IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許7416833道路区画にある車両に対して個別の摩擦係数を予測する方法および装置
<>
  • 特許-道路区画にある車両に対して個別の摩擦係数を予測する方法および装置 図1
  • 特許-道路区画にある車両に対して個別の摩擦係数を予測する方法および装置 図2
  • 特許-道路区画にある車両に対して個別の摩擦係数を予測する方法および装置 図3
  • 特許-道路区画にある車両に対して個別の摩擦係数を予測する方法および装置 図4
  • 特許-道路区画にある車両に対して個別の摩擦係数を予測する方法および装置 図5a
  • 特許-道路区画にある車両に対して個別の摩擦係数を予測する方法および装置 図5b
  • 特許-道路区画にある車両に対して個別の摩擦係数を予測する方法および装置 図5c
  • 特許-道路区画にある車両に対して個別の摩擦係数を予測する方法および装置 図5d
  • 特許-道路区画にある車両に対して個別の摩擦係数を予測する方法および装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】道路区画にある車両に対して個別の摩擦係数を予測する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/068 20120101AFI20240110BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20240110BHJP
   B60T 8/172 20060101ALI20240110BHJP
   B60T 8/174 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B60W40/068
B60W40/06
B60T8/172 B
B60T8/174 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021575496
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 EP2020065515
(87)【国際公開番号】W WO2020254123
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】1906507
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ラルエロ
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー カーン
(72)【発明者】
【氏名】アナイス グルソル
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/111366(WO,A1)
【文献】特開2009-251741(JP,A)
【文献】特開2009-184497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12- 8/1769
B60T 8/32- 8/96
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の道路区画を走行している車両に対し、第2の道路区画前記車両の未来の摩擦係数を予測する方法であって、前記方法は、
-前記車両の動作パラメータおよび前記第1の道路区画の少なくとも1つの特性を、通信モジュール(604)により取得する工程(200)と、
-取得した前記車両の動作パラメータを基に指標を、計算器(605)により計算する工程(201)と、
-計算した前記指標値に応じた前記車両の摩擦カテゴリ、および取得した前記第1の道路区画の前記少なくとも1つの特性のカテゴリを、教師なし分類器(607)および/または予測モジュール(608)を使用するモジュール(606)により決定する工程(202)と、
-決定した前記摩擦カテゴリを基に前記車両の摩擦プロファイルを、装置の処理ユニットのプロセッサによって実行されるコンピュータプロフラムによって使用される手段(609)により選択する工程(203)と、
-選択した前記摩擦プロファイルを前記第2の道路区画の少なくとも1つの特性に適用することによって前記車両の摩擦係数を、モジュール(610)により算出する工程(204,205)と、
を含む、方法において、
前記方法は、前記第1の道路区画および第2の道路区画の前記少なくとも1つの特性が、対象となる区画に対して、
-路面の舗装特性、および
-地面の気象特性
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記指標は、以下のパラメータ:
-駆動輪の速度、
-フリーホイールの速度、
-縦加速度、
-横加速度、
-車両速度、
-駆動輪のトルク、
-ブレーキマスターシリンダ内の圧力、
-ブレーキペダルの踏み込み
の中から選択された前記車両の少なくとも1つの動作パラメータを基に計算される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
摩擦プロファイルは、一連の摩擦プロファイルの中から選択され、前記一連の摩擦プロファイルは、
-複数の収集時に、訓練車両のデータを収集する工程であって、前記訓練車両のデータは、ある特定の瞬間に少なくとも
・道路舗装の特性、
・特性地面の気象、および
・前記車両ごとに推定された摩擦係数
を含む、訓練車両のデータを収集する工程と、
-収集した前記データの教師なし分類によって車両の複数の摩擦カテゴリを決定する工程であって、特定の摩擦カテゴリが、ある特定の舗装特性および気象特性に対して同じ値の範囲内に含まれる摩擦係数を有する車両を含むようにする、車両の複数の摩擦カテゴリを決定する工程と、
-車両の少なくとも1つの摩擦プロファイルを明らかにする工程であって、摩擦プロファイルは、特定の車両が割り当てられている一連の摩擦カテゴリによって規定される、車両の少なくとも1つの摩擦プロファイルを明らかにする工程と、
に従って明らかにされる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
車両に対する摩擦プロファイルの前記選択は、
-教師あり学習モデルを訓練する段階であって、
・収集時に訓練車両によって収集されたデータに対して、少なくとも
・収集時に収集された前記訓練車両の少なくとも1つの動作パラメータを基に計算された指標、
・道路舗装の前記特性、および
・地面の前記気象特性
を含む特徴的なベクトルを作成する工程、
・収集された前記データに対して決定された前記車両の前記摩擦カテゴリに関連付けられた前記特徴的なベクトルを基に学習モデルを訓練する工程
を含む、教師あり学習モデルを訓練する段階と、
-予測する段階であって、
・前記第1の道路区画を走行している車両の摩擦カテゴリが、
・前記第1の道路区画での前記車両の少なくとも1つの動作パラメータを基に計算された指標、
・前記第1の道路区画の道路舗装の前記特性、および
・前記第1の道路区画の地面の前記気象特性
に前記学習モデルを適用することによって予測され、
・摩擦プロファイルが、少なくとも前記第1の道路区画の車両に対して予測された前記摩擦カテゴリを基に選択される、
予測段階と、
を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記摩擦プロファイルは、少なくとも2つの第1の道路区画に対して決定された前記車両の少なくとも2つの摩擦カテゴリを基に明らかにされる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
算出した前記車両の前記摩擦係数を使用して、前記車両の安全装置を設定する工程をさらに含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記車両の前記安全装置は、アンチロックブレーキシステム(ABS)、横滑り防止装置(ESP)またはトラクションコントロールシステム(TCS)である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
第1の道路区画を走行している車両に対して、第2の道路区画前記車両のタイヤと路面との未来の摩擦係数を予測する装置であって、前記装置は、
-前記車両の動作パラメータおよび前記第1の道路区画の少なくとも1つの特性を取得するように適応する通信モジュール(604)と、
-取得した前記車両の動作パラメータを基に指標を計算するように適応する計算器(605)と、
-計算した前記指標値に応じた前記車両の摩擦カテゴリ、および取得した前記第1の道路区画の前記少なくとも1つの特性を決定するモジュール(606)と、
-決定した前記摩擦カテゴリを基に前記車両の摩擦プロファイルを選択するモジュール(609)と、
-選択した前記摩擦プロファイルを前記第2の道路区画の少なくとも1つの特性に適用することによって前記車両の摩擦係数を算出するモジュール(610)と、
を含む、装置において、
前記装置は、前記第1の道路区画および第2の道路区画の前記少なくとも1つの特性が、対象となる区画に対して、
-路面の舗装特性、および
-地面の気象特性
を含むことを特徴とする、装置。
【請求項9】
算出した前記車両の前記摩擦係数を、前記車両の安全装置を設定するのに使用する、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記車両の前記安全装置は、アンチロックブレーキシステム(ABS)、横滑り防止装置(ESP)またはトラクションコントロールシステム(TCS)である、請求項9記載の装置。
【請求項11】
請求項8から10までのいずれか1項記載の装置を含むサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、車両と路面との接触特性の評価に関する。本発明は、より詳細には、特定の道路区画にある特定の車両の摩擦係数の予測に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、車両と路面との唯一の接触要素であるため、車両の動的挙動と安全性の主要な要因である。特に、車両と路面との摩擦特性は、車両の動的挙動を推定するための決定的なデータである。車両の摩擦挙動を把握することは、特にABS(アンチロックブレーキシステム)、ESP(横滑り防止装置)、さらにはTCS(トラクションコントロールシステム)などの装置の有効性を向上させるのに有用である。
【0003】
特定の道路区画での車両の摩擦挙動は、車両の特性、特に装着されているタイヤの特性、気象条件、および対象となる道路区画での路面の特性に影響される。
【0004】
このパラメータの関連性により、道路区画ごとに摩擦マップを作成する発案がある。したがって、接続された車両は、車両が走行している道路区画の摩擦特性を取得できる。しかしながら、車両の摩擦挙動は、路面の特性のみの結果ではなく、装着されているタイヤの種類、摩耗状態または空気圧などの車両の特性にも左右される。したがって、同じ道路区画でも、車両が異なれば同じグリップ条件を受けるわけではない。よって、道路区画での特定の車両の摩擦挙動を明らかにする必要性がある。
【0005】
欧州特許第2876413号明細書は、様々な車両の摩擦挙動を比較する方法を開示している。この方法によれば、互いに空間的に近い車両は、タイヤと道路の摩擦値をサーバに送信する。この方法は、互いに近い車両が同じ道路条件を受けているという事実を利用している。したがって、確認された摩擦値の差異は、これらの車両の特性に起因する。しかしながら、欧州特許第2876413号明細書の方法では、摩擦挙動を比較することが望まれる全車両が、摩擦を明らかにするアルゴリズムを使用する必要がある。ただし、これらのアルゴリズムは、特に複雑で、追加のセンサを必要とする。
【0006】
米国特許出願公開第20181244278号明細書は、湾曲した軌道で測定された横方向の加速度および横滑り角から摩擦係数を推定する方法を提示している。この技術では、直線の軌道で摩擦係数を推定することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような理由から、車両に特別なセンサを装着する必要なしに、あるいは複雑な摩擦計算アルゴリズムを使用する必要なしに、特定の車両の摩擦挙動を推定できる解決策が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、第1の道路区画を走行している自動車に対し、第2の道路区画での車両の未来の摩擦係数を予測する方法を提案する。本方法は、
-車両の動作パラメータおよび第1の道路区画の少なくとも1つの特性を取得する工程と、
-取得した車両の動作パラメータを基に指標を計算する工程と、
-計算された指標値に応じて車両の摩擦カテゴリを決定し、取得した道路区画の少なくとも1つの特性を決定する工程と、
-決定した摩擦カテゴリを基に車両の摩擦プロファイルを選択する工程と、
-選択したプロファイルを第2の道路区画の少なくとも1つの特性に適用することによって車両の摩擦係数を算出する工程と、
を含むという点が顕著である。
【0009】
したがって、特性がわかっている第1の道路区画を走行している際に取得した特徴的な動作パラメータがあることで明らかになった摩擦挙動を基に車両のプロファイルを選択し、次いで明らかになったプロファイルを適用して第2の道路区画でのこの車両の摩擦挙動を明らかにすることを提案する。
【0010】
本発明の意味では、車両の摩擦カテゴリは、道路区画の特性に対する摩擦値の範囲に相当し、この範囲内に車両の摩擦係数(または摩擦ポテンシャル)がある。本発明による摩擦カテゴリは、同じ摩擦カテゴリに属する車両が道路条件データに対して比較的近い摩擦係数を有するように規定される。
【0011】
さらに、「車両の摩擦係数」、または「摩擦ポテンシャル」という用語は、ここでは走行する路面での車両のタイヤの摩擦係数に相当することに注意されたい。
【0012】
走行している区画に対する車両の摩擦カテゴリは、車両の動作パラメータおよびその道路区画を基に決定される。したがって、本方法では、車両に摩擦推定手段が備わっている必要はない。したがって本方法は、多数の車両に適用できるものである。
【0013】
本発明の意味では、車両の摩擦のプロファイルまたは摩擦プロファイルは、道路区画の少なくとも1つの特性に応じて車両の摩擦挙動を規定する。特定の区画での車両の摩擦挙動がわかっていると、そのプロファイルを明らかにすることが可能であり、そのプロファイルを基に、別の道路区画での車両の摩擦挙動を明らかにすることが可能になり、この第2の道路区画での車両の動作パラメータを有することがない。
【0014】
最後に、第2の道路区画にある車両に対して決定された摩擦カテゴリを基に、第2の区画での車両の摩擦係数を算出する。
【0015】
したがって、本方法により、未来の道路区画の車両に対して個別の摩擦係数を予測することができ、摩擦の測定や推定を行うように車両を適応させる必要がない。先行技術とは対照的に、摩擦係数は、対象となる区画に車両が進入する前にわかる。したがって、ABSまたはESPなどの安全装置のパラメータ化を事前に実行できる。したがって安全性が向上する。
【0016】
特定の実施形態によれば、第1の道路区画および第2の道路区画の少なくとも1つの特性は、対象となる区画に対して、
-路面の舗装特性、および
-地面の気象特性
を含む。
【0017】
特定の道路区画での車両の摩擦条件は、車両に固有の特性に左右されるだけでなく、道路区画の舗装の種類および道路区画の地面の気象にも左右される。したがって、ある道路区画での車両の摩擦カテゴリを、少なくとも1つの車両の動作パラメータ、路面の舗装特性およびその道路区画の地面の気象特性を基に計算された指標の値に従って決定することを提案する。
【0018】
特定の実施形態では、指標は、以下のパラメータ:
-駆動輪の回転速度、
-フリーホイールの回転速度、
-縦加速度、
-横加速度、
-車両速度、
-駆動輪のトルク、
-ブレーキマスターシリンダ内の圧力、
-ブレーキペダルの踏み込み
の中から選択された車両の少なくとも1つの動作パラメータを基に計算される。
【0019】
このようなパラメータは、例えばCANバスを通る信号を介してほとんどの車両で入手可能である。一方、これらの指標は、車両の動的挙動を特徴付け、路面でのタイヤの摩擦との相関関係を確立することを可能にする。例えば、駆動輪とフリーホイールとの回転速度の差、特定の縦加速度、さらにはブレーキシステムの特定の圧力を、車両の特定の摩擦カテゴリと関連付けることができる。
【0020】
したがって、車両に特別な適応を必要とせずにこれらのパラメータを基に指標を計算でき、車両の摩擦カテゴリとの相関関係を確立できる。
【0021】
特定の実施形態では、プロファイルは、一連の摩擦プロファイルの中から選択され、この一連の摩擦プロファイルは、
-複数の収集時に、訓練車両のデータを収集する工程であって、訓練車両のデータが、ある特定の瞬間に少なくとも
・道路舗装の特性、
・特性地面の気象、および
・車両ごとに推定された摩擦係数
を含んでいる、訓練車両のデータを収集する工程と、
-収集したデータの教師なし分類によって車両の複数の摩擦カテゴリを決定し、特定の摩擦カテゴリが、ある特定の舗装特性および気象特性に対して同じ値の範囲内に含まれる摩擦係数を有する車両を含むようにする、車両の複数の摩擦カテゴリを決定する工程と、
-車両の少なくとも1つの摩擦プロファイルを明らかにする工程であって、摩擦プロファイルは、特定の車両が割り当てられている一連の摩擦カテゴリによって規定される、車両の少なくとも1つの摩擦プロファイルを明らかにする工程と
に従って明らかにされる。
【0022】
訓練車両の一群は、道路網を走行しながらデータを収集する。収集された各データは、車両が走行している道路舗装の少なくとも1つの特性、路面表面の気象特性および摩擦係数の推定を含む。そのために、訓練車両は、特定のセンサを備えているか、摩擦係数を算出できる特定のアルゴリズムを実装している。
【0023】
このようにして収集されたデータは、教師なし分類アルゴリズムによってクラスタに分割される。このように、特定の舗装条件および気象条件での摩擦挙動に応じて車両をグループ分けする。したがって、様々な道路条件で観察された摩擦値に応じて車両のカテゴリを取得し、これを摩擦カテゴリと称する。例えば、特定の摩擦カテゴリは、濡れた高速道路型の道を走行しているときに摩擦係数が特定の値の範囲内である車両を含むことができる。したがって、特定の舗装の種類および気象に対して、複数の摩擦カテゴリを取得してよい。
【0024】
よって車両の摩擦プロファイルは、車両が属する一連の摩擦カテゴリによって規定される。
【0025】
したがって、車両のプロファイルがわかると、特定の舗装条件および気象条件でその車両が属する摩擦カテゴリを予測できる。
【0026】
特定の実施形態によれば、本方法は、プロファイルの選択が、
-教師あり学習モデルを訓練する段階であって、
・収集時に訓練車両によって収集されたデータに対して、少なくとも
・収集時に収集された訓練車両の少なくとも1つの動作パラメータを基に計算された指標、
・道路舗装の特性、および
・地面の気象特性
を含む特徴的なベクトルを作成する工程、
・収集されたデータに対して決定された車両の摩擦カテゴリに関連付けられた特徴的なベクトルを基に学習モデルを訓練する工程
を含む、教師あり学習モデルを訓練する段階と、
-予測段階であって、
・第1の区画を走行している車両の摩擦カテゴリが、
・第1の区画での車両の少なくとも1つの動作パラメータを基に計算された指標、
・第1の区画の道路舗装の特性、および
・第1の区画の地面の気象特性
に学習モデルを適用することによって予測され、
・摩擦プロファイルが、少なくとも第1の区画の車両に対して予測されたカテゴリを基に選択される
予測段階と、
を含む方法である。
【0027】
学習モデルは、訓練車両の一群から収集したデータを基に訓練される。特に、このモデルは、収集時に収集された訓練車両の少なくとも1つの動作パラメータ、道路舗装特性および気象特性を基に計算された指標を用いて訓練される。指標は、前述したようなパラメータを基に計算される。
【0028】
教師あり学習の標的は、舗装条件および気象条件に対して車両に決定されたグループである。このような措置により、特定の道路舗装および気象で走行している過程で取得された車両の動作パラメータを基に、車両の摩擦カテゴリを予測するように学習モデルを訓練することができる。
【0029】
したがって、訓練されたモデルは、車両の摩擦カテゴリを決定するために、特定の舗装および気象条件で走行する過程で取得した車両の動作パラメータに適用できる。このようにして得られたカテゴリにより、車両に対する摩擦プロファイルを導き出すことができる。
【0030】
特定の実施形態によれば、摩擦プロファイルは、少なくとも2つの第1の道路区画に対して決定された車両の少なくとも2つの摩擦カテゴリを基に明らかにされる。
【0031】
車両が属する摩擦カテゴリは、複数の道路区画に対して決定され、車両がこれらの道路区画を走行しているときに得られた動作パラメータ、舗装の種類および気象を基に決定される。車両の複数の摩擦カテゴリがわかっていることで、その車両に対してプロファイルを選択する際に曖昧さをなくすことができる。よって車両の摩擦プロファイルの選択は、より確実に行われる。
【0032】
別の態様によれば、本発明は、第1の道路区画を走行している自動車に対して、第2の道路区画での車両の未来の摩擦係数を予測する装置に関し、装置は、
-車両の動作パラメータおよび第1の道路区画の少なくとも1つの特性を取得するように適応する通信モジュールと、
-取得した車両の動作パラメータを基に指標を計算するように適応する計算器と、
-計算した指標値に応じて車両の摩擦カテゴリを決定し、取得した道路区画の少なくとも1つの特性を決定するモジュールと、
-決定した摩擦カテゴリを基に車両の摩擦プロファイルを選択するモジュールと、
-選択したプロファイルを第2の道路区画の少なくとも1つの特性に適用することによって車両の摩擦係数を算出するモジュールと、
を含む。
【0033】
さらに別の態様によれば、本発明は、少なくとも1つの道路区画が車両に対する個別の摩擦係数に関連付けられているデジタル道路マップであって、個別の摩擦係数は、前述したような予測方法によって算出される、デジタル道路マップに関する。
【0034】
本発明はまた、前述したような個別のデジタル道路マップをサーバ経由で受信するように適応する通信ユニットと、車両が道路区画を走行しているときに、特定の道路区画に関連付けられた個別の摩擦係数の値に応じて車両の安全装置を構成するように適応する計算ユニットとを含む道路車両にも関する。
【0035】
さらに別の態様によれば、本発明は、命令がプロセッサによって実行されるときに、前述したような予測方法の工程を実行するように構成されたコンピュータプログラム命令を含むデータ媒体に関する。
【0036】
データ媒体は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ、または光学ディスクなどの非一時なデータ媒体であってよい。
【0037】
データ媒体は、命令を格納できる任意のエンティティまたはデバイスであってよい。例えば、媒体は、ROM、RAM、PROM、EPROM、CD-ROMなど記憶手段、さらには例えばハードディスクなどの磁気記録手段を含むことができる。
【0038】
一方で、データ媒体は、電気信号または光信号などの伝達可能な媒体であってよく、これは、電気ケーブルまたは光ケーブルを介して無線またはその他の手段によってルーティングすることができる。
【0039】
あるいは、データ媒体は、プログラムが組み込まれた集積回路であってよく、この回路は、本方法を実行するように適しているか、本方法の実行で使用するように適している。
【0040】
前述した様々な実施形態または実施の特徴は、独立して、または互いに組み合わせて、予測方法の工程に追加できる。
【0041】
車両、マップ、装置、およびデータ媒体は、これらが関連する方法によってもたらされるものと同様の利点を少なくとも有する。
【0042】
本発明のその他の特徴、詳細および利点は、以下の詳細な説明を読み、添付の図面を分析することで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】特定の実施形態に従って本発明を実現するように適応する環境の図である。
図2】特定の実施形態による予測方法の主要工程を示す図である。
図3】特定の道路条件に対する車両の摩擦挙動に応じて車両の一群の車両を分布させた一例を示すグラフである。
図4】異なる道路条件に対して推定した車両の摩擦係数に応じて車両の一群の車両を分布させて得られた車両のグループを示すグラフである。
図5a】異なる道路条件に対する訓練車両のデータから明らかになったクラスタを基に規定された摩擦プロファイルの例を示す図である。
図5b】道路条件C1に対する摩擦カテゴリがわかっている車両に対する摩擦プロファイルを選択する一例を示す図である。
図5c】車両に対して単一の摩擦カテゴリがわかっている場合に車両のプロファイルを選択する際に起こり得る曖昧さを示す図である。
図5d】車両の摩擦カテゴリが少なくとも2つの道路条件に対してわかっている場合に摩擦プロファイルを選択する際にどのように曖昧さを排除できるかを示す図である。
図6】特定の実施形態に従って予測方法を実施するように適応する装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1の環境は、4つの道路区画101,102,103および104を有する道路網100を含んでいる。
【0045】
図1は、道路網100の第1の区画101を走行する道路車両100、例えば乗用車も示している。区画101,102,103および104は、それぞれが道路C1,C2,C3およびC4の条件を受けている。このような道路条件は、とりわけ地面の気象特性(湿った路面、雨氷、雪、乾燥した道路など)および/または路面の舗装もしくは道路の種類の特性によって変化する。
【0046】
車両100は、通信ネットワーク106のサーバ107とメッセージを交換するように適応する接続された車両である。そのために、車両は、とりわけセルラーアクセスネットワーク105、例えば3G、4Gまたは5Gタイプのアクセスネットワーク、さらにはWiFiまたはWiMaxネットワークを介して通信を確立するのに適応する通信インターフェースを備えている。車両100はさらに、車両の動作に関する信号を取得できるセンサを備えているほか、これらのセンサから来る信号を処理でき、とりわけ適応した通信プロトコルに従ってこれらの信号の少なくとも一部を符号化してサーバ107に送信できる電子制御ユニット(UCE)も備えている。
【0047】
サーバ107は、メモリおよび処理ユニット、例えばプロセッサを含むデータ処理サーバである。プロセッサは、本発明の特定の実施形態に従って摩擦係数を予測する方法の工程を実施するためにメモリに保存されているコンピュータプログラム命令で構成される。サーバ107は、車両、とりわけ車両100とメッセージを交換できるようにする通信インターフェースも含んでいる。
【0048】
以下、予測方法の特定の実施形態を図2と関連付けて説明する。
【0049】
第1の工程200では、サーバ107は、車両100の動作パラメータおよび車両100が走行する道路区画101の少なくとも1つの特性を取得する。
【0050】
動作パラメータは、例えば車両101によって、例えば車輪回転速度センサ、または車両のブレーキシステム内の圧力センサなどの適切なセンサから取得され、アクセスネットワーク105および通信ネットワーク106を介して適切なメッセージでサーバ107に送信される。
【0051】
特定の実施形態では、サーバ107によって受信された車両100の動作パラメータは、以下のパラメータ:
-駆動輪の速度、
-フリーホイールの速度、
-縦加速度、
-横加速度、
-車両速度、
-駆動輪のトルク、
-ブレーキマスターシリンダ内の圧力、
-ブレーキペダルの踏み込み、
-その他
の中から選択された1つまたは複数のパラメータに相当する。
【0052】
サーバ107は、車両100が走行している道路区画101の少なくとも1つの特性を、車両によって送信された地理的位置から取得する。特定の実施形態では、取得された道路区画の特性は、区画101の路面の舗装特性および/または車両がこの区画を走行しているときの道路区画101の地面の気象特性を含むことができる。
【0053】
舗装特性は、例えば路面の性質(アスファルト、コンクリート、小砂利など)、舗装の摩耗または経過年数、さらには道の種類(特定自動車道、高速道路、小道など)に相当する。
【0054】
地面の気象特性は、路面の状態:濡れた道路、雨氷、雪、乾燥した道路などに相当する。
【0055】
特定の実施形態では、舗装特性と地面の気象特性とは、路面の単一の摩擦指数に統合される。
【0056】
サーバ107は、例えば道路区画の舗装の種類が地理的位置と関連付けて記憶されているデータベース108に問い合わせることで道路区画101の特性を取得する。サーバ107は、車両の位置で路面の特性を取得するためにデータベース108に対してクエリを実行する。サーバはさらに、車両の場所での地面の気象特性を明らかにするために適切な気象サービスに問い合わせることができる。
【0057】
工程201では、サーバ107は、工程200で受信した車両の動作パラメータから指標を計算する。特定の実施形態によれば、この計算は、特定の時間枠、例えば特定の操作開始時に相当する数秒の時間枠で取得された車両100の動作パラメータを基に行われる。例えば、ブレーキ開始時の1.5秒の時間枠は、車両の非常に動的な動きを表しているため、適切である。
【0058】
指標は、取得したパラメータを基に車両の特定の動的特性を明白にするように計算された少なくとも1つの数学的寸法を含む。
【0059】
このような数学的寸法の非限定的ないくつかの例:
-以下の比の振幅:
縦加速度のデルタ/ブレーキペダルの踏み込みの平均可動
-以下の比の振幅:
車両速度/ブレーキペダルの踏み込みの平均可動
-車両速度の最小デルタ
-90パーセンタイル:
駆動輪の速度-非駆動輪の速度
-最大:
(駆動輪の速度-非駆動輪の速度)/非駆動輪の速度
-以下の比の中間:
駆動輪の速度/非駆動輪の速度
-以下の比の最大:
(非駆動輪の速度-駆動輪の速度)/ブレーキペダルの踏み込みの平均可動
指標の他の種類の計算を検討可能である。
【0060】
工程202では、サーバ107は、計算された指標の値および取得した少なくとも1つの道路区画の特性の値に従って、車両100の摩擦カテゴリを決定する。したがって、特性がわかっている道路での車両の動力学に関するパラメータの値を基に、車両のカテゴリを特定し、そのカテゴリ(またはグループ)は、特定の道路条件に対する車両の特定の摩擦挙動に関連付けられている。
【0061】
図3は、特定の道路の舗装および特定の地面の気象で訓練車両によって収集されたデータを基に作成されたグラフである。グラフは、摩擦性能に応じた訓練車両の分布を示し、縦軸が訓練車両の数(NBV)で、横軸が摩擦係数(RVF)である。図3のグラフは、例えば、道路条件C1の下で図1の道路区画101を走行する過程で訓練車両によって収集されたデータを基に取得したものである。
【0062】
図3のグラフで表された曲線は、3つの車両グループA,BおよびCを明らかにしている。この例では、グループAの車両は、区画の道路条件C1では摩擦係数が小さく、それに対しグループBおよびCの車両は、同じ道路条件で摩擦係数がそれよりも大きい。
【0063】
特定の実施形態では、車両100のカテゴリは、一連のカテゴリの中から決定される。一連のカテゴリは、様々な気象条件で道路網の様々な区画を走行している異種の訓練車両の一群を対象に収集したデータに予備学習段階で適用される教師なし学習モデルによって決定される。
【0064】
訓練車両は、タイヤと車両が走行している路面との間の摩擦係数を推定するように適応している。この目的のために、訓練車両は例えば、特定の操作過程で摩擦係数を算出できる特定のセンサおよび/またはアルゴリズムを実装できる。
【0065】
訓練車両はさらに、そのように推定された摩擦係数およびその推定に対応する地理的位置をサーバ107に送信するための通信手段を有する。送信された位置を基に、サーバ107は、データベース108を参照して、摩擦が推定されている場所の舗装特性および地面の気象特性を取得する。
【0066】
そしてサーバ107は、様々な道路条件および気象条件で複数の訓練車両によって収集されたデータの教師なし分類を実行して、訓練車両のグループまたはカテゴリを決定する。例えば、サーバ107は、特定の道路条件に対して推定された摩擦係数の値に従って車両のカテゴリを決定するために、訓練車両によって送信されたデータにミーンシフト型のアルゴリズムを適用できる。このようにして得られた各グループは、ある特定の舗装条件および気象条件で摩擦挙動がほぼ同じである訓練車両を含む。言い換えると、1つのグループは、推定摩擦係数がある特定の道路区画および気象に対して同じ値の範囲内に含まれている車両で構成される。
【0067】
図3を参照すると、サーバ107によって実装された(「クラスタ化」の)データの分割アルゴリズムにより、例えば条件C1での区画101の車両の摩擦特性に従って3つの車両グループを規定することが可能になる。
【0068】
このようにして、本方法により、有限の一連のグループを得ることが可能になり、各グループが特定の車両の摩擦挙動に対応している。
【0069】
特定の実施形態では、サーバ107は、予備学習段階で訓練した学習モデルを使用して、様々な気象条件で道路網の様々な区画を走行している異種の訓練車両の一群を対象に収集したデータを基に、車両100の摩擦カテゴリを決定する。
【0070】
図4は、訓練車両によって収集されたデータを基に道路条件C1~C4に対して決定された車両の一連のカテゴリ(または「クラスタ」)を示している。この図では、各クラスタは、座標内に位置するディスクで表記され、縦座標はクラスタの車両の平均摩擦係数に属し、横座標は道路区画の特性に属する。
【0071】
例えば、図4は、道路条件C1で訓練車両によって収集されたデータを基に前述した技術に従って識別された車両401~403の3つのカテゴリを示している。
【0072】
道路条件C1で道路網を走行する場合に車両100が属するカテゴリ401~403を決定することを提案する。
【0073】
そのために、特定の実施形態では、サーバ107は、教師あり学習モデルを実装する。このモデルは、前述した訓練車両によって収集されたデータを基に訓練され、ある特定の瞬間に車両によって収集されたデータは、訓練車両の動作パラメータをさらに含む。
【0074】
その動作パラメータは、例えば訓練車両によって、車輪回転速度センサ、または車両のブレーキシステム内の圧力センサなどの適切なセンサから取得され、アクセスネットワーク105を介して適切なメッセージでサーバ107に送信される。
【0075】
特定の実施形態では、訓練車両によって取得された動作パラメータは、以下のパラメータ:
-駆動輪の速度、
-フリーホイールの速度、
-縦加速度、
-横加速度、
-車両速度、
-駆動輪のトルク、
-ブレーキマスターシリンダ内の圧力、
-ブレーキペダルの踏み込み、
-その他
の中から選択されたパラメータである。
【0076】
訓練車両のこれらの動作パラメータを基に、サーバ107は、前述した方法に従って指標を計算し、その後、訓練車両によって収集時に収集された各データに対して、サーバ107は、
-収集時に収集された訓練車両の少なくとも1つの動作パラメータを基に計算された指標、
-訓練車両が走行している道路舗装の特性、および
-訓練車両が走行している道路区画の地面の気象特性
を少なくとも含む特性ベクトルを作成する。
【0077】
次に、教師なし分類の工程に続いて訓練車両に対して識別したカテゴリを、このように作成した特性ベクトルに関連付ける。このようにして、サーバ107は、教師あり学習モデルの学習変数を取得し、モデルの学習目標は、車両が割り当てられているカテゴリである。
【0078】
したがってモデルは、ある特定の条件での車両の動作パラメータを基に車両の摩擦カテゴリを予測できるモデルを取得するために、車両カテゴリに関連付けられた複数の特性ベクトルを基に訓練される。車両が割り当てられているグループは、特定の道路条件でのその車両の摩擦挙動の特性であるため、サーバ107は、摩擦係数を推定するのに特に適応しているわけではない車両の摩擦挙動を予測できるモデルを取得する。
【0079】
一度訓練されたこのような教師あり学習モデルは、サーバ107によって車両101から受信したデータに適用され、その車両の摩擦挙動の特性グループを決定する。サーバは、訓練された学習モデルを、
-第1の区画での少なくとも1つの車両の動作パラメータを基に計算された指標、
-第1の区画の道路舗装の特性、および
-第1の区画の地面の気象特性
に適用する。
【0080】
したがってサーバは、教師あり学習モデルの出力で、道路条件C1に対する車両101のカテゴリを取得し、そのカテゴリは、条件C1での車両101の摩擦挙動を表している。
【0081】
車両101に対してこのように決定されたグループから、サーバ107は、工程203で車両の摩擦プロファイルを選択する。
【0082】
本発明の意味では、摩擦プロファイルは、車両が属する一連の摩擦カテゴリ(またはグループ)によって規定される。
【0083】
図5aは、3つのプロファイル501,502および503を示している。プロファイル501は、例えば摩擦挙動が条件C1でクラスタ502に該当し、条件C2でクラスタ504に該当し、条件C3でクラスタ505に該当し、道路条件C4でクラスタ506に該当する車両に適用される。
【0084】
様々なプロファイルは、道路条件に応じて訓練車両が分類されているカテゴリを調べることで決定される。
【0085】
車両100のプロファイルは、道路条件C1で決定された摩擦カテゴリに応じて、このようにして規定されたプロファイルの中から選択される。例えば、図5bを参照すると、道路条件C1で車両がクラスタ402に割り当てられた場合、プロファイル501は曖昧さなしに選択される。
【0086】
ただし、特定の条件で車両が属するグループがわかっていることは、プロファイルを確実に選択するのには十分でないことがある。例えば、図5cは、条件C2でクラスタ401に属する車両がプロファイル502またはプロファイル503を有する可能性があることを示している。実際、クラスタ401は、2つのプロファイル502および503に属している。
【0087】
特定の実施形態では、摩擦プロファイルは、複数の道路区画に対して明らかになった車両の摩擦挙動を基に明らかにされる。したがって例えば、図5dを参照すると、車両のクラスタ401および506が、それぞれ道路条件C1およびC2での摩擦挙動に該当することがわかっていると、車両のプロファイルをプロファイル候補502および503の中から曖昧さなしに明らかにすることが可能である。
【0088】
工程204で、サーバ107は、未来の道路区画に対して車両の摩擦カテゴリを決定する。
【0089】
サーバは、車両100の摩擦挙動を予測しなければならない対象である少なくとも1つの特定の道路区画の特性を取得する。例えば、サーバは、車両からのメッセージを受信し、そのメッセージ内に車両100は、走行する可能性のある区画102,103および107などの区画を示す。変形例では、これらの区画は、車両100の位置を基に経路計算アルゴリズムを実行することでサーバによって決定することができる。区画は、1つまたは複数の地理的な場所によって、または区画の一意識別子によって識別可能で、その区画を基にサーバ107は、区画102,103および104にそれぞれ対応する特性C2,C3およびC4を取得するために、データベース108の検索、および/または適切な気象サービスの検索を実行する。
【0090】
車両100に対して工程203で選択されたプロファイル、および区画102~104に対して明らかになった舗装特性および/または気象特性を基に、サーバは、車両100の摩擦カテゴリ、すなわち車両が属するクラスタを、これらの様々な区画に対して決定する。例えば、図5aを参照すると、車両100に対してプロファイル501が選択されている場合、サーバ107は、この同じ車両が、道路条件C2ではクラスタ504に属し、道路条件C3ではクラスタ505に属し、条件C4ではクラスタ506に属すると判断できる。
【0091】
工程205で、サーバ107は、各区画102~104に対して、摩擦係数、または個別の摩擦係数の値の範囲を算出する。各クラスタは、特定の道路条件に対する摩擦係数が近似である車両で構成されているため、各クラスタに、そのクラスタを構成している車両の摩擦係数の平均値を関連付けることが可能である。したがって、ある車両の摩擦カテゴリを表すクラスタを基に、サーバは摩擦係数の値を得る。
【0092】
特定の実施形態では、本方法は、特定の車両に適応している摩擦データを基にデジタル道路マップを個別作成する工程を含む。
【0093】
そのために、対象となる道路区画にある車両に対して算出された摩擦係数を、前述の工程に従って道路区画と関連付けることを提案する。摩擦係数は、様々な方法で、例えばメタデータの形式で、または区画の識別子と算出された係数の値との関連から、マップに関連付けることができる。
【0094】
特定の実施形態では、サーバは、個別作成したマップを、アクセスネットワーク105を介して車両100に送信する。
【0095】
個別作成した摩擦マップを受信すると、車両100は、進入している区画に対して算出された摩擦係数に応じて安全装置を構成できる。
【0096】
図6は、特定の実施形態による予測方法を実施するのに適応している装置600の構成を表している。
【0097】
装置600は、記憶スペース602、例えばメモリMEMと、例えばプロセッサPROCを備えている処理ユニット601とを含む。処理ユニットは、プログラム603、例えばコンピュータプログラムPGRで操作でき、図2を参照して前述したような予測方法を実施し、とりわけ、車両の動作パラメータおよび第1の道路区画の少なくとも1つの特性を取得する工程と、取得した車両の動作パラメータを基に指標を計算する工程と、計算された指標値に応じて車両の摩擦カテゴリを決定し、取得した道路区画の少なくとも1つの特性を決定する工程と、決定した摩擦カテゴリを基に車両の摩擦プロファイルを選択する工程と、選択したプロファイルを第2の道路区画の少なくとも1つの特性に適用することによって車両の摩擦係数を算出する工程と、を実施する。
【0098】
初期設定で、コンピュータプログラム603の命令は、処理ユニット601のプロセッサによって実行される前に、例えばメモリRAM(Random Access Memory)にロードされる。処理ユニット601のプロセッサは、コンピュータプログラム603の命令に従って通知方法の工程を実施する。
【0099】
そのために、装置600は、メモリ602のほかに、通信手段604、例えばイーサネット型のネットワークインターフェースCOMを含み、装置が通信ネットワークに接続すること、他の装置とメッセージを交換すること、そして特に、接続されている車両の動作パラメータおよび場所を受信することを可能にする。ネットワークインターフェース604は、ある特定の地理的な場所に対して、例えば路面の舗装の種類および地面の気象を含む道路条件を取得するためにデータベース内または遠隔気象サービスにクエリを実行するように構成されたコンピュータプログラム命令によって操作することができる。特定の実施形態では、ネットワークインターフェース604はさらに、送信先の車両に対して個別の摩擦係数の値が関連付けられているデジタル道路マップまたはマップの一部を車両に送信するように構成される。
【0100】
装置は、車両の動作パラメータを基に車両の特定の動的挙動を表す指標を計算するのに適応する計算手段605、例えば計算器CALも含む。計算手段605は、通信モジュール604が受信した車両の動作パラメータを基に指標を計算するように構成されたコンピュータプログラム命令によって実装される。例えば、この命令は、プロセッサ601によって実行されるときに、予測方法の工程201に関して前述したような数学的寸法の計算を実施するように構成される。
【0101】
装置600は、計算された指標値に応じて車両の摩擦カテゴリを決定し、通信モジュール604が取得した道路区画の少なくとも1つの特性を決定するモジュール606も含む。
【0102】
そのために、モジュール606は、訓練車両の一群から得たデータを提供される教師なし分類モジュール607、例えば分類器CLSを使用でき、データはとりわけ収集時に、推定摩擦係数、地面の気象条件、および収集時に訓練車両が走行している道路区画の舗装特性を含む。分類器CLSは、例えばミーンシフト型のクラスタリングアルゴリズムを実行するのに適しているコンピュータプログラム命令によって実装される。このように、分類器607により、特定の道路条件での車両の摩擦挙動を表す複数の摩擦カテゴリを取得することが可能になる。
【0103】
モジュール606はまた、特定の道路の特性に対して車両の摩擦カテゴリを予測するように適応する予測モジュール608、例えばニューロンネットワークMLも使用する。モジュール608は、訓練車両によって収集されたデータで訓練され、このデータは、各収集時に対し、道路舗装の特性、地面の気象特性、訓練車両の動作パラメータを基に計算モジュール605によって計算された指標、および上記道路条件での訓練車両の摩擦カテゴリを含む。このようにして、このように訓練されたモジュールは、道路条件および車両の動作パラメータを基に車両の摩擦カテゴリを予測できる。このようなモジュールは、処理ユニット601のプロセッサPROCによって実行されるように適しているコンピュータプログラム命令によって実装することができる。
【0104】
装置600は、車両の摩擦プロファイルを明らかにする手段609も含む。この手段609は、例えば装置の処理ユニットのプロセッサPROCによって実行されるコンピュータプログラムによって使用され、モジュール606によって決定された車両の少なくとも1つの摩擦カテゴリに応じて所定の一連のプロファイルの中から摩擦プロファイルを選択するように構成される。そのために、モジュール609は、摩擦プロファイルを構成している摩擦カテゴリと関連付けて摩擦プロファイルが登録されているデータベースにアクセスできる。したがって、モジュール609は、パラメータとして1つまたは複数の摩擦カテゴリを含んでいるSQLクエリを実行して、これらのプロファイルを含むプロファイルを返答として取得できる。
【0105】
装置は最後に、第2の道路区画にある車両の摩擦係数を算出する手段310を含む。この手段310は、例えばモジュール609によって選択されたプロファイルを第2の道路区画の少なくとも1つの特性に適用し、第2の道路区画にある車両の摩擦カテゴリを決定するように構成されたコンピュータプログラム命令によって使用される。このように決定された摩擦カテゴリを基に、命令はさらに、その摩擦カテゴリに関連付けられた摩擦平均値を取得するように構成される。
【0106】
特定の実施形態によれば、装置は、デジタル道路マップを個別作成するモジュールをさらに含む。個別作成モジュールは、例えば装置のメモリ602に保存されているコンピュータプログラム命令によって使用され、コンピュータプログラム命令は、プロセッサPROCによって実行される場合に、車両が進入する可能性のある道路区画に対して予測された摩擦係数が道路マップ上の区画表記と関連付けられるように構成される。
【0107】
特定の実施形態では、装置はサーバ内に含まれている。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6