IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社不二越の特許一覧

<>
  • 特許-熱処理システム 図1
  • 特許-熱処理システム 図2
  • 特許-熱処理システム 図3
  • 特許-熱処理システム 図4
  • 特許-熱処理システム 図5
  • 特許-熱処理システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】熱処理システム
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/04 20060101AFI20240111BHJP
   G01F 23/292 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B08B3/04 Z
G01F23/292 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020008436
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021115492
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】園部 勝
(72)【発明者】
【氏名】武部 匡彦
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0038200(US,A1)
【文献】特開昭64-023119(JP,A)
【文献】特開平07-280625(JP,A)
【文献】特開平06-137765(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056582(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/04
G01F 17/00
G01F 23/00
C21D 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に被処理物が設置された容器内における液面までの距離を測定する液面検知部と、前記液面検知部により測定した距離に関する情報を収集する受信部と、前記受信部で収集した前記情報に基づいて前記液面までの距離の時間変化を演算処理する演算部と、前記演算部で演算処理された結果より前記被処理物の荷姿の状態を判定する判定部と、を有する被処理物の荷姿測定装置を具備した真空脱脂洗浄装置および前記被処理物を焼入れ処理する油槽を具備した熱処理装置を有することを特徴とする熱処理システム。
【請求項2】
前記液面検知部は、赤外線,超音波,LED,レーザ,フロートのいずれかを用いて前記液面の変化を検知する液面検知機器であることを特徴とする請求項1に記載の熱処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物の荷姿を確認する測定装置および同装置を備える熱処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大部分の鉄製部品は、鍛造後または鋳造後に部品の表面に付着した汚れを除去するために洗浄を行ない、その後に焼入れや焼きなまし等の熱処理を行なう(特許文献1および2参照)。中でも、焼入れ処理を行う場合には、加熱後の部品を油や水等の冷媒で満たした焼入れ槽内で瞬時に冷却する。その際、冷媒による冷却工程は槽内の冷媒中へ多数の部品を一度に浸漬させて行なう。
【0003】
そのため、槽内における部品の設置場所により冷媒との接触時間が異なるので、個々の部品間で冷却速度も変化する。その結果、槽内における部品の設置場所、言い換えると冷却時の部品の大きさ,設置形態,部品の個数等に応じて冷媒と部品の間の接触状態が大きく左右される。
【0004】
焼入れ後の冷却時における部品の設置形態は、前工程の洗浄工程における部品をそのまま流用される場合が多い。つまり、洗浄工程における部品の大きさや個数を把握することで、部品の設置形態は決まるので後工程である焼入れ処理時の冷却効果がおよそ推測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-57468号公報
【文献】特開2000-167498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、焼入れを行なう部品の材質や総重量や個々の大きさおよび形状は、前工程である洗浄時に把握できるが、部品の数量が同じでも各部品の積載形態、すなわち荷姿については各処理ごとに異なる場合がある。例えば、同一の洗浄室2内に同じ数量の部品Wの荷姿を変えて積載した場合の設置形態を図3図6に示す。図3図6に示す様に洗浄室2内に積載される被処理物Wの総数はすべて36個であるが、洗浄室2内の幅方向,奥行方向,高さ方向の各方向における被処理物Wの個数がそれぞれ異なると、被処理物W全体の積載形態も変化する。
【0007】
つまり、部品の洗浄工程およびその後の焼入れ工程において、各処理ごとに部品の荷姿が異なると、部品の材質や数量が同じであっても処理ごとに焼入れ処理後の冷却効果も大きく変化する。
【0008】
そこで、本発明は洗浄装置等の処理室内において被処理物の大きさや数量などの設置態様(荷姿)を正確に測定することで、後工程である焼入れ処理時の冷却効果のばらつきを抑制できる被処理物の荷姿測定装置および同装置を有する熱処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明である被処理物の荷姿測定装置は、洗浄室を備える洗浄装置に設置する場合に、被処理物が設置された容器(洗浄室)内の液面までの距離を測定する液面検知部、その液面検知部により測定した距離に関する情報を収集する受信部、同受信部で収集した測定距離に関する情報に基づいて液面までの距離の時間変化を演算処理する演算部、同演算部で演算処理された結果より被処理物の荷姿の状態を判定する判定部を有する構成とする。
【0010】
この液面検知部については、赤外線,超音波,LED,レーザ,フロートのいずれかを用いて液面の変化を検知する液面検知機器であれば良い。また、この荷姿測定装置を具備した真空脱脂洗浄装置および被処理物を焼入れ処理する油槽を備えた熱処理装置から構成される熱処理システムとすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の荷姿測定装置は、例えば洗浄装置の洗浄室における洗浄液の液面変化を所定時間ごとに液面センサ等で計測し、液面の時間変化を演算処置(算出)する。算出された液面の時間変化から洗浄室内における高さ方向の断面変化を正確に把握し、被処理物の設置態様を推測できる。その結果を利用して、後工程である焼入れ処理における製品間の冷却効果のばらつきを抑制できる効果を奏する。
【0012】
また、荷姿測定装置を有する真空脱脂洗浄装置と油槽を有する熱処理装置から構成された熱処理システムの発明については、荷姿測定装置を用いて測定した被処理物の荷姿に関する情報を後工程である焼入れ処理時の処理条件に反映できるので、作業者の技量によらず被処理物に対して常に均質な焼入れ処理を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の荷姿測定装置10を有する真空脱脂洗浄装置1の模式断面図である。
図2図1に示すX-X線断面図である。
図3】被処理物Wの積載状態(第1形態)を示す模式図である。
図4】被処理物Wの積載状態(第2形態)を示す模式図である。
図5】被処理物Wの積載状態(第3形態)を示す模式図である。
図6】被処理物Wの積載状態(第4形態)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明である被処理物の荷姿測定装置の形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の荷姿測定装置10を真空脱脂洗浄装置1に設置した場合の実施形態を示す模式断面図、図2図1に示す真空脱脂洗浄装置1のX-X線断面図である。図1に示す真空脱脂洗浄装置1は、多数の被処理物Wを内部で洗浄する洗浄室2、その洗浄室2へ洗浄液Lを供給する配管P1と洗浄室2内の洗浄液Lを外部へ排出する配管P2、配管P2内の洗浄液Lの排出量を自在に調整できるバルブV、洗浄室2を減圧雰囲気にする真空ポンプ(図示しない)などを備えている。
【0015】
本実施の形態では洗浄室2の上方に荷姿測定装置10の一部を構成する液面検知部11が図1および図2に示す様に設置されている。液面検知部11は、洗浄室2内の洗浄液Lの液面LSを検知して、液面検知部11と液面LSまでの距離を瞬時に測定する。
【0016】
また、液面検知部11は図2に示すように洗浄室10の外部で受信部12,演算部13,判定部14に有線または無線による電気通信手段を介して接続されており、これら一式で荷姿測定装置10を形成している。
【0017】
液面検知部11が、例えば液面センサである場合には洗浄室2へ供給される洗浄液Lの液面LSとセンサ(液面検知部11)間の距離を測定できる。液面LSからセンサ(液面検知部11)間の距離の測定については、0.1秒毎や10秒毎など所定の時間ごとに測定できる。液面検知部11により測定した液面までの距離に関する情報(データ)は、有線または無線により受信部12に一旦送られて、そこで測定結果が収集される。
【0018】
受信部12に送られた測定距離の情報は、収集された距離に関する情報の時間変化(単位時間当たりの増加量)として演算部13によって演算処理される。演算部13で演算処理された演算結果から洗浄室2における被処理物Wの荷姿の状態を判定部14にて判定(判別)する。
【0019】
なお、本発明の荷姿測定装置を構成する液面検知部は、図1で示した液面センサのほかに赤外線,超音波,LED,レーザなど種々の方式を用いたセンサ以外にフロートなどを用いた測定機器の様に液面検知部と液面までの距離が即時に測定できる機器であれば、これらの機器に限定されない。
【符号の説明】
【0020】
1 真空脱脂洗浄装置
2 洗浄室
10 荷姿測定装置
11 液面検知部
12 受信部
13 演算部
14 判定部
L 洗浄液
LS 液面
P1,P2 配管
V バルブ
W 被処理物

図1
図2
図3
図4
図5
図6