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  • 特許-空気入りタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/00 20060101AFI20240111BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B60C9/00 A
B60C9/22 C
B60C9/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019046284
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020147166
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 隆充
(72)【発明者】
【氏名】張替 紳也
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-270605(JP,A)
【文献】特開昭61-188204(JP,A)
【文献】特開2014-073715(JP,A)
【文献】国際公開第2009/028918(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/143757(WO,A1)
【文献】特開平08-164706(JP,A)
【文献】特開平04-228306(JP,A)
【文献】特開2006-274529(JP,A)
【文献】特開2010-053465(JP,A)
【文献】特開2015-231773(JP,A)
【文献】特開昭52-126806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00
B60C 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記一対のビード部間に装架された少なくとも1層のカーカス層と、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置された複数層のベルト層と、前記ベルト層の外周側に配置されたベルト補強層とを有する空気入りタイヤにおいて、
前記カーカス層は、ポリエチレンテレフタレート繊維のフィラメント束を撚り合わせた有機繊維コードからなるカーカスコードで構成され、前記カーカスコードの破断伸びが20%以上、カーカスコードの前記ベルト層の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸びが6.07.0%以下であり、
前記ベルト補強層は、ポリエチレンテレフタレート繊維のフィラメント束を撚り合わせた有機繊維コードからなるベルト補強コードで構成され、前記ベルト補強コードの2.0cN/dtex負荷時の伸びが2.0%~4.0%である空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記カーカスコードの破断伸びが22%~24%であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
下記(1)式で表される前記カーカスコードのディップ処理後の撚り係数Kが2000~2500であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
K=T×D1/2 ・・・(1)
(但し、Tはコードの上撚り数(回/10cm)であり、Dはコードの総繊度(dtex)である。)
【請求項4】
前記ベルト補強コードの2.0cN/dtex負荷時の伸びが2.5%~3.5%であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ベルト補強コードが前記ベルト層のタイヤ幅方向の全域を覆うことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機繊維コードからなるカーカス層を備えた空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、耐ショックバースト性と高速走行時の操縦安定性とを両立することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの故障の原因の一つとして、走行中にタイヤが大きなショックを受けて、カーカスが破壊する損傷(ショックバースト)が知られている。このような損傷に対する耐久性(耐ショックバースト性)は、例えばプランジャーエネルギー試験によって判定することができる。即ち、プランジャーエネルギー試験は、トレッド中央部に所定の大きさのプランジャーを押し付けてタイヤが破壊する際の破壊エネルギーを測定する試験であるので、空気入りタイヤが凹凸路面における突起を乗り越す際の破壊エネルギー(トレッド部の突起入力に対する破壊耐久性)の指標とすることができる。
【0003】
このようなプランジャーエネルギー試験によって良好な結果を得る(即ち、耐ショックバースト性を向上する)方法としては、例えば、試験時にプランジャーが当接するタイヤ赤道部におけるゴムゲージを大きくすることが知られている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、これらの方法では、使用するゴム量が増加してタイヤ重量が増大する虞がある。そのため、カーカス層を構成するカーカスコードとして破断伸びが大きい有機繊維コードを使用して、試験時(プランジャーに押圧された際)の変形を許容可能にすることも検討されている。しかしながら、この場合、カーカス層の剛性が低下するため、ベルト層の座屈が生じやすくなり、高速走行時の操縦安定性が低下する虞があった。そのため、有機繊維コードからなるカーカス層を備えた空気入りタイヤにおいて耐ショックバースト性と高速走行時の操縦安定性とを高度に両立する対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010‐247700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、有機繊維コードからなるカーカス層を備えた空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、耐ショックバースト性と高速走行時の操縦安定性とを両立することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記一対のビード部間に装架された少なくとも1層のカーカス層と、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置された複数層のベルト層と、前記ベルト層の外周側に配置されたベルト補強層とを有する空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層は、ポリエチレンテレフタレート繊維のフィラメント束を撚り合わせた有機繊維コードからなるカーカスコードで構成され、前記カーカスコードの破断伸びが20%以上、カーカスコードの前記ベルト層の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸びが6.07.0%以下であり、前記ベルト補強層は、ポリエチレンテレフタレート繊維のフィラメント束を撚り合わせた有機繊維コードからなるベルト補強コードで構成され、前記ベルト補強コードの2.0cN/dtex負荷時の伸びが2.0%~4.0%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、上述のように、カーカス層を構成するカーカスコードの破断伸びが20%以上であるので、プランジャーエネルギー試験時(プランジャーに押圧された際)の変形を充分に許容することができ、破壊エネルギー(トレッド部の突起入力に対する破壊耐久性)を向上することができる。即ち、空気入りタイヤの耐ショックバースト性を向上することができる。また、ベルト層の内周側におけるカーカスコードの伸びが6.07.0%以下であり、ベルト層の内周側におけるカーカス層の剛性が低く抑えられているので、この点でも空気入りタイヤの耐ショックバースト性を向上することができる。一方で、ベルトカバー層を構成するベルト補強コードの2.0cN/dtex負荷時の伸びが2.0%~4.0%であり、ベルト補強層が充分な剛性を有するので、グリップ限界付近でのベルト層の面外へのバックリングが抑制され、コーナリングフォースの低下を抑制することができ、高速走行時の操縦安定性を向上することができる。これらの協働により、本発明の空気入りタイヤは、耐ショックバースト性と高速走行時の操縦安定性とを高度に両立することができる。
【0008】
本発明では、カーカスコードの破断伸びが22%~24%であることが好ましい。また下記(1)式で表される前記カーカスコードのディップ処理後の撚り係数Kが2000~2500であることが好ましい。このように各物性値を設定することでカーカスコードの物性が更に良好になり、耐ショックバースト性と高速走行時の操縦安定性とを高度に両立するには有利になる。
【0009】
K=T×D1/2 ・・・(1)
(但し、Tはコードの上撚り数(回/10cm)であり、Dはコードの総繊度(dtex)である。)
本発明では、ベルト補強コードの2.0cN/dtex負荷時の伸びが2.5%~3.5%であることが好ましい。これによりベルト補強コードの物性が更に良好になり、耐ショックバースト性と高速走行時の操縦安定性とを高度に両立するには有利になる。
【0010】
本発明では、カーカスコードを構成する有機繊維がポリエチレンテレフタレート繊維である。また、ベルト補強コードを構成する有機繊維がポリエチレンテレフタレート繊維である。このように各層にポリエチレンテレフタレート繊維を用いることで、その優れた物性(高弾性率)により、耐ショックバースト性と高速走行時の操縦安定性とを高度に両立するには有利になる。
【0011】
本発明では、ベルト補強コードがベルト層のタイヤ幅方向の全域を覆うことが好ましい。このような配置にすることで、ベルト補強コードによる効果をより良好に発揮することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示す子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。図1において、符号CLはタイヤ赤道を示す。図1は子午線断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。以下、図1を用いた説明は基本的に図示の子午線断面形状に基づくが、各タイヤ構成部材はいずれもタイヤ周方向に延在して環状を成すものである。
【0015】
図示の例では、トレッド部1の外表面にタイヤ周方向に延びる複数本(図示の例では4本)の主溝が形成されているが、主溝の本数は特に限定されない。また、主溝の他にタイヤ幅方向に延びるラグ溝を含む各種の溝やサイプを形成することもできる。
【0016】
左右一対のビード部3間にはタイヤ径方向に延びる複数本の補強コード(カーカスコード)を含むカーカス層4が装架されている。各ビード部には、ビードコア5が埋設されており、そのビードコア5の外周上に断面略三角形状のビードフィラー6が配置されている。カーカス層4は、ビードコア5の廻りにタイヤ幅方向内側から外側に折り返されている。これにより、ビードコア5およびビードフィラー6はカーカス層4の本体部(トレッド部1から各サイドウォール部2を経て各ビード部3に至る部分)と折り返し部(各ビード部3においてビードコア5の廻りに折り返されて各サイドウォール部2側に向かって延在する部分)とにより包み込まれている。
【0017】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図示の例では2層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コード(ベルトコード)を含み、かつ層間でベルトコードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、ベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。ベルトコードとしては例えばスチールコードが使用される。
【0018】
ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上とロードノイズの低減を目的として、ベルトカバー層8が設けられている。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する補強コード(ベルト補強コード)を含む。ベルト補強層8において、ベルト補強コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°~5°に設定されている。本発明では、ベルトカバー層8は、ベルト層7の全域を覆うフルカバー層8aを必ず含み、任意でベルト層7の両端部を局所的に覆う一対のエッジカバー層8bを含む構成にすることができる(図示の例では、フルカバー層8aおよびエッジカバー層8bの両方を含む)。ベルトカバー層8は、少なくとも1本のベルト補強コードを引き揃えてコートゴムで被覆したストリップ材をタイヤ周方向に螺旋状に巻回して構成するとよく、特にジョイントレス構造とすることが望ましい。
【0019】
本発明は、上述のカーカス層4を構成するカーカスコードとベルト補強層8を構成するベルトコードに関するものであるので、タイヤ全体の基本構造は上述のものに限定されない。
【0020】
本発明において、カーカス層4を構成するカーカスコードは、有機繊維のフィラメント束を撚り合わせた有機繊維コードで構成される。このカーカスコード(有機繊維コード)の破断伸びは20%以上、好ましくは22%~24%である。また、カーカスコードのベルト層7の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸びが5.5%以上、好ましくは5.5%~7.0%である。カーカスコードを構成する有機繊維の種類は特に限定されないが、例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維などを用いることができ、なかでもポリエステル繊維を好適に用いることができる。また、ポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN繊維)、ポリブチレンテレフタレート繊維(PBT)、ポリブチレンナフタレート繊維(PBN)を例示することができ、PET繊維を好適に用いることができる。尚、「破断伸び」および「1.5cN/dtex負荷時の伸び」は、JIS L1017の「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施して測定される試料コードの伸び率(%)であり、「破断伸び」はコード破断時に測定される値であり、「1.5cN/dtex負荷時の伸び」は1.5cN/dtex負荷時に測定される値である。
【0021】
本発明において、ベルトカバー層8を構成するベルト補強コードは、有機繊維のフィラメント束を撚り合わせた有機繊維コードで構成される。このベルト補強コード(有機繊維コード)の2.0cN/dtex負荷時の伸びは2.0%~4.0%、好ましくは2.5%~3.5%である。ベルト補強コードを構成する有機繊維の種類は特に限定されないが、例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維などを用いることができ、なかでもポリエステル繊維を好適に用いることができる。また、ポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN繊維)、ポリブチレンテレフタレート繊維(PBT)、ポリブチレンナフタレート繊維(PBN)を例示することができ、PET繊維を好適に用いることができる。尚、本発明において、2.0cN/dtex負荷時の伸びは、JIS L1017の「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施し、2.0cN/dtex負荷時に測定される試料コードの伸び率(%)である。
【0022】
このように、特定の物性を有する有機繊維コードからなるカーカス層4と特定の物性を有する有機繊維コードからなるベルトカバー層8を組み合わせて用いることで、本発明の空気入りタイヤは、耐ショックバースト性と高速走行時の操縦安定性とを高度に両立することができる。即ち、カーカス層4においては、カーカスコードの破断伸びが大きいことで、プランジャーエネルギー試験時(プランジャーに押圧された際)の変形を充分に許容することができ、破壊エネルギー(トレッド部の突起入力に対する破壊耐久性)を向上することができ、空気入りタイヤの耐ショックバースト性を向上することができる。また、、ベルト層8の内周側におけるカーカス層4の剛性が低く抑えられていることも、空気入りタイヤの耐ショックバースト性を向上するには有利である。一方で、ベルトカバー層8においては、上述の物性のベルト補強コードによって、グリップ限界付近でのベルト層の面外へのバックリングを抑制して、コーナリングフォースの低下を抑制することができ、高速走行時の操縦安定性を向上することができる。
【0023】
このとき、カーカスコード(有機繊維コード)の破断伸びが20%未満であると、プランジャーエネルギー試験時の変形を充分に許容することができず、耐ショックバースト性を向上することができない。カーカスコードのベルト層8の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸びが5.5%未満であると、ベルト層8の内周側におけるカーカス層の剛性が高くなり、プランジャーエネルギー試験時の変形を充分に許容することができず、耐ショックバースト性を向上することができない。ベルト補強コード(有機繊維コード)の2.0cN/dtex負荷時の伸びが2.0%より小さいと、ベルト補強層8の剛性が高くなり、プランジャーエネルギー試験時の変形を充分に許容することができず、耐ショックバースト性を損なう虞がある。ベルト補強コード(有機繊維コード)の2.0cN/dtex負荷時の伸びが4.0%より大きいと、ベルト補強層8の剛性が低くなり、バックリングを充分に抑制できず、高速走行時の操縦安定性が低下する。
【0024】
本発明のカーカスコードは、上述の物性に加えて、下記(1)式で表される撚り係数Kが好ましくは2000~2500であるとよい。尚、この撚り係数Kは、ディップ処理後のカーカスコードの数値である。このように撚り係数Kを大きく設定することで、高速耐久性を向上するには有利になる。撚り係数Kが2000未満であると、タイヤ転動時のビード部の倒れ込みに起因するカーカス層4の巻き上げ部の繰り返し圧縮変形により、カーカス層4に疲労が生じやすくなり、高速耐久性を改善する効果が充分に得られなくなる虞がある。
【0025】
K=T×D1/2 ・・・(1)
(但し、Tはコードの上撚り数(回/10cm)であり、Dはコードの総繊度(dtex)である。)
【実施例
【0026】
タイヤサイズが275/40ZR20であり、図1に例示する基本構造を有し、カーカス層を構成するカーカスコードの材質や物性(破断伸び、ベルト層の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸び)と、ベルト保護層を構成するベルト補強コードの材質や物性(2.0cN/dtex負荷時の伸び)を、表1~2のように異ならせた従来例1、比較例1~4、実施例1~7の空気入りタイヤを製作した(尚、カーカスコードのベルト層の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸びが本発明の範囲から外れる実施例および有機繊維の種類としてナイロン66(N66)を用いた実施例、即ち実施例1,3~7は参考例である)。
【0027】
いずれの例においても、ベルトカバー層は、1本の有機繊維コード(ナイロン66繊維コードまたはPET繊維コード)を引き揃えてコートゴムで被覆してなるストリップをタイヤ周方向に螺旋状に巻回したジョイントレス構造を有している。ストリップにおけるコード打ち込み密度は50本/50mmである。また、有機繊維コード(ナイロン66繊維コードまたはPET繊維コード)はそれぞれ1100dtex/2の構造を有する。
【0028】
有機繊維の種類の欄については、ナイロン66繊維コードの場合を「N66」、PET繊維コードの場合を「PET」と表示した。
【0029】
これら試験タイヤについて、下記の評価方法により、耐ショックバースト性、高速走行時の操縦安定性を評価し、その結果を表1,2に併せて示した。
【0030】
耐ショックバースト性
各試験タイヤを、リムサイズ9 1/2Jのホイール(ETRTO標準リム)に組み付け、空気圧を240kPa(Reinforced/Extra Load Tires)とし、プランジャー径19±1.6mmのプランジャーを負荷速度(プランジャーの押し込み速度)50.0±1.5m/minの条件でトレッド中央部に押し付けるタイヤ破壊試験を行い、タイヤ強度(タイヤの破壊エネルギー)を測定した。評価結果は、従来例1の測定値を100とする指数にて示した。この値が大きいほど破壊エネルギーが大きく、耐ショックバースト性に優れることを意味する。尚、この指数値が「110」以下であると、充分な改善効果が得られなかったことを意味する。
【0031】
高速走行時の操縦安定性
各試験タイヤをリムサイズ9 1/2Jのホイールに組み付けて、試験車両(排気量2000ccの4輪駆動車)に装着し、空気圧を240kPaに設定し、乗車人数2名、速度100km/h~120km/hの条件で、高速走行時の操縦安定性について舗装路からなるテストコースにて3名のテストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、従来例1の結果を3点(基準)とする5点法で採点し、3名のテストドライバーの点数の平均値を示した。この点数が大きいほど高速走行時の操縦安定性が優れていることを意味する。尚、この指数値が「3.5」以下では、充分な改善効果が得られなかったことを意味する。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
表1,2から判るように、実施例1~のタイヤは、基準となる従来例1との対比において、耐ショックバースト性と高速走行時の操縦安定性とを高度に両立した。一方、比較例1は、カーカスコードの破断伸びが小さいため、プランジャー試験で測定されるタイヤの破壊エネルギーを充分に確保することができず、耐ショックバースト性を向上する効果が充分に得られなかった。比較例2は、カーカスコードのベルト層の内周側における1.5cN/dtex負荷時の伸びが小さいため、高速走行時の操縦安定性を向上する効果が充分に得られなかった。比較例3は、ベルト補強コードの2.0cN/dtex負荷時の伸びが小さいため、コードが変形しにくくなり、耐ショックバースト性を向上する効果が充分に得られなかった。比較例4は、ベルト補強コードの2.0cN/dtex負荷時の伸びが大きいため、高速走行時の操縦安定性を向上する効果が充分に得られなかった。
【符号の説明】
【0035】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトカバー層
CL タイヤ赤道
図1