(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】縮合多環式化合物の調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 417/12 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
C07D417/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022023438
(22)【出願日】2022-02-18
【審査請求日】2022-03-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年2月18日 Org.Process Res. Dev., 2021年, Vol.25, pp.817-830において公開
(73)【特許権者】
【識別番号】512175133
【氏名又は名称】ナショナル ヘルス リサーチ インスティテューツ
【氏名又は名称原語表記】National Health Research Institutes
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン パン シュー
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-516960(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101857588(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104292170(CN,A)
【文献】Org. Process Res. Dev.,2021年02月13日,Vol.25,pp.817-830
【文献】Oncotarget,2016年,Vol.7, No.52,pp.86239-86256
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 417/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を調製するための、縮合多環式化合物の調製方法であって、
式(I)中、Bはヘテロアリーレンであり、
式(I)中、Dは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、単環式ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、又はヘテロシクロアルケニル基であり、
式(I)中、W及びZは、独立に、N又はCR
aであり、R
aは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、単環式ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニルアルコキシ、ハロゲン、アルコキシアミノ、又はアルコキシアルキルアミノ基であり、
式(I)中、R
1及びR
2は、独立に、水素、ハロゲンであるか、又は式中構造(X)であり、かつR
1及びR
2の両方が水素であることはなく、
式中構造(X)中、Aはアルキルアミノ基であり、
式(I)中、nは、0、1、2、3、又は4であり、このとき、
式(II)の化合物と式(III)の化合物とを反応させる工程を含む、縮合多環式化合物の調製方法。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【請求項2】
式(IV)の化合物を式(III)の化合物に変換する工程をさらに含む、請求項1に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【化5】
【請求項3】
式(V)の化合物を式(VI)の化合物と反応させて、式(IV)の化合物を生成する工程をさらに含む、請求項2に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【化6】
【化7】
【請求項4】
式(VII)の化合物を式(VI)の化合物に変換する工程をさらに含む、請求項3に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【化8】
【請求項5】
式(VIII)の化合物をアルカノールアミンと反応させて、式(VII)の化合物を生成する工程をさらに含み、
式(VIII)中、X及びYは、独立に、ハロゲン又は水素であり、X及びYは、両方とも水素であることはない、請求項4に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【化9】
【請求項6】
前記アルカノールアミンは式(IX)の化合物である、請求項5に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【化10】
【請求項7】
式(X)の化合物を酢酸ホルムアミジンと反応させて、式(VIII)の化合物を生成する工程をさらに含む、請求項5に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【化11】
【請求項8】
式(IX)中、Aは式中構造(1)であり、
式中構造(1)中、R
b及びR
cは、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキニル、アリール、単環式ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル又はヘテロシクロアルケニル基であり、
式中構造(1)中、mは2、3又は4である、請求項6に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【化12】
【請求項9】
式中構造(1)中、mは3であり、R
b及びR
cはそれぞれメチル基である、請求項8に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【請求項10】
式(I)中、R
2は水素である、請求項1に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【請求項11】
式(I)中、B
はチアゾリル基である、請求項1に記載の縮合多環式化合物の調製方法
。
【請求項12】
式(I)中、Bは式中構造(2)である、請求項11に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【化13】
【請求項13】
式(I)中、Dは6員アリール又はヘテロアリール基である、請求項1に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【請求項14】
式(I)中、Dは式中構造(3)、式中構造(4)、式中構造(5)、式中構造(6)又は式中構造(7)である、請求項13に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【請求項15】
式(I)中、R
2はHであり、Aは式中構造(1)であり、Bは式中構造(2)であり、Dは式中構造(3)であり、W及びZはそれぞれCR
aであり、R
aはHであり、nは2であり、mは3であり、R
b及びR
cはそれぞれメチル基である、請求項1に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【化19】
【化20】
【化21】
【請求項16】
式(I)の化合物は溶媒から再結晶される、請求項1に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【請求項17】
式(III)の化合物は溶媒から再結晶される、請求項2に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【請求項18】
式(IV)の化合物は遠心分離によって固体として提供される、請求項3に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【請求項19】
式(VI)の化合物は、液液抽出を用いて式(VII)の化合物を式(VII)の化合物の混合物から除去することによって提供される、請求項4に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【請求項20】
前記液液抽出は、前記混合物にETOAc(酢酸エチル)を添加し、その中に式(VI
I)の化合物を回収することによって行われる、請求項19に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【請求項21】
式(VII)の化合物は遠心分離によって固体として提供される、請求項5に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【請求項22】
式(VIII)の化合物は遠心分離によって固体として提供される、請求項7に記載の縮合多環式化合物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合多環式化合物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キナーゼ阻害剤は,過剰発現及び/又は突然変異キナーゼ機能をブロックする標的抗癌剤のクラスである。米国FDA(米国食品医薬品局)は、約20のキナーゼを標的とするいくつかの阻害剤を承認している(非特許文献1)。さらに、多数のキナーゼ阻害剤が臨床試験に登録されており、異なる薬物開発段階にある(非特許文献2)。
【0003】
特許文献1は、複数の固形腫瘍細胞株において強力な酵素活性及び細胞活性を有し、静脈内投与時の白血病、結腸直腸及び膵臓異種移植マウスモデルにおいてin vivo有効性を有するマルチキナーゼ阻害剤としての一連のキナゾリン系化合物を開示している。報告された合成経路は、商業的に入手可能な2-アミノ-4-フルオロ安息香酸からの7つの工程から構成された(ミリグラム収率)。しかしながら、グラムスケール合成へのスケールアップは、収率の減少をもたらした。
【0004】
スケールアップ合成の間には、(i)塩素化及びSNアルゴン工程及び最終ジメチルアミノ化工程の間の可変収率、合成の総費用の増加、(ii)安全でない試薬NaH/DMFの使用、及び(iii)いくつかのカラムクロマトグラフィー精製工程の必要性を含むいくつかの欠点も確認された。医薬用途のためには、精製するのが容易な工程で、高収率でこれらの化合物の数キログラムを提供するための、代替の、安全な、及び効率的な経路を求めることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Roskoski, Pharmacol. Res. 2020, 152, 104609
【文献】Lightfoot et. al., ACS Med. Chem. Lett. 2018, 10, 153-160
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、キナゾリン化合物のための強固なスケールアップ合成経路の開発の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を調製する方法であって、Bがヘテロアリーレンであり、Dがアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、モノ環式ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、又はヘテロシクロアルケニル基であり、W及びZが独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、モノ環式ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニルアルコキシ、ハロゲン、アルコキシアミノ基、又はアルコキシアルキルアミノ基であり、R1及びR2が独立して水素、ハロゲン又はOAであり、ここで、R1及びR2は両方とも水素ではない。Aはアルキルアミノ基である。nは0、1、2、3又は4であり、式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させることを含む方法に関する。いくつかの好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、溶媒から再結晶される。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
特定の実施形態において、前記方法は、式(IV)の化合物を式(III)の化合物に変換することをさらに含む。いくつかの好ましい実施形態において、式(III)の化合物は、溶媒から再結晶される。
【0013】
【0014】
特定の実施形態において、前記方法は、式(V)の化合物を式(VI)の化合物と反応させて式(IV)の化合物を生成することをさらに含む。いくつかの好ましい実施形態において、式(IV)の化合物は、遠心分離によって固体として提供される。
【0015】
【0016】
特定の実施形態において、前記方法は、式(VII)の化合物を式(VI)の化合物に変換することをさらに含む。いくつかの好ましい実施形態において、式(VI)の化合物は、液液抽出を使用して、その混合物から式(VII)の化合物を除去することによって提供される。いくつかの好ましい実施形態では、液液抽出は、混合物にETOAc(酢酸エチル)を添加し、式(VI)の化合物をその中に収集することによって行われる。
【0017】
【0018】
【0019】
特定の実施形態では、式(VIII)の化合物をアルカノールアミンと反応させて、式(VII)の化合物を生成することをさらに含むプロセスであって、式中、X及びYは、独立して、ハロゲン又は水素であり、X及びYは、両方とも水素ではない。特定の他の実施形態において、アルカノールアミンは、Aが式中構造(1)である、式(IX)の化合物である。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
ここで、Rb及びRcは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキニル、アリール、単環式ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル又はヘテロシクロアルケニル基である。mは2、3又は4である。いくつかの好ましい実施形態では、mは3であり、それぞれのRb及びRcはメチル基である。いくつかの他の好ましい実施形態において、式(VII)の化合物は、遠心分離によって固体として提供される。
【0025】
特定の実施形態では、式(X)の化合物を酢酸ホルムアミジンと反応させて、式(VIII)の化合物を生成することをさらに含む方法である。いくつかの好ましい実施形態において、式(VIII)の化合物は、遠心分離によって固体として提供される。
【0026】
いくつかの好ましい実施形態では、R2は水素である。
【0027】
いくつかの好ましい実施形態において、Bは、チアゾリル基である。いくつかの他の好ましい実施形態において、Bは、式中構造(2)である。
【0028】
【0029】
いくつかの好ましい実施形態において、Dは、6員アリール又はヘテロアリール基である。いくつかの他の好ましい実施形態では、Dは、式中構造(3)、式中構造(4)、式中構造(5)、式中構造(6)又は式中構造(7)である。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
いくつかの好ましい実施形態において,R2は水素であり,Aは式中構造(1)であり,Bは式中構造(2)であり,Dは式中構造(3)であり,Wはそれぞれであり,ZはCRa,Raは水素であり,nは2であり,mは3であり,それぞれのRb及びRcはメチル基である。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
(定義)
特定の実施形態では、本発明で使用されるアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基は、約1~20個の脂肪族炭素原子を含有する。特定の他の実施態様では、本発明で使用されるアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基は、約1~10個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態では、本発明で使用されるアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基は、約1~8個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態において、本発明で使用されるアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基は、約1~6個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態では、本発明で使用されるアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基は、約1~4個の炭素原子を含有する。従って、例を示す脂肪族基は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、アリール、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、n-ヘキシル、sec-ヘキシル部分及び類似部分を含むがそれらに限定されず、それ自体一つ以上の置換基を有する可能性がある。アルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、1-メチル-2-ブテン-1-イル及び類似物を含むがそれらに限定されない。代表的なアルキニル基はエチニル、2-プロピニル(プロパルギル)、1-プロピニル及び類似基を含むが、それらに限定されない。
【0040】
用語「シクロアルキル」は、本明細書中で使用される場合、3~7個、好ましくは3~10個の炭素原子を有する環状アルキル基を具体的に指す。適切なシクロアルキルとしては、脂肪族、複素脂肪族又は複素環式部分の場合のように、任意に置換されていてもよい、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。類似の慣例は、「シクロアルケニル」、「シクロアルキニル」などの他の一般的な用語に適用される。
【0041】
一般に、用語「アリール」は、アルキル又はヘテロアルキル基を介して結合したものを除いて、上記のような芳香族部分をいう。本発明の特定の実施形態では、「アリール」は、芳香族性についてハッケル則(ヒュッケル則)を満たす1個又は2個の環を有する単環式又は二環式炭素環系を指し、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
同様に、用語「ヘテロアリール」は、アルキル又はヘテロアルキル基を介して結合したものを除いて、上記のようなヘテロ芳香族基をいう。本発明の特定の実施形態では、本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、約5~約10個の環原子を有する環式不飽和基を指し、その1個の環原子は、S、O及びNから選択され、ゼロ、1個又は2個の環原子は、S、O及びNから独立して選択される追加のヘテロ原子であり、残りの環原子は、例えば、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニルなどの環原子のいずれかを介して分子の残りに結合される。
【0043】
アリール基及びヘテロアリール基の置換基には、以前に言及した置換基のいずれか、すなわち、脂肪族部分について、又は本明細書中に開示されるような他の部分について列挙される置換基が含まれ、安定な化合物の生成を生じるが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書で使用される「アルコキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子部分に結合した、先に定義したアルキル基を指す。特定の実施形態では、アルキル基は、約1~20個の脂肪族炭素原子を含有する。特定の他の実施形態では、アルキル基は、約1~10個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態では、アルキル基は、約1~8個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態では、アルキル基は、約1~6個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態では、アルキル基は、約1~4個の脂肪族炭素原子を含有する。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、ネオペントキシ及びn-ヘキソキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
「アルキルアミノ」という語は、構造-N(R)2を有する基を指し、ここで、Rの各々の出現は独立して水素であるか、又は脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族もしくはヘテロ芳香族基であるか、又はR基は一緒になって複素環基を生成し得る。
【0046】
本明細書で用いられる用語「ハロ」及び「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選ばれた原子を指す。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」、「ヘテロアルキニル」などは、置換及び非置換、飽和及び不飽和、ならびに直鎖及び分岐基を包含する。同様に、「ヘテロシクロアルキル」、「複素環」などの用語は、置換基及び非置換基、ならびに飽和基及び不飽和基を包含する。さらに、用語「シクロアルキル」、「シクロアルケニル」、「シクロアルキニル」、「ヘテロシクロアルキル」、「ヘテロシクロアルケニル」、「ヘテロシクロアルキニル」、「芳香族」、「ヘテロ芳香族」、「アリール」、「ヘテロアリール」などは、単独で又はより大きな部分の一部として使用され、置換基及び非置換基の両方を包含する。
【0048】
本発明の化合物は、一般的に上記に記載され、本明細書に特に記載されるものを含み、本明細書に開示される種々のクラス、亜属及び種によって部分的に例示される。本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に示すのは、本発明の例示的な化合物である。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
7つの工程を有する以前に報告された医薬化学合成経路は、低収率、特に塩素化工程における分離不可能な不純物の生成、危険な試薬(NaH/DMF)の使用、及び生成物の精製のための骨の折れるカラムクロマトグラフィー工程のようなスケールアップ合成の間にいくつかの問題に遭遇した([参考非特許文献1]Hsu, Y. C., et. al. Oncotarget 2016, 7, 86239-86256.)。上記の問題を克服するための段階的なアプローチが、以下の実施例において計画された。
【0061】
(実施例1)
(ホルムアミジンとの縮合による式(VIII)の化合物の合成)
式(VIII)の化合物は、式(X)の化合物をホルムアミジンと反応させることによって得ることができる(
図1)。式中、W及びZは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、単環式ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニルアルコキシ、ハロゲン、アルコキシアミノ、又はアルコキシアルキルアミノ基であるN又はCR
a、R
aである。式中、X及びYは、独立して、ハロゲン又は水素であり、X及びYは、両方とも水素ではない。好ましくは、式(VIII)の化合物は、遠心分離によって固体として提供される。
【0062】
【0063】
例として、キナゾリノンである化合物2は、出発物質である化合物1から、酢酸ホルムアミジンとの縮合によって合成された。出発物質である化合物1の10.0gスケールについてこの反応を最適化するために、以下の3つの条件を研究した(表1)。この反応系において、得られた化合物2は、室温でEtOHに溶解せず、単純な濾過による純粋な生成物の容易な単離を促進した。
【0064】
【0065】
未反応の出発物質である化合物1は、後処理工程でうまく除去することができた。反応が完了したら、バッチ温度を約10~15℃まで徐々に低下させ、4時間撹拌した。沈殿した生成物を遠心分離してケーキを得、冷EtOHですすぎ、真空下55℃で24時間乾燥して化合物2を得た。
【0066】
7-フルオロキナゾリン-4(3H)-オン(生成物2).
1 H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 12.35 (brs, 1H), 8.16 (dd, J = 8.8, 6.4Hz, 1H), 8.13 (s, 1H), 7.45 (dd, J=10.4, 2.8Hz, 1H), 7.39 (ddd, J=8.4, 8.8, 2.4Hz, 1H).13 C NMR (100MHz, DMSO-d6), δ 166.8-164.3 (d, J=249.3Hz), 160.0, 150.9 (d, J=13.0Hz), 146.8, 128.9 (d, J=10.7Hz), 119.6, 115.2 (d, J=23.7Hz), 112.3(d, J=21.4Hz). HRMS (ESI) calcd for C8 H5 FN2 NaO [M + Na]: 187.0283; found 187.0283.
【0067】
(実施例2)
(アルカノールアミンによるSNAr攻撃による式(VII)の化合物の生成)
式(VIII)の化合物は、式(VIII)の化合物をアルカノールアミンと塩基性条件(
図2)で反応させることによって得ることができ、式中、W及びZは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキニル、アリール、単環式ヘテロアリール、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニルアルコキシ、ハロゲン、アルコキシアミノ、又はアルコキシアルキルアミノ基である。R
1及びR
2は、独立して、水素、ハロゲン、又はOAであり、ここで、R
1及びR
2は両方とも水素ではない。Aはアルキルアミノ基である。X及びYは独立して、ハロゲン又は水素であり、X及びYは両方とも水素ではない。いくつかの実施形態では、アルカノールアミンはフォムラ(IX)を有する。好ましくは、式(VII)の化合物は、遠心分離によって固体として提供される。
【0068】
【0069】
化合物4の合成を例にとると、反応条件はキログラムスケール合成のために最適化するように設定された(表2)。塩基としてKOHを使用して純粋な3-(ジメチルアミノ)プロパン-1-オール(化合物3)中で反応を進行させることができ、反応を水でクエンチし、次いで生成物である化合物4を酢酸エチル抽出によって10.0gスケールの反応で良好な収率(88%単離収率)で単離した。
【0070】
【0071】
好ましくは、酢酸エチル又はCH2Cl2を用いて水相を長時間(3日間)継続的に抽出するために、特殊な器具([参考非特許文献2]Reddy et. al., Org. Process Res. Dev. 2021, 25, 817-830)を使用した。反応混合物(pH>10)に6N HClを添加することによるpHの調整なしにEtOAc(酢酸エチル)での連続抽出は,比較的良好な収率及び純度(スラリー精製廃棄後)で所望の生成物である化合物4を提供する。
【0072】
7-(3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)キナゾリン-4(3H)-オン(化合物4).
1 H-NMR (400MHz, DMSOd6) δ 12.07 (brs, 1H), 8.04 (s, 1H), 8.00 (d, J=9.6 Hz, 1H), 7.08 (t, J=7.6Hz, 2H), 4.13 (t, J=6.4Hz, 2H), 2.37 (t, J=6.8Hz, 2H), 2.15 (s, 6H), 1.91-1.84 (m, 2H).13 C-NMR (100MHz, DMSO-d6), δ 163.2, 160.2, 150.9, 145.9, 127.4, 116.3, 115.9, 108.8, 66.3, 55.5, 45.1, 26.6. HRMS (ESI) calcd for C13 H18 N3 O2[M + H]: 248.1399; found 248.1395.
【0073】
(実施例3)
(塩素化による式(VI)の化合物の製造)
式(VI)の化合物は、式(VII)(
図3)の化合物の塩素化によって得ることができ、式中、W及びZは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキニル、アリール、単環式ヘテロアリール、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニルアルコキシ、ハロゲン、アルコキシアミノ、又はアルコキシアルキルアミノ基であるN又はCR
a、R
aであり、R
1及びR
2は、独立して、水素、ハロゲン、又はOAであり、ここで、R
1及びR
2は、両方とも水素ではない。Aは、アルキルアミノ基である。nは、0、1、2、3、又は4である。典型的には、POCl
3、SOCl
2、Cl
2は、クロライドドドナーとして利用することができる。好ましくは、式(VI)の化合物は、液液抽出を用いて反応混合物から式(VII)の化合物を除去することによって提供される。クロリネーションに対するいくつかの代替案は、ブロイミネーションと、OTf、OSO
2CF
3、SOPh、SO
2Ph、SO
2Et、SOEtなどの導入を含み、S
NAr反応に従うための良好な離脱群を設定する。
【0074】
【0075】
異なる溶媒及び反応条件での塩素化反応を、化合物5の効率的な製造のために調査した(表3)。反応の完了は、反応物である化合物4の消失及び生成物である化合物5の生成をモニターすることの両方によって、HPLCを使用してモニターした。生成物の純度は、反応溶媒及び反応のバッチサイズの両方によって影響された。粗生成物である化合物5は、単離時に安定ではなかったので、後処理後に次の工程(SNアルゴン反応)に直接的に使用した。
【0076】
【0077】
(実施例4)
(S
Nアルゴン反応による式(IV)の化合物の調製)
式(IV)の化合物は、式(V)(
図4)の化合物と式(VI)(式中、Bはアリーレン又はヘテロアリーレンである。W及びZは独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキニル、アリール、単環式ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルケニルアルコキシ、ハロゲン、アルコキシアミノ、又はアルコキシアルキルアミノ基であるN又はCR
A、R
Aである。R
1及びR
2は独立して、水素、ハロゲン、又はOAであり、ここで、R
1及びR
2は両方とも水素ではない。Aはアルキルアミノ基である。nは0、1、2、3、又は4である)の化合物と式(VI)の化合物とのAr反応をS
Nすることによって得ることができる。好ましくは、式(IV)の化合物は、遠心分離によって固体として提供される。
【0078】
【0079】
塩基の種類と溶剤の状態を異ならせて、化合物5と化合物6のSNアルゴン置換反応について試験した(表4)。最終生成物中に存在する約3%レベルの不純物を除去する必要があった。生成物である化合物7を洗浄するためのEtOAc/MeOH(10:1.5)溶媒の混合物の使用は、不純物をうまく除去した。
【0080】
【0081】
t-ブチル(5-(2-(7-(3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)-キナゾリン-4-イル)アミノ)エチル)チアゾール-2-イル)カルバメート(化合物7).
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 11.16 (brs, 2H), 8.41 (s, 1H), 8.24 (t, J=5.2 Hz, 1H), 8.10 (d, J=9.2 Hz, 1H), 7.11 (dd, J=9.2, 2.4 Hz, 2H), 7.07 (dd, J=8.4, 2.4Hz, 2H), 4.12 (t, J=6.4Hz, 2H), 3.70 (q, J=12.8, 6.8Hz, 2H), 3.06 (t, J=6.8Hz, 2H), 2.38 (t, J=7.2Hz, 2H), 2.15 (s, 6H), 1.92-1.85 (m, 2H), 1.44 (s, 9H).13 C-NMR (100MHz, DMSO-d6) δ 161.7, 158.9, 158.3, 155.5, 152.7, 151.3, 134.9, 128.3, 124.2, 116.9, 109.1, 107.4, 80.8, 66.1, 55.5, 45.1, 41.7, 27.8, 26.6, 25.7. HRMS (ESI) calcd for C23 H32 N6 NaO3 S [M + Na]: 495.2154; found 495.2679.
【0082】
(実施例5)
(Boc基を除去して式(II)の化合物を得る)
式(II)の化合物は、式(IV)の化合物から酸性条件(
図5)でBoc保護基を除去することによって得ることができ、式中、Bはアリーレン又はヘテロアリーレンである。W及びZは独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキニル、アリール、単環式ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルケニルアルコキシ、ハロゲン、アルコキシアミノ、又はアルコキシアルキルアミノ基である。R
1及びR
2は独立して、水素、ハロゲン、又はOAであり、ここで、R
1及びR
2は両方とも水素ではない。Aはアルキルアミノ基である。nは0、1、2、3、又は4である。好ましくは、式(II)の化合物は、溶媒から再結晶される。
【0083】
【0084】
中間体である化合物8の合成を例にとった。バルクスケールで高純度を得るために、化合物7をジクロロメタン中で約40~45℃でTFAと反応させてBoc保護基を除去し、TFA塩として化合物8を得た。反応混合物からの純粋な生成物の単離は、MTBE(メチルtert-ブチルエーテル)及びMeOH溶媒混合物を使用するロバストな再結晶手順を必要とした。その結果、上記の反応及び後処理方法を用いて、中間体である化合物8が、カラム精製の必要なしに、優れた収率(99%)及びHPLC純度(98.2%)で得られた。
【0085】
5-(2-(7-(3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)キナゾリン-4-イル)アミノ)エチル)チアゾール-2-アミン(化合物8).
1HNMR (400MHz, DMSO-d6) δ 9.98 (brs, 1H), 9.83 (brs, 1H), 8.86 (s, 1H), 8.69 (s, 1H), 8.38 (d, J=9.6Hz, 1H), 7.40 (dd, J = 9.2, 2.4Hz, 1H), 7.25 (d, J=2.4Hz, 1H), 7.04 (s, 1H), 4.24 (t, J=6.0Hz, 2H), 3.86 (q, J=12.4, 6.4Hz, 2H), 3.25 (brs, 2H), 3.03 (t, J=6.4Hz, 2H), 2.83 (s, 6H), 2.22-2.15 (m, 2H).13 C-NMR (100MHz, DMSO-d6), δ 169.6, 163.6, 160.1, 158.9 (q, J=64.9, 32.8Hz, C=O, トリフルオロ酢酸), 151.4, 140.2, 125.7 (d, J=98.4Hz), 121.4 (CF3, トリフルオロ酢酸), 118.4 (d, J=31.3Hz), 115.3, 106.9, 101.2, 65.9, 53.9, 42.2, 41.8. HRMS (ESI) calcd for C18 H25 N6 OS [M + H]: 373.1810; found 373.1807.
【0086】
(実施例6)
(式(I)の化合物を提供するための尿素結合生成)
式(I)の化合物は、式(III)の化合物を塩基性条件(
図6)で式(II)の化合物と反応させることによって得ることができ、式中、Bはアリーレン又はヘテロアリーレンであり、Dはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、単環式ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、又はヘテロシクロアルケニル基であり、W及びZは独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリール、単環式ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニルアルコキシ、ハロゲン、アルコキシアミノ、又はアルコキシアルキルアミノ基であり、R
1及びR
2は独立して、水素、ハロゲン又はOAであり、ここで、R
1及びR
2は両方とも水素ではない。nは0、1、2、3又は4である。好ましくは、式(I)の化合物は、溶媒から再結晶される。
【0087】
【0088】
例えば、化合物10は、中間体である化合物8と3-クロロフェニルイソシアネート(化合物9)との間の反応を、Et3Nを塩基として用いてDCM中で実施する結合反応を用いて合成した。溶媒系をスクリーニングして尿素結合生成を行った(表5)。CH2Cl2/CH3CN(1:1)溶剤混合物中で化合物10を良好な収率で完結させ、これをCH3CNとMeOH(1:1)の混合物から再結晶により単離した。CH2Cl2/CH3CN(1:1)溶剤系は、反応工程中の粘着性ゲル生成を回避した。さらに、出発材料の水分含有量は、化合物10を高純度で得るために反応中に化合物8を完全に消費することができるように、最小に保つ必要があることが見出された。
【0089】
【0090】
1-(3-クロロフェニル)-3-(5-(2-(7-(3-(ジメチルアミノ)-プロポキシ)キナゾリン-4-イル)アミノ)エチル)チアゾール-2-イル)尿素(化合物10).
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 10.64 (brs, 1H), 9.20 (brs, 1H), 8.41 (s, 1H), 8.25 (t, J=5.6Hz, 1H), 8.11(d, J=9.2Hz, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.33-7.28 (m, 2H), 7.11 (dd, J=9.2, 3.2Hz, 2H), 7.05 (m, 2H), 4.12(t, J=6.4Hz, 2H), 3.72(q, J=12.8, 6.8Hz, 2H), 3.07 (t, J=7.2Hz, 2H), 2.38 (t, J=7.2Hz, 2H), 2.15 (s, 6H), 1.92-1.85 (m, 2H).13 C-NMR (100MHz, DMSO-d6) δ 161.7, 159.2, 158.9, 155.6, 152.5, 151.3, 140.5, 133.2, 132.7, 130.4, 127.3, 124.2, 122.0, 117.8, 116.9, 109.1, 107.4, 66.0, 55.5, 45.1, 41.6, 26.6, 25.8. HRMS (ESI) calcd for C25 H28 ClN7 NaO2 S [M + Na]: 548.1611; found 548.1598.
【0091】
(実施例7)
(式(I)の化合物のキログラムスケールの全合成)
本明細書では、化合物10の製造のために3kgスケールで操作することができる実用的かつスケールアップの手順を実証する。最適化されたプロセス製造は、6段階の反応シーケンスを使用して、キロラボ施設においてマルチキログラムスケールで実行された。全ての工程は、生成物を固体として提供し、反応混合物から直接遠心分離するか、又は溶媒から再結晶化して、高純度で生成物を得た。
【0092】
200.0Lのグラスライニングしたジャケット付き反応器に、エタノール(70.0kg)及び2-アミノ-4-フルオロ安息香酸(化合物1)(9.70Kg、62.52モル、1.0当量)を装入した。得られた混合物を室温で撹拌し、次いで酢酸ホルムアミジン(13.13kg、125.04モル、2.0当量)を同じ温度で一度に添加した。反応混合物を加熱還流し、2日間撹拌した。HPLC分析により、4%未満の出発物質である化合物1が残っていることが示されたとき、バッチ温度を10~15℃に徐々に低下させ、その温度で4時間撹拌した。内部温度を10~15℃に維持しながら、化合物を沈殿させ、混合物を遠心分離し、ケーキをエタノール(8.0Kg)ですすいだ。湿ったケーキを真空下、55℃で、24時間オーブン中で乾燥させて、化合物2(9.17kg、89.4%)を灰白色固体として99.8%のHPLC純度で得た。
【0093】
別の200.0Lグラスライニングジャケット付き反応器に、3-(ジメチルアミノ)プロパン-1-オール(化合物3)(31.62kg、306.59モル、5.5当量)及び粉末KOH(12.51kg、222.98モル、4.0当量)を装入した。得られた混合物を120℃に加温し、1時間撹拌した。次に、キナゾリノンである化合物2(9.15kg、55.75モル、1.0当量)をその温度で反応器に添加した。反応混合物を同じ温度で8時間撹拌した。HPLC分析は、化合物2の0.3%のみが残っていることを示した(Rt=6.9分)。15℃まで冷却し、内温を20~25℃に保ちながら、H2O(100.0L)を1時間かけて滴下した。得られた混合物を、液液連続抽出器([参考非特許文献2再掲]Reddy et. al., Org. Process Res. Dev. 2021, 25, 817-830)を用いてEtOAc(650.0kg)で3日間連続抽出した。最後に、水相をEtOAc(150.0kg×2)とEtOH(10.0kg×2)の混合物で2回抽出し、合わせた有機相を真空下50℃で容積が約55.0Lになるまで濃縮した。混合物をEtOH(5.0kg)で処理し、45℃で1時間加熱した。溶液温度を15℃に下げ、約2時間保持して生成物の沈殿を得た。混合物を遠心分離し、固体を収集し、ケーキをEtOAc(4.9kg)及びEtOH(0.46kg)の混合物でリンスし、11.20kgのウェットケーキを得た。湿ったケーキを真空下45℃で18時間オーブン中で乾燥させて、所望の生成物である化合物4(9.22kg、66.9%)を白色固体として得、HPLC純度は98.5%であった。
【0094】
50.0Lのグラスライニングしたジャケット付き反応器に、CH3CN(7.8kg)及び4(1.64kg、6.63モル、1.0当量)を装入し、室温で撹拌した。さらに、POCl3(2.03kg、13.26モル、2.0当量)を、30℃以下に維持しながら10分間かけて添加した。温度を45分間かけて~80℃に上昇させ(反応混合物は56℃で透明になった)、8時間保持した。反応の完了は、HPLC分析によって確認され、これは、未反応出発物質が約1%であることを示した。1時間かけて~35℃に冷却し、CH2Cl2(46.0kg)を入れ、滴下槽に移した。滴下槽内を200.0L反応器中の12.5%K2HPO4クエンチ水溶液(97.4kg)に20分間かけて移し、-5~+5℃に保ち、目標pH4~5に到達させた。次いで、50%K2CO3水溶液(14.8kg)を、pH9~10まで5~15℃で20分間かけて反応器に装入した。混合物を約15℃で20分間撹拌し、沈降させて層を分割した。有機層を分離し、水層を再度CH2Cl2(46.0kg)で洗浄した。合わせた有機相を5%ブライン(33.0kg)で洗浄し、Na2SO4(6.6kg)で2時間乾燥させた。ろ液をろ過し、CH2Cl2(13.0kg)ですすぎ、ろ液をサンプリングしたところ、96.7%であった。クロロ化合物5の不安定性のために、上記濾液を次の工程に直接使用した。
【0095】
アミンである化合物6(1.45kg、5.97モル、0.9当量)を、前の工程で得られた濾液である化合物5に直接充填した。その後、20℃で約2.5Lに減圧濃縮した後、CH3CN(8.2kg)を投入し、約4.1Lに濃縮した。50.0Lの反応器に移し、CH3CN(6.6kg)及びDIPEA(0.856kg、6.63モル、1.0当量)を反応器に装入した。混合物を55℃に加熱し、2時間保持した後、バッチ温度を30分かけて65℃に上げ、撹拌しながら2時間保持した。追加量のアミンである化合物6(0.161kg、0.663モル、0.1)をその温度で反応器に装入した。反応温度を75℃に上げ、4時間撹拌した。反応混合物をHPLCによってサンプリングし、3.5%の未反応出発物質である化合物5を検出した。次いで、温度を約65℃に維持しながら、MeOH(0.62L)を反応器に添加し、1時間保持した。混合物を2時間かけて20℃に冷却した。混合物を約5時間撹拌し、次いで遠心分離して粗ケーキを得、CH3CN(7.0kg)及びMeOH(0.40kg)の混合物で洗浄して、89.5%HPLC純度を有する湿潤ケーキとして4.56kgの化合物7を得た。50L反応器中のEtOAc(6.32kg)及びMeOH(1.26kg)の溶液及び湿潤ケーキ4.56kgを85℃に12時間加熱した。次に、反応温度を2.5時間かけて20℃に冷却し、3時間保持した。混合物を遠心分離し、ケーキをEtOAc(4.0kg)ですすぎ、1.30kgの生成物を得た。湿ったケーキを50℃の真空下のオーブン中で10時間乾燥させて、生成物である化合物7(1.22kg、2段階で38.9%の収率)を、96.8%のHPLC純度を有する淡褐色固体として得た。
【0096】
100.0Lのジャケット付き反応器を窒素置換し、Boc-アミンである化合物7(4.00kg、8.46モル、1.0当量)及びCH2Cl2(42.2kg)を充填した。反応温度を30℃未満に維持しながら、トリフルオロ酢酸(15.20kg、132.88モル、15.7当量)を1時間かけて反応器に滴下した。得られた混合物を45℃に加熱し、その温度で約6時間撹拌した。HPLC分析が、化合物7の1%未満が残っていることを示したとき、反応物を約10.0L体積まで濃縮した。続いて、MeOH(3.2kg)及びMTBE(12.0kg)を反応器に入れ、室温で約6時間撹拌した。混合物を濾過し、得られた固体をMTBE(12.0kg)で洗浄した。湿ったケーキを50℃の真空オーブン中で約2日間乾燥させて、5.85kg(約99%)の化合物8を98.2%のHPLC純度を有する白色固体として得た。
【0097】
32℃でかき混ぜながら、窒素置換された200.0Lジャケット付き反応器に化合物8(5.57kg、8.05モル、1.0当量)、CH2Cl2(61.0kg)、乾燥CH3CN(36.8kg)を充填した。次に、Et3N(2.80kg、27.60モル、3.43当量)をその温度で15分間にわたって添加し、10分間撹拌した。次に、3-クロロフェニルイソシアネート(2.06kg、13.44モル、1.67当量)をその温度で5分間にわたって添加し、温度を約35℃に維持しながら混合物を約4時間撹拌した。HPLC分析は、0.07%未満の出発物質である化合物8が未反応のままであることを決定した。25℃に冷却し、1時間保持した後、遠心分離して生成物をケーク状にし、CH3CN(46.0kg)及びMeOH(36.8kg)で再結晶した。湿ったケーキを真空下、50℃で12時間にわたってオーブン中で乾燥させて、純度97.8%及び97.2%のアッセイ純度を有する白色固体として最終生成物である化合物10(3.04kg、71.8%)を得、単一の最大不純物は最大で0.6~0.7%であった。
【0098】
本発明の多くの実施形態を説明してきたが、本発明の化合物及び方法を利用する他の実施形態を提供するために、本発明の基本的な実施例を変更してもよいことは明らかである。したがって、本発明の範囲は、例として表された特定の実施形態によってではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されることが理解されるであろう。