(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】リニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 41/03 20060101AFI20240111BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H02K41/03 A
H02K1/18 D
H02K1/18 B
(21)【出願番号】P 2020028748
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 章洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 瞬也
(72)【発明者】
【氏名】有賀 信雄
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-205397(JP,A)
【文献】国際公開第2018/069956(WO,A1)
【文献】国際公開第2002/027898(WO,A1)
【文献】特開2004-140901(JP,A)
【文献】特開2019-187226(JP,A)
【文献】特開平10-322940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
H02K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の固定子と、円筒形状または円柱形の可動子とを有するリニアアクチュエータであって、
固定子と、
前記固定子に対して隙間を空けて配置される可動子とを備え、
前記固定子は、ヨーク部と、
前記ヨーク部から前記可動子に向かって突出する複数のティース部とを有し、
前記ティース部は、
その基端部において前記固定子の軸方向に積層された複数の積層板を含むティース軸方向積層部と、
その先端部において前記固定子の周方向に積層された複数の積層板を含むティース周方向積層部とを有することを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
隣り合う前記ティース部の先端部間の距離は、当該隣り合う前記ティース部の基端部間の距離より小さいことを特徴とする請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記可動子が前記固定子の径方向外側に配置される場合に、前記ティース周方向積層部の軸方向における最小長さは、前記ティース軸方向積層部の軸方向長さより短いことを特徴とする請求項1または2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記可動子が前記固定子の径方向内側に配置される場合に、前記ティース軸方向積層部の少なくとも一部の軸方向長さは、前記ティース周方向積層部の軸方向長さより短いことを特徴とする請求項1または2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記ティース周方向積層部として、前記固定子の径方向に配列され且つ前記固定子の周方向に積層された複数の積層板をそれぞれ含む2以上の周方向積層部を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記ヨーク部は、
前記固定子の周方向に積層された複数の積層板を含むヨーク周方向積層部を有し、
前記ヨーク周方向積層部として、前記固定子の径方向に配列され且つ前記固定子の周方向に積層された複数の積層板をそれぞれ含む2以上の周方向積層部を有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のリニアアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子に対して移動可能に形成された可動子を備えたリニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁作用により可動子を移動させるリニアアクチュエータが知られている。リニアアクチュエータとしては、円筒形状に形成された固定子と、固定子の内部において軸方向に往復移動可能に形成された可動子とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のリニアアクチュエータでは、固定子の内壁面には、固定子鉄心が配設される。固定子鉄心は、固定子ヨーク鉄心と固定子磁極鉄心から構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、固定子の固定子磁極鉄心は、複数の電磁鋼板を軸方向に積層して形成して固定子磁極鉄心の占積率を大きくして高い性能を得ようとしているが、固定子の周方向断面において固定子磁極鉄心の形状は略長方形状となり、固定子と可動子間の隙間(ギャップ)付近のティース形状をそれ以外の形状に変えるのは困難である。よって、固定子の周方向における磁束の流れがギャップ付近のティース形状に制限され、リニアアクチュエータの性能を向上できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明に係るリニアアクチュエータは、円筒形状の固定子と、円筒形状または円柱形の可動子とを有するリニアアクチュエータであって、固定子と、前記固定子に対して隙間を空けて配置される可動子とを備え、前記固定子は、ヨーク部と、前記ヨーク部から前記可動子に向かって突出する複数のティース部とを有し、前記ティース部は、その基端部において前記固定子の軸方向に積層された複数の積層板を含むティース軸方向積層部と、その先端部において前記固定子の周方向に積層された複数の積層板を含むティース周方向積層部とを有することを特徴とする。
【0006】
これにより、複数の電磁鋼板を周方向に積層して固定子磁極鉄心を形成して、ギャップ面を有するティースの周方向断面形状を変えることで、周方向断面から見た磁束の流れを容易に変えることが可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、固定子の周方向断面から見た磁束の流れを容易に変えることで磁気的性能を向上させると共に、磁気回路として空間的な利用率が向上することにより、リニアアクチュエータの性能向上や軽量化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るリニアアクチュエータの軸方向に沿った部分断面図である。
【
図2】
図1のリニアアクチュエータの部分分解斜視図である。
【
図3】
図1のリニアアクチュエータの固定子における積層板の積層方向を示す概略図である。
【
図4】
図1のリニアアクチュエータの動作を説明する図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るリニアアクチュエータの軸方向に沿った部分断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の変形例を示す図である。
【
図7】本発明の第1実施形態の変形例を示す図である。
【
図8】本発明の第1実施形態の変形例を示す図である。
【
図9】本発明の第2実施形態の変形例を示す図である。
【
図10】本発明の第2実施形態の変形例を示す図である。
【
図11】本発明の第2実施形態の変形例を示す図である。
【
図12】本発明の第1実施形態の変形例を示す図である。
【
図13】本発明の第2実施形態の変形例を示す図である。
【
図14】本発明の第1実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
(第1実施形態)
リニアアクチュエータ1は、
図1に示すように、アウター型リニアアクチュエータであり、円筒形状に形成された固定子2と、固定子2に対して隙間(ギャップ)を空けて配置される円筒形状の可動子3とを有している。可動子3は、固定子2の径方向外側において固定子2の軸方向に往復移動可能に形成される。
【0011】
可動子3の内部には、その軸方向左端部、軸方向中央部及び軸方向右端部に配置される永久磁石5a、5b、5cを有している。具体的には、
図2に示すように、可動子3の軸方向左端部には、複数の永久磁石5aが可動子3の内側面に沿って略全周にわたって配置される。同様に、可動子3の軸方向中央部には、複数の永久磁石5bが可動子3の内側面に沿って略全周にわたって配置され、可動子3の軸方向右端部には、複数の永久磁石5cが可動子3の内側面に沿って略全周にわたって配置される。複数の永久磁石5a、5b、5cは、それぞれ平板状である。
【0012】
可動子3の軸方向左端部に配置される複数の永久磁石5aは、N極が外径側に且つS極が内径側に配置され、可動子3の軸方向中央部に配置される複数の永久磁石5bは、S極が外径側に且つN極が内径側に配置され、可動子3の軸方向右端部に配置される複数の永久磁石5cは、N極が外径側に且つS極が内径側に配置される。
【0013】
固定子2は、円筒状のヨーク部(固定子ヨーク鉄心)10と、ヨーク部10の外周部から可動子3に向かって突出する2つのティース部(固定子磁極鉄心)11、12とを有している。2つのティース部11、12は、それぞれ、固定子2の軸方向に離れて形成されると共に、ヨーク部10の全周にわたって形成される。隣り合うティース部11、12間には、コイル16が配置される。
【0014】
固定子2のティース部11、12の先端部と可動子3の内側面との間は、所定のギャップが形成される。コイル16に電流が通電されてない状態では、ティース部11の先端部の軸方向中央部は、永久磁石5aと永久磁石5bとの接続部と対向しており、ティース部12の先端部の軸方向中央部は、永久磁石5bと永久磁石5cとの接続部と対向している。
【0015】
ヨーク部10は、径方向内側に配置される第1ヨーク部10aと、第1ヨーク部10aより径方向外側に配置される第2ヨーク部10bとを含んでいる。
【0016】
第1ヨーク部10aは、固定子2の周方向に積層された複数の積層板10T1を含む第1ヨーク周方向積層部である。積層板10T1は、電磁鋼板であり、径方向外側に向かって幅が広くなる形状の略台形状の板状部材である。そのため、第1ヨーク部10aの径方向外側の幅は、2つのティース部11、12の外側端部間の距離と略同一である。複数の積層板10T1は、固定子2の軸方向に離れた2つのカシメ部10A1により接続される。
【0017】
第2ヨーク部10bは、固定子2の周方向に積層された複数の積層板10T2を含む第2ヨーク周方向積層部である。積層板10T2は、電磁鋼板であり、略長方形の板状部材である。積層板10T2の幅は、2つのティース部11、12の外側端部間の距離と略同一である。第2ヨーク部10bの径方向外側の中央部には、その全周にわたって外側に向かって突出する突部10Dが形成されている。複数の積層板10T2は、固定子2の軸方向に離れた2つのカシメ部10A2により接続される。
【0018】
ティース部11は、径方向内側に配置される第1ティース部11aと、第1ティース部11aより径方向外側に配置される第2ティース部11bとを含んでいる。
【0019】
第1ティース部11aは、ティース部11の基端部において、固定子2の軸方向に積層された複数の積層板11T1を含むティース軸方向積層部である。積層板11T1は、電磁鋼板であり、環状の板状部材である。複数の積層板11T1は、図示しないカシメ部により接続される。
【0020】
第2ティース部11bは、ティース部11の先端部において、固定子2の周方向に積層された複数の積層板11T2を含むティース周方向積層部である。積層板11T2は、電磁鋼板であり、略長方形の板状部材である。第2ティース部11bは、ティース部11のギャップ面を有している。複数の積層板11T2は、1つのカシメ部11A1により接続される。
【0021】
ティース部12は、径方向内側に配置される第1ティース部12aと、第1ティース部12aより径方向外側に配置される第2ティース部12bとを含んでいる。
【0022】
第1ティース部12aは、ティース部12の基端部において、固定子2の軸方向に積層された複数の積層板12T1を含むティース軸方向積層部である。積層板12T1は、電磁鋼板であり、環状の板状部材である。複数の積層板12T2は、図示しないカシメ部により接続される。
【0023】
第2ティース部12bは、ティース部12の先端部において、固定子2の周方向に積層された複数の積層板12T2を含むティース周方向積層部である。積層板12T2は、電磁鋼板であり、略長方形の板状部材である。第2ティース部12bは、ティース部12のギャップ面を有している。複数の積層板12T2は、1つのカシメ部12A1により接続される。
【0024】
ティース部11の周方向断面において、第2ティース部11bの軸方向に沿った最短長さtb1は、第1ティース部11aの軸方向長さta1より短い。ティース部11の基端部から先端部に向かう方向について、第2ティース部11bの長さtb2は、第1ティース部11aの長さta2より短い。同様に、ティース部12の周方向断面において、第2ティース部12bの軸方向における最小長さtb1は、第1ティース部12aの軸方向長さta1より短い。ティース部12の基端部から先端部に向かう方向について、第2ティース部12bの長さtb2は、第1ティース部12aの長さta2より短い。
【0025】
ティース部11とティース部12とは略平行に形成されており、ティース部11の先端部は、周方向断面での軸方向長さが長くなるように形成されると共に、ティース部12の先端部は、周方向断面での軸方向長さが長くなるように形成される。そのため、隣り合うティース部11、12の先端部間の距離tcは、隣り合うティース部11、12の基端部間の距離tdより小さい。ティース部11の先端部及びティース部12の先端部において、周方向断面での軸方向に沿って突出する量は、内側の方が外側より大きい。
【0026】
このように、リニアアクチュエータ1では、ヨーク部10が、第1ヨーク部10aと第2ヨーク部10bとに径方向に2分割されると共に、2つのティース部11、12が、それぞれ、第1ティース部11a、12aと第2ティース部11b、12bとに径方向に2分割されている。
【0027】
図3は、固定子2における積層板の積層方向を示す概略図である。
図3では、ティース部12の第1ティース部12a及び第2ティース部12bが図示されてないが、ティース部11の第1ティース部11a及び第2ティース部11bと同様である。固定子2において、第1ヨーク部10a、第2ヨーク部10b及び第2ティース部11b、12bでは、複数の積層板が固定子2の周方向に積層されており、第1ティース部11a、12aでは、複数の積層板が固定子2の軸方向に積層されている。
【0028】
リニアアクチュエータ1の動作について、
図4に基づいて説明する。
【0029】
リニアアクチュエータ1において、コイル16に電流を通電してない状態では、
図4(a)に示すように、永久磁石5a、可動子3、永久磁石5b、ティース部11の順に結ぶループで磁束が形成されると共に、永久磁石5c、可動子3、永久磁石5b、ティース部12の順に結ぶループで磁束が形成される。
【0030】
コイル16に電流を通電すると、
図4(b)及び
図4(c)に示すように、コイル16に流れる電流により起磁力の偏磁作用で太線の方向に周回する磁束ループが生じ、可動子3が軸方向に沿って移動する。
【0031】
また、コイル16への電流の流れの方向を変化させることにより、可動子3の推力方向が変わるため、可動子3は、ティース部11、12に対して移動する。
【0032】
以上のように、本実施形態のリニアアクチュエータ1は、固定子2と、固定子2に対して隙間を空けて配置される可動子3とを備え、固定子2は、ヨーク部10と、可動子3に向かって突出する複数のティース部11、12とを有し、ティース部11、12は、その基端部において固定子2の軸方向に積層された複数の積層板11T1、12T1をそれぞれ含むティース軸方向積層部である第1ティース部11a、12aと、その先端部において固定子2の周方向に積層された複数の積層板11T2、12T2をそれぞれ含むティース周方向積層部である第2ティース部11b、12bとを有する。
【0033】
これにより、本実施形態のリニアアクチュエータ1では、ティース部11、12の先端部が、積層板11T2、12T2を固定子2の周方向に積層して形成されており、積層板11T2、12T2の形状を変化させることにより、ティース部11、12の先端部の周方向断面形状を容易に変化させることができる。それにより、ティース部11、12の周方向断面から見た磁束の軸方向成分を、所望の可動子の位置や推力やディテント力(磁気的なバネ力)に応じて変更でき、リニアアクチュエータ1の性能を向上させることができる。また、ティース部11、12の基端部が、複数の積層板11T1、12T1を固定子2の軸方向に積層して形成されることで、ティース部11、12の先端部が径方向内径と径方向外径の差によって径方向外側面の磁路断面積が小さくなることに伴う磁気抵抗の増加を抑制し、磁気回路として空間的な利用率の向上による磁束の軸方向成分の鉄損を抑制できるため、推力特性やリニアアクチュエータの体積利用率が向上する。よって、リニアアクチュエータ1の小型化及び軽量化が可能である。
【0034】
本実施形態のリニアアクチュエータ1において、隣り合うティース部11、12の先端部間の距離tcは、隣り合うティース部11、12の基端部間の距離tdより小さい。
【0035】
これにより、本実施形態のリニアアクチュエータ1では、ティース部11、12の先端部の軸方向長さを長くすることで、可動子3は磁極ピッチを小さくでき、軸方向長さを短くできる。よって、リニアアクチュエータ1の小型化及び軽量化が可能である。
【0036】
本実施形態のリニアアクチュエータ1において、可動子3が固定子2の径方向外側に配置される場合に、ティース周方向積層部である第2ティース部11b、12bの軸方向における最小長さtb1は、ティース軸方向積層部である第1ティース部11a、12aの軸方向長さta1より短い。
【0037】
これにより、本実施形態のリニアアクチュエータ1では、アウター型リニアアクチュエータのティース部11、12において、ティース軸方向積層部である第1ティース部11a、12aに対してティース周方向積層部である第1ティース部11a、12aの軸方向長さを短くして、第1ティース部11a、12aと第2ティース部11b、12bの接触面の軸方向長さを、第2ティース部11b、12bの先端部の軸方向における最小長さtb1よりも長くすることにより、第1ティース部11a、12aにおいて径方向内側に近づくほど磁路断面積が小さくなることに伴う磁束飽和を低減でき、推力飽和による性能低下を抑制できる。よって、従来よりも磁気飽和が緩和し、最大推力の向上や推力密度の増加により、リニアアクチュエータ1の小型化及び軽量化が可能である。
【0038】
本実施形態のリニアアクチュエータ1において、ヨーク部10は、固定子2の周方向に積層された複数の積層板を含むヨーク周方向積層部を有し、ヨーク周方向積層部として、固定子2の径方向に配列され且つ固定子2の周方向に積層された複数の積層板をそれぞれ含む2つの周方向積層部である第2ヨーク部10a、10bを有する。
【0039】
これにより、本実施形態のリニアアクチュエータ1では、ヨーク部10が、周方向積層部である第1ヨーク部10a及び第2ヨーク部10bで2分割された構成により、ヨーク部10の径方向内径と径方向外径の差によって径方向外側面の磁路断面積が小さくなることに伴う磁気抵抗の増加や占積率の低下を抑制でき、推力特性やリニアアクチュエータ1の体積利用率が向上する。よって、リニアアクチュエータ1の小型化及び軽量化が可能である。
【0040】
(第2実施形態)
本実施形態のリニアアクチュエータ101と第1実施形態のリニアアクチュエータ1とが異なる点は、リニアアクチュエータ1は、アウター型リニアアクチュエータであるのに対し、リニアアクチュエータ101は、インナー型リニアアクチュエータである点である。
【0041】
リニアアクチュエータ101は、
図5に示すように、インナー型リニアアクチュエータであり、円筒形状に形成された固定子102と、固定子102に対してギャップを空けて配置される円柱形状の可動子103とを有している。可動子103は、固定子102の径方向内側において固定子102の軸方向に往復移動可能に形成される。
【0042】
可動子103の内部には、その軸方向左端部、軸方向中央部及び軸方向右端部に配置される複数の永久磁石105a、105b、105cを有している。具体的には、可動子103の軸方向左端部には、複数の永久磁石105aが可動子103の外側面に沿って略全周にわたって配置される。同様に、可動子103の軸方向中央部には、複数の永久磁石105bが可動子103の外側面に沿って略全周にわたって配置され、可動子103の軸方向右端部には、複数の永久磁石105cが可動子103の外側面に沿って略全周にわたって配置される。複数の永久磁石105a、105b、105cは、それぞれ平板状である。
【0043】
可動子103の軸方向左端部に配置される複数の永久磁石105aは、N極が外径側に且つS極が内径側に配置され、可動子103の軸方向中央部に配置される複数の永久磁石105bは、S極が外径側に且つN極が内径側に配置され、可動子103の軸方向右端部に配置される複数の永久磁石105cは、N極が外径側に且つS極が内径側に配置される。
【0044】
固定子102は、円筒状のヨーク部(固定子ヨーク鉄心)110と、ヨーク部110の内側部から可動子103に向かって突出する2つのティース部(固定子磁極鉄心)111、112とを有している。2つのティース部111、112は、それぞれ、固定子102の軸方向に離れて形成されると共に、ヨーク部110の全周にわたって形成される。隣り合うティース部111、112間には、コイル116が配置される。
【0045】
固定子102のティース部111、112の先端部と可動子103の内側面との間は、所定のギャップが形成される。コイル116に電流が通電されてない状態では、ティース部111の先端部の軸方向中央部は、永久磁石105aと永久磁石105bとの接続部と対向しており、ティース部112の先端部の軸方向中央部は、永久磁石105bと永久磁石105cとの接続部と対向している。
【0046】
ヨーク部110は、固定子102の周方向に積層された複数の積層板110T1を含むヨーク周方向積層部である。積層板110T1は、略長方形の板状部材であり、その幅は、2つのティース部111、112の外側端部間の距離と略同一である。ヨーク部110の径方向内側の中央部には、その全周にわたって内側に向かって突出する突部110Dが形成されている。複数の積層板110T1は、固定子102の軸方向に離れた2つのカシメ部110A1により接続される。
【0047】
ティース部111は、径方向外側に配置される第1ティース部111aと、第1ティース部111aより径方向内側に配置される第2ティース部111bとを含んでいる。
【0048】
第1ティース部111aは、ティース部111の基端部において、固定子102の軸方向に積層された複数の積層板111T1を含むティース軸方向積層部である。積層板111T1は、環状の板状部材である。複数の積層板111T1は、図示しないカシメ部により接続される。
【0049】
第2ティース部111bは、ティース部111の先端部において、固定子102の周方向に積層された複数の積層板111T
2を含む周方向積層部である。積層板111T
2は、
図5に示すように、略長方形の板状部材である。第2ティース部111bは、ティース部111のギャップ面を有している。複数の積層板111T
2は、1つのカシメ部111A
1により接続される。
【0050】
ティース部112は、径方向外側に配置される第1ティース部112aと、第1ティース部111aより径方向内側に配置される第2ティース部112bとを含んでいる。
【0051】
第1ティース部112aは、ティース部112の基端部において、固定子102の軸方向に積層された複数の積層板112T1を含む軸方向積層部である。積層板112T1は、環状の板状部材である。複数の積層板112T1は、図示しないカシメ部により接続される。
【0052】
第2ティース部112bは、ティース部112の先端部において、固定子102の周方向に積層された複数の積層板112T
2を含むティース周方向積層部である。積層板112T
2は、
図5に示すように、略長方形の板状部材である。第2ティース部112bは、ティース部112のギャップ面を有している。複数の積層板112T
2は、1つのカシメ部112A
1により接続される。
【0053】
ティース部111の周方向断面において、第1ティース部111aの軸方向長さta1’は、第2ティース部111bの軸方向における最小長さtb1’より短い。ティース部111の基端部から先端部に向かう方向について、第2ティース部111bの長さta2’は、第1ティース部111aの長さtb2’より短い。同様に、ティース部112の周方向断面において、第1ティース部112aの軸方向長さta1’は、第2ティース部112bの軸方向における最小長さtb1’より短い。ティース部112の基端部から先端部に向かう方向について、第2ティース部112bの長さta2’は、第1ティース部112aの長さtb2’より短い。
【0054】
ティース部111とティース部112とは略平行に形成されており、ティース部111の先端部は、周方向断面での軸方向長さが長くなるように形成されると共に、ティース部112の先端部は、周方向断面での軸方向長さが長くなるように形成される。そのため、隣り合うティース部111、112の先端部間の距離tc’は、隣り合うティース部111、112の基端部間の距離td’より小さい。ティース部111の先端部及びティース部112の先端部において、周方向断面での軸方向に沿って突出する量は、内側の方が外側より大きい。
【0055】
このように、リニアアクチュエータ101では、2つのティース部111、112が、それぞれ、第1ティース部111a、112aと第2ティース部111b、112bとに径方向に2分割されている。
【0056】
固定子102において、第1ティース111a、112aでは、複数の積層板111T1、112T1が固定子102の軸方向に積層されており、第2ティース部111b、112bでは、複数の積層板111T2、112T2が固定子102の周方向に積層されている。
【0057】
リニアアクチュエータ101の動作は、第1実施形態のリニアアクチュエータ1の動作と同様であり、その詳細説明は省略するが、コイル116への電流の流れの方向を変化させることにより、可動子103の推力方向が変わるため、可動子103は、ティース部111、112に対して移動する。
【0058】
以上のように、本実施形態のリニアアクチュエータ101は、固定子102と、固定子102に対して隙間を空けて配置される可動子103とを備え、固定子102は、ヨーク部110と、可動子103に向かって突出する複数のティース部111、112とを有し、ティース部111、112は、その基端部において固定子102の軸方向に積層された複数の積層板111T1、112T1を含むティース軸方向積層部である第1ティース部111a、112aと、その先端部において固定子102の周方向に積層された複数の積層板111T2、112T2を含むティース周方向積層部である第2ティース部111b、112bとを有する。
【0059】
これにより、本実施形態のリニアアクチュエータ101では、第1実施形態のリニアアクチュエータ1と同様に、ティース部111、112の先端部の周方向断面形状を変化させることにより、ティース部111、112の周方向断面から見た磁束の軸方向成分を、所望の可動子の位置や推力やディテント力(磁気的なバネ力)に応じて変更でき、リニアアクチュエータ101の性能を向上させることができる。また、ティース部111、112の基端部が、複数の積層板111T1、112T1を固定子102の軸方向に積層して形成されることで、ティース部111、112の先端部が径方向内径と径方向外径の差によって径方向外側面の磁路断面積が小さくなることに伴う磁気抵抗の増加を抑制し、磁気回路として空間的な利用率の向上による磁束の軸方向成分の鉄損を抑制できるため、推力特性やリニアアクチュエータの体積利用率が向上する。よって、リニアアクチュエータ101の小型化及び軽量化が可能である。
【0060】
本実施形態のリニアアクチュエータ101において、隣り合うティース111、112部の先端部間の距離tc’は、隣り合うティース部111、112の基端部間の距離td’より小さい。
【0061】
これにより、本実施形態のリニアアクチュエータ101では、第1実施形態のリニアアクチュエータ1と同様に、ティース部111、112の先端部の軸方向長さを長くすることで、ティース部111、112の磁極ピッチが小さくすることができ、固定子102の占積率が向上する。よって、リニアアクチュエータ101の小型化及び軽量化が可能である。
【0062】
本実施形態のリニアアクチュエータ101において、可動子103が固定子102の径方向外側に配置される場合に、ティース軸方向積層部である第1ティース部111a、112aの軸方向長さta1’は、ティース周方向積層部である第2ティース部111b、112bの軸方向における最小長さtb1’より短い。
【0063】
これにより、本実施形態のリニアアクチュエータ101では、インナー型リニアアクチュエータのティース部111、112において、ティース軸方向積層部である第1ティース部111a、112aの軸方向長さta1’を、ティース周方向積層部である第ティース部111b、112bの軸方向における最小長さtb1’より短くすることにより、第1ティース部111a、112aにおいて径方向内側に近づくほど磁路断面積が小さくなることに伴う磁束飽和を低減でき、推力飽和による性能低下を抑制できる。よって、推力密度が向上してリニアアクチュエータ1の小型化及び軽量化が可能である。
【0064】
なお、具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0065】
例えば、上記第1実施形態のアウター型リニアアクチュエータにおいて、ティース部11とティース部12の形状は対称形状であるが、それに限られない。
【0066】
上記第1実施形態のアウター型リニアアクチュエータにおいて、ティース部11、12の形状は、任意である。以下、ティース部11の形状について説明するが、ティース部12の形状についても同様である。
図6~
図13では、固定子のティース部の形状を分かり易くするため、固定子の周方向断面の中心線(一点鎖線)に対して片側の部分のみを可動子と固定子の距離間に関係なく図示している。
【0067】
上記第1実施形態において、
図6(a)に示すように、ティース部11の先端部は、周方向断面での軸方向長さが長くなるように形成されてなくてよい。
【0068】
上記第1実施形態において、
図6(b)に示すように、ティース部11は、径方向に3分割されてよい。ティース部11は、固定子の軸方向に積層された複数の積層板を含むティース軸方向積層部である第1ティース部11aと、固定子の周方向に積層された複数の積層板を含むティース周方向積層部である第2ティース部11b
1及び11b
2とを有している。
【0069】
このようにして、本実施形態のリニアアクチュエータ1において、ティース周方向積層部として、固定子2の径方向に配列され且つ固定子2の周方向に積層された複数の積層板をそれぞれ含む2つの周方向積層部である第2ティース部11b1及び11b2を有するとともに、ティース周方向積層部として、固定子2の径方向に配列され且つ固定子2の周方向に積層された複数の積層板をそれぞれ含む2つの周方向積層部である第2ティース部12b1及び12b2を有している。
【0070】
これにより、本実施形態のリニアアクチュエータ1では、第2ティース部11b1及び11b2の占積率を高くすることにより、リニアアクチュエータ1の小型化及び軽量化が可能である。
【0071】
上記第1実施形態において、
図6(c)に示すように、第1ティース部11aの先端部は、周方向断面での軸方向長さが長くなるように片側に突出するように形成されてよい。
【0072】
上記第1実施形態において、
図7(a)に示すように、第1ティース部11aの先端部において軸方向に突出する量が、外側の方が内側より大きくなるように形成されてよい。
【0073】
上記第1実施形態において、
図7(b)に示すように、第1ティース部11aの先端部がその先端に向かって周方向断面での軸方向長さが長くなると共に、第1ティース部11aの基端部がその基端に向かって周方向断面での軸方向長さが長くなるように形成されてよい。
【0074】
上記第1実施形態において、
図7(c)及び
図8(a)に示すように、ティース部11の基端部から先端部に向かう方向について、第2ティース部11bの長さは、第1ティース部11aの長さより長くなるように形成されてよい。
【0075】
上記第1実施形態において、
図8(b)に示すように、第1ティース部11aのティース部12と反対側端部が、面状に形成されずに、その一部に凹部が形成されてよい。
【0076】
上記第1実施形態において、
図8(c)に示すように、第1ティース部11aのティース部12と反対側端部の先端部に切欠きが形成されてよい。この場合、可動子3が固定子2の径方向外側に配置されると、ティース周方向積層部である第2ティース部11bの軸方向における最小長さt
b1は、ティース先端長さになるが、リニアアクチュエータ1の要求される性能に応じて長さt
bを設定してよい。
【0077】
上記第1実施形態では、ヨーク部10が、第1ヨーク部10aと第2ヨーク部10bとに径方向に2分割されると共に、ティース部11、12が、それぞれ、第1ティース部11a、12aと第2ティース部11b、12bとに径方向に2分割されているが、それに限られない。例えば、ヨーク部10は、分割されなくてよいし、3以上に分割されてよい。ティース部11、12は、3以上に分割されてよい。
【0078】
上記第2実施形態のインナー型リニアアクチュエータにおいて、ティース部111とティース部112の形状は対称形状であるが、それに限られない
【0079】
上記第2実施形態のインナー型リニアアクチュエータにおいて、ティース部111、112の形状は、任意である。以下、ティース部111の形状について説明するが、ティース部112の形状についても同様である。
【0080】
上記第2実施形態において、
図9(a)に示すように、第2ティース部111bの先端部は、周方向断面での軸方向長さが長くなるように形成されてなくてよい。
【0081】
上記第2実施形態において、
図9(b)に示すように、第2ティース部111bの先端部は、周方向断面での軸方向長さが長くなるように片側に突出するように形成されてよい。
【0082】
上記第2実施形態において、
図9(c)に示すように、第2ティース部111bの先端部において軸方向に突出する量が、外側の方が内側より大きくなるように形成されてよい。この場合、可動子103が固定子102の径方向内側に配置されると、ティース軸方向積層部である第1ティース部111aの軸方向長さt
a1’は、ティース周方向積層部である第2ティース部111bの軸方向における最小長さt
b1’と同等になるが、リニアアクチュエータ101の要求される性能に応じて同等に設定してよい。
【0083】
上記第2実施形態において、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、ティース部111の基端部から先端部に向かう方向について、第2ティース部111bの長さは、第1ティース部111aの長さより長くなるように形成されてよい。
【0084】
上記第2実施形態において、
図10(c)及び
図11(a)に示すように、第2ティース部111bのティース部112と反対側端部が、面状に形成されずに、その一部に突出部や凹部が形成されてよい。また、
図11(a)の場合、可動子103が固定子102の径方向内側に配置されると、ティース軸方向積層部である第1ティース部111aの軸方向長さt
a1’は、ティース周方向積層部である第2ティース部111bの軸方向における最小長さt
b1’より長くなるが、リニアアクチュエータ101の要求される性能に応じて設定してよい。
【0085】
上記第2実施形態において、
図11(b)に示すように、第2ティース部111bのティース部112と反対側端部の先端部に切欠きが形成されてよい。
【0086】
上記第2実施形態では、ティース部111、112が、それぞれ、第1ティース部111a、112aと第2ティース部111b、112bとに径方向に2分割されているが、それに限られない。ティース部111、112は、3以上に分割されてよい。ヨーク部110は、径方向に分割されないが、ヨーク部110が、径方向に2以上に分割されてよい。
【0087】
上記第1実施形態では、2つのティース部11、12を有する固定子2について説明したが、固定子2のティース部の数は、3以上の任意の数でよい。例えば、
図12に示すように、2つのティース部11、12の間に配置されたティース部16を有してよい。ティース部16は、その基端部において固定子2の軸方向に積層された複数の積層板を含むティース軸方向積層部である第1ティース部16aと、その先端部において固定子2の周方向に積層された複数の積層板を含むティース周方向積層部である第2ティース部16bとを有している。
【0088】
上記第2実施形態では、2つのティース部111、112を有する固定子102について説明したが、固定子102のティース部の数は、3以上の任意の数でよい。例えば、
図13に示すように、2つのティース部111、112の間に配置されたティース部116を有してよい。ティース部116は、その基端部において固定子102の軸方向に積層された複数の積層板を含むティース軸方向積層部である第1ティース部116aと、その先端部において固定子102の周方向に積層された複数の積層板を含むティース周方向積層部である第2ティース部116bとを有している。
【0089】
上記第1実施形態では、固定子2において、第1ヨーク部10a、第2ヨーク部10b、第1ティース部11a、12a及び第2ティース部11b、12bは、複数の積層板が機械的変形を伴うカシメ部により接続されて形成されるが、複数の積層板の接続方法は、それに限られない。同様に、上記第2実施形態では、固定子102において、ヨーク部110、第1ティース部111a、112a及び第2ティース部111b、112bは、複数の積層板が機械的変形を伴うカシメ部により接続されて形成されるが、複数の積層板の接続方法は、それに限られない。ヨーク部10を形成する複数の積層板及びティース部11を形成する複数の積層板は、例えば接着やレーザなどにより接合される接合部により接続されてよい。
【0090】
上記実施形態では、可動子3の内部に、平板状の永久磁石5a、5b、5cが配置されているが、可動子3の内部に配置される永久磁石の形状は、平板状に限らず、円筒状や扇型状、瓦型状など任意である。
【0091】
上記実施形態において、例えば、
図14に示すように、固定子2の第2ティース部11bの径方向外側に、コイル16を配線する為の切欠き11cを形成してもよい。コイル16を切欠き11cに収納して軸方向に配線することにより、リニアアクチュエータ1の小型化が可能である。
【0092】
上記実施形態において、例えば、
図14に示すように、固定子2の第2ティース部11bの径方向外側を樹脂等によるコーティングや強化繊維シート等で保護部Sを形成してもよい。これにより、第2ティース部11bの接合強度が弱い場合でも、リニアアクチュエータ1の堅牢性が向上する。
【符号の説明】
【0093】
1 リニアアクチュエータ
2 固定子
3 可動子
10 ヨーク部
10a 第1ヨーク部(ヨーク周方向積層部)
10b 第2ヨーク部(ヨーク周方向積層部)
10T1、10T2 積層板
10A1、10A2 カシメ部
11 ティース部
11a 第1ティース部(ティース軸方向積層部)
11b 第2ティース部(ティース周方向積層部)
11T1、11T2 積層板
12 ティース部
12a 第1ティース部(ティース軸方向積層部)
12b 第2ティース部(ティース周方向積層部)
12T1、12T2 積層板
16 コイル
101 リニアアクチュエータ
102 固定子
103 可動子
110 ヨーク部(ヨーク周方向積層部)
110T1 積層板
111 ティース部
111a 第1ティース部(ティース軸方向積層部)
111b 第2ティース部(ティース周方向積層部)
111T1、111T2 積層板
112 ティース部
112a 第1ティース部(ティース軸方向積層部)
112b 第2ティース部(ティース周方向積層部)
112T1、112T2 積層板
116 コイル