(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】ロータリ圧縮機および冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F04C 29/12 20060101AFI20240111BHJP
F04C 18/344 20060101ALI20240111BHJP
F04C 18/32 20060101ALI20240111BHJP
F04C 18/356 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
F04C29/12 H
F04C18/344 351L
F04C18/32
F04C18/344 351Q
F04C18/356 M
(21)【出願番号】P 2022073745
(22)【出願日】2022-04-27
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】外島 隆造
(72)【発明者】
【氏名】片山 達也
(72)【発明者】
【氏名】上野 広道
(72)【発明者】
【氏名】吉良 ありさ
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-307362(JP,A)
【文献】実開昭56-094882(JP,U)
【文献】特開2019-27372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/356
F04C 18/344
F04C 18/32
F04C 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にシリンダ室(S,S1,S2)を有するシリンダ(34,34a,34b)と、
該シリンダ室(S)で偏心回転するピストン(35,35a,35b)と、
前記ピストン(35)を駆動する駆動軸(70)と、
前記シリンダ室(S,S1,S2)を吸入側空間(51)と吐出側空間(52)とに区画するブレード(37)と、
前記シリンダ(34,34a,34b)の軸方向の端部を閉塞するシリンダ端板(25,41)とを備えるロータリ圧縮機であって、
前記シリンダ端板(25,41)には、前記吐出側空間(52)と連通する吐出ポート(24,29)が形成され、
前記吐出ポート(24,29)は、前記駆動軸(70)の軸方向から見て、
該吐出ポート(24,29)の開口(24a,29a)の一部が、前記シリンダ室(S,S1,S2)内に重複し、かつ、
前記吐出ポート(24,29)の開口端面が、前記シリンダ端板(25,41)の径方向外方側に向かって傾斜するように形成される
ことを特徴とするロータリ圧縮機。
【請求項2】
前記吐出ポート(24)内の流路(24b,29b)は、
前記吐出側空間(52)側から前記開口(24a,29a)に向かう第1方向が、前記シリンダ端板(25,41)の径方向外方に向くように前記駆動軸(70)の軸方向に対して傾斜している
ことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項3】
前記シリンダ(34,34a,34b)の内周面の一部が切り欠かれた切り欠き部(45,46)を更に備え、
前記切り欠き部(45,46)は、前記流路(24b,29b)の内周面の一部を構成
し、前記第1方向に沿って形成される
ことを特徴とする請求項2に記載のロータリ圧縮機。
【請求項4】
前記開口(24a,29a)を閉塞するリード弁(33,38)と、該リード弁(33,38)を前記シリンダ端板(25,41)に固定する固定部材(33b,38b)とをさらに備え、
前記固定部材(33b,38b)は、前記開口(24a,29a)の開口端面と同一角度に傾斜して設けられる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載のロータリ圧縮機。
【請求項5】
請求項1~請求項3のいずれか1つに記載のロータリ圧縮機を備える冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロータリ圧縮機および冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリ圧縮機では、シリンダと該シリンダの上下端を閉塞するシリンダ端板とにより形成されたシリンダ室内にて冷媒が圧縮される(例えば、特許文献1)。圧縮された冷媒はシリンダ端板を貫通するポートを通って、ケーシング内の高圧空間に吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸受部を貫通する流路の高圧空間側の開口(吐出ポート)には弁が設けられており、シリンダ室で圧縮された冷媒はすべて高圧空間に吐出されず、一部は該流路内に留まる。この流路内に溜まった冷媒ガスは再膨張されるため、圧縮効率が低下するという問題があった。
【0005】
本開示の目的は、ロータリ圧縮機の圧縮効率の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、
内部にシリンダ室(S,S1,S2)を有するシリンダ(34,34a,34b)と、
該シリンダ室(S)で偏心回転するピストン(35,35a,35b)と、
前記ピストン(35,35a,35b)を駆動する駆動軸(70)と、
前記シリンダ室(S,S1,S2)を吸入側空間(51)と吐出側空間(52)とに区画するブレード(37)と、
前記シリンダ(34,34a,34b)の軸方向の端部を閉塞するシリンダ端板(25,41)とを備えるロータリ圧縮機であって、
前記シリンダ端板(25,41)には、前記吐出側空間(52)と連通する吐出ポート(24,29)が形成され、
前記吐出ポート(24,29)は、前記駆動軸(70)の軸方向から見て、
該吐出ポート(24,29)の開口(24a,29a)の一部が、前記シリンダ室(S,S1,S2)内に重複し、かつ、
前記吐出ポート(24,29)の開口端面が、前記シリンダ端板(25,41)の径方向外方側に向かって傾斜するように形成される。
【0007】
第1の態様では、吐出ポート(24,29)の開口(24a,29a)の端面が傾斜するように形成されることで、吐出ポート(24,29)内の容積を減らすことができる。このことにより、吐出ポート(24,29)内に滞留する冷媒ガス量を抑えることができる結果、シリンダ室(S,S1,S2)内で再膨張される冷媒ガス量を低減でき、ひいてはロータリ圧縮機の圧縮効率の低下を抑えることができる。加えて、開口(24a,29a)の開口端面が、シリンダ端板(25,41)の径方向外方側に向くように傾斜していることで、シリンダ端板(25,41)において、吐出ポート(24)よりも径方向内方側の部分を肉厚にできる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、
前記吐出ポート(24)内の流路(24b,29b)は、
前記吐出側空間(52)側から前記開口(24a,29a)に向かう第1方向が、前記シリンダ端板(25,41)の径方向外方に向くように前記駆動軸(70)の軸方向に対して傾斜している。
【0009】
第2の態様では、流路(24b,29b)の第1方向を傾斜させることで、容易にシリンダ端板(25,41)の吐出ポート(24,29)が配置される位置よりも径方向内径寄りを肉厚にできる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第2の態様において、
前記シリンダ(34,34a,34b)の内周面の一部が切り欠かれた切り欠き部(45,46)を更に備え、
前記切り欠き部(45,46)は、前記流路(24b,29b)の内周面の一部を構成する。
【0011】
第3の態様では、切り欠き部(45,46)を設けることで、流路(24b,29b)の幅を十分に確保でき、吐出ポート(24,29)内を流通する冷媒流量の低下を抑えることができる。その結果、ロータリ圧縮機の圧縮効率の低下を抑制できる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、
前記開口(24a,29a)を閉塞するリード弁(33,38)と、該リード弁(33,38)を前記シリンダ端板(25,41)に固定する固定部材(33b,38b)とをさらに備え、
前記固定部材(33b,38b)は、前記開口(24a,29a)の開口端面と同一角度に傾斜して設けられる。
【0013】
第4の態様では、固定部材(33b,38b)が吐出ポート(24,29)の開口端面と同じ角度に傾斜しているため、リード弁(33,38)のねじれを抑制できる。その結果、リード弁(33,38)と開口(24a,29a)とのシール性が向上し、吐出ポート(24,29)からの冷媒漏れを抑制できる。
【0014】
本開示の第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つのロータリ圧縮機を備える冷凍装置である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態に係る冷凍装置の配管系統図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るロータリ圧縮機の縦断面図である。
【
図3】
図3は、ロータリ圧縮機の圧縮機構の横断面図である。
【
図6】
図6は、ロータリ圧縮機の一部を拡大した縦断面図である。
【
図7】
図7は、
図4のVII-VII矢視線断面の一部を拡大した図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るロータリ圧縮機の作用効果を説明するための図である。
【
図9】
図9は、変形例に係るロータリ圧縮機の縦断面である。
【
図10】
図10は、ロータリ圧縮機の一部を拡大した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下に説明する各実施形態、変形例、その他の例等の各構成は、本発明を実施可能な範囲において、組み合わせたり、一部を置換したりできる。なお、「上」及び「下」は、ロータリ圧縮機(1)を正面から見たとき(
図2参照)の方向を指す。また、図において、説明の理解を容易にするためにハッチングを省略している場合がある。
【0017】
(1)冷凍装置
図1に示すように、本例のロータリ圧縮機(1)は冷凍装置(100)に適用される。以下では、ロータリ圧縮機(1)を単に圧縮機(1)と呼ぶ場合がある。冷凍装置(100)は、例えば室内を空調する空気調和装置である。冷凍装置(100)は、室外に配置される室外ユニット(7)と、室内に配置される室内ユニット(8)とを有する。室外ユニット(7)には、圧縮機(1)、アキュームレータ(2)、四方切換弁(3)、室外熱交換器(4)、および膨張弁(5)が配置される。室内ユニット(8)には、室内熱交換器(6)が配置される。
【0018】
冷凍装置(100)は、冷媒回路(9)を備える。冷媒回路(9)には、圧縮機(1)、四方切換弁(3)、室外熱交換器(4)、膨張弁(5)、及び室内熱交換器(6)が接続される。冷媒回路(9)に冷媒が流れることで冷凍サイクルが行われる。
【0019】
冷凍装置(100)は、四方切換弁(3)を切り換えることで暖房運転と冷房運転とを行う。冷房運転では、第1冷凍サイクルが行われる。具体的に、四方切換弁(3)の第1ポート(P1)と第3ポート(P3)とが連通し、かつ、第2ポート(P2)と第4ポート(P4)とが連通することで(
図1の実線)、室内熱交換器(6)が蒸発器として機能し、室外熱交換器(4)が放熱器として機能する。暖房運転では、第2冷凍サイクルが行われる。具体的に、四方切換弁(3)の第1ポート(P1)と第4ポート(P4)とが連通し、かつ、第2ポート(P2)と第3ポート(P3)とが連通することで(
図1の破線)、室内熱交換器(6)が放熱器として機能し、室外熱交換器(4)が蒸発器として機能する。
【0020】
(2)ロータリ圧縮機
図2に示すように、ロータリ圧縮機(1)は、密閉容器(10)、電動機(20)、および圧縮機構(30)を備える。電動機(20)および圧縮機構(30)は、密閉容器(10)内に収納されている。ロータリ圧縮機(1)は、圧縮機構(30)において圧縮された冷媒が密閉容器(10)の内部空間(60)に吐出され、内部空間(60)が高圧となる所謂高圧ドーム型に構成される。
【0021】
(2-1)密閉容器
密閉容器(10)は、縦長に形成される。具体的に、密閉容器(10)は、上下方向に延びる円筒状の胴部(11)と、該胴部(11)の上端を閉塞する上部鏡板(12)と、該胴部(11)の下端を閉塞する下部鏡板(13)とを備えている。上部鏡板(12)および下部鏡板(13)は、比較的肉厚に形成されている。胴部(11)の下部には、吸入管(14)が設けられる。
【0022】
(2-2)電動機
電動機(20)は、密閉容器(10)に収容される。電動機(20)は、圧縮機構(30)を駆動する。電動機(20)内において、マウンティングプレート(44)の上側に配置される。電動機(20)は、胴部(11)の内周面に沿った筒状のステータ(21)と、該ステータ(21)の内側に配置されたロータ(22)とを有する。
【0023】
(2-3)駆動軸
駆動軸(70)は、密閉容器(10)内において、上下方向に延びるように配置されている。駆動軸(70)は、電動機(20)に駆動される。駆動軸(70)の上部は、電動機(20)のロータ(22)に連結されている。
【0024】
駆動軸(70)の下部は、上から下に向かって順に、上側軸部(70a)、偏心部(71)、及び下側軸部(70b)を有している。偏心部(71)は、駆動軸(70)の軸心に対して偏心している。偏心部(71)は、上側軸部(70a)、及び下側軸部(70b)よりも大径に形成されている。
【0025】
(2-4)圧縮機構
図2~
図4に示すように、圧縮機構(30)は、密閉容器(10)内に収容される。圧縮機構(30)は、吸入した冷媒を圧縮して密閉容器(10)の内部空間(60)へ吐出する。圧縮機構(30)は、胴部(11)内周面に固定されるマウンティングプレート(44)に固定される。具体的に、圧縮機構(30)は、マウンティングプレート(44)の下面に配置される。圧縮機構(30)は、駆動軸(70)、シリンダ(34)、フロントヘッド(41)、リアヘッド(25)、及びピストン(35)を備える。
【0026】
(2-4-1)シリンダ
シリンダ(34)は、厚肉円板状の部材である。シリンダ(34)には、シリンダボア(31)と、ブレード収容孔(32)と、吸入ポート(55)とが形成される。
【0027】
シリンダボア(31)は、シリンダ(34)を厚さ方向に貫通する円形孔である。シリンダボア(31)は、シリンダ(34)の中央部に形成される。シリンダボア(31)には、ピストン(35)が収容される。
【0028】
シリンダ(34)は、内部にシリンダ室(S)を有する。具体的に、シリンダ室(S)は、シリンダボア(31)の壁面と、ピストン(35)との間に形成される。
【0029】
ブレード収容孔(32)は、シリンダ(34)の内周面(即ち、シリンダボア(31)の外縁)からシリンダ(34)の径方向の外側へ向かって延びる孔である。このブレード収容孔(32)は、シリンダ(34)を厚さ方向に貫通する。ブレード収容孔(32)には、ブレード(37)が収容される。
【0030】
(2-4-2)フロントヘッド
フロントヘッド(41)は、シリンダ(34)の軸方向の端部を閉塞する。具体的に、フロントヘッド(41)は、シリンダ(34)の電動機(20)側の軸方向端部(
図1におけるシリンダ(34)の上端面)を閉塞する。フロントヘッド(41)は、本開示のシリンダ端板(41)の一例である。フロントヘッド(41)は、第1本体部(41a)と、上側軸受部(41b)とを備えている。第1本体部(41a)と、上側軸受部(41b)とは一体に成形されている。
【0031】
第1本体部(41a)は、概ね円形の厚板状に形成されている。第1本体部(41a)の下面は、シリンダ(34)の上端面に密着している。上側軸受部(41b)は、第1本体部(41a)から電動機(20)側(
図1における上側)へ延びる円筒状に形成されている。上側軸受部(41b)は、第1本体部(41a)の中央部に配置される。上側軸受部(41b)は、駆動軸(70)の上側軸部(70a)を回転可能に支持する。
【0032】
フロントヘッド(41)には、吐出ポート(24)が形成されている。吐出ポート(24)は、開口(24a)と吐出流路(24b)とを有する(
図6参照)。開口(24a)は、フロントヘッド(41)の上面に形成される。吐出流路(24b)は、開口(24a)から第1本体部(41a)を、その厚さ方向に貫通する。吐出流路(24b)は、本開示の流路(24b)の一例である。このように、吐出ポート(24)は、シリンダ室(S)における後述の吐出側空間(52)に連通する。吐出ポート(24)の詳細は後述する。なお、以下の説明において、「吐出ポート(24)内」とは、実質的に「吐出流路(24b)内」のことを意味する。
【0033】
吐出ポート(24)には、リード弁(33)が設けられる(
図2及び
図4参照)。リード弁(33)は、吐出ポート(24)の開口(24a)の開口端面を閉塞する。具体的に、リード弁(33)は細長の板部材(33a)と、板部材(33a)をフロントヘッド(41)の上面に固定する固定部材(33b)とを有する。
【0034】
板部材(33a)は、開口(24a)の開口端面を覆うように設けられる。固定部材(33b)は、板部材(33a)の一端に配置される。リード弁(33)は、吐出側空間(52)の冷媒の圧力が所定値以上になったときに、固定部材(33b)を支点として板部材(33a)が開口(24a)から離れることで、冷媒が吐出されるように構成される。
【0035】
(2-4-3)リアヘッド
リアヘッド(25)は、シリンダ(34)の電動機(20)とは逆側の端面(
図1におけるシリンダ(34)の下端面)を閉塞する。リアヘッド(25)は、第2本体部(25a)と、下側軸受部(25b)とを備えている。
【0036】
第2本体部(25a)は、概ね円形の厚板状に形成されている。第2本体部(25a)の上面は、シリンダ(34)の下端面に密着している。下側軸受部(25b)は、第2本体部(25a)からシリンダ(34)とは逆側(
図2における下側)へ延びる円筒状に形成されている。下側軸受部(25b)は、第2本体部(25a)の中央部に配置される。下側軸受部(25b)は、駆動軸(70)の下側軸部(70b)を回動可能に支持する。
【0037】
(2-4-4)ピストン
図3に示すように、ピストン(35)は、シリンダ(34)内に収容される。ピストン(35)は、シリンダ室(S)の内部で偏心回転する。ピストン(35)は、フロントヘッド(41)とリアヘッド(25)との双方に摺動するように構成されている。ピストン(35)は、ピストン本体(36)とブレード(37)とを有している。
【0038】
ピストン本体(36)は、環状に形成される。具体的に、ピストン本体(36)は、やや厚肉の円筒状に形成されている。駆動軸(70)の偏心部(71)が摺動可能に挿入されている。ピストン本体(36)は、駆動軸(70)が回転すると、シリンダ(34)の内周面に沿って公転するように構成されている。
【0039】
ブレード(37)は、ピストン本体(36)と一体に形成される。ブレード(37)は、ピストン本体(36)の外周面から径方向外方へ突出している。ブレード(37)は、ブレード収容孔(32)に嵌まる。ブレード(37)は、シリンダ(34)の内周面から径方向外方へ延びるブッシュ溝(53)に設けられた一対の揺動ブッシュ(54a,54b)に挟み込まれている。ブレード(37)は、ピストン本体(36)の公転時に、ピストン本体(36)の自転を規制するように構成されている。ブレード(37)は、シリンダ室(S)を吸入側空間(51)と吐出側空間(52)とに区画している。
【0040】
(3)運転動作
図5に示すように、圧縮機(1)では、電動機(20)を起動してロータ(22)を回転させると、駆動軸(70)が回転し、偏心部(71)が偏心回転する。そして、偏心部(71)の偏心回転に伴って、ピストン(35)が自転を規制しながらシリンダ(34)の内周面に沿って公転する。
【0041】
シリンダ室(S)へ冷媒を吸入する吸入行程について説明する。駆動軸(70)が回転角度が0°の状態(
図5(A)の状態)から僅かに回転すると、ピストン(35)とシリンダ(34)の接触位置が吸入ポート(55)の内周端を通過する。このとき、吸入側空間(51)への冷媒の吸入が開始される。
【0042】
冷媒の吸入は、吸入管(14)から吸入ポート(55)を介して行われる。そして、駆動軸(70)の回転角が大きくなると、次第に、吸入側空間(51)の容積が増大し、吸入側空間(51)へ吸入される冷媒量が増加する(
図5(B)~(H)の状態)。そして、この冷媒の吸入行程は、駆動軸(70)の回転角が360°になるまで続き、その後、吐出行程へと移行する。
【0043】
シリンダ室(S)で冷媒を圧縮して吐出する吐出行程について説明する。駆動軸(70)が回転角度が0°の状態(
図5(A)の状態)から僅かに回転すると、ピストン(35)とシリンダ(34)の接触位置が再び吸入ポート(55)の内周端を通過する。このとき、吸入側空間(51)における冷媒の閉じ込みが完了する。
【0044】
吸入ポート(55)に繋がっていた吸入側空間(51)が、吐出ポート(24)だけに繋がる吐出側空間(52)となる。この状態から、吐出側空間(52)における冷媒の圧縮が開始される。駆動軸(70)の回転角度が大きくなると、吐出側空間(52)の容積が減少し、吐出側空間(52)の圧力が上昇する。吐出側空間(52)の圧力が所定圧力を上回ると、リード弁(33)が開く。
【0045】
このとき、吐出側空間(52)の冷媒が、吐出ポート(24)から吐出されて、密閉容器(10)内の内部空間に流入した後、吐出管(15)を介して圧縮機(1)の外部へと吐出される。この冷媒の吐出行程は、駆動軸(70)の回転角が360°になるまで続き、その後、吸入行程へと移行する。このように、圧縮機(1)では、シリンダ室(S)において、吸入行程と吐出行程とが交互に繰り返されることによって、冷媒の圧縮動作が連続的に行われる。
【0046】
(4)吐出ポートにおける再膨張容積の課題
吐出側空間(52)で圧縮された冷媒は、リード弁(33)が開くことで、吐出ポート(24)を介してシリンダ室(S)外へ吐出されるが、圧縮された一部の冷媒は、シリンダ室(S)へ吐出されずに吐出ポート(24)内に残ったままとなる。
【0047】
具体的に説明すると、吐出工程において、駆動軸(70)の回転角度が360°になったとき、吐出側空間(52)の容積は概ねゼロになり、吐出側空間(52)で圧縮された冷媒は全量押し出された状態となるが、吐出ポート(24)内に残った冷媒は吐出ポート(24)外へ吐出しきれずに滞留する。その後、リード弁(33)が閉じて駆動軸(70)の回転が継続されることで、吐出ポート(24)内の冷媒は再びシリンダ室(S)内に流入して再膨張される。このように再膨張される冷媒ガス量が多くなると、新たに吐出側空間(52)で圧縮される冷媒量が減少する結果、圧縮効率が低下する。
【0048】
このことに対して、吐出流路(24b)の容積を小さくすれば、再膨張される冷媒ガス量を低下することができる。例えば、フロントヘッド(41)の板厚を薄くすれば、その分、吐出流路(24b)の流路長が短くなり、吐出流路(24b)の容積を小さくできる。しかし、フロントヘッド(41)の板厚が薄くなると、シリンダ室(S)内外の差圧によりフロントヘッド(41)の下面がシリンダ室(S)内側へ膨出するように変形して、ピストン(35)がフロントヘッド(41)の下面に接触してしまうおそれがある。
【0049】
また、吐出流路(24b)を細くすることで、吐出流路(24b)の容積を小さくできる。しかし、吐出流路(24b)が細くなると、吐出される冷媒流量が低下し、圧縮効率の低下を招くおそれがある。
【0050】
このような課題に対し、本開示のロータリ圧縮機(1)では、フロントヘッド(41)の変形を抑制しつつ、圧縮効率の低下を抑えるように吐出ポート(24)およびリード弁(33)を構成した。以下、本実施形態の吐出ポート(24)とリード弁(33)について詳細に説明する。
【0051】
(5-1)吐出ポート
図4の拡大図に示すように、吐出ポート(24)の開口(24a)の開口端面は、円形に形成される。吐出ポート(24)は、フロントヘッド(41)の外周寄りに位置する。具体的に、フロントヘッド(41)を上から見たときに、開口(24a)の開口端面のうち径方向外方寄りの部分は、シリンダ(34)に重複し、径方向内方寄りの部分は、シリンダ室(S)に重複する。このように、吐出ポート(24)は、駆動軸(70)の軸方向から見て、開口(24a)の一部が、シリンダ室(S)に重複するように形成される。
【0052】
図6に示すように、吐出ポート(24)の開口(24a)の開口端面は、フロントヘッド(41)の径方向外方側に向くように傾斜している。具体的に、フロントヘッド(41)の縦方向断面(
図6の拡大図参照)において、フロントヘッド(41)の下面から開口(24a)の径方向内方側の上端までの長さL1の方が、フロントヘッド(41)の下面から開口(24a)の径方向外方側の上端までの長さL2よりも長い。このことで、フロントヘッド(41)の第1本体部(41a)は、その径方向において吐出ポート(24)よりも内側の方が外側よりも肉厚に形成される。
【0053】
吐出ポート(24)の吐出流路(24b)は、その流路方向に直交する断面が円形に形成される。吐出流路(24b)は、吐出側空間(52)側から開口(24a)へ向かう方向を第1方向(
図6の一点鎖線矢印)としたときに、第1方向が駆動軸(70)に対してフロントヘッド(41)の径方向外方側に向くように駆動軸(70)の軸方向に対して傾斜している。
【0054】
吐出流路(24b)は、開口(24a)からシリンダ室(S)に向かって、シリンダ(34)の内周面の一部をえぐるように形成される。具体的に、シリンダ(34)には、その内周面の一部を切り欠いた切り欠き部(45)が形成され、この切り欠き部(45)が吐出流路(24b)の一部を構成する。切り欠き部(45)は、吐出流路(24b)の流路面積(第1方向に直交する吐出流路(24b)断面の面積)が一定になるように形成される。
【0055】
(5-3)リード弁
図7に示すようにフロントヘッド(41)には、リード弁(33)の板部材(33a)が接する設置面(42)が形成される。設置面(42)は、第1本体部(41a)の上面に形成される。設置面(42)は、開口(24a)からフロントヘッド(41)の径方向に直交する向きに延びる。
【0056】
設置面(42)は開口(24a)の開口端面と滑らかにつながるように形成される。具体的に、設置面(42)は、その断面において開口(24a)の開口端面と同一角度に傾斜している。このことにより、板部材(33a)の長手方向から見たときに、板部材(33a)は、開口(24a)の開口端面と同一角度に傾斜して設けられる。固定部材(33b)も同様に、開口(24a)の開口端面と同一角度に傾斜して設けられる。
【0057】
(6)特徴
(6-1)特徴1
本実施形態のロータリ圧縮機(1)では、フロントヘッド(41)(シリンダ端板)には、吐出側空間(52)と連通する吐出ポート(24)が形成され、駆動軸(70)の軸方向から見て、吐出ポート(24)の開口(24a)の一部が、シリンダ室(S)に重複し、かつ、開口(24a)の開口端面は、フロントヘッド(41)の径方向外方側に向くように傾斜している。
【0058】
本実施形態によると、吐出ポート(24)の開口端面が傾斜するように形成されることで、吐出ポート(24)内の容積を減らすことができる。その結果、吐出側空間(52)から内部空間(60)へ吐出しきれずに吐出ポート(24)内に滞留する冷媒ガス量を抑えることができる。このことで、吐出側空間(52)で再膨張される冷媒ガス量を抑えられるため、圧縮効率の低下を抑制できる。
【0059】
加えて、吐出ポート(24)の開口端面は、フロントヘッド(41)の径方向外方側を向くように傾斜しているため、フロントヘッド(41)の径方向において、吐出ポート(24)が配置される位置よりも径方向内方側を外方側よりも肉厚にできる。このことにより、冷媒ガスの圧力差によるフロントヘッド(41)の変形を抑制できる。
【0060】
(6-2)特徴2
本実施形態のロータリ圧縮機(1)では、吐出ポート(24)は、吐出側空間(52)と開口(24a)とを連通する吐出流路(24b)を有し、吐出流路(24b)は、吐出側空間(52)から開口(24a)へ向かう方向を第1方向としたときに、該第1方向が、駆動軸(70)に対してフロントヘッド(41)の径方向外方に向かって傾斜するように形成される。
【0061】
本実施形態によると、吐出流路(24b)を傾斜させることにより、フロントヘッド(41)の径方向において、開口(24a)が配置される位置よりも径方向内方側を径方向外方側よりもフロントヘッド(41)を肉厚にできる。このように、吐出流路(24b)を傾斜させるだけで、容易に、フロントヘッド(41)の変形および圧縮効率の低下を抑制できる。
【0062】
(6-3)特徴3
本実施形態のロータリ圧縮機(1)では、シリンダ(34)の内周面の一部が切り欠かれた切り欠き部(45)が形成される。切り欠き部(45)は、吐出流路(24b)の内周面の一部を構成する。
【0063】
切り欠き部(45)を設けることで、吐出流路(24b)の流路幅(流路方向に直交する断面の面積)を十分に確保できるため、吐出流路(24b)を流れる冷媒流量の低下を抑制できる。このことにより、圧縮効率の低下を抑制できる。
【0064】
加えて、フロントヘッド(41)下面の外周は、シリンダ(34)の上端面に接続されているため、フロントヘッド(41)の外周寄りの部分はそれ以外の部分よりも、冷媒圧力に対する強度が高い。開口(24a)の開口端面の一部分がシリンダ(34)の筒壁上に重複するように配置することで、フロントヘッド(41)の径方向において、開口(24a)よりも径方向外方側部分が比較的肉薄であっても、冷媒圧力による影響を受けにくい。このように、開口(24a)の開口端面の一部がシリンダ(34)の筒壁上に重複するように、吐出ポート(24)を設けることでフロントヘッド(41)の強度を確保できる。
【0065】
加えて、吐出ポート(24)は、開口(24a)の開口端面が傾斜し、かつ吐出流路(24b)が傾斜するように形成される。このため、吐出流路(24b)内に滞留する冷媒ガス量を抑えることができる。具体的に説明すると、
図8に示すように、開口(24a)の開口端面に対する吐出流路(24b)の流路方向の角度をθとしたときに、開口(24a)の開口端面を傾斜させずに、吐出流路(24b)を設けた場合(
図8(A))と、開口(24a)の開口端面を傾斜させて吐出流路(24b)を設けた場合(
図8(B))とを比較すると、後者の方が吐出流路(24b)の流路長を短くできる。言い換えると、後者の方が、吐出流路(24b)の容積を小さくできるため、吐出流路(24b)内に滞留する冷媒ガス量を抑えることができる。
【0066】
(6-4)特徴4
本実施形態のロータリ圧縮機(1)では、開口(24a)を閉塞するリード弁(33)と、該リード弁(33)をフロントヘッド(41)に固定する固定部材(33b)とをさらに備え、固定部材(33b)は、開口(24a)の開口端面と同一角度に傾斜して設けられる。
【0067】
板部材(33a)を開口(24a)の開口端面と同角度に傾斜させずに設けると、開口(24a)の開口端面は傾斜しているため、板部材(33a)は捩じれてしまい、開口(24a)と板部材(33a)との間に隙間が生じ、冷媒ガスが漏れるおそれがある。しかし、本実施形態によると、リード弁(33)の板部材(33a)は、開口(24a)の開口端面と同じ角度に傾斜して固定されるため、開口(24a)を隙間なくシールできる。その結果、冷媒ガスの漏れを抑えることができる。
【0068】
(7)変形例
変形例のロータリ圧縮機(1)は、2気筒の圧縮機構(30)を有する。本例の圧縮機構(30)は、フロントヘッド(41)に設けられる第1の吐出ポート(24)と、リアヘッド(25)に設けられる第2の吐出ポート(29)とを有する。以下では、上記実施形態と異なる構成について説明する。
【0069】
図9に示すように、本例の圧縮機構(30)では、フロントヘッド(41)、第1シリンダ(34a)、中間プレート(50)、第2シリンダ(34b)およびリアヘッド(25)が上から順に並んで配置される。
【0070】
第1シリンダ(34a)および第2シリンダ(34b)は、本開示のシリンダ(34a,34b)の一例である。第1シリンダ(34a)および第2シリンダ(34b)は、上記実施形態のシリンダ(34)と同一の形状であるため説明を省略する。
【0071】
フロントヘッド(41)の第1の吐出ポート(24)には、第1のリード弁(33)が設けられている。第1の吐出ポート(24)および第1のリード弁(33)は、上記実施形態の吐出ポート(24)およびリード弁(33)と同じ構成であるため説明を省略する。
【0072】
中間プレート(50)は、第1シリンダ(34a)と第2シリンダ(34b)との間に挟み込まれるように配置される。中間プレート(50)は、第1シリンダ(34a)の下端面と第2シリンダ(34b)の上端面とに密着する。
【0073】
中間プレート(50)の中央部には、中間プレート(50)を厚さ方向へ貫通する中央孔(50a)が形成されている。中間プレート(50)の中央孔(50a)には、後述する駆動軸(70)の中間連結部(78)が挿し通される。
【0074】
本例の駆動軸(70)は、上側軸部(70a)、第1偏心部(75)、中間連結部(78)、第2偏心部(76)、および下側軸部(70b)を備える。駆動軸(70)では、上側軸部(70a)と、第1偏心部(75)と、中間連結部(78)と、第2偏心部(76)と、下側軸部(70b)とが、上から下へ向かって順に配置されている。上側軸部(70a)と、第1偏心部(75)と、中間連結部(78)と、第2偏心部(76)と、下側軸部(70b)とは、互いに一体に形成されている。
【0075】
各偏心部(75,76)は、上側軸部(70a)よりも大径の円柱状の部分である。各偏心部(75,76)は、それぞれの中心軸が駆動軸(70)の回転中心軸に対して偏心している。第1偏心部(75)は、駆動軸(70)の回転中心軸に対して、第2偏心部(76)とは反対側へ偏心している。言い換えると、駆動軸(70)の回転中心軸に対する第1偏心部(75)の偏心方向は、駆動軸(70)の回転中心軸に対する第2偏心部(76)の偏心方向と180°異なっている。
【0076】
中間連結部(78)は、第1偏心部(75)と第2偏心部(76)の間に配置され、第1偏心部(75)と第2偏心部(76)を連結する。
【0077】
本例の圧縮機構(30)は、第1ピストン(35a)および第2ピストン(35b)を備える。第1ピストン(35a)及び第2ピストン(35b)は、形状、寸法、及び材質が同一の部材である。第1ピストン(35a)および第2ピストン(35b)は、本開示のピストン(35a,35b)の一例である。
【0078】
第1ピストン(35a)は、第1シリンダ(34a)に収容される。第1ピストン(35a)には、駆動軸(70)の第1偏心部(75)が挿し通される。第1ピストン(35a)は、駆動軸(70)の第1偏心部(75)が回転することで、偏心回転する。
【0079】
第1ピストン(35a)は、外周面が第1シリンダ(34a)の内周面と摺動し、一方の端面(上面)がフロントヘッド(41)の第1本体部(41a)の下面と摺動し、他方の端面(下面)が中間プレート(50)の上面と摺動する。圧縮機構(30)では、第1ピストン(35a)の外周面と第1シリンダ(34a)の内周面との間に第1シリンダ室(S1)が形成される。
【0080】
第2ピストン(35b)は、第2シリンダ(34b)に収容されて偏心回転する。第2ピストン(35b)には、駆動軸(70)の第2偏心部(76)が挿し通される。第2ピストン(35b)は、駆動軸(70)の第2偏心部(76)が回転することで、偏心回転する。
【0081】
第2ピストン(35b)は、外周面が第2シリンダ(34b)の内周面と摺動し、一方の端面(下面)がリアヘッド(25)の第2本体部(25a)の上面と摺動し、他方の端面(上面)が中間プレート(50)の下面と摺動する。圧縮機構(30)では、第2ピストン(35b)の外周面と第2シリンダ(34b)の内周面との間に第2シリンダ室(S2)が形成される。
【0082】
(2-2-3)リアヘッド
リアヘッド(25)は、第2シリンダ(34b)の電動機(20)とは逆側の端面(
図1における第2シリンダ(34b)の下端面)を閉塞する。本例のリアヘッド(25)は、本開示のシリンダ端板(25)の一例である。
【0083】
図10に示すように、第2の吐出ポート(29)の開口(29a)は、リアヘッド(25)の下面に形成される。第2の吐出ポート(29)の吐出流路(29b)は、該開口(29a)からリアヘッド(25)の第2本体部(25a)を、その厚さ方向に貫通する。第2の吐出ポート(29)の吐出流路(29b)は、本開示の流路(29b)の一例である。第2の吐出ポート(29)は、第2シリンダ室(S2)における吐出側空間(52)に連通する。
【0084】
第2の吐出ポート(29)の開口(29a)の開口端面は、円形に形成される。第2の吐出ポート(29)は、リアヘッド(25)の外周寄りに位置する。具体的に、リアヘッド(25)を下から見たときに、開口(29a)の開口端面のうち径方向外方寄りの部分は、第2シリンダ(34b)に重複し、径方向内方寄りの部分は、第2シリンダ室(S2)に重複する。このように、第2の吐出ポート(29)は、駆動軸(70)の軸方向から見て、開口(29a)の一部が、第2シリンダ室(S2)に重複するように形成される。
【0085】
第2の吐出ポート(29)の開口(29a)の開口端面は、リアヘッド(25)の径方向外方側に向くように傾斜している。具体的に、リアヘッド(25)の縦方向断面(
図10の拡大図参照)において、リアヘッド(25)の上面から第2の吐出ポート(29)の開口(29a)の径方向内方側の上端までの長さL1の方が、リアヘッド(25)の上面から第2の吐出ポート(29)の開口(29a)の径方向外方側の上端までの長さL2よりも長い。このことで、リアヘッド(25)の第2本体部(25a)は、その径方向において第2の吐出ポート(29)よりも内側の方が外側よりも肉厚に形成される。
【0086】
第2の吐出ポート(29)の吐出流路(29b)は、その流路方向に直交する断面が円形に形成される。吐出流路(29b)は、第2シリンダ(34b)の吐出側空間(52)側から開口(29a)へ向かう方向を第1方向(
図10の矢印)としたときに、第1方向が駆動軸(70)に対してリアヘッド(25)の径方向外方側に向かって傾斜するように形成される。
【0087】
第2の吐出ポート(29)の吐出流路(29b)は、第1の吐出ポート(24)と同様に、開口(29a)から第2シリンダ室(S2)に向かって、第2シリンダ(34b)の内周面の一部をえぐるように形成される。具体的に、第2シリンダ(34b)には、その内周面の一部を切り欠いた切り欠き部(46)が形成され、この切り欠き部が吐出流路(29b)の一部を構成する。
【0088】
リアヘッド(25)の第2の吐出ポート(29)に設けられる第2のリード弁(38)は、第1のリード弁(33)と同じ構成である。第2のリード弁(38)は、第2の吐出ポート(29)の開口(29a)と同じ角度に傾斜した設置面(図示省略)に配置される。このことで、第2のリード弁(38)の板部材(38a)も、第2の吐出ポート(29)の開口(29a)の開口端面と同一角度に傾斜して設けられる。第2のリード弁(38)の固定部材(38b)も同様に、開口(29a)の開口端面と同一角度に傾斜して設けられる。
【0089】
本例においても、第1の吐出ポート(24)内、および第2の吐出ポート(29)内に滞留する冷媒ガス量を抑えられるため、圧縮機構(30)の圧縮効率の低下を抑えることができる。また、第2の吐出ポート(29)の開口(29a)は、その開口端面がリアヘッド(25)の径方向外方側に向かって傾斜していること、および、開口端面の一部が第2シリンダ室(S2)内に重複するようにリアヘッド(25)の外周寄りに形成されることにより、リアヘッド(25)の板厚を比較的肉厚に形成できる。その結果、冷媒の圧力差によるリアヘッドの歪みを抑制できる。
【0090】
《その他の実施形態》
上記実施形態および上記変形例については、以下のような構成としてもよい。
【0091】
上記実施形態の吐出ポート(24)は、開口(24a)の開口端面がフロントヘッド(41)上方から見て径方向外方側に向かって傾斜するように形成されていればよく、吐出流路(24b)は傾斜していなくてもよい。上記変形例の第1の吐出ポート(24)および第2の吐出ポート(29)についても同様である。
【0092】
上記実施形態のシリンダ(34)は切り欠き部(45)を有していなくてもよい。すなわち、吐出ポート(24)の吐出流路(24b)は、シリンダ(34)の内面の一部をえぐるような構成でなくてもよい。上記変形例についても同様である。
【0093】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上説明したように、本開示は、ロータリ圧縮機および冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0095】
1 ロータリ圧縮機
24,29 吐出ポート
24a,29a 開口
24b,29b 吐出流路(流路)
25 リアヘッド(シリンダ端板)
41 フロントヘッド(シリンダ端板)
33,38 リード弁
33b,38b 固定部材
34 シリンダ
34a 第1シリンダ(シリンダ)
34b 第2シリンダ(シリンダ)
35 ピストン
35a 第1ピストン(ピストン)
35b 第2ピストン(ピストン)
37 ブレード
45,46 切り欠き部
51 吸入側空間
52 吐出側空間
70 駆動軸
100 冷凍装置
S シリンダ室
S1 第1シリンダ室(シリンダ室)
S2 第2シリンダ室(シリンダ室)