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特許7416972流体カラム内の物体から検出された位置依存性電磁放射線を補正するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】流体カラム内の物体から検出された位置依存性電磁放射線を補正するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/1429 20240101AFI20240110BHJP
   G01N 15/14 20240101ALI20240110BHJP
   G01N 15/1434 20240101ALI20240110BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20240110BHJP
   G01N 21/53 20060101ALI20240110BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01N15/14 K
G01N15/14 C
G01N15/14 D
G01N21/05
G01N21/53 Z
G01N21/64 F
G01N21/64 Z
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2022554819
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 US2021022381
(87)【国際公開番号】W WO2021188441
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】16/820,585
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510290603
【氏名又は名称】イングラン, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】キーセル, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】カリン, トッド
(72)【発明者】
【氏名】エバンズ, ケネス マイケル
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-162660(JP,A)
【文献】国際公開第2013/183345(WO,A1)
【文献】特表2006-524054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/14
G01N 21/64
G01N 21/53
G01N 21/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁別システムであって、
1列で内部の異なる位置に物体を含む流体カラムを作成する流体カラム形成構造と、
測定領域において前記流体カラム中の物体に向けられた励起電磁放射線を生成する励起源であって、前記流体カラム内の前記物体は、前記励起電磁放射線に応答して出力電磁放射線を発する、励起源と、
前記物体から出力電磁放射線を収集する光学構成と、
前記光学構成によって収集された前記出力電磁放射線の強度に応答する電気信号を生成する検出器と、
i)前記流体カラム中の前記物体の前記位置に基づいて前記電気信号で表される前記出力電磁放射線の前記強度を正規化する命令及びii)第1のタイプの物体を他の物体から弁別する命令を記憶した解析器と、
を備え
前記流体カラムは、概して円形の断面のシース流体内に含まれる概して楕円形の断面のコア流中に物体を含み、前記流体カラム中の物体は、コア流の前記概して楕円形の断面の長軸上の異なる位置に配置される、弁別システム。
【請求項2】
前記検出器は第1の検出器を含み、前記システムは、前記流体カラム中の物体の前記位置を検出する第2の検出器を更に備える、請求項1に記載の弁別システム。
【請求項3】
前記第2の検出器は位置検出器を含む、請求項2に記載の弁別システム。
【請求項4】
前記位置検出器は、カメラ、CCD、PSD、SiPM分割検出器、及びフォトダイオードアレイの群から選択される検出器である、請求項3に記載の弁別システム。
【請求項5】
前記検出器は、i)前記光学構成によって収集された前記出力電磁放射線の前記強度に応答する電気信号を生成し、ii)前記流体カラム中の物体の前記位置を検出する第1の検出器を含む、請求項1に記載の弁別システム。
【請求項6】
前記第1の検出器は、前記光学構成の像面に配置されない、請求項5に記載の弁別システム。
【請求項7】
前記第1の検出器は、PMT分割検出器、SiPM分割検出器、フォトダイオードアレイ、PMTのアレイ、及びSiPMのアレイからなる群から選択される検出器を含む、請求項5に記載の弁別システム。
【請求項8】
前記流体カラム中の前記物体の前記位置に基づいて前記電気信号で表される前記出力電磁放射線の前記強度を正規化する、前記解析器に記憶された命令は、前記電気信号で表される前記出力電磁放射線の前記強度に補正を適用する、請求項に記載の弁別システム。
【請求項9】
前記コア流の前記長軸上の各位置についての補正係数が決定され、前記補正係数は、前記コア流の前記長軸上の前記位置に基づいて各事象に適用される、請求項に記載の弁別システム。
【請求項10】
前記第1のタイプの物体は、X染色体を持った生存精子及びY染色体を持った生存精子からなる群から選択される物体を含む、請求項1に記載の弁別システム。
【請求項11】
前記解析器は、X染色体を持った生存精子とY染色体を持った生存精子とを弁別する命令を含む、請求項1に記載の弁別システム。
【請求項12】
前記物体は、サンプル流体の楕円形カラム内に配置された精子を含み、前記サンプル流体はシース流体の外層と同軸に形成され、前記シース流体は概して円筒形を有する、請求項1に記載の弁別システム。
【請求項13】
異なる位置における物体の、前記光学構成によって収集される出力電磁放射線の均一性を上げるように前記出力電磁放射線を変更する要素を更に備える、請求項1に記載の弁別システム。
【請求項14】
検出システムであって、
1列で流体カラム中の物体から出力電磁放射線を収集する光学構成と、
前記光学構成によって収集された前記出力電磁放射線の強度に応答する電気信号を生成する検出器と、
i)前記流体カラム中の前記物体の位置に基づいて前記電気信号で表される前記出力電磁放射線の前記強度を正規化する命令及びii)第1のタイプの物体を他の物体から弁別する命令を記憶した解析器と、
を備え
前記流体カラムは、概して円形の断面のシース流体内に含まれる概して楕円形の断面のコア流中に物体を含み、前記流体カラム中の物体は、コア流の前記概して楕円形の断面の長軸上の異なる位置に配置され、前記流体カラム中の前記物体の前記位置に基づいて前記電気信号で表される前記出力電磁放射線の前記強度を正規化する、前記解析器に記憶された命令は、前記電気信号で表される前記出力電磁放射線の前記強度に補正を適用する、検出システム。
【請求項15】
前記検出器は第1の検出器及び第2の検出器を含み、前記第1の検出器によって提供される前記電気信号への数学的演算は、前記第2の検出器からの信号に基づく前記流体カラム中の物体の前記位置に関連する、請求項14に記載の検出システム。
【請求項16】
前記第2の検出器は位置検出器を含む、請求項15に記載の検出システム。
【請求項17】
前記位置検出器は、カメラ、CCD、PSD、SiPM分割検出器、及びフォトダイオードアレイからなる群から選択される検出器である、請求項16に記載の検出システム。
【請求項18】
前記検出器は、i)前記光学構成によって収集された前記出力電磁放射線の前記強度に応答する電気信号を生成し、ii)前記流体カラム中の物体の前記位置を検出する第1の検出器を含む、請求項14に記載の検出システム。
【請求項19】
前記第1の検出器は、PMT分割検出器、SiPM分割検出器、フォトダイオードアレイ、PMTのアレイ、及びSiPMのアレイからなる群から選択される検出器を含む、請求項18に記載の検出システム。
【請求項20】
前記第1の検出器は、前記光学構成の像面外に配置される、請求項18に記載の検出システム。
【請求項21】
前記コア流の前記長軸上の各位置についての補正係数が決定され、前記補正係数は、前記コア流の前記長軸上の前記位置に基づいて各事象に適用される、請求項14に記載の検出システム。
【請求項22】
前記第1のタイプの物体は、X染色体を持った生存精子及びY染色体を持った生存精子からなる群から選択される物体を含む、請求項14に記載の検出システム。
【請求項23】
1列で内部の異なる位置に物体を含む流体カラムを作成することと、
励起電磁放射線を生成することと、
測定領域における前記流体カラム中の物体に前記励起電磁放射線を向けることであって、前記流体カラム内の前記物体は、前記励起電磁放射線に応答して出力電磁放射線を発することと、
前記物体から出力電磁放射線を収集することと、
収集された前記出力電磁放射線の強度に応答する電気信号を生成することと、
前記流体カラム中の前記物体の前記位置に基づいて前記電気信号で表される前記出力電磁放射線の前記強度を正規化することと、
第1のタイプの物体を他の物体から弁別することと、
前記流体カラム中の物体の前記位置を検出することと、
を含み、
前記流体カラムは、概して円形の断面のシース流体内に含まれる概して楕円形の断面のコア流中に物体を含み、前記流体カラム中の物体は、前記コア流の前記概して楕円形の断面の長軸上の異なる位置に配置される、方法。
【請求項24】
前記電気信号で表される前記出力電磁放射線の前記強度に補正を適用することを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記コア流の前記長軸上の各位置についての補正係数を決定することと、前記コア流の前記長軸上の前記位置に基づいて前記補正係数を各事象に適用することとを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1のタイプの物体は、X染色体を持った生存精子及びY染色体を持った生存精子からなる群から選択される物体を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
解析器は、X染色体を持った生存精子とY染色体を持った生存精子とを弁別する命令を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
異なる位置における物体から収集される出力電磁放射線の均一性を上げるように前記出力電磁放射線を変更する要素を更に備える、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
物体弁別デバイス及び技法は、異なる特性を有する物体等の異なるタイプの物体を区別する。これらのデバイス及び技法は、対象となる指定された特性に従って細胞を解析し、更にはソートするのに特に有用である。幾つかの細胞ソート手法は、細胞のタイプを特定するのに細胞から発せられた光又は染色された細胞に頼る。幾つかの実施態様では、流体のカラム中を移動している細胞が励起源に露出されて、検出のための出力電磁放射線を生成する。第1のタイプの細胞又は特定の特性を有する細胞は、他の細胞と比較して幾つかの特性、例えば波長及び/又は強度が異なる出力電磁放射線を生成する。そのような違いは、細胞タイプを弁別しソートするためのベースとして機能する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
幾つかの実施形態は、流体カラム内に配置された物体から発せられた電磁放射線に基づいて異なるタイプの物体を弁別する弁別システムに関する。構造を形成する流体カラムは、流体カラム内の異なる位置に物体を含む流体カラムを作成し、励起源が、測定領域における流体カラム中の物体に向けられた励起電磁放射線を生成する。流体カラム内の物体は、励起電磁放射線に応答して出力電磁放射線を発する。光学構成が物体からの出力電磁放射線を収集し、検出器が、出力電磁放射線の強度に応答する電気信号を生成する。解析器は、i)流体カラム中の物体の位置に基づいて電気信号に表される出力電磁放射線の強度を正規化し、ii)第1のタイプの物体を他の物体から弁別する、記憶された命令を含む。
【0003】
検出システムの幾つかの実施形態によれば、光学構成は、流体カラム中の物体から出力電磁放射線を収集し、検出器は、光学構成によって収集された出力電磁放射線の強度に応答する電気信号を生成する。解析器は、i)流体カラム中の物体の位置に基づいて電気信号で表される出力電磁放射線の強度を正規化し、ii)第1のタイプの物体を他の物体から弁別する、記憶された命令を含む。
【0004】
他の実施形態によれば、物体を弁別する方法は、流体カラム内の異なる位置に物体を含む流体カラムを作成することによって開始される。励起電磁放射線は、測定領域における流体カラム中の物体に向けられる。測定領域における物体は、励起電磁放射線に応答して出力電磁放射線を発し、これは収集され、出力電磁放射線の強度に応答する電気信号を生成するのに使用される。電気信号で表される出力電磁放射線の強度は、流体カラム中の物体の位置に基づいて正規化され、第1のタイプの物体は他の物体から弁別される。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
弁別システムであって、
内部の異なる位置に物体を含む流体カラムを作成する流体カラム形成構造と、
測定領域において前記流体カラム中の物体に向けられた励起電磁放射線を生成する励起源であって、前記流体カラム内の前記物体は、前記励起電磁放射線に応答して出力電磁放射線を発する、励起源と、
前記物体から出力電磁放射線を収集する光学構成と、
前記光学構成によって収集された前記出力電磁放射線の強度に応答する電気信号を生成する検出器と、
i)前記流体カラム中の前記物体の前記位置に基づいて前記電気信号で表される前記出力電磁放射線の前記強度を正規化する命令及びii)第1のタイプの物体を他の物体から弁別する命令を記憶した解析器と、
を備える弁別システム。
(項目2)
前記検出器は第1の検出器を含み、前記システムは、前記流体カラム中の物体の前記位置を検出する第2の検出器を更に備える、項目1に記載の弁別システム。
(項目3)
前記第2の検出器は位置検出器を含む、項目2に記載の弁別システム。
(項目4)
前記位置検出器は、カメラ、CCD、PSD、SiPM分割検出器、及びフォトダイオードアレイの群から選択される検出器である、項目3に記載の弁別システム。
(項目5)
前記検出器は、i)前記光学構成によって収集された前記出力電磁放射線の前記強度に応答する電気信号を生成し、ii)前記流体カラム中の物体の前記位置を検出する第1の検出器を含む、項目1に記載の弁別システム。
(項目6)
前記第1の検出器は、前記光学構成の像面に配置されない、項目5に記載の弁別システム。
(項目7)
前記第1の検出器は、PMT分割検出器、SiPM分割検出器、フォトダイオードアレイ、PMTのアレイ、及びSiPMのアレイからなる群から選択される検出器を含む、項目5に記載の弁別システム。
(項目8)
前記流体カラムは、概して円形の断面のシース流体内に含まれる概して楕円形の断面のコア流中に物体を含み、前記流体カラム中の物体は、コア流の前記概して楕円形の断面の長軸上の異なる位置に配置される、項目1に記載の弁別システム。
(項目9)
前記流体カラム中の前記物体の前記位置に基づいて前記電気信号で表される前記出力電磁放射線の前記強度を正規化する、前記解析器に記憶された命令は、前記電気信号で表される前記出力電磁放射線の前記強度に補正を適用する、項目8に記載の弁別システム。
(項目10)
前記コア流の前記長軸上の各位置についての補正係数が決定され、前記補正係数は、前記コア流の前記長軸上の前記位置に基づいて各事象に適用される、項目9に記載の弁別システム。
(項目11)
前記第1のタイプの物体は、X染色体を持った生存精子及びY染色体を持った生存精子からなる群から選択される物体を含む、項目1に記載の弁別システム。
(項目12)
前記解析器は、X染色体を持った生存精子とY染色体を持った生存精子とを弁別する命令を含む、項目1に記載の弁別システム。
(項目13)
前記物体は、サンプル流体の楕円形カラム内に配置された精子を含み、前記サンプル流体はシース流体の外層と同軸に形成され、前記シース流体は概して円筒形を有する、項目1に記載の弁別システム。
(項目14)
異なる位置における物体の、前記光学構成によって収集される出力電磁放射線の均一性を上げるように前記出力電磁放射線を変更する要素を更に備える、項目1に記載の弁別システム。
(項目15)
検出システムであって、
流体カラム中の物体から出力電磁放射線を収集する光学構成と、
前記光学構成によって収集された前記出力電磁放射線の強度に応答する電気信号を生成する検出器と、
i)前記流体カラム中の前記物体の位置に基づいて前記電気信号で表される前記出力電磁放射線の前記強度を正規化する命令及びii)第1のタイプの物体を他の物体から弁別する命令を記憶した解析器と、
を備える検出システム。
(項目16)
前記検出器は第1の検出器及び第2の検出器を含み、前記第1の検出器によって提供される前記電気信号への数学的演算は、前記第2の検出器からの信号に基づく前記流体カラム中の物体の前記位置に関連する、項目15に記載の検出システム。
(項目17)
前記第2の検出器は位置検出器を含む、項目16に記載の検出システム。
(項目18)
前記位置検出器は、カメラ、CCD、PSD、SiPM分割検出器、及びフォトダイオードアレイからなる群から選択される検出器である、項目17に記載の検出システム。
(項目19)
前記検出器は、i)前記光学構成によって収集された前記出力電磁放射線の前記強度に応答する電気信号を生成し、ii)前記流体カラム中の物体の前記位置を検出する第1の検出器を含む、項目15に記載の検出システム。
(項目20)
前記第1の検出器は、PMT分割検出器、SiPM分割検出器、フォトダイオードアレイ、PMTのアレイ、及びSiPMのアレイからなる群から選択される検出器を含む、項目19に記載の検出システム。
(項目21)
前記第1の検出器は、前記光学構成の像面外に配置される、項目19に記載の検出システム。
(項目22)
前記流体カラムは、概して円形の断面のシース流体内に含まれる概して楕円形の断面のコア流中に物体を含み、前記流体カラム中の物体は、コア流の前記概して楕円形の断面の長軸上の異なる位置に配置され、前記流体カラム中の前記物体の前記位置に基づいて前記電気信号で表される前記出力電磁放射線の前記強度を正規化する、前記解析器に記憶された命令は、前記電気信号で表される前記出力電磁放射線の前記強度に補正を適用する、項目15に記載の検出システム。
(項目23)
前記コア流の前記長軸上の各位置についての補正係数が決定され、前記補正係数は、前記コア流の前記長軸上の前記位置に基づいて各事象に適用される、項目22に記載の検出システム。
(項目24)
前記第1のタイプの物体は、X染色体を持った生存精子及びY染色体を持った生存精子からなる群から選択される物体を含む、項目15に記載の検出システム。
(項目25)
内部の異なる位置に物体を含む流体カラムを作成することと、
励起電磁放射線を生成することと、
測定領域における前記流体カラム中の物体に前記励起電磁放射線を向けることであって、前記流体カラム内の前記物体は、前記励起電磁放射線に応答して出力電磁放射線を発する、向けることと、
前記物体から出力電磁放射線を収集することと、
収集された前記出力電磁放射線の強度に応答する電気信号を生成することと、
前記流体カラム中の前記物体の前記位置に基づいて前記電気信号で表される前記出力電磁放射線の前記強度を正規化することと、
第1のタイプの物体を他の物体から弁別することと、
を含む方法。
(項目26)
前記流体カラム中の物体の前記位置を検出することを更に含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記流体カラムは、概して円形の断面のシース流体内に含まれる概して楕円形の断面のコア流中に物体を含み、前記流体カラム中の物体は、前記コア流の前記概して楕円形の断面の長軸上の異なる位置に配置される、項目25に記載の方法。
(項目28)
前記電気信号で表される前記出力電磁放射線の前記強度に補正を適用することを更に含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記コア流の前記長軸上の各位置についての補正係数を決定することと、前記コア流の前記長軸上の前記位置に基づいて前記補正係数を各事象に適用することとを更に含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記第1のタイプの物体は、X染色体を持った生存精子及びY染色体を持った生存精子からなる群から選択される物体を含む、項目25に記載の方法。
(項目31)
解析器は、X染色体を持った生存精子とY染色体を持った生存精子とを弁別する命令を含む、項目25に記載の方法。
(項目32)
異なる位置における物体から収集される出力電磁放射線の均一性を上げるように前記出力電磁放射線を変更する要素を更に備える、項目25に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】特定の実施形態による弁別システムの図である。
図2図1のシステムの測定領域中の流体カラムのx-y平面断面を示す。
図3】収集光学系として機能する光学装置に対する流体カラムの流体-空気境界面において光の実質的に均一な屈折を有する流体カラムの中央近傍に配置された物体から発せられた光を示す。
図4】収集光学系として機能する光学装置に対する流体-空気境界面において光の非均一屈折を示す流体カラムの楕円コアの上部に配置された物体から発せられた光を示す。
図5】位置xの関数としての平面内光線密度の角度依存についての解析式を作成するのに利用されるジオメトリを示す。
図6】流体カラム内の異なる物体位置での発光の角度依存を示すグラフのファミリを提供する。
図7】収集光学系の異なる開口数でのx軸に沿った物体位置に対する流体カラムから収集された光の相対強度のグラフのファミリを提供する。
図8】幾つかの実施形態による、検出された出力光を位置変動について補正することによって流体カラム中を移動する物体を識別する手法の流れ図である。
図9】単一の検出器からの位置及び強度の検出を含む一実施形態の概略を提供する。
図10】強度を検出する第1の検出器と、物体位置を特定する第2の検出器とを含む一実施形態の概略を提供する。
図11】分割検出器を用いて物体位置を特定するシミュレーションの出力を示す。
図12】精核の位置に基づいて、検出された値を補正することによって強度測定値を改善する一実験の結果を示す。
図13】生精細胞の位置に基づいて、検出された値を補正することによって強度測定値を改善する一実験の結果を示す。
図14】精核位置に基づいて補正係数を用いて位置合わせが不良の機器の性能を改善しようとする一実験の結果を示す。
図15】物体の異なる位置での発光の角度依存のグラフのファミリを提供し、除外領域を示す。
図16】角度が除外されない場合、-0.3rad~+0.3radの角度を有する光線が除外される場合、及び-0.4rad~+0.4radの角度を有する光線が除外される場合、x軸に沿った物体位置に関する流体カラムから収集される光の相対強度を示す。
図17】補正係数及び強度測定値の位置依存性を光学的に低減するための要素の両方を利用した一実験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図は必ずしも一定の縮尺ではない。図中使用される同様の数字は同様の構成要素を指す。しかしながら、所与の図において構成要素を指すための数字の使用は、同じ数字で記された別の図における構成要素を限定する意図がないことが理解されよう。
【0007】
本明細書に記載の実施形態は、異なるタイプの物体間を弁別するデバイス、システム、及び方法に関する。物体は、フロー流等の流体カラム中の物体に向けられた励起光に応答して出力光を発する。本明細書で使用されるとき、「発する」という用語は、光等の反射された電磁放射線及び蛍光発光電磁放射線の両方を指す。本明細書で使用されるとき、「光」という用語は、可視スペクトルの波長における電磁放射線及び赤外線及び紫外線スペクトルの波長における電磁放射線の両方を指す。そのような出力電磁放射線は、物体から直接反射又は蛍光発光された光及び物体関連付けられた染料又は色素によって反射又は蛍光発光された光を含み得る。幾つかの実施態様では、細胞タイプは、物体から発せられる出力電磁放射線の強度に基づいて区別される。強度は、ピーク強度又は強度信号下の積分エリア等の合計強度として特定することができる。本明細書に記載の特定の実施形態は、X染色体精細胞とY染色体精細胞の区別に関する。更なる実施形態は、X染色体を持った生精細胞を、Y染色体を持った精細胞及び両性の非生存細胞を含め、X染色体を持った生精細胞以外の物体から区別することに関わる。
【0008】
本開示の手法はより一般的に、ある物体タイプから発せられる出力電磁放射線が、別の物体タイプから発せられた電磁放射線と比較した場合、少なくとも1つの特性において弁別可能な違いを生み出す限り、異なるタイプの任意の物体間の区別に適用することができることが理解されよう。提供される幾つかの例では、流体カラムは、電磁放射線の屈折が生じ得る湾曲した境界又は境界面を有するフロー流である。例えば、流体カラムの湾曲した境界は一般に、円形の断面であり得る。流体カラムは、キュベット内若しくはマイクロ流体チャネル内等の固体壁によって区切られ得、又はジェットインエアフローサイトメータ等の空気中に噴射され得る。物体は、流体カラムに沿って、中央コアを少なくとも部分的に囲繞するシース流体によって形作られる中央コアを通って移動し得る。精子ソート用途では、中央コアは、精細胞を含むサンプル流体のコア流を含み得る。コア流は、概してリボン形に調整されてもよく、又は非球面精細胞を配向するために概して楕円形の断面を有してもよい。物体から発せられた電磁放射線は、流体カラムと空気との間の境界面等の物体と他の材料との間の少なくとも1つの光学屈折境界に直面する。
【0009】
少なくとも部分的にシース流体及び空気の屈折性が異なることに起因して、カラム内の物体から発せられた光の流体カラム外部の集光効率は、そのようなシステムでの物体の位置に依存する。位置に伴って変わる集光効率は、物体から発せられた光を精密に定量化しなければならず、そのような精密さが物体のランダム(直接観測可能ではない)位置変動によって制限される用途において有害である。特に性分化精子の場合、そのようなシステムは、非常に明るく密に関連する蛍光強度を区別しようとする。精細胞及び精核は一般に、Hoechst33342で染色されて、そのような区別を行う。Hoechst33342は、二本鎖核DNAの副グローブにおけるA-T塩基対と選択的に結合する明るい細胞透過性色素である。Hoechst33342を用いて精細胞を化学量論的に染色することにより、わずかに異なる量の核DNAを有するものとしてX染色体とY染色体を区別する。例えば、多くの家畜は約4%の違いを有する。精細胞が適宜染色され配向される場合、355nmの波長又はその近傍の波長で動作するレーザ等の適切な励起源で照射されるとき、精細胞の核DNAと関連付けられたHoechst33342の蛍光強度により、この小さな違いを区別することができる。
【0010】
この4%の違いは、幾つかの理由により検出が難しい。第1に、精核DNAは、大半の種で非球面であるか、又はパドルのような形状を有する精子頭部内に存在する。この非対称性により、精子は平坦な側及びより狭い側から異なって蛍光発光する。実際に、この変動はDNA内容物の4%の違いを超え、核染色体内容物に基づいて区別するためには、精子を配向させなければならないことを意味する。配向ジオメトリは、リボン形又は楕円形断面を有するコア流を生成させる傾向を有する。この楕円形断面は、一軸に配置する場合の通常の自由度よりも大きい精子を提供する。
【0011】
本明細書に開示される手法は、ジェットインエアフローサイトメータ等の、そのような変動によって制限され得るシステムの精密さを強化する。より詳細に以下説明するように、流体カラム中の物体から収集された光強度の位置変動性は、位置への強度の依存性を補正するアルゴリズムを用いて対処することができる。
【0012】
本明細書に概説する手法は、特にフローサイトメトリに適用可能である。しかしながら、本手法は、境界面のある側から光を発する物体から、光が境界面の別の側から収集され、境界面が、検出器に対する物体の位置に依存するように、発せられた光線の経路を変動させる任意のシステムに適用可能である。本明細書における手法は、流体カラム内の位置変動を補正し、それ故、物体のタイプを区別するためにより正確な測定値を提供する。
【0013】
図1に模式的に示す「ジェットインエア」フローサイトメータシステム100は、本開示の概念を考察するのに利用することができる弁別システムの一種である。「ジェットインエア」フローサイトメータシステム100は、高速で、例えば約20m/sでチャンバ110の出口ノズル160から噴射する流体カラム150を含むフロー流を生み出す構造を形成する流体カラムを含む。出口ノズル160から吐出された流体カラム150は、大まかに円形の断面であることができ、幾つかの実施態様では、直径約10μmから約100μmを有し得る。幾つかの実施形態では、チャンバ110及び/又は出口ノズル160の内部には、流体カラム内で精子を水力学的に配向する内部ジオメトリが構成される。非限定的な例として、精子を配向し、流体カラムの同軸フローを生成するために、米国特許第6,782,768号明細書及び同第6,263,745号明細書に記載のようなノズルを組み込み得る。流体カラム150は、シース流152内のコア流151で構成され、図1中の矢印はコア流151及びシース流152の流れる方向を示す。シース流152は概して円形の断面を有し得、一方、コア流は概して楕円形の断面を有し、長軸及び短軸を有する。
【0014】
チャンバ110内で、サンプル注入要素111は、複数のタイプであり得る物体171、172を含むコア流151を導入する。コア流151は、シース流体を含むシース流152によって区切られ、チャンバ110において流体力によって形作られる。シース流152は少なくとも部分的にコア流151を囲繞し、シース流152及びコア流151は実質的に混ざらない。チャンバ110の傾いた又は傾斜した壁115は、コア流151を形作り、コア流151内で物体171、172を加速させる力を付与する。シース流152の移動は物体171、172をコア流151に閉じ込めて、流体カラム150がチャンバ110から噴射されるとき、流体カラム150の中央に向かって移動する。流体カラム150は物体171、172を流体カラム150の測定領域175に例えば1列で運ぶ。
【0015】
物体が流体カラム150の測定175を通過する際、励起源180からの光が励起光を物体171、172に提供する。励起源180は、広波長帯又は狭波長帯の光を提供することができる。例えば、励起源180はレーザであり得る。物体又は物体と関連付けられた色素から応答を生み出すのに適した任意のレーザを採用してよい。パルスレーザ及び連続波レーザは各々、適切な応答の生成に十分に適する。幾つかの構成では、励起光等の歴源によって生成される電磁放射線は、光学要素181によって変更し得る。例えば、励起光は、1枚又は複数枚のレンズ181によって測定領域175に集束し得る。レンズを使用して、励起電磁放射線を測定領域に集束する適したビーム形状に集束させ得る。測定領域175中の物体172aは、励起源180に応答して光、例えば散乱光又は蛍光を発する。
【0016】
第1のタイプの物体171は、第2のタイプの物体172から発せられる出力電磁放射線と比較して少なくとも1つの特性が異なる出力電磁放射線を発する。例えば、幾つかの状況では、第1のタイプの物体171は、第2のタイプの物体172の物体から発せられる光よりも高い強度を有する光を発する。
【0017】
光学収集構成190が、流体-空気境界面153において流体カラム150の光学屈折境界を横断する測定領域175内の物体172aから発せられた出力電磁放射線161を収集するように位置決めされる。幾つかの実施形態では、光学構成190は、出力電磁放射線161を変更して、測定領域175における物体172aから発せられた出力電磁放射線を検出器185に集束させる変更出力電磁放射線162を提供するように構成し得る。幾つかの実施形態では、光学収集構成190は、出力電磁放射線161の位置依存性を低減する要素を含み得る。検出器185は変更出力電磁放射線162を受け取り、それに応答して、変更出力電磁放射線の特性を表す電気信号を生成する。単なる一例として、検出器185は順方向蛍光検出器であり得る。当然ながら、対象となる散乱、減衰、位相シフト、又は他の特性等の対象となる特性を検出するために、他の検出器を組み込んでもよい。単なる非限定的な例として、検出器は、光電子増倍管(PMT)、シリコン光電子増倍管(SiPM)、フォトダイオードアレイ、又は分割検出器であり得る。幾つかの実施形態では、検出器185は2つ以上の検出器を表し得る。幾つかの実施形態では、第2の位置検出器を利用し得る。他の実施形態では、側方検出器を採用して、側方散乱又は側方蛍光を検出し得る。更に他の実施形態は、検出器185に加えて位置検出器及び側方検出器の両方を組み込み得る。
【0018】
幾つかの状況では、電気信号の振幅は、異なる物体タイプで異なり得る。電気信号は、異なるタイプの物体171、172を区別するために解析器187によって使用される。例えば、解析器187は、電気信号の振幅を閾値と比較して、第1のタイプの物体171と第2のタイプの物体172を区別するように構成し得る。解析器187は、1つ又は複数の検出器からの1つ又は複数の信号を操作するために、1つ又は複数のアナログ回路及び/又はデジタルプロセッサを含み得る。単なる一例として、側方検出器を検出器185に対して90度で採用して、側方散乱又は側方蛍光を検出し得る。精子ソートの場合、側方蛍光により、解析器187は非配向精子から適宜配向された精子を区別することができる。
【0019】
解析器187は、実行可能命令が記憶されたプロセッサ188を含み得る。検出器信号からの情報を収集、比較、操作するために既知の命令198に加えて、プロセッサは、測定領域175における流体カラム150中の物体172aの位置に基づいて検出器からの電気信号で表される出力電磁放射線の強度値を正規化する命令192を含み得る。強度値は、任意の方法で正規化し得る。単なる一例として、蛍光強度及び位置情報を含むデータの初期サンプリングに基づいて、手書きの線又は曲線をユーザによってグラフィカルユーザインターフェーズに入力し得る。
【0020】
プロセッサ188は、物体を弁別する命令182を含むこともできる。図2は、図1に示す測定領域175における流体カラム150のx-y平面断面を示す。測定領域175におけるx-y断面において、コア流151は楕円形の形状であり、コア流151の流体は、緩衝溶液中に懸濁した少なくとも1つの物体172aを含み、これはサンプルと呼ばれることもある。シース流152はコア流151を実質的に囲繞する。本開示でのこの考察に使用される特定の例では、物体171、172は精細胞であり、システム100は、Y染色体精子からX染色体精子を弁別するのに実施される。
【0021】
励起源180によって生成された集束レーザビームは、測定領域175内の精細胞172aを照射する。細胞171、172は蛍光色素で染色され、励起電磁放射線は測定領域175内の細胞172aに蛍光出力電磁放射線を放射させる。概して楕円形のコア流151の目的は、精細胞の平坦側が、図2に示すように左右に面するように精細胞172aを配向することである。この配向では、精細胞172aの平坦側はレーザ180及び光学収集構成190にそれぞれ面する。各細胞171、172が測定領域175において同様の配向で存在する場合、配向に基づくランダム変動性を大きく低減することができる。しかしながら、この配向を目的とした楕円形の断面は、流体カラム150内の細胞の位置に関して大きな自由度も提供する。
【0022】
所望の配向を得るために、楕円形コア流151は、図2に示すx軸に平行する長軸を呈する。精細胞172aは、コア流151内でx軸に沿って任意の数の位置をとることができる。図2は、楕円形コア151において可能な精細胞172aの3つの代表的な位置を示すが、精子が図示の位置間の任意の場所に配置されてもよいことを理解し得る。図2に示す配向では、コア流151における精細胞172aに可能な第1の位置は概ね楕円形コア151の中央であり(光学収集構成190の光軸199上)、可能な第2の位置はコア流151の上であり(光軸199の上)、可能な第3の位置はコア流151の下である(光軸199の下)。精細胞172aから発せられた出力光線の位置依存屈折は、コア流151内の流体-空気境界面153における異なる位置で生じる。本明細書で使用されるとき、「上」、「下」、「上部」、及び「下部」等の相対位置の用語は、図示される特徴間の関係に関して説明されるものとして理解されるべきであり、特許請求の範囲、特にコア流151における精子の位置を限定しない。
【0023】
精細胞172aが第1の位置に配置され、流体カラム150が図2に示すように円形断面を有する場合、精細胞172aから発せられた面内光線は概ね垂直に流体-空気境界面153に入射する。中央から離れた精細胞172aの点から発せられた光線又は図の平面外から発せられた光線は、境界面153に厳密に垂直には入射せず、これらの光線はこの簡易化された考察で考慮されないが、当業者ならば、ここでの考察がそれらの光線を含むように一般化可能であることがわかる。それ故、光の任意の屈折が流体-空気境界面153で生じる限り、屈折は検出器185に関してより均一に生じる。
【0024】
図3の図は、精細胞172aが図2に示す楕円形コア151内の第1の位置にある場合、電磁放射線が境界面153を通過する際に精細胞172aから発せられる出力電磁放射線298の均一な光屈折を示す。それに対応して、図3において流体カラム150から出る光線298の面内密度は、光線角度に関して均一である。光線の均一な角密度は、光線角度の関数としての均一な放射輝度に対応する。
【0025】
これとは対照的に、精細胞172aが光軸199からずれており、楕円形コア151の上又は下により近い、例えば図2に示す楕円形コア151の第2及び第3の位置にある場合、精細胞172aから発せられた出力光線の少なくとも幾らかは、流体-空気境界面153に斜めの角度で直面する。これらの出力光線は、上述した法線入射状況とは対照的に、流体-空気境界面153で非均一的に屈折する。最も斜めの光線は最も大きく屈折する。光線の屈折は、流体-空気境界面153を渡って流体カラム150から出る蛍光の放射輝度分布を非均一にし、x軸に沿った細胞172aの位置に伴って変動させる。即ち、この屈折は、精細胞172aから流体カラム150の外部に発せられた出力電磁放射線の放射線輝度分布を変える。
【0026】
例えば、細胞172aが光軸199からずれて、例えば図2に示す第2又は第3の位置に配置される場合、光線の密度、ひいては境界面153の空気側の放射輝度の分布は、光軸199に平行する角度又は負若しくは正の光線角度のそれぞれにおける境界面153の空気側の放射輝度と比較した場合、光軸199に関して正又は負の光線角度のそれぞれでより高い。正及び負は、図5における光線角度γの符号を指す。図4は、細胞172aが楕円形コア151の第2の位置に配置されている場合、細胞172aから発せられ、流体-空気境界面153を通って流体カラム150を出る光線299を示す図である。この状況では、正の光線角度での光線又は放射線輝度の密度は、光軸199と平行する光線又は負の光線角度の光線の密度よりも高い。所定の開口数(NA)を有する光学システムの場合、同じタイプの細胞からシステムによって収集される光の量(例えば収集効率)は、細胞が第1の位置にあるか、それとも第2の位置にあるかに応じて変わり得る。システム収集効率の位置依存性は、細胞タイプの特定に不正確性をもたらす。
【0027】
図5を参照すると、光線角度γ及び精子位置xの関数としての光線密度の解析式が、スネルの法則を使用して決定され、式中、γは、物体から発せられた光線の、流体-空気境界面で屈折した後の光軸に関する角度である。この解析は、フロー流の二次元断面内の光線又は接線方向の光線のみを考慮する。
【0028】
角度γに対する光線密度を解くことを望み、これは、各精子位置xでの光学収集システムの入射瞳における光線密度の特定に使用することができる。これは
γ(γ) (1)
と書くことができる。
【0029】
本発明の目的のために、精細胞が光を全方向に均一に発すると仮定することができ、それにより、角度θに関して発生される光線の密度は、
θ(θ)=1/π (2)
であり、即ち、
【数1】
から
【数2】
まで均一に分布する。幾何学的解析により、
【数3】
∝=π/2-Φ-θ;及び (4)
γ=π/2-Φ-β (5)
であり、式中、角度γ、θ、φ、α、β、及び距離xは図5に示されている。フロー流は屈折率nを有するため、スネルの法則により、角度間の別の関係がもたされる。
sinβ=nsin∝ (6)
【0030】
境界面外部の光線の密度Iβ(β)は、以下の式によって境界面内部の光線の密度Iα(α)に関連し、式中、T(α)は、境界面を通る透過の両極性にわたる平均を表す。
【数4】
【0031】
透過は以下の式:
T(∝)=1-R(∝) (8)
【数5】
を用いてs極及びp極のフレネル反射係数R(α)及びR(α)に関連する。
【0032】
上記及び以下の追加の関係と共に式(7)を使用すると、
【数6】
γに関する光線密度の式を有する。
【数7】
【0033】
ここで、光学収集構成のNAは最大光線角度γのsineによって与えられ、したがって、NAに関してこの角度を解くことができる。
γ=sin-1(NA) (16)
【0034】
最後に、精子位置xの関数としての相対収集光強度が、-γからγまで式(15)を積分し、x=0におけるその積分値によって正規化することによって与えられる。
【数8】
【0035】
公式を式(15)の光線密度分布に使用して、異なる精子位置での光線密度(放射輝度)の角度依存性は図6のようにプロットすることができる。図6では、各線は、所与の精子位置xでの角度γの関数として光線密度を表し、角度γはラジアン単位である。プロットは、光線密度(放射輝度)が角度の関数として均一である、x=0を中央として対称である範囲にある一連の位置に対応する(図6のグラフ404に対応する)。xが正である(例えばグラフ402に対応する図2における第2の位置)場合、相対放射輝度は、正の光線角度γでより高く、負の光線角度γでより低く、xが負である(例えばグラフ403に対応する図2における第3の位置)場合、逆のことが当てはまる。
【0036】
収集光学系(図1及び図2における光学収集構成190)の開口数が大きい、例えば1に近づきつつある場合、楕円形コア内の物体から発せられる光での位置に関する収集光学強度の変動は、比較的小さい。これは特に、物体から発せられ、右に向けられた全ての光が、厳密な光線方向に関係なく収集光学系によって収集され、発せられた光の総量が物体位置に関して不変である(均一な励起を所与として)ためである。これとは対照的に、開口数が小さいと、物体位置に関する収集強度変動は比較的大きくなり、その理由は、物体位置の変化が放射輝度分布に影響し、小さな開口数により、この変わる放射輝度分布の一部分のみが収集されることが暗示されるためである。実用的なシステムは、1よりもはるかに小さなNA、例えば0.5未満のNA又は0.3未満のNAを有し得る。図7に提供されるグラフのファミリは、異なるNAを用いる収集光学系を通して、物体位置xの関数として物体から収集される光の相対強度を示す。図6は、図7の異なる開口数によって捕捉された角度γの範囲を示す。
【0037】
図7のグラフのファミリでは、グラフ412は、開口数(NA)0.2を有する収集光学系(図1及び図2に示す光学収集構成190)でのx軸に沿った位置に関する相対強度を示し、グラフ414は、NA0.4を有する収集光学系でのx軸に沿った位置に関する相対強度を示し、グラフ416は、NA0.6を有する収集光学系でのx軸に沿った位置に関する相対強度を示し、グラフ418は、NA0.8を有する収集光学系でのx軸に沿った位置に関する相対強度を示し、グラフ419は、NA0.9を有する収集光学系でのx軸に沿った位置に関する相対強度を示す。図6及び図7から、NAが小さな収集光学系ほど、NAが大きな収集光学系と比較して、物体位置に関する収集光強度のばらつきが大きくなることが明らかである。さらに、NAが大きな収集光学系ほど、NAが小さな収集光学系よりも広範囲の屈折角を有する光線を収集し、したがって、より高い全体収集効率を有する。
【0038】
特に精子の弁別及びソートの用途に関して、コア流151の楕円形長軸(図1及び図2)が長さ約50μmであり得、いずれの方向にも移動する自由度約25μmの精子を提供することを理解することができる。再び図7を参照すると、物体が約17μm中央からずれている場合、NA0.2が物体相対強度の約90%しか捕捉しないことがわかる。同様に、NA0.4は約17μm中央からずれた物体の相対強度の92%しか捕捉せず、NA0.6は、同じ位置において相対強度の94%よりもごくわずかに上を捕捉する。精子ソータの収集光学系のNAは約0.3~約0.6であり得ることを更に理解し得る。図7はますます大きくなる開口数の利点を示すが、そのような開口数はますます高価になり、より浅い被写界深度を有し、より大きなアパーチャをノズルのより近くに配置しなければならないことを意味する。しかしながら、精子ソート用途において、収集光学系を配置することができる近さには限界がある。典型的な精子ソート機器では、アパーチャは約0.5~0.6であり得る。本明細書に記載の実施形態は、測定された強度への位置依存性を補正し、開口数のより小さな収集光学系が、開口数のより高い収集光学系のように実行できるようにする。
【0039】
したがって、コア流151中の図2の第2及び第3の位置に近づきつつある位置に配置された精子は、解析及び弁別のために最終的に検出される、全体強度がはるかに低い電磁放射線を発する。実際に、コア流151は、高事象率(毎秒60,000事象以上の大きさ)で長さ約50μmである楕円長軸を有し得る。幾つかの精子は20μm、更には約25μmまで中央から第1の位置のいずれかの側にずれる。極めて明るく密に関連する蛍光信号の状況では、この変動は、Y染色体を持った精子からX染色体を持った精子を区別する、染色された核DNAにおける大まかに4%の違いに影を落とし得る。
【0040】
さらに、バッファーのサンプル内の所与の精子濃度における事象数を上げるには、測定領域を通過する流体カラムにおける単位時間当たりのサンプル容量を上げる必要がある。このようにして毎秒当たりの検出事象数を上げると、長軸の長さを含め、流体カラム内のコア流の楕円形断面積も増大する。当然の結果として、且つ当業者ならば認識するように、サンプルの流量を上げることによってソート速度を上げることは一般に、精子ソート機器の感度を下げる。したがって、本明細書に記載の実施形態は、通常速度での精子ソート精度を改善するのみならず、忠実度をあまり損なわずにスループットに関して全体速度を上げた精子ソートも提供し得る。
【0041】
位置変動性の存在下で流体カラム中を移動する物体を識別する手法を図8の流れ図に示す。プロセスは、流体カラム内の異なる位置に物体を含む流体カラムを作成すること(510)を含む。流体カラムは、ジェットインエアフローサイトメータによって生み出される流体の同軸流であり得る。そのような流体カラムは、物体を沿って配置し得る長軸を有する楕円形断面を有するコア流を含み得る。コア流は、シース流内に同軸で含まれ得る。幾つかの実施形態では、流体カラムは空気-流体境界面を有し得、それにより、屈折が生じる。他の実施形態では、流体カラムはキュベット又はマイクロ流体チャネル内に形成し得る。そのような場合、液体-ガラス境界面があり得、恐らくはガラス-空気境界面があり得、発せられた光は2回屈折し得る。そのような2回屈折した光は、特定の実施形態の角度依存性補正から大きな恩恵を受けると予期される。
【0042】
プロセスは、励起電磁放射線を生成し(520)、励起電磁放射線を流体カラム中の測定領域における物体に向ける(530)ことによって続く。流体カラム内の物体は、測定領域における励起電磁放射線に応答して、出力電磁放射線を発する。出力電磁放射線は、測定領域中の流体カラム内で異なる位置を有する物体を含め、流体カラム中の物体から収集され(540)、検出器は、光学構成によって収集された出力電磁放射線の強度に応答する電気信号を生成する(550)。
【0043】
次に、解析器又は他の適した手段は、流体カラム中の物体の位置に基づいて出力信号によって表される強度を正規化する(560)。正規化は補正によって実行し得、それにより、図2の第2及び第3の位置に向かう、並びに第2及び第3の位置を含む等、中央軸からずれて生成された信号は、それらの位置に基づいて適切な補正係数によって増幅される。適切な補正係数の大きさは図7に見ることができる。補正によって正規化されると、方法は、第1のタイプの物体を他の物体から弁別すること(570)によって続く。弁別はフローサイトメータ解析器で行うことができ、1つ又は複数の追加の操作を含み得る。例えば、蛍光強度の分布を示す一変量ヒストグラムを生成し得る。補正された信号及び更に計算された値を用いて、二変量ヒストグラムを生成することもできる。そのような補正された値及び計算された値は、フローサイトメータ解析器におけるゲーティング領域と比較され、又はルックアップテーブルと比較されて、第1のタイプの物体を他のタイプの物体から弁別し得る。
【0044】
例示的な物体である精子は、X染色体を持った精子又はY染色体を持った精子のいずれかとして弁別し得る。さらに、精子は、二次消光色素に加えてDNA選択的色素で染色し得る。消光色素は典型的には、死んだ又は死につつある精細胞等の膜弱体化精細胞を透過し、それらの弱体化された細胞と関連付けられたDNA選択的色素によって生成される蛍光を大きく低減する。そのような消光細胞は効果的に、弁別/ソートを受けている密に関連する集団から除去される。このようにして、システムは、生きた又は生存している精細胞を死につつある又は弱体化された精細胞から弁別することができる。システムはまた、X染色体を持った生存精子を残りの全ての細胞から弁別し、Y染色体を持った精子を残りの全ての細胞から弁別し、又は更にはX染色体を持った生存精子及びY染色体を持った精子を他の全ての精子細胞から同時に弁別することもできる。
【0045】
図9は、測定領域に配置された物体172aから発せられた出力電磁放射線161が光学収集構成190によって収集される、図1及び図2に示す弁別システムと実質的に同様の弁別システムの第1の実施形態を示す。光学収集構成190は、変更された出力電磁放射線を検出器185に集束させる収集レンズを含み得る。図示の実施形態では、検出器は、変更された出力電磁放射線の特性を測定するとともに、流体カラム150のコア流151内の物体172aの位置を特定する位置検出器186と同様に機能する。
【0046】
変更された出力電磁放射線162の特性を特定するとともに、測定領域における物体172aの位置を特定するのに適した検出器185は、分割検出器又はPMT、SiPM、pinフォトダイオード等の検出器アレイを含み得る。これらの検出器は、物体の像面又はフーリエ面に配置されて、物体の位置を特定し得る。像面において、検出器は物体の位置を直接測定し、一方、フーリエ面において、位置情報は側方強度分布(例えば左右非対称性)から抽出される。
【0047】
フローサイトメトリ用途では多くの場合、非常に高感度(単一光子カウントまで)且つ高速(物体は10μmを通して約20m/sで移動する)の検出器が求められる。必要とされる速度及び感度を有する検出器は典型的には、内部利得を提供する検出器である。ピクセル化アバランシェ(pixelated avalanche)フォトダイオードとしても知られる光電子増倍管(PMT)又はシリコン光電子増倍管(SiPM)では、単一光子は最高で約10個の電子のカスケードを作り出す。両検出器タイプも、検出器アレイとして市販されている。SiPMは、シリコンウェーハ上の標準技法によって作製されるため、物体の位置特定に適した検出器アレイにおける使用により適し得る。SiPM等のある検出器は、検出器のより大きなエリアにわたって光を分布させるために、フーリエ面に配置されるのに特に適し得る。
【0048】
図10は、ビームスプリッタ191又は他の適した光学系が、変更された出力電磁放射線162の電力の一部分をリダイレクトする代替の一実施形態を示す。変更された出力電磁放射線162の大半は検出器185に向けられ、検出器185に集束する。この実施形態では、検出器185は、対称となる特性を検出する第1の検出器176を含む。第1の検出器176は、対称となる特定の特性の定量化に従来適する任意の検出器であり得る。典型的なフローサイトメータ用途では、フォトダイオード、光電子増倍管(PMT)、及びシリコン光電子増倍管は、散乱又は蛍光発光電磁強度の検出に特によく適し得る。
【0049】
ビームスプリッタ191は誘電ミラー197を含み得るが、キューブビームスプリッタ、プリズムビームスプリッタ等の他の適した光学構成要素が、変更された出力電磁放射線162の電力の一部分をリダイレクトするのに使用し得ることを当業者ならば理解しよう。出力電力が分割される様式に関わりなく、第1のビーム部分164は第1の経路に沿って検出器に向けられ、第2のビーム部分165は異なる経路に沿って位置検出器177の形態の第2の検出器173に向けられる。位置検出器は、カメラ、等方性センサ又は電荷結合素子(CCD)等の位置有感デバイス(「PSD」)、分割検出器、PMT、SiPM、pinフォトダイオードの検出器アレイ等であることができる。
【0050】
図11を参照して、シミュレーションを実行して、フローサイトメトリシステムにおける位置情報の特定に関する分割検出器の実行可能性を示した。シミュレーションは、並べて搭載された3mmSiPM検出器を含む分割SiPM検出器を採用した。検出器が接する縁部は、中央x座標位置として較正され、インテロゲーションレーザのビーム軸及び流体カラムの対称中央をシミュレートした。1.5mmスポットサイズを約-12mmから12mmまでのx位置から分割検出器にわたって掃引し、相対強度が各検出器によって測定し、記録した。第1のグラフ601は、約-12mmから約12mmまでの範囲のx位置から検出器の1つからビームスポットに記録された相対強度を示し、x位置はSiPM検出器の平面に対応する。グラフ602は、約-12mmから約12mmまでのx位置の範囲でのビームスポットについて他の検出器によって検出された対応する相対強度を示す。見てわかるように、2つの検出器での位置差は、1.5mmスポットのx位置に基づく異なる測定強度に繋がる。これらの差は位置と相関し、処理手段を通して変換されて、位置情報を近似することができる。ノイズがシミュレーションに含まれたが、ノイズは強度と無関係であった。最大強度において、ノイズは0.8%変動係数に対応する。シミュレーションは、分割検出器構成において、分割検出器構成における各SiPMによって検出される相対強度に基づいてx位置を特定することができることを実証した。本発明の実施形態がこの構成に限定されず、流体カラム内の粒子の位置特定に適した他の検出器構成も本明細書での使用に企図されることを当業者ならば理解することができる。単なる一例として、他の検出器を分割検出器構成に採用してもよい。結合信号は十分に低い変動係数を有さなければならないため、検出器が低ノイズを有するべきであることを当業者ならば理解しよう。
【0051】
図12は、X及びY染色体を持った精核の区別における有意な改善に繋がる流体カラム中の精核の位置補正を組み込んだ一実験の結果を示す。Cytonome製のGenesis III精子ソート機器を通して、Hoechst33342で染色された精核を処理した。機器にSiPM分割検出器が装備される。サンプル及びシース圧を調整して、毎秒35,000事象の事象率を確立した。Coherent Genesis CW-355レーザを用いて平均電力150mWで核を調べた。プロット610は、流体カラム中の核の位置デルタに対してプロットされた分割検出器中の各検出器からの蛍光集中の和を示す二変量ヒストグラムを示す。先に述べたように、位置デルタの範囲は、核が測定領域に入り得る楕円形コア流の長軸を表す。X染色体を持った精核612の集団は三日月形で見られる。予期されたように、測定された強度は位置デルタ0付近で最大であり、核が中央位置から離れて移動するにつれて下方に湾曲して低減する。Y染色体を持った核614の集団は、X集団の真下の第2の三日月として見え、ここでも、最高強度は位置デルタ0付近で見られ、核が中央位置から離れて移動するにつれて相対強度は大きく低下する。
【0052】
プロット620は、プロット610においてチャート化された強度に対応する合算蛍光強度の一変量ヒストグラムを提示する。X染色体を持った核の明確な集団612及びY染色体を持った核の集団614を見ることができるが、プロット620とのプロット610の比較により、中央からずれた、X染色体を持った精核がますます、中央に配置された、Y染色体を持った精核と重なることが明らかになる。実際に、山対谷比は76.8%と計算される。
【0053】
本発明の実施形態によれば、補正係数616はプロット610における曲線として示される。補正係数616は、事象のランダム位置によって導入される変動を除去するために、検出された蛍光強度に必要とされる補正の程度を示す。対応する補正をプロット630に示す蛍光合算値に適用して、X染色体を持った核の補正された集団632及びY染色体を持った核の補正された集団634を生成した。X染色体を持った核の補正された集団632は、概して矩形の形状を形成し、もはや、流体カラム中の核の位置に基づく変動を示さない。プロット630において、X染色体を持った核の補正された集団632とY染色体を持った核の補正された集団634との間に明確なギャップを見ることができる。プロット640は対応する一変量ヒストグラムを示し、X染色体を持った核の補正された集団632とY染色体を持った核の補正された集団634との間に94%の山対谷比を有する。プロット620とプロット640との間の著しい対照は視覚的に明らかである。さらに、違いは、より高い17.2パーセントポイントで定量化可能である。
【0054】
図13は、本明細書に記載の実施形態による補正を組み込んだ一例の結果を示す。Cytonome製のGenesis III精子ソート機器を通してHoechst33342で染色した生精子を処理した。毎秒43,000事象の事象率に達するようにサンプル及びシース圧を調整し、平均電力100mWで動作するCoherent Genesis CW-355レーザを用いて精子を調べた。プロット710は、コア流中の生精子の合算蛍光強度及び相対位置の二変量ヒストグラムを示す。ここでも、X染色体を持った精子の集団712は、Y染色体を持った精子の集団714の上の第1の集団として見ることができる。合算強度値を正規化するための補正係数716もプロット710に示される。プロット720は、補正されていない合算強度の一変量ヒストグラムを示し、X染色体を持った精子の集団712とY染色体を持った精子の集団714との間に山対谷比75.3%を示す。
【0055】
プロット730は、精子ソート用途で一般的な二変量ヒストグラムのタイプを提供する。この場合、補正された順方向蛍光強度が側方蛍光に対してプロットされる。側方蛍光は各細胞の配向についての情報を提供するため、順方向蛍光対側方蛍光ヒストグラムは生精子のソートに有用である。これとは対照的に、精核は超音波処理され、非球面精子頭部から除去される。したがって、精核をソートする場合、配向は問題ではない。このため、核はソートが容易であり、多くの場合、精子ソートフローサイトメータの較正に使用される。プロット730は、X染色体を持った精子の補正された集団732及びY染色体を持った精子の補正された集団734を示す。
【0056】
先の例とよく似たように、プロット740はなおY軸において、グラフ730の補正された順方向蛍光に相関する。グラフ740の一変量プロットにおいて、X染色体を持った精子の補正された集団732及びY染色体を持った精子の補正された集団734は、マシンで計算された山対谷比81.0%を有するより明確なピークとして見ることができる。そしてここでも、補正されたヒストグラムは、生精子の位置補正の値を示すプロット720よりも有意な改善を呈する。
【0057】
別の態様では、本明細書に記載の実施形態は、フローサイトメータにおける位置合わせプロセスを実質的に容易にするシステム及び方法を提供し得る。例えば精子の場合、非常に明るく密に関連するX及びY染色体を持った精子集団を区別するのに十分にクリアな信号を生成し収集するためには、測定領域、検出器、更にはシースフローを形成する構造は適宜且つ精密に位置合わせされなければならない。精密で適切な位置合わせであってさえも、流体カラム中の配向された精子は、コア流の長軸に沿って任意の数の位置をとることができる。図3図7に関して上述したように、これは、フローサイトメータの構成要素に位置合わせされている場合であっても、検出される出力電磁放射線に角度依存性があることを意味する。細胞はコア流内にランダムに位置し得るため、この角度依存性はノイズのような変動を導入する。
【0058】
商業的な精子ソート用途では、技師は典型的には、機器を位置合わせするために、複数の構成要素について複数の軸において幾つかの粗い調整を行い、それに続き幾つかの細かい調整を行う。各調整への機器の影響の受けやすさ、検出される信号の非常に密に関連する性質、及び可能な調整の数に起因して、そのような位置合わせは、精子ソート機器を操作する技師にとって時間のかかるタスクであり得る。サンプルを切り替える場合、商業的に精子をソートするための機械の位置合わせは数分、更には最長5分かかり得る。ノズルの詰まりを除去し、又は他の方法で除去し、較正を必要とする他の構成要素を交換又は調整した後、機器を商業的な精子の性ソートに適した位置合わせにするために、5分、15分、希な場合では30分もの技師の時間がかかり得る。
【0059】
図14は、精核を弁別するための位置合わせプロセスが大幅に低減された一例の結果を示す。Cytonome製のGenesis III精子ソータを通して、Hoechst33342で染色された精核を処理した。機器にSiPM分割検出が装備された。順方向蛍光検出を1分未満で位置合わせして、大まかな位置合わせを行った。毎秒33,000個の核の事象率で精核を走らせ、平均電力150mWで動作するCoherent Genesis CW-355レーザを用いて精核を調べた。プロット810は、SiPMにより各事象によって検出された位置に対してプロットされた合算順方向蛍光を示す二変量ヒストグラムを示す。位置合わせ不良は、X染色体を持った核の集団812及びY染色体を持った核の集団814の各々で明らかである。不良な位置合わせでは、三日月計は非対称であり、蛍光強度値は、負のx方向と比較して正のx方向で劇的に低下する。Y染色体を持った核の集団814は同じスキューを示す。
【0060】
補正係数816は、2つの集団間の線として示されている。この補正係数816は、核xロケーションで合算蛍光値に対して実行される補正の程度を示す。換言すれば、補正係数816は、平坦な線への補正によって正規化される曲線を表す。線に沿った対応するx位置における各合算蛍光値は、補正係数816と同じ大きさの増減を受ける。
【0061】
大まかな位置合わせによって生じる歪みは、プロット820の蛍光強度のヒストグラムにおいてより顕著であり、プロット820では、重複の増大により、X染色体を持った核の集団812とY染色体を持った核の集団814との間の山対谷比は72.3%になる。
【0062】
プロット830において、補正された順方向蛍光合算値は、各事象の検出された位置に対して二変量ヒストグラムにプロットされる。ここでも、細胞の位置に基づいて補正係数816を用いて蛍光強度値を正規化することにより、細胞の2つの明確な集団が出現することがわかる。X染色体を持った核の補正された集団832及びY染色体を持った核の補正された集団834はより明確であり、プロット830において明確にグループ化されている。重要なことに、これらの集団の直交関係は、プロット840に見られる一変量蛍光強度ヒストグラムに繋がり、プロット840では、2つの明確な一変量ピークが計算山対谷比94.4%を有する。
【0063】
補正の使用に加えて、本明細書に記載の幾つかの実施形態は、フロー流中の物体位置に関する収集光強度変動を低減する要素を含む。本明細書に記載の幾つかの実施形態は、光軸に垂直な軸に沿ったフロー流の中央から離れたフロー流の半径の60%未満である物体位置のずれについて約3%未満、約2%未満、又は更には約1%未満の測定強度変動を有する、変更された出力光を提供することができる。多くの用途は強度測定誤差の影響を受けやすく、強度測定誤差は多様な原因から生じ得る。フロー流内の物体の位置を精密に制御することによって強度変動を低減することにおける難しさに起因して、代わりに、光学収集構成を入念に設計することによって物体位置に関する収集光強度の変動を低減することが有用である。X/Y精子ソート等の用途では、集団間の測定蛍光強度の差に基づいて2つ以上の細胞集団を分けるべきことがよくある。ランダムな位置変動が、2つの集団の蛍光強度の公称差よりも大きな収集光強度の変動に繋がる場合、高歩留まり及び高純度の両方でもって2つの集団を区別することは可能ではない。X精細胞とY精細胞との間の蛍光強度差は典型的にはわずか数パーセント(例えばウシ精子では約4%)である。現在の精子ソータシステムは理論上、コア流の流量を上げることによって高スループットを達成することができるが、これは、コア流の幅を増大させる影響を有する。したがって、フロー流のコア内で精子位置の大きな不確実性がある。この位置不確実性及びその結果としての収集蛍光強度の変動は、X精子とY精子との間の小さな蛍光強度差を覆い隠さないレベルまで現在の精子ソータシステムの最大スループットを制限する。
【0064】
強度-位置補正の一手法は、図6及び図7を参照して理解し得る。図6におけるブラケットは、所与のNAを用いた蛍光収集光学系に対応する積分領域を強調表示する。図6のNAについての物体位置に対する収集強度変動のグラフは図7に提供される。図7では、所与のNAについて、蛍光収集領域にわたる積分が、各精子位置の関数として収集光の強度をプロットすることができるように実行される。図7から、収集光学系のNAを上げると、収集光学系を介して集められる蛍光強度への物体位置の影響を低下させるのに役立つことが明らかである。
【0065】
幾つかの実施形態では、収集光学系(例えば図1及び図2における光学収集構成190)は、上述したように物体位置に対する収集光強度変動を低下させる要素を用いて変更し得る。幾つかの実施形態は、米国特許出願第16/133,531号明細書により詳細に説明されており、これは参照により本明細書に援用される。幾つかのそのような実施形態によれば、収集光学系は、「角度空間」において特定の構成をマスキングすることによって動作し、即ち、収集光学系は、所望の強度対位置プロファイルを達成するために、異なる角度γからの光線を選択的に収集、減衰、且つ/又はブロックする。実際には、「角度空間」マスキング機能は、光学系の瞳(例えば入射瞳、出射瞳、又はアパーチャストップ)に適用することができ、瞳面と光線が交わる位置は角度γに対応する。幾つかの実施形態では、収集光学構成は、特定の低角度光線の除外よりも高角度(光軸から離れた方向を向く)光線の収集を優先することにより、所望の、例えばより平坦な強度対位置プロファイルを達成する。
【0066】
図15及び図16は、所与のNAにおける低角度屈折光線の除外がいかに、強度対位置曲線を平坦にするかを示す。低角度光線を除外することは、強度対位置プロファイルの最も大きな変動を生み出す光線を除外し、一方、正の大きな角度での放射輝度の角度変動は、負の大きな角度での対応する変動を相殺する傾向を有する。図15は、x軸に沿った物体の異なる位置での相対放射輝度対光線角度γのプロットを示し、角度γはラジアン単位である。図15において、各グラフは、図5に示すように、フロー流のコア内の物体位置xに対応する。図15におけるブラケットは、0.3rad未満の大きさの角度を有する光線が除外される場合(図15における下のブラケット)及び0.4rad未満の大きさの角度を有する光線が除外される場合(図15における上のブラケット)、各位置xで収集光学系によって除外される光線の部分を示す。
【0067】
図16は、角度が除外されない場合(グラフ900)、-0.3rad~+0.3radの角度を有する光線が除外される場合(グラフ903)、及び-0.4rad~+0.4radの角度を有する光線が除外される場合(グラフ904)の相対収集光強度とx軸に沿った物体の位置との関係を示す。グラフ16は、より低角度の光線が除外される場合、相対強度対位置グラフが、位置に関してより低い強度変動を示すことを示す。
【0068】
図17は、ソフトウェアベースの位置補正を組み込むとともに、記載のように物体位置に対する収集光強度変動を低減する収集光路にハードウェアベースの要素を組み込んだ一実験の結果を示す。Cytonome製のGenesis III精子ソータを通して、Hoechst33342で染色された精核を処理した。精子ソータに、精核から生成される低収集角度電磁放射線を除外するために集光路にワイヤが配置されたSiPM分割検出器が合わせられた。低収集角度電磁放射線をブロックするのに適したワイヤ及び他の要素は、米国特許出願第16/133,531号明細書に記載されている。
【0069】
毎秒60,000事象の事象率に達するようにサンプル及びシース圧を調整し、平均電力90mWで動作するCoherent Genesis CW-355レーザを用いて核を調べた。プロット1010において、ワイヤが、流体カラム内の核位置への強度依存の影響を軽減することがわかる。しかしながら、核がx軸に沿って正の方向に更に移動するにつれて、相対強度になお大きな低下がある。X染色体を持った核の集団1012及びY染色体を持った核の集団1014は、x軸の正の方向において大きく下垂して見られる。プロット1020の蛍光強度ヒストグラムから計算される対応する山対谷比は81.5%である。ここでも、流体カラムの一端部に向かって配置されたX染色体を持った核は、十分に検出されない。その結果、この端部における核の合算蛍光強度は、Y染色体を持った核の集団1014内の中央に配置されたY染色体を持った核と同様の強度値を有する。このスキューは、下方にシフトするショルダ及びY染色体を持った核の集団1014の誇張されたピークの形態で、プロット1020の一変量ヒストグラムにおいて明らかである。
【0070】
補正係数1016がグラフ1010に示されている。各位置について、補正値は、補正係数対応検出蛍光強度に追加される。プロット1030は、より明確な矩形集団であるX染色体を持った核の補正された集団1032及びY染色体を持った核の補正された集団1034を有する二変量ヒストグラムを示す。プロット1040は、各事象のロケーションから独立した補正済み合算強度値の対応する一変量ヒストグラムを提供する。X染色体を持った核の補正された集団1032及びY染色体を持った核の補正された集団1034はより明確であり、大まかに等しいピーク高さ及び山対谷比92.6%を有する。
【0071】
種々の実施形態の上記説明は、限定ではなく例示及び説明を目的として提示されている。開示された実施形態は、網羅的、即ち開示された実施形態に可能な実施態様を限定する意図はない。上記教示に鑑みて多くの変更及び変形が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17