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特許7416955リチウムイオン電池用電解液機能性添加剤、リチウムイオン電池電解液及びリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用電解液機能性添加剤、リチウムイオン電池電解液及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240110BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240110BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240110BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240110BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240110BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240110BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240110BHJP
   H01M 50/451 20210101ALN20240110BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M4/505
H01M4/525
H01M50/434
H01M10/052
H01M50/451
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022538275
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 CN2020127182
(87)【国際公開番号】W WO2021243953
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】202010485949.0
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522057847
【氏名又は名称】蜂巣能源科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】支岩輝
(72)【発明者】
【氏名】劉 穎
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-128723(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103000945(CN,A)
【文献】特開2018-125219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0566-10/0569
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池用電解液機能性添加剤であって、重量部基準で、前記機能性添加剤は0.1~0.5部の四フッ化ホウ酸リチウムと、0.3~1.5部のリチウムビスオキサレートボラートと0.2~2部の炭酸ビニレンと、0.2~1部のピリジントリフルオロボレートとを含むことを特徴とする機能性添加剤。
【請求項2】
前記四フッ化ホウ酸リチウムと前記リチウムビスオキサレートボラートの重量比は、1:2~1:4の範囲を満たすことを特徴とする請求項1に記載の機能性添加剤。
【請求項3】
有機溶媒と、電解質リチウム塩と、機能性添加剤とを含むリチウムイオン電池電解液であって、前記機能性添加剤は請求項1または2に記載の機能性添加剤であることを特徴とするリチウムイオン電池電解液。
【請求項4】
前記リチウムイオン電池電解液における前記機能性添加剤の質量含有量は2.5~5%であることを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池電解液。
【請求項5】
リチウムイオン基準で、前記リチウムイオン電池電解液における前記電解質リチウム塩の濃度は0.8~2.0mol/Lであり、好ましくは、前記電解質リチウム塩はヘキサフルオロリン酸リチウムとビスフルオロスルホンイミドリチウムとを含み、さらに好ましくは、前記ヘキサフルオロリン酸リチウムとビスフルオロスルホンイミドリチウムのモル比が6~10:1であることを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池電解液。
【請求項6】
前記有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートのうちの少なくとも1種を含み、好ましくは、前記有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートのうちの任意の3種又は3種以上の混合物から選択され、さらに好ましくは、前記有機溶媒における前記エチレンカーボネート、前記プロピレンカーボネート、前記ジエチルカーボネート及び前記エチルメチルカーボネートの質量比は2~3:0.3~0.8:1.5~3:4~7であることを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池電解液。
【請求項7】
正極シート、セパレータ、負極シート及び電解液を含むリチウムイオン電池であって、前記電解液は請求項3~6のいずれか一項に記載の電解液であることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項8】
前記正極シートは正極活物質を含み、前記正極活物質はニッケルマンガン二元層状材料LiNiMnを含み、ここで、0.5<x≦0.8、0.1<y≦0.5且つx+y=1であることを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項9】
前記セパレータはセラミックセパレータであることを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動力電池材料技術の分野に関し、具体的には、リチウムイオン電池用電解液機能性添加剤、リチウムイオン電池電解液及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
動力電池のコストと安全性は、現在の自動車の電化において緊急に解決する必要がある業界の問題点であり、安全性は電気自動車開発の最重要事項であり、消費者にとっても最優先事項であり、コストを削減できるか否かは、電気自動車が実際に燃料自動車と市場でのPKに直接影響する。安全性とコストの高圧により、動力電池と業界チェーン企業は既存の材料システムに基づいて新しい方向性を模索し続けている。戦略的資源として、コバルトの価格変動は最終的な電池セルのコストに直接影響するため、主流の国際的な電力電池会社は、次世代の電力電池の研究開発の方向性として、低コバルト電池及びコバルトフリー電池を採用する。
【0003】
正極材料のコバルト含有量の低減に伴い、材料のイオンや電子伝導性が悪くなり、電池全体の直流内部抵抗が大きくなり、また、コバルト元素の除去は正極材料の層状構造の安定性を悪化させ、金属イオン、特にマンガンイオンの析出が増加して負極に堆積し、負極SEI被膜を破壊し、電池のサイクル寿命に影響を及ぼす。また、材料の表面の金属イオンも電解液を容易に触媒し、正極の表面で酸化及び分解させ、電解液を消費し、電池のサイクル寿命に影響を及ぼす。現在、コバルトフリー電池の諸性能要件を満たすために、コバルトフリー層状材料専用の電解液は市場に出回っていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、従来技術において電解液がコバルトフリー電池又は低コバルト電池に適用される場合に電池のサイクル寿命が短くなるという問題を解決するために、リチウムイオン電池用電解液機能性添加剤、リチウムイオン電池電解液及びリチウムイオン電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、リチウムイオン電池用電解液機能性添加剤を提供し、重量部基準で、機能性添加剤は0.1~0.5部の四フッ化ホウ酸リチウム、0.3~1.5部のリチウムビスオキサレートボラート及び0.2~2部の炭酸ビニレンを含む。
【0006】
さらに、上記四フッ化ホウ酸リチウムとリチウムビスオキサレートボラートの重量比は、1:2~1:4の範囲を満たす。
【0007】
さらに、重量部基準で、上記機能性添加剤は0.2~1部のピリジントリフルオロボレートをさらに含む。
【0008】
本発明の他の態様によれば、有機溶媒、電解質リチウム塩及び機能性添加剤を含むリチウムイオン電池電解液を提供し、当該機能性添加剤は上記いずれかの機能性添加剤である。
【0009】
さらに、上記リチウムイオン電池電解液における機能性添加剤の質量含有量は2.5~5%である。
【0010】
さらに、リチウムイオン基準で、上記リチウムイオン電池電解液における電解質リチウム塩の濃度は0.8~2.0mol/Lであり、好ましくは、電解質リチウム塩はヘキサフルオロリン酸リチウムとビスフルオロスルホンイミドリチウムとを含み、さらに好ましくは、ヘキサフルオロリン酸リチウムとビスフルオロスルホンイミドリチウムのモル比が6~10:1である。
【0011】
さらに、上記有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートのうちの少なくとも1種を含み、好ましくは、有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートのうちの任意の3種又は3種以上の混合物から選択され、さらに好ましくは、有機溶媒におけるエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートの質量比は2~3:0.3~0.8:1.5~3:4~7である。
【0012】
本発明の他の態様によれば、正極シート、セパレータ、負極シート及び電解液を含むリチウムイオン電池を提供し、当該電解液は上記いずれかの電解液である。
【0013】
さらに、上記正極シートは正極活物質を含み、正極活物質はニッケルマンガン二元層状材料LiNiMnを含み、ここで、0.5<x≦0.8、0.1<y≦0.5且つx+y=1である。
【0014】
さらに、上記セパレータはセラミックセパレータである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の技術案を適用し、本発明のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤は炭酸ビニレン、四フッ化ホウ酸リチウム及びリチウムビスオキサレートボラートを含み、様々な添加剤を配合して使用することで、負極の表面に緻密で安定したSEI被膜を形成することを確保し、電池の高温保存性能及び高温サイクル性能を向上させる。そのうち、四フッ化ホウ酸リチウムとリチウムビスオキサレートボラートはある程度反応し、形成された中間生成物であるリチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートは、一方では、正極の表面に酸化して膜を形成し、電解液と正極材料の直接接触を効果的に阻止し、正極の表面の電解液の触媒酸化を回避し、他方では、正極材料のM-O表面のO正孔中心はODFBと反応してルイス酸FBOC・Oフリーラジカルを生成してからM-O表面のOと配位すると共に、2つの自由電子を介して相互に結合し、M-O表面に安定して存在することにより、当該活性部位の活性を阻害し、電解液の酸化分解を低減し、電池のサイクル性能を向上させ、また、金属イオンの溶出を減らし、負極SEI被膜への金属イオンによる損傷を回避し、さらに電池のサイクル性能を向上させることができる。本願の機能性添加剤を有するリチウムイオン電池電解液は使用時に四フッ化ホウ酸リチウム、リチウムビスオキサレートボラート及びリチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートを同時に含有し、それぞれの利点を活用し、低温又は高温環境で依然として高い電気性能を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
なお、矛盾がない場合、本願の実施例及び実施例の特徴は、相互に組み合わせることができる。以下、実施例を組み合わせて本発明について詳細に説明する。
【0017】
本願の代表的な実施形態において、リチウムイオン電池用電解液機能性添加剤を提供し、重量部基準で、当該機能性添加剤は0.1~0.5部の四フッ化ホウ酸リチウム、0.3~1.5部のリチウムビスオキサレートボラート及び0.2~2部の炭酸ビニレンを含む。
【0018】
本発明のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤は炭酸ビニレン、四フッ化ホウ酸リチウム及びリチウムビスオキサレートボラートを含み、様々な添加剤を配合して使用することで、負極の表面に緻密で安定したSEI被膜を形成することを確保し、電池の高温保存性能及び高温サイクル性能を向上させる。そのうち、四フッ化ホウ酸リチウムとリチウムビスオキサレートボラートはある程度反応し、形成された中間生成物であるリチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートは、一方では、正極の表面に酸化して膜を形成し、電解液と正極材料の直接接触を効果的に阻止し、正極の表面の電解液の触媒酸化を回避し、他方では、正極材料のM-O表面のO正孔中心はODFBと反応してルイス酸FBOC・Oフリーラジカルを生成してからM-O表面のOと配位すると共に、2つの自由電子を介して相互に結合し、M-O表面に安定して存在することにより、当該活性部位の活性を阻害し、電解液の酸化分解を低減し、電池のサイクル性能を向上させ、また、金属イオンの溶出を減らし、負極SEI被膜への金属イオンによる損傷を回避し、さらに電池のサイクル性能を向上させることができる。本願の機能性添加剤を有するリチウムイオン電池電解液は使用時に四フッ化ホウ酸リチウム、リチウムビスオキサレートボラート及びリチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートを同時に含有し、それぞれの利点を活用し、低温又は高温環境で依然として高い電気性能を維持することができる。
【0019】
四フッ化ホウ酸リチウム、リチウムビスオキサレートボラート及びリチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートがより優れた相乗効果を達成することをさらに可能にするために、好ましくは、上記四フッ化ホウ酸リチウムとリチウムビスオキサレートボラートの重量比は1:2~1:4の範囲を満たす。
【0020】
本願の一実施例では、重量部基準で、上記機能性添加剤は0.2~1部のピリジントリフルオロボレートをさらに含む。ピリジントリフルオロボレートにおけるトリフルオロボロン酸基は、一方では電解液中の酸性物質を錯化し、負極のSEI被膜への損傷と正極の金属イオンの溶解を低減することができ、他方では正極と負極の界面膜におけるフッ化リチウムを溶解し、正極と負極の界面インピーダンスを低減し、さらに電池のDC内部抵抗を低減し、また、ピリジル基は正極に溶出したマンガンイオンを錯化して負極への損傷を低減し、それによって電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0021】
本願のさらに他の代表的な実施形態では、有機溶媒、電解質リチウム塩及び機能性添加剤を含むリチウムイオン電池電解液を提供し、当該機能性添加剤は上記機能性添加剤である。
【0022】
本願の機能性添加剤をリチウムイオン電池の電解液に適用する場合、電解液の交流インピーダンスが顕著に低下し、倍率性能及び低温性能の向上に役立ち、リチウムイオン電池に適用する場合、負極の表面に生成されたSEI被膜は緻密で安定し、同時に正極の表面に保護膜が形成されるため、電池の高温性能及びサイクル性能を顕著に向上させることができる。
【0023】
本願の好ましい実施例では、上記イオン電池の電解液における機能性添加剤の質量含有量は2.5~5である。機能性添加剤の作用を十分に発揮させる。
【0024】
本願に用いられるリチウムイオン電池電解液の電解質リチウム塩は従来技術に一般的に使用される電解質リチウム塩を採用することができ、リチウムイオン電池の全体の優れた性能を確保するために、好ましくは、リチウムイオン基準で、リチウムイオン電池電解液における電解質リチウム塩の濃度は0.5~2.0mol/Lである。試験により、好ましくは、上記電解質リチウム塩はヘキサフルオロリン酸リチウムとビスフルオロスルホンイミドリチウムとを含み、さらに好ましくは、ヘキサフルオロリン酸リチウムとビスフルオロスルホンイミドリチウムのモル比が6~10:1である。ビスフルオロスルホンイミドリチウムの添加は電解液の電気伝導度を顕著に向上させ、電池の倍率性能及び低温性能を向上させ、また、その高温安定性も電解液の高温性能を顕著に向上させることができ、ビスフルオロスルホンイミドリチウムはさらに正極の表面に堆積し、正極に一定の保護作用を果たすことができる。
【0025】
リチウムイオン電池の電解液内の有機溶媒は、その中の電解質リチウム塩と機能性添加剤を完全に溶解及び分散させるために用いられ、それぞれの機能を十分に発揮させることができ、本願に用いられる有機溶媒は本分野に一般的に使用される溶媒を採用することができ、例えば、有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートのうちの少なくとも1種を含み、好ましくは、有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートのうちの任意の3種又は3種以上の混合物から選択され、さらに好ましくは、有機溶媒におけるエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートの質量比は2~3:0.3~0.8:1.5~3:4~7である。上記有機溶媒の組み合わせは、電解液が一定の電気伝導度を満たすことを確保する上で、電池の高低温性能をよりよく両立させる。
【0026】
本願のさらに他の代表的な実施形態では、正極シート、セパレータ、負極シート及び電解液を含むリチウムイオン電池を提供し、当該電解液は上記いずれかの電解液である。
【0027】
本願のリチウムイオン電池電解液を有するイオン電池は、そのうちの電解液の交流インピーダンスが顕著に低下し、倍率性能及び低温性能の向上に役立ち、負極の表面に生成されたSEI被膜は緻密で安定し、同時に正極の表面に保護膜が形成されるため、電池の高温性能及びサイクル性能を顕著に向上させることができる。
【0028】
本願のリチウムイオン電池電解液は従来のリチウムイオン電池に適用し、それはコバルトフリーリチウムイオン電池又は低コバルトイオン電池に適用する場合、電池は依然として高いサイクル性能を維持することができる。一実施例では、上記正極シートは正極活物質を含み、正極活物質はニッケルマンガン二元層状材料LiNiMnを含み、ここで、0.5<x≦0.8、0.1<y≦0.5且つx+y=1である。上記ニッケルマンガン二元層状材料は、コバルト元素を含有せず、さらに原料コストを削減し、且つ特定の戦略的重要性を持っており、当該電解液と配合して使用し、材料自体の欠点をよく補うことができ、電池の諸性能要件を最大限に満たすことができる。
【0029】
一実施例では、上記セパレータはセラミックセパレータである。当該セラミックセパレータは、ポリオレフィンセパレータベースと、ポリオレフィンセパレータに塗布されたセラミックコーティングとを含む。当該セラミックコーティングはアルミナコートコーティングであってもよい。ポリオレフィンセパレータベースがPE材質であり、セラミックコーティングの厚さが2~3μmである。
【0030】
以下では実施例及び比較例を参照して本願の有益な効果をさらに説明する。
【0031】
(実施例1)
本実施例のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤は重量部基準で、0.3部の四フッ化ホウ酸リチウム、1.0部のリチウムビスオキサレートボラート、0.5部のピリジントリフルオロボレート及び1部の炭酸ビニレンからなる。
【0032】
本実施例のリチウムイオン電池用電解液は有機溶媒、電解質リチウム塩及び機能性添加剤からなり、有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートからなり、且つエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートの質量比は2.5:0.5:2:5であり、電解質リチウム塩はヘキサフルオロリン酸リチウムとビスフルオロスルホンイミドリチウムからなり、且つヘキサフルオロリン酸リチウムとビスフルオロスルホンイミドリチウムのモル比は6:1であり、電解液中の電解質リチウム塩の総モル濃度は1.2mol/Lであり、電解液中の機能性添加剤の量は4%である。
【0033】
(実施例2)
実施例1との違いは、本実施例のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤が重量部基準で、0.25部の四フッ化ホウ酸リチウム、1.0部のリチウムビスオキサレートボラート、0.5部のピリジントリフルオロボレート及び1部の炭酸ビニレンからなることである。
【0034】
(実施例3)
実施例1との違いは、本実施例のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤が重量部基準で、0.5部の四フッ化ホウ酸リチウム、1.0部のリチウムビスオキサレートボラート、0.5部のピリジントリフルオロボレート及び1部の炭酸ビニレンからなることである。
【0035】
(実施例4)
実施例1との違いは、本実施例のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤が重量部基準で、0.1部の四フッ化ホウ酸リチウム、1.0部のリチウムビスオキサレートボラート、0.5部のピリジントリフルオロボレート及び1部の炭酸ビニレンからなることである。
【0036】
(実施例5)
実施例1との違いは、本実施例のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤が重量部基準で、0.3部の四フッ化ホウ酸リチウム、1.5部のリチウムビスオキサレートボラート、0.5部のピリジントリフルオロボレート及び1部の炭酸ビニレンからなることである。
【0037】
(実施例6)
実施例1との違いは、本実施例のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤が重量部基準で、0.3部の四フッ化ホウ酸リチウム、0.3部のリチウムビスオキサレートボラート、0.5部のピリジントリフルオロボレート及び1部の炭酸ビニレンからなることである。
【0038】
(実施例7)
実施例1との違いは、本実施例のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤が重量部基準で、0.3部の四フッ化ホウ酸リチウム、1.0部のリチウムビスオキサレートボラート、0.5部のピリジントリフルオロボレート及び0.2部の炭酸ビニレンからなることである。
【0039】
(実施例8)
実施例1との違いは、本実施例のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤が重量部基準で、0.3部の四フッ化ホウ酸リチウム、1.0部のリチウムビスオキサレートボラート、0.5部のピリジントリフルオロボレート及び2部の炭酸ビニレンからなることである。
【0040】
(実施例9)
実施例1との違いは、本実施例のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤が重量部基準で、0.3部の四フッ化ホウ酸リチウム、1.0部のリチウムビスオキサレートボラート、0.2部のピリジントリフルオロボレート及び1部の炭酸ビニレンからなることである。
【0041】
(実施例10)
実施例1との違いは、本実施例のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤が重量部基準で、0.3部の四フッ化ホウ酸リチウム、1.0部のリチウムビスオキサレートボラート、1部のピリジントリフルオロボレート及び1部の炭酸ビニレンからなることである。
【0042】
(実施例11)
実施例1との違いは、本本実施例のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤が重量部基準で、0.3部の四フッ化ホウ酸リチウム、1.0部のリチウムビスオキサレートボラート及び1部の炭酸ビニレンからなることである。
【0043】
(実施例12)
実施例1との違いは、電解液中の電解質リチウム塩の総モル濃度が0.8mol/Lであることである。
【0044】
(実施例13)
実施例1との違いは、電解液中の電解質リチウム塩の総モル濃度が2.0mol/Lであることである。
【0045】
(実施例14)
実施例1との違いは、電解液中の電解質リチウム塩の総モル濃度が2.5mol/Lであることである。
【0046】
(実施例15)
実施例1との違いは、電解質リチウム塩がヘキサフルオロリン酸リチウムとビスフルオロスルホンイミドリチウムからなり、且つヘキサフルオロリン酸リチウムとビスフルオロスルホンイミドリチウムのモル比が10:1であることである。
【0047】
(実施例16)
実施例1との違いは、電解質リチウム塩がヘキサフルオロリン酸リチウムとビスフルオロスルホンイミドリチウムからなり、且つヘキサフルオロリン酸リチウムとビスフルオロスルホンイミドリチウムのモル比が4:1であることである。
【0048】
(実施例17)
実施例1との違いは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートの質量比が2:0.8:1.5:7であることである。
【0049】
(実施例18)
実施例1との違いは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートの質量比が3:0.3:3:4であることである。
【0050】
(実施例19)
実施例1との違いは、有機溶媒が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートからなり、且つエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートの質量比が2.5:0.5:7であることである。
【0051】
(実施例20)
実施例1との違いは、有機溶媒が、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートからなり、且つエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートの質量比が3:2:5であることである。
【0052】
(実施例21)
実施例1との違いは、電解液中の機能性添加剤の質量含有量が2%であることである。
【0053】
(実施例22)
実施例1との違いは、電解液中の機能性添加剤の質量含有量が5%であることである。
【0054】
(実施例23)
実施例1との違いは、電解液中の機能性添加剤の質量含有量が1.5%であることである。
【0055】
(比較例1)
比較例のリチウムイオン電池用電解液は有機溶媒、電解質リチウム塩及び機能性添加剤からなり、有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートからなり、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートの質量比は2.5:0.5:2:5であり、電解質リチウム塩はヘキサフルオロリン酸リチウムであり、電解液中の電解質リチウム塩の総モル濃度は1.1mol/Lであり、機能性添加剤は重量部基準で、1部の炭酸ビニレン及び1部のジフルオロリン酸リチウムからなり、リチウムイオン電池の電解液中の炭酸ビニレンの質量パーセントは1%である。
【0056】
(比較例2)
実施例1との違いは、本実施例のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤が重量部基準で、1部のリチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート、0.5部のピリジントリフルオロボレート及び1部の炭酸ビニレンからなることである。
【0057】
(比較例3)
実施例1との違いは、本実施例のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤が重量部基準で、0.3部の四フッ化ホウ酸リチウム、2.0部リチウムビスオキサレートボラート及び1部の炭酸ビニレンからなることである。
【0058】
(比較例4)
実施例1との違いは、本実施例のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤が重量部基準で、0.3部の四フッ化ホウ酸リチウム、1.0部のリチウムビスオキサレートボラート及び2.5部の炭酸ビニレンからなることである。
【0059】
試験分析
それぞれ実施例及び比較例のリチウムイオン電池電解液でリチウムイオン電池を製造し、得られたリチウムイオン電池のサイクル性能を試験する。リチウムイオン電池を製造する時に、人工黒鉛を負極活物質として負極シートを作製し、LiNi0.75Mn0.25を正極活物質として正極シートを作製し、セラミックセパレータを採用し、且つそれぞれ実施例及び比較例のリチウムイオン電池電解液を採用し、従来のリチウムイオン電池の組み立て方法を用いて5Ahのリチウムイオン電池を作製し、採用するセラミックセパレータはPEセパレータベース及びセパレータベースに塗布されたアルミナコートコーティングを含み、アルミナコートコーティングの厚さは2~3μmである。
【0060】
上記で得られたリチウムイオン電池のサイクル性能を試験し、各電池を500回サイクルし、サイクル前後の電池容量維持率を計算する。試験条件は以下のとおりであり、
【0061】
常温性能試験:1.0C倍率放電、1.0C倍率充電、電圧範囲2.8~4.3V、温度25±5℃、
【0062】
高温性能試験:1.0C倍率放電、1.0C倍率充電、電圧範囲2.8~4.3V、温度45±5℃、
【0063】
低温性能試験:25±5℃でフル充電、-20℃で1.0C放電、電圧範囲2.8~4.3V。試験結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
以上の説明から分かるように、本発明の上記実施例は以下の技術的効果を実現し、
本発明のリチウムイオン電池用電解液機能性添加剤は炭酸ビニレン、四フッ化ホウ酸リチウム及びリチウムビスオキサレートボラートを含み、様々な添加剤を配合して使用することで、負極の表面に緻密で安定したSEI被膜を形成することを確保し、電池の高温保存性能及び高温サイクル性能を向上させる。そのうち、四フッ化ホウ酸リチウムとリチウムビスオキサレートボラートはある程度反応し、形成された中間生成物であるリチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートは、一方では、正極の表面に酸化して膜を形成し、電解液と正極材料の直接接触を効果的に阻止し、正極の表面の電解液の触媒酸化を回避し、他方では、正極材料のM-O表面のO正孔中心はODFBと反応してルイス酸FBOC・Oフリーラジカルを生成してからM-O表面のOと配位すると共に、2つの自由電子を介して相互に結合し、M-O表面に安定して存在することにより、当該活性部位の活性を阻害し、電解液の酸化分解を低減し、電池のサイクル性能を向上させ、また、金属イオンの溶出を減らし、負極SEI被膜への金属イオンによる損傷を回避し、さらに電池のサイクル性能を向上させることができる。本願の機能性添加剤を有するリチウムイオン電池電解液は使用時に四フッ化ホウ酸リチウム、リチウムビスオキサレートボラート及びリチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートを同時に含有し、それぞれの利点を活用し、低温又は高温環境で依然として高い電気性能を維持することができる。
【0066】
以上は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するものではなく、当業者にとって、本発明は様々な変更及び変更が可能である。本発明の精神と原則内で行われる任意の修正、同等の置換、及び改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。