IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7416927ヒドリドシリコン化合物からのシロキサンの調製方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ヒドリドシリコン化合物からのシロキサンの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20240110BHJP
   C08G 77/08 20060101ALI20240110BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C07F7/18 X
C08G77/08
C07B61/00 300
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022521438
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2019077613
(87)【国際公開番号】W WO2021069081
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】エルケ、フリッツ-ラングハルス
(72)【発明者】
【氏名】ソティリオス、クナイスル
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、ピロウテカ
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-511400(JP,A)
【文献】特表2020-518583(JP,A)
【文献】特表2019-515945(JP,A)
【文献】特表2020-512972(JP,A)
【文献】特表2018-500290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/
C08G 77/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(a1)一般式(I)の化合物および/または
(a2)一般式(I')の化合物
から選択される少なくとも1種のヒドリドシリコン化合物と、
(b)一般式(II)の少なくとも1種のカルボニル化合物と、
(c)少なくとも1種の、一般式(III)のカチオン性化合物と
を接触させて反応させる、シロキサンの調製方法。
123Si-H (I)
[式(I)中、基R1、R2およびR3は、(i)水素、(ii)塩素、(iii)非置換のまたは置換されたC1-C 12 炭化水素基、および(iv)非置換のまたは置換されたC1-C 12 ヒドロカルボノキシ基からなる群よりそれぞれ独立して選択され、ここで置換されたとは、それぞれの場合において、炭化水素基またはヒドロカルボノキシ基がそれぞれ独立して以下の置換:水素原子は、ハロゲン、-CH(=O)、-C≡N、-ORz、-SRz、-NRz 2および-PRz 2により置き換えられていてもよいこと、CH2基は、-O-、-S-または-NRz-により置き換えられていてもよいこと、Siに直接結合していないCH2基は、-C(=O)-部位により置き換えられていてもよいこと、CH3基は、-CH(=O)部位により置き換えられていてもよいこと、ならびに炭素原子は、Si原子により置き換えられていてもよいこと、のうちの少なくとも1つを有することを意味し、ここでRzは、C1-C6アルキル基およびC6-C14アリール基からなる群よりそれぞれ独立して選択される。]
【化1】
[式(I')中、基Rxは、(i)塩素、(ii)C 1-C 6 アルキル、(iii)フェニル、および(iv)1-C 6 アルコキシ基からなる群よりそれぞれ独立して選択され
添字a、b、b'、c、c'、c''、d、d'、d''、d'''は、前記化合物中のそれぞれのシロキサン単位の数を示し、それぞれ独立して0~1000の範囲の整数であり、ただし、a、b、b'、c、c'、c''、d、d'、d''、d'''の合計は、少なくとも値2を有し、前記添字b'、c'、c''、d'、d''またはd'''のうちの少なくとも1つは、0に等しくない。]
y-C(=O)-Rz (II)
[式(II)中、Ryは、(i)水素、(ii)C 1-C 8 アルキル基、および(iii)C 1-C 8 アルコキシ基からなる群より選択され;
zは、(i)水素、(ii)C 1-C 8 アルキル、および(iii)フェニル基からなる群より選択される。
([M(II)Cp]+ ) X - (III)
[式(III)中、Mは、ケイ素およびゲルマニウムからなる群より選択され、Cpは、一般式(IIIa)のπ結合したシクロペンタジエニル基であり、
【化3】
[式(IIIa)中、基Ryは、メチル基、水素およびトリメチルシリル基からそれぞれ独立して選択される。]
- は、式[B(R a 4 - の化合物および式[Al(R a 4 - の化合物からなる群より選択される、1価のアニオンであり、ここで基R a は、芳香族C 6 -C 14 炭化水素基からそれぞれ独立して選択され、ここで芳香族C 6 -C 14 炭化水素基において、少なくとも1つの水素原子が、(i)フッ素、(ii)パーフルオロ化C 1 -C 6 アルキル基、および(iii)式-SiR b 3 のトリオルガノシリル基(ここで基R b は、それぞれ独立して、C 1 -C 20 アルキル基である)からなる群より選択される基によりそれぞれ独立して置換されている。]
【請求項2】
式(I)中、前記基R1、R2およびR3が、(i)水素、(ii)塩素、(iii)C1-C6アルキル基、(iv)フェニル、および(v)C1-C6アルコキシ基からなる群よりそれぞれ独立して選択され;式(I')中、前記基Rxが、塩素、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、n-プロピル、n-プロポキシおよびフェニルからなる群よりそれぞれ独立して選択され、前記添字a、b、b'、c、c'、c''、d、d'、d''、d'''が、0~1000の範囲の整数からそれぞれ独立して選択される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
式(I)中の前記基R1、R2およびR3、ならびに式(I')中の前記Rxが、水素、塩素、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、n-プロピル、n-プロポキシおよびフェニルからなる群よりそれぞれ独立して選択され、前記添字a、b、b'、c、c'、c''、d、d'、d''、d'''が、0~1000の範囲の整数からそれぞれ独立して選択される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
式(III)中、前記アニオンX-が、式[B(Ra4-の前記化合物からなる群より選択され、ここで基Raは、芳香族C6-C14炭化水素基からそれぞれ独立して選択され、ここで芳香族C6-C14炭化水素基において、すべての水素原子が、(i)フッ素、および(ii)式-SiRb 3のトリオルガノシリル基(ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1-C20アルキル基である)からなる群より選択される基によりそれぞれ独立して置換されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
式(III)の前記カチオン性化合物が、
Cp*+ B(C654 -
Cp*+ B[C64(4-TBS)]4 -
(TBS=SiMe2tert-ブチル);
Cp*+ B(2-NaphF)4 -
(2-NaphF=パーフルオロ化2-ナフチル基);および
Cp*+ B[(C653(2-NaphF)]-
(2-NaphF=パーフルオロ化2-ナフチル基)
からなる群より選択され、ここでMは、ケイ素およびゲルマニウムからなる群より選択され、Cp*は、ペンタメチルシクロペンタジエニルである、
請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性ケイ素(II)化合物、カチオン性ゲルマニウム(II)化合物および/またはカチオン性スズ(II)化合物の存在下、ヒドリドシリコン化合物とカルボニル化合物とからシロキサンを調製する新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シロキサンの製造は、工業的な有機ケイ素化学において重要なプロセスである。クロロシランの加水分解縮合は、この目的のために大規模に確立されているが、生成した塩化水素の必要な完全な除去およびリサイクルは、かなりの技術的労力を要する。微量の酸は、製品の安定性を低下させることがあり、したがって除去しなければならない。このおそれは、中性かつ非プロトン性の反応条件下では存在しない。
【0003】
これらの条件を満たすプロセスは、Piers-Rubinsztajn反応であり、この反応では、触媒としてB(C653の存在下、ヒドリドシリコン化合物をアルコキシシランと反応させ、式Si-H + Si-OR → Si-O-Si + R-Hに従って、対応するシロキサンと炭化水素とを形成する。
【0004】
ヒドリドシリコン化合物(Si-H)は、多種多様な構造で工業的に利用可能な有利な原材料ベース(raw material base)を形成する。しかしながら、アルコキシシラン(Si-OR)の場合、アルキル基(メチルまたはエチル)を有するものしか技術的には利用できず、これは、Piers-Rubinsztajn反応においてエタンおよびメタンなどの可燃性が非常に高いガスが生成することを意味する。この状況は、プロセスの信頼性に対する要求を高め、上記プロセスをかなり高価にし、最終的には上記プロセスを不経済なものとする可能性がある。したがって、これらの不利な点を有しない、ヒドリドシリコン化合物から出発するシロキサンの調製方法に対する必要性が存在する。
【0005】
Marksら(Catal.Sci.Technol.2017,7,2165)は、担持ジオキソモリブデン触媒の存在下、様々なカルボニル化合物とジメチルフェニルシランとからのエーテルの生成を記載している。この反応では、副生成物としてPhMe2Si-O-SiMe2Phが生成し、少量のアルコールも生成する。他のヒドリドシリコン化合物の反応については説明されていない。ケトンは、アルデヒドよりはるかに遅く反応し、反応温度は100℃である。
【0006】
Hudnallら(Dalton Trans.2016,45,11150)は、3~5mol%のカチオン性アンチモン(V)化合物の存在下、アルデヒドのトリエチルシランに対するモル比1:3、および反応温度70℃での、アルデヒドとトリエチルシランとからのエーテルの生成を記載している。この反応では、ヒドロシリル化生成物が当初期待されていた。しかしながら、エーテルが高い選択性で生成し、ヘキサエチルジシロキサンは副生成物として少量で得られるにすぎない。ケトンの反応は記載されていない。不利な点は、触媒の割合が高いことであり、これによりプロセスが不経済なものとなる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の文脈において、カチオン性ケイ素(II)化合物、カチオン性ゲルマニウム(II)化合物および/またはカチオン性スズ(II)化合物の存在下、ヒドリドシリコン化合物とカルボニル化合物とから、選択的かつ迅速な反応において、シロキサンが生成することが見出された。このプロセスの利点は、技術的に費用対効果の高い方法で、かつ大きな構造的多様性において、多種多様のカルボニル化合物を利用できることである。一般的に、上記反応中に気体生成物は生成しないことから、プロセスが大幅に簡素化される。加えて、シロキサンは非常に良い収率で得られる。
【0008】
本発明は、
(a)(a1)一般式(I)の化合物および/または
(a2)一般式(I')の化合物
から選択される少なくとも1種のヒドリドシリコン化合物と、
(b)(b1)一般式(II)の化合物および/または
(b2)一般式(II')の化合物
から選択される少なくとも1種のカルボニル化合物と、
(c)少なくとも1種の、一般式(III)のカチオン性化合物と
を接触させて反応させる、シロキサンの調製方法に関する。
【0009】
123Si-H (I)
式(I)中、基R1、R2およびR3は、(i)水素、(ii)ハロゲン、(iii)非置換のまたは置換されたC1-C20炭化水素基、および(iv)非置換のまたは置換されたC1-C20ヒドロカルボノキシ基からなる群よりそれぞれ独立して選択され、ここで基R1、R2およびR3のうちの2つは、単環式または多環式の、非置換のまたは置換されたC2-C20炭化水素基を互いに形成していてもよく、ここで置換されたとは、それぞれの場合において、炭化水素基またはヒドロカルボノキシ基がそれぞれ独立して以下の置換:水素原子は、ハロゲン、-CH(=O)、-C≡N、-ORz、-SRz、-NRz 2および-PRz 2により置き換えられていてもよいこと、CH2基は、-O-、-S-または-NRz-により置き換えられていてもよいこと、Siに直接結合していないCH2基は、-C(=O)-部位により置き換えられていてもよいこと、CH3基は、-CH(=O)部位により置き換えられていてもよいこと、ならびに炭素原子は、Si原子により置き換えられていてもよいこと、のうちの少なくとも1つを有することを意味し、ここでRzは、C1-C6アルキル基およびC6-C14アリール基からなる群よりそれぞれ独立して選択される。
【0010】
【化1】
【0011】
式(I')中、基Rxは、(i)ハロゲン、(ii)非置換のまたは置換されたC1-C20炭化水素基、および(iii)非置換のまたは置換されたC1-C20ヒドロカルボノキシ基からなる群よりそれぞれ独立して選択され、ここで置換されたとは、それぞれの場合において、炭化水素基またはヒドロカルボノキシ基がそれぞれ独立して以下の置換:水素原子は、ハロゲンまたは-CH(=O)により置き換えられていてもよいこと、CH2基は、-O-または-NRz-により置き換えられてもいてもよいこと(ここでRzは、それぞれの場合において、C1-C6アルキル基およびC6-C14アリール基からなる群より独立して選択される)、Siに直接結合していないCH2基は、-C(=O)-部位により置き換えられていてもよいこと、ならびにCH3基は、-CH(=O)部位により置き換えられていてもよいこと、のうちの少なくとも1つを有することを意味し;
添字a、b、b'、c、c'、c''、d、d'、d''、d'''は、上記化合物中のそれぞれのシロキサン単位の数を示し、それぞれ独立して0~100,000の範囲の整数であり、ただし、a、b、b'、c、c'、c''、d、d'、d''、d'''の合計は、少なくとも値2を有し、添字b'、c'、c''、d'、d''またはd'''のうちの少なくとも1つは、0に等しくない。
【0012】
y-C(=O)-Rz (II)
式(II)中、Ryは、(i)水素、(ii)非置換のまたは置換されたC1-C20炭化水素基、および(iii)非置換のまたは置換されたC1-C20ヒドロカルボノキシ基からなる群より選択され;
zは、(i)水素、および(ii)非置換のまたは置換されたC1-C20炭化水素基からなる群より選択される。
【0013】
【化2】
【0014】
式(II')中、基Raは、それぞれ独立して、置換されたC2-C20炭化水素基であり、ここで置換されたとは、炭化水素基がそれぞれ独立して以下の置換:Siに直接結合していないCH2基は、-C(=O)-または-O-C(=O)-部位により置き換えられていてもよいこと、水素原子は、-CH(=O)部位により置き換えられていてもよいこと、およびCH3基は、-CH(=O)部位により置き換えられていてもよいこと、のうちの少なくとも1つを有し、炭化水素基は以下のさらなる置換:水素原子は、ハロゲンにより置き換えられていてもよいこと、CH2基は、-O-または-NRz-により置き換えられていてもよいこと、を任意に有していてもよいことを意味し、ここでRzは、それぞれの場合において、C1-C6アルキル基およびC6-C14アリール基からなる群より独立して選択され;
基Rxは、(i)ハロゲン、(ii)水素、(iii)非置換のまたは置換されたC1-C20炭化水素基、および(iv)非置換のまたは置換されたC1-C20ヒドロカルボノキシ基からなる群よりそれぞれ独立して選択され、ここで置換されたとは、それぞれの場合において、炭化水素基またはヒドロカルボノキシ基がそれぞれ独立して以下の置換:水素原子は、ハロゲンにより置き換えられていてもよいこと、CH2基は、-O-または-NRz-により置き換えられていてもよいこと、のうちの少なくとも1つを有することを意味し、ここでRzは、それぞれの場合において、C1-C6アルキル基およびC6-C14アリール基からなる群より独立して選択され;
添字a、b、b'、c、c'、c''、d、d'、d''、d'''は、上記化合物中のそれぞれのシロキサン単位の数を示し、それぞれ独立して0~100,000の範囲の整数であり、ただし、a、b、b'、c、c'、c''、d、d'、d''、d'''の合計は、少なくとも値2を有し、添字b'、c'、c''、d'、d''またはd'''のうちの少なくとも1つは、0に等しくない。
【0015】
([M(II)Cp]+aa- (III)
式(III)中、Mは、ケイ素、ゲルマニウムおよびスズからなる群より選択され、Cpは、一般式(IIIa)のπ結合したシクロペンタジエニル基であり、
【0016】
【化3】
【0017】
[式(IIIa)中、基Ryは、(i)式-SiRb 3のトリオルガノシリル基(ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1-C20炭化水素基である)、(ii)水素、(iii)非置換のまたは置換されたC1-C20炭化水素基、および(iv)非置換のまたは置換されたC1-C20ヒドロカルボノキシ基からなる群よりそれぞれ独立して選択され、ここで、2つの基Ryは、それぞれの場合において、単環式または多環式の、C2-C20炭化水素基を互いに形成していてもよく、ここで置換されたとは、それぞれの場合において、炭化水素基またはヒドロカルボノキシ基中の少なくとも1つの炭素原子が、1つのSi原子により置き換えられていてもよいことを意味する。]
a-は、a価のアニオンであり、
aは、値1、2または3をとることができる。
【0018】
本発明の方法では、エーテルもさらなる反応生成物として得られる。
【0019】
少なくとも1種のヒドリドシリコン化合物が使用され、これは、一般式(I)の化合物の混合物および/または一般式(I')の化合物の混合物が包含されることも意味する。
【0020】
一般式(I)中、基R1、R2およびR3は、(i)水素、(ii)塩素、(iii)非置換のまたは置換されたC1-C12炭化水素基、および(iv)非置換のまたは置換されたC1-C12ヒドロカルボノキシ基からなる群よりそれぞれ独立して選択されることが好ましく、ここで置換された、は上記と同じ定義を有し;一般式(I')中、基Rxは、(i)塩素、(ii)C1-C6アルキル基、(iii)フェニル、および(iv)C1-C6アルコキシ基からなる群よりそれぞれ独立して選択されることが好ましく、添字a、b、b'、c、c'、c''、d、d'、d''、d'''は、0~1000の範囲の整数からそれぞれ独立して選択される。
【0021】
一般式(I)中、基R1、R2およびR3は、(i)水素、(ii)塩素、(iii)C1-C6アルキル基、(iv)フェニル、および(v)C1-C6アルコキシ基からなる群よりそれぞれ独立して選択されることが特に好ましく;一般式(I')中、基Rxは、塩素、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、n-プロピル、n-プロポキシおよびフェニルからなる群よりそれぞれ独立して選択されることが特に好ましく、添字a、b、b'、c、c'、c''、d、d'、d''、d'''は、0~1000の範囲の整数からそれぞれ独立して選択される。
【0022】
一般式(I)中の基R1、R2およびR3、ならびに一般式(I')中のRxは、水素、塩素、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、n-プロピル、n-プロポキシおよびフェニルからなる群よりそれぞれ独立して選択されることがとりわけ好ましく、添字a、b、b'、c、c'、c''、d、d'、d''、d'''は、0~1000の範囲の整数からそれぞれ独立して選択されることが好ましい。
【0023】
式(I')の化合物の混合物が、ポリシロキサン中に特に存在する。しかしながら、簡単のために、ポリシロキサンについて、混合物の個々の上記化合物は示さず、式(I')と同様の平均式(I'a)を示す:
【0024】
【化4】
【0025】
式(I'a)中、基Rxは、式(I')中と同じ定義を有するが、添字a、b、b'、c、c'、c''、d、d'、d''、d'''は、それぞれ独立して0~100,000の範囲の数であり、混合物中のそれぞれのシロキサン単位の平均含有量を示す。好ましくは、添字a、b、b'、c、c'、c''、d、d'、d''、d'''が0~20,000の範囲の数からそれぞれ独立して選択される平均式(I'a)の混合物が選ばれる。
【0026】
一般式(I)のヒドリドシリコン化合物の例としては、以下のシラン(Ph=フェニル、Me=メチル、Et=エチル)が挙げられる:
Me3SiH、Et3SiH、Me2PhSiH、MePh2SiH、PhCl2SiH、Me2ClSiH、Et2ClSiH、MeCl2SiH、Cl3SiH、Cl2SiH2、Me2(MeO)SiH、Me(MeO)2SiH、(MeO)3SiH、Me2(EtO)SiH、Me(EtO)2SiH、(EtO)3SiH、Me2SiH2、Et2SiH2、MePhSiH2、Ph2SiH2、PhClSiH2、MeClSiH2、EtClSiH2、Cl2SiH2、Me(MeO)SiH2、(MeO)2SiH2、Me2(EtO)SiH、(EtO)2SiH2およびPhSiH3、ならびに1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン。
【0027】
一般式(I')のヒドリドシリコン化合物の例としては、以下のシロキサンおよびポリシロキサンが挙げられる:
HSiMe2-O-SiMe3、HSiMe2-O-SiMe2H、Me3Si-O-SiHMe-O-SiMe3、H-SiMe2-(O-SiMe2m-O-SiMe2-H(m=1~20,000)、Me3Si-O-(SiMe2-O)n(SiHMe-O)o-SiMe3(n=1~20,000、o=1~20,000)。
【0028】
少なくとも1種のカルボニル化合物が使用され、これには、一般式(II)の化合物の混合物および/または一般式(II')の化合物の混合物も包含される。
【0029】
式(II)中、基Ryは、(i)水素、(ii)非置換のC1-C8炭化水素基、および(iii)非置換のC1-C8ヒドロカルボノキシ基からなる群より選択されることが好ましく、基Rzは、(i)水素、および(ii)非置換のC1-C8炭化水素基からなる群より選択され;式(II')中、基Raは、置換されたC1-C8炭化水素基からなる群より選択されることが好ましく、置換基は上記と同じであり、基Rxは、(i)非置換のC1-C8炭化水素基、および(ii)非置換のC1-C8ヒドロカルボノキシ基から選択される。
【0030】
式(II)中、基Ryは、(i)水素、(ii)C1-C8アルキル基、および(iii)C1-C8アルコキシ基からなる群より選択されることが特に好ましく、基Rzは、(i)水素、(ii)C1-C8アルキル基、および(iii)フェニル基からなる群より選択され;式(II')中、基Raは、置換されたC1-C8炭化水素基からなる群より選択されることが特に好ましく、置換基は上記と同じであり、基Rxは、非置換のC1-C8炭化水素基から選択される。
【0031】
少なくとも1種のカチオン性化合物が使用され、一般式(III)の化合物の混合物も包含される。
【0032】
式(III)中、Mは、ケイ素、ゲルマニウムおよびスズからなる群より選択され、ケイ素およびゲルマニウムが好ましく、ケイ素が特に好ましい。
【0033】
式(IIIa)中の基Ryの例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、sec-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基およびtert-ペンチル基;n-ヘキシル基などのヘキシル基;n-ヘプチル基などのヘプチル基;n-オクチル基、および2,4,4-トリメチルペンチル基などのイソオクチル基などのオクチル基;n-ノニル基などのノニル基;n-デシルなどのデシル基;n-ドデシル基などのドデシル基;n-ヘキサデシル基などのヘキサデシル基;n-オクタデシル基などのオクタデシル基などのアルキル基;;シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびシクロヘプチル基、ならびにメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;;フェニル基、ナフチル基、アントラセン基およびフェナントレン基などのアリール基;;o-、m-およびp-トリル基、キシリル基、メシチレニル基ならびにo-、m-およびp-エチルフェニル基などのアルカリール基;;ベンジル基、α-およびβ-フェニルエチル基などのアルカリール基;;ならびにトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチル-tert-ブチルシリル基およびジエチルメチルシリル基などのアルキルシリル基が挙げられる。
【0034】
式(IIIa)中、基Ryは、(i)C1-C3アルキル基、(ii)水素、および(iii)式-SiRb 3のトリオルガノシリル基からなる群よりそれぞれ独立して選択されることが好ましく、ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1-C20アルキル基である。基Ryは、メチル基、水素およびトリメチルシリル基からそれぞれ独立して選択されることが特に好ましい。すべての基Ryは、とりわけ好ましくは、メチル基である。
【0035】
式(III)中の添字aは、X-が一価のアニオンとなるように、好ましくは1である。
【0036】
アニオンX-の例としては、
ハライド(halides);
クロレート、ClO4 -
テトラクロロメタレート、[MCl4-(M=Al、Ga);
テトラフルオロボレート、[BF4-
トリクロロメタレート、[MCl3-(M=Sn、Ge);
ヘキサフルオロメタレート、[MF6-(M=As、Sb、Ir、Pt);
パーフルオロアンチモネート、[Sb211-、[Sb316-および[Sb421-
トリフラート(=トリフルオロメタンスルホネート)、[OSO2CF3-
テトラキス(トリフルオロメチル)ボレート、[B(CF34-
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)メタレート、
[M(C654-(M=Al、Ga);
テトラキス(ペンタクロロフェニル)ボレート、[B(C6Cl54-
テトラキス[(2,4,6-トリフルオロメチル(フェニル))]ボレート、
{B[C62(CF33]}-
ヒドロキシビス[トリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、
{HO[B(C6532-
closo-カルボレート、[CHB115Cl6-、[CHB115Br6-、[CHB11(CH35Br6-、[CHB1111-、[C(Et)B1111-、[CB11(CF312-および[B12Cl11N(CH33-
テトラ(パーフルオロアルコキシ)アルミネート、[Al(ORPF4-(RPF=それぞれ独立してパーフルオロ化C1-C14炭化水素基);
トリス(パーフルオロアルコキシ)フルオロアルミネート、[FAl(ORPF3-(RPF=それぞれ独立してパーフルオロ化C1-C14炭化水素基);
ヘキサキス(オキシペンタフルオロテルリウム)アンチモネート、
[Sb(OTeF56-
式[B(Ra4-および式[Al(Ra4-のボレートおよびアルミネート(ここで基Raは、芳香族C6-C14炭化水素基からそれぞれ独立して選択され、ここで芳香族C6-C14炭化水素基において、少なくとも1つの水素原子が、(i)フッ素、(ii)パーフルオロ化C1-C6アルキル基、および(iii)式-SiRb 3のトリオルガノシリル基からなる群より選択される基により独立して置換されており、ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1-C20アルキル基である。)
が挙げられる。
【0037】
式(III)中、アニオンX-は、式[B(Ra4-の化合物および式[Al(Ra4-の化合物からなる群より選択されることが好ましく、ここで基Raは、芳香族C6-C14炭化水素基からそれぞれ独立して選択され、ここで芳香族C6-C14炭化水素基において、少なくとも1つの水素原子が、(i)フッ素、(ii)パーフルオロ化C1-C6アルキル基、および(iii)式-SiRb 3のトリオルガノシリル基(ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1-C20アルキル基である)からなる群より選択される基によりそれぞれ独立して置換されている。
【0038】
基Raの例としては、m-ジフルオロフェニル基、2,2,4,4-テトラフルオロフェニル基、パーフルオロ化1-ナフチル基、パーフルオロ化2-ナフチル基、パーフルオロビフェニル基、-C65、-C63(m-CF32、-C64(p-CF3)、-C62(2,4,6-CF33、-C63(m-SiMe32、-C64(p-SiMe3)、-C64(p-SiMe2t-ブチル)が挙げられる。
【0039】
式(III)中、アニオンX-は、式[B(Ra4-の化合物からなる群より選択されることが特に好ましく、ここで基Raは、芳香族C6-C14炭化水素基からそれぞれ独立して選択され、ここで芳香族C6-C14炭化水素基において、すべての水素原子が、(i)フッ素、および(ii)式-SiRb 3のトリオルガノシリル基(ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1-C20アルキル基である)からなる群より選択される基によりそれぞれ独立して置換されている。
【0040】
式(III)中、アニオンX-は、式[B(Ra4-の化合物からなる群より選択されることがとりわけ好ましく、ここで基Raは、-C65、パーフルオロ化1-ナフチル基、パーフルオロ化2-ナフチル基、-C63(SiRb 32および-C64(SiRb 3)からなる群よりそれぞれ独立して選択され、ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1-C20アルキル基である。
【0041】
式(III)中、アニオンX-は、[B(C654-、[B(C64)(4-TBS)4-(TBS=SiMe2tert-ブチル)、[B(2-NaphF)4-(2-NaphF=パーフルオロ化2-ナフチル基)および[B(C653(2-NaphF)]-(2-NaphF=パーフルオロ化2-ナフチル基)からなる群より選択されることが最も好ましい。
【0042】
好ましい式(III)の化合物は、すべての基Ryがメチルであり、アニオンX-が式[B(Ra4-の化合物からなる群より選択されるものであり、ここで基Raは、芳香族C6-C14炭化水素基からそれぞれ独立して選択され、ここで芳香族C6-C14炭化水素基において、少なくとも1つの水素原子が、(i)フッ素、(ii)パーフルオロ化C1-C6アルキル基、および(iii)式-SiRb 3のトリオルガノシリル基(ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1-C20アルキル基である)からなる群より選択される基によりそれぞれ独立して置換されている。
【0043】
式(III)のカチオン性化合物は、
Cp*+ B(C654 -
Cp*+ B[C64(4-TBS)]4 -
(TBS=SiMe2tert-ブチル);
Cp*+ B(2-NaphF)4 -
(2-NaphF=パーフルオロ化2-ナフチル基);および
Cp*+ B[(C653(2-NaphF)]-
(2-NaphF=パーフルオロ化2-ナフチル基)
からなる群より選択されることが特に好ましく、ここでMは、ケイ素およびゲルマニウムからなる群より選択され、Cp*は、ペンタメチルシクロペンタジエニルである。
【0044】
本発明の方法の特定の実施形態では、式(I)の化合物は、2つのケイ素結合水素原子を有し:R12SiH2、ここで基R1およびR2は、上記と同じ定義を有する。
【0045】
この場合、カルボニル化合物との反応において、線状ポリシロキサンを製造することができる(反応スキーム1参照、アルデヒドおよびケトンに適用される)。これは、2つの末端Si-H部位を有する式(I')の化合物を使用する場合にも適用される。
【0046】
(n+2)R12SiH2 +(n+1)RyzC=O → HR12Si-(O-SiR12n-O-SiR12H +(n+1)RyzCH-O-CHRyz (反応スキーム1)
【0047】
本発明の方法のさらなる特定の実施形態では、それぞれが2つのケイ素結合水素原子を有する、2つ以上の異なる式(I)の化合物を使用する場合、共重合体が得られる。これは、2つの末端Si-H部位を有する、2つ以上の異なる式(I')の化合物を使用する場合にも適用される。
【0048】
式(I)または(I')の化合物が少なくとも3つのケイ素結合水素を有する場合、分岐または架橋したシロキサンが生成する。
【0049】
別の実施形態では、式(I')の化合物は、2つ以上のSi-H部位と2つ以上のカルボニル部分とを有する。そして同様に、架橋したシロキサンが、上記反応において得られる。
【0050】
反応物および触媒は、任意の順序で互いに接触させることができる。好ましくは、接触とは、反応物および触媒を混合することを意味し、該混合は、当業者に公知の方法で行われる。例えば、式(I)または(I')の化合物と式(II)または(II')の化合物とを互いに混合することができ、次いで、式(III)の化合物を加えることができる。また、最初に、式(I)もしくは(I')の化合物または式(II)もしくは(II')の化合物と、式(III)の化合物とを混合し、次いで、不足する化合物(missing compound)を加えることも可能である。
【0051】
ケイ素に直接結合している水素原子と存在するカルボニル部位とのモル比は、通常は1:100~100:1の範囲にあり、該モル比は、好ましくは1:10~10:1の範囲、特に好ましくは1:2~2:1の範囲にある。
【0052】
式(III)の化合物のモル割合は、式(I)または(I')の化合物の存在するSi-H部位を基準として、好ましくは0.0001mol%~10mol%の範囲、特に好ましくは0.001mol%~1mol%の範囲、とりわけ好ましくは0.01mol%~0.1mol%の範囲にある。
【0053】
本発明の反応は、無溶媒で行ってもよく、1種以上の溶媒を加えて行ってもよい。式(I)または(I')の化合物を基準とした溶媒または溶媒混合物の割合は、少なくとも0.01重量%、最大1000重量倍であることが好ましく、少なくとも1重量%、最大100重量倍であることが特に好ましく、少なくとも10重量%、最大10重量倍であることがとりわけ好ましい。式(III)の化合物を反応前に溶媒に溶解させることが好ましい。
【0054】
使用できる溶媒は、好ましくは非プロトン性溶媒であり、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンおよびトルエンなどの炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンおよび1,2-ジクロロエタンなどの塩化炭化水素、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフランおよびジオキサンなどのエーテル、ならびにアセトニトリルおよびプロピオニトリルなどのニトリルである。
【0055】
0.1MPaで120℃以下の沸点または沸点範囲を有する、溶媒または溶媒混合物が好ましい。
溶媒は、塩素化されたまたは非塩素化の、芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素であることが好ましい。
【0056】
反応圧力は、当業者が自由に選択することができ;周囲圧力下、または減圧もしくは加圧下で行うことができる。圧力は、好ましくは0.01bar~100barの範囲、特に好ましくは0.1bar~10barの範囲にあり、上記反応は、とりわけ好ましくは周囲圧力で行われる。しかしながら、反応温度で気体である化合物IまたはIIが本発明の反応に関わる場合、該反応は好ましくは加圧で行われ、特に好ましくは系全体の蒸気圧で行われる。
【0057】
上記反応の温度は、当業者が自由に選択することができる。上記反応は、好ましくは-40℃~+200℃の範囲の温度、特に好ましくは-10℃~+150℃の範囲の温度、とりわけ好ましくは+10℃~+120℃の範囲の温度で行われる。
【0058】
例えば、他の方法を用いて調製された製品の用途において、不安定であるためしばしば妨害となる不純物として存在する少ない割合のSi-H部位を、式(III)の化合物の存在下で式(II)または(II')の化合物と反応させることによって除去するために、本発明の方法を使用することもできる。ここで、反応性Si-H部位は、不活性なSi-O-Si部位に変換される。
【実施例
【0059】
実施例1:トリエチルシランとヘキサナールとの反応
アルゴン雰囲気下、1.3mgのCp*Si+ B(C654 -(1.5μmol、0.059mol%)を940mgのジクロロメタンに溶解させた溶液を最初に投入し、次いで、30.2mg(2.60mmol)のトリエチルシランと259mg(2.59mmol)のヘキサナールとを加えた。反応は発熱性で、0.5時間後に完了した。
ヘキサエチルジシロキサンの収率は理論値の99%(GC分析)であった。
【0060】
実施例2:トリエチルシランとヘキサナールとの反応
299mg(2.57mmol)のトリエチルシランと257mg(2.57mmol)のヘキサナールとを混合した。この混合物に、2.8mg(3.2μmol、ヘキサナールを基準として0.12mol%)のCp*Ge+ B(C654 -を、780mgのジクロロメタン中の溶液としてゆっくりと滴下した。50℃で1時間後、反応は完了した。
ヘキサエチルジシロキサンの収率は理論値の98%(GC分析)であった。
【0061】
1H-NMR(CD2Cl2):
δ = 0.54(m、6CH2)、0.95ppm(6CH3
【0062】
実施例3:トリエチルシランとエチルメチルケトンとの反応
アルゴン雰囲気下、1.1mgのCp*Si+ B(C654 -(1.3μmol、トリエチルシランを基準として0.05mol%)を853mgのジクロロメタンに溶解させた溶液を最初に投入し、次いで、301mg(2.59mmol)のトリエチルシランと188mg(2.60mmol)のエチルメチルケトンとを加えた。反応は強い発熱性で、0.5時間後に完了した。
ヘキサエチルジシロキサンの収率は理論値の81%(GC分析)であった。
【0063】
実施例4:トリエチルシランとエチルメチルケトンとの反応
アルゴン雰囲気下、3.5mgのCp*Si+ B(C654 -(4.15μmol、トリエチルシランを基準として0.05mol%)を15gのジクロロメタンに溶解させた溶液を最初に投入し、次いで、1011mg(8.70mmol)のトリエチルシランを加えた。この溶液を-74℃に冷却した後、629mg(8.72mmol)のエチルメチルケトンを加えた。次いで、反応溶液をゆっくりと室温に戻した。室温で1.5時間後、理論値から出発して76%のヘキサエチルジシロキサンが生成した(GC分析)。
【0064】
実施例5:ジメチルクロロシランとエチルメチルケトンとの反応
アルゴン下、0.5mgのCp*Ge+ B(C654 -(0.56μmol、2-ブタノンを基準として0.021mol%)を660mgのジクロロメタンに溶解させた。この溶液に、252mg(2.66mmol)のジメチルクロロシランと195mg(2.70mmol)のエチルメチルケトンとの混合物を加えた。発熱反応が見られた。室温で24時間後、理論値から出発して、1,3-ジクロロ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンが生成していた(GC分析)。
【0065】
実施例6:ペンタメチルジシロキサンとヘキサナールとの反応
アルゴン雰囲気下、3.2mgのCp*Ge+ B(C664 -(3.6μmol、ペンタメチルジシロキサンを基準として0.05mol%)を15.6gのジクロロメタンに溶解させた溶液と1.00g(6.77mmol)のペンタメチルジシロキサンとを最初に投入した。この溶液を+2℃に冷却した後、676mg(6.75mmol)のヘキサナールを加えた。反応溶液をゆっくりと室温に戻し、次いで、室温で18時間攪拌した。
デカメチルテトラシロキサンの収率は理論値の56%(GC分析)であった。
【0066】
実施例7:トリエチルシランとアセトフェノンとの反応
アルゴン雰囲気下、1.2mgのCp*Si+ B(C654 -(1.4μmol、トリエチルシランを基準として0.055mol%)を860mgのジクロロメタンに溶解させた溶液を最初に投入し、次いで、312mg(2.59mmol)のトリエチルシランと312mg(2.60mmol)のアセトフェノンとを加えた。反応溶液を70℃に15分間加熱した。
ヘキサエチルジシロキサンの収率は理論値の98%(GC分析)であった。
【0067】
実施例8:トリエチルシランとアセトフェノンとの反応(1:1)
アルゴン下、301mg(2.59mmol)のトリエチルシラン、313mg(2.61mg)のアセトフェノンおよび340mgのCD2Cl2の混合物を調製した。この混合物を、2.3mg(2.6μmol、アセトフェノンを基準として0.10mol%)のCp*Ge+ B(C654 -を713mgのジクロロメタンに溶解させた溶液にゆっくりと滴下した。50℃で24時間後、トリエチルシランはすべて反応していた。
ヘキサエチルジシロキサンの収率は理論値の98%(GC分析)であった。
【0068】
実施例9:トリエチルシランとアセトフェノンとの反応(2:1)
アルゴン下、399mg(3.43mmol)のトリエチルシラン、210mg(1.75mg)のアセトフェノンおよび370mgのCD2Cl2の混合物を調製した。この混合物を、3.1mg(3.5μmol、アセトフェノンを基準として0.20mol%)のCp*Ge+ B(C654 -を380mgのジクロロメタンに溶解させた溶液にゆっくりと滴下した。50℃で23時間後、反応は完了した。
ヘキサエチルジシロキサンの収率は理論値の99%(GC分析)であった。
【0069】
実施例10:トリエチルシランと酢酸エチルとの反応
304mg(2.61mmol)のトリエチルシランと116mg(1.32mmol)の酢酸エチルとを混合した。この混合物に、1.2mg(1.4μmol、酢酸エチルを基準として0.11mol%)のCp*Ge+ B(C654 -を346mgのジクロロメタンに溶解させた溶液を加えた。反応混合物を70℃で16時間加熱した。トリエチルシランは完全に反応していた。
ヘキサエチルジシロキサンの収率は理論値の43%(GC分析)であった。
【0070】
実施例11:トリエチルシランと酢酸エチルとの反応
302mg(2.60mmol)のトリエチルシランと117mg(1.33mmol)の酢酸エチルとを混合した。この混合物に、1.1mg(1.3μmol、0.098mol%)のCp*Si+ B(C654 -を346mgのジクロロメタンに溶解させた溶液を加えた。反応混合物を70℃で16時間加熱した。トリエチルシランは完全に反応していた。
ヘキサエチルジシロキサンの収率は理論値の50%(GC分析)であった。
【0071】
実施例12:トリエチルシランとプロピオン酸エチルとの反応
300mg(2.58mmol)のトリエチルシランと130mg(1.27mmol)のプロピオン酸エチルとを混合した。この混合物に、1.2mg(1.4μmol、0.11mol%)のCp*Ge+ B(C654 -を360mgのジクロロメタンに溶解させた溶液を加えた。反応混合物を70℃で16時間加熱した。トリエチルシランは完全に反応していた。
ヘキサエチルジシロキサンの収率は理論値の56%(GC分析)であった。
【0072】
実施例13:1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとヘキサナールとの反応(線状シロキサン重合体の合成)
1.00g(7.46mmol)の1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1.49g(14.9mmol)のヘキサナールおよび6.5gのジクロロメタンを混合し、1.7mg(2.02μmol、0.03mol%)のCp*Si+ B(C654 -を1gのジクロロメタンに溶解させた溶液を10℃で撹拌しながら加えた。この溶液を40℃に温め、次いで、再び周囲温度(25℃)に戻した。総反応時間2時間の後、Si-HはNMR分光法ではもはや検出できなかった。29Si-NMR(CD2Cl2):δ = -6.78(Si-H鎖末端)、-19.8(HSi-O-SiMe2O-)、-21.8(SiMe2O鎖結合(chain link))、計算平均鎖長:42シリコーン単位。
【0073】
実施例14:1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンおよびジエチルシランと、ヘキサナールと、の反応(線状シロキサン共重合体の合成)
0.50g(3.74mmol)の1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、0.329mg(3.73mmol)のジエチルシラン、1.49g(14.9mmol)のヘキサナールおよび6.5gのジクロロメタンを混合し、1.6mg(1.90μmol、0.025mol%)のCp*Si+ B(C654 -を1.1gのジクロロメタンに溶解させた溶液を25℃で攪拌しながら加えた。総反応時間約2日の後、Si-Hは1H-NMR分光法ではもはや検出できなかった。反応溶液を減圧下で蒸発させた。GPC測定:Mn=3830、Mw=12,316、D=3.2。
【0074】
実施例15:1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンおよびジフェニルシランと、ヘキサナールと、の反応(シロキサン共重合体の合成)
0.50g(3.74mmol)の1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、0.687mg(3.73mmol)のジフェニルシラン、1.49g(14.9mmol)のヘキサナールおよび4.7gのジクロロメタンを混合し、1.4mg(1.90μmol、0.022mol%)のCp*Si+ B(C654 -を1.1gのジクロロメタンに溶解させた溶液を20℃で撹拌しながら加えた。この溶液を浴温60℃に22時間加熱して、反応は完了した(1H-NMRスペクトルで検出可能なSi-Hシグナルはない)。反応溶液を減圧下で蒸発させた。GPC測定:Mn=3375、Mw=7755、D=2.3。
【0075】
実施例16:1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンおよび1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンと、ヘキサナールと、の反応(シロキサン共重合体の合成)
0.52g(3.74mmol)の1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、0.728mg(3.74mmol)の1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、1.49g(14.9mmol)のヘキサナールおよび3.1gのジクロロメタンを混合し、1.5mg(1.78μmol、0.024mol%)のCp*Si+ B(C654 -を1.1gのジクロロメタンに溶解させた溶液を25℃で攪拌しながら加えた。この溶液を40℃に温め、次いで、再び周囲温度(25℃)に戻した。総反応時間22時間の後、反応は完了した(1H-NMRスペクトルで検出可能なSi-Hシグナルはない)。反応溶液を減圧下で蒸発させた。GPC測定:Mn=2581、Mw=7819、D=3.0。
【0076】
実施例17:1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンおよびジフェニルシランと、ヘキサナールと、の反応(シロキサン共重合体の合成)
0.50g(3.74mmol)の1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、0.687mg(3.73mmol)のジフェニルシラン、1.49g(14.9mmol)のヘキサナールおよび4.7gのジクロロメタンを混合し、1.4mg(1.90μmol、0.022mol%)のCp*Si+ B(C654 -を1.1gのジクロロメタンに溶解させた溶液を20℃で撹拌しながら加えた。この溶液を浴温60℃に22時間加熱して、反応は完了した(1H-NMRスペクトルで検出可能なSi-Hシグナルはない)。反応溶液を減圧下で蒸発させた。GPC測定:Mn=3375、Mw=7755、D=2.3。
【0077】
実施例18:1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンおよび1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンと、ヘキサナールと、の反応(シロキサン共重合体の合成)
0.52g(3.74mmol)の1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、0.728mg(3.74mmol)の1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、1.49g(14.9mmol)のヘキサナールおよび3.1gのジクロロメタンを混合し、1.5mg(1.78μmol、0.024mol%)のCp*Si+ B(C654 -を1.1gのジクロロメタンに溶解させた溶液を25℃で攪拌しながら加えた。この溶液を40℃に温め、次いで、再び周囲温度(25℃)に戻した。総反応時間22時間の後、反応は完了した(1H-NMRスペクトルに検出可能なSi-Hシグナルはない)。反応溶液を減圧下で蒸発させた。GPC測定:Mn=2581、Mw=7819、D=3.0。
【0078】
実施例19:1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンとヘキサナールとの反応(共重合体の合成)
アルゴン雰囲気下、3.50g(18.0mmol)の1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンと3.62mg(36.1mmol)のヘキサナールとの溶液を、4.5gのジクロロメタンに最初に投入した。この混合物に、3.3mg(3.9μmol、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンを基準として0.02mol%)のCp*Si+ B(C654 -を、1.1gのジクロロメタン中の溶液としてゆっくりと滴下した。50℃で2時間後、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンはほぼ完全に消費された。重合体H-SiMe2-[(1,4-フェニル)-SiMe2-O-SiMe2-]n(1,4-フェニル)-SiMe2Hが生成した。鎖長は、1H-NMRスペクトル(δ = 4.44ppm、n=220)でSi-H末端基を決定することにより決定した。
【0079】
生成した重合体のNMRデータ:
1H-NMR(CD2Cl2):
δ = 0.37(s、SiMe2)、7.58(s、フェニル);
29Si-NMR(CD2Cl2):
δ = -1.12ppm(Si-O-フェニル鎖結合(chain link))