(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】スパッタ堆積の方法と装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
C23C14/34 V
(21)【出願番号】P 2022528153
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(86)【国際出願番号】 GB2020052841
(87)【国際公開番号】W WO2021094724
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-07-04
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500024469
【氏名又は名称】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エドワード レンダル
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-101273(JP,A)
【文献】国際公開第2011/131921(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/128009(WO,A1)
【文献】特開2002-235171(JP,A)
【文献】特開2015-193863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタ堆積装置であって、
湾曲経路に沿って基板を導くように配置される、基板ガイドと、
基板ガイドから距離を空け、ターゲット材料を支持するように配置される、ターゲット部であって、ターゲット部と基板ガイドがそれらの間に堆積領域を画定する、ターゲット部と、
電気バイアスをターゲット材料に印加するためのバイアス手段と、
を備える、ターゲットアセンブリと、
使用中、基板にターゲット材料のスパッタ堆積をもたらすために、堆積領域にプラズマを閉じ込めるための閉じ込め磁場を供給するように配置される、一以上の磁性素子を備える閉じ込め配列であって、閉じ込め磁場が、湾曲経路の曲線の周りに、前記プラズマを閉じ込めるために、少なくとも堆積領域において、湾曲経路の曲線に実質的に追従するように配置される磁力線により特徴づけられる、閉じ込め配列と、
プラズマを発生させるように構成されるプラズマ生成配列と、
を備え
、
前記バイアス手段が、第一電力値で、電気バイアスをターゲット材料に印加するように構成され、
前記プラズマ生成配列が、第一電力値に対する第二電力値の比率が1より大きくなるような、第二電力値で、プラズマを発生させるように構成される、スパッタ堆積装置。
【請求項2】
バイアス手段が、負極性の電気バイアスをターゲット材料に印加するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
バイアス手段が、直流電圧から成る電気バイアスをターゲット材料に印加するように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
第一電力値に対する第二電力値の比率が、3.5未満又は1.5未満である、請求項
1に記載の装置。
【請求項5】
第一電力値が、1平方センチメートル当たり少なくとも1ワット(1W cm
-2)である、請求項
1又は
4に記載の装置。
【請求項6】
第一電力値が、1平方センチメートル当たり最大で15ワット(15W cm
-2)、1平方センチメートル当たり最大で70ワット(70W cm
-2)である、請求項
1、4及び5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
プラズマ生成配列が、誘導結合プラズマ源を備える、請求項
1、及び4から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
プラズマ生成配列が、基板ガイドの長手方向軸に実質的に垂直な方向に延在する、一以上の細長いアンテナを備える、請求項
1、及び4から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
プラズマ生成配列が、基板ガイドの長手方向軸に実質的に平行な方向に延在する、一以上の細長いアンテナを備える、請求項
1、及び4から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
ターゲット部が、複数のターゲット材料を支持するように配置され、
バイアス手段が、複数のターゲット材料の一以上の各ターゲット材料に電気バイアスを独立して印加するように構成される、請求項1から
9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
一以上の磁性素子が、プラズマを湾曲シート状に閉じ込めるための閉じ込め磁場を供給するように配置される、請求項1から
10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
一以上の磁性素子が、少なくとも堆積領域において、実質的に均一な密度を有するプラズマを、湾曲シート状に閉じ込めるための閉じ込め磁場を供給するように配置される、請求項1から
11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
一以上の磁性素子が、電磁石である、請求項1から
12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
装置が、一以上の電磁石により供給される磁場を制御するように配置されるコントローラーを備える、請求項
13に記載の装置。
【請求項15】
閉じ込め配列が、閉じ込め磁場を供給するように配置される、少なくとも二つの磁性素子を備える、請求項1から
14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
少なくとも二つの磁性素子が、磁性素子間で供給される比較的強い磁場強度の領域が、湾曲経路の曲線に実質的に追従するように配置される、請求項
15に記載の装置。
【請求項17】
ターゲット部が、ターゲット部の少なくとも一部分が、ターゲット部の他の一部分の支持面に対して鈍角を形成する支持面を画定するように配置されるか、又は配置されるように構成可能である、請求項1から
16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
ターゲット部が、実質的に湾曲している、請求項1から
17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
ターゲット部が、湾曲経路の曲線に実質的に追従するように又は近似するように配置される、請求項1から
18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
基板ガイドが、湾曲経路に沿って基板を導く湾曲部材により提供される、請求項1から
19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
基板にターゲット材料をスパッタ堆積する方法であって、基板が、基板ガイドにより湾
曲経路に沿って導かれ、堆積領域が基板ガイドとターゲット材料を支持するターゲット部の間に画定され、
電気バイアスをターゲット材料に印加することと、
基板にターゲット材料をスパッタ堆積させるために、堆積領域でプラズマを閉じ込めるための磁場を供給することと、を含み、
該磁場が、湾曲経路の周りに前記プラズマを閉じ込めるように、少なくとも堆積領域において、湾曲経路の曲線に実質的に追従するように配置される磁力線により特徴づけら
れ、
前記電気バイアスをターゲットに印加することが、第一電力値で電気バイアスを印加することを含み、
さらに、第一電力値に対する第二電力値の比率が1より大きくなるような、第二電力値でプラズマを発生させることを含む、
方法。
【請求項22】
リチウム、コバルト、リチウム酸化物、コバルト酸化物、及びコバルト酸リチウムのうち少なくとも一つを含むターゲット材料を提供することを含む、請求項
21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆積に関するものであり、より具体的には、基板にターゲット材料をスパッタ堆積するための方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
堆積は、基板上にターゲット材料が堆積されるプロセスである。堆積の例は、薄い層(通常、おおよそナノメートル又はナノメートルの数分の1から数マイクロメートル又は数十マイクロメートルまで)をシリコンウエハーやウェブなどの基板上に堆積する薄膜堆積である。薄膜堆積技術の例としては、凝縮相のターゲット材料を蒸発させて蒸気を生成させ、次に蒸気を基板表面上に凝縮させる、物理気相成長(PVD)がある。PVDの例としては、イオンなどのエネルギー粒子による衝撃を受けて粒子がターゲットから放出される、スパッタ堆積である。スパッタ堆積の例では、アルゴンなどの不活性ガスといったスパッタガスを、低圧で真空チャンバーに導入し、プラズマを生成させるエネルギー電子を使用して、スパッタガスをイオン化させる。プラズマイオンによるターゲットへの衝撃により、ターゲット材料を放出させ、該ターゲット材料は、その後、基板表面上に堆積し得る。スパッタ堆積は、ターゲット材料を加熱せずに堆積させることができ、結果として、基板への熱によるダメージを低減、防止できる点で、蒸着などの他の薄膜堆積方法より有利である。
【0003】
よく知られたスパッタ堆積技術として、グロー放電とターゲットに近い円形領域でプラズマ密度を増加させる磁界を組み合わせた、マグネトロンが使用される。プラズマ密度の増加により、堆積速度を増加させることができる。しかし、マグネトロンを使用すると、円形の「レーストラック」形状のターゲット浸食プロファイルが生じ、ターゲットの利用が制限されて、得られる堆積の均一性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
工業的用途において改善された有用性を可能とする、均一で、制御可能な及び/又は効率的なスパッタ堆積を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第一の態様によれば、スパッタ堆積装置が提供され、該スパッタ堆積装置は、
湾曲経路に沿って基板を導くように配置される、基板ガイドと、
基板ガイドから距離を空け、ターゲット材料を支持するように配置される、ターゲット部であって、ターゲット部と基板ガイドがそれらの間に堆積領域を画定する、ターゲット部と、
電気バイアスをターゲット材料に印加するためのバイアス手段と、
を含む、ターゲットアセンブリと、
使用中、基板にターゲット材料のスパッタ堆積をもたらすために、堆積領域にプラズマを閉じ込めるための閉じ込め磁場を供給するように配置される、一以上の磁性素子を備える閉じ込め配列であって、閉じ込め磁場が、湾曲経路の曲線の周りに、前記プラズマを閉じ込めるために、少なくとも堆積領域において、湾曲経路の曲線に実質的に追従するように配置される磁力線により特徴づけられる、閉じ込め配列と、
を備える。
【0006】
湾曲経路に沿って基板を導くことにより、装置は、例えば基板の大きな表面積に、「リールツーリール」タイプのシステムで、ターゲット材料のコンパクトなスパッタ堆積をもたらす。リールツーリール堆積システムは、バッチ間に堆積を中止することを含むバッチ処理より効率的であり得る。
【0007】
磁力線が、湾曲経路の曲線に実質的に追従すると、プラズマは、湾曲経路を取り巻いて堆積領域内に閉じ込められ得る。それゆえ、堆積領域内において、少なくとも湾曲経路の曲線周りの方向で、プラズマの密度は、より均一になり得る。これは、基板上に堆積されるターゲット材料の均一性を向上させ得る。それゆえ、処理後の基板の一様性を向上させ得、品質管理の必要性を減らし得る。
【0008】
電気バイアスをターゲット材料に印加することにより、ターゲット材料と隣接する領域に引き寄せられる、ターゲット材料の近傍中にプラズマ由来のイオンをもたらす。これは、プラズマイオンとターゲット材料間の相互作用が起こる割合を増加させることができ、スパッタ堆積の効率を上げる。ターゲット材料に印加される電気バイアスを制御することにより、ターゲット材料に隣接するプラズマイオンの密度も制御できる。この方法のプラズマイオンの正確な制御は、例えば、バイアスをかけられたターゲット材料と重なる、基板の特定の部分に堆積されるターゲット材料の密度をより高密度にすることにより、基板上にターゲット材料のパターン化されたスパッタ堆積をもたらし得る。これは、コーティングされないままにする基板の領域を保護するマスクを使用して、基板上に材料のパターンを堆積することに比べ、より効率的で、より無駄が少なくなり得る。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、ターゲット材料に印加される電気バイアスを適切に制御することにより、基板上に堆積されるターゲット材料の結晶化度を制御できることを発見した。この方法で、所望の結晶化度を有するターゲット材料を、基板上に、容易にスパッタ堆積できる。
【0009】
例において、バイアス手段は、負極性の電気バイアスをターゲット材料に印加するように構成される。これにより、スパッタ堆積の速度を増加させるために、プラズマ由来の正イオンをターゲット材料に引き寄せて使用できる。
【0010】
例において、バイアス手段は、直流電圧から成る電気バイアスをターゲット材料に印加するように構成される。これは、交流電圧をターゲット材料に加える場合に比べ、スパッタ堆積の均一性を向上させ得る。
【0011】
いくつかの例において、装置は、プラズマを発生させるように構成される、プラズマ生成配列をさらに備える。ある場合では、バイアス手段は、第一電力値で電気バイアスをターゲット材料に印加するように構成され、プラズマ生成配列は、第一電力値に対する第二電力値の比率が1より大きくなるような、第二電力値でプラズマを発生させるように構成される。第一電力値に対する第二電力値の比率が1より大きいと、基板上にスパッタ堆積されるターゲット材料が、少なくとも部分的に規則正しい構造を有する傾向がある。この構造は、ターゲット材料がスパッタ堆積される基板に関係なく得ることができ、このようにして配置された装置は、結晶性材料などの少なくとも部分的に規則正しい材料を、幅広い、異なる基板にスパッタ堆積することへの有用性を有することを意味する。
【0012】
場合によっては、第一電力値に対する第二電力値の比率が、3.5未満又は1.5未満であることもある。そのような比率は、堆積されるターゲット材料をアニーリングせずに、少なくとも部分的に規則正しい構造で、ターゲット材料を堆積させることに役立ち得る。これは、そのような構造で、材料を堆積させることを平易にすることができる。
【0013】
例において、第一電力値は、1平方センチメートル当たり少なくとも1ワット(1W cm-2)である。この第一電力値は、ターゲット材料をスパッタ堆積するのに効果的であることがわかっている。
【0014】
場合によっては、第一電力値は、1平方センチメートル当たり最大15ワット(15W cm-2)、又は1平方センチメートル当たり最大70ワット(70W cm-2)である。例えば、最大15W cm-2の第一電力値は、セラミック及び/又は酸化物を含むターゲット材料に適しており、一方で、最大70W cm-2の第一電力値は、リチウム、コバルト又は、リチウム及び/又はコバルトの合金を含むターゲット材料に適している。
【0015】
例において、ターゲット部は、複数のターゲット材料を支持するように配置されており、バイアス手段は、複数のターゲット材料うちの一以上の各ターゲット材料に電気バイアスを独立して印加するように構成されている。これは、装置の柔軟性を向上させる。例えば、異なる各ターゲット材料に関係する電気バイアスを制御することにより、結果として、異なるターゲット材料の堆積を制御できる。この方法で、装置は、複数のターゲット材料のうちの一つの量を、他のターゲット材料の量より多く堆積させるために、例えば、基板上に所望のターゲット材料の組み合わせを堆積させるために使用され得る。さらに、電気バイアスを一以上の各ターゲット材料に独立して印加することは、例えば、各ターゲット材料からより多く又はより少なく堆積させるために、各ターゲット材料に印加される相対的な電気バイアスを制御することにより、基板上にターゲット材料の所望のパターンを堆積させるといった柔軟性を提供し得る。
【0016】
例において、さらに、装置は、プラズマを発生させるように配置されるプラズマ生成配列を備え、プラズマ生成配列は、誘導結合プラズマ源を備える。誘導結合プラズマ源は、容易に制御でき、スパッタ堆積自体を容易に制御できるようにする。
【0017】
例において、プラズマ生成配列は、基板ガイドの長手方向軸に実質的に垂直な方向に延在する、一以上の細長いアンテナを備える。他の例では、プラズマ生成配列は、基板ガイドの長手方向軸に実質的に平行な方向に延在する、一以上の細長いアンテナを備える。細長いアンテナが延在する方向に関係なく、細長いアンテナを使用することにより、アンテナの長さに沿ったプラズマが生成され得、プラズマに曝される基板及び/又はターゲット材料の面積を増加させることができる。これは、スパッタ堆積の効率を向上させ得、代わりに又は追加で、基板上にターゲット材料をより均一に堆積させ得る。
【0018】
例において、湾曲シート状にプラズマを閉じ込めるために、一以上の磁性素子が、閉じ込め磁場を供給するように配置される。湾曲シート状にプラズマを閉じ込めることにより、プラズマに曝され得る基板の面積が増加する。それゆえ、スパッタ堆積は、基板のより大きな表面積にわたって実行され、スパッタ堆積の効率を向上させ得る。湾曲シート状のプラズマを提供することにより、プラズマの密度をより均一にできる。場合によっては、プラズマの均一性が、湾曲経路の曲線周り及び基板の幅にわたって向上する。これにより、基板にターゲット材料のより均一なスパッタ堆積が可能になる。
【0019】
例において、少なくとも堆積領域において実質的に均一な密度を有する、湾曲シート状のプラズマを閉じ込めるために、一以上の磁性素子が、閉じ込め磁場を供給するように配置される。堆積領域で実質的に均一な密度のプラズマであると、ターゲット材料は、基板上に実質的に均一な厚さで堆積し得る。これは、堆積後の基板の一様性を向上させ、品質管理の必要性が減少し得る。
【0020】
例において、一以上の磁性素子は、電磁石である。電磁石を使用することにより、閉じ込め磁場の強度を、制御することができる。例えば、装置が、一以上の電磁石により供給される磁場を制御するために配置されるコントローラーを備える場合がある。このようにして、堆積領域のプラズマの密度を調節でき、基板へのターゲット材料の堆積を調節するために使用され得る。それゆえ、スパッタ堆積の制御を向上させ、装置の自由度を向上させ得る。
【0021】
例において、閉じ込め配列は、閉じ込め磁場を供給するように配置される、少なくとも二つの磁性素子を備える。これによって、より正確なプラズマの閉じ込めを可能にし、及び/又は閉じ込め磁場の制御の自由度をより大きくし得る。例えば、少なくとも二つの磁性素子を有することで、プラズマに曝される基板の面積を増加させ得、それゆえ、ターゲット材料が堆積される基板の面積を増加させ得る。これは、スパッタ堆積プロセスの効率を向上させ得る。これらの例において、少なくとも二つの磁性素子は、磁性素子間で供給される比較的高い強度の磁場の領域が、実質的に湾曲経路の曲線に追従するように配置され得る。これは、湾曲経路の曲線周りのプラズマの均一性を向上させ得、結果として、基板上にスパッタ堆積されるターゲット材料の均一性を向上させ得る。
【0022】
例において、ターゲット部は、ターゲット部の少なくとも一部分が、ターゲット部の他の一部分の支持面に対して鈍角を形成する支持面を画定するように配置されるか、又は配置されるように構成可能である。これは、ターゲット部の空間的な取り付け面積を増やさず、かつ、湾曲経路を変えることなく、スパッタ堆積がもたらされる面積を増やすことができる。これは、スパッタ堆積の効率を向上させ得る。
【0023】
例において、ターゲット部は、実質的に湾曲している。これにより、堆積領域内で、基板に曝されるターゲット部の表面積を増やすことができ、スパッタ堆積がもたらされ得る効率を向上させ、他の配置に比べ、よりコンパクトにできる。
【0024】
例において、ターゲット部は、湾曲経路の曲線に実質的に追従するように又は湾曲経路の曲線に近似するように配置される。これは、湾曲経路の曲線に沿って、ターゲット部のターゲット材料が、基板にスパッタ堆積される際の均一性を向上させ得る。これにより、品質管理の必要性を減少させ得る。
【0025】
例において、基板ガイドは、湾曲経路に沿って基板を導く湾曲部材により提供される。基板は、湾曲部材の回転により導かれ、該湾曲部材は、ローラーであっても、ドラムであってもよい。このようにして、装置は、「リールツーリール」プロセス配置の一部分を形成し、バッチ処理配置より効率的に基板を処理し得る。
【0026】
本発明の第二の態様によると、基板にターゲット材料をスパッタ堆積する方法が提供され、基板は湾曲経路に沿って基板ガイドにより導かれ、堆積領域は基板ガイドとターゲット材料を支持するターゲット部の間に画定され、この方法は、
電気バイアスをターゲット材料に印加することと、
基板上にターゲット材料をスパッタ堆積させるために、堆積領域にプラズマを閉じ込める磁場を供給することと、を含み、
該磁場が、湾曲経路周りに前記プラズマを閉じ込めるために、少なくとも堆積領域内において、湾曲経路の曲線に実質的に追従するように配置される磁力線により特徴づけられる。
【0027】
この方法は、湾曲経路の曲線周りのプラズマの均一性を向上させ得、結果として、基板上に堆積されるターゲット材料の均一性を向上させ得る。湾曲経路を使用することにより、この方法は、リールツーリールタイプのプロセスとして実行され得、バッチ処理に比べてより効率的に実行され得る。さらに、電気バイアスをターゲット材料に印加することにより、スパッタ堆積の効率を向上させ得る。基板上に堆積されるターゲット材料の結晶化度は、同様に又は代わりに、ターゲット材料に電気バイアスを印加することにより制御され得る。代わりに又は追加で、容易で、効率的な方法により所望のパターンを堆積させるために、電気バイアスの制御は、基板に堆積されるターゲット材料のパターンを制御するように使用され得る。
【0028】
場合によっては、この方法は、リチウム、コバルト、リチウム酸化物、コバルト酸化物及びコバルト酸リチウムのうち少なくとも一つを含むターゲット材料を提供することを含む。これらの材料は、様々な、異なる機器、製品、又は部品を製造するために使用され得る。
【0029】
いくつかの例において、電気バイアスをターゲット材料に印加することは、第一電力値で電気バイアスを印加することを含み、この方法は、第一電力値に対する第二電力値の比率が1より大きくなるような、第二電力値でプラズマを発生させることを含む。そのような比率は、少なくとも部分的に規則正しい構造を持つように、基板上にターゲット材料を堆積させるために使用され得る。これは、例えば、アニーリングなどのポストプロセスを含む、他の堆積プロセスより容易である。
【0030】
添付の図面を参照して作成された、単に例として与えられる以下の説明から、さらなる特徴が明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】例による装置の断面図を示す、模式図である。
【
図2】
図1の装置例の断面図を示すが、磁力線例を含む、模式図である。
【
図3】
図1及び2の装置例の一部の平面図を示す、模式図である。
【
図4】
図3の装置例の一部の平面図を示すが、磁力線例を含む、模式図である。
【
図5】例による磁性素子の断面図を示す、模式図である。
【
図6】例による装置の断面図を示す、模式図である。
【
図7】例による装置の断面図を示す、模式図である。
【
図8】例による装置の斜視図を示す、模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
例による装置及び方法の詳細は、図を参照して、以下の説明から明らかになるだろう。この説明では、説明の目的で、特定の例の多くの具体的な詳細が示される。明細書における「例」又は類似の用語への言及は、例に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも一つの例に含まれるが、必ずしも他の例に含まれるとは限らないことを意味する。さらに、特定の例は、例の根底にある概念の説明及び理解を容易にするために、特定の特徴を省略及び/又は必然的に簡略化して概略的に記載されることに注意されたい。
【0033】
図1から5を参照すると、ターゲット材料108を基板116上にスパッタ堆積する装置例100が示されている。
【0034】
幅広い、多くの産業用途、例えば光学コーティング、磁気記録媒体、電子半導体デバイス、LED、薄膜太陽電池等のエネルギー発電デバイス、及び薄膜電池等のエネルギー貯蔵デバイスの製造においてなどの、薄膜堆積の実用性を有する用途へのプラズマベースのスパッタ堆積のために、装置100は使用され得る。装置100が使用され得る他の用途には、OLED(有機発光ダイオード)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)やプラズマディスプレイ(PDP)、高性能アドレス(HDP)の液晶ディスプレイ(LCD)、又は干渉変調ディスプレイ(IMOD)ディスプレイデバイスなどのディスプレイデバイスの製造、薄膜トランジスタ(TFT)などのトランジスタの製造、バリアコーティング、二色性コーティング、又は金属化コーティングの作製などが挙げられる。したがって、本開示の背景は、エネルギー貯蔵デバイスやそれらの一部の製造に関連する場合があるが、装置100及び本明細書に記載される方法は、それらの製造に制限されないことを理解されたい。
【0035】
明確にするため図には示されていないが、いくつかの例において、装置100は、通常、使用中、スパッタ堆積に適した低圧、例えば3×10-3torrに排気されるハウジング(図示せず)を含むことを理解されたい。そのようなハウジングは、ポンプシステム(図示せず)によって、適切な圧力(例えば、1×10-5torr未満)に排気され得る。使用中、スパッタ堆積に適した圧力が達成される、例えば、3×10-3torr程度まで、ガス供給システム(図示せず)を使用して、アルゴンや窒素などのプロセスガス又はスパッタガスが、ハウジングに導入され得る。
【0036】
図1から5までに示される例に戻ると、概観において、装置100は、基板ガイド118、ターゲットアセンブリ124、及び磁気閉じ込め配列104を備える。
【0037】
基板ガイド118は、湾曲経路(湾曲経路は、
図1及び2において、矢印Cで示される。)に沿って、基板116、例えば、基板のウェブを導くように配置される。
【0038】
図1及び2の例において、基板ガイド118は、湾曲部材118によって与えられ、この場合、基板供給アセンブリ119の全体で実質的に円筒状のドラム又はローラーにより与えられる。
図1及び2の湾曲部材118は、例えば、心棒により与えられる、軸120の周りを回転するよう配置される。
図3に示される例では、軸120は、湾曲部材118の長手方向軸でもある。
【0039】
基板供給アセンブリ119は、基板116が、湾曲部材118の湾曲面の少なくとも一部(この場合、ドラム118により形成される)により運ばれるために、基板116を湾曲部材118へ及び湾曲部材118から供給するように配置される。
図1及び2などのいくつかの例において、基板供給アセンブリは、基板116をドラム上に送り込むように配置される、第一ローラー110a、及び基板116が湾曲経路Cに追従した後、基板116をドラム118から送り込むように配置される第二ローラー110bを備える。基板供給アセンブリ119は、「リールツーリール」プロセス配置(図示なし)の一部であり得、基板116は、基板116の第一リール又はボビン(図示なし)から送られ、装置100を通過後、処理後の基板を重ねたリール(図示なし)を形成するために、第二リール又はボビン(図示なし)に送られる。
【0040】
いくつかの例において、基板116は、シリコン又はポリマーであるか、あるいは少なくともシリコン又はポリマーを含む。いくつかの例において、例えばエネルギー貯蔵デバイスの製造のために、基板116は、ニッケル箔であるか、あるいは少なくともニッケル箔を含む。しかしながら、アルミニウム、銅若しくは鋼、又はポリエチレンテレフタラート(PET)上のアルミニウムのような金属化プラスチックを含む金属化材料などの、適した金属をニッケルの代わりに使用できることを理解されたい。
【0041】
装置100のターゲットアセンブリ124は、ターゲット材料108を支持するように配置されるターゲット部106を含む。いくつかの例において、ターゲット部106は、スパッタ堆積中、ターゲット材料108を所定の位置に支持若しくは保持する、プレート又は他の支持構造を備える。ターゲット材料108は、基板116にスパッタ堆積を行う素となる材料である。つまり、ターゲット材料108は、スパッタ堆積により基板116上に堆積される材料であってもよいし、スパッタ堆積により基板116上に堆積される材料を含んでもよい。
【0042】
いくつかの例において、例えば、エネルギー貯蔵デバイスの製造のために、ターゲット材料108は、エネルギー貯蔵デバイスのカソード層である、リチウムイオンを貯蔵するのに適した材料、例えばコバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、又は多硫化アルカリ金属塩などであるか、あるいはこれらを含む(又はそれらの前駆体物質であるか、あるいはそれらの前駆体物質を含む)。加えて、又は代わりに、ターゲット材料108は、エネルギー貯蔵デバイスのアノード層、例えばリチウム金属、グラファイト、シリコン、又は酸化インジウムスズなどであるか、あるいはこれらを含む(又はそれらの前駆体物質であるか、あるいはそれらの前駆体物質を含む)。加えて、又は代わりに、ターゲット材料108は、エネルギー貯蔵デバイスの電解質層である、イオン電導性であるが電気絶縁体でもある材料、例えば窒化リン酸リチウム(LiPON)であるか、あるいはこれを含む(又はその前駆体物質であるか、あるいはその前駆体物質を含む)。例えば、ターゲット材料108は、例えばターゲット材料108の領域で窒素ガスとの反応を経て、基板116上にLiPONを堆積させるための前駆体物質としてのLiPOであるか、あるいはこれを含む。ある例において、ターゲット材料は、リチウム、コバルト、酸化リチウム及びコバルト酸リチウムのうち少なくとも一つを含む。例えば、基板上にコバルト酸リチウムを堆積させるために、ターゲット材料は、リチウム及びコバルト、リチウム酸化物及びコバルト、リチウム酸化物及びコバルト酸化物、リチウム-コバルト合金、コバルト酸リチウム、又はLiCoO2-xを含むことがあり、ここでxは、0.01以上1.99以下である。
【0043】
ターゲット部106及び基板ガイド118は、互いから離れて空間を空けており、それらの間に堆積領域114を画定する。堆積領域114は、使用中、ターゲット材料108から基板116上へのスパッタ堆積が起こる、基板ガイド118とターゲット部106間の面積又は体積とみなされ得る。
【0044】
それらが示されるいくつかの例において、装置100は、プラズマ源102とも呼ばれる、プラズマ生成配列102を備える。プラズマ生成配列102は、プラズマ112を発生させるように構成される。プラズマ源102は、誘導結合プラズマ源であり得、例えば、誘導結合プラズマ112を発生させるように配置される。
図1及び2に示されるプラズマ源102は、アンテナ102a、102bを備え、該アンテナ102a、102bを通じて、ハウジング(図示なし)内でプロセスガス又はスパッタガスから誘導結合プラズマ112を発生させるために、無線周波数電力供給システム(図示なし)により、適切な無線周波数(RF)電力が送られる。いくつかの例において、無線周波数電流を、一以上のアンテナ102a、102bを通じて、例えば、1MHzから1GHzの周波数;1MHzから100MHzの周波数;10MHzから40MHzの周波数;又は、いくつかの例では、おおよそ13.56MHz若しくはそれの倍数の周波数で送ることにより、プラズマ112が生成される。RF電力は、プラズマ112を生成するプロセスガス又はスパッタガスのイオン化を引き起こす。一以上のアンテナ102a、102bを通って送られるRF電力を調整することにより、堆積領域114内で、プラズマ112のプラズマ密度に作用することができる。それゆえ、プラズマ源102におけるRF電力の制御によって、スパッタ堆積プロセスを制御できる。これは、結果として、スパッタ堆積装置100の操作における柔軟性の向上を可能にする。
【0045】
図1や2などのいくつかの例において、プラズマ源102は、基板ガイド118から遠く離れて配置され、例えば、基板ガイド118から半径方向に離れている。それにもかかわらず、プラズマ源102により生成されるプラズマ112は、基板ガイド118とターゲット部106の間のスパッタ堆積領域114に向かって導かれ、その後、基板ガイド118とターゲット部106の間のスパッタ堆積領域114内に、少なくとも部分的に閉じ込められる。
【0046】
プラズマ源102の一以上のアンテナ102a、102bは、細長いアンテナであってもよく、いくつかの例においては、実質的に線形である。
図1及び2などのいくつかの例において、一以上のアンテナ102a、102bは、細長いアンテナであって、湾曲部材108の長手方向軸120(例えば、ドラム118の曲率半径の原点を通る、ドラム118の軸120)に実質的に平行な方向に延在している。一以上の細長いアンテナ102a、102bは、湾曲していてもよい。例えば、そのような湾曲した細長いアンテナ102a、102bは、湾曲部材118の曲面の曲率に追従し得る。場合によっては、一以上の湾曲した細長いアンテナ102a、102bは、湾曲部材118の長手方向軸120と実質的に垂直な平面内に伸び得る。これについては、そのような例を示す
図8を参照して、さらに説明する。
【0047】
図1及び2の例において、プラズマ源102は、誘導結合プラズマ112を生成するための2つのアンテナ102aと102bを備える。この例において、アンテナ102aと102bは、実質的に、互いに平行に伸びており、互いから横方向に配置される。以下でより詳細に説明するように、これは、2つのアンテナ102aと102b間のプラズマ112の細長い領域を正確に生成することを可能にし、結果として、生成されるプラズマ112を、少なくとも堆積領域114に、正確に閉じ込めることに役立つ。アンテナ120aと120bは、基板ガイド118と同様の長さであってもよく、その結果、基板ガイド118により導かれる基板116の幅と同様になり得る。細長いアンテナ102aと102bは、基板ガイド118の長さと一致する(それゆえ、基板116の幅と一致する)長さを有する領域にわたって生成される、プラズマ112を供給できるようにし、それゆえ、プラズマ112を、基板116の幅全体にわたって、均等に又は均一に利用可能にする。以下でより詳細に説明するように、これは、結果として、均等な又は均一なスパッタ堆積をもたらすことに役立つ。
【0048】
図1及び2の装置100の閉じ込め配列104は、一以上の磁性素子104a、104bを備える。使用中、基板116にターゲット材料108のスパッタ堆積をもたらすために、磁性素子104a、104bは、堆積領域114において、プラズマ112(この場合において、プラズマ生成配列102により生成されるプラズマを含む)を閉じ込めるための閉じ込め磁場を供給するように配置される。曲線経路Cの曲線周りにプラズマ112を閉じ込めるために、閉じ込め磁場は、少なくとも堆積領域114において、湾曲経路Cの曲線に実質的に追従するように配置される、磁力線により特徴付けられる。
【0049】
磁力線は、磁場の配置又は形状を特徴づけるために、或いは、描くために使用され得ることを理解されたい。同様に、磁性素子104a、104bにより供給される閉じ込め磁場は、湾曲経路Cの曲線に追従するように配置される磁力線により描かれ、或いは、特徴付けられることを理解されたい。また、原理上は、磁性素子104a、104bにより供給される全部又は全体の磁場は、湾曲経路Cの曲線に追従して配置されない磁力線により特徴づけられる部分を含んでもよいことを理解されたい。そうであるが、供給される閉じ込め磁場、すなわち、堆積領域114にプラズマを閉じ込める磁性素子104a、104bにより供給される磁場の全体又は全部の一部は、湾曲経路Cの曲線に追従する磁力線により特徴付けられる。
【0050】
ある例において、湾曲経路Cの曲線を引き合いに出す場合、該曲線は、経路が湾曲している程度として理解してよく、該経路に沿って基板ガイド118が基板116を運搬する。湾曲部材118、例えばドラム又はローラーなどは、湾曲経路Cに沿って基板116を運搬する。そのような例において、湾曲経路Cの曲線は、基板116を運搬する湾曲部材118の曲面が湾曲している程度に由来し、例えば、平面から逸脱する。言い換えると、湾曲経路Cの曲線は、湾曲部材118が基板116を追従させる湾曲経路Cが湾曲している程度として理解してもよい。実質的に湾曲経路Cの曲線に追従することは、湾曲経路Cの湾曲形状と実質的に一致すること又は再現することとして理解してもよい。例えば、磁力線は、湾曲経路Cと共通の曲率中心を有するが、湾曲経路Cとは異なる曲率半径を有する(図示では大きい)、湾曲経路に追従してもよい。例えば、磁力線は、半径方向にずれるが、基板116の湾曲経路Cと実質的に平行である湾曲経路に追従してもよい。例において、磁力線は、半径方向にずれるが、湾曲部材118の曲面に実質的に平行である湾曲経路に追従する。例えば、
図2において閉じ込め磁場を描く磁力線は、少なくとも堆積領域114において、湾曲経路に追従し、すなわち、半径方向にずれるが、湾曲経路Cに実質的に平行であり、それゆえ、湾曲経路Cの曲線に実質的に追従する。
【0051】
閉じ込め磁場を描く磁力線は、湾曲経路Cの本質的な又はかなりのセクター又は部分の周りで、湾曲経路Cの曲線に追従するように配置され得る。例えば、磁力線は、湾曲経路Cの曲線全体で又は基板116が湾曲部材118により導かれる、湾曲経路Cの概念的なセクターの本質的部分にわたって、湾曲経路Cの曲線に追従してもよい。例において、湾曲経路Cは、概念的な円の周の一部を表し、閉じ込め磁場を特徴づける磁力線は、概念的な円の円周の少なくとも約1/16、又は概念的な円の円周の少なくとも約1/8、又は概念的な円の円周の少なくとも約1/4、又は概念的な円の円周の少なくとも約1/2の周りで、湾曲経路Cの曲線に追従するように配置される。
【0052】
図1及び2などの、基板ガイド118が湾曲部材又はドラムにより供給される例において、閉じ込め磁場を特徴づける磁力線は、例えば、使用中、基板116のウェブを運搬し又はこれと接触する湾曲部材の概念的なセクターの全体又は本質的部分にわたって、湾曲部材の本質的な又はかなりのセクター又は部分の周りで、湾曲部材の曲線に追従するように配置される。例えば、湾曲部材は、実質的に円筒状であり、閉じ込め磁場を特徴づける磁力線は、湾曲部材の円周の少なくとも約1/16、又は少なくとも約1/8、又は少なくとも約1/4、又は少なくとも約1/2の周りで湾曲部材の曲線に追従するように配置される。
図2において、閉じ込め磁場を特徴づける磁力線は、この例において、湾曲部材(この場合、ドラムの表面により形成される)を含む基板ガイド118の円周の少なくとも約1/4の周りで湾曲経路に追従する。
【0053】
磁力線が、磁場の配置又は形状を描くために使用され得ることを理解されたい。磁性素子例104a、104b、104cにより供給される磁場例を、概略的に
図2及び4で示しており、磁力線(慣習通り矢印により示されている)は、使用中、供給される磁場を描写するために使用される。すでに述べたように、実質的に湾曲部材の曲率に従わない磁力線もあるが、閉じ込め磁場、すなわち、プラズマ112を堆積領域114に閉じ込める磁場は、湾曲経路Cの曲線に追従するように配置される磁力線により特徴づけられる。
図2及び4で最もよく分かるように、閉じ込め磁場を特徴づける磁力線は、少なくとも堆積領域114内において、湾曲経路Cの曲線に実質的に追従するように、それぞれ湾曲している。
【0054】
基板116の湾曲経路Cの曲線に追従するように配置される磁力線は、生成されるプラズマ112を堆積領域114内で、湾曲経路Cの曲線の周りに閉じ込める。生成されるプラズマ112が磁力線に追従する傾向があるため、これが生じる。例えば、閉じ込め磁場内の、初速度を持つプラズマのイオンは、磁力線の周りでイオンに周期的な運動をさせるローレンツ力を受ける。初動が、磁場と厳密に垂直でないと、イオンは、磁力線を中心とする螺旋経路をたどる。したがって、そのようなイオンを含むプラズマは、磁力線に従う傾向があり、それゆえ、それによって画定される経路に閉じ込められる。その結果、磁力線は、湾曲経路Cの曲線に実質的に追従するように配置されるため、プラズマ112は、実質的に湾曲経路Cの曲線に実質的に追従するように閉じ込められ、それゆえ、湾曲経路Cの曲線周りで、堆積領域114に閉じ込められる。
【0055】
湾曲部材118の少なくとも一部の曲面の曲率に実質的に追従する、例えば湾曲経路Cの曲線に追従する、生成したプラズマ112を閉じ込めることにより、少なくとも湾曲部材118の曲面周りの方向で、例えば湾曲経路Cの曲線周りの方向で、基板116におけるプラズマ密度のより均一な分布を可能にする。これは、結果として、基板116上に湾曲部材118の周りの方向、例えば湾曲経路Cの方向で、より均一にスパッタ堆積することを可能にする。それゆえ、結果として、スパッタ堆積は、より一様に実施され得る。これは、例えば、生成される磁場を描く磁力線が基板の中に及び外に詰まったループを描き、それゆえ、基板で均一なプラズマ密度の分布とならない、マグネトロンタイプのスパッタ堆積装置に比べ、処理後の基板の一様性を向上させることができ、品質管理の必要性を減らすことができる。
【0056】
加えて、又は代わりに、湾曲部材118の少なくとも一部の曲面の曲率に実質的に従う、例えば湾曲経路Cの曲線に追従する、生成したプラズマ112を閉じ込めることにより、プラズマ112に曝される基板の面積を増加させることができ、それゆえ、スパッタ堆積がもたらされ得る面積を増加させることができる。これにより、リールツーリールタイプの装置を通して、所与の堆積度のために、より速い速度で基板116を供給することが可能になり、それゆえ、より効率的なスパッタ堆積ができる。
【0057】
図1及び2などのいくつかの例において、磁石配列(又は「磁気閉じ込め配列」)104は、磁場を供給するように配置される、少なくとも2つの磁性素子104a、104bを備える。場合によっては、少なくとも2つの磁性素子104a、104bは、少なくとも2つの磁性素子104a、104b間で画定される比較的強い磁場強度の領域が、シート状になるように配置される。そのような場合の磁石配列104は、シート状、すなわち、プラズマ112の奥行き(又は厚さ)が、実質的にそれ自体の長さ又は幅より小さくなる形状で、プラズマ112を閉じ込めるように構成される。プラズマ112のシートの厚さは、シートの長さと幅に沿って実質的に一定であり得る。プラズマ112のシートの密度は、それ自体の幅及び長さ方向のうち一つ又はその両方で実質的に均一であり得る。
【0058】
いくつかの例において、少なくとも2つの磁性素子104a、104b間で供給される比較的強い磁場強度の領域は、例えば湾曲経路Cの曲線に実質的に追従する、湾曲部材118の曲面の少なくとも一部の曲率に実質的に従う。
【0059】
図1及び2で概略的に示している例において、二つの磁性素子104a、104bは、ドラム118を挟んで互いに逆側に位置しており、(
図1が意図する)ドラム118の最下部より上に配置される。二つの磁性素子104a、104bは、湾曲部材118の両側において、湾曲部材118の曲面の少なくとも一部の曲率に従うように、例えば湾曲経路Cの曲線に追従するように、プラズマ112を閉じ込める。
図1及び2において、プラズマ112は、基板116が湾曲部材118に供給される、供給側、及び湾曲部材118から基板118が排出される、排出側で、湾曲経路Cの曲線に追従する。少なくとも二つの磁性素子を有することにより、スパッタ堆積領域114で、プラズマ112に曝される基板116の面積を(さらに)増加させ、それゆえ、スパッタ堆積がもたらされ得る面積を増加させる。これにより、リールツーリールタイプの装置を通して、所与の堆積度のために、より速い(より一層速い)速度で基板116を供給することが可能になり、それゆえ、例えば、より効率的なスパッタ堆積ができる。
【0060】
いくつかの例において、一以上の磁性素子104a、104bは、電磁石104a、104bである。装置100は、例えば一以上の電磁石104a、104bにより供給される磁場強度を制御するためのコントローラー(図示なし)を備える場合がある。これにより、閉じ込め磁場を描く磁力線の配置を制御できる。結果として、スパッタ堆積領域114内の基板116及び/又はターゲット材料108で、プラズマ密度を調整でき、それゆえ、スパッタ堆積の制御を向上させることができる。これは、結果として、スパッタ堆積装置100の操作の柔軟性を向上させる。
【0061】
いくつかの例において、一以上の磁性素子104a、104bは、ソレノイド104a、104bにより提供される。例において、ソレノイド104a、104bは、断面が細長い。例えば、ソレノイド104a、104bは、湾曲部材118、例えば、ローラー118の回転軸に実質的に平行な方向の断面が細長くてもよい。各ソレノイド104a、104bは、使用中、プラズマ112が通過する(閉じ込められる)開口部を画定し得る。
図1及び2に概略的に示される例のように、三つのソレノイド104a、104bがあり、各ソレノイド104a、104bは、例えば湾曲経路Cの曲線に実質的に追従するために、ソレノイド104a、104b間で比較的強い磁場強度の領域が供給されるように、曲げられる。そのような方法で、
図1に示されるように、生成されるプラズマ112は、第一のソレノイド104aを通過し、(
図1が意図する)ドラム118の下で、堆積領域114を通過し、上昇して、第二のソレノイド104bを通過する。
【0062】
図1及び2において、二つの磁性素子104a、104bのみ示されているが、さらなる磁性素子(図示なし)、例えば、さらに前記ソレノイドを、プラズマ112の経路に沿って配置してもよいことを理解されたい。これにより、閉じ込め磁場を強化でき、プラズマを正確に閉じ込めることができる。加えて、又は代わりに、これは、閉じ込め磁場の制御の自由度をより大きくする。
【0063】
図1及び2などのいくつかの例において、磁石配列104、例えば一以上の磁性素子104a、104bを含む磁石配列104は、プラズマ112をシート状に閉じ込めるように構成される。例えば、磁石配列104は、プラズマ112をシート状に閉じ込める磁場を供給するように配置される。いくつかの例において、磁石配列104は、例えば少なくとも堆積領域114内で、実質的に均一な密度を有する、プラズマ112をシート状に閉じ込めるように構成される。ある場合では、磁石配列104は、湾曲シート状にプラズマ112を閉じ込めるように構成される。
【0064】
例えば、
図4及び5に示されるように、いくつかの例において、一以上のソレノイド104a、104bは、使用中、その内部で生成される磁力線に実質的に垂直な方向に細長い。例えば、
図3から5で最もよく分かるように、ソレノイド104a、104bは、使用中、プラズマ112が閉じ込められる(使用中にプラズマ112が通る)開口部をそれぞれ有しており、ここで、開口部は、湾曲部材118の長手方向軸120に実質的に平行な方向に細長い。
図3及び4で最もよく分かるように、細長いアンテナ102a、102bは、ソレノイド104a、104bに平行に延在しており、ソレノイド104a、104bと一直線に並んでいる。上記で述べたように、プラズマ112は、細長いアンテナ102a、102bの長さに沿って生成され得、細長いソレノイド104aは、プラズマ112を細長いアンテナ102a、102bから離れる方向に閉じ込め、例えば、導き、及び細長いソレノイド104aを通ってプラズマ112を閉じ込め、例えば、導く。
【0065】
この例におけるプラズマ112は、細長いアンテナ102a、102bから細長いソレノイド104aまで、シート状に閉じ込められ、例えば、導かれる。つまり、プラズマ112の奥行き(又は厚さ)は、実質的にその長さ又は幅より小さい。プラズマ112のシートの厚さは、シートの長さ及び幅に沿って実質的に一定であってもよい。プラズマ112のシートの密度は、その幅方向及び長さ方向のうち一方向、若しくはその両方向で実質的に均一であってもよい。プラズマ112は、シート状であり、この場合において、堆積領域114の中で、例えば湾曲経路Cの曲線に追従する湾曲部材118の曲面の曲率に実質的に従うように、湾曲部材118の周りで、ソレノイド104a、104bにより供給される磁場により閉じ込められる。この例において、プラズマ112は、湾曲シート状に閉じ込められる。プラズマ112のそのような湾曲シートの厚さは、湾曲シートの長さ及び幅に沿って実質的に一定であってもよい。湾曲シート状のプラズマ112は、実質的に均一な密度を有してもよく、例えば湾曲シート状のプラズマ112の密度は、その長さ及び幅のうち一つ、若しくはその両方で実質的に均一である。
【0066】
湾曲シート状のプラズマを閉じ込めることにより、湾曲部材118により運搬される基板116のプラズマ112に曝される領域を増加でき、それゆえ、スパッタ堆積がもたらされ得る領域を増加できる。これは、リールツーリールタイプの装置を通して、所与の堆積度のために、より速い(より一層速い)速度で基板116を提供することを可能にし、それゆえ、例えば、より効率的なスパッタ堆積を可能にする。
【0067】
(例えば、少なくともスパッタ堆積領域114において)湾曲シート状のプラズマ112、例えば実質的に均一な密度を有する湾曲シート状のプラズマ112を閉じ込めることは、代わりに又は加えて、例えば、湾曲部材118の曲線周りの方向、及び湾曲部材118の長さ方向の両方において、基板116におけるプラズマ密度のより均一な分布を可能にする。これは、結果として、例えば湾曲部材118の表面周りの方向及び基板116の幅にわたって、基板116により均一なスパッタ堆積を可能にする。したがって、結果として、スパッタ堆積を、より一様に行うことができる。それゆえ、例えば、生成される磁場を特徴づける磁力線が基板の中へ及び外へ詰まったループを描き、それゆえ、基板で均一なプラズマ密度の分布とならない、マグネトロンタイプのスパッタ堆積装置に比べ、処理後の基板の一様性を向上させることができ、品質管理の必要性を減らすことができる。
【0068】
いくつかの例において、少なくとも堆積領域114内で、閉じ込められるプラズマ112は、高密度プラズマである。例えば、(湾曲シート状又は他の形状の)閉じ込められるプラズマ112は、少なくとも堆積領域114内で、1011cm-3以上の密度である。堆積領域114の高密度のプラズマ112により、効果的な及び/又は高速のスパッタ堆積が可能となる。
【0069】
図1及び2のターゲットアセンブリ124は、ターゲット材料108に電気バイアスを印加するためのバイアス手段122も含む。電気バイアスは、例えば、ターゲット材料108に印加される電圧をいう。
図1及び2の例において、バイアス手段122は、直流(DC)電圧の電気バイアスを、ターゲット材料108に印加するように構成される。DC電圧は、ゼロより小さい値を持つ、負極性電圧であってもよい。この場合のバイアス手段122は、第一電位と第二電位の差が、ターゲット材料108に印加される電圧と一致するような、第一電位の第一端子(図示なし)及び異なる電位である第二電位の第二端子(図示なし)を有する。この場合において、電圧をターゲット材料108に印加するために、第一端子は、ターゲット材料108に電気的に接続され、第二端子は、アース端子に電気的に接続される。
【0070】
電気バイアスをターゲット材料108に印加することにより、プラズマ112のイオンは、ターゲット材料108に向かって引き寄せられる。これは、プラズマ112とターゲット材料108間の相互作用を増加させ、プラズマ112によりターゲット材料の粒子が放出される割合を増加させることができる。ターゲット材料108の粒子の放出割合の増加は、通常、これらの粒子が基板116に堆積される速度を増加させ、ターゲット材料108のスパッタ堆積の速度を増加させる。プラズマが、基板116が導かれる湾曲経路の曲線周りに構成される、本明細書の例による装置100で、電気バイアスをターゲット材料108に印加することにより、基板116における均一性を向上させつつ、コンパクトで、効率的な方法により、ターゲット材料を堆積させる。
【0071】
ターゲット材料108に印加される電気バイアスを制御することにより、ターゲット材料108のスパッタ堆積が起こる速度を制御でき、基板116上にターゲット材料108の特定のパターンを堆積させるように使用できる。
【0072】
示している例において、基板116上にターゲット材料108の特定のパターンを作り出すために、それぞれ異なる厚さのターゲット材料108のパッチを基板116上に堆積させることが望ましい。これは、基板116の第一の部分に、ターゲット材料108の第一のパッチを第一の厚さで堆積させるために、基板116の第一の部分が堆積領域114を通じて運搬される第一の時間に、第一強度の電気バイアスを印加することにより、装置100を使用して容易に実行できる。続いて、基板116の第二の部分が堆積領域114を通じて運搬される第二の時間に、第一強度より小さい第二強度の電気バイアスを印加する。これにより、第一の厚さより薄い第二の厚さでターゲット材料108の第二のパッチを、基板116の第二の部分に堆積させる。これは、第二の時間(ターゲット材料108の第二のパッチのスパッタ堆積の時間)に電気バイアスの強度を小さくすることに起因し、この例において、スパッタ堆積の速度を遅くする。これは、単なる一例だが、電気バイアスの制御が、簡易かつ効率的に基板116上にターゲット材料108の特定のパターンを堆積させる、様々な、異なる方法で実行され得ることを理解されたい。
【0073】
バイアス材料122によりターゲット材料108に印加される電気バイアスの制御は、さらに又は代わりに、基板116上に堆積されるターゲット材料108の結晶化度を制御するために使用できる。材料の結晶化度とは、一般的に、材料の構造規則性、例えば、材料の原子や分子が、規則的に、すなわち周期的パターンで配置されている程度を指す。結晶化度は、X線結晶構造解析技術又はラマン分光などの、様々な手法を使用して測定され得る。結晶化度は、通常、X線回折を使用して測定され得る結晶子サイズに依存し、また、結晶子サイズにより定義される場合もある。結晶子サイズは、シェラーの式を使用して、X線回折パターンから計算できる。
以下のシェラーの式により、材料の結晶子サイズτが得られる。
【数1】
ここで、τは、材料の規則的な(結晶性の)ドメインの平均サイズとされ、材料の粒子サイズ以下になり得る結晶子サイズ、Kは無次元の形状係数、λはX線の波長、βはラジアンを単位とする、(装置の回折線幅を差し引いた後の)X線回折パターンにおけるピークの回折線幅の広がり、θはブラッグ角である。
【0074】
場合によっては、バイアス手段122は、第一電力値で電気バイアスをターゲット材料108に印加するように構成され、プラズマ生成配列は、第二電力値でプラズマを発生させるように構成される。第一電力値に対する第二電力値の比率が1以下であると、基板116上に堆積されるターゲット材料108が、例えば、X線回折又はラマン分光を使用して測定すると、構造規則性が比較的低い又は構造規則性がない、アモルファス構造を有する傾向がある。材料が、材料の原子が結晶格子を形成しないような、非結晶構造であるアモルファス構造を有すると考えられ得る。しかしながら、第一電力値に対する第二電力値の比率が、1より大きい場合、通常、基板116に堆積されるターゲット材料108は、少なくとも部分的に規則正しい構造を有し、また、堆積される材料の原子が材料の少なくとも一つの領域及びある場合には、材料全体の至るところで結晶格子を形成する、結晶構造を有し得る。これを基準として、第一電力値に対する第二電力値の比率を適切に制御することにより、基板116に堆積されるターゲット材料108の構造を容易に制御できる。
【0075】
例えば、この比率を1より大きい値を有するように制御することにより、結晶構造を有するターゲット材料108を、アニーリングなどのポストプロセスステップを経ることなく、基板116に堆積させることができる。これは、結晶材料の堆積を容易にする。場合によっては、堆積されるターゲット材料108の構造は、ターゲット材料108が堆積される基板116に依存しない。これらの場合には、少なくとも部分的に規則正しく、及び例えば結晶性である、ターゲット材料108は、1より大きい値の比率にすることにより、基板116に関係なく堆積される。それゆえ、装置100は、様々なタイプの基板上に、規則正しい構造を有するターゲット材料108を堆積させることに対して柔軟性をもたらし、様々な、異なる目的への柔軟性をもたらす。
【0076】
第一電力値に対する第二電力値の比率を増加させると、基板116上に堆積されるターゲット材料108の構造の規則性が向上する傾向がある。それゆえ、この比率を制御することにより、簡単な方法で、基板116上に堆積されるターゲット材料108の構造を、正確に制御できる。
【0077】
堆積されるターゲット材料108の少なくとも一部及びある場合には、堆積されるターゲット材料108の全体は、六方晶系構造を有し得る。堆積されるターゲット材料108の結晶構造は、LiCoO
2であり得、また、
に属するものであり得る。
の構造は、層状構造であり、及び層状酸化物構造であり得、例えば、ターゲット材料は、LiCoO
2である。この構造は、(LiCoO
2のFd3m空間群に属する)低エネルギー構造と比較して、使用可能容量が大きいことや、充電及び放電が高速である等の多数の利点がある。
は、可逆性が高く、リチウムのインターカレーションとデインターカレーションにおいて構造変化が小さいため、典型的な電池用途において良い性能を有すると考えられる。したがって、堆積されるターゲット材料108として
に属する結晶性LiCoO
2を堆積させることは、固体電池用途に有利に働く。しかし、これは単なる一例であり、他の例、例えば他の用途については、堆積されるターゲット材料108が、異なる化学構造及び/又は結晶構造を有してもよい。
【0078】
少なくとも部分的に規則正しい構造で、基板116上にターゲット材料108を堆積させる間、結晶構造を持つ結晶が、基板の表面から実質的にエピタキシャルに成長する場合がある。エピタキシャル成長は、一般に、材料の結晶構造に対して明確な配向を持って新しい結晶層が形成される、結晶成長の一つを指す。実質的にエピタキシャル成長は、例えば、新しい層の少なくとも一つの結晶領域の大部分(例えば、少なくとも70%、80%、90%若しくはそれより多く)が、材料が堆積される基板116に対して同一の配向を有するような、それ自体が少なくとも一つの結晶領域を含む、新しい層の堆積を指す。エピタキシャル成長は、より簡単に、リチウムイオンをインターカレーション及びデインターカレーションさせることを可能にする。これに基づいて、リチウムイオンのインターカレーション及びデインターカレーションを向上させるために、本明細書で説明される装置100を使用して、リチウムを含むターゲット材料108を、基板116上に実質的にエピタキシャルに堆積させられる。これにより、装置100をそのようなターゲット材料の堆積のために、例えば、固体電池の製造のために使用できる。
【0079】
基板116に堆積される、少なくとも部分的に規則正しいターゲット材料の結晶は、(101)面及び(110)面で並べられ得る。(101)面及び(110)面は、ターゲット材料108の結晶構造の格子面であり、当業者が理解するであろう、ミラー指数で表される。例えば、(101)面と(110)面は、実質的に基板と平行であり、例えば製造公差又は測定公差内で平行である。そのような構造を持つ基板116にターゲット材料108を堆積させることは、例えば、堆積されるターゲット材料108に、様々な、異なる用途に適した特性をもたらす。
【0080】
第一電力値に対する第二電力値の比率が、3.5より小さい場合もある。例えば、この比率は、1から3.5の範囲内にあり得る。そのような比率であると、ターゲット材料108は、基板116上に、結晶構造などの少なくとも部分的に規則正しい構造を持って、堆積される。このような場合において、ターゲット材料108の少なくとも部分的に規則正しい構造が、アニーリングなどのさらなるプロセスを必要とせずに、ターゲット材料108のスパッタ堆積により得られる。それゆえ、そのような構造を有するターゲット材料108を、他の方法より容易に及び/又は効率的に堆積できる。
【0081】
いくつかの例において、第一電力値は、平方センチメートル当たり少なくとも1ワット(1W cm-2)である。ある場合、例えば、ターゲット材料108がセラミック又は酸化物を含む場合においては、第一電力値は、平方センチメートル当たり最大15ワット(15W cm-2)である。他の場合で、第一電力値は、平方センチメートル当たり最大70ワット(70W cm-2)であり、例えば、リチウム、コバルト、又はそれらの合金などの金属ターゲット材料108の場合である。さらなる例として、例えば第一電力値は、平方センチメートル当たり最大100ワット(100W cm-2)であり、例えば、他のターゲット材料108の場合である。
【0082】
プラズマ中の実際の電力は、プラズマを発生させるために使用される電力より小さくなり得る(ここで、プラズマを発生させるために使用される電力は、本明細書の第二電力値を指す)。これに関して、(プラズマ中の実際の電力を、プラズマを発生させるために使用される電力で割ったものに、100をかけたものとして定義される)プラズマの生成効率は、50%から85%であり得、通常、約50%である。
【0083】
(スパッタ堆積を実行するために装置100に供給される電気エネルギーが、誤差の範囲内で、装置100により消費されるエネルギーと同じである)スパッタ堆積の定常状態での実行中に、(PP*EPT)/(PT*EPP)比は、1よりも大きいことがあり、任意で1から4の範囲内で、可能であれば1から3の範囲内で、ある実施形態では、1から2の間である。この比において、PP=プラズマエネルギーの平均使用量(ワット)、PT=ターゲットへのバイアスに関連する電力(本明細書で第一電力値を指す)、EPP=プラズマの生成効率の指標を表す比(<1)、EPT=ターゲット材料への電気エネルギーの供給効率の指標を表す比(<1)である。プラズマの生成効率であるEPPは、プラズマ中の実際の電力を、プラズマを発生させるために使用される電力で割ったものとして計算され得る。ターゲットへの電気エネルギーの供給効率であるEPTは、実際に送られた電力を、使用された電力で割ったものとして計算され得る。典型的な設定では、EPT=1と見なしてよい。好ましくは、EPT>0.9である。
【0084】
スパッタ堆積の定常状態での実行中に、標準化された電力比パラメーターである、PRPNは、1より大きいことがあり、任意で1から4の範囲で、ある場合には1から3の範囲で、ある実施形態では1から2の間である(ここで、PRPN=N*PP/PTであり、Nは正規化因子であり、1.2<N<2を満たしたり、単にN=1.7であったりする)。スパッタ堆積の定常状態での実行中に、電力比パラメーターである、PRP(ここで、PRP=PP/PT)は、0.5より大きいことがあり、任意で0.5から2の範囲で、ある場合には0.6から1.5の範囲で、ある実施形態では0.6から1の間である。これらPRPN及びPRPの値は、基板116上にターゲット材料108の効果的で効率的なスパッタ堆積をもたらす。
【0085】
図1から5に示されている例では、ターゲット部106及びそれにより支持されるターゲット材料108は、実質的に平面である。しかし、(以下でより詳細に説明するような)いくつかの例において、ターゲット部の少なくとも一部分が、ターゲット部の他の一部分の支持面に対して鈍角を形成する支持面を画定するように、ターゲット部が配置されてもよいし、配置されるように構成可能であってもよい。例えば、ターゲット部は、実質的に曲げられていてもよい。例えば、ターゲット部は、湾曲経路Cの曲線に実質的に追従するように配置されてもよい。
【0086】
図6は、そのような装置例600を示す。装置600の示されている部品の多くは、
図1から5で示され、上記で説明した装置100の部品と同一であり、再度説明はしない。類似した特徴は、類似の引用符号で与えられ、
図1から5で説明した例の任意の特徴を
図6で示される例に適用し得ることを理解されたい。しかし、
図6で示される例において、ターゲットアセンブリ124のターゲット部606は、実質的に湾曲している。それに従い、この例における、ターゲット部606により支持されるターゲット材料608は、実質的に湾曲している。この場合において、湾曲したターゲット部606の任意の部分は、湾曲方向に沿って、湾曲したターゲット部606の他の任意の部分と、鈍角を形成する。いくつかの例において、ターゲット部606の異なる部分は、例えば、基板116のウェブに所望の堆積の配置又は組成をもたらすために、異なるターゲット材料を支持してもよい。
【0087】
図6の例において、湾曲したターゲット部606は、湾曲経路Cの曲線に実質的に追従する。この方法において、湾曲したターゲット部606は、湾曲経路Cの湾曲形状に実質的に一致し、及び湾曲経路Cの湾曲形状を再現する。
図6で、湾曲したターゲット部606は、湾曲経路から半径方向にずれるが、湾曲経路に実質的に平行な曲線を有する。この場合において、湾曲したターゲット部606は、湾曲経路Cと共通の曲率中心を有する曲線を有するが、湾曲経路Cとは異なる(この例では大きい)曲率半径を有する。これに応じて、湾曲したターゲット部606は、結果として、使用中、湾曲部材118の周りに閉じ込められる湾曲したプラズマ112の曲線に実質的に追従する。言い換えれば、
図6のようないくつかの例において、プラズマ112は、閉じ込め配列の磁性素子104a、104bにより、基板116の経路Cとターゲット部606の間に位置するように閉じ込められ、湾曲経路C及び湾曲したターゲット部606の両方の曲線に実質的に追従し得る。
【0088】
図1から5に示される装置100のターゲット部108と同様に、
図6のターゲット部例606(及びそれに応じて、それにより支持されるターゲット材料608)は、湾曲部材118(例えば、ドラム118の長手方向軸120に平行な方向)の全長に実質的にわたって延在し得ることを理解されたい。これは、ドラム118により運搬される基板116の、ターゲット材料608が堆積され得る表面積を最大化する。
【0089】
上述のとおり、
図6のプラズマ112は、湾曲経路Cと湾曲ターゲット部606の両方の曲線に実質的に追従するように閉じ込められる。この例において、湾曲経路Cと湾曲したターゲット部606間の面積又は体積は、それに応じて、湾曲部材118周りで湾曲している。したがって、
図6の堆積領域614は、使用中、湾曲部材118により運搬される基板116にターゲット材料608のスパッタ堆積が起こる、湾曲した体積を表す。これにより、常時、湾曲部材118により運搬される基板116の堆積領域614にある表面積を増加させることができる。これは、結果として、使用中、ターゲット材料608が堆積され得る基板116の表面積を増加させることができる。これは、ターゲット部606の空間的な取り付け面積を実質的に増やさず、かつ、湾曲部材118の大きさを変えることなく、結果として、スパッタ堆積がもたらされ得る面積を増加させることができる。これにより、例えば、リールツーリールタイプの装置を通して、所与の堆積度のために、より速い(より一層速い)速度で基板116のウェブを供給することが可能になり、それゆえ、より効率的なスパッタ堆積が可能になるだけでなく、空間効率の高い方法で行うことが可能になる。
【0090】
図7は、装置例700を示す。装置700の示されている部品の多くは、
図1から6で示され、上記で説明した装置100、700の部品と同一であり、再度説明はしない。類似の特徴は、類似の引用符号で与えられ、
図1から6に関して説明した例の任意の特徴を
図7に示される例に適用し得ることを理解されたい。しかし、
図7で示される例において、ターゲット部706の少なくとも一つの部分706aが、ターゲット部706の他の部分706bの表面に対して鈍角を形成する表面を画定するように、ターゲットアセンブリ124のターゲット部706が配置され、又は配置されるように構成可能である。
【0091】
いくつかの例において、ターゲット部706の第一の部分706aと、例えば、隣接した、ターゲット部706の第二の部分706bとの成す角が、鈍角となるように取り付けられる。該鈍角は、第一の部分706aと第二の部分706bが共に湾曲経路Cの曲線に近似するように配置されるように、選択され得る。これは単なる一例であるが、
図7において、ターゲット部706は、夫々が隣接する部分と鈍角を成す、三つの(
図7に示されるように、実質的に平面の)部分706a、706b、706cから成る。第一の部分706aは、湾曲経路Cの供給側に向いて配置され、第二の部分706bは、湾曲経路Cの中心部に向いて配置され、第三の部分706cは、湾曲経路Cの排出側に向いて配置される。三つの部分706a、706b、706cは、共に湾曲経路Cの曲線に近似するように、配置される。それゆえ、堆積領域714は、使用中、基板116にターゲット材料708a、708b、708cのスパッタ堆積が起こる、湾曲した体積に近似する。それにより、常時、堆積領域714に存在する基板116のウェブの表面積の増加量が増える。これにより、例えば、ターゲット部706の空間的な取り付け面積を実質的に増やすことなく、かつ、湾曲部材118の大きさを変えることなく、スパッタ堆積がもたらされ得る面積を増加させることができる。
【0092】
いくつかの例において、ターゲット部706の第一の部分706aと、例えば、隣接した、ターゲット部706の第二の部分706bとの成す角は、設定で変えられる。例えば、第一の部分706aと第二の部分706bは、ヒンジ素子724又は第一の部分706aと第二の部分706b間の角度を変更できるような他の部品で、機械的に連結してもよい。同様に、第二の部分706bと第三の部分706cも、ヒンジ素子726又は第二の部分706bと第三の部分706c間の角度を変更できるような他の部品で、機械的に連結してもよい。第二の部分706bに対して第一の部分706a及び/又は第三の部分706cが動くように、すなわち、第二の部分706bに対する第一の部分706a及び/又は第三の部分706cの成す角度が変わるように、アクチュエータ及び適切なコントローラー(図示なし)を設けてもよい。これにより、ターゲット部の第一の部分706a又は第三の部分706cのターゲット材料708a、708cが受けるプラズマ密度の制御が可能になり、それゆえ、使用中、堆積速度の制御が可能になる。
【0093】
代わりに又は加えて、プラズマ112の曲率を変更し、それにより、ターゲット部の第一の部分706a、第二の部分706b、又は第三の部分706cのターゲット材料708a、708b、708cが受けるプラズマの密度を制御するコントローラーにより、磁性素子104a、104bにより供給される閉じ込め磁場を制御してもよく、これにより、使用中、堆積速度の制御が可能になる。
【0094】
いくつかの例において、ターゲット部700の一部分706a、706b、706cで供給されるターゲット材料は、ターゲット部の他の部分706a、706b、706cで供給されるターゲット材料と異なる。これにより、基板116のウェブにスパッタ堆積されるターゲット材料を所望の配置又は組成にすることができる。例えば、第一の部分706a又は第三の部分706cが第二の部分706bと成す角度を制御することにより、及び/又は磁性素子104a、104bの制御で閉じ込められるプラズマの曲率を制御することにより、一以上のターゲット部706a、706b、706cが受けるプラズマ密度を制御することで、基板116のウェブ上にスパッタ堆積されるターゲット材料のタイプ又は組成を制御することが可能になる。これにより、柔軟なスパッタ堆積が可能になる。
【0095】
図7の例において、バイアス手段122a、122b、122cは、電気バイアスを複数のターゲット材料708a、708b、708cの一以上の各ターゲット材料に独立に印加するように構成される。
図7においては、各ターゲット材料708a、708b、708cに対して、それぞれバイアス手段122a、122b、122cがある。例えば、各バイアス手段122a、122b、122cは、別個のDC電圧源であってもよい。他の場合においては、単一のバイアス手段が、電気バイアスを複数のターゲット材料に印加するように構成されるが、各ターゲット材料に印加される電気バイアスを独立して制御するように構成される。
【0096】
いくつかの例において、バイアス手段122a、122b、122cによって各ターゲット材料708a、708b、708cに印加される電気バイアスを制御することにより、各ターゲット材料708a、708b、708cの比率も独立して制御可能である。これにより、放出されるターゲット材料708a、708b、708cのうち一つの量を他のものより多くすることが可能である。これは、装置100を、基板116上に各ターゲット材料708a、708b、708cをそれぞれ異なる割合で堆積させるように使用できるようにするので、装置100の柔軟性を向上させる。例えば、第二のバイアス手段及び第三のバイアス手段122b、122cを使用して印加される電気バイアスの強度より、第一のバイアス手段122aを使用して印加される電気バイアスの強度を大きくすることにより、第二のターゲット材料708b及び第三のターゲット材料708cより多い量の第一のターゲット材料708aを基板上116上に堆積させられる。
【0097】
バイアス手段122a、122b、122cにより印加される電気バイアスは、この例において、経時的に制御可能である。これは、装置600を、ターゲット材料708a、708b、708cを異なる組み合わせで、経時的に堆積させるために使用できるようにするので、装置600の柔軟性がさらに増大する。さらに、各ターゲット材料708a、708b、708cに印加される電気バイアスを独立して制御することに起因して、結果として、基板116上に堆積されるターゲット材料708a、708b、708cのパターンを、制御できる。これにより、装置600を、簡単で且つ効率的な方法で、基板116上に所望のパターンを堆積させるように使用することができる。
【0098】
図1から7に示される例において、少なくとも堆積領域114において、湾曲経路Cの曲線に実質的に追従するように、閉じ込め磁場を特徴づける磁力線は、それぞれ湾曲している。しかし、これは、必ずしもそうである必要はなく、他の配置では、閉じ込め磁場は、湾曲経路Cの曲線の周りにプラズマ112を閉じ込めるために、少なくとも堆積領域114において、湾曲経路Cの曲線に実質的に追従するように配置される磁力線により特徴づけられる。例えば、閉じ込め磁場を特徴づける磁力線が、少なくとも堆積領域内で、湾曲経路Cの曲線に実質的に追従するように、各磁力線に対して垂直に延び且つ磁力線をつなげる仮想線が曲げられるように、配置される場合がある。
【0099】
図8は、そのような磁場を有する装置800の例を示す。装置800の示されている部品の多くは、
図1から7で示され、上記で説明した装置100、600、700の部品と同一であり、再度説明はしない。類似の特徴は、類似の引用符号で与えられ、
図1から7に関して説明した例の任意の特徴は、
図8で示される例に適用され得ることを理解されたい。しかし、
図8で示される例において、磁気閉じ込め配列804の磁性素子804aは、閉じ込め磁場を供給するように配置され、閉じ込め磁場を特徴づける磁力線(
図8の黒矢印)は、それぞれ実質的に直線状であるが、少なくとも堆積領域(明確にするために、
図8で明確に示していない)において、湾曲経路Cの曲線に実質的に追従するように、各磁力線に対して垂直に延び且つ磁力線をつなげる仮想線が曲げられるように、配置される。
【0100】
この例において、プラズマ生成配列802は、湾曲し、湾曲部材又はドラム118の長手方向軸120に対して実質的に垂直な方向に延在する、細長いアンテナ802aを備える。
図8の例において、湾曲部材118の長手方向軸120は、湾曲部材118の回転軸でもある。明確にするために、
図8では一つのアンテナ802aのみ示しているが、二つ以上のそのようなアンテナ802aが使用され得ることを理解されたい。
図8の湾曲したアンテナ802aは、湾曲経路Cの曲線に実質的に追従し、この場合、湾曲経路Cに沿って基板を導く湾曲部材118の曲面から半径方向及び軸方向にずれるため、湾曲経路Cから半径方向及び軸方向にずれるが、湾曲経路Cに平行である。湾曲したアンテナ802aは、実質的に湾曲した形状を有する、プラズマ(明確にするため、
図8で図示なし)を生成するために、無線周波数電力を使用して駆動され得る。
【0101】
図8の磁性素子804aは、ソレノイド804aを備える。明確にするため、
図8では一つの磁性素子804aのみ示しているが、例えば、
図8において、他のそのような磁性素子(図示なし)を、ソレノイド804aに対して湾曲部材118を挟んだ反対側に配置してもよいことを理解されたい。ソレノイド804aは、開口部を有し、該開口部を通して、使用中、プラズマ(
図8に図示なし)が閉じ込められる。開口部は、湾曲し、湾曲部材118の長手方向軸(回転軸)120に対して実質的に垂直な方向に細長くなっていてもよい。湾曲したソレノイド804aは、この例において、湾曲経路Cの曲線に実質的に追従し、湾曲部材118の曲面から半径方向及び軸方向にずれるが、湾曲部材118の曲面と平行である。
図8において、湾曲したソレノイド804aは、湾曲したアンテナ802aと湾曲部材118の中間に配置される。湾曲したソレノイド804aは、閉じ込め磁場をもたらし、該閉じ込め磁場においては、磁力線が、少なくとも堆積領域内において、湾曲経路Cの曲線に実質的に追従するように、磁力線に対して垂直に延び且つ磁力線をつなげる仮想線が曲げられるように、配置される。
【0102】
プラズマ(
図8で図示なし)は、湾曲したアンテナ802aの長さに沿って生成され、湾曲したソレノイド804aは、プラズマを湾曲したアンテナ802aから離れる方向に、ソレノイド804aを貫くように閉じ込める。
図8のような例では、プラズマは、湾曲したソレノイド804aにより、湾曲シート状に閉じ込められる。この場合において、湾曲シートの長さは、湾曲部材118の長手方向(回転)軸120と平行な方向に延在する。湾曲シート状のプラズマは、湾曲部材118の周りで、湾曲部材118の曲線を再現するように、ソレノイド804aにより供給される磁場により閉じ込められる。プラズマの湾曲シートの厚さは、湾曲シートの長さ及び幅に沿って実質的に一定であってもよい。湾曲シート状のプラズマは、実質的に均一な密度を有し、例えば湾曲シート状のプラズマの密度は、その長さと幅のうち一つ又はその両方で実質的に均一であってもよい。上述のとおり、湾曲シート状に閉じ込められているプラズマは、スパッタ堆積がもたらされる面積を増加させることができ、それゆえ、より効率的なスパッタ堆積が可能になり、及び/又は、例えば、湾曲部材の曲線周り、及び基板116の幅にわたる方向の両方で、基板116でのプラズマ密度のより均一な分布が可能になる。これは、結果として、例えば湾曲部材の表面周りの方向及び湾曲部材118の長さにわたる方向の両方で、基板116に、より均一なスパッタ堆積を可能にし、基板の処理の一様性を向上させることができる。
【0103】
図9を参照すると、ターゲット材料108、608、708a、708b、708cの基板116へのスパッタ堆積の方法例が概略的に示されている。この方法において、基板116は、湾曲経路Cに沿って基板ガイド118により、導かれる。堆積領域114、614、714は、基板ガイド118と、ターゲット材料108、608、708a、708b、708cを支持するターゲット部106、606、706a、706b、706cの間に画定される。ターゲット材料108、608、708a、708b、708c、基板116、堆積領域114、614、714、ターゲット部106、606、706a、706b、706c、基板ガイド118及び/又は湾曲経路Cは、例えば、
図1から8に関して上記で説明したいくつかの例のものであり得る。いくつかの例において、この方法は、
図1から8に関して説明した装置100、600、700、800のうち一つにより実行される。
【0104】
図9の方法は、ステップ902において、ターゲット材料108、608、708a、708b、708cへの電気バイアスの印加をもたらすことを含む。電気バイアスは、
図1から8に関して説明した、バイアス手段122、122a、122b、122cにより供給され得る。
【0105】
ステップ904において、
図9の方法は、堆積領域114、614、714にプラズマを閉じ込めるための磁場を供給することを含み、それにより、ターゲット材料108、608、708a、708b、708cを基板116にスパッタ堆積させる。磁場は、湾曲経路Cの曲線周りにプラズマ112を閉じ込めるために、少なくとも堆積領域114、614、714において、湾曲経路Cの曲線に実質的に追従するように配置される磁力線により特徴づけられる。例えば、
図1から8に関して説明した磁気閉じ込め配列104、804のうち一つにより、プラズマを閉じ込めてもよい。
【0106】
上述のとおり、この方法で生成したプラズマ112を閉じ込めることにより、基板116の少なくとも湾曲経路Cの曲線周りの方向で、プラズマ密度のより均一な分布が可能になる。これは、結果として、湾曲部材118の表面周りの方向で、基板116にターゲット材料108、608、708a、708b、708cを、より均一にスパッタ堆積することを可能にする。したがって、スパッタ堆積を、結果として、より一様に実行できる。これにより、処理後の基板の一様性を向上させることができ、品質管理の必要性を減らすことができる。これは、例えば、生成される磁場を特徴づける磁力線が基板の中へ及び外へ詰まったループを描き、それゆえ、基板で均一な分布のプラズマ密度をもたらさないマグネトロンスパッタリングと比較され得る。
【0107】
さらに、この方法で湾曲経路の曲線に追従するように生成されるプラズマ112を閉じ込めることにより、プラズマ112に曝される基板116の面積を増加させることができ、それゆえ、スパッタ堆積がもたらされる面積を増加させることができる。これは、例えば、リールツーリールタイプの装置を通して、所与の堆積度のために、より速い速度で、基板116、例えばウェブ状の基板116を供給することを可能にし、それゆえ、より効率的なスパッタ堆積を可能にする。
【0108】
図9に従う例のスパッタ堆積の効率は、電気バイアスをターゲット材料に印加することによりさらに向上する。これは、プラズマをターゲット材料に向かって引き寄せ、スパッタリング速度を増加させる。電気バイアスを適切に制御することにより、例えば、ポストプロセスステップを必要とせずに、ターゲット材料を、基板上に所望の構造、例えば結晶構造でスパッタ堆積できる。それゆえ、そのような場合のスパッタ堆積は、さらに向上する。さらに、例えば、基板の一部分に他の部分より多い量のターゲット材料を堆積させるために、電気バイアスの制御により、基板上にターゲット材料の特定のパターンを堆積させるように、前記方法が使用され得るため、柔軟性が向上する。
【0109】
例において、方法900は、リチウム、コバルト、酸化リチウム、酸化コバルト及びコバルト酸リチウムのうち少なくとも一つを含むターゲット材料を提供することを含む。そのような例において、方法900は、それらの材料を含む、エネルギー貯蔵デバイスなどの様々な、異なる部品の製造のために使用され得る。
【0110】
図1から5に関して詳細に説明したように、
図9に従ういくつかの例において、ステップ902は、第一電力値で電気バイアスを印加することを含み、この方法は、第一電力値に対する第二電力値の比率が1より大きくなるような、第二電力値でプラズマを発生させることを含む。そのような比率は、効率的な方法により、結晶構造などの少なくとも部分的に規則正しい構造で、ターゲット材料を基板上に堆積するために使用され得る。
【0111】
上記の例は、例示的な例として理解されたい。任意の一つの例に関連して説明される任意の特徴は、単独で、又は説明される他の特徴と組み合わせて使用され得、他の任意の例の1つ以上の特徴、又は他の例の任意の組み合わせと組み合わせて使用され得ることを理解されたい。さらに、上記で説明していない均等物及び改良物もまた、添付の特許請求の範囲内で使用され得る。