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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】制御装置および出力制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/67 20060101AFI20240111BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240111BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G05F1/67 A
H02J1/00 306B
H02M3/00 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020051134
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021149799
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】加茂 章太郎
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-175888(JP,A)
【文献】特開平08-317664(JP,A)
【文献】特開2014-007929(JP,A)
【文献】特開2005-224009(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0265567(US,A1)
【文献】特開2013-183578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/67
H02J 1/00
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルのパネル出力を変換して直流母線に直流電力を出力する変換装置を制御する制御装置であって、
通常時には、前記太陽電池パネルのパネル電圧が、前記パネル出力が最大となる最大電力電圧となるように、前記変換装置を制御し、
前記直流母線の母線電圧が定常値から上昇した場合には、前記パネル電圧が、前記母線電圧の前記定常値からの上昇分に応じた電圧値である変動抑制電圧を前記最大電力電圧に加算した値となるように、前記変換装置を制御し、
前記変動抑制電圧をVc、前記太陽電池パネルの公称最大電力電圧をVn、前記母線電圧の前記定常値からの上昇量をk、前記最大電力電圧に対する、前記太陽電池パネルの開放電圧と前記最大電力電圧との差をαとした場合、前記変動抑制電圧は以下の式(1)で表されることを特徴とする、制御装置。
Vc=k×α×Vn ・・・(1)
【請求項2】
前記太陽電池パネルのパネル温度に依存しない値として前記変動抑制電圧を算出することを特徴とする、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記母線電圧の前記定常値からの上昇分に比例する値として前記変動抑制電圧を算出することを特徴とする、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
太陽電池パネルのパネル出力を変換して直流母線に直流電力を出力する変換装置を制御する制御装置であって、
通常時には、前記太陽電池パネルのパネル電圧が、前記パネル出力が最大となる最大電力電圧となるように、前記変換装置を制御し、
前記直流母線の母線電圧が定常値から上昇した場合には、前記パネル電圧が、前記母線電圧の前記定常値からの上昇分に応じた電圧値である変動抑制電圧を前記最大電力電圧に加算した値となるように、前記変換装置を制御し、
前記パネル電圧の制御目標値の最大を、前記最大電力電圧に、前記太陽電池パネルの所定のパネル温度における前記最大電力電圧と開放電圧との差電圧を加算した値として、前記変換装置を制御することを特徴とする、制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置と、
前記変換装置と、を備えることを特徴とする、出力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流配電システムに含まれる太陽電池パネルの出力を変換する変換装置を制御する制御装置、および当該制御装置を備える出力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、負荷に電力を供給する母線における母線電圧を規定値以下としつつ、負荷に対する入力電力を最大にできるような出力電力抑制を行う制出力御装置が開示されている。当該出力制御装置は、太陽電池パネルごとに発電される最大の電力が入力されるように入力電力を調節して母線へ出力する第1の制御を行う。当該出力制御装置は、母線電圧が第1の基準電圧以上のときは、各入力電力の所定の割合に対応する調節量で当該入力電力を減少させる第2の制御に切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-183578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の出力制御装置では、母線電圧の変動に対する、太陽電池パネルのパネル電圧の応答時間が秒単位の長さとなる。これに対し、負荷に直流電力を配電する直流配電システムにおいては、応答時間を高速化(例えば0.1秒単位の長さ)し、直流母線電圧の変動をより高速に抑制する必要がある。
【0005】
本発明の一態様は、直流母線電圧の変動を高速に抑制できる制御装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御装置は、太陽電池パネルのパネル出力を変換して直流母線に直流電力を出力する変換装置を制御する制御装置であって、通常時には、前記太陽電池パネルのパネル電圧が、前記パネル出力が最大となる最大電力電圧となるように、前記変換装置を制御し、前記直流母線の母線電圧が定常値から上昇した場合には、前記パネル電圧が、前記母線電圧の前記定常値からの上昇分に応じた電圧値である変動抑制電圧を前記最大電力電圧に加算した値となるように、前記変換装置を制御する。
【0007】
本発明の各態様に係る制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記制御装置をコンピュータにて実現させる制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係る制御装置によれば、直流母線電圧の変動を高速に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る出力制御装置が適用される直流配電システムの構成を示す図である。
図2】実施形態1に係るDC-DCコンバータの構成を示す図である。
図3】太陽電池パネルのパネル温度と、開放電圧、MPPT電圧、Vom、およびαの値との関係の一例を示す表である。
図4図3に示した例とは別の太陽電池パネルについて、開放電圧、MPPT電圧、Vom、およびαの値の例を示す表である。
図5】太陽電池パネルの特性とDC-DCコンバータによる制御との関係を示すグラフである。
図6】実施形態2に係るDC-DCコンバータの構成を示す図である。
図7】ΔV算出部の構成の一例を示す図である。
図8】実施形態1に係る直流配電システム、および実施形態2に係る直流配電システムのそれぞれにおいて、負荷の急激な変動が生じた場合における、電圧および電流の変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態1に係る出力制御装置が適用される直流配電システム1の構成を示す図である。図1に示すように、直流配電システム1は、商用電源10、蓄電池20、太陽電池パネル30、直流母線50および直流負荷60を備える。また、直流配電システム1は、直流母線50の母線電圧(直流母線電圧)を検出する直流母線電圧検出器(不図示)を備える。また、直流配電システム1は、太陽電池パネル30の出力電圧(パネル電圧)を検出するパネル電圧検出器(不図示)、および、太陽電池パネル30の出力電流(パネル電流)を検出するパネル電流検出器(不図示)を備える。
【0012】
商用電源10は、直流母線50に対してAC(Alternating Current)により電力を供給する。商用電源10は、変圧器11、AC-DC(Direct Current)コンバータ12、およびブレーカー13を介して直流母線50に接続される。変圧器11は、商用電源10から入力されるACの電圧を変圧する。AC-DCコンバータ12は、変圧器11から入力されるACをDCに変換して出力する。ブレーカー13は、AC-DCコンバータ12から出力されるDCの電流が過大になった場合に、AC-DCコンバータ12と直流母線50との間を遮断する。
【0013】
直流母線50は、商用電源10、蓄電池20、および太陽電池パネル30から供給される電力を直流負荷60へ供給する電力線である。図1に示す例では、直流負荷60として、2つの負荷61および62が示されている。ただし、直流配電システム1における直流負荷60の数は、1または3以上であってもよい。
【0014】
蓄電池20は、電力を内部にエネルギーとして保持し、保持したエネルギーを必要に応じてDCにより直流母線50へ供給する。蓄電池20は、ブレーカー21およびDC-DCコンバータ22を介して直流母線50に接続されていてもよい。
【0015】
蓄電池20は、リチウムイオン電池、NaS(ナトリウム・硫黄)電池、レドックスフロー電池、鉛蓄電池等の、2次電池を備えた装置であり得る。しかし蓄電池20は2次電池を備えた装置に限られるものではない。蓄電池20として、キャパシタ、超伝導電力貯蔵ユニット、フライホイール式電力貯蔵ユニット、圧縮空気式電力貯蔵ユニットなど、電気エネルギーを貯蔵する機能を備えた任意のユニットを用いることができる。
【0016】
太陽電池パネル30は、太陽光の日射量に応じて発電した電力をDCにより直流母線50へ供給する。太陽電池パネル30は、DC-DCコンバータ40を介して直流母線50に接続される。DC-DCコンバータ40(出力制御装置)は、太陽電池パネル30から入力されるDCの電圧を変換して出力する。DC-DCコンバータ40の具体的な構成については後述する。
【0017】
図3は、太陽電池パネル30のパネル温度と、開放電圧、MPPT(Maximum Power Point Tracking)電圧(最大電力電圧)、Vom(=開放電圧-MPPT電圧)、およびα(=Vom/公称MPPT電圧)の値との関係の一例を示す表である。MPPT電圧とは、太陽電池パネル30のパネル出力が最大となるパネル電圧である。開放電圧とは、MPPT電圧を超えてパネル電圧を上昇させた場合に、太陽電池パネル30のパネル出力が0になる電圧である。
【0018】
太陽電池パネル30のパネル電圧が0である場合には、パネル出力は0である。パネル電圧の上昇に伴い、パネル出力も上昇する。パネル電圧がMPPT電圧である場合において、パネル出力は最大となる。パネル電圧がMPPT電圧を超えると、パネル電圧の上昇に伴い、パネル出力は低下する。パネル電圧が所定の開放電圧になると、パネル出力は0となる。開放電圧を超えてパネル電圧を上昇させても、パネル出力は0のままである。
【0019】
公称MPPT電圧とは、所定のパネル温度におけるMPPT電圧であり、太陽電池パネル30の種類およびサイズなどに応じた既知の値である。所定の温度は例えば25℃である。図3においては公称MPPT電圧を網掛けで示している。
【0020】
図3に示すように、パネル温度の上昇に伴い、開放電圧およびMPPT電圧は低下する。一方で、パネル温度の上昇に伴い、Vomおよびαの値は上昇する。しかしながら、その上昇の幅は、開放電圧およびMPPT電圧の低下の幅と比較すると小さい。特に、αの値については、上昇の幅が極めて小さいため、略一定とみなすことができる。
【0021】
図4は、図3に示した例とは別の太陽電池パネル30について、開放電圧、MPPT電圧、Vom、およびαの値の例を示す表である。図4には、4種の太陽電池パネル30についての例が示されている。図4に示したいずれの例においても、開放電圧、MPPT電圧、およびVomの値は、図3に示した例における値とは大きく異なっている。一方で、αの値は、図4に示したいずれの例においても、図3に示した例における値と大きくは変わらない。
【0022】
図5は、太陽電池パネル30の特性とDC-DCコンバータ40による制御との関係を示すグラフである。図5においては、太陽電池パネル30のパネル電圧とパネル出力との関係が符号5001に示されている。符号5001において、横軸はパネル電圧、縦軸はパネル出力を示す。また、図5においては、直流母線50における直流母線電圧とDC-DCコンバータ40における変動抑制電圧との関係が符号5002に示されている。符号5002において、横軸は直流母線電圧、縦軸は変動抑制電圧を示す。変動抑制電圧については後述する。
【0023】
後述するが、DC-DCコンバータ40は、太陽電池パネル30のパネル出力を変換して直流母線50に直流電力を出力する変換部42(変換装置)と、変換部42を制御する制御部41(制御装置)と、を備える(図2参照)。DC-DCコンバータ40において、制御部41は、通常時には、パネル電圧がMPPT電圧となるように、変換部42を制御する。通常時とは、直流母線電圧が定常値である場合である。この場合には、制御部41は、公知のMPPT制御によりパネル電圧をMPPT電圧に維持させる。
【0024】
一方、制御部41は、直流母線電圧が定常値から上昇した場合には、パネル電圧が、変動抑制電圧をMPPT電圧に加算した値となるように、変換部42を制御する。すなわち、パネル電圧をVp、太陽電池パネル30のMPPT電圧をVmppt、変動抑制電圧をVcとすると、制御部41は、Vpを下記式(1)により算出する。
Vp=Vmppt+Vc ・・・(1)
変動抑制電圧は、直流母線電圧の定常値からの上昇分に応じた電圧値である。
【0025】
実施形態1において、制御部41は、変動抑制電圧Vcの値を、下記式(2)により算出する。
Vc=k×α×Vn ・・・(2)
Vnは公称MPPT電圧を示す。kの値は、直流母線電圧の定常値からの上昇量を示すものである。kの値は、直流母線電圧の上昇に伴って増大する。変動抑制電圧が増大すると、パネル電圧がMPPT電圧から上昇するため、パネル出力が低下する。例えば図5に示すように、直流母線電圧の定常値からの上昇分に応じたkの値をk1とした場合、変動抑制電圧Vcはk1×α×Vnとなる。このため、制御部41は、パネル電圧を、MPPT電圧Vmpptからk1×α×Vnだけ増加させた値とする。
【0026】
直流母線電圧には、太陽電池パネル30からの電力供給が不要となる電圧である上限電圧が設定されている。制御部41は、kの値を、例えば直流母線電圧が定常値である場合に0、直流母線電圧が上限電圧に到達した場合に1となるように、直流母線電圧の上昇量に比例する値として算出する。直流母線電圧が上限電圧に到達した場合には、変動抑制電圧Vcはα×Vn、すなわちVomとなる。この場合、パネル電圧は開放電圧となり、パネル出力は0となる。
【0027】
このように、制御部41は、太陽電池パネル30のパネル電圧を、直流母線電圧の上昇分に応じた変動抑制電圧をMPPT電圧に加算した値とすることで、パネル出力を減少させ、直流母線電圧の変動を抑制できる。パネル電圧をこのように決定することで、パネル出力の変化を測定しながらパネル電圧を変動させていく場合と比較して、直流母線電圧の変動を高速に抑制できる。
【0028】
図3および図4に示したように、実際のαの値は完全に一定というわけではなく、パネルの種類および温度といった条件に応じて若干の変動を示す。一方で、開放電圧においては、パネル出力が確実に0である必要がある。このため、制御部41において変動抑制電圧の算出に用いられるαの値は、DC-DCコンバータ40の設計段階において、想定される条件におけるαの最大値、またはその近傍の値に予め決定されていることが好ましい。例えば図3に示した太陽電池パネル30を、図3に示した温度範囲(-10℃~70℃)で使用する場合には、αの値は0.24程度に決定されていることが好ましい。
【0029】
αの値をこのように決定することで、制御部41は、太陽電池パネル30のパネル温度に依存しない値として変動抑制電圧Vcを算出する。したがって、直流母線電圧が急激に上昇し、DC-DCコンバータ40の出力を0にする必要が生じた場合には、パネル温度に関わらず、パネル出力を確実に0にすることができる。
【0030】
また、上記の式では、αおよびVnはともに定数であるため、制御部41は、直流母線電圧の定常値からの上昇分に比例する値として変動抑制電圧Vcを算出する。したがって、制御部41における制御を、簡易なものとすることができる。
【0031】
また、制御部41は、制御部41によるパネル電圧の制御目標値の最大値を、MPPT電圧に、公称MPPT電圧と、太陽電池パネル30のMPPT電圧が公称MPPT電圧となる温度における開放電圧との差電圧を加算した値として変換部42を制御する。上述したとおり、αの値は太陽電池パネル30によらず略一定である。このため、ここでいう差電圧は、上記のVom=α×Vnに等しい。この結果、制御部41によるパネル電圧の制御目標値の最大値は、開放電圧に略等しくなる。
【0032】
パネル電圧が開放電圧以上になると、パネル出力は0となる。このため、開放電圧を超えてパネル電圧を上昇させることは無意味である。制御部41は、開放電圧をパネル電圧の制御目標値の最大値とすることで、パネル電圧を適切な範囲内で制御できる。
【0033】
図2は、実施形態1に係るDC-DCコンバータ40の構成の例を示す図である。上述したとおり、DC-DCコンバータ40は、制御部41および変換部42を備える。図2に示す例では、制御部41は、リミッタ41a、減算部41b、ゲイン41c、積算部41d、加算部41e、電圧値減算部41f、PID(Propotional Integral Differencial)制御部41g、および点弧指令信号生成部41hを備える。
【0034】
リミッタ41aは、直流母線電圧を所定の範囲内に制限した値を出力する。所定の範囲は、直流配電システムにおける電圧の上限値に応じて適宜決定されればよく、例えば670以上、690以下である。減算部41bは、リミッタ41aの出力値から所定の定数を減算する。所定の定数は、リミッタ41aにおける電圧の下限値に応じて適宜決定されればよく、例えば670である。
【0035】
ゲイン41cは、減算部41bの出力値に所定の係数を乗じた値を出力する。所定の係数は、リミッタ41aにおける電圧の上限値と下限値との差に応じて適宜決定されればよく、例えば1/20である。積算部41dは、ゲイン41cの出力値に、所定の係数α、および太陽電池パネル30の公称MPPT電圧Vnを積算した値を出力する。αおよびVnは後述するとおり既知の値である。加算部41eは、積算部41dの出力値に、太陽電池パネル30の実際のMPPT電圧を加算した値を出力する。
【0036】
電圧値減算部41fは、実際のパネル電圧から加算部41eの出力値を減算した値を出力する。PID制御部41gは、電圧値減算部41fの出力値をPID制御により電流制御指令値に変換して出力する。点弧指令信号生成部41hは、電流制御指令値から点弧指令信号を生成する一般的な変換器であり、PID制御部41gの出力値に基づいて点弧指令信号を生成して出力する。
【0037】
変換部42は、点弧指令信号生成部41hが出力する点弧指令信号に基づいて、パネル出力電流を制御して、直流母線50に出力する。変換部42は、公知のDC-DCコンバータ回路からなり、点弧指令信号によりスイッチングされるスイッチング素子を備える。変換部42のスイッチング素子は、制御部41の点弧指令信号に従い、スイッチングのデューティや位相が制御され、変換部42での出力電流が調整される。変換部42での出力電流に応じて太陽電池パネル30のパネル電圧が変動する。
【0038】
一般に、DC-DCコンバータ回路における出力電流は、スイッチング素子のオフ時間に対するオン時間の比率(デューティ比)または位相差によって決まる。制御部41において、点弧指令信号生成部41hは、PID制御部41gの出力値が現在のパネル電流よりも大きければ、変換部42における出力電流を増加させるように、点弧指令信号を生成する。また、点弧指令信号生成部41hは、PID制御部41gの出力値がパネル電流よりも小さければ、変換部42における出力電流を減少させるように、点弧指令信号を生成する。
【0039】
図2に示した制御部41では、ゲイン41cの出力値がkに相当し、積算部41dの出力値がk×α×Vnに相当し、加算部41eの出力値がVcに相当する。
【0040】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0041】
図6は、実施形態2に係るDC-DCコンバータ40A(出力制御装置)の構成を示す図である。実施形態2に係る直流配電システムは、DC-DCコンバータ40の代わりにDC-DCコンバータ40Aを備える点で、実施形態1に係る直流配電システム1と相違する。図6に示すように、DC-DCコンバータ40Aは、制御部41の代わりに制御部41A(制御装置)を備える点でDC-DCコンバータ40と相違する。制御部41Aは、制御部41が有する構成に加えて、ΔV算出部43およびΔV加算部44を備える。
【0042】
ΔV算出部43は、ΔVの値を算出する。ΔVは直流母線電圧の変動における高周波成分であり、直流母線電圧のオーバーシュートを抑制するために、制御部41Aにおける電流制御指令値に加算される値である。ΔV算出部43の構成の例については後述する。ΔV加算部44は、ΔV算出部43が算出したΔVの値をPID制御部41gの出力値に加算する。DC-DCコンバータ40Aにおいて、点弧指令信号生成部41hは、ΔV加算部44の出力値に基づいて点弧指令信号を生成して出力する。
【0043】
図7は、ΔV算出部43の構成の一例を示す図である。図7に示す例では、ΔV算出部43は、ローパスフィルタ43a、dV/dt算出部43b、ゲイン43c、リミッタ43d、および切替部43eを備える。
【0044】
ローパスフィルタ43aは、直流母線電圧に含まれる高周波成分を遮断し、低周波成分のみを出力する。遮断周波数は、抑制しようとする電圧変動成分に応じて適宜決定されればよい。dV/dt算出部43bは、直流母線電圧からローパスフィルタ43aの出力値を減算した値を出力する。
【0045】
ゲイン43cは、dV/dt算出部43bの出力値に所定の係数を乗じた値を出力する。所定の係数は、ΔV制御による影響の適切な大きさを考慮して適宜決定されればよい。リミッタ43dは、ゲイン43cの出力値を所定の範囲内に制限する。切替部43eは、直流母線電圧の上昇を検出してΔV制御を開始する。具体的には、切替部43eは、直流母線電圧がリミッタ41aの下限値以上であれば入力値をそのまま出力する。一方、切替部43eは、直流母線電圧がリミッタ41aの下限値未満であれば0を出力する。
【0046】
図8は、実施形態1に係る直流配電システム1、および実施形態2に係る直流配電システムのそれぞれにおいて、負荷の急激な変動が生じた場合における、電圧および電流の変動を示すグラフである。図8においては、実施形態1に係る直流配電システム1についてのグラフが符号8001、実施形態2に係る直流配電システムについてのグラフが符号8002で示されている。それぞれのグラフにおいて、横軸は時刻、縦軸は電流または電圧を示す。
【0047】
図8に示すそれぞれのグラフにおいては、負荷の急激な変動が生じた時刻を含む期間が、破線の楕円で囲んで示されている。また、実施形態1に係る直流配電システム1において負荷の急激な変動が生じた場合における直流母線電圧の最大値が、破線の直線で示されている。
【0048】
図8に示すように、実施形態2に係る直流配電システムにおける直流母線電圧の最大値は、破線の直線で示した、実施形態1に係る直流配電システム1における直流母線電圧の最大値よりも小さい。すなわち、実施形態2に係る直流配電システムにおいては、実施形態1に係る直流配電システム1よりも、負荷の急激な変動に伴う直流母線電圧のオーバーシュートが低減されている。このように、DC-DCコンバータ40Aにおいて、制御部41Aは、ΔV算出部43およびΔV加算部44を備えることで、負荷の急激な変動に起因する直流母線電圧のオーバーシュートを抑制することができる。
【0049】
〔ソフトウェアによる実現例〕
DC-DCコンバータ40、40Aの制御ブロック(特に制御部41および41A)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0050】
後者の場合、DC-DCコンバータ40、40Aは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0051】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
30 太陽電池パネル
40、40A DC-DCコンバータ(出力制御装置)
41、41A 制御部(制御装置)
42 変換部(変換装置)
50 直流母線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8