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特許74168711,3,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-エン(HCFO-1231zd)及びフッ化水素(HF)の共沸又は共沸様組成物
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  • 特許-1,3,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-エン(HCFO-1231zd)及びフッ化水素(HF)の共沸又は共沸様組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】1,3,3-トリクロロ-3-フルオロ-1-エン(HCFO-1231zd)及びフッ化水素(HF)の共沸又は共沸様組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 21/18 20060101AFI20240110BHJP
   C07C 17/383 20060101ALI20240110BHJP
   C07C 19/08 20060101ALI20240110BHJP
   C07C 17/08 20060101ALI20240110BHJP
   C07C 17/20 20060101ALI20240110BHJP
   C09K 3/30 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C07C21/18
C07C17/383
C07C19/08
C07C17/08
C07C17/20
C09K3/30 J
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022113684
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2019511431の分割
【原出願日】2017-08-15
(65)【公開番号】P2022141797
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】15/252,537
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・シー・メルケル
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン・エイ・ポクロフスキー
(72)【発明者】
【氏名】シュエ・サン・トゥン
(72)【発明者】
【氏名】ハイヨウ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・ジェイ・ハルス
(72)【発明者】
【氏名】ハン・ティー・ファム
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-020992(JP,A)
【文献】特表2016-512843(JP,A)
【文献】特表2014-532721(JP,A)
【文献】特表2013-523946(JP,A)
【文献】国際公開第01/040151(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/009946(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 21/
C07C 17/
C07C 19/
C09K 3/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、1~99重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)及び1~99重量%のフッ化水素(HF)で構成される、共沸又は共沸様組成物を含む組成物。
【請求項2】
共沸又は共沸様組成物が、フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、93.6~10.0重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)及び6.4~90.0重量%のフッ化水素(HF)で構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
共沸又は共沸様組成物が、フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、81.7~27.3重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)及び18.3~72.7重量%のフッ化水素(HF)で構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
共沸又は共沸様組成物を形成する方法であって、
前記フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、1~99重量%のフッ化水素(HF)及び1~99重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)で構成される配合物を形成することを含む、方法。
【請求項5】
共沸又は共沸様組成物が、フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、93.6~10.0重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)及び6.4~90.0重量%のフッ化水素(HF)で構成される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
共沸又は共沸様組成物が、フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、81.7~27.3重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)及び18.3~72.7重量%のフッ化水素(HF)で構成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
有機化合物をフッ素化する方法であって、
フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、1~99重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)及び1~99重量%のフッ化水素(HF)で構成される、共沸又は共沸様組成物を提供することと、
蒸気相内の前記1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の少なくとも一部をフッ素化剤と反応させて、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-245fa)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(E)及び/又は(Z))、及び1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)からなる群から選択される少なくとも1つのフッ素化有機化合物を製造することと、を含む、方法。
【請求項8】
共沸又は共沸様組成物が、フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、93.6~10.0重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)及び6.4~90.0重量%のフッ化水素(HF)で構成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
共沸又は共沸様組成物が、フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、81.7~27.3重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)及び18.3~72.7重量%のフッ化水素(HF)で構成される、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-12
31zd)及びフッ化水素(HF)の共沸又は共沸様組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロフルオロカーボン(CFC)ベースの化学物質は、数ある中でも冷却剤、エアゾ
ール噴射剤、発泡剤及び溶剤を含む、産業界で各種の異なる用途に幅広く使用されてきた
。しかし、ある一定のCFCは、地球のオゾン層を激減させることが疑われている。した
がって、より環境に優しい代用品が、CFCの置き換えとして導入されてきた。例えば、
1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)は、発泡剤及び溶
剤など、ある一定の工業用途に有益な物理特性を有するものと認められており、したがっ
て、これらの用途に以前使用されていたCFCの良い代用品であるとみなされる。残念な
がら、工業用途における、HFC-245faを含むある一定のハイドロフルオロカーボ
ンの使用は、現在、地球温暖化に寄与すると考えられている。したがって、より環境に優
しいハイドロフルオロカーボンの代用品が現在、探求されている。
【0003】
HCFO-1233zd又は単純に1233zdとしても知られる化合物、1-クロロ
-3,3,3-トリフルオロプロペンは、発泡剤及び溶剤としての使用を含むいくつかの
用途において、HFC-245faの置き換え候補である。1233zdは、Z-異性体
及びE-異性体を有している。これら2つの異性体間の物理特性の相違により、純123
3zd(E)、純1233zd(Z)又は2つの異性体のある一定の混合物は、冷却剤、
噴射剤、発泡剤、溶剤として特定の用途に、又は他の使用法に好適であり得る。
【0004】
1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)
は、245fa及び1233zdの両方の製造における出発物質又は中間体(低フッ素化
クロロカーボン、例えば、HCC-240fa、1,1,3,3-テトラクロロプロペン
、1,3,3,3-テトラクロロプロペン及び/又は1,1,3,3-テトラクロロ-1
-フルオロプロパンから始める場合)のいずれかであり得、これらは、それぞれ米国特許
第5,763,706号及び同第6,844,475号に記載されているように当該技術
分野において既知である。1233zdの製造方法は、米国特許第9,045,386号
及び同第9,000,240号にも開示されている。
【0005】
1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)
の新しい組成物、その分離及び精製方法、並びにその使用が所望されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-12
31zd)及びフッ化水素(HF)で本質的に構成される異質共沸又は共沸様組成物を提
供する。
【0007】
別の実施形態では、組成物は、1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エ
ン(HCFO-1231zd)及びフッ化水素(HF)で構成されてよい。
【0008】
更なる実施形態では、組成物は、フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3
-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、約1~
約99重量%のフッ化水素(HF)及び約1~約99重量%の1,3,3-トリクロロ-
3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)で本質的に構成されてよい。
あるいは、組成物は、フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプ
ロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、約2~約99重量%
のフッ化水素(HF)及び約1~約98重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロ
プロプ-1-エン(HCFO-1231zd)で本質的に構成されてよい。なお更に、組
成物は、フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エ
ン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、約2~約80重量%のフッ化水素
(HF)及び約20~約98重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1
-エン(HCFO-1231zd)で本質的に構成されてよい。組成物は、約10psi
a±2psiaの圧力で約-10℃±0.5℃の沸点を有してもよい。
【0009】
その別の形態において、本発明は、フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-
3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、約1
~約99重量%のフッ化水素(HF)及び約1~約99重量%の1,3,3-トリクロロ
-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)で本質的に構成される配合
物を形成する工程を含む、共沸又は共沸様組成物を形成する方法を提供する。組成物は、
1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)及
びフッ化水素(HF)で構成されてよい。
【0010】
前述の方法では、形成する工程は、フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-
3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、約2
~約99重量%のフッ化水素(HF)及び約1~約98重量%の1,3,3-トリクロロ
-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)で本質的に構成される配合
物を形成することを含んでもよい。あるいは、形成する工程は、フッ化水素(HF)及び
1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の
総合重量に基づいて、約2~約80重量%のフッ化水素(HF)及び約20~約98重量
%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd
)で本質的に構成される配合物を形成することを含んでもよい。組成物は、約10psi
a±2psiaの圧力で約-10℃±0.5℃の沸点を有してもよい。
【0011】
その更なる形態において、本発明は、1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-
1-エン(HCFO-1231zd)及びフッ化水素(HF)で本質的に構成される共沸
又は共沸様組成物を提供する工程と、蒸気相内の該1,3,3-トリクロロ-3-フルオ
ロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の少なくとも一部をフッ素化剤と反応さ
せて、少なくとも1つのフッ素化有機化合物を製造する工程と、を含む、有機化合物をフ
ッ素化する方法を提供する。反応させる工程は、蒸気相内の該1,3,3-トリクロロ-
3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の少なくとも一部をフッ素化
剤と反応させて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233
zd)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、及び/
又は1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)を製造すること
を更に含んでもよい。
【0012】
本発明に関係する当業者は、本発明のいずれかの特定の態様及び/又は実施形態に関し
て本明細書に記載された特徴のいずれかを、本明細書に記載された本発明のいずれかの他
の態様及び/又は実施形態の他の特徴のいずれの1つ以上と組み合わせ、必要に応じてそ
の組み合わせの適合性を保証するために修正を加え得ることを理解するであろう。このよ
うな組み合わせは、本開示に想到される本発明の一部とみなされる。
【0013】
前述の一般的な説明と後述の説明との両方は、あくまでも例示的かつ説明的であり、本
発明を記載のとおりに制限するものではないことが理解されるべきである。他の実施形態
は、本明細書に記載された本発明の仕様及び実施の考慮から当業者に明らかになるであろ
う。
【図面の簡単な説明】
【0014】
添付の図面と組み合わせて本発明の実施形態の以下の説明を参照することによって、本
発明の上述及び他の特徴と、それらを達成する方法がより明らかになり、本発明それ自体
がより良好に理解されるであろう。
【0015】
図1】-10℃で測定したときの、実施例2で形成される混合物の蒸気圧のプロットを示す。
【0016】
図面は、本開示による様々な特徴及び構成成分の実施形態を表わしているが、図面は必
ずしも一定の縮尺ではなく、一部の特徴は、本開示をより的確に例示し、説明するために
強調されている場合がある。本明細書に記載される例証は、本発明の実施形態を例示する
ものであり、このような例証は、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものと
して解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd又
は1231zdとしても知られ、そのように本明細書で称される)は、フッ化水素(HF
)との異質共沸若しくは共沸様組成物又は混合物を形成することが見出されており、本発
明は、1231zd及びHFを含む又はそれからなる異質共沸又は共沸様組成物を提供し
、他の実施形態では、組成物は、1231zd及びHFで本質的に構成されてもよく、な
お更なる実施形態では、組成物は、1231zd及びHFで構成されてもよい。
【0018】
1231zd及びHFの共沸又は共沸様混合物は、1,1,1,3,3-ペンタフルオ
ロプロパン(HFC-245fa)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(
HCFO-1233zd)及び1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-12
34ze)の製造における中間体及び/又は供給原料として使用されてもよく、このよう
な組成物は、金属から表面酸化を除去するための溶媒組成物として付加的に有用である。
更に、1231zd及びHFの共沸又は共沸様混合物は、いったん形成された後、抽出又
は蒸留技術によってその構成成分部分に分離され得る。標準大気圧において、1231z
dは、約110℃の沸点を有し、HFは、約20℃の沸点を有する。
【0019】
流体の熱力学的状態は、その圧力、温度、液体組成物及び蒸気組成物によって定義され
る。純共沸組成物については、液体組成物及び蒸気相は、所与の温度及び圧力範囲におい
て本質的に等しい。実際面では、これは、構成成分が相変化中に分離され得ないことを意
味する。本発明の目的のため、共沸混合物は、周囲の混合組成物の沸点に対して最大沸点
又は最低沸点を呈する液体混合物である。また、本明細書で使用するとき、用語「共沸様
」は、厳密に共沸性である、及び/又は一般に共沸混合物のように挙動する組成物を指す
【0020】
共沸混合物又は共沸様組成物は、所与の圧力下で液体形状にあるとき、実質的に一定温
度で沸騰し、この温度は、個々の構成成分の沸騰温度より高い場合も低い場合もあり、沸
騰している液体組成物と本質的に同一である蒸気組成物を提供する、2つ以上の異なる構
成成分の混合物である。
【0021】
本発明の目的のため、共沸組成物は、共沸混合物のように挙動する組成物である、すな
わち、一定の沸騰特性を有する、又は沸騰若しくは蒸発中に分留しない傾向を有する、共
沸様組成物を含むと定義される。このように、沸騰又は蒸発中に形成される蒸気の組成物
は、元の液体組成物と同じであるか、又は実質的に同じである。それゆえ、沸騰又は蒸発
中に液体組成物が変化するとしても、変化は最小又は無視できる程度に限られる。これは
、沸騰又は蒸発中に液体組成物がかなりの程度まで変化する非共沸様組成物とは対照的で
ある。
【0022】
したがって、共沸混合物又は共沸様組成物の本質的な特徴は、所与の圧力において、液
体組成物の沸点が固定されるということと、沸騰組成物の上の蒸気の組成物は、本質的に
沸騰液体組成物のそれである、すなわち、本質的に液体組成物の構成成分の分留が行われ
ないということと、になる。共沸組成物の構成成分それぞれの沸点及び重量バーセントの
両方は、共沸混合物又は共沸様液体組成物が、異なる圧力で沸騰したときに変化し得る。
このように、共沸混合物又は共沸様組成物は、その構成成分間に存在する関係の観点から
、又は構成成分の組成範囲の観点から、又は指定された圧力での固定沸点によって特徴付
けられる組成物の構成成分それぞれの正確な重量パーセントの観点から、定義され得る。
【0023】
本発明は、共沸又は共沸様組成物を形成するための、有効量の1231zd及びHFを
含む組成物を提供する。本明細書で使用するとき、用語「有効量」は、他の構成成分と組
み合わせたとき、共沸混合物又は共沸様混合物の形成をもたらす構成成分それぞれの量で
ある。
【0024】
本発明の組成物は、好ましくは、1231zdとHFとの組み合わせで本質的に構成さ
れるか、又は1231zdとHFとの組み合わせで構成される、二成分共沸混合物である
。本明細書で使用するとき、用語「~で本質的に構成される」は、共沸様組成物又は混合
物の構成成分に関して、組成物が、指示される構成成分を共沸様比率で含有し、かつ、追
加構成成分を含有し得ることを意味する。ただし、追加構成成分は、新規の共沸様系を形
成しないことを条件とする。例えば、2つの化合物で本質的に構成される共沸様混合物は
、二成分共沸混合物を形成するものであり、任意選択的に、1つ以上の追加構成成分を含
んでもよい。ただし、追加構成成分は、混合物を非共沸性にせず、化合物のいずれか又は
両方との共沸混合物を形成しない(例えば、三成分共沸混合物を形成しない)ことを条件
とする。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「異共沸混合物」及び「異質共沸混合物」は、2つの液
相と同時に存在する蒸気相を含む共沸様組成物を意味する。
【0026】
本発明はまた、1231zdとHFとを組み合わせることによって、共沸又は共沸様組
成物を形成する方法を提供する。2つ以上の構成成分を組み合わせて組成物を形成するた
めの、当該技術分野において既知の多種多様な方法はいずれも、本方法で使用するように
適合され得る。例えば、1231zd及びHFは、バッチ若しくは連続反応及び/若しく
はプロセスの一部として、又は2つ以上のこのような工程の組み合わせを介して、手及び
/又は機械によって混合、配合、ないしは別の方法で組み合わされ得る。一実施形態では
、1,1,1,3,3-ペンタクロロジプロパン(HCC-240fa)及びHFが反応
器に供給されるとき、1231zdは、1231zd及びHFの共沸又は共沸様組成物の
形態で中間副産物として形成される。
【0027】
共沸又は共沸様組成物は、1231zd及びHFの総合重量に基づいて、約1~約99
重量パーセントの1231zd、約2~約98重量パーセントの1231zd、約20~
約98重量パーセントの1231zd、約10~約80重量パーセントの1231zd、
又は約25~約60重量パーセントの1231zd、並びに1231zd及びHFの総合
重量に基づいて、1~約99重量パーセントのHF、約2~約98重量パーセントのHF
、約2~約80重量パーセントのHF、約20~約90重量パーセントのHF、又は約4
0~約75重量パーセントのHFを含む、本質的にそれらで構成される、又はそれらで構
成される。
【0028】
本発明の共沸又は共沸様組成物は、約10psia±2psiaの圧力で約-10℃±
0.5℃の沸点を有する。特定の一実施形態では、75±2重量パーセントのHF及び2
5±2重量パーセントの1231zdを有する本発明の共沸又は共沸様組成物は、-10
℃及び10.7psiaで沸騰することが見出された。
【0029】
本開示はまた、1231zd及びHFの共沸又は共沸様混合物を生成し、次いで、不純
物から共沸混合物を単離することを包含する。本開示はまた、以下でより詳細に論じられ
るように、共沸混合物から1231zdを分離し、精製するための工程を含む。
【0030】
1231zdは、当該技術分野において既知である1つ以上の方法を使用して製造され
てもよく、1231zdは、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)
、1,1,3,3-テトラクロロ-1-フルオロプロパン(HFC-241fa)、1,
3,3-トリクロロ-1,1-ジフルオロプロパン(242fa)、3,3-ジクロロ-
1,1,1-トリフルオロプロパン(243fa)、(E)-1,3-ジクロロ-3,3
-ジフルオロプロプ-1-エン(1232zd(E))、(Z)-1,3-ジクロロ-3
,3-ジフルオロプロプ-1-エン(1232zd(Z))、(E)-1-クロロ-3,
3,3-トリフルオロプロペン(1233zd(E))、(Z)-1-クロロ-3,3,
3-トリフルオロプロペン(1233zd(Z))、3-クロロ-1,1,1,3-テト
ラフルオロプロパン(244fa)及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(
245fa)といった1つ以上の不純物を含有する反応混合物の構成成分として製造され
る。
【0031】
この混合物又は1231zd及び不純物を含有する任意の他の混合物から1231zd
を除去する第1の工程は、本明細書に定義されるように、HFを有効量で添加して、12
31zd及びHFの共沸組成物を形成することであり、不純物自体は、1231zd、H
F、又は1231zd及びHFの混合物との共沸混合物を形成しない。その後、共沸組成
物は、標準的な分離技術、例えば、限定するものではないが、液-液相分離、蒸留、スク
ラブ、又は他の技術分野で認識されている分離手段などを用いて不純物から分離される。
【0032】
精製された共沸混合物は、当該技術分野における、オゾン破壊係数を有せず、地球温暖
化の誘因として無視できる程度であり、不燃性である混合物に対する必要性を満たす。こ
のような混合物は、限定するものではないが、冷却剤、発泡剤、噴射剤及びガス滅菌用希
釈剤などの広い使用範囲で利用することができる。共沸混合物は、このような目的のため
に、他の有用な添加剤又は成分と組み合わせて提供されてもよい。
【0033】
精製後、1231zd及びHF共沸混合物の構成成分部分を、本質的にHF-フリーで
ある1231zdの精製形態に分離することが望ましい場合もある。本明細書で使用する
とき、「本質的にHF-フリー」又は「HF-フリー」は、1.0重量%未満のHF、0
.5重量%未満のHF、又は0.1重量%未満のHFを含む1231zdの組成物を指す
【0034】
分離方法は、当該技術分野において一般に既知の任意の方法を含んでもよい。一実施形
態では、例えば、過剰なHFは、液-液相分離によって1231zdから除去され得るが
、他の代替方法としては、蒸留又はスクラブが挙げられる。次いで、残りのHFは、蒸留
並びに/又はモレキュラーシーブ、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ及びこれらの組み
合わせなどの1つ以上の乾燥媒体若しくは乾燥剤の使用によって、1231zdから除去
され得る。
【0035】
精製された1231zdは、冷却剤、発泡剤、噴射剤、若しくはガス滅菌用の希釈剤な
どの最終製品として使用されてもよく、あるいは出発物質、中間体、モノマーとして使用
されてもよく、又は代替のHFO若しくは類似の化合物の製造のために更に処理されても
よい。
【0036】
本発明の別の実施形態では、本明細書に記載された共沸様組成物は、溶媒、特に洗浄溶
媒として使用され得る。特定の実施形態では、溶媒を金属基材の酸化表面と接触させて、
酸化表面の少なくとも一部を除去するか又は低減させる。このような溶媒は、浸漬、噴霧
、拭き取りなどの当該技術分野において既知の任意の手段を介して標的基材に適用されて
もよい。
【0037】
特定の実施形態では、本明細書に記載された新規の共沸様組成物を含む、噴霧可能な組
成物が提供される。特定の実施形態では、噴霧可能な組成物はエアゾールである。特定の
実施形態では、噴射可能な組成物は、例えば、不活性成分、共溶媒、噴射剤、共噴射剤な
どの他の構成成分を更に含む。
【0038】
特定の実施形態では、本明細書に記載された新規の共沸様組成物は、特定のハイドロク
ロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロフルオロカーボン、
例えば、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、
1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)及び1,1,1,3
,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)などの合成中に誘導される有用な
中間体である。例えば、1231zd及びHFを合成反応時に反応器に導入して、1-ク
ロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、1,3,3,3
-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)又は1,1,1,3,3-ペンタフ
ルオロプロパン(HFC-245fa)を製造する場合、これらの構成成分の少なくとも
一部は、関連する反応生成物流から後に回収され得る共沸混合物を形成する。
【0039】
特定の実施形態では、ハイドロクロロプロパンの沸点を低下させる方法が提供されてお
り、この方法は、1231zd及びHFで本質的に構成される共沸様混合物を形成するた
めの有効量の1231zd及びHFを配合することを含む。1231zdの沸点を低下さ
せることは、1231zdを蒸気相のフッ素化反応における反応物質として使用するとき
に有利である。より具体的には、沸点を低下させることにより、化合物の気化が容易にな
り、それゆえ、化合物の分解を防止しやすくなり、フッ素化プロセスに必要なエネルギー
量も軽減する。
【0040】
したがって、(a)1231zd及びHFで本質的に構成される共沸様組成物を提供す
る工程と、(b)蒸気相の該1231zdの少なくとも一部をフッ素化剤と反応させて、
1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)などのペンタフル
オロプロパン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233z
d(E)及び/又は(Z))などのハイドロクロロトリフルオロプロペン、及び/又は1
,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)などのテトラフルオロ
プロペンといった少なくとも1つのフッ素化有機化合物を製造する工程と、を含む、有機
化合物をフッ素化する方法も提供される。
【0041】
以下の非限定的な実施例は、本発明を例示するのに役立つ。
【0042】
実施例1
13.64gの1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-
1231zd)を、-10℃及び10.5psiaにて13.44gのHFと組み合わせ
て、異質共沸混合物を形成した(目視観察による)。また、下層(1231zdリッチ層
)の液体組成物を試料採取して分析し、2.2量%で存在するHFと、97.8重量%で
存在する1231zdと、を有することを見出した。
【0043】
実施例2
1231zd及びHFのみを含有する二成分組成物を配合して、異なる組成で異質共沸
混合物を形成した。この混合物の蒸気圧を-10℃で測定した。その結果を下の表1に示
す。この表には、約-10℃の一定温度におけるHF重量パーセントの組成の関数として
、1231zd及びHFの蒸気圧測定が示されている。
【0044】
【表1】
【0045】
また、このデータは、例えば、HFが0.0重量%(及び1231zdが100.0重
量%)のとき及びHFが100.0重量%(及び1231zdが0.0重量%)のときの
最初の行と最後の行とに指示されているように、指示された全ての配合比率において、1
231zd及びHFの混合物の蒸気圧のほうが、1231zd及びHF単独の蒸気圧より
も高いことから、この混合物は共沸混合物であることを示している。表1のデータは、図
1に図形でも示されている。
【0046】
実施例3
1231zd及びHFの共沸組成物を更に形成し、次いで気-液-液平衡(VLLE)
実験によって検証した。14.16gの1231zdを、-10℃で10.24gのHF
と組み合わせて、異質混合物を形成した(目視観察による)。混合物の蒸気組成物を-1
0℃の温度及び10.7psiaの圧力において試料採取した。結果は、共沸組成物が-
10℃で約75±2重量%のHFであることを示し、混合物は、-10℃の温度及び10
.7psiaの圧力で異質共沸混合物であることが観察された。
【0047】
本明細書で使用するとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に断りのない
限り、複数を含む。更に、量、濃度又は他の値若しくはパラメータが、範囲、好ましい範
囲又は好ましい上限値及び好ましい下限値のリストのいずれかとして与えられている場合
、これは、範囲が別に開示されているかどうかにかかわらず、任意の一対の任意の上限範
囲又は好ましい上限値及び任意の下限範囲又は好ましい下限値から形成される全ての範囲
を明確に開示するものと理解されるべきである。本明細書に一定範囲の数値が記載されて
いる場合、特に記載のない限り、その範囲がその終端と、その範囲内の全ての整数及び分
数と、を含むことを意図している。範囲が定義されている場合、本発明の範囲が記載され
た特定の値に限定されることを意図するものではない。
【0048】
前述の説明は、本発明の単に例示であることが理解されるべきである。様々な代替形態及び修正形態が、本発明から逸脱することなく、当業者により考案され得る。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内にある、このような全ての代替形態、修正形態、及び変形形態を包含することを意図している。
本明細書は以下の発明の態様を包含している。
[1]
1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)
及びフッ化水素(HF)で本質的に構成される、共沸又は共沸様組成物。
[2]
前記組成物が、前記フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、約1~約99重量%のフッ化水素(HF)及び約1~約99重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)で本質的に構成される、[1]に記載の組成物。
[3]
前記組成物が、前記フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、約2~約99重量%のフッ化水素(HF)及び約1~約98重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)で本質的に構成される、[1]に記載の組成物。
[4]
前記組成物が、前記フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、約2~約80重量%のフッ化水素(HF)及び約20~約98重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)で本質的に構成される、[1]に記載の組成物。
[5]
前記組成物が、
約10psia±2psiaの圧力において約-10℃±0.5℃の沸点を有している、[1]に記載の組成物。
[6]
共沸又は共沸様組成物を形成する方法であって、
前記フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、約1~約99重量%のフッ化水素(HF)及び約1~約99重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)で本質的に構成される配合物を形成することを含む、方法。
[7]
前記形成する工程が、前記フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、約2~約99重量%のフッ化水素(HF)及び約1~約98重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)で本質的に構成される配合物を形成することを含む、[6]に記載の方法。
[8]
前記形成する工程が、前記フッ化水素(HF)及び1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の総合重量に基づいて、約2~約80重量%のフッ化水素(HF)及び約20~約98重量%の1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)で本質的に構成される配合物を形成することを含む、[6]に記載の方法。
[9]
前記組成物が、
約10psia±2psiaの圧力において約-10℃±0.5℃の沸点を有している、[6]に記載の方法。
[10]
有機化合物をフッ素化する方法であって、
1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)及びフッ化水素(HF)で本質的に構成される、共沸又は共沸様組成物を提供することと、
蒸気相内の前記1,3,3-トリクロロ-3-フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1231zd)の少なくとも一部をフッ素化剤と反応させて、少なくとも1つのフッ素化有機化合物を製造することと、を含む、方法。
図1