(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】ポリテトラフルオロエチレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 259/08 20060101AFI20240111BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240111BHJP
C08F 2/38 20060101ALI20240111BHJP
C08F 14/26 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C08F259/08
C08F2/44 C
C08F2/38
C08F14/26
(21)【出願番号】P 2021558460
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2020043293
(87)【国際公開番号】W WO2021100834
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2019209153
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 陽平
(72)【発明者】
【氏名】市川 賢治
(72)【発明者】
【氏名】難波 義典
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈人
(72)【発明者】
【氏名】山中 拓
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/168183(WO,A1)
【文献】特表2008-545873(JP,A)
【文献】国際公開第2014/084400(WO,A1)
【文献】特表2012-513532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 - 2/60
C08F 14/00 - 14/28
C08F 259/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核形成剤、および、一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含有する重合体(I)の存在下に、水性媒体中でテトラフルオロエチレンを重合することによりポリテトラフルオロエチレンを得るポリテトラフルオロエチレンの製造方法であって、前記核形成剤が
、連鎖移動剤およ
び非イオン性界面活性剤である、ポリテトラフルオロエチレンの製造方法。
CX
1X
3=CX
2R(-CZ
1Z
2-A
0)
m (I)
(式中、X
1およびX
3は、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCF
3であり;X
2は、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;A
0は、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z
1およびZ
2は、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【請求項2】
前記アニオン性基は、サルフェート基、カルボキシレート基、ホスフェート基、ホスホネート基、スルホネート基および-C(CF
3)
2OM(式中、Mは、-H、金属原子、-NR
7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R
7は、Hまたは有機基である。)からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
重合体(I)の数平均分子量が、1.0×10
4以上である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
一般式(I)におけるmが1である請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記連鎖移動剤が、炭素数1~4のアルコールおよび炭素数2~4のアルカンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記連鎖移動剤が、イソプロパノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノールからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記非イオン性界面活性剤が、一般式(i)で表される非イオン性界面活性剤および一般式(ii)で表される非イオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
R
3-O-A
1-H (i)
(式中、R
3は、炭素数8~18の直鎖状または分岐鎖状の1級または2級アルキル基であり、A
1は、ポリオキシアルキレン鎖である。)
R
4-C
6H
4-O-A
2-H (ii)
(式中、R
4は、炭素数4~12の直鎖状または分岐鎖状の1級または2級のアルキル基であり、A
2は、ポリオキシアルキレン鎖である。)
【請求項8】
テトラフルオロエチレンおよび変性モノマーを重合する請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記ポリテトラフルオロエチレンが、低分子量ポリテトラフルオロエチレンである請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記ポリテトラフルオロエチレンの一次粒子のアスペクト比が2.00未満である請求項1~9のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリテトラフルオロエチレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フルオロポリマーのバルクとフッ素化イオノマーの核とを含む粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示では、重合時に十分な数のポリテトラフルオロエチレンの粒子を発生させることができ、平均一次粒子径が小さいポリテトラフルオロエチレンの一次粒子を得ることができるポリテトラフルオロエチレンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示によれば、核形成剤、および、一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含有する重合体(I)の存在下に、水性媒体中でテトラフルオロエチレンを重合することによりポリテトラフルオロエチレンを得るポリテトラフルオロエチレンの製造方法が提供される。
CX1X3=CX2R(-CZ1Z2-A0)m (I)
(式中、X1およびX3は、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCF3であり;X2は、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;A0は、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z1およびZ2は、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【0006】
本開示の製造方法において、前記アニオン性基は、サルフェート基、カルボキシレート基、ホスフェート基、ホスホネート基、スルホネート基および-C(CF3)2OM(式中、Mは、-H、金属原子、-NR7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R7は、Hまたは有機基である。)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本開示の製造方法において、重合体(I)の数平均分子量が、1.0×104以上であることが好ましい。
本開示の製造方法において、一般式(I)におけるmが1であることが好ましい。
本開示の製造方法において、前記核形成剤が、フルオロポリエーテル、非イオン性界面活性剤、および、連鎖移動剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本開示の製造方法において、前記連鎖移動剤が、炭素数1~4のアルコールおよび炭素数2~4のアルカンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本開示の製造方法において、前記連鎖移動剤が、イソプロパノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本開示の製造方法において、前記非イオン性界面活性剤が、一般式(i)で表される非イオン性界面活性剤および一般式(ii)で表される非イオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
R3-O-A1-H (i)
(式中、R3は、炭素数8~18の直鎖状または分岐鎖状の1級または2級アルキル基であり、A1は、ポリオキシアルキレン鎖である。)
R4-C6H4-O-A2-H (ii)
(式中、R4は、炭素数4~12の直鎖状または分岐鎖状の1級または2級のアルキル基であり、A2は、ポリオキシアルキレン鎖である。)
本開示の製造方法において、前記核形成剤が、連鎖移動剤であることが好ましい。
本開示の製造方法において、前記核形成剤が、前記連鎖移動剤、ならびに、前記非イオン性界面活性剤およびフルオロポリエーテルの一方または両方であることが好ましい。
本開示の製造方法において、前記核形成剤が、前記連鎖移動剤および前記非イオン性界面活性剤であることが好ましい。
本開示の製造方法において、テトラフルオロエチレンおよび変性モノマーを重合することが好ましい。
本開示の製造方法において、前記ポリテトラフルオロエチレンが、低分子量ポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
本開示の製造方法において、前記ポリテトラフルオロエチレンの一次粒子のアスペクト比が2.00未満であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、重合時に十分な数のポリテトラフルオロエチレンの粒子を発生させることができ、平均一次粒子径が小さいポリテトラフルオロエチレンの一次粒子を得ることができるポリテトラフルオロエチレンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
本開示を具体的に説明する前に、本開示で使用するいくつかの用語を定義または説明する。
【0010】
本開示において、「有機基」は、1個以上の炭素原子を含有する基、または有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
ホルミル基、
RaO-、
RaCO-、
RaSO2-、
RaCOO-、
RaNRaCO-、
RaCONRa-、
RaOCO-、
RaOSO2-、および、
RaNRbSO2-
(これらの式中、Raは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、または、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
Rbは、独立して、Hまたは1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)
を包含する。
上記有機基としては、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
【0011】
また、本開示において、「置換基」は、置換可能な基を意味する。当該「置換基」の例は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、芳香族オキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、芳香族スルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、芳香族オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、芳香族スルフィニル基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、脂肪族オキシアミノ基、芳香族オキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、および、ジ芳香族オキシホスフィニル基を包含する。
【0012】
上記脂肪族基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記脂肪族基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~4のアルキル基、たとえば、メチル基、エチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、カルバモイルメチル基などが挙げられる。
【0013】
上記芳香族基は、たとえば、ニトロ基、ハロゲン原子、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記芳香族基としては、炭素数6~12、好ましくは総炭素原子数6~10のアリール基、たとえば、フェニル基、4-ニトロフェニル基、4-アセチルアミノフェニル基、4-メタンスルホニルフェニル基などが挙げられる。
【0014】
上記ヘテロ環基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記ヘテロ環基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~10の5~6員ヘテロ環、たとえば2-テトラヒドロフリル基、2-ピリミジル基などが挙げられる。
【0015】
上記アシル基は、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記アシル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアシル基、たとえばアセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基、3-ピリジンカルボニル基などが挙げられる。
【0016】
上記アシルアミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよく、たとえば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などを有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~8のアシルアミノ基、総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、たとえばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などが挙げられる。
【0017】
上記脂肪族オキシカルボニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記脂肪族オキシカルボニル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアルコキシカルボニル基、たとえばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、(t)-ブトキシカルボニル基などが挙げられる。
【0018】
上記カルバモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。上記カルバモイル基としては、無置換のカルバモイル基、総炭素数2~9のアルキルカルバモイル基、好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素原子数2~5のアルキルカルバモイル基、たとえばN-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基などが挙げられる。
【0019】
上記脂肪族スルホニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記脂肪族スルホニル基としては、総炭素原子数1~6、好ましくは総炭素原子数1~4のアルキルスルホニル基、たとえばメタンスルホニル基などが挙げられる。
【0020】
上記芳香族スルホニル基は、ヒドロキシ基、脂肪族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記芳香族スルホニル基としては、総炭素原子数6~10のアリールスルホニル基、たとえばベンゼンスルホニル基などが挙げられる。
【0021】
上記アミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。
【0022】
上記アシルアミノ基は、たとえば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などを有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは総炭素原子数2~8のアシルアミノ基、より好ましくは総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、たとえばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などが挙げられる。
【0023】
上記脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基は、たとえば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、2-ピリジンスルホンアミド基などであってもよい。
【0024】
上記スルファモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。上記スルファモイル基としては、スルファモイル基、総炭素原子数1~9のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数2~10のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数7~13のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~12のヘテロ環スルファモイル基、より好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1~7のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数3~6のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数6~11のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~10のヘテロ環スルファモイル基、たとえば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基、4-ピリジンスルファモイル基などが挙げられる。
【0025】
上記脂肪族オキシ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、メトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基などを有していてもよい。上記脂肪族オキシ基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~6のアルコキシ基、たとえばメトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基などが挙げられる。
【0026】
上記芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基は、脂肪族基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、カルバモイル基、該アリール基と縮環したヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、好ましくは総炭素原子数1~4の脂肪族基、総炭素原子数1~4の脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、総炭素原子数1~4のカルバモイル基、ニトロ基、総炭素原子数2~4の脂肪族オキシカルボニル基を有していてもよい。
【0027】
上記脂肪族チオ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、総炭素原子数1~8、より好ましくは総炭素原子数1~6のアルキルチオ基、たとえばメチルチオ基、エチルチオ基、カルバモイルメチルチオ基、t-ブチルチオ基などが挙げられる。
【0028】
上記カルバモイルアミノ基は、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基などを有していてもよい。上記カルバモイルアミノ基としては、カルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~9のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~13のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~12のヘテロ環カルバモイルアミノ基、好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~7のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~6のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~11のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のヘテロ環カルバモイルアミノ基、たとえば、カルバモイルアミノ基、メチルカルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルカルバモイルアミノ基、フェニルカルバモイルアミノ基、4-ピリジンカルバモイルアミノ基などが挙げられる。
【0029】
本開示において、端点によって表わされる範囲には、その範囲内に含まれるすべての数値が含まれる(たとえば、1~10には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などが含まれる)。
【0030】
本開示において、「少なくとも1」の記載には、1以上の全ての数値が含まれる(たとえば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)。
【0031】
次に、本開示の製造方法を具体的に説明する。
【0032】
本開示の製造方法においては、核形成剤および重合体(I)の存在下に、水性媒体中でテトラフルオロエチレン(TFE)を重合することによりポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を得る。
【0033】
核形成剤および重合体(I)の存在下にTFEを重合することによって、重合時に十分な数のPTFEの粒子を発生させることができることから、高い収率でPTFEを製造することできる。また、核形成剤および重合体(I)の存在下にTFEを重合することによって、平均一次粒子径およびアスペクト比が小さい一次粒子が容易に得られ、水性媒体中でのTFEの重合が円滑に進行し、PTFEを容易に製造することができる。また、重合により得られる水性分散液を凝析することにより、PTFE粉末を回収でき、粉末を回収した後に残る排水中には、PTFE(未凝析ポリマー)が残留しにくい。さらには、得られたPTFE粉末は、高い破断強度および長い応力緩和時間を示す。
【0034】
<核形成剤>
本開示の製造方法においては、重合体(I)とともに、核形成剤の存在下に、TFEを重合する。
【0035】
重合は、反応器中の気体フルオロモノマーがPTFEになり、反応器中の圧力降下が起こる時に開始したということができる。米国特許第3,391,099号明細書(Punderson)には、重合プロセスの2つの別個の段階、まず、核形成部位としてのポリマー核の形成、および次に、確立された粒子の重合を含む成長段階からなる、水性媒体中のTFEの分散重合が開示されている。なお、重合は通常、重合されるモノマーと重合開始剤との両方が反応器に充填された時に開始される。また、本開示では、核形成部位の形成に関する添加剤を核形成剤とする。
【0036】
本開示の製造方法において用いる核形成剤としては、重合時に一層多くの粒子を発生させられることから、フルオロポリエーテル、非イオン性界面活性剤、および、連鎖移動剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0037】
また、本開示の製造方法において用いる核形成剤としては、重合時に一層多くの粒子を発生させることができ、さらには、平均一次粒子径およびアスペクト比がより一層小さい一次粒子が得られることから、連鎖移動剤がより好ましく、連鎖移動剤、ならびに、非イオン性界面活性剤およびフルオロポリエーテルの一方または両方がさらに好ましい。核形成剤として、連鎖移動剤、ならびに、非イオン性界面活性剤およびフルオロポリエーテルの一方または両方を用いる場合、核形成剤には、連鎖移動剤および非イオン性界面活性剤の組み合わせ、連鎖移動剤およびフルオロポリエーテルの組み合わせ、連鎖移動剤、非イオン性界面活性剤およびフルオロポリエーテルの組み合わせが含まれる。核形成剤としては、なかでも、連鎖移動剤および非イオン性界面活性剤の組み合わせが好ましい。
【0038】
<フルオロポリエーテル>
上記フルオロポリエーテルは、それ自体が重合場を提供し、核形成部位となることができる。
【0039】
上記フルオロポリエーテルとしては、パーフルオロポリエーテルが好ましい。
【0040】
上記フルオロポリエーテルは、式(1a)~(1d)で表される繰り返し単位を有するものであることが好ましい。
(-CFCF3-CF2-O-)n (1a)
(-CF2-CF2-CF2-O-)n (1b)
(-CF2-CF2-O-)n-(-CF2-O-)m (1c)
(-CF2-CFCF3-O-)n-(-CF2-O-)m (1d)
(式(1a)~(1d)中、m及びnは1以上の整数である。)
【0041】
上記フルオロポリエーテルとしては、フルオロポリエーテル酸又はその塩が好ましく、上記フルオロポリエーテル酸は、カルボン酸、スルホン酸、スルホンアミド、又は、ホスホン酸であることが好ましく、カルボン酸であることがより好ましい。フルオロポリエーテル酸又はその塩のなかでも、フルオロポリエーテル酸の塩が好ましく、フルオロポリエーテル酸のアンモニウム塩がより好ましく、フルオロポリエーテルカルボン酸のアンモニウム塩が更に好ましい。
【0042】
上記フルオロポリエーテル酸又はその塩は、分子の主鎖中の酸素原子が、1~3個の炭素原子を有する飽和フルオロカーボン基により分離されているいずれかの鎖構造を有することが可能である。2種以上のタイプのフルオロカーボン基が分子中に存在し得る。
【0043】
これらの構造は、J.Appl.Polymer Sci.、57、797(1995年)においてKasaiにより検討されている。ここに開示されているとおり、このようなフルオロポリエーテルは、一端または両端に、カルボン酸基またはその塩を有することが可能である。同様に、このようなフルオロポリエーテルは、一端または両端に、スルホン酸またはホスホン酸基またはその塩を有し得る。加えて、両端に酸官能基を有するフルオロポリエーテルは、異なる基を各端部に有し得る。単官能性フルオロポリエーテルについて、分子の他端は通常は過フッ素化されているが、水素または塩素原子を含有していてもよい。
【0044】
一端または両端に酸基を有するフルオロポリエーテルは、少なくとも2つのエーテル酸素、好ましくは少なくとも4つのエーテル酸素、およびさらにより好ましくは少なくとも6つのエーテル酸素を有する。好ましくは、エーテル酸素を分離するフルオロカーボン基の少なくとも1つ、より好ましくはこのようなフルオロカーボン基の少なくとも2つは、2または3個の炭素原子を有する。さらにより好ましくは、エーテル酸素を分離するフルオロカーボン基の少なくとも50%が2または3個の炭素原子を有する。また、好ましくは、フルオロポリエーテルは合計で少なくとも15個の炭素原子を有し、例えば、上記の繰り返し単位構造中のnまたはn+mの好ましい最小値は、少なくとも5である。酸基を一端または両端に有する2種以上のフルオロポリエーテルを、本開示による方法において用いることが可能である。典型的には、単一種の特定のフルオロポリエーテル化合物の製造において特別な注意が払われない限り、フルオロポリエーテルは、平均分子量に対する分子量範囲内の様々な割合で複数種の化合物を含有し得る。
【0045】
上記フルオロポリエーテル酸又はその塩としては、下記式:
CF3-CF2-CF2-O(-CFCF3-CF2-O-)nCFCF3-COOH、
CF3-CF2-CF2-O(-CF2-CF2-CF2-O-)n-CF2-CF2COOH、又は、
HOOC-CF2-O(-CF2-CF2-O-)n-(-CF2-O-)mCF2COOH
(式中、m及びnは前記と同じ。)
で表わされる化合物又はそれらの塩であることが好ましい。
【0046】
上記フルオロポリエーテルは、数平均分子量が800g/mol以上であることが好ましい。フルオロポリエーテル酸又はその塩は、水性媒体中への分散が困難であるおそれがあることから、数平均分子量が6000g/mol未満であることが好ましい。フルオロポリエーテル酸又はその塩は、数平均分子量が900g/mol以上であることがより好ましく、1000g/mol以上が更に好ましい。また、3500g/mol以下が好ましく、2500g/mol以下がより好ましい。
【0047】
<非イオン性界面活性剤>
上記非イオン性界面活性剤は、通常、帯電した基を含まず、長鎖炭化水素である疎水性部分を有する。非イオン性界面活性剤の親水性部分は、エチレンオキシドとの重合から誘導されるエチレンエーテルの鎖などの水溶性官能基を含む。
【0048】
非イオン性界面活性剤としては、下記が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、グリセロールエステル、それらの誘導体。
【0049】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等。
【0050】
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの具体例:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等。
【0051】
ポリオキシエチレンアルキルエステルの具体例:ポリエチレングリコールモノラウリレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート等。
【0052】
ソルビタンアルキルエステルの具体例:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等。
【0053】
ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルの具体例:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等。
【0054】
グリセロールエステルの具体例:モノミリスチン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロール等。
【0055】
上記誘導体の具体例:ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニル-ホルムアルデヒド凝縮物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート等。
【0056】
上記エーテル及びエステルは、10~18のHLB値を有してよい。
【0057】
非イオン性炭化水素系界面活性剤としては、ダウ・ケミカル社製のTriton(登録商標)Xシリーズ(X15、X45、X100等)、Tergitol(登録商標)15-Sシリーズ、Tergitol(登録商標)TMNシリーズ(TMN-6、TMN-10、TMN-100等)、Tergitol(登録商標)Lシリーズ、BASF製のPluronic(登録商標)Rシリーズ(31R1、17R2、10R5、25R4(m~22、n~23)、Iconol(登録商標)TDAシリーズ(TDA-6、TDA-9、TDA-10)等が挙げられる。
【0058】
上記非イオン性界面活性剤は、それ自体が重合場を提供し、更に、初期にラジカルを連鎖移動することによって、多くの低分子量フルオロポリマーを与えることにより核形成部位となることができる。
【0059】
上記非イオン性界面活性剤としては、フッ素を含有しない非イオン性界面活性剤であることが好ましい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル等のエーテル型非イオン性界面活性剤;エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロック共重合体等のポリオキシエチレン誘導体;ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のエステル型非イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等のアミン系非イオン性界面活性剤;等が挙げられる。
【0060】
上記非イオン性界面活性剤において、その疎水基は、アルキルフェノール基、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基の何れであってもよい。
【0061】
上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、一般式(i)
R3-O-A1-H (i)
(式中、R3は、炭素数8~18の直鎖状または分岐鎖状の1級または2級アルキル基であり、A1は、ポリオキシアルキレン鎖である。)により表される非イオン性界面活性剤が挙げられる。R3の炭素数は10~16が好ましく、12~16がより好ましい。R3の炭素数が18以下であると水性分散液の良好な分散安定性が得られやすい。またR3の炭素数が18を超えると流動温度が高いため取扱い難い。R3の炭素数が8より小さいと水性分散液の表面張力が高くなり、浸透性やぬれ性が低下しやすい。
【0062】
上記ポリオキシアルキレン鎖は、オキシエチレンとオキシプロピレンとからなるものであってもよい。オキシエチレン基の平均繰り返し数5~20およびオキシプロピレン基の平均繰り返し数0~2からなるポリオキシアルキレン鎖であり、親水基である。オキシエチレン単位数は、通常提供される広いまたは狭い単峰性分布、またはブレンドすることによって得られるより広いまたは二峰性分布のいずれかを含み得る。オキシプロピレン基の平均繰り返し数が0超の場合、ポリオキシアルキレン鎖におけるオキシエチレン基とオキシプロピレン基はブロック状に配列しても、ランダム状に配列してもよい。
水性分散液の粘度および安定性の点からは、オキシエチレン基の平均繰り返し数7~12およびオキシプロピレン基の平均繰り返し数0~2より構成されるポリオキシアルキレン鎖が好ましい。特にA1がオキシプロピレン基を平均して0.5~1.5有すると低起泡性が良好であり好ましい。
【0063】
より好ましくは、R3は、(R’)(R’’)HC-であり、ここで、R’及びR’’は、同じか又は異なる直鎖、分岐鎖、又は環式のアルキル基であり、炭素原子の合計量は、少なくとも5個、好ましくは7~17個である。好ましくは、R’またはR’’のうちの少なくとも一つは、分岐状または環状炭化水素基である。
【0064】
上記非イオン性界面活性剤の具体例としては、C13H27-O-(C2H4O)10-H、C12H25-O-(C2H4O)10-H、C10H21CH(CH3)CH2-O-(C2H4O)9-H、C13H27-O-(C2H4O)9-(CH(CH3)CH2O)-H、C16H33-O-(C2H4O)10-H、HC(C5H11)(C7H15)-O-(C2H4O)9-H等が挙げられる。
【0065】
例えば、上記非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコールのブロックコポリマーが挙げられる。
【0066】
上記非イオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、Genapol X080(製品名、クラリアント社製)、ノイゲンTDS-80(商品名)を例とするノイゲンTDSシリーズ(第一工業製薬社製)、レオコールTD-90(商品名)を例とするレオコールTDシリーズ(ライオン社製)、ライオノール(登録商標)TDシリーズ(ライオン社製)、T-Det A138(商品名)を例とするT-Det Aシリーズ(Harcros Chemicals社製)、タージトール(登録商標)15Sシリーズ(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0067】
上記非イオン性界面活性剤は、平均約4~約18個のエチレンオキシド単位を有する2,6,8-トリメチル-4-ノナノールのエトキシレート、平均約6~約12個のエチレンオキシド単位を有する2,6,8-トリメチル-4-ノナノールのエトキシレート、またはその混合物であることも好ましい。この種類の非イオン性界面活性剤は、例えば、TERGITOL TMN-6、TERGITOL TMN-10、及びTERGITOL TMN-100X(いずれも製品名、ダウ・ケミカル社製)としても市販されている。
【0068】
非イオン性界面活性剤の疎水基は、アルキルフェノール基、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基の何れかであってもよい。
上記非イオン性界面活性剤としては、また、下記一般式(ii)
R4-C6H4-O-A2-H (ii)
(式中、R4は、炭素数4~12の直鎖状または分岐鎖状の1級または2級のアルキル基であり、A2は、ポリオキシアルキレン鎖である。)で表される非イオン性界面活性剤が挙げられる。上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、トライトンX-100(商品名、ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0069】
上記非イオン性界面活性剤としてはポリオール化合物も挙げられる。具体的には、国際公開第2011/014715号に記載されたもの等が挙げられる。
ポリオール化合物の典型例としては、ポリオール単位として1個以上の糖単位を有する化合物が挙げられる。糖単位は、少なくとも1個の長鎖を含有するように変性されてもよい。少なくとも1つの長鎖部分を含有する好適なポリオール化合物としては、例えば、アルキルグリコシド、変性アルキルグリコシド、糖エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。糖としては、単糖、オリゴ糖、及びソルビタンが挙げられるが、これらに限定されない。単糖としては、五炭糖及び六炭糖が挙げられる。単糖の典型例としては、リボース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、アラビノース、キシロースが挙げられる。オリゴ糖としては、2~10個の同一又は異なる単糖のオリゴマーが挙げられる。オリゴ糖の例としては、サッカロース、マルトース、ラクトース、ラフィノース、及びイソマルトースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
典型的に、ポリオール化合物として使用するのに好適な糖としては、4個の炭素原子と1個のヘテロ原子(典型的に、酸素又は硫黄であるが、好ましくは酸素原子)との五員環を含有する環状化合物、又は5個の炭素原子と上述のような1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子との六員環を含有する環状化合物が挙げられる。これらは、炭素環原子に結合している少なくとも2個の又は少なくとも3個のヒドロキシ基(-OH基)を更に含有する。典型的に、糖は、エーテル又はエステル結合が長鎖残基と糖部分との間に作製されるように、炭素環原子に結合しているヒドロキシ基(及び/又はヒドロキシアルキル基)の水素原子のうちの1個以上が、長鎖残基によって置換されているという点で変性されている。
糖系ポリオールは、1個の糖単位又は複数の糖単位を含有してもよい。1個の糖単位又は複数の糖単位は、上述のような長鎖部分で変性されてもよい。糖系ポリオール化合物の特定の例としては、グリコシド、糖エステル、ソルビタンエステル、並びにこれらの混合物及び組み合わせが挙げられる。
【0071】
ポリオール化合物の好ましい種類は、アルキル又は変性アルキルグルコシドである。これらの種類の界面活性剤は、少なくとも1個のグルコース部分を含有する。
【化1】
(式中、xは、0、1、2、3、4、又は5を表し、R
1及びR
2は、独立して、H又は少なくとも6個の炭素原子を含有する長鎖単位を表すが、但しR
1及びR
2のうちの少なくとも1個はHではない)によって表される化合物が挙げられる。R
1及びR
2の典型例としては、脂肪族アルコール残基が挙げられる。脂肪族アルコールの例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、テトラデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、エイコサン酸、及びこれらの組み合わせ挙げられる。
上記の式は、ピラノース形態のグルコースを示すアルキルポリグルコシドの特定の例を表すが、他の糖又は同じ糖であるが異なる鏡像異性体又はジアステレオマー形態である糖を用いてもよいことが理解される。
アルキルグルコシドは、例えば、グルコース、デンプン、又はn-ブチルグルコシドと脂肪族アルコールとの酸触媒反応によって入手可能であり、これからは、典型例に、様々なアルキルグルコシドの混合物が得られる(Alkylpolygylcoside,Rompp,Lexikon Chemie,Version 2.0,Stuttgart/New York,Georg Thieme Verlag,1999)。脂肪族アルコールの例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、テトラデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、エイコサン酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。また、アルキルグルコシドは、Cognis GmbH,Dusseldorf,Germanyから商品名GLUCOPON又はDISPONILとして市販されている。
【0072】
その他のノニオン系界面活性剤として、BASFからPluronic(登録商標)Rシリーズとして供給される二官能基ブロックコポリマー、BASF社からIconol(登録商標)TDAシリーズとして供給されるトリデシルアルコールアルコキシレートが挙げられる。
【0073】
上記非イオン性界面活性剤としては、一般式(i)で表される非イオン性界面活性剤、及び、一般式(ii)で表される非イオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0074】
<連鎖移動剤>
上記連鎖移動剤は、初期にラジカルを連鎖移動することによって、多くの低分子量フルオロポリマーを与えることにより核形成部位となることができる。
【0075】
上記連鎖移動剤としては、たとえばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジメチルなどのエステル類のほか、イソペンタン、メタン、エタン、プロパン、イソブタン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、各種メルカプタン、四塩化炭素などの各種ハロゲン化炭化水素、シクロヘキサンなどがあげられる。
【0076】
連鎖移動剤として臭素化合物又はヨウ素化合物を使用してもよい。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用して行う重合方法としては、たとえば、実質的に無酸素状態で、臭素化合物又はヨウ素化合物の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーの重合を行う方法があげられる(ヨウ素移動重合法)。使用する臭素化合物又はヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、一般式:
RaIxBry
(式中、xおよびyはそれぞれ0~2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、Raは炭素数1~16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1~3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物があげられる。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用することによって、ヨウ素または臭素が重合体に導入され、架橋点として機能する。
【0077】
臭素化合物又はヨウ素化合物としては、たとえば1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、2-ヨードパーフルオロプロパン、1,3-ジヨード-2-クロロパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,5-ジヨード-2,4-ジクロロパーフルオロペンタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン、1,12-ジヨードパーフルオロドデカン、1,16-ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2-ジヨードエタン、1,3-ジヨード-n-プロパン、CF2Br2、BrCF2CF2Br、CF3CFBrCF2Br、CFClBr2、BrCF2CFClBr、CFBrClCFClBr、BrCF2CF2CF2Br、BrCF2CFBrOCF3、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、3-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、2-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2-ヨードエチル)および(2-ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0078】
連鎖移動剤としては、これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、アルカン及びアルコールからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。アルカンの炭素数は、1~6が好ましく、2~4がより好ましく、3~4がさらに好ましい。またアルコールの炭素数は、1~5が好ましく、1~4がより好ましく、3~4がさらに好ましい。連鎖移動剤としては、炭素数1~4のアルコールおよび炭素数2~4のアルカンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、イソプロパノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノールからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。特に、3級炭素を含む連鎖移動剤を用いることにより、重合時に一層多くの粒子を発生させられる。
【0079】
<重合体(I)>
本開示の製造方法において用いる重合体(I)は、一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含む。重合体(I)は重合単位(I)を2以上含むことが好ましい。
CX1X3=CX2R(-CZ1Z2-A0)m (I)
(式中、X1およびX3は、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCF3であり;X2は、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;A0は、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z1およびZ2は、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
X2としては、F、Cl、H又はCF3が好ましい。また、Z1及びZ2としては、FまたはCF3が好ましい。
【0080】
本開示において、アニオン性基には、サルフェート基、カルボキシレート基などのアニオン性基に加えて、-COOHのような酸基、-COONH4のような酸塩基などのアニオン性基を与える官能基が含まれる。アニオン性基としては、サルフェート基、カルボキシレート基、ホスフェート基、ホスホネート基、スルホネート基、または、-C(CF3)2OM(式中、Mは、-H、金属原子、-NR7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R7は、Hまたは有機基である。)が好ましい。
【0081】
重合体(I)は、一般式(I)で表される1種の単量体に基づく重合単位(I)のみを含むものであってもよいし、一般式(I)で表される2種以上の単量体に基づく重合単位(I)を含むものであってもよい。
【0082】
Rは、連結基である。本開示において「連結基」は、(m+1)価連結基であり、mが1の場合は二価連結基である。連結基は、単結合であってもよく、少なくとも1個の炭素原子を含むことが好ましく、炭素原子の数は、2以上であってよく、4以上であってよく、8以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってもよい。上限は限定されないが、たとえば、100以下であってよく、50以下であってよい。
【0083】
連結基は、鎖状または分岐鎖状、環状または非環状構造、飽和または不飽和、置換または非置換であってよく、所望により硫黄、酸素、および窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含み、所望によりエステル、アミド、スルホンアミド、カルボニル、カーボネート、ウレタン、尿素およびカルバメートからなる群から選択される1つ以上の官能基を含んでよい。上記連結基は、炭素原子を含まず、酸素、硫黄または窒素等のカテナリーヘテロ原子であってもよい。
【0084】
mは1以上の整数であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。mが2以上の整数である場合、Z1、Z2およびA0は、同一であっても、異なっていてもよい。
次に、一般式(I)においてmが1である場合の好適な構成について説明する。
【0085】
Rは、たとえば、酸素、硫黄、窒素等のカテナリーヘテロ原子、または、2価の有機基であることが好ましい。
【0086】
Rが2価の有機基である場合、炭素原子に結合する水素原子は、フッ素以外のハロゲン、たとえば塩素等で置き換えられてもよく、二重結合を含んでも含まなくてもよい。また、Rは、鎖状および分岐鎖状のいずれでもよく、環状および非環状のいずれでもよい。また、Rは、官能基(たとえば、エステル、エーテル、ケトン(ケト基)、アミン、ハロゲン化物等)を含んでもよい。
【0087】
Rはまた、非フッ素の2価の有機基であってもよいし、部分フッ素化または過フッ素化された2価の有機基であってもよい。
【0088】
Rとしては、たとえば、炭素原子にフッ素原子が結合していない炭化水素基、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子で置換された炭化水素基、または、炭素原子に結合する水素原子の全てがフッ素原子で置換された炭化水素基であってもよく、これらは酸素原子を含んでいてもよく、二重結合を含んでいてもよく、官能基を含んでいてもよい。
【0089】
Rは、エーテル結合またはケト基を含んでいてもよい炭素数1~100の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基は、炭素原子に結合する水素原子の一部または全部がフッ素に置換されていてもよい。
【0090】
Rとして好ましくは、-(CH2)a-、-(CF2)a-、-O-(CF2)a-、-(CF2)a-O-(CF2)b-、-O(CF2)a-O-(CF2)b-、-(CF2)a-[O-(CF2)b]c-、-O(CF2)a-[O-(CF2)b]c-、-[(CF2)a-O]b-[(CF2)c-O]d-、-O[(CF2)a-O]b-[(CF2)c-O]d-、-O-[CF2CF(CF3)O]a-(CF2)b-、-[CF2CF(CF3)O]a-、-[CF(CF3)CF2O]a-、-(CF2)a-O-[CF(CF3)CF2O]a-、-(CF2)a-O-[CF(CF3)CF2O]a-(CF2)b-、-[CF2CF(CF3)]a-CO-(CF2)b-、および、これらの組み合わせから選択される少なくとも1種である。
式中、a、b、cおよびdは独立して少なくとも1以上である。a、b、cおよびdは独立して、2以上であってよく、3以上であってよく、4以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってよい。a、b、cおよびdの上限は、たとえば、100である。
【0091】
Rとしては、一般式(r1):
-CF2-O-(CX6
2)e-{O-CF(CF3)}f-(O)g- (r1)
(式中、X6はそれぞれ独立してH、FまたはCF3であり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0または1である)で表される2価の基が好ましく、一般式(r2):
-CF2-O-(CX7
2)e-(O)g- (r2)
(式中、X7はそれぞれ独立してH、FまたはCF3であり、eは0~3の整数であり、gは0または1である)で表される2価の基がより好ましい。
【0092】
Rとして好適な具体的としては、-CF2-O-、-CF2-O-CF2-、-CF2-O-CH2-、-CF2-O-CH2CF2-、-CF2-O-CF2CF2-、-CF2-O-CF2CH2-、-CF2-O-CF2CF2CH2-、-CF2-O-CF(CF3)-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-O-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-O-CF2-、-CF2-O-CF(CF3)CH2-等が挙げられる。なかでも、Rは、酸素原子を含んでもよい、パーフルオロアルキレン基が好ましく、具体的には、-CF2-O-、-CF2-O-CF2-、-CF2-O-CF2CF2-、-CF2-O-CF(CF3)-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-、または、-CF2-O-CF(CF3)CF2-O-が好ましい。
【0093】
一般式(I)の-R-CZ1Z2-としては、一般式(s1):
-CF2-O-(CX6
2)e-{O-CF(CF3)}f-(O)g-CZ1Z2- (s1)
(式中、X6はそれぞれ独立してH、FまたはCF3であり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0または1であり、Z1およびZ2は、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基である)で表されるものが好ましく、式(s1)において、Z1およびZ2は、FまたはCF3がより好ましく、一方がFで他方がCF3であることがさらに好ましい。
【0094】
また、一般式(I)において、-R-CZ1Z2-としては、一般式(s2):
-CF2-O-(CX7
2)e-(O)g-CZ1Z2- (s2)
(式中、X7はそれぞれ独立してH、FまたはCF3であり、eは0~3の整数であり、gは0または1であり、Z1およびZ2は、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基である)で表されるものが好ましく、式(s2)において、Z1およびZ2は、FまたはCF3がより好ましく、一方がFで他方がCF3であることがさらに好ましい。
【0095】
一般式(I)の-R-CZ1Z2-としては、-CF2-O-CF2-、-CF2-O-CF(CF3)-、-CF2-O-C(CF3)2-、-CF2-O-CF2-CF2-、-CF2-O-CF2-CF(CF3)-、-CF2-O-CF2-C(CF3)2-、-CF2-O-CF2CF2-CF2-、-CF2-O-CF2CF2-CF(CF3)-、-CF2-O-CF2CF2-C(CF3)2-、-CF2-O-CF(CF3)-CF2-、-CF2-O-CF(CF3)-CF(CF3)-、-CF2-O-CF(CF3)-C(CF3)2-、-CF2-O-CF(CF3)-CF2-、-CF2-O-CF(CF3)-CF(CF3)-、-CF2-O-CF(CF3)-C(CF3)2-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-CF2-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-CF(CF3)-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-C(CF3)2-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-O-CF2-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-O-CF(CF3)-、または、-CF2-O-CF(CF3)CF2-O-C(CF3)2-が好ましく、-CF2-O-CF(CF3)-、-CF2-O-CF2-CF(CF3)-、-CF2-O-CF2CF2-CF(CF3)-、-CF2-O-CF(CF3)-CF(CF3)-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-CF(CF3)-、または、-CF2-O-CF(CF3)CF2-O-CF(CF3)-がより好ましい。
【0096】
重合体(I)は、高度にフッ素化されていることも好ましい。たとえば、ホスフェート基部分(たとえば、CH2OP(O)(OM)2)およびサルフェート基部分(たとえば、CH2OS(O)2OM)のようなアニオン性基(A0)を除き、重合体(I)中のC-H結合の80%以上、90%以上、95%以上、または100%がC-F結合で置換されていることが好ましい。
【0097】
重合体(I)は、アニオン性基(A0)を除いて、C-F結合を有し、C-H結合を有していないことも好ましい。すなわち、一般式(I)において、X1、X2、およびX3の全てがFであり、Rは炭素数が1以上のパーフルオロアルキレン基であることが好ましく、上記パーフルオロアルキレン基は、鎖状および分岐鎖状のいずれでもよく、環状および非環状のいずれでもよく、少なくとも1つのカテナリーヘテロ原子を含んでもよい。上記パーフルオロアルキレン基の炭素数は、2~20であってよく、4~18であってもよい。
【0098】
重合体(I)は、部分フッ素化されたものであってもよい。すなわち、重合体(I)は、アニオン性基(A0)を除いて、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を有し、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有することも好ましい。
【0099】
アニオン性基(A0)は、-SO3M、-OSO3M、-COOM、-SO2NR’CH2COOM、-CH2OP(O)(OM)2、[-CH2O]2P(O)(OM)、-CH2CH2OP(O)(OM)2、[-CH2CH2O]2P(O)(OM)、-CH2CH2OSO3M、-P(O)(OM)2、-SO2NR’CH2CH2OP(O)(OM)2、[-SO2NR’CH2CH2O]2P(O)(OM)、-CH2OSO3M、-SO2NR’CH2CH2OSO3M、または、-C(CF3)2OMであってよい。なかでも、-SO3M、-COOMまたは-P(O)(OM)2が好ましく、-SO3Mまたは-COOMがより好ましく、-COOMがさらに好ましい。
【0100】
Mは、H、金属原子、NR7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R7は、Hまたは有機基である。
【0101】
金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、KまたはLiが好ましい。
【0102】
Mとしては、-H、金属原子またはNR7
4が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR7
4がより好ましく、-H、-Na、-K、-LiまたはNH4が更に好ましく、-H、-Na、-KまたはNH4が更により好ましく、-H、-NaまたはNH4が特に好ましく、-Hまたは-NH4が最も好ましい。
【0103】
重合体(I)において、各重合単位(I)で異なるアニオン性基を有してもよいし、同じアニオン性基を有してもよい。
【0104】
重合体(I)は、一般式(Ia)で示される単量体に基づく重合単位(Ia)を含む重合体であることも好ましい。
CF2=CF-O-Rf0-A0 (Ia)
(式中、A0はアニオン性基であり、Rf0は、過フッ素化されており、鎖状または分岐鎖状、環状または非環状構造、飽和または不飽和、置換または非置換であってもよく、硫黄、酸素、および窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意追加的に含有する過フッ素化二価連結基である。)
【0105】
上記重合体(I)は、一般式(Ib)で示される単量体に基づく重合単位(Ib)を含む重合体であることも好ましい。
CH2=CH-O-Rf0-A0 (Ib)
(式中、A0はアニオン性基であり、Rf0は式(Ia)で定義される過フッ素化二価連結基である。)
【0106】
一般式(I)において、A0はサルフェート基であることが好ましい形態の一つである。A0は、たとえば、-CH2OSO3M、-CH2CH2OSO3M、または、-SO2NR’CH2CH2OSO3Mであり、式中、R’はH、または炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。
【0107】
A0がサルフェート基である場合、一般式(I)で表される単量体としては、たとえば、CF2=CF(OCF2CF2CH2OSO3M)、CH2=CH((CF2)4CH2OSO3M)、CF2=CF(O(CF2)4CH2OSO3M)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)CH2OSO3M)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)OCF2CF2CH2OSO3M)、CH2=CH((CF2)4CH2OSO3M)、CF2=CF(OCF2CF2SO2N(CH3)CH2CH2OSO3M)、CH2=CH(CF2CF2CH2OSO3M)、CF2=CF(OCF2CF2CF2CF2SO2N(CH3)CH2CH2OSO3M)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0108】
一般式(I)において、A0はスルホネート基であることも好ましい形態の一つである。A0としてはたとえば、-SO3Mであり、式中、Mは上記と同じである。
【0109】
A0がスルホネート基である場合、一般式(I)で表される単量体としては、CF2=CF(OCF2CF2SO3M)、CF2=CF(O(CF2)3SO3M)、CF2=CF(O(CF2)4SO3M)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)SO3M)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)OCF2CF2SO3M)、CH2=CH(CF2CF2SO3M)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2CF2SO3M)、CH2=CH((CF2)4SO3M)、CH2=CH((CF2)3SO3M)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0110】
一般式(I)において、A0はカルボキシレート基であることも好ましい形態の一つである。A0としては、たとえばCOOMまたはSO2NR’CH2COOMであり、式中、R’はHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。A0がカルボキシレート基である場合、一般式(I)で表される単量体としては、CF2=CF(OCF2CF2COOM)、CF2=CF(O(CF2)3COOM)、CF2=CF(O(CF2)4COOM)、CF2=CF(O(CF2)5COOM)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)COOM)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)O(CF2)nCOOM)(nは1より大きい)、CH2=CH(CF2CF2COOM)、CH2=CH((CF2)4COOM)、CH2=CH((CF2)3COOM)、CF2=CF(OCF2CF2SO2NR’CH2COOM)、CF2=CF(O(CF2)4SO2NR’CH2COOM)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)SO2NR’CH2COOM)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2NR’CH2COOM)、CH2=CH(CF2CF2SO2NR’CH2COOM)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2CF2SO2NR’CH2COOM)、CH2=CH((CF2)4SO2NR’CH2COOM)、CH2=CH((CF2)3SO2NR’CH2COOM)等が挙げられる。上記式中、R’はHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。
【0111】
一般式(I)において、A0はホスフェート基であることも好ましい形態の一つである。A0としては、たとえば、-CH2OP(O)(OM)2、[-CH2O]2P(O)(OM)、-CH2CH2OP(O)(OM)2、[-CH2CH2O]2P(O)(OM)、[-SO2NR’CH2CH2O]2P(O)(OM)またはSO2NR’CH2CH2OP(O)(OM)2であり、式中、R’は炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。
【0112】
A0がホスフェートである場合、一般式(I)で表される単量体としては、CF2=CF(OCF2CF2CH2OP(O)(OM)2)、CF2=CF(O(CF2)4CH2OP(O)(OM)2)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)CH2OP(O)(OM)2)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)OCF2CF2CH2OP(O)(OM)2)、CF2=CF(OCF2CF2SO2N(CH3)CH2CH2OP(O)(OM)2)、CF2=CF(OCF2CF2CF2CF2SO2N(CH3)CH2CH2OP(O)(OM)2)、CH2=CH(CF2CF2CH2OP(O)(OM)2)、CH2=CH((CF2)4CH2OP(O)(OM)2)、CH2=CH((CF2)3CH2OP(O)(OM)2)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0113】
一般式(I)において、A0はホスホネート基であることも好ましい形態の一つである。A0がホスホネート基である場合、一般式(I)で表される単量体としては、CF2=CF(OCF2CF2P(O)(OM)2)、CF2=CF(O(CF2)4P(O)(OM)2)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)P(O)(OM)2)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)OCF2CF2P(O)(OM)2)、CH2=CH(CF2CF2P(O)(OM)2)、CH2=CH((CF2)4P(O)(OM)2)、CH2=CH((CF2)3P(O)(OM)2)が挙げられ、式中、Mは上記と同じである。
【0114】
重合体(I)は、一般式(1)で表される単量体に基づく重合単位(1)を含む重合体(1)であることが好ましい。
CX2=CY(-CZ2-O-Rf-A) (1)
(式中、Xは、同一または異なって、-HまたはFであり、Yは-H、-F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり、Zは、同一または異なって、-H、-F、アルキル基またはフルオロアルキル基である。Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、-COOM、-SO3M、-OSO3MまたはC(CF3)2OM(Mは、-H、金属原子、-NR7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R7は、Hまたは有機基である。)である。但し、X、YおよびZの少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
【0115】
上記炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
【0116】
一般式(1)において、Xは-HまたはFである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。たとえば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
【0117】
一般式(1)において、Yは-H、-F、アルキル基または含フッ素アルキル基である。上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。上記Yとしては、-H、-Fまたは-CF3が好ましく、-Fがより好ましい。
【0118】
一般式(1)において、Zは、同一または異なって、-H、-F、アルキル基またはフルオロアルキル基である。上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。上記Zとしては、-H、-Fまたは-CF3が好ましく、-Fがより好ましい。
【0119】
一般式(1)において、上記X、YおよびZの少なくとも1つはフッ素原子を含む。たとえば、Xが-Hであり、YおよびZが-Fであってよい。
【0120】
一般式(1)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。
【0121】
上記含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、上記含フッ素アルキレン基の炭素数は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、6以下が特に好ましく、3以下が最も好ましい。上記含フッ素アルキレン基としては、-CF2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CF2CH2-、-CF2CF2CF2-、-CF2CF2CH2-、-CF(CF3)-、-CF(CF3)CF2-、-CF(CF3)CH2-等が挙げられる。上記含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0122】
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましく、9以下が特に好ましく、6以下が最も好ましい。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、たとえば、一般式:
【化2】
(式中、Z
1はFまたはCF
3;Z
2およびZ
3はそれぞれHまたはF;Z
4はH、FまたはCF
3;p1+q1+r1が1~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数)で表される2価の基であることも好ましい。
【0123】
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CF(CF3)CF2-O-CF(CF3)-、-(CF(CF3)CF2-O)n-CF(CF3)-(式中、nは1~10の整数)、-CF(CF3)CF2-O-CF(CF3)CH2-、-(CF(CF3)CF2-O)n-CF(CF3)CH2-(式中、nは1~10の整数)、-CH2CF2CF2O-CH2CF2CH2-、-CF2CF2CF2O-CF2CF2-、-CF2CF2CF2O-CF2CF2CH2-、-CF2CF2O-CF2-、-CF2CF2O-CF2CH2-等が挙げられる。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0124】
一般式(1)において、Aは、-COOM、-SO3M、-OSO3Mまたは-C(CF3)2OM(Mは、H、金属原子、NR7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R7は、Hまたは有機基)である。
【0125】
R7としては、HまたはC1-10の有機基が好ましく、HまたはC1-4の有機基がより好ましく、HまたはC1-4のアルキル基が更に好ましい。
【0126】
金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、KまたはLiが好ましい。
【0127】
Mとしては、H、金属原子またはNR7
4が好ましく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR7
4がより好ましく、H、Na、K、LiまたはNH4が更に好ましく、H、Na、KまたはNH4が更により好ましく、H、-NaまたはNH4が特に好ましく、HまたはNH4が最も好ましい。
【0128】
Aとしては、-COOMまたは-SO3Mが好ましく、-COOMがより好ましい。
【0129】
一般式(1)で表される単量体としては、たとえば、一般式(1a):
CX2=CFCF2-O-(CF(CF3)CF2O)n5-CF(CF3)-A (1a)
(式中、各Xは、同一であり、FまたはHを表す。n5は0または1~10の整数を表し、Aは、上記定義と同じ。)で表されるフルオロアリルエーテル化合物が例示される。
【0130】
一般式(1a)において、n5は、0または1~5の整数であることが好ましく、0、1または2であることがより好ましく、0または1であることが更に好ましい。
【0131】
重合体(1)は、一般式(1a)で表されるフルオロアリルエーテル化合物の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
【0132】
重合単位(1)は、一般式(1A)で表される単量体に基づく重合単位(1A)であることが好ましい。
CH2=CF(-CF2-O-Rf-A) (1A)
(式中、RfおよびAは前記と同じ。)
【0133】
重合体(1)は、一般式(1A)で表される単量体の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
【0134】
式(1A)で表される単量体として具体的には、一般式
【0135】
【0136】
(式中、Z1はFまたはCF3;Z2およびZ3はそれぞれHまたはF;Z4はH、FまたはCF3;p1+q1+r1が0~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数、ただし、Z3およびZ4がともにHの場合、p1+q1+r1+s1が0でない;Aは上記定義と同じ)で表される単量体が挙げられる。より具体的には、
【0137】
【0138】
などが好ましく挙げられ、なかでも
【0139】
【0140】
であることが好ましい。
【0141】
一般式(1A)で表される単量体としては、式(1A)中のAが-COOMであることが好ましく、特に、CH2=CFCF2OCF(CF3)COOM、および、CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CH2=CFCF2OCF(CF3)COOMがより好ましい。
【0142】
また、一般式(1)で表される単量体としては、下記式で表される単量体等も挙げられる。
CF2=CFCF2-O-Rf-A
(式中、RfおよびAは上記と同じ)
【0143】
【0144】
重合体(I)は、一般式(2)で表される単量体に基づく重合単位(2)を含む重合体(2)であることも好ましい。
CX2=CY(-O-Rf-A) (2)
(式中、Xは、同一または異なって、-HまたはFであり、Yは-H、-F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合もしくはケト基を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、前記と同じである。)
【0145】
一般式(2)において、Xは-Hまたは-Fである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。たとえば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
【0146】
一般式(2)において、Yは-H、-F、アルキル基または含フッ素アルキル基である。アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。Yとしては、-H、-Fまたは-CF3が好ましく、-Fがより好ましい。
【0147】
一般式(2)において、上記XおよびYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。たとえば、Xが-Hであり、YおよびZが-Fであってよい。
【0148】
一般式(2)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のケト基を有する含フッ素アルキレン基である。なお、上記炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
【0149】
Rfの含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、5以下が特に好ましい。含フッ素アルキレン基としては、-CF2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CF2CH2-、-CF2CF2CH2-、-CF(CF3)-、-CF(CF3)CF2-、-CF(CF3)CH2-、-CF2CF2CF2-、CF2CF2CF2CF2-等が挙げられる。含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましく、分岐していない直鎖状のパーフルオロアルキレン基であることがより好ましい。
【0150】
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましく、5以下が特に好ましい。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、たとえば、一般式:
【化7】
(式中、Z
1はFまたはCF
3;Z
2およびZ
3はそれぞれHまたはF;Z
4はH、FまたはCF
3;p1+q1+r1が1~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数)で表される2価の基であることも好ましい。
【0151】
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CF2CF(CF3)OCF2CF2-、-CF(CF3)CF2-O-CF(CF3)-、-(CF(CF3)CF2-O)n-CF(CF3)-(式中、nは1~10の整数)、-CF(CF3)CF2-O-CF(CF3)CH2-、-(CF(CF3)CF2-O)n-CF(CF3)CH2-(式中、nは1~10の整数)、-CH2CF2CF2O-CH2CF2CH2-、-CF2CF2CF2O-CF2-、-CF2CF2CF2O-CF2CF2-、-CF2CF2CF2O-CF2CF2CF2-、-CF2CF2CF2O-CF2CF2CH2-、-CF2CF2O-CF2-、-CF2CF2O-CF2CH2-等が挙げられる。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0152】
上記ケト基を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、上記ケト基を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましく、5以下が特に好ましい。
【0153】
上記ケト基を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CF2CF(CF3)CO-CF2-、-CF2CF(CF3)CO-CF2CF2-、-CF2CF(CF3)CO-CF2CF2CF2-、-CF2CF(CF3)CO-CF2CF2CF2CF2-等が挙げられる。上記ケト基を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0154】
一般式(2)で表される単量体は、一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)および(2e)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
CF2=CF-O-(CF2)n1-A (2a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Aは前記と同じ。)
CF2=CF-O-(CF2C(CF3)F)n2-A (2b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)
CF2=CF-O-(CFX1)n3-A (2c)
(式中、X1は、FまたはCF3を表し、n3は、1~10の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)
CF2=CF-O-(CF2CFX1O)n4-(CF2)n6-A (2d)
(式中、n4は、1~10の整数を表し、n6は、1~3の整数を表し、AおよびX1は、前記定義と同じ。)
CF2=CF-O-(CF2CF2CFX1O)n5-CF2CF2CF2-A (2e)
(式中、n5は、0~10の整数を表し、AおよびX1は、前記定義と同じ。)
【0155】
一般式(2a)において、上記n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。
【0156】
一般式(2a)で表される単量体としては、たとえば、CF2=CF-O-CF2COOM、CF2=CF(OCF2CF2COOM)、CF2=CF(O(CF2)3COOM)、CF2=CF(OCF2CF2SO3M)(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
【0157】
一般式(2b)において、n2は、得られる組成物の分散安定性の点で、3以下の整数であることが好ましい。
【0158】
一般式(2c)において、n3は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Aは、-COOMであることが好ましく、上記Mは、HまたはNH4であることが好ましい。
【0159】
一般式(2d)において、X1は、組成物の分散安定性の点で、-CF3であることが好ましく、n4は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、HまたはNH4であることが好ましい。
【0160】
一般式(2d)で表される単量体としては、たとえば、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOM、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2COOM、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2COOM(式中、Mは、H、NH4またはアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
【0161】
一般式(2e)において、n5は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、HまたはNH4であることが好ましい。
【0162】
一般式(2e)で表される単量体としては、たとえば、CF2=CFOCF2CF2CF2COOM(式中、Mは、H、NH4またはアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
【0163】
重合体(I)は、一般式(3)で表される単量体に基づく重合単位(3)を含む重合体(3)であることも好ましい。
CX2=CY(-Rf-A) (3)
(式中、Xは、同一または異なって、-Hまたは-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、前記と同じである。)
【0164】
なお、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
【0165】
一般式(3)において、Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基であることが好ましい。一般式(3)において、XおよびYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。
【0166】
一般式(3)で表される単量体は、一般式(3a):
CF2=CF-(CF2)n1-A (3a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)で表される単量体、および、一般式(3b):
CF2=CF-(CF2C(CF3)F)n2-A (3b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0167】
一般式(3a)および一般式(3b)において、Aは、-SO3Mまたは-COOMが好ましく、Mは、H、金属原子、NR7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであることが好ましい。R7は、Hまたは有機基を表す。
【0168】
一般式(3a)において、n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、HまたはNH4であることが好ましい。
【0169】
一般式(3a)で表される単量体としては、たとえば、CF2=CFCF2COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
【0170】
一般式(3b)において、n2は、得られる組成物の分散安定性の点で、3以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、HまたはNH4であることが好ましい。
【0171】
次に、一般式(I)においてmが2以上の整数である場合の好適な構成について説明する。
【0172】
重合体(I)は、一般式(4a)および一般式(4b)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体に基づく重合単位(4)を含む重合体(4)であることも好ましい。
CF2=CF-CF2-O-QF1-CF(-QF2-CZ1Z2-A)2 (4a)
(式中、Z1、Z2およびAは上記定義と同じ、QF1およびQF2は、同一又は異なって、単結合、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキレン基または炭素炭素間にエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素オキシアルキレン基である)
CF2=CF-O-QF1-CF(-QF2-CZ1Z2-A)2 (4b)
(式中、Z1、Z2、A、QF1およびQF2は上記定義と同じ)
【0173】
一般式(4a)および一般式(4b)で表される単量体としては、
【化8】
等が挙げられる。
【0174】
重合体(I)は、重合体(1)、重合体(2)および重合体(3)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、重合体(1)がより好ましい。
【0175】
重合体(I)は、重合単位(I)のみからなる単独重合体であってもよいし、重合単位(I)と、一般式(I)で表される単量体と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位とを含む共重合体であってもよい。水性媒体への溶解性の観点からは、重合単位(I)のみからなる単独重合体が好ましい。重合単位(I)は、各出現において、同一または異なっていてもよく、重合体(I)は、2種以上の異なる一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含んでいてもよい。
【0176】
上記他の単量体としては、一般式CFR=CR2(式中、Rは、独立に、H、Fまたは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である)で表される単量体が好ましい。また、他の単量体としては、炭素数2または3の含フッ素エチレン性単量体が好ましい。他の単量体としては、たとえば、CF2=CF2、CF2=CFCl、CH2=CF2、CFH=CH2、CFH=CF2、CF2=CFCF3、CH2=CFCF3、CH2=CHCF3、CHF=CHCF3(E体)、CHF=CHCF3(Z体)などが挙げられる。
なかでも、共重合性が良好である点で、テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)、クロロトリフルオロエチレン(CF2=CFCl)およびフッ化ビニリデン(CH2=CF2)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、テトラフルオロエチレンがより好ましい。従って、上記他の単量体に基づく重合単位は、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位であることが好ましい。上記他の単量体に基づく重合単位は、各出現において、同一または異なっていてもよく、重合体(I)は、2種以上の異なる他の単量体に基づく重合単位を含んでいてもよい。
【0177】
上記他の単量体としては、また、一般式(n1-2):
【0178】
【0179】
(式中、X1、X2は同じかまたは異なりHまたはF;X3はH、F、Cl、CH3またはCF3;X4、X5は同じかまたは異なりHまたはF;aおよびcは同じかまたは異なり0または1である。Rf3は炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される単量体が挙げられる。
【0180】
具体的には、CH2=CFCF2-O-Rf3、CF2=CF-O-Rf3、CF2=CFCF2-O-Rf3、CF2=CF-Rf3、CH2=CH-Rf3、CH2=CH-O-Rf3(式中、Rf3は前記式(n1-2)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0181】
上記他の単量体としては、式(n2-1):
【0182】
【0183】
(式中、X9はH、FまたはCH3;Rf4は炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素アクリレート単量体も挙げられる。上記Rf4基は、
【0184】
【0185】
(式中、d3は1~4の整数;e3は1~10の整数)などが挙げられる。
【0186】
上記他の単量体としては、式(n2-2):
CH2=CHO-Rf5 (n2-2)
(式中、Rf5は炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素ビニルエーテルも挙げられる。
【0187】
一般式(n2-2)の単量体として具体的には、
【0188】
【0189】
(式中、e6は1~10の整数)などが好ましく挙げられる。
【0190】
より具体的には、
【0191】
【0192】
などが挙げられる。
【0193】
その他、一般式(n2-3):
CH2=CHCH2O-Rf6 (n2-3)
(式中、Rf6は炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素アリルエーテル、一般式(n2-4):
CH2=CH-Rf7 (n2-4)
(式中、Rf7は炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素ビニル単量体等も挙げられる。
【0194】
一般式(n2-3)および(n2-4)で表される単量体として具体的には、
【0195】
【0196】
などの単量体が挙げられる。
【0197】
重合体(I)は、通常、末端基を有する。末端基は、重合時に生成する末端基であり、代表的な末端基は、水素、ヨウ素、臭素、鎖状または分岐鎖状のアルキル基、および、鎖状または分岐鎖状のフルオロアルキル基から独立に選択され、任意追加的に少なくとも1つのカテナリーヘテロ原子を含有してもよい。アルキル基またはフルオロアルキル基は、炭素数が1~20であることが好ましい。これらの末端基は、一般的には、重合体(I)の形成に使用される開始剤または連鎖移動剤から生成するか、または連鎖移動反応中に生成する。
【0198】
重合体(I)は、重合単位(I)の含有量が全重合単位に対して1.0モル%以上が好ましく、3.0モル%以上がより好ましく、5.0モル%以上が更に好ましく、10モル%以上が更により好ましく、20モル%以上が殊更好ましく、30モル%以上が特に好ましい。より好ましくは、40モル%以上であり、更に好ましくは、60モル%以上であり、更により好ましくは、80モル%以上であり、特に好ましくは、90モル%以上であり、実質的に100モル%であることが殊更に好ましく、重合単位(I)のみからなることが最も好ましい。
【0199】
重合体(I)において、一般式(I)で表される単量体と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量は、全重合単位に対して99.0モル%以下が好ましく、97.0モル%以下がより好ましく、95.0モル%以下が更に好ましく、90モル%以下が更により好ましく、80モル%以下が殊更好ましく、70モル%以下が特に好ましい。より好ましくは、60モル%以下であり、更に好ましくは40モル%以下であり、更により好ましくは20モル%以下であり、特に好ましくは10モル%以下であり、実質的に0モル%が殊更に好ましく、他の単量体に基づく重合単位を含まないことが特に殊更好ましい。
【0200】
重合体(I)の数平均分子量は、0.1×104以上が好ましく、0.2×104以上がより好ましく、0.3×104以上が更に好ましく、0.4×104以上が更により好ましく、0.5×104以上が殊更に好ましく、1.0×104以上が特に好ましく、3.0×104以上が殊更特に好ましく、3.1×104以上が最も好ましい。また、75.0×104以下が好ましく、50.0×104以下がより好ましく、40.0×104以下が更に好ましく、30.0×104以下が殊更に好ましく、20.0×104以下が特に好ましい。数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、単分散ポリスチレンを標準として分子量を算出する値である。また、GPCによる測定ができない場合には、NMR、FT-IR等により得られた末端基数から計算された数平均分子量とメルトフローレートとの相関関係により、重合体(I)の数平均分子量を求めることができる。メルトフローレートは、JIS K 7210に準拠して測定できる。
【0201】
重合体(I)の重量平均分子量の下限としては、好ましい順に、0.2×104以上、0.4×104以上、0.6×104以上、0.8×104以上、1.0×104以上、2.0×104以上、5.0×104以上、10.0×104以上、15.0×104以上、20.0×104以上、25.0×104以上である。また、重合体(I)の重量平均分子量の上限としては、好ましい順に、150.0×104以下、100.0×104以下、60.0×104以下、50.0×104以下、40.0×104以下である。
【0202】
重合体(I)は、53以下のイオン交換率(IXR)を有することが好ましい。上記IXRは、イオン性基に対するポリマー主鎖中の炭素原子数と定義される。加水分解によりイオン性となる前駆体基(たとえば、-SO2F)は、IXRを決定する目的ではイオン性基と見なされない。
【0203】
IXRは、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましく、3以上が更に好ましく、4以上が更により好ましく、5以上が殊更に好ましく、8以上が特に好ましい。また、IXRは43以下がより好ましく、33以下が更に好ましく、23以下が特に好ましい。
【0204】
重合体(I)のイオン交換容量としては、好ましい順に、0.80meq/g以上、1.50meq/g以上、1.75meq/g以上、2.00meq/g以上、2.50meq/g以上、2.60meq/g以上、3.00meq/g以上、3.50meq/g以上である。イオン交換容量は、重合体(I)のイオン性基(アニオン性基)の含有量であり、重合体(I)の組成から計算により求められる。
【0205】
重合体(I)において、イオン性基(アニオン性基)は、典型的に、ポリマー主鎖に沿って分布している。上記重合体(I)は、ポリマー主鎖を、この主鎖に結合された繰り返し側鎖とともに含み、この側鎖はイオン性基を有することが好ましい。
【0206】
重合体(I)は、10未満、より好ましくは7未満のpKaを有するイオン性基を含むことが好ましい。重合体(I)のイオン性基は、好ましくは、スルホナート、カルボキシラート、ホスホナート、および、ホスファートからなる群から選択される。
【0207】
用語「スルホナート、カルボキシラート、ホスホナート、およびホスファート」は、それぞれの塩、または塩を形成し得るそれぞれの酸をいうことが意図される。塩が用いられる場合、好ましくは、その塩はアルカリ金属塩またはアンモニウム塩である。好ましいイオン性基は、スルホナート基である。
【0208】
重合体(I)は、水溶性を有していることが好ましい。水溶性とは、容易に水性媒体に溶解または分散する性質を意味する。水溶性を有する重合体(I)は、たとえば、動的光散乱法(DLS)によって、粒子径を測定できない。一方、非水溶性を有する重合体(I)は、たとえば、動的光散乱法(DLS)によって、粒子径を測定することができる。
【0209】
重合体(I)として、一般式(11)で表される単量体(11)の重合体(11)であって、単量体(11)に基づく重合単位(11)の含有量が、重合体(11)を構成する全重合単位に対して、50モル%以上であり、重量平均分子量(Mw)が、38.0×104以上である重合体(11)を用いることもできる。重合体(11)は、新規な重合体である。
一般式(11):CX2=CY-CF2-O-Rf-A
(式中、XおよびYは、独立に、H、F、CH3またはCF3であり、XおよびYのうち、少なくとも1つはFである。Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、-COOM、-SO3M、-OSO3Mまたは-C(CF3)2OM(Mは、H、金属原子、NR7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R7は、Hまたは有機基である)である。)
【0210】
一般式(11)中、XおよびYは、独立に、H、F、CH3またはCF3であり、XおよびYのうち、少なくとも1つはFである。Xとしては、HまたはFが好ましく、Hがより好ましい。Yとしては、HまたはFが好ましく、Fがより好ましい。
【0211】
一般式(11)中のRfおよびAについては、重合体(1)を構成する単量体を表す一般式(1)中のRfおよびAと同様である。
【0212】
重合体(11)は、単量体(11)に基づく重合単位(11)のみからなる単独重合体であってもよいし、重合単位(11)と、単量体(11)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位とを含む共重合体であってもよい。他の単量体については、上述したとおりである。重合単位(11)は、各出現において、同一または異なっていてもよく、重合体(11)は、2種以上の異なる一般式(11)で表される単量体に基づく重合単位(11)を含んでいてもよい。
【0213】
重合体(11)における重合単位(11)の含有量としては、重合体(11)を構成する全重合単位に対して、好ましい順に、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、99モル%以上である。重合単位(11)の含有量は、実質的に100モル%であることが特に好ましく、重合体(11)は、重合単位(11)のみからなることが最も好ましい。
【0214】
重合体(11)において、単量体(11)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量としては、重合体(11)を構成する全重合単位に対して、好ましい順に、99.0モル%以下、97.0モル%以下、95.0モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、70モル%以下、60モル%以下、50モル%以下である。単量体(11)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量は、実質的に0モル%であることが特に好ましく、重合体(11)は、他の単量体に基づく重合単位を含まないことが最も好ましい。
【0215】
重合体(11)の重量平均分子量の下限としては、好ましい順に、38.0×104以上、40.0×104以上である。重合体(11)の重量平均分子量の上限としては、好ましい順に、150.0×104以下、100.0×104以下、60.0×104以下である。
【0216】
重合体(11)の数平均分子量の下限としては、好ましい順に、5.0×104、8.0×104、10.0×104以上、12.0×104以上である。重合体(11)の数平均分子量の上限としては、好ましい順に、75.0×104以下、50.0×104以下、40.0×104以下、30.0×104以下である。
【0217】
重合体(I)として、一般式(12)で表される単量体(12)の重合体(12)であって、単量体(12)に基づく重合単位(12)の含有量が、重合体(12)を構成する全重合単位に対して、50モル%以上であり、重量平均分子量(Mw)が、1.4×104以上である重合体(12)を用いることもできる。重合体(12)は、新規な重合体である。
一般式(12):CX2=CX-O-Rf-A
(式中、Xは、独立に、FまたはCF3であり、Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合もしくはケト基を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、-COOM、-SO3M、-OSO3Mまたは-C(CF3)2OM(Mは、-H、金属原子、-NR7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R7は、Hまたは有機基である)である。)
【0218】
一般式(12)中、Xは、独立に、FまたはCF3である。少なくとも1以上のXがFであることが好ましく、XがいずれもFであることがより好ましい。
【0219】
一般式(12)中のRfおよびAについては、重合体(2)を構成する単量体を表す一般式(2)中のRfおよびAと同様である。
【0220】
重合体(12)は、単量体(12)に基づく重合単位(12)のみからなる単独重合体であってもよいし、重合単位(12)と、単量体(12)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位とを含む共重合体であってもよい。他の単量体については、上述したとおりである。重合単位(12)は、各出現において、同一または異なっていてもよく、重合体(12)は、2種以上の異なる一般式(12)で表される単量体に基づく重合単位(12)を含んでいてもよい。
【0221】
重合体(12)における重合単位(12)の含有量としては、重合体(12)を構成する全重合単位に対して、好ましい順に、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、99モル%以上である。重合単位(12)の含有量は、実質的に100モル%であることが特に好ましく、重合体(12)は、重合単位(12)のみからなることが最も好ましい。
【0222】
重合体(12)において、単量体(12)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量としては、重合体(12)を構成する全重合単位に対して、好ましい順に、50モル%以下、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、1モル%以下である。単量体(12)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量は、実質的に0モル%であることが特に好ましく、重合体(12)は、他の単量体に基づく重合単位を含まないことが最も好ましい。
【0223】
重合体(12)の重量平均分子量(Mw)の下限としては、好ましい順に、1.4×104以上、1.7×104以上、1.9×104以上、2.1×104以上、2.3×104以上、2.7×104以上、3.1×104以上、3.5×104以上、3.9×104以上、4.3×104以上、4.7×104以上、5.1×104以上である。重合体(12)の重量平均分子量(Mw)の上限としては、好ましい順に、150.0×104以下、100.0×104以下、60.0×104以下、50.0×104以下、40.0×104以下である。
【0224】
重合体(12)の数平均分子量(Mn)の下限としては、好ましい順に、0.7×104以上、0.9×104以上、1.0×104以上、1.2×104以上、1.4×104以上、1.6×104以上、1.8×104以上である。重合体(12)の数平均分子量(Mn)の上限としては、好ましい順に、75.0×104以下、50.0×104以下、40.0×104以下、30.0×104以下、20.0×104以下である。
【0225】
重合体(12)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.4以下であり、さらに好ましくは2.2以下であり、特に好ましくは2.0以下であり、最も好ましくは1.9以下である。
【0226】
<重合体(I)の製造方法>
重合体(I)は上記の単量体を用いること以外は従来公知の方法により製造することができる。
【0227】
重合体(I)のうち、重合体(11)は、新規な重合体であり、水性媒体中で、一般式(11)で表される単量体(11)の重合を行うことにより、単量体(11)の重合体(11)を製造する重合体(11)の製造方法であって、重合の反応系中の酸素濃度を500体積ppm以下に維持する製造方法(11)により製造することができる。
【0228】
製造方法(11)において、重合の反応系中の酸素濃度は、500体積ppm以下である。製造方法(11)においては、単量体(11)の重合の全期間にわたって、反応系中の酸素濃度が500体積ppm以下に維持される。反応系中の酸素濃度は、好ましくは350体積ppm以下であり、より好ましくは300体積ppm以下であり、さらに好ましくは100体積ppm以下であり、特に好ましくは50体積ppm以下である。また、反応系中の酸素濃度は、通常、0.01体積ppm以上である。
【0229】
製造方法(11)において、単量体(11)の重合温度は、分子量が一層高い重合体(11)を容易に製造できることから、59℃以下であることが好ましく、57℃以下であることがより好ましく、55℃以下であることがさらに好ましく、53℃以下であることが特に好ましく、20℃以上であることが好ましく、25℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましく、35℃以上であることが特に好ましい。
【0230】
製造方法(11)において、単量体(11)と、上述した他の単量体とを共重合してもよい。
【0231】
製造方法(11)において、重合圧力は、通常、大気圧~10MPaGである。重合圧力は、使用する単量体の種類、目的とする重合体の分子量、反応速度によって適宜決定される。
【0232】
製造方法(11)において、重合時間は、通常、1~200時間であり、5~100時間であってよい。
【0233】
重合体(I)のうち、重合体(12)は、新規な重合体であり、水性媒体中で、一般式(12)で表される単量体(12)の重合を行うことにより、単量体(12)の重合体(12)を製造する重合体(12)の製造方法であって、重合の反応系中の酸素濃度を1500体積ppm以下に維持する製造方法(12)により製造することができる。
【0234】
製造方法(12)において、重合の反応系中の酸素濃度は、1500体積ppm以下である。製造方法(12)においては、単量体(12)の重合の全期間にわたって、反応系中の酸素濃度が1500体積ppm以下に維持される。反応系中の酸素濃度は、好ましくは500体積ppm以下であり、より好ましくは100体積ppm以下であり、さらに好ましくは50体積ppm以下である。また、反応系中の酸素濃度は、通常、0.01体積ppm以上である。
【0235】
製造方法(12)において、単量体(12)の重合温度は、分子量が一層高い重合体(12)を容易に製造できることから、70℃以下であることが好ましく、65℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることがさらに好ましく、55℃以下であることが特に好ましく、50℃以下であることが殊更好ましく、45℃以下であることが特に好ましく、40℃以下であることが最も好ましく、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。
【0236】
製造方法(12)において、単量体(12)と、上述した他の単量体とを共重合してもよい。
【0237】
製造方法(12)において、重合圧力は、通常、大気圧~10MPaGである。重合圧力は、使用する単量体の種類、目的とする重合体の分子量、反応速度によって適宜決定される。
【0238】
製造方法(12)において、重合時間は、通常、1~200時間であり、5~100時間であってよい。
【0239】
製造方法(11)および製造方法(12)において、重合の反応系中の酸素濃度は、たとえば、窒素、アルゴンなどの不活性気体、または、気体状の単量体を用いる場合には当該気体状の単量体を、反応器中の液相または気相に流通させることにより、制御することができる。重合の反応系中の酸素濃度は、重合系の排ガスラインから出てきたガスを、低濃度酸素分析計で測定および分析することにより、求めることができる。
【0240】
製造方法(11)および製造方法(12)において、水性媒体は、重合を行わせる反応媒体であって、水を含む液体を意味する。水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、たとえば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。水性媒体として、好ましくは水である。
【0241】
製造方法(11)および製造方法(12)において、単量体の重合を、重合開始剤の存在下に行うことができる。重合開始剤としては、上記重合温度範囲でラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、公知の油溶性及び/又は水溶性の重合開始剤を使用することができる。更に、還元剤等と組み合わせてレドックスとして重合を開始することもできる。重合開始剤の濃度は、単量体の種類、目的とする重合体の分子量、反応速度によって適宜決定される。
【0242】
重合開始剤としては、過硫酸塩(例えば、過硫酸アンモニウム)や、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド等の有機過酸化物を、単独で又はこれらの混合物の形で使用することができる。また、亜硫酸ナトリウム等の還元剤と共用し、レドックス系にして用いてもよい。更に、重合中に、ヒドロキノン、カテコール等のラジカル捕捉剤を添加したり、亜硫酸アンモニウム等のパーオキサイドの分解剤を添加し、系内のラジカル濃度を調整したりすることもできる。
【0243】
重合開始剤としては、分子量が一層高い重合体を容易に製造できることから、なかでも、過硫酸塩が好ましい。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどが挙げられ、過硫酸アンモニウムが好ましい。
【0244】
重合開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(たとえば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱で除熱を行ないながら、反応温度を上昇させてもよい範囲であり、より好ましい上限は、装置面から重合反応熱を除熱できる範囲である。
【0245】
製造方法(11)および製造方法(12)においては、重合開始剤を重合開始時に添加するとともに、重合中にも添加することができる。重合開始時に添加する重合開始剤の添加量と、重合中に添加する重合開始剤の添加量との割合としては、好ましくは95/5~5/95であり、より好ましくは60/40~10/90であり、さらに好ましくは30/70~15/85である。重合中に添加する重合開始剤の添加方法は、特に限定されず、一回で全量を添加してもよいし、2回以上に分割して添加してもよいし、連続的に添加してもよい。
【0246】
製造方法(11)および製造方法(12)においては、分子量が一層高い重合体を容易に製造できることから、重合に用いる重合開始剤の総添加量が、水性媒体に対して、0.00001~10質量%であることが好ましい。重合に用いる重合開始剤の総添加量としては、より好ましくは0.0001質量%以上であり、さらに好ましくは0.001質量%以上であり、特に好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0247】
製造方法(11)および製造方法(12)においては、分子量が一層高い重合体を容易に製造できることから、重合に用いる重合開始剤の総添加量が、単量体に対して、0.001~10モル%であることが好ましい。重合に用いる重合開始剤の総添加量としては、より好ましくは0.005モル%以上であり、さらに好ましくは0.01モル%以上であり、より好ましくは5モル%以下であり、さらに好ましくは2.5モル%以下であり、特に好ましくは2.2モル%以下であり、最も好ましくは2.0モル%以下である。
【0248】
製造方法(11)および製造方法(12)においては、分子量が一層高い単量体を容易に製造できることから、重合開始時の単量体(11)または単量体(12)を含有する単量体の存在量が、水性媒体の存在量に対して、30質量%以上であることが好ましい。単量体の存在量としては、より好ましくは35質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。単量体の存在量の上限は特に限定されないが、重合を円滑に進行させる観点から、200質量%以下であってよい。重合開始時の単量体の存在量とは、重合開始時の反応器内に存在する、単量体(11)または単量体(12)、および、存在する場合は他の単量体の合計の存在量である。
【0249】
製造方法(11)および製造方法(12)においては、pH調整剤の存在下に重合を行ってもよい。pH調整剤は、重合開始前に添加してもよいし、重合開始後に添加してもよい。
【0250】
pH調整剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸アンモニウム等を用いることができる。
【0251】
製造方法(11)および製造方法(12)において、単量体(11)または単量体(12)の重合は、反応器に、水性媒体、単量体(11)または単量体(12)、および、必要に応じて他の単量体、必要に応じて他の添加剤を仕込み、反応器の内容物を撹拌し、そして反応器を所定の重合温度に保持し、次に所定量の重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行うことができる。重合反応開始後に、目的に応じて、単量体、重合開始剤、他の添加剤を添加してもよい。
【0252】
製造方法(11)および製造方法(12)において、単量体の重合は、実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下で行うことができる。本開示において「実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に」とは、水性媒体に対する含フッ素界面活性剤の量が10質量ppm以下であることを意味する。水性媒体に対する含フッ素界面活性剤の量としては、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下である。
【0253】
また、重合体(I)として、単量体(I)のダイマーおよびトリマーの含有量が、重合体(I)に対して、1.0質量%以下である重合体(I)を用いてもよい。
【0254】
すなわち、本開示の製造方法は、
水性媒体中で一般式(I)で表される単量体(I)を重合することにより、単量体(I)の重合体を含有する粗組成物を得る工程、
前記粗組成物に含まれる単量体(I)のダイマーおよびトリマーを、前記粗組成物から除去することにより、単量体(I)のダイマーおよびトリマーの含有量が、重合体(I)に対して、1.0質量%以下である重合体(I)を得る工程、
核形成剤、および、重合体(I)の存在下に、水性媒体中でテトラフルオロエチレンを重合することによりポリテトラフルオロエチレンを得る工程
を含むことも好ましい。
【0255】
上記の製造方法において用いる重合体(I)は、単量体(I)のダイマーおよびトリマーを実質的に含有しない。単量体(I)のダイマーおよびトリマーは、通常、単量体(I)を重合して重合体(I)を得る際に生じる。重合体(I)中のダイマーおよびトリマーの含有量としては、重合体(I)に対して、1.0質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下であり、さらに好ましくは0.001質量%以下であり、特に好ましくは0.0001質量%以下である。
【0256】
重合体(I)中のダイマーおよびトリマーの含有量は、重合体(I)のゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)分析を行い、GPC分析により得られるクロマトグラムの各ピークの総面積に対する、ダイマーおよびトリマーのピーク面積の合計の割合(面積百分率)を算出することにより、特定することができる。
【0257】
また、重合体(I)中のダイマーおよびトリマーの含有量が、重合体(I)に対して、0.5質量%未満の場合には、液体クロマトグラフィ-質量分析法(LC/MS/MS)による測定により、特定することができる。
具体的には、単量体(I)の5水準以上の含有量の水溶液を作成し、それぞれの含有量のLC/MS/MS分析を行ない、含有量と、その含有量に対するエリア面積(ピークの積分値)との関係をプロットし、単量体(I)の検量線を作成する。さらに、単量体(I)の検量線から、単量体(I)のダイマーおよびトリマーの検量線を作成する。
重合体(I)にメタノールを加えて混合物を調製し、遠心分離により混合物から抽出液(上澄み液)を回収し、得られた抽出液をLC/MS/MS分析する。
そして、検量線を用いて、単量体(I)のダイマーおよびトリマーのクロマトグラムのエリア面積(ピークの積分値)を、ダイマーおよびトリマーの含有量に換算することができる。
【0258】
水性媒体中でのTFEの重合の際に、ダイマーおよびトリマーを実質的に含有しない重合体(I)を用いることによって、単量体(I)のダイマーおよびトリマーを実質的に含有しないPTFEを製造できる。
【0259】
重合体(I)は、単量体(I)に基づく重合単位(I)を含む重合体である。本開示で用いる重合体(I)は、2以上の重合単位(I)を含む重合体(I)から、ダイマー(2つの重合単位(I)を含む重合体)およびトリマー(3つの重合単位(I)を含む重合体)が実質的に除去された重合体である。
【0260】
単量体(I)の分子量は、500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましい。すなわち、重合体(I)は、分子量が1500以下のダイマーおよびトリマーを実質的に含有しないことが好ましく、分子量が1200以下のダイマーおよびトリマーを実質的に含有しないことがより好ましい。
【0261】
重合体(I)のダイマーおよびトリマーは、一般式(I)で表される単量体(I)として、1種の単量体(I)から形成される重合体であってもよいし、構造の異なる2種以上の単量体(I)から形成される共重合体であってもよい。
【0262】
単量体(I)の重合は、公知の方法により行うことができる。このような方法により粗組成物を製造することにより、重合体(I)が水性媒体に分散または溶解した粗組成物を得ることができる。
【0263】
単量体(I)の重合は、実質的に含フッ素界面活性剤(ただし、一般式(I)で表される単量体(I)を除く)の非存在下に、水性媒体中行うことが好ましい。
【0264】
本開示において「実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に」とは、水性媒体に対する含フッ素界面活性剤の量が10質量ppm以下であることを意味する。水性媒体に対する含フッ素界面活性剤の量としては、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下である。
【0265】
含フッ素界面活性剤については、TFEの重合に関する説明において後述する。
【0266】
このようにして得られる粗組成物には、単量体(I)の重合体として、通常、単量体(I)の重合体の質量に対して、合計で1.0質量%超のダイマーおよびトリマーが含まれる。単量体(I)の重合体中のダイマーおよびトリマーの含有量としては、たとえば、単量体(I)の重合体に対して、2.0質量%以上であってもよく、3.0質量%以上であってもよく、30.0質量%以下であってもよく、20.0質量%以下であってもよい。粗組成物中のダイマーおよびトリマーの含有量は、粗組成物のゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)分析を行い、GPC分析により得られるクロマトグラムの各ピークの総面積に対する、ダイマーおよびトリマーのピーク面積の合計の割合(面積百分率)を算出することにより、特定することができる。
【0267】
次に、単量体(I)の重合により得られた粗組成物に含まれる単量体(I)のダイマーおよびトリマーを、粗組成物から除去する。ダイマーおよびトリマーを除去する手段は、特に限定されないが、限外濾過、精密濾過、透析膜処理、分液および再沈殿からなる群より選択される少なくとも1種の手段が好ましく、限外濾過、精密濾過および透析膜処理からなる群より選択される少なくとも1種の手段がより好ましく、限外濾過がさらに好ましい。
【0268】
単量体(I)の重合により単量体(I)のダイマーおよびトリマーが生成し、結果として、単量体(I)のダイマーおよびトリマーが、重合体(I)中に含まれてしまうことは、従来知られていなかった。単量体(I)のダイマーおよびトリマーが生成される機構は必ずしも明らかではないが、特に、重合系に存在する単量体のうち、単量体(I)が大半を占める重合系における重合反応によって、単量体(I)の二量化および三量化が無視できない頻度で生じているものと推測される。本開示において重合体(I)中の単量体(I)のダイマーおよびトリマーの存在が初めて明らかにされ、重合体(I)中の単量体(I)のダイマーおよびトリマーが、限外濾過、精密濾過および透析膜処理からなる群より選択される少なくとも1種の手段により、重合体(I)(粗組成物)から高効率で除去されることが初めて見出された。
【0269】
ダイマーおよびトリマーを除去する際には、通常、未反応の単量体(I)も同時に粗組成物から除去される。重合により未反応の単量体(I)がPTFEに取り込まれた場合でも、PTFEの機能に必ずしも悪影響を与えるわけではないので、未反応の単量体(I)は、必ずしも除去する必要はない。しかし、未反応の単量体(I)を、ダイマーおよびトリマーと同時に除去しておくことにより、未反応の単量体(I)の存在を考慮することなく、重合に供するモノマーの量を計算することができ、所望のモノマー組成を有するPTFEが容易に製造できるという利点がある。なお、重合体(I)中に単量体(I)が残留している場合でも、あるいは、単量体(I)を共単量体として新たに添加する場合でも、重合系に存在する単量体のうち、フルオロモノマー(ただし、単量体(I)を除く)が重合系の大半を占める重合系における重合反応によっては、単量体(I)の二量化および三量化がほとんど進行せず、単量体(I)のダイマーおよびトリマーは、得られるPTFE中にほとんど残留しない。
【0270】
単量体(I)の重合により得られた粗組成物は、重合で得られた重合上がりの組成物であってもよいし、重合で得られた重合上がりの組成物を希釈又は濃縮したものであってもよいし、分散安定化処理等を行ったものであってもよい。限外濾過、精密濾過又は透析膜処理を円滑に進めるために、これらの処理によって、粗組成物の粘度を調整することも好ましい。
【0271】
粗組成物中の単量体(I)の重合体の含有量としては、特に限定されず、たとえば、0.1~20質量%であってよい。粗組成物中の単量体(I)の重合体の含有量としては、ダイマーおよびトリマーの除去効率の観点から、好ましくは18.0質量%以下であり、より好ましくは15.0質量%以下であり、更に好ましくは12.0質量%以下であり、特に好ましくは10.0質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、さらに好ましくは1.2質量%以上であり、特に好ましくは1.5質量%以上であり、最も好ましくは2.0質量%以上である。粗組成物中の単量体(I)の重合体の含有量は、たとえば、単量体(I)の重合により得られた粗組成物に水を添加する方法、単量体(I)の重合により得られた粗組成物を濃縮する方法などにより調整することができる。
【0272】
粗組成物のpHとしては、好ましくは0~11であり、より好ましくは0.5~8.0であり、さらに好ましくは1.0~7.0である。粗組成物のpHは、単量体(I)の重合により得られた粗組成物に、pH調整剤を添加することにより調整することができる。pH調整剤としては、酸又はアルカリであってよく、例えば、リン酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等が挙げられる。
【0273】
粗組成物の粘度は、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理が円滑に進むことから、25mPa・s以下が好ましい。粗組成物の粘度は、たとえば、単量体(I)の重合体の数平均分子量を調整する方法、粗組成物中の単量体(I)の重合体の濃度を調整する方法、粗組成物の温度を調整する方法などにより、調整することができる。
【0274】
上記限外濾過又は精密濾過は、クロスフロー方式でもデッドエンド方式でもよく限定されないが、膜の目詰まりを低減する観点からクロスフロー方式が好ましい。
【0275】
上記限外濾過は、限外濾過膜を用いて行うことができる。限外濾過は、例えば、限外濾過膜を有する限外濾過装置を用いて行うことができ、遠心式限外濾過法、回分式限外濾過法、循環式限外濾過法等を採用できる。
【0276】
上記限外濾過膜の分画分子量は、通常、0.1×104~30×104Da程度である。上記限外濾過膜は、膜の目詰まりを抑制し、効率的にダイマーおよびトリマーを低減できることから、分画分子量は1.5×104Da以上であることが好ましい。上記分画分子量は、2.0×104Da以上がより好ましく、3.0×104Da以上が特に好ましく、5.0×104Da以上が最も好ましい。上記分画分子量は、8.0×104Da以上であってもよい。また、上記分画分子量は、ダイマーおよびトリマーの除去効率の観点から、20×104Da以下が好ましく、10×104Da以下がより好ましい。
【0277】
上記限外濾過膜の分画分子量は、例えば、重量平均分子量が既知のポリスチレンを膜に通水し、90%阻止できる分子量を分画分子量とすることができる。ポリスチレンの定量は、ゲル透過クロマトグラフィを用いて行うことができる。
【0278】
上記限外濾過膜の形状としては従来公知のものが挙げられ限定されるものではないが、例えば、中空糸型、平膜型、スパイラル型、チューブラー型等が挙げられる。目詰まり抑止の観点からは、中空糸型が好ましい。
中空糸型限外濾過膜の内径は限定されないが、例えば、0.1~2mmであってよい。好ましくは、0.8~1.4mmである。
中空糸型限外濾過膜の長さは限定されないが、例えば、0.05~3mであってよい。好ましくは、0.05~2mである。
【0279】
限外濾過膜の材質としては、特に限定されるものではないが、セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機材料、ステンレス等の金属、又はセラミック等の無機材料が挙げられる。
限外濾過膜の材質は、有機材料であることが好ましく、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリルニトリル、ポリスルホン、又は、ポリエーテルスルホンであることがより好ましく、ポリアクリルニトリル、ポリスルホン又はポリフッ化ビニリデンが更に好ましい。
【0280】
上記限外濾過膜として具体的には、DESAL社のG-5タイプ、G-10タイプ、G-20タイプ、G-50タイプ、PWタイプ、HWS UFタイプ;KOCH社のHFM-180、HFM-183、HFM-251、HFM-300、HFM-116、HFM-183、HFM-300、HFK-131、HFK-328、MPT-U20、MPS-U20P、MPS-U20S;Synder社のSPE1、SPE3、SPE5、SPE10、SPE30、SPV5、SPV50、SOW30;旭化成社製のマイクローザ(登録商標)UFシリーズ;日東電工社製のNTR7410などが挙げられる。
【0281】
上記限外濾過は、ダイマーおよびトリマーの除去効率の観点から、0.01MPa以上の圧力で行うことが好ましい。より好ましくは、0.03MPa以上であり、更に好ましくは0.05MPa以上である。また、上記圧力は、耐圧の観点から、0.5MPa以下が好ましく、0.25MPa以下がより好ましく、0.2MPa以下が更に好ましい。
【0282】
上記限外濾過は、ダイマーおよびトリマーの除去効率の観点から、10mL/分以上の流速で行うことが好ましく、50mL/分以上の流速で行うことがより好ましく、また、5000mL/分以下の流速で行うことが好ましく、1000mL/分以下の流速で行うことがより好ましい。
【0283】
上記精密濾過は、精密濾過膜を用いて行うことができる。精密濾過膜は、通常、0.05~1.0μmの平均細孔径を有する。
上記精密濾過膜は、効率的にダイマーおよびトリマーの除去効率できることから、平均細孔径が0.1μm以上であることが好ましい。より好ましくは0.075μm以上であり、更に好ましくは0.1μm以上である。また、平均細孔径が1.00μm以下であることが好ましい。より好ましくは平均細孔径が0.50μm以下であり、更に好ましくは0.25μm以下である。
上記精密濾過膜の平均細孔径は、ASTM F 316-03(バブルポイント法)に準拠して測定することが可能である。
【0284】
上記精密濾過膜の形状としては従来公知のものが挙げられ限定されず、例えば、中空糸型、平膜型、スパイラル型、チューブラー型等が挙げられる。目詰まり抑止の観点からは、中空糸型が好ましい。
中空糸型精密濾過膜の内径は限定されないが、例えば、0.1~2mmであってよい。好ましくは、0.8~1.4mmである。
中空糸型精密濾過膜の長さは限定されないが、例えば、0.05~3mであってよい。好ましくは、0.05~2mである。
【0285】
上記精密濾過膜の材質としては、例えばセルロース系、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、セラミックス、金属等が挙げられる。中でも、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、又は、ポリテトラフルオロエチレンが好ましく、ポリアクリルニトリル又はポリフッ化ビニリデンが特に好ましい。
【0286】
精密濾過膜として具体的には、日本ガイシ社製のCefilt;旭化成社製マイクローザUシリーズ、マイクローザPシリーズ;住友電工社製のポアフロンSPMW、ポアフロンOPMW、ポアフロンPM;東レ社製のトレフィル;マイクロダイン・ナディア社製のNADIR MP005、NADIR MV020;Norit社製のX-flow等が挙げられる。
【0287】
上記精密濾過は、ダイマーおよびトリマーの除去効率の観点から、0.01MPa以上の圧力で行うことが好ましい。より好ましくは、0.03MPa以上であり、更に好ましくは0.05MPa以上である。また、上記圧力は、耐圧の観点から、0.5MPa以下が好ましく、0.25MPa以下がより好ましく、0.2MPa以下が更に好ましい。
【0288】
上記精密濾過は、ダイマーおよびトリマーの除去効率の観点から、10mL/分以上の流速で行うことが好ましく、50mL/分以上の流速で行うことがより好ましく、また、5000mL/分以下の流速で行うことが好ましく、1000mL/分以下の流速で行うことがより好ましい。
【0289】
上記透析膜処理は、透析膜を用いて行う。透析膜は、通常、0.05×104~100×104Daの分画分子量を有する。
上記透析膜は、膜の目詰まりを抑制し、効率的にダイマーおよびトリマーを除去できることから、分画分子量が0.3×104Da以上であることが好ましい。上記分画分子量は、0.5×104Da以上がより好ましく、1.0×104Da以上が更に好ましく、1.5×104Da以上が更により好ましく、2.0×104Da以上が殊更に好ましく、3.0×104Da以上が特に好ましく、5.0×104Da以上が最も好ましい。上記分画分子量は8.0×104Da以上であってもよい。
また、上記分画分子量は、ダイマーおよびトリマーの除去効率の観点から、20×104Da以下が好ましく、10×104Da以下がより好ましい。
上記透析膜の分画分子量は、例えば、限外濾過膜と同じ方法で測定することができる。
【0290】
上記透析膜の材質としては、特に限定されるものではないが、セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル系ポリマーアロイ等が挙げられる。
【0291】
透析膜として具体的には、スペクトラムラボラトリーズ社製のSpectra/Por(登録商標)Float-A-Lyzer、Tube-A-Lyzer、Dialysis tubing、6Dialysis tubing、7Dialysis tubing等が例示される。
【0292】
上記限外濾過、精密濾過又は透析膜処理は、10℃以上の温度で行うことが好ましい。より好ましくは、15℃以上であり、更に好ましくは、20℃以上であり、特に好ましくは、30℃以上である。温度を上記範囲にすることでより効率的にダイマーおよびトリマーを低減することができる。上記温度は、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、70℃以下が更に好ましく、60℃以下が特に好ましい。
【0293】
限外濾過、精密濾過又は透析膜処理は、粗組成物に水を添加しながら、または、粗組成物のpHを調整しながら、行うことができる。水は、粗組成物に間欠的に添加してもよいし、粗組成物に連続的に添加してもよい。
【0294】
限外濾過、精密濾過又は透析膜処理の終点は、適宜決定すればよく限定されない。また、上記限外濾過、精密濾過又は透析膜処理は、濾過膜の耐久性向上のため、1~24時間の濾過時間を目安に一回程度水で逆洗浄してもよい。
【0295】
分液は、たとえば、組成物に対して、有機溶媒を添加し、水相と有機溶媒相との2相に分離させ、水相を回収することにより、実施することができる。
【0296】
再沈殿は、たとえば、組成物を貧溶媒に滴下して、重合体を沈殿させ、沈殿した重合体を回収し、回収した重合体を良溶媒に溶解させ、得られた溶液を貧溶媒に滴下して、重合体を再び沈殿させ、沈殿した重合体を回収することにより、実施することができる。
【0297】
単量体(I)の重合体を含有する粗組成物から単量体(I)のダイマーおよびトリマーを除去することにより、通常、ダイマーおよびトリマーを実質的に含有しない重合体(I)を含む水溶液が得られる。本開示の製造方法で用いる重合体(I)は、得られた水溶液に含まれる重合体(I)であってもよいし、水溶液から分離させて得られる重合体(I)であってもよい。水溶液から重合体(I)を分離させる方法は、特に限定されない。たとえば、水溶液中の重合体(I)の凝析、洗浄、乾燥などの方法により、重合体(I)を分離することができる。
【0298】
重合体(I)として、重合体(I)を含有する水溶液を用いることができる。水溶液中の重合体(I)に対する単量体(I)のダイマーおよびトリマーの好ましい含有量は、上述したとおりである。
【0299】
<テトラフルオロエチレンの重合>
本開示の製造方法においては、水性媒体中でテトラフルオロエチレン(TFE)を重合することによりポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を得る。水性媒体中でのTFEの重合により得られるPTFEは、通常、水性分散液中に分散した一次粒子の形態で得られる。
【0300】
重合は、重合反応器に、TFE、重合体(I)および水性媒体を加え、次に、重合開始剤を添加することにより、開始することができる。重合の開始後に、目的に応じて、TFE、重合開始剤、連鎖移動剤および重合体(I)などを加えてもよい。重合の際には、重合反応器内の内容物を撹拌することが好ましい。重合の際には、TFEのみを重合してもよいし、TFEおよび変性モノマーを重合してもよい。
【0301】
上記重合においては、重合反応を開始する前に、または、重合反応が進行して水性分散液中のPTFEの濃度が5.0質量%に達する前に、核形成剤を水性媒体中に添加することが好ましい。重合初期に核形成剤を添加することによって、重合時に一層多くの粒子を発生させることができ、さらには、平均一次粒子径およびアスペクト比がより一層小さい一次粒子が得られる。すなわち、核形成剤は、重合開始前に添加してもよいし、重合開始と同時に添加してもよいし、重合を開始した後、PTFE粒子の核が形成される期間に添加してもよい。
【0302】
核形成剤を添加する時機は、重合開始前、または、重合反応が進行して水性分散液中のPTFEの濃度が5.0質量%に達する前であり、好ましくは重合開始前またはPTFEの濃度が3.0質量%に達する前であり、より好ましくは重合開始前またはPTFEの濃度が1.0質量%に達する前であり、さらに好ましくは重合開始前またはPTFEの濃度が0.5質量%に達する前であり、特に好ましくは重合開始前または重合開始と同時である。
【0303】
添加する核形成剤の量は、重合時に一層多くの粒子を発生させることができ、さらには、平均一次粒子径およびアスペクト比がより一層小さい一次粒子が得られることから、水性媒体に対して、好ましくは0.001~5000質量ppmである。核形成剤の量の下限としては、好ましい順に、0.01質量ppm、0.05質量ppm、0.1質量ppmである。核形成剤の量の上限としては、好ましい順に、2000質量ppm、1000質量ppm、500質量ppm、100質量ppm、50質量ppm、10質量ppmである。
【0304】
上述のとおり、核形成剤としては、フルオロポリエーテル、非イオン性界面活性剤、および、連鎖移動剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0305】
フルオロポリエーテルの量は、水性媒体に対して5~5000質量ppmであることが好ましい。フルオロポリエーテルの量の下限としては、好ましい順に、10質量ppm、20質量ppm、30質量ppm、50質量ppmである。フルオロポリエーテルの上限としては、好ましい順に、3000質量ppm、2000質量ppm、1000質量ppm、500質量ppm、100質量ppmである。
【0306】
非イオン性界面活性剤の量は、水性媒体に対して、0.1~0.0000001質量%であることが好ましい。非イオン性界面活性剤の量の下限としては、好ましい順に、0.000001質量%、0.000005質量%、0.00001質量%である。上記非イオン性界面活性剤の量の上限としては、好ましい順に、0.01質量%、0.005質量%、0.001質量%、0.0005質量%、0.0001質量%である。
【0307】
連鎖移動剤の量は、水性媒体に対して、0.001~10000質量ppmが好ましい。連鎖移動剤の量の下限としては、好ましい順に、0.01質量ppm、0.05質量ppm、0.1質量ppm、0.5質量ppmである。連鎖移動剤の量の上限としては、好ましい順に、1000質量ppm、500質量ppm、100質量ppm、10質量ppmである。
【0308】
核形成剤として、連鎖移動剤および非イオン性界面活性剤を用いる場合、連鎖移動剤と非イオン性界面活性剤との質量比(連鎖移動剤/非イオン性界面活性剤)としては、重合時に一層多くの粒子を発生させることができ、さらには、平均一次粒子径およびアスペクト比がより一層小さい一次粒子が得られることから、好ましくは1000/1~1/5であり、より好ましくは200/1~1/2であり、100/1~1/1であり、さらに好ましくは50/1~2/1である。
【0309】
上記重合における重合温度、重合圧力は、使用するモノマーの種類、目的とするPTFEの分子量、反応速度によって適宜決定される。
【0310】
重合温度としては、好ましくは10~150℃であり、より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは50℃以上であり、より好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。
【0311】
重合圧力としては、好ましくは0.05~10MPaGであり、より好ましくは0.3MPaG以上であり、さらに好ましくは0.5MPaG以上であり、より好ましくは5.0MPaG以下であり、さらに好ましくは3.0MPaG以下である。特に、PTFEの得量を向上させる観点から、重合圧力としては、好ましくは1.0MPaG以上であり、より好ましくは1.2MPaG以上であり、さらに好ましくは1.5MPaG以上であり、特に好ましくは1.8MPaG以上であり、最も好ましくは2.0MPaG以上である。
【0312】
上記重合において、重合開始時の重合体(I)の量は、水性媒体に対して1質量ppm以上であることが好ましい。重合開始時の重合体(I)の量は、好ましくは10質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、更に好ましくは100質量ppm以上であり、更により好ましくは200質量ppm以上である。上限は特に限定されないが、たとえば、100000質量ppmであることが好ましく、50000質量ppmであることがより好ましい。重合開始時の重合体(I)の量が上記範囲であることによって、一層分散安定性に優れる水性分散液を得ることができる。
【0313】
重合体(I)は、合計添加量で、水性媒体100質量%に対して0.0001~15質量%の量を添加することが好ましい。より好ましい下限は0.001質量%であり、より好ましい上限は1質量%である。0.0001質量%未満であると、分散力が不充分となるおそれがあり、15質量%を超えると、添加量に見合った効果が得られない。重合体(I)の添加量は、使用するモノマーの種類、目的とするPTFEの分子量等によって適宜決定される。
【0314】
TFEの重合は、重合体(I)の存在下、水性媒体中で行われる。TFEの重合中に、重合体(I)を連続的に添加することも好ましい。重合体(I)を連続的に添加するとは、たとえば、重合体(I)を一括ではなく、経時的に、かつ、間断なくまたは分割して、添加することである。重合体(I)を連続的に添加することによって、一層分散安定性に優れる組成物を得ることができる。
【0315】
重合体(I)を連続的に添加する場合、重合体(I)の添加量は、水性媒体100質量%に対して0.001~10質量%であることが好ましい。より好ましい下限は0.005質量%であり、更に好ましい下限は0.01質量%であり、より好ましい上限は5質量%であり、更に好ましい上限は2質量%である。
【0316】
TFEの重合は、重合体(I)を少なくとも1種用いることによって、効率よく実施することが可能である。また、TFEの重合においては、重合体(I)を2種以上同時に用いて製造してもよいし、揮発性を有するものまたは最終製品に残存してもよいものであれば、界面活性剤を同時に使用して製造してもよい。
【0317】
上記重合工程においては、0.6×1013個/ml以上の粒子を発生させることが好ましい。重合工程において多数の粒子を発生させることによって、平均一次粒子径が小さく、アスペクト比が小さい一次粒子が得られ、安定性に優れる水性分散液を得ることができる。発生させる粒子の数としては、好ましい順に、0.7×1013個/mL以上、0.8×1013個/mL以上、0.9×1013個/mL以上、1.0×1013個/mL以上、1.5×1013個/mL以上である。発生させる粒子の数の上限は特に限定されないが、例えば、7.0×1014個/mLである。
【0318】
TFEの重合により発生する粒子は、重合前半に集中して発生し、重合後半に発生しにくいことから、重合工程における粒子数は、重合前半に発生する粒子数とほぼ同じである。したがって、重合工程における粒子数は、最終的に得られる水性分散液中の一次粒子の数を測定することにより、予測することができる。
【0319】
本開示の製造方法においては、TFEと変性モノマーとを重合することも好ましい。TFEと変性モノマーとを重合することによって、平均一次粒子径およびアスペクト比がより一層小さい一次粒子を得ることができ、分散安定性により一層優れた水性分散液を得ることができる。
【0320】
TFEを重合する際に添加する変性モノマーの総量は、得られるPTFEに対して、好ましくは0.00001質量%以上であり、より好ましくは0.0001質量%以上であり、更に好ましくは0.001質量%以上であり、更により好ましくは0.005質量%以上である。また、重合の際に添加する変性モノマーの総量は、得られるPTFEに対して、好ましい順に、1.0質量%以下、0.90質量%以下、0.50質量%以下、0.40質量%以下、0.30質量%以下、0.20質量%以下、0.15質量%以下、0.10質量%以下、0.05質量%以下である。
【0321】
上記重合においては、重合反応を開始する前に、または、重合反応が進行して水性分散液中のPTFEの濃度が10.0質量%に達する前に、好ましくは5.0質量%に達する前に、TFEと共重合可能な変性モノマーを添加することが好ましい。変性モノマーは、通常、反応器に添加する。重合初期に変性モノマーを添加することによって、重合時に一層多くの粒子を発生させることができ、さらには、平均一次粒子径およびアスペクト比がより一層小さい一次粒子が得られる。変性モノマーは、重合開始前に添加してもよいし、重合開始と同時に添加してもよいし、重合を開始した後、PTFE粒子の核が形成される期間に添加してもよい。変性モノマーは、少なくとも、重合反応を開始する前に、または、重合反応が進行して水性分散液中のPTFEの濃度が10.0質量%に達する前に添加されればよく、PTFEの濃度が10.0質量%を超えた後に更に変性モノマーを追加してもよい。たとえば、PTFEの濃度が10.0質量%に達する前から変性モノマーを添加し、10.0質量%を超えても、引き続き変性モノマーを添加してもよい。また、PTFEの濃度が10.0質量%に達する前に変性モノマーを少なくとも1回添加し、10.0質量%を超えてから、変性モノマーをさらに少なくとも1回添加してもよい。変性モノマーの添加方法としては、TFEにより変性モノマーを反応器中に押し込むものであってもよい。
【0322】
重合反応を開始する前に、または、重合反応が進行して水性分散液中のPTFEの濃度が10.0質量%に達する前に、好ましくは5.0質量%に達する前に、添加する変性モノマーの量は、得られるPTFEに対して、好ましくは0.00001質量%以上であり、より好ましくは0.0001質量%以上であり、さらに好ましくは0.001質量%以上であり、特に好ましくは0.003質量%以上である。また、重合反応を開始する前に、または、重合反応が進行して水性分散液中のPTFEの濃度が10.0質量%に達する前に、好ましくは5.0質量%に達する前に、添加する変性モノマーの量は、得られるPTFEの全重合単位に対して、好ましい順に、1.0質量%以下、0.90質量%以下、0.50質量%以下、0.40質量%以下、0.30質量%以下、0.20質量%以下、0.15質量%以下、0.10質量%以下、0.05質量%以下である。
【0323】
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、フルオロモノマーおよび非フルオロモノマーが挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0324】
非フルオロモノマーとしては、特に限定されず、一般式:
CH2=CRQ1-LRQ2
(式中、RQ1は、水素原子またはアルキル基を表す。Lは、単結合、-CO-O-*、-O-CO-*または-O-を表す。*はRQ2との結合位置を表す。RQ2は、水素原子、アルキル基またはニトリル基を表す。)で表されるモノマーが挙げられる。
【0325】
非フルオロモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレートブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ビニルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどが挙げられる。非フルオロモノマーとしては、なかでも、ブチルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリル酸が好ましい。
【0326】
フルオロモノマーとして、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン等のパーハロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;(パーフルオロアルキル)エチレン;パーフルオロアリルエーテル等が挙げられる。
【0327】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、一般式(A):
CF2=CF-ORf (A)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本開示において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0328】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、一般式(A)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0329】
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0330】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、一般式(A)において、Rfが炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
【0331】
【0332】
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
【0333】
【0334】
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
【0335】
水素含有フルオロオレフィンとしては、CH2=CF2、CFH=CH2、CFH=CF2、CF2=CFCF3、CH2=CFCF3、CH2=CHCF3、CHF=CHCF3(E体)、CHF=CHCF3(Z体)などが挙げられる。
【0336】
(パーフルオロアルキル)エチレン(PFAE)としては特に限定されず、例えば、(パーフルオロブチル)エチレン(PFBE)、(パーフルオロヘキシル)エチレン等が挙げられる。
【0337】
パーフルオロアリルエーテルとしては、例えば、
一般式:CF2=CF-CF2-ORf
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマーが挙げられる。
【0338】
上記一般式のRfは、一般式(A)のRfと同じである。Rfとしては、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基または炭素数1~10のパーフルオロアルコキシアルキル基が好ましい。パーフルオロアリルエーテルとしては、CF2=CF-CF2-O-CF3、CF2=CF-CF2-O-C2F5、CF2=CF-CF2-O-C3F7、及び、CF2=CF-CF2-O-C4F9からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CF2=CF-CF2-O-C2F5、CF2=CF-CF2-O-C3F7、及び、CF2=CF-CF2-O-C4F9からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、CF2=CF-CF2-O-CF2CF2CF3がさらに好ましい。
【0339】
上記変性モノマーとしては、モノマー反応性比が0.1~8である変性モノマー(3)も好ましく例示される。変性モノマー(3)を存在させることによって、平均一次粒子径およびアスペクト比が小さい一次粒子が得られ、分散安定性の高い水性分散液を得ることができる。
【0340】
ここで、TFEとの共重合におけるモノマー反応性比とは、成長ラジカルがTFEに基づく繰り返し単位未満であるときに、該成長ラジカルがTFEと反応する場合の速度定数を、該成長ラジカルが変性モノマーと反応する場合の速度定数で除した値である。この値が低いほど、変性モノマーがTFEと高反応性であることを表す。モノマー反応性比は、TFEと変性モノマーとを共重合して開始直後の生成ポリマー中の組成を求め、ファインマン-ロスの式より算出できる。
【0341】
上記共重合は、内容積6.0Lのステンレス製オートクレーブに3600gの脱イオン脱気水、上記水に対して1000質量ppmのパーフルオロオクタン酸アンモニウム、100gのパラフィンワックスを使用して、圧力0.78MPaG、温度70℃で実施する。0.05g、0.1g、0.2g、0.5g、1.0gの変性モノマーをそれぞれ反応器に加え、0.072gの過硫酸アンモニウム(対水20質量ppm)を加えて、重合圧力0.78MPaGを維持させるため、TFEを連続的に供給する。TFE仕込量が1000gに到達したとき、撹拌を停止して、反応器が大気圧になるまで脱圧を行なう。冷却後、パラフィンワックスを分離することにより、生成ポリマーを含む水性分散液が得られる。上記水性分散液を撹拌して生成ポリマーを凝析させ、150℃で乾燥させる。得られた生成ポリマー中の組成を、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析をモノマーの種類によって適宜組み合わせることで算出する。
【0342】
モノマー反応性比が0.1~8である変性モノマー(3)としては、式(3a)~(3d)で表される変性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
CH2=CH-Rf1 (3a)
(式中、Rf1は炭素数が1~10のパーフルオロアルキル基である。)
CF2=CF-O-Rf2 (3b)
(式中、Rf2は炭素数が1~2のパーフルオロアルキル基である。)
CF2=CF-O-(CF2)nCF=CF2 (3c)
(式中、nは1又は2である。)
【0343】
【化17】
(式中、X
3及びX
4はF、Cl又はメトキシ基であり、Yは式Y1又はY2である。)
【0344】
【化18】
(式Y2中、Z及びZ’はF又は炭素数1~3のフッ素化アルキル基である。)
【0345】
変性モノマー(3)単位の含有量は、PTFEの全重合単位に対して0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.0005質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましい。上限としては、好ましい順に、0.90質量%、0.50質量%、0.40質量%、0.30質量%、0.20質量%、0.15質量%、0.10質量%、0.08質量%、0.05質量%、0.01質量%である。
【0346】
上記変性モノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、(パーフルオロアルキル)エチレン、エチレン、及び、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する変性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。上記変性モノマーを使用することにより、重合時に一層多くの粒子を発生させることができ、さらには、平均一次粒子径およびアスペクト比がより一層小さい一次粒子が得られる。また、未凝析ポリマーが少ない水性分散液を得ることができる。
【0347】
上記変性モノマーは、TFEとの反応性の観点からは、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)及び(パーフルオロアルキル)エチレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
より好ましくは、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、(パーフルオロブチル)エチレン、(パーフルオロヘキシル)エチレン、及び、(パーフルオロオクチル)エチレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことである。
上記ヘキサフルオロプロピレン単位、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位及び(パーフルオロアルキル)エチレン単位の合計量は、PTFEの全重合単位に対して、0.00001~1質量%の範囲であることが好ましい。上記合計量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.0005質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更に好ましい。上限としては、好ましい順に、0.50質量%、0.40質量%、0.30質量%、0.20質量%、0.15質量%、0.10質量%、0.08質量%、0.05質量%、0.01質量%である。
【0348】
上記変性モノマーは、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する変性モノマー(以下「変性モノマー(A)」と記載する。)を含むことも好ましい。
【0349】
上記変性モノマー(A)を存在させることによって、重合時に一層多くの粒子を発生させることができ、さらには、平均一次粒子径およびアスペクト比がより一層小さい一次粒子が得られる、未凝析ポリマー量を少なくすることもできる。
【0350】
上記変性モノマー(A)の使用量は、水性媒体の0.1質量ppmに相当する量を超える量であることが好ましく、0.5質量ppmを超える量であることがより好ましく、1.0質量ppmを超える量であることが更に好ましく、5質量ppm以上であることが更により好ましく、10質量ppm以上であることが特に好ましい。上記変性モノマー(A)の使用量が少なすぎると、得られるPTFEの平均一次粒子径が小さくならないおそれがある。
上記変性モノマー(A)の使用量は、上記範囲であればよいが、例えば、上限を5000質量ppmとすることができる。また、上記製造方法では、反応中または反応後の水性分散液の安定性を向上させるために、反応途中で変性モノマー(A)を系中に追加してもよい。
【0351】
上記変性モノマー(A)は水溶性が高いので、未反応の変性モノマー(A)が水性分散液中に残存したとしても、濃縮工程、あるいは凝析・洗浄工程での除去は容易である。
【0352】
上記変性モノマー(A)は、重合の過程で生成ポリマー中に取り込まれるが、重合系中の変性モノマー(A)の濃度そのものが低く、ポリマーに取り込まれる量が少ないため、PTFEの耐熱性が低下したり焼成後に着色したりする問題はない。
【0353】
上記変性モノマー(A)における親水基としては、例えば、-NH2、-PO3M、-OPO3M、-SO3M、-OSO3M、-COOM(各式において、Mは、H、金属原子、NR7y
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7yは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)が挙げられる。上記親水基としては、なかでも、-SO3M又は-COOMが好ましい。R7yにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R7yとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、1、2価の金属原子が挙げられ、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
【0354】
上記変性モノマー(A)における「ラジカル重合で反応可能な官能基」としては、例えば、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基は、下記式:
CXeXg=CXfR-
(式中、Xe、Xf及びXgは、それぞれ独立して、F、Cl、H、CF3、CF2H、CFH2、又は、CH3であり;Rは連結基である。)で示すことができる。Rの連結基としては後述するRaとしての連結基が挙げられる。好ましくは-CH=CH2、-CF=CH2、-CH=CF2、-CF=CF2、-CH2-CH=CH2、-CF2-CF=CH2、-CF2-CF=CF2、-(C=O)-CH=CH2、-(C=O)-CF=CH2、-(C=O)-CH=CF2、-(C=O)-CF=CF2、-(C=O)-C(CH3)=CH2、-(C=O)-C(CF3)=CH2、-(C=O)-C(CH3)=CF2、-(C=O)-C(CF3)=CF2、-O-CH2-CH=CH2、-O-CF2-CF=CH2、-O-CH2-CH=CF2、-O-CF2-CF=CF2等の不飽和結合を有する基が挙げられる。
【0355】
上記変性モノマー(A)は、ラジカル重合で反応可能な官能基を有するので、上記重合において使用すると、重合反応初期に含フッ素モノマーと反応し、上記変性モノマー(A)に由来する親水基を有し安定性が高い粒子が形成されると推測される。このため、上記変性モノマー(A)の存在下に重合を行うと、粒子数が多くなると考えられる。
【0356】
上記重合は、上記変性モノマー(A)を1種存在させるものであってもよいし、2種以上存在させるものであってもよい。
【0357】
上記重合において、上記変性モノマー(A)として、不飽和結合を有する化合物を使用することができる。
【0358】
変性モノマー(A)は、一般式(4):
CXiXk=CXjRa-(CZ1Z2)k-Y3 (4)
(式中、Xi、Xj及びXkは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCF3であり;Y3は、親水基であり;Raは連結基であり;Z1及びZ2は、それぞれ独立して、H、F又はCF3であり、kは0又は1である)で表される化合物が好ましい。
上記親水基としては、例えば、-NH2、-PO3M、-OPO3M、-SO3M、-OSO3M、-COOM(各式において、Mは、H、金属原子、NR7y
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7yは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)が挙げられる。上記親水基としては、なかでも、-SO3M又は-COOMが好ましい。R7yにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R7yとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。上記金属原子としては、1、2価の金属原子が挙げられ、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
上記変性モノマー(A)を用いることによって、重合時に一層多くの粒子を発生させることができ、さらには、平均一次粒子径およびアスペクト比がより一層小さい一次粒子が得られる。
【0359】
上記Raは、連結基である。本開示において「連結基」は、二価連結基を指す。連結基は、単結合であってもよく、少なくとも1個の炭素原子を含むことが好ましく、炭素原子の数は、2以上であってよく、4以上であってよく、8以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってもよい。上限は限定されないが、例えば、100以下であってよく、50以下であってよい。
上記連結基は、鎖状又は分岐状、環状又は非環状構造、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってよく、所望により硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含み、所望によりエステル、アミド、スルホンアミド、カルボニル、カーボネート、ウレタン、尿素及びカルバメートからなる群から選択される1つ以上の官能基を含んでよい。上記連結基は、炭素原子を含まず、酸素、硫黄又は窒素等のカテナリーヘテロ原子であってもよい。
【0360】
上記Raは、例えば、酸素、硫黄、窒素等のカテナリーヘテロ原子、又は、2価の有機基であることが好ましい。
Raが2価の有機基である場合、炭素原子に結合する水素原子は、フッ素以外のハロゲン、例えば塩素等で置き換えられてもよく、二重結合を含んでも含まなくてもよい。また、Raは、鎖状及び分岐状のいずれでもよく、環状及び非環状のいずれでもよい。また、Raは、官能基(例えば、エステル、エーテル、ケトン、アミン、ハロゲン化物等)を含んでもよい。
Raはまた、非フッ素の2価の有機基であってもよいし、部分フッ素化又は過フッ素化された2価の有機基であってもよい。
Raとしては、例えば、炭素原子にフッ素原子が結合していない炭化水素基、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子で置換された炭化水素基、炭素原子に結合する水素原子の全てがフッ素原子で置換された炭化水素基、-(C=O)-、-(C=O)-O-、又は、-(C=O)-を含有する炭化水素基であってもよく、これらは酸素原子を含んでいてもよく、二重結合を含んでいてもよく、官能基を含んでいてもよい。
【0361】
Raは、-(C=O)-、-(C=O)-O-、又は、エーテル結合を含んでいてもよく、カルボニル基を含んでいてもよい炭素数1~100の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基は、炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素に置換されていてもよい。
Raとして好ましくは、-(CH2)a-、-(CF2)a-、-O-(CF2)a-、-(CF2)a-O-(CF2)b-、-O(CF2)a-O-(CF2)b-、-(CF2)a-[O-(CF2)b]c-、-O(CF2)a-[O-(CF2)b]c-、-[(CF2)a-O]b-[(CF2)c-O]d-、-O[(CF2)a-O]b-[(CF2)c-O]d-、-O-[CF2CF(CF3)O]a-(CF2)b-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH2)a-、-(C=O)-(CF2)a-、-(C=O)-O-(CH2)a-、-(C=O)-O-(CF2)a-、-(C=O)-[(CH2)a-O]b-、-(C=O)-[(CF2)a-O]b-、-(C=O)-O[(CH2)a-O]b-、-(C=O)-O[(CF2)a-O]b-、-(C=O)-O[(CH2)a-O]b-(CH2)c-、-(C=O)-O[(CF2)a-O]b-(CF2)c-、-(C=O)-(CH2)a-O-(CH2)b-、-(C=O)-(CF2)a-O-(CF2)b-、-(C=O)-O-(CH2)a-O-(CH2)b-、-(C=O)-O-(CF2)a-O-(CF2)b-、-(C=O)-O-C6H4-、及び、これらの組み合わせから選択される少なくとも1種である。
式中、a、b、c及びdは独立して少なくとも1以上である。a、b、c及びdは独立して、2以上であってよく、3以上であってよく、4以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってよい。a、b、c及びdの上限は、例えば、100である。
【0362】
Raとして好適な具体例としては、-CF2-O-、-CF2-O-CF2-、-CF2-O-CH2-、-CF2-O-CH2CF2-、-CF2-O-CF2CF2-、-CF2-O-CF2CH2-、-CF2-O-CF2CF2CH2-、-CF2-O-CF(CF3)-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-O-、-CF2-O-CF(CF3)CH2-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH2)-、-(C=O)-(CF2)-、-(C=O)-O-(CH2)-、-(C=O)-O-(CF2)-、-(C=O)-[(CH2)2-O]n-、-(C=O)-[(CF2)2-O]n-、-(C=O)-O[(CH2)2-O]n-、-(C=O)-O[(CF2)2-O]n-、-(C=O)-O[(CH2)2-O]n-(CH2)-、-(C=O)-O[(CF2)2-O]n-(CF2)-、-(C=O)-(CH2)2-O-(CH2)-、-(C=O)-(CF2)2-O-(CF2)-、-(C=O)-O-(CH2)2-O-(CH2)-、-(C=O)-O-(CF2)2-O-(CF2)-、-(C=O)-O-C6H4-等が挙げられる。中でも、上記Raは、具体的には、-CF2-O-、-CF2-O-CF2-、-CF2-O-CF2CF2-、-CF2-O-CF(CF3)-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-O-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH2)-、-(C=O)-O-(CH2)-、-(C=O)-O[(CH2)2-O]n-、-(C=O)-O[(CH2)2-O]n-(CH2)-、-(C=O)-(CH2)2-O-(CH2)-、又は、-(C=O)-O-C6H4-が好ましい。
上記式中、nは1~10の整数である。
【0363】
一般式(4)における-Ra-(CZ1Z2)k-としては、-CF2-O-CF2-、-CF2-O-CF(CF3)-、-CF2-O-C(CF3)2-、-CF2-O-CF2-CF2-、-CF2-O-CF2-CF(CF3)-、-CF2-O-CF2-C(CF3)2-、-CF2-O-CF2CF2-CF2-、-CF2-O-CF2CF2-CF(CF3)-、-CF2-O-CF2CF2-C(CF3)2-、-CF2-O-CF(CF3)-CF2-、-CF2-O-CF(CF3)-CF(CF3)-、-CF2-O-CF(CF3)-C(CF3)2-、-CF2-O-CF(CF3)-CF2-、-CF2-O-CF(CF3)-CF(CF3)-、-CF2-O-CF(CF3)-C(CF3)2-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-CF2-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-CF(CF3)-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-C(CF3)2-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-O-CF2-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-O-CF(CF3)-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-O-C(CF3)2-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH2)-、-(C=O)-(CF2)-、-(C=O)-O-(CH2)-、-(C=O)-O-(CF2)-、-(C=O)-[(CH2)2-O]n-(CH2)-、-(C=O)-[(CF2)2-O]n-(CF2)-、-(C=O)-[(CH2)2-O]n-(CH2)-(CH2)-、-(C=O)-[(CF2)2-O]n-(CF2)-(CF2)-、-(C=O)-O[(CH2)2-O]n-(CF2)-、-(C=O)-O[(CH2)2-O]n-(CH2)-(CH2)-、-(C=O)-O[(CF2)2-O]n-(CF2)-、-(C=O)-O[(CF2)2-O]n-(CF2)-(CF2)-、-(C=O)-(CH2)2-O-(CH2)-(CH2)-、-(C=O)-(CF2)2-O-(CF2)-(CF2)-、-(C=O)-O-(CH2)2-O-(CH2)-(CH2)-、-(C=O)-O-(CF2)2-O-(CF2)-(CF2)-、-(C=O)-O-(CH2)2-O-(CH2)-C(CF3)2-、-(C=O)-O-(CF2)2-O-(CF2)-C(CF3)2-、又は、-(C=O)-O-C6H4-C(CF3)2-が好ましく、-CF2-O-CF(CF3)-、-CF2-O-CF2-CF(CF3)-、-CF2-O-CF2CF2-CF(CF3)-、-CF2-O-CF(CF3)-CF(CF3)-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-CF(CF3)-、-CF2-O-CF(CF3)CF2-O-CF(CF3)-、-(C=O)-、-(C=O)-O-(CH2)-、-(C=O)-O-(CH2)-(CH2)-、-(C=O)-O[(CH2)2-O]n-(CH2)-(CH2)-、-(C=O)-O-(CH2)2-O-(CH2)-C(CF3)2-、又は、-(C=O)-O-C6H4-C(CF3)2-がより好ましい。
上記式中、nは1~10の整数である。
【0364】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては、
【化19】
(式中、X
j及びY
3は上記と同じ。nは1~10の整数である。)等が挙げられる。
【0365】
Raとしては、一般式(r1):
-(C=O)h-(O)i-CF2-O-(CX6
2)e-{O-CF(CF3)}f-(O)g- (r1)
(式中、X6はそれぞれ独立してH、F又はCF3であり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1である)で表される2価の基が好ましく、一般式(r2):
-(C=O)h-(O)i-CF2-O-(CX7
2)e-(O)g- (r2)
(式中、X7はそれぞれ独立してH、F又はCF3であり、eは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1である。)で表される2価の基も好ましい。
【0366】
一般式(4)の-Ra-(CZ1Z2)k-としてはまた、下記式(t1):
-(C=O)h-(O)i-CF2-O-(CX6
2)e-{O-CF(CF3)}f-(O)g-CZ1Z2- (t1)
(式中、X6はそれぞれ独立してH、F又はCF3であり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1であり、Z1及びZ2は、それぞれ独立して、F又はCF3である)で表される2価の基も好ましく、式(t1)において、Z1及びZ2は、一方がFで他方がCF3であることがより好ましい。
また、一般式(4)において、-Ra-(CZ1Z2)k-としては、下記式(t2):
-(C=O)h-(O)i-CF2-O-(CX7
2)e-(O)g-CZ1Z2- (t2)
(式中、X7はそれぞれ独立してH、F又はCF3であり、eは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1であり、Z1及びZ2は、それぞれ独立して、F又はCF3である)で表される2価の基も好ましく、式(t2)において、Z1及びZ2は、一方がFで他方がCF3であることがより好ましい。
【0367】
一般式(4)で表される化合物は、親水基(Y3)を除いて、C-F結合を有し、C-H結合を有していないことも好ましい。すなわち、一般式(4)において、Xi、Xj、及びXkの全てがFであり、Raは炭素数が1以上のパーフルオロアルキレン基であることが好ましく、上記パーフルオロアルキレン基は、鎖状及び分岐状のいずれでもよく、環状及び非環状のいずれでもよく、少なくとも1つのカテナリーヘテロ原子を含んでもよい。上記パーフルオロアルキレン基の炭素数は、2~20であってよく、4~18であってもよい。
【0368】
一般式(4)で表される化合物は、部分フッ素化されたものであってもよい。すなわち、一般式(4)で表される化合物は、親水基(Y3)を除いて、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を有し、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有することも好ましい。
【0369】
一般式(4)で表される化合物は、下記式(4a)で示される化合物であることも好ましい。
CF2=CF-O-Rf0-Y3 (4a)
(式中、Y3は親水基であり、Rf0は、過フッ素化されており、鎖状又は分岐状、環状又は非環状構造、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってもよく、硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意追加的に含有する過フッ素化二価連結基である。)
【0370】
一般式(4)で表される化合物は、下記式(4b)で示される化合物であることも好ましい。
CH2=CH-O-Rf0-Y3 (4b)
(式中、Y3は親水基であり、Rf0は式(4a)で定義される過フッ素化二価連結基である。)
【0371】
一般式(4)において、Y3は-OSO3Mであることが好ましい形態の一つである。Y3が-OSO3Mである場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF2=CF(OCF2CF2CH2OSO3M)、CH2=CH((CF2)4CH2OSO3M)、CF2=CF(O(CF2)4CH2OSO3M)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)CH2OSO3M)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)OCF2CF2CH2OSO3M)、CH2=CH((CF2)4CH2OSO3M)、CF2=CF(OCF2CF2SO2N(CH3)CH2CH2OSO3M)、CH2=CH(CF2CF2CH2OSO3M)、CF2=CF(OCF2CF2CF2CF2SO2N(CH3)CH2CH2OSO3M)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0372】
一般式(4)において、Y3は-SO3Mであることも好ましい形態の一つである。Y3が-SO3Mである場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF2=CF(OCF2CF2SO3M)、CF2=CF(O(CF2)4SO3M)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)SO3M)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)OCF2CF2SO3M)、CH2=CH(CF2CF2SO3M)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2CF2SO3M)、CH2=CH((CF2)4SO3M)、CH2=CH((CF2)3SO3M)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0373】
一般式(4)において、Y3は-COOMであることも好ましい形態の一つである。Y3が-COOMである場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF2=CF(OCF2CF2COOM)、CF2=CF(OCF2CF2CF2COOM)、CF2=CF(O(CF2)5COOM)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)COOM)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)O(CF2)nCOOM)(nは1より大きい)、CH2=CH(CF2CF2COOM)、CH2=CH((CF2)4COOM)、CH2=CH((CF2)3COOM)、CF2=CF(OCF2CF2SO2NR’CH2COOM)、CF2=CF(O(CF2)4SO2NR’CH2COOM)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)SO2NR’CH2COOM)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2NR’CH2COOM)、CH2=CH(CF2CF2SO2NR’CH2COOM)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2CF2SO2NR’CH2COOM)、CH2=CH((CF2)4SO2NR’CH2COOM)、CH2=CH((CF2)3SO2NR’CH2COOM)等が挙げられる。上記式中、R’はH又はC1-4アルキル基であり、Mは上記と同じである。
【0374】
一般式(4)において、Y3は-OPO3Mまたは-OP(O)(OM)2であることも好ましい形態の一つである。Y3が-OPO3Mまたは-OP(O)(OM)2である場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF2=CF(OCF2CF2CH2OP(O)(OM)2)、CF2=CF(O(CF2)4CH2OP(O)(OM)2)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)CH2OP(O)(OM)2)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)OCF2CF2CH2OP(O)(OM)2)、CF2=CF(OCF2CF2SO2N(CH3)CH2CH2OP(O)(OM)2)、CF2=CF(OCF2CF2CF2CF2SO2N(CH3)CH2CH2OP(O)(OM)2)、CH2=CH(CF2CF2CH2OP(O)(OM)2、CH2=CH((CF2)4CH2OP(O)(OM)2)、CH2=CH((CF2)3CH2OP(O)(OM)2)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0375】
一般式(4)において、Y3は-PO3Mまたは-P(O)(OM)2であることも好ましい形態の一つである。Y3が-PO3Mまたは-P(O)(OM)2である場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF2=CF(OCF2CF2P(O)(OM)2)、CF2=CF(O(CF2)4P(O)(OM)2)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)P(O)(OM)2)、CF2=CF(OCF2CF(CF3)OCF2CF2P(O)(OM)2)、CH2=CH(CF2CF2P(O)(OM)2)、CH2=CH((CF2)4P(O)(OM)2)、CH2=CH((CF2)3P(O)(OM)2)等が挙げられ、式中、Mは上記と同じである。
【0376】
一般式(4)で表される化合物としては、一般式(5):
CX2=CY(-CZ2-O-Rf-Y3) (5)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Zは、同一又は異なって、-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Y3は、前記と同じである。)で表される化合物、一般式(6):
CX2=CY(-O-Rf-Y3) (6)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Y3は、前記と同じである。)で表される化合物、及び、一般式(7):
CX2=CY(-Rf-Y3) (7)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Y3は、前記と同じである。)で表される化合物、からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
なお、上記炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
【0377】
一般式(5)において、Xは-H又は-Fである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。例えば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
【0378】
一般式(5)において、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。
上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記Yとしては、-H、-F又は-CF3が好ましく、-Fがより好ましい。
【0379】
一般式(5)において、Zは、同一又は異なって、-H、-F、アルキル基又はフルオロアルキル基である。
上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記Zとしては、-H、-F又は-CF3が好ましく、-Fがより好ましい。
【0380】
一般式(5)において、上記X、Y及びZの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。例えば、Xが-Hであり、Y及びZが-Fであってよい。
【0381】
一般式(5)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。
上記含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキレン基としては、-CF2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CF2CH2-、-CF2CF2CH2-、-CF(CF3)-、-CF(CF3)CF2-、-CF(CF3)CH2-等が挙げられる。上記含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0382】
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。
エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基としては、例えば、下記式:
【化20】
(式中、Z
1はFまたはCF
3;Z
2及びZ
3はそれぞれHまたはF;Z
4はH、FまたはCF
3;p1+q1+r1が1~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数)で表される2価の基であることも好ましい。
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CF(CF
3)CF
2-O-CF(CF
3)-、-(CF(CF
3)CF
2-O)
n-CF(CF
3)-(式中、nは1~10の整数)、-CF(CF
3)CF
2-O-CF(CF
3)CH
2-、-(CF(CF
3)CF
2-O)
n-CF(CF
3)CH
2-(式中、nは1~10の整数)、-CH
2CF
2CF
2O-CH
2CF
2CH
2-、-CF
2CF
2CF
2O-CF
2CF
2-、-CF
2CF
2CF
2O-CF
2CF
2CH
2-、-CF
2CF
2O-CF
2-、-CF
2CF
2O-CF
2CH
2-等が挙げられる。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0383】
一般式(5)において、Y3は、-COOM、-SO3M又は-OSO3M(Mは、H、金属原子、NR7y
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7yは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)であることが好ましい。
R7yにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。
R7yとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
Mとしては、-H、金属原子またはNR7
4が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR7
4がより好ましく、-H、-Na、-K、-LiまたはNH4が更に好ましく、-H、-Na、-KまたはNH4が更により好ましく、-H、-NaまたはNH4が特に好ましく、-Hまたは-NH4が最も好ましい。
上記Y3としては、-COOM又は-SO3Mが好ましく、-COOMがより好ましい。
【0384】
一般式(5)で表される化合物は、一般式(5a)で表される化合物(5a)であることが好ましい。
CH2=CF(-CF2-O-Rf-Y3) (5a)
(式中、Rf及びY3は前記と同じ。)
【0385】
一般式(5a)で表される化合物として具体的には、下記式
【0386】
【0387】
(式中、Z1はFまたはCF3;Z2及びZ3はそれぞれHまたはF;Z4はH、FまたはCF3;p1+q1+r1が0~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数、Y3は前記と同じ。ただし、Z3及びZ4がともにHの場合、p1+q1+r1+s1が0でない)で表される化合物が挙げられる。より具体的には、
【0388】
【0389】
などが好ましく挙げられ、なかでも
【0390】
【0391】
であることが好ましい。
【0392】
一般式(5a)で表される化合物としては、式(5a)中のY3が-COOMであることが好ましく、特に、CH2=CFCF2OCF(CF3)COOM、及び、CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CH2=CFCF2OCF(CF3)COOMがより好ましい。
【0393】
一般式(5)で表される化合物は、一般式(5b)で表される化合物(5b)であることが好ましい。
CX2
2=CFCF2-O-(CF(CF3)CF2O)n5-CF(CF3)-Y3
(5b)
(式中、各X2は、同一であり、F又はHを表す。n5は、0又は1~10の整数を表し、Y3は、前記定義と同じ。)
【0394】
上記式(5b)において、上記n5は、得られる水性分散液の安定性の点で0又は1~5の整数であることが好ましく、0、1又は2であることがより好ましく、0又は1であることが更に好ましい。上記Y3は、適度な水溶性と水性分散液の安定性が得られる点で-COOMであることが好ましく、上記Mは、不純物として残留しにくく、得られた成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNH4であることが好ましい。
【0395】
上記式(5b)で表される化合物としては、例えば、CH2=CFCF2OCF(CF3)COOM、CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
【0396】
また、一般式(5)で表される化合物としては、一般式(5c)で表される化合物等も挙げられる。
【0397】
CF2=CFCF2-O-Rf-Y3 (5c)
(式中、Rf及びY3は上記と同じ)
【0398】
【0399】
一般式(6)において、Xは-H又は-Fである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。例えば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
【0400】
一般式(6)において、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。
上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記Yとしては、-H、-F又は-CF3が好ましく、-Fがより好ましい。
【0401】
一般式(6)において、上記X及びYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。例えば、Xが-Hであり、Y及びZが-Fであってよい。
【0402】
一般式(6)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。
上記含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、含フッ素アルキレン基の炭素数は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキレン基としては、-CF2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CF2CH2-、-CF2CF2CH2-、-CF(CF3)-、-CF(CF3)CF2-、-CF(CF3)CH2-等が挙げられる。上記含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0403】
上記一般式(6)において、Y3は、-COOM、-SO3M又は-OSO3M(Mは、H、金属原子、NR7y
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7yは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)であることが好ましい。
R7yの有機基としてはアルキル基が好ましい。R7yとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
Mとしては、-H、金属原子またはNR7
4が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR7
4がより好ましく、-H、-Na、-K、-LiまたはNH4が更に好ましく、-H、-Na、-KまたはNH4が更により好ましく、-H、-NaまたはNH4が特に好ましく、-Hまたは-NH4が最も好ましい。
上記Y3としては、-COOM又は-SO3Mが好ましく、-COOMがより好ましい。
【0404】
一般式(6)で表される化合物は、一般式(6a)、(6b)、(6c)、(6d)および(6e)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
CF2=CF-O-(CF2)n1-Y3 (6a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Y3は、前記定義と同じ。)
CF2=CF-O-(CF2C(CF3)F)n2-Y3 (6b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Y3は、前記定義と同じ。)
CF2=CF-O-(CFX1)n3-Y3 (6c)
(式中、X1は、F又はCF3を表し、n3は、1~10の整数を表し、Y3は、前記定義と同じ。)
CF2=CF-O-(CF2CFX1O)n4-(CF2)n6-Y3 (6d)
(式中、n4は、1~10の整数を表し、n6は、1~3の整数を表し、Y3及びX1は、前記定義と同じ。)
CF2=CF-O-(CF2CF2CFX1O)n5-CF2CF2CF2-Y3 (6e)
(式中、n5は、0~10の整数を表し、Y3及びX1は、前記定義と同じ。)
【0405】
上記式(6a)において、上記n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。上記Y3は、適度な水溶性及び水性分散液の安定性を得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNH4であることが好ましい。
【0406】
上記式(6a)で表される化合物としては、例えば、CF2=CF-O-CF2COOM、CF2=CF(OCF2CF2COOM)、CF2=CF(OCF2CF2CF2COOM)(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
【0407】
上記式(6b)において、上記n2は、得られる水性分散液の安定性の点で、3以下の整数であることが好ましく、Y3は、適度な水溶性及び水性分散液の安定性が得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNH4であることが好ましい。
【0408】
上記式(6c)において、上記n3は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Y3は、適度な水溶性及び水性分散液の安定性が得られる点で、-COOMであることが好ましく、上記Mは、分散安定性がよくなる点で、H又はNH4であることが好ましい。
【0409】
上記式(6d)において、上記X1は、水性分散液の安定性の点で、-CF3であることが好ましく、上記n4は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Y3は、適度な水溶性と水性分散液の安定性が得られる点で-COOMであることが好ましく、上記Mは、H又はNH4であることが好ましい。
【0410】
上記式(6d)で表される化合物としては、例えば、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOM、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2COOM、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2COOM(式中、Mは、H、NH4又はアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
【0411】
一般式(6e)において、上記n5は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Y3は、適度な水溶性と水性分散液の安定性が得られる点で-COOMであることが好ましく、上記Mは、H又はNH4であることが好ましい。
【0412】
一般式(6e)で表される化合物としては、例えば、CF2=CFOCF2CF2CF2COOM(式中、Mは、H、NH4又はアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
【0413】
一般式(7)において、Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基であることが好ましい。一般式(7)において、X及びYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。
【0414】
一般式(7)で表される化合物は、一般式(7a):
CF2=CF-(CF2)n1-Y3 (7a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Y3は、前記定義と同じ。)で表される化合物、及び、一般式(7b):
CF2=CF-(CF2C(CF3)F)n2-Y3 (7b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Y3は、前記定義と同じ。)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
上記Y3は、-SO3M又は-COOMが好ましく、Mは、H、金属原子、NR7y
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであることが好ましい。上記R7yは、H又は有機基を表す。
【0415】
上記式(7a)において、上記n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。上記Y3は、適度な水溶性及び水性分散液の安定性を得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNH4であることが好ましい。
上記式(7a)で表される化合物としては、例えば、CF2=CFCF2COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
【0416】
上記式(7b)において、上記n2は、得られる水性分散液の安定性の点で、3以下の整数であることが好ましく、Y3は、適度な水溶性及び水性分散液の安定性が得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNH4であることが好ましい。
【0417】
上記変性モノマーは、変性モノマー(A)を含むことが好ましく、一般式(5a)、一般式(5c)、一般式(6a)、一般式(6b)、一般式(6c)、及び、一般式(6d)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、一般式(5a)または一般式(5c)で表される化合物を含むことがより好ましい。
【0418】
変性モノマーとして変性モノマー(A)を用いる場合、変性モノマー(A)単位の含有量は、PTFEの全重合単位に対して、0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.0005質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましい。上限としては、好ましい順に、0.90質量%、0.50質量%、0.40質量%、0.30質量%、0.20質量%、0.15質量%、0.10質量%、0.08質量%、0.05質量%、0.01質量%である。
【0419】
<水性媒体>
水性媒体は、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、たとえば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、および/または、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
【0420】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、上記重合温度範囲でラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、公知の油溶性および/または水溶性の重合開始剤を使用することができる。更に、還元剤等と組み合わせてレドックスとして重合を開始することもできる。上記重合開始剤の濃度は、モノマーの種類、目的とするPTFEの分子量、反応速度によって適宜決定される。
【0421】
上記重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル重合開始剤を使用できる。
【0422】
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジt-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などが、また、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロバレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロ-デカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドのジ[パーフロロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などが代表的なものとしてあげられる。
【0423】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド等の有機過酸化物、t-ブチルパーマレエート、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどがあげられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤も併せて含んでもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1~20倍であってよい。
【0424】
たとえば、30℃以下の低温で重合を実施する場合等では、重合開始剤として、酸化剤と還元剤を組み合わせるレドックス開始剤を用いるのが好ましい。酸化剤としては、過硫酸塩、有機過酸化物、過マンガン酸カリウム、三酢酸マンガン、セリウム硝酸アンモニウム、臭素酸塩等が挙げられる。還元剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。開始剤の分解速度を上げるため、レドックス開始剤の組み合わせには、銅塩、鉄塩を加えることも好ましい。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
【0425】
上記レドックス開始剤としては、たとえば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、過硫酸アンモニウム/重亜硫酸塩/硫酸鉄(II)、過硫酸アンモニウム/亜硫酸塩/硫酸鉄(II)、過硫酸アンモニウム/亜硫酸塩、過硫酸アンモニウム/硫酸鉄(II)、三酢酸マンガン/シュウ酸、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸、臭素酸塩/亜硫酸塩、臭素酸塩/重亜硫酸塩等が挙げられ、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、過硫酸アンモニウム/亜硫酸塩/硫酸鉄(II)が好ましい。レドックス開始剤を用いる場合は、酸化剤または還元剤のいずれかをあらかじめ反応器に仕込み、ついでもう一方を連続的または断続的に加えて重合を開始させてもよい。たとえば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸を用いる場合、反応器にシュウ酸を仕込み、そこへ過マンガン酸カリウムを連続的に添加することが好ましい。
【0426】
重合開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(たとえば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱で除熱を行いながら、反応温度を上昇させてもよい範囲であり、より好ましい上限は、装置面から重合反応熱を除熱できる範囲である。
【0427】
<添加剤>
本開示の製造方法において、重合体(I)と、所望により用いるその他の界面活性能を有する化合物に加え、各化合物を安定化するため添加剤を使用することができる。上記添加剤としては、緩衝剤、pH調整剤、安定化助剤、分散安定剤などが挙げられる。
【0428】
安定化助剤としては、パラフィンワックス、フッ素系オイル、フッ素系溶剤、シリコーンオイルなどが好ましい。安定化助剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。安定化助剤としては、パラフィンワックスがより好ましい。パラフィンワックスとしては、室温で液体でも、半固体でも、固体であってもよいが、炭素数12以上の飽和炭化水素が好ましい。パラフィンワックスの融点は、通常40~65℃が好ましく、50~65℃がより好ましい。
【0429】
安定化助剤の使用量は、使用する水性媒体の質量基準で0.1~12質量%が好ましく、0.1~8質量%がより好ましい。安定化助剤は十分に疎水的で、重合反応の終了後に得られる水性分散液と完全に分離されて、コンタミ成分とならないことが望ましい。また、安定化助剤は、重合により得られる水性分散液から除去することが好ましい。
【0430】
pH調整剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸アンモニウム等を用いることができる。
【0431】
TFEを重合する際に水性媒体のpHは、塩基性であることが好ましい。水性媒体にpH調整剤を添加することにより、水性媒体のpHを調整してもよい。TFEを重合する際の水性媒体のpHは、7.1以上が好ましく、7.5以上がより好ましい。pHを塩基性に調整することにより、重合体(I)が存在することによる水性分散液の安定性向上効果が一層高まり、水性媒体中でのTFEの重合が一層円滑に進行する。上記pHは、orion社製pHメーターによって測定することができる。
【0432】
<アニオン性炭化水素系界面活性剤>
TFEの重合の一実施形態においては、アニオン性炭化水素系界面活性剤の存在下に、TFEを重合する。アニオン性炭化水素系界面活性剤を用いることによって、重合により生じる水性分散液の安定性が向上し、TFEの重合が円滑に進行する。
【0433】
TFEの重合の別の一実施形態においては、実質的にアニオン性炭化水素系界面活性剤の非存在下に、TFEを重合する。重合体(I)の存在下に行うTFEの重合は、アニオン性炭化水素系界面活性剤を用いなくても、TFEの重合が円滑に進行する。
【0434】
本開示において「実質的にアニオン性炭化水素系界面活性剤の非存在下に」とは、水性媒体に対してアニオン性炭化水素系界面活性剤が10質量ppm以下であることを意味し、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下である。
【0435】
アニオン性炭化水素系界面活性剤は、通常、カルボン酸塩、スルホン酸塩または硫酸塩などの親水性部分と、アルキルなどの長鎖炭化水素部分である疎水性部分とを有する。
【0436】
アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、Resolution Performance ProductsのVersatic(登録商標)10、BASF製のAvanel Sシリーズ(S-70、S-74等)等が挙げられる。
【0437】
アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、R-L-M(式中、Rが、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、または、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価または2価の複素環を含んでもよいし、環を形成していてもよい。Lが、-ArSO3
-、-SO3
-、-SO4-、-PO3
-またはCOO-であり、Mが、H、金属原子、NR5
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウム、R5は、Hまたは有機基、-ArSO3
-は、アリールスルホン酸塩である。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
【0438】
具体的には、ラウリル酸、ラウリル硫酸に代表されるようなCH3-(CH2)n-L-M(式中、nが、6~17の整数である。LおよびMが、上記と同じ)によって表されるものが挙げられる。Rが、12~16個の炭素原子を有するアルキル基であり、L-Mが、硫酸塩またはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であるものの混合物も使用できる。
【0439】
また、アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、R6(-L-M)2(式中、R6が、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、または、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキレン基であり、炭素数が3以上の場合は1価または2価の複素環を含んでもよいし、環を形成していてもよい。Lが、-ArSO3
-、-SO3
-、-SO4-、-PO3
-またはCOO-であり、Mが、H、金属原子、NR5
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウム、R5は、Hまたは有機基、-ArSO3
-は、アリールスルホン酸塩である。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
【0440】
また、アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、R7(-L-M)3(式中、R7が、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキリジン基、または、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキリジン基であり、炭素数が3以上の場合は1価または2価の複素環を含んでもよいし、環を形成していてもよい。Lが、-ArSO3
-、-SO3
-、-SO4-、-PO3
-またはCOO-であり、Mが、H、金属原子、NR5
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウム、R5はHまたは有機基である。-ArSO3
-は、アリールスルホン酸塩である。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
【0441】
また、アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、シロキサン炭化水素系界面活性剤も挙げられる。シロキサン炭化水素系界面活性剤としては、Silicone Surfactants,R.M.Hill,Marcel Dekker,Inc.,ISBN:0-8247-00104に記載されているものが挙げられる。シロキサン炭化水素系界面活性剤の構造は、明確な疎水性部分および親水性部分を含む。疎水性部分は、1つ以上のジヒドロカルビルシロキサン単位を含み、ここで、シリコーン原子上の置換基が、完全に炭化水素である。ヒドロカルビル基の炭素原子が、フッ素などのハロゲンによって置換され得る場合に、水素原子によって完全に置換されるという意味では、これらのシロキサン界面活性剤は、炭化水素界系面活性剤とみなすこともでき、すなわち、ヒドロカルビル基の炭素原子上の一価置換基は水素である。
【0442】
シロキサン炭化水素系界面活性剤の親水性部分は、スルフェート、スルホネート、ホスホネート、リン酸エステル、カルボキシレート、カーボネート、スルホサクシネート、タウレート(遊離酸、塩またはエステルとしての)、ホスフィンオキシド、ベタイン、ベタインコポリオール、第4級アンモニウム塩などのイオン性基を含む1つ以上の極性部分を含んでもよい。イオン性疎水性部分は、イオン的に官能化されたシロキサングラフトも含み得る。このようなシロキサン炭化水素系界面活性剤としては、たとえば、ポリジメチルシロキサン-グラフト-(メタ)アクリル酸塩、ポリジメチルシロキサン-グラフト-ポリアクリレート塩およびポリジメチルシロキサングラフト化第4級アミンが挙げられる。シロキサン炭化水素系界面活性剤の親水性部分の極性部分は、ポリエチレンオキシド(PEO)、および混合されたポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドポリエーテル(PEO/PPO)などのポリエーテル;単糖類および二糖類;およびピロリジノンなどの水溶性複素環によって形成される非イオン性基を含み得る。エチレンオキシド対プロピレンオキシド(EO/PO)の比率は、混合されたポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドポリエーテルにおいて変化され得る。
【0443】
シロキサン炭化水素系界面活性剤の親水性部分は、イオン性部分と非イオン性部分との組合せも含み得る。このような部分としては、たとえば、イオン的に末端官能化されたまたはランダムに官能化されたポリエーテルまたはポリオールが挙げられる。好ましくは、非イオン性部分を有するシロキサン、すなわち、非イオン性シロキサン界面活性剤である。
【0444】
シロキサン炭化水素系界面活性剤の構造の疎水性および親水性部分の配置は、ジブロックポリマー(AB)、トリブロックポリマー(ABA)(ここで、「B」は、分子のシロキサン部分を表す)、またはマルチブロックポリマーの形態をとってもよい。あるいは、シロキサン界面活性剤は、グラフトポリマーを含んでいてもよい。
【0445】
シロキサン炭化水素系界面活性剤については、米国特許第6,841,616号明細書にも開示されている。
【0446】
シロキサンベースのアニオン性炭化水素系界面活性剤としては、Lubrizol Advanced Materials,Inc.のNoveon(登録商標)Consumer Specialtiesから入手可能なSilSenseTMPE-100シリコーン、SilSenseTMCA-1シリコーン等が挙げられる。
【0447】
アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、Akzo Nobel Surface Chemistry LLCのスルホサクシネート界面活性剤Lankropol(登録商標)K8300等も挙げられる。スルホサクシネート界面活性剤としては、スルホコハク酸ジイソデシルNa塩、(ClariantのEmulsogen(登録商標)SB10)、スルホコハク酸ジイソトリデシルNa塩(Cesapinia ChemicalsのPolirol(登録商標)TR/LNA)等が挙げられる。
【0448】
アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、Omnova Solutions,Inc.のPolyFox(登録商標)界面活性剤(PolyFoxTMPF-156A、PolyFoxTMPF-136A等)も挙げられる。
【0449】
アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、たとえば、一般式(α):
R10-COOM (α)
(式中、R10は、1個以上の炭素原子を含有する1価の有機基である。Mは、H、金属原子、NR11
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R11はHまたは有機基であり、同一でも異なっていてもよい。)で示される化合物(α)が挙げられる。R11としてはHまたはC1-10の有機基が好ましく、HまたはC1-4の有機基がより好ましい。界面活性能の観点から、R10の炭素数は2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。また、水溶性の観点から、R10の炭素数は、29個以下であることが好ましく、23個以下がより好ましい。上記Mの金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、KまたはLiが好ましい。Mとしては、H、金属原子またはNR11
4が好ましく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR11
4がより好ましく、H、Na、K、LiまたはNH4が更に好ましく、Na、KまたはNH4が更により好ましく、NaまたはNH4が特に好ましく、NH4が最も好ましい。
【0450】
化合物(α)としては、R12-COOM(式中、R12が、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキレン基またはアルケニレン基、若しくは、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基、アルケニル基、アルキレン基またはアルケニレン基であり、これらはエーテル結合を含んでもよい。炭素数が3以上の場合は1価または2価の複素環を含んでもよいし、環を形成していてもよい。Mは上記と同じ。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。具体的には、CH3-(CH2)n-COOM(式中、nが、2~28の整数である。Mは上記と同じ)によって表されるものが挙げられる。
【0451】
化合物(α)は、乳化安定性の観点で、カルボニル基(但し、カルボキシル基中のカルボニル基を除く)を含まないものであってもよい。上記カルボニル基を含まない炭化水素含有界面活性剤としては、たとえば、下記式(A):R-COO-M (A)(式中、Rは、6~17個の炭素原子を含有するアルキル基、アルケニル基、アルキレン基またはアルケニレン基であり、これらはエーテル結合を含んでもよい。Mは、H、金属原子、NR11
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、または、置換基を有していてもよいホスホニウムである。R11は、同一または異なって、Hまたは炭素数1~10の有機基である。)の化合物が好ましく例示される。上記式(A)において、Rは、アルキル基またはアルケニル基(これらはエーテル基を含んでいてもよい)であることが好ましい。上記Rにおけるアルキル基またはアルケニル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。上記Rの炭素数は限定されないが、たとえば、2~29である。
【0452】
アルキル基が直鎖状である場合、Rの炭素数は3~29であることが好ましく、5~23であることがより好ましい。上記アルキル基が分岐鎖状である場合、Rの炭素数は5~35であることが好ましく、11~23であることがより好ましい。上記アルケニル基が直鎖状である場合、Rの炭素数は2~29であることが好ましく、9~23であることがより好ましい。上記アルケニル基が分岐鎖状である場合、Rの炭素数は2~29であることが好ましく、9~23であることがより好ましい。
【0453】
アルキル基およびアルケニル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ビニル基等が挙げられる。
【0454】
また、アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、カルボン酸型炭化水素系界面活性剤も挙げられる。カルボン酸型炭化水素系界面活性剤としては、たとえば、ブチル酸、バレリアン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、(9,12,15)-リノレン酸、(6,9,12)リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、8、11-エイコサジエン酸、ミード酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ピノレン酸、α-エレオステアリン酸、β-エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸、およびこれらの塩が挙げられる。特に、ラウリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、および、これらの塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。上記塩としては、カルボキシル基の水素が上述した式Mの金属原子、NR11
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、または、置換基を有していてもよいホスホニウムであるものが挙げられるが特に限定されない。
【0455】
また、アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、たとえば国際公開第2013/146950号や国際公開第2013/146947号に記載されているアニオン性炭化水素系界面活性剤を用いることができる。たとえば、炭素数6~40、好ましくは炭素数8~20、より好ましくは炭素数9~13の飽和または不飽和の脂肪族鎖を有するものが挙げられる。上記飽和または不飽和の脂肪族鎖は、直鎖または分岐鎖の何れであってもよく、環状構造を有するものであってもよい。上記炭化水素は、芳香族性であってもよいし、芳香族基を有するものであってもよい。上記炭化水素は、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を有するものであってもよい。
【0456】
アニオン性炭化水素系界面活性剤としては、アルキルスルホネート、アルキルサルフェート、アルキルアリールサルフェートおよびそれらの塩;脂肪族(カルボン)酸およびその塩;リン酸アルキルエステル、リン酸アルキルアリールエステルまたはそれらの塩;等が挙げられるが、中でも、アルキルスルホネート、アルキルサルフェート、脂肪族カルボン酸またはそれらの塩が好ましい。
【0457】
アルキルサルフェートまたはその塩としては、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウムが好ましい。
脂肪族カルボン酸またはその塩としては、コハク酸、デカン酸、ウンデカン酸、ウンデセン酸、ラウリン酸、ハイドロドデカン酸、またはそれらの塩が好ましい。
【0458】
<含フッ素界面活性剤>
TFEの重合の一実施形態においては、含フッ素界面活性剤(但し、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する化合物を除く)の存在下に、TFEを重合する。含フッ素界面活性剤を用いることによって、重合により生じる水性分散液の安定性が向上し、TFEの重合が円滑に進行する。
【0459】
TFEの重合の別の一実施形態においては、実質的に含フッ素界面活性剤(但し、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する化合物を除く)の非存在下に、TFEを重合する。重合体(I)の存在下に行うTFEの重合は、含フッ素界面活性剤を用いなくても、TFEの重合が円滑に進行する。
【0460】
本開示において「実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に」とは、水性媒体に対して含フッ素界面活性剤が10質量ppm以下であることを意味し、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下である。
【0461】
含フッ素界面活性剤としては、アニオン性含フッ素界面活性剤等が挙げられる。アニオン性含フッ素界面活性剤は、たとえば、アニオン性基を除く部分の総炭素数が20以下のフッ素原子を含む界面活性剤であってよい。
【0462】
また、含フッ素界面活性剤としては、アニオン性部分の分子量が800以下のフッ素を含む界面活性剤であってよい。なお、上記「アニオン性部分」は、上記含フッ素界面活性剤のカチオンを除く部分を意味する。たとえば、後述する式(I)で表されるF(CF2)n1COOMの場合には、「F(CF2)n1COO」の部分である。
【0463】
上記含フッ素界面活性剤としてはまた、LogPOWが3.5以下の含フッ素界面活性剤が挙げられる。上記LogPOWは、1-オクタノールと水との分配係数であり、LogP[式中、Pは、含フッ素界面活性剤を含有するオクタノール/水(1:1)混合液が相分離した際のオクタノール中の含フッ素界面活性剤濃度/水中の含フッ素界面活性剤濃度比を表す]で表されるものである。上記LogPOWは、カラム;TOSOH ODS-120Tカラム(φ4.6mm×250mm、東ソー社製)、溶離液;アセトニトリル/0.6質量%HClO4水=1/1(vol/vol%)、流速;1.0ml/分、サンプル量;300μL、カラム温度;40℃、検出光;UV210nmの条件で、既知のオクタノール/水分配係数を有する標準物質(ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸およびデカン酸)についてHPLCを行い、各溶出時間と既知のオクタノール/水分配係数との検量線を作成し、この検量線に基づき、試料液におけるHPLCの溶出時間から算出する。
【0464】
上記含フッ素界面活性剤として具体的には、米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、米国特許出願公開第2007/0015865号明細書、米国特許出願公開第2007/0015866号明細書、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書、米国特許出願公開第2007/0117914号明細書、米国特許出願公開第2007/142541号明細書、米国特許出願公開第2008/0015319号明細書、米国特許第3250808号明細書、米国特許第3271341号明細書、特開2003-119204号公報、国際公開第2005/042593号、国際公開第2008/060461号、国際公開第2007/046377号、特開2007-119526号公報、国際公開第2007/046482号、国際公開第2007/046345号、米国特許出願公開第2014/0228531号、国際公開第2013/189824号、国際公開第2013/189826号に記載されたもの等が挙げられる。
【0465】
上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、一般式(N0):
Xn0-Rfn0-Y0 (N0)
(式中、Xn0は、H、ClまたはおよびFである。Rfn0は、炭素数3~20で、鎖状、分岐鎖状または環状で、一部または全てのHがFにより置換されたアルキレン基であり、該アルキレン基は1つ以上のエーテル結合を含んでもよく、一部のHがClにより置換されていてもよい。Y0はアニオン性基である。)で表される化合物が挙げられる。
【0466】
Y0のアニオン性基は、-COOM、-SO2M、または、-SO3Mであってよく、-COOM、または、-SO3Mであってよい。Mは、H、金属原子、NR7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R7は、Hまたは有機基である。上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、たとえば、Na、KまたはLiである。R7としては、HまたはC1-10の有機基であってよく、HまたはC1-4の有機基であってよく、HまたはC1-4のアルキル基であってよい。Mは、H、金属原子またはNR7
4であってよく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR7
4であってよく、H、Na、K、LiまたはNH4であってよい。上記Rfn0は、Hの50%以上がフッ素に置換されているものであってよい。
【0467】
一般式(N
0)で表される化合物としては、一般式(N
1):
X
n0-(CF
2)
m1-Y
0 (N
1)
(式中、X
n0は、H、ClおよびFであり、m1は3~15の整数であり、Y
0は、上記定義したものである。)で表される化合物、一般式(N
2):
Rf
n1-O-(CF(CF
3)CF
2O)
m2CFX
n1-Y
0 (N
2)
(式中、Rf
n1は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、m2は、0~3の整数であり、X
n1は、FまたはCF
3であり、Y
0は、上記定義したものである。)で表される化合物、一般式(N
3):
Rf
n2(CH
2)
m3-(Rf
n3)
q-Y
0 (N
3)
(式中、Rf
n2は、炭素数1~13のエーテル結合を含み得る、部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、m3は、1~3の整数であり、Rf
n3は、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、qは0または1であり、Y
0は、上記定義したものである。)で表される化合物、一般式(N
4):
Rf
n4-O-(CY
n1Y
n2)
pCF
2-Y
0 (N
4)
(式中、Rf
n4は、炭素数1~12のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Y
n1およびY
n2は、同一若しくは異なって、HまたはFであり、pは0または1であり、Y
0は、上記定義したものである。)で表される化合物、一般式(N
5):
【化25】
(式中、X
n2、X
n3およびX
n4は、同一若しくは異なってもよく、H、F、または、炭素数1~6のエーテル結合を含んでよい直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基である。Rf
n5は、炭素数1~3のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキレン基であり、Lは連結基であり、Y
0は、上記定義したものである。但し、X
n2、X
n3、X
n4およびRf
n5の合計炭素数は18以下である。)で表される化合物などが挙げられる。
【0468】
一般式(N0)で表される化合物としてより具体的には、一般式(I)で表されるパーフルオロカルボン酸(I)、一般式(II)で表されるω-Hパーフルオロカルボン酸(II)、一般式(III)で表されるパーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)、一般式(IV)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)、一般式(V)で表されるパーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)、一般式(VI)で表されるパーフルオロアルキルスルホン酸(VI)、一般式(VII)で表されるω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)、一般式(VIII)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)、一般式(IX)で表されるアルキルアルキレンカルボン酸(IX)、一般式(X)で表されるフルオロカルボン酸(X)、一般式(XI)で表されるアルコキシフルオロスルホン酸(XI)、一般式(XII)で表される化合物(XII)、下記一般式(XIII)で表される化合物(XIII)などが挙げられる。
【0469】
上記パーフルオロカルボン酸(I)は、一般式(I):
F(CF2)n1COOM (I)
(式中、n1は、3~14の整数であり、Mは、H、金属原子、NR7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R7は、Hまたは有機基である。)で表されるものである。
【0470】
上記ω-Hパーフルオロカルボン酸(II)は、一般式(II):
H(CF2)n2COOM (II)
(式中、n2は、4~15の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0471】
上記パーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)は、一般式(III):
Rf1-O-(CF(CF3)CF2O)n3CF(CF3)COOM (III)
(式中、Rf1は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、n3は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0472】
上記パーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)は、一般式(IV):
Rf2(CH2)n4Rf3COOM (IV)
(式中、Rf2は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、Rf3は、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基、n4は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0473】
上記アルコキシフルオロカルボン酸(V)は、一般式(V):
Rf4-O-CY1Y2CF2-COOM (V)
(式中、Rf4は、炭素数1~12のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Y1およびY2は、同一若しくは異なって、HまたはFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0474】
上記パーフルオロアルキルスルホン酸(VI)は、一般式(VI):
F(CF2)n5SO3M (VI)
(式中、n5は、3~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0475】
上記ω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)は、一般式(VII):
H(CF2)n6SO3M (VII)
(式中、n6は、4~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0476】
上記パーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)は、一般式(VIII):
Rf5(CH2)n7SO3M (VIII)
(式中、Rf5は、炭素数1~13のパーフルオロアルキル基であり、n7は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0477】
上記アルキルアルキレンカルボン酸(IX)は、一般式(IX):
Rf6(CH2)n8COOM (IX)
(式中、Rf6は、炭素数1~13のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、n8は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0478】
上記フルオロカルボン酸(X)は、一般式(X):
Rf7-O-Rf8-O-CF2-COOM (X)
(式中、Rf7は、炭素数1~6のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rf8は、炭素数1~6の直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0479】
上記アルコキシフルオロスルホン酸(XI)は、一般式(XI):
Rf9-O-CY1Y2CF2-SO3M (XI)
(式中、Rf9は、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状であって、塩素を含んでもよい、部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Y1およびY2は、同一若しくは異なって、HまたはFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0480】
上記化合物(XII)は、一般式(XII):
【化26】
(式中、X
1、X
2およびX
3は、同一若しくは異なってもよく、H、Fおよび炭素数1~6のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rf
10は、炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、Lは連結基であり、Y
0はアニオン性基である。)で表されるものである。Y
0は、-COOM、-SO
2M、または、-SO
3Mであってよく、-SO
3M、または、COOMであってよい(式中、Mは上記定義したものである。)。Lとしては、たとえば、単結合、炭素数1~10のエーテル結合を含みうる部分または完全フッ素化されたアルキレン基が挙げられる。
【0481】
上記化合物(XIII)は、下記一般式(XIII):
Rf11-O-(CF2CF(CF3)O)n9(CF2O)n10CF2COOM (XIII)
(式中、Rf11は、塩素を含む炭素数1~5のフルオロアルキル基であり、n9は、0~3の整数であり、n10は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。化合物(XIII)としては、CF2ClO(CF2CF(CF3)O)n9(CF2O)n10CF2COONH4(平均分子量750の混合物、式中、n9およびn10は上記定義したものである。)が挙げられる。
【0482】
このように、上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、カルボン酸系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤などが挙げられる。
【0483】
含フッ素界面活性剤は、1種の含フッ素界面活性剤であってもよいし、2種以上の含フッ素界面活性剤を含有する混合物であってもよい。
【0484】
含フッ素界面活性剤としては、以下の式で表される化合物が挙げられる。含フッ素界面活性剤は、これらの化合物の混合物であってよい。上記重合の一実施形態においては、実質的に以下の式で表される化合物の非存在下に、フルオロモノマーを重合する。
F(CF
2)
7COOM、
F(CF
2)
5COOM、
H(CF
2)
6COOM、
CF
3O(CF
2)
3OCHFCF
2COOM、
C
3F
7OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COOM、
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COOM、
CF
3CF
2OCF
2CF
2OCF
2COOM、
C
2F
5OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COOM、
CF
3OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COOM、
CF
2ClCF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2COOM、
CF
2ClCF
2CF
2OCF
2CF(CF
3)OCF
2COOM、
CF
2ClCF(CF
3)OCF(CF
3)CF
2OCF
2COOM、
CF
2ClCF(CF
3)OCF
2CF(CF
3)OCF
2COOM、
【化27】
(各式中、Mは、H、金属原子、NR
7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムである。R
7は、Hまたは有機基である。)
【0485】
<重合停止剤および分解剤>
TFEの重合を十分に進行させた後、重合停止剤(ラジカル捕捉剤)を添加することにより、TFEの重合を停止させて、水性分散液を得てもよい。
【0486】
重合停止剤としては、重合系内の遊離基に付加もしくは連鎖移動した後に再開始能力を有しない化合物が用いられる。具体的には、一次ラジカルまたは成長ラジカルと容易に連鎖移動反応を起こし、その後単量体と反応しない安定ラジカルを生成するか、あるいは、一次ラジカルまたは成長ラジカルと容易に付加反応を起こして安定ラジカルを生成するような機能を有する化合物が用いられる。一般的に連鎖移動剤と呼ばれるものは、その活性は連鎖移動定数と再開始効率で特徴づけられるが連鎖移動剤の中でも再開始効率がほとんど0%のものが重合停止剤と称される。重合停止剤としては、たとえば、芳香族ヒドロキシ化合物、芳香族アミン類、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、キノン化合物、テルペン、チオシアン酸塩、および、塩化第二銅(CuCl2)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。芳香族ヒドロキシ化合物としては、非置換フェノール、多価フェノール、サリチル酸、m-またはp-のサリチル酸、没食子酸、ナフトール等が挙げられる。上記非置換フェノールとしては、о-、m-またはp-のニトロフェノール、о-、m-またはp-のアミノフェノール、p-ニトロソフェノール等が挙げられる。多価フェノールとしては、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシン、ナフトレゾルシノール等が挙げられる。芳香族アミン類としては、о-、m-またはp-のフェニレンジアミン、ベンジジン等が挙げられる。上記キノン化合物としては、ハイドロキノン、о-、m-またはp-のベンゾキノン、1,4-ナフトキノン、アリザリン等が挙げられる。チオシアン酸塩としては、チオシアン酸アンモン(NH4SCN)、チオシアン酸カリ(KSCN)、チオシアン酸ソーダ(NaSCN)等が挙げられる。上記重合停止剤としては、なかでも、キノン化合物が好ましく、ハイドロキノンがより好ましい。
【0487】
重合停止剤は、標準比重を小さくする観点から、重合反応に消費される全TFEの90質量%が重合される前に添加することが好ましい。より好ましくは、全TFEの85質量%、更に好ましくは80質量%が重合される前に添加することがより好ましい。また、重合反応に消費される全TFEの5質量%が重合された後に添加することが好ましく、10質量%が重合された後に添加することがより好ましい。重合停止剤の添加量は、使用される水性媒体の質量の0.1~20質量ppmに相当する量が好ましく、3~10質量ppmに相当する量がより好ましい。
【0488】
TFEの重合の際に、分解剤を添加することで、重合中のラジカル濃度を調整することができる。分解剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸、銅塩、鉄塩等が挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。分解剤の添加量は、重合開始剤(レドックス開始剤)として組み合わされる酸化剤の量に対して、25~300質量%の範囲で添加する。分解剤の添加量としては、好ましくは25~150質量%、更に好ましくは50~100質量%である。また、重合反応に消費される全TFEの5質量%が重合された後に、分解剤を添加することが好ましく、10質量%が重合された後に添加することがより好ましい。分解剤の添加量は、使用される水性媒体の質量の0.1~20質量ppmに相当する量が好ましく、3~10質量ppmに相当する量がより好ましい。
【0489】
<ポリテトラフルオロエチレン>
本開示の製造方法により、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が得られる。水性媒体中でのTFEの重合により得られるPTFEは、通常、水性分散液中に分散した一次粒子の形態である。
【0490】
上記PTFEは、通常、延伸性、フィブリル化特性および非溶融二次加工性を有する。上記非溶融二次加工性とは、ASTM D 1238及びD 2116に準拠して、結晶化融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質、すなわち溶融温度領域でも容易に流動しない性質を意味する。
【0491】
本開示の製造方法により得られるPTFEは、TFE単位のみを含有するTFEホモポリマーであってもよいし、TFE単位および変性モノマー単位を含有する変性PTFEであってもよい。
【0492】
上記変性PTFEは、変性モノマーに基づく重合単位(以下「変性モノマー単位」とも記載する)の含有量が、PTFEの全重合単位に対して、0.00001~1質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、好ましい順に、0.80質量%、0.70質量%、0.50質量%、0.30質量%、0.20質量%、0.15質量%、0.10質量%、0.05質量%である。本開示において、上記変性モノマー単位とは、PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分を意味する。
【0493】
本開示において、PTFEを構成する各単量体単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。また、PTFEを構成する各単量体単位の含有量は、重合に用いた変性モノマーの添加量から計算により求めることもできる。
【0494】
上記変性モノマーが変性モノマー(A)を含む場合、変性モノマー(A)に基づく重合単位の含有量は、PTFEの全重合単位に対して、0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.0005質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましい。上限としては、好ましい順に、0.90質量%、0.50質量%、0.40質量%、0.30質量%、0.20質量%、0.15質量%、0.10質量%、0.08質量%、0.05質量%、0.01質量%である。
【0495】
上記PTFEは、コアシェル構造を有していてもよい。上記コアシェル構造とは、従来公知の構造であり、米国特許第6841594号明細書に記載された方法等で製造することができる水性分散液中の一次粒子の構造である。
コアシェル構造を有するPTFEとしては、例えば、TFE単独重合体のコア部と変性PTFEのシェル部とを含むコアシェル構造、変性PTFEのコア部とTFE単独重合体のシェル部とを含むコアシェル構造、変性PTFEのコア部と、該コア部を構成する変性PTFEとは異なる単量体組成を有する変性PTFEのシェル部とを含むコアシェル構造が挙げられる。
上記コアシェル構造のPTFEは、例えば、先ずTFE及び必要に応じて変性モノマーを重合してコア部(TFE単独重合体又は変性PTFE)を製造し、次いで、TFE及び必要に応じて変性モノマーを重合してシェル部(TFE単独重合体又は変性PTFE)を製造することによって得ることができる。
上記シェル部は、PTFE一次粒子表面から粒子内部への所定の厚みを構成している部分を意味し、コア部は、シェル部の内部を構成している部分を意味する。
【0496】
本開示において、上記コアシェル構造には、(1)コア部とシェル部とが異なるモノマー組成を有するもの、(2)コア部とシェル部とが同一のモノマー組成を有し、かつ、両部の数平均分子量が異なるもの、(3)コア部とシェル部とが異なるモノマー組成を有し、かつ、両部の数平均分子量も異なるもの、のすべてが含まれる。
【0497】
シェル部が変性PTFEである場合、シェル部における変性モノマーの含有量は、0.0001~1質量%であることが好ましい。より好ましくは0.001質量%以上であり、更に好ましくは0.01質量%以上である。また、より好ましくは0.50質量%以下であり、更に好ましくは0.30質量%以下である。
【0498】
コア部が変性PTFEである場合、コア部における変性モノマーの含有量は、0.00001~1.0質量%であることが好ましい。より好ましくは0.0001質量%以上であり、更に好ましくは0.001質量%以上である。また、より好ましくは0.50質量%以下であり、更に好ましくは0.30質量%以下である。
【0499】
上記PTFEは、一次粒子の平均一次粒子径が500nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、350nm以下であることが更に好ましい。一次粒子の平均一次粒子径が比較的小さいことにより、水性媒体中でのTFEの重合が円滑に進行し、PTFEを容易に製造することができる。一次粒子の比較的小さい平均一次粒子径は、たとえば、TFEの重合初期に、変性モノマーを重合系に添加することにより、得ることができる。平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、例えば、50nmでもよいし、100nmであってよい。分子量の観点からは、100nm以上であることが好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。
【0500】
PTFEの一次粒子の平均一次粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。まず、ポリマー固形分濃度を約1.0質量%に調整したPTFE水性分散液を作製し、動的光散乱法を使用して、測定温度を25℃、溶媒(水)の屈折率を1.3328、溶媒(水)の粘度を0.8878mPa・s、積算回数を70回として、測定できる。動的光散乱法においては、たとえば、ELSZ-1000S(大塚電子社製)が使用できる。
【0501】
PTFEの一次粒子のアスペクト比の上限は、好ましい順に、2.00未満、1.90以下、1.80以下、1.70以下、1.60以下、1.50以下、1.45以下、1.40以下、1.35以下、1.30以下、1.20以下、1.10以下である。アスペクト比が比較的小さいことにより、水性媒体中でのTFEの重合が円滑に進行し、PTFEを容易に製造することができる。一次粒子の比較的小さいアスペクト比は、たとえば、TFEの重合初期に、変性モノマーを重合系に添加することにより、得ることができる。
【0502】
PTFEのアスペクト比を、PTFEの水性分散液を用いて測定する場合は、ポリマー固形分濃度が約1.0質量%となるように調整したPTFE水性分散液を作製し、走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した400個以上の粒子について画像処理を行い、その長径と短径の比の平均よりアスペクト比を求めることができる。PTFEのアスペクト比をPTFEの粉末を用いて測定する場合、PTFE粉末に電子線を照射した後、含フッ素界面活性剤の水溶液に添加して、超音波を負荷し、水溶液中に再分散させることにより、PTFE水性分散液を作製する。このようにして作製した水性分散液を用いて、上記した方法でアスペクト比を求めることができる。
【0503】
上記PTFEは、標準比重(SSG)が2.280以下であることが好ましく、2.200以下であることがより好ましく、2.190以下であることが更に好ましく、2.180以下であることが更により好ましい。また、2.130以上であることが好ましい。SSGが上記範囲内にあることにより、優れた成形性と、成形により得られる成形体の優れた物性とを両立することができる。上記SSGは、ASTM D 4895-89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定する。
【0504】
上記PTFEは、熱不安定指数(TII)が20以上であってよい。PTFEの熱不安定指数(TII)は、たとえば、重合体(I)を用いてPTFEを製造することによって、上記範囲内に調整することができる。TIIは、25以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、35以上であることが更に好ましい。40以上であることが特に好ましい。上記TIIは、ASTM D 4895-89に準拠して測定する。
【0505】
PTFEの0.1%質量減少温度は、400℃以下であってよい。PTFEの0.1%質量減少温度は、たとえば、重合体(I)を用いてPTFEを製造することによって、上記範囲内に調整することができる。
【0506】
0.1%質量減少温度は、300℃以上の温度に加熱した履歴のないPTFEの粉末約10mgを精秤し、専用のアルミパンに収納して、TG/DTA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて測定することができる。0.1%質量減少温度は、アルミパンを大気雰囲気下、25℃から600℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温させ、質量が0.1質量%減少した点に対応する温度として、特定できる。
【0507】
PTFEの1.0%質量減少温度は、492℃以下であってよい。PTFEの1.0%質量減少温度は、たとえば、重合体(I)を用いてPTFEを製造することによって、上記範囲内に調整することができる。
【0508】
1.0%質量減少温度は、300℃以上の温度に加熱した履歴のないPTFEの粉末約10mgを精秤し、専用のアルミパンに収納して、TG/DTA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて測定することができる。1.0%質量減少温度は、アルミパンを大気雰囲気下、25℃から600℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温させ、質量が1.0質量%減少した点に対応する温度として、特定できる。
【0509】
PTFEのピーク温度は、322~347℃であってよい。
PTFEが高分子量PTFEである場合のPTFEのピーク温度の上限は、347℃以下、346℃以下、345℃以下、344℃以下、343℃以下、342℃以下、341℃以下、340℃以下であってよい。
PTFEが高分子量PTFEである場合のPTFEのピーク温度の下限は、333℃以上、335℃以上であってよい。
PTFEが低分子量PTFEである場合のPTFEのピーク温度の上限は、333℃以下、332℃以下であってよい。
PTFEが低分子量PTFEである場合のPTFEのピーク温度の下限は、322℃以上、324℃以上であってよい。
【0510】
PTFEのピーク温度は、300℃以上の温度に加熱した履歴のないPTFEの粉末約10mgを精秤し、専用のアルミパンに収納して、TG/DTA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて測定することができる。ピーク温度は、TG/DTA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて、300℃以上の温度に加熱した履歴のないPTFEを10℃/分の条件で昇温させることにより得られる示差熱(DTA)曲線に現れる極大値に対応する温度として、特定できる。
【0511】
PTFEの押出圧力は、50.0MPa以下であることが好ましく、40.0MPa以下であることがより好ましく、5.0MPa以上であることが好ましく、10.0MPa以上であることがより好ましく、15.0MPa以上であることが更に好ましい。
【0512】
上記押出圧力は、特開2002-201217号公報記載の方法に従い、下記方法で求めた値である。PTFEの押出圧力は、次の方法により特定できる。PTFEの粉末100gに、潤滑剤(商品名:アイソパーH(登録商標)、エクソン社製)21.7gを添加し、室温にてガラスビン中で3分間混合する。次いで、ガラスビンを、押出前少なくとも1時間、室温(25℃)に放置し、潤滑化樹脂を得る。潤滑化樹脂をオリフィス(直径2.5mm、ランド長11mm、導入角30°)を通して、室温で100:1の減速比でペースト押出し、均一なビード(beading;押出成形体)を得る。押出スピード、すなわち、ラムスピードは、20インチ/分(51cm/分)とする。押出圧力は、ペースト押出において押出負荷が平衡状態になった時の負荷を測定し、ペースト押出に用いたシリンダーの断面積で除して、得られた値を押出圧力とする。
【0513】
PTFEの破断強度Aは、好ましい順に、10.0N以上、13.0N以上、16.0N以上、18.0N以上、19.0N以上、20.0N以上、21.0N以上、22.0N以上、25.0N以上、28.0N以上、30.0N以上である。破断強度Aは高ければ高いほどよいが、破断強度Aの上限は、例えば、100N以下、80.0N以下、50.0N以下であってよい。
【0514】
破断強度Aは、特開2002-201217号公報記載の方法に準拠し 、下記方法で求めた値である。
PTFEの破断強度Aは、次の方法により特定できる。まず、下記方法で押出ビードの延伸試験Aを行い、破断強度A測定用のサンプルを作製する。
PTFEを210℃で熱処理する。熱処理して得られた粉末100gに、潤滑剤21.7gを添加し、室温にてガラスビン中で3分間混合する。次いで、ガラスビンを、押出前少なくとも1時間、室温(25℃)に放置し、潤滑化樹脂を得る。潤滑化樹脂をオリフィス(直径2.5mm、ランド長11mm、導入角30°)を通して、室温で100:1の減速比でペースト押出し、均一なビード(beading;押出成形体)を得る。押出スピード、すなわち、ラムスピードは、20インチ/分(51cm/分)とする。
上記のペースト押出により得られたビードを230℃で30分加熱することにより、潤滑剤をビードから除去する。次に、ビード(押出成形体)を適当な長さに切断し、クランプ間隔が1.5インチ(38mm)となるよう、各末端をクランプに固定し、空気循環炉中で300℃に加熱する。次いでクランプを所望のストレッチ(総ストレッチ)に相当する分離距離となるまで所望の速度(ストレッチ速度)で離し、延伸試験を実施する。このストレッチ方法は、押出スピード(84cm/分でなく51cm/分)が異なることを除いて、本質的に米国特許第4,576,869号明細書に開示された方法に従う。『ストレッチ』とは、延伸による長さの増加であり、通常元の長さに対する比率として表される。上記作製方法において、上記ストレッチ速度は、1000%/秒であり、上記総ストレッチは2400%である。
【0515】
上記延伸試験Aで得られた延伸ビード(ビードをストレッチすることによって作製されたもの)について、5.0cmのゲージ長である可動ジョーにおいて挟んで固定し、25℃で300mm/分の速度で引っ張り試験を行い、破断した時の強度を破断強度Aとする。
【0516】
PTFEの応力緩和時間は、50秒以上であることが好ましく、80秒以上であることがより好ましく、100秒以上であることが更に好ましく、150秒以上であってもよい。
【0517】
応力緩和時間は、特開2002-201217号公報記載の方法に準拠し 、下記方法で求めた値である。
PTFEの応力緩和時間は、次の方法により特定できる。上記延伸試験Aで得られた延伸ビードの両方の末端を固定具につなげ、ぴんと張られた全長8インチ(20cm)のビードサンプルとする。オーブンを390℃に保ち、オーブン側部にある(覆われた)スリットを通して固定具をオーブン中に挿入する。オーブンに挿入した時点からビードサンプルが破断するまでに要する時間を応力緩和時間とする。
【0518】
本開示の製造方法により、低分子量PTFEを製造することもできる。
低分子量PTFEは、重合により製造しても良いし、重合で得られた高分子量PTFEを公知の方法(熱分解、放射線照射分解等)で低分子量化して製造することもできる。
【0519】
分子量60万以下の低分子量PTFE(PTFEマイクロパウダーとも呼ばれる)は、化学的安定性に優れ、表面エネルギーが極めて低いことに加え、フィブリル化が生じにくいので、滑り性や塗膜表面の質感を向上させること等を目的とした添加剤として、プラスチック、インク、化粧品、塗料、グリース、オフィスオートメーション機器部材、トナー等の製造に好適である(例えば、特開平10-147617号公報参照。)。
【0520】
また、更に連鎖移動剤の存在下、水性媒体中に重合開始剤及び重合体(I)を分散させ、TFE、又は、TFEと共重合し得るモノマーとTFEを重合させることによって、低分子量PTFEを得てもよい。この場合、連鎖移動剤としては、炭素数2~4のアルカンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタンがより好ましく、エタン、プロパンが更に好ましい。この場合、連鎖移動剤の量としては、水性媒体に対して、10質量ppm以上または10質量ppm超が好ましい。これらの連鎖移動剤は、重合の際に核形成剤として機能するとともに、重合により得られるポリマーの溶融粘度やピーク温度を調整し、低分子量PTFEを与える。
【0521】
上記重合により得られる低分子量PTFEを粉末として用いる場合、上記水性分散液を凝析させることで粉末粒子とすることができる。
【0522】
本開示において、高分子量PTFEとは、非溶融加工性及びフィブリル化性を有するPTFEを意味する。他方、低分子量PTFEとは、溶融加工性を有し、フィブリル化性を有しないPTFEを意味する。
【0523】
上記非溶融加工性とは、ASTM D 1238及びD 2116に準拠して、結晶化融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質を意味する。
【0524】
フィブリル化性の有無は、TFEの重合体から作られた粉末である「高分子量PTFE粉末」を成形する代表的な方法である「ペースト押出し」で判断できる。通常、ペースト押出しが可能であるのは、高分子量のPTFEがフィブリル化性を有するからである。ペースト押出しで得られた未焼成の成形物に実質的な強度や伸びがない場合、例えば伸びが0%で引っ張ると切れるような場合はフィブリル化性がないとみなすことができる。
【0525】
上記高分子量PTFEは、標準比重(SSG)が2.130~2.280であることが好ましい。上記標準比重は、ASTM D4895-89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定する。本開示において、「高分子量」とは、上記標準比重が上記の範囲内にあることを意味する。
【0526】
上記低分子量PTFEは、340℃における複素粘度が1×102~7×105Pa・sである。本開示において、「低分子量」とは、上記複素粘度が上記の範囲内にあることを意味する。
【0527】
また、上記低分子量PTFEは、340℃における溶融粘度が1×102~7×105Pa・sである。本開示において、「低分子量」とは、上記複素粘度が上記の範囲内にあることを意味する。溶融粘度は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ-8Lのダイを用い、予め380℃で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定する値である。
【0528】
上記高分子量PTFEは、上記低分子量PTFEよりも複素粘度(溶融粘度)が極めて高く、その正確な複素粘度を測定することは困難である。他方、上記低分子量PTFEの複素粘度(溶融粘度)は測定可能であるが、上記低分子量PTFEからは、標準比重の測定に使用可能な成形品を得ることが難しく、その正確な標準比重を測定することが困難である。従って、本開示では、上記高分子量PTFEの分子量の指標として、標準比重を採用し、上記低分子量PTFEの分子量の指標として、複素粘度(溶融粘度)を採用する。なお、上記高分子量PTFE及び上記低分子量PTFEのいずれについても、直接に分子量を特定できる測定方法は知られていない。
【0529】
上記高分子量PTFEは、ピーク温度が333~347℃であることが好ましく、335~345℃であることがより好ましい。上記低分子量PTFEは、ピーク温度が322~333℃であることが好ましく、324~332℃であることがより好ましい。ピーク温度は、TG/DTA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて、300℃以上の温度に加熱した履歴のないPTFEを10℃/分の条件で昇温させることにより得られる示差熱(DTA)曲線に現れる極大値に対応する温度として、特定できる。
【0530】
低分子量PTFEの一次粒子の平均一次粒子径は、好ましくは10~200nmであり、より好ましくは20nm以上であり、より好ましくは140nm以下であり、さらに好ましくは150nm以下であり、特に好ましくは90nm以下である。一次粒子の比較的小さい平均一次粒子径は、たとえば、TFEの重合初期に、変性モノマーを重合系に添加することにより、得ることができる。
【0531】
低分子量PTFEの一次粒子の平均一次粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。まず、ポリマー固形分濃度を約1.0質量%に調整した低分子量PTFE水性分散液を作製し、動的光散乱法を使用して、測定温度を25℃、溶媒(水)の屈折率を1.3328、溶媒(水)の粘度を0.8878mPa・s、積算回数を70回として、測定できる。動的光散乱法においては、たとえば、ELSZ-1000S(大塚電子社製)が使用できる。
【0532】
本開示の製造方法によりPTFE水性分散液を得ることができる。PTFE水性分散液の固形分濃度は限定されないが、例えば、1.0~70質量%であってよい。上記固形分濃度は、8.0質量%以上が好ましく、10.0質量%以上がより好ましく、また、60.0質量%以下が好ましく、50.0質量%以下がより好ましい。
【0533】
本開示のPTFEの製造方法において、付着量は、最終的に得られたPTFEに対して、3.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下が更に好ましく、0.7質量%以下が更により好ましく、0.6質量%以下が特に好ましい。
【0534】
次に、本開示の製造方法により得られるPTFEの用途などについて、さらに詳細に説明する。
【0535】
PTFEとしては、PTFEの一次粒子が水性媒体中に分散したPTFE水性分散液であってよい。
【0536】
PTFE水性分散液の用途としては特に限定されず、水性分散液のまま適用するものとして、基材上に塗布し乾燥した後必要に応じて焼成することよりなる塗装;不織布、樹脂成形品等の多孔性支持体を含浸させ乾燥した後、好ましくは焼成することよりなる含浸;ガラス等の基材上に塗布し乾燥した後、必要に応じて水中に浸漬し、基材を剥離して薄膜を得ることよりなるキャスト製膜等が挙げられ、これら適用例としては、水性分散型塗料、テント膜、コンベアベルト、プリント基板(CCL)、電極用結着剤、電極用撥水剤等が挙げられる。
【0537】
PTFE水性分散液は、公知の顔料、増粘剤、分散剤、消泡剤、凍結防止剤、成膜助剤等の配合剤を配合することにより、又は、更に他の高分子化合物を複合して、コーティング用水性塗料として用いることができる。
また添加剤用途として、電極の活物質の脱落を抑える結着剤、バインダー用途、ドリップ防止剤などのコンパウンド用途、土砂や埃等の舞い立ちを防止する塵埃抑制処理用途等に用いることができる。
【0538】
PTFE水性分散液は、塵埃抑制処理剤として使用することも好ましい。上記塵埃抑制処理剤は、発塵性物質と混合し、該混合物に20~200℃の温度で圧縮-せん断作用を施すことによりPTFEをフィブリル化して発塵性物質の塵埃を抑制する方法、例えば特許第2827152号公報、特許第2538783号公報等の方法において、用いることができる。
上記PTFE水性分散液は、例えば、国際公開第2007/004250号に記載の塵埃抑制処理剤組成物に好適に用いることができ、国際公開第2007/000812号に記載の塵埃抑制処理方法にも好適に用いることができる。
【0539】
上記塵埃抑制処理剤は、建材分野、土壌安定材分野、固化材分野、肥料分野、焼却灰及び有害物質の埋立処分分野、防爆分野、化粧品分野、猫砂に代表されるペット排泄用の砂等の塵埃抑制処理に好適に用いられる。
【0540】
本開示の製造方法は、更に、上述の方法で得られたPTFE水性分散液を回収する工程、PTFE水性分散液中のPTFEを凝析させる工程、凝析したPTFEを回収する工程、及び、回収したPTFEを100~250℃で乾燥させる工程のうち、少なくとも1つの工程を含むことができる。本開示の製造方法が、このような工程を含むことにより、PTFE粉末を得ることができる。
【0541】
上記水性分散液に含まれるPTFEを凝析させることにより粉末を製造できる。上記PTFEの水性分散液は、必要に応じて濃縮等の後処理した後、凝析、洗浄、乾燥を経て粉末として各種用途に使用することができる。上記PTFEの水性分散液に対して凝析を行う場合、通常、ポリマーラテックス等の重合により得た水性分散液を、水を用いて10~25質量%のポリマー濃度になるように希釈し、場合によっては、pHを中性又はアルカリ性に調整した後、撹拌機付きの容器中で反応中の撹拌よりも激しく撹拌して行う。上記凝析は、メタノール、アセトン等の水溶性有機化合物、硝酸カリウム、炭酸アンモニウム等の無機塩や、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸等を凝析剤として添加しながら撹拌を行ってもよい。上記凝析は、また、インラインミキサー等を使用して連続的に行ってもよい。
【0542】
上記水性分散液は、上述した重合を行うことにより得られる水性分散液、この水性分散液を濃縮するか又は分散安定化処理して得られるディスパージョン、及び、PTFEからなる粉末を、上記界面活性剤の存在下に水性媒体に分散させたものの何れであってもよい。
【0543】
上記水性分散液を製造する方法としてはまた、上記重合により得られた水性分散液を、(I)非イオン性界面活性剤の存在下に、陰イオン交換樹脂又は陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂を含む混床と接触させる工程(I)、及び/又は、(II)固形分濃度が水性分散液100質量%に対して30~70質量%となるように濃縮する工程(II)により精製水性分散液を製造することができる。
非イオン性界面活性剤は、特に限定されるものではないが、公知のものを用いることができる。上記陰イオン交換樹脂は、特に限定されるものではないが、公知のものを用いることができる。また、上記陰イオン交換樹脂と接触させる方法は、公知の方法を用いることができる。
上記水性分散液を製造する方法としては、上記重合より得られた水性分散液に工程(I)を行ない、工程(I)で得られた水性分散液に工程(II)を行なって精製水性分散液を製造することができる。また、工程(I)を行なわずに、工程(II)を行ない精製水性分散液を製造することもできる。また、工程(I)及び工程(II)を繰り返し行うこともできるし、組み合わせることも可能である。
【0544】
上記陰イオン交換樹脂としては、例えば、官能基として-N+X-(CH3)3基(Xは、Cl又はOHを表す。)を有する強塩基性陰イオン交換樹脂、-N+X-(CH3)3(C2H4OH)基(Xは、上記と同じ。)を有する強塩基性陰イオン交換樹脂等、公知のものが挙げられる。具体的には、国際公開第99/62858号、国際公開第03/020836号、国際公開第2004/078836号、国際公開第2013/027850号、国際公開第2014/084399号に記載されたもの等が挙げられる。
【0545】
上記陽イオン交換樹脂としては特に限定されず、例えば、官能基として-SO3
-基を有する強酸性陽イオン交換樹脂、官能基として-COO-基を有する弱酸性陽イオン交換樹脂等、公知のものが挙げられるが、なかでも、除去効率の観点から、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましく、H+型の強酸性陽イオン交換樹脂がより好ましい。
【0546】
上記「陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とからなる混床」としては特に限定されず、両者が同一のカラムに充填されている場合、両者がそれぞれ異なるカラムに充填されている場合、両者が水性分散液に分散している場合等を含むものである。
【0547】
上記濃縮の方法としては公知の方法が採用される。具体的には、国際公開第2007/046482号、国際公開第2014/084399号に記載されたもの等が挙げられる。例えば相分離、遠心沈降、曇点濃縮、電気濃縮、電気泳動、限外ろ過を用いた濾過処理、逆浸透膜(RO膜)を用いた濾過処理、ナノ濾過処理等が挙げられる。上記濃縮は、用途に応じて、PTFE濃度を30~70質量%に濃縮することができる。濃縮によりディスパージョンの安定性が損なわれることがあるが、その場合は更に分散安定剤を添加してもよい。
上記分散安定剤としては、上記非イオン性界面活性剤や、その他の各種の界面活性剤を添加してもよい。
上記非イオン性界面活性剤としては、上述した核形成剤として例示した非イオン性界面活性剤と同じであり、上述した非イオン性界面活性剤を適宜採用できる。上記非イオン性界面活性剤は、芳香族部分を含まないことが好ましい。
また、非イオン性界面活性剤の曇点は、水への界面活性剤の溶解性の尺度である。本開示の水性分散液中で使用される界面活性剤は、曇点約30℃~約90℃、好ましくは約35℃~約85℃を有する。
【0548】
上記分散安定剤の総量は、上記ディスパージョンの固形分に対し0.5~20質量%の濃度である。0.5質量%未満であると、分散安定性に劣る場合があり、20質量%を超えると、存在量に見合った分散効果がなく実用的でない。上記分散安定剤のより好ましい下限は2質量%であり、より好ましい上限は12質量%である。
【0549】
上記の濃縮操作によって、界面活性剤を除去してもよい。
【0550】
上記重合を行うことにより得られた水性分散液は、また、用途によっては濃縮せずに分散安定化処理して、ポットライフの長い水性分散液に調製することもできる。使用する分散安定剤としては上記と同じものを挙げることができる。
【0551】
上記水性分散液の粘度を調整する目的で、あるいは顔料、フィラーなどの混和性改良の目的で、アニオン性界面活性剤を好ましく含むことができる。アニオン性界面活性剤は、経済面、環境面で問題のない範囲で適宜添加することができる。
【0552】
上記アニオン性界面活性剤としては、非フッ素化アニオン性界面活性剤や含フッ素アニオン性界面活性剤が挙げられるが、フッ素を含まない非フッ素化アニオン性界面活性剤、即ち炭化水素アニオン界面活性剤が好ましい。
【0553】
粘度を調整する目的の場合、公知のアニオン性界面活性剤であれば種類は特に限定されないが、例えば国際公開第2013/146950号や国際公開第2013/146947号に記載されているアニオン性界面活性剤を用いることができる。例えば、炭素数6~40、好ましくは炭素数8~20、より好ましくは炭素数9~13の飽和又は不飽和の脂肪族鎖を有するものが挙げられる。上記飽和又は不飽和の脂肪族鎖は、直鎖又は分岐鎖の何れであってもよく、環状構造を有するものであってもよい。上記炭化水素は、芳香族性であってもよいし、芳香族基を有するものであってもよい。上記炭化水素は、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を有するものであってもよい。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルスルホネート、アルキルサルフェート、アルキルアリールサルフェート及びそれらの塩;脂肪族(カルボン)酸及びその塩;リン酸アルキルエステル、リン酸アルキルアリールエステル又はそれらの塩;等が挙げられるが、中でも、アルキルスルホネート、アルキルサルフェート、脂肪族カルボン酸またはそれらの塩が好ましい。
アルキルサルフェートまたはその塩としては、ラウリル硫酸アンモニウム、またはラウリル硫酸ナトリウム等が好ましい。
脂肪族カルボン酸またはその塩としては、コハク酸、デカン酸、ウンデカン酸、ウンデセン酸、ラウリン酸、ハイドロドデカン酸、またはそれらの塩が好ましい。
【0554】
アニオン性界面活性剤の添加量は、アニオン性界面活性剤やその他配合剤の種類にもよるが、PTFEの固形分質量に対して10質量ppm~5000質量ppmであることが好ましい。
アニオン性界面活性剤の添加量の下限としては、50質量ppm以上がより好ましく、100質量ppm以上が更に好ましい。添加量が少なすぎると、粘度調整効果が乏しい。
アニオン性界面活性剤の添加量の上限としては、3000質量ppm以下がより好ましく、2000質量ppm以下が更に好ましい。添加量が多すぎると水性分散液の機械的安定性、貯蔵安定性が損なわれることがある。
【0555】
上記水性分散液の粘度を調整する目的で、アニオン性界面活性剤以外に、例えば、メチルセルロース、アルミナゾル、ポリビニルアルコール、カルボキシル化ビニルポリマー等を配合することもできる。
上記水性分散液のpHを調整する目的で、アンモニア水などのpH調整剤を配合することもできる。
【0556】
上記水性分散液に、必要に応じ、水性分散液の特徴を損なわない範囲でその他の水溶性高分子化合物を含有するものであってもよい。
上記その他の水溶性高分子化合物としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキサイド(分散安定剤)、ポリエチレングリコール(分散安定剤)、ポリビニルピロリドン(分散安定剤)、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。更に、イソチアゾロン系、アゾール系、プロノポール、クロロタロニル、メチルスルホニルテトラクロルピロジン、カルベンタジム、フルオロフォルベット、二酢酸ナトリウム、ジヨードメチルパラトリルスルホンなどの防腐剤を含有してもよい。
【0557】
本開示において、凝析撹拌に用いるPTFE水性分散液(以下、凝析用PTFE分散液という)は、PTFE固形分濃度が10~25質量%であることが好ましい。PTFE固形分濃度は、10~22質量%が好ましく、10~20質量%がより好ましい。PTFEファインパウダーの嵩密度を高めるには、凝析用PTFE水性分散液中のPTFE固形分濃度が高いことが好ましい。凝析用PTFE水性分散液中のPTFE固形分濃度が高いと、PTFEの一次粒子の会合度合いが高まり、PTFEの一次粒子が密に会合・凝析して造粒する。凝析用PTFE水性分散液のPTFE固形分濃度が10質量%未満であると、PTFEの一次粒子の凝析密度が疎になり易く、嵩密度の高いPTFEファインパウダーが得られ難い。一方、凝析用PTFE水性分散液中のPTFE固形分濃度が高すぎると、未凝析のPTFEが増大し、凝析排水中の未凝析のPTFE固形分濃度が増加する。凝析排水中の未凝析のPTFE固形分濃度が高いと、配管閉塞や、排水処理にコストや手間がかかる。また、PTFEファインパウダーの収率が低下する。凝析排水中の未凝析のPTFE固形分濃度は、PTFEファインパウダーの生産性の観点から低いことが好ましく、0.4質量%未満がより好ましく、0.3質量%未満が更に好ましく、0.2質量%未満が特に好ましい。凝析用PTFE水性分散液のPTFE固形分濃度が25質量%を超えると、凝析排水の未凝析のPTFE固形分濃度を0.4質量%未満にすることが困難である。なお、上記工程lで得られるPTFE水性分散液中のPTFE固形分濃度は、およそ10~45質量%であるので、PTFE固形分濃度が高い場合は、水等の希釈溶媒を添加して10~25質量%に調整する。また、重合後のPTFE水性分散液中のPTFE固形分濃度が10~25質量%である場合は、PTFE水性分散液を、そのまま凝析用PTFE水性分散液として用いることができる。
【0558】
上記凝析前や凝析中に、着色のための顔料や機械的性質を改良するための各種充填剤を添加することにより、顔料や充填剤が均一に混合した顔料入り又は充填剤入りのPTFEの粉末を得ることができる。
【0559】
上記PTFEを凝析して得られた湿潤粉末の乾燥は、通常、上記湿潤粉末をあまり流動させない状態、好ましくは静置の状態を保ちながら、真空、高周波、熱風等の手段を用いて行う。粉末同士の、特に高温での摩擦は、一般にファインパウダー型のPTFEに好ましくない影響を与える。これは、この種のPTFEからなる粒子が小さな剪断力によっても簡単にフィブリル化して、元の安定な粒子構造の状態を失う性質を持っているからである。上記乾燥は、10~300℃(好ましくは10~250℃)、好ましくは100~300(好ましくは100~250℃)℃の乾燥温度で行うことができる。
【0560】
上記PTFE粉末は、平均粒子径(平均二次粒子径)が100~2000μmであることが好ましい。平均二次粒子径の下限は、200μm以上であることがより好ましく、300μm以上であることが更に好ましい。平均二次粒子径の上限は1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることが更に好ましく、700μm以下が特に好ましい。上記平均粒子径は、JIS K 6891に準拠して測定した値である。
【0561】
上記PTFE粉末は、成形用として好ましく、好適な用途としては、航空機及び自動車等の油圧系、燃料系のチューブ等が挙げられ、薬液、蒸気等のフレキシブルホース、電線被覆用途等が挙げられる。また、電池用結着剤、防塵用途としても使用できる。また、上記PTFE粉末から延伸体を製造することもできる。
【0562】
上記延伸体は、例えば、本開示の製造方法により得られるPTFEの粉末をペースト押出することにより、シート状押出物、棒状押出物などの押出物を得て、得られた押出物を押出方向にロール延伸することで、延伸体として、一軸延伸膜を得ることができる。さらに、得られた一軸延伸膜を、テンターなどにより幅方向に延伸して、延伸体として、二軸延伸膜を得ることができる。延伸前に、押出物に半焼性処理を行ってもよい。延伸条件としては、5~2000%/秒の速度、200%以上の延伸倍率が好ましく採用される。延伸することにより粉末中のPTFEは容易にフィブリル化し、結節と繊維からなる延伸体となる。
以下に、具体的な用途を例示する。
【0563】
エレクトロケミカル分野
誘電材料プリプレグ、EMI遮蔽材料、伝熱材料等。より詳細には、プリント配線基板、電磁遮蔽シールド材、絶縁伝熱材料、絶縁材料等。
シール材分野
ガスケット、パッキン、ポンプダイアフラム、ポンプチューブ、航空機用シール材等。
【0564】
空気濾過分野
ULPAフィルター(半導体製造用)、HEPAフィルター(病院・半導体製造用)、円筒カートリッジフィルター(産業用)、バグフィルター(産業用)、耐熱バグフィルター(排ガス処理用)、耐熱プリーツフィルター(排ガス処理用)、SINBRANフィルター(産業用)、触媒フィルター(排ガス処理用)、吸着剤付フィルター(HDD組込み)、吸着剤付ベントフィルター(HDD組込み用)、ベントフィルター(HDD組込み用他)、掃除機用フィルター(掃除機用)、汎用複層フェルト材、GT用カートリッジフィルター(GT向け互換品用)、クーリングフィルター(電子機器筐体用)等。
【0565】
換気/内圧調整分野
凍結乾燥用の容器等の凍結乾燥用材料、電子回路やランプ向けの自動車用換気材料、容器キャップ向け等の容器用途、タブレット端末や携帯電話端末等の小型端末を含む電子機器向け等の保護換気用途、医療用換気用途等。
【0566】
液濾過分野
半導体液ろ過フィルター(半導体製造用)、親水性PTFEフィルター(半導体製造用)、化学薬品向けフィルター(薬液処理用)、純水製造ライン用フィルター(純水製造用)、逆洗型液ろ過フィルター(産業排水処理用)等。
【0567】
一般消費材分野
衣類、ケーブルガイド(バイク向け可動ワイヤ)、バイク用衣服、キャストライナー(医療サポーター)、掃除機フィルター、バグパイプ(楽器)、ケーブル(ギター用信号ケーブル等)、弦(弦楽器用)等。
【0568】
繊維分野
PTFE繊維(繊維材料)、ミシン糸(テキスタイル)、織糸(テキスタイル)、ロープ等。
【0569】
医療分野
体内埋設物(延伸品)、人工血管、カテーテル、一般手術(組織補強材料)、頭頸部製品(硬膜代替)、口内健康(組織再生医療)、整形外科(包帯)等。
【0570】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例】
【0571】
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0572】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0573】
<重合体D、Hの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の測定方法>
重合体DのMw、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、東ソー社製のGPC HLC-8020を用い、Shodex社製のカラム(GPC KF-801を1本、GPC KF-802を1本、GPC KF-806Mを2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を流速1ml/分で流して測定し、単分散ポリスチレンを標準として分子量を算出した。
【0574】
<重合体(重合体D,Gなど)中の単量体(単量体D,Gなど)のダイマーおよびトリマーの含有量の測定方法>
(1)水溶液からの抽出
重合体の水溶液の固形分を測定し、重合体の固形分0.2gに相当する量の水溶液を秤量した。その後、水溶液中に含まれている水と合わせ、水とメタノールとの体積比が50/50(体積%)となるように、水とメタノールを加え、重合体ならびに水およびメタノールを含有する混合液を得た。その後、得られた混合液を用いて、4000rpmで1時間遠心分離を行い、重合体を含む上澄み液を抽出液として回収した。
液体クロマトグラフ質量分析計(Waters, LC-MS ACQUITY UPLC/TQD)を用いて、抽出液の分析を行い、抽出液のクロマトグラムを得た。
抽出液に含まれる単量体のダイマーおよびトリマーの含有量は、抽出液のクロマトグラムに現れる単量体のダイマーおよびトリマーに由来するピークの積分値を、検量線を用いて、単量体のダイマーおよびトリマーの含有量に換算することにより求めた。
【0575】
(2)単量体の検量線
1ng/mL~100ng/mLの含有量既知の単量体のメタノール標準溶液を5水準調製し、液体クロマトグラフ質量分析計(Waters, LC-MS ACQUITY UPLC/TQD)を用いて測定を行った。それぞれの単量体の含有量と、その含有量に対するピークの積分値との関係をプロットし、各単量体の検量線(一次近似)を作成した。次に、各単量体の検量線(一次近似)を用いて、各単量体のダイマーおよびトリマーの検量線を作成した。
【0576】
【0577】
この測定機器構成における定量限界は1ng/mLである。
【0578】
<変性モノマー単位の含有量>
HFP単位の含有量は、PTFE粉末をプレス成形することにより、薄膜ディスクを作製し、薄膜ディスクのFT-IR測定により得られる赤外線吸光度に基づいて、982cm-1における吸光度/935cm-1における吸光度の比に0.3を乗じることにより、求めた。
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)単位の含有量は、固体19F-MAS NMR測定により得られたスペクトルから、下記式を用いて求めた。
X=(4B/3)/(A+(B/3))×100
X:PMVE単位の含有量(mol%)
A:-120ppmのシグナルの積分値
B:-52ppmのCFシグナルの積分値
ケミカルシフト値はPTFEの主鎖由来のシグナルのピークトップを-120ppmとした際のものを用いた。
【0579】
<重合体(重合体Dなど)の濃度>
重合体の水溶液約1gを、減圧乾燥機中で60℃、60分の条件で乾燥し、加熱残分の質量を測定し、重合体水溶液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率で表した値を採用した。
【0580】
<PTFEを含有する水性分散液の固形分濃度>
水性分散液1gを、送風乾燥機中で150℃、60分の条件で乾燥し、水性分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率で表した値を採用した。
【0581】
<平均一次粒子径>
固形分濃度を約1.0質量%に調整したPTFE水性分散液を作製し、ELSZ-1000S(大塚電子社製)を使用して25℃、積算70回にて測定した。溶媒(水)の屈折率は1.3328、溶媒(水)の粘度は0.8878mPa・sとした。
【0582】
<粒子数>
粒子数は、上記の方法で測定した平均一次粒子径を直径とした球状粒子とし、球状粒子の比重を2.28とすると、ポリマー固形分濃度から計算することができる。一次粒子径をAnm、ポリマー固形分濃度をB質量%と置くと、PTFEの粒子の数Xは、次の式にて計算できる。
X=((B/100)/(1-B/100))/(4/3×3.14×((A/2)×10-7)3×2.28)
【0583】
<アスペクト比>
固形分濃度が約1質量%となるように希釈した水性分散液を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した400個以上の粒子について画像処理を行い、その長径と短径の比の平均より求めた。
【0584】
<標準比重(SSG)>
ASTM D 4895-89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定した。
【0585】
<ピーク温度>
300℃以上の温度に加熱した履歴のないPTFEの粉末約10mgを精秤し、専用のアルミパンに収納して、TG/DTA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて測定した。ピーク温度は、アルミパンを大気雰囲気下、25℃から600℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温させることにより示差熱(DTA)曲線を得て、得られた示差熱(DTA)曲線における極大値に対応する温度とした。
【0586】
<押出圧力>
押出圧力は、特開2002-201217号公報記載の方法に準拠し 、下記方法で求めた。PTFE粉末100gに、潤滑剤(商品名:アイソパーH(登録商標)、エクソン社製)21.7gを添加し、室温にてガラスビン中で3分間混合した。次いで、ガラスビンを、押出前少なくとも1時間、室温(25℃)に放置し、潤滑化樹脂を得た。潤滑化樹脂をオリフィス(直径2.5mm、ランド長11mm、導入角30°)を通して、室温で100:1の減速比でペースト押出し、均一なビード(beading;押出成形体)を得た。押出スピード、すなわち、ラムスピードは、20インチ/分(51cm/分)とした。ペースト押出において押出負荷が平衡状態になった時の負荷を測定し、ペースト押出に用いたシリンダーの断面積で除することにより、押出圧力を算出した。
【0587】
<延伸試験>
延伸試験、及び破断強度Aの測定は、特開2002-201217号公報記載の方法に準拠し 、下記方法で実施した。
上記のペースト押出により得られたビードを230℃で30分加熱することにより、潤滑剤をビードから除去した。次に、ビード(押出成形体)を適当な長さに切断し、クランプ間隔が1.5インチ(38mm)となるよう、各末端をクランプに固定し、空気循環炉中で300℃に加熱した。次いでクランプを所望のストレッチ(総ストレッチ)に相当する分離距離となるまで所望の速度(ストレッチ速度)で離し、延伸試験(ストレッチ試験)を実施した。このストレッチ方法は、押出スピード(84cm/分でなく51cm/分)が異なることを除いて、本質的に米国特許第4,576,869号明細書に開示された方法に従った。『ストレッチ』とは、延伸による長さの増加であり、通常元の長さに対する比率として表される。ストレッチ方法においてストレッチ速度は、1000%/秒であり、上記総ストレッチは2400%であった。
【0588】
<破断強度A>
上記延伸試験で得られた延伸ビード(ビードをストレッチすることによって作製されたもの)について、5.0cmのゲージ長の可動ジョーに挟んで固定し、25℃で300mm/分の速度で引っ張り試験を行い、破断した時の強度を破断強度Aとして測定した。
【0589】
<応力緩和時間>
特開2002-201217号公報記載の方法に準拠し、下記方法で求めた。
上記延伸試験で得られた延伸ビードの両方の末端を固定具につなげ、ぴんと張られた全長8インチ(20cm)のビードサンプルとした。オーブンを390℃に保ち、オーブン側部にある(覆われた)スリットを通して固定具をオーブン中に挿入した。オーブンに挿入した時点からビードサンプルが破断するまでに要する時間を応力緩和時間として測定した。
【0590】
<延伸体の外観>
上記延伸試験で得られた延伸ビード(ビードをストレッチすることによって作製されたもの)の外観を目視で観察し、以下の基準により評価した。
均一 :延伸ビードの外観が均一であった。
不均一:延伸ビードに亀裂やウネリ、疎密が観察されるなど、延伸ビードの外観が不均一であった。
【0591】
<重合体Dなどの含有量>
PTFE粉末中に含まれる重合体Dなどの含有量
PTFE粉末中に含まれる重合体Dの含有量は、固体19F-MAS NMR測定により得られたスペクトルから、下記式を用いて求めた。
Y=(4B/(5A+3B))×100
Y:重合体Dの含有量(mol%)
A:-120ppmのシグナルの積分値
B:-83ppmのCF2及びCF3シグナルの積分値の合計
ケミカルシフト値はPTFEの主鎖由来のシグナルのピークトップを-120ppmとした際のものを用いた。
【0592】
<溶融粘度>
ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2Φ-8Lのダイを用い、予め340℃で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定を行った。
【0593】
<反応器内の酸素濃度>
反応器に接続された排ガスラインから排出されるガスについて、低濃度酸素分析計(商品名「PS-820-L」、飯島電子工業社製)を用いて測定および分析することにより、重合中の反応器内の酸素濃度を求めた。
【0594】
調製例1
CH2=CFCF2OCF(CF3)COOHで表される単量体D220g、水513g、過硫酸アンモニウム(APS)(単量体Dに対して0.5mol%)を反応器に加え、窒素雰囲気下にて60℃で24時間加熱撹拌し、CH2=CFCF2OCF(CF3)COOHの単独重合体である重合体Dを含む重合体D水溶液D-1を得た。得られた重合体D水溶液D-1のGPC分析した結果、重合体Dは、Mw18万、Mn8.6万、ダイマー、及びトリマーの含有量が、重合体Dに対して2.0質量%であった。
【0595】
得られた重合体D水溶液D-1に水を加えて、重合体Dの濃度を5.0質量%に調整したのちに、限外ろ過膜(分画分子量50000Da、ポリエチレン製)に、30℃で、0.1MPaの水圧で接触させ限外濾過を実施した。適宜注水を行いながら最終的に水溶液に対して7倍量の水の濾過液が溶出するまで限外濾過を継続し、重合体D水溶液D-2を得た。得られた重合体D水溶液D-2をGPC分析した結果、重合体Dは、Mw18万、Mn14万、ダイマー、及びトリマーの含有量が、重合体Dに対して1質量ppm未満であった。得られた重合体D水溶液D-2の濃度は、5.0質量%であった。
【0596】
実施例1
内容量6Lの撹拌機付きSUS製反応器に、3457gの脱イオン水、180gのパラフィンワックス、107.4gの重合体D水溶液D-2及び、1.1gの1.0質量%濃度のイソプロパノール水溶液を入れた。アンモニア水を加えてpHを9.1に調整した。次いで反応器の内容物を70℃まで加熱しながら吸引すると同時にTFEでパージして反応器内の酸素を除き、内容物を攪拌した。反応器中に0.54gのPMVEを加えた後、0.73MPaGの圧力となるまでTFEを加えた。20gの脱イオン水に溶解した17.9mgの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を反応器に注入し、反応器を0.83MPaGの圧力にした。開始剤の注入後に圧力の低下が起こり重合の開始が観測された。反応器にTFEを加えて圧力を0.78MPaG一定となるように保った。反応で消費したTFEが約180gに達した時点でTFEの供給と撹拌を停止した。続いて反応器の圧力が0.02MPaGに達するまで反応器内のガスをゆっくりと放出した。その後、反応器の圧力が0.78MPaGになるまでTFEを供給し、再び撹拌を開始して引き続き反応を行った。反応で消費したTFEが約540gに達した時点で20gの脱イオン水に溶解した14.3mgのハイドロキノンを反応器に注入し、引き続き反応を行った。反応で消費したTFEが約1200gに達した時点でTFEの供給を止め、撹拌を停止して反応を終了した。その後に、反応器内の圧力が常圧になるまで排気し、内容物を反応器から取り出して冷却した。上澄みのパラフィンワックスをPTFE水性分散液から取り除いた。得られたPTFE水性分散液の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0597】
得られたPTFE水性分散液を脱イオン水で固形分濃度が約10質量%となるように希釈し、高速撹拌条件下で凝固させ、凝固した湿潤粉末を210℃で18時間乾燥した。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0598】
実施例2
イソプロパノール水溶液の添加量を2.1gに変更した以外は、実施例1と同様に重合を行った。得られたPTFE水性分散液の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
実施例1と同様にしてPTFE粉末を得て、得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0599】
実施例3
イソプロパノール水溶液を、1.1gの1.0質量%濃度のメタノール水溶液に変更し、TFEの供給を止める時機を、反応で消費したTFEが約1200gに達した時点から、反応で消費したTFEが約900gに達した時点に変更した以外は、実施例1と同様に重合を行った。得られたPTFE水性分散液の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
実施例1と同様にしてPTFE粉末を得て、得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0600】
実施例4
イソプロパノール水溶液を、1.8gの0.1質量%濃度のトライトンX-100(商品名、ダウ・ケミカル社製)のトライトン水溶液に変更した以外は、実施例1と同様に重合を行った。得られたPTFE水性分散液の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
実施例1と同様にしてPTFE粉末を得て、得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0601】
実施例5
イソプロパノール水溶液とともに、反応器に0.9gの0.1質量%濃度のトライトン水溶液をさらに入れた以外は、実施例1と同様に重合を行った。得られたPTFE水性分散液の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
実施例1と同様にしてPTFE粉末を得て、得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0602】
実施例6
イソプロパノール水溶液とともに、反応器に1.8gの0.1質量%濃度のトライトン水溶液をさらに入れた以外は、実施例1と同様に重合を行った。得られたPTFE水性分散液の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
実施例1と同様にしてPTFE粉末を得て、得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0603】
実施例7
PMVEを、2.4gのHFPに変更した以外は、実施例1と同様に重合を行った。得られたPTFE水性分散液の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
実施例1と同様にしてPTFE粉末を得て、得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0604】
実施例8
イソプロパノール水溶液とともに、反応器に1.8gの0.1質量%濃度のトライトン水溶液をさらに入れた以外は、実施例7と同様に重合を行った。得られたPTFE水性分散液の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
実施例1と同様にしてPTFE粉末を得て、得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0605】
実施例9
反応器に入れるトライトン水溶液を、1.25gの0.1質量%濃度のトライトン水溶液に変更し、PMVEの添加量を0.27gに変更し、反応で消費したTFEが約180gに達した時点でTFEの供給と撹拌を停止せずに、圧力を一定に保持した以外は、実施例5と同様に重合を行った。得られたPTFE水性分散液の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
実施例1と同様にしてPTFE粉末を得て、得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0606】
比較例1
反応器にイソプロパノール水溶液を入れなかった以外は、実施例1と同様に重合を行った。得られたPTFE水性分散液の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
実施例1と同様にしてPTFE粉末を得て、得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0607】
【0608】
調製例2
国際公開第2011/034179号の比較例2に記載されている手順に従い、CF2=CF2およびCF2=CF-O-(CF2)2-SO3Hに由来する繰り返し単位を含み、CF2=CF-O-(CF2)2-SO3H(単量体G)に由来する繰り返し単位の含有量が18モル%である重合体Gを24.8質量%含有する重合体G水溶液G-1を得た。得られた重合体Gの数平均分子量は、3.0×105であった。重合体Gの数平均分子量は、重合体Gのメルトフローレートから算出した。メルトフローレートは、JIS K 7210に準拠して、270℃、加重2.16kgの条件で測定した。また、重合体Gの単量体組成は、300℃における溶融NMR測定値から算出した。
【0609】
得られた重合体G水溶液G-1に水を加えて、限外ろ過膜(分画分子量10000Da、ポリエチレン製)に、30℃で、0.1MPaの水圧で接触させ限外濾過を実施した。適宜注水を行いながら最終的に水溶液に対して5倍量の水の濾過液が溶出するまで限外濾過を継続し、重合体G水溶液G-2を得た。単量体Gのダイマー、及びトリマーの含有量は、重合体Gに対して1質量ppm未満であった。得られた重合体G水溶液G-2の濃度は、23.2質量%であった。
【0610】
実施例10
内容量1Lの撹拌機付きガラス製反応器に、520gの脱イオン水および11.9gの重合体G水溶液G-2を入れた。次いで反応器の内容物を70℃まで加熱しながら吸引すると同時にTFE単量体でパージして反応器内の酸素を除いた。その後、内容物を540rpmで攪拌した。反応器中に0.12gのエタンを加えた後、0.73MPaGの圧力となるまでTFE単量体を加えた。
【0611】
20gの脱イオン水に溶解した55mgの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を反応器に注入し、反応器を0.83MPaGの圧力にした。開始剤の注入後に圧力の低下が起こり重合の開始が観測された。TFE単量体を反応器に加えて圧力を保ち、約50gのTFE単量体が反応し終わるまで重合を続けた。その後に、反応器内の圧力が常圧になるまで排気し、内容物を反応器から取り出して冷却し、PTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液の各種物性を測定した。結果を表3に示す。
また、乾燥温度を150℃に変更した以外は、実施例1と同様にしてPTFE粉末を得て、得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表3に示す。
なお、得られたPTFEは低分子量PTFEであった。
【0612】
比較例2
エタンを加えなかった以外は、実施例10と同様に重合を行った。重合が開始し始めたと同時に凝集が始まったため、重合を停止した。このことより、安定したPTFE水性分散液が得られないことが分かった。
【0613】
【0614】
調製例3
反応器に、1650gのパーフルオロ-(6,6-ジハイドロ-2-トリフルオロメチル-3-オキサ-5-ヘキセン酸)(単量体D)、3850gの水を加え、反応器内液をN2バブリングしながら30分間室温で攪拌した。52℃で攪拌しながら、過硫酸アンモニウム(APS)を、単量体Dの量に対して0.5モル%に相当する量添加し、反応を開始した。23時間攪拌したところで反応を終了した。反応器内の酸素濃度は11体積ppmから20体積ppmの範囲で推移した。単量体Dの単独重合体である重合体Hを含む重合体H水溶液H-1を得た。
得られた重合体H水溶液H-1に水を加えて、重合体Hの濃度を2.0質量%に調整したのちに、限外ろ過膜(分画分子量50000Da、ポリアクリロニトリル製)に、25℃で、0.1MPaの水圧で接触させ限外濾過を実施した。適宜注水を行いながら最終的に水溶液に対して7倍量の水の濾過液が溶出するまで限外濾過を継続し、重合体H水溶液H-2を得た。得られた重合体H水溶液H-2をGPC分析した結果、重合体Hは、Mw46.0×104、Mn12.2×104、ダイマー、及びトリマーの含有量が、重合体Hに対して0.1質量%以下であった。得られた重合体H水溶液H-2の濃度は、2.1質量%であった。
【0615】
実施例11
反応器に、504gの脱イオン水、26.2gの重合体H水溶液H-2及び1.7mgのポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルを入れ、0.12gのエタンの代わりに0.012gのプロパンを加え、20gの脱イオン水に溶解した143mgの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を反応器に注入し、実施例10と同様に重合した。約110gのTFE単量体が反応し終わるまで重合を続け、PTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液の各種物性を測定した。結果を表4に示す。
【0616】
また、実施例10と同様にしてPTFE粉末を得て、得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表4に示す。
なお、得られたPTFEは低分子量PTFEであった。
【0617】
【0618】
実施例12
内容量6Lの撹拌機付きSUS製反応器に、3302gの脱イオン水、104gのパラフィンワックス、255.7gの重合体H水溶液H-2、1.1gの1.0質量%濃度のイソプロパノール水溶液および1.25gの0.1質量%濃度のTMN-100X(ダウ・ケミカル社製)水溶液を入れた。アンモニア水を加えてpHを8.7に調整した。次いで反応器の内容物を70℃まで加熱しながら吸引すると同時にTFEでパージして反応器内の酸素を除き、内容物を攪拌した。2.4gのHFPを加えた後の操作は、実施例1と同様に重合を行なった。得られたPTFE水性分散液の各種物性を測定した。結果を表5に示す。
【0619】
得られたPTFE水性分散液を実施例1と同様に凝固させた。凝固した湿潤粉末を240℃で18時間乾燥した。得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表5に示す。
【0620】
実施例13
TMN-100X(ダウ・ケミカル社製)水溶液の代わりに、T-Det A138(Harcros Chemicals社製)水溶液を用いた以外は実施例12と同様に重合を行なった。得られたPTFE水性分散液の各種物性を測定した。結果を表5に示す。
【0621】
また、実施例12と同様にして、PTFE粉末を得て、得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表5に示す。
【0622】
実施例14
TMN-100X(ダウ・ケミカル社製)水溶液の代わりに、T-Det A1315(Harcros Chemicals社製)水溶液を用いた以外は実施例12と同様に重合を行なった。得られたPTFE水性分散液の各種物性を測定した。結果を表5に示す。
【0623】
また、実施例12と同様にして、PTFE粉末を得て、得られたPTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表5に示す。
【0624】