(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】火力発電所の排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/86 20060101AFI20240111BHJP
B01J 35/50 20240101ALI20240111BHJP
B01D 53/90 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B01D53/86 222
B01J35/02 F
B01D53/90 ZAB
(21)【出願番号】P 2022541261
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 KR2020017649
(87)【国際公開番号】W WO2021141243
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】10-2020-0002471
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520014534
【氏名又は名称】株式会社イーエムコ
【氏名又は名称原語表記】EMKO CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】(Yangjae-dong) 3rd floor, 182, Baumoe-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】趙 漢 才
(72)【発明者】
【氏名】李 承 宰
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-279751(JP,A)
【文献】特開2010-043782(JP,A)
【文献】特開昭62-125828(JP,A)
【文献】特開2014-169693(JP,A)
【文献】特開平07-051536(JP,A)
【文献】特開昭59-095922(JP,A)
【文献】特開昭53-026262(JP,A)
【文献】特表2011-522987(JP,A)
【文献】特開平07-039725(JP,A)
【文献】特開昭59-087044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-96
B01J 35/02
F01K 23/00
F01N 3/00
F02C 7/00
F23J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脱硝触媒の前端で、炭化水素系還元剤とアンモニア系還元剤を含む還元剤を窒素酸化物含有排ガスと300℃~500℃で接触させて接触排ガスを形成する段階;および
(B)前記脱硝触媒と前記接触排ガスを接触させて触媒接触排ガスを形成する段階を含み、
前記(A)段階における前記接触はガスタービンと熱交換モジュールの間で行われ、前記(A)段階での前記接触排ガスは前記炭化水素系還元剤と前記アンモニア系還元剤を前記窒素酸化物含有排ガスの移動通路内に注入して形成
し、
前記(A)段階における前記接触は前記炭化水素系還元剤によって前記窒素酸化物含有排ガス中に含まれる二酸化窒素を一酸化窒素に還元させるためのものであり、
前記炭化水素系還元剤は前記二酸化窒素の0.3~0.5当量に該当する量が前記還元剤に含まれ、
前記(B)段階における前記接触は200℃~500℃で行われ、
前記脱硝触媒が複数の熱交換モジュール間に配置される、火力発電所の排ガス処理方法。
【請求項2】
前記窒素酸化物含有排ガスの窒素酸化物の濃度は30~100ppmである、請求項1に記載の火力発電所の排ガス処理方法。
【請求項3】
前記窒素酸化物含有排ガスに含まれる窒素酸化物中の二酸化窒素含有量は40~90体積%である、請求項1に記載の火力発電所の排ガス処理方法。
【請求項4】
前記窒素酸化物含有排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率は1を超える、請求項1に記載の火力発電所の排ガス処理方法。
【請求項5】
前記炭化水素系還元剤は前記接触排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率を2.33以下に維持するためのものである、請求項1に記載の火力発電所の排ガス処理方法。
【請求項6】
前記(A)段階で、前記接触によって前記接触排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率は2.33以下を維持する、請求項1に記載の火力発電所の排ガス処理方法。
【請求項7】
前記(A)段階における前記接触は前記脱硝触媒の前端で測定した前記窒素酸化物含有排ガス中の二酸化窒素濃度測定値に連動する前記炭化水素系還元剤の量で実施する、請求項1に記載の火力発電所の排ガス処理方法。
【請求項8】
前記複数の熱交換モジュールは第1熱交換モジュール、および第2熱交換モジュールを含み、前記第1熱交換モジュールの後端に前記第2熱交換モジュールが配置され、前記第2熱交換モジュールの後端に前記脱硝触媒が配置される、請求項1に記載の火力発電所の排ガス処理方法。
【請求項9】
前記還元剤に含まれる前記炭化水素系還元剤を前記還元剤に含まれないように除外する段階をさらに含む、請求項1に記載の火力発電所の排ガス処理方法。
【請求項10】
前記除外は前記窒素酸化物含有排ガス中の窒素酸化物の濃度が5~25ppmで実施する、請求項9に記載の火力発電所の排ガス処理方法。
【請求項11】
前記除外は前記火力発電所のガスタービンが最大出力の40%以上を示す時実施する、請求項9に記載の火力発電所の排ガス処理方法。
【請求項12】
前記触媒接触排ガスを追加脱硝触媒と接触させて追加触媒接触排ガスを形成する追加触媒接触排ガスの形成段階をさらに含む、請求項1に記載の火力発電所の排ガス処理方法。
【請求項13】
前記追加触媒接触排ガスの形成段階における前記接触は200℃~400℃で行われる、請求項12に記載の火力発電所の排ガス処理方法。
【請求項14】
前記複数の熱交換モジュールは第1熱交換モジュール、第2熱交換モジュールおよび第3熱交換モジュールを含み、前記第1熱交換モジュールの後端に前記第2熱交換モジュールが配置され、前記第2熱交換モジュールの後端に前記脱硝触媒が配置され、前記脱硝触媒の後端に前記第3熱交換モジュールが配置され、前記第3熱交換モジュールの後端に前記追加脱硝触媒が配置される、請求項12に記載の火力発電所の排ガス処理方法。
【請求項15】
前記追加触媒接触排ガスを酸化触媒と接触させる段階をさらに含む、請求項12に記載の火力発電所の排ガス処理方法。
【請求項16】
前記複数の熱交換モジュールは第1熱交換モジュール、第2熱交換モジュール、第3熱交換モジュール、および第4熱交換モジュールを含み、前記第1熱交換モジュールの後端に前記第2熱交換モジュールが配置され、前記第2熱交換モジュールの後端に前記脱硝触媒が配置され、前記脱硝触媒の後端に前記第3熱交換モジュールが配置され、前記第3熱交換モジュールの後端に前記追加脱硝触媒が配置され、前記追加脱硝触媒の後端に前記第4熱交換モジュールが配置され、前記第4熱交換モジュールの後端に前記酸化触媒が配置される、請求項15に記載の火力発電所の排ガス処理方法。
【請求項17】
前記脱硝触媒は酸化触媒機能が追加された二重機能触媒である、請求項1に記載の火力発電所の排ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排ガス処理方法に関し、より詳細には火力発電所の排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力は一般的に大規模な発電施設で生産されている。発電所では主に燃料を燃焼させて発電する火力発電方式や、原子力エネルギを用いた原子力発電方式、流体の落差を用いる水力発電方式などにより発電し、その他の発電施設などでは太陽熱、潮力、風力などを用いた発電方式も用いられる。
【0003】
その中で、火力発電方式は現在までも非常に活発に使われている発電方式として燃料を燃焼してタービンを駆動する方式である。火力発電により電力を得るためには持続的に燃料を消費しなければならず、燃料はガスタービン内で燃焼して多量の排ガス(排気ガス)を生成する。このような排ガスは燃料の燃焼反応および高温熱反応などによって生成された汚染物質を含有しており格別な処理が求められる。
【0004】
したがって、火力発電所に多様な形態の処理設備が適用されているが(例、韓国登録特許第10-1563079号公報等)、従来の処理設備における排ガスの処理は満足できるほどではない。特に、複合火力発電所はタービンの運転状態が随時に変動し、それにより排ガスの流量、速度、温度などの条件も変わり得、特に、起動初期の排ガスに含まれる窒素酸化物中の二酸化窒素が高含量を示し、これに対する対応が必要であるが、満足できるほどの処理技術の開発はまだ不十分な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、このような問題を解決するためのものとして、火力発電所の排ガス処理方法を提供するためのものであり、特に火力発電所のガスタービン起動時に発生する高濃度の二酸化窒素含有排ガスも効果的に処理できる火力発電所の排ガス処理方法を提供する。
【0007】
本発明の技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないまた他の技術的課題は以下の記載から当業者に明確に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例である火力発電所の排ガス処理方法は、(A)脱硝触媒の前端で、炭化水素系還元剤とアンモニア系還元剤を含む還元剤を窒素酸化物含有排ガスと300℃~500℃で接触させて接触排ガスを形成する段階;および(B)前記脱硝触媒と前記接触排ガスを接触させて触媒接触排ガスを形成する段階を含み、前記(A)段階における前記接触はガスタービンと熱交換モジュールの間で行われ、前記(A)段階での前記接触排ガスは前記炭化水素系還元剤と前記アンモニア系還元剤を前記窒素酸化物含有排ガスの移動通路内に注入して形成する。
【0009】
前記接触排ガスは前記炭化水素系還元剤と前記アンモニア系還元剤が共に前記窒素酸化物含有排ガスと接触して形成され得る。
【0010】
前記(A)段階における前記接触は前記炭化水素系還元剤によって前記窒素酸化物含有排ガス中に含まれる二酸化窒素を一酸化窒素に還元させるためのものであり得る。
【0011】
前記炭化水素系還元剤は前記二酸化窒素の0.3~0.5当量に該当する量を最大量として前記還元剤に含まれ得る。
【0012】
前記(B)段階における前記接触は200℃~500℃で行われ得る。
【0013】
前記窒素酸化物含有排ガスの窒素酸化物の濃度は30~100ppmであり得る。
【0014】
前記窒素酸化物含有排ガスに含まれる窒素酸化物中の二酸化窒素含有量は40~90体積%であり得る。
【0015】
前記窒素酸化物含有排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率は1を超え得る。
【0016】
前記炭化水素系還元剤は前記接触排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率を2.33以下に維持するためのものであり得る。
【0017】
前記(A)段階で、前記接触によって前記接触排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率は2.33以下を維持し得る。
【0018】
前記(A)段階における前記接触は前記脱硝触媒の前端で測定した前記窒素酸化物含有排ガス中の二酸化窒素濃度測定値に連動する前記炭化水素系還元剤の量で実施し得る。
【0019】
前記複数の熱交換モジュールは第1熱交換モジュール、および第2熱交換モジュールを含み、前記第1熱交換モジュールの後端に前記第2熱交換モジュールが配置され、前記第2熱交換モジュールの後端に前記脱硝触媒が配置され得る。
【0020】
前記処理方法は前記還元剤に含まれる前記炭化水素系還元剤を前記還元剤に含まれないように除外する段階をさらに含み得る。
【0021】
前記除外は前記窒素酸化物含有排ガス中の窒素酸化物の濃度が5~25ppmで実施し得る。
【0022】
前記除外は前記火力発電所のガスタービンが最大出力の40%以上を示す時に実施し得る。
【0023】
前記処理方法は前記触媒接触排ガスを追加脱硝触媒と接触させて追加触媒接触排ガスを形成する追加触媒接触排ガスの形成段階をさらに含み得る。
【0024】
前記追加触媒接触排ガスの形成段階における前記接触は200℃~400℃で行われ得る。
【0025】
前記複数の熱交換モジュールは第1熱交換モジュール、第2熱交換モジュールおよび第3熱交換モジュールを含み、前記第1熱交換モジュールの後端に前記第2熱交換モジュールが配置され、前記第2熱交換モジュールの後端に前記脱硝触媒が配置され、前記脱硝触媒の後端に前記第3熱交換モジュールが配置され、前記第3熱交換モジュールの後端に前記追加脱硝触媒が配置され得る。
る。
【0026】
前記処理方法は前記追加触媒接触排ガスを酸化触媒と接触させる段階をさらに含見得る。
【0027】
前記複数の熱交換モジュールは第1熱交換モジュール、第2熱交換モジュール、第3熱交換モジュール、および第4熱交換モジュールを含み、前記第1熱交換モジュールの後端に前記第2熱交換モジュールが配置され、前記第2熱交換モジュールの後端に前記脱硝触媒が配置され、前記脱硝触媒の後端に前記第3熱交換モジュールが配置され、前記第3熱交換モジュールの後端に前記追加脱硝触媒が配置され、前記追加脱硝触媒の後端に前記第4熱交換モジュールが配置され、前記第4熱交換モジュールの後端に前記酸化触媒が配置され得る。
【0028】
前記脱硝触媒は酸化触媒機能が追加された二重機能触媒であり得る。
【0029】
前記二重機能触媒は一つの触媒支持体の上に脱硝機能を担当する触媒成分と酸化機能を担当する触媒成分が共に存在ものであり得る。
【発明の効果】
【0030】
本発明によって、火力発電所の排ガスを非常に効果的、効率的に処理することができる。このような本発明は、特に複合火力発電所の起動時点に発生する排ガスに対しても卓越した処理効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施例による火力発電所の排ガス処理方法を説明するためのフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施例による火力発電所の排ガス処理方法が実施され得る排ガス処理装置を示す図である。
【
図3】
図2の排ガス処理装置の第1変形例の配置構造を示す図である。
【
図4】
図2の排ガス処理装置の第2変形例の配置構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の利点および特徴そしてそれらを達成するための方法は添付する図面と共に詳細に後述している実施例を参照すると明確になる。しかし、本発明は、以下で開示する実施例に限定されるものではなく互いに異なる多様な形態で実現することができ、単に本実施例は本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供するものであり、本発明は単に請求項によってのみ定義される。明細書全体にわたって同一参照符号は同一構成要素を指すものとする。
【0033】
本明細書で「前端」と「後端」は相対的な概念であり、排ガス流動方向を基準とする時、排ガスの流入側を前端といい、排ガス流出側を後端という。
【0034】
以下、
図1ないし
図4を参照して本発明の一実施例による火力発電所の排ガス処理方法(以下、排ガス処理方法)について詳細に説明する。
【0035】
図1は本発明の一実施例による火力発電所の排ガス処理方法を説明するためのフローチャートであり、
図2は本発明の一実施例による火力発電所の排ガス処理方法が実施され得る排ガス処理装置を示す図であり、
図3は
図2の排ガス処理装置の第1変形例の配置構造を示す図である。
【0036】
本発明の一実施例である火力発電所の排ガス処理方法は、(A)接触排ガスの形成段階;および(B)触媒接触排ガスの形成段階を含む。
【0037】
(A)接触排ガスの形成段階は、脱硝触媒の前端で、炭化水素系還元剤とアンモニア系還元剤を含む還元剤を窒素酸化物含有排ガスと300℃~500℃で接触させて接触排ガスを形成する段階である。このような接触温度は好ましくは300℃~500℃、より好ましくは300℃超過500℃以下、さらに好ましくは320℃~480℃であり得、実験結果からも確認されるように、このような温度範囲で二酸化窒素が一酸化窒素に還元され、結果的に効果的な脱硝が起きるものと見られる。すなわち、このような温度範囲では、触媒によらず、主に炭化水素系還元剤によって二酸化窒素が一酸化窒素に還元される反応(Selective Non-Catalytic Reduction;SNCR)が行われるものと見られる。結局、このような温度範囲で二酸化窒素を一酸化窒素に効果的に還元させることができるため好ましく、このような温度範囲未満または以下では二酸化窒素を一酸化窒素に還元させることが難しい恐れがあり、このような温度範囲を超える場合は一酸化窒素がかえって二酸化窒素に酸化される恐れがる。この時、還元は熱化学反応(thermochemical reaction)のような反応による。
【0038】
炭化水素系還元剤によって、窒素酸化物含有排ガスに含まれる二酸化窒素が一酸化窒素に還元されることにより、接触排ガス中の二酸化窒素含有量が窒素酸化物含有排ガスに比べて減少する。また、(A)段階でアンモニア系還元剤が炭化水素系還元剤とともに適用されて窒素酸化物含有排ガスと接触することにより、その後(B)段階で触媒反応による脱硝がより効果的に行われるものと見られる。これは、(B)段階で主に触媒と接触することによって触媒反応に参加して窒素酸化物を還元させるアンモニア系還元剤が既に(A)段階で窒素酸化物(特に、二酸化窒素と一酸化窒素含有量が触媒反応に有利に調節された状態の窒素酸化物)と十分に接触した状態になるからであると見られ、後述する実験例によってもそのような効果が確認される。
【0039】
特に、火力発電所のガスタービンの駆動初期に発生する排ガス中の二酸化窒素含有量が高くて処理が難しい場合でも、(A)段階を経た後、(B)段階を経ることによって効果的に処理することが可能になる。ガスタービンは燃料を燃焼させてタービンを回転させて燃焼時に発生する排ガスを後端に排出する。ガスタービンは高温/高圧の燃焼ガスでタービンを起動させる回転式熱機関であり、一般的に圧縮機、燃焼器、およびタービンを含んでなる。このようなガスタービン初期起動時の高含量の二酸化窒素が窒素酸化物含有排ガスに含まれて処理が容易でないが、(A)段階と(B)段階を経ることによって効果的な処理が可能になる。すなわち、窒素酸化物含有排ガスに高含量の二酸化窒素が含まれて二酸化窒素/一酸化窒素の比率が高い値を示しても、(A)段階で形成された接触排ガスには二酸化窒素が一酸化窒素に還元された結果、二酸化窒素/一酸化窒素の比率が窒素酸化物含有排ガスの二酸化窒素/一酸化窒素の比率に比べて減少した状態でアンモニア系還元剤も共に含んでおり、このような接触排ガスは(B)段階で脱硝触媒と接触することにより、触媒反応によって効果的に脱硝反応が起きるものと見られる。これは下記の反応式によっても説明することができる。すなわち、反応式(1)のように、二酸化窒素がエタノールのような炭化水素系還元剤によって一酸化窒素に還元され、一酸化窒素は脱硝触媒と接触することによって反応式(2)で正反応が起きるようにするものである。この時、(A)段階で炭化水素系還元剤によって還元されず接触排ガスに存在する二酸化窒素も反応式(2)で正反応が起きるようにすることができるのはもちろんである。
C2H5OH+NO2+4O2→NO+2CO2+3H2O+1.5O2 (1)
2NH3+NO2+NO→2N2+3H2O (2)
【0040】
このような反応式と後述する実験結果などを考慮すると、炭化水素系還元剤は窒素酸化物含有排ガスに含まれる二酸化窒素の0.5当量に該当する量を最大量として還元剤に含まれることが好ましい。より好ましくは、炭化水素系還元剤は窒素酸化物含有排ガスに含まれる二酸化窒素の0.3~0.5当量に該当する量で還元剤に含まれ得る。例えば、窒素酸化物含有排ガス中の二酸化窒素の0.5当量に該当する炭化水素系還元剤が二酸化窒素と反応すると、二酸化窒素の40%~50%に該当する二酸化窒素は一酸化窒素に還元され、還元された一酸化窒素は残存する二酸化窒素と約1:1当量になるので、反応式(2)により窒素に還元されて処理されるものと見られるからである。また、窒素酸化物含有排ガスに二酸化窒素から還元された一酸化窒素以外の一酸化窒素が既に含まれた場合は、窒素酸化物含有排ガス中の二酸化窒素の0.5当量に該当する量より少ない量の炭化水素系還元剤によっても一酸化窒素:二酸化窒素の比率が約1:1になることができ、反応式(2)による処理が可能なものと見られる。したがって、本発明は過量の炭化水素系還元剤を使用せずとも窒素酸化物を効果的に処理できることがわかる。この時、排ガスと接触する炭化水素系還元剤の量が排ガス中の二酸化窒素の量に連動するようにして排ガスを処理することができ、これは後述するセンサなどで二酸化窒素の濃度を測定し、それに応じて炭化水素系還元剤の注入量を調節する方式によることができる。例えば、還元剤と排ガスの接触は脱硝触媒の前端で測定した窒素酸化物含有排ガス中の二酸化窒素濃度の測定値に連動する前記炭化水素系還元剤の量で実施することができる。
【0041】
一方、燃焼条件によって、排ガスに含まれる窒素酸化物中の二酸化窒素の比率が増えると、二酸化窒素が脱硝触媒と接触することによって反応式(3)、(4)のように速度が遅い反応によって窒素に還元され得る。
2NO2+4NH3+O2→3N2+6H2O (3)
6NO2+8NH3→7N2+12H2O (4)
【0042】
しかし、本発明によれば、、排ガスに含まれる窒素酸化物中の二酸化窒素の比率が増えても、触媒と接触する前に炭化水素系還元剤によって接触排ガス中の二酸化窒素の含有量は減らし、一酸化窒素の含有量は増加させることによって、反応式(3)、(4)でない反応式(2)による反応を誘導することができるので、より早い脱硝反応が起きるようにすることができる。また、本発明によれば、脱硝反応がより広い温度範囲でも可能である。すなわち、(B)段階における接触は好ましくは摂氏200度~500度でも行われ得る。本発明による場合、このように広い反応温度範囲で効果的に脱硝が可能であることは後述する実験結果からも確認される。したがって、本発明によれば、このように広い反応温度範囲で効果的な脱硝が可能であり、このような範囲未満や超過では脱硝触媒による選択的触媒還元反応が効率的に起きるには不充分である恐れがある。
【0043】
(B)段階の接触はこのように相対的に広い温度範囲で可能であるため、ガスタービンから煙突に至るまで排ガスが流動する空間のうちこのような温度範囲を満足できる多様な位置に脱硝触媒を適用して本発明を実施することができる。例えば、脱硝触媒は複数の熱交換モジュールの間に配置され、複数の熱交換モジュールは第1熱交換モジュール、および第2熱交換モジュールを含み、第1熱交換モジュールの後端に第2熱交換モジュールが配置され、第2熱交換モジュールの後端に脱硝触媒が配置される。この時、第2熱交換モジュールの後端は好ましくは排ガス温度がガスタービン80%以上の負荷(例、80%~100%負荷)で平均450±60℃範囲が維持される区間であり得る。
【0044】
従来の選択的接触還元法によるとき、相対的に高温である第2熱交換モジュールの後端に脱硝触媒を位置させる場合、反応式(3)、(4)のような遅い反応によって脱硝が主に行われるので触媒量を増加させなくては所望する程度の脱硝が起きにくいので、それより低温である第3熱交換モジュールの後端に脱硝触媒を位置させることが一般的であった。この時、第3熱交換モジュールの後端は好ましくは排ガス温度がガスタービン80%以上の負荷(例、80%~100%負荷)で平均350±60℃範囲が維持される区間であり得る。
【0045】
しかし、本発明によれば、第2熱交換モジュールと第3熱交換モジュールの間でも反応式(2)のような早い反応によって脱硝が主に行われ得るので触媒量をほとんど増加させなくても所望する脱硝性能を発揮することができる。また、触媒量を増加させなくてもよいので、触媒量増加による圧力損失増加を避けることができる。このように従来に比べて脱硝触媒を適用できる位置に対する選択の幅が広くなる点においても本発明の優秀性を確認することができる。例えば、冷間起動(cold start)のような選択的触媒還元反応に必要な温度に至るまで相対的に長い時間が必要な場合、従来の脱硝触媒の設置位置に比べて温度上昇がより早い位置(例、従来よりガスタービンにより近い位置)に脱硝触媒が位置するようにして本発明によって効果的な脱硝が可能である。
【0046】
このように、脱硝触媒が複数の熱交換モジュールの間に位置し、脱硝触媒がガスタービンと最も隣接する熱交換モジュールの後端に配置される場合、(A)段階で還元剤と窒素酸化物含有排ガスの接触はガスタービンと熱交換モジュールの間で行われるようにすることによって、脱硝触媒と接触前に還元剤と窒素酸化物含有排ガスが十分に接触するようにすることができる。
【0047】
そのため、上記にて察した通り、本発明によれば、ガスタービン起動時のように低負荷運転中の排ガス温度が低い環境では処理が不可能であると知らされている二酸化窒素高含量排ガスを効果的に処理できるようになることがわかる。
【0048】
したがって、窒素酸化物をより効果的に処理するために、処理対象になる窒素酸化物含有排ガスは二酸化窒素を高含量で含むことが好ましい。例えば、処理対象はガスタービン起動初期(例、ガスタービンが最大出力の40%~80%に達する前まで)に発生する窒素酸化物含有排ガスが好ましく、このような窒素酸化物含有排ガスの窒素酸化物の濃度は30~100ppmであり、窒素酸化物含有排ガスに含まれる窒素酸化物中の二酸化窒素含有量は40~90体積%であり得る。また、窒素酸化物含有排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率(例、モル比)は1を超え得、好ましくは1~100、より好ましくは1~9、さらに好ましくは2.4~9であり得る。このような比率で、排ガス中の二酸化窒素を一酸化窒素により容易に転換させて、結果的に脱硝がより効果的に起きるようにすることができるものと見られる。
【0049】
また、このような窒素酸化物含有排ガスに含まれる二酸化窒素は、炭化水素系還元剤によって還元された結果、(A)段階で還元剤と窒素酸化物含有排ガスの接触によって接触排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率(例、モル比)は2.49未満、例えば、2.33以下(例、0~2.33)を維持することが好ましく、0.43~2.33を維持することがより好ましく、0.67~1.5を維持することがさらに好ましい。実験例からも確認されるように、このような比率で比較的容易に脱硝が起きるからである。これはこのような比率で反応式(2)および/または反応式(5)による反応がより容易に起きるからであると考えられ、反応式(2)により反応せずに残った一酸化窒素でも反応式(5)のような反応によって比較的容易に窒素に還元されるからであると考えられる。したがって、炭化水素系還元剤は接触排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率(例、モル比)を好ましくは2.49未満、例えば2.33以下(例、0~2.33)、より好ましくは0.43~2.33、さらに好ましくは0.67~1.5を維持するためのものであり得る。
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O (5)
【0050】
窒素酸化物含有排ガスに含まれる窒素酸化物含有量が減少する場合は二酸化窒素も減少し、アンモニア系還元剤だけでも窒素酸化物の処理が可能になるので、このような場合、炭化水素系還元剤を還元剤に含まれないように除外する段階をさらに含むこともできる。
【0051】
例えば、このような除外は窒素酸化物含有排ガス中の窒素酸化物の濃度が5~25ppmで実施するものであり得る。このような範囲の濃度は主にガスタービンが安定した運転が行われる状態でのものであり、排ガス中の二酸化窒素の含有量も高くないため反応式(5)による脱硝によっても十分に処理が可能である。したがって、このような除外は、ガスタービンの運転状態によっても実施することができ、例えば、火力発電所のガスタービンが最大出力の好ましくは40%以上(例、40%~100%)、より好ましくは80%以上(例、80%~100%)を示すときに実施することができる。このような出力を示すとき、排ガス中の窒素酸化物が低濃度(例、5~25ppm)を示すと期待できるからである。
【0052】
また、本発明の一実施例である排ガス処理方法は、触媒接触排ガスを追加脱硝触媒と接触させて追加触媒接触排ガスを形成する追加触媒接触排ガスの形成段階をさらに経ることもできる。このような段階で、触媒接触排ガス中に存在する窒素酸化物を追加脱硝触媒上で触媒反応によって還元させて除去できるので、(B)段階に適用される脱硝触媒の量を減らしても、効果的な窒素酸化物の処理が可能である。脱硝触媒の量を減らすと、排ガスが脱硝触媒をより容易に通過することができ、排ガスの圧力損失を減らし得ることも意味するので、本発明がより効果的であるということがわかる。また、排ガスの圧力損失を減らし得ることは、結局、発電効率を上げることができることを意味するので、発電効率面においても本発明がより効果的であることがわかる。
【0053】
追加触媒接触排ガスの形成段階における接触は、(B)段階での接触より低い温度で行われ得、例えば摂氏200度~400度で行われ得る。このような温度範囲で選択的触媒還元による脱硝が容易に起き得、圧力損失面からも好ましいからである。このような温度範囲を満たす位置に追加脱硝触媒が位置することができ、脱硝触媒の後端に追加脱硝触媒が配置されることができる。例えば、脱硝触媒は複数の熱交換モジュールの間に配置され、複数の熱交換モジュールは第1熱交換モジュール、第2熱交換モジュールおよび第3熱交換モジュールを含み、第1熱交換モジュールの後端に第2熱交換モジュールが配置され、第2熱交換モジュールの後端に脱硝触媒が配置され、脱硝触媒の後端に第3熱交換モジュールが配置され、第3熱交換モジュールの後端に追加脱硝触媒が配置されることができる。
【0054】
また、本発明の一実施例である火力発電所の排ガス処理方法は、触媒接触排ガスまたは追加触媒接触排ガスを酸化触媒と接触させる段階をさらに含むこともできる。酸化触媒はアルデヒドのような炭化水素類や一酸化炭素のような不完全燃焼産物、未反応アンモニアのように反応せずに残った還元剤のように酸化方式または分解方式によって処理可能な物質を処理できるものである。このような酸化触媒によって、触媒接触排ガスまたは追加触媒接触排ガス中に含まれ得る揮発性有機化合物、未反応還元剤なども除去することができる。このような揮発性有機化合物などは窒素酸化物含有排ガス中に含まれるものであるか、還元剤に由来するものでもあり得る。したがって、このような段階によって、窒素酸化物含有排ガスに含まれるものであるか、還元剤に由来する一酸化炭素、揮発性有機化合物なども処理し、火力発電所の排ガスをより効果的に処理できるようになる。このような酸化触媒は脱硝触媒の後端、好ましくは追加脱硝触媒の後端に位置することができ、例えば、脱硝触媒は複数の熱交換モジュールの間に配置され、複数の熱交換モジュールは第1熱交換モジュール、第2熱交換モジュール、第3熱交換モジュール、および第4熱交換モジュールを含み、第1熱交換モジュールの後端に第2熱交換モジュールが配置され、第2熱交換モジュールの後端に脱硝触媒が配置され、脱硝触媒の後端に第3熱交換モジュールが配置され、第3熱交換モジュールの後端に追加脱硝触媒が配置され、追加脱硝触媒の後端に第4熱交換モジュールが配置され、第4熱交換モジュールの後端に酸化触媒が配置されることができる。
【0055】
一方、本発明の一実施例に適用できる脱硝触媒または追加脱硝触媒は選択的触媒還元(SCR;Selective Catalytic Reduction)により窒素酸化物を窒素に還元させ得るものであれば制限されない。例えば、アンモニア-SCR反応触媒(例、バナジウムを含む金属酸化物触媒など)を含み、イオン交換法、乾式含浸法など公知の方法によって製造するかまたは市販のものであり得る。また、脱硝触媒または追加脱硝触媒は酸化触媒機能が追加された二重機能触媒であり得る。この時、酸化触媒機能が追加された二重機能触媒は脱硝触媒機能の他に酸化触媒機能が追加された触媒を意味し、触媒の形態や形式に制限されないが、例えば、二重機能触媒は一つの触媒支持体の上に脱硝機能を担当する触媒成分と酸化機能を担当する触媒成分が共に存在するものであり得る。好ましくは脱硝機能を担当する触媒成分が酸化機能を担当する触媒成分の前端に位置することができる。この時、脱硝機能を担当する触媒成分は還元能を有するバナジウム酸化物触媒成分であり得、酸化機能を担当する触媒成分は貴金属系触媒成分であり得る。この時、貴金属は白金、パラジウム、銀などであり得る。このような二重機能触媒によって、実験例で確認できるように、THCやアンモニアスリップも抑制することができ、差圧面から、より効果的な排ガス処理が可能であることがわかる。
【0056】
また、本発明の一実施例に適用できる炭化水素系還元剤は、一分子内に水酸(OH)基を一つ以上含む炭化水素および砂糖のような糖類より選択された一つ以上であり得る。より好ましい炭化水素系還元剤は、例えばエタノール(Ethanol)、エチレングリコール(Ethylene glycol)、グリセリン(Glycerin)、砂糖、および果糖より選択された一つ以上であり得る。
【0057】
また、本発明の一実施例に適用できるアンモニア系還元剤はアンモニア、尿素またはその前駆体より選択された一つ以上であり得る。
【0058】
また、本発明の一実施例に適用できる酸化触媒もまた酸化方式や分解方式によって処理可能な物質に適用できる触媒であれば制限されず、例えば白金、パラジウム、および/または銀などを含む酸化触媒などであり得る。酸化触媒も公知された方法によって製造されるかまたは市販のものであり得る。
【0059】
以下では
図2ないし
図4を参照して本発明の一実施例が具体的に火力発電所で適用される場合についてより詳細に説明する。
図2は本発明の一実施例による火力発電所の排ガス処理方法が実施され得る排ガス処理装置を示す図であり、
図3は
図2の排ガス処理装置の第1変形例の配置構造を示す図であり、
図4は
図2の排ガス処理装置の第2変形例の配置構造を示す図である。
【0060】
図2に示す排ガス処理装置1はガスタービンAと煙突Cの間の排ガスの移動通路B内のガスタービンAの後端に配置された還元剤注入部10、移動通路B内の排ガスの窒素酸化物を還元させる還元剤が貯蔵された還元剤タンク31,32、および還元剤注入部10の後端に配置された脱硝触媒モジュール20を含んでなる。還元剤タンク31,32は複数であり、それぞれは互いに異なる種類の還元剤を貯蔵することができ、例えば第1還元剤タンク31には炭化水素系還元剤が貯蔵され、第2還元剤タンク32にはアンモニア系還元剤が貯蔵され得る。この時、還元剤タンク31,32と還元剤注入部10は管路構造によって連結されることができる。この時、各管路構造上には圧力差を誘発して流体を移動させるポンプと、管路内の流体流動量などを制御できる弁が設けられ得る。例えば、管路を介して流動する還元剤の流量を調節できる第1制御弁61、第2制御弁62、および還元剤を供給する第1供給ポンプ51、第2供給ポンプ52がそれぞれ図示のように設けられる。このような弁とポンプなどを調節し、二酸化窒素を一酸化窒素に還元させる炭化水素系還元剤の注入量を調節することによって、接触排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率を好ましい範囲に維持することができる。
【0061】
還元剤注入部10は還元剤を排ガスの移動通路内に注入できれば図示された形式や位置に制限されず、ノズル、グリッド構造など多様な形式の注入装置を移動通路を横切る位置や移動通路の壁面などに設けられ得る。
【0062】
また、脱硝触媒モジュール20には支持体に支持された状態で脱硝触媒が含まれ得、脱硝触媒モジュール20は複数の熱交換モジュールの間に配置され得る。すなわち、脱硝触媒モジュール20は複合火力発電所の廃熱回収用ボイラHの熱交換モジュールである第1熱交換モジュールD1、第2熱交換モジュールD2、第3熱交換モジュールD3、第4熱交換モジュールD4、第5熱交換モジュールD5の間の空間に適用されるものであり得、図示するように第2熱交換モジュールD2と第3熱交換モジュールD3の間に位置することができる。図面に示していないが、各熱交換モジュールD1~D5の上端および下端は互いに連結されていてもよく、連結部位には高圧蒸気や熱回収用流体を貯蔵して循環させるタンクなどが設置されていてもよい。熱交換モジュールD1~D5は後端のものD5から順に最前端D1のものに向かって順に流体を循環させて高圧蒸気などを生成することができる。熱交換モジュールD1~D5の温度は最前端D1のものから後端のものD5に向かって順に低くなる。
【0063】
ガスタービンAが起動した後、移動通路内の排ガス温度が増加し、脱硝触媒モジュールが位置する区域の温度が摂氏200~500度を示すとき、排ガス温度が摂氏300~500度である区域に還元剤注入部10に炭化水素系還元剤とアンモニア系還元剤を移動通路内に注入することによって、脱硝触媒の前端で接触排ガスを形成することができる。このような接触排ガスは脱硝触媒と摂氏200度~500度である温度条件で接触することによって、効果的に脱硝が可能になる。
【0064】
このような過程はガスタービン運転条件を基準として、ガスタービンが最大出力の好ましくは40%、より好ましくは80%に達する前まで実施することができ、ガスタービンが最大出力の好ましくは40%、より好ましくは80%に達すると、第1制御弁61をロックして第1供給ポンプ51の作動を中断して、還元剤に炭化水素系還元剤が含まれないように除外することができる。このような過程はガスタービンの運転条件だけでなく、窒素酸化物含有排ガスの窒素酸化物の濃度基準によっても実施することができる。例えば、窒素酸化物含有排ガス中の窒素酸化物の濃度が30~100ppmであるとき、炭化水素系還元剤をアンモニア系還元剤とともに移動通路内に流入させて、窒素酸化物含有排ガス中の窒素酸化物の濃度が5~25ppmであるとき、第1制御弁61をロックして第1供給ポンプ51作動を中断して、還元剤に炭化水素系還元剤が含まれないように除外することができる。
【0065】
また、
図3に示す排ガス処理装置1-1により、追加触媒接触排ガスの形成段階ないし酸化触媒接触段階を実施することもできる。
図3に示す排ガス処理装置1-1は
図2に示す排ガス処理装置1と他は同一であるが、ただ追加脱硝触媒を含む追加脱硝触媒モジュール40および酸化触媒を含む酸化触媒モジュール70をさらに含むことを示す。したがって、重複を避けるために
図2に示す排ガス処理装置1と重複する内容は除いて、
図3に示す装置1-1に追加された構成を中心に説明する。追加脱硝触媒モジュール40は、第3熱交換モジュールD3と第4熱交換モジュールD4の間に配置され、触媒接触排ガスが摂氏200度~400度である温度条件で追加脱硝触媒と接触して触媒接触排ガス中に存在する窒素酸化物を還元処理して追加触媒接触排ガスを形成することができる。このように形成された追加触媒接触排ガスは第4熱交換モジュールD4と第5熱交換モジュールD5の間に配置された酸化触媒と接触して追加触媒接触排ガス中に存在する一酸化炭素、揮発性有機化合物などを触媒上で酸化反応によって除去できるようになる。
【0066】
また、
図4に示す排ガス処理装置1-2のように、還元剤注入部10の他に追加還元剤注入部12を含み、窒素酸化物(NO,NO
2および/またはNOx)測定センサのような測定センサ80を含むことによって、それぞれの還元剤分離注入および/またはセンサによる窒素酸化物を測定して、本発明の一実施例を実施することもできるのはもちろんである。
【0067】
図4に示すように、第1還元剤タンク31は還元剤注入部と連結され、第2還元剤タンク32は追加還元剤注入部と連結され、それぞれの還元剤タンクには炭化水素系還元剤とアンモニア系還元剤がそれぞれ貯蔵され、それぞれの還元剤がそれぞれの注入部によって排ガス中に注入される方式で、排ガスと接触する還元剤の含有量を調節することができる。このような還元剤含有量の調節は測定センサにより測定された排ガス中の窒素酸化物(NO、NO
2および/またはNOx)の濃度測定値に連動して行われることもできる。このような測定値に連動する方式により還元剤含有量を調節することによって、脱硝に必要な最適量の還元剤だけを消耗し、残存する還元剤によって引き起こされる問題に対する心配も避けることができる。
【0068】
以下、実験例により本発明の効果についてより詳細に説明する。以下、実験例の説明の際に前述した構成部については別途の符号を併記せず指称して説明する。
【0069】
<実験例1>脱硝効果の確認実験
定量注入装置(MFC)を用いて、O
2 15%、NO 20ppm、NO
2 80ppm(Balance gas N
2)の模擬排ガスを作って触媒実験装置を通過するように装置を構成した。この時、模擬排ガスを作るためのNOとNO
2は1%濃度(Balance gas N
2)を有する混合ガスを使用した。触媒実験装置にはSCR触媒(ibmaterials社)を配置し、電気ヒータと冷却器を設置して反応温度を調節できるようにした。SCR触媒の空間速度は23,000±3,000hr
-1であった。アンモニアとエチレングリコールが模擬排ガスと混合された状態で触媒実験装置を通過するように、混合器を適用した。混合器にも電気ヒータと冷却器を設置して400±4℃で還元剤と排ガスが接触して混合されるようにした。アンモニアは混合器の前端でNH
3/NOxモル比1.26に調整した後に混合器に注入した。この時、アンモニアは1%濃度(Balance gas N
2)のアンモニアガスを使用し、注入流量をMFCで調節した。また、エチレングリコールは定量ポンプを用いて注入量を調節した。エチレングリコールはNO
2に対して注入モル比(エチレングリコール/NO
2)を調節して注入しながら温度別の脱硝率を測定した。SCR触媒の反応温度を175℃~550℃に変化させ、脱硝に及ぼす影響を確認した。この時、500℃以下の反応温度範囲は還元剤と排ガスが300℃~500℃で接触する時、到達できる反応温度範囲を考慮して選択したものであり、500℃超過である反応温度範囲は触媒反応温度による影響を把握するために任意に触媒実験装置温度を550℃まで上昇させて実験を行った。それぞれの条件で脱硝率を計算し、その結果は下記の表のとおりである。
【表1】
【0070】
表1のように、排ガス中のNO2濃度が約80ppmである場合(NO2/NOx=0.8)、還元剤としてアンモニアのみ使用時(エチレングリコール注入比が0である場合)反応温度が約350℃以上である場合にのみ70%以上の脱硝率が示された。しかし、エチレングリコールが還元剤に含まれる場合、反応温度が300℃以下であるときにも、70%以上の脱硝率が示され、エチレングリコール含有量の増加により脱硝率が増加する傾向を示した。例えば、エチレングリコール/NO2比が0.3以上である場合は反応温度が200℃であるときにも70%以上の脱硝率が示された。ただし、反応温度が200℃未満であるか反応温度が500℃超過であるときにはエチレングリコール含有量を増加させても脱硝率が70%に至らなかった。したがって、反応温度200℃~500℃で特に本発明による場合、二酸化窒素含有量が高い排ガスも容易に処理できることがわかる。このような結果から本発明によれば、より広い反応温度範囲で、高濃度の二酸化窒素を含有する排ガスも触媒と接触して容易に処理されることがわかる。
【0071】
<実験例2>接触温度が脱硝に及ぼす効果の確認実験
以下では実験例1の結果を活用して、還元剤と排ガスの接触温度が排ガス脱硝に及ぼす影響を把握しようとした。反応温度は300℃に固定し、還元剤と排ガスの接触温度は変更して脱硝率の変化を把握した。反応温度300℃は実験例1で脱硝率90%以上を示すことができる反応温度のうち相対的に低い温度であることを考慮して設定したものである。具体的には、排ガス接触は第1チャンバで行われ、触媒接触は第1チャンバ後端の第2チャンバで行われるように、第1チャンバと第2チャンバを配置し、第2チャンバにはSCR触媒(ibmaterials社)を設置した。第1チャンバと第2チャンバの前端にはそれぞれ電気ヒータを設置し、第2チャンバの前端には空冷式冷却器を設置して反応温度を調節した。模擬排ガス{O2 15%、NO 14ppm、NO2 60ppm}を第1チャンバに注入し、表2に記載された接触温度まで昇温させた後、エチレングリコール(エチレングリコール/NO2モル比:0.4)とアンモニア(NH3/NOxモル比1.27)を注入して混合されるようにした後、十分な滞留時間(約0.8秒)の間第1チャンバに滞留させた後、二酸化窒素の一酸化窒素への転換程度を測定し、転換率を算定してその結果を表2に記載した。第1チャンバから流出した接触排ガスは電気ヒータと空冷式冷却器を用いて、第2チャンバで反応温度300℃になるように調整して触媒による脱硝反応を誘導した。この時SCR触媒の空間速度は45,000hr-1であった。触媒反応による脱硝率を算定し、その結果を表2に示した。また、還元剤接触温度と反応温度が異なることにより、接触温度で転換された二酸化窒素が反応温度で維持されるかどうかを確認するために、第2チャンバの触媒前端でもNO2/NOx含有量を測定した。その結果、第1チャンバで測定されたNO2/NOx含有量と大きな差はなく、表2に記載された還元剤接触温度でNO2転換率が触媒反応温度でも維持されることを確認した。
【0072】
また、表2には接触排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率を示した。接触排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率は転換後の排ガス中に残存するNO
2濃度を転換後の排ガス中に存在するNO濃度(転換前に存在していたNO濃度+転換によって新たに生成されたNO濃度)で除する方式で算定した。
【表2】
【0073】
表2の結果を見れば、還元剤が排ガスと300℃~500℃で、より好ましくは320℃~480℃で接触時二酸化窒素が一酸化窒素に非常に効果的に転換されることが分かり、このような転換によって脱硝も効果的に起きることがわかる。この時、接触排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率は好ましくは2.49未満で把握された。
【0074】
<実験例3>接触排ガス中のNO2/NO比率変化が脱硝に及ぼす影響の把握
以下では実験例2の結果を活用して、接触排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率変化が脱硝率に及ぼす影響をより詳細に把握しようとした。
【0075】
反応温度は実験例2と同一に300℃に固定し、接触排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率を変化させて実験を実施した。この時、SCR触媒の空間速度は実験例2とは異なるようにし、これは接触排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率差による脱硝効果の差異をよりよく調べるためであった。二酸化窒素/一酸化窒素の比率が調整された接触排ガスを模擬するために、窒素をBalance gasとし、O
2 15%に調節した後、NOとNO
2の濃度を下記の表に記載した比率になるように調節した。触媒実験装置にはSCR触媒(ibmaterials社)を配置し、電気ヒータと冷却器を設置して反応温度を調節できるようにした。SCR触媒の空間速度は30,000±2,000hr
-1であった。アンモニアが模擬排ガスと混合された状態で触媒実験装置を通過するように混合器を適用した。混合器にも電気ヒータと冷却器を設置して混合温度を調節した。アンモニアは混合器の前端でNH
3/NOxモル比1.2に調整した後に混合器に注入した。この時、アンモニアは1%濃度(Balance gas N
2)のアンモニアガスを使用し、注入流量をMFCに調節した。それぞれの条件で脱硝率を計算し、その結果は下記の表のとおりである。
【表3】
【0076】
表3のように、接触排ガス中のNO2/NO比率が2.33以下であるとき、好ましくは0.43~2.33であるときより効果的に脱硝が可能であり、0.67~1.5であるときさらに効果的に脱硝が可能であることがわかる。
【0077】
このような結果から、接触排ガス中のNO2/NO比率は好ましくは2.33以下、より好ましくは0.43~2.33、さらに好ましくは0.67~1.5であることがわかる。
【0078】
したがって、炭化水素系還元剤はこのような比率を維持するためのものであり得る。すなわち、炭化水素系還元剤は接触排ガス中の二酸化窒素/一酸化窒素の比率(例、モル比)を好ましくは2.33以下、より好ましくは0.43~2.33、さらに好ましくは0.67~1.5を維持するためのものであり得る。
【0079】
<実験例4>脱硝および酸化効果の確認実験
実験例1で使用された脱硝触媒に酸化触媒を追加し、模擬排ガス{O2 15%、NO 20ppm、NO2 80ppm、プロパン(C3H8) 15ppm(Balance gas N2)}に対する脱硝および酸化効果の確認実験を実施した。模擬排ガス中のプロパンはTHC除去効果を客観的に判断するために追加したものであり、プロパンガス(1%プロパン、Balance gas N2)をMFCに注入して濃度を調節した。一方、脱硝触媒に酸化触媒を追加するために、酸化触媒を別途の支持体に適用する方式と脱硝触媒と同じ支持体に酸化触媒を適用する方式を用いた。酸化触媒を別途の支持体に適用する方式のためには実験例1のようなSCR触媒と別途の白金系酸化触媒(ibmaterials社)を購入して使用した。この時、白金系酸化触媒の空間速度は60,000hr-1であった。酸化触媒を脱硝触媒と同じ支持体に適用するためにはPlatinum NitrateをDI waterに希釈した後、実験例1のようなSCR触媒の40%部分をコートして、触媒重量に対してPtの含有量を0.05wt%になるようにし、120℃で4時間乾燥した後に500℃で5時間焼成して二重機能触媒を準備した。
【0080】
この時、触媒実験装置と混合器は実験例1と同じものを用い、還元剤と排ガスの接触温度は400℃条件で、エチレングリコールの有無、酸化触媒適用方式を変化させて実験を実施した。実験に使用したアンモニアの注入量はNH
3/NOxの比=1.2であり、エチレングリコールの注入量はエチレングリコール/NO
2モル比=0.4であった。実験結果は脱硝率だけでなくTHC(Total Hydrocarbon)除去率、アンモニアSlip濃度、差圧の変化についても共に求めた。その結果を表4ないし表7に示した。表4は還元剤としてアンモニアのみを適用し、SCR触媒を適用した場合の実験結果を示し、表5と表6は還元剤としてアンモニアとエチレングリコールを適用し、脱硝触媒に酸化触媒を追加で適用した場合の実験結果を示す。その中で表5は酸化触媒を別途の支持体に適用した場合の実験結果を示し、表6は二重機能触媒を適用した場合の実験結果を示す。また、表7は反応温度380℃でそれぞれの場合に対する差圧変化の実験結果を示す。この時、表でNDは不検出(not detected)を表す。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0081】
表4ないし表7の実験結果から、炭化水素系還元剤とアンモニア系還元剤を共に還元剤として適用することによって、より広い温度範囲で効果的に脱硝が行われることがわかる。また、酸化触媒を脱硝触媒とともに適用して酸化時THC発生やアンモニアスリップも効果的に抑制できることがわかる。さらに、酸化触媒を二重機能触媒の形態で適用することによって、差圧面において、より効果的な排ガス処理が可能であることがわかる。
【0082】
以上の実験結果からも、本発明による場合、複合火力発電所の起動時点のように二酸化窒素の含有量が高い排ガスについても卓越した処理効果を発揮できることがわかる。
【0083】
以上、添付する図面と実験例を参照して本発明の実施形態について説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の火力発電所の排ガス処理方法によって火力発電所の排ガスを非常に効果的、効率的に処理することができる。したがって、本発明は産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0085】
1,1-1,1-2 排ガス処理装置 10 還元剤注入部
12 追加還元剤注入部 20 脱硝触媒モジュール
31 第1還元剤タンク 32 第2還元剤タンク
40 追加脱硝触媒モジュール 51 第1供給ポンプ
52 第2供給ポンプ 61 第1制御弁
62 第2制御弁 70 酸化触媒モジュール
80 測定センサ A ガスタービン
B 排ガスの移動通路 C 煙突
D1 第1熱交換モジュール D2 第2熱交換モジュール
D3 第3熱交換モジュール D4 第4熱交換モジュール
D5 第5熱交換モジュール H 廃熱回収用ボイラ