(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24D 17/00 20220101AFI20240111BHJP
F24H 1/14 20220101ALI20240111BHJP
F24H 15/174 20220101ALI20240111BHJP
F24H 15/238 20220101ALI20240111BHJP
F24H 15/36 20220101ALI20240111BHJP
F24H 15/429 20220101ALI20240111BHJP
【FI】
F24D17/00 P
F24H1/14 B
F24H15/174
F24H15/238
F24H15/36
F24H15/429
(21)【出願番号】P 2019212536
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立石 真吾
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】野村 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】金城 貴信
(72)【発明者】
【氏名】山西 裕美
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】安川 健一郎
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-249507(JP,A)
【文献】特開平08-159501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 1/00-19/10
F24H 1/00-15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の動作モードを有する給湯装置であって、
前記複数の動作モードは、前記給湯装置の外部に温水を供給する給湯
燃焼モードと、前記給湯装置の内部で水を循環させる即湯循環モードとを含み、
入水路と出湯路との間に配置される缶体と、
燃焼により熱量を発生させる燃焼機構と、
前記缶体の内部に備えられ、
前記熱量を用いて水を加熱するための熱交換器と、
前記熱交換器の前記出湯路から流出する水の全部または一部を前記熱交換器の前記入水路に送る循環経路に配置され、前記水を前記熱交換器に送る循環ポンプと、
前記熱交換器に流入する水量を計測する水量センサと、
前記熱交換器に流入する水の温度を計測する温度センサと、
前記熱交換器から流出する水の温度を計測する温度センサと、
前記給湯装置の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記即湯循環モードにおいて、
前記給湯装置の運転開始後に計測された計測水量が基本流量よりも第1所定量以上多くなったことに基づいて、前記即湯循環モードを前記給湯
燃焼モードに切り替え
、
前記基本流量の初期値は、前記給湯装置の初回の運転開始時に計測された初回の水量であり、
前記制御装置は、前記計測水量が前記基本流量よりも第2所定量以上少なくなったことに基づいて、前記基本流量の値を前記計測水量の値に変更する、給湯装置。
【請求項2】
前記複数の動作モードは、前記給湯装置における燃焼が行なわれておらず、所定の条件が成立したことに基づいて前記即湯循環モードに切り替わる即湯待機モードをさらに含み、
前記制御装置は、前記
即湯待機モードから前記給湯
燃焼モードへの切り替えに基づいて、前記給湯装置における燃焼を開始する、請求項
1に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記制御装置は、燃焼が行なわれていない場合において前記缶体に流入する水の温度または前記缶体から流出する水の温度が予め定められた温度以下になったことに基づいて、前記制御装置は、前記循環ポンプの作動を開始させる、請求項1
または2に記載の給湯装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記給湯装置における燃焼が禁止されている場合において前記循環ポンプが停止しているとき、前記循環ポンプを作動させるために予め定められた運転条件が成立したことに基づいて、前記循環ポンプを作動させる、請求項1~
3のいずれかに記載の給湯装置。
【請求項5】
前記予め定められた運転条件は、
前記缶体に流入する水の温度または前記缶体から流出する水の温度が予め定められた温度以下になったこと、または、
前記循環ポンプが停止し、かつ、前記缶体に流入する水量が前記
燃焼機構による燃焼を開始するために規定された基準量以下になってから予め定められた時間が経過したこと、を含む、請求項
4に記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は給湯装置の制御に関し、より特定的には、即湯機能を有する給湯装置の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置による給湯時に、給湯温度が不安定になる場合がある。給湯温度の安定化に関し、例えば、特開平6-74560号公報(特許文献1)は、「混水型の給湯器の再出湯時における後沸きによる高温給湯の発生や給湯温度の不安定化を軽減できる制御方法」を開示している([要約]参照)。また、特許第2526463号(特許文献2)は、「熱交換器をバイパスするバイパス路を備えた給湯装置において、給湯停止状態における冷水の回り込みの発生を防止し、設定温度に近い湯温で再出湯を行うことのできる再出湯特性を向上させた給湯制御装置」を開示している([要約]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-74560号公報
【文献】特許第2526463号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
即湯機能を有する給湯装置において、即湯運転中に他栓(例えばシンクの給湯栓)が使用される場合、給湯装置の循環ポンプが加圧するため缶体に対する流量の変動が多く、他栓判定の精度が低下し、即湯モードから給湯モードへの切り替えができない可能性がある。したがって、給湯装置の動作モードを的確に切り替える技術が必要とされている。
【0005】
本開示は上述のような背景に鑑みてなされたものであって、ある局面における目的は、給湯と即湯とを安全に行なう技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある実施の形態に従うと、複数の動作モードを有する給湯装置が提供される。複数の動作モードは、給湯装置の外部に温水を供給する給湯モードと、給湯装置の内部で水を循環させる即湯循環モードとを含む。給湯装置は、入水路と出湯路との間に配置される缶体と、缶体の内部に備えられ、水を加熱するための熱交換器と、熱交換器の出湯路から流出する水の全部または一部を熱交換器の入水路に送る循環経路に配置され、水を熱交換器に送る循環ポンプと、熱交換器に流入する水量を計測する水量センサと、熱交換器に流入する水の温度を計測する温度センサと、熱交換器から流出する水の温度を計測する温度センサと、給湯装置の動作を制御する制御装置とを備える。制御装置は、即湯循環モードにおいて循環ポンプが停止している場合に、熱交換器に流入する水量が熱交換器の燃焼を開始するために規定された基準量以上になったことに基づいて、または、給湯栓から水が流出していることに基づいて、即湯循環モードを給湯モードに切り替える、給湯装置。
【発明の効果】
【0007】
ある実施の形態に従うと、循環水量センサがない場合も他栓割込の発生が検知される。また、給湯と即湯とを安全に行うことができる。
【0008】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】給湯装置100のハードウェア構成の一例を表わすブロック図である。
【
図2】制御装置110のハードウェア構成の一例を表わすブロック図である。
【
図3】ある実施の形態に従う給湯装置100の状態遷移を表す図である。
【
図4】他の局面に従う給湯装置400の構成を概念的に表す図である。
【
図5】ある実施の形態に従う給湯装置100が備える制御装置110が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
[給湯装置のハードウェア構成]
まず、
図1および
図2を参照して本実施の形態に係る給湯装置100の構成について説明する。
図1は、給湯装置100のハードウェア構成の一例を表わすブロック図である。
図1に示されるように、給湯装置100は、制御装置110と、循環ポンプ120と、バイパス水量サーボ(「バイパスサーボ」ともいう)122と、缶体124と、熱交換器126と、燃焼機構128と、トータル水量サーボ130と、水量センサ131と、温度センサ141,142,143とを備える。バイパス水量サーボ122は、ステッピングモータ(図示しない)を含む。
【0012】
缶体124は、入水路150と出湯路152とに接続されている。バイパス水量サーボ122と出湯路152とは、バイパス流路151によって接続されている。循環ポンプ120の入水側と、トータル水量サーボ130の出湯側とは、流路153によって接続されている。より具体的には、流路153は、入水部10と出湯部20とを接続する。所謂即湯循環運転が行なわれる場合には、温水が、流路153を流れる。流路153には、少なくとも1つ以上の給湯栓21が接続されている。
【0013】
給湯装置100は、入水部10から上水の供給を受け、出湯部20を介して1つ以上の蛇口あるいは給湯栓から温水(湯)を供給する。給湯装置100が循環運転を行なっていない場合には、給湯装置100は、入水部10から上水の供給を受ける。給湯装置100は、リモートコントローラ30と報知装置40とに電気的に接続されている。給湯装置100の動作は、リモートコントローラ30に対する操作に応じて制御される。報知装置40は、給湯装置100から送られる信号に基づいて給湯装置100の状態を報知する。
【0014】
制御装置110は、水量センサ131から出力される信号の入力と、温度センサ141,142,143から出力される信号の入力と、リモートコントローラ30から送信される信号の入力とをそれぞれ受ける。制御装置110は、入力された信号と予め規定された設定データとに基づいて、給湯装置100の動作を制御する。より具体的には、制御装置110は、給湯装置100における燃焼、燃焼の停止、熱交換器126に供給される水量、および循環ポンプ120の運転などを制御する。
【0015】
循環ポンプ120は、流路153において水を循環させる。ある局面において、循環ポンプ120は、AC(Alternative Current)ポンプのように一定の出力が可能なポンプにより実現される。給湯装置100では、水の流路を構成する配管の抵抗または流路に設けられる器具の抵抗等により、循環流量は変化し得る。循環ポンプ120の出口には、バイパス水量サーボ122および水量センサ131が、その順に設けられている。
【0016】
バイパス水量サーボ122は、循環ポンプ120から吐出される水量を、熱交換器126に供給される水量とバイパス流路151に流入する水量とに調整(分配)する。バイパス水量サーボ122は、熱交換器126に供給される水量を調整することで、熱交換器126からの温水の温度を調整し得る。
【0017】
入水路150から熱交換器126に流入する水は、出湯路152に流出する。熱交換器126は、燃焼機構128によって加熱される。ある局面において、燃焼機構128はガスまたは石油などの燃焼により熱量を発生するバーナによって構成される。熱交換器126は、燃焼機構128が発生した熱量を用いて、入水路150によって導入された水の温度を上昇させる。したがって、熱交換器126と燃焼機構128とは、「加熱機構」の一例を構成する。
【0018】
熱交換器126によって温度が上昇した水(湯)は、出湯路152を通じてトータル水量サーボ130に流入する。出湯路152には、バイパス流路151が接続されている。熱交換器126から出力される高温水は、バイパス流路151を通じてバイパス水量サーボ122から供給される水(低温水)と混合され、高温水の温度は制御装置110によって指示された温度に調節され得る。
【0019】
トータル水量サーボ130は、制御装置110から出力される信号に基づいて、バルブ(図示しない)の開閉度を変更することにより、給湯装置100によって流路153に供給される温水の水量を調節する。トータル水量サーボ130から流出する温水は、出湯部20を介して給湯栓21から供給され得る。なお、トータル水量サーボ130から流出する温水の一部は、流路153を経由して、循環ポンプ120の入水側に戻される。給湯栓21が閉じておりトータル水量サーボ130から流出する温水が出湯部20を通じて給湯装置100の外部に供給されない場合、給湯装置100は、流路153、入水路150、および出湯路152から構成される即湯循環流路を通じて即湯循環運転を実行する。このような即湯循環運転より、ある実施の形態に従う給湯装置100は、給湯栓21の開栓直後から高温水を供給し得る。
【0020】
リモートコントローラ30は、ユーザの操作を受け付けて当該操作に応じた信号を給湯装置100に送信する。例えば、リモートコントローラ30は、給湯装置100の運転および停止、供給される温水の設定温度その他給湯装置100の動作を規定する設定の入力を受け付ける。リモートコントローラ30は、有線または無線により給湯装置100に接続される。
【0021】
報知装置40は、制御装置110から出力される信号に基づいて、給湯装置100の状態を報知する。ある局面において、報知装置40は、表示、音等により実現され、給湯装置100の状態を表わす情報を出力する。報知の態様は、音声、画像または文字、光等を含む。さらに他の局面において、報知装置40は、給湯装置100の報知を実現するためのプログラム(アプリ)がインストールされた携帯端末としても実現され得る。
【0022】
水量センサ131は、熱交換器126に流入する水量を検知する。温度センサ141は、熱交換器126に流入する水の温度を検知する。温度センサ142は、缶体124から流出する温水の温度を検知する。温度センサ143は、トータル水量サーボ130から供給される温水の温度を検知する。
【0023】
本実施の形態に係る給湯装置100は、即湯循環運転中にバイパス流路151への流量を制御でき、即湯循環運転と給湯運転時に流路153に流す湯水の温度を制御することができる。
【0024】
すなわち、
図1に示される構成によれば、給湯装置100の内部には、従来の即湯機能を有する給湯装置が備える循環流路が設けられることなく、循環ポンプ120は、入水路150に設けられている。当該循環流路はトータル水量サーボ130の出力を熱交換器126に循環させるための流路である。
【0025】
[制御装置のハードウェア構成]
図2は、制御装置110のハードウェア構成の一例を表わすブロック図である。制御装置110は、代表的にはマイクロコンピュータによって構成される。制御装置110は、CPU(Central Processing Unit)210と、メモリ220と、入出力回路230と、電子回路240とを含む。CPU210、メモリ220及び入出力回路230は、バス250を経由して、相互に信号の授受が可能である。電子回路240は、予め定められた演算処理を専用のハードウェアによって実行するように構成されている。電子回路240は、CPU210及び入出力回路230との間で信号の授受が可能である。
【0026】
CPU210は、入出力回路230を通じて、温度センサ141,142,143及び水量センサ131を含む各センサからの出力信号(検出値)の入力をそれぞれ受ける。さらに、CPU210は、入出力回路230を通じて、リモートコントローラ30に与えられた操作指示を示す信号の入力を受ける。操作指示は、例えば、給湯装置100の運転スイッチのオンオフ操作、給湯設定温度、及び、各種の時刻予約設定(「タイマ設定」ともいう)を含む。CPU210は、当該操作指示に従って給湯装置100が作動するように、燃焼機構128および循環ポンプ120を含む各要素部品の動作を制御する。
【0027】
CPU210は、報知装置40を制御することにより、視覚又は聴覚によって認識できる情報を出力し得る。例えば、報知装置40は、文字及び図形等の視認可能な情報を表示することによって情報を出力できる。この場合には、報知装置40は、リモートコントローラ30に設けられたモニタの表示画面によって構成することができる。あるいは、報知装置40は、スピーカによって構成されて、音声又はメロディ等を用いて情報を出力し得る。
【0028】
[給湯装置の状態遷移]
図3を参照して、給湯装置100が有する動作モードについて説明する。
図3は、ある実施の形態に従う給湯装置100の状態遷移を表す図である。
【0029】
図3に示されるように、給湯装置100の動作モードは、燃焼機能禁止モード310と、凍結予防ポンプモード以外の311と、ポンプ独立運転モード312と、給湯モード313と、即湯モード316とを含む。給湯モード313は、給湯待機モード314と、給湯燃焼モード315とを含む。即湯モード316は、即湯待機モード317と、即湯循環モード318とを含む。
【0030】
(燃焼機能禁止モード)
ある局面において、給湯装置100の電源がオンになると、給湯装置100の動作モードは、燃焼機能禁止モード310に切り替わる(ステップS320)。燃焼機能禁止モード310では、燃焼機構は強制停止となり燃焼が行なわれない。バイパス水量サーボ122に対する指令は、予め定められた位置での停止を指示し、バイパス水量サーボ122は当該位置での停止状態を維持する。トータル水量サーボ130に対する指令も、バイパス水量サーボ122に対する指令と同様に、予め定められた位置での停止を指示し、トータル水量サーボ130は、当該位置での停止状態を維持する。その後、給湯装置100について予め定められた燃焼機能が確認され、異常がないことが確認されると、動作モードは、燃焼機能禁止モード310から給湯待機モード314に切り替わる(ステップS330)。
【0031】
(給湯待機モード)
給湯待機モード314において、給湯装置100は正常に停止している。より具体的には、制御装置110によるバイパス水量サーボ122およびトータル水量サーボ130に対する各指令は、それぞれ、「出湯待機」を示している。循環ポンプ120に対する制御装置110の指令はオフであり、循環ポンプ120は作動していない。
【0032】
ある局面において、給湯のために給湯栓21が開放されると、入水部10から供給される水の供給圧力により、入水経路に水が導入される。水量センサ131が、最小作動水量(Minimum Operation Quantity(MOQ))を超える水量を検出すると、制御装置110は、燃焼機構128を作動させる。すなわち、給湯装置100は、給湯待機モード314から給湯燃焼モード315に切り替わる(ステップS331)。
【0033】
(給湯燃焼モード)
給湯燃焼モード315になると、制御装置110は燃焼機構128に燃焼開始のための指令を送る。その指令に応答して、燃焼機構128は燃焼を開始する。制御装置110は、バイパス水量サーボ122およびトータル水量サーボ130に、出湯量を制御するための指令をそれぞれ出力する。それぞれ入力された指令に応じて、バイパス水量サーボ122およびトータル水量サーボ130は、指定された温水が供給されるように、バルブ(図示しない)の開度をそれぞれ調整する。循環ポンプ120に対する制御装置110の指令はオフのままであり、循環ポンプ120は作動していない。
【0034】
ある局面において、給湯栓21が閉じられて給湯が終了すると、その後、水量センサ131は、MOQを下回る流量を検出する。その検出に応答して、制御装置110は、燃焼を停止する指令を燃焼機構128に出力する。当該指令に応答して、燃焼機構128は燃焼動作を終了する。さらに、制御装置110は、バイパス水量サーボ122およびトータル水量サーボ130に対する各指令として「出湯待機」の指令を出力する。バイパス水量サーボ122およびトータル水量サーボ130は、出湯待機の状態として予め定められた状態に切り替わる。これにより、給湯装置100の動作モードは、給湯燃焼モード315から給湯待機モード314に切り替わる(ステップS332)。
【0035】
(即湯待機モード)
給湯待機モード314において、即湯要求または凍結予防要求があった場合にポストパージ(排気動作)が終了したとき、動作モードは、即湯待機モード317に切り替わる(ステップS340)。本実施の形態において、即湯要求とは、予め予約された即湯時刻が到来したとき、または、予め定められた時間(例えば30分)に限り1回だけ即湯(以下単に「1回即湯」ともいう)を行なう指示をいう。即湯待機モード317において、制御装置110が、即湯要求および凍結予防要求を検知しなかった場合には、動作モードは、給湯待機モード314に切り替わる(ステップS341)。なお、給湯待機モード314における給湯装置100の状態と、即湯待機モード317における給湯装置100の状態とは、同じである。
【0036】
ある局面において、熱交換器126から流出する温水の温度を測定する温度センサ143の温度が、即湯循環を開始するための温度として規定された温度以上になると、給湯装置100の動作モードは、即湯待機モード317から即湯循環モード318に切り替わる(ステップS342)。
【0037】
別の局面において、循環ポンプ120が停止している(OFFである)ことが確定している場合に、制御装置110がMOQを超える水量を検出すると、動作モードは、即湯待機モード317から給湯燃焼モード315に切り替わる(ステップS343)。なお、他の局面において、温度センサ142の計測値に代えて、熱交換器126に流入する水の温度を計測する温度センサ141の計測値が使用されてもよい。
【0038】
(即湯循環モード)
即湯循環モード318において、制御装置110は、燃焼機構128に燃焼開始の指令を出力する。当該指令に応答して、燃焼機構128は燃焼を開始する。制御装置110は、バイパス水量サーボ122に出湯制御の指令を送る。バイパス水量サーボ122は、当該指令に応答して、即湯循環中の温水の温度が予め定められた温度を維持するように、開度を調節する。制御装置110は、トータル水量サーボ130に全開指令を出力する。当該全開指令に応答して、トータル水量サーボ130は、調整弁を全開する。
【0039】
熱交換器126に流入する水の温度または熱交換器126から流出する水の温度が即湯循環を停止するために予め定められた温度以上になった場合、あるいは、即湯循環の運転中に給湯栓21の使用が検出された場合(いわゆる他栓割込が検知された場合)には、動作モードは、即湯循環モード318から給湯燃焼モード315に切り替わる(ステップS350)。すなわち、制御装置110は、給湯装置100から温水が供給される間も予め定められた温度を維持するために、トータル水量サーボ130に対して出湯制御の指令を送る。トータル水量サーボ130は、その指令に応答して、調整弁の開度を調整する。
【0040】
ある局面において、即湯モードでの設定温度の上限は、即湯の上限温度に設定され得る。予約運転や1回即湯が完了して、動作モードが給湯待機モード314に移行すると、給湯設定温度の上限は、元に戻る。
【0041】
(ポンプ独立運転モード)
燃焼機能禁止モード310において、制御装置110が凍結予防要求またはポンプロック対策要求を検知すると、給湯装置100の動作モードは、燃焼機能禁止モード310からポンプ独立運転モード312に切り替わる(ステップS322)。ここで、凍結予防要求の検知は、例えば、出湯温度あるいは缶体124への入水温度が予め定められた基準温度以下になったことが検知された場合をいう。ポンプロック対策とは、循環ポンプ120が停止している場合において、循環ポンプ120の駆動部品(例えば軸受など)が固着することを防止するために、循環ポンプ120を駆動することをいう。例えば、循環ポンプ120が停止した状態で水量センサ131の検出値がMOQ未満である状態が予め設定された時間継続した場合に、制御装置110は、ポンプロック対策要求が発生したことを検知する。
【0042】
[ポンプロック対策] ポンプ独立運転モード312では、制御装置110は、燃焼指令を「強制停止」として維持し、燃焼機構128のスイッチはオフのままである。制御装置110は、ポンプロック対策要求を検知すると、バイパス水量サーボ122に対して全閉待機の指令を出力する。当該指令に応答して、バイパス水量サーボ122は、バイパス流路151側のバルブを全閉とする。制御装置110は、トータル水量サーボ130に対して、全開待機の指令を出力する。当該指令に応答して、トータル水量サーボ130は、バルブを全開する。
【0043】
さらに、制御装置110は、駆動信号を循環ポンプ120に出力する。当該駆動信号に応答して、循環ポンプ120は作動する。ある局面において、制御装置110は、定期的に短時間だけ循環ポンプ120を作動させるための駆動信号を循環ポンプ120に送信する。定期的とは、例えば、1日に一回、1週間に一回等であるが、この時間間隔は固定ではなく、給湯装置100の製造者によってあるいはユーザによって任意に設定され得る。
【0044】
[凍結予防] 他の局面において、制御装置110が凍結予防要求を検知すると、給湯装置100の内部および外部配管の凍結を予防するために、予め設定された時間、循環ポンプ120を駆動する。凍結予防のために循環ポンプ120が駆動している間に、給湯スイッチがオンになった場合、制御装置110は、循環ポンプ120を停止させ、通常の給湯燃焼を開始する。この場合、給湯装置100の動作モードは、ポンプ独立運転モード312から給湯燃焼モード315に切り替わることになる。
【0045】
図4を参照して、本開示に係る技術思想が適用される他の構成を有する給湯装置について説明する。
図4は、他の局面に従う給湯装置400の構成を概念的に表す図である。給湯装置400は、バイパス水量サーボ122を有さない点で、給湯装置100と異なる。すなわち、循環ポンプ120から送出される水は全て入水路150から熱交換器126に供給される。その他の構成は、給湯装置100に示される構成と同様である。このような構成によっても、給湯装置400の制御装置110は、循環運転中における他栓割込を検知することができる。
【0046】
[制御構造]
図5を参照して、給湯装置100の制御構造について説明する。
図5は、ある実施の形態に従う給湯装置100が備える制御装置110が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。以下の処理は、ある局面において制御装置110を構成するCPU210が当該処理を実現する命令を実行することにより実現される。他の局面において、以下の処理は、その一部または全部は、当該処理を実行するように構成された回路素子の組み合わせにより実現されてもよい。なお、以下の説明では、給湯装置100の動作として説明されるが、給湯装置400の動作も同様である。
【0047】
ステップS510にて、制御装置110は、給湯装置100の動作モードを即湯モード316に移行する。より詳しくは、給湯装置100の動作モードは、即湯待機モード317となる。その後、出湯温度Tsまたは入水温度Tcが即湯循環を開始するために規定された温度以上になると、制御装置110は、給湯装置100の動作モードを即湯循環モード318に切り替える(ステップS342)。
【0048】
ステップS520にて、制御装置110は、水量センサ131の検出値に基づいて、即湯循環運転中に熱交換器126に流入する水量Xを計測し、計測結果をメモリ220に格納する。
【0049】
ステップS530にて、制御装置110は、水量Xが基本流量Y+α以上であるか否かを判断する。閾値αは、給湯装置100の試験結果に基づいて予め設定され、メモリ220に格納されている。基本流量Yは、給湯装置100の初回の運転時に計測され、メモリ220に格納されている。循環ポンプ120の出力は一定であるため、他栓割込がない限り、流量は変動しない。X≧Y+αである場合には(ステップS530にてYES)、制御装置110は、制御をステップS540に切り替える。そうでない場合には(ステップS530にてNO)、制御装置110は、制御をステップS570に切り替える。
【0050】
ステップS540にて、制御装置110は、他栓割込が発生したと判断する。すなわち、制御装置110は、給湯栓21のいずれかが開かれおり、温水が流出していると判断する。
【0051】
ステップS550にて、制御装置110は、循環ポンプ120に停止指令を出力し、循環ポンプ120の動作を停止させる。循環ポンプ120が停止すると、出湯路152の温水は、流路153を経由して入水路150に循環されなくなる。出湯路152の温水は、出湯部20を介して給湯栓21から流出する。このようにすると、循環ポンプ120を駆動させ続けることによるエネルギーの損失を防止することができる。
【0052】
ステップS560にて、制御装置110は、熱交換器126に流入する水量Xが基本流量Y-β未満であるか否かを判断する。閾値βは、給湯装置100の流路に配置されたフィルタ(図示しない)がゴミにより目詰まり等した場合に低下し得る流量として予め試験等で導出されてメモリ220に格納されている。X<Y-βである場合には(ステップS560にてYES)、制御装置110は、制御をステップS570に切り替える。そうでない場合には(ステップS560にてNO)、制御装置110は、制御をステップS520に戻す。
【0053】
ステップS570にて、制御装置110は、基本流量Yを再学習する。より具体的には、制御装置110は、水量センサ131の検出値を、メモリ220に格納する。例えば、給湯装置100の使用に伴い、循環ポンプ120のフィルタ(図示しない)において目詰まりが発生する場合があり得る。この場合、熱交換器126への流量は当初に計測された基本流量Yより少なくなる場合があり得る。そこで、制御装置110は、このような場合を検知したとき、新たに計測した水量を新たな基本流量Yとしてメモリ220に保存し、その後の判断処理(ステップS530、S560)の基準値として使用する。その後、制御は、ステップS520に戻される。
【0054】
ステップS580にて、制御装置110は、即湯モード316の終了条件が成立しているか否かを判断する。即湯モード316の終了条件は、
図3に示されるステップS341,343,350のいずれかが行なわれる条件である。制御装置110は、当該終了条件が成立していると判断すると(ステップS580にてYES)、制御をステップS590に切り替える。そうでない場合には(ステップS580にてNO)、制御装置110は、制御をステップS520に切り替える。
【0055】
ステップS590にて、制御装置110は、即湯循環モード318を終了する。給湯装置100の動作モードは、給湯燃焼モード315に切り替わる(ステップS350)。燃焼機構128に対する指令は、正常停止となり、燃焼機構128は燃焼を終了する。バイパス水量サーボ122に対する指令は出湯待機となり、バルブは、規定された開度を維持する。トータル水量サーボ130に対する指令は出湯待機となり、バルブは、規定された開度を維持する。
【0056】
上記開示された技術的特徴は、以下のように要約され得る。
(1)ある実施の形態に従うと、給湯装置の制御装置110は、即湯循環モード318において循環ポンプ120が停止している場合に、熱交換器126に流入する水量が熱交換器126の燃焼を開始するために規定された基準量(MOQ)以上になったことに基づいて、または、即湯循環モード318において給湯栓21から温水が流出していることに基づいて、即湯循環モード318を給湯モードに切り替える(ステップS340)。
(2)ある局面において、熱交換器126に流入する水の温度または熱交換器126から流出する温水の温度が、即湯循環運転を停止するために予め定められた温度以上になったことに基づいて、制御装置110は、給湯栓21から温水が流出する他栓割込が発生していると判断する。
(3)ある局面において、給湯装置100,400の運転開始後に計測される水量が、給湯装置100,400の運転開始時に計測された水量よりも予め設定された量だけ多くなったことに基づいて、制御装置110は、他栓割込が発生していると判断する。例えば、制御装置110は、計測した水量をメモリ220に逐次格納する。格納のタイミングは特に限られず、メモリ220の記憶容量に応じて任意に設定可能である。例えば、制御装置110は、1時間ごとに水量センサ131の各検出値をメモリ220に格納する。上記判断は、例えば、リアルタイムで行われる。
(4)ある局面において、制御装置110は、即湯循環モード318から給湯燃焼モード315への切り替えに基づいて、燃焼機構128による燃焼を開始する。これにより、他栓割込が検知された場合においても、設定された温度の温水が、給湯装置100,400から速やかに供給され得る。
(5)ある局面において、給湯装置100,400において燃焼が行なわれていない場合において熱交換器126に流入する水の温度または熱交換器126から流出する水の温度が予め定められた温度以下になったことに基づいて、制御装置110は、循環ポンプ120の作動を開始させる(ステップS342)。
(6)ある局面において、給湯装置100,400における燃焼が禁止されている場合において循環ポンプ120が停止しているとき、循環ポンプ120のロックを防止するために予め定められた運転条件が成立したことに基づいて、制御装置110は、循環ポンプ120を作動させる(ポンプ独立運転モード312)。
(7)ある局面において、当該予め定められた運転条件は、熱交換器126に流入する水の温度または熱交換器126から流出する温水の温度が予め定められた温度以下になったこと、または、循環ポンプ120が停止し、かつ、熱交換器126に流入する水量が熱交換器126の燃焼を開始するために規定された基準量(MOQ)以下になってから予め定められた時間が経過したこと、を含む。
(8)他の局面に従うと、給湯装置100,400の制御方法が提供される。この制御方法は、制御装置110によって実行される。さらに他の局面に従うと、開示された技術的特徴は、当該制御方法をコンピュータ(例えば、CPU210)に実行させるためのプログラムとして、あるいは、当該プログラムを格納した不揮発性のコンピュータ読み取り可能なデータ記録媒体としても実現され得る。
【0057】
[実施の形態の効果]
以上のようにして本実施の形態によれば、給湯装置100は、他栓割込の判定結果に基づいて循環ポンプ120を停止することで、エネルギー消費を抑制することができる。
【0058】
給湯装置100は、ポンプ独立運転モード312では、燃焼が禁止された状態で、循環ポンプ120を駆動することができる。したがって、給湯装置100を非燃焼のままでの凍結予防運転が可能となるので、凍結予防運転時の燃料消費を抑制することができる。
【0059】
また、給湯装置100は、循環回路を有さず、循環水量センサも備えないが、他栓割込を検知することができる(ステップS540)。そのため、他栓割込が検知された場合には、給湯装置100は循環ポンプ120の運転を停止して、出湯路152の温水は出湯部20を通じて給湯栓21に向かうことになる。その結果、出湯路152の温水が流路153を介して循環ポンプ120によって入水路150に戻されなくなるので、燃焼エネルギーの消費を抑制することができる。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
10 入水部、20 出湯部、21 給湯栓、30 リモートコントローラ、40 報知装置、100,400 給湯装置、110 制御装置、120 循環ポンプ、122 バイパス水量サーボ、124 缶体、126 熱交換器、128 燃焼機構、130 トータル水量サーボ、131 水量センサ、141,142,143 温度センサ、150 入水路、151 バイパス流路、152 出湯路、153 流路、220 メモリ、230 入出力回路、240 電子回路、250 バス、310 燃焼機能禁止モード、312 ポンプ独立運転モード、313 給湯モード、314 給湯待機モード、315 給湯燃焼モード、316 給湯モード、317 給湯待機モード、318 即湯循環モード、Tc 入水温度、Ts 出湯温度。