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  • 特許-PTP用蓋材およびPTP包装体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】PTP用蓋材およびPTP包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/02 20060101AFI20240110BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240110BHJP
   B65D 75/34 20060101ALI20240110BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B65D65/02 E
B65D65/40 D
B65D75/34
B32B27/32 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022565109
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2021038438
(87)【国際公開番号】W WO2022113566
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2020194643
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】浅野 真文
(72)【発明者】
【氏名】近藤 始基
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-001588(JP,A)
【文献】特開平11-105217(JP,A)
【文献】特開平09-240727(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235835(WO,A1)
【文献】特開2021-030501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/02
B65D 65/40
B65D 75/34
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が2.0×10~3.5×10であるポリプロピレン系樹脂を含み、示差走査熱量計(DSC)による結晶融解熱量が70~200J/gであることを特徴とする、PTP用蓋材。
【請求項2】
MD配向度が-0.035~0.035である、請求項1に記載のPTP用蓋材。
【請求項3】
前記PTP用蓋材の突刺試験時の荷重-変位曲線において、破断領域における変位0.1mmあたりの最大荷重低下が3~20Nである、請求項1または2に記載のPTP用蓋材。
【請求項4】
厚みが10~100μmであり、水蒸気透過度が10g/m・day以下であり、引張強度がMDおよびTDいずれも20~50MPaであり、かつ引張伸度がMDおよびTDいずれも15%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のPTP用蓋材。
【請求項5】
無機物を0.1~3質量%含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のPTP用蓋材。
【請求項6】
前記ポリプロピレン系樹脂を含む層と、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはポリオレフィン系エラストマーを含む少なくとも1つの表層とを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のPTP用蓋材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のPTP用蓋材と、内容物を収容する凹部を有する底材とを含むことを特徴とする、PTP包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTP(プレススルーパック)用蓋材およびPTP包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品等の包装形態の一つとして、底材と蓋材とを備えるPTP包装体が知られている。PTP包装体は、ポリ塩化ビニル系樹脂またはポリプロピレン系樹脂等からなるプラスチックシートを真空成形または圧空成形することにより、ポケット状の凹部を有する底材を成形し、この凹部に内容物を充填した後、凹部以外の部分であるフランジ部に蓋材をヒートシールすることにより製造される。収納された内容物は、内容物に対して底材の外側から蓋材の方向に力を加えて蓋材を突き破ることにより、取り出すことができる。
【0003】
蓋材には、従来、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(突き出し性)に優れたアルミ箔、グラシン紙等が用いられてきた。しかしながら、近年、使い捨てプラスチック製品の削減とリサイクルの実施、再生可能資源への転換という流れから、底材だけでなく、蓋材にもプラスチックシートを用いることにより、ゴミとして廃棄する場合の分別の必要がなく、リサイクル可能な環境対応型のPTP包装体が注目されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂フィルムと、ポリプロピレン系樹脂フィルムに積層された補強樹脂層とを基材とし、放射線の照射によりポリプロピレン系樹脂フィルムを劣化させた、プレススルー機能を有する蓋材が開示されている。
また、特許文献2および3には、ポリプロピレン系樹脂と、突き出し性を向上させるための無機物(タルク等)とを含む樹脂組成物からなるシートを基材とするPTP用蓋材が開示されている。
特許文献4には、底材と同じ条件で処理できる易焼却性を有し、優れた引張切断荷重、伸び及び易突き破り性を発現させるため、結晶性熱可塑性樹脂を必須成分とし、熱処理により結晶化させたブリスターパック包装体の蓋材用シートが開示されている。
特許文献5には、手切れ性、機械的強度等に加え、層間接着力を向上させるため、層間部に一定範囲の結晶融解熱量を有する樹脂を積層した積層ポリプロピレン系フィルムが開示されている。
特許文献6には、使用後の廃棄処理を容易にし、プレススルー性及び印刷判読性を向上させるため、スチレン系樹脂と無機フィラーを使用したプラスチック製PTP用蓋材フィルム及びこれを用いたPTP包装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-256842号公報
【文献】特開平10-101133号公報
【文献】特開平9-11422号公報
【文献】特開2000-7026号公報
【文献】特開2000-25173号公報
【文献】特開2013-234002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された蓋材では、ポリプロピレン系樹脂フィルムを劣化させるために放射線を照射した際、補強樹脂層が架橋することにより、突き出し性が悪化するという問題や、ポリプロピレン系樹脂フィルムが劣化した際に発生する不快な臭気が残存するという問題がある。
また、特許文献2および3に記載された蓋材は、いずれも、蓋材を突き破って内容物を取り出す際に開封音が発生することによる開封認識性の点で、更なる改良の余地がある。
特許文献4に記載された蓋材は、上述の開封認識性の点で改良の余地があることに加え、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物およびナイロン-6などの異なる樹脂を積層しているため、マテリアルリサイクルに不向きという問題がある。
特許文献5に記載された蓋材には、二軸配向ポリプロピレン系樹脂を積層しているため、突き出し性や開封認識性が悪化するという問題がある。
特許文献6に記載された蓋材には、スチレン系樹脂が使用されているため、リサイクルに不向きである上、エマルジョン型ヒートシール剤が塗布されているため、高温環境下で不快な臭気が発生するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、突き出し性および開封認識性に優れ、かつ不快な臭気が抑制されたPTP包装体用蓋材およびPTP包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定範囲の分子量のポリプロピレン系樹脂を含み、特定範囲の結晶融解熱量を有するPTP用蓋材とすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
重量平均分子量が2.0×10~3.5×10であるポリプロピレン系樹脂を含み、示差走査熱量計(DSC)による結晶融解熱量が70~200J/gであることを特徴とする、PTP用蓋材。
[2]
MD配向度が-0.035~0.035である、[1]に記載のPTP用蓋材。
[3]
前記PTP用蓋材の突刺試験時の荷重-変位曲線において、破断領域における変位0.1mmあたりの最大荷重低下が3~20Nである、[1]または[2]に記載のPTP用蓋材。
[4]
厚みが10~100μmであり、水蒸気透過度が10g/m2・day以下であり、引張強度がMDおよびTDいずれも20~50MPaであり、かつ引張伸度がMDおよびTDいずれも15%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のPTP用蓋材。
[5]
無機物を0.1~3質量%含む、[1]~[4]のいずれかに記載のPTP用蓋材。
[6]
前記ポリプロピレン系樹脂を含む層と、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはポリオレフィン系エラストマーを含む少なくとも1つの表層とを含む、[1]~[5]のいずれかに記載のPTP用蓋材。
[7]
[1]~[6]のいずれかに記載のPTP用蓋材と、内容物を収容する凹部を有する底材とを含むことを特徴とする、PTP包装体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、突き出し性および開封認識性に優れ、かつ不快な臭気が抑制されたPTP包装体用蓋材およびPTP包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に係るPTP用蓋材を備えたPTP包装体の一実施形態を示す断面図である。
図2図2は、本発明に係るPTP用蓋材に対して、突刺試験を実施した際に得られる荷重-変位曲線の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0013】
<PTP用蓋材>
本実施形態のPTP用蓋材(以下、単に「蓋材」ともいう。)は、重量平均分子量が2.0×10~3.5×10であるポリプロピレン系樹脂を含み、かつ示差走査熱量計(DSC)による結晶融解熱量が70J/g以上であることを特徴とする。
【0014】
<ポリプロピレン系樹脂>
本実施形態のPTP用蓋材に含まれるポリプロピレン系樹脂は、重量平均分子量が2.0×10~3.5×10であれば、特に限定されることなく、例えば、プロピレンホモポリマー、プロピレンと他のモノマーとの共重合体、およびこれらの変性物等が挙げられる。また、環境対応の観点から、バイオポリプロピレンであってもよい。中でも、耐熱性、水蒸気バリア性、引張伸度の観点から、プロピレンホモポリマーが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0015】
プロピレンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、1-ヘキセン等のα-オレフィン等が挙げられる。重合形態は、特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体等であってもよい。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂の製造方法としては、特に限定されず、触媒の存在下でプロピレンやその他のモノマーを重合させる方法等の公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、触媒とアルキルアルミニウム化合物との存在下、重合温度0~100℃、重合圧力3~100気圧の範囲で、プロピレンやその他のモノマーを重合させる方法が挙げられる。
上記触媒としては、三塩化チタン触媒、塩化マグネシウム等の担体に担持したハロゲン化チタン触媒等が挙げられる。重合体の分子量を調整するために、水素等の連鎖移動剤を添加してもよい。
【0017】
ポリプロピレン系樹脂の製造において、上記触媒の他に、ポリプロピレンのアイソタクティシティや重合活性を高めるため、第三成分として、電子供与性化合物を内部ドナー成分または外部ドナー成分として用いることができる。電子供与性化合物としては、特に限定されず、公知のものが使用でき、例えば、ε-カプロラクトン、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トルイル酸メチル等のエステル化合物;亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリブチル等の亜リン酸エステル;ヘキサメチルホスホリックトリアミド等のリン酸誘導体;アルコキシエステル化合物;芳香族モノカルボン酸エステル;芳香族アルキルアルコキシシラン;脂肪族炭化水素アルコキシシラン;各種エーテル化合物;各種アルコール類;各種フェノール類等が挙げられる。
【0018】
上記方法における重合方式としては、バッチ式または連続式のいずれであってもよい。重合方法は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の溶媒下での溶液重合、スラリー重合、無溶媒下でのモノマー中での塊状重合、ガス状モノマー中での気相重合等が挙げられる。
【0019】
ポリプロピレン系樹脂は、未変性のポリプロピレン系樹脂をα,β-不飽和カルボン酸またはその誘導体(酸無水物やエステルも含む)等の変性剤により変性したものであってもよい。変性ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、未変性のポリプロピレン系樹脂をα,β-不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト化または付加させたもの等が挙げられる。具体例としては、α,β-不飽和カルボン酸またはその誘導体が、ポリプロピレン系樹脂全体の0.01~10質量%程度の割合で、ポリプロピレン系樹脂にグラフトまたは付加しているもの等が挙げられる。
変性ポリプロピレン系樹脂は、例えば、ラジカル発生剤の存在下または非存在下、溶融状態、溶液状態、またはスラリー状態で、30~350℃の範囲で、未変性のポリプロピレン系樹脂と変性剤とを反応させることによって得られる。
【0020】
ポリプロピレン系樹脂が、未変性のポリプロピレンと変性ポリプロピレンとの混合物である場合、未変性のポリプロピレンと変性ポリプロピレンとの混合割合は、特に限定されることなく、任意の割合としてよい。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量は、2.0×10~3.5×10であり、好ましくは2.2×10~3.2×10、より好ましくは2.3×10~3.0×10である。重量平均分子量が上記範囲であるポリプロピレン系樹脂は、その脆弱性ゆえに通常フィルムには使用されないが、本実施形態のPTP用蓋材では、この脆弱性が生かされ、突き出し性に優れたものとなる。また、重量平均分子量が上記範囲であるポリプロピレン系樹脂を用いることにより、特許文献1のように放射線を照射してプロピレン系樹脂を劣化させる必要がないため、放射線照射時の樹脂の分解による不快な臭気の発生や、補強樹脂層等の架橋によるリサイクル性の低下、シール性の低下を回避することができる。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう。)を用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0022】
上記ポリプロピレン系樹脂の含有量は、PTP用蓋材を100質量%として、60~100質量%であることが好ましく、より好ましくは70~95質量%であり、更に好ましくは75~90質量%である。ポリプロピレン系樹脂の含有量が上記範囲であると、良好な突き出し性を発現しやすい傾向にある。また、特に、ポリプロピレン系樹脂の含有量が100質量%であると、リサイクル性に優れた蓋材となる。
【0023】
本実施形態のPTP用蓋材は、上述のポリプロピレン系樹脂を含む層(以下、「低分子量ポリプロピレン系樹脂層」ともいう。)を有する積層体であってもよい。
低分子量ポリプロピレン系樹脂層に積層するその他の層としては、例えば、PTP用底材とのシール性を向上させるためのシール層、強度や突き出し性等の蓋材の物性を調整するための調整層、包装時のフィルム切れを防止するための補強層、ガスバリア性を向上させるためのバリア層等が挙げられる。
積層数は、特に限定されないが、強度、突き出し性、水蒸気バリア性、シール性、およびリサイクル性のバランスの観点から、2~5層であることが好ましく、2~3層であることがより好ましい。
【0024】
低分子量ポリプロピレン系樹脂層の厚みは、PTP用蓋材全体の厚みを100%として、60~95%であることが好ましく、より好ましくは70~95%であり、更に好ましくは75~90%である。低分子量ポリプロピレン系樹脂層の厚みが上記範囲であると、良好な突き出し性および水蒸気バリア性を発現しやすい傾向にある。
【0025】
一態様として、本実施形態のPTP用蓋材は、上述のポリプロピレン系樹脂を含む層と、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはポリオレフィン系エラストマーを含む少なくとも1つの表層とを含んでいてもよい。
当該表層は、底材に接着される底材側の表層および外側の表層(最外層)のいずれか一方であっても、両方であってもよい。例えば、包装時のフィルム切れを防止するための補強層として外側の表層であってもよい。また、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはポリオレフィン系エラストマーを含むことにより、ヒートシール性に優れるとともに、これらの樹脂は共押出可能なため、エマルジョン型ヒートシール剤の塗布が不要となり、高温環境下でも不快な臭気が発生しないことから、底材に接着される底材側の表層として好適である。中でも、特に低温シール性に優れることから、ポリオレフィン系エラストマーを含む層であることが好ましく、リサイクル性の観点からは、PTP用蓋材全体がポリプロピレン系樹脂で構成されるように、ポリプロピレン系樹脂を含む層であることが好ましい。
当該表層の厚みは、PTP用蓋材全体の厚みを100%として、5~40%であることが好ましく、より好ましくは5~30%であり、更に好ましくは10~25%である。表層の厚みが上記範囲であると、突き出し性を悪化させることなく良好なヒートシール性を付与したり、フィルム切れを防止することができる。
【0026】
上記表層に含まれるポリエチレン系樹脂は、特に限定されず、エチレンホモポリマー、またはエチレンと他のモノマーとの共重合体のいずれであってもよく、例えば、エチレンホモポリマー;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体等のエチレン-α-オレフィン共重合体;エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート-メチルメタクリレート共重合体等のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等;エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。中でも、密度が低いほど、低温シール性が向上する傾向にあることから、低密度のエチレン-α-オレフィン共重合体が好ましい。また、環境対応の観点から、バイオポリエチレンであってもよい。更に、ポリエチレン系樹脂は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0027】
ポリエチレン系樹脂の製造方法は、特に限定されず、シングルサイト系触媒、マルチサイト系触媒等の公知の触媒を用いて重合することができる。
【0028】
ポリエチレン系樹脂の含有量は、PTP用蓋材を100質量%として、5~40質量%であることが好ましく、より好ましくは5~30質量%であり、更に好ましくは10~25質量%である。ポリエチレン系樹脂の含有量が上記範囲であると、突き出し性を悪化させることなく良好なヒートシール性を付与したり、フィルム切れを防止することができる。
【0029】
上記表層に含まれるポリプロピレン系樹脂は、種類としては、上述の低分子量のポリプロピレン系樹脂と同様のものが挙げられる。中でも、低温シール性に優れるという観点からは、低密度のプロピレン-α-オレフィン共重合体が好ましい。
ポリプロピレン系樹脂の分子量は、特に限定されないが、上述の低分子量ポリプロピレン系樹脂層に含まれるポリプロピレン系樹脂よりも高いことが好ましい。例えば、メルトフローレート(MFR、ASTM D-1238に準拠して230℃、2.16kgfの荷重で測定)が3~15g/10分であるものが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0030】
ポリオレフィン系エラストマーは、結晶化度が50%以下の低結晶性ないし非晶性のオレフィン系重合体であり、ポリオレフィン系エラストマーのモノマー(オレフィン)としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等のα-オレフィン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等の環状オレフィンが挙げられる。
中でも、低温シール性に優れることから、低融点(55~90℃)のポリプロピレン系エラストマーが好ましい。また、環境対応の観点から、バイオポリオレフィン系エラストマーであってもよい。更に、ポリオレフィン系エラストマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0031】
ポリオレフィン系エラストマーの製造方法は、特に限定されず、シングルサイト系触媒、マルチサイト系触媒等の公知の触媒を用いて重合することができる。
【0032】
ポリオレフィン系エラストマーの含有量は、PTP用蓋材を100質量%として、5~40質量%であることが好ましく、より好ましくは5~30質量%であり、更に好ましくは10~25質量%である。ポリオレフィン系エラストマーの含有量が上記範囲であると、突き出し性を悪化させることなく良好なヒートシール性を付与したり、フィルム切れを防止することができる。
【0033】
また、別の態様として、本実施形態のPTP用蓋材は、上述の低分子量ポリプロピレン系樹脂層と表層との間に、強度や突き出し性等の蓋材の物性を調整するための調整層を含んでいてもよい。
当該調整層の厚みは、PTP用蓋材全体の厚みを100%として、10~40%であることが好ましく、より好ましくは15~35%であり、更に好ましくは20~30%である。
【0034】
上記調整層は、リサイクル性の観点から、ポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂の種類としては、上述の低分子量のポリプロピレン系樹脂と同様のものが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂の分子量は、特に限定されないが、上述の低分子量ポリプロピレン系樹脂層に含まれるポリプロピレン系樹脂よりも高いことが好ましい。例えば、メルトフローレート(MFR、ASTM D-1238に準拠して230℃、2.16kgfの荷重で測定)が3~15g/10分であるものが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0035】
〈無機物〉
本実施形態のPTP用蓋材は、破断起点を増加させ、突き出し性を向上させるために、無機物を含んでいてもよい。
無機物は、特に限定されず、例えば、非晶質アルミナ珪酸塩、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、マイカ、ワラストナイト、クレー、炭酸カルシウム、ガラス繊維、硫酸アルミニウム等が挙げられる。
【0036】
無機物の含有量は、PTP用蓋材を100質量%として、0.1~3質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~2質量%であり、更に好ましくは0.5~1質量%である。無機物の含有量が上記範囲であると、良好な突き出し性を示すとともに、不純物が少なく、リサイクル性が高い蓋材となる。
【0037】
本実施形態のPTP用蓋材は、当該技術分野において通常用いられる添加剤、例えば、上記無機物の分散を補助する金属石鹸、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、結晶核剤等を含んでいてもよい。
また、本実施形態のPTP用蓋材は、印刷の特性改善を目的としたコロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、AC(アンカーコート)処理等の処理を行ってもよい。
特に、白色の着色剤や印刷は、下記の理由から好ましい。近年、医薬品用のPTP包装体では、従来の製品名称ロゴや使用方法を示す図柄の他に、医療事故の防止やトレーザビリティーの確保を目的とした商品コード、有効期限、製造番号、数量といった各種情報を含んだバーコードを印刷することのニーズが高まりつつある。白色の着色剤を配合した蓋材や白色印刷したものを用いると、バーコードの読取りの際、線のない部分(蓋材が直接見える部分)が白いために、バーコードの線のある部分(一般的には黒色)との色の濃淡ができ、バーコードが読み取りやすくなる。
添加剤の含有量は、PTP用蓋材を100質量%として、3質量%以下であることが好ましい。
【0038】
本実施形態のPTP用蓋材の厚みは、10~100μmであることが好ましく、より好ましくは30~80μmであり、更に好ましくは40~60μmである。厚みが10μm以上であると、加工工程に耐える引張強度、水蒸気バリア性を発現しやすく、100μm以下であると、良好な突き出し性を発現しやすい。
【0039】
本実施形態のPTP用蓋材の水蒸気透過度は、10g/m・day以下であることが好ましく、より好ましくは8g/m・day以下であり、更に好ましくは5g/m・day以下である。水蒸気透過度が上記範囲であると、医薬品等の内容物が水蒸気によって変性することを抑制でき、長期保管が可能となる。
PTP用蓋材の水蒸気透過度は、例えば、PTP用蓋材の厚み、樹脂の種類の選択、バリア層の有無等により調整することができる。PTP用蓋材の厚みを厚くしたり、バリア層を設けることにより、水蒸気透過度は低下する傾向にある。前記バリア層には、エチレン-ビニルアルコール共重合体、環状オレフィン等の樹脂層や、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の無機蒸着層が挙げられる。また、結晶化度の高い樹脂を使用することにより、PTP用蓋材の水蒸気透過度を低下させることができる。
なお、水蒸気透過度は、JIS K7129に準拠して測定し、40μm厚みに換算した値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0040】
本実施形態のPTP用蓋材のMD引張強度は、20~50MPaであることが好ましく、より好ましくは20~45MPaであり、更に好ましくは25~35MPaである。MD引張強度が20MPa以上であると、加工工程におけるフィルム切れを防止できる。また、MD引張強度が50MPa以下であると、良好な突き出し性を有するPTP用蓋材を得ることができる。
PTP用蓋材のMD引張強度の制御方法としては、例えば、樹脂の結晶化度を変更したり、延伸する方法が挙げられ、結晶化度を高めたり、延伸すると、MD引張強度は増加する傾向にある。
【0041】
本実施形態のPTP用蓋材のTD引張強度は、20~50MPaであることが好ましく、より好ましくは20~45MPaであり、更に好ましくは25~35MPaである。TD引張強度が20MPa以上であると、加工工程におけるフィルム切れを防止できる。また、TD引張強度が50MPa以下であると、良好な突き出し性を有するPTP用蓋材を得ることができる。
PTP用蓋材のTD引張強度の制御方法としては、例えば、樹脂の結晶化度を変更したり、延伸する方法が挙げられ、結晶化度を高めたり、延伸すると、MD引張強度は増加する傾向にある。
【0042】
なお、MDおよびTDの引張強度は、JIS K7127に準拠して測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0043】
本実施形態のPTP用蓋材のMD引張伸度は、15%以下であることが好ましく、より好ましくは11%以下であり、更に好ましくは9%以下である。MD引張伸度が上記範囲であると、TD方向の突き出し性が良好となる(割れ目がTD方向に入るような状態で蓋材が突き破られ易くなる)傾向にある。
PTP用蓋材のMD引張伸度の制御方法としては、例えば、PTP用蓋材の結晶化度、MD配向度、破断起点、脆弱性、破断強度等を調整する方法が挙げられる。MD引張伸度を低下させるには、PTP用蓋材の結晶化度を増加させること、MD配向度を低下させること、無機物を添加する等により破断起点を増加させること、上述の低分子量ポリプロピレン系樹脂層等の脆弱な層の比率を増加させる等により脆弱性を増加させること、脆弱な層を柔軟化する等により破断強度を低下させること等が挙げられる。
【0044】
本実施形態のPTP用蓋材のTD引張伸度は、15%以下であることが好ましく、より好ましくは11%以下であり、更に好ましくは9%以下である。TD引張伸度が上記範囲であると、MD方向の突き出し性が良好となる(割れ目がMD方向に入るような状態で蓋材が突き破られ易くなる)傾向にある。
PTP用蓋材のTD引張伸度の制御方法としては、例えば、PTP用蓋材の結晶化度、TD配向度、破断起点、脆弱性、破断強度等を調整する方法が挙げられる。TD引張伸度を低下させるには、PTP用蓋材の結晶化度を増加させること、TD配向度を低下させること、無機物を添加する等により破断起点を増加させること、上述の低分子量ポリプロピレン系樹脂層等の脆弱な層の比率を増加させる等により脆弱性を増加させること、脆弱な層を柔軟化する等により破断強度を低下させること等が挙げられる。
【0045】
なお、MDおよびTDの引張伸度は、JIS K7127に準拠して測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0046】
本実施形態のPTP用蓋材のMD引張弾性率は、300~1500MPaであることが好ましく、より好ましくは400~1400MPaであり、更に好ましくは600~1200MPaである。MD引張弾性率が300MPa以上であると、PTP用蓋材へ印刷する際、フィルムの伸びが抑制され、印刷のズレを防止できる。また、MD引張弾性率が1500MPa以下であると、PTP用蓋材が硬くなるのを抑制でき、加工時の割れを防止できる。
PTP用蓋材のMD引張弾性率の制御方法としては、例えば、PTP用蓋材の結晶化度やMD配向度を調整する方法が挙げられ、結晶化度やMD配向度を低くすると、MD引張弾性率は低下する傾向にある。
【0047】
本実施形態のPTP用蓋材のTD引張弾性率は、1500MPa以下であることが好ましく、より好ましくは1400MPa以下であり、更に好ましくは1200MPa以下である。TD引張弾性率が1500MPa以下であると、PTP用蓋材が硬くなるのを抑制でき、加工時の割れを防止できる。
PTP用蓋材のTD引張弾性率の制御方法としては、例えば、PTP用蓋材の結晶化度やMD配向度を調整する方法が挙げられ、結晶化度やMD配向度を低くすると、TD引張弾性率は低下する傾向にある。
【0048】
なお、MDおよびTDの引張弾性率は、JIS K7127に準拠して測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0049】
本実施形態のPTP用蓋材の示差走査熱量計(DSC)により測定した結晶融解熱量は、70J/g以上であり、好ましくは75~200J/gであり、より好ましくは80~200J/gである。結晶融解熱量が上記範囲であると、MDおよびTD引張伸度と、突刺伸度が好適となり、良好な突き出し性を示す傾向にある。
PTP用蓋材の結晶融解熱量の制御方法としては、例えば、PTP用蓋材を製造する際の蓋材の冷却、製造後のアニール、結晶核剤の添加等を調整する方法が挙げられる。一例として、PTP用蓋材をダイレクトインフレーション法により製造する際の冷却を徐冷化すること、蓋材を製造後にアニールすること、結晶核剤を添加すること等により結晶融解熱量を増加させることができる。
なお、示差走査熱量計(DSC)による結晶融解熱量の測定は、具体的には、後述の実施例に記載の方法により行うことができる。
【0050】
本実施形態のPTP用蓋材のフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)により測定した結晶化度は、46%以上であることが好ましく、より好ましくは47%以上であり、更に好ましくは48%超である。結晶化度が上記範囲であると、MDおよびTD引張伸度と、突刺伸度が好適となり、良好な突き出し性を示す。
PTP用蓋材の結晶化度の制御方法としては、例えば、PTP用蓋材を製造する際の蓋材の冷却、製造後のアニール、結晶核剤の添加等を調整する方法が挙げられる。一例として、PTP用蓋材をダイレクトインフレーション法により製造する際にエアリングによる蓋材の冷却を徐冷化すること、蓋材を製造後にアニールすること、結晶核剤を添加すること等により、結晶化度を増加させることができる。
なお、FT-IRによる結晶化度の測定は、具体的には、後述の実施例に記載の方法により行うことができ、ラマン分光光度計を用いて同様に測定することも可能である。
【0051】
本実施形態のPTP用蓋材のMD配向度は、-0.035~0.035であることが好ましく、より好ましくは-0.03~0.03であり、更に好ましくは-0.02~0.02である。MD配向度が上記範囲であると、MD引張伸度およびTD引張伸度が好適範囲となりやすく、MDおよびTD引張伸度のバランスに優れ、良好な突き出し性を示す。
PTP用蓋材のMD配向度の制御方法としては、例えば、PTP用蓋材を製造する際の蓋材の冷却、TD延伸の倍率(BUR)またはタイミング等を調整する方法が挙げられる。一例として、PTP用蓋材をダイレクトインフレーション法により製造する際にエアリングによる蓋材の冷却を徐冷化すること、TD延伸倍率(BUR)を増加させること、逐次二次延伸により製造すること等により、MD配向度を低下させることができる。
なお、MD配向度は、FT-IRを用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
また、MD配向度はTDに対するMDへの配向を示していることから、PTP用蓋材の厚み方向に対するMDへの配向および厚み方向に対するTDへの配向をそれぞれ測定した結果から算出してもよい。その際、PTP用蓋材が多層構成である場合は、最も厚みの厚い層がPTP蓋材の特性に影響を与えやすいため、最も厚みの厚い層(最も厚みの厚い層が複数ある場合はそのいずれか)の配向度を測定すればよい。
また、MD配向度は、FT-IRを用いる場合と同様に、ラマン分光光度計を用いて測定することも可能である。
【0052】
PTP用蓋材の突刺試験時の荷重-変位曲線において、破断領域における変位0.1mmあたりの最大荷重低下が3~20Nであることが好ましく、より好ましくは4~18Nであり、更に好ましくは5~15Nである。変位0.1mmあたりの最大荷重低下が20Nを超えるPTP用蓋材は、PTP包装体から錠剤などの内容物を取り出す際に破れにくいことを示しており、突き出し性が乏しい傾向にある。また、変位0.1mmあたりの最大荷重低下は、開封認識性に最も影響を及ぼす因子の一つであり、変位0.1mmあたりの最大荷重低下が3N未満の場合は、PTP用蓋材が脆いことを示しており、錠剤などの内容物を取り出す際に開封音がほとんど発生せず、開封認識性が劣る傾向にある。
図2に、本実施形態のPTP用蓋材に対して突刺試験を実施した際に得られる荷重-変位曲線の一例を示す。図2のPTP用蓋材の場合、変位0.1mmあたりの最大荷重低下は8Nである。
PTP用蓋材の変位0.1mmあたりの最大荷重低下を制御する方法としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量、PTP用蓋材の厚み、補強層を調整する方法が挙げられ、ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量やPTP蓋材の厚みを大きくしたり、補強層を設けると、変位0.1mmあたりの最大荷重低下を大きくすることができる。
なお、荷重-変位曲線の破断領域における変位0.1mmあたりの最大荷重低下は、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0053】
本実施形態のPTP用蓋材の突刺強度は、6~15Nであることが好ましく、より好ましくは7~13Nであり、更に好ましくは8~10Nである。突刺強度が6N以上であると、PTP包装体の輸送時等に外力によってPTP用蓋材が破れることを防止できる。また、突刺強度が15N以下であると、突き出し性に優れたPTP用蓋材を得ることができる。
PTP用蓋材の突刺強度の制御方法としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量、PTP用蓋材の厚み、補強層を調整する方法が挙げられ、ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量やPTP蓋材の厚みを大きくしたり、補強層を設けると、突刺強度は増加する傾向にある。
なお、突刺強度は、40μm厚みに換算した値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0054】
本実施形態のPTP用蓋材の突刺伸度は、1~4mmであることが好ましく、より好ましくは1.2~3mmであり、更に好ましくは1.5~2.5mmである。突刺伸度が1mm以上であると、PTP包装体の輸送時等に外力によってPTP用蓋材が破れることを防止できる。また、突刺伸度は、引張伸度や突出強度等と同様に突き出し性に最も影響を及ぼす因子の一つであり、突刺伸度が4mm以下であると、突き出し性に優れたPTP用蓋材を得ることができる。
PTP用蓋材の突刺伸度の制御方法としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量、PTP用蓋材の層比率、結晶化度、MDおよびTD配向度等を調整する方法が挙げられ、ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量を小さくしたり、低分子量のポリプロピレン系樹脂の割合を上げたり、結晶化度を増加させたり、MDおよびTD配向度を減少させると、突刺伸度は低下する傾向にある。
なお、突刺伸度は、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0055】
<PTP用蓋材の製造方法>
PTP用蓋材の製造方法としては、特に限定されないが、一例として、環状ダイを備えた公知の溶融押出機を用いて上記構成材料をチューブ状に押出した後、直接エアーを吹き込み延伸させるダイレクトインフレーション法が挙げられる。PTP用蓋材が複数層からなる積層体である場合は、共押出ダイレクトインフレーション法であることが好ましい。
以下、積層体であるPTP用蓋材を共押出ダイレクトインフレーション法により製造する方法について、その概略を説明する。
【0056】
各層の構成材料である樹脂または樹脂組成物を、樹脂の融解温度以上で溶融し、層数に対応した台数の押出機を用いて各層を同時に押出する。押出された各層の樹脂または樹脂組成物をフィードパイプを通じて環状ダイに送り、環状ダイを介して各層が積層したチューブ状のフィルムを作製する。続いて、フィルム内にエアー(空気、窒素等)を吹き込んでバブルを形成させ、フィルムをMDおよびTD方向に延伸させることにより、PTP用蓋材を製造する。
【0057】
フィルムのMD延伸倍率(DDR)は、8~23倍であることが好ましく、より好ましくは、10~20倍である。MD延伸倍率が8倍以上であると、バブルの脈動が抑制され、延伸が安定化する傾向にある。また、MD延伸倍率が23倍以下であると、MD配向度が好適でMDおよびTD配向度のバランスに優れ、良好な突き出し性を示す蓋材が得られる。
また、フィルムのTD延伸倍率(BUR)は、1.3~4倍であることが好ましく、より好ましくは、1.5~2.5倍である。TD延伸倍率1.3倍以上であると、MD配向度が好適でMDおよびTD配向度のバランスに優れ、良好な突き出し性を示す蓋材が得られる。また、TD延伸倍率が4倍以下であると、バブルの脈動が抑制され、延伸が安定化する傾向にある。
なお、MD延伸倍率は、ピンチローラーの速度で調節することができ、TD延伸倍率は、フィルム内に吹き込むエアーの体積により調節することができる。
【0058】
フィルムの延伸温度は、70~160℃であることが好ましく、より好ましくは80~120℃である。延伸温度が70℃以上であると、蓋材の結晶化度が好適範囲となりやすく、また、MDおよびTD配向度のバランスに優れ、良好な突き出し性を示す蓋材が得られる。また、延伸温度が160℃以下であると、延伸が安定化する傾向にある。
なお、延伸温度は、環状ダイの吐出表面から垂直に32cm製造工程下流側に離れた部分のフィルム表面を非接触温度計で実測した温度であり、溶融樹脂を冷却するためのエアリングの風速、溶融樹脂の吐出量、DDR等によって調整することができる。
【0059】
<PTP包装体>
本実施形態のPTP包装体は、上述の本実施形態のPTP用蓋材と、内容物を収容する凹部を有する底材とを含むことを特徴とする。
図1は、本実施形態のPTP用蓋材を備えたPTP包装体の一例を示す断面図である。PTP包装体1は、PTP用蓋材2と底材3とを備える。底材3は、ポケット状の凹部4と、蓋材2と貼り合わされるフランジ部5とを有し、凹部4には、内容物6が充填されている。
【0060】
〈底材〉
本実施形態のPTP包装体を構成する底材としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、環状オレフィン樹脂等)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエステル等の周知の合成樹脂を含むシート材が挙げられ、好適には、これらの合成樹脂からなるシート材である。中でも、リサイクル性の観点から、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状オレフィン樹脂を含むことが好ましく、PTP用蓋材と同様に、ポリプロピレン系樹脂を含むことが最も好ましい。
【0061】
底材は、底材のポケット状の凹部を真空または圧空成形する成形条件範囲の広さの観点から、JIS K7191に準拠した熱変形温度が50~160℃であることが好ましく、80~120℃であることがより好ましい。
【0062】
底材の形状は、内容物を収容する凹部を有するものであれば特に限定されず、凹部の底面部分および開口部分の形状は、矩形(正方形、長方形、三角形等)または円形(円、楕円等)であってよく、矩形は角が丸みを帯びていてもよい。
【0063】
底材のサイズは、特に限定されず、内容物の大きさや数等に応じて適宜定めてよいが、例えば、凹部の深さは、1~15mmであってよく、好ましくは2~10mmである。また、特に、凹部の開口部分および底面部分の形状が円形である場合、開口部分の直径は、例えば、それぞれ5~150mmであってよく、好ましくは10~100mmであり、底面部分の直径は、それぞれ開口部分の直径より5~20%小さくてよい。
【0064】
また、凹部以外の部分であるフランジ部は、特に限定されないが、凹部の深さ方向に直交する方向に延びるように設けられていてよい。
フランジ部の平均幅としては、例えば、2~100mmであってよく、好ましくは4~50mmである。
【0065】
底材1の厚みは、特に限定されず、例えば、100~500μmであってよく、好ましくは150~300μmである。
【0066】
<PTP包装体の製造方法>
本実施形態のPTP包装体は、底材の表面(フランジ部)と蓋材の表面とを重ね合わせてヒートシールすることにより、製造することができる。
ヒートシール温度は、例えば、100~160℃が挙げられ、内容物の焼け跡がつきにくくなる観点から、100~140℃が好ましい。また、ヒートシール時間は、例えば、0.05~3秒が挙げられ、内容物の焼け跡がつきにくくなり、十分なシール強度が得られる観点から、0.2~1秒が好ましい。また、ヒートシール圧力は、例えば、0.2~0.6MPaが挙げられ、内容物の焼け跡がつきにくくなり、十分なシール強度が得られる観点から、0.3~0.5MPaが好ましい。
【0067】
本実施形態におけるPTP包装体の成形に用いる成形機としては、例えば、蓋材と底材とをヒートシールロールとシール下ロールで挟み込んでヒートシールを行うロールシール成形機や、上下に平板の加熱金型を有し、蓋材と底材とを金型で挟み込み成形するフラットシール成形機等が挙げられる。中でも、十分なシール強度が得られやすいフラットシール成形機を用いることが好ましい。
【実施例
【0068】
以下、本実施形態について、具体的な実施例および比較例を挙げて説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0069】
実施例および比較例で使用した原材料は以下のとおりである。
〈ポリプロピレン系樹脂(PP)〉
・PP1:ポリプロピレン(サンアロマー(株)製、PLB00A、重量平均分子量:2.2×10
・PP2:ポリプロピレン(サンアロマー(株)製、PLA00A、重量平均分子量:2.6×10
・PP3:ポリプロピレン(サンアロマー(株)製、VS700A、重量平均分子量:3.8×10
・PP4:ポリプロピレン(サンアロマー(株)製、PL500A、重量平均分子量:6.0×10
【0070】
〈ポリエチレン系樹脂(PE)〉
・ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製、ユメリット0520F)
【0071】
〈ポリオレフィン系エラストマー(TPO)〉
・プロピレン-α-オレフィンコポリマー(三井化学(株)製、タフマーXM7070)
【0072】
〈エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)〉
・エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(三菱ケミカル(株)製、ソアノールDC3203)
【0073】
〈接着樹脂〉
・酸変性ポリオレフィン組成物(三井化学(株)製、アドマーNF587)
【0074】
〈ポリスチレン樹脂(PS)〉
・ポリスチレン(PSジャパン(株)製、PSJ-ポリスチレンG9305)
【0075】
〈無機物〉
・非晶質アルミノケイ酸塩(水澤化学工業(株)社製、シルトンJC-30)
【0076】
〈底材〉
・PP:ポリプロピレン単層シート(住友ベークライト(株)製スミライトNS-3450(厚さ300μm))。深さ:4mm、開口部分:直径10mmの円形、底面部分:直径8mmの円形の凹部を有し、深さ方向に直交する方向に延びる平均幅10mmのフランジ部を有する底材に成形した。開口部分は互いに直交する縦列および横列に並べられ、開口部分の中心間距離は、縦について20mm、横について20mmとした。
・PP/PE:共押出ダイレクトインフレーション法により、ポリプロピレン(サンアロマー(株)製、PL500A)、ポリプロピレン(サンアロマー(株)社製、PC540R)、ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)製、ユメリット0520F)の順に積層した厚み300μmの多層シートを作製した。前記多層シートのポリエチレン側をヒートシール面として、上述のポリプロピレン単層シートと同様に成形した。
・PVC:ポリ塩化ビニル単層シート(住友ベークライト(株)製スミライトVSS-F110(厚さ250μm))。上述のポリプロピレン単層シートと同様に成形した。
【0077】
以下、実施例および比較例で用いた測定・評価方法について説明する。
【0078】
(1)重量平均分子量
実施例および比較例でPTP用蓋材に用いたポリプロピレン系樹脂について、以下の手順で重量平均分子量を測定した。
まず、濃度が1mg/mLになるように試料に1,2,4-トリクロロベンゼンを加え、160℃で30分静置した後、160℃で1時間揺動させて溶解させた。前記溶解液を0.5μmのPTFEフィルタでろ過し、GPC(Agilent社製、PL-GPC220)にてポリスチレン換算の重量平均分子量を測定した。なお、測定に使用したカラムは、東ソー(株)製TSK-gelGMHHR-H(20)HT(7.8mm×30cm)を2本連結したものであり、カラム温度は160℃とした。
【0079】
(2)水蒸気透過度
実施例および比較例で得られたPTP用蓋材について、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、PERMATRAN-W Model398)を使用して水蒸気透過度を測定した。測定は、JIS K7129に準拠し、38℃、90%RHにて水蒸気透過度(g/m・day)を測定し、40μm厚みに換算した。
【0080】
(3)引張強度、引張伸度、引張弾性率
実施例および比較例で得られたPTP用蓋材について、JIS K7127に準拠して、MDおよびTDそれぞれの引張強度、引張伸度、および引張弾性率を測定した。
PTP用蓋材から、短冊状の試験片(長さ150mm×幅10mm)を切り出した。この試験片の端部を、精密万能試験機(島津製作所製、オートグラフ)に、チャック間距離が50mmとなるように取り付けた。チャック間の移動速度200mm/分にて移動を行い、その際に破断に要するまでの最大荷重および最大伸度を測定し、それぞれ、引張強度(MPa)および引張伸度(%)とした。また、2%伸長時の荷重を引張弾性率(MPa)とした。10枚の試験片について測定した値を平均し、そのPTP用蓋材の引張強度、引張伸度、および引張弾性率とした。
【0081】
(4)結晶融解熱量
実施例および比較例で得られたPTP用蓋材からサンプル(5~10mg)を切り出し、示差走査熱量計(DSC)(日立ハイテクサイエンス社製、DSC7000X)を用いて、窒素雰囲気下、熱量標準としてインジウムを使用して測定を行った。加熱プログラムとしては、サンプルを10℃/分の昇温速度で0℃から200℃まで昇温し、得られた熱流曲線の融解に起因する吸熱ピークに対して、高温側から外挿する直線をベースラインとして、結晶融解熱量(J/g)を求めた。なお、融解に起因する吸熱ピークが複数存在した場合は、各結晶融解熱量の合計をPTP用蓋材の結晶融解熱量とした。
【0082】
(5)結晶化度
実施例および比較例で得られたPTP用蓋材について、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製、FT/IR4100)を用いて、結晶化度(%)を測定した。結晶化度の算出には、ポリプロピレン系樹脂の973cm-1(結晶と非晶に由来するピーク)と998cm-1(結晶に由来するピーク)の吸光度(以下、吸光度はピークの高さを表す)を使用し、以下の式により求めた。
結晶化度=0.56×吸光度(998cm-1)/吸光度(973cm-1)×100
なお、測定時の積算回数は16回、分解能は4cm-1とし、5枚の試験片について測定した値の平均値を結晶化度とした。
【0083】
(6)MD配向度
実施例および比較例で得られたPTP用蓋材について、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製、FT/IR4100)を用いて、MD配向度を測定した。PTP用蓋材に対して、グリッド偏光子0°(MD)および90°(TD)で測定し、各ポリプロピレン系樹脂の973cm-1の吸光度を使用して、以下の式によりMD配向度を求めた。
二色比(R)=吸光度(MD)/吸光度(TD)
MD配向度=(R-1)/(R+2)×1.17
なお、測定時の積算回数は16回、分解能は4cm-1とし、5枚の試験片について測定した値の平均値をMD配向度とした。
【0084】
(7)突刺強度、突刺伸度
実施例および比較例で得られたPTP用蓋材について、以下の手順で突刺強度および突刺伸度を測定した。
PTP用蓋材を、直径10mmの枠に張った状態で固定した。精密万能試験機(島津製作所製、オートグラフ)に、直径4mm、先端が平板状の針を装着し、固定したPTP用蓋材に押し込むことで、突刺試験を行った。測定は温度23℃、湿度50%RHの環境下で行い、針の移動速度は50mm/分とした。破れ発生時の針にかかる最大荷重を突刺強度(N)とし、40μm厚みに換算した。また、破れ発生時の針の先端の位置の深さ(針が固定したPTP用蓋材に接してから破れ発生時における位置までの変位)を突刺伸度(mm)とした。5枚の試験片について測定した値を平均し、そのPTP用蓋材の突刺強度および突刺伸度とした。
【0085】
(8)突刺試験破断時の最大荷重低下
実施例および比較例で得られたPTP用蓋材について、以下の手順で突刺試験破断時の荷重低下を測定した。
PTP用蓋材を、直径10mmの枠に張った状態で固定した。精密万能試験機(島津製作所製、オートグラフ)に、直径4mm、先端が平板状の針を装着し、固定したPTP用蓋材に押し込むことで、突刺試験を行った。測定は温度23℃、湿度50%RHの環境下で行い、針の移動速度は50mm/分とした。得られた荷重-変位曲線の破断領域において(破れ発生に伴う荷重低下の内)、変位0.1mmあたりの荷重低下が最大となる値を求めた。5枚の試験片について測定した値を平均し、そのPTP用蓋材の変位0.1mmあたりの最大荷重低下とした。
【0086】
(9)シール強度
実施例および比較例で得られたPTP用蓋材について、以下の手順でシール強度を測定した。
まず、PTP用蓋材および底材をヒートシールテスター(テスター産業社製)によりヒートシールした。その際のシール温度を140℃、シール時間を2秒、シール圧力を0.25MPaとした。その後、短冊状の試験片(PTP用蓋材および底材の長さ各40mm(計80mm)×幅15mm)を切り出した。この試験片の端部を、精密万能試験機(島津製作所製、オートグラフ)のチャック間にシール部が配置され、チャック間距離が30mmとなるように取り付けた。チャック間の移動速度200mm/分にて移動を行い、180°剥離試験を実施し、シール部が完全に剥がれるまでの最大荷重をシール強度(N/15mm)とした。10枚の試験片について測定した値を平均し、そのPTP用蓋材のシール強度とした。
【0087】
(10)突き出し性
実施例および比較例で得られたPTP用蓋材の突刺伸度、PTP包装体の蓋材を突き破った際の層間剥離の発生の有無を総合し、下記の評価基準にて、突き出し性を評価した。
[評価基準]
◎(優れる):突刺伸度が2.6mm未満であり、かつPTP包装体の蓋材を突き破った際に層間剥離および部分破断が発生しない。
○(良好):突刺伸度が2.6mm以上、3.2mm未満であり、かつPTP包装体の蓋材を突き破った際に層間剥離および部分破断が発生しない。
×(不良):突刺伸度が3.2mm以上、またはPTP包装体の蓋材を突き破った際に層間剥離または部分破断が発生する。
【0088】
(11)開封認識性
実施例および比較例で得られたPTP包装体について、蓋材を突き破って内容物を取り出した際の開封音を普通騒音計(リオン株式会社製、NA-29)を用いて測定し、下記の評価基準にて、開封認識性を評価した。開封音測定時は、マイクロホン先端部と突き破る蓋材の距離を30mmとし、10回の測定の平均値を採用した。
[評価基準]
◎(優れる):80dB以上
○(良好):60dB以上、80dB未満
×(不良):60dB未満、または蓋材を突き破ることが不可能である
【0089】
(12)フィルム臭気
実施例および比較例で得られたPTP用蓋材について、フィルム臭気の有無をダイナミックヘッドスペース-GC/MS(Gestels社製DHS、Agilent社製GC-7890 MSD-5977B)を用いて測定した。サンプル調製は、20mL容量のガラス瓶中に2gのPTP用蓋材を入れ、50℃で30分加熱した。その間、活性炭系吸着材(Agilent社製、Carbopack B/Carbopack X)に1950mLの窒素ガスを使用してPTP用蓋材に含まれる臭気成分を吸着させた。加熱終了後、GC/MS注入口に設置した加熱脱着装置(Gestel社製、TDU2)を使用して、前記活性炭系吸着材に吸着したガスをTDU部にて300℃で脱着させた。その間CIS部にてガスを-40℃で再濃縮し、再度300℃に加熱してGC/MS測定を行った。PTP用蓋材の不快な臭気成分には、酢酸、ブタン酸、アセチルアセトン等があり、ブタン酸及び酢酸の検出量を基準にして、下記の通りフィルム臭気を評価した。
[評価基準]
○(優れる):ブタン酸の検出量が0.01ppm未満、かつ酢酸の検出量が0.1ppm未満である。
×(不良):ブタン酸の検出量が0.01ppm以上、または酢酸の検出量が0.1ppm以上である。
【0090】
[実施例1]
共押出ダイレクトインフレーション法を用いて、ポリプロピレン樹脂(PP)層(第一層)とポリオレフィン系エラストマー(TPO)層(第二層)とを積層した2層のPTP用蓋材を作製した。
具体的には、各層の原材料である樹脂のペレットを、樹脂の融解温度以上で溶融し、複数台の押出機を用いて各層を同時に押出した。押出された各層の樹脂をフィードパイプを通じて環状ダイに送り、環状ダイを介して各層が積層したチューブ状の積層フィルムを作製した。なお、厚み比がPP層:TPO層=80:20となるように調整した。
続いて、積層フィルムに空気を吹き込んで延伸させることにより、厚み40μmのPTP用蓋材を得た。なお、延伸倍率は、MD30倍、TD2倍とし、延伸温度は61℃とした。
PP底材の凹部に錠剤を充填し、エーシンパックシーラー(エーシンパック工業社製、半自動OS)を用いてヒートシールによりPP底材と蓋材(TPO層側)とを接着して、PTP包装体を得た。
ヒートシールの条件は、温度140℃、圧力0.4MPa、時間1秒とした。
表1に各物性の測定・評価結果を示す。
【0091】
[実施例2~5、比較例1~3]
実施例2~5、比較例1~3は、表1に示すように原料、配合量等を変更したこと以外は実施例1と同様にしてPTP用蓋材を作製し、PTP包装体を得た。
なお、実施例5の第一層は、押出前に、ポリプロピレン樹脂(PP2)に非晶質アルミノケイ酸塩を混合した。
詳細な条件および各物性の測定・評価結果を表1に示す。
【0092】
[実施例6]
実施例6は、表1に示すように原料、配合量等を変更し、実施例1と同様にして第一層と第二層とを積層した2層のフィルムを作製した後、第一層側表面にコロナ処理を行い、真空蒸着法によるアルミニウムの無機蒸着層(第三層)を10nm設けることで、PTP用蓋材を作製した。実施例1と同様にしてPP底材と蓋材(TPO層側)とを接着し、PTP包装体を得た。
詳細な条件および各物性の測定・評価結果を表1に示す。
【0093】
[比較例4]
比較例4は、表1に示すように原料、配合量等を変更し、実施例1と同様にして第一層と第二層とを積層した2層のフィルムを作製した後、特許文献1を参考に、加速電圧250kV、照射線量60kGyの電子線を照射することでPTP用蓋材を作製した。実施例1と同様にしてPP/PE底材(PE層側)と蓋材(PE層側)とを接着し、PTP包装体を得た。
詳細な条件および各物性の測定・評価結果を表1に示す。
【0094】
[比較例5]
特許文献4を参考に、共押出ダイレクトインフレーション法を用いて、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)層(第一層)、酸変性ポリオレフィン組成物層(第二層)、およびポリスチレン樹脂(PS)層(第三層)を積層した3層の積層フィルムを作製した。この際、各層の厚み比がEVOH層:酸変性ポリオレフィン組成物層:PS層=20:10:70となるように調整し、総厚みを40μmとした。
続いて、得られた積層フィルムのPS層面に対し、エチレン酢酸ビニル(EVA)系エマルジョン型ヒートシール剤を乾燥膜厚が9μmになるように塗布し、PTP用蓋材を作製した。その後、実施例1と同様にしてPVC底材と蓋材(ヒートシール剤側)とを接着し、PTP包装体を得た。
詳細な条件および各物性の測定・評価結果を表1に示す。
【0095】
[比較例6]
特許文献5を参考に、2種のポリプロピレン(PP3およびPP4)を共押出により積層させ、ダイから押し出したフィルムを冷水にて冷却することで、2層の未延伸積層フィルムを作製した。次に、未延伸積層フィルムを140℃に加熱し、MDに4倍延伸した後、押出ラミネートによりプロピレン-α-オレフィンコポリマー(TPO)をPP3層上に積層させ、3層の積層フィルムを作製した。次いで、テンター式延伸機にて140℃でTDに5倍延伸することで、PTP用蓋材を作製した。この際、各層の厚み比がPP4:PP3:TPO=20:10:70となるように調整し、総厚みを40μmとした。実施例1と同様にしてPP底材と蓋材(TPO層側)とを接着し、PTP包装体を得た。
詳細な条件および各物性の測定・評価結果を表1に示す。
【0096】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のPTP包装体用蓋材は、錠剤、カプセル等の医薬品やキャンディーやチョコレート等の食品の包装に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0098】
1 PTP包装体
2 PTP用蓋材
3 底材
4 凹部
5 フランジ部
6 内容物
図1
図2