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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】共沸様組成物及び液体組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/30 20060101AFI20240111BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20240111BHJP
   C11D 7/24 20060101ALI20240111BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20240111BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240111BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20240111BHJP
   C09K 3/30 20060101ALI20240111BHJP
   B08B 3/12 20060101ALI20240111BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20240111BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C11D7/30
C11D7/26
C11D7/24
C11D7/50
C09K3/00 111B
C09K5/04 C
C09K5/04 A
C09K5/04 B
C09K3/30 S
C09K3/30 T
C09K3/30 R
C09K3/30 J
B08B3/12 A
B08B3/08 Z
B08B3/02 Z
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020008931
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021116323
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】長舩 夏奈子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 正宗
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/078352(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/117100(WO,A1)
【文献】特開2016-169256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 7/00
C09K 3/00
C09K 5/00
C09K 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Z-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
エタノールと、を含む、共沸(様)組成物であって、
65モル%~90.74モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.93モル%~10.03モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、1.03モル%~26.71モル%のエタノールとを含む、共沸(様)組成物。
【請求項2】
Z-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
イソプロパノールと、を含む、共沸(様)組成物であって、
65モル%~96.52モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.89モル%~10モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、2.40モル%~25モル%のイソプロパノールとを含む、共沸(様)組成物。
【請求項3】
Z-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
メタノールと、を含む、共沸(様)組成物であって、
58モル%~76.16モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、7.01モル%~10モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、16.83モル%~32モル%のメタノールとを含む、共沸(様)組成物。
【請求項4】
Z-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
n-プロパノールと、を含む、共沸(様)組成物であって、
70モル%~94.61モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、1.06モル%~10モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、4.33モル%~20モル%のn-プロパノールとを含む、共沸(様)組成物。
【請求項5】
Z-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
アセトンと、を含む、共沸(様)組成物であって、
3.53モル%~84.22モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.14モル%~6.82モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、14.84モル%~96.15モル%のアセトンとを含む、共沸(様)組成物。
【請求項6】
Z-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
n-ヘキサンと、を含む、共沸(様)組成物であって、
60モル%~97.90モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.70モル%~7.96モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、1.00モル%~37.25モル%のn-ヘキサンとを含む、共沸(様)組成物。
【請求項7】
Z-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
ジクロロメタンと、を含む、共沸(様)組成物であって、
3.26モル%~25モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.25モル%~1.89モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、75モル%~96.43モル%のジクロロメタンとを含む、共沸(様)組成物。
【請求項8】
Z-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
シクロペンタンと、を含む、共沸(様)組成物であって、
4.41モル%~62.72モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.26モル%~5.89モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、30モル%~95.12モル%のシクロペンタンとを含む、共沸(様)組成物。
【請求項9】
Z-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
シクロヘキサンと、を含む、共沸(様)組成物であって、
70モル%~97.90モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.95モル%~10モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、1.00モル%~20モル%のシクロヘキサンとを含む、共沸(様)組成物。
【請求項10】
Z-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、
E-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、を含む、共沸(様)組成物であって、
70.76モル%~98.36モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.92モル%~10モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.29モル%~21.16モル%のE-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンとを含む、共沸(様)組成物(但し、80質量%のシス-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、15質量%のトランス-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、5質量%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む溶剤組成物を除く)。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一に記載の共沸(様)組成物を少なくとも含む、液体組成物。
【請求項12】
少なくとも一種の追加成分をさらに含む、請求項11に記載の液体組成物。
【請求項13】
前記追加成分の総量が、前記共沸(様)組成物に対して0.0001質量%~30質量%である、請求項12に記載の液体組成物。
【請求項14】
請求項1乃至10の何れか一に記載の共沸(様)組成物または請求項11乃至13の何れか一に記載の液体組成物と、噴射ガスとを含有する、エアゾール組成物。
【請求項15】
請求項1乃至10の何れか一に記載の共沸(様)組成物、請求項11乃至13の何れか一に記載の液体組成物または請求項14に記載のエアゾール組成物を含む、洗浄剤。
【請求項16】
車両、乗物または輸送機関の洗浄用である、請求項15に記載の洗浄剤。
【請求項17】
車両、乗物または輸送機関のブレーキクリーナー用である、請求項15又は16に記載の洗浄剤。
【請求項18】
請求項1乃至10の何れか一に記載の共沸(様)組成物、請求項11乃至13の何れか一に記載の液体組成物または請求項14に記載のエアゾール組成物を含む、溶剤。
【請求項19】
請求項1乃至10の何れか一に記載の共沸(様)組成物、請求項11乃至13の何れか一に記載の液体組成物または請求項14に記載のエアゾール組成物を含む、水切り剤。
【請求項20】
請求項1乃至10の何れか一に記載の共沸(様)組成物、請求項11乃至13の何れか一に記載の液体組成物または請求項14に記載のエアゾール組成物を含む、発泡剤。
【請求項21】
請求項1乃至10の何れか一に記載の共沸(様)組成物、請求項11乃至13の何れか一に記載の液体組成物または請求項14に記載のエアゾール組成物を含む、熱伝達媒体。
【請求項22】
請求項1乃至10の何れか一に記載の共沸(様)組成物、請求項11乃至13の何れか一に記載の液体組成物または請求項14に記載のエアゾール組成物を含む、潤滑剤溶剤。
【請求項23】
請求項1乃至10の何れか一に記載の共沸(様)組成物、請求項11乃至13の何れか一に記載の液体組成物または請求項14に記載のエアゾール組成物を、被洗浄物品に接触させる工程を含む、該被洗浄物品を洗浄する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、Z-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、さらに1つの添加剤とを含む、共沸(様)組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロフルオロカーボン(CFC)類や、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)類などの含フッ素飽和化合物は、発泡剤、熱伝達媒体、溶媒、洗浄剤などの用途において使用されてきた。これらの用途においては、単一成分または共沸(様)組成物、すなわち沸騰、蒸発時に実質的に分留しないものの使用が特に望ましい。
【0003】
これらの含フッ素飽和化合物は、地球温暖化係数(GWP)が大きく、地球環境への影響が懸念され、使用が制限されている。そこで、CFC類やHCFC類に代わる化合物として、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)類が開発されている。HCFO類は大気中での寿命が短く、地球温暖化係数が小さいという優れた環境性能を有する。
【0004】
しかしながら、HCFO類をはじめとして、新規な、環境に安全で、分留しない組成物の開発は、共沸(様)組成物の形成が容易に予測できないことから、困難である。そのため、産業界は、CFC類や、HCFC類に代わる、性能上許容でき、環境上より安全な代替品である新規なHCFO類組成物を絶えず求めている。
【0005】
ところで、特許文献1において、炭素数3の含フッ素オレフィンと汎用溶剤の組成物が提案されている。実施例4において1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(以下、1223xdともいう)単独の脱脂試験例が開示されている。同様に、特許文献2~7において、1223xd単独のバフ研磨洗浄試験例、レジスト現像試験例、レジスト剥離試験例、ドライクリーニング試験例、フラックス洗浄試験例、付着水除去試験例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平2-221388号公報
【文献】特開平2-221389号公報
【文献】特開平2-221962号公報
【文献】特開平2-222469号公報
【文献】特開平2-222496号公報
【文献】特開平2-222497号公報
【文献】特開平2-222702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような揮発性の溶剤組成物においては、単純に複数の溶剤を調合して性能が改善されたとしても、各成分の揮発性によって、液組成が変動しやすいという問題は避けられない。例えば、二元系の液体組成物を超音波洗浄機に入れて洗浄工程に供したとき、一般に低沸点成分(蒸気圧が大きい成分)が優先的に揮発し、洗浄槽内には高沸点成分(蒸気圧が小さい成分)が濃縮される。例えば、洗浄力の高い低沸点成分と洗浄力の低い高沸点成分からなる組成物の場合、洗浄液における低沸点成分が経時的に減少して、洗浄不良を引き起こすことがある。また、使用済みの洗浄溶液は通常蒸留によって再生、再利用されるが、液相の組成と気相の組成が異なる組成物の場合は、回収した組成物の液組成を調整しなければならず効率的ではない。
【0008】
本発明の実施形態の一つは、環境に優しい(Z)-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223xd(Z))と1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223za)に加えて、さらに1つの添加剤を含み、揮発しても組成が変わらない新規な共沸(様)組成物を提案することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によると、Z-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、エタノール、イソプロパノール、メタノール、n-プロパノール、アセトン、n-ヘキサン、ジクロロメタン、シクロペンタン、シクロヘキサンまたはE-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンとを含む、共沸(様)組成物が提供される。
【0010】
共沸(様)組成物は、65モル%~99.9998モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~10モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~25モル%のエタノールとを含んでもよい。
【0011】
共沸(様)組成物は、65モル%~99.9998モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~10モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~25モル%のイソプロパノールとを含んでもよい。
【0012】
共沸(様)組成物は、55モル%~76.9999モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~10モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、23モル%~35モル%のメタノールとを含んでもよい。
【0013】
共沸(様)組成物は、70モル%~99.9998モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~10モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~20モル%のn-プロパノールとを含んでもよい。
【0014】
共沸(様)組成物は、0.0001モル%~99.9998モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~10モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~99.9998モル%のアセトンとを含んでもよい。
【0015】
共沸(様)組成物は、60モル%~99.9998モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~10モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~30モル%のn-ヘキサンとを含んでもよい。
【0016】
共沸(様)組成物は、0.0001モル%~25モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~10モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、65モル%~99.9998モル%のジクロロメタンとを含んでもよい。
【0017】
共沸(様)組成物は、0.0001モル%~60モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~10モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、30モル%~99.9998モル%のシクロペンタンとを含んでもよい。
【0018】
共沸(様)組成物は、70モル%~99.9998モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~10モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~20モル%のシクロヘキサンとを含んでもよい。
【0019】
共沸(様)組成物は、0.0001モル%~99.9998モル%のZ-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~10モル%の1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと、0.0001モル%~99.9998モル%のE-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンとを含んでもよい。
【0020】
本発明の一実施形態によると、上記何れかの共沸(様)組成物を少なくとも含む、液体組成物が提供される。
【0021】
液体組成物は、少なくとも一種の追加成分をさらに含んでもよい。
【0022】
液体組成物は、追加成分の総量が、前記共沸(様)組成物に対して0.0001質量%~30質量%であってもよい。
【0023】
本発明の一実施形態によると、上記何れかの共沸(様)組成物または上記何れかの液体組成物と、噴射ガスとを含有する、エアゾール組成物が提供される。
【0024】
本発明の一実施形態によると、上記何れかの共沸(様)組成物、上記何れかの液体組成物または上記のエアゾール組成物を含む、洗浄剤が提供される。
【0025】
洗浄剤は、車両、乗物または輸送機関の洗浄用であってもよい。
【0026】
洗浄剤は、車両、乗物または輸送機関のブレーキクリーナー用であってもよい。
【0027】
本発明の一実施形態によると、上記何れかの共沸(様)組成物、上記何れかの液体組成物または上記のエアゾール組成物を含む、溶剤が提供される。
【0028】
本発明の一実施形態によると、上記何れかの共沸(様)組成物、上記何れかの液体組成物または上記のエアゾール組成物を含む、水切り剤が提供される。
【0029】
本発明の一実施形態によると、上記何れかの共沸(様)組成物、上記何れかの液体組成物または上記のエアゾール組成物を含む、発泡剤が提供される。
【0030】
本発明の一実施形態によると、上記何れかの共沸(様)組成物、上記何れかの液体組成物または上記のエアゾール組成物を含む、熱伝達媒体が提供される。
【0031】
本発明の一実施形態によると、上記何れかの共沸(様)組成物、上記何れかの液体組成物または上記のエアゾール組成物を含む、潤滑剤溶剤が提供される。
【0032】
本発明の一実施形態によると、上記何れかの共沸(様)組成物、上記何れかの液体組成物または上記のエアゾール組成物を、被洗浄物品に接触させる工程を含む、該被洗浄物品を洗浄する方法が提供される。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、揮発しても組成が変わらない新規な共沸(様)組成物が提供される。本発明に係る共沸(様)組成物は、環境への負荷が少なく、また、開放条件にて使用しても組成が変化しにくい液体としての性能が維持されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】1223xd(Z)、1223zaおよびEtOHからなる実施例1の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。
図2】1223xd(Z)、1223zaおよび2-プロパノールからなる実施例2の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。
図3】1223xd(Z)、1223zaおよびメタノールからなる実施例3の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。
図4】1223xd(Z)、1223zaおよびn-プロパノールからなる実施例4の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。
図5】1223xd(Z)、1223zaおよびアセトンからなる実施例5の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。
図6】1223xd(Z)、1223zaおよびn-ヘキサンからなる実施例6の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。
図7】1223xd(Z)、1223zaおよびジクロロメタンからなる実施例7の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。
図8】1223xd(Z)、1223zaおよびシクロペンタンからなる実施例8の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。
図9】1223xd(Z)、1223zaおよびシクロヘキサンからなる実施例9の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。
図10】1223xd(Z)、1223zaおよび1223xd(E)からなる実施例10の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態に係る方法について説明する。ただし、本発明の実施形態は、以下に示す実施形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0036】
[共沸(様)組成物]
含フッ素オレフィンは種々の溶剤との相溶性が高いので、容易に均一な組成物を調合することは可能である。しかし、このような単純な組成物の場合、「液組成が変動しやすい」という問題が内在している。すなわち、仮に複数種類の液体を混合し、相溶性を確保できたとしても、各成分の揮発度の違いにより、液組成が変動しやすいという問題は避けられない。例えば、二元系の液体組成物を超音波洗浄機に入れて、洗浄剤として用いた場合、一般に揮発度の高い低沸点成分(蒸気圧の大きい成分)が優先的に揮発し、洗浄槽内に揮発度の低い高沸点成分が濃縮される。例えば、洗浄力の高い低沸点成分に洗浄力の低い高沸点成分の組成物の場合、洗浄液における低沸点成分濃度が経時的に減少して、洗浄不良を引き起こす恐れがある。特に、可燃性の溶剤に不燃性の溶剤をブレンドして不燃性組成物を調合した場合、不燃性成分が優先的に揮発すると洗浄液が可燃性組成物になることがある。
【0037】
また、洗浄溶媒は、使用後に蒸留等の操作によって回収、再利用するのが、環境保護の面からも経済面からも望ましいが、二成分系の液体の場合、一般に沸点の異なる二成分の液体を別々に回収せざるを得ず、回収・再利用を行うには、操作上の負荷がかかりやすい。
【0038】
熱力学サイクルの作動流体に用いる場合も、同様の問題がある。すなわち、熱力学サイクルの作動流体として用いる場合も、長時間で見れば液組成が変動する可能性がある。液組成が変動すれば、液体の持つ熱容量、粘度、或いは潤滑剤との親和性に変化が生じ、熱力学サイクルの作動性能が低下することがある。
【0039】
このため、二元系(多元系)の液体組成物を洗浄剤や作動流体として使用する場合、頻繁に液組成を分析し、適正な組成範囲になるように、絶えず、適切な比率に調合して、揮発した成分を補充しなければならない。しかし、こうした液組成管理は作業上の大きな負荷となり得る。
【0040】
これに対して、共沸組成物の場合、液組成と同じ組成で揮発するので、使用中に液組成が変化しない非常に好ましい組成である。本明細書において「共沸」とは熱力学的に厳密な意味での共沸を指す。例えば水/エタノールの混合物の場合、エタノール(96質量%)と水(4質量%)の組成物は共沸混合物(azeotrope)であって、これと気液平衡して存在する蒸気も「エタノール(96質量%):水(4質量%)」となり、液組成と完全に一致する。この現象を「共沸」と呼ぶ。特定の温度、圧力では共沸混合物の組成は、ただ1点となる。
【0041】
「共沸様」は、「擬共沸」とも呼ばれ、熱力学的に厳密な共沸ではないが、ある範囲の組成の液体については、その液組成と、平衡状態にある気体の組成が、実質的に等しいことがあり、そのような現象を指す。完全に気相部と液相部の組成が一致せずとも、実質的に気相部と液相物の組成が一致すれば、当業者は、共沸組成と同様に取り扱うことができる。このとき、気相部と液相部の気液平衡組成差は小さければ小さいほど良い。このように、実質的に気相部と液相部の気液平衡組成が一致する現象を共沸様、または擬共沸と呼び、その組成を共沸様組成、または擬共沸組成と呼ぶ。
【0042】
学術的には共沸現象と擬共沸現象(または共沸様)は区別すべきであるが、洗浄等の実務においては、共沸現象と共沸様現象(または擬共沸)を区別する必要は無く、全く同じように取り扱うことができるので、本明細書においては、共沸現象と共沸様現象(または擬共沸)を併せて“共沸(様)”と呼ぶ。また、そのときの組成を“共沸(様)組成”と呼ぶ。共沸(様)においては、共沸点の有無は問われない。実質的に気相部と液相部の気液平衡組成が一致すれば良い。
【0043】
「共沸様」は理論的に導かれるものではなく、様々な液体の種類、組成比について気液平衡を実験によって調査し、偶然、気相の組成と液相の組成が実質的に一致した時に、初めて見出せるものである。本発明者らは、国際出願PCT/JP2019/029376において、1223xd(Z)と1223zaとからなる共沸(様)組成物が、気液の組成が完全に一致する共沸点および/または実質的に気液の組成が同一である共沸様組成を見出した。
【0044】
しかし、3種類以上の化合物を含む共沸(様)組成物を提供することはさらに大きな困難性を伴う。本発明者らは、1223xd(Z)と1223zaに加えて、特定の1つの添加剤をさらに含む共沸(様)組成物を見出した。
【0045】
1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223xd又は1223xd(Z)と称する)にはE体、Z体が存在する。Z体を選択的に製造する方法は特許文献(WO2014/046250号、WO2014/046251号)に記載されており、精密蒸留により、高純度のZ体(1223xd(Z))が入手可能である。
【0046】
また、1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223za又は1223zaと称する)は、例えば1,1,1-トリクロロ-3,3,3-トリフルオロプロパン(233fb)を塩基との接触により脱塩化水素させて、製造することができる(例えば、特開2016-79101号公開公報参照)。
【0047】
本共沸(様)組成物は、1223xd(Z)と1223zaとに加えて、エタノール、イソプロパノール、メタノール、n-プロパノール、アセトン、n-ヘキサン、ジクロロメタン、シクロペンタン、シクロヘキサンまたはE-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1223xd(E))を含む。
【0048】
実施例で示す気液平衡測定からも明らかなように、1223xd(Z)と1223zaと、上記の添加剤から選択される1つの添加剤からなる組成物は、所定の組成において、気相部と液相部の組成が実質的に同じである共沸(様)組成物である。
【0049】
一実施形態において、本共沸(様)組成物は、65モル%~99.9998モル%の1223xd(Z)と、0.0001モル%~10モル%の1223zaと、0.0001モル%~25モル%のエタノールとを含む。一実施形態において、本共沸(様)組成物は、1223xd(Z)が75モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、EtOHが0.0001モル%~15モル%であってもよい。また、組成物の使用環境における引火の危険性および火災時のリスクが低いことから、一実施形態において、本共沸(様)組成物は、1223xd(Z)が80モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、EtOHが0.0001モル%~10モル%であってもよい。
【0050】
ここで、モル%の値は、1223xd(Z)のモル数と1223zaのモル数と、1つの添加剤のモル数の合計値を100としたときの、各成分のモル数の%(すなわち、三成分間の相対的モル%)を表す。この範囲の組成であれば、実務上、液体組成物を開放系で取り扱っても、さらには蒸留による回収操作をおこなっても、組成変動が起こりにくい。
【0051】
一実施形態において、本共沸(様)組成物は、65モル%~99.9998モル%の1223xd(Z)と、0.0001モル%~10モル%の1223zaと、0.0001モル%~25モル%のイソプロパノールとを含む。一実施形態において、本共沸(様)組成物は、1223xd(Z)が76モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、イソプロパノールが0.0001モル%~14モル%であってもよい。
【0052】
一実施形態において、本共沸(様)組成物は、55モル%~76.9999モル%の1223xd(Z)と、0.0001モル%~10モル%の1223zaと、23モル%~35モル%のメタノールとを含む。一実施形態において、本共沸(様)組成物は、1223xd(Z)が58モル%~74.9999モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、メタノールが25モル%~32モル%であってもよい。
【0053】
一実施形態において、本共沸(様)組成物は、70モル%~99.9998モル%の1223xd(Z)と、0.0001モル%~10モル%の1223zaと、0.0001モル%~20モル%のn-プロパノールとを含む。一実施形態において、本共沸(様)組成物は、1223xd(Z)が76~99.9998モル%、1223zaが0.0001~10モル%、n-プロパノールが0.0001~14モル%の組成範囲であってもよい。
【0054】
一実施形態において、本共沸(様)組成物は、0.0001モル%~99.9998モル%の1223xd(Z)と、0.0001モル%~10モル%の1223zaと、0.0001モル%~99.9998モル%のアセトンとを含む。
【0055】
一実施形態において、本共沸(様)組成物は、60モル%~99.9998モル%の1223xd(Z)と、0.0001モル%~10モル%の1223zaと、0.0001モル%~30モル%のn-ヘキサンとを含む。一実施形態において、本共沸(様)組成物は、1223xd(Z)が65モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、n-ヘキサンが0.0001モル%~25モル%の組成範囲であってもよい。
【0056】
一実施形態において、本共沸(様)組成物は、0.0001モル%~25モル%の1223xd(Z)と、0.0001モル%~10モル%の1223zaと、65モル%~99.9998モル%のジクロロメタンとを含む。一実施形態において、本共沸(様)組成物は、1223xd(Z)が0.0001モル%~15モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、ジクロロメタンが75モル%~99.9998モル%の組成範囲であってもよい。
【0057】
一実施形態において、本共沸(様)組成物は、0.0001モル%~60モル%の1223xd(Z)と、0.0001モル%~10モル%の1223zaと、30モル%~99.9998モル%のシクロペンタンとを含む。一実施形態において、本共沸(様)組成物は、1223xd(Z)が0.0001モル%~40モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、シクロペンタンが50モル%~99.9998モル%の組成範囲であってもよい。
【0058】
一実施形態において、本共沸(様)組成物は、70モル%~99.9998モル%の1223xd(Z)と、0.0001モル%~10モル%の1223zaと、0.0001モル%~20モル%のシクロヘキサンとを含む。一実施形態において、本共沸(様)組成物は、1223xd(Z)が80モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、シクロヘキサンが0.0001モル%~10モル%の組成範囲
【0059】
一実施形態において、本共沸(様)組成物は、0.0001モル%~99.9998モル%の1223xd(Z)と、0.0001モル%~10モル%の1223zaと、0.0001モル%~99.9998モル%のE-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223xd(E))とを含む。一実施形態において、本共沸(様)組成物は、1223xd(Z)が0.0001モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、1223xd(E)が50モル%~99.9998モル%の組成範囲であってもよい。
【0060】
本共沸(様)組成物は、1223xd(Z)と、1223zaと、上述した1つの添加剤を、混合する工程を経て、製造することができる。本共沸(様)組成物は、不純物が実質的に混入していない、高純度のものが好ましい態様の1つであることは言うまでもない。しかし、用途によっては、それほど高い純度の液体組成物を要求されない場合もある。そのような場合には、1223xd(Z)や、1223zaを合成するための原料物質や、副生成物(例えばE-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン等)が少量残存したものを用いることもできる。例えば、原料物質や副生成物の総量が、該共沸(様)組成物に対して10質量%未満、好ましくは5質量%未満、特に好ましくは3質量%未満、さらに好ましくは1質量%未満であるものを用いることもできる。
【0061】
これに対し、高い純度の共沸(様)組成物が要求される場合には、1223xd(Z)、1223za及び上述した1つの添加剤を混合する前に、それぞれを精密蒸留して原料由来の不純物を除去し、純度を高めた上で、二成分を混合し、本共沸(様)組成物を調製することが好ましい。
【0062】
一実施形態において、本共沸(様)組成物を少なくとも含む、液体組成物が提供される。一実施形態において、液体組成物は、少なくとも一種の追加成分をさらに含んでもよい。追加成分は、上記の添加剤であって、選択された1つの添加剤以外のものでもよい。また、追加成分としては、安定剤、界面活性剤、難燃剤、金属不動態化剤、防錆剤等が例示される。
【0063】
安定剤としては、特に限定されないが、蒸留操作により同伴留出されるもの、あるいは、共沸様混合物を形成するものがより望ましい。安定剤の具体例としては、上述した添加剤以外のニトロ化合物、エポキシ化合物、フェノール類、イミダゾール類、アミン類、アルコール類、不飽和炭化水素類等が挙げられる。これらの安定剤は単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
ニトロ化合物としては、公知の化合物が用いられてもよく、脂肪族及び/または芳香族誘導体などが挙げられる。脂肪族系ニトロ化合物として、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパン等が挙げられる。芳香族ニトロ化合物として、例えば、ニトロベンゼン、o-、m-又はp-ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、o-、m-又はp-ニトロトルエン、o-、m-又はp-エチルニトロベンゼン、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-又は3,5-ジメチルニトロベンゼン、o-、m-又はp-ニトロアセトフェノン、o-、m-又はp-ニトロフェノール、o-、m-又はp-ニトロアニソール等が挙げられる。
【0065】
エポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシドール、エピクロルヒドリン、グリシジルメタアクリレート、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル等のモノエポキシ系化合物、ジエポキシブタン、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントルグリシジルエーテル等のポリエポキシ系化合物等が挙げられる。
【0066】
フェノール類としては、水酸基以外にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲン等各種の置換基を含むフェノール類も含むものである。例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、チモール、p-t-ブチルフェノール、o-メトキシフェノール、m-メトキシフェノール、p-メトキシフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール、ブチルヒドロキシアニソール、フェノール、キシレノール等の1価のフェノールあるいはt-ブチルカテコール、2,5-ジ-t-アミノハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン等の2価のフェノール等が挙げられる。
【0067】
イミダゾール類としては、炭素数1以上18以下の、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を、N位の置換基とする、1-メチルイミダゾール、1-n-ブチルイミダゾール、1-フェニルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール、1-(β-オキシエチル)イミダゾール、1-メチル-2-プロピルイミダゾール、1-メチル-2-イソブチルイミダゾール、1-n-ブチル-2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,4-ジメチルイミダゾール、1,5-ジメチルイミダゾール、1,2,5-トリメチルイミダゾール、1,4,5-トリメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用されてもよく、2種以上の化合物が併用されてもよい。
【0068】
アミン類としては、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジアリルアミン、トリエチルアミン、N-メチルアニリン、ピリジン、モルホリン、N-メチルモルホリン、トリアリルアミン、アリルアミン、α-メチルベンジルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上の化合物が併用されてもよい。
【0069】
アルコール類としては、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上の化合物が併用されてもよい。
【0070】
不飽和炭化水素類としては、α-メチルスチレンやp-イソプロペニルトルエン、イソプレン類、プロパジエン類、テルペン類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上の化合物が併用されてもよい。
【0071】
界面活性剤としては、具体的には、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤が挙げられる。これらの洗浄力強化剤は、単独で使用されてもよく、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。相乗的に洗浄力及び界面作用を改善する目的で、ノニオン系界面活性剤に加えてカチオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤を本共沸(様)組成物に添加することもできる。ノニオン系界面活性剤としては、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪族エステル類;ポリオキシエチレンのソルビットテトラオレエート等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノラウレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸アミド類等が挙げられる。
【0072】
難燃剤としては、ホスフェート類、ハロゲン化芳香族化合物、フッ素化ヨードカーボン、フッ素化ブロモカーボン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
本液体組成物は、上述した追加成分の総量が、本共沸(様)組成物に対して0.0001質量%~30質量%となるように含有することができる。例えば、本共沸(様)組成物100質量%に対して30質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下添加する。また、本共沸(様)組成物100質量%に対して0.0001質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、1質量%以上添加する。ある態様において、追加成分の添加量は、共沸(様)組成物100質量%に対して、下記であってもよい:0.0001質量%以上30質量%以下;0.001質量%以上10質量%以下;0.001質量%以上5質量%以下;0.001質量%以上3質量%以下;0.001質量%以上1質量%以下;0.001質量%以上0.01質量%以下;0.001質量%以上0.1質量%以下;0.01質量%以上30質量%以下;0.01質量%以上10質量%以下;0.01質量%以上5質量%以下;0.01質量%以上3質量%以下;0.01質量%以上1質量%以下;0.01質量%以上0.1質量%以下;0.1質量%以上30質量%以下;0.1質量%以上10質量%以下;0.1質量%以上5質量%以下;0.1質量%以上3質量%以下;0.1質量%以上1質量%以下;1質量%以上30質量%以下;1質量%以上10質量%以下;1質量%以上5質量%以下;1質量%以上3質量%以下;3質量%以上30質量%以下;3質量%以上10質量%以下;3質量%以上5質量%以下;5質量%以上30質量%以下;5質量%以上10質量%以下;10質量%以上30質量%以下であってもよい。
【0074】
本液体組成物は、以下の組成が一例として挙げられるが、この限りではない。本共沸(様)組成物100質量%に対して、安定剤(例えば、ニトロ化合物、エポキシ化合物、フェノール類、イミダゾール類、アミン類、アルコール類、ニトロ化合物とエポキシ化合物、ニトロ化合物とフェノール類、ニトロ化合物とアミン類、フェノール類とアミン類)10質量%以下を含む組成物;安定剤10質量%以下、界面活性剤1質量%以下を含む組成物;安定剤10質量%以下、界面活性剤1質量%以下、防錆剤5質量%以下を含む組成物;安定剤10質量%以下、難燃剤5質量%以下を含む組成物;界面活性剤5質量%以下を含む組成物;界面活性剤5質量%以下、防錆剤5質量%以下を含む組成物;防錆剤5質量%以下を含む組成物;金属不動態化剤5質量以下を含む組成物であってもよい。
【0075】
本共沸(様)組成物(あるいは、該共沸(様)組成物を含む液体組成物)は、噴射ガスと混合してエアゾール組成物とすることもできる。
【0076】
この噴射ガスとしては、液化ガスや圧縮ガスを使用することができる。例えば、LPG(液化石油ガス)、DME(ジメチルエーテル)、二酸化炭素、フロン系、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234ze)等のハイドロフルオロオレフィン(HFO)類、窒素、アルゴン、圧縮空気などのガスやLPGとDMEの混合物、LPGと炭酸ガスとの混合物などといった上記のガスを二種以上組み合わせたものが挙げられるが、この限りではない。
【0077】
本エアゾール組成物は、本共沸(様)組成物(あるいは、該共沸(様)組成物を含む液体組成物)と上記の噴射ガスを混合して製造することができ、また、耐圧缶に充填して提供することができる。
【0078】
[洗浄剤あるいは溶剤としての使用(洗浄物品を洗浄する方法)]
本共沸(様)組成物(あるいは、該共沸(様)組成物を含む液体組成物)は、精密機械部品、電子材料(プリント基板、液晶表示器、磁気記録部品、半導体材料等)、樹脂加工部品、光学レンズ、衣料品などから異物、油脂、グリース、ワックス、フラックス、インキ等を除去するのに好適である。本共沸(様)組成物は適度な流動性や溶解性を有するので、異物(パーティクルなど)を洗い流したり、または溶解したりして、除去できる。また、自動車、二輪自動車、自転車、建機、農機、航空機、鉄道車両、船舶などの各種車両・乗物・輸送機関の洗浄(特に、これらの機関のブレーキクリーニング)においては、汚れを湿潤させて洗い流す工程を要するところ、本共沸(様)組成物(あるいは、該共沸(様)組成物を含む液体組成物)は、適度な沸点を有しており、汚れを湿潤させて洗い流すことができるため、このような洗浄に好適である(特に、ブレーキクリーナーとしての使用)。洗浄の手法は特に限定されないが、被洗浄物品に本共沸(様)組成物(あるいは、該共沸(様)組成物を含む液体組成物)を浸漬して汚れを洗い流す、ウェスでふき取る、スプレー洗浄を行う、などの方法が挙げられ、これらを組み合わせて使用しても良い。超音波洗浄機内に当該共沸(様)組成物を入れ、その液中に洗浄対象の物品を浸漬させ、超音波洗浄処理することは、特に好ましい態様の1つである。また、スプレー洗浄、例えば、本共沸(様)組成物(あるいは、該共沸(様)組成物を含む液体組成物)を噴射ガスと混合してエアゾール化させて各種洗浄対象の物品に吹き付ける方法、も好ましい態様の1つである。
【0079】
前述の通り、本共沸(様)組成物は、開放系で使用しても、組成の変動はほとんど起こらないため、さほど頻繁に組成管理をしなくても安定した洗浄力を発揮する。これは実務上の大きなメリットである。
【0080】
洗浄に用いた洗浄液は、回収した上で、蒸留操作を付せば、油脂や異物(パーティクル)を分離除去でき、本共沸(様)組成物を回収できる。一般的な洗浄剤用の蒸留再生装置は単蒸留方式なので、1223xd(Z)、1223za及び上述した何れか1つの添加剤からなる共沸(様)組成物の場合は、市販の蒸留再生装置で、実質的に組成変化なく再生可能である。特に、共沸(様)組成物の場合は高段数の蒸留塔を用いても組成変化が無いので好ましい。
【0081】
蒸留操作を行う際、1223xd(Z)、1223za及び上述した何れか1つの添加剤の3種類の液体成分は、共沸(様)組成物としての性質を維持するので、回収液体は、その後、大掛かりな組成調整を経ることなく、再び洗浄溶剤として使用できる。なお、上記「追加成分」が使われていた場合には、その「追加成分」は蒸留によって除去されてしまう場合もあるので、その場合は別途補うことが望ましい。
【0082】
[水切り剤用途、リンス剤用途]
本共沸(様)組成物(あるいは、該共沸(様)組成物を含む液体組成物)は、水切り剤として用いることができる。自動車、機械、精密機器、電気、電子、光学等の各種工業分野において扱われる物品は、その製造工程において、純水等の水で洗浄されたり、水系洗浄剤、水系洗浄剤に水溶性溶剤を配合した準水系洗浄剤、アルコール系洗浄剤、グリコールエーテル系洗浄剤、炭化水素に界面活性剤を配合した炭化水素系洗浄剤等により洗浄されたりすることがある。水系洗浄剤や準水系洗浄剤を使用した場合、洗浄後の物品には水が付着した状態となり、洗浄工程後に水切り剤で水分を排除する水切り工程が一般的に行われている。本共沸(様)組成物(あるいは、該共沸(様)組成物を含む液体組成物)は、そのような水切り工程で用いる水切り剤として好適に用いることができる。同様に、本共沸(様)組成物(あるいは、該共沸(様)組成物を含む液体組成物)は、高沸点洗浄剤による洗浄工程後の物品に付着した当該高沸点洗浄剤を排除するリンス剤として好適に用いることができる。
【0083】
水切り方法は、本共沸(様)組成物(あるいは、該共沸(様)組成物を含む液体組成物)を水切り剤として用いる以外は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。例えば、被水切り物品を本共沸(様)組成物(あるいは、該共沸(様)組成物を含む液体組成物)に接触させて乾燥する方法が挙げられる。
【0084】
いくつかの実施形態において、本共沸(様)組成物(あるいは、該共沸(様)組成物を含む液体組成物)は、洗浄作用とともに水切り作用を示すことから、洗浄工程と水切り工程とを一挙に行うことができる。すなわち、洗浄工程を施すことで、被洗浄物に付着した汚れを除去できるとともに、被洗浄物に付着し得る水分を除去できる。したがって、洗浄工程と水切り工程とで使用する洗浄剤と水切り剤とを区別して用いる必要はないため、より生産的である。なお、このことは、洗浄工程と水切り工程とで使用する洗浄剤と水切り剤とを区別して用いることを妨げるものではなく、所望により、本共沸(様)組成物(あるいは、該共沸(様)組成物を含む液体組成物)をそれぞれの工程において、洗浄剤および/または水切り剤として用いてもよい。いくつかの実施形態において、本共沸(様)組成物(あるいは、該共沸(様)組成物を含む液体組成物)は、水分を含む汚れ(例えば、水溶性油)が付着した物品(被洗浄物品)の洗浄に好適である。本共沸(様)組成物(あるいは、該共沸(様)組成物を含む液体組成物)を用いることにより、被洗浄物品に付着した汚れとともに水分を除去することができる。
【0085】
[潤滑剤組成物]
本発明の実施形態の一つは、本共沸(様)組成物(あるいは、本共沸(様)組成物を含む液体組成物)と潤滑剤とを含む、潤滑剤組成物である。本共沸(様)組成物(あるいは、本共沸(様)組成物を含む液体組成物)を潤滑剤の溶剤として用いることにより、本潤滑剤組成物は、地球環境にやさしく、潤滑剤の溶解性に優れ、充分な速乾性を有するため、潤滑剤塗膜の形成に好適である。
【0086】
潤滑剤とは、摩擦面を潤滑し、摩擦面の機械効率の向上をはかるために用いる物質を指し、2つの部材が互いの面を接触させた状態で運動するときに、接触面における摩擦を軽減し、熱の発生や摩耗損傷を防ぐために用いるものを意味する。潤滑剤には適当な粘度、物理的・化学的安定性、油性、また酸化安定性などが求められる。潤滑剤の形態は、液体(オイル)、半固体(グリース)、固体のいずれであってもよい。潤滑剤の種類としては、鉱物油系潤滑剤、合成油系潤滑剤、フッ素系潤滑剤、シリコーン系潤滑剤が挙げられる。
【0087】
潤滑剤としては、本共沸(様)組成物(あるいは本液体組成物)への溶解性または分散性が優れる点から、フッ素系潤滑剤またはシリコーン系潤滑剤が好ましい。
【0088】
フッ素系潤滑剤とは、分子内にフッ素原子を有する潤滑剤を指し、例えば、フッ素オイル、フッ素グリース、ポリテトラフルオロエチレンの樹脂粉末等のフッ素系固体潤滑剤が挙げられる。
【0089】
フッ素オイルとしては、パーフルオロポリエーテル(以下、PFPEともいう)やクロロトリフルオロエチレンの低重合物が好ましく、例えば、製品名「クライトックス(登録商標)GPL102」(デュポン株式会社製)、「ダイフロイル#1」、「ダイフロイル#3」、「ダイフロイル#10」、「ダイフロイル#20」、「ダイフロイル#50」、「ダイフロイル#100」、「デムナムS-65」(以上、ダイキン工業株式会社製)、「Fomblin(登録商標)Y」シリーズ、「Fomblin(登録商標)M」シリーズ、「Fomblin(登録商標)W」シリーズ、「Fomblin(登録商標)Z」シリーズ(以上、ソルベイ スペシャリティポリマー社製)等が挙げられる。
【0090】
フッ素グリースとしては、PFPEやクロロトリフルオロエチレンの低重合物等のフッ素オイルを基油として、ポリテトラフルオロエチレンの粉末やその他の増ちょう剤を配合したものが好ましい。例えば、製品名「クライトックス(登録商標)グリース240AC」(デュポン株式会社製)、「ダイフロイルグリースDG-203」、「デムナムL65」、「デムナムL100」、「デムナムL200」(以上、ダイキン株式会社製)、「スミテックF936」(住鉱潤滑剤株式会社製)、「モリコート(登録商標)HP-300」、「モリコート(登録商標)HP-500」、「モリコート(登録商標)HP-870」、「モリコート(登録商標)6169」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
【0091】
また、シリコーン系潤滑剤とは、シリコーンを含む潤滑剤を指し、例えば、シリコーンオイルやシリコーングリースが挙げられる。
【0092】
シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーン、また、反応性シリコーン、非反応性シリコーン等の変性シリコーン等が挙げられる。より具体的には、ストレートシリコーンとしては、メチル基、フェニル基、水素原子を置換基として結合したジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチル水素シリコーン等が挙げられる。反応性シリコーンとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、メタクリル変性、フェノール変性、異種官能基変性等が挙げられる。非反応性シリコーンとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、フッ素変性等が挙げられる。これらのシリコーンは1種類、又は2種類以上の混合物であってもよい。シリコーンオイルとしては、例えば、製品名「信越シリコーンKF-96」、「信越シリコーンKF-965」、「信越シリコーンKF-968」、「信越シリコーンKF-99」、「信越シリコーンKF-50」、「信越シリコーンKF-54」、「信越シリコーンHIVACF-4」、「信越シリコーンHIVACF-5」、「信越シリコーンKF-56A」、「信越シリコーンKF-995」(以上、信越化学工業株式会社製)、「SH200」(東レ・ダウコーニング株式会社製)、「MDX4-4159」(ダウコーニング社製)等が挙げられる。
【0093】
シリコーングリースとしては、上記に挙げた種々のシリコーンオイルを基油として、金属石けん等の増ちょう剤、各種添加剤を配合した製品が好ましい。例えば、製品名「信越シリコーンG-30シリーズ」、「信越シリコーンG-40シリーズ」、「信越シリコーンFG-720シリーズ」、「信越シリコーンG-411」、「信越シリコーンG-501」、「信越シリコーンG-6500」、「信越シリコーンG-330」、「信越シリコーンG-340」、「信越シリコーンG-350」、「信越シリコーンG-630」(以上、信越化学工業株式会社製)、「モリコート(登録商標)SH33L」、「モリコート(登録商標)41」、「モリコート(登録商標)44」、「モリコート(登録商標)822M」、「モリコート(登録商標)111」、「モリコート(登録商標)高真空用グリース」、「モリコート(登録商標)熱拡散コンパウンド」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
【0094】
本潤滑剤組成物に含まれる潤滑剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0095】
本潤滑剤組成物において、本共沸(様)組成物(あるいは本液体組成物)と潤滑剤の組成は特に制限されず、所望により適宜選択することができる。例えば、本潤滑剤組成物100質量%に対して、潤滑剤を0.1質量%以上50質量%以下とするが、この限りではない。
【0096】
[潤滑剤塗膜付き物品の製造方法]
本発明の実施形態の一つは、前述の本潤滑剤組成物を物品表面に塗布し、本共沸(様)組成物(あるいは本液体組成物)を揮発させることにより、物品表面に潤滑剤塗膜を形成する、潤滑剤塗膜付き物品の製造方法である。
【0097】
物品としては、金属、樹脂、エラストマー、セラミックス、ガラスなどの各種材質の物品を採用することができる。例えば、フッ素系潤滑剤が用いられる産業機器、パーソナルコンピュータやオーディオ機器におけるCDやDVDのトレー部品、プリンタ、コピー機器、フラックス機器等の家庭用機器やオフィス用機器等が挙げられる。また、シリコーン系潤滑剤が用いられる注射器の注射針やシリンダ、医療用チューブ部品等に好適に採用できる。
【0098】
本潤滑剤組成物を物品表面に塗布する方法は、特に限定されず、例えば、刷毛による塗布、スプレーによる塗布、物品を本潤滑剤用組成物に浸漬することによる塗布等が挙げられる。
【0099】
本共沸(様)組成物(または、該共沸(様)組成物を含む液体組成物もしくはエアゾール組成物)は、熱伝達媒体、反応溶媒、抽出剤、乾燥剤、冷媒等としても用いることができる。
【実施例
【0100】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0101】
<気液平衡測定>
[実施例1]
<Z-1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1223xd(Z))と1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1223za)とエタノール(EtOH))の混合物>
【0102】
[手順1]
1223xd(Z)に1223zaを添加し、1223za濃度が1.0重量%、および10重量%の1223xd(Z)/1223za溶液をそれぞれ調製した。
【0103】
[手順2]
サンプリングバルブ、攪拌子、5℃の冷媒が流せる凝縮器を備えた300三つ口フラスコに、1223xd(Z)/1223za溶液を、合計約200mL入れた。凝縮器の出口には、合成ゼオライト管を取り付けた。このフラスコをオイルバスに浸し、を攪拌しながら還流するまで加熱した。還流が開始してから、一時間以上経過して組成が安定した後、予め冷却した硝子製10mLサンプリング容器に、液相部、および液化した気相部をそれぞれ1mLサンプリングし、ガスクロマトグラフィー分析した。
【0104】
[手順3]
手順2のサンプリング後のフラスコ内に、手順1で調整したのと同じ濃度の1223xd(Z)/1223za溶液と、任意の濃度となる量のエタノール(EtOH)を加え、還流が開始してから一時間以上経過した後、予め冷却した硝子製10mLサンプリング容器に、液相部、および液化した気相部をそれぞれ1mLサンプリングし、ガスクロマトグラフィー分析した。表1における実施例1-1-1~1-1-5では、1223xd(Z)/1223za溶液として、1223za濃度1.0重量%のものを用い、実施例1-2-1~1-2-9では、1223za濃度10重量%のものを用いた。
【0105】
[手順4]
表1において、手順2および3で得られた液相部および気相部のピーク面積%による比から、予め面積%とモル%に対する検量線を作成し、面積%から導き出したモル%で示した。
【0106】
図1は、1223xd(Z)、1223zaおよびEtOHからなる実施例1の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。図1において、三角形の頂点Aは、1223xd(Z)100モル%およびEtOH 0モル%、頂点Bでは1223xd(Z)0モル%および1223za 100モル%、頂点Cは、1223za 0モル%およびEtOH 100モル%とし、表1の結果をプロットした。実施例1-1-1~1-1-5は丸印で、実施例1-2-1~1-2-9は三角印で表し、それぞれ液相部を黒塗り、気相部を白抜きで示した。
【表1】
【0107】
以上の結果から、1223xd(Z)と1223zaとEtOHの混合液体は、1223xd(Z)が65モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、EtOHが0.0001モル%~25モル%の組成範囲において、共沸(様)組成物であると判断できる。とりわけ、1223xd(Z)が75モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、EtOHが0.0001モル%~15モル%の組成範囲において、一層組成変動の起こりにくい共沸(様)組成物であると判断できる。
【0108】
[実施例2]
EtOHの代わりに、2-プロパノール(IPA)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。IPAを含有する場合の結果を表2および図2に示す。
【0109】
図2は、1223xd(Z)、1223zaおよびIPAからなる実施例1の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。図2において、三角形の頂点Aは、1223xd(Z) 100モル%およびIPA 0モル%、頂点Bでは1223xd(Z) 0モル%および1223za 100モル%、頂点Cは、1223za 0モル%およびIPA 100モル%とし、表2の結果をプロットした。実施例2-1-1~2-1-5は丸印で、実施例2-2-1~2-2-7は三角印で表し、それぞれ液相部を黒塗り、気相部を白抜きで示した。
【表2】
【0110】
以上の結果から、1223xd(Z)と1223zaとIPAの混合液体は、1223xd(Z)が65モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、IPAが0.0001モル%~25モル%の組成範囲において、共沸(様)組成物であると判断できる。とりわけ、1223xd(Z)が76モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、IPAが0.0001モル%~14モル%の組成範囲において、一層組成変動の起こりにくい共沸(様)組成物であると判断できる。
【0111】
[実施例3]
EtOHの代わりに、メタノール(MeOH)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。MeOHを用いた場合の結果を表3および図3に示した。表3においては予め作成した検量線を用いてモル%表記とした。
【0112】
図3は、1223xd(Z)、1223zaおよびMeOHからなる実施例3の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。図3において、三角形の頂点Aは、1223xd(Z) 100モル%およびMeOH 0モル%、頂点Bでは1223xd(Z) 0モル%および1223za 100モル%、頂点Cは、1223za 0モル%およびMeOH 100モル%とし、表3の結果をプロットした。実施例3-1-1~3-1-5は丸印で、実施例3-2-1~3-2-8は三角印で表し、それぞれ液相部を黒塗り、気相部を白抜きで示した。
【表3】
【0113】
実施例3の結果より、1223xd(Z)と1223zaとMeOHの混合液体は、1223xd(Z)が55モル%~76.9999モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、MeOHが23モル%~35モル%の組成範囲において、共沸(様)組成物であると判断できる。とりわけ、1223xd(Z)が58モル%~74.9999モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、MeOHが25モル%~32モル%の組成範囲において、一層組成変動の起こりにくい共沸(様)組成物であると判断できる。
【0114】
[実施例4]
EtOHの代わりに、n-プロパノール(n-PrOH)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。表4においては予め作成した検量線を用いてモル%表記とした。
【0115】
図4は、1223xd(Z)、1223zaおよびn-PrOHからなる実施例4の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。図4において、三角形の頂点Aは、1223xd(Z) 100モル%およびn-PrOH 0モル%、頂点Bでは1223xd(Z) 0モル%および1223za 100モル%、頂点Cは、1223za 0モル%およびn-PrOH 100モル%とし、表4の結果をプロットした。実施例4-1-1~4-1-5は丸印で、実施例4-2-1~4-2-7は三角印で表し、それぞれ液相部を黒塗り、気相部を白抜きで示した。
【表4】
【0116】
実施例4の結果より、1223xd(Z)と1223zaとn-PrOHの混合液体は、1223xd(Z)が70~99.9998モル%、1223zaが0.0001~10モル%、n-PrOHが0.0001~20モル%の組成範囲において、共沸(様)組成物であると判断できる。とりわけ、1223xd(Z)が76~99.9998モル%、1223zaが0.0001~10モル%、n-PrOHが0.0001~14モル%の組成範囲において、一層組成変動の起こりにくい共沸(様)組成物であると判断できる。
【0117】
[実施例5]
EtOHの代わりに、アセトンを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。表5においては予め作成した検量線を用いてモル%表記とした。
【0118】
図5は、1223xd(Z)、1223zaおよびアセトンからなる実施例5の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。図5において、三角形の頂点Aは、1223xd(Z) 100モル%およびアセトン 0モル%、頂点Bでは1223xd(Z) 0モル%および1223za 100モル%、頂点Cは、1223za 0モル%およびアセトン 100モル%とし、表5の結果をプロットした。実施例5-1-1~5-1-6は丸印で、実施例5-2-1~5-2-7は三角印で表し、それぞれ液相部を黒塗り、気相部を白抜きで示した。
【表5】
【0119】
実施例5の結果より、1223xd(Z)と1223zaとアセトンの混合液体は、1223xd(Z)が0.0001モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、アセトンが0.0001モル%~99.9998モル%の組成範囲において、共沸(様)組成物であると判断できる。
【0120】
[実施例6]
EtOHの代わりに、n-ヘキサンを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。表6においては予め作成した検量線を用いてモル%表記とした。
【0121】
図6は、1223xd(Z)、1223zaおよびn-ヘキサンからなる実施例6の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。図6において、三角形の頂点Aは、1223xd(Z) 100モル%およびn-ヘキサン 0モル%、頂点Bでは1223xd(Z) 0モル%および1223za 100モル%、頂点Cは、1223za 0モル%およびn-ヘキサン 100モル%とし、表6の結果をプロットした。実施例6-1-1~6-1-8は丸印で、実施例6-2-1~6-2-8は三角印で表し、それぞれ液相部を黒塗り、気相部を白抜きで示した。
【表6】
【0122】
実施例6の結果より、1223xd(Z)と1223zaとn-ヘキサンの混合液体は、1223xd(Z)が60モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、n-ヘキサンが0.0001モル%~30モル%の組成範囲において、共沸(様)組成物であると判断できる。とりわけ、1223xd(Z)が65モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、n-ヘキサンが0.0001モル%~25モル%の組成範囲において、一層組成変動の起こりにくい共沸(様)組成物であると判断できる。
【0123】
[実施例7]
EtOHの代わりに、ジクロロメタンを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。表7においては予め作成した検量線を用いてモル%表記とした。
【0124】
図7は、1223xd(Z)、1223zaおよびジクロロメタンからなる実施例7の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。図7において、三角形の頂点Aは、1223xd(Z) 100モル%およびジクロロメタン 0モル%、頂点Bでは1223xd(Z) 0モル%および1223za 100モル%、頂点Cは、1223za 0モル%およびジクロロメタン 100モル%とし、表7の結果をプロットした。実施例7-1-1~7-1-5は丸印で、実施例7-2-1~7-2-8は三角印で表し、それぞれ液相部を黒塗り、気相部を白抜きで示した。
【表7】
【0125】
実施例7の結果より、1223xd(Z)と1223zaとジクロロメタンの混合液体は、1223xd(Z)が0.0001モル%~25モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、ジクロロメタンが65モル%~99.9998モル%の組成範囲において、共沸(様)組成物であると判断できる。とりわけ、1223xd(Z)と1223zaとジクロロメタンの混合液体は、1223xd(Z)が0.0001モル%~15モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、ジクロロメタンが75モル%~99.9998モル%の組成範囲において、一層組成変動の起こりにくい共沸(様)組成物であると判断できる。
【0126】
[実施例8]
EtOHの代わりに、シクロペンタンを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。表8においては予め作成した検量線を用いてモル%表記とした。
【0127】
図8は、1223xd(Z)、1223zaおよびシクロペンタンからなる実施例8の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。図8において、三角形の頂点Aは、1223xd(Z) 100モル%およびシクロペンタン 0モル%、頂点Bでは1223xd(Z) 0モル%および1223za 100モル%、頂点Cは、1223za 0モル%およびシクロペンタン 100モル%とし、表8の結果をプロットした。実施例8-1-1~8-1-6は丸印で、実施例8-2-1~8-2-8は三角印で表し、それぞれ液相部を黒塗り、気相部を白抜きで示した。
【表8】
【0128】
実施例8の結果より、1223xd(Z)と1223zaとシクロペンタンの混合液体は、1223xd(Z)が0.0001モル%~60モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、シクロペンタンが30モル%~99.9998モル%の組成範囲において、共沸(様)組成物であると判断できる。とりわけ、1223xd(Z)が0.0001モル%~40モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、シクロペンタンが50モル%~99.9998モル%の組成範囲において、一層組成変動の起こりにくい共沸(様)組成物であると判断できる。
【0129】
[実施例9]
EtOHの代わりに、シクロヘキサンを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。表9においては予め作成した検量線を用いてモル%表記とした。
【0130】
図9は、1223xd(Z)、1223zaおよびシクロヘキサンからなる実施例9の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。図9において、三角形の頂点Aは、1223xd(Z) 100モル%およびシクロヘキサン 0モル%、頂点Bでは1223xd(Z) 0モル%および1223za 100モル%、頂点Cは、1223za 0モル%およびシクロヘキサン 100モル%とし、表9の結果をプロットした。実施例9-1-1~9-1-6は丸印で、実施例9-2-1~9-2-9は三角印で表し、それぞれ液相部を黒塗り、気相部を白抜きで示した。
【表9】
【0131】
実施例9の結果より、1223xd(Z)と1223zaとシクロヘキサンの混合液体は、1223xd(Z)が70モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、シクロヘキサンが0.0001モル%~20モル%の組成範囲において、共沸(様)組成物であると判断できる。とりわけ、1223xd(Z)が80モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、シクロヘキサンが0.0001モル%~10モル%の組成範囲において、一層組成変動の起こりにくい共沸(様)組成物であると判断できる。
【0132】
[実施例10]
EtOHの代わりに、HCFO-1223xd(E)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。表10においては予め作成した検量線を用いてモル%表記とした。
【0133】
図10は、1223xd(Z)、1223zaおよび1223xd(E)からなる実施例10の共沸(様)組成物の液相及び気相でのモル比を示す図である。図10において、三角形の頂点Aは、1223xd(Z) 100モル%および1223xd(E) 0モル%、頂点Bでは1223xd(Z) 0モル%および1223za 100モル%、頂点Cは、1223za 0モル%および1223xd(E) 100モル%とし、表10の結果をプロットした。実施例10-1-1~10-1-6は丸印で、実施例10-2-1~10-2-7は三角印で表し、それぞれ液相部を黒塗り、気相部を白抜きで示した。
【表10】
【0134】
実施例10の結果より、1223xd(Z)と1223zaと1223xd(E)の混合液体は、1223xd(Z)が0.0001モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、1223xd(E)が0.0001モル%~99.9998モル%の組成範囲において、共沸(様)組成物であると判断できる。とりわけ、1223xd(Z)が0.0001モル%~99.9998モル%、1223zaが0.0001モル%~10モル%、1223xd(E)が50モル%~99.9998モル%の組成範囲において、一層組成変動の起こりにくい共沸(様)組成物であると判断できる。
【0135】
<引火点測定>
日本工業規格JIS K 2265-1「引火点の求め方-第1部:タグ密閉法」に準拠して、1223xd(Z)と1223zaとエタノール(EtOH)の混合液体を調製し、引火点をそれぞれ測定した。引火点測定には、自動引火点測定器atg-8l(田中科学機器製作株式会社)を使用した。各組成における測定結果を表11に示す。
【表11】
【0136】
表11に示す通り、各組成において、大気圧力条件下で引火点がないことが観測された。このことは、当該組成において、組成物の使用環境における引火の危険性や火災時のリスクが低いことを指す。
【0137】
EtOHの代わりに、ジクロロメタンまたは1223xd(E)を用いた以外は上記と同様の操作を行った。その結果、それぞれの組成物は、実施例7、10に記載の共沸または共沸様組成物の範囲において、大気圧力条件下で引火点がないことが観測された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10