(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】間接的表面清浄化装置および方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/82 20120101AFI20240110BHJP
G03F 1/42 20120101ALI20240110BHJP
【FI】
G03F1/82
G03F1/42
(21)【出願番号】P 2022101957
(22)【出願日】2022-06-24
(62)【分割の表示】P 2020180356の分割
【原出願日】2016-03-03
【審査請求日】2022-07-22
(32)【優先日】2015-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522189012
【氏名又は名称】ブルーカー ナノ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】ルクレア ジェフリー イー
(72)【発明者】
【氏名】ロエスラー ケネス ジー
(72)【発明者】
【氏名】ブリンクリー デイヴィッド
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-306812(JP,A)
【文献】特開2010-152031(JP,A)
【文献】特表2010-536064(JP,A)
【文献】特開2012-222355(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0038637(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0257184(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクの性能特性を向上させる方法であって、前記フォトマスク上には少なくとも1つの特徴部が設けられ、前記少なくとも1つの特徴部は、関連した設計上の存在場所を有し、前記少なくとも1つの特徴部の存在場所と前記関連の設計上の存在場所との間の距離が前記少なくとも1つの特徴部の位置の誤差を生み出し、前記方法は、
電磁放射線を前記フォトマスクの方へ方向付けるステップを含み、前記電磁放射線は、前記フォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長を有し、
前記フォトマスク上への前記電磁放射線の入射による前記フォトマスク中の熱エネルギー増加を発生させるステップを含み、
前記フォトマスク中の前記熱エネルギーの増加の前記発生の結果として前記位置誤差を減少させるステップを含
み、前記1つの特徴部の位置は、局所的に前記1つの特徴部へのフルエンスエネルギーを変化させ、前記フォトマスクに熱エネルギーを付与する回数を変化させることにより変更される、方法。
【請求項2】
前記電磁放射線を前記フォトマスク上に位置決めされた物体中へ方向付けるステップを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記フォトマスクは、ペリクル内に少なくとも部分的に収納され、前記物体は、ペリクル膜である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記レーザ波長は、8マイクロメートルを超える、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記フォトマスクは、石英フォトマスクであり、前記電磁放射線波長は、約9マイクロメートルである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
薄膜が前記フォトマスク上に設けられ、前記少なくとも1つの特徴部は、前記薄膜中に含まれている、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記薄膜は、部分光吸収性である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記位置誤差の前記減少は、脱水、酸化、アニーリング、および高密度化のうちの少なくとも1つの結果である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの特徴部は、第1の存在場所のところに設けられた第1の特徴部および第2の存在場所のところに設けられた第2の特徴部を含み、前記第2の存在場所は、前記第1の存在場所とは異なり、前記方法は、
前記第1の特徴部の位置の誤差を第1の量だけ減少させるステップと、
前記第2の特徴部の位置の誤差を第2の量だけ減少させるステップとを更に含み、前記第1の量は、前記第2の量とは異なる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記フォトマスクは、複数の材料を含み、前記電磁放射線は、レーザビームであり、前記レーザビームは、前記複数の材料のうちの少なくとも2つ材料の高吸収係数と実質的に一致した波長を有する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
フォトマスクの光学特性を向上させる方法であって、
電磁放射線を前記フォトマスクの方へ方向付けるステップを含み、前記フォトマスク上には部分吸収性薄膜が設けられ、前記電磁放射線は、前記フォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長を有し、
前記フォトマスク上に入射した前記電磁放射線に応答して前記フォトマスク中に熱エネルギーの増加を発生させるステップを含み、
局所的に前記フォトマスク上の第1の特徴部へのフルエンスエネルギーを変化させ、前記フォトマスクに熱エネルギーを付与する回数を変化させることにより、前記フォトマスク上の第2の特徴部に対する前記フォトマスク上の
前記第1の特徴部の位置を変更するステップを含む、方法。
【請求項12】
前記変更ステップは、前記第1の特徴部と前記第2の特徴部との間の距離を増大させるステップを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記変更ステップは、前記第1の特徴部と前記第2の特徴部との間の距離を減少させるステップを含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記フォトマスクは、ペリクル内に少なくとも部分的に収納され、前記方法は、前記電磁放射線を前記フォトマスクの上方に位置決めされたペリクル膜中へ方向付けるステップを更に含む、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記電磁放射線は、前記薄膜の方へ更に方向付けられ、前記電磁放射線は、前記薄膜の高吸収係数と実質的に一致した波長を有する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
フォトマスクの光学特性を向上させる方法であって、
電磁放射線を前記フォトマスク上に設けられた部分吸収性薄膜の方へ方向付けるステップを含み、前記電磁放射線は、前記薄膜の高吸収係数と実質的に一致した波長を有し、
前記薄膜上に入射した前記電磁放射線に応答して前記薄膜中の熱エネルギー増加を発生させるステップを含み、
局所的に前記フォトマスク上の第1の特徴部へのフルエンスエネルギーを変化させ、前記フォトマスクに熱エネルギーを付与する回数を変化させることにより、前記フォトマスク上の第2の特徴部に対する前記フォトマスク上の
前記第1の特徴部の位置を変更するステップを含む、方法。
【請求項17】
前記変更ステップは、前記第1の特徴部と前記第2の特徴部との間の距離を増大させるステップを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記変更ステップは、前記第1の特徴部と前記第2の特徴部との間の距離を減少させるステップを含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記フォトマスクは、ペリクル内に少なくとも部分的に収納され、前記方法は、前記電磁放射線を前記フォトマスクの上方に位置決めされたペリクル膜中へ方向付けるステップを更に含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記電磁放射線は、前記フォトマスクの方へ更に方向付けられ、前記電磁放射線は、前記フォトマスクの高吸収係数と実質的に一致した波長を有する、請求項16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示内容、すなわち本発明は、一般に、表面を清浄化(クリーニング)する装置および方法、特に半導体業界で用いられているコンポーネント、光学系などの表面を清浄化する装置および方法に関する。本発明において開示する装置および方法は、フォトマスクレチクルの有効寿命の延長、フォトマスクレチクルの性能の向上、またはこれらの組み合わせに利用できる。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本特許出願は、2014年6月3日に出願された米国特許出願第14/294,728号の一部継続出願であり、この米国特許出願は、2013年11月11日に出願された米国特許出願第14/077,028号(現在、米国特許第8,741,067号)の一部継続出願であり、この米国特許出願は、2012年10月22日に出願された米国特許出願第13/657,847号(現在、米国特許第8,613,803号)の一部継続出願であり、この米国特許出願は、2008年11月24日に出願された米国特許出願第12/277,106号(現在、米国特許第8,293,019号)の一部継続出願であり、この米国特許出願は、2008年3月25日に出願された米国特許出願第12/2,055,178号(現在、米国特許第7,993,464号)の一部継続出願であり、この米国特許出願は、2007年8月9日に出願された米国特許仮出願第60/954,989号の優先権主張出願であり、これら米国特許出願を参照により引用し、これら米国特許出願の開示内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
半導体のフォトグラフィ製造は、半導体ウェーハ上に特徴部を作製するための一連のフォトマスクを利用する。各フォトリソグラフィステップでは、フォトマスクは、前処理された半導体ウェーハ上に画像化される。フォトマスクがウェーハ上にいったん刻印されると、追加の処理を利用してフォトマスクのパターン中の半導体ウェーハ材料を改質することができる。次のステップでは、追加のフォトマスクをウェーハ上に画像化する場合がある。先のフォトマスクを用いて作製された特徴部に対する次のフォトマスクの高精度アライメントまたは位置合わせは、半導体ウェーハ上に作られる構造体の品質を高める。半導体ウェーハ上に作られる構造体の品質を評価する測定基準としては、単一の特徴部の寸法精度、1つの特徴部の他の特徴部に対する存在場所の寸法精度、またはこれらの組み合わせが挙げられる。フォトマスク上の特徴部の寸法の中には、臨界寸法(CD)と呼ばれるものがあり、フォトマスク上の特徴部の他の特徴部に対する配置状態は、オーバーレイと呼ばれる場合がある。たいていの臨界フォトマスクの場合、オーバーレイ要件は、マスクの全長にわたって数ナノメートル以下である場合がある。
【0004】
フォトマスクの特性、例えば臨界特性や材料特性は、製造プロセス中に適用される公差の結果としての範囲内でばらつきを生じる場合がある。例えば、膜の光学的性能特性は、膜の材料組成および膜の厚さで決まる場合がある。さらに、マスクのCDおよびオーバーレイは、書き込みツールの精度、エッチングプロセスの精度、清浄化プロセスの回数および形式、ならびに作製中にフォトマスクに加えられる温度および応力に応じて様々な場合がある。未処理状態のフォトマスクの特性のばらつき(例えば、組成およびフィルム応力の差)は、製造プロセスに対するフォトマスクの応答を変化させることによってCDおよびオーバーレイの最終のばらつきの原因ともなり得る。
【0005】
マスク間の差は、最終的には、フォトマスクを用いて作製される製品のばらつきをもたらす。この理由で、性能基準の限度または範囲が欠陥のあるフォトマスクを製造中の使用にとって許容可能であるフォトマスクから区別するために利用される。フォトマスク性能が許容限度の外にある場合、そのフォトマスクは捨てられ(不合格品とされ)、別のマスクが作られる。
【0006】
作製上のばらつきに加えて、フォトマスクの性能特性は、製造中の使用に起因して変化する場合がある。製造中の使用の際、フォトマスクは、強烈な放射線にさらされる場合があり、かかる放射線としては紫外線(UV)放射線、遠紫外線(DUV)放射線、または極紫外線(EUV)放射線が挙げられる。放射線は、フォトマスク、特に薄膜の光劣化を引き起こす場合がある。また、フォトマスクは、ある期間にわたる作製中における使用後、清浄化(クリーニング)を必要とする場合がある。これら清浄化プロセスは、フォトマスクの特性を変える場合があり、フォトマスクを再清浄化することができ、しかも依然として規格を満たす回数には制限がある場合がある。
【0007】
フォトマスクの臨界特性のうちの1つまたは2つ以上のマスク間ばらつきを減少させるプロセスは、潜在的に、フォトマスクを用いる半導体作製プロセスの全体的製造歩留まりを向上させることができる。第1に、規格外マスクの修正およびマスクを製造中の使用にとって実行可能にすることは、規格外フォトマスクを交換するための新たなフォトマスクの製作と関連した製造上の遅延およびコストを回避するのを助けるのに役立ちうる。第2に、1つまたは2つ以上の性能特性のばらつきを減少させると、その結果として、別の特性の許容範囲を拡張するよう使用できる公差マージンが得ることができる。かくして、臨界フォトマスク特性のばらつきを減少させることは、製品ウェーハ上の印刷特徴部のばらつきを減少させるという利点を提供することができ、それによりデバイスの歩留まりおよび性能が向上する。
【0008】
一例として、ウェーハ上の特徴部配置の精度を向上させるためにフォトマスクのオーバーレイを向上することが有利な場合があり、かかる向上したオーバーレイを用いると、規格外マスクを修正することができ、それによりマスクの歩留まりが向上する。加うるに、同一ウェーハ上に印刷されるマスクの組についてオーバーレイ中のマスク間ばらつきを減少させることが有利な場合がある。ウェーハ上の多数のマスクからの特徴部のアライメントを向上させることにより、別の臨界パラメータのばらつきの他の欠陥の増加は、許容可能となる場合がある。
【0009】
フォトマスク業界の技術動向は、マルチプルパターニング(multiple patterning)に向かっているので、臨界マスク層相互間のオーバーレイ精度に関する要件が厳しくなっている。マルチプルパターニングでは、2つまたは3つ以上のマスクが印刷ウェーハ上の特徴部サイズの減少をもたらすよう組み合わせて用いられる。特徴部サイズの減少には、個々のマスクの誤差の減少とマスクの組相互間のオーバーレイ誤差の減少の両方が必要となる場合がある。したがって、マルチプルパターニングで用いられるフォトマスクのためのオーバーレイを向上させるプロセスを開発することが特に有利である。
【0010】
この背景技術の説明は、読者を助けるために本発明者によって設けられており、提示した問題のうちの任意のもの自体が当該技術分野において知られているという示唆として受け取られてはならないことが理解されよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
少なくとも上述の説明を考慮する際、フォトマスク製造プロセス前、フォトマスク製造プロセス中、フォトマスク製造プロセス後の処理によってフォトマスクのオーバーレイを向上させることができるプロセスを開発することが有利である。
【0012】
加うるに、製造中における使用によって生じる変化を回復させるためにフォトマスクのオーバーレイを向上させることができるプロセスを開発することが有利である。
【0013】
加うるに、利用性、性能、ライフタイム(寿命)または他の使用の観点を高めるフォトマスクのオーバーレイを変更する新規な方法および/または装置を開発することが有利である。
【0014】
加うるに、表面損傷の恐れを減少させた状態で利用性、性能、ライフタイムまたは他の使用の観点を高めるフォトマスクのオーバーレイを改良する新規なレーザを利用した方法および/または装置を開発することが有利である。
【0015】
加うるに、フォトマスクのオーバーレイを改良する方法および/または装置をフォトマスク作製、ウェーハ作製、および/または補修プロセスに組み込むことが有利である。
【0016】
加うるに、フォトマスク表面上の部分的吸収膜の局所的または全域的熱的改良によってフォトマスクのオーバーレイを改善する方法および/または装置を開発することが有利である。
【0017】
加うるに、熱を利用した表面汚染の除去を生じさせるとともに、表面損傷の恐れを減少させた状態で利用性、性能、ライフタイム、または他の使用の観点を高めもするオーバーレイを改良するためにフォトマスクの熱的改良を行う新規なレーザを利用した方法および/または装置を開発することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の要望は、本発明のある特定の実施形態によって相当な程度まで満たされる。本発明の一実施形態によれば、物体の材料の1つまたは2つ以上の特性を改良して材料の光学的性質に影響を及ぼすとともに/あるいは標的材料を利用したデバイスの性能またはライフタイムに影響を及ぼす方法が提供される。具体的に言えば、フォトマスクのオーバーレイを改良する方法が提供される。この方法は、基板および/または薄膜内に熱的エネルギーまたは熱の蓄積を生じさせる基板の照射を含むのが良い。その結果生じる部分吸収性膜中の温度の上昇により、熱を利用した材質の変化が生じ、かかる材質の変化としては、組成の変化(例えば、脱水、酸化)、表面変化(例えば、モルフォロジー、粗さ)、または材料特性の変化(例えば、アニーリング、高密度化)が挙げられるがこれらには限定されない。
【0019】
本方法は、電磁放射線の使用、特にレーザ放射線の使用を含むのが良い。本発明の方法では、比較的長いパルス幅を利用することによりまたは照射により基板および薄膜を同程度の温度まで加熱することによって薄膜損傷の恐れの減少が得られる。この方法は、フォトマスクオーバーレイの局所化改良および/または一様なまたは非一様な全域的改良によるフォトマスク性能の向上を可能にする。
【0020】
本方法は、基板の上方のエンバイロンメントが実質的にまたは完全に密閉される用途について利点を奏することができる。これらの場合、本方法は、表面に対して設けられていて基板のエンバイロンメントエンクロージャの一部である材料中へ電磁エネルギー源を方向付けるステップを更に含む。例えば、本発明の方法は、ペリクル付きフォトマスクのオーバーレイを改良するために利用できる。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、上述の方法を利用するレーザ材料改質のための装置が提供される。本装置は、フォトマスクオーバーレイの点検または検査のための測定基準を含むのが良い。これら測定は、有利には、プロセスの利用前、利用中、または利用後に実施され、そして使用中、プロセスの閉ループ制御のために使用できる。
【0022】
上述の装置は、基板および/または隣接の材料の温度をモニタして制御する手段を更に含むのが良い。かかる手段は、局所温度制御または基板全体にわたる温度制御を含むのが良い。
【0023】
本発明の更に別の実施形態によれば、本明細書に開示する方法および/または装置を利用したフォトマスク作製プロセスは、フォトマスクのオーバーレイを改良するために提供される。
【0024】
本発明のある特定の実施形態は、表面前処理または基板表面の上方のエンバイロンメンタル制御を行わないで材料を改質する能力を提供する。ある特定の実施形態は、基板損傷の恐れを減少させた状態で材料改質を可能にする。さらに、本発明のある特定の実施形態は、ウェーハ印刷の際に用いられるフォトマスクのライフタイムの延長を可能にする。本発明のある特定の実施形態はまた、ウェーハ印刷の際に用いられるフォトマスクの製造精度の向上を可能にする。加うるに、本発明のある特定の実施形態は、フォトマスク歩留まりの向上を含むウェーハ製造費の減少およびデバイス歩留まりの向上をもたらす性能を提供する。
【0025】
かくして、本明細書における本発明の詳細な説明を良好に理解することができるとともに当該技術分野に対する本発明の貢献を良好に理解することができるようにするために本発明のある特定の実施形態をかなり広義に概要説明した。当然のことながら、以下に説明するとともに本明細書に添付された特許請求の範囲の要旨をなす本発明の追加の実施形態が存在する。
【0026】
この点において、本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その用途が以下の説明に記載されまたは図面に示された部品またはコンポーネントの構成および配置の細部には限定されないことは理解されるべきである。本発明は、説明した実施形態の他の実施形態で具体化できるとともに種々の仕方で実行されるとともに実施できる。また、本明細書において用いられる語句および用語ならびに要約は、例示目的であって本発明を限定するものと見なされてはならないことは理解されるべきである。
【0027】
したがって、当業者であれば、本発明が立脚する技術的思想は、本発明の幾つかの目的を達成するための他の構造、方法およびシステムの設計の基準として容易に利用できることが理解されよう。したがって、特許請求の範囲に記載された発明は、かかる均等構成例が本発明の精神および範囲から逸脱しない限りにおいて、かかる均等構成例を含むものと解されることが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】部分吸収性材料または物質の外部から生じさせる熱励起の略図である。
【
図1B】基板の頂部上の吸収性薄膜の側面図である。
【
図2】電磁スペクトルの遠紫外領域から遠赤外領域までのMoSiの吸収スペクトルのプロットを示す図である。
【
図3】電磁スペクトルの遠紫外領域から遠赤外領域までの石英の吸収スペクトルのプロットを示す図である。
【
図4】ペリクルを含む薄膜部分吸収体が取り付けられたフォトマスクの表面の図である。
【
図5A】ペリクル付きのフォトマスクの略図であり、ペリクルを通って表面上に集束されたレーザビームを示す図である。
【
図5B】集束により作られたペリクル上のビームスポットサイズとマスク上のビームスポットサイズを比較する略図である。
【
図5C】ペリクル付きのフォトマスクの略図であり、ペリクルを通って表面上に集束されたレーザビームを示す図であってペリクル上のビームスポットの側面図である。
【
図6A】ビームエネルギーのガウス分布およびこれに対応して生じた温度プロフィールの断面図である。
【
図6B】ビームエネルギーのトップハット(top-hat)分布およびこれに対応して生じた温度プロフィールの断面図である。
【
図7】コールドプレートがマスクの底部に接触した状態のフォトマスクの略図である。
【
図8】フォトマスク上の諸領域の強制対流による冷却の状態を示す略図である。
【
図9A】局所熱エネルギーまたは熱蓄積を最小限に抑えるための表面を横切るレーザビームの単一のパスの略図であり、スポット相互間の側方間隔が大きな状態の単一のロー(行)またはコラム(列)が示されている図である。
【
図9B】局所熱エネルギーまたは熱蓄積を最小限に抑えるための表面を横切るレーザビームの2回のパスの略図であり、パルスの組相互間の間隔が大きな状態で2つの組のビームスポットがオーバーラップした状態の単一のローが示されている図である。
【
図9C】基板の断面の材質変化処理を達成するための基板の領域上の多数のレーザパスの略図である。
【
図9E】基板上の非連続パルスの使用を表わす略図である。
【
図10】熱電対または赤外温度モニタ装置を備えた基板上の部分吸収体材料の略図である。
【
図11】材料特性分析のための画像化、顕微鏡検査、分光法、または組み合わせシステムを備えた基板上の部分吸収体材料の略図である。
【
図12】測定システムを備えた基板上の部分材料の略図であり、測定システムとレーザビーム送出源が共通経路を共有している状態を示す図である。
【
図13】レーザビームに対する基板のロボット式ローディングおよびX/Y/Zステージ動作のシステム図である。
【
図14】本発明の一観点によるフォトマスク組立体の平面図である。
【
図15】本発明の一観点によるフォトマスク組立体の平面図である。
【
図16】本発明の一観点によるフォトマスク組立体の平面図である。
【
図17】本発明の一観点によるフォトマスク組立体の平面図である。
【
図18】本発明の一観点によるフォトマスク組立体の平面図である。
【
図19】本発明の一観点によるフォトマスク組立体の平面図である。
【
図20】本発明の一観点によるフォトマスク組立体の平面図である。
【
図21】本発明の一観点によるフォトマスク組立体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、図面を参照して本発明の諸観点について詳細に説明し、図中、同一の参照符号は、別段の指定がなければ、図全体を通じて同一の要素を示している。
【0030】
本発明の諸観点は、フォトマスク上の特徴部の位置を変更する装置および方法を提供する。
図1Aは、部分吸収性材料または物質の外部から生じさせる熱励起の略図である。
図1Aに示されているように、励起装置100は、エネルギービーム2を部分的または完全に透過させる基板4の表面上に設けられた吸収性薄膜3上に方向付けるよう構成されるとともに配置された外部エネルギー源1を有する。本発明の一観点による励起方法は、外部エネルギー源1によって発生したエネルギービーム2による基板上の吸収性薄膜3の直接的励起を含むのが良い。基板4は、フォトマスクであるのが良くまたはフォトマスク組立体の一部分を構成するのが良く、「基板」という用語と「フォトマスク」という用語は、別段の指定がなければ、本明細書全体を通じて区別なく使用できる。
【0031】
別段の指定がなければ、本明細書において記載する部分吸収性膜は、特にリソグラフィック光波長の少なくとも何分の1かが膜を通過してウェーハの印刷効果を向上させることができるよう作られている。かくして、部分吸収性膜は、不透明な膜を含むことはない。
【0032】
本発明の一観点によれば、外部エネルギー源1は、電磁エネルギー源であり、エネルギービーム2は、電磁ビームである。本発明の別の観点によれば、外部エネルギー源1は、光源であり、エネルギービーム2は、光のビームである。本発明の別の観点によれば、外部エネルギー源1は、レーザ光源であり、エネルギービーム2は、レーザ光のビームである。しかしながら、理解されるように、外部エネルギー源1は、他のエネルギー形態を具体化したエネルギービーム2を生じさせても良く、かかる他のエネルギー形態としては、電子ビーム、マイクロ波ビーム、X線ビーム、音波、これらの組み合わせ、または当該技術分野において知られている任意他のエネルギービームが挙げられる。
【0033】
エネルギービーム2と吸収性薄膜3または基板4の相互作用により、吸収性薄膜3、基板4、またはこれらの組み合わせの熱励起を生じさせることができる。本発明の一観点によれば、エネルギービーム2と吸収性薄膜3の相互作用の結果として、吸収性薄膜3の材料の熱エネルギーの増加が生じ、それにより吸収性薄膜3の材料の温度の上昇を引き起こすことができる。代替的にまたは追加的に、エネルギービーム2と基板4の相互作用の結果として、基板4の材料の熱エネルギーの増加が生じ、それにより基板4の材料の温度の上昇を引き起こすことができる。基板4の温度が吸収性薄膜3の温度よりも高い場合、熱が伝導、対流、放射、またはこれらの組み合わせによって基板4から吸収性薄膜3に伝達することができ、それにより吸収性薄膜3の熱エネルギーまたは温度が更に増大する。
【0034】
理解されるように、本明細書において説明する材料中の熱エネルギーの増加は、エンタルピー(h)の増加、内部エネルギー(u)の増加、温度の増大、またはこれらの組み合わせを意味する場合がある。
【0035】
図1Bは、基板4の頂部上の吸収性薄膜3の側面図である。
図1Bでは、吸収性薄膜3は、基板4の幾つかの部分がこの上に設けられた吸収性薄膜3を介して外部エネルギー源1と連絡状態をなし、基板の他の部分が外部エネルギー源1と直接的な連絡関係をなし、この場合、吸収性薄膜3を通るエネルギービーム2の事前透過はないようにパターン付けされる。したがって、外部エネルギー源1と直接的な連絡状態にある基板4の部分中に生じる熱が基板4を通って伝わることができ、その後伝導、対流、放射、またはこれらの組み合わせにより吸収性薄膜3中に伝達することができるということは理解されよう。
【0036】
本発明の一観点によれば、材料の1つまたは2つ以上の特性を変更して材料特性を変えるとともに/あるいは標的材料を利用したデバイスの性能またはライフタイム(寿命)に影響を及ぼす方法が提供される。非限定的な実施例では、基板上の特徴部の位置を変更する方法が提供される。フォトマスク4上の吸収性薄膜3の場合、この方法は、製造中の使用、清浄化(クリーニング)プロセス、またはフォトマスクに加えられた外力(例えば、フォトマスク4へのペリクルの取り付け)によってずらされた吸収性薄膜3中の特徴部の位置を動かすことによってフォトマスク4の使用可能なライフタイムを延ばすことができる。この方法は、基板4および吸収性薄膜3中の熱エネルギーの一様な増加または温度上昇を生じさせるための基板表面の励起を含むのが良い。その結果として生じる基板4および/または薄膜3中の温度上昇により、熱を利用した材質変化が生じ、かかる材質変化としては、組成の変化(例えば、脱水、酸化)、表面変化(例えば、モルフォロジー、粗さ)、または材料特性の変化(例えば、アニーリング、高密度化)が挙げられるがこれらには限定されない。代替的にまたは追加的に、熱を利用した材質変化は、フォトマスクの光学的性能特性の変化であっても良い。
【0037】
レーザ以外の外部エネルギー源1を用いることができる。例えば、外部エネルギー源1は、電磁スペクトルの任意の部分に沿ってエネルギーを放射することができるランプまたは他の器具を含むことができ、かかる他の器具としては、マイクロ波、赤外線、近紫外線、遠紫外線、極紫外線、電子ビーム発生器、X線発生器、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
吸収性薄膜3および基板4は、多くの種々の材料から作製できまたは多くの種々の材料を含むことができる。本発明の一観点によれば、基板4は、薄膜吸収体特性を有するのが良く、かかる基板4をこの上に吸収性薄膜3が設けられない状態で材料改質のための標的とすることができる。吸収性薄膜3中の温度上昇は、吸収性薄膜3の材料および/または吸収性薄膜3の特性の熱による変化を生じさせることができ、かかる変化としては、脱水、酸化、表面粗さ、アニーリング、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
本発明の諸観点によれば、吸収性薄膜3を改造するしきい温度は、基板4の材料に対して損傷を生じさせる場合のある温度よりも低く、それにより基板4の熱による損傷の恐れが軽減される。本発明の諸観点はまた、他の基板または膜の改造技術に対する基板4の損傷の恐れを減少させることができ、というのは、本発明は、幾つかの場合において、多光子吸収プロセスの偏在的可能性を低くすることができる比較的長いパルス幅を利用することができるからである。本発明の一観点によれば、エネルギービーム2のパルス幅は、1マイクロ秒から10ミリ秒までの範囲にあるのが良い。本発明の別の観点によれば、レーザパルス幅は、連続波レーザ励起を含むそれ以下の1マイクロ秒を超えても良い。
【0040】
本発明の装置および方法は、薄膜吸収体3の上方のエンバイロンメントが実質的にまたは完全に密閉される用途について有利であると言える。例えば、
図4は、吸収性薄膜3および吸収性薄膜3に取り付けられたペリクル8を含むフォトマスク組立体102を示している。吸収性薄膜3が収納されると、本方法は、基板のエンバイロンメンタルエンクロージャの一部であるペリクル104の外面の近くに設けられた材料中にエネルギービーム2を方向付けるステップを更に含むのが良い。例えば、本発明の装置および方法は、ペリクル付きフォトマスク(
図5A参照)のオーバーレイを改良するために使用でき、この場合、ペリクル104は、ペリクル膜8、ペリクルフレーム9、およびペリクルフレーム接着剤10を含む。
【0041】
本発明の諸観点によれば、本方法は、吸収性薄膜3の強い吸収度と実質的に一致したレーザ波長を選択するステップと、吸収性薄膜3の所望の改造を生じさせるようレーザエネルギーおよびパルス幅を設定するステップとを含む。幾つかの場合において、基板4の吸収度の増大により、低いレーザエネルギーをプロセスのために用いることができ、したがって、レーザビーム2が基板4の表面に入射しまたはこれから反射されているときにレーザビーム2と相互作用する場合のある隣接の材料に対する損傷の恐れを減少させることができる。
【0042】
本発明の他の諸観点によれば、基板4によって高度に吸収されるエネルギービーム2の波長を選択し、このことは、基板の大部分が除去された薄膜吸収体を有する場合に有益であると言える。さらにまた、基板4の強吸収帯の近くのエネルギービーム2の波長を選択することにより、薄膜吸収体3と基板4との熱的差または温度差を減少させることができ、それにより吸収性薄膜3と基板4との熱膨張率の差を減少させることができる。多数のレーザビーム波長および/またはレーザビームエネルギーが多数の薄膜吸収体または2種類以上の材料から成る基板が用いられる場合に使用されるのが良い。例えば多数のレーザ源もしくは単一のチューナブルレーザ源またはこれら両方を利用することによって多数の波長を生じさせることができる。各レーザ源の内部または外部に位置する制御部および/またはデバイスを用いて各レーザ源の出力エネルギーの制御を行うことによって多数のエネルギーを用いることができる。
【0043】
多数の材料から成る基板は、材料パラメータならびにエネルギービーム2のパラメータの検討を必要とする場合があり、かかる検討は、励起波長選択を含む。本発明の一観点によれば、薄膜吸収体3の材料中に相当大きな吸収率を有するレーザ波長が選択される。幾つかの実施形態では、選択された波長は、基板4上のまたは基板4内の他の材料中に僅かな吸収率を有しまたはかかる他の材料によって高度に反射され、その結果、熱エネルギーの増加が主として薄膜吸収体3の材料中に生じることになる。これは、薄膜吸収体に隣接して位置する材料がプロセス温度によって影響を受ける場合に特に有用であると言える。例えば、ペリクル付きフォトマスクの場合、ペリクル膜8およびペリクルフレーム接着剤10は、薄膜吸収体膜に密接して位置するのが良い。システム中の全体的な熱エネルギーまたは温度の蓄積または増大を減少させることは、例えば、ペリクルフレーム接着剤のガス発生が生じまたはペリクルフレーム接着剤が劣化した場合に重要な場合がある。全熱エネルギーまたは温度増大を最小限に抑えることもまた、相当多量の熱がフォトマスク4表面とペリクル膜8との間のエンバイロンメント7に伝達される場合に重要な場合があり、というのは、この熱の蓄積が膜8、接着剤10、ペリクルフレーム9材料、またはこれらの組み合わせに悪影響を及ぼす場合があるからである。幾つかの場合、プロセス温度は、優先的には、基板4の材料の損傷または改質温度未満に維持されるのが良い。
【0044】
他の実施形態では、材料改質プロセスの基礎により、基板4のあらゆる領域が基板4または他の隣接材料の熱的損傷しきい値を超えないで代表的な改質に必要な温度に実質的に近い温度に達するようにすることが特に望ましい場合がある。材料のうちの1つを材料改質プロセス温度に至らせるのに必要なレーザエネルギーが特に材料の吸収率相互間に相当な差がある場合には他方の材料に熱的損傷を生じさせる恐れがある。エネルギービーム2の局所フルエンスは、暴露または露光されている材料に基づいて制御されるのが良い。
【0045】
他の実施形態では、材料改質プロセスの基礎により、基板4の互いに異なる領域が互いに異なる温度および互いに異なる処理レベルに達するようにすることを特に望ましくすることができる。確かなこととして、材料改質速度および程度は、レーザエネルギーに依存する場合がある。この場合、ビームの局所フルエンスは、基板4の互いに異なる領域の材質変化の所望の量に基づいて制御されるのが良い。また、材料改質は、エネルギー源が基板4に加えられる回数で決まる場合のあることもまた考えられる。この場合、エネルギー源の適用回数は、基板4の互いに異なる領域に互いに異なる材料改質量を生じさせるよう基板の端から端まで様々な場合がある。
【0046】
本発明の諸観点によれば、連続波長(CW)レーザを含むそれ以下の長いレーザパルス幅が相当に異なる吸収定数を備えた材料相互間の熱的平衡を改善するために用いられる。しかしながら、かかる長いレーザパルス幅の使用により、システム全体に最も高い熱エネルギーまたは温度の増加が生じ、そして基板表面に隣接して位置する材料がプロセス温度未満では熱的損傷しきい値または他の熱的に引き起こされる他の悪影響を有する場合、かかる長いレーザパルス幅は使用可能ではない場合がある。
【0047】
本発明の諸観点によれば、基板4上の材料のうちの幾つかまたは全てに相当大きな吸収率を有するレーザ波長を選択する。同一のレーザエネルギーはこの場合、例えば、基板材料の損傷しきい値のうちの任意のしきい値未満において所望のプロセス温度を生じさせるよう使用されるのが良い。熱的性質(拡散率を含む)を検討することによって、互いに異なる材料相互間の熱エネルギーまたは熱の伝達を利用することもまた可能である。幾つかの場合、これにより、特に高い吸収性材料からの熱エネルギーまたは熱の流れが低い吸収性材料よりも優先的である場合、プロセスフルエンスの減少を利用して基板4および/または薄膜吸収体3中に所望の熱的改質を達成することができる。この場合、高い吸収性材料から低吸収性材料への熱の流れにより、エネルギー源による低吸収性材料の直接的暴露によって必要とされるプロセスエネルギーよりも低いプロセスエネルギーを用いて低吸収性材料の温度を増大させることができる。
【0048】
実用的な実施例
【0049】
以下は、ウェーハ作製プロセスで用いられるフォトマスク基板のオーバーレイを改良するために利用される本発明の一観点としての方法の一例である。この実施例では、本発明の諸観点による熱的処理は、フォトマスクの基板および/または薄膜を改造してマスク上の他の特徴部に対する薄膜中の特徴部の位置のずれを生じさせることができる。この実施例は、本明細書において開示する幾つかの観点全体を通じて用いられるのが良い。
【0050】
レーザビームパラメータの制御は、フォトマスクのオーバーレイ調節に関連した観点において特に望ましい場合がある。例えば、波長選択が典型的なフォトマスクの物理的構造の故に非常に望ましい。幾つかの場合、フォトマスク組立体102は、石英基板4を有し、この基板4の臨界表面上には薄膜吸収体3または部分吸収性膜3が施されている(
図1Aおよび
図1B参照)。吸収性薄膜3が金属膜の場合、代表的には、生じさせることができるレーザ波長の大部分について相当大きな吸収係数が存在するであろう。しかしながら、部分吸収性膜の場合、これらの膜が純粋な金属のフィルムとは異なり、それほど吸収しない波長領域が存在する場合がある。しかしながら、石英基板4の場合、基板が相当大きな吸収率を有するとともにレーザ源が一般的に利用できる制限された波長範囲が存在する場合がある。したがって、ある特定の実施形態は、薄膜によって高度に吸収される波長を利用することができ、他方、基板は、選択された波長に対して弱い吸収性を示しまたは透明である。このプロセスは、システムの全体的温度上昇を最小限に抑えることができ、しかも石英基板の直接的な吸収損傷の恐れを軽減することができる。
【0051】
本発明の諸観点によれば、フォトマスク組立体102の特徴部を動かしてマスク作製および利用プロセスに起因してオーバーレイ中に生じる誤差を減少させることが有利な場合がある。
図14は、フォトマスク4の表面上の凹みまたは設計特徴部のアレイ110でマーク付けされたフォトマスク組立体の平面図である。
図14に示されている設計特徴部アレイ110は、十字(+)特徴部のアレイとして概略的に示されているが、理解されるように、このように図示された十字特徴部は、当該技術分野において知られている任意のフォトマスク特徴部上の点を表わしているに過ぎない。代表的には、設計特徴部アレイ110は、薄膜3をフォトマスク基板4上にパターニングすることによって作られる。しかしながら、パターンを表面上の薄膜の存否にかかわらず基板表面中に直接作ることができる。
【0052】
一実施例では、フォトマスクの大部分は、いわゆる「ダークフィールドマスク(dark field mask )」と呼ばれる場合のある薄膜吸収体3で覆われ、設計特徴部アレイ110の個々の特徴部は、設計特徴部存在場所のところの薄膜だけを除去することによって作られる。別の実施例では、フォトマスクの大部分は、いわゆる「クリアフィールドマスク(clear field mask)」と呼ばれる場合のある除去された薄膜吸収体を有し、設計特徴部アレイ110の個々の特徴部は、設計特徴部存在場所のところの薄膜だけを残すことによって作られる。ダークフィールドフォトマスクとクリアフィールドフォトマスクのいずれの場合においても、特徴部の実際の位置は、例えば製造プロセスのばらつきまたは半導体製造プロセスで用いられるフォトマスクに起因して生じる特徴部の移動の結果として、設計されたパターンアレイからのばらつきを生じる場合がある。
【0053】
図15は、本発明の一観点によるフォトマスク組立体102の平面図である。
図14と同様、
図15は、十字記号でマーク付けされた特徴部110の設計アレイを示しているが、加うるに、
図15は、ダイヤモンド(◇)記号によってマーク付けされた特徴部112の実際のアレイを含む。特徴部112の実際のアレイ中の実際の特徴部の各々は、特徴部110の設計アレイ中の設計特徴部に対応するのが良い。実際の特徴部のアレイ112からの位置特徴部の実際の位置と設計上の特徴部のアレイ110中の対応の設計特徴部に関する設計または意図した位置との差は、オーバーレイ中に誤差を生み出す場合がある。誤差の源に応じて、意図したパターンに対する実際のパターンの位置は、組織的でありかつ/あるいはランダムである場合がある。
【0054】
オーバーレイ中の誤差は、第1の方向114における成分、第2の方向116における成分、またはこれらの組み合わせを有する場合がある。さらに、実際の特徴部のアレイ112中の実際の特徴部の全てに関する全体的な位置の誤差は、実際の特徴部のアレイ112中の実際の特徴部の全てに関する統計学的尺度に応じて規定でき、かかる尺度としては、誤差の合計、誤差の二乗の合計の平方根、または当該技術分野において知られている誤差の任意他の統計学的尺度が挙げられる。
【0055】
プロセス領域の寸法形状、レーザのエネルギーおよび各存在場所の暴露回数は、プロセスに対するフォトマスクの応答に応じて様々であろう。例えば、一定のフルエンスでのフォトマスク基板4全体への開示したプロセスの適用に対する応答は、
図16に示されているような収縮している(漸次収縮)半径方向パターンであるのが良い。
【0056】
図16は、本発明の一肝転移夜フォトマスク組立体102の平面図である。
図16では、本発明の諸観点に従って、十字(+)記号は、外部エネルギー源1を用いた基板4の処理前における実際の特徴部のアレイ120を表わしており、ダイヤモンド(◇)記号は、外部エネルギー源1を用いた基板4の処理後における実際の特徴部のアレイ122を表わしている。フォトマスクの中心に向かうパターンの半径方向収縮状態が
図16で理解できる。この記載は、フォトマスク基板4全体の開示した方法の適用の1つの考えられる結果であるに過ぎず、例示目的でのみ用いられる。変形例として、このプロセスの実施の結果として、各存在場所での拡張している(漸次拡張)半径方向分布状態もしくは固定された側方運動、または他の相対運動が生じる場合がある。
【0057】
図17は、本発明の一観点によるフォトマスク組立体102の平面図である。
図17では、十字(+)記号は、設計上の特徴部のアレイ110を表わし、ダイヤモンド(◇)記号は、実際の特徴部のアレイ112を表わしている。設計特徴部アレイ110と実際特徴部アレイ112との間のオーバーレイ誤差は、フォトマスク4の中心からの半径方向漸次拡張パターンである。理解されるように、本発明の諸観点に従って外部エネルギー源1からのエネルギービーム2でフォトマスク4を処理することにより、実際特徴部アレイ112をフォトマスク4の中心124に向かって半径方向に収縮させることができる。結果が
図18に示されている。
【0058】
図18は、本発明の一観点によるフォトマスク組立体102の平面図である。
図18では、十字(+)記号は、設計上の特徴部のアレイ110を表わし、ダイヤモンド(◇)記号は、実際の特徴部のアレイ112を表わしている。
図18に示されているように、本発明の諸観点に従ってエネルギービーム2をフォトマスク基板4上に当てることにより、実際特徴部アレイ112が設計特徴部アレイ110に近づき、それによりフォトマスク組立体102のオーバーレイ誤差が減少する。
【0059】
引き続きエネルギービーム2を基板4に当てることにより、実際特徴部アレイ112中の実際の特徴部の存在場所に累積的作用効果を生じさせることができる。
図19は、本発明の一観点によるフォトマスク組立体102の平面図である。
図19では、本発明の諸観点に従ってエネルギービーム2で
図18のフォトマスク組立体102を更に処理した後において、十字(+)記号は、設計上の特徴部のアレイ110を表わし、ダイヤモンド(◇)記号は、実際の特徴部のアレイ112を表わしている。かくして、処理を多数回実施することにより、実際特徴部アレイ112を設計特徴部アレイ110に更に近づけることができ、それにより
図19に示されているようにフォトマスク組立体102のオーバーレイ誤差が更に減少する。
【0060】
プロセス領域の寸法形状、レーザのエネルギー、および各存在場所の暴露回数は、フォトマスク4の当初のオーバーレイ誤差に応じて様々な場合がある。例えば、オーバーレイ誤差は、
図20に示されているようにフォトマスク4の一部分についてしか起こらない場合がある。
【0061】
図20は、本発明の一観点によるフォトマスク組立体102の平面図である。
図20では、十字(+)記号は、設計上の特徴部のアレイ110を表わし、ダイヤモンド(◇)記号は、実際の特徴部のアレイ112を表わしている。
図20に示されているように、フォトマスク4の右下部分126のみが相当大きなオーバーレイ誤差を示している。この場合、本発明の諸観点に従って、フォトマスク4の右下部分126だけまたは誤差の影響を受けた領域だけを処理することは、フォトマスク4の全体をエネルギービーム2で処理しないで、フォトマスク4の右下部分126中のオーバーレイ誤差を減少させる上で有利であると言える。
【0062】
図21は、本発明の一観点によるフォトマスク組立体102の平面図である。
図21では、本発明の諸観点に従って、エネルギービーム2を用いてフォトマスク4を処理した後において、十字(+)記号は、設計上の特徴部のアレイ110を表わし、ダイヤモンド(◇)記号は、
図20からとった実際の特徴部のアレイ112を表わしている。
図21に示されているように、フォトマスク4の右下部分126の処理により、フォトマスク4の右下部分126中のオーバーレイ誤差が減少する。
【0063】
オーバーレイ誤差が
図15に示されているようによりランダムである場合、本発明の諸観点に従って、局所エネルギーおよびフォトマスク4上に、一義的にはマスクの別々の領域へのエネルギービーム2の適用回数を変化させることが有利な場合がある。フォトマスクのかかる局所化処理のため、プロセスの領域(エネルビービーム2のサイズ)は、有利には、実際特徴部アレイ112中の個々の隣り合う特徴部相互間の距離に対して小さな値に調節されるのが良く、その結果、プロセスの作用効果は、実際特徴部アレイ112中の個々の隣り合う特徴部相互間の距離よりも小さい分解能を有するようになる。この実施形態の場合、パルスのエネルギーおよび個数は、マスク上の各存在場所について様々な場合があり、その結果、意図したまたは設計上の位置から更に遠ざかる特徴部は、当初、意図したまたは設計上の位置の近くにある特徴部よりも大きな量動かすのが良い。
【0064】
加うるに、生じる材料変化が比較的一定である場合、基板表面上の多数の離隔された領域(
図9A)を処理することによって平均材質変化を制御することができる。この場合、処理領域13相互間の間隔および/または未処理領域に対する処理領域の密度を用いると、材質変化プロセスの相対量を制御することができる。
【0065】
代表的な方法の特定の実施例は、レーザ励起を用いたフォトマスク基板4上の吸収性薄膜3の1つまたは2つ以上の特性の変化をさせて吸収性薄膜3の特徴部をずらすことである。例えば、吸収性薄膜3がモリブデンシリコンオキシニトライド(MowSixOyNz)膜であるフォトマスク4では(なお、モリブデンシリコンオキシニトライドでは、MoSiと略称される場合がある)、オーバーレイ中のずれは、MoSi膜中の熱的材料特性の変化に起因している場合がある。材質変化としては、薄膜吸収体3材料の酸化、アニーリング、脱水、または高密度化が挙げられるが、これらには限定されない。フォトマスクの熱的損傷レベルを検討すると、最も低い熱的損傷点は、代表的には、ベース石英基板に関する融解/リフロー点、すなわち、約華氏2912度(1600℃)であろう。MoSi膜の正確な材料特性に応じて、材質変化(例えば、アニーリング)は、石英基板4のリフロー点よりもかなり低い温度で生じる場合がある。したがって、材質変化のための温度がフォトマスク基板材料の損傷レベルを下回った状態で起こる場合のある潜在的なプロセスが存在する。
【0066】
上述したように、基板材料の相対吸収率は、材料吸収特性の潜在的な差のために一般的に考慮される。MoSi膜によって高度に吸収される波長を選択することが望ましい場合がある。
図2は、MoSi部分吸収性フォトマスク膜に関する吸収率曲線の略図である。この実施例では、主要な吸収は、0.3μm波長未満か9μm波長超かのいずれかで起こる。これより短い波長は、特に望ましい波長範囲にはなく、その理由は、これら波長が空気によって通常相当に吸収されるからであり、しかもこれら波長が高い光子エネルギーを有し、したがって多光子プロセスを生じさせる可能性が多分にあるからである。
【0067】
1μmから1000μmまでの赤外範囲内の波長を選択することは、DUVについて好ましい場合があり、というのは、長い波長が多光子プロセスおよびエンバイロンメンタル吸収の潜在的可能性を減少させるからである。MoSi膜の場合、9μm超、例えば11.5μm吸収ピーク近傍の波長を選択することが本発明の諸観点に従って特に望ましく、それにより、代表的には、高いエンバイロンメンタル吸収なしでMoSi膜中に高い吸収率が生じる。本発明の一観点によれば、「11.5μm吸収ピーク近傍」という表現は、10.5μmから12.5μmまでの範囲にある波長を意味し、ただし、赤外範囲内にある他の波長は、許容可能である場合がある。この範囲内の波長を選択することにより、材質変化を生じさせるのに必要なエネルギーを低くすることによって本発明の使用中、システムへの全熱エネルギーまたは熱入力を最小限に抑えることができる。
【0068】
また、上述したように、石英基板の吸収率の検討もまた行われるのが良い。フォトマスクに用いられる石英基板は、深赤外(DUV)波長範囲において高い透過率を有するよう特別に設計されるのが良い(
図3参照)。これは、代表的には、極めて低いレベルの不純物を含む合成融解石英(シリカ)基板を用いることによって達成される。本発明の諸観点によれば、MoSiに相当大きな吸収率を有するとともに石英基板中に低い吸収率を有することが有利である場合がある。
図3に示されているように、例示の石英基板に関する吸収率は、MoSiフィルム吸収率ピークの近傍に11.5μmの相当大きな吸収率を備えてはいない。したがって、11.5μm近傍の波長で処理すると、MoSi中の熱エネルギー蓄積が石英よりも優先的に生じ、それにより、薄膜吸収体3なしで基板の諸領域中の熱蓄積を最小限に抑えることによって本発明の使用中、システムへの全熱入力を最小限に抑えることができる。
【0069】
変形例として、フォトマスク4の石英基板によって高度に吸収される波長を選択してフォトマスク4の表面の全ての領域が所望の処理温度に達するようにすることが有利な場合がある。石英と薄膜吸収体層の熱的性質を比較検討すると、これら物質相互間の熱伝達が石英から吸収体層に優先的に生じることが予測できる。これが起こる場合がある理由は、石英が比較的低い熱拡散率を有するとともに薄膜吸収体膜が代表的には、金属成分を含み、したがって高い熱拡散率を有するからである。この実施形態は、薄膜吸収体とフォトマスク基板との温度差が重要である場合に有利なことがある。例えば、吸収性薄膜3と基板4との熱膨張率の差により、これら材料の一方または両方の損傷が生じる場合のあることが考えられる。また、様々な物質膨張率を有することにより薄膜吸収体3と基板4との結合が弱体化する場合があり、しかも分離または離層が生じる場合がある。薄膜吸収体と基板との熱平衡状態が有益である場合、長いパルス幅の使用もまた、プロセス温度に達しているときの材料相互間の熱伝達(例えば、熱伝導)に十分な時間を達成する上で有利であると言える。
【0070】
石英がプロセス波長で相当大きな吸収率を有するプロセス波長で動作することが有利である場合がある理由は、熱エネルギーフローまたは熱伝達が吸収性薄膜3に対して優先的であり、しかも暴露領域全体が所望のプロセス温度に達することができるからである。これら基板に関する主要な吸収率は、一般に、0.2μm未満の波長か8μmを超える波長かのいずれかで起こる。短い波長は、特に望ましくない場合があり、というのは、かかる波長は、空気によって相当大きく吸収される場合があるからであり、しかもこれら波長が高い光子エネルギーを有し、したがって多光子プロセスを生じさせる可能性が多分にあるからである。上述したように、約1μmから約1000μmまでの赤外線領域に含まれる波長は、DUVと比較して好ましい場合があり、その理由は、長い波長が多光子プロセスおよびエンバイロンメンタル吸収の潜在的可能性を減少させるからである。
【0071】
8μmを超える波長、例えば9μm石英吸収率近傍の波長を選択することは、本発明の諸観点によれば特に望ましいと言え、これにより、高いエンバイロンメンタル吸収なしで石英基板中に高い吸収率を生じさせることができる。本発明の一観点によれば、「9μm吸収率ピーク近傍」という表現は、8μmから10μmまでの範囲にある波長を意味し、ただし、石英領域に含まれる他の波長が許容可能である場合がある。この波長はまた、部分吸収性膜コーティング(すなわち、MoSi)を有するフォトマスクに関して利点を奏することができる。
図2に示されているように、例示のMoSi材料は、11.5μmのところのピークと比較して9μm近傍に減少した状態の吸収率を有し、したがって、外部エネルギー源1からのエネルギービーム2によって直接生じる熱エネルギーの減少または温度増加を呈する。一般的に言って、この範囲にある波長を用いて一定のエネルギービーム2のフルエンスで達する膜材料温度は、高い石英吸収率および石英と比較した場合の薄膜吸収体の高い熱拡散率のために、石英に関する膜材料温度とほぼ同じであるべきである。これもまた、部分吸収性膜が予想される熱拡散率に関する利点のためにこの波長範囲内で比較的高い吸収係数を有する場合であっても、当てはまることが期待される。この範囲に含まれる他の波長を選択することは、エネルギー源1からのエネルギービーム2の直接的吸収によって生じる材料中の相対的熱蓄積を変化させることによって全体的な熱の一様性が向上することが可能である。
【0072】
フォトマスクの形式もまた、オーバーレイ是正のための波長を選択する際に考慮されるのが良い。例えば、ダークフィールドマスクを用いる場合、薄膜中に高度に吸収される波長を選択することが好ましい場合がある。オーバーレイ改良を薄膜の改造によって最適に得ることができ、というのは、表面の大部分が薄膜で覆われているからである。クリアフィールドマスクを用いる場合、基板によって高度に吸収される波長を選択することが好ましい場合がある。オーバーレイ改良は、基板表面の改造によって最適に得ることができ、その理由は、表面の大部分が薄膜で覆われていないからである。いずれの場合においても、薄膜を有するフォトマスクの領域および薄膜を備えていないフォトマスクの領域中に同様な熱的改造をもたらすことが好ましい場合があり、その結果、この改造は、マスク表面全体にわたって予想できる。
【0073】
本発明のある特定の観点による使用のためにちょうど説明したばかりのプロセスは、製造の際のフォトマスクの使用によって生じるとともに清浄化プロセスから生じるオーバーレイ変化を是正することによってフォトマスク4の使用可能なライフタイムを延長させることができる。製造の際の使用中におけるフォトマスクの露光は、フォトマスクの薄膜を劣化させる場合がある。膜組成のこれらの変化は、マスクのオーバーレイにずれを生じさせる場合がある。製造の際の使用により引き起こされるオーバーレイ変化を是正するための本発明の使用は、有利には、ペリクル8を介して具体化できる。これにより、フォトマスク4を劣化したフォトマスクを交換するために製作されるべき新品としてのフォトマスクを必要としないで、製造に戻すことができる。加うるに、フォトマスクを他の理由で製造状況から取り出して清浄化しなければならない時期が存在し、かかる理由としては、ペリクル膜の損傷およびヘイズの成長が挙げられる。従来型清浄化プロセスシーケンスでは、取り付けられたペリクルの取り外し、清浄化、および次の新たなペリクルの取り付けが必要な場合がある。ペリクルをマスクから取り外す行為により、フォトマスクのオーバーレイに変化が生じる場合がある。加うるに、湿式清浄化またはウェットクリーン処理は、薄膜を劣化させる場合がありしかもフォトマスクのオーバーレイに悪影響を及ぼす場合がある。今開示したプロセスの使用は、特徴部の位置を是正することができしかもペリクル取り外しおよびウェットクリーンに影響されないで特徴部の位置決めを効果的に回復することができる。清浄後におけるフォトマスクへの別のペリクルの追加もまた、フォトマスクへの応力の追加のために薄膜中の特徴部の位置を変化させる場合がある。この場合、今説明したプロセスの諸観点を有利には、フォトマスク4のオーバーレイを是正するためにフォトマスク組立体102中のペリクル8を介して使用することができる。
【0074】
フォトマスクのオーバーレイを改良した場合の追加の利点は、マスク間ばらつきの改善にある。各マスクが受ける湿式清浄化の回数は、様々であって良く、かかる回数は、製造パラメータのうちの幾つかで決まる。代表的には、フォトマスクは、パターンを作るのに必要なプロセス中に湿式清浄化を受けるとともにパターン中の欠陥を是正する保守プロセスに続く湿式清浄化を受けるのが良い。最終のオーバーレイは、作製プロセスの累積的効果および湿式清浄化の回数で決まることになる。この結果、使用に先立ってオーバーレイのマスク間ばらつきが生じることがある。
【0075】
マスク間ばらつきを本発明の諸観点に従って改善することができる。異なる量のオーバーレイ改良を使用前に種々のフォトマスクに利用すると、各マスクを同一のオーバーレイレベルに合わせて調節することができる。フォトマスクのこの観点のばらつきについて厳しくすることによって、他のマスクパラメータの許容可能なばらつきを甘くすることができるということが可能である。例えば、使用中における許容可能な臨界寸法ばらつきを各フォトマスクが正確なオーバーレイを有する場合に甘くすることができるということが可能である。これは、補修処理と組み合わせた場合に特に有利であると言え、その理由は、寸法管理要件を制限することにより高いフォトマスク歩留まりが得られるからである。
【0076】
本発明の諸観点による方法は、フォトマスク薄膜吸収体改造に利用でき、かかる方法は、フォトマスク組立体102からのペリクル8の取り外しを必要としない。ペリクル化後に薄膜吸収体改造を実施すると、現在開示したプロセスの諸観点を用いる前の追加の湿式清浄化が不要であるようになるという利点が得られる。例えば、レーザを利用したオーバーレイ改良をペリクル膜特性に影響を及ぼさないでペリクル膜材料8により実施することができる(
図4参照)。この場合、代表的には、プロセス波長のところのペリクル膜の吸収率およびペリクル膜の表面のところのエネルギービーム2のエネルギー密度(フルエンス)が検討される。基板および基板フィルムの場合と同様、材料改質プロセスは、一般的に言って、損傷しきい値よりも高いペリクル膜中の温度増加をもたらさない。しかしながら、ペリクル膜に応じて、石英基板に関して9μm吸収ピーク近傍でペリクル膜中に相当大きな吸収率が存在する場合がある。しかしながら、相当大きなペリクル膜吸収率の付近で動作することが依然として可能であり、というのは、ペリクル膜8が基板4の表面の上方に位置決めされているからである。
【0077】
波長選択に加えて、例えばレンズ11を用いてペリクル膜8を通って基板4の表面上にレーザビーム12を集束させることにより、ペリクル膜8中の相対的温度増加を減少させることができる(
図5A参照)。式1に示されているように、基板中の温度増加は、表面に与えられたエネルギービーム2のフルエンスに比例する場合がある。
【0078】
ΔT~F 式1
【0079】
上式において、ΔTは、材料内の温度変化であり、Fは、吸収されたレーザフルエンスである。
【0080】
一定の強度またはビームパルスエネルギーの場合、フルエンスは、ビームスポット半径の二乗に反比例する。
【0081】
F~E/r2 式2
【0082】
上式において、Fは、フルエンスであり、Eは、エネルギーであり、rは、基板表面上におけるビームの半径である。
【0083】
ペリクル8のところのビーム半径14とフォトマスク4の表面上のビーム半径13の比は、代表的には、ペリクル8を通るビーム2を集束させることによって大きくされ、したがって、フォトマスク基板表面と比較したペリクル膜上の相対的なフルエンスを減少させることができる(
図5B)。
【0084】
波長の検討に加えて、システム中に大きな温度増加を生じさせるプロセスパラメータ(例えば、過度に長いパルス長または高繰り返し率)を利用することは、ペリクル膜の損傷しきい値によって制限される場合がある。パルス幅、相対的フルエンス、プロセス持続時間、および外部材料冷却制御方式の使用は、システムの温度増加を最小限に抑えるために使用できる例示のオフプロセスパラメータである。
【0085】
MoSiを利用した部分吸収性フォトマスクの実施例に加えて、開示したプロセスの諸観点はまた、完全吸収性フォトマスク、薄膜吸収体のない(石英だけ)の光フォトマスク、および例えば極紫外(EUV)およびナノインプリントリソグラフィ(nano-imprint lithography:NIL)のために用いられる次世代フォトマスクについて利点を奏することができる。薄膜吸収体なしの光フォトマスクは、ベース石英基板中に直接エッチングされる特徴部を有する。ナノインプリントリソグラフィマスクは、基板中に作製される特徴部を更に有し、代表的には、かかるマスクは、薄膜を備えない。これら形式のマスクの両方に関し、開示したプロセスの観点を用いると、オーバーレイの所望の改良を含む基板の熱的改造をもたらすことができる。薄膜光フォトマスクの場合、開示したプロセスの諸観点を吸収体またはベース基板の改造によってEUVフォトマスクに利用することができる。加うるに、多層に対する熱的改造を用いると、オーバーレイを改良することができるということが想定される。しかしながら、反射多層の光損傷レベルを考慮しなければならず、その理由は、多層に対する変更がフォトマスクの性能に悪影響を及ぼす場合があるからである。
【0086】
パルス整形(シェーピング)
【0087】
レーザのパルス幅、一時的パルス形状、および空間分布状態は、本発明のある特定の実施形態に従って処理するために材質変化プロセスを高めまたは安全動作範囲を広げることができる。短いパルス幅を用いると、システム(基板およびエンバイロンメント)への全体的熱入力を最小限に抑えることができる。長いパルス幅を用いると、プロセスの一様性を高める延長期間のためのプロセス温度を維持するとともに互いに異なる材料相互間の温度差の発生を阻止することができる。一時的パルス形状を用いると、薄膜吸収体内の温度上昇を制御することができる。長時間にわたる温度上昇を用いると、初期効果(例えば、アニーリング)を生じさせることができ、その後二次的効果(例えば、酸化)が生じる。また、多数のパルスを用いることにより完全な処理に望ましいビームエネルギーを低減させることができ、それにより長いパルス幅の利用に類比して基板損傷の恐れを更に減少させることができる。多数のパルスの利点は、プロセスを実施することができるようにしながら1つの材料の局所冷却が損傷を阻止することができるということが可能であるということにある。例えば、ペリクル膜は、薄膜吸収体が冷却されていない間に多数のパルスによる熱蓄積を阻止するよう冷却されるのが良く、パルス間熱蓄積が膜中のプロセス温度に達するよう用いられる。
【0088】
レーザビームの空間分布を用いると、プロセス窓およびプロセス一様性を向上させることができる。例えば、
図6Aは、基板4中に温度勾配16を生じさせることができるガウス空間分布15を示し、
図6Bは、基板18内に一様な温度上昇の実現を可能にするフラットトップまたはトップハット空間分布17を示している。この空間分布を用いると、プロセス窓を広げることができる。フラットトップまたはトップハット空間分布によりビームスポット内に一様な温度上昇を生じさせることができ、これに対し、ガウス分布は、代表的には、ビームスポット内に温度勾配を生じさせる。基板損傷の恐れを回避するために、ビームの最大エネルギーは、代表的には、ガウス分布のピークによって制限される。ガウスエネルギー分布は、エネルギーばらつきがプロセスエネルギーレベルと損傷エネルギーレベルとのエネルギー差にほぼ等しい場合、フラットトップビームと比較して材料損傷レベルを超える恐れが高いことが予想される。また、ガウス分布は、非一様な材質変化影響を生じさせる場合があり、トップハットエネルギー分布は、ビームの作業領域内に一様な材質変化を生じさせることが予想される。
【0089】
熱管理
【0090】
本発明の諸観点が熱を利用したプロセスを含むので、場合によっては、システムの全体的温度を管理して処理済み材料の近くに位置する熱感受性のある材料に対する損傷を回避することが望ましい。これは、ペリクル取り外しが行われないフォトマスク材料改質処理の場合に特に当てはまる。ペリクル膜は、代表的には、低い熱損傷しきい値を有する。したがって、場合によっては、ペリクル材料に伝達するとともに/あるいはこれを損傷させる場合のある全体的なシステム温度蓄積を回避するのが有用である。これは、ペリクルフレームおよびマスク表面とペリクル膜との間の密閉エンバイロンメントを含む。
【0091】
システム温度を管理することは、幾つかのやり方で達成できる。以下の例示は、幾つかの代表的なサンプル冷却方法を示しており、他の方法が存在しうることは、言うまでもない。システム温度を管理する一手法は、接触冷却を介してである。例えば、フォトマスクをプレート19に接触して配置するのが良く、プレート19は、マスクの全面上で生じた熱をマスクの後ろ側に向かって引き寄せるヒートシンクとして働く(
図7参照)。これにより、マスク表面の上方に位置するエンバイロンメント、ペリクル膜およびペリクルフレームとマスク表面との間の接着剤への熱伝達が減少する。冷却は、様々な仕方で達成でき、かかる仕方としては、熱伝達流体以外の冷却液またはガスをマスクおよび/またはペリクル上に流すことによって熱伝達流体を入口ポート21中に流し込んでヒートシンクの出口ポート20から流出させること、マスクおよび/またはペリクルの一部分または全体の熱電冷却またはレーザ誘導冷却を行うこと、またはこれらの組み合わせが挙げられる。熱伝達流体は、水、エチレングリコール、空気、窒素、これらの組み合わせ、または当該技術分野において知られている任意他の熱伝達流体であって良い。
【0092】
温度を制御する別の潜在的な仕方は、強制対流による冷却を介してである。濾過されるとともに/あるいは冷却されたガスまたは液体の流れをマスク24の複数の部分上、ペリクル膜23上、ペリクルフレームおよび/または接着剤領域22に差し向けてこれら材料中の熱エネルギーまたは温度蓄積を直接的に減少させることができる(
図8参照)。これは、ペリクル膜損傷の恐れを減少させるだけでなく、ペリクルフレームおよびペリクル膜接着剤からの汚染を生じさせるガス発生の恐れを減少させることができる。システム中の熱の蓄積のハードウェア制御に加えて、プロセス時間を延長することができるようにすることによって熱の蓄積を減少させることが可能である。遅いパルスレートをシステムに印加しまたは一連のパルス印加相互間の遅延の実現を可能にすることにより、全体的システム温度が臨界レベルを超えて上昇することなく、注入された熱を除去することができる。
【0093】
パルス間熱エネルギーまたは温度蓄積はまた、有利には、制御されるのが良く、そして、薄膜吸収体、基板および/または隣接の材料の熱的性質で決まる場合がある。一般的に言って、パルス間熱蓄積は、単位時間当たりの表面に入射したレーザパルスの数を減少させることによって制御できる。この温度蓄積は、隣接のレーザパルス相互間の距離を増大させることによっても制御できる。隣り合うパルス相互間の大きな側方変位を持たせることが特に望ましい場合があり、この場合、材料(例えば、ペリクル膜材料)は、パルス間熱エネルギー蓄積の影響を特に受けやすい。この場合、プロセスは、代表的には、レーザビーム7をほぼ同一の場所に多数回位置決めして標的表面の所望の材質改良を得るステップを含む。例えば、第1の一連のレーザパルスが比較的大きな側方分離状態で表面に当てられる(
図9A参照)。同一の領域上の第2のパスが第1の組をなすスポットに対して僅かにずらされた追加の一連のレーザパルスを配置する(
図9B参照)。このプロセスは、領域全体がレーザパルスにさらされるまで続く(
図9C参照)。第2の方向におけるオーバーラップを本発明の諸観点に従って用いると、基板4の表面を完全に露光することができる(
図9D参照)。本発明の諸観点によれば、材質改良プロセスがプロセス完了のための多数のパルスを含むことが望ましい場合、このプロセス全体を繰り返すとともに/あるいはパス相互間のオーバーラップを増大させる。図示のように表面に対するビームの位置を変更することは、ビームを動かすとともに/あるいは基板を動かすことによって達成できる。加うるに、パルスをマスクの端から端まで体系的に分布された仕方で当てることにより、フォトマスク4上における熱エネルギーまたは熱の蓄積の恐れを更に減少させることができる(
図9E参照)。
【0094】
技術の組み合わせ
【0095】
本発明は、レチクルライフタイムを延長するために表面前処理またはエンバイロンメンタル制御技術と関連して利用されるのが良い。これら技術の中には、ペリクル取り付け前に処理を必要とするものがあればペリクル化後に実施されるのが良いものもある。例えば、本発明と関連した表面前処理方法は、材質改良結果の向上を可能にする場合がある。このプロセスの影響は、この場合、例えば別の材料を薄膜吸収体中に組み込むことまたは薄膜吸収体中の熱蓄積を高めることに起因して得られる。
【0096】
エンバイロンメンタル制御技術はまた、本発明の方法と組み合わせて利用できる。ペリクル内外のエンバイロンメントおよびペリクル取り付け前におけるエンバイロンメントを制御する技術は、本発明の材質改良プロセスと組み合わせて利用できる。一実施形態は、ペリクルの下のエンバイロンメントを材料の性質を変えるために薄膜吸収体材料と相互作用するガスで交換するのを含む。これは、ペリクルフレームに設けられたフィルタ付きベントを解するガス交換によって、ペリクル取り外しを行わないで実施できる。加うるに、ペリクルの内側または外側の不活性エンバイロンメントを本発明と関連して維持して表面材質変化プロセスに対するバルク吸収体特性を高めることが有利な場合がある。これら組み合わせプロセスは、例えば相対的なオーバーレイ変化または特徴部ずれの方向を増大させる場合がある。
【0097】
測定基準
【0098】
本発明の諸観点による方法はまた、臨界プロセスパラメータをモニタするとともに/あるいは材質改良プロセスの進展または完了を評価するための測定基準と組み合わせて利用できる。基板材料の局所発生温度の測定は、例えば、材質変化と組み合わせて利用されるのが良い。温度測定値は、温度関連損傷の恐れを検証するためにプロセスの利用に先立って評価されるのが良い。加うるに、これら温度は、プロセス制御を確認するとともに/あるいは材料損傷の恐れを減少させるために材料改質プロセス中にモニタされるのが良い。例えば、本発明のある特定の実施形態によれば、基板および/または吸収体膜の温度は、このプロセス中にモニタされ、そして所望のプロセスを維持しまたは大きすぎるほどの温度蓄積が検出された場合にプロセスをターンオフするために加えられるエネルギーのフィードバック制御能力を有する。多数の温度監視装置および方法が存在し、そして接触装置(例えば、熱電対)および方法30ならびに非接触(例えば、赤外線カメラ)装置および方法29を含む(
図10参照)。
【0099】
測定基準装置31および方法はまた、本発明の諸観点に従って、エネルギービーム2を基板4に当てる前、当てている間および/または当てた後に基板の材料または性能特性および/または基板上のまたは基板に隣接して位置する材料を分析しまたはモニタするよう使用されるのが良い(
図11)。例えば、フォトマスク上の特徴部の位置の測定を利用すると、処理前におけるオーバーレイ誤差を計算することができる。これは、局所または全域的オーバーレイ誤差を是正するのに必要な材料改質レベルを求めることができる。これは、所望の変化を引き起こすようフォトマスクの別々の領域に印加すべき正確なエネルギーまたはパルスの回数を求めるためにも使用できる。この測定基準はまた、処理中におけるオーバーレイおよびプロセスへのフィードバック情報をモニタしまたは調節が規定のプロセス限度内に収まっている場合、プロセスを停止させるよう使用できる。加うるに、ペリクル膜の材料特性をモニタしてペリクル材料に対する悪影響が起こっているかどうかを判定することができる。この情報は、プロセス温度を制限するための処理前、または損傷が観察された場合にプロセスを停止させるための処理中に使用できる。例えば、1つまたは2つ以上の楕円偏光計がペリクル膜、吸収体膜および基板表面の材料応答を測定するために使用できる。次に、このデータを用いると、膜厚さ、透過率および位相を含む所望の材料特性を計算することができる。測定装置は、プロセスエネルギー源と共通光路を共有するのが良い(
図12)。例えば、エネルギー源1は、ビーム分割デバイス33を用いて測定装置31の経路中に結合されるのが良い。追加の光学素子2)もまた、
図12に示されているように測定基準データを適正に修正する上で有利な場合がある。
【0100】
フォトマスクの場合、例えば、多数の測定基準を本発明のある特定の実施形態に従って材料改質プロセス中に組み込むのが良い。例えば、フォトマスクレチクル全体のオーバーレイ誤差を識別することにより、処理温度要件を規定することができる。フォトマスク上の局所または全域的オーバーレイばらつきを識別することは、プロセス適用のための横方向寸法およびフォトマスクの端から端までの互いに異なる場所/区分を処理するのに必要な多数のエネルギーレベルを求めるよう使用できる。加うるに、低いエネルギープロセスを当初利用し、プロセスに対するフォトマスク特徴部の応答を測定することが有益な場合がある。特定のマスクに関する応答の大きさをいったん測定すると、この情報を利用する追加の処理をついに利用することができる。フォトマスクのオーバーレイを修正するために最適プロセスを決定する際、これにより、マスク1つ当たりの応答を考慮に入れることができる。
【0101】
測定基準はまた、清浄化されている表面に隣接して位置する材料の特性をモニタするよう本発明のある特定の観点に従って使用される。例えば、フォトマスクの上方のペリクルの温度をモニタすると、ペリクル膜損傷の恐れを減少させることができる。ペリクル膜の透過特性は、処理中または処理後にプロセスの作用効果を特定するためにも使用することができる。
【0102】
本発明の1つまたは2つ以上の観点を実施する際に当業者であれば理解されるように、上述の測定基準実施例は、本発明を含む全てであることが意図されている訳ではない。これとは異なり、これらの実施例は、本発明の幾つかの方法の範囲内における測定基準の使用を説明しているに過ぎない。
【0103】
測定基準装置31、外部エネルギー源1、またはこれらの組み合わせは、これらの制御のために制御装置40に作動的に結合されるのが良い。制御装置40は、測定基準装置31、外部エネルギー源、またはこれら両方の作動または制御を行うための任意の専用プロセッサであるのが良い。理解されるように、制御装置40は、単一のハウジング内にまたは励起および測定基準装置全体を通じて分布して配置された複数のハウジング内に具体化されるのが良い。さらに、モジュール式制御装置310がパワーエレクトロニクス、事前プログラム式論理回路、データ処理回路、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ソフトウェア、ファームウェア、入力/出旅行処理回路、これらの組み合わせ、または当該技術分野において知られている任意他の制御装置構造を含むことができる。
【0104】
理解されるように、制御装置40は、本明細書において説明した任意の方法または機能を実行しまたは制御するよう構成されるのが良い。さらに、理解されるように、非過渡的機械可読式命令が符号化された製造物品は、制御装置40が、かかる命令が制御装置40によって実行されるときに本明細書において説明した方法または機能のうちの任意のものを実行しまたは制御するように構成されるのが良い。
【0105】
装置
【0106】
本発明の諸観点による材料改質のためのある特定の方法は、本明細書において説明する装置の種々の観点を用いて実施されるのが良い。かかる基板操作装置130の一例は、基板4のロボット式取り扱い装置35および/または
図13に示されているように外部エネルギー源1に対する基板4のサンプルを位置決めするための並進ステージ34を用いた1つまたは2つ以上の運動軸線に沿う基板4の運動を更に含む。ロボット式取り扱い装置は、基板4を複数の位置相互間で移送する基板把持エンドエフェクタ36を含むのが良い。装置130は、例えば、上述したような測定基準のうちの1つまたは2つ以上を含むとともに/あるいは材料改質プロセス中、基板および/または隣接材料の温度を制御する仕方を含むのが良い。加うるに、この装置は、基板をステージングシステムに位置合わせし、したがってレーザビーム2に位置合わせするために用いられる測定基準を含むのが良い。この測定基準は、コンピュータ制御式視覚認識システムを更に含むのが良い。さらに、この装置は、レーザ、動作および/または測定基準のコンピュータ制御を更に利用するのが良く、そしてこの装置は、材料改質プロセスのソフトウェア利用したレシピ制御を可能にすることができる。レーザエネルギー源制御は、例えば、レーザパルスを印加する時点および/またはプロセス中に加えられるエネルギーの量の測定を含むのが良い。
【0107】
レチクル作製プロセス
【0108】
本発明の諸観点による方法および/または装置は、フォトマスク表面上のオーバーレイの改良を含む新規なレチクル作製プロセスの一部として利用できる。本発明の諸観点によれば、材料改質プロセスを用いると、フォトマスク作製プロセス中またはこれに続きオーバーレイを調節することができ、かかるプロセスとしては、フォトマスク補修処理が挙げられる。フォトマスクは、処理に先立ってペリクル化されても良く、ペリクル化されなくても良い。ある特定の実施形態もまた、清浄化プロセスに続きフォトマスクに利用できる。本発明の諸観点によれば、材料改質を用いると、湿式清浄化プロセスの結果として生じるオーバーレイ変更を是正することができる。その結果、このプロセスを用いると、オーバーレイを改良してフォトマスクを所望の仕様に至らせることができ、その結果、オーバーレイを製造中に用いることができる。本発明の他の観点をレチクルが製造中に用いられた後に用いて製造中の使用によって生じるオーバーレイ変更を是正することができる。このプロセスは、レチクルを介して利用してオーバーレイを是正することができ、それにより再レチクル清浄化プロセスが回避される。この実施形態では、開示するプロセスの諸観点は、追加の湿式清浄化プロセスおよび/または再ペリクル化を回避することによって現在達成できるライフタイムを超えてフォトマスクのライフタイムを延ばすことができる。二重の組をなすフォトマスクが現在必要であり、その理由は、規格外フォトマスクを破棄しなければならないからである。したがって、開示した方法はまた、フォトマスクの有効寿命を延ばすとともに1回の製造を完了するために同じ2つのマスクの必要性を軽減することによってコストの減少を可能にする。
【0109】
本発明のある特定の諸観点による新規なフォトマスクレチクル作製方法は、フォトマスク4の薄膜吸収体3の特性を改変するよう上述した方法のうちの1つまたは2つ以上を利用した装置を使用する。本発明の一観点による代表的なレチクル作製プロセスは、作製中、フォトマスクに適用される多数回の湿式清浄化プロセスを含む。湿式清浄化プロセスの回数は、マスクごとに様々であり、したがって、マスク相互間に最終的なオーバーレイのばらつきが生じるようになる。本発明の一観点は、各フォトマスクのオーバーレイを互いに異なる量、全域的に変更するよう上述した材料改質方法のうちの1つまたは2つ以上を利用し、その結果、マスク相互間の最終のオーバーレイばらつきが減少する。本発明の別の観点によれば、開示した方法のうちの1つまたは2つ以上の使用を含むレチクル作製プロセスを用いると、オーバーレイ誤差を(全域的にまたは局所的に)減少させてフォトマスク4の有効寿命を延ばすことができる。
【0110】
マスク間光学的性能のばらつきに加えて、各湿式清浄化プロセスは、単一のフォトマスク表面の端から端まで材料の特性にばらつきを与える場合がある。単一のフォトマスク上のオーバーレイのばらつきは、作製および/または湿式清浄化処理後に許容限度から外れることになることが考えられる。これは、湿式清浄化プロセスの回数が増大すると、特に当てはまる。本発明の一観点によれば、フォトマスクのオーバーレイの一様性を向上させるよう上述した材料改質方法のうちの1つまたは2つ以上を利用した装置を使用する新規なフォトマスクレチクル作製プロセスが提供される。これは、フォトマスク全体にわたる非一様な変化またはオーバーレイ中の1つまたは2つ以上の局所的な変化を生じさせることを含む場合がある。本発明のある特定の実施形態によれば、非一様な材質変化は、フォトマスクのオーバーレイ中の非一様性を是正することによってフォトマスクの有効寿命を延ばすために用いられる。
【0111】
本発明のある特定の実施形態によれば、新規なレチクルウェーハ作製プロセスは、フォトマスクのライフタイムを延長することによって製品製造のための追加のマスクまたはマスク組の使用を減少させる。
【0112】
本発明の多くの特徴および多くの利点は、詳細な説明から明らかであり、かくして、本発明の精神および範囲に属する本発明のかかる全ての特徴および利点に及ぶことが特許請求の範囲の記載によって意図されている。さらに、極めて多い改造例および変形例が当業者には容易に想到できるので、本発明を図示するとともに説明した構成および作用そのものに限定することは望ましくなく、したがって、全ての適当な改造例および均等例を本発明の範囲に含まれるものとして解することができる。
【0113】
本明細書での値の範囲についての記載は、本明細書において別段の指定がなければ、その範囲に含まれる別個の各値を個別的に参照する簡潔な方法として役立つようになっているに過ぎず、各別個の値は、これが個別的に本明細書に記載されているかのように本明細書に記載されているものとする。本明細書において説明した方法の全ては、本明細書において別段の指定がなければあるいは文脈上明らかな矛盾がなければ、任意適当な順序で実施できる。
【0114】
別段の指定がなければ、本明細書において用いられている「実質的に」という用語の使用は、「程度において相当大きいこと」または「程度として大きいが、必ずしも指定された程度そのままである必要はない」ことを意味している。
【0115】
上記説明は開示したシステムおよび技術の実施例を提供していることは理解されよう。しかしながら、本発明の他の具体化例が、上述の実施例とは細部において異なる場合のあることが想定される。本発明またはその実施例と言った場合にはこれらは全て、その時点で説明中の特定の実施例を指すことを意図しており、本発明の範囲全体に関して何ら限定を意味するものではない。ある特定の特徴に関する区別および軽視となる全ての用語は、これら特徴について優先順位がないことを示しており、別段の指定がなければ、本発明の範囲からこのような用語を全く排除するものではない。