(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】含フッ素重合体および含フッ素組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 220/22 20060101AFI20240111BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20240111BHJP
C08L 33/16 20060101ALI20240111BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20240111BHJP
D06M 15/277 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C08F220/22
C08F220/18
C08L33/16
C09K3/18 102
D06M15/277
(21)【出願番号】P 2022063496
(22)【出願日】2022-04-06
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100224605
【氏名又は名称】畠中 省伍
(72)【発明者】
【氏名】南 晋一
(72)【発明者】
【氏名】榎本 孝司
(72)【発明者】
【氏名】福森 正樹
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/075766(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第113494024(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103788316(CN,A)
【文献】特開2015-028150(JP,A)
【文献】国際公開第2021/177459(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/158354(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/158191(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/145918(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/188369(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08L
C08K
D06M 15/277
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)α位の塩素原子を有する含フッ素アクリル単量体である第1単量体、
(b)α位の水素原子または有機基を有する含フッ素アクリル単量体である第2単量体、
(c)炭素数12~40の鎖状の炭化水素基を有するアクリル単量体である第3単量体、および
(d)炭素数3~40の環状の炭化水素基を有するアクリル単量体である第4単量体
から形成された繰り返し単位を有する含フッ素重合体であって、
第1単量体(a)が、式:
CH
2=C(-X
11)-C(=O)-Y
11-Z
11-Rf
11
[式中、X
11は、塩素原子であり、
Y
11は、-O-または-NH-であり、
Z
11は、直接結合または炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキレン基であり、
Rf
11は、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。]
で示される化合物であり、
第2単量体(b)が、式:
CH
2=C(-X
12)-C(=O)-Y
12-Z
12-Rf
12
[式中、X
12は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、
Y
12は、-O-または-NH-であり、
Z
12は、直接結合または炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキレン基であり、
Rf
12は、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。]
で示される化合物であり、
第3単量体(c)が、式:
CH
2=C(-X
21)-C(=O)-Y
21-R
21
[式中、X
21は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基またはハロゲン原子であり、
Y
21は、-O-または-NH-であり、
R
21は、炭素数12~40の鎖状の炭化水素基である。]
で示される化合物であり、
第4単量体(d)が、式:
CH
2=C(-X
22)-C(=O)-Y
22-R
22
[式中、X
22は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基またはハロゲン原子であり、
Y
22は、-O-または-NH-であり、
R
22は、炭素数3~40の環状の炭化水素基である。]
で示される化合物であり、
含フッ素重合体に対して、第1単量体(a)の量が5~70重量%、第2単量体(b)の量が4~60重量%、第3単量体(c)の量が3~60重量%、第4単量体(d)の量が3~60重量%であり、
含フッ素重合体において、第1単量体(a)の量が、第1単量体(a)の量と第2単量体(b)の量との合計に対して40重量%以上であり、
(A2-1)式:
R
22-C(=O)-NH-R
23-O-R
21
[式中、R
21は、エチレン性不飽和重合性基を有する有機残基、
R
22は、炭素数7~40の炭化水素基、
R
23は、炭素数1~5の炭化水素基である。]
で示されるアミド基含有単量
体から形成された繰り返し単位を有しない、含フッ素重合体。
【請求項2】
炭素数3~40の環状の炭化水素基が、炭素数4~30の環状の脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、または炭素数7~25の芳香脂肪族基である請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項3】
第3単量体(c)が、
ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ラウリルαクロロアクリレート、セチルαクロロアクリレート、ステアリルαクロロアクリレート、イコシルαクロロアクリレートおよびベヘニルαクロロアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種の長鎖アクリレートエステル単量体、または
ラウリル(メタ)アクリルアミド、セチル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、イコシル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミドからなる群から選択された少なくとも1種の長鎖アクリルアミド単量体であり、
第4単量体(d)が、
シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレートおよび2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレートからなる群から選択された少なくとも1種の化合物である請求項1または2に記載の含フッ素重合体。
【請求項4】
含フッ素重合体が、
(e)単量体(a)、(b)、(c)および(d)以外の単量体である他の単量体から形成された繰り返し単位を有し、
他の単量体(e)がハロゲン化オレフィンである請求項1または2に記載の含フッ素重合体。
【請求項5】
他の単量体(e)の量が0~50重量%である請求項4に記載の含フッ素重合体。
【請求項6】
(1)請求項1または2に記載の含フッ素重合体、および
(2)液状媒体
を含んでなる含フッ素組成物。
【請求項7】
液状媒体(2)が有機溶媒であるか、あるいは水、有機溶媒または水と有機溶媒の混合物である請求項6に記載の含フッ素組成物。
【請求項8】
含フッ素組成物が、重合体が、水、または水と有機溶媒の混合物に分散している水性分散液であり、
含フッ素組成物が、
(3)界面活性剤
を含む請求項6に記載の含フッ素組成物。
【請求項9】
含フッ素組成物が、撥水剤、撥油剤、防汚剤、汚れ脱離剤、剥離剤または離型剤である請求項6に記載の含フッ素組成物。
【請求項10】
請求項1または2に記載の含フッ素重合体が付着した被処理物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含フッ素重合体および含フッ素組成物に関する。含フッ素組成物は、表面処理剤として使用できる。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の含フッ素化合物が提案されている。含フッ素化合物には、耐熱性、耐酸化性、耐候性などの特性に優れているという利点がある。含フッ素化合物の自由エネルギーが低い、すなわち、付着し難いという特性を利用して、含フッ素化合物は、例えば、撥水撥油剤および防汚剤として使用されている。
【0003】
特許文献1(国際公開2018/084132号)は、2種の異なった含フッ素単量体から形成された含フッ素重合体が、優れた洗濯耐久性及び撥水撥油性を与えることを開示している。
特許文献2(特開2016-196651号公報)は、含フッ素単量体および高ガラス転移点単量体から形成された含フッ素重合体が、優れた撥水撥油性と加工時のロールへの
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2018/084132号
【文献】特開2016-196651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2には、低濃度での動的撥水性、および助剤の使用時の撥水性について記載は見られない。
本開示の目的は、低濃度での優れた動的撥水性、および助剤の使用時の優れた撥水性を与えることにある。
本開示において、「助剤」とは、硬化剤(4)および他の成分(5)(例えば、非フッ素撥水性化合物および/または添加剤)を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
(1)含フッ素重合体、および
(2)液状媒体
を含んでなる含フッ素組成物を提供する。
【0007】
本開示は、
(a)α位の塩素原子を有する含フッ素アクリル単量体である第1単量体、
(b)α位の水素原子または有機基を有する含フッ素アクリル単量体である第2単量体、
(c)炭素数12~40の鎖状の炭化水素基を有するアクリル単量体である第3単量体、および
(d)炭素数3~40の環状の炭化水素基を有するアクリル単量体である第4単量体
から形成された繰り返し単位を有する含フッ素重合体を提供する。
【0008】
本開示の好ましい態様は次のとおりである。
態様1:
(a)α位の塩素原子を有する含フッ素アクリル単量体である第1単量体、
(b)α位の水素原子または有機基を有する含フッ素アクリル単量体である第2単量体、
(c)炭素数12~40の鎖状の炭化水素基を有するアクリル単量体である第3単量体、および
(d)炭素数3~40の環状の炭化水素基を有するアクリル単量体である第4単量体
から形成された繰り返し単位を有する含フッ素重合体。
態様2:
第3単量体(a)と第4単量体(b)の重量比が5:95~95:5である態様1に記載の含フッ素重合体。
態様3:
第1単量体(a)が、式:
CH2=C(-X11)-C(=O)-Y11-Z11-Rf11
[式中、X11は、ハロゲン原子であり、
Y11は、-O-または-NH-であり、
Z11は、直接結合または二価の有機基であり、
Rf11は、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。]
で示される化合物であり、
第2単量体(b)が、式:
CH2=C(-X12)-C(=O)-Y12-Z12-Rf12
[式中、X12は、水素原子または一価の有機基であり、
Y12は、-O-または-NH-であり、
Z12は、直接結合または二価の有機基であり、
Rf12は、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。]
で示される化合物であり、
第3単量体(c)が、式:
CH2=C(-X21)-C(=O)-Y21-R21
[式中、X21は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y21は、-O-または-NH-であり、
R21は、炭素数12~40の鎖状の炭化水素基である。]
で示される化合物であり、
第4単量体(d)が、式:
CH2=C(-X22)-C(=O)-Y22-R22
[式中、X22は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y22は、-O-または-NH-であり、
R22は、炭素数3~40の環状の炭化水素基である。]
で示される化合物である態様1または2に記載の含フッ素重合体。
態様4:
一価の有機基が、炭素数1~4のアルキル基であり、
二価の有機基が、炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキレン基であり、
炭素数3~40の環状の炭化水素基が、炭素数4~30の環状の脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、または炭素数7~25の芳香脂肪族基である態様1~3のいずれか1項に記載の含フッ素重合体。
態様5:
第3単量体(c)が、
ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ラウリルαクロロアクリレート、セチルαクロロアクリレート、ステアリルαクロロアクリレート、イコシルαクロロアクリレートおよびベヘニルαクロロアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種の長鎖アクリレートエステル単量体、または
ラウリル(メタ)アクリルアミド、セチル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、イコシル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミドからなる群から選択された少なくとも1種の長鎖アクリルアミド単量体であり、
第4単量体(d)が、
シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレートおよび2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレートからなる群から選択された少なくとも1種の化合物である態様1~4のいずれか1項に記載の含フッ素重合体。
態様6:
含フッ素重合体に対して、第1単量体(a)の量が5~70重量%、第2単量体(b)の量が4~60重量%、第3単量体(c)の量が3~60重量%、第4単量体(d)の量が3~60重量%である態様1~5のいずれか1項に記載の含フッ素重合体。
態様7:
含フッ素重合体が、
(e)単量体(a)、(b)、(c)および(d)以外の単量体である他の単量体から形成された繰り返し単位を有し、
他の単量体(e)がハロゲン化オレフィンである態様1~6のいずれか1項に記載の含フッ素重合体。
態様8:
他の単量体(e)の量が0~50重量%である態様7に記載の含フッ素重合体。
態様9:
(1)態様1~8のいずれか1項に記載の含フッ素重合体、および
(2)液状媒体
を含んでなる含フッ素組成物。
態様10:
液状媒体(2)が有機溶媒であるか、あるいは水、有機溶媒または水と有機溶媒の混合物である態様9に記載の含フッ素組成物。
態様11:
含フッ素組成物が、重合体が、水、または水と有機溶媒の混合物に分散している水性分散液であり、
含フッ素組成物が、
(3)界面活性剤
を含む態様9または10に記載の含フッ素組成物。
態様12:
含フッ素組成物が、撥水剤、撥油剤、防汚剤、汚れ脱離剤、剥離剤または離型剤である態様9~11のいずれか1項に記載の含フッ素組成物。
態様13:
態様1~8のいずれか1項に記載の含フッ素重合体が付着した被処理物。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、低濃度での優れた動的撥水性、および助剤の使用時の優れた撥水性を与える含フッ素重合体および含フッ素組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
含フッ素組成物は、
(1)含フッ素重合体、
(2)液状媒体、および
(3)界面活性剤
を含んでなる。
含フッ素組成物は、さらに、
(4)硬化剤
を含んでよい。
含フッ素組成物は、さらに(5)他の成分を含んでもよい。
【0011】
(1)含フッ素重合体
含フッ素重合体は、含フッ素単量体および非フッ素単量体から誘導された繰り返し単位を有する。含フッ素単量体は、(a)α位の塩素原子を有する含フッ素アクリル単量体である第1単量体、および(b)α位の水素原子または有機基を有する含フッ素アクリル単量体である第2単量体を含む。非フッ素単量体は、(c)炭素数12~40の鎖状の炭化水素基を有するアクリル単量体である第3単量体、および(d)炭素数3~40の環状の炭化水素基を有するアクリル単量体である第4単量体を含む。
含フッ素重合体は、単量体(a)、(b)、(c)および(d)に加えて、(e)他の単量体から形成されていてもよい。他の単量体(e)は、ハロゲン化オレフィンなどである。
【0012】
(a)第1単量体
第1単量体(a)は含フッ素単量体である。
第1単量体(a)は、式:
CH2=C(-X11)-C(=O)-Y11-Z11-Rf11
[式中、X11は、ハロゲン原子であり、
Y11は、-O-または-NH-であり、
Z11は、直接結合または二価の有機基であり、
Rf11は、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。]
で示される化合物であることが好ましい。
【0013】
X11は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であることが好ましい。X11の代表的な具体例は、Cl、Br、I、Fであり、X11はClであることが好ましい。
【0014】
第1単量体(a)は、Y11が-O-である含フッ素アクリレートエステル単量体、またはY11が-NH-である含フッ素アクリルアミド単量体である。Y11は、-O-であることが好ましい。
【0015】
Z11の例は、直接結合、炭素数1~10の脂肪族基、炭素数6~18の芳香族基もしくは環状脂肪族基、
式-R2(R1)N-SO2-もしくは-R2(R1)N-CO-で示される基(式中、R1は、炭素数1~10のアルキル基であり、R2は、炭素数1~10の直鎖アルキレン基または分枝状アルキレン基である。)、
式-CH2CH(OR3)CH2-(Ar-O)p-(式中、R3は、水素原子または炭素数1~10のアシル基(例えば、ホルミルまたはアセチルなど)、Arは、置換基を必要により有するアリーレン基、pは0または1を表す。)で示される基、
式-(CH2)r-Ar-(O)q-(式中、Arは、置換基を必要により有するアリーレン基、qは0または1、rは0~10である。)で示される基、あるいは式-(CH2)m-SO2-(CH2)n-もしくは-(CH2)m-S-(CH2)n-(式中、mは1~10、nは0~10である)で示される基である。脂肪族基は、アルキレン基(特に炭素数は1~4、例えば1または2である。)であることが好ましい。芳香族基または環状脂肪族基は、置換または非置換であってよい。S 基または SO2基はRf11基に直接に結合していてよい。
【0016】
単量体(a)において、Rf11基が、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf11基の炭素数は、1~12、例えば1~6、特別には4~6、更に好ましくは6であることが好ましい。Rf11基の例は、-CF3、-CF2CF3、-CF2CF2CF3、-CF(CF3) 2、-CF2CF2CF2CF3、-CF2CF(CF3)2、-C(CF3)3、-(CF2)4CF3、-(CF2)2CF(CF3)2、-CF2C(CF3)3、-CF(CF3)CF2CF2CF3、-(CF2)5CF3、-(CF2)3CF(CF3)2、-(CF2)4CF(CF3)2、-C8F17等である。
【0017】
単量体(a)の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)2-Rf11
CH2=C(-F)-C(=O)-O-(CH2)2-S-Rf11
CH2=C(-F)-C(=O)-O-(CH2)2-S-(CH2)2-Rf11
CH2=C(-F)-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-Rf11
CH2=C(-F)-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-(CH2)2-Rf11
CH2=C(-F)-C(=O)-NH-(CH2)2-Rf11
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)2-S-Rf11
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)2-S-(CH2)2-Rf11
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-Rf11
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-(CH2)2-Rf11
CH2=C(-Cl)-C(=O)-NH-(CH2)2-Rf11
【0018】
CH2=C(-F)-C(=O)-O-(CH2)3-S-Rf11
CH2=C(-F)-C(=O)-O-(CH2)3-S-(CH2)2-Rf11
CH2=C(-F)-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-Rf11
CH2=C(-F)-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-(CH2)2-Rf11
CH2=C(-F)-C(=O)-NH-(CH2)3-Rf11
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)3-S-Rf11
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)3-S-(CH2)2-Rf11
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-Rf11
CH2=C(-Cl)-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-(CH2)2-Rf11
【0019】
(b)第2単量体
第2単量体(b)は含フッ素単量体である。
第2単量体(b)は、式:
CH2=C(-X12)-C(=O)-Y12-Z12-Rf12
[式中、X12は、水素原子または一価の有機基であり、
Y12は、-O-または-NH-であり、
Z12は、直接結合または二価の有機基であり、
Rf12は、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。]
で示される化合物であることが好ましい。
【0020】
X12は、水素原子、または炭素数1~21の直鎖状または分岐状のアルキル基であることが好ましい。X12の代表的な例は水素原子、メチル基である。水素原子が特に好ましい。
【0021】
第1単量体(a)は、Y12が-O-である含フッ素アクリレートエステル単量体、またはY12が-NH-である含フッ素アクリルアミド単量体である。Y12は、-O-であることが好ましい。
【0022】
Z12の例は、直接結合、炭素数1~10の脂肪族基、炭素数6~18の芳香族基または環状脂肪族基、式-R2(R1)N-SO2-または式-R2(R1)N-CO-で示される基(式中、R1は、炭素数1~10のアルキル基であり、R2は、炭素数1~10の直鎖アルキレン基または分枝状アルキレン基である。)、あるいは、式-CH2CH(OR3)CH2-(Ar-O)p-(式中、R3は、水素原子または炭素数1~10のアシル基(例えば、ホルミルまたはアセチルなど)、Arは、置換基を必要により有するアリーレン基、pは0または1を表す。)で示される基、あるいは、式-(CH2)n-Ar-(O)q-(式中、Arは、置換基を必要により有するアリーレン基、qは0または1である。)で示される基、-(CH2)m-SO2-(CH2)n-基または -(CH2)m-S-(CH2)n-基(但し、mは1~10、nは0~10である。)である。脂肪族基は、アルキレン基(特に炭素数は1~4、例えば1または2である。)であることが好ましい。芳香族基または環状脂肪族基は、置換または非置換であってよい。S 基または SO2基はRf12基に直接に結合していてよい。
【0023】
単量体(b)において、Rf12基が、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf12基の炭素数は、1~12、例えば1~6、特別には4~6、更に好ましくは6であることが好ましい。Rf12基の例は、-CF3、-CF2CF3、-CF2CF2CF3、-CF(CF3) 2、-CF2CF2CF2CF3、-CF2CF(CF3)2、-C(CF3)3、-(CF2)4CF3、-(CF2)2CF(CF3)2、-CF2C(CF3)3、-CF(CF3)CF2CF2CF3、-(CF2)5CF3、-(CF2)3CF(CF3)2、-(CF2)4CF(CF3)2、-C8F17等である。
【0024】
単量体(b)の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2-Rf12
CH2=C(-H)-C(=O)-O-C6H4-Rf12
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2N(-CH3) SO2-Rf12
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2N(-C2H5) SO2-Rf12
CH2=C(-H)-C(=O)-O-CH2CH(-OH) CH2-Rf12
CH2=C(-H)-C(=O)-O-CH2CH(-OCOCH3) CH2-Rf12
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2-S-Rf12
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2-S-(CH2)2-Rf12
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-Rf12
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-(CH2)2-Rf12
CH2=C(-H)-C(=O)-NH-(CH2)2-Rf12
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)2-Rf12
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-C6H4-Rf12
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)2N(-CH3) SO2-Rf12
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)2N(-C2H5) SO2-Rf12
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-CH2CH(-OH) CH2-Rf12
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-CH2CH(-OCOCH3) CH2-Rf12
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)2-S-Rf12
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)2-S-(CH2)2-Rf12
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)3-SO2-Rf12
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)2-SO2-(CH2)2-Rf12
CH2=C(-CH3)-C(=O)-NH-(CH2)2-Rf12
(c)第3単量体
【0025】
第3単量体(c)は、フッ素原子を有しない単量体である。第3単量体(c)は、炭素数12~40の鎖状の炭化水素基および1つのエチレン性不飽和二重結合を有するアクリル単量体である。
【0026】
鎖状の炭化水素基は、直鎖状または分岐状の炭化水素基であることが好ましい。鎖状の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。鎖状の炭化水素基の炭素数は、下限が14、16または18であり、上限が30、26または22であることが好ましい。鎖状の炭化水素基の具体例は、ラウリル、セチル、ステアリルおよびベヘニルである。
【0027】
第3単量体(c)は、式:
CH2=C(-X21)-C(=O)-Y21-R21
[式中、X21は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y21は、-O-または-NH-であり、
R21は、炭素数12~40の鎖状の炭化水素基である。]
で示される化合物であることが好ましい。
【0028】
X21は、水素原子、メチル基、フッ素原子を除くハロゲン原子(特に、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。水素原子、メチル基または塩素原子であることが好ましい。
第3単量体(c)は、Y21が-O-である長鎖アクリレートエステル単量体、またはY21が-NH-である長鎖アクリルアミド単量体であってよい。
R21は、直鎖状または分岐状の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。鎖状の炭化水素基の炭素数は、14~30、例えば16~26、特に18~22であることが好ましい。
【0029】
第3単量体(c)の好ましい具体例として、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ラウリルαクロロアクリレート、セチルαクロロアクリレート、ステアリルαクロロアクリレート、イコシルαクロロアクリレート、ベヘニルαクロロアクリレートが挙げられる。
第3単量体(c)の別の好ましい具体例として、ラウリル(メタ)アクリルアミド、セチル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、イコシル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0030】
(d)第4単量体
第4単量体(d)は、フッ素原子を有しない単量体である。第4単量体(d)は、炭素数3~40の環状の炭化水素基および1つのエチレン性不飽和二重結合を有するアクリル単量体である。
【0031】
環状の炭化水素基は、飽和または不飽和である、単環基、多環基、橋かけ環基などであってよい。環状炭化水素基は、飽和であることが好ましい。環状炭化水素基の炭素数は4~20(例えば、6~15または6~10)であることが好ましい。環状炭化水素基としては、炭素数4~30、特に5~20または5~12の環状脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、ならびに炭素数7~25または7~20の芳香脂肪族基が挙げられる。環状炭化水素基の炭素数は、15以下、例えば10以下であってよい。環状炭化水素基の環における炭素原子が、(メタ)アクリレート基におけるエステル基に直接に結合していてよいし、炭化水素のスペーサーを介して結合していてもよい。環状の炭化水素基は、飽和の環状脂肪族基であることが好ましい。
【0032】
環状の炭化水素基の具体例として、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロブチル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、イソボロニル基、ナフタレン基、ボルニル基、トリシクロデカニル基、フェニル基、ビフェニル基、トリフェニル基が挙げられる。
【0033】
第4単量体(d)は、式:
CH2=C(-X22)-C(=O)-Y22-R22
[式中、X22は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y22は、-O-または-NH-であり、
R22は、炭素数3~40の環状の炭化水素基である。]
で示される化合物であることが好ましい。
【0034】
X22は、水素原子、メチル基、フッ素原子を除くハロゲン原子(特に、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。水素原子、メチル基または塩素原子であることが好ましい。
第4単量体(c)は、Y22が-O-である長鎖アクリレートエステル単量体、またはY22が-NH-である長鎖アクリルアミド単量体であってよい。
R22は、炭素数3~30の環状脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、または炭素数7~25の芳香脂肪族基であることが好ましい。
い。
【0035】
第4単量体(d)の具体例として、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
(e)他の単量体
他の単量体(e)は、単量体(a)、(b)、(c)および(d)以外の単量体である。他の単量体(e)は、非フッ素単量体であることが好ましい。
【0037】
他の単量体(e)の例としては、ハロゲン化オレフィンが挙げられる。ハロゲン化オレフィンは、フッ素原子を有しない。
ハロゲン化オレフィンは、1~10の塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換されている炭素数2~20のオレフィンであってよい。ハロゲン化オレフィンは、炭素数2~20の塩素化オレフィン、特に1~5の塩素原子を有する炭素数2~5のオレフィンであることが好ましい。ハロゲン化オレフィンの好ましい具体例としては、ハロゲン化ビニル、例えば塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、例えば塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、ヨウ化ビニリデンが挙げられる。撥水性(特に撥水性の耐久性)が高くなるので、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンが好ましく、塩化ビニルが特に好ましい。
【0038】
他の単量体(e)の追加の例としては、例えば、エチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、およびビニルアルキルエーテルが挙げられる。
【0039】
含フッ素重合体において、含フッ素単量体の量(すなわち、第1単量体(a)および第2単量体(b)の合計量)は、含フッ素重合体に対して、10重量%以上、例えば40重量%以上であってよい。含フッ素単量体の量は、含フッ素重合体に対して、95重量%以下、例えば80重量%以下、あるいは75重量%以下または70重量%以下であってよい。
【0040】
含フッ素重合体において、第1単量体(a)と第2単量体(b)の重量比は、5:95~95:5、10:90~90:10、15:85~85:15または20:80~80:20であってよい。あるいは、第1単量体(a)と第2単量体(b)の重量比は、40:60~90:10、50:50~85:15、55:45~80:20、または60:40~70:30であってよい。
【0041】
含フッ素重合体において、第3単量体(a)と第4単量体(b)の重量比は、5:95~95:5、10:90~90:10、15:85~85:15、20:80~80:20、30:70~70:30または40:60~60:40であってよい。
【0042】
含フッ素重合体において、含フッ素単量体(第1単量体(a)および第2単量体(b)の合計量)100重量部に対して、
第3単量体(c)の量について、下限は1重量部、5重量部または10重量部であり、上限は300重量部、200重量部または150重量部、
第4単量体(d)の量について、下限は1重量部、5重量部または10重量部であり、上限は300重量部、200重量部または150重量部、
他の単量体(e)(例えば、ハロゲン化オレフィン)の量について、下限が0重量部、1重量部または2重量部、上限が100重量部、60重量部または40重量部であってよい。
【0043】
あるいは、単量体の合計に対して(すなわち、含フッ素重合体に対して)、
第1単量体(a)の量について、下限が5重量%、10重量%、15重量%、20重量%または22重量%であり、上限が70重量%、60重量%、55重量%、50重量%または48重量%、
第2単量体(b)の量について、下限が4重量%、5重量%、8重量%、10重量%または11重量%であり、上限が60重量%、50重量%、40重量%、35重量%または30重量%、
第3単量体(c)の量について、下限が3重量%、5重量%、8重量%、9重量%または10重量%であり、上限が60重量%、50重量%、40重量%、30重量%または25重量%、
第4単量体(d)の量について、下限が3重量%、5重量%、8重量%、9重量%または10重量%であり、上限が60重量%、50重量%、40重量%、30重量%または25重量%、
他の単量体(e)の量(例えば、ハロゲン化オレフィンと別の単量体の合計量)について、下限が0重量%、3重量%、8重量%、10重量%または15重量%であり、上限が50重量%、40重量%、30重量%、25重量%または21重量%であってよい。ハロゲン化オレフィンの量について、下限が0重量%、2重量%、7重量%、10重量%または15重量%であり、上限が50重量%、40重量%、30重量%、25重量%または21重量%であることが好ましい。このような量により、含フッ素重合体の濃度(すなわち、量)が低くても、撥水性が高くなる。
【0044】
非フッ素重合体の重量平均分子量について、下限は1,000、5,000または10,000であり、上限は10,000,000、8,000,000、4,000,000、800,000または400,000であってよい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算で求めた値である。
【0045】
含フッ素重合体(固形分)の量は、含フッ素組成物に対して、下限が0.01重量%、0.1重量%、1重量%または5重量%であり、上限が60重量%、40重量%、35重量%または30重量%であってよい。
含フッ素重合体は、有機溶媒に溶解した溶液の形態で存在してよいが、水系分散体の形態で存在することが好ましい。
【0046】
本明細書において、明示的に示されない場合、単に「アクリレート」または「アクリルアミド」と呼ぶ場合には、α位が水素原子である化合物のみならず、α位が他の基(例えば、メチル基を含めた一価の有機基またはハロゲン原子)で置換されている化合物をも含む。本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。
【0047】
(2)液状媒体
液状媒体は、水性媒体(水、または水と有機溶媒(水混和性有機溶媒)の混合物)、または有機溶媒であってよい。撥水撥油剤は、一般に、溶液または分散液である。溶液は、重合体が有機溶媒または水性媒体に溶解している溶液である。分散液は、重合体が水性媒体に分散している水性分散液である。
【0048】
有機溶媒の例は、エステル(例えば、炭素数2~40のエステル、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、炭素数2~40のケトン、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン)、アルコール(例えば、炭素数1~40のアルコール、具体的には、イソプロピルアルコール)、芳香族系溶剤(例えば、トルエンおよびキシレン)、石油系溶剤(例えば、炭素数5~10のアルカン、具体的には、ナフサ、灯油)、ハロゲン化アルキル(例えば、炭素数1~40のハロゲン化アルキル、具体的には、クロロホルム)である。
液状媒体は水の単独、有機溶媒の単独、または水と(水混和性)有機溶媒の混合物であってよい。有機溶媒の量は、液状媒体に対して、30重量%以下、例えば10重量%以下(好ましくは0.1重量%以上)であってよい。液状媒体は、水の単独であることが好ましい。
液状媒体の量は、含フッ素組成物に対して、下限が30重量%、50重量%または70重量%であり、上限が99.5重量%、99重量%または95重量%であってよい。
【0049】
水性媒体は、含フッ素重合体を重合により製造した後に、添加してもよい。例えば、単量体を有機溶媒の存在下で重合して、含フッ素重合体を製造した後に、水を添加、有機溶媒を留去する。有機溶媒は留去しなくてもよい。界面活性剤は、重合前または重合後に添加してよく、あるいは添加しなくてもよい。界面活性剤を添加しない場合にも、含フッ素重合体が水性媒体に良好に分散した水性分散液が得られる。
【0050】
(3)界面活性剤
含フッ素組成物は、水性分散液である場合に、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤およびアニオン界面活性剤の少なくとも1種を含む。さらに、界面活性剤は、両性界面活性剤を含んでもよい。また、界面活性剤を含有しなくてもよい。
含フッ素組成物は、水性分散液である場合に、一般に、界面活性剤を含む。含フッ素組成物は水溶液である場合に、一般に、界面活性剤を含まない。
【0051】
ノニオン性界面活性剤は、オキシアルキレン基を有するノニオン性界面活性剤である。オキシアルキレン基におけるアルキレン基の炭素数は、2~10であることが好ましい。ノニオン性界面活性剤の分子におけるオキシアルキレン基の数は、一般に、2~100であることが好ましい。
ノニオン性界面活性剤は、直鎖状および/または分岐状の脂肪族(飽和および/または不飽和)基のアルキレンオキシド付加物、直鎖状および/または分岐状脂肪酸(飽和および/または不飽和)のポリアルキレングリコールエステル、ポリオキシエチレン(POE)/ポリオキシプロピレン(POP)共重合体(ランダム共重合体またはブロック共重合体)、アセチレングリコールのアルキレンオキシド付加物等であってよい。これらの中で、アルキレンオキシド付加部分およびポリアルキレングリコール部分の構造がポリオキシエチレン(POE)またはポリオキシプロピレン(POP)またはPOE/POP共重合体(ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってよい)であるものが好ましい。
また、ノニオン性界面活性剤は、環境上の問題(生分解性、環境ホルモンなど)から芳香族基を含まない構造が好ましい。
【0052】
カチオン性界面活性剤は、アミン塩、4級アンモニウム塩、オキシエチレン付加型アンモニウム塩であってよい。カチオン性界面活性剤の具体例としては、特に限定されないが、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の4級アンモニウム塩型界面活性剤等が挙げられる。
【0053】
カチオン性界面活性剤の具体例には、ドデシルトリメチルアンモニウムアセテート、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド、(ドデシルメチルベンジル)トリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロライド、メチルドデシルジ(ヒドロポリオキシエチレン)アンモニウムクロライド、ベンジルドデシルジ(ヒドロポリオキシエチレン)アンモニウムクロライド、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]オレアミド塩酸塩が包含される。
【0054】
アニオン性界面活性剤の例としては、脂肪酸塩(脂肪酸の炭素数は例えば8~30である)、スルホン酸塩(例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩(アルキル基の炭素数は例えば8~30である。))、硫酸エステル塩(例えば、アルキル硫酸エステル塩(アルキル基の炭素数は例えば8~30である。)が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の例は、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ココイルサルコシンナトリウム、ナトリウムN - ココイルメチルタウリン、ポリオキシエチレンヤシアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ジエーテルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、α - オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム等が包含される。
【0055】
両性界面活性剤としては、アラニン類、イミダゾリニウムベタイン類、アミドベタイン類、酢酸ベタイン等が挙げられ、具体的には、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0056】
ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、および両性界面活性剤のそれぞれが1種または2以上の組み合わせであってよい。
界面活性剤はアニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤であることが好ましい。アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との組み合わせが好ましい。
本開示において、界面活性剤を使用しない場合にも、含フッ素重合体の分散液、特に水性分散液を形成できる。
界面活性剤の量は、含フッ素重合体(または単量体の合計)100重量部に対して、0.1~50重量部、例えば、1~30重量部であってよい。
【0057】
[含フッ素重合体の製造方法]
本開示における含フッ素重合体は通常の重合方法の何れでも製造でき、また重合反応の条件も任意に選択できる。このような重合方法として、溶液重合、懸濁重合、乳化重合が挙げられる。
【0058】
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、単量体を有機溶媒に溶解させ、窒素置換後、30~120℃の範囲で30分間~48時間、例えば3~24時間、加熱撹拌する方法が採用される。重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01~20重量部、例えば0.01~10重量部の範囲で用いられる。
【0059】
有機溶媒は、単量体に不活性でこれらを溶解するものであり、例えば、エステル(例えば、炭素数2~30のエステル、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、炭素数2~30のケトン、具体的には、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン)、アルコール(例えば、炭素数1~30のアルコール、具体的には、イソプロピルアルコール)であってよい。有機溶媒の具体例としては、アセトン、クロロホルム、HCHC225、イソプロピルアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。有機溶媒は単量体の合計100重量部に対して、10~2000重量部、例えば、50~1000重量部の範囲で用いられる。
【0060】
乳化重合では、重合開始剤および乳化剤の存在下で、単量体を水中に乳化させ、窒素置換後、50~80℃の範囲で30分間~48時間、例えば3~24時間、撹拌して重合させる方法が採用される。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t-ブチルパーベンゾエート、1-ヒドロキシシクロヘキシルヒドロ過酸化物、3-カルボキシプロピオニル過酸化物、過酸化アセチル、アゾビスイソブチルアミジン-二塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性のものやアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどの油溶性のものが用いられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01~10重量部の範囲で用いられる。
【0061】
放置安定性の優れた重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体を水中に微粒子化して重合することが望ましい。また、乳化剤としてはアニオン性、カチオン性あるいはノニオン性の各種乳化剤を用いることができ、単量体100重量部に対して、0.5~20重量部の範囲で用いられる。アニオン性および/またはノニオン性および/またはカチオン性の乳化剤を使用することが好ましい。単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶媒や低分子量の単量体を添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性および共重合性を向上させることが可能である。
【0062】
水溶性有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノールなどが挙げられ、水100重量部に対して、1~50重量部、例えば10~40重量部の範囲で用いてよい。また、低分子量の単量体としては、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートなどが挙げられ、単量体の総量100重量部に対して、1~50重量部、例えば10~40重量部の範囲で用いてよい。
【0063】
重合においては、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤の使用量に応じて、重合体の分子量を変化させることができる。連鎖移動剤の例は、ラウリルメルカプタン、チオグリコール、チオグリセロールなどのメルカプタン基含有化合物(特に、(例えば炭素数1~30の)アルキルメルカプタン)、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの無機塩などである。連鎖移動剤の使用量は、単量体の総量100重量部に対して、0.01~10重量部、例えば0.1~5重量部の範囲で用いてよい。
【0064】
含フッ素重合体を乳化重合法または溶液重合法により製造することが好ましい。
含フッ素重合体を重合により製造した後に、水(または水性媒体)を添加して、含フッ素重合体を水に分散させることが好ましい。
水(または水性媒体)は、含フッ素重合体を重合により製造した後に、添加してもよい。例えば、単量体を有機溶媒の存在下で重合して、含フッ素重合体を製造した後に、重合体混合物に水を添加して、有機溶媒を留去して、含フッ素重合体を水に分散させてよい。有機溶媒は留去しなくてもよい。界面活性剤は、重合前または重合後に添加してよく、あるいは添加しなくてもよい。界面活性剤を添加しない場合にも、良好な水性分散液が得られる。
【0065】
含フッ素組成物は、(4)硬化剤(活性水素反応性化合物または活性水素含有化合物)を含んでよい。一般に、含フッ素重合体を製造した後に、硬化剤(4)を加える。
【0066】
(4)硬化剤
含フッ素重合体を良好に硬化させるように、含フッ素組成物は、硬化剤(架橋剤)を含んでいてよい。非フッ素架橋性(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミド単量体は活性水素含有単量体または活性水素反応性基含有単量体であるので、含フッ素重合体は、活性水素または活性水素反応性基を有する。硬化剤は、含フッ素重合体の活性水素または活性水素反応性基と反応するように、活性水素反応性化合物または活性水素含有化合物である。
活性水素反応性化合物の例は、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、クロロメチル基含有化合物、カルボキシル基含有化合物およびヒドラジド化合物である。
活性水素含有化合物の例は、ヒドロキシル基含有化合物、アミノ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、ケトン基含有化合物、ヒドラジド化合物およびメラミン化合物である。
硬化剤の量は、含フッ素重合体100重量部に対して、100重量部以下、例えば、0.01~30重量部でよい。
【0067】
硬化剤はポリイソシアネート化合物であることが好ましい。
ポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物である。ポリイソシアネート化合物は、架橋剤として働く。ポリイソシアネート化合物の例は、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。
【0068】
脂肪族ポリイソシアネートの例は、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエートの脂肪族ジイソシアネート、およびリジンエステルトリイソシアネート、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどである。
【0069】
脂環族ポリイソシアネートの例は、脂環族ジイソシアネートおよび脂環族トリイソシアネートなどである。脂環族ポリイソシアネートの具体例は、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサンである。
【0070】
芳香脂肪族ポリイソシアネートの例は、芳香脂肪族ジイソシアネートおよび芳香脂肪族トリイソシアネートである。芳香脂肪族ポリイソシアネートの具体例は、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネートまたはその混合物、1,3-または1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼンである。
【0071】
芳香族ポリイソシアネートの例は、芳香族ジイソシアネート、芳香族トリイソシアネート、芳香族テトライソシアネートである。芳香族ポリイソシアネートの具体例は、
m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4’-または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、および4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネートなどである。
【0072】
ポリイソシアネートの誘導体は、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン等の各種誘導体を挙げることができる。
【0073】
これらポリイソシアネートは、1種又は2種以上を組合せて使用することができる。
ポリイソシアネート化合物として、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でブロックした化合物であるブロック化ポリイソシアネート化合物(ブロックイソシアネート)を使用することが好ましい。水溶液中でも比較的安定であり、含フッ素組成物と同じ液(例えば、水溶液)中でも使用可能である等の理由からブロック化ポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。
【0074】
ブロック剤は、遊離のイソシアネート基を封鎖するものである。ブロック化ポリイソシアネート化合物は、例えば、100℃以上、例えば130℃以上に加熱することにより、イソシアネート基が再生し、ヒドロキシル基と容易に反応することができる。ブロック剤の例は、フェノール系化合物、ラクタム系化合物、脂肪族アルコール系化合物、オキシム系化合物などである。
【0075】
ポリイソシアネート化合物は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0076】
エポキシ化合物は、エポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物の例は、ポリオキシアルキレン基を有するエポキシ化合物、例えば、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルおよびポリプロピレングリコ-ルジグリシジルエ-テル;ならびにソルビトールポリグリシジルエーテルなどである。
クロロメチル基含有化合物はクロロメチル基を有する化合物である。クロロメチル基含有化合物の例は、クロロメチルポリスチレンなどである。
カルボキシル基含有化合物はカルボキシル基を有する化合物である。カルボキシル基含有化合物の例は、(ポリ)アクリル酸、(ポリ)メタクリル酸などである。
【0077】
ケトン基含有化合物はケトン基を有する化合物である。ケトン基含有化合物の例は、(ポリ)ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンアルコールなどである。
ヒドラジド化合物はヒドラジド基を有する化合物である。ヒドラジド化合物の例は、ヒドラジン、カルボヒドラジド、アジピン酸ヒドラジドなどである。
メラミン化合物の例は、メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂などである。
【0078】
(5)他の成分
含フッ素組成物は、上記成分(1)~(4)以外の他の成分(5)を含んでよい。
一般に、含フッ素重合体を製造した後に、他の成分(5)を加える。
他の成分の量は、含フッ素重合体100重量部に対して、下限が0.1重量部、0.5重量部、1重量部、5重量部または10重量部、上限が1000重量部、500重量部、100重量部、50重量部または20重量部であってよい。
【0079】
他の成分(5)の例としては、撥水及び/又は撥油剤、スリップ防止剤、帯電防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、消臭剤、香料、浸透剤、反応性シリコーン成分、シリコーンレジン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。前記の成分以外に、その他成分として、風合い調整剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、塗料定着剤、防シワ剤、乾燥速度調整剤、架橋剤、造膜助剤、相溶化剤、凍結防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、防虫剤、消泡剤、縮み防止剤、洗濯じわ防止剤、形状保持剤、ドレープ性保持剤、アイロン性向上剤、増白剤、白化剤、布地柔軟化クレイ、ポリビニルピロリドンなどの移染防止剤、高分子分散剤、汚れ剥離剤、スカム分散剤、4,4-ビス(2-スルホスチリル)ビフェニルジナトリウム(チバスペシャルティケミカルズ製チノパールCBS-X)などの蛍光増白剤、染料固定剤、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジンなどの退色防止剤、染み抜き剤、繊維表面改質剤としてセルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ケラチナーゼなどの酵素、抑泡剤、水分吸放出性など絹の風合い・機能を付与できるものとしてシルクプロテインパウダー、それらの表面改質物、乳化分散液があり、具体的にはK-50、K-30、K-10、A-705、S-702、L-710、FPシリーズ(出光石油化学)、加水分解シルク液(上毛)、シルクゲンGソルブルS(一丸ファルコス)、アルキレンテレフタレートおよび/またはアルキレンイソフタレート単位とポリオキシアルキレン単位からなる非イオン性高分子化合物、例えば互応化学工業製FR627、クラリアントジャパン製SRC-1などの汚染防止剤などを配合することができる。これらは単独で使用してもよく、また二以上を併用して使用してもよい。
【0080】
(撥水及び/又は撥油剤)
撥水及び/又は撥油剤の例としては、飽和又は不飽和の炭化水素化合物又はシリコーン系化合物等が挙げられる。撥水及び/又は撥油剤は非フッ素であってよい。飽和又は不飽和の炭化水素系化合物は飽和の炭化水素であることが好ましい。飽和又は不飽和の炭化水素系化合物の炭素数は、15以上、好ましくは20~300、例えば25~100であってよい。飽和又は不飽和の炭化水素系化合物の具体例としては、パラフィン等が挙げられる。シリコーン系化合物は、例えばシリコーン、シロキサン基含有アクリル重合体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また二以上を併用して使用してもよい。
【0081】
(スリップ防止剤)
スリップ防止剤の例としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン(反応性シリコーン、シリコーンレジン等)、及びこれらの組合せである樹脂、アルミニウム化合物(例えばアルミナ)、ケイ素化合物(例えばシリカ)、チタン化合物等の無機粒子(疎水性表面処理がなされていてもよい)等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また二以上を併用して使用してもよい。
【0082】
(帯電防止剤)
帯電防止剤の例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1、第2、第3アミノ基などのカチオン性官能基を有すカチオン型帯電防止剤;スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤;アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体などの両性型帯電防止剤、アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体などのノニオン型帯電防止剤等が挙げられる。これらのカチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有する単量体を重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体であってもよい。これらは単独で使用してもよく、また二以上を混合して使用してもよい。
【0083】
(防腐剤)
防腐剤は、主に、防腐力、殺菌力を強化し、長期保存中の防腐性を保つために用いられ得る。防腐剤としては、例えば、イソチアゾロン系有機硫黄化合物、ベンズイソチアゾロン系有機硫黄化合物、安息香酸類、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。防腐剤の含有量は、含フッ素組成物の総重量に対し、0.0001~1重量%であることが好ましい。防腐剤の含有量が前記範囲の下限値以上であると、防腐剤の添加効果が充分に得られ、上限値以下であると、含フッ素組成物の保存安定性が良好である。
【0084】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、紫外線を防御する効果のある薬剤であり、紫外線を吸収し、赤外線や可視光線等に変換して放出する成分である。紫外線吸収剤としては、例えば、アミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾール系化合物、4-t-ブチル-4'-メトキシベンゾイルメタン等が挙げられる。
【0085】
(抗菌剤)
抗菌剤は、繊維上での菌の増殖を抑え、さらには微生物の分解物由来の嫌なにおいの発生を抑える効果を有する成分である。抗菌剤としては、例えば、四級アンモニウム塩(ただし(A)成分を除く。)などのカチオン性殺菌剤、ビス-(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩、8-オキシキノリン、ポリリジン等が挙げられる。
【0086】
(消臭剤)
消臭剤としては、クラスターデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、モノアセチル-β-シクロデキストリン、アシルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、アミノカルボン酸系金属錯体(国際公開第2012/090580号記載のメチルグリシンジ酢酸3ナトリウムの亜鉛錯体)等が挙げられる。
【0087】
(香料)
香料としては特に限定されないが、使用できる香料原料のリストは、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals 」,Vol.Iand II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)および「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin 」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)および「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)および「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等で見られ、それぞれを引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0088】
(浸透剤)
浸透剤としては特に限定されないが、浸透剤としては、アルコール、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、具体的には、炭素数が1~10のアルキル基を有するアルコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、等が挙げられる。浸透剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。浸透剤の濃度は、疎水性基材処理剤組成物(100重量%)中、0.01~1.0重量%が好ましい。疎水性基材への浸透性と、撥水性及び撥アルコール性との両立の点から、0.1~0.5重量%がより好ましい。
【0089】
(反応性シリコーン成分)
含フッ素組成物は機能向上の観点から反応性シリコーン成分を含んでいてよい。反応性シリコーン成分には、側鎖、片末端、両末端、側鎖及び両末端、反応基を有するポリシロキサンが挙げられるが、滑脱性に優れると同時に防汚性(SR性)に優れる観点から、側鎖及び/又は両末端に反応基を有するポリシロキサンであると好ましい。反応性シリコーン成分としては、分子内に反応基を有するものであれば、特に限定されないが、たとえば、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン等が挙げられる。
【0090】
アミノ変性シリコーンとしては、ケイ素原子に直結した有機基に、アミノ基が結合した構造を有するものがあげられる。有機基はアルキレン基、2価の芳香族基いずれであってもよい。アルキレン基としては炭素数2以上のものが好ましい。2価の芳香族基としては炭素数6以上のものが好ましい。アミノ基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基いずれであってもよい。アミノ基が結合した有機基としては以下のものが例示される。2-アミノエチル基、N-メチル-2-アミノエチル基、N,N-ジメチル-2-アミノエチル基、N-エチル-2-アミノエチル基、N,N-ジエチル-2-アミノエチル基、N,N-メチルエチル-2-アミノエチル基、3-アミノプロピル基、N-メチル- 3 -アミノプロピル基、N,N-ジメチル-3-アミノプロピル基、N-エチル-3-アノプロピル基、N,N-ジエチル-3-アミノプロピル基、N,N-メチルエチル-3-アミノプロピル基。これらの官能基はポリシロキサンの側鎖にあっても、末端にあってもよい。
【0091】
エポキシ変性シリコーンとしてはケイ素原子に直結した有機基に、エポキシ基が結合した構造を有するものが挙げられる。有機基はアルキレン基、2価の芳香族基いずれであってもよい。このようなかたちとしては前記有機基との間でグリシジルエーテルのかたちで結合するのが通常である。このような官能基としては3-グリシドキシプロピル基、2-グリシドキシエチル基が例示される。これらの官能基はポリシロキサンの側鎖にあっても、末端にあってもよい。
【0092】
カルボキシ変性シリコーンとしてはケイ素原子に直結した有機基にカルボキシ基が結合した構造を有するものが挙げられる。有機基はアルキレン基、2価の芳香族基いずれであってもよい。アルキレン基としては炭素数2以上のものが好ましい。2価の芳香族基としては炭素数6以上のものが好ましい。このような官能基としては3-カルボキシプロピル基、2-カルボキシエチル基が例示される。これらの官能基はポリシロキサンの側鎖にあっても、末端にあってもよい。
【0093】
メチルハイドロジェンシリコーンとはポリジオルガノシロキサンの側鎖の一部が水素に置換され、水素原子がケイ素原子に直結したものである。メチルハイドロジェンシリコーンの使用にあたっては、反応性を向上させるために触媒を使用しても良い。例えば亜鉛、錫、マンガン、コバルト、鉄およびアミン系の触媒を使用することができる。これらの触媒としては有機酸金属塩が好ましく、有機酸としては脂肪酸が好ましい。安全性の観点からはステアリン酸亜鉛などを使用することができる。触媒はメチルハイドロジェンシリコーンに対し10~40%使用すると効果を発揮しやすくなるので好ましい。アミノ変性、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーンおよびメチルハイドロジェンシリコーンは2種以上が混合されていても良い。いずれも反応基を有するシリコーンであり、造膜性を有するシリコーンであることが好ましい。造膜性とは、該シリコーンを各々エマルジョン状態で繊維表面に付着させた後、オイル状やゲル状ではなく、固体状の膜を形成することをいう。
【0094】
(シリコーンレジン)
含フッ素組成物は機能向上の観点からシリコーンレジンを含んでいてよい。シリコーンレジンは、R3SiO1/2単位(M単位)、RSiO3/2単位(T単位)及びSiO4/2単位(Q単位)から選ばれる少なくとも1種からなるシリコーンレジンであり、Rは直鎖又は分岐の炭素数1~18の一価アルキル基である、またM単位のみ及びQ単位のみからなるシリコーンレジンを除く)。シリコーンレジン(B)は、R2SiO2/2単位(D単位)を含まない方が、本願効果を発揮する観点から、好ましい。
【0095】
シリコーンレジンは、ゾルの状態であると好ましい。Rを例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、セチル基、ステアリル基等が挙げられるが、シリコーンレジン(B)がゾルの状態である場合における安定性、原料の入手のし易さ及び価格面から、Rはメチル基であることが好ましく、特に全てのRの90%以上がメチル基であることが好ましい。なお、Rは異なる種類の基を併用してもよい。
【0096】
シリコーンレジンにR2SiO2/2単位(D単位)を含むと、撥水剤の低滑脱性が損なわれ得る。また、Q単位のみからなるシリコーンレジンは撥水剤としての撥水性能を阻害し得る。
【0097】
シリコーンレジンの構造は、(i)M単位とQ単位、(ii)M単位とT単位とQ単位、(iii)M単位とT単位、(iv)T単位とQ単位、(v)T単位のみからなるシリコーンレジンが例示され、好ましくは、(i)M単位とQ単位からなるシリコーンレジン及び(v)T単位のみからなるシリコーンレジンであってよい。(i)M単位とQ単位からなるシリコーンレジンのM単位とQ単位のモル比率(M/Q)は、M/Q=0.6~1.3であることが好ましく、M/Q=0.8~1.1であることがより好ましい。なお、これらのシリコーンレジンは2種以上を併用してもよい。
【0098】
また、シリコーンレジン(B)はケイ素原子に結合した水酸基を含む構成単位を含有することができる。具体的には、(HO)RSiO2/2単位や、(HO)2RSiO1/2単位、(HO)SiO3/2単位、(HO)2SiO2/2単位、(HO)3SiO1/2単位が挙げられ、水酸基の一部がRO基で表されるアルコキシ基であってもよい。
【0099】
シリコーンレジンを含むゾルは、特許3852921に記載のように、オルガノジシロキサンとテトラアルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物を、界面活性剤を含む水中で均一分散及び重合を行う製造方法や、以下に示すシラン化合物を水中で加水分解させる製造方法で得ることができる。
【0100】
シラン化合物を水中で加水分解させる製造方法について詳述する。製造するための原料として、加水分解性基の種類がクロル或いはアルコキシであり、加水分解性基を1個、3個又は4個含有し、上記条件を満たすアルキル基を有するシラン化合物であれば如何なるものでも使用可能である。具体的には、テトラクロルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリクロルシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリクロルシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリクロルシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリクロルシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロルシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、2-エチルヘキシルトリクロルシラン、2-エチルヘキシルトリメトキシシラン、2-エチルヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリクロルシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、セチルトリクロルシラン、セチルトリメトキシシラン、セチルトリエトキシシラン、ステアリルトリクロルシラン、ステアリルトリメトキシシラン、ステアリルトリエトキシシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、ジメチルエチルクロルシラン、ジメチルエチルメトキシシラン、ジメチルエチルエトキシシラン、ジメチルプロピルクロルシラン、ジメチルプロピルメトキシシラン、ジメチルプロピルエトキシシラン、ジメチルイソプロピルクロルシラン、ジメチルイソプロピルメトキシシラン、ジメチルイソプロピルエトキシシラン、ジメチルヘキシルクロルシラン、ジメチルヘキシルメトキシシラン、ジメチルヘキシルエトキシシラン、ジメチルデシルクロルシラン、ジメチルデシルメトキシシラン、ジメチルデシルエトキシシラン、ジメチルセチルクロルシラン、ジメチルセチルメトキシシラン、ジメチルセチルエトキシシラン、ジメチルステアリルクロルシラン、ジメチルステアリルメトキシシラン、ジメチルステアリルエトキシシラン、及びこれらの部分加水分解物等が使用可能なシラン化合物として挙げられるが、使用可能なシラン化合物はこれに限定されるものではない。操作性、副生物の留去のし易さ、及び原料の入手の容易さから、メトキシシラン或いはエトキシシランを使用するのがより好ましい。これらのシラン化合物の1種または2種以上の混合物を使用してもよい。
【0101】
シラン化合物を水中で加水分解させる方法としては通常知られる一般的な方法を用いることができる。即ち、水中にシラン化合物を滴下しながら加水分解反応を行う方法や、水とシラン化合物を一括で混合してその後に加水分解反応を行う方法である。
加水分解反応を実施するに際し、加水分解触媒を使用してもよい。加水分解触媒としては従来公知の触媒を使用することができ、酸性又はアルカリ性のものを使用するのがよい。酸性触媒の場合はハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、酸性或いは弱酸性の無機塩、イオン交換樹脂等の固体酸が好ましい。アルカリ性触媒の場合は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属塩、ナトリウムシラノレート、カリウムシラノレート等のアルカリ金属シラノレート、トリエチルアミン、ジエチルアミン、アニリン等のアミン類、アンモニア水等を用いることができる。触媒量は水溶液のpHが2~7および7~12になるように添加量を調整することが好ましい。また反応終了後には必要に応じて、酸性又はアルカリ性触媒を中和する中和剤を添加してもよい。
【0102】
水溶液にはシラン化合物及び加水分解反応生成物を水中に分散させるために界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤には特に制限はないが、例えばアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、4級アンモニウム塩、アルキルアミン酢酸塩等のカチオン系界面活性剤、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等の両性界面活性剤等が使用可能で、これらを単独又は2種以上を併用して使用することができる。また界面活性剤として酸性又はアルカリ性を示すものは、加水分解触媒としても使用することができる。界面活性剤を添加する際の添加量に特に制限はないが、シラン化合物100重量部に対して1~50重量部であることが好ましい。1重量部より少ないと界面活性剤を添加する効果が十分に得られず、50重量部より多いと撥水剤の撥水性が損なわれる可能性がある。
【0103】
水とシラン化合物の混合物に、必要に応じて加水分解触媒及び界面活性剤を添加し、0~90℃で10分間~24時間加水分解反応を行ってよい。その後に必要に応じて中和反応を行うことでシリコーンレジンを得ることができる。また加水分解反応により副生したアルコール類や中和塩等は減圧留去や濾過等で除去することができる。このシリコーンレジンには種々の添加剤を配合することができる。例えば目的に応じて防腐剤、増粘剤等を配合することができる。
【0104】
本開示の含フッ素組成物は、溶液、エマルション(特に、水性分散液)またはエアゾールの形態であってよいが、水性分散液であることが好ましい。含フッ素組成物は、重合体(活性成分)および媒体(特に、液状媒体、例えば、有機溶媒および/または水)を含んでなる。媒体の量は、例えば、含フッ素組成物に対して、5~99.9重量%、特に10~80重量%であってよい。
含フッ素組成物において、重合体の濃度は、0.01~95重量%、例えば5~50重量%であってよい。
【0105】
本開示の含フッ素組成物は、従来既知の方法により被処理物に適用することができる。通常、含フッ素組成物を有機溶媒または水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布などのような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる。また、必要ならば、適当な架橋剤(硬化剤)と共に適用し、キュアリングを行ってもよい。さらに、本開示の含フッ素組成物に、防虫剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤などの添加剤を添加して併用することも可能である。繊維製品と接触させる処理液における重合体の濃度は0.01~10重量%(特に、浸漬塗布の場合)、例えば0.05~10重量%であってよい。
【0106】
本開示の含フッ素組成物(例えば、撥水撥油剤)で処理される被処理物としては、繊維製品、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、燃料電池の部品(例えば、ガス拡散電極およびガス拡散支持体)、ガラス、紙、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属および酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、およびプラスターなどを挙げることができる。繊維製品としては種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維などの無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。
【0107】
繊維製品は、繊維、布等の形態のいずれであってもよい。
本開示の含フッ素組成物は、内部離型剤あるいは外部離型剤としても使用できる。
【0108】
重合体は、繊維製品(例えば、布)を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって繊維製品に適用することができる。繊維製品を溶液に浸してよく、あるいは、繊維製品に溶液を付着または噴霧してよい。処理された繊維製品は、撥水性および撥油性を発現させるために、好ましくは、加熱により乾燥およびキュアリングが行われる。加熱温度は例えば100℃~200℃、100℃~170℃または100℃~120℃であってよい。本開示において低温加熱(例えば、100℃~140℃)であっても良好な性能が得られる。本開示において加熱時間は5秒~60分であってよく、例えば30秒~3分であってよい。
【0109】
あるいは、重合体はクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用またはドライクリーニング法などにおいて繊維製品に適用してよい。
【0110】
処理される繊維製品は、典型的には布であり、これには、織物(織布)、編物(編布)および不織布、衣料品形態の布およびカーペットなどが含まれるが、繊維または糸または中間繊維製品(例えば、スライバーまたは粗糸など)であってもよい。本開示の含フッ素組成物は、合成繊維を疎水性および撥水性にすることにおいて特に効果的である。また、本開示の方法は一般に、繊維製品を疎水性および撥水性にする。
【0111】
繊維製品を構成する繊維の例は、天然繊維、合成繊維、半合成繊維、再生繊維および無機繊維である。繊維は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0112】
天然繊維の例は、綿、亜麻、ウッドパルプ等のセルロース系繊維、キチン、キトサン、羊毛、絹である。ウッドパルプの具体例は、グランドウッドパルプ(GP),プレッシャーライズドグランドウッドパルプ(PGW),サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、針葉樹高歩留り未晒クラフトパルプ(HNKP;N材),針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP;N材、NB材),広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP;L材),広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、L材)等の化学パルプ、デインキングパルプ(DIP),ウェイストパルプ(WP)等の古紙パルプやセミケミカルパルプ(CP)などである。
【0113】
合成繊維の例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、共重合ポリエステル等のポリエステル;線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン46等のポリアミド;ポリアクリロニトリル等のアクリル繊維;ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルである。
【0114】
半合成繊維の例は、アセテート、トリアセテートである。
再生繊維の例は、レーヨン、キュプラ、ポリノジックレーヨン、リヨセル、テンセルである。
無機繊維の例は、ガラス繊維、炭素繊維である。
【0115】
あるいは、繊維製品は皮革であってよい。製造重合体を、皮革を疎水性および疎油性にするために、皮革加工の様々な段階で、例えば、皮革の湿潤加工の期間中に、または、皮革の仕上げの期間中に、水溶液または水性乳化物から皮革に適用してよい。
あるいは、繊維製品は紙であってもよい。製造重合体を、予め形成した紙に適用してよく、または、製紙の様々な段階で、例えば、紙の乾燥期間中に適用してもよい。
【0116】
「処理」とは、処理剤(含フッ素組成物またはその希釈液)を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である重合体が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。
【0117】
以下、実施例を挙げて本開示を詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下において、部または%または比は、特記しない限り、重量部または重量%または重量比を表す。
試験の手順は次のとおりである。
【0118】
シャワー撥水性試験
シャワー撥水性試験をJIS-L-1092に従って行った。シャワー撥水性試験は(下記の表1に示されるように)撥水性No.によって表す。
体積が少なくとも250mlであるガラス漏斗、および、250mlの水を20秒間~30秒間にわたって噴霧することができるスプレーノズルを使用する。試験片フレームは、直径が15cmの金属フレームである。サイズが約20cmx20cmである3枚の試験片シートを準備し、シートを試験片ホルダーフレームに固定し、シートにしわがないようにする。噴霧の中心をシートの中心に置く。室温の水(250mL)をガラス漏斗に入れ、試験片シートに(25秒~30秒の時間にわたって)噴霧する。保持フレームを台から取り外し、保持フレームの一方の端をつかんで、前方表面を下側にし、反対側の端を堅い物質で軽くたたく。保持フレームを180°さらに回転させ、同じ手順を繰り返して、過剰な水滴を落とす。湿った試験片を、撥水性が不良から優れた順で、0、50、70、80、90および100の評点をつけるために、湿潤比較標準物と比較する。結果を3回の測定の平均から得る。
【0119】
【0120】
製造例1
1000mLオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(Cl)=CH2 (n=2.0)(13FClA) 44g、CF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOCH=CH2 (n=2.0)(13FA) 12g、イソボロニルメタクリレート(IBMA)20g、ステアリルアクリレート(StA)4g、純水400g、水溶性グリコール系溶剤56g、塩化アルキルジメチルアンモニウム1.56g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル16.1g、を入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル(VCM)20gを圧入充填し、アゾ基含有水溶性開始剤0.4gを添加し、60℃で20時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。重合体の組成は、仕込み単量体の組成にほぼ一致した。
【0121】
製造例1~6および比較製造例1~7
表2に示す単量体を使用する以外は、製造例1と同様の手順を繰り返して、重合体の分散液を得た。重合体の組成は、仕込み単量体の組成にほぼ一致した。
【0122】
実施例1
製造例1おいて製造した水性液体を純水により含フッ素重合体濃度が30%固形分となるように希釈した後、この30%希釈液の割合が5%になるように水でさらに希釈して5.00%の試験液(100g)を調製した。10枚のPET(PolyEthylene Terephthalate)織布(500mm x 200mm)、Nylon織布(500mm x 200mm)、をこの試験液に連続的に浸し、マングルに通し、170℃で1分間、ピンテンターで処理した。同様に含フッ素重合体濃度が30%固形分となるように希釈した後、この30%希釈液の割合が1%になるように水でさらに希釈してPP(Poly Propylene)不織布(500mm x 200mm)を浸しマングルに通し、135℃ 30秒でピンテンターで処理した。その後、PET織布およびNylon織布それぞれの生地についてシャワー撥水性試験、撥油性試験およびその洗濯耐久性試験に付し、PP不織布について撥水性試験(シャワー撥水性試験、撥水性試験(IPA)、IPR試験、耐水圧試験)に付した。結果を表2に示す。
【0123】
実施例2~6および比較製造例1~7
製造例1で得た重合体の分散液に代えて、製造例2~6および比較製造例1~7で得た重合体の分散液を使用する以外は、実施例1と同様の手順を繰り返した。結果を表2に示す
【0124】
【産業上の利用可能性】
【0125】
本開示の含フッ素組成物には、表面処理剤としての用途がある。含フッ素組成物は、撥水剤、撥油剤、防汚剤、汚れ脱離剤、剥離剤または離型剤として使用できる。