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特許7417062タイヤモデル作成方法、およびタイヤモデル作成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】タイヤモデル作成方法、およびタイヤモデル作成装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20240111BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240111BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20240111BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G01M17/02
G01B11/24 A
G06F30/10
B60C19/00 H
B60C19/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020001251
(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021110578
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】児玉 勇司
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-021648(JP,A)
【文献】特開2014-020807(JP,A)
【文献】特開2008-122098(JP,A)
【文献】特開2005-001649(JP,A)
【文献】特開2006-017574(JP,A)
【文献】特開平03-063504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基材を有し、互いに分離可能な接地台にタイヤを所定の内圧とし、かつ所定の荷重負荷で接触させる接触工程と、
前記接地台において、前記タイヤが接地している領域以外の前記基材を除去する除去工程と、
前記タイヤを前記接地台に載せた状態で、タイヤ外形状を計測する計測工程と、
前記タイヤ外形状の計測データを使用して、タイヤを表す、コンピューターで数値解析可能な要素で構成されたシミュレーション用タイヤモデルを作成する作成工程とを有することを特徴とするタイヤモデル作成方法。
【請求項2】
前記接地台を構成する複数の前記基材の1つ当たりの面積が、1~400mmである、請求項1に記載のタイヤモデル作成方法。
【請求項3】
前記シミュレーション用タイヤモデルは、多角形で構成される、請求項1または2に記載のタイヤモデル作成方法。
【請求項4】
前記計測工程は、レーザー光または超音波を用いて、前記タイヤ外形状を計測する工程である、請求項1~のいずれか1項に記載のタイヤモデル作成方法。
【請求項5】
複数の基材を有し、互いに分離可能な接地台と、
前記接地台にタイヤを所定の内圧とし、かつ所定の荷重負荷で接触させた状態で、前記接地台において、前記タイヤが接地している領域以外の前記基材を除去する除去部と、
前記タイヤを前記接地台に載せた状態で、タイヤ外形状を計測する計測部と、
前記タイヤ外形状の計測データを使用して、タイヤを表す、コンピューターで数値解析可能な要素で構成されたシミュレーション用タイヤモデルを作成する作成部とを有することを特徴とするタイヤモデル作成装置。
【請求項6】
前記接地台を構成する複数の前記基材の1つ当たりの面積が、1~400mmである、請求項に記載のタイヤモデル作成装置。
【請求項7】
前記作成部で作成されるシミュレーション用タイヤモデルは、多角形で構成される、請求項5又は6に記載のタイヤモデル作成装置。
【請求項8】
前記計測部は、レーザー光または超音波を用いて、前記タイヤ外形状を計測する、請求項のいずれか1項に記載のタイヤモデル作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピューターを用いた、数値シミュレーションに利用されるタイヤモデルを作成するタイヤモデル作成方法、およびタイヤモデル作成装置に関し、特に、精度よくモデル化したタイヤモデルを作成するタイヤモデル作成方法、およびタイヤモデル作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コンピューターが解析可能なタイヤモデル等を作成し、タイヤ等の性能を数値シミュレーションする方法が提案されている。数値シミュレーションには、タイヤを有限個の要素に分割して得られたタイヤモデルが必要である。タイヤモデルを得るために、タイヤを計測する必要がある。
例えば、特許文献1には、タイヤの表面に格子面を設け、格子面の形状を測定することによってタイヤの形状を測定するタイヤの形状測定装置が記載されている。特許文献1のタイヤの形状測定装置は、タイヤを回転させる回転手段と、回転手段によって回転するタイヤの格子面の画像を、異なる場所から入力するための複数の画像入力手段と、複数の画像入力手段によって入力した複数の格子面の画像から格子面の各点の位置を求める位置算出手段と、位置算出手段によって測定された格子面の各点の位置から、格子面が設けられたタイヤの形状を再生するタイヤ形状再生手段とよりなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許平10-38533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、自動車の低燃費性能として空気抵抗の低減要求が厳しくなってきている。タイヤを変えると自動車の空気抵抗が大幅に悪化する場合があることがわかってきており、数値シミュレーションによりタイヤの空力的影響を調査する必要性が増している。このため、数値シミュレーションでは、タイヤの変形状態を精密にモデル化する必要がある。
特許文献1に、タイヤの転動時のサイド部形状が示されている(特許文献1の図6参照)。しかしながら、特許文献1ではトレッドと路面との接触領域まで測定できておらず、数値シミュレーションに必要なタイヤの変形状態を精密にモデル化できない。
【0005】
本発明の目的は、コンピューターによる、数値シミュレーションに利用される、タイヤモデルを精度よくモデル化するタイヤモデル作成方法、およびタイヤモデル作成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明の第1の態様は、複数の基材を有し、互いに分離可能な接地台にタイヤを所定の内圧とし、かつ所定の荷重負荷で接触させる接触工程と、接地台において、タイヤが接地している領域以外の基材を除去する除去工程と、タイヤを接地台に載せた状態で、タイヤ外形状を計測する計測工程と、タイヤ外形状の計測データを使用して、タイヤを表す、コンピューターで数値解析可能な要素で構成されたシミュレーション用タイヤモデルを作成する作成工程とを有することを特徴とするタイヤモデル作成方法を提供するものである。
【0007】
接地台を構成する複数の基材の1つ当たりの面積が、1~400mmであることが好ましい。
接地台の高さは、5mm~タイヤ直径の範囲であることが好ましい。
シミュレーション用タイヤモデルは、多角形で構成されることが好ましい。
計測工程は、レーザー光または超音波を用いて、タイヤ外形状を計測する工程であることが好ましい。
【0008】
本発明の第2の態様は、複数の基材を有し、複数の基材は互いに分離可能である接地台と、接地台にタイヤを所定の内圧とし、かつ所定の荷重負荷で接触させた状態で、接地台において、タイヤが接地している領域以外の基材を取り除く除去部と、タイヤを接地台に載せた状態で、タイヤ外形状を計測する計測部と、タイヤ外形状の計測データを使用して、タイヤを表す、コンピューターで数値解析可能な要素で構成されたシミュレーション用タイヤモデルを作成する作成部とを有することを特徴とするタイヤモデル作成装置を提供するものである。
【0009】
接地台を構成する複数の基材の1つ当たりの面積が、1~400mmであることが好ましい。
接地台の高さは、5mm~タイヤ直径の範囲であることが好ましい。
作成部で作成されるシミュレーション用タイヤモデルは、多角形で構成されることが好ましい。
計測部は、レーザー光または超音波を用いて、タイヤ外形状を計測することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンピューターによる、数値シミュレーションに利用される、タイヤモデルを精度よくモデル化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態のタイヤモデル作成方法に利用されるタイヤモデル作成装置の一例を示す模式図である。
図2】(a)は接地台の第1の例を示す模式的斜視図であり、(b)は接地台の第2の例を示す模式的斜視図であり、(c)は接地台の第3の例を示す模式図である。
図3】(a)は本発明の実施形態のタイヤモデル作成方法で作成されたタイヤモデルの一例を示す模式図であり、(b)は本発明の実施形態のタイヤモデル作成方法で作成されたタイヤモデルの他の例を示す模式図である。
図4】(a)は本発明の実施形態のタイヤモデル作成方法で作成されたタイヤモデルの一例を示す模式図であり、(b)は本発明の実施形態のタイヤモデル作成方法で作成されたタイヤモデルの他の例を示す模式図である。
図5】(a)~(c)は本発明の実施形態のタイヤモデル作成方法を工程順に示す模式的斜視図である。
図6】(a)は従来のタイヤの計測方法の第1の例を示す模式図であり、(b)は従来のタイヤの計測方法の第2の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のタイヤモデル作成方法、およびタイヤモデル作成装置を詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
【0013】
[タイヤモデル作成装置]
図1は本発明の実施形態のタイヤモデル作成方法に利用されるタイヤモデル作成装置の一例を示す模式図である。図2(a)は接地台の第1の例を示す模式的斜視図であり、(b)は接地台の第2の例を示す模式的斜視図である。
本実施形態のタイヤモデル作成方法には、図1に示すタイヤモデル作成装置10が用いられる。タイヤモデル作成方法は、図1に示すタイヤモデル作成装置10に限定されるものではない。また、タイヤモデル作成方法の各工程を手順としてコンピューターに実行させるためのプログラムが利用される。以下、タイヤモデル作成装置10のことを、単に作成装置10という。
【0014】
作成装置10は、接地台12と、ステージ14と、タイヤ支持部16と、除去部18と計測部20と、制御部22とを有する。さらに、作成部24、メモリ26、入力部27および表示部28を有する。ステージ14と、タイヤ支持部16と、除去部18と、計測部20と、作成部24と、メモリ26と、入力部27と、表示部28とは制御部22に接続されている。制御部22は、計測部20、作成部24、メモリ26および表示部28の動作を管理するとともに、入力部27からの入力に応じて、計測部20、作成部24、メモリ26および表示部28に特定の動作を実行させるものである。
【0015】
接地台12は、タイヤ30を計測する際に載せる台である。接地台12は、図2(a)に示すように複数の基材13を有する。複数の基材13は、例えば、四角柱であり、すき間なく接して配置されている。接地台12を構成する複数の基材13は、互いに分離可能である。基材13は、四角柱に限定されるものではなく、三角柱でも、六角柱でもよく、これらが混在していてもよい。
なお、分離可能とは、例えば、基材13同士が、接着剤等を介することなく単に接触していることである。また、分離可能とは、基材13同士が、例えば、磁石(磁力)により接触する構成、基材13に設けられた係合突起により接触する構成でもよい。
接地台12におけるタイヤ30の接地領域の大きさは、タイヤ30のサイズ、タイヤ30の内圧(空気圧)、およびタイヤ30の荷重負荷条件に応じて変わるため、容易に分離でき、かつ容易にまとめることができることが好ましい。このため、接地台12としては、上述のように基材13同士が接着剤等を介することなく単に接触している形態が好ましい。
【0016】
図2(a)に示す接地台12は、基材13の表面13aの大きさおよび形状が同じである。しかしながら、接地台12を構成する基材13の表面13aの大きさは同じであってもよく、異なっていてもよい。基材13の表面13aの形状は、同じであってよく、異なっていてもよい。接地台12としては、例えば、複数の形状を組み合わせた構成でもよい。この場合、タイヤ30の接地領域の外縁に相当する領域では、基材13を小さくしてもよい。
また、図2(b)に示すように、接地台12のように基材13の表面13aの形状が四角形と三角形との組合せでもよい。この場合、タイヤ30の接地領域の外縁に相当する領域では、基材13を小さくしてもよく、より細かく分離できるように表面の形状を三角形にしてもよい。
接地台12は、表面12aが平面に限定されるものではなく曲面でもよい。この場合、図2(c)に示すように、所定の曲率で湾曲した接地台12に枠19aを設ける。さらに、接地台12の裏面12bに支持体19bを設ける。接地台12において、基材13は分離可能であり、タイヤ30を所定の負荷荷重で載置した後、枠19aを外すことにより、荷重がかかっていない基材13が分離する。このようにして、タイヤ30が接地している領域以外の基材13を除去することができる。
また、接地台12は、想定される路面状況等に応じて、平面、曲面以外の面とすることができる。
【0017】
また、接地台12を構成する複数の基材13の1つ当たりの面積が1~400mmであることが好ましい。基材13の1つ当たりの面積とは、タイヤ30と接する接地台12の表面12aに対応する部分の面積のことであり、基材13の表面13aの面積である。
基材13の1つ当たりの面積が1~400mmであれば、タイヤ30の接地台12への接地時の荷重を保持しつつ、接地台12自身の変形を抑制し、かつ計測の際に、邪魔にならない。なお、計測にレーザー光を用いた場合に、レーザー光を阻害しない大きさの範囲であり、所定の計測精度を確保できる。これにより、タイヤモデルを精度よくモデル化できる。
【0018】
また、接地台12の高さh(図2(a)、(b)参照)は、5mm~タイヤ直径の範囲であることが好ましい。なお、タイヤ直径とは、図1において、中心軸Cと接地台12の表面12aとの距離Hである。接地台12の高さhを5mm~タイヤ直径(距離H)の範囲とすることにより、接地台12に対するタイヤの接地端付近でのレーザー光の死角をなくし、かつ接地台12の弾性変形を抑制して、計測の安定性を確保することができる。
接地台12、すなわち、基材13は、金属、樹脂、木材等のタイヤトレッドゴムよりも弾性率が大きい材質で構成することが好ましい。上述のように、タイヤトレッドゴムよりも弾性率が大きい材料で構成することにより、タイヤ30の計測時に所定の負荷荷重で接地台12に接地させても、接地台12の変形を抑制できる。これにより、タイヤ30の接地台12との接地領域の不要な変形を抑制でき、計測の再現安定性を確保することができ、高い計測精度を維持できる。また、接地台12の変形を抑制できるため、接地台12を繰り返し利用することができる。
【0019】
ステージ14は、接地台12におけるタイヤ30の接地の有無を判定するものである。接地台12の裏面12bに配置されている。
ステージ14には、例えば、荷重センサ(図示せず)、または圧力センサ(図示せず)が配置されている。接地台12を構成する基材13毎に、荷重または圧力を検出できることが好ましい。
タイヤ30の接地台12を構成する基材13への接地の有無の判定は、荷重センサまたは圧力センサの出力の有無で判定してもよく、また、荷重または圧力について閾値を設定しておき、閾値を用いて、接地の有無を判定してもよい。
なお、ステージ14としては、荷重センサまたは圧力センサが設けられておらず、単に接地台12を支えるものであってもよい。
【0020】
タイヤ支持部16は、測定対象となるタイヤ30を支持すると共に、タイヤ30に荷重を加えてタイヤ30の外周面30bを接地台12に、所定の荷重負荷で押し付けるものである。タイヤ支持部16は、駆動部16aと軸部16bとを備える。
軸部16bは、タイヤ30を着脱可能にかつタイヤ30を回転可能に支持するものである。駆動部16aは、軸部16bをタイヤ30の中心軸Cと直交する第1の方向(タイヤ30の径方向)に移動可能に支持すると共に、軸部16bを介してタイヤ30に第1の方向に向かって荷重Wを加えるように構成されている。なお、タイヤ30に対して荷重Wを加える機構は、特に限定されるものではなく、従来公知の様々な構成を利用することができる。
タイヤ支持部16により、タイヤ30は接地台12に所定の荷重負荷で押し付けられた状態で、ステージ14により、接地台12における接地の有無を判定し、タイヤ30が接地している領域以外の基材13を取り除く。
【0021】
除去部18は、接地台12において、タイヤ30が接地している領域以外の基材13を除去するものである。除去部18の構成は、特に限定されるものではなく、例えば、接地台12の裏面12bのステージ14が、部分的に小さくなる構成として、基材13を落下させるものを用いることができる。
また、例えば、接地台12の基材13を接着剤等がなく単に接触させて分離可能とした場合、除去部18としては、基材13を吸引するか、または空気を吹き付けて基材13を除去するものを用いることができる。この場合、タイヤ30と接地していない基材13は除去されるため、上述のステージ14に、荷重センサまたは圧力センサを設ける必要がない。
【0022】
計測部20は、タイヤ30を接地台12に載せた状態で、タイヤ外形状を計測するものである。計測時、タイヤ30は固定された状態である。計測部20により、タイヤ30の全周にわたって計測され、タイヤ外形状の3次元データ等の計測データを得ることができる。計測部20は、例えば、レーザー光または超音波を用いて、タイヤ外形状を計測することが好ましく、レーザー光を用いて計測することがより好ましい。計測部20は、タイヤ30の外周面30bに沿って、全周にわたって計測するものでもよく、レーザー光または超音波を利用した、ハンディタイプの3次元スキャナでもよい。
なお、作業者がノギス等の計測器を用いてタイヤ30を計測して計測データを取得してもよい。
接地台12を用いることにより、タイヤ30は接地面に相当する領域で支持されることになるため、タイヤ30の接地端30e(図5(b)参照)が覆われることがなくなり、計測できない領域をなくすことができる。これにより、例えば、タイヤ30のトレッドと路面との接触領域まで測定することができる。このため、シミュレーション用タイヤモデル32(図3(a)、(b)参照)について高い計測精度を維持できる。
上述のように、タイヤの空力的影響を調査するために、タイヤの変形状態を精密にモデル化する必要があるが、タイヤモデル作成装置(タイヤモデル作成方法)では、タイヤの変形状態を精密にモデル化することができる。このように、モデル精度向上により計算精度を向上させることができ、タイヤの変形状態に関する計測精度を向上させることができる。
【0023】
作成部24は、計測部20により得られた、タイヤ外形状の3次元データ等の計測データを使用して、タイヤを表す、コンピューターで数値解析可能な要素で構成されたシミュレーション用タイヤモデルを作成する。この場合、例えば、図3(a)および(b)に示すように、接地端部32e迄、形状が取得されたシミュレーション用タイヤモデル32が得られる。以下、シミュレーション用タイヤモデル32のことを単にタイヤモデル32ともいう。
【0024】
作成部24は、タイヤ外形状の計測データを使用して上述のシミュレーション用タイヤモデルを作成することができれば、その構成は、特に限定されるものではない。例えば、計測終了後、計測データを元にして、3次元CADソフトまたは3次元モデリングソフトを用いて、タイヤの表面形状を示すCADデータを作成する。3次元CADソフトとしては、例えば、CATIA(登録商標、Computer graphics Aided Three dimensional Interactive Application)が用いられ、3次元モデリングソフトとしては、例えば、Rhinoceros(登録商標)が用いられる。
さらに、メッシュ作成ソフトを用いて、タイヤ30の表面形状を示すCADデータに対してメッシュ生成を行う。メッシュ作成ソフトとしては、例えば、HyperMESH(登録商標)が用いられる。
【0025】
シミュレーション用タイヤモデル(タイヤ外形状モデル)は、多角形で構成されることが好ましい。このため、メッシュの形状は、多角形であれば、特に限定されるものではなく、三角形でも四角形でもよく、または三角形と四角形が混在してもよい。
シミュレーション用タイヤモデルにおいて、多角形でタイヤ外形状を表現することにより、タイヤ形状の近似精度を保ちつつ汎用性が高い、例えば、STL(Standard Triangulated Language)形式、NASTRAN形式等のフォーマットへの変換が可能となる。例えば、図4(a)および(b)に示すように、三角形の要素33で構成されたタイヤモデル32を得ることができる。図4(a)および(b)に示すタイヤモデル32はSTL形式である。
【0026】
また、多角形で構成されるシミュレーション用タイヤモデル(タイヤ外形状モデル)は閉じていることが好ましい。すなわち、シミュレーション用タイヤモデル(タイヤ外形状モデル)は表面に穴がないことが好ましい。
なお、シミュレーション用タイヤモデルを構成する要素は、例えば、2次元平面では四辺形要素、3次元体では四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素、三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等のコンピューターで解析可能な要素としてもよい。このようにして分割された要素は、コンピューターによる解析の過程においては、3次元モデルでは3次元座標を用いて、2次元モデルでは2次元座標を用いて逐一特定される。
【0027】
なお、作成部24は、上述のシミュレーション用タイヤモデル以外に、例えば、タイヤが装着されるリム、ホイール、およびタイヤ回転軸を再現するものを、上述のシミュレーション用タイヤモデルにモデルとして再現してもよい。
必要に応じて、タイヤが装着される車両を再現するモデルを上述のシミュレーション用タイヤモデルに組み込んでもよい。この際、タイヤモデル、リムモデル(ホイールモデル)、およびタイヤ回転軸モデルを、予め設定された境界条件に基づいて一体化したモデルを作成することもできる。
【0028】
メモリ26は、タイヤ30の負荷荷重、タイヤ30の空気圧等の設定条件、ステージ14における荷重または圧力の閾値等が記憶されている。
また、メモリ26は、計測部20で計測されて得られた、タイヤ外形状の3次元データ等の計測データが記憶されるものである。作成部24は、メモリ26から計測データを読み出し、シミュレーション用タイヤモデルを作成する。
【0029】
入力部27は、制御部22に各種情報をオペレータの指示により入力するための各種の入力デバイスである。入力部27は、例えば、マウスおよびキーボード等である。
表示部28は、例えば、タイヤモデル作成方法で得られた、タイヤを表す、コンピューターで数値解析可能な要素で構成されたシミュレーション用タイヤモデルを表示するものであり、公知の各種のディスプレイが用いられる。また、表示部28には各種情報を出力媒体に表示するためのプリンタ等のデバイスも含まれる。
また、制御部22は、入力部27を介して入力される各種の情報等も表示部28に表示させることもできる。
【0030】
[タイヤモデル作成方法]
図5(a)~(c)は本発明の実施形態のタイヤモデル作成方法を工程順に示す模式的斜視図である。上述のように、タイヤモデル作成方法は作成装置10が用いられる。
まず、例えば、図2(a)に示す、複数の基材13を有し、互いに分離可能な接地台12を用意する(準備工程)。この場合、例えば、四角柱の基材13を複数用意する。そして、複数の基材13(四角柱)を、それぞれ接着剤等がない状態で単に接触させて接地台12を用意する。四角柱の基材13は互いに分離可能な状態である。
【0031】
タイヤリムに装着され、かつ空気圧が所定の内圧にされたタイヤ30を、図5(a)に示すように、複数の基材13を有し、互いに分離可能な接地台12の表面12aにタイヤ30を載置する。そして、タイヤ30の中心軸Cと直交する第1の方向に向かって所定の荷重Wを加え、タイヤ30を所定の荷重負荷で接地台12の表面12aに接触させる(接触工程)。接触工程では、上述のタイヤ支持部16を用い、軸部16bにタイヤ30を取り付けた後、駆動部16aにより、タイヤ30を所定の荷重負荷で接地台12の表面12aに接触させる。例えば、195/65R15サイズのタイヤ30において、内圧(空気圧)230kPa、接地荷重(荷重負荷)4.5kNで接地台12に接触させる。
【0032】
次に、図5(b)に示すように、接地台12において、タイヤ30が接地している領域以外の基材13を除去する(除去工程)。これにより、接地している領域にだけ接地台12がある構成となる。上述のように接地台12は基材13が分離可能であるが、タイヤ30が接地している領域ではタイヤ30による押圧により基材13を除去できない。このことを利用して、基材13を物理的に除去する。
【0033】
次に、タイヤ30を接地台12に載せた状態で、タイヤ外形状を計測し、タイヤ外形状の計測データを得る(計測工程)。計測工程において、タイヤ外形状は、上述のように、例えば、レーザー光または超音波を用いて計測することが好ましい。
なお、図6(a)および(b)に示す例では、タイヤ100を平板102に接地させているが、タイヤ100と、平板102との間の領域103は計測が困難である。この領域103が存在することにより、タイヤ100のトレッドと路面との接触領域まで測定することができず、タイヤモデルの形状精度が低下する。結果として低精度のタイヤモデルを用いたシミュレーションの精度の低下を招く。このため、計測が困難な領域103をなくす必要がある。
タイヤモデル作成方法では、接地台12を、上述のようにタイヤ30が接地している領域の大きさにすることにより、上述の領域103(図6(a)および(b)参照)をなくすことができ、タイヤ30のトレッドと路面との接触領域まで測定することができる。これにより、タイヤモデルの形状精度が向上し、結果として高精度のタイヤモデルを用いた、高い精度のシミュレーションを実施できる。
【0034】
次に、タイヤ外形状の計測データを使用して、タイヤを表す、コンピューターで数値解析可能な要素で構成されたシミュレーション用タイヤモデルを作成する(作成工程)。これにより、例えば、図5(c)に示すシミュレーション用タイヤモデル32を得ることができる。
なお、タイヤ外形状の計測データを使用した、シミュレーション用タイヤモデルの作成方法は、上述のとおりであるため、その詳細な説明は省略する。
【0035】
作成装置10は、ROM等に記憶されたプログラム(コンピュータソフトウェア)を、制御部22で実行することにより、上述のシミュレーション用タイヤモデルを作成する。作成装置10は、上述のようにプログラムが実行されることで各部位が機能するコンピューターによって構成されてもよいし、各部位が専用回路で構成された専用装置であってもよい。
【0036】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明のタイヤモデル作成方法、タイヤモデル作成装置、およびプログラムについて詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0037】
10 タイヤモデル作成装置(作成装置)
12 接地台
12a、13a 表面
12b 裏面
13 基材
14 ステージ
16 タイヤ支持部
16a 駆動部
16b 軸部
18 除去部
19a 枠
19b 支持体
20 計測部
22 制御部
24 作成部
26 メモリ
27 入力部
28 表示部
30 タイヤ
30b 外周面
32 シミュレーション用タイヤモデル(タイヤモデル)
32e 接地端部
33 要素
100 タイヤ
102 平板
103 領域
C 中心軸
H 距離
h 高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6