(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】空気式タイヤ用の改良された音響発泡体の特性
(51)【国際特許分類】
B60C 19/12 20060101AFI20240110BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20240110BHJP
B60C 5/08 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B60C19/12 Z
B60C5/00 F
B60C5/08 A
(21)【出願番号】P 2022539345
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 US2019068537
(87)【国際公開番号】W WO2021133392
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ゲイロ ライアン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】サラジン フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】ライフハイト ニール
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-532637(JP,A)
【文献】特開2020-172204(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011053686(DE,A1)
【文献】特表2017-509528(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015212874(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009024454(DE,A1)
【文献】特開2005-262920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤであって、
トレッド面と、
前記トレッド面上の複数の
円周方向トレッド溝と、
内部キャビティおよび前記内部キャビティに面する内部表面と、
前記タイヤの前記内部表面に配置されたセルフシール接着性層と、
前記セルフシール接着性層に取り付けられた騒音減衰発泡体のストリップであって、前記騒音減衰発泡体のストリップが複数の円周方向溝を有し、前記
騒音減衰発泡体の前記円周方向溝のそれぞれが前記セルフシール接着性層に面し、前記
騒音減衰発泡体の前記円周方向溝のそれぞれが、それが対応する前記複数の円周方向トレッド溝のうちの一つと横方向に整列して配置される、騒音減衰発泡体のストリップと、を備えている、
ことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記騒音減衰発泡体が横方向にまたがる前記複数の円周方向トレッド溝の各々の間に、発泡体が前記セルフシール接着性層に横位置で接触する、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記騒音減衰発泡体のストリップが、連続したリングである、
請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記騒音減衰発泡体のストリップの前記複数の円周方向溝の各々が、
1cmの半径方向深さを有する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記複数の円周方向トレッド溝の各々が横幅を有し、前記騒音減衰発泡体のストリップの前記複数の円周方向溝の各々が横幅を有し、前記騒音減衰発泡体のストリップの前記複数の円周方向溝の各々の前記横幅が、前記複数の円周方向溝の対応する前記円周方向トレッド溝の前記横幅より大きい、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記セルフシール接着性層が、ポリウレタンからなる、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記セルフシール接着性層がポリアルファオレフィンからなる、
請求項1乃至
5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
騒音減衰発泡体のストリップが、連続気泡発泡体からなる、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記円周方向トレッド溝の下には、前記セルフシール接着性層に接触している騒音減衰発泡体のストリップが存在しない、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、タイヤに関するものであり、より具体的には、タイヤのクラウン(crown)のパンクを封止することを意図したシーラントの層と、キャビティ音を減衰することを意図した発泡体のストリップとをその半径方向の内部表面に有するタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車技術の発達に伴い、自動車の乗員が感じる騒音の低減が求められる。特に、電気自動車の登場により、タイヤの騒音、特に回転中のタイヤの内部キャビティに関連する騒音、が目立つようになり、車室内の騒音レベルが低下した。例えば、米国特許第7,975,740号明細書に記載されるように、空気式タイヤの内部表面に発泡体のストリップを取り付けることが、聞き取ることができるタイヤキャビティを減衰させる成功した方法であることが証明されている。
【0003】
空気式タイヤには、依然パンクを原因とするパンクや空気漏れがある。パンクによる空気損失を軽減または除去するために、タイヤ製造業者はタイヤのインナーライナーの半径方向の内部表面にセルフシール製品を適用することがある。釘などがタイヤのクラウンに刺さると、シーラントは柔らかく、容易にクリープできるため、パンク部分に入り込み、空気式タイヤの空気漏れを防ぐことができる。このように、パンク部分をクリープして塞ぐことができる層を持つタイヤは、「セルフシールタイヤ」と言われている。特にタイヤの溝は、タイヤのトレッドの中で最も薄い部分であり、貫通によるダメージを受けやすい。
【0004】
電気自動車の登場により、例えば、米国特許出願2016/0347127号明細書に記載されるように、これらの技術を組み合わせることが望まれるようになった。しかし、この二つの技術の組み合わせには、ある困難があった。特に、音響発泡体100は、
図1に示すタイヤ10の断面のようなセルフシール層50上に適用された場合、タイヤ10のセルフシール能力の有効性を低下させ、その結果、セルフシール製品の追加および/またはセルフシール性能の低下の受容が必要となる。効果を高めるためにセルフシール製品を追加することは、コストがかかる上に、タイヤに不必要な重量を加えることになる。
【0005】
セルフシール層の効果を高める試みも行われている。そのような試みの一つでは、
図2に示すように、音響発泡体100の半径方向の外部表面がU字型形状を形成するように切断される。設置されるとき、音響発泡体100は、音響発泡体100の側方端102、104でセルフシール層50に接触して固定され、中間部分はセルフシール層から半径方向に内向きに離される。しかし、実際には、このように入念な位置調整を実現することは困難であり、実現できたとしても、音響発泡体100の意図しない圧縮により、
図3に示すように、中間部がセルフシール層に付着して、セルフシール性能の低下や、タイヤバランスの劣化を招く。
【発明の概要】
【0006】
セルフシール層の効果を著しく阻害しない音響発泡体の特性が望まれる。特に、セルフシール層の効果を妨げず、音響発泡体構造がセルフシール層に崩れ落ちるのを防ぐ発泡体特性がとりわけ有利であろう。
【0007】
本発明の側面および利点は、以下の説明で部分的に述べられるか、または説明から明らかであるか、または本発明の実施を通じて知ることができるであろう。
【0008】
一実施形態では、ポリアルファオレフィン接着性シーラントが、クラウンのベルト補強材領域のタイヤの半径方向の内側に適用される。発泡体の半径方向の外側表面に円周方向溝を持つ騒音減衰発泡体リングが接着性シーラントに適用される。タイヤの縦方向溝と横方向に並んでいない領域で発泡体がシーラントに接するように、発泡体の溝は、タイヤの円周方向溝と横方向に整列している。これにより、発泡体がトレッド溝の直下でシーラントの流れを妨げるのを防ぎ、タイヤのセルフシール性能を向上させる。
【0009】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照することにより、よりよく理解されるであろう。添付の図面は、この明細書に組み込まれ、その一部を構成するもので、本発明の実施形態を示し、説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つものである。
【0010】
当業者に向けられた、最良の態様を含む本発明の完全かつ有効な開示は、添付の図を参照する明細書に記載されている。
【0011】
異なる図における同一または類似の参照番号の使用は、同一または類似の特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、タイヤの回転軸を通じて得られる音響発泡体および内部に適用されるセルフシール製品層を有する先行技術のタイヤの断面図を提供する。
【
図2】
図2は、U字型音響発泡体および内部に適用されたシーラント層を有する先行技術のタイヤの断面図を提供する。
【
図3】
図3は、U字型音響発泡体がシーラント層内に崩れ落ちた、U字型音響発泡体および内部に適用されたシーラント層を有する先行技術のタイヤの断面図である。
【
図4】
図4は、音響発泡体および空気式タイヤの内部に適用されたシーラント層を有する、本発明の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、セルフシール製品の表面に適用された音響発泡体の層と共に、クラウン領域の空気式タイヤの内部に適用されるセルフシール製品の層を有する、空気式タイヤを提供する。本発明を説明する目的で、次に、本発明の実施形態および/または方法を詳細に参照し、その一つまたは複数の例を図面中にまたは図面と共に解説する。各実施例は、本発明の説明のために提供されるものであり、本発明を限定するためのものではない。実際、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明において様々な修正および変形が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、ある実施形態の一部として図示または説明された特徴またはステップは、別の実施形態またはステップと一緒に使用して、さらに別の実施形態または方法をもたらすことができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内に入るような修正および変形をカバーすることが意図される。
【0014】
本開示において、以下の用語は以下のように定義される。
【0015】
図中の「軸方向」または文字「A」は、例えばタイヤおよび/またはホイールが路面を走行する際の回転軸に平行な方向を意味する。
【0016】
図中の「半径方向」または文字「R」は、軸方向と直交する方向で、軸方向から直交して延びる任意の半径と同じ方向に延びる方向を指す。
【0017】
「赤道面」とは、回転軸に垂直に通り、外側のトレッドバンドおよび/またはホイール構造を二等分する面をいう。
【0018】
図中の「円周方向」または文字「C」は、軸方向と直交し、かつ半径方向と直交する方向を意味する。
【0019】
「半径平面」とは、赤道面に垂直で、かつ、ホイールの回転軸を通る平面をいう。
【0020】
「横方法」または文字「L」の文字は、赤道面に直交する方向を意味する。
【0021】
図4は、トレッド面12に複数の円周方向トレッド溝16を有するトレッド面12を有するタイヤ10の例示的な実施形態を提供する。タイヤ10の内部表面14は、タイヤがリム40に装着されたときにできる内部キャビティ20に面している。タイヤ内部表面14には、セルフシール接着性層50が配置されている。接着性層50は、タイヤ10の内部表面14の周りに円周方向に配置され、タイヤのベルト補強材層18と横方向に並んでいる。本実施形態におけるセルフシール接着性層50は、ポリウレタンからなるゲルである。ポリアルファオレフィンからなるシーラントを含む、他の材料を用いてもよい。
【0022】
セルフシール接着性層50の半径方向の内部表面には、騒音減衰発泡体100のストリップが貼り付けられる。騒音減衰発泡体100は、複数の円周方向溝120、130を有する。円周方向溝120、130の各々は、タイヤ10の内部表面14に面している。本実施形態では、騒音減衰発泡体100の円周方向溝120、130の側面を形成する支持壁110が、騒音減衰発泡体100をタイヤ10の内部に固定するセルフシール接着性層50に接触している。支持壁110は、装着時およびタイヤの使用時に、円周方向溝120、130の底面が接着性層と接触しないようにするのに役立つ。支持壁110は、タイヤ10の円周方向トレッド溝16の間の横方向の領域で、セルフシール接着性50と接触する。
【0023】
騒音減衰発泡体の円周方向溝120、130の各々は、複数の円周方向トレッド溝16のうちの一つと横方向に並んで配置される。すなわち、本実施形態では、各円周方向トレッド溝16は、その下にあるセルフシール接着性層に接触している発泡体を持たない。タイヤがトレッド溝16内の異物によって穿孔された場合、セルフシール接着性材料50は、発泡体100によって制限されることなく流動し、異物によって生じた穿孔を充填することが可能である。
【0024】
本実施形態では、発泡体の二つの円周方向溝120、130のみを示している。他の実施形態は、騒音減衰発泡体100が横方向にまたがる縦方向のトレッド溝16の数に応じて、三つの溝、四つの溝、五つの溝またはそれ以上の溝を有することができる。この実施形態では、騒音減衰発泡体は、横方向に二つの溝16のみにまたがっているため、発泡体100では二つの溝120、130のみを含む。
【0025】
騒音減衰発泡体は、二つの端を持つストリップの形態であってもよい。両端は共に接着されてもよい。騒音減衰発泡体の両端は、互いに突き合わせてもよいし、代わりに隙間によって隔てられてもよい。騒音減衰発泡体ストリップは、連続したリング状であってもよい。
【0026】
騒音減衰発泡体100の各溝120、130の横方向の幅は、それが横方向に並んでいるタイヤトレッド溝16の幅よりも広い。図示の実施形態では、騒音減衰リングの溝は、横方向の幅が15.5mm、半径方向の深さが10mmであり、トレッド溝は、トレッド溝16の底部で測定して幅5mm、トレッド12の半径方向の外部表面で約10mmの幅である。
【0027】
開示された技術の側面の選択された組み合わせは、本発明の複数の異なる実施形態に対応する。本明細書で提示され議論される例示的な実施形態の各々は、本主題の限定を示唆すべきではないことに留意されたい。ある実施形態の一部として図示または説明された特徴またはステップは、別の実施形態の側面と組み合わせて使用され、さらに別の実施形態が得られる場合がある。さらに、特定の特徴は、同一または類似の機能を果たす、明示的に言及されていない類似の装置または特徴と交換することができる。
【0028】
なお、本明細書に開示されている寸法や数値は、引用されたぴったりの数値に厳密に限定されると、理解されるべきではない。その代わり、特に指定がない限り、このような各寸法は、引用された値およびその値を取り囲む機能的に等価な範囲の両方を意味することを意図する。例えば、「40mm」と開示されている寸法は、「約40mm」を意味するものとする。また、本明細書に開示された寸法や数値は、特定の測定単位に限定されるものではない。例えば、英単位で表現された寸法は、メートル単位や他の単位での同等の寸法を含むと理解される(例えば、「1インチ」と開示された寸法は、「2.5cm」と同等の寸法を意味すると意図される)。なお、「およそ」とは、記載された数値より25%大きい、または25%小さい寸法を含むと理解されるべきである。
【0029】
本明細書で使用する場合、「方法」または「工程」という用語は、現在開示されている発明の範囲から逸脱することなく、示された以外の順序で実行することができる一つまたは複数のステップを指す。本明細書で使用する場合、「方法」または「工程」という用語は、少なくとも一つの電子装置またはコンピュータベースの装置によって実行される一つ以上のステップを含み得る。ステップの任意の順序は例示的であり、本明細書に記載の方法を任意の特定の順序に制限することを意図するものではなく、ステップの追加、ステップの省略、ステップの繰り返し、またはステップの同時実行を排除することを意図するものでもない。本明細書で使用される場合、用語「方法」または「工程」は、ステップを遂行する命令を実行するためのプロセッサを有する少なくとも一つの電子装置またはコンピュータベースの装置によって実行される一つまたは複数のステップを含み得る。
【0030】
複数系で表現されない単語および単数形の単語は、同じ単語の複数形を含むものとし、これらの用語は、一つまたは複数の何かが提供されることを意味する。用語「少なくとも一つ」および「一つ以上」は互換的に使用される。「aとbの間」と表現される範囲は、「a」と「b」の値を含む。
【0031】
相互参照または関連する特許または出願を含む本明細書に引用されたすべての文書は、明示的に除外もしくは制限されない限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。いかなる文書の引用も、それが本明細書で開示または請求された発明に関する先行技術であること、またはそれが単独で、あるいは他の参考文献とのいかなる組み合わせにおいても、かかる発明を教示、示唆または開示していることを認めるものではない。また、本明細書中のある用語の意味または定義が、参照により組み込まれる文書中の同じ用語の意味または定義と矛盾する限りにおいては、本明細書中のその用語に付与された意味または定義が適用されるものとする。