示されている。乗員50の胸部54、胸部中心55、胸腹部領域56、及び骨盤部58が、シートアセンブリ40のシート42、バックシート44、及び拘束ハーネス46と同様に、参考のために示されている。乗員50が、第1の乗員位置350まで横方向170に移動しており、膨張式エアバッグクッション310と組み合っていることが示されている。より具体的には、胸部中心55が、(
図3Aに対して)横方向170にシフトしている。前部領域332は、乗員50の側方かつ前方に配置することができ、後部領域331は、乗員50の側方かつ後方に配置することができる。乗員50の肩部52は、チャンバ330の上部領域334に組み合っており、乗員50の骨盤部58は、チャンバ330の下部領域336に組み合っており、乗員50の胸腹部領域56は中央領域335に組み合っている。換言すれば、最初にかつ同時に又はほぼ同時に、肩部52が、上部領域334によって提供される移動に対する高い抵抗372の領域に組み合うことができ、骨盤部58が、下部領域336によって提供される移動に対する高い抵抗372の領域に組み合うことができ、胸腹部領域56が、中央領域335における移動に対するより低い抵抗374に組み合うことができる。
【0055】
図3Cを参照すると、衝突事象が継続すると、乗員50は、横方向170に(
図3Bと比較して)第2の乗員位置352まで更に移動している。胸腹部領域56は、中央領域335に更に組み合っており、第1の接触パネル325によって提供される移動に対する第1のより低い抵抗374によって更に支持されている。場合によっては、乗員50が第2の乗員位置352にあるとき、乗員50の胸腹部領域56は、引き続き第2の接触パネル327にも組み合ってよい。乗員50の胸腹部領域56は、第1の接触パネル325に更に組み合い、加えて第2の接触パネル327にも組み合う。したがって、第2の接触パネル327が、乗員50の胸腹部領域56に対して第2のより低い抵抗376を提供することができる。場合によっては、胸腹部領域56の移動に対する全抵抗は、第1の接触パネル325によって提供される、移動に対する第1のより低い抵抗374と、第2の接触パネル327によって提供される、移動に対する第2のより低い抵抗376との組み合わせを含むことができる。
図1Dに関して同様に上記したように、斜め衝突中、前部領域332は、乗員50を拘束し、乗員50の一部分、特に、頭部51、肩部52、胸部54、胸腹中心55、胸腹部領域56、及び骨盤部58の移動に対する高い抵抗372を提供することができる。また、斜め衝突のいくつかの例では、膨張式エアバッグクッション310は、胸腹部領域56に、移動に対する第1のより低い抵抗374及び/又は移動に対する第2のより低い抵抗376を提供することができる。
【0056】
図4Aは、非膨張状態にある
図3A~
図3Cの膨張式エアバッグクッション310の側面の側面図である。
図4Bは、膨張式エアバッグクッション310の分解斜視図である。
図4A及び
図4Bを参照すると、膨張式エアバッグクッション310は、第1の布地パネル422及び第2の布地パネル423を含み得る。一実施形態では、第1の布地パネル422及び第2の布地パネル423が、チャンバ330を形成し得る。第1の布地パネル422及び第2の布地パネル423は、単一の一体型布地パネルから形成してもよく、布地パネルは、折り目426に沿って折られ、外側結合部440及び内側結合部441に沿って結合される。外側結合部440及び内側結合部441はそれぞれ、連続シームから形成してもよい。第1の布地パネル422及び第2の布地パネル423は、外側結合部440の一部分に沿って共に封止してもよい。同様に、第1の布地パネル422及び第2の布地パネル423は、内側結合部441の一部分に沿って共に封止してもよい。いくつかの実施形態では、第1の布地パネル422及び第2の布地パネル423は、外側結合部440の全体及び/又は内側結合部441の全体に沿って共に封止してもよい。いくつかの実施形態では、外側結合部440及び/又は内側結合部441は、膨張ガス360の通気設備のために非封止部分を備えてもよい。シームは、縫い付け、接着剤、高周波溶接、若しくはテーピング、又は任意の他の好適な方法、あるいはこれらの組み合わせによって形成してもよい。
【0057】
チャンバ330は、膨張すると、内側トロイダル領域420を画定する一般的なトロイダル形状を形成することができる。内側トロイダル領域420は、中央領域335を含み得る。また、チャンバ330のトロイダル形状は、
図4Aに示されるように、前部領域332、後部領域331、上部領域334、及び下部領域336を画定し得る。チャンバ330は、トロイダル形状の外側の周囲に延びている外周部437を含み得る。また、チャンバ330は、トロイダル形状の内側領域420の周囲に延びている内周部438を含み得る。いくつかの実施形態では、外周部437は、外側結合部440によって画定してもよく、内周部438は、内側結合部441によって画定してもよい。いくつかの実施形態では、膨張式エアバッグクッション310及び/又はチャンバ330は楕円形であってもよく、1つの断面寸法が垂直断面寸法よりも大きい。図示した実施形態では、第1の布地パネル422及び第2の布地パネル423の一方又は両方は、内側領域420を横切って配置することができ、第2の接触パネル327を画定する。インフレータポート406は、第1の布地パネル422又は第2の布地パネル423を通過して、チャンバ330の内部に至る開口部を含み得る。換言すれば、インフレータポート406は、膨張ガスをチャンバ330に入れるように構成することができる。
【0058】
膨張式エアバッグクッション310は、第3の布地パネル424を含み得る。第3の布地パネル424は、第1の接触パネル325を含むか、又はそうでなければ画定することができる。第3の布地パネル424は、外側結合部440において第1のチャンバ330に結合してもよい。他の実施形態では、第3の布地区画424は、代替的に又は追加的に、内側結合部441において第1のチャンバ330に結合してもよい。いくつかの実施形態では、第3の布地パネル424は、外側結合部440と内側結合部441との間の位置で第1の布地パネル422に結合してもよい。第3の布地パネル424の周囲の一部又は第3の布地パネル424の全周囲は、外側結合部440又は内側結合部441において、第1の布地パネル422及び第2の布地パネル423の一方又は両方に結合してもよい。いくつかの実施形態では、第1の布地パネル422、第2の布地パネル423、及び第3の布地パネル424は、共通の外周を有してもよい。いくつかの実施形態では、外側結合部440は、第1の布地パネル422、第2の布地パネル423、及び第3の布地パネル424を共に結合してもよい。
【0059】
第1の布地パネル422及び第2の布地パネル423の一方又は両方は、内側トロイダル領域420を横切って配置することができ、第2の接触パネル327を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1の布地パネル422及び第2の布地パネル423の一方又は両方の一部分だけを、内側トロイダル領域420を横切って配置することができ、第2の接触パネル327を含んでもよい。更に他の実施形態では、別個の布地パネルを、第1の布地パネル422及び第2の布地パネル423の一方又は両方に結合され、内側トロイダル領域420を横切って配置してもよく、この別個の布地パネルが、第2の接触パネル327を含む。
【0060】
図5Aは、膨張式エアバッグアセンブリ500が展開され少なくとも部分的に膨張している、車両10の内部の一部分の正面図である。車両10の側壁16(例えば、ドア)及び窓18が参考のために示されている。車両着座位置30と、シート42、バックシート44、及び拘束ハーネス46を含むシートアセンブリ40とが、参考のために示されている。乗員50は、膨張式エアバッグアセンブリ500と係合する前の、シートアセンブリ40に着座した状態で示されている。また、肩部52、胸部54、胸部中心55、胸腹部領域56、及び骨盤部58が、参考のために示されている。膨張式エアバッグアセンブリ500は、ハウジング502及びインフレータ504を備える。一実施形態では、ハウジング502は、バックシート44に(例えば、バックシート44の内部の位置に)取り付けることができる。インフレータ504は、ハウジング502に結合することができる、部分的又は完全にハウジング502内に配置してもよい。
【0061】
膨張式エアバッグアセンブリ500は、膨張式エアバッグクッション510を含む。膨張式エアバッグクッション510は、インフレータポート(例えば、
図6Aのインフレータポート606を参照)を介して膨張圧力まで膨張されることになる第1のチャンバ530を備える。膨張式エアバッグアセンブリ500は、例えば、衝突事象に巻き込まれている車両10を検出することよって作動されるインフレータ504の動作によって展開することができる。インフレータ504は、インフレータポート606を介して膨張式エアバッグクッション510に膨張ガス560を提供することができ、それによって膨張式エアバッグクッション510がハウジング502から展開して膨張を開始することができる。膨張式エアバッグクッション510は、バックシート44のハウジング502から前方に、車両着座位置30に隣接する位置まで配置されるように膨張することができ、より具体的には一実施形態では、車両着座位置30と車両10の側壁16との間に膨張することができる。
【0062】
膨張式エアバッグクッション510は、膨張式エアバッグクッション510が展開されるときに、特定の位置に配置されることになる領域を含んでもよい。それらの領域は、乗員50の特定の部分を受け入れて拘束するための位置まで展開するように構成することができる。膨張式エアバッグクッション510は、乗員50の肩部52を拘束するための上部領域534と、乗員50の骨盤部58を拘束するための下部領域536とを備え得る。膨張式エアバッグクッション510は、乗員50の胸腹部領域56を拘束するための中央領域535を更に備え得る。上部領域534及び下部領域536は、第1のチャンバ530の膨張部分であってもよい。
【0063】
また、膨張式エアバッグクッション510は、膨張式エアバッグクッション510が展開されたときに、乗員50の一部分を拘束しないような位置に配置される領域を含んでもよい。膨張式エアバッグクッション510は、バックシート44と側壁16との間でバックシート44の側方に配置される後部領域531を備えてもよい。このように、後部領域531は、乗員50の側方かつ後方に配置することができる。膨張式エアバッグクッション510は、乗員50の側方かつ前方に配置される前部領域532を備えてもよい。後部領域531及び前部領域532は、第1のチャンバ530の一部分であってもよい。
図5Aにおいて、後部領域531は、前部領域532の後ろに隠れている。
【0064】
膨張式エアバッグクッション510は、第1の接触パネル525又はセイルを備え、この第1の接触パネルは、第1のチャンバ530に結合され、中央領域535を横切って配置される。第1の接触パネル525は、
図5Aに示されるように、乗員50に隣接する側で第1のチャンバ530に結合してもよい。接触パネル525は、接触パネル525の少なくとも一部分が第1のチャンバ530の少なくとも一部分と乗員50との間に配置されるように位置付けてもよい。いくつかの実施形態では、接触パネル125は、接触パネル525が乗員50と第1のチャンバ530全体との間に配置されるように位置付けてもよい。第1の接触パネル525は、第1の接触パネル525の周囲に沿って第1のチャンバ530に結合してもよい。第1の接触パネル525と第1のチャンバ530との間の結合部は、結合部の少なくとも一部に沿って封止部を含んでもよい。いくつかの実施形態では、結合部は、結合部全体に沿って封止部を形成してもよい。いくつかの実施形態では、結合部は、流体の通過を可能にするように構成された非封止部分を含んでもよい。
【0065】
膨張式エアバッグクッション510は、第2の接触パネル527を備え、この第2の接触パネルは、第1のチャンバ530に結合され、中央領域535を横切って配置さる。第2の接触パネル527は、第1の接触パネル525からオフセットして、第1の接触パネル525と車両10の側壁16との間に配置される。第2の接触パネル527は、第2の接触パネル527の周囲に沿って第1のチャンバ530に結合してもよい。第2の接触パネル527と第1のチャンバ530との間の結合部は、結合部の少なくとも一部に沿って封止部を含んでもよい。いくつかの実施形態では、結合部は、結合部全体に沿って封止部を形成してもよい。いくつかの実施形態では、結合部は、流体の通過を可能にするように構成された非封止部分を含んでもよい。
【0066】
第1のチャンバ530内の膨張圧力は、乗員が膨張式エアバッグクッション510と組み合うと、移動に対する比較的高い抵抗572を規定して、乗員50の一部分の移動を打ち消す(例えば、対抗する力を加える)ことができる。移動に対する高い抵抗572は、主に膨張圧力によって規定され又はそうでなければ提供される。第1のチャンバ530の上部領域534及び下部領域536は、移動に対する高い抵抗572を含み得る。
【0067】
膨張式エアバッグクッション510は、第1のチャンバ530が膨張すると、第1の接触パネル525及び第2の接触パネル527に張力を形成するように構成してもよい。より具体的には、第1のチャンバ530は膨張すると拡張し、第1の接触パネル525と第1のチャンバ530との間の結合部の対向する部分同士を分離させて、第1の接触パネル525に張力をもたらすことができる。同様に、第1のチャンバ530は、膨張すると拡張し、第2の接触パネル527と第1のチャンバ530との間の結合部の対向する部分同士を分離させて、第2の接触パネル527に張力をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、第1のチャンバ530は膨張すると拡張し、第1の接触パネル525及び第2の接触パネル527の周囲に沿って半径方向の引張力を生成し得、これが、第1の接触パネル525における半径方向の張力及び第2の接触パネル527における半径方向の張力を生成し得る。第1の接触パネル525における張力は、中央領域535での拘束時に乗員50の一部分の移動に対する第1のより低い抵抗574を主に規定し得る。したがって、膨張式エアバッグクッション510は、乗員50の胸腹部領域56を、中央領域535で提供される、移動に対する第1のより低い抵抗574と組み合わせることができる。
【0068】
第2の接触パネル527における張力は、中央領域535での係合時に乗員50の一部分の移動に対する第2のより低い抵抗576を主に規定し得る。したがって、膨張式エアバッグクッション510は、乗員50の胸腹部領域56を、中央領域535で提供される、移動に対する第2のより低い抵抗576と組み合わせることができる。
【0069】
第1の接触パネル525及び第2の接触パネル527は、第1のチャンバ530との組み合わせで、第2のチャンバ540を形成し、第1の接触パネル525と第2の接触パネル527とが、第2のチャンバ540の対向する壁同士を画定する。第1の接触パネル525及び第2の接触パネル527のうちの少なくとも一方は、流体の通過を可能にするように構成されたオリフィス508を備えてもよい。いくつかの実施形態では、第1の接触パネル525及び第2の接触パネル527の一方又は両方は、2つ以上のオリフィス608を含んでもよい。いくつかの実施形態では、オリフィス508は、第1の接触パネル525と第1のチャンバ530との間の結合部の非封止部分、及び/又は第2の接触パネル527と第1のチャンバ530との間の結合部の非封止部分を含んでもよい。別の実施形態では、オリフィス508は、オリフィス508を通る空気の流れを、方向付ける、制御する、制限する、又はそうでなければ誘導する弁を備えてもよい。
【0070】
図5Aに示されるように、第1の接触パネル525及び第2の接触パネル527は、膨張式エアバッグクッション510が展開されたときに互いにオフセットして配置される。第1のチャンバ530の膨張は、第1の接触パネル525と第2の接触パネル527とを分離させることができ、第2のチャンバ540の内部容積を確立させる。換言すれば、第2のチャンバ540の内部容積は、第1のチャンバ530の膨張中の第1のチャンバ530の拡張に起因して増加する。第2のチャンバ540の内部容積の増加は、周囲空気がオリフィス508を通して第2のチャンバ540に引き込まれることを引き起こし得る。別の言い方をすれば、膨張ガス560により第1のチャンバ530を膨張させると、第2のチャンバ540が少なくとも部分的に空気で充填される。
【0071】
胸腹部領域56と第1の接触パネル525との組み合いは、第2のチャンバ540の内部容積を減少させ、第2のチャンバ540内の空気を圧縮し、第2のチャンバ540内に圧力を生じさせる。したがって、第2のチャンバ540内の圧力は、胸腹部領域56の移動に対する第3のより低い抵抗580を生成する。
【0072】
図5Bは、膨張式エアバッグアセンブリ500が展開状態かつ少なくとも部分的に膨張状態であり、乗員50が膨張式エアバッグクッション510と組み合っていることを示す、車両10の内部の一部分の正面図である。乗員50が、シートアセンブリ40内で車両着座位置30に示されている。乗員50の胸部54、胸部中心55、胸腹部領域56、及び骨盤部58が、シートアセンブリ40のシート42、バックシート44、及び拘束ハーネス46と同様に、参考のために示されている。乗員50が、第1の乗員位置550まで又は乗員50の横方向位置まで横方向170に移動して、膨張式エアバッグクッション510と組み合っていることが示されている。より具体的には、胸部中心55が、(
図5Aに対して)横方向170にシフトしている。前部領域532は、乗員50の前方に配置することができ、後部領域531は、乗員50の後方に配置することができる。乗員50の肩部52は、第1のチャンバ530の上部領域534に組み合っており、乗員50の骨盤部58は、第1のチャンバ530の下部領域536に組み合っており、乗員50の胸腹部領域56は中央領域535に組み合っている。換言すれば、最初にかつ同時に又はほぼ同時に、肩部52が、移動に対する高い抵抗572を有する上部領域534に組み合うことができ、骨盤部58が、移動に対する高い抵抗572を有する下部領域536に組み合うことができ、胸腹部領域56が、中央領域535に組み合うことができる。図示した実施形態では、胸腹部領域535における移動に対する全抵抗は、第1の接触パネル525における張力によって生じる移動に対する第1の抵抗574と、第2のチャンバ540における圧力によって生じる移動に対する第3のより低い抵抗580との組み合わせであり得る。
【0073】
図5Cを参照すると、衝突事象が継続すると、乗員50は、横方向170に(
図5Bと比較して)(例えば、車両10に関して外側に)第2の乗員位置552まで更に移動している。胸腹部領域56は、中央領域535に更に組み合い、第1の接触パネル525の移動に対する第1のより低い抵抗574によって更に支持される。図示した実施形態では、第2のチャンバ540の容積は実質的に減少しており、移動に対する第3の抵抗580を除去する。場合によっては、乗員50が第2の乗員位置552にあるとき、乗員50の胸腹部領域56は、続いて第2の接触パネル527にも組み合ってよい。したがって、第2の接触パネル527は、乗員50の胸腹部領域56の移動に対して第2のより低い抵抗576を提供することができる。場合によっては、胸腹部領域56の移動に対する全抵抗は、第1の接触パネル525によって提供される移動に対する第1のより低い抵抗574と、第2の接触パネル527によって提供される移動に対する第2のより低い抵抗576との組み合わせを含み得る。
図1Dに関して同様に上記したように、斜め衝突中、前部領域532は、乗員50を拘束し、乗員50の一部分、特に、頭部51、肩部52、胸部54、胸腹中心55、胸腹部領域56、及び骨盤部58の移動に対する高い抵抗372を提供することができる。また、斜め衝突のいくつかの例では、膨張式エアバッグクッション510は、胸腹部領域56に、移動に対する第1のより低い抵抗574、移動に対する第2のより低い抵抗576、及び/又は移動に対する第3のより低い抵抗580を提供することができる。
【0074】
図6Aは、非膨張状態にある
図5A~
図5Cの膨張式エアバッグクッション510の側面の側面図である。
図6Bは、膨張式エアバッグクッション510の分解斜視図である。
図6A及び
図6Bを参照すると、膨張式エアバッグクッション510は、第1の布地パネル622及び第2の布地パネル623を含み得る。図示した実施形態では、第1の布地パネル622及び第2の布地パネル623が、第1のチャンバ530を形成することができる。第1の布地パネル622及び第2の布地パネル623は、単一の一体型布地パネルから形成されてもよく、布地パネルは、折り目626に沿って折られ、外側結合部640及び内側結合部641に沿って結合される。外側結合部640及び内側結合部641はそれぞれ、連続シームから形成してもよい。第1の布地パネル622及び第2の布地パネル623は、外側結合部640の一部分に沿って共に封止してもよい。同様に、第1の布地パネル622及び第2の布地パネル623は、内側結合部641の一部分に沿って共に封止してもよい。いくつかの実施形態では、第1の布地パネル622及び第2の布地パネル623は、外側結合部640の全体及び/又は内側結合部641の全体に沿って共に封止してもよい。いくつかの実施形態では、外側結合部640及び/又は内側結合部641は、膨張ガス560の通気設備ために非封止部分を備えてもよい。シームは、縫い付け、接着剤、高周波溶接、若しくはテーピング、又は任意の他の好適な方法、あるいはこれらの組み合わせによって形成してもよい。
【0075】
第1のチャンバ530は、膨張すると、内側トロイダル領域620を画定する一般的なトロイダル形状を形成することができる。内側トロイダル領域620は、中央領域535を含み得る。また、第1のチャンバ530のトロイダル形状は、
図6Aに示されるように、前部領域532、後部領域531、上部領域534、及び下部領域536を画定することができる。第1のチャンバ530は、トロイダル形状の外側の周囲に延びている外周部637を含み得る。また、第1のチャンバ530は、トロイダル形状の内側領域620の周囲に延びている内周部638を含み得る。いくつかの実施形態では、外周部637は、外側結合部640によって画定してもよく、内周部638は、内側結合部641によって画定してもよい。いくつかの実施形態では、膨張式エアバッグクッション510及び/又は第1のチャンバ530は楕円形であってもよく、1つの断面寸法が垂直断面寸法よりも大きい。図示した実施形態では、第1の布地パネル622及び第2の布地パネル623の一方又は両方は、内側領域620を横切って配置され、第2の接触パネル527を画定してもよい。インフレータポート606は、第1の布地パネル622又は第2の布地パネル623を通過して、第1のチャンバ530の内部に至る開口部を含み得る。換言すれば、インフレータポート606が、膨張ガスを第1のチャンバ530に入れるように構成することができる。
【0076】
膨張式エアバッグクッション510は、第3の布地パネル624を備える。第3の布地パネル624は、外側結合部640又は内側結合部641において第1のチャンバ530に結合してもよい。いくつかの実施形態では、第3の布地パネル624は、外側結合部640と内側結合部641との間の位置で第1の布地パネル622に結合してもよい。第3の布地パネル624は、第1の接触パネル525を画定し得る。第3の布地パネル624は、外側結合部640又は内側結合部641において、第1の布地パネル622及び第2の布地パネル623の一方又は両方に結合される。いくつかの実施形態では、第1の布地パネル622、第2の布地パネル623、及び第3の布地パネル624は、共通の外周を有してもよい。いくつかの実施形態では、外側結合部640は、第1の布地パネル622、第2の布地パネル623、及び第3の布地パネル624を共に結合することができる。
【0077】
第1の布地パネル622及び第2の布地パネル623の一方又は両方は、内側トロイダル領域620を横切って配置され、第2の接触パネル527を含んでもよい。他の実施形態では、別個の布地パネルが、第1の布地パネル622及び第2の布地パネル623の一方又は両方に結合され、内側トロイダル領域620を横切って配置されてもよく、別個の布地パネルが、第2の接触パネル527を含んでもよい。
【0078】
本明細書全体を通して、「結合された」という語句は、機械的な、電気的な、磁気的な、電磁的な、流体的な、及び熱的な相互作用を含めて、2つ以上の物体間の、任意の形態での相互作用を指す。2つの構成要素は、互いに直接接していなくても、互いに結合され得る。
【0079】
「a」及び「an」という用語は、単数として記載し得るが、単数に限定されるものではない。例えば、本開示は、「1つの縫い目ライン」を有するタブを記載し得るが、本開示は、また、タブが、2つ以上の縫い目ラインを有し得ることも想定している。
【0080】
特に明記しない限り、すべての範囲は、端点と、端点の間のすべての数値と、の双方を含む。
【0081】
「車両着座位置」という語句は、車両内で乗員が一般に位置している、又は位置することが期待される位置(例えば、車両のシートに着座している場合)を指す。「乗員」という用語は、車両内の人又は衝突試験ダミーを指す。
【0082】
本明細書全体を通して「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明する特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。よって、本明細書全体を通して記載される引用語句、又はその変形は、必ずしもすべてが同じ実施形態に言及しているわけではない。
【0083】
同様に、上記の実施形態の説明において、本開示を合理化する目的で、様々な特徴が単一の実施形態、図面、又はその説明に共にグループ化されることがあることは、理解されるべきである。しかしながら、この開示の方法は、任意の請求項がその請求項に明示的に記載された特徴よりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものと解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲に反映されているように、本発明の態様は、前述の開示された単一の実施形態の全ての特徴よりも少数の特徴の組み合わせにある。よって、この発明を実施するための形態に続く特許請求の範囲は、この発明を実施するための形態の中に明示的に組み込まれており、各請求項は、それ自体が別個の実施形態として成立している。本開示は、独立請求項とそれらの従属請求項とのすべての並べ替えを含む。
【0084】
特徴又は要素に関する「第1の」という用語の特許請求の範囲における記載は、第2の若しくは追加的なそのような特徴又は要素の存在を必ずしも示唆するものではない。ミーンズ・プラス・ファンクション形式で列挙される要素は、米国特許法第112条(f)に従って解釈されることが意図される。本発明の根底にある原理から逸脱することなく、上記の実施形態の詳細に対して変更を行い得ることは、当業者には明らかであろう。排他的な所有権又は特権が請求される本発明の実施形態は、以下のように定義される。