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特許74171131,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)を含む組成物
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  • 特許-1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)を含む組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
C09K5/04 E
C09K5/04 C
C09K5/04 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021023657
(22)【出願日】2021-02-17
(62)【分割の表示】P 2019044200の分割
【原出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2021088718
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一博
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-130236(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108148556(CN,A)
【文献】特開平01-139540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00- 5/20
C09K 3/00
C11D 1/00- 19/00
F25B 1/00- 7/00
C07C 1/00-409/44
F28D 15/00- 15/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を含む熱移動媒体用組成物であって、
該冷媒が、
(a)1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)と、
(b)1-クロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(HCFC-133)、1-クロロ-1,1,2-トリフルオロエタン(HCFC-133b)及び1-クロロ-2-フルオロエチレン(HCFO-1131)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
(c)2-クロロ1,1,1-トリフルオロエタン(HCFC-133a)とを含み、 前記化合物(b)を、HFC-143と前記化合物(b)との合計を基準として、0質量%を超え1質量%未満含み、
HCFC-133aを、HFC-143と前記化合物(b)とHCFC-133aとの合計を基準として、0質量%を超え1質量%以下含み、かつ
HFC-143と前記化合物(b)とHCFC-133aとの合計を、冷媒全体を基準として、99.5質量%以上含む、
熱移動媒体用組成物。
【請求項2】
冷媒を含む組成物であって、
該冷媒が、
(a)1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)と、
(b)1-クロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(HCFC-133)、1-クロロ-1,1,2-トリフルオロエタン(HCFC-133b)及び1-クロロ-2-フルオロエチレン(HCFO-1131)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
(c) 1,1,2-トリフルオロエチレン(HFC-1123)、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)及び2-クロロ1,1,1-トリフルオロエタン(HCFC-133a)からなる群より選ばれる少なくとも1種の追加的化合物とを含み、
前記化合物(c)を、HFC-143と前記化合物(b)と前記化合物(c)との合計を基準として、0質量%を超え1質量%以下含み、かつ
HFC-143と前記化合物(b)と前記化合物(c)との合計を、冷媒全体を基準として、99.5質量%以上含む、組成物。
【請求項3】
前記追加的化合物を、前記冷媒の全体に対して合計で1質量%以下含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
共沸又は共沸様組成物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物の、熱移動媒体組成物としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)と、1-クロロ-1,2,2-トリフルオロエ
タン(HCFC-133)、1-クロロ-1,1,2-トリフルオロエタン(HCFC-133b)及び1-クロロ-2-
フルオロエチレン(HCFO-1131)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを含む
組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
HFC-143は、HFO-1132を得るための中間体として有用であるばかりでなく、それ自身が
冷媒としても有用なものである(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表平8-502996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、HFC-143を含む新たな組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.
冷媒を含む組成物であって、
該冷媒が、
1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)と、
1-クロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(HCFC-133)、1-クロロ-1,1,2-トリフルオロエタ
ン(HCFC-133b)及び1-クロロ-2-フルオロエチレン(HCFO-1131)からなる群より選ばれ
る少なくとも1種の化合物と
を含む、
組成物。
項2.
前記冷媒が、
HFC-143と、
HCFC-133、HCFC-133b及びHCFO-1131からなる群より選択される少なくとも1種の化合物
と、さらに、
1,1,2-トリフルオロエチレン(HFC-1123)、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、フル
オロエタン(HFC-161)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)、2-クロロ1,1,1-トリフ
ルオロエタン(HCFC-133a)、HCFC-133b、2,2-ジクロロ1,1,1-トリフルオロエタン(HCFC
-123)及び1,2-ジフルオロエタン(HFC-152)からなる群より選ばれる少なくとも1種の
追加的化合物と
を含む、項1に記載の組成物。
項3.
共沸又は共沸様組成物である、項1又は2に記載の組成物。
項4.
前記追加的化合物を、前記冷媒の全体に対して合計で1質量%以下含む、項2又は3に
記載の組成物。
項5.
項1~4のいずれか一項に記載の組成物の、熱移動媒体組成物としての使用。
項6.
HFC-143及びHCFC-133bを含む共沸組成物を、HFC-143及びHCFC-133bを含む組成物から分離
する方法であって:
(1)HFC-143及びHCFC-133bを含む組成物を第1蒸留塔に供給して蒸留する工程;及び
(2)HFC-143及びHCFC-133bを含む共沸組成物を第1蒸留塔の塔頂留出物として、かつHF
C-143又はHCFC-133bを第1蒸留塔の塔底から、それぞれ抜き出す工程;並びに
(3)必要に応じて前記塔頂留出物を第1蒸留塔と運転条件の異なる第2蒸留塔に供給し
て蒸留する工程;及び
を含む分離方法。
項7.
第2蒸留塔の運転圧力が第1蒸留塔の運転圧力よりも低い、項6に記載の分離方法。
項8.
第2蒸留塔の運転圧力が第1蒸留等の運転圧力よりも高い、項6に記載の分離方法
項9.
第2蒸留塔の塔頂留出物を第1蒸留塔にリサイクルする、項6~8のいずれか一項に記
載の分離方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示により、新たな組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】蒸留塔を用いてHFC-143と追加的成分としてHFO-1123、エチレン、HFC-161、HFC-152、HCFC-133、HCFC-123、HCFC-21を含む組成物を蒸留する、実施例の操作の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<用語の定義>
本明細書において用語「冷媒」には、ISO817(国際標準化機構)で定められた、冷媒の
種類を表すRで始まる冷媒番号(ASHRAE番号)が付された化合物が少なくとも含まれ、さ
らに冷媒番号が未だ付されていないとしても、それらと同等の冷媒としての特性を有する
ものが含まれる。冷媒は、化合物の構造の面で、「フルオロカーボン系化合物」と「非フ
ルオロカーボン系化合物」とに大別される。「フルオロカーボン系化合物」には、クロロ
フルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフル
オロカーボン(HFC)が含まれる。「非フルオロカーボン系化合物」としては、プロパン
(R290)、プロピレン(R1270)、ブタン(R600)、イソブタン(R600a)、二酸化炭素(
R744)及びアンモニア(R717)等が挙げられる。
【0009】
本明細書において、用語「冷媒を含む組成物」には、(1)冷媒そのもの(冷媒の混合
物を含む)と、(2)その他の成分をさらに含み、少なくとも冷凍機油と混合することに
より冷凍機用作動流体を得るために用いることのできる組成物と、(3)冷凍機油を含有
する冷凍機用作動流体とが少なくとも含まれる。本明細書においては、これら三態様のう
ち、(2)の組成物のことを、冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と区別して「冷媒組
成物」と表記する。また、(3)の冷凍機用作動流体のことを「冷媒組成物」と区別して
「冷凍機油含有作動流体」と表記する。
【0010】
本明細書において、用語「共沸様組成物」は、共沸組成物と実質的に同様に取り扱うこ
とができる組成物を意味する。具体的には、本明細書において、用語「共沸様組成物」は
、実質的に単一物質として振る舞う2つ以上の物質の定沸点の、または実質的に定沸点の
混合物を意味する。共沸様組成物の特徴の一つとして、液体の蒸発又は蒸留によって発生
した蒸気の組成が、液体の組成と実質的に変化しないことが挙げられる。すなわち、本明
細書においては、ある混合物が、実質的な組成変化なしに沸騰、蒸留又は還流するとき、
この混合物のことを、共沸様組成物と呼ぶ。具体的には、ある特定の温度での組成物のバ
ブルポイント蒸気圧と、当該組成物の露点蒸気圧との差が3%以下(バブルポイント圧力を
基準として)である場合に、当該組成物は共沸様組成物であると本開示では定義する。
【0011】
本明細書において、用語「代替」は、第一の冷媒を第二の冷媒で「代替」するという文
脈で用いられる場合、第一の類型として、第一の冷媒を使用して運転するために設計され
た機器において、必要に応じてわずかな部品(冷凍機油、ガスケット、パッキン、膨張弁
、ドライヤその他の部品のうち少なくとも一種)の変更及び機器調整のみを経るだけで、
第二の冷媒を使用して、最適条件下で運転することができることを意味する。すなわち、
この類型は、同一の機器を、冷媒を「代替」して運転することを指す。この類型の「代替
」の態様としては、第二の冷媒への置き換えの際に必要とされる変更乃至調整の度合いが
小さい順に、「ドロップイン(drop in)代替」、「ニアリー・ドロップイン(nealy dro
p in)代替」及び「レトロフィット(retrofit)」があり得る。
【0012】
第二の類型として、第二の冷媒を用いて運転するために設計された機器を、第一の冷媒
の既存用途と同一の用途のために、第二の冷媒を搭載して用いることも、用語「代替」に
含まれる。この類型は、同一の用途を、冷媒を「代替」して提供することを指す。
【0013】
本明細書において用語「冷凍機(refrigerator)」とは、物あるいは空間の熱を奪い去
ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、かつこの低温を維持する装置全般のこと
をいう。言い換えれば、冷凍機は温度の低い方から高い方へ熱を移動させるために、外部
からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置のことをいう。
【0014】
1.組成物
本開示の組成物は、少なくとも本開示の冷媒を含む。
【0015】
1.1 冷媒
本開示の冷媒は、HFC-143と、1-クロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(HCFC-133)、1-ク
ロロ-1,1,2-トリフルオロエタン(HCFC-133b)及び1-クロロ-2-フルオロエチレン(HCFO-
1131)からなる群より選択される少なくとも一種の追加的化合物(第1追加的化合物)と
を含む。
【0016】
本開示の冷媒は、第1追加的化合物を、HFC-143と第1追加的化合物との合計を基準と
して、好ましくは0質量%を超え10質量%未満含み、より好ましくは0質量%を超え5
質量%未満含み、さらに好ましくは0質量%を超え1質量%未満含む。
【0017】
さらに本開示の冷媒は、HFC-143と上記の第1追加的化合物とに加えて、1,1,2-トリフ
ルオロエチレン(HFC-1123)、1,1-ジフルオロエタン、フルオロエタン(HFC-161)、1,1
,2-トリフルオロエタン(HFC-143)、2-クロロ1,1,1-トリフルオロエタン(HCFC-133a)
、2,2-ジクロロ1,1,1-トリフルオロエタン(HCFC-123)及び1,2-ジフルオロエタン(HFC-
152a)からなる第2追加的化合物を含んでいてもよい。
【0018】
本開示の冷媒は、第2追加的化合物を合計で、HFC-143と第1追加的化合物と第2追加
的化合物との合計を基準として、好ましくは1質量%以下含む。この割合で第2追加的化
合物を含む本開示の冷媒を含む組成物は安定性に優れ、1,2-ジフルオロエチレン(HFO-11
32)の製造用原料として使用しうる。
【0019】
本開示の冷媒は、HFC-143と第1追加的化合物と第2追加的化合物との合計を、冷媒全
体を基準として、好ましくは99.5質量%以上含む。
【0020】
1.2 共沸又は共沸様組成物
本開示の組成物は、好ましくは共沸又は共沸様組成物である。これらの共沸又は共沸様
組成物は、HFC-143と追加的化合物との混合物において、追加的化合物をHFC-143から分離
する共沸蒸留を行う際に重要な組成物となりうる。
【0021】
上記において、追加的化合物には、第1追加的化合物が含まれ、さらに必要に応じて第
2追加的化合物が含まれうる。
【0022】
共沸蒸留とは、共沸又は共沸様組成物が分離されるような条件下で蒸留塔を運転するこ
とにより目的物を濃縮乃至分離する方法である。共沸蒸留によって、分離対象成分のみを
蒸留することができる場合もあるが、分離対象成分の1つ以上と共沸混合物を形成する別
の成分を外部から添加した場合に初めて共沸蒸留が起こる場合もある。狭義には、後者の
みを共沸蒸留と呼ぶ。例えば、HFC-143と第1追加的化合物とを含む共沸又は共沸様組成
物を、HFC-143と第1追加的化合物とを少なくとも含む組成物から共沸蒸留によって抜き
出すことによって、第1追加的化合物をHFC-143から分離することができる。
【0023】
HFC-143とHCFC-133との混合物は、温度40℃、圧力0.38MPa(絶対圧)のとき、、HFC-14
3とHCFC-133との質量比がHFC-143:HCFC-133=74:26であるときに、共沸組成物となり、
同質量比がHFC-143:HCFC-133=15:85~99.9:0.1であるときに、共沸様組成物となる。
【0024】
HFC-143とHCFC-133bとの混合物は、温度40℃、圧力0.40MPa(絶対圧)のとき、HFC-143
とHCFC-133bとの質量比がHFC-143:HCFC-133b=48:52であるときに、共沸組成物となり、
同質量比がHFC-143:HCFC-133b=23:77~99.9:0.1であるときに、共沸様組成物となる。
【0025】
HFC-143とtrans-HCFO-1131との混合物は、温度40℃、圧力0.50MPa(絶対圧)のとき、H
FC-143とtrans-HCFO-1131との質量比がHFC-143:trans-HCFO-1131=56:44であるときに、
共沸組成物となり、同質量比がHFC-143:trans-HCFO-1131=41:59~71:29であるときに、
共沸様組成物となる。
【0026】
HFC-143とcis-HCFO-1131との混合物は、温度40℃、圧力0.43MPa(絶対圧)のとき、HFC
-143とcis-HCFO-1131との質量比がHFC-143:cis-HCFO-1131=59:41であるときに、共沸組
成物となり、同質量比がHFC-143:cis-HCFO-1131=38:62~99.9:0.1であるときに、共沸
様組成物となる。
【0027】
1.3 熱移動媒体組成物
本開示の組成物は、熱移動媒体組成物として用いることができる。
【0028】
また本開示の組成物は、熱移動媒体組成物として用いられる場合、従来から用いられる
HFC冷媒である、HFC134a、R-410A、R-407C又はR-404A等の冷媒を代替する、より低い地球
温暖化係数(GWP)を有する冷媒、又は冷媒の成分としても使用しうる。
【0029】
熱移動媒体組成物として用いられる本開示の組成物は、第1及び第2追加的化合物に加
え、さらに少なくとも一種のその他の成分を含有していてもよい。本開示の組成物は、さ
らに少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いること
ができる(この場合の本開示の組成物を「本開示の冷媒組成物」という)。
【0030】
本開示の冷媒組成物は、必要に応じて、以下のその他の成分のうち少なくとも一種を含
有していてもよい。その他の成分は、特に限定されないが、具体的には、例えば、水、ト
レーサー、紫外線蛍光染料、安定剤、重合禁止剤等が挙げられる。
【0031】
本開示の冷媒組成物を、冷凍機における作動流体として使用するに際しては、通常、少
なくとも冷凍機油と混合して用いられる。したがって、本開示の冷媒組成物は、好ましく
は冷凍機油を実質的に含まない。具体的には、本開示の冷媒組成物は、組成物全体に対す
る冷凍機油の含有量が好ましくは0~1質量%であり、より好ましくは0~0.1質量%である。
【0032】
本開示の冷媒組成物は、微量の水を含んでもよい。冷媒組成物における含水割合は、冷
媒全体に対して、0.1質量%以下とすることが好ましい。冷媒組成物が微量の水分を含む
ことにより、冷媒中に含まれ得る不飽和のフルオロカーボン系化合物の分子内二重結合が
安定化され、また、不飽和のフルオロカーボン系化合物の酸化も起こりにくくなるため、
冷媒組成物の安定性が向上する。
【0033】
トレーサーは、本開示の冷媒組成物が希釈、汚染、その他何らかの変更があった場合、
その変更を追跡できるように検出可能な濃度で本開示の冷媒組成物に添加される。
【0034】
本開示の冷媒組成物は、トレーサーとして、一種を単独で含有してもよいし、二種以上
を含有してもよい。
【0035】
トレーサーとしては、特に限定されず、一般に用いられるトレーサーの中から適宜選択
することができる。
【0036】
トレーサーとしては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカ
ーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン、重水素
化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエー
テル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(
N2O)等が挙げられる。トレーサーとしては、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロ
ロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカー
ボン及びフルオロエーテルが特に好ましい。
【0037】
トレーサーとしては、以下の化合物が好ましい。
FC-14(テトラフルオロメタン、CF4
HCC-40(クロロメタン、CH3Cl)
HFC-23(トリフルオロメタン、CHF3
HFC-41(フルオロメタン、CH3Cl)
HFC-125(ペンタフルオロエタン、CF3CHF2
HFC-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン、CF3CH2F)
HFC-134(1,1,2,2-テトラフルオロエタン、CHF2CHF2
HFC-143a(1,1,1-トリフルオロエタン、CF3CH3
HFC-152(1,2-ジフルオロエタン、CH2FCH2F)
HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、CF3CH2CHF2
HFC-236fa(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CH2CF3
HFC-236ea(1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CHFCHF2
HFC-227ea(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、CF3CHFCF3)
HCFC-22(クロロジフルオロメタン、CHClF2
HCFC-31(クロロフルオロメタン、CH2ClF)
CFC-1113(クロロトリフルオロエチレン、CF2=CClF)
HFE-125(トリフルオロメチル-ジフルオロメチルエーテル、CF3OCHF2
HFE-134a(トリフルオロメチル-フルオロメチルエーテル、CF3OCH2F)
HFE-143a(トリフルオロメチル-メチルエーテル、CF3OCH3
HFE-227ea(トリフルオロメチル-テトラフルオロエチルエーテル、CF3OCHFCF3)HFE-236
fa(トリフルオロメチル-トリフルオロエチルエーテル、CF3OCH2CF3
【0038】
本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、約10重量百万
分率(ppm)~約1000ppm含んでいてもよい。本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で
、冷媒組成物全体に対して、好ましくは約30ppm~約500ppm、より好ましくは約50ppm~約
300ppm含んでいてもよい。
【0039】
本開示の冷媒組成物は、紫外線蛍光染料として、一種を単独で含有してもよいし、二種
以上を含有してもよい。
【0040】
紫外線蛍光染料としては、特に限定されず、一般に用いられる紫外線蛍光染料の中から
適宜選択することができる。
【0041】
紫外線蛍光染料としては、例えば、ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナ
ントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びに
これらの誘導体が挙げられる。紫外線蛍光染料としては、ナフタルイミド及びクマリンの
いずれか又は両方が特に好ましい。
【0042】
本開示の冷媒組成物は、安定剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含
有してもよい。
【0043】
安定剤としては、特に限定されず、一般に用いられる安定剤の中から適宜選択すること
ができる。
【0044】
安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エーテル類及びアミン類等が挙げられる。
【0045】
ニトロ化合物としては、例えば、ニトロメタン及びニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合
物、並びにニトロベンゼン及びニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。
【0046】
エーテル類としては、例えば、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0047】
アミン類としては、例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルア
ミン等が挙げられる。
【0048】
その他にも、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0049】
安定剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、0.01~5質量%とす
ることが好ましく、0.05~2質量%とすることがより好ましい。
【0050】
本開示の冷媒組成物は、重合禁止剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上
を含有してもよい。
【0051】
重合禁止剤としては、特に限定されず、一般に用いられる重合禁止剤の中から適宜選択
することができる。
【0052】
重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシ-1-ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノ
ンメチルエーテル、ジメチル-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、
ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0053】
重合禁止剤の含有割合は、特に限定されず、冷媒全体に対して、通常、0.01~5質量%
とすることが好ましく、0.05~2質量%とすることがより好ましい。
【0054】
本開示の組成物は、冷凍機油を含有する冷凍機用作動流体としても使用できる(この組
成物を「本開示の冷凍機油含有作動流体」という)。本開示の冷凍機油含有作動流体は、
本開示の冷媒組成物と、冷凍機油とを少なくとも含み、冷凍機における作動流体として用
いられる。具体的には、本開示の冷凍機油含有作動流体は、冷凍機の圧縮機において使用
される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られる。冷凍
機油含有作動流体には冷凍機油は一般に10~50質量%含まれる。
【0055】
本開示の冷凍機油含有作動流体は、冷凍機油として、一種を単独で含有してもよいし、
二種以上を含有してもよい。
【0056】
冷凍機油としては、特に限定されず、一般に用いられる冷凍機油の中から適宜選択する
ことができる。その際には、必要に応じて、前記混合物との相溶性及び前記混合物の安定
性等を向上する作用等の点でより優れている冷凍機油を適宜選択することができる。
【0057】
冷凍機油の基油としては、例えば、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエ
ステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも一種
が好ましい。
【0058】
冷凍機油は、基油に加えて、さらに添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、酸化防止剤
、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群
より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0059】
冷凍機油として、40℃における動粘度が5~400 cStであるものが、潤滑の点で好ましい
【0060】
本開示の冷凍機油含有作動流体は、必要に応じて、さらに少なくとも一種の添加剤を含
んでもよい。添加剤としては例えば以下の相溶化剤等が挙げられる。
【0061】
本開示の冷凍機油含有作動流体は、相溶化剤として、一種を単独で含有してもよいし、
二種以上を含有してもよい。
【0062】
相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択する
ことができる。
【0063】
相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニト
リル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエー
テルおよび1,1,1-トリフルオロアルカン等が挙げられる。相溶化剤としては、ポリオキシ
アルキレングリコールエーテルが特に好ましい。
【0064】
2.分離方法
また、本開示では、上記の組成物を利用したこれらの成分の分離プロセスも開示される
【0065】
例えば、HFC-143と追加的化合物とを含む共沸又は共沸様組成物を、HFC-143と追加的化
合物とを少なくとも含む組成物から共沸蒸留によって抜き出すことによって、追加的化合
物をHFC-143から分離することができる。
【0066】
上記において、追加的化合物には、第1追加的化合物が含まれ、さらに必要に応じて第
2追加的化合物が含まれうる。
【0067】
具体的には、例えば、HFC-143及びHCFC-133bを含む共沸組成物を、HFC-143及びHCFC-13
3bを含む組成物から分離する方法として、以下の工程を含む方法が挙げられる。
(1)HFC-143及びHCFC-133bを含む組成物を第1蒸留塔に供給して蒸留する工程;及び
(2)HFC-143及びHCFC-133bを含む共沸組成物を第1蒸留塔の塔頂留出物として、かつHF
C-143又はHCFC-133bを第1蒸留塔の塔底から、それぞれ抜き出す工程;並びに
(3)必要に応じて前記塔頂留出物を第1蒸留塔と運転条件の異なる第2蒸留塔に供給し
て蒸留する工程;及び
(4)必要に応じて第1蒸留塔の塔底から抜き出した化合物に富むストリームを第2蒸留
塔の塔底から抜き出す工程;
を含む分離方法。
【0068】
HFC-143及びHCFC-133bを含む出発組成物は、HFC-143及びHCFC-133bのみからなる非共沸
組成物であってもよいし、HFC-143及びHCFC-133bとは別の成分を一種以上さらに含む組成
物であってもよい。
【0069】
HFC-143及びHCFC-133bを含む共沸組成物は、HFC-143及びHCFC-133bのみからなる共沸組
成物であってもよい。
【0070】
第2蒸留塔の運転圧力は、第1蒸留塔の運転圧力よりも低くてもよいし、高くてもよい
【0071】
第2蒸留塔の塔頂留出物を第1蒸留塔にリサイクルしてもよい。
【0072】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、
形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例
【0073】
以下に、実施例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本開示は、これらの実施例に
限定されるものではない。
【0074】
HFC-143とHCFC-133bとの気液平衡データを表1に示す。なお、圧力は絶対圧を指す。
【0075】
【表1】
【0076】
HFC-143とHCFC-133との気液平衡データを表2に示す。なお、圧力は絶対圧を指す。
【0077】
【表2】
【0078】
HFC-143とHCFC-1131(E)との気液平衡データを表3に示す。なお、圧力は絶対圧を指す
【0079】
【表3】
【0080】
HFC-143とHCFC-1131(Z)との気液平衡データを表4に示す。なお、圧力は絶対圧を指す
【0081】
【表4】
【0082】
実施例1
HFC-143及びHCFO-133bを含む共沸組成物を分離により得るためのプロセスを以下の通り
行った。図1に共沸組成物を用いた蒸留分離プロセスの一例を示す。S11よりHFC-143及び
HCFC-133bを含む非共沸組成物(出発組成物)を蒸留塔C1にフィードする。S13よりHFC-14
3及びHCFC-133bを含む共沸組成物が流出し、S12からは出発組成物と比較してHCFC-133b、
HCFO-1131(E)およびHCFO-1131(Z)の濃度が低下したHFC-143及びHCFC-133bを含む非共沸組
成物が得られる。S12は次の工程に送られる。C2ではC1から圧力条件を変えることにより
得られる共沸組成を変えることができる。これを利用して、S14からS12と比較してHCFC-1
33b、HCFC-133、HCFO-1131(E)およびHCFO-1131(Z)の濃度が低下した実質的にHFC-143のみ
からなる組成物を得ることができる。表5は、蒸留を行った際の各ストリームにおける組
成比(質量比)から各成分の流量を求めたものである。このプロセスを利用することによ
り、ロスを最低限にしたHFC-143の精製プロセスを構築できる。
【0083】
なお、運転圧力は次の通りとした。C1 = 0.5MPa;C2 = 0.4MPa
なお、圧力は絶対圧を指す。
【0084】
【表5】
【0085】
実施例2
R143と追加的化合物とを含む冷媒の冷凍能力を比較した。結果を表6に示す。冷凍サイ
クル条件は以下の通りである。
【0086】
蒸発温度 10℃、凝縮温度 45℃、過熱度 5℃、過冷却度 5℃、損失ゼロ、効率100%
【0087】
【表6】
図1