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特許7416928リチウム二次電池用負極、その製造方法およびこれを用いたリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極、その製造方法およびこれを用いたリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20240110BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240110BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/1395
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022523340
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 KR2020010093
(87)【国際公開番号】W WO2021085809
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】10-2019-0138110
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ベ、 ホンユル
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ジン ホン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 キュン ファン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、 ジ フン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、 ジェ ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ、 サン ラグ
(72)【発明者】
【氏名】ベ、 ウォン ス
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/011132(WO,A1)
【文献】特開2006-139986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/134
H01M 4/1395
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、
前記集電体の少なくとも一面に位置し、リチウム金属層を含む負極活物質層とを含み、
前記リチウム金属層を含む負極活物質層は、
前記集電体上に位置し、金属シードを含むコーティング層と、
前記コーティング層上に位置するリチウム金属層とを含み、
前記コーティング層の厚さは、100nm~500nmである、リチウム二次電池用負極。
【請求項2】
前記金属シードは、マグネシウム、銀、亜鉛、白金、スズ、シリコン、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、金、ビスマス、インジウムおよびゲルマニウムからなるグループより選択された1種以上である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項3】
前記負極活物質層の厚さは、1μm~100μmである、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項4】
集電体と、
前記集電体の少なくとも一面に位置し、リチウム金属層を含む負極活物質層とを含み、
前記リチウム金属層を含む負極活物質層は、
前記集電体上に位置し、金属シードを含むコーティング層と、
前記コーティング層上に位置するリチウム金属層とを含み、
前記負極活物質層は、
前記負極活物質層の表面に位置する被膜をさらに含み、
前記被膜は、Li-N-C-H-O系イオン性化合物、Li-P-C-H-O系イオン性化合物およびLiFからなるグループより選択された1種以上の物質を含むリチウム二次電池用負極。
【請求項5】
集電体と、
前記集電体の少なくとも一面に位置し、リチウム金属層を含む負極活物質層とを含み、
前記リチウム金属層を含む負極活物質層は、
内部に金属シードを含むリチウム金属層であるリチウム二次電池用負極。
【請求項6】
前記金属シードは、マグネシウム、銀、亜鉛、白金、スズ、シリコン、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、金、ビスマス、インジウムおよびゲルマニウムからなるグループより選択された1種以上である、請求項に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項7】
前記負極活物質層の厚さは、1μm~100μmである、請求項又はに記載のリチム二次電池用負極。
【請求項8】
前記リチウム金属層の内部に含まれる金属シードは、
前記リチウム金属層内部のリチウムと合金化されたものである、請求項5~7のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項9】
前記負極活物質層は、
前記負極活物質層の表面に位置する被膜をさらに含み、
前記被膜は、Li-N-C-H-O系イオン性化合物、Li-P-C-H-O系イオン性化合物およびLiFからなるグループより選択された1種以上の物質を含む、請求項のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項10】
金属シードを含むコーティング組成物を用いて集電体の少なくとも一面にコーティング層を形成する段階と、
メッキ液内に前記コーティング層が形成された集電体を位置させた後、前記コーティング層と所定の間隔をおいてリチウム供給源を位置させる段階と、
前記集電体および前記リチウム供給源の間に電流を印加して、リチウム金属層を形成する段階と
を含み、
前記金属シードは、マグネシウム、銀、亜鉛、白金、スズ、シリコン、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、金、ビスマス、インジウムおよびゲルマニウムからなるグループより選択された1種以上であるリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項11】
前記コーティング層を形成する段階において、
前記集電体の少なくとも一面に形成されたコーティング層の厚さは、100nm~10μmの範囲である、請求項10に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項12】
前記リチウム金属層を形成する段階は、
前記集電体の少なくとも一面に形成されたコーティング層上に前記リチウム金属層が位置するように行われることによって、複数の層を有する負極活物質層を形成するように行われる、請求項11に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項13】
前記コーティング層を形成する段階において、
前記集電体の少なくとも一面に形成されたコーティング層の厚さは、10nm~100nmの範囲である、請求項1012のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項14】
前記リチウム金属層を形成する段階は、
前記集電体の少なくとも一面に形成されたコーティング層に含まれる金属シードが前記リチウム金属層内部のリチウムと合金化されて内部に拡散することによって、単一の負極活物質層を形成するように行われる、請求項13に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項15】
前記電流を印加して、前記集電体の少なくとも一面にリチウム金属層を形成する段階で加える電流の電流密度は、0.1mA/cm~100mA/cmの範囲である、請求項1014のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項16】
前記電流を印加して、前記集電体の少なくとも一面にリチウム金属層を形成する段階で前記電流を印加する時間は、0.05時間~50時間の範囲である、請求項15に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項17】
金属シードを含むコーティング組成物を用いて集電体の少なくとも一面にコーティング層を形成する段階は、
スパッタリング、電解および無電解メッキ、電子ビームおよび熱気相蒸着のうちの少なくとも1つの方法を用いて行われる、請求項1016のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項18】
負極と、
正極と、
電解質とを含み、
前記負極は、請求項1~9のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極であるリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、リチウム二次電池用負極、その製造方法およびこれを用いたリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の低価格化および高エネルギー密度の向上のために、リチウム二次電池の負極としてリチウム金属負極を用いることが提案されている。
【0003】
このようなリチウム金属負極を形成するために、一般に集電体にリチウム箔(foil)を圧延する方法を用いている。しかし、圧延の場合、20μm以下の厚さを有するリチウム金属負極を実現しにくい問題点がある。
【0004】
一方、実質的にリチウム金属負極を用いて高エネルギー密度を有する二次電池を実現するためには、10~20μmの厚さを有する薄膜のリチウム金属負極が必要である。リチウム金属負極の厚さが薄すぎる場合には、充放電初期の不可逆反応および副反応によって寿命が急減し、厚すぎる場合には、電池のエネルギー密度が低下するだけでなく、リチウム金属の使用量が増加して経済性を有し得ないからである。
【0005】
そこで、適切な厚さのリチウム金属負極を製造するために、電気化学的方法、つまり、電着法を用いてリチウム金属負極を製造する方策が提案された。
【0006】
このように電着法によってリチウム金属負極を製造する過程で低電流を印加して電着すれば、電着の速度が遅すぎて前述のように所望する適切な厚さのリチウム金属負極を得るのに長い時間を要するため、商品化に困難がある。
【0007】
また、電着の速度を増加させるために高電流を印加すると、電着初期の過電圧によって生じる副反応が増加し、高電流およびこれによる高い電圧によって電着工程で生成されたリチウム金属負極表面の保護層が破壊される。これによって、このような負極を適用する場合、充放電過程中に副反応がさらに激しくなってリチウム二次電池の性能が低下する。
【0008】
したがって、電着法によってリチウム金属負極を製造しながらも充放電特性に優れたリチウム二次電池用負極を製造できる技術の開発が急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本実施形態では、電着工程で高電流を印加してリチウム金属層を含む負極活物質層が形成された負極を製造しても、優れた充放電特性を有するリチウム二次電池用負極、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池用負極を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によるリチウム二次電池用負極は、集電体と、前記集電体の少なくとも一面に位置し、リチウム金属層を含む負極活物質層とを含み、前記リチウム金属層を含む負極活物質層は、前記集電体上に位置し、金属シードを含むコーティング層と、前記コーティング層上に位置するリチウム金属層とを含むことができる。
【0011】
他の実施形態によるリチウム二次電池用負極は、集電体と、前記集電体の少なくとも一面に位置し、リチウム金属層を含む負極活物質層とを含み、前記リチウム金属層を含む負極活物質層は、内部に金属シードを含むリチウム金属層であってもよい。
【0012】
さらに他の実施形態によるリチウム二次電池用負極の製造方法は、金属シードを含むコーティング組成物を用いて集電体の少なくとも一面にコーティング層を形成する段階と、メッキ液内に前記コーティング層が形成された集電体を位置させた後、前記コーティング層と所定の間隔をおいてリチウム供給源を位置させる段階と、前記集電体および前記リチウム供給源の間に電流を印加して、リチウム金属層を形成する段階とを含み、前記金属シードは、マグネシウム、銀、亜鉛、白金、スズ、シリコン、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、金、ビスマス、インジウムおよびゲルマニウムからなるグループより選択された1種以上であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本実施形態によれば、初期から高電流の条件で電着工程を行って負極活物質層を形成しても、過剰のリチウム粒子が核生成されるのを防止することができ、粗大な構造のリチウム粒子に成長させてこれを含むリチウム金属層を形成することができ、結果的に均一な表面を有する負極活物質層が形成されたリチウム二次電池用負極を製造することができる。
【0014】
また、前述のように製造されたリチウム二次電池用負極は、金属シードを含む負極活物質層を含むことによって、これを適用したリチウム二次電池の充放電特性を顕著に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態によるリチウム二次電池用負極を製造する方法およびこれによって製造されたリチウム二次電池用負極を概略的に示したものである。
図2】他の実施形態によるリチウム二次電池用負極を概略的に示したものである。
図3】実施例1によりリチウム二次電池用負極を製造する過程でコーティング層が形成された集電体の断面を示すSEM写真である。
図4A】実施例1によりリチウム二次電池用負極を製造する過程でコーティング層が形成された集電体の成分分析結果を示したものである。
図4B】実施例1によりリチウム二次電池用負極を製造する過程でコーティング層が形成された集電体の成分分析結果を示したものである。
図5】電着時間により形成されたリチウム二次電池用負極の表面微細構造を測定した結果である。
図6】実施例1および比較例1により製造されたリチウム二次電池に対する充放電特性を評価した結果を示したものである。
図7】一実施形態によるリチウム二次電池を概略的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例として提示されるものであって、これによって本発明が制限されず、本発明は後述する特許請求の範囲の範疇によってのみ定義される。
【0017】
図1には、一実施形態によるリチウム二次電池用負極を製造する方法およびこれによって製造されたリチウム二次電池用負極を概略的に示した。
【0018】
図1を参照すれば、一実施形態によるリチウム二次電池用負極100は、集電体11と、前記集電体11の少なくとも一面に位置する負極活物質層12とを含む。
【0019】
集電体11は、リチウム二次電池内における電気的接続のためのものである。
【0020】
集電体11は、薄膜(Foil)の形態を有することができるが、これに限定されるものではなく、例えば、メッシュ(mesh)、フォーム(Foam)、棒材(rod)、線材(wire)、および線材(wire、fiber)を製織した薄板(sheet)の形態を有してもよい。
【0021】
集電体11の素材としては、電気伝導性を有し、リチウムとの反応が制限的な素材を使用することができる。集電体11の素材としては、例えば、銅、ニッケル、チタン、ステレンス鋼、金、白金、銀、タンタル、ルテニウム、およびこれらの合金、炭素、導電性ポリマー、非導電性ポリマー上に導電層がコーティングされた複合繊維のうちのいずれか1つまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0022】
集電体11の厚さが厚ければ、電池の重量が増加して電池のエネルギー密度が低くなり、集電体11の厚さが薄くなると、高電流作動時、過熱破損の危険があり、電池製造工程中に張力によって破損することがある。したがって、集電体11の厚さは、1μm~50μmの範囲であるとよい。
【0023】
前記負極活物質層12は、集電体11上に位置し、金属シードを含むコーティング層21と、前記コーティング層21上に位置するリチウム金属層31とを含む。
【0024】
前述のように、負極活物質層の形成時の理由により電着の速度を増加させるために、高電流を印加して電着工程を進行させる場合、リチウム二次電池の性能が低下する問題点があった。
【0025】
しかし、本実施形態のように、金属シードを含むコーティング層21を含む構造で負極活物質層12を形成する場合、高電流を印加して電着工程を行っても、微細なリチウム粒子が過剰生成されたり、電着工程ですでに生成されたリチウム金属層の表面保護層である被膜が破壊されるのを防止することができる。
【0026】
より具体的には、本実施形態の負極活物質層は、金属シードを含むコーティング層を含むため、電着工程で高電流を印加して前記コーティング層上にリチウム金属層を形成する場合、初期に生成されたリチウム粒子がよく成長するように誘導して粗大な構造の粒子が形成されるようにすると同時に、リチウム金属層、結果的に負極活物質層が均一な表面を有するようにすることができる。
【0027】
したがって、本実施形態による負極を適用したリチウム二次電池の性能、具体的には、充放電特性を顕著に向上させることができる。また、高電流を印加して速い速度で電着工程を行う場合にも、高性能を有するリチウム二次電池用負極を製造できるため、リチウム二次電池用負極の生産性も顕著に向上させることができる。
【0028】
前記金属シードは、例えば、マグネシウム、銀、亜鉛、白金、スズ、シリコン、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、金、ビスマス、インジウムおよびゲルマニウムからなるグループより選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0029】
本実施形態において、コーティング層は、金属シードを含む。このようにコーティング層が金属シードを含む場合、電子伝導度が高い金属シードを含むため、集電体から電子が円滑に供給されてリチウムイオンが還元されることによって、リチウム金属層の電着が容易に行われるというメリットがある。
【0030】
しかし、コーティング層に含まれる粒子が金属酸化物形態の場合には、本実施形態のように金属シードを含む場合と比較する時、電子伝導度が低くて集電体から電子供給が円滑に行われず、電着工程で金属酸化物を含むコーティング層がむしろ抵抗層として作用することがある。この場合、リチウム金属層の電着が容易に行われない問題点がある。
【0031】
これとともに、本実施形態のように金属シードを含むコーティング層上にリチウム金属層を形成する場合、電着工程でリチウム粒子の核生成初期に核生成自由エネルギーを低下させることができるため、高電流および過電圧の条件でも粗大な粒子構造を有するリチウム金属層を形成することができる。
【0032】
本実施形態の負極において、前記コーティング層の厚さは、0.01μm~10μm、より具体的には100nm~500nmの範囲であってもよい。コーティング層の厚さが前記範囲を満たす場合、上述した金属シードを含むために得られる効果である粗大なリチウム粒子の均一な電着が可能である。これに対し、金属シードを含むコーティング層の厚さが薄すぎる場合、コーティング面積が拡大することによって局部的なコーティング厚さの不均一が発生しやすく、結果的に生成されるリチウム粒子の大きさが不均一になるというデメリットがある。一方、前記コーティング層の厚さが厚すぎると、重量および体積の増加で電池のエネルギー密度の低下を誘発する問題がある。ただし、このようなコーティング層の厚さは、リチウム二次電池構造の設計により可変的に調節可能である。
【0033】
前記負極活物質層12の厚さは、1μm~100μm、より具体的には5μm~30μmの範囲であってもよい。
【0034】
負極活物質層12の厚さが厚すぎると、本実施形態の負極をリチウム二次電池に適用する場合、電池の重量および重量が増加してエネルギー密度が低くなる問題点がある。また、負極活物質層12の形成時、厚さに比例して電着工程の時間と費用が増加するため、負極活物質層12の厚さは、100μm以下であることが好ましい。
【0035】
また、負極活物質層12の厚さが薄すぎると、本実施形態の負極をリチウム二次電池に適用する場合、電池の充放電寿命が低下する問題点がある。具体的には、電池の充放電中には、一般に負極活物質層に含まれているリチウムと電解液との副反応などで電池内のリチウムが次第に消耗して電池容量が減少する。ところが、負極活物質層12の厚さが薄ければ、充放電中に消耗したリチウムを補充できるリチウムの保有量が少なくなるので、電池の充放電寿命が低下する。したがって、負極活物質層12の厚さは、1μm以上であることが好ましい。
【0036】
一方、図示しないが、本実施形態の負極活物質層は、前記負極活物質層の表面に位置する被膜をさらに含むことができる。
【0037】
前記被膜は、負極活物質層12の製造過程で、電着されたリチウム供給源のリチウム金属とメッキ液との間の反応などで形成されるもので、使用するメッキ液の組成および電着工程の条件を調節して被膜の厚さおよび組成、特性などを制御することができる。
【0038】
前記被膜の厚さは、例えば、2nm~2μm、より具体的には10nm~500nmの範囲であってもよい。
【0039】
負極活物質層12の表面に位置する前記被膜の厚さが厚すぎると、リチウムイオン伝導度が低くなり、界面抵抗が増加して、電池適用時、充放電特性が低下しうる。また、被膜の厚さが薄すぎると、実施形態によるリチウム金属負極を電池に適用する過程で被膜が流失しやすくなる。
【0040】
したがって、前記被膜は、前述の厚さ範囲を満たす範囲で、薄い厚さに、負極活物質層12の表面全体に均一かつ緻密に形成されることが好ましい。
【0041】
このとき、前記被膜は、Li-N-C-H-O系イオン性化合物、Li-P-C-H-O系イオン性化合物およびLiFからなるグループより選択された1種以上の物質を含むことができる。
【0042】
図2には、他の実施形態によるリチウム二次電池用負極を概略的に示した。
【0043】
図2を参照すれば、他の実施形態によるリチウム二次電池用負極100は、集電体11と、前記集電体11の少なくとも一面に位置し、リチウム金属層31を含む負極活物質層12とを含む。
【0044】
このとき、前記リチウム金属層31を含む負極活物質層12は、内部に金属シード22を含むリチウム金属層31である。
【0045】
前記金属シード22は、例えば、マグネシウム、銀、亜鉛、白金、スズ、シリコン、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、金、ビスマス、インジウムおよびゲルマニウムからなるグループより選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
本実施形態では、負極活物質層12が金属シード22を含むリチウム金属層31の形態である。このように金属シード22を含むリチウム金属層31の形態で負極活物質層を形成する場合、電着工程でリチウム粒子の核生成初期に核生成自由エネルギーを低下させることができるため、高電流および過電圧の条件でも粗大な粒子構造を有するリチウム金属層を形成することができる。
【0047】
本実施形態において、前記負極活物質層の厚さは、1μm~100μm、より具体的には5μm~30μmの範囲であってもよい。本実施形態において、負極活物質層12が前記厚さ範囲を満たす場合、電池の充放電寿命を向上させながら電池のエネルギー密度を極大化できるだけでなく、負極活物質層の形成時、電着工程の時間と費用を最小化できるというメリットがある。
【0048】
本実施形態において、前記リチウム金属層の内部に含まれる金属シードは、前記リチウム金属層内部のリチウムと合金化された形態であってもよい。
【0049】
このように負極活物質層、つまり、リチウム金属層の内部にリチウムと合金化された形態の金属シードを含む場合、前記合金は、放電過程中に可逆的に金属シードの形態に変化することによって、再充電されるとき、リチウムイオンが容易に合金化される。言い換えれば、充放電過程中にシードの役割を繰り返すことが可能なため、結果的にリチウムの樹枝状生成を防止して電池寿命を向上させるというメリットがある。
【0050】
一方、図2に示さないが、本実施形態の負極活物質層は、前記負極活物質層の表面に位置する被膜をさらに含むことができる。
【0051】
このような被膜については、前述した一実施形態によるリチウム二次電池用負極において説明したものと同一であることから、ここでは省略する。
【0052】
一実施形態によるリチウム二次電池の製造方法は、金属シードを含むコーティング組成物を用いて集電体の少なくとも一面にコーティング層を形成する段階と、メッキ液内に前記コーティング層が形成された集電体を位置させた後、前記コーティング層と所定の間隔をおいてリチウム供給源を位置させる段階と、前記集電体および前記リチウム供給源の間に電流を印加して、リチウム金属層を形成する段階とを含む。
【0053】
まず、金属シードを含むコーティング組成物を用いて集電体の少なくとも一面にコーティング層を形成する段階を行う。
【0054】
このとき、前記金属シードは、例えば、マグネシウム、銀、亜鉛、白金、スズ、シリコン、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、金、ビスマス、インジウムおよびゲルマニウムからなるグループより選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0055】
また、前記コーティング層は、例えば、スパッタリング、電解および無電解メッキ、電子ビームおよび熱気相蒸着のうちの少なくとも1つの方法を用いて行われる。
【0056】
一方、前記コーティング層を形成する段階において、前記集電体の少なくとも一面に形成されたコーティング層の厚さは、0.01μm~10μm、より具体的には100nm~500nmの範囲であってもよい。
【0057】
コーティング層の厚さが前記範囲を満たす場合、一実施形態によるリチウム二次電池用負極、より具体的には、図1に示されるようなリチウム二次電池用負極100の構造を有するように製造することができる。
【0058】
したがって、前記コーティング層形成段階の後に行われる後続工程において、前記リチウム金属層を形成する段階は、前記集電体の少なくとも一面に形成されたコーティング層上に前記リチウム金属層が位置するように行われることによって、複数の層を有する負極活物質層を形成するように行われる。
【0059】
あるいは、前記コーティング層を形成する段階において、前記集電体の少なくとも一面に形成されたコーティング層の厚さは、10nm~100nmの範囲であってもよい。
【0060】
コーティング層の厚さが前記範囲を満たす場合、他の実施形態によるリチウム二次電池用負極、より具体的には、図2に示されるようなリチウム二次電池用負極100の構造を有するように製造することができる。
【0061】
したがって、前記コーティング層形成段階の後に行われる後後続工程において、前記リチウム金属層を形成する段階は、前記集電体の少なくとも一面に形成されたコーティング層に含まれる金属シードが前記リチウム金属層内部のリチウムと合金化されて内部に拡散することによって、単一の負極活物質層を形成するように行われる。
【0062】
一方、前記コーティング層形成段階の後に、メッキ液内に前記コーティング層が形成された集電体を位置させた後、前記コーティング層と所定の間隔をおいてリチウム供給源を位置させる段階と、前記集電体および前記リチウム供給源の間に電流を印加して、リチウム金属層を形成する段階とを行う。
【0063】
図1を参照して、リチウム金属層を形成する段階をより具体的に説明する。
【0064】
まず、メッキ液40内にコーティング層20が形成された集電体11を位置させた後、コーティング層20と所定の間隔をおいてリチウム供給源30を位置させる。
【0065】
前記リチウム供給源30は、例えば、リチウム金属、リチウム合金、前記リチウム金属またはリチウム合金を集電体に圧着した箔、リチウム塩が溶解したメッキ液などを使用することができる。
【0066】
集電体11は、前述したものと同一であることから、ここでは省略する。
【0067】
前記メッキ液40は、リチウム塩を非水系溶媒に溶解して製造することができる。
【0068】
より具体的には、前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiCO、LiNO、LiFSI、LiTFSI、LiBF、LiPF、LiAsF、LiClO、LiN(SOCF、LiBOB、またはこれらの組み合わせであってもよい。前記リチウム塩の濃度は、全体電解液を基準として0.1~3.0Mであってもよい。
【0069】
より具体的には、本実施形態において、メッキ液は、前記リチウム塩および非水系溶媒のうちの少なくとも1つとして窒素系化合物を含むことを特徴とする。
【0070】
前記窒素系化合物は、例えば、硝酸リチウム(Lithium nitrate)、リチウムビスフルオロスルホニルイミド(Lithium bis fluorosulfonyl imide)、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(Lithium bis trifluoromethane sulfonimide)、カプロラクタム(e-Caprolactam)、メチルカプロラクタム(N-methyl-e-caprolactam)、トリエチルアミン(Triethylamine)およびトリブチルアミン(Tributylamin)からなる群より選択された1つ以上を含むことができる。
【0071】
前記窒素系化合物のうち、硝酸リチウム(Lithium nitrate)、リチウムビスフルオロスルホニルイミド(Lithium bis fluorosulfonyl imide)およびリチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(Lithium bis trifluoromethane sulfonimide)のうちの少なくとも1つは、リチウム塩として使用できる。
【0072】
前記窒素系化合物のうち、カプロラクタム(e-Caprolactam)、メチルカプロラクタム(N-methyl-e-caprolactam)、トリエチルアミン(Triethylamine)およびトリブチルアミン(Tributylamin)のうちの少なくとも1つは、非水系溶媒として使用できる。
【0073】
一方、前記メッキ液は、メッキ液の粘性(Viscosity)などを考慮して、一般的な非水系溶媒を溶媒として追加することができる。メッキ液の粘性が高すぎると、リチウムイオンの移動度(Mobility)が低下してメッキ液のイオン伝導度が低下するので、電着工程にかかる時間が増加して生産性が減少するからである。
【0074】
前記溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(Ethylene carbonate)、プロピレンカーボネート(Propylene carbonate)、ジメチルカーボネート(Dimethyl carbonate)、エチルメチルカーボネート(Ethyl methyl carbonate)、ジエチルカーボネート(Diethyl carbonate)、1,2-ジメトキシエタン(1,2-Dimethoxyethane)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(Diethylene glycol dimethyl ether)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(Tetraethylene glycol dimethyl ether)、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)、1,3-ジオキソラン(1,3-Dioxolane)、1,4-ジオキサン(1,4-Dioxane)および1,3,5-トリオキサン(1,3,5-Trioxane)からなるグループより選択された1種以上を含むことができる。
【0075】
前記電流を印加して、前記集電体の少なくとも一面にリチウム金属層を形成する段階で加える電流の電流密度は、0.1mA/cm~100mA/cmの範囲、より具体的には0.2mA/cm~50mA/cmの範囲、5mA/cm~30mA/cmの範囲または7mA/cm~25mA/cmの範囲であってもよい。
【0076】
また、前記電流を印加する時間は、0.05時間~50時間の範囲、より具体的には0.25時間~25時間の範囲であってもよい。
【0077】
このように、本実施形態では、高電流の条件下でも微細なリチウム粒子が過剰生成されるのを防止し、初期に生成されたリチウム粒子がよく成長するように誘導して粗大な粒子構造を有するリチウム金属層を含む負極活物質層が形成された負極を製造することができる。また、このように製造された負極活物質層は、表面均一性にも優れている。したがって、本実施形態により製造された負極を適用する場合、リチウム二次電池の充放電特性を顕著に向上させることができる。
【0078】
一実施形態によるリチウム二次電池は、正極と、負極と、前記正極および負極の間に位置する電解質とを含む。
【0079】
図7には、一実施形態によるリチウム二次電池の構造を概略的に示したものである。
【0080】
図7を参照すれば、本実施形態のリチウム二次電池200は、正極70と、負極100と、前記正極70と前記負極100との間に配置された分離膜90とを含む電極組立体を含むことができる。
【0081】
このような電極組立体は、ワインディングされるかまたは折り畳まれて電池容器95に収容される。
【0082】
以後、前記電池容器95に電解質80が注入され密封されてリチウム二次電池200が完成できる。このとき、電池容器95は、円筒形、角形、パウチ型、コイン型などの形態を有することができる。
【0083】
図7には、便宜上、前記負極100として一実施形態による負極を示したが、前記負極としては、前述した実施形態によるリチウム二次電池用負極をすべて適用可能である。
【0084】
前記正極70は、正極活物質層と、正極集電体とを含むことができる。
【0085】
正極活物質層は、例えば、Ni、Co、Mn、Al、Cr、Fe、Mg、Sr、V、La、Ceのうちの少なくとも1つの金属と、O、F、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された少なくとも1つの非金属元素とを含むLi化合物を含むことができる。正極活物質層は、約0.01μm~200μmの大きさを有する活物質粒子を含むことができ、電池の要求特性により適切に選択可能である。
【0086】
場合によっては、前記正極活物質層には導電材が添加されてもよい。
【0087】
前記導電材は、例えば、カーボンブラックおよび超微細グラファイト粒子、アセチレンブラックのようなファインカーボン(fine carbon)、ナノ金属粒子ペーストなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0088】
正極集電体は、前記正極活物質層を支持する役割を果たす。正極集電体としては、例えば、アルミニウム薄板(Foil)、ニッケル薄板またはこれらの組み合わせを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0089】
前記リチウム二次電池200に充填される電解質80としては、非水系電解液または固体電解質などを使用することができる。
【0090】
前記非水系電解液は、例えば、リチウムヘキサフルオロホスフェート、リチウムパークロレートなどのリチウム塩と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの溶媒とを含むことができる。また、前記固体電解質は、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどの重合体電解質に電解液を含浸したゲル状重合体電解質や、LiI、LiNなどの無機固体電解質を使用することができる。
【0091】
前記分離膜90は、正極と負極とを分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するもので、リチウム二次電池において通常用いられるものであればすべて使用可能である。つまり、電解質のイオン移動に対して低抵抗かつ電解液含湿能力に優れたものが使用できる。分離膜は、例えば、ガラス繊維、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンまたはこれらの組み合わせ物の中から選択されたものであってもよいし、不織布または織布形態であってもよい。一方、前記電解質80として固体電解質が使用される場合、固体電解質が分離膜90を兼ねることもできる。
【実施例
【0092】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例として提示されるものであって、これによって本発明が制限されず、本発明は後述する特許請求の範囲の範疇によってのみ定義される。
【0093】
(実施例1)
図1のような工程で実施例1によるリチウム二次電池用負極を製造した。
【0094】
まず、10μmの厚さの銅集電体11の一面に、スパッタリング方法を用いて、マグネシウムが含まれているコーティング層20を約250nmの厚さに形成した。
【0095】
メッキ液40内に前記のようにマグネシウムを含むコーティング層20が形成された集電体11を位置させた後、前記コーティング層と所定の間隔をおいてリチウム供給源30を位置させる。
【0096】
前記メッキ液は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Lithium bis(fluorosulfonyl)imide、LiFSI)と硝酸リチウム(Lithium nitrate)をメッキ液100重量%を基準としてそれぞれ40重量%と10重量%を投入し、フッ素系化合物であるフルオロエチレンカーボネート(Fluoroethylene carbonate、FEC)をメッキ液100重量%を基準として約19重量%を投入して製造した。
【0097】
また、リチウム供給源30としては、純度99.9%以上である、厚さ500μmのリチウム金属板を銅集電板(Cu Plate)に圧着して使用した。
【0098】
メッキ液40内にリチウム供給源30と集電体11とを電気的に絶縁された状態で積層した後、電源供給装置を用いて、リチウム供給源30と集電体11をそれぞれ(+)と(-)電極として電流を印加する方法でコーティング層21上に位置するリチウム金属層31を形成した。
【0099】
このとき、工程の平均電流密度は8mA/cm、工程時間は約0.6時間として約20μmの厚さの負極活物質層12が形成された負極100を製造した。
【0100】
(比較例1)
マグネシウムが含まれているコーティング層が形成された集電体の代わりに、別途のコーティングなしに10μmの厚さの銅集電体を用いたことを除けば、実施例1と同様の方法で負極活物質層が形成された負極を製造した。
【0101】
(実験例1)
実施例1において、コーティング層が形成された集電体の断面構造および成分を測定して、その結果を図3および図4A図4Bに示した。
【0102】
つまり、図3は、コーティング層が形成された集電体の断面のSEM写真であり、図4Aおよび図4Bは、コーティング層が形成された集電体に対する成分分析結果を示したものである。
【0103】
成分の分析は、集束イオンビーム(Focused Ion Beam)で断面を加工してエネルギー分散型分光分析法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)で行った。
【0104】
図3図4A図4Bを参照すれば、集電体の表面にマグネシウムコーティング層が均一に形成されたことを確認することができる。
【0105】
(実験例2)
実施例1および比較例1と同様の方法で負極活物質層を形成しかつ、電着工程時間を1分、2分および3分と短くして、電着工程の初期段階で形成された負極活物質層に対する表面微細構造を測定した。微細構造は、集束イオンビーム(Focused Ion Beam)で断面を加工して走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy)方法で測定し、結果は図5に示した。
【0106】
これは、電着工程の初期段階におけるリチウム粒子の微細構造を確認するためのものである。
【0107】
図5を参照すれば、電着工程初期の非常に短い時間内でも初期リチウム粒子の核生成および粒子成長の挙動が大きな差を示すことが分かる。
【0108】
つまり、比較例1のように、コーティング層なしに集電体上に高電流の条件下でリチウム金属層を含む負極活物質層を形成する場合には、負極活物質層表面の全領域にわたって微細な粒子が過剰に生成されることを確認することができる。時間経過とともに粒子が徐々に成長するとはいえ、成長した後にも相対的に粒子サイズが非常に小さい。
【0109】
これに対し、実施例1のように、マグネシウムを含むコーティング層を形成した後、前記コーティング層上にリチウム金属層を形成して負極活物質層を製造する場合、生成された粒子の数は少ないものの、短い時間にもリチウムが大きく成長して粗大な粒子構造を有することが分かる。
【0110】
したがって、本実施例のように負極活物質層の形成のための電着工程を行うとき、リチウムと合金が容易な金属シードを含むように負極活物質層を製造する場合、初期から高電流を印加しなければならない高速電着工程でも過剰の核生成を防止して負極活物質の比表面積が増加するのを防止することができる。
【0111】
これによって、リチウム二次電池の充放電時、電解液との副反応を減少させることができ、結果的に充放電特性を顕著に増加させることができる。
【0112】
(実験例3)
実施例1および比較例1により製造されたリチウム二次電池用負極を用いて、図7のような構造のリチウム二次電池(2032 type coin full cell)を製造した後、充放電特性を評価した。
【0113】
具体的には、正極はLiCoO(99重量%)活物質と導電材およびバインダーを含む正極活物質スラリーを用いて、集電体(Al foil)の一面に正極活物質層が積層されるように製造した。この時、前記正極の単位面積あたりの容量は、現在商用化されたリチウム二次電池(黒鉛負極使用)の正極の容量水準である3.1mAh/cmで製造した。
【0114】
電解液としては、1MのLiPFが溶解したエチレンカーボネート(Ethylene carbonate)およびエチルメチルカーボネート(Ethyl methyl carbonate)の混合溶媒(3:7の体積比)を使用した。
【0115】
分離膜は、ポリプロピレン(Polypropylene)材質であるCelgard社のモデル2400製品を用い、電池容器などは、Hohsen社の2032タイプコインセル製品を用いた。
【0116】
前記方法で製造されたリチウム二次電池の充放電性能評価は、次のように行った。
【0117】
充電段階は0.2Cで4.25Vまで定電流充電した後、4.25Vで0.05Cまで定電位充電し、放電段階は0.5Cで3.0Vまで定電流放電した。
【0118】
リチウム二次電池の充放電性能を評価した結果は、図6および下記表1に示した。
【0119】
【表1】
【0120】
図6および表1を参照すれば、実施例1により製造されたリチウム二次電池用負極を適用したリチウム二次電池が、比較例1により製造されたリチウム二次電池用負極を適用したリチウム二次電池に比べて、充放電寿命が顕著に優れていることを確認することができる。
【0121】
これは、本実施例のように金属シードを含む負極活物質層が形成された負極を適用し、電解液と接触する負極の表面積を減少させることによって、充放電過程中に負極表面と電解液との副反応が減少し、電着工程で形成された負極活物質層表面の被膜が保護層の役割を果たすためと思われる。
【0122】
したがって、本実施例のような方法で負極を製造する場合、高電流の条件下で電着工程を進行させても、形成される負極活物質層の性能劣化なしに高速で負極活物質層を形成可能であることを確認することができる。これによって、リチウム金属層を含む負極活物質層が形成された負極製造の商品化および製造競争力を確保することができる。
【0123】
本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例はあらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7