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特許7417128耐火れんが原料の組成物、耐火れんがの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】耐火れんが原料の組成物、耐火れんがの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/043 20060101AFI20240111BHJP
   C04B 35/443 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C04B35/043 500
C04B35/443
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021206887
(22)【出願日】2021-12-21
(65)【公開番号】P2023091971
(43)【公開日】2023-07-03
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083172
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 豊明
(72)【発明者】
【氏名】伊賀棒 公一
(72)【発明者】
【氏名】宮田 雄斗
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0280603(US,A1)
【文献】特開平11-139864(JP,A)
【文献】特開平11-139863(JP,A)
【文献】国際公開第2011/095018(WO,A1)
【文献】米国特許第05569631(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0226016(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルシナイトが全量の0.5~5質量%、B含有量0.1~0.5質量%のペリクレース共存型焼結スピネルが全量の12~50質(但し20質量%以下を除く)、B含有量0.2質量%以下の焼結マグネシアが全量の47~85質量%であるマグネシア・スピネル質耐火れんがの原料組成物。
【請求項2】
請求項1の耐火れんがの原料組成物を成形し、1450~1650℃で焼成するマグネシア・スピネル質耐火れんがの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄鋼用二次精錬炉やセメントロータリーキルン等に使用するマグネシア・スピネル質耐火れんが原料の組成物および耐火れんがの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼用二次精錬炉やセメントロータリーキルン等にはマグネシアとスピネル(マグネシウムアルミニウムスピネル)を組み合わせたマグネシア・スピネル質れんがが使用される。その原料としてはマグネシア原料と、ペリクレース相およびスピネル相を含む焼結スピネル原料が使用される。
【0003】
例えば、特許文献1は、B含有量0.1~1質量%のマグネシア原料又は/およびスピネル原料を使用し、消化による組織劣化、膨張による亀裂の生成が減少した塩基性れんがを開示している。
【0004】
また特許文献2および非特許文献1はマグネシア・ヘルシナイト質耐火れんがを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-139864
【文献】米国特許第5569631号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Buchebner, G., and Harmuth, H., Magnesia-Hercynite Bricks-Innovative Burnt Basic Refractory, Proceedings of 6th UNITECR’99, Sept.6-9, 1999, Berlin, Germany, 201-203.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マグネシア・スピネル質耐火れんがを長期保管すると、主要構成鉱物であるペリクレース相の消化(水和)により膨張して亀裂が発生する場合がある。そこで、引用文献1ではBの含有量を高めて0.1~1質量%とし、高温でのクラックの発生を減少させ、高い熱間曲げ強さを得るようにしている。
【0008】
しかしながら、Bの含有量を高めた組成を1700℃以上で焼成すると、Bは不純物相中に濃集し低融点物を生成し、熱間特性が低下し、機械的スポーリングが生じやすくなるという課題が生じる。
【0009】
特許文献2等に開示されたマグネシア・ヘルシナイト質耐火れんがは、スピネル(マグネシウムアルミニウムスピネル)に代えて、同じスピネル型構造であるヘルシナイト(鉄アルミニウムスピネル)を使用したものである。ヘルシナイトはペリクレース相を含まないので、ペリクレース相を含むマグネシウムアルミニウムスピネルを使用した場合より耐消化性に優れる。一方、1450℃以上の高温域での使用においては熱間特性が低下するという欠点がある。
【0010】
本発明は上記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、耐消化性と高温域での熱間特性を両立して向上させることができるマグネシア・スピネル質耐火れんが原料の組成物および、その組成物を用いた耐火れんがの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のマグネシア・スピネル質耐火れんがの原料は、ヘルシナイトが全量の0.5~5質量%、B含有量0.1~0.5質量%のペリクレース共存型焼結スピネルが全量の12~50質(但し20質量%以下を除く)、B含有量0.2質量%以下の焼結マグネシアが全量の47~85質量%である組成物である。
また、本発明のマグネシア・スピネル質耐火れんがは、前記の耐火れんがの原料組成物を1450~1650℃で焼成することで得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
耐消化性と熱間特性を両立して向上させることができるマグネシア・スピネル質耐火れんがが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<基本考察>
前記したように、特許文献1に開示された「塩基性れんがの原料としてB含有量0.1~1質量%のマグネシア原料又は/およびスピネル原料を使用した塩基性れんが」を高温焼成(1700℃以上)すると、熱間特性および耐消化性が低下する。
【0014】
その理由は必ずしも明らかではないが、焼結スピネルに含まれるBが周囲のマグネシア原料中に拡散し、れんがの熱間特性と耐消化性を低下させていると推定される。一方、普通焼成(1500~1600℃)した場合は、結合組織が発達せず、れんがの熱間特性が不十分となる。
【0015】
以上の事実から、本発明では、B含有量が0.2質量%以下の焼結マグネシアと、B含有量0.1~0.5質量%のペリクレース共存型焼結スピネルを主体とし、当該ペリクレース共存型焼結スピネルにヘルシナイト0.5~5質量%を焼結助剤として添加した組成物を耐火れんがの原料とした。
【0016】
また、当該組成物を1450~1650℃で焼成することによって、耐消化性と熱間特性を両立したマグネシア・スピネル質耐火れんがを得た。
<ヘルシナイト>
前記ヘルシナイトはFeO・Alからなる鉱物原料であり、焼結助剤として用いる。天然原料、合成原料のいずれも使用できるが、不純物含有量の少ない合成原料を使用することが好ましい。FeOとAlの成分比は化学量論組成に限らず、質量比で30:70~50:50の範囲であればよい。
【0017】
当該ヘルシナイトは前記組成物の全量に対して0.5~5質量%である。0.5質量%未満では焼結助剤としての効果がなく、5質量%を超えると耐食性が低下する。
<ペリクレース共存型焼結スピネル>
前記ペリクレース共存型焼結スピネルはB含有量が0.1~0.5質量%の範囲が好ましい。B含有量が0.1質量%未満では耐消化性が不十分であり、0.5質量%を超えると熱間特性が低下する。当該ペリクレース共存型焼結スピネルの含有量は前記組成物の全量に対して12~50質量%が好ましい。12質量%を下回ると耐消化性が不十分であり、50質量%を超えると熱間強度と耐食性が低下する。
<焼結マグネシア>
前記焼結マグネシアはB含有量が0.2質量%以下であることが好ましい。B含有量が0.2質量%を超えると熱間強度が低下する。当該焼結マグネシアの含有量は、前記組成物の全量に対して47~85質量%が好ましい。47質量%を下回ると熱間強度と耐食性が低下し、85質量%を超えると耐消化性が低下する。
<バインダー>
バインダーには公知の有機バインダー又は無機バインダーを配合できる。有機バインダーとしては、ピッチやフェノール樹脂、糖蜜、パルプ廃液、デキストリン、メチルセルロース類、ポリビニルアルコール等種々のバインダーを使用できる。
<混練・成形>
配合された原料配合物に、必要に応じてバインダーまたは水を添加して混練する。混練には、公知の混練機が使用できる。成形は公知の成形機を使用できる。
<焼成>
前記のように混錬・成形された組成物は、1450~1650℃の範囲の温度で焼成される。前記焼成温度が1450℃を下回ると結合組織が発達せず熱間強度が低下し、1650℃を超えるとBが拡散して熱間強度が低下する。焼成時間は適宜調整できるが、最高温度帯で8~12時間程度とすることが好ましい。
【実施例
【0018】
以下に実施例を示し、本発明を詳細に説明する。
[試料の作成]
表1に使用した原料の化学組成を示す。表2および表3の配合に従って耐火原料混合物を準備した。バインダーとして樹脂固形分60質量%のノボラック型フェノール樹脂溶液を、前記耐火原料の全量に対して外掛けで3質量%添加した。
【0019】
耐火原料とバインダーの混合物をミキサーで混練し、混練物は油圧プレスを使用して成形した。成形圧力は118MPa、打回数は20回、試料形状は長さ155mm、幅80mm、厚み65mmとした。成形した試料は200℃で24時間乾燥し、その後箱型電気炉を使用し所定の温度まで5℃/minで昇温、10時間保持後、-5℃/minで500℃まで冷却し、その後は常温まで自然放冷した。
[耐食性(浸食性)]
侵食試験は回転ドラム法で評価した。熱源は酸素-プロパンバーナーを使用した。侵食剤は、ウォラストナイトと炭酸カルシウムを使用してCaOとSiOが質量比で2:1となるように配合し、1000℃で3時間仮焼した後に使用した。試験温度は1700℃、試験時間は5時間で、侵食剤は1時間毎に入れ替えた。
【0020】
試験後の試料を長手方向の中央で切断し、侵食量を測定し耐食性を評価した。それぞれの耐食性は、実施例1を100とする指数で示した。指数が大きいほど耐食性が高いことを示す。
[熱間特性]
熱間特性は、1250℃の大気雰囲気で行った三点曲げ試験で評価した。試料形状は、長さ155mm、幅40mm、厚み40mmとし、下部支点間距離は100mmとした。
[耐消化性]
耐消化性は、オートクレーブ容器に一辺40mmの立方体に加工した試料をセットし、294kPa(ゲージ圧)で 3時間保持した。試験後の状態を観察し耐消化性を評価した。
[評価結果]
実施例1~14では耐消化性と熱間特性が両立され、耐食性にも問題なかった。比較例1は焼結スピネル量が全量の12質量%より少なく耐消化性に問題があった。比較例2は焼結スピネル量が全量の50質量%より多く、焼結マグネシア量が全量の47質量%より少ないためBが周囲のマグネシアにも拡散して熱間強度の低下が見られた。
【0021】
比較例3はヘルシナイト原料が、全量の0.5質量%より少ないため焼結が十分ではなく熱間強度の低下が見られた。比較例4はヘルシナイト原料が全量の5質量%より多く、れんが中の低融点物も増加したため耐食性も低下した。
【0022】
比較例5は焼成温度が、1650℃より高いためBの揮発で耐消化性が失われた。比較例6は焼成温度が1450℃より低く、焼結が不十分で熱間強度が低くなっていた。
【0023】
比較例7は焼成温度が低いものの、ヘルシナイト原料が多いため耐消化性と熱間特性の両立が実現されたが、全量の5質量%を超えているので、耐食性が低下している。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】