(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】通信装置および空気調和システムの診断装置
(51)【国際特許分類】
H04B 5/48 20240101AFI20240111BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20240111BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H04B5/02
H04Q9/00 311L
G05B23/02 T
(21)【出願番号】P 2022026713
(22)【出願日】2022-02-24
【審査請求日】2023-02-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦田 健佑
(72)【発明者】
【氏名】東山 伸
(72)【発明者】
【氏名】三浦 隆総
(72)【発明者】
【氏名】堀田 浩介
(72)【発明者】
【氏名】小寺 啓太
(72)【発明者】
【氏名】トク チャンウェン
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特許第7315869(JP,B2)
【文献】特開2004-197993(JP,A)
【文献】特開2005-294991(JP,A)
【文献】特開2020-005164(JP,A)
【文献】特開2019-096440(JP,A)
【文献】特開2020-177765(JP,A)
【文献】国際公開第2022/003962(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/02
H04Q 9/00
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機器(101,102)間に繋がる通信線(L)に近接結合する結合部(10)と、
前記通信線(L)及び前記近接結合する前記結合部(10)を介して前記通信機器(101,102)に対して通信を行う通信部(40)と、
を備え
、
前記通信機器(101,102)及び前記通信部(40)は、マルチホップネットワークで互いに接続されており、
前記通信部(40)は、前記マルチホップネットワークにおける所定の前記通信機器(101,102)の中継によって、他の前記通信機器(101,102)に信号を送信する通信装置。
【請求項2】
請求項
1の通信装置において、
前記結合部(10)は、誘導性または容量性を持った部材によって前記通信線(L)と近接結合する通信装置。
【請求項3】
請求項
2の通信装置において、
前記結合部(10)は、前記通信線(L)に対して着脱可能である通信装置。
【請求項4】
請求項
3の通信装置において、
前記結合部(10)は、前記通信線(L)の所定範囲において移動可能である通信装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4の何れか1つの通信装置において、
前記通信部(40)は、前記通信機器(101,102)が保持するデータの収集、前記通信線(L)を流れるデータの収集、前記通信機器(101,102)への動作指示、前記通信機器(101,102)の設定の少なくとも1つを、前記結合部(10)を介して行う通信装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5の何れか1つの通信装置において、
前記結合部(10)における通信の品質を表示する表示部(11,50)を備えた通信装置。
【請求項7】
請求項
6の通信装置において、
前記品質は、前記通信機器(101,102)と前記通信部(40)の通信におけるSN比である通信装置。
【請求項8】
請求項
6または請求項
7の通信装置において、
前記品質は、前記通信機器(101,102)と前記通信部(40)の通信におけるノイズレベルである通信装置。
【請求項9】
請求項
6から請求項
8の何れか1つの通信装置において、
前記品質は、前記通信機器(101,102)と前記通信部(40)の通信における信号送受信感度である通信装置。
【請求項10】
請求項1から請求項
9の何れかの通信装置において、
前記通信部(40)は、前記通信機器(101,102)が送信する信号レベルよりも高い信号レベルで信号を送信する通信装置。
【請求項11】
請求項1から請求項
10の何れか1つの通信装置において、
前記通信機器(101,102)は、空気調和システム(100)を構成するユニットである通信装置。
【請求項12】
請求項1から請求項
11の何れか1つの通信装置(10,40)を備えた空気調和システムの診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信装置および空気調和システムの診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和システムは、運転データの収集、故障診断等のために診断装置が接続される場合がある(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の例では、診断装置と空気調和システムとの物理的な接続方法については検討されていない。
【0005】
本開示の目的は、通信装置と通信相手の物理的な接続を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、
通信機器(101,102)間に繋がる通信線(L)に近接結合する結合部(10)と、
前記通信線(L)及び前記近接結合する前記結合部(10)を介して前記通信機器(101,102)に対して通信を行う通信部(40)と、
を備えた通信装置である。
【0007】
第1の態様では、近接結合によって通信経路が形成される。通信装置と通信相手とを容易に物理的に接続できる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様の通信装置において、
前記通信機器(101,102)は、マルチホップネットワークで互いに接続されており、
前記通信部(40)は、前記マルチホップネットワークにおける所定の前記通信機器(101,102)の中継によって、他の前記通信機器(101,102)に信号を送信する通信装置である。
【0009】
第2の態様では、通信装置と通信相手とがマルチホップネットワーク上で通信を行う。
【0010】
本開示の第3の態様は、第1または第2の態様の通信装置において、
前記結合部(10)は、誘導性または容量性を持った部材によって前記通信線(L)と近接結合する通信装置である。
【0011】
第3の態様では、誘導性または容量性を持った部材によって近接結合が実現される。
【0012】
本開示の第4の態様は、第3の態様の通信装置において、
前記結合部(10)は、前記通信線(L)に対して着脱可能である通信装置である。
【0013】
第4の態様では、通信装置の着脱が容易になる。
【0014】
本開示の第5の態様は、第4の態様の通信装置において、
前記結合部(10)は、前記通信線(L)の所定範囲において移動可能である通信装置である。
【0015】
第5の態様では、結合部(10)の移動によって、通信状態の改善が可能になる。
【0016】
本開示の第6の態様は、第1から第5の態様の何れか1つの通信装置において、
前記通信部(40)は、前記通信機器(101,102)が保持するデータの収集、前記通信線(L)を流れるデータの収集、前記通信機器(101,102)への動作指示、前記通信機器(101,102)の設定の少なくとも1つを、前記結合部(10)を介して行う通信装置である。
【0017】
第6の態様では、通信装置によって情報収集、通信相手の制御などが可能になる。
【0018】
本開示の第7の態様は、第1から第6の態様の何れか1つの通信装置において、
前記結合部(10)における通信の品質を表示する表示部(11,50)を備えた通信装置である。
【0019】
本開示の第8の態様は、第7の態様の通信装置において、
前記品質は、前記通信機器(101,102)と前記通信部(40)の通信におけるSN比である通信装置である。
【0020】
本開示の第9の態様は、第7または第8の態様の通信装置において、
前記品質は、前記通信機器(101,102)と前記通信部(40)の通信におけるノイズレベルである通信装置である。
【0021】
本開示の第10の態様は、第7から第9の態様の何れか1つの通信装置において、
前記品質は、前記通信機器(101,102)と前記通信部(40)の通信における信号送受信感度である通信装置である。
【0022】
第7の態様から第10の態様では、品質の表示によって、通信の信頼性が向上する。
【0023】
本開示の第11の態様は、第1から第10の態様の何れかの通信装置において、
前記通信部(40)は、前記通信機器(101,102)が送信する信号レベルよりも高い信号レベルで信号を送信する通信装置である。
【0024】
第11の態様では、通信の信頼性が向上する。
【0025】
本開示の第12の態様は、第1から第11の態様の何れか1つの通信装置において、
前記通信機器(101,102)は、空気調和システム(100)を構成するユニットである通信装置である。
【0026】
第12の態様では、空気調和システム(100)のユニットと通信装置とを容易に接続できる。
【0027】
本開示の第13の態様は、第1から第12の態様の何れか1つの通信装置(10,40)を備えた空気調和システムの診断装置である。
【0028】
第13の態様では、空気調和システム(100)の診断装置と、空気調和システム(100)とを容易に接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、診断装置とユニットとの通信を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
《実施形態》
〈概要〉
本実施形態における、空気調和システムの診断装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の診断装置(1)の構成を示すブロック図である。診断装置(1)は、空気調和システム(100)の運転状態に関する情報収集、故障診断などを行う。
【0031】
空気調和システム(100)は、室内の冷房および暖房を行う機能を有する。空気調和システム(100)は、室外機(101)、および室内機(102)を備えている。以下では、室外機(101)、室内機(102)の両者を総称する名称としてユニット(101,102)という名称を用いる場合がある。
【0032】
図1には、室外機(101)、室内機(102)は、何れも1つのみ記載しているが、空気調和システム(100)には、複数台の室外機(101)、および複数の室内機(102)が設けられている。これらのユニット(101,102)は、冷媒回路(図示を省略)に冷媒配管で接続されている。
【0033】
室外機(101)および室内機(102)は、通信機器として機能する。空気調和システム(100)では、所定の室外機(101)と所定の室内機(102)とは、通信線(L)で接続されている。所定の室外機(101)同士も通信線(L)によって接続されている。空気調和システム(100)では、所定の室内機(102)同士も通信線(L)で接続されている。
【0034】
通信線(L)で接続されたユニット(101,102)同士は、通信線(L)によって信号の送受信を行う。ユニット(101,102)間で送受信される信号は、センサの検出値、種々の設定値、動作を指示する命令等である。
【0035】
空気調和システム(100)では、通信線(L)に繋がるユニット(101,102)によって、マルチホップネットワークが構成されている。マルチホップネットワークは、何れかの通信機器に信号を送る場合に、他の通信機器を信号の中継器として利用するネットワークである。これにより、広範囲の通信が可能になる。空気調和システム(100)では、各ユニット(101,102)が中継器として機能し得る。
【0036】
〈診断装置(1)の構成〉
診断装置(1)は、通信線(L)を介して空気調和システム(100)に所定の信号を送ることができる。診断装置(1)は、この信号によって空気調和システム(100)の制御、設定などを行うことができる。診断装置(1)は、通信線(L)を流れる信号を検出することができる。
【0037】
図1に示すように、診断装置(1)は、結合部(10)、第2表示部(11)、データ保持部(30)、通信部(40)、第1表示部(50)、および動作指示部(60)を備えている。
【0038】
結合部(10)は、通信線(L)に近接結合する。ここで、「近接結合」とは、コイル等を介した磁界結合、電極を介した電界結合である。結合部(10)は、誘導性または容量性を持った部材によって構成されている。
図2から
図4は、結合部(10)の構成例を示している。
【0039】
図2の例では、結合部(10)は、磁性体(12)とコイル(C)とを備えている。この例の磁性体(12)は、筒状のフェライトコアである。磁性体(12)(筒状フェライトコア)は、その中空部分に通信線(L)が通される。磁性体(12)と通信線(L)とは、磁気的に結合する。コイル(C)は、磁性体(12)に巻回されている。コイル(C)と磁性体(12)は、磁気的に結合する。
【0040】
磁性体(12)は、筒状のフェライトコアなので、通信線(L)上の所定の範囲において移動可能である。磁性体(12)として2つ割のフェライトコアを採用することによって、磁性体(12)は、通信線(L)に対して着脱できる。
【0041】
図3の例では、結合部(10)は、コイル(C)を備えている。コイル(C)は、通信線(L)の周囲に巻回されている。コイル(C)と通信線(L)とは、互いに磁界結合する。
【0042】
図4の例でも、結合部(10)は、コイル(C)を備えている。コイル(C)と通信線(L)とは、磁界結合する。コイル(C)の外観は、巻回軸に沿って見るとC字状である。コイル(C)は、通信線(L)に対して着脱できる。コイル(C)は、所定の範囲において、通信線(L)上を移動可能である。
【0043】
通信線(L)に電流(信号)が流れると、コイル(C)にも電流が流れる。換言すると、結合部(10)は、通信線(L)上の信号を検出できる。コイル(C)に電流(信号)を流すと、通信線(L)にも信号が流れる。換言すると、コイル(C)は、通信線(L)への信号送信に利用できる。
【0044】
第2表示部(11)は、結合部(10)における信号の状態(通信の品質)を表示する。第2表示部(11)は、例えば、発光ダイオード(LED)によって構成できる。第2表示部(11)は、例えば、コイル(C)に電流が流れている場合に、発光ダイオードが発光するように構成される。LEDの発光の有無や強弱により、通信の品質(信号のレベル)が表される。
【0045】
データ保持部(30)は、種々のデータ(後述)を記憶する。データ保持部(30)は、例えば、半導体メモリによって構成できる。
【0046】
通信部(40)は、送信部(41)、受信部(42)、制御部(43)を備えている。通信部(40)は、通信線(L)および結合部(10)を介して、ユニット(101,102)(通信機器)と信号の送受信(通信)を行う。診断装置(1)では、通信部(40)、結合部(10)によって通信装置(10,40)が構成されていると考えてよい。
【0047】
通信部(40)は、ユニット(101,102)が保持するデータの収集、通信線(L)を流れるデータの収集、ユニット(101,102)への動作指示、ユニット(101,102)の設定を、結合部(10)を介して行う機能を有している。勿論、通信部(40)は、これらの一部の機能のみを実行する構成でもよい。通信部(40)は、別の機能を更に有していてもよい。
【0048】
送信部(41)は、制御部(43)の制御に応じて、信号をユニット(101,102)に送信する。具体的に送信部(41)は、ユニット(101,102)に送信すべき信号を、結合部(10)を介して通信線(L)に送る。この信号は、例えば2MHzから30MHz程度の周波数を有している。結合部(10)と通信線(L)との間では、いわゆるクロストークが発生する。
【0049】
この場合、送信部(41)は、ユニット(101,102)間の通信における信号レベルよりも高い信号レベルで信号を送信する。本実施形態において送信部(41)がこのような信号レベルを採用するのは、通信の信頼性を向上させるためである。
【0050】
受信部(42)は、制御部(43)の制御に応じて、ユニット(101,102)が出力した信号を受信する。具体的に受信部(42)は、結合部(10)が検出した信号を受信する。受信部(42)は、受信した信号を制御部(43)に送る。
【0051】
受信部(42)は、受信した信号の品質に関する情報を制御部(43)に送信する。通信の品質は、種々の尺度で表すことができる。例えば、品質は、ユニット(101,102)(通信機器)と通信部(40)の通信におけるSN比で表すことができる。品質は、ユニット(101,102)と通信部(40)の通信におけるノイズレベルで表してもよい。品質は、ユニット(101,102)と通信部(40)の通信における信号送受信感度で表してもよい。
【0052】
制御部(43)は、送信部(41)、および受信部(42)の動作を制御する。制御部(43)は、CPU(マイクロコンピュータ)および半導体メモリを備えている(何れも図示は省略)。半導体メモリには、CPUを動作させるためのプログラムなどが格納されている。制御部(43)は、CPUが前記プログラムを実行することによって、データ収集機能、および設定機能を発揮する。
【0053】
制御部(43)は、データ収集機能を発揮する際に、ユニット(101,102)が保持するデータ(以下、保持データという)の送信を依頼する信号(命令)を生成する。保持データは、例えば、運転状態のログデータである。この信号生成は、ユーザの指示を契機に行われる。ユーザの指示は、ユーザインターフェース(後述)を介して行われる。
【0054】
制御部(43)は、データ収集機能の発揮において、送信部(41)を介して、生成した命令をユニット(101,102)に送信する。制御部(43)は、受信部(42)を介して、ユニット(101,102)から返信された保持データを受信する。制御部(43)は、受信した保持データを第1表示部(50)(後述)に表示させる場合がある。制御部(43)は、受信した保持データをデータ保持部(30)に格納する場合がある。
【0055】
制御部(43)は、設定機能の発揮において、ユニット(101,102)の設定を行う信号(命令)を生成する。設定機能による設定は、例えば、空気調和システム(100)の運転モード(冷房運転、暖房運転など)、設定温度等である。この信号生成は、ユーザの指示を契機に行われる。ユーザの指示は、ユーザインターフェース(後述)を介して行われる。制御部(43)は、送信部(41)を介して、生成した命令をユニット(101,102)に送信する。
【0056】
本実施形態の第1表示部(50)は、液晶ディスプレイによって構成されている。第1表示部(50)は、制御部(43)の指示に応じて種々の情報を表示する。例えば、第1表示部(50)は、ユーザの入力(設定値など)、ユニット(101,102)に送信する命令の種類、空気調和システム(100)から受信したデータの内容などを表示する。第1表示部(50)は、通信の品質を表示する場合もある。
【0057】
動作指示部(60)は、ユニット(101,102)に所定の動作を行わせるための信号(命令)を生成する。この信号生成は、ユーザの指示を契機に行われる。動作指示部(60)は、ユーザの指示を受け付けるユーザインターフェースとしても機能する。ここでのユーザとは、診断装置(1)を用いて空気調和システム(100)の診断、検査などを行う人である。
【0058】
動作指示部(60)は、送信部(41)を介して、生成した命令をユニット(101,102)に送信する。動作指示部(60)は、送信した命令に対する返信がある場合は、受信部(42)を介して返信を受信する。動作指示部(60)は、返信に対して適宜、処理を行う。例えば、動作指示部(60)は、受信した返信を第1表示部(50)に表示させる場合がある。動作指示部(60)は、返信された内容をデータ保持部(30)に格納する場合もある。
【0059】
データ保持部(30)、第1表示部(50)、および動作指示部(60)の3つは、ひとつのパーソナルコンピュータによって構成してもよい。この場合、パーソナルコンピュータは、インストールされたプログラムを実行することによって、種々の表示、ユニット(101,102)への指示、データの保持を行う。
【0060】
〈動作例〉
図5は、診断装置(1)とユニット(101,102)との通信を説明する図である。
図5に示すように空気調和システム(100)には、複数の室外機(101)(通信機器)、および複数の室内機(102)(通信機器)が存在する。既述の通り、空気調和システム(100)では、通信線(L)に繋がるユニット(101,102)によって、マルチホップネットワークが構成されている。
【0061】
図5では、複数の室外機(101)、および複数の室内機(102)を識別するために、参照符号に枝番を付してある(例えば101-1、101-2など)。
図5の例では、室外機(101-1)、室内機(102-1)、室内機(102-2)、室内機(102-3)がこの順で通信線(L)に接続されている。より詳しくは、室外機(101-1)、それぞれの室内機(102-1,102-2,102-3)は、デイジーチェーン方式によって接続されている。
【0062】
診断装置(1)の結合部(10)は、室外機(101-1)と室外機(101-2)の間の通信線(L)に近接結合している。一般的に、通信機器間の通信信号においては、経路上の配線や通信機器のインピーダンスによる減衰、信号反射によるノイズ増加や定在波が発生する。例えば、結合部(10)を結合させる通信線(L)上の位置によっては、診断装置(1)とユニット(101,102)との間で十分な通信品質が得られない可能性がある。ユーザは、この通信線(L)上において結合部(10)を移動させることによって、通信状態の良い位置(通信品質が高い位置)を探ることができる。
【0063】
ここで、ユーザが診断装置(1)から室内機(102-3)に命令を送信すると仮定する。より具体的に、ユーザは、室内機(102-3)のログデータの送信命令(以下、ログ送信命令)を診断装置(1)に入力すると仮定する。
【0064】
この例では、ユーザは、前記ユーザインターフェースの操作子によって、通信の相手先(室内機(102-3))を特定する情報、ログ送信の指示などを入力する。ログ送信の指示などが入力されると、制御部(43)は、そのデータ収集機能に基づいて、ユニット(101,102)に送るログ送信命令を生成する。制御部(43)は、送信部(41)を介して、室内機(102-3)を送信先としてログ送信命令を通信線(L)に出力する。
【0065】
結合部(10)と近接結合した通信線(L)は、室外機(101-1)に繋がっている(
図5参照)。診断装置(1)から出力された信号は、室外機(101-1)の内部の信号線を経由して、室内機(102-1,102-2,102-3)を繋ぐ通信線(L)(デイジーチェーン)に出力される。例えば、室内機(102-1,102-2,102-3)を繋ぐ通信線(L)に出力された信号の強度が十分に大きい場合には、その信号は、室内機(102-3)に直接到達する。
【0066】
しかし、診断装置(1)から出力された信号は、結合部(10)における減衰、通信線(L)における減衰などの減衰によって、室内機(102-3)に直接的に到達できない場合がある。その場合には、マルチホップネットワーク上における所定の室内機(102-1,102-2,102-3)によって、信号の中継機能(いわゆるマルチホップ機能)が発揮される。中継は、全ての室内機(102-1,102-2,102-3)によって行われるわけではない。信号の減衰の程度に応じて、中継を行う室内機(102)が決定される。
【0067】
信号(ログ送信命令)が室内機(102-3)に到達したら、室内機(102-3)は、受信したログ送信命令を処理する。具体的に室内機(102-3)は、診断装置(1)を送信相手として、保持しているログデータを、室内機(102-3)に繋がる通信線(L)に出力する。
【0068】
室内機(102-3)が送信したログデータは、ログ送信命令と同様に、必要に応じてユニット(101,102)によって中継されて診断装置(1)に到達する。換言すると、マルチホップによる通信が行われる。診断装置(1)では、制御部(43)が受信部(42)を介してログデータを受信する。
【0069】
診断装置(1)では、受信したログデータの処理が行われる。例えば、ログデータは、制御部(43)によって第1表示部(50)に表示される。ログデータは、制御部(43)によって、データ保持部(30)に格納される場合もある。
【0070】
同様にして、ユーザが診断装置(1)に対して、空気調和システム(100)の設定(例えば室内温度の設定)を指示した場合には、制御部(43)が設定機能を発揮して、診断装置(1)とユニット(101,102)の間で通信が行われる。ユーザが診断装置(1)に対して、空気調和システム(100)に所定の動作を指示した場合には、動作指示部(60)が機能して、診断装置(1)とユニット(101,102)の間で通信が行われる。
【0071】
〈本実施形態における効果〉
以上の通り、本実施形態では、近接結合によって診断装置(1)と通信線(L)の間の通信経路が形成される。この方式では、診断装置(通信装置)と通信相手との物理的な接続を容易に実現できる。換言すると、本実施形態では、作業現場におけるデータ収集の環境作りの時間を短縮できる可能性がある。
【0072】
近接結合の採用によって、診断装置(1)と空気調和システム(100)との接続箇所において断線が発生しにくい。通信線(L)上を移動できる形態の結合部(10)は、品質が高い通信を確立しやすい。結合部(10)における近接結合の採用によって、空気調和システム(100)を停止せずに、診断装置(1)を空気調和システム(100)に接続することが可能になる。
【0073】
空気調和システム(100)では、マルチホップネットワークによってユニット(101,102)同士が通信を行う。診断装置(1)は、広範囲に渡り、ユニット(101,102)との通信が可能になる。換言すると、診断装置(1)は、広範囲にわたり、ユニット(101,102)の診断、情報の収集などが可能になる。
【0074】
《その他の実施形態》
空気調和システム(100)におけるマルチホップネットワークは、必須ではない。診断装置(1)は、マルチホップネットワークを備えていない空気調和システム(100)に対しても使用できる。
【0075】
結合部(10)は、近接結合を実現できる構造であれば、例示のものに限定されない。
【0076】
診断装置(1)の構成要素は、用途などに応じて適宜、取捨選択しても良い。例えば、第2表示部(11)を省略することが考えられる。構成要素を適宜選択することにより、他の機器を用いることなく、診断装置(1)のみで、検査等を完結できる。
【0077】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本開示は、通信装置および空気調和システムの診断装置について有用である。
【符号の説明】
【0079】
10 結合部
11 第2表示部(表示部)
40 通信部
50 第1表示部(表示部)
100 空気調和システム
101 室外機(通信機器)
102 室内機(通信機器)
L 通信線