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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】シリコンチャンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/02 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
C01B33/02 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022513279
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2019073062
(87)【国際公開番号】W WO2021037366
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】マティアス、ビーツ
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-528155(JP,A)
【文献】特表2017-503747(JP,A)
【文献】特開平06-218677(JP,A)
【文献】特表2009-544564(JP,A)
【文献】特表2017-512159(JP,A)
【文献】特開2013-170122(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198947(WO,A1)
【文献】特開2010-189274(JP,A)
【文献】特開2004-091321(JP,A)
【文献】中国実用新案第203074755(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
B01D 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンチャンクの製造方法であって、
(a)シリコンロッドを提供する工程と、
(b)ハンマー及び/又はニードルハンマー使用して前記シリコンロッドの表面を少なくとも部分的に表面層を除去する処理をする工程と、
(c)加熱粉砕工程又は高電圧パルス粉砕又はジョークラッシャー、ローラークラッシャー、のみ、大ハンマーからなる群から選択された一つの装置を介して、シリコンロッドを塊に粉砕する工程と、を含み、
前記ハンマー及び/又は前記ニードルハンマーによって打撃エネルギー1~15Jを与えて、前記表面層を深さ1~10mm除去する、シリコンチャンクの製造方法。
【請求項2】
前記ハンマー及び/又は前記ニードルハンマーによって与える前記打撃エネルギーが、2~10Jである、請求項1に記載のシリコンチャンクの製造方法。
【請求項3】
前記ニードルハンマーの針の本数が、6~24本である、請求項1又は2に記載のシリコンチャンクの製造方法。
【請求項4】
前記ニードルハンマーの針のそれぞれに、半径が0.5~1.5mmある円形の打撃面を有する、請求項1~3のいずれかの一項に記載のシリコンチャンクの製造方法。
【請求項5】
前記ニードルハンマーが電動ニードルハンマー、空圧ニードルハンマー又は油圧ニードルハンマーのいずれかの一つである、請求項1~4のいずれかの一項に記載のシリコンチャンクの製造方法。
【請求項6】
前記ニードルハンマーの打撃速度が2000~5000min-1ある、請求項4に記載のシリコンチャンクの製造方法。
【請求項7】
前記ニードルハンマーの針及び/又は少なくとも前記ハンマーとポリシリコンとの接触部分は、炭化物、金属セラミック複合材料、セラミック又はこれらの組合せからなる群から選択された一つの材料からなる、請求項1~6のいずれかの一項に記載のシリコンチャンクの製造方法。
【請求項8】
前記ニードルハンマーの針及び/又は少なくとも前記ハンマーとポリシリコンとの接触部分は、炭化タングステンコバルトバインダを有する炭化タングステンニッケルバインダを有する炭化タングステン炭化チタン、ニッケルクロム合金バインダを有するCr を少なくとも含む炭化クロム;炭化タンタル炭化ニオビウム窒化ケイ素、鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種をマトリクスとする炭化シリコン複合材料窒化アルミニウム、コバルト及び炭窒化チタンを有する炭化チタンニッケルニッケル-コバルト合金又はこれらの組合せからなる群から選択された一つの材料からなる、請求項1~7のいずれかの一項に記載のシリコンチャンクの製造方法。
【請求項9】
前記表面層を除去する深さが1~5mmである、請求項1~8のいずれかの一項に記載のシリコンチャンクの製造方法。
【請求項10】
DIN EN ISO 4287/4288及びDIN EN 10049に記載されている粗さのパラメータRa及び/又はRPcが、工程(a)と工程(b)との間、及び/又は、工程(b)と工程(c)との間で測定される、請求項1~9のいずれかの一項に記載のシリコンチャンクの製造方法。
【請求項11】
処理済みシリコンロッドの粗さの測定後に工程(b)を繰り返す、請求項1~10のいずれかの一項に記載のシリコンチャンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンチャンクの製造方法に関する。具体的には、ハンマー及び/又はニードルハンマーを使用してシリコンロッドの表面を少なくとも部分的に表面層の除去処理をするシリコンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコン(略してポリシリコン)は、るつぼ引き上げ法(チョクラルスキー法若しくはCZ法)又はゾーンメルト法(プロートゾーン法)による単結晶シリコンを製造するための出発物質として用いられる。単結晶シリコンは、半導体産業において電子部品(チップ)の製造に用いられる。
【0003】
ポリシリコンは、ブロック鋳造法などの多結晶シリコンの製造にも必要である。ブロックから得られた多結晶シリコンは、太陽電池の製造に用いることができる。
【0004】
ポリシリコンはシーメンス法(化学気相成長法)で得ることができる。シーメンス法は、ベルジャー型反応器(「シーメンス反応器」)中に直接的に電流を通過させることにより芯線(通常はポリシリコンで構成されている)を加熱すること、並びに水素及びケイ素含有成分を含む反応ガスを導入することを含む。
使用されるケイ素含有成分は、一般的にモノシラン(SiH)または一般組成SiH4-n(n=0、1、2、3;X=Cl、Br、I)で表すハロシランであり、通常はクロロシラン又はクロロシランの混合物、典型的にはトリクロロシラン(SiHCl、TCS)である。主にSiH又はTCSが水素との混合物で使われる。典型的なシーメンス反応器の構造は、欧州特許2077252号公報又は欧州特許2444373号公報に記載されている。反応器の底部(底板)には、一般的に芯線を収容する電極が設けられている。芯線は通例シリコンからなるフィラメントロッド(シリムロッド)である。典型的には、2つのフィラメントロッドがブリッジ(シリコン製)を介して接続され、電極を介して回路を形成するペアを形成する。堆積の間にフィラメントロッドの表面温度は、典型的に1000℃以上である。この温度では、反応ガスのケイ素含有成分が分解し、元素のケイ素がポリシリコンとして蒸気相から析出する。その結果、フィラメントロッドとブリッジとの直径が増加する。所定の直径に達した後、堆積が停止され、得られたポリシリコンロッドが除去される。ブリッジの除去後、ほぼ円筒形のシリコンロッドが得られる。得られたシリコンロッドを粉砕機(例えばジョークラッシャー)で粉砕され、様々な大きさの容器に包装される。自動粉砕の前に所望に応じて予備粉砕(例えばハンマーによる手動粉砕)を行うことができる。
【0005】
ポリシリコンロッド及びそこから生成されたチャンクの形態は、一般的に更なる処理に大きな影響を与える。ポリシリコンロッドの形態は原則的に堆積工程のパラメータ(例えばロッドの温度、シラン及び/又はクロロシランの濃度、特定の流量)によって決まる。パラメータによって堆積の間に異なる形態領域の界面が形成される場合がある。これらの形態領域は特に穴及び/又はトレンチを含む可能性がある。欧州特許2662335号公報には、パラメータの変化によって異なる同心形態領域を得ることができる方法が記載されている。
【0006】
ポリシリコンの形態は、緻密で平滑な状態のものから、非常に多孔質で亀裂が入っているまで様々である。緻密な多結晶シリコンは、実質的に、亀裂、細孔、継ぎ目、裂け目などほとんど含まない。この種類のポリシリコンの見かけ密度は、シリコンの真密度に等しいといえ、又は少なくともその近似値に相応する。シリコンの真密度は2.329g/cmである。
【0007】
特に直径の大きい(>150mm)ポリシリコンロッドの製造において表面に亀裂が入ることはよくある問題である。この問題はポップコーンとも呼ばれる。亀裂、細孔、継ぎ目及び/又は割れを含むことによってポリシリコンロッドの表面積が増加すると理解される。ポップコーンの形成はプロセスのパラメータを適合させることによって対抗できるかもしれないが、これは通常プロセス時間が長くなり、生産量が減少する。ポップコーンは、ダスト堆積など自発的に発生することもあり、早期発見は原則に唯一の対策である。
【0008】
多孔質で亀裂が入っている形態は特にポリシリコンの結晶現象において悪い結果をもたらす。特にCZ法による単結晶シリコンの製造工程においては明らかである。多孔質で亀裂が入っているポリシリコンを使用することによって経済的に許容できない収率に繋がる。CZ法において、特に緻密なポリシリコンは一般的に著しく高い収率に繋がる。結晶化工程又はこのような特定の種類の方法において、採用された出発材料は閾値を超えていない形態を有するポリシリコンである場合のみ、一般的に経済的最適性を実現する。一般的にポップコーンを含むポリシリコンロッド(全体又は粉砕されたもの)を単結晶シリコンの製造工程の出発材料とすることは考えられない。
【0009】
その結果、ポリシリコンは純度だけではなく、形態によっても区別され、分類される。ポップコーンの存在は、原則低品質の等級へ分級される結果となる。ポップコーンを含むポリシリコンロッドを粉砕した後、亀裂が入っているものから緻密なチャンクを分離することが可能であるが、このような工程はコストが高くなり、不便で非常に時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許第2077252号公報
【文献】欧州特許第2444373号公報
【文献】欧州特許第2662335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、堆積工程の後にポップコーン層を選択的に除去できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、シリコンチャンクの製造方法であって、
(a)シリコンロッドを提供する工程と、
(b)ハンマー及び/又はニードルハンマー使用して前記シリコンロッドの表面を少なくとも部分的に表面層を除去する処理をする工程と、
(c)シリコンロッドをチャンクに粉砕し、ハンマー及び/又はニードルハンマーによって1~15Jの打撃エネルギーを与える工程とを含む、シリコンチャンクの製造方法によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明による手動ニードルハンマーを示す。
図2図2は、針の詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
シリコンロッド、特にポリシリコンロッドは、シーメンス法によって製造されたものが好ましい。ポリシリコンロッドは気相堆積反応器、特に冒頭に記載されたシーメンス反応器から除去された後直ちに提供されるのが好ましい。クレーン又はグリッパーを用いて提供することが好ましい。
【0015】
シリコンロッド(ブリッジ及び任意に電極上部に成長した領域を除去する工程の後)の長さは、典型的に1~3.5mである。シリコンロッドは原則として所望の長さで処理されることができる。工程(a)において処理されたシリコンロッドの直径は通常50~350mmである。
【0016】
シリコンロッドの提供はクリーンルームで実施されるかもしれない。例えば、作業台の上に寝かせて設置するかもしれない。シリコンロッドは、例えば特に回転ベースの上に、原則的に立っている状態で提供されることもある。保護ガスのあるクリーンルーム又は作業台を使用することは強制的ではないが、必要に応じて使用することができ、チャンクの純度が増加する。
【0017】
ハンマー、特に手動ハンマーの合計重量は好ましくは2kgを超えない。理想的に合計重量は800~1500gである。ハンマーは原則頭と柄を含み、頭にポリシリコンとの接触する部分を含む打撃面を少なくとも一つ有する。打撃面は好ましくは平らな(面)又は僅かに外反り形状である。フィッターズハンマーのようなフィン形状も考えられる。ポリシリコンとの接触部分は頭の他の部分と異なる材料で作られることもできる。打撃面はコーティングを有することができる。例えば欧州特許0539097号公報に記載されたハンマーは例として考えられる。
【0018】
この場合、ニードルハンマーは複数(特に≧6)の点状(針のような)打撃面を含むハンマーであって、打撃面は円形であるハンマーが考えられ、打撃面の半径は0.5~1.5mmが好ましく、0.5~1mmがより好ましい。特に切頭円錐の上底面である場合がある。上底面は任意に曲面(凸面)でもよい。
【0019】
ニードルハンマーは例えば頭に賦形された面を有する手持ちハンマーである。面は、少なくとも6つの円錐形の突起(針)で賦形され、それぞれに
【0020】
に記載の打撃面を有するのが好ましい。突起は5~20mmの高さを有することができる。このようなハンマーはミートハンマーに類似することがある(図1参照)
【0021】
本発明の一つの好ましい実施形態によれば、ニードルハンマーは手で操作し、機械的に作動する(空圧、電動、又は油圧)器具である。このようなニードルハンマーの類義語は特にニードルガンスカラー及びニードルスカラーがある。このような器具は、さび、 目盛り、塗料層を除去するためにも使用することができ、市販されているものである。ニードルハンマーは複数の針(通常≧6)を包含し、まとめてニードルパックと呼ばれる。針は通常針板の針穴に挿入される。駆動によって針は加工対象物の方向へ1本ずつ発射される。針の長さは通常5~25cmである。直径は典型的に2~5mmである。通常の直径は3mmである。針は先細りしており、半径が0.5~1.5mmであり、より好ましくは0.5~1mmである、打撃面を形成する。
【0022】
(b)工程の表面処理は機械式ニードルハンマーで実施されることが特に好ましい。ただし、必要に応じてハンマー又は手動ニードルハンマーで後処理を実施することができる。
【0023】
ハンマー及び/又はニードルハンマーによって与える打撃エネルギーは好ましくは2~10Jであり、より好ましくは3~8Jである。典型的な打撃エネルギーの範囲は5~8Jである。機械式ニードルハンマーの場合、記載されている数値は、針1本の数値である。機械的に作動するニードルハンマーは通常打撃エネルギーを事前に決めて、場合によって連続的に変化させることもできる。
【0024】
ハンマー及び手動ニードルハンマーの場合、落下高さを変えることによって異なる打撃エネルギーを実現することができる。
【0025】
機械式ニードルハンマーは2000~5000min-1であり、好ましくは2500~4000min-1であり、より好ましくは2800~3500min-1の打撃速度で作動させることができる。
【0026】
ニードルハンマー好ましくは6~24針を含み、より好ましくは6~18針を含み、特に好ましくは6~12針を含む。針が手動ニードルハンマーの場合、ハンマーの頭にある円筒形及び/又は円錐形の突起であるか、機械式ニードルハンマーの場合、5~25cm長いスチールロッドであるかは、本発明の実施可能性にとって原則的に重要ではない。
【0027】
最大打撃エネルギーが15Jであるハンマー又はニードルハンマーは、シリコンロッドからポップコーンの表面層を特に選択的に除去することができるだけではなく、経済的に許容できる時間内で大面積にわたって除去できることもできる。シリコンの脆性を考えると、これは予想外である。選択的とは、特に除去される層の厚さを本質的に一定に保つことができ、シリコンロッド表面の性質に応じて変化させることができることを意味する。
【0028】
ニードルハンマーの針による低エネルギーの打撃が多数発生するため高い選択性を達成する。さらに、適切な硬質金属材料を使用することで、非常に低い硬質金属によるシリコンの汚染しか測定できないことが示されている。例えば炭化タングステンで作られ、6又は12針を有するニードルハンマー(打撃エネルギー6J)を使用する場合、10pptwより少ないタングステンの異物が測定される。26針を有するニードルハンマー(打撃エネルギー6J)を使用する場合、20pptwより少ないタングステンの異物が測定される。処理後の異物は、例えばICP―MS(誘導結合プラズマ質量分析)を使用して測定することができる。試料を作製するため、定義されたロッドのセグメントの表面をHF/HNOの混合物で洗浄する。金属の異物は試料の重量に関連する。
【0029】
打撃面が炭化タングステンで作られ、打撃エネルギーが15Jであって、重量が1kgであるハンマー(欧州特許0539097号公報参照)を使用した場合でも、タングステンは50pptw未満と低い結果となる。
【0030】
ニードルハンマーの針及び/又はハンマーの少なくともシリコンとの接触部分は、特に打撃面は、好ましくは炭化物、金属セラミック複合材料、セラミック又はこれらの組合せからなる群から選択された一つの低汚染金属である。
【0031】
より好ましくは、炭化タングステン、コバルトバインダを有する炭化タングステン、ニッケルバインダを有する炭化タングステン、炭化チタン、ニッケルクロム合金バインダを有する炭化クロム(例えば、Cr)、炭化タンタル、炭化ニオビウム、窒化ケイ素、炭化シリコン複合材料(例えば、鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン又はマグネシウム)、窒化アルミニウム、コバルト及び炭窒化チタンを有する炭化チタン、ニッケル、ニッケル-コバルト合金、鉄又はこれらの組合せからなる群から選択される一つの材料である。
【0032】
炭化タングステンを適切な材料とした例は、欧州特許3036190号公報に見出すことができる。
【0033】
工程(b)の処理後、ハンマー又はニードルハンマーの材料によるポリシリコンの異物は好ましくは50pptw未満であり、関連する金属の含有量は特に30pptw未満である。
【0034】
工程(b)において、特にポップコーンの表面層、すなわち、亀裂、穴及び/又は細孔が散在するシリコンの表面層は好ましくは1~10mm、より好ましくは1~5mm、特に好ましくは1~3mmの深さが除去される。ハンマーを使用しても、ニードルハンマーを使用しても、厚みが1mm程度だけの層も選択的に除去することができる。材料を除去すべき深さは、特に加工されるシリコンロッドの直径及び残りの材料の緻密度によって決定する(一般、シリコンロッドの破断を避けるべきである)。除去深度の数値は概ね平均値である。シリコンロッドの表面は他の部分よりポップコーンが少ないことはよくある。適宜に除去深度を変化することができる。典型的に、経済的な理由から、部分的にポップコーンで覆われたシリコンロッドは工程(b)で処理される。
【0035】
本発明の一つの好ましい実施形態によれば、シリコンロッドの粗さの測定は工程(a)及び工程(b)の間、並びに/又は工程(b)及び工程(c)の間で実施される。
【0036】
特に工程(b)を実行する前に、望ましくない表面層(ポップコーン)を除去する深さを決めることができる。さらに、測定された粗さは、適切なハンマー又はニードルハンマーを選択することを容易にすることができる。
【0037】
工程(b)の後の粗さの測定は、特に処理の成功を確認するために使用することができる。測定された粗さによって、必要に応じて工程(b)を繰り返すことができ、すなわちシリコンロッドを再処理する。
【0038】
最も単純なケースでは、目視で粗さを判断することができる。当業者は、表面亀裂の程度に基づいて表面層を除去すべき厚さ、あるいは再処理が必要かどうかをおおよそ判断することができる
【0039】
さらに、欧州特許2578724号公報に記載されているように、透明のフィルムを用いて間接的な測定することができる。シリコンロッドをフィルムで包み、フィルムにポップコーンのあるところを適宜にマーキングする。その後、マーキングをしたフィルムを撮影し、画像処理によってポップコーンの部分を測定し、粗さに関する結論を導き出す。しかし、時間がかかる特性はデメリットである。
【0040】
しかし、粗さの測定は技術的に実施することが好ましい。そのために、様々な方法が考えられる。
【0041】
例えば、ISO4288:1998に記載されている触覚測定方法を用いることができる。この場合、スタイラスを用いて表面の粗さを測定する。しかし、この方法は分散が大きいため、表面亀裂が著しい場合に限り適用できる。
【0042】
粗さの測定には、非接触2D及び3D測定法が好ましい。例えば、レーザー光学式走査はシリコンロッド表面の微小形状の生成に用いられる。ロッドの表面の断層像を生成することによってポリシリコンの領域が特定されることもできる。測定原理は、反射した散乱光の角度の測定に基づく。DIN EN ISO4287/4288及びDIN EN 10049に記載されているように、微小形状は特に粗さパラメータRa(プロファイル算数平均, 平均粗さ)及びRPc(ピークカウント数)の測定に用いられる。 断層像から、特に画像処理によって、粗さのペラメータ、例えば、最小値(谷)と最大値(ピーク)の比を導き出すことができる。
【0043】
工程(b)処理後のシリコンロッドの表面は好ましくは閉じており、即ち実質的に亀裂、細孔又は穴を含まない。完全に閉じた面の場合、いずれにせよ粉砕が起こるので、粗さの数値(例えばRa)は原則的に関係ない。しかし、例えばレーザー走査によって、生成された断層像は、再処理が必要な領域を特定することができる。したがって、工程(c)の粉砕に提供される際に、処理されたシリコンロッドの表面の少なくとも85%、好ましくは少なくとも90% より好ましくは少なくとも95%に亀裂、細孔又は穴がないことが望ましい。もし、シリコンロッドはこの条件を満たしていない場合、工程(b)を繰り返し、すなわち再処理を行い、その後に改めてレーザー走査を行う。
【0044】
前記請求項に記載の方法において、工程(c)の粉砕は、加熱粉砕方法又は高電圧パルス粉砕を介して実施することを特徴とする。
【0045】
粉砕は、通常のジョークラッシャー又はローラークラッシャーを使用して実施する。粉砕は、ハンマー(例えば、5~7kgの大ハンマー)又は空圧のみを使用して実施することもできる。
【0046】
工程(b)及び工程(c)並びに/又は工程(c)の後において洗浄工程を実施することが好ましい。
【0047】
さらに、工程(c)は予備粉砕とすることもでき、その後少なくとも一つの更なる粉砕工程を伴い、場合によって選別を伴うこともある。洗浄工程に関連するポリシリコンの粉砕方法は欧州特許2695874号公報に記載されている。
【0048】
本発明の方法は、特に以下の多結晶シリコンの製造方法の構成工程を含む:
水素に加えてシラン及び/又は少なくとも一つのハロシランを含む反応ガスを反応器の反応空間に導入し、反応空間に少なくとも一つの加熱フィラメントロッドを含み、フィラメントの上にシリコンが堆積し多結晶シリコンロッドが形成されることによる化学気相成長法でシリコンを堆積する工程、
多結晶シリコンロッドを取り出して提供する工程、
ハンマー及び/又はニードルハンマーを用いてシリコンロッドの表面を少なくとも部分的に表面層を除去する処理をする工程、および
処理済みシリコンロッドをチャンクに粉砕する工程。
【0049】
図1は、柄2と頭3を備えた手動ニードルハンマー1を示す。柄2と頭3ともにプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリウレタン)で覆われたステンレススチール芯を有する。頭3に長方形の第一と第二前端(面)4と5を有し、第一前端4に8本の針6が並んで、第二前端5に12本の針7が並んでいる。針6と針7は、例としてステンレススチール芯に螺合されるが、プラスチックで覆われない。針6の詳細図は図2に示す。針6の直径は針7より大きい。針6と針7を対称に並べることは強制的ではない。例として典型的なハンマー1の重量は1kgである。針6と針7の直径dは4mm又は3mmである。
【0050】
図2図1の針6の詳細図を示す。針6は円筒部分8と先9を有する。例として円筒部分8の直径dは4mmである。先9は切頭円錐形であり、円形の上底面10が打撃面を構成する。典型的に上底面10の直径dは1mmである。針6の高さは約12mmである。
【実施例
【0051】
本発明による五つの処理ツール(ハンマーとニードルハンマー、#1~#5)及び二つの手動ハンマー(#6と#7)を使用して直径250mmのポリシリコンロッドのポップコーンを除去する実験を行った。ロッドは、ロッド生産量が24組であるシーメンス反応器の同一のバッチ(外側ロッドサークル)に由来するものであった。全てのロッドは、フリッジがあった上部の部分にポップコーンがあった(トレンチの深さは4mmまでである)。
【0052】
処理前と処理後のロッドの重量を測定し収率を計算した。処理されたロッドの面積の測定は、ストップウォッチ、処理前と処理後の画像、表面測定に用いられる画像処理ソフトを使用して施行された。異物は前記のようにICP-MSを使用して測定した。空圧ニードルハンマーの打撃エネルギーは装置上予め設定されていた。手動ハンマーの打撃エネルギーは圧電力センサー方法によって測定した平均値であった。ハンマーを装置で固定し、異なる高さから測定装置に落下させた。試験装置は、試験結果を再現性よく繰り返すことができるように設計されていた。処理(レーザー光学式走査による)後取り込んだ断層像を根拠として選択性を判断し、「++」は完全なポップコーン除去、非常に均一な材料除去に相当し、また「-」は目標材料損失が高くて不規則な材料除去に相当する。「--」はポリシリコンロッドの破断に相当する (表1参照)。
【0053】
空圧ニードルハンマーの針は、Coの割合が10%である炭化タングステンコバルト(WC-Co)硬金属で構成されていた。WCの粒径は0.6μmであった。針全体の直径が3mmであり、直径1mm円形の打撃面を有する。手動ニードルハンマーの針(図1参照)は、上述と同様にWC-Co硬金属で作られた。針の打撃面は空圧ニードルハンマーとまったく同じであった。
#1のハンマーは欧州特許0539097号公報に記載されているものであって、打撃面が上述と同様にWC-Co硬金属で作られたものであった。#6と#7の手動ハンマーの頭はCoの割合が10%であり、WCの粒径は2.5~4μmであるWC-Co硬金属で作られた。打撃面は円形、最小限の外反り形状である。
【0054】
【表1】
【0055】
針を6本又は12本有する空圧ニードルハンマーを使用している実施例が、タングステンによる汚染が低く、選択性が非常に良い結果となることはすぐに明らかである。針12本より、針6本の収率がさらに良いが、これはより長い仕事時間に関連する。この場合の経済性は、特に製造されたポリシリコンロッド種類(求められる品質)にも依存する。
【0056】
低汚染の場合のみ得られた良好な収率と選択性は同様に手動ニードルハンマーによって実現できる(図1参照)。落下高さに基づいて、打撃エネルギーは狭い範囲内で変化する。低打撃エネルギーの範囲内において、#1の公知のハンマーは、汚染が許容範囲内であり、短時間で比較的に広い領域を処理することができるため、上述の変形の代替品とすることができる。このハンマーは、ポップコーンを選択的に除去するための優秀な代替品となり得る。
【0057】
手動ハンマー#6と#7によってポップコーンの選択的な除去は不可能である。2.5kgのハンマーは、非常に大面積のスポーリングを起こし、ポップコーン層の除去が非常に不正確になる。6kgのハンマーを使うと、ロッドが破断してしまう結果となる。層の除去は不可能だった。
【符号の説明】
【0058】
1 :手動ニードルハンマー
2 :柄
3 :頭
4 :第一前端
5 :第二前端
6 :針
7 :針
8 :円筒部分
9 :先
10:上底面
図1
図2