(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】歯科インプラントポジショニング
(51)【国際特許分類】
A61C 13/36 20060101AFI20240110BHJP
A61C 7/00 20060101ALI20240110BHJP
A61C 7/08 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61C13/36
A61C7/00
A61C7/08
(21)【出願番号】P 2022009895
(22)【出願日】2022-01-26
(62)【分割の表示】P 2019206126の分割
【原出願日】2009-05-20
【審査請求日】2022-02-25
(32)【優先日】2008-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501214845
【氏名又は名称】アライン テクノロジー, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Align Technology,Inc.
【住所又は居所原語表記】2820 Orchard Parkway San Jose CA 95134 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】エリック イー. クオ
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-526155(JP,A)
【文献】特開2003-245289(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0188848(US,A1)
【文献】T. P. Rose, et al.,The role of orthodontics in implant dentistry,BRITISH DENTAL JOURNAL,2006年,Vol. 201, No. 12,pp. 753-764
【文献】WARD M. SMALLEY,Implants for Tooth Movement: Determining Implant Location and Orientation,JOURNAL OF ESTHETIC DENTISTRY,1995年,Vol. 7, No. 2,pp. 62-72
【文献】Theo Mantzikos, et al.,Case Report: Forced eruption and implant site development,The Angle Orthodontist,1998年,Vol. 68, No. 2,pp. 179-186
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/36
A61C 7/00-7/36
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物理的な歯の仮想的な3D生歯モデルを作成することと、
仮想的なインプラントを作成することと、
前記複数の物理的な歯の前記仮想的な3D生歯モデルを使用して、前記仮想的なインプラントのためにおよび所望の歯の咬合配置のためにインプラント位置を遮らないようにするための前記複数の物理的な歯のうちの少なくとも1つの物理的な歯の第一の移動を計画することと、
前記複数の物理的な歯の前記仮想的な3D生歯モデルを使用して前記インプラント位置を遮らないようにした後に、前記インプラント位置の外にある前記複数の物理的な歯を前記所望の歯の咬合配置に移動させるための前記インプラント位置の外にある前記複数の物理的な歯の第二の移動を計画することと
によって、歯科インプラント治療の計画を行うためのシステム
であって、
一連の取り外し可能な歯科ポジショニング装置が、前記第一の移動および前記第二の移動を実施するために組み立てられ、前記一連の取り外し可能な歯科ポジショニング装置は、前記インプラント位置の一部分に対応するオフセット領域を含む1つ以上のアライナーを備える、システム。
【請求項2】
前記インプラント位置は、前記取り外し可能な歯科ポジショニング装置のうちの1つ以上に組み込まれる、請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
取り外し可能な歯科ポジショニング装置は、アライナーである、請求項
1に記載のシステム。
【請求項4】
一連の歯科用装置のうちの第一の数の歯科用装置が、前記物理的な歯を第一の向きから第二の向きへと移動させるために使用され、前記第二の向きは、前記インプラント位置を露出する、請求項
1に記載のシステム。
【請求項5】
前記仮想的なインプラントは、前記一連の歯科用装置のうちの少なくとも1つに含まれる目印を使用して前記インプラント位置に配置される、請求項
4に記載のシステム。
【請求項6】
前記目印は、へこみと、マーキングと、穴と、取り付け具と、インセットと、ドリルガイド構造とを含む群から選択される、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記仮想的な3D生歯モデルは
、患者の歯科の生体構造に基づいて作成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記仮想的な3D生歯モデルは、前記患者の生歯をデジタル形式でスキャンするように構成されたスキャニング装置から導出される、請求項
7に記載のシステム。
【請求項9】
前記仮想的な3D生歯モデルは、前記インプラント位置に影響する解剖学的特徴を含む歯の構造を含む、請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
前記歯の構造は、前記患者の顎および/または組織構造の3Dスキャンに重ね合わせられる、請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記一連の取り外し可能な歯科ポジショニング装置は、前記インプラント位置を遮らないようにするために前記複数の物理的な歯のうちの前記少なくとも1つの物理的な歯をリポジショニングするための第一の数のアライナーと、第二の数のアライナーとを備え、アライナーのうちの少なくとも1つは、前記仮想的なインプラントの配置をガイドするための前記インプラント位置における目印を含む、請求項
1に記載のシステム。
【請求項12】
前記第二の数のアライナーは、前記オフセット領域内で一時的な歯の構造を取り付けるための橋脚の幾何学形状、または前記オフセット領域内に組み込まれたポンティック幾何学形状のいずれかで構成される、請求項
11に記載のシステム。
【請求項13】
前記オフセット領域内に取り付けることができる前記一時的な歯の構造、または前記オフセット領域内に組み込まれた前記ポンティック幾何学形状は、少なくとも部分的に、歯の色をした材料で形成される、請求項
12に記載のシステム。
【請求項14】
複数の物理的な歯の仮想的な3D生歯モデルを作成することと、
仮想的なインプラントを作成することと、
所望の歯の咬合配置のためにインプラント位置を遮らないようにするために前記仮想的な3D生歯モデルを使用して複数の物理的な歯の第一の移動を計画することであって、前記計画された第一の移動は、前記インプラント位置の外にある前記複数の物理的な歯のうちの少なくとも1つの物理的な歯を、前記インプラント位置の治癒中に所望の歯の咬合配置へポジショニングする、ことと、
前記物理的な歯を所望の歯の咬合配置に移動させるための前記インプラント位置の外にある前記複数の物理的な歯の第二の移動を計画することと、
前記計画された第一の移動および計画された第二の移動を、初期的な状態から最終的な状態への前記複数の物理的な歯の前記仮想的な3D生歯モデルの進行をアニメーション化する増分治療計画に分けることと
によって、歯科インプラント治療の計画を行うためのシステムであって、
治療の各増分の移動について、歯科用アライナーが、前記物理的な歯のうちの1つ以上の物理的な歯を前記歯科用アライナーの内部トポロジーに対応する幾何学的配置に移動させることができるように形成される、システム。
【請求項15】
一連の歯科用装置のうちの第一の数の歯科用装置が、前記物理的な歯を第一の向きから第二の向きへと移動させるために使用され、前記第二の向きは、前記インプラント位置を露出する、請求項
14に記載のシステム。
【請求項16】
前記仮想的なインプラントは、前記一連の歯科用装置のうちの少なくとも1つに含まれる目印を使用して前記インプラント位置に配置される、請求項
15に記載のシステム。
【請求項17】
前記目印は、へこみと、マーキングと、穴と、取り付け具と、インセットと、ドリルガイド構造とを含む群から選択される、請求項
16に記載のシステム。
【請求項18】
前記仮想的な3D生歯モデルは
、患者の歯科の生体構造に基づいて作成される、請求項
14に記載のシステム。
【請求項19】
前記仮想的な3D生歯モデルは、前記インプラント位置に影響する解剖学的特徴を含む歯の構造を含む、請求項
18に記載のシステム。
【請求項20】
前記歯の構造は、前記患者の顎および/または組織構造の3Dスキャンに重ね合わせられる、請求項
19に記載のシステム。
【請求項21】
前記物理的な歯のうちの1つ以上の物理的な歯を前記歯科用アライナーの内部トポロジーに対応する幾何学的配置に移動させることができるように形成される前記歯科用アライナーに対応する一連の取り外し可能な歯科ポジショニング装置が組み立てられる、請求項
14に記載のシステム。
【請求項22】
前記一連の歯科用アライナーは、前記インプラント位置の一部分に対応するオフセット領域を含む、請求項
21に記載のシステム。
【請求項23】
前記一連の歯科用アライナーは、前記オフセット領域内で一時的な歯の構造を取り付けるための橋脚の幾何学形状、または前記オフセット領域内に組み込まれたポンティック幾何学形状のいずれかで構成される複数のアライナーを含む、請求項
22に記載のシステム。
【請求項24】
前記オフセット領域内に取り付けることができる前記一時的な歯の構造、または前記オフセット領域内に組み込まれた前記ポンティック幾何学形状は、少なくとも部分的に、歯の色をした材料で形成される、請求項
23に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に歯科治療の分野に関する。さらに特定すれば、本開示は、歯科インプラントポジショニングを円滑に行うための歯科ポジショニング装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
一部の歯科処置では、歯列の再調整のためのポジショニング装置が使用される。こうした装置では、弾力性を持つ材料から成る「アライナー」と呼ばれる薄いシェルが利用されることがあり、これは通常患者の歯に徐々に適合するが、歯の初期的な配置とはわずかに整列がずれる。
【0003】
こうした装置を歯の上から配置することにより、特定の位置において歯を新しい配置に徐々に移動させるための力の制御が提供される。漸進的なリポジショニングを提供するその後の装置を用いてこのプロセスを反復することで、歯を一連の中間体配列を通過して、最終的な望ましい配列に最終的に移動することができ、その後その時点でその歯科インプラントのポジショニングが可能となる。
【0004】
一部の歯科治療には、審美性および/または歯の機能を改善するために、不正咬合の歯のリポジショニングおよび歯科インプラントの埋入の組み合わせが関与する。歯のリポジショニングは、望ましいインプラント位置へのアクセスのための空間が不適切である、および/または隣接する歯の整列によるインプラントの配置のための位置の改善の提供が望ましい場合などに発生する。
【0005】
リポジショニングは、例えば、歯列矯正の力を長期間にわたり一つ以上の歯にかけることにより達成しうる。これは、いくつかの例において、歯列矯正具を用いてまず歯列を整えた後、望ましいインプラント位置が適切に準備された時点でインプラントを配置することにより実施できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このアプローチは、数多くの例において有益である。ところが、こうした歯科治療の手順は、インプラントのポジショニングを開始する前に歯列の再調整が完了するまで待つことで、治療法を長引かせることがある。潜在的な欠点には、インプラント位置が口の前部にある時に笑顔の風貌が損なわれる、および/または歯列矯正具を使用した治療に関連することが知られているリスクなども含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一部の歯科処置において、歯科インプラント治療の開始前にコンピュータを利用した断層撮影(CT)スキャンを作成しうる。こうした一部の処置において、シミュレートしたインプラント治療位置におけるプロセスの計画時に、仮想的なインプラントをスキャン上に配置して、インプラントの重要な解剖学的構造(例えば、神経、血管、および/または隣接した歯根)との衝突を避けるために、また実際のインプラントにおけるオッセオインテグレーションを改善するために骨内でのインプラントの望ましい位置を計画することもできる。仮想的なインプラントはまた、インプラント外科医および/または歯科医が、最終的な補綴(例えば、歯冠、オーバーデンチャーなど)でのインプラントの修復時にインプラントへのアクセスを改善できるように配置することができる。
【0008】
本書で使用する時、インプラントという用語には、永久的なインプラントまたは一時的なインプラント(例えば、ミニインプラントまたは一時的な固定装置)が含まれうる。しかしながら、インプラントのポジショニング(仮想的および実際の両方)は、一つ以上の患者の歯が本来そうした位置にあるとき、インプラントの望ましい配置を妨げるように損なわれる場合がある。例えば、望ましいインプラント位置にするための隣接した歯のアンギュレーションは、インプラントの修復のための引込み線により、インプラントへのアクセスおよび/またはそれへの補綴物の維持が損なわれ兼ねないように行われることがある。
【0009】
別の可能性は、インプラントと最終的修復との間のアンギュレーションは、インプラントが修復された時に結果的に生じる負荷特性を理由として望ましくない恐れがあることである。数あるなかでも、さらなる可能性としては、下顎と上顎との間の噛み合いの関係(例えば、咬合)で、配置したインプラントに対して結果的に生じる力が、長期間にわたるインプラントの成功にとって好ましくないことが考えられる。
【0010】
こうした例において、周囲の歯(反対側の顎にあるものも含む)の既存のポジショニングは、歯科インプラントの配置にとって、好ましいおよび/または望ましい歯の咬合および/または審美性を提供しないことがある。つまり、歯および/または顎の関係の代替的な位置が、一つ以上のインプラントの配置について順調な予後のためにより好ましい配列を提供することがある。歯の配列および/または顎の位置のリポジショニングに基づくより好ましい咬合の決定により、歯科インプラントの位置の改善が行われうるが、例えばこれは、妨害している歯および/または干渉している歯が、インプラントの配置前に、治療計画に従って望ましい位置に再配置される場合などである。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
インプラントのポジショニングの方法であって、その方法は以下を含む:
最適化された歯の咬合の仮想モデルに基づくインプラント位置の決定、
第一の多数の一連の歯科用装置を用いた第一の向きから第二の向きへの一つ以上の歯の移動で、その第二の向きはインプラント位置を露出させる、
露出したインプラント位置での一連の歯科用装置のうち少なくとも一つに含まれる目印を使用したインプラントの配置、
第二の多数の一連の歯科用装置を用いた第二の向きからその後の向きへ一つ以上の歯のリポジショニング。
(項目2)
インプラント位置が最も早く露出される位置にインプラントが配置された、項目1の方法。
(項目3)
最も早いインプラント位置の露出を提供する歯科用装置に、インプラント位置を位置決めするためのガイドとしての役割を提供する目印が含まれる、項目2の方法。
(項目4)
第二の多数の一連の歯科用装置にインプラントに対応するオフセット領域が含まれる、項目1の方法。
(項目5)
第二の多数の一連の歯科用装置がそれぞれ、一つ以上の歯を再配置するよう設計され、このインプラントの配置が少なくとも一つの第二の歯科用装置内に定義された露出したインプラント位置である、項目4の方法。
(項目6)
第二の多数の一連の歯科用装置が、オフセット領域内に一時的な歯の構造を取り付けるための橋脚の幾何学形状を持つように構成されている、項目4の方法。
(項目7)
その方法に、一つ以上の第二の多数の一連の歯科用装置の橋脚の幾何学形状への一時的な歯の構造の取り付けが含まれる、項目6の方法。
(項目8)
オフセット領域が歯の色の材料で充填される、項目4の方法。
(項目9)
項目1の方法であって、その方法は以下を含む:
三次元での患者の初期的な歯科の生体構造のスキャン、
その患者の歯科の生体構造に基づく最適な歯の咬合の仮想モデルの作成、および
第一の向きが初期的な歯科の生体構造の咬合であり、またその後の向きが最適な歯の咬合である、一連の歯科用装置の設計。
(項目10)
項目9の方法であって、上記スキャンに以下が含まれるもの:
デジタル形式での患者の生歯のスキャン、
インプラント位置に影響する解剖学的特徴を含めたデジタル形式での歯の構造のスキャン、および
歯の構造と患者の生歯の3Dスキャンとの重ね合わせ。
(項目11)
その方法にインプラントのオッセオインテグレーションにあたってのインプラントに対する歯の構造の修復、および一つ以上の隣接する歯を再配置するための第二の多数の歯科用装置のポジショニングに基づく望ましい歯の咬合配列の達成が含まれる、項目9の方法。
(項目12)
その目印がへこみ、マーキング、穴、取り付け具、インセット、およびドリルガイド構造を含む群から選択される、項目1の方法。
(項目13)
一連の取り外し可能な歯科ポジショニング装置であって、その装置は以下を含む:
一つ以上の歯を第一の配置からインプラント位置空間を露出する第二の配置にリポジショニングするための第一の多数のアライナー、および
一つ以上の歯を第二の配置からその後の配置にリポジショニングする第二の多数のアライナー。
(項目14)
一つ以上のアライナーに、インプラント位置空間の一部分に対応するオフセット領域が含まれる、項目13の一連の装置。
(項目15)
第二の多数のアライナーがオフセット領域内で一時的な歯の構造を取り付けるための橋脚の幾何学形状、またはそのオフセット領域内に組み込まれたポンティック幾何学形状のいずれかで構成される、項目14の一連の装置。
(項目16)
第二の配置に対応する少なくとも一つのアライナーに、インプラント位置空間内にインプラントを配置するためのガイドが含まれる、項目14の一連の装置。
(項目17)
そのガイドが、へこみ、マーキング、穴、取り付け具、インセット、特徴と一致するドリルガイド、およびドリルの深さとアラインメントガイド構造を含む群から選択される、項目16の一連の装置。
(項目18)
その後の配置が予め定めたインプラント位置空間を含む最適な歯の咬合に基づく、項目13の一連の装置。
(項目19)
インプラントを用いた歯科治療の方法であって、その方法は以下を含む:
多数の物理的な歯の仮想モデルおよび仮想的な歯としての少なくとも一つのインプラントの作成、
多数の向きの多数の仮想的な歯を持つ一つ以上の治療を含む、仮想的な治療プロセスの計画、
望ましい歯の咬合の配置のためにインプラント位置を遮らないようにするための、その多数の物理的な歯のうち少なくとも一つの移動、
物理的な歯が遮らないことが確認されたインプラント位置でのインプラントの配置、および
そのインプラント位置の治癒中の、インプラント位置以外の多数の物理的な歯のうち少なくとも一つの望ましい歯の咬合配置へのポジショニング。
(項目20)
項目19の方法であって、その方法は以下を含む:
治療のそれぞれの増分を実施するための取り外し可能な歯科ポジショニング装置の組立、および
一つ以上の取り外し可能な歯科ポジショニング装置へのインプラント位置の組み込み。
(項目21)
インプラントのための位置を露出する一連の歯科ポジショニング装置で、その装置は以下を含む:
一つ以上の歯を第一の配置から第二の配置に再配置する第一の多数のアライナーであって、その第二の配置に再配置する一つ以上の歯がインプラント位置の空間を露出するもの、
その露出したインプラント位置空間内に配置されるインプラント、および
一つ以上の歯を第二の向きからその後の向きに再配置する、第二の多数の一連の歯科用装置。
(項目22)
少なくとも一つの第一の多数のアライナーに、インプラントを配置するためのガイドの役割をする目印が含まれる、項目21の一連の装置。
(項目23)
少なくとも一つの第二の多数のアライナーに、インプラント位置空間の一部分に対応するオフセット領域が含まれる、項目21の一連の装置。
(項目24)
少なくとも一つの第二の多数のアライナーにオフセット領域内で一時的な歯の構造を取り付けるための橋脚の幾何学形状、またはそのオフセット領域内に組み込まれたポンティック幾何学形状のいずれかが含まれる、項目23の一連の装置。
(項目25)
そのオフセット領域内に取り付けることができる一時的な歯の構造、またはそのオフセット領域内に組み込まれたポンティック幾何学形状が、少なくとも部分的に歯の色をした材料で形成される、項目24の一連の装置。
(項目26)
露出したインプラント位置空間が、インジケータによって、少なくとも一つの第一の多数のアライナー上に特定される、項目21の一連の装置。
(項目27)
項目22の一連の装置であって、そのインジケータが以下を含むインジケータの群から選択される装置:
少なくとも一つの第一の多数のアライナーに形成される開口部、
少なくとも一つの第一の多数のアライナーの近位に提供されるポインティング装置。
(項目28)
そのポインティング装置が少なくとも一つの第一の多数のアライナーに取り付けられている、項目27の一連の装置。
(項目29)
歯科インプラント配置のポジショニング用のアライナーへの取り付け式の放射線不透過インジケータ装置であって、その装置は以下を含む:
インジケータ本体、および
該インジケータをアライナーに取り付けるためのアタッチメント機構。
(項目30)
アタッチメント機構が以下を含む機構の群から選択される、項目29のインジケータ装置:
自己接着型接着剤、硬化型接着剤、スナッピング機構、面ファスナー(マジックテープ(登録商標))機構、吸引機構、およびクリップオン機構。
(項目31)
インジケータに、臨床医にインプラントを配置する望ましい位置を特定するために組織の領域に印をつけるマーキング装置を含む、項目29のインジケータ装置。
(項目32)
インジケータに、臨床医がインプラントを配置する望ましい位置を特定するための組織の領域の特定を容易にする機能を含む、項目29のインジケータ装置。
(項目33)
インジケータのポジショニングの調節ができるようにアタッチメント機構が取り外し可能な、項目29のインジケータ装置。
(項目34)
インジケータに、インプラントを配置する調節済みの位置を確認するためにポジショニングの調整後にインジケータを調節済みの位置にロックするロッキング機構が含まれる、項目33のインジケータ装置。
(項目35)
インジケータの長さ寸法が調節可能である、項目29のインジケータ装置。
(項目36)
そのインジケータに、インプラントを配置するためのインジケータを固定するために、長さ寸法をロックするためのロッキング機構が含まれる、項目35のインジケータ装置。
(項目37)
インジケータの少なくとも一部分が伸縮自在である、項目29のインジケータ装置。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、患者の下顎を歯科ポジショニング調節装置の一例と共に図示したものである。
【
図1B】
図1Bは、線1B-1Bに沿って切り取った
図1Aの装置の断面図を図示したものである。
【
図2A】
図2Aは、歯科インプラントにより支持される最終的修復のための空間が不適切な患者の下顎における不正咬合Bの歯の一例を図示したものである。
【
図2B】
図2Bは、その間に歯科インプラントが配置されている患者の下顎において整列した歯の一例を図示したものである。
【
図2C】
図2Cは、本開示による歯科ポジショニング調節装置の実施態様の一例の断面図を図示したものである。
【
図3A】
図3A~3Cは、本開示による歯科インプラントポジショニングに使用可能な歯科ポジショニング調節装置の実施態様を図示したものである。
【
図3B】
図3A~3Cは、本開示による歯科インプラントポジショニングに使用可能な歯科ポジショニング調節装置の実施態様を図示したものである。
【
図3C】
図3A~3Cは、本開示による歯科インプラントポジショニングに使用可能な歯科ポジショニング調節装置の実施態様を図示したものである。
【
図4A】
図4A~4Eは、本開示による歯科インプラントポジショニングに使用可能な歯科ポジショニング調節装置のさらなる実施態様を図示したものである。
【
図4B】
図4A~4Eは、本開示による歯科インプラントポジショニングに使用可能な歯科ポジショニング調節装置のさらなる実施態様を図示したものである。
【
図4C】
図4A~4Eは、本開示による歯科インプラントポジショニングに使用可能な歯科ポジショニング調節装置のさらなる実施態様を図示したものである。
【
図4D】
図4A~4Eは、本開示による歯科インプラントポジショニングに使用可能な歯科ポジショニング調節装置のさらなる実施態様を図示したものである。
【
図4E】
図4A~4Eは、本開示による歯科インプラントポジショニングに使用可能な歯科ポジショニング調節装置のさらなる実施態様を図示したものである。
【
図5】
図5は、本開示による歯科治療を用いたインプラントのポジショニングの方法を図示したブロック図である。
【
図6A】
図6Aは、本開示の一つの実施態様によるインプラント位置を示す、開口部を持つ歯科ポジショニング調節装置を図示したものである。
【
図6B】
図6Bは、本開示の一つの実施態様により、その上に配置された多数のインジケータを持つ歯科ポジショニング調節装置を図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
本開示に従い、最適化された歯の咬合の仮想モデルに基づくインプラント位置の決定による歯科治療を用いた、インプラントのポジショニングのための装置および方法を提供する。本書に記載したさまざまな実施態様のうち、第一の多数の一連の歯科用装置を使用して第一の向きから第二の向きへと一つ以上の歯を移動することができるが、この第二の向きはインプラント位置を露出し、インプラントは一連の歯科用装置のうち少なくとも一つに含まれる目印を使用して露出したインプラント位置に配置できる。一つ以上の歯は、さまざまな実施態様において、第二の多数の一連の歯科用装置を使用して、第二の向きからその後の向きへと再配置される。
【0013】
図1Aは、患者の下顎を歯科ポジショニング調節装置の一例と共に図示したものである。本開示で記載したとおり、
図1Aに図示した歯科ポジショニング調節装置の実施態様には、重合体の物質110で作成した装置100が含まれうる。ただし、重合体の物質110で作成した装置100は、一例として提示するものであり、限定するものではない。
【0014】
つまり、歯科ポジショニング調節に使用する装置(本開示で記載したとおり、これは「アライナー」と呼ぶことができる)は、各種の技術を使用して形成することができ、依然として本開示と一致したものとなる。重合体の物質は、その他の材料の形態がある中でも、平板の材料または材料片でありうる。
【0015】
本開示の方法では、歯科治療と関連した歯の位置の仕上げおよび/または維持に、任意のポジショナー、リテーナー、および/またはその他の取り外し可能な装置を採用できる。本開示の実施態様により、例えば、本書で記載したとおり、歯のリポジショニングを達成するために、患者による連続的な装着が意図される多数のこうした装置が提供されうる。
【0016】
装置100は、例えば、一つの歯の配列からの一つ以上の歯を受け、その後の歯の配列に弾性的に再配列する形状をした窩洞を持つ、重合体シェルから形成できる。重合体シェルは、患者の上顎および/または下顎101内にある多数の歯(例えば、
図1Aに図示したとおりすべての歯)の上から被せるように設計しうる。
【0017】
一部の状況において、ある一定の個別および/または組の歯を再配置できる一方で、その他の歯は、再配置する歯に対して弾力のあるリポジショニング力をかける時に、リボジショニング装置を所定の位置に保つためのベースおよび/またはアンカー領域を提供することができる。ところが、複雑なケースでは、多くの歯またはほとんどの歯は、治療のある時点で再配置される。こうした場合において、移動させる一つ以上の歯も、リボジショニング装置の固定のためのベースおよび/またはアンカー領域としての役目を果たすことができる。
【0018】
さらに、歯茎(例えば、歯肉)、口蓋、および/またはその他の周囲組織が、アンカー領域の役割を果たすために機能し、そのため、すべての歯またはほぼすべての歯を同時に再配置することができるようになる。ところが、一部の場合において、本開示にあるその他の図に関連して詳細に記載したとおり、個別のアタッチメントを一つ以上の歯に、装置100内の対応する容器または開口部とともに装着することもできる。
【0019】
図1Bは、線1B-1Bに沿って切り取った
図1Aの装置の断面図を図示したものである。
図1Bに図示した装置100の断面図は、例えば、一つの歯の配列からの一つ以上の歯を受け、その後の歯の配列に弾性的に再配列する形状をした窩洞を持つ、重合体シェルに含まれる重合体の物質110から作成した実施態様を図示している。
【0020】
上で述べた歯科治療の後で解決されるべき考慮事項には、インプラントを正確にどこに配置するかが考えられるが、これは例えば、歯科治療の前に決定したCT支援によるインプラント配置では、歯科治療中に発生する歯の移動を考慮していないためである。つまり、CT支援によるインプラント配置により、歯列矯正の歯科治療中での多数の歯のリポジショニングの後ではなく、生歯の現在の配列内においてインプラントの適切な位置を決定しうる。
【0021】
歯列矯正の歯科治療後に外科的処置として歯科インプラントのポジショニングをすると、その後のインプラント配置の予後に影響しうる生歯の位置、歯根の位置、および/または周囲の歯肉および/または歯槽の骨構造の変化がもたらされうる。別の考慮事項は、例えば、本来存在する歯にインプラントを配置する時に静止し、一部の状況において、インプラントの配置の前のいくらかの歯の移動によって、優れた機能的および/または審美的な結果をもたらすインプラント治療である。
【0022】
図2Aは、歯科インプラントにより支持される最終的修復のための空間が不適切な患者の下顎における不正咬合の歯の一例を図示したものである。
図2Aに図示した不正咬合の歯200の例は、一つの実質的に適切な向きの歯206に隣接した不適切な向きの歯202を示す。一つの不適切な向きの歯202および一つの実質的に適切な向きの歯206は、さまざまな実施態様において、歯肉線または顎骨を表しうる基質208内に位置されたものとして示されている。
【0023】
図2Aに図示した例は、一つの不適切な向きの歯202と一つの実質的に適切な向きの歯206の間の隙間を示すが、これは、さまざまな実施態様において、二つの歯202、206の再配列の後、歯科インプラントで充填することや、関連する補綴歯科修復に取り付けることができる。別の方法として、歯科インプラントが骨に組み込まれている間に、ポンティック(例えば、偽の歯)を一時的に作成すること、および/または空間を充填するために埋入することができる。インプラントが最終的な補綴物を受ける準備がいったん整うと、ポンティックの除去、および/または最終的な修復用補綴物のインプラントへの装着による最終的な修復用補綴物との置き換えが可能となる。
【0024】
当業者であれば理解できるとおり、限定された数(例えば、一つまたは二つ)の歯、インプラント、および/またはポンティックを示す本開示の図は、限定するためのものではなく、明瞭化を図るために図示したものである。つまり、本開示は、一つ以上の不正咬合の歯のリポジショニング、および/または一つ以上の歯科インプラントの配置および/またはポジショニングを網羅することを意図している。
【0025】
図2Bは、その間に歯科インプラントが配置されている患者の下顎において整列した歯の一例を図示したものである。
図2Bに図示した整列した歯210の例は、インプラントマウント216(これは第二の実質的に適切な向きの歯218に隣接する)に取り付けられた補綴歯科修復物214(例えば、一時的なポンティック)に隣接した第一の実質的に適切な向きの歯212を示す。第一および第二の実質的に適切な向きの歯212、218は、さまざまな実施態様において、歯肉線または顎骨を表しうる基質220内に位置するものとして示されている。
【0026】
図2Bに図示した例は、第一および第二の実質的に適切な向きの歯212、218の間の隙間は、さまざまな実施態様において、例えば、
図2Aに図示した二つの不正咬合の歯202、206の間の空間を作った後で、補綴歯科修復物214および/またはインプラントマウント216で充填できることを図示している。そのため、
図2Bは、さまざまな実施態様において、歯科治療、インプラント配置、および/または最終的な修復物の設計を組み込む仮想的な治療計画を図示したものでありうる。
【0027】
図2Cは、本開示による歯科ポジショニング調節装置の実施態様の一例の断面図を図示したものである。
図2Cに示したインプラントのポジショニング230のための空間の作成の例は、一つの不適切な向きの歯236の再配置234を行うために機能する歯科ポジショニング調節装置232(例えば、アライナー)の実施態様を示す。
【0028】
不適切な向きの歯236のリポジショニングにより、さまざまな実施態様において、不適切な向きの歯236と実質的に適切な向きの歯244との間にインプラント240を埋入および/または適切に配置するために十分な空間238を作成することができるようになる。実質的に適切な向きの多数の歯と関連するアライナーの一つの部分242は、さまざまな実施態様において、不適切な向きの歯236を初期的および/または継続的に再配置するアンカーとしての役目を果たしうる。アライナーの該部分242は、歯244の位置を維持しつつ、歯236を移動させることもできる。
【0029】
本開示で記載したとおり、各種の実施態様において、インプラントのポジショニングガイドを含むようにアライナーを設計することができる。アライナーにはまた、さまざまな実施態様において、インプラントが咬合圧力なしにオッセオインテグレーションしつつ、残りの歯科治療が完了できるように、アライナーをインプラントおよび/または周囲組織からある距離だけ離す「オフセット」部分(例えば、面積および/または体積)を含めることもできる。それゆえ、インプラントは、歯科治療の終了時ではなく、歯科治療の継続中に配置することができる。
【0030】
アライナーは、インプラントの周辺組織の治癒中に、歯のない(つまり、歯を失った)領域を審美的にカモフラージュするために、一時的に使用される一つ以上の偽の歯(例えば、ポンティック)を含めて設計することもできる。例えば、より永久的な最終的修復物の配置の前に、その他の特性のなかで歯の陰影、形状、および/または位置の計画に対して患者を満足させることのできる一時的な「試行」として、多数のポンティックを使用することができる。これらの特徴により、インプラントは、歯列矯正治療の終了時ではなく、歯列矯正治療の続行中に配置することができ、同時にプロセス中に外観に対する患者の満足を得るために役立つ。
【0031】
本開示に記載した歯科治療計画には、さまざまな実施態様において、患者の生歯の三次元(3D)デジタルスキャンを含めることができる。これは、他のスキャン技術があるなか、例えば、CTスキャン、磁気共鳴像(MRI)スキャン、光スキャン、破壊的スキャン、および/またはレーザースキャンなどの多数の方法により達成できる。一部の実施態様において、患者の顎および/または軟組織構造は、その他のスキャン技術があるなか、例えば、CTスキャン、および/またはMRIスキャンを使用してスキャンを行うことができる。
【0032】
ハイブリッドスキャン方式の技術を使用することもでき、それにより、直接的な患者スキャニング(例えば、CTおよび/またはMRI)を使用して一般的な解剖学的構造を識別し、また直接的な光および/または歯の印象/モデルスキャンを使用して、より正確な表面の詳細を撮像し、目印を重ね合わせることで複数のスキャンを一つにまとめて、最終的な作業用スキャンを作成することができる。こうした実施態様において、3D生歯構造スキャンは、患者の顎および/または軟組織構造の3Dスキャン上に重ね合わせることができる。これは、さまざまな形状一致アルゴリズム(例えば、Align Technology, Inc.に付与された多数の公開された出願および/または発行済みの特許に記載されたAST一致など)を使用して達成できる。
【0033】
上で述べたハイブリッドスキャンは、患者を不必要な大量の電離放射線に晒すことなく、生歯の高精度表面詳細画像を取り込むことができる。この方法は、歯科用充填物および/または金属を含有する補綴(例えば、数あるなかでも、歯冠および/またはブリッジ)などの金属物体をスキャンする際に発生しうる放射線散乱に関連する不正確さの問題も克服することもできる。
【0034】
こうした重ね合わせにより、実質的に固定されたマーカーとして使用できる患者の歯根、組織、顎骨、神経、および/またはその他の軟性および硬性の組織形状(例えば、顎の筋肉、舌、頬、および/または顔面の属性)に一致させた高解像度の3D生歯モデルが結果的に得られる。歯および/または関連構造の高解像度3Dモデルは、治療を開始する前に、最終的な歯並びおよび/または咬合の計画に利用できる。歯および/または関連構造の高解像度3Dモデルは、治療を開始する前にインプラントの配置および/またはポジショニングの計画にも利用できる。
【0035】
一部の実施態様において、インプラント上への最終的な補綴物の好ましいおよび/または望ましいポジショニングを決定するために、および/または歯科治療の完了後に向かい合ったアーチの歯に対する咬合を改善するために、仮想的な最終的修復物(例えば、配置する歯冠も含む)を作成することができる。個別の仮想的な歯は、望ましいインプラント配置を考慮して多数の位置に移動させることができる。一つ以上の仮想的なインプラントを作成して、3D固定マーカーと相対的に配置する。仮想的な歯、アライナー、仮想的なインプラント、および/または仮想的な修復物は、望ましい歯科治療計画上に定める前に、反復的に再配置できる。
【0036】
不適切な向きおよび/または位置の歯の移動は、さまざまな実施態様において、初期的な状態から最終的な状態へと仮想的な歯の進行をアニメーション化した増分治療計画に分けることができる。各ステップは、数ある方法のなかでも、例えば、増分の歯根の移動(例えば、ステップ当たり、歯1本につき0.25ミリメートル(mm)を超えない移動)に基づき、調整および/または制限することができる。一部の実施態様において、増分は、「衝突(collisions)」と呼ばれる歯間デジタルオーバーラップについて評価ができ、こうした衝突は、歯列矯正の歯科治療中に歯が互いに通過して滑ることができるようにすることで解決できる。
【0037】
治療の各増分の移動について、歯科用アライナーは、さまざまな実施態様において、一つ以上の患者の歯をアライナーの内部トポロジーに対応する幾何学的配置に移動させることができるように形成することができる(例えば、
図1Bを参照)。歯のポジショニングが前のアライナーの幾何学形状に実質的にいったん適合すると、一連のアライナーのうち次のアライナーを、長時間または何週間か装着して、例えば、仮想的な最終的修復計画により決定したとおり、計画した最終的状態への歯の移動の進行を継続させることができる。
【0038】
一部の例において、従来的な歯列矯正と同様に、インプラントの最終位置が予め定まっていない場合や、インプラントが歯列矯正治療の完了後に配置および/または位置決めされる場合がある。それゆえ、患者は、例えば、好ましいおよび/または望ましいインプラント位置が露出するまで、また歯列矯正治療の後、患者が歯冠またはその他の補綴物を用いてそのインプラントを修復することができるようになる前に、適切な治癒およびオッセオインテグレーションが許容されるまで、歯列矯正治療中に何カ月も待機する必要がある場合がある。対照的に、本開示で記載したとおり、望ましいインプラント位置に完全にアクセス可能な歯科治療の最も早い(例えば、どの歯も望ましい標的のインプラント位置を妨げていないように、移動が十分に進行した時点)かつ安定した(例えば、インプラント空間に移動する歯が他にない)段階で、インプラントは、さまざまな実施態様において、歯列矯正治療を継続しながら、望ましい場所に配置および/または位置合わせを行うことができる。
【0039】
インプラントの最終位置は、歯科用アライナー治療に関連してデジタル形式で決定でき、また歯列矯正治療により必要な空間が作成された時点で、歯列矯正治療が継続する間、インプラントの配置および/または位置合わせを行うことができる。歯列矯正治療中のインプラントの配置および/またはポジショニングは、歯列矯正治療後とは対照的に、オッセオインテグレーションの治癒期間が残りの歯列矯正治療の継続中に同時に発生しうるため、治療時間全体を短縮させることがある。
【0040】
これにより、歯科治療がいったん完了すれば、最終的修復(例えば、歯冠)の配置の遅延を低減することができる。連続してではなく、並行して作業することにより、患者はインプラントのオッセオインテグレーションのための十分な時間を確保することができ、またこれにより、歯科インプラントの健全性および寿命について、および/または患者の健康および/または快適性についての予後が改善される。
【0041】
インプラントの配置および/またはポジショニングプロセスを円滑に行うために、さまざまな実施態様において、インプラントを配置すべき望ましい位置を示すために、最終的に計画した治療段階で仮想的な物体を配置することができる。つまり、アライナーのトポロジー(例えば、輪郭)をベースにする歯列矯正治療をシミュレートすることにより、インプラント位置を予め定めたり、および/または仮想的な生歯と相対的に仮想的なインジケータによって識別したりすることができ、これを実際のアライナーの輪郭に移すことができる。治療計画の段階で、実際の生歯を表す仮想的な歯を、インプラントが隣接する歯から妨害を受けずに適切に配置できる位置に、かつ重要な解剖学的構造(例えば、神経、血管、およびこれに類するもの)を避ける方法で配置することができる。
【0042】
例えば、この位置は、例えばその他の歯が、歯科治療の残りの期間においてインプラントの通る経路と交差しないような、インプラントを配置および/または位置合わせできる最も早い時期を提供できる。例えば、適切なインプラント空間を許容するために追加的な空間(例えば、2mm)が望ましい場合があり、その追加的な空間は歯列矯正治療では5カ月間で作成できるが、歯列矯正治療全体には、歯の不正咬合の重症度のためにさらに12カ月間を必要としうる。こうした状況において、インプラントは、本開示で記載したとおり、5カ月間の治療後に配置でき、それによって残りの歯列矯正治療を継続したままで、7カ月間のオッセオインテグレーション期間の実施が許容される。
【0043】
本開示で記載したとおり、歯科インプラントの望ましい位置を表す(例えば、最終的修復物が配置されることになる位置に対応する)仮想的なインジケータは、さまざまな実施態様において、実際のアライナー内に組み込むおよび/または形成することで、インプラントの正確な配置および/またはポジショニングに役立つガイド(例えば、目印)としての役割を果たすことができる(例えば、これは歯科医またはインプラント外科医にインプラントの配置場所を示すことができる)、円柱、空間、および/または穴として実施することができる。一部の実施態様において、目印は例えば、CT画像と併用する場合に、歯科医またはインプラント外科医に、インプラントの適切な一般的な位置を示すことができる、単純なインジケータでありうる。一部の実施態様において、目印は、アライナー自体に組み込むインプラントの適切なアンギュレーションおよび/または深さを可能にする正確なドリルガイドとしての役割を果たしうる。
【0044】
さまざまな実施態様において、このポジショニングの特徴によって歯科医またはインプラント外科医は、インプラントの配置後に追加的な歯列矯正治療を継続しうる可能性を考慮した上で、インプラントを望ましい標的位置に正確に位置合わせできるようになる。つまり、目印がない場合にインプラント配置の時点で仮想的に最も「明白な」位置は、歯列矯正治療が完了した時点では実際には適切な位置ではないことがある。
【0045】
図3A~3Cは、本開示による歯科インプラントのポジショニングに使用可能な歯科ポジショニング調節装置の実施態様を図示したものである。
図3A~3Cに図示した歯科ポジショニング調節装置の実施態様300、320、および340はそれぞれ、さまざまな実施態様において、歯科医またはインプラント外科医による歯科インプラントのポジショニングのための目印としての役割を果たしうる、インプラント配置ガイドを含めて形成される歯科用アライナーを示す。
【0046】
図3Aは、実施態様の例300を図示したものであり、ここで、アライナー302は、さまざまな実施態様において、穿孔308(例えば、アライナーの実体を貫通したさまざまな形の一つ以上の穴)を含めることができる。アライナー302を貫通する穿孔308は、歯科医またはインプラント外科医によるインプラントの直接的なポジショニングをするためのインプラント配置の目印としての役目を果たしうる。
【0047】
目印は、さまざまな実施態様において、ドリルガイドとして直接的に、またはその後のドリルガイドのためのマーキング装置として間接的に使用することができる。目印は、一部の実施態様において、ドリルガイドの役割を果たす別個のアタッチメントと共に使用することができ、それによって目印は、例えばアタッチメントの容器としての役割を果たす。
【0048】
図3Bは、実施態様の例320を図示したものであり、ここで、アライナー322は、さまざまな実施態様において、アライナー322の実体(例えば、アライナーの実体を貫通するさまざまな円柱またはその他の形状の一つ以上のインセット)を部分的または完全に通るインセット328を含めることができる。
図3Bに図示したインセット328は、一部の実施態様において、
図3Aに図示した穿孔308よりも長い側面(例えば、円柱の円形の壁)を持つ穿孔を形成しうる。
【0049】
図3Aに関連して示したとおり、
図3Bに図示した目印は、さまざまな実施態様において、ドリルガイドとして直接的に、またはその後のドリルガイドのためのマーキング装置として間接的に使用することができる。目印は、一部の実施態様において、ドリルガイドの役割を果たす別個のアタッチメントと共に使用することができ、それによって目印は、例えばアタッチメントの容器としての役割を果たす。
【0050】
図3Bに図示したインセット328は、さまざまな実施態様において、インプラントについて望ましいアンギュレーションの方向に形成することができる。従って、インセット328は、一部の実施態様において、インプラントドリルのための触覚フィードバックを許容する壁サポートを提供でき、それによって、歯科医またはインプラント外科医によるインプラントのポジショニングを指示するインプラント配置ガイドとしての役割を果たす。ガイドとしての役割を果たす、個別のアタッチメントとして使用するとき、ガイドの壁の角度は、個別のアタッチメントを周囲の歯および/または口腔の構造に対して正確に配置できる。
【0051】
図3Cは、実施態様の一例340を図示したもので、アライナー342には、さまざまな実施態様において、逆転円筒348の下端から一定距離に位置する逆転円筒348の上端を持ちうる、逆転円筒348を含むことができる(例えば、さまざまな形および/または長さの一つ以上の逆転円筒)。
図3Cに図示した円筒348は、さまざまな実施態様において、インプラントの望ましいアンギュレーションの方向に形成することができる。
【0052】
図3Bに図示したインセット328と同様に、
図3Cに図示した逆転円筒348は、さまざまな実施態様において、インプラントドリルのための触覚フィードバックを許容する壁サポートを提供しうる。さらに、逆転円筒348は、さまざまな実施態様において、インプラントドリルのドリルビットが逆転円筒348の壁と整列するよう、またインプラントドリルのベースが逆転円筒348の上端で停止して、例えば、インプラントドリルビットが患者の顎骨内に予め定めた距離だけ進行するようにすることができる。
【0053】
つまり、インプラントドリルのベースが、逆転円筒348の上端との接点を通過することを防止できる。ドリルガイドが個別のアタッチメントである時、アタッチメントはさまざまな実施態様において、逆転円筒と結合させることができる。
【0054】
逆転円筒348は、一部の実施態様において、インプラントドリルの方向および/または深さを案内する触覚フィードバックを提供でき、それによって、歯科医またはインプラント外科医によるインプラントのポジショニングを指示するインプラント配置ガイドとしての役割を果たす。従って、
図3A~3Cに関連して説明したとおり、目印は、インプラント配置のための直接的または間接的なガイダンスのためのその他の目印の構成がある中で、へこみ、マーキング、穴、取り付け具、インセット、および/またはドリルガイド構造(例えば、逆転円筒)を含む群から選択することができる。
【0055】
図4A~4Cは、本開示による歯科インプラントのポジショニングに使用可能な歯科ポジショニング調節装置のさらなる実施態様を図示したものである。インプラントが配置および/または位置合わせされた後、オフセット(例えば、逃げ)部分と共に形成した歯科ポジショニング調節装置(例えば、アライナー)を適用できる。
【0056】
オフセット部分は、さまざまな実施態様において、アライナーがインプラント周辺の組織を圧迫しないようにアライナー内に設けることができる。オフセット部分は、さまざまな実施態様において、アライナー内に組み込むことができる。
図4A~4Cに図示した歯科ポジショニング調節装置の三つの実施態様400、420、および440はそれぞれオフセット部分を含めて形成した歯科用アライナーを示すが、さまざまな実施態様において、その他の構成も本開示の対象である。
【0057】
図4Aは、実施態様の一例400を図示したものであり、ここで、アライナー402は、さまざまな実施態様において、オフセット部分406を含むことができる(例えば、アライナーの実体内に形成できるさまざまな形状をした一つ以上のオフセット部分)。アライナー402のオフセット部分406は、アライナー402の部分からのインプラント408(これはさまざまな実施態様において、治癒用の橋脚および/またはキャップを含みうる)に対する圧力、および/またはインプラント周辺の組織に対する圧力を低減する役割を果たすことができる。
【0058】
数多くの例において、オフセットの特徴と組み合わせでの、アライナー上への歯様の物体(例えば、ポンティック)の配置、またはアライナーの一部としての歯様の物体の作成が(例えば、審美的な理由で)望ましい場合がある。さまざまな実施態様において、歯様の物体は、その他の方法があるなか、例えば、アライナーおよび歯様の物体を一つに形成することにより、歯様の物体の幾何学形状と適合するロック機構を持つアライナー内に歯様の物体への嵌め合いとして組み込んだ幾何学形状を使用して、歯の色をした材料を歯の形状をした気泡内に配置することのできる歯の形状をした気泡を設計することにより、および/または接着物質を使用せずに歯様の物体が物理的にアライナーに嵌め込まれるようにリベット様のシステムを使用することにより、アライナーの一部として固定することができる。
【0059】
図4Bは、実施態様の一例420を図示したものであるが、ここでアライナー422には、さまざまな実施態様において、アライナー422の部分のインプラント428および/またはインプラント周辺の組織に対する圧力を低減するためのオフセット部分(例えば、
図4Aに図示したオフセット部分406)を含めることができる。
図4Bに図示したアライナー422は、さまざまな実施態様において、アライナー422に歯様の物体424(例えば、ポンティック)の橋脚の幾何学形状426への取り付け、またその結果としてのアライナー422への取り付け(例えば、接着性の物質、機械的な接続などで)を可能とする、橋脚の幾何学形状426を含めることができることを示す。そのため、
図4Bは、さまざまな実施態様において、アライナーがオフセット部分およびオフセット部分に関連する橋脚と共に形成できることを図示したものであり、それにより例えば、ポンティックを橋脚に取り付けることが可能となる。
【0060】
図4Cは、実施態様の一例440を図示したものであるが、ここでアライナー442には、さまざまな実施態様において、アライナー442の部分のインプラント448および/またはインプラント周辺の組織に対する圧力を低減するためのオフセット部分(例えば、
図4Aに図示したオフセット部分406)を含めることができる。
図4Cに図示したアライナー442は、さまざまな実施態様において、歯様の物体444(例えば、ポンティック)がリベット様の接続を用いて橋脚の幾何学形状446に取り付けできるように、アライナー442を形成することができることを示す。
【0061】
つまり、一部の実施態様において、歯様の物体444は、接着物質を使用せずに橋脚446に取り付けることができる。従って、
図4Cは、さまざまな実施態様において、オフセット部分およびオフセット部分に関連する橋脚と共にアライナーを形成できることを図示したものであり、それにより例えば、ポンティックを橋脚に取り付けるリベット様の接続が可能となる。
【0062】
図4Dは、実施態様の一例460を図示したものであるが、ここでアライナー462には、さまざまな実施態様において、アライナー462の部分のインプラント468および/またはインプラント周辺の組織に対する圧力を低減するためのオフセット部分(例えば、
図4Aに図示したオフセット部分406)を含めることができる。
図4Dに図示したアライナー462は、さまざまな実施態様において、歯様の物体464(例えば、ポンティック)をアライナー462の一部として組み込むおよび/または形成することができるように、アライナー462を形成しうることを示す。
【0063】
つまり、さまざまな実施態様において、歯様の物体464およびオフセットのどちらも、重合体の物質に組み込む、および/または重合体の物質から形成することができ、そこからアライナー462の残りが形成されるが、本開示は、歯様の物体464およびアライナー462について同一の材料を使用することに限定するものではない。一部の実施態様において、歯様の物体464は、重合体の物質またはその他の適した物質のシェルとして形成できる。
【0064】
図4Dに図示したとおり、一部の実施態様において、歯様の物体464は、さまざまな実施態様において、オフセット領域またはその他を通過してインプラント468にアクセスするために歯様の物体464の除去を促進する、その内部に形成されたノッチ(または別の適切な弱体化させる手段)を持つ。そのため、
図4Cは、アライナーは、さまざまな実施態様において、オフセット部分およびオフセット部分と関連する歯様の物体と共に形成することができ、これによりアライナー、オフセット部分、および歯様の物体を単一の構造として形成することが可能であることを示す。
【0065】
図4Eは、実施態様の一例480を図示したものであるが、ここでアライナー482には、さまざまな実施態様において、アライナー482の部分のインプラント488および/またはインプラント周辺の組織に対する圧力を低減するためのオフセット部分(例えば、
図4Aに図示したオフセット部分406)を含めることができる。
図4Eに図示したアライナー482は、さまざまな実施態様において、歯様の物体484(例えば、ポンティック)を
図4Dに図示した実施態様460と同様に、アライナー482の一部として組み込むおよび/または形成することができるように、アライナー482を形成しうることを示す。
【0066】
図4Eに図示した実施態様480は、さまざまな実施態様において、シェルの部分が、固体材料(例えば、それによってアライナー482が形成される重合体の物質またはそれ以外)で充填されて、歯様の物体484をより実質的に固体にすることができる点で、実施態様460とは異なる。さまざまな実施態様において、歯様の物体484のシェルは、オフセット部分が保たれている限り(例えば、シェル内の固体材料のベースがオフセット部分の上部となる)、部分的または完全に固体材料で充填できる。
【0067】
図4Dに関連して説明したとおり、さまざまな実施態様において、
図4Eに図示した歯様の物体484およびオフセットのどちらも、重合体の物質に組み込む、および/または重合体の物質から形成することができ、そこからアライナー482の残りが形成されるが、本開示は、歯様の物体484およびアライナー482について同一の材料を使用することに限定するものではない。一部の実施態様において、歯様の物体484は、重合体の物質またはその他の適した物質のシェルおよび/または充填材として形成できる。
【0068】
一部の実施態様において、当業者により理解されるように、
図4Dおよび4Eに図示したとおり、さまざまな実施態様において、歯様の物体は、歯ライブラリからおよび/または別の歯から「コピーしてペースト」することで作成および/または形成されるポンティックとすることができる。また、当業者により理解されるとおり、
図4A~4Eに図示したアライナー、オフセット、インプラント、および/または歯様の物体の実施態様の構成は、明瞭化の目的で簡略化されており、その旨を明示的に記載しない限り、限定して解釈されるべきではない。例えば、アライナーにおける重合体の物質の層の厚みは、こうした厚みが
図4A~4Cにおいては一律に細線で表現されている場合があるが、そのポジショニングおよび/または適用に応じて変化しうる。
【0069】
さらに当業者により理解されるように、開示を合理化する目的で、さまざまな特徴は単一の実施態様での本開示の説明にまとめてグループ化されている。しかし、この開示方法は、開示の実施態様が下記の請求項のそれぞれで明示的に詳説したものよりもさらに多くの特徴を必要とする、という意図を反映するものとは解釈されないものとする。むしろ、請求項の詳述は、発明の主題が単一の開示された実施態様の特徴のすべてにあるわけではないことを反映している。
【0070】
それゆえ、本開示で説明したとおり、仮想モデルを用いて治療計画を予定することが推奨され主張するところの方法である場合があるが、開示に記載され、下記の請求項に詳説されているとおりにアライナーを単に形成および/または使用することは、保護の対象となる新規の主題として意図されている。例えば、本開示で説明されている新規の主題は、アライナー全体ではなくアライナーの一部に含めることができ、それでも依然として本開示の教示との一貫性がある。
【0071】
従って、本開示で記載したとおり、一連の取り外し可能な歯科ポジショニング装置には、さまざまな実施態様において、一つ以上の歯を第一の配置から第二の配置にリポジショニングするための第一の多数のアライナー、および一つ以上の歯を第二の配置からその後の配置にリポジショニングする第二の多数のアライナーが含まれうる。一つ以上の歯の第二の配置へのリポジショニングは、さまざまな実施態様において、インプラント位置の空間を露出する。例えば、一連の複数のアライナーは、望ましいアラインメントの終点(エンドポイント)の構成を達成するために必要なことがある。ところが、望ましいアラインメント終点の構成は、適切なインプラントのポジショニングを許容する中間のアラインメント構成(例えば、第二の配置)と同一の時点またはその付近で、まず初めに計画することができる。
【0072】
治療計画は、例えば、一連のアライナー内の中間アライナーがその後のアライナーで置き換えられるそれぞれの時点またはその付近で再検討することができ、また所望であれば、達成された成功レベルに応じて変更することができる。例えば、望ましい終点の構成は、単一のインプラントについて9mmの幅の空間を持たせるようにすることができる。連続した10個のアライナーの後、望ましい終点の空間にむけた進展を測定することができ、一部の例において、さらに10個のアライナーが処方されることがある。
【0073】
第二の10個のアライナーを利用した後、進展を再び測定して、本来の望ましい目標の9mmが現実的に達成可能かどうか判断される。そうである場合、かつ必要である時には、望ましい空間が達成されるまで、さらに多くのアライナーを処方できる。望ましい空間9mmが現実的に達成可能ではないと思われる場合は、別の望ましい空間が決定される。
【0074】
歯列矯正治療から結果的に生じる歯の将来的な位置を基にしてインプラント位置を決定するという概念は、一連のアライナーの任意の点で実施できる。つまり、適切なインプラント空間が達成された時、追加的な歯列矯正治療の実施がなおも計画されている場合であっても、インプラントは配置および/または位置合わせできる。
【0075】
一部の実施態様において、一連の取り外し可能な歯科ポジショニング装置には、さまざまな実施態様において、インプラント位置空間の一部(例えば、面積)に対応するオフセット領域を含めた一つ以上のアライナーが含まれうる。一部の実施態様において、第二の多数のアライナーはさまざまな実施態様において、オフセット領域内で一時的な歯の構造を取り付けるための橋脚の幾何学形状、またはそのオフセット領域内に組み込まれたポンティック幾何学形状のいずれかで構成される。
【0076】
一部の実施態様において、一連の取り外し可能な歯科ポジショニング装置には、さまざまな実施態様において、予め定められたインプラント位置空間を含めた最適な歯の咬合に基づくその後の配置が含まれうる。一部の実施態様において、一連の取り外し可能な歯科ポジショニング装置には、さまざまな実施態様において、インプラント位置空間内でのインプラント配置のガイドを含むことができる第二の配置に対応した少なくとも一つのアライナーを含めることができる。ガイドの構成は、数ある手段の中でも、例えば、へこみ、マーキング、穴、取り付け具、インセット、特徴と一致するドリルガイド、および/またはドリルの深さおよびアラインメントガイド構造とすることができる。
【0077】
従って、本開示で記載したとおり、一連の歯科ポジショニング装置は、一つ以上のインプラントのための一つ以上の位置を露出するために使用することができる。さまざまな実施態様において、第一の多数のアライナーを、一つ以上の歯を第一の配置から第二の配置に再配置するために使用することができる。
【0078】
こうした実施態様において、第二の配置に再配置された一つ以上の歯は、少なくとも一つのインプラント位置空間を露出する。次に、露出された一つ以上のインプラント位置空間に多数のインプラントを配置することができる。こうした一部の実施態様において、第二の多数の一連の歯科用装置は、一つ以上の歯を第二の向きからその後の向きへ再配置するために使用できる。
【0079】
本開示で記載したとおり、第一の多数のアライナーのうち少なくとも一つには、インプラントの配置のためのガイドとしての役割を果たす少なくとも一つの目印を含めることができる。さまざまな実施態様において、目印は、数ある適切な構造のなかでも、例えば、アライナー内の一つ以上のへこみ、マーキング、穴、取り付け具、インセット、および/またはドリルガイド構造として、アライナー内に形成できる。
【0080】
一部の実施態様において、第二の多数のアライナーのうち少なくとも一つには、インプラント位置空間の一部に対応するオフセット領域を含めることができる。第二の多数のアライナーのうち少なくとも一つにはまた、さまざまな実施態様において、オフセット領域内で一時的な歯の構造を取り付けるための橋脚の幾何学形状、またはそのオフセット領域内に組み込まれたポンティック幾何学形状のいずれかを含めることができる。一部の実施態様において、オフセット領域内に取り付けることのできる一時的な歯の構造、またはオフセット領域内に組み込まれたポンティック幾何学形状は、少なくとも部分的に歯の色をした材料で形成することができる。
【0081】
図5は、本開示による歯科治療を用いたインプラントのポジショニングの方法を図示したブロック図である。明示的に記載していない限り、本書に記載した方法の実施態様は、特定の順序または配列には制約されない。さらに、記載した方法の実施態様の一部、またはその要素は、同時に、または少なくとも実質的に同一の時点で発生または実行することができる。
【0082】
図5に図示した実施態様には、ブロック510に示すとおり、最適化された歯の咬合の仮想モデルに基づくインプラント位置の決定が含まれる。本開示で使用するとき、「最適化された歯の咬合」は、治療専門家(例えば、歯科医またはインプラント外科医)により、一部の実施態様において、静的または動的(例えば、関節をシミュレートするもの)のどちらでもありうる歯の咬合の仮想モデルと関連して、好ましいおよび/または望ましいと判断される歯の咬合を意味する。本開示に記載した歯科治療計画では、さまざまな実施態様において、患者の生歯の3Dデジタルスキャンの使用による最適な歯の咬合の仮想モデルに基づき、インプラント位置を決定することができる。
【0083】
3Dデジタルスキャンは、他のスキャン技術があるなか、例えば、CTスキャン、MRI(磁気共鳴像)スキャン、光スキャン、破壊的スキャン、および/またはレーザースキャンなどの多数の方法により達成できる。一部の実施態様において、患者の顎および/または軟組織構造は、その他のスキャン技術があるなか、例えば、CTスキャン、および/またはMRIスキャンを使用してスキャンできる。
【0084】
さまざまな実施態様において、スキャンには、三次元での患者の初期的な歯科の生体構造のスキャン、患者の歯の生体構造に基づく望ましい歯の咬合の仮想モデルの作成、ならびに第一の向きが初期的な歯の生体構造の咬合であり、またその後の向きが望ましい歯の咬合である一連の歯科用装置(例えば、アライナー)の設計が含まれうる。一部の実施態様において、スキャンには、患者の生歯のデジタル形式でのスキャン、インプラント位置に影響する解剖学的な特徴を含めた歯の構造のデジタル形式でのスキャン、および患者の生歯の3Dスキャンへの歯の構造の重ね合わせが含まれうる。
【0085】
本開示で記載したとおり、インプラントを用いた歯科治療の計画の一部の実施態様には、多数の物理的な歯の仮想モデルおよび仮想的な歯としての少なくとも一つインプラントの作成、および多数の仮想的な歯の多数の仮想的な方向を持つ一つ以上の治療を含む仮想的な治療プロセスの計画が含まれうる。本書で説明したとおり、仮想的な治療プロセスには、多数の物理的な歯のうち少なくとも一つを最適な歯の咬合の配置のためにインプラント位置を遮らないようにするために移動することが含まれうる。
【0086】
仮想的な治療プロセスには、物理的な歯が遮られていない状態になった後でのインプラント位置へのインプラントの配置が含まれうる。さらに、仮想的な治療プロセスには、インプラント位置の治癒中、インプラント位置外にある多数の物理的歯のうち少なくとも一つの、最適な歯の咬合の配置へのポジショニングが含まれうる。
【0087】
一部の実施態様において、仮想的な治療プロセスには、治療の各増分を実施するための取り外し可能な歯科ポジショニング装置(例えば、アライナー)の組立(例えば、形成)が含まれうる。さまざまな実施態様において、インプラント位置(例えば、目印)は、一つ以上の取り外し可能な歯科ポジショニング装置に組み込むことができる。
【0088】
図5のブロック520は、さまざまな実施態様において、第一の多数の一連の歯科用装置を使用して、一つ以上の歯を第一の向きから第二の向きに移動(例えば、再配置)させることができる(その第二の向きはインプラント位置を露出させる)ことを示す。例えば、一つ以上の歯を第二の向きに移動させることにより露出されるインプラント位置は、本書で説明したとおり仮想モデルに基づき決定されたインプラント位置でありうる。
【0089】
インプラントは、ブロック530に示すとおり、一連の歯科用装置のうち少なくとも一つ(例えば、アライナー)に含まれる目印を使用して、露出したインプラント位置に配置できる。一部の実施態様において、目印は例えば、CT画像と併用する場合に、歯科医またはインプラント外科医に、インプラントの適切な位置を示すことができる、単純なインジケータでありうる。一部の実施態様において、目印は、歯科用装置に穴を空けて、およびアライナー自体に組み込まれるインプラントのアンギュレーションおよび/または深さを決定できるようにするために、ドリルガイドとしての役割を果たすか、または個別のドリルガイドのためのアタッチメントとしての役割を果たすことができる。
【0090】
一部の実施態様において、目印の部位での重合体の物質の層は、例えば、個別のドリルガイドの取り付けが、インプラントのアンギュレーションおよび/または深さを確実に決定するガイドの機能を提供する上で役立つように薄くてもよい。さまざまな実施態様があるなか、個別のドリルガイドは、一部の実施態様において、特徴と一致するドリルガイドの一部を形成し、例えば、目印としての役割をするへこみ、マーキング、穴、取り付け具、および/またはインセットの端部を受ける、円周方向の溝を持つ円筒としうる。
【0091】
ブロック540に示すとおり、第二の多数の一連の歯科用装置(例えば、アライナー)を使用して、一つ以上の歯を第二の向きからその後の向きに再配置することができる。つまり、一部の実施態様において、インプラントを望ましい場所に配置および/またはポジショニングした後で、第二の多数の一連のアライナーのうち第一のものを、患者の歯に適用して、インプラントが配置および/または位置合わせされた向きから、歯の移動を最終位置まで継続して、引き続き歯のリポジショニングを行うことができる。
【0092】
本開示の一部の実施態様において、インプラントは、最も早くインプラント位置が露出される位置に配置および/または位置合わせができる。最も早いインプラント位置の露出を提供する歯科用装置には、さまざまな実施態様において、インプラント位置を示すガイドの役割を提供する目印を含めることができる。
【0093】
本開示で記載したとおり、インプラント配置から治癒している間に、第二の多数の一連の歯科用装置を使用して、一つ以上の歯を再配置することができる。一部の実施態様において、第二の多数の一連の歯科用装置には、さまざまな実施態様において、インプラントに対応するオフセット領域を含めることができる。第二の多数の一連の歯科用装置のうち少なくとも一つの部分にオフセット領域を含めることにより、インプラントおよび/または周囲組織の位置にかかる圧力を、治癒およびオッセオインテグレーションを促進するため、および/または回復を改善(例えば、傷部位への嵌入による外傷を低減する)するために軽減することができる。
【0094】
一部の実施態様において、第二の多数の一連の歯科用装置は、さまざまな実施態様において、一時的な歯の構造をオフセット領域内に取り付けるための橋脚の幾何学形状を持つように構成できる。それゆえ、一部の実施態様においては、さまざまな実施態様において、一時的な歯の構造を第二の多数の一連の歯科用装置のうち一つ以上の橋脚の幾何学形状に取り付けることができる。
【0095】
一部の実施態様において、オフセット領域(例えば、第二の多数の一連の歯科用装置のうち少なくとも一つに含まれるもの)は、さまざまな実施態様において、歯の色をした材料で充填、裏打ち、塗布、または被覆することができる。本開示で記載したとおり、歯科計画には、インプラントがオッセオインテグレーションして隣接する歯が望ましい歯の咬合の配列に再配置された後での、インプラントに対する歯の構造の修復も含まれうる。アライナーにより生成された空間がインプラント部位で意図された修復形状よりも大きい時、またインプラントが骨に組み込まれる時、患者の口内の他の場所で追加的な歯列矯正治療がまだ実施されている場合でも、隣接する歯が安定した位置に達した後すぐに修復物を配置することができる。
【0096】
図6Aは、本開示の一実施態様によるインプラント位置を示す開口部を持つ歯科ポジショニング調節装置を図示したものである。
図6Aの実施態様において、装置600にはインプラントポジショニングのインジケータが含まれる。
図6Aの実施態様において、インジケータ(例えば、目印)は、装置を形成するために使用した材料内に設けられた開口部690である。こうした開口部は、装置の製造中、および/または製造が完了した後に形成できる。
【0097】
治療専門家は、例えば、開口部を通して領域を見て、その他の適切な機能の中でも特に、開口部の位置が解剖学的に正しい場所にあるか、またインプラントのための十分な余地があるかどうかを確認することができる。開口部は、任意の適切な寸法および/または形状であってもよい。一部の実施態様において、開口部は、指定された位置への開口部を通したインプラントの配置を導くために使用できる。
【0098】
さらに、
図6Aの実施態様で図示したとおり、開口部690は装置の平坦な部分に配置できる。装置は、モデル歯の輪郭、モデルまたは実際の歯茎の輪郭、および/またはその他の適切な形状など、任意の適切な形状を持ちうる。
【0099】
一部の実施態様において、装置600は、インプラントが配置される領域の近くに配置される別のタイプのインジケータを固定するために使用できる。例えば、インジケータは、ワイヤー測定またはポインティング装置、またはインプラントが配置される領域を指し示すために利用できる、またはインプラントのポジショニングに役立つ測定情報の供給を支援するために使用できる、その他のタイプのポインティング装置でもありうる。
【0100】
インジケータは、例えば、自己接着型インジケータ、クリップオン式インジケータ、吸引付着式のインジケータ、貼り合わせ式インジケータ、マジックテープ(登録商標)(Velcro)固定式、またはスナップオン式インジケータでもありうる。しかしながら、本開示の実施態様はこうした取り付け方法に限定されるべきではない。
【0101】
ワイヤーまたはその他の放射線不透過材料は、例えばX線で可視であるため有用と考えられる。しかしながら、本開示の実施態様はこうした材料に限定されるべきではない。
【0102】
図6Bは、本開示の一実施態様により、その上に配置された多数のインジケータを持つ歯科ポジショニング調節装置を図示したものである。こうしたインジケータは、さまざまな目的で使用することができる。例えば、こうしたインジケータは、臨床医がインプラントを配置する場所を特定するため、またはインプラントを配置する場所を決定するための基準として使用することができる。
【0103】
インジケータには、一部の実施態様において、歯茎組織に移行して臨床医がインプラント配置の望ましい場所を視覚化できる、また基準位置インジケータとして使用できる、一時的なインクまたは染料を含めることもできる。こうしたインジケータは、例えば、一時的な足場装置(ミニインプラント)の配置に特に便利である。
【0104】
図6Bに図示した実施態様において、例えば、複数のインジケータが提供される。こうしたインジケータは、インプラントが配置される領域を指し示すポインティング装置として使用できる。
【0105】
任意の適切なポインティング装置は、こうした実施態様で使用できる。例えば、適切なポインティング装置は、さまざまな形および/または寸法を持つことができ、さまざまな材料から作成することができ、および/またはX線および/またはその他のスキャン技術または撮影技術などで可視化できる。
【0106】
またインジケータは、任意の適切な方法で装置の近位に(例えば、横に、または取り付けて)配置することができる。取り外し可能な接着剤は、こうした取り付けの適切な方法の一つであり、インジケータを取り外すことができるようになるため、一部の実施態様において有用でありうる。
【0107】
図6Bの実施態様において、装置600には、インジケータ692、694、696、および698が含まれる。こうしたインジケータは、その形状に基づき異なる利点を提供できる。
【0108】
こうしたインジケータには、例えば、望ましい位置がX線撮像によって確認される時に、位置を調節および/またはロックできるような回転/旋回関節も含まれうる。一部の実施態様において、その他の利点のなかでも、より簡単に望ましい位置を見つけるためにインジケータを伸張できる、伸縮自在またはロック式伸縮自在のインジケータがあってもよい。
【0109】
例えば、インジケータ692は、下から2番目の線の左端など、基準として使用できる多数の異なる点を持つ。これは、より正確な位置を指し示すために役立ちうる。
【0110】
インジケータ694、ポインター、およびU字型の696により、取り付け時にインプラントがインプラント用領域に適合するための一般的な方向性(例えば、水平に対して垂直のアラインメント)が提供される。インジケータ698は円であり、また図示したとおり、基準線とともに使用することができる。
【0111】
例えば、円によって、治療専門家は歯肉上のどこにインプラントを位置合わせするかを判断することができる。こうした実施態様は、例えば臨床医がインジケータを貼り付けて、望ましい位置を特定し、ループを通して組織に印を付けた後、印の位置にインプラントを配置するために利用できる。一部の実施態様において、インプラントはループに直接配置できる。線と併用する時、この特徴についてその他の用途があるなかでも特に、線はインプラントを正しい向きにするために使用できる。
【0112】
具体的な実施態様を本書に図示および記載してきたが、当業者であれば、同一の技術を達成するために計算した任意の配列を、表示した具体的な実施態様と置換できることが理解できる。本開示は、本開示のさまざまな実施態様のありとあらゆる適応または変形が網羅されることを意図している。
【0113】
「一つ」、「一つ以上」、「多数の」、または「少なくとも一つ」という用語はどれも、一つ以上の項目が存在することを意味するものとして解釈される。さらに、上記の説明は例証する方法で行われてきたが、制限的な方法ではないことが理解されるべきである。上記の実施態様の組み合わせ、および本書に具体的には記載していないその他の実施態様が、当業者にとっては上記の説明を考察することで明らかとなるであろう。
【0114】
本開示のさまざまな実施態様の範囲には、上記の構造および方法が使用されるその他の任意の用途が含まれる。従って、特許権が付与される請求項のあらゆる同等物とともに、添付した請求項に関して本開示のさまざまな実施態様の範囲が判断されるべきである。
【0115】
上述の詳細な説明においては、開示を合理化する目的でさまざまな特徴が単一の実施態様にまとめてグループ化されている。この開示方法は、開示の実施態様において請求項のそれぞれで明示的に詳説したものよりもさらに多くの特徴を必要とする、という意図を反映するものとは解釈されないものとする。
【0116】
むしろ、以下の請求項の詳述を反映するように、発明の主題は、単一の開示された実施態様の特徴のすべてにあるわけではない。こうして、以下の請求項は、本書により詳細な説明に組み込まれ、それぞれの請求項は個別の実施態様として独立している。