(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】ポリエチレングリコール組成物、ポリエチレングリコール誘導体組成物、それら化合物を用いた皮膚疾患予防剤、皮膚疾患重症化抑制剤、抗ウイルス加工処理剤、抗アレルギー加工処理剤および環境処理剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/77 20060101AFI20240111BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240111BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A61K31/77
A61P17/00
A61P37/08
(21)【出願番号】P 2022134983
(22)【出願日】2022-08-26
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2022071218
(32)【優先日】2022-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508249044
【氏名又は名称】株式会社ビオスタ
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】厳原 美穂
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-067526(JP,A)
【文献】医薬品 インタビューフォーム 軟膏基剤 日本薬局方 マクロゴール軟膏 ソルベース,第2版,2019年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/77
A61P 17/00
A61P 37/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレングリコールと、ポリエチレングリコールの官能基がカルボニル基であるポリエチレングリコール誘導体で下記の(化1)から(化4)の化学式で示される混合物を有効成分として含み、
前記ポリエチレングリコールおよび前記ポリエチレングリコール誘導体のそれぞれの平均分子量が200~20000
であり、前記ポリエチレングリコール誘導体の前記混合物のカルボニル価が5以上であるアトピー性皮膚炎予防剤またはアトピー性皮膚炎重症化抑制剤。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
上記において、nは2以上450以下の自然数である。
【請求項2】
ポリエチレングリコールと、ポリエチレングリコールの官能基がカルボニル基であるポリエチレングリコール誘導体で下記の(化1)から(化4)の化学式で示される混合物を有効成分として含み、
前記ポリエチレングリコールおよび前記ポリエチレングリコール誘導体のそれぞれの平均分子量が200~20000
であり、前記ポリエチレングリコール誘導体の前記混合物のカルボニル価が5以上であるアレルギー症状予防剤またはアレルギー症状重症化抑制剤。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
上記において、nは2以上450以下の自然数である。
【請求項3】
ポリエチレングリコールと、ポリエチレングリコールの官能基がカルボニル基であるポリエチレングリコール誘導体で下記の(化1)から(化4)の化学式で示される混合物を有効成分として含み、
前記ポリエチレングリコールおよび前記ポリエチレングリコール誘導体のそれぞれの平均分子量が200~4000
であり、前記ポリエチレングリコール誘導体の前記混合物のカルボニル価が5以上であるアトピー性皮膚炎予防剤またはアトピー性皮膚炎重症化抑制剤。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
上記において、nは2以上90以下の自然数である。
【請求項4】
ポリエチレングリコールと、ポリエチレングリコールの官能基がカルボニル基であるポリエチレングリコール誘導体で下記の(化1)から(化4)の化学式で示される混合物を有効成分として含み、
前記ポリエチレングリコールおよび前記ポリエチレングリコール誘導体のそれぞれの平均分子量が200~4000
であり、前記ポリエチレングリコール誘導体の前記混合物のカルボニル価が5以上であるアレルギー症状予防剤またはアレルギー症状重症化抑制剤。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
上記において、nは2以上90以下の自然数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレングリコールを有効成分とするポリエチレングリコール組成物の皮膚疾患予防剤または皮膚疾患重症化抑制剤に関する。また、蛋白の特異的認識を阻害することにより、抗アレルギー作用、抗ウイルス作用を備えたポリエチレングリコール誘導体組成物に関する。本発明によれば、抗原やウイルスの分子認識に伴う疾患、例えば、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、ウイルスによる感染症などの重症化を効果的に抑制または予防することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境の変化や複雑化、あるいは食生活の変化に伴い、アレルギー性疾患が急増している。このアレルギー性疾患は、抗原抗体反応を伴って発症するものであり、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症)、さらにはウイルスによる感染症等がある。
【0003】
身近なところではダニを抗原とするアレルギー性疾患がある。従来から人体に対する有害動物としてダニは忌避されてきたが、近年の住宅環境、特に室内の気密性の向上や暖房設備等の普及によりダニの生息に都合の良い環境が増え、それに伴ってダニが繁殖しやすくなっている。
ダニによる被害は、ダニに直接肌を刺されて痒みや腫れを生じる被害に加え、ダニの死骸や糞が室内の空気中に漂うハウスダストになり、これが抗原となって皮膚疾患や気管支喘息の如き呼吸器系疾患等の増加の一因になっている。
【0004】
また、花粉症の原因は、主にスギおよびヒノキの花粉であり、そのなかの特定蛋白質が抗原とされている。スギ花粉の抗原はCry j1、Cry j2であり、ヒノキ花粉の抗原はCha o1、Cha o2である。実際に、花粉症の患者の血液にはこれら抗原に対する抗体が産生されていることが証明されている。
【0005】
また、近年ウイルスによる感染症も注目されている。ウイルス性疾患には多様な疾患がある。皮膚または粘膜感染症を引き起こすウイルス、呼吸器感染症を引き起こすウイルス、消化管感染症を引き起こすウイルス、発疹性感染症を引き起こすウイルス、肝感染症を引き起こすウイルスなど多様なものがある。生体内ではこれらウイルスを抗原として抗原抗体反応により抗体が産生される。
【0006】
これらアレルギー性疾患に対しては、治療薬としては抗アレルギー剤やステロイド剤の投与などが行われている。しかし、決定的な治療薬は未だ確立されていない上、対症療法や治療法の前に、発症自体を抑制したり予防したりする予防措置も確立していないのが現状である。
【0007】
【文献】特開2019-178165号公報
【文献】特開2018-035119号公報
【文献】特開2007-091694号公報
【文献】特許第4787445号公報
【文献】Noma K et al. Endogenous protease-dependent replication of human influenza viruses in two MOCK cell lines. Arch Virol 1998,143:1893-1909.
【文献】Matsuyama S et al. Enhanced isolation of SARS-CoV-2 by TMPRSS2-expressing cells. PNAS 2020, 117: 7001-7003.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、アレルギー性疾患に対して、効果的な治療薬を投与して治癒を目指すことは重要であるが、その予防措置として、これら抗原に対する抗アレルギー作用を持つ組成物をあらかじめ施用しておくことにより、アレルギー性疾患の予防をしたり重症化を抑制したりすることも重要である。
【0009】
上記問題を解決するために、本発明は、ポリエチレングリコール組成物を有効成分とする皮膚疾患予防剤または皮膚疾患重症化抑制剤を提供することを目的とする。また、抗アレルギー作用、抗ウイルス作用を備え、抗原抗体反応を抑制するポリエチレングリコール誘導体組成物を有効成分とし、ポリエチレングリコール誘導体組成物の抗アレルギー作用、抗ウイルス作用を活用することにより抗原抗体反応に起因する疾患の発症を予防したりウイルスによる感染症の重症化を抑制したりする薬剤を提供することを目的とするものである。特に安全性の高い組成物を主剤に選択するものとした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明において出てくる用語の意味は下記の通りである。
本発明において「ポリエチレングリコール」を「PEG」と略記することがある。
本発明において「ポリエチレングリコール組成物」とは、ポリエチレングリコールを有効成分とするものである。
本発明において「ポリエチレングリコール誘導体組成物」とは、抗アレルギー作用を備え、抗原抗体反応を抑制するものであるが、例えば、下記の(化1)から(化4)のいずれかまたはそれらの組み合わせのポリエチレングリコール誘導体を有効成分とするものである。
本発明において「抗原抗体反応性疾患」とは、抗原抗体反応に起因して発症してしまう疾患を言い、例えば、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、ウイルスによる感染症などを含むものである。
本発明において「抑制用または予防用の組成物」とは、症状が発症する前段階において施用しておくことにより当該症状の発症が抑制されるまたは発症しても重症化を抑制し症状が軽微におさまるものであれば良く、発症自体を完璧に阻止することまでを指すものではない。
なお、本発明の目指すものは「治療用の組成物」とは異なる。つまり、治療用の組成物とは発症後に施用することによりその発症を治癒させたり改善したり緩和したりするものであるが、本発明で言う「抑制用または予防用の組成物」は、これら「治療用の組成物」とは異なるものである。
また、本発明において「抗原抗体反応性疾患の抑制用または予防用の組成物」とは医薬品のみならず、医薬部外品、化粧品、雑貨のジャンルに適用される組成物を含むものである。また、施用を受ける対象は人又は動物を含み得るものである。
【0011】
本発明にかかる皮膚疾患予防剤または皮膚疾患重症化抑制剤は、ポリエチレングリコールを有効成分とするポリエチレングリコール組成物である。
なお、上記皮膚疾患予防剤または皮膚疾患重症化抑制剤は、前記ポリエチレングリコールと、ポリエチレングリコールの官能基がカルボニル基であるポリエチレングリコール誘導体で下記の(化1)から(化4)の化学式で示される混合物を有効成分として含むものでも良い。
【0012】
本発明にかかるポリエチレングリコール誘導体組成物は、ポリエチレングリコールの官能基がカルボニル基となったポリエチレングリコール誘導体で下記の(化1)から(化4)の化学式で示されるものとの混合物を有効成分として含み、抗アレルギー作用と抗ウイルス作用のいずれかまたは双方を備えるポリエチレングリコール誘導体組成物である。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
上記において、nは2以上の自然数である。
上記した本発明にかかるポリエチレングリコール誘導体組成物が抗アレルギー作用、抗ウイルス作用を備え、抗原抗体反応を抑制する性質を備えていることは本発明の明細書中で述べられる種々の実験の結果、確認されている。
なお、ポリエチレングリコール誘導体組成物において、上記したポリエチレングリコール誘導体で下記の(化1)から(化4)の化学式で示されるものと、ポリエチレングリコールとの混合物であっても良い。
【0013】
ここで、上記皮膚疾患予防剤または皮膚疾患重症化抑制剤において、有効成分であるポリエチレングリコールの平均分子量が200~20000とする。特に、ポリエチレングリコールの平均分子量が400~4000の範囲であることが好ましいことを見出した。
なお、上記の(化1)から(化4)において、この範囲となる自然数nの値としては、
nは2以上450以下の自然数である。また好ましくは、nは2以上90以下の自然数で
ある。
同様に、抗アレルギー作用と抗ウイルス作用のいずれかまたは双方を備えるポリエチレングリコール誘導体組成物において、有効成分であるポリエチレングリコール誘導体の平均分子量が200~20000とする。特に、ポリエチレングリコール誘導体の平均分子量が400~1540の範囲であることが好ましいことを見出した。
【0014】
また、上記ポリエチレングリコール誘導体組成物において、ポリエチレングリコールとポリエチレングリコールをカルボニル化した化合物との混合物を有効成分として含む場合は、そのカルボニル価が、ブタノール法による測定値において2.5以上であることが好ましく、特に、当該混合物のカルボニル価が、ブタノール法による測定値において15以上の範囲であることが好ましいことを見出した。
【0015】
なお、ポリエチレングリコールとポリエチレングリコールをカルボニル化した化合物との混合物の濃度は組成物中の重量%において0.01%以上であることが好ましい。さらに、0.03%以上であることが好ましい。
【0016】
もともと従来からの知見として、一般的にポリエチレングリコールは無毒で安全な化合物であり、従来技術において色々な製品に用いられている。
ポリエチレングリコール(医薬品・医薬品添加物記載名称:マクロゴール)の主な用途としては、毒性が低く様々な性状があり汎用性が高いことから、医薬品分野においては、主に軟膏基剤、座薬基剤、錠剤のコーティング剤や結合剤(バインダー)として広く用いられている。なお、特定の効果効能としては、例えば、平均分子量3500-4000のポリエチレングリコールは、慢性便秘の瀉下薬として用いられることも知られている。
また、ポリエチレングリコールが化粧品に配合される場合は、皮表柔軟化による保湿作用、増粘作用などがあり、これらの効能により、スキンケア化粧品、化粧下地製品、洗顔料、洗顔石鹸、シャンプー製品、ボディソープ製品、クレンジング製品など様々な製品に汎用されている。また、口腔衛生分野においてはタバコのヤニ除去有効成分であることから薬用歯磨剤として用いられている。
【0017】
しかしながら、ポリエチレングリコールが抗原感作や抗原誘発を防ぎアトピー性皮膚炎の予防に有用な効果を備えていること、また、ポリエチレングリコールの官能基をカルボニル基で置換したポリエチレングリコール誘導体、それとポリエチレングリコールとの混合物が、抗アレルギー作用を備え、抗原抗体反応を抑制したり予防したりする効果を備えていることは広く知られていない。ポリエチレングリコール単体についてわずかに特許文献1~2が開示されているのみである。つまり、ポリエチレングリコール組成物がアトピー性皮膚炎の予防に有用な効果を備えていることや、ポリエチレングリコールの官能基をカルボニル基で置換したポリエチレングリコール誘導体およびそれとポリエチレングリコールとの混合物が抗アレルギー作用、抗ウイルス作用を備えた物質であることは公知ではなく認知されてはいない。
このように、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの官能基をカルボニル化したポリエチレングリコール誘導体が、その抗アレルギー作用、抗ウイルス作用を活用して抗原抗体反応に起因する疾患(抗原抗体反応性疾患)の重症化に対する抑制用途または予防用途に利用でき得る性質を持つ物質であることは知られていない。特に、ポリエチレングリコールやポリエチレングリコール誘導体がアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎の重症化抑制や予防に有効であることは報告されていない。また同様に、このポリエチレングリコールが、抗ウイルス作用をもち、ウイルスによる感染症に対する抑制または予防に利用でき得る性質を持つ物質であることは報告されていない。これは本発明者厳原美穂が初めて発見して認知したポリエチレングリコールやポリエチレングリコール誘導体の新たな性質である。
【0018】
本発明者である厳原美穂は、アトピー性皮膚炎を故意に起こす実験用製剤を鋭意研究する中、驚くべきことにポリエチレングリコールがアトピー性皮膚炎の重症化を効果的に抑制することを見出した。
さらに、本発明者である厳原美穂は、ポリエチレングリコールの一部をカルボニル化したポリエチレングリコール誘導体が持つ効果効能の研究を鋭意続ける中、抗アレルギー作用を持ち抗原抗体反応に影響を与え得る性質を備え、ウイルス性疾患も効果的に抑制または予防し得る組成物として利活用できることを初めて見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。本特許出願は、特に、アトピー性皮膚炎に対する予防効果を持つポリエチレングリコール単体、さらに、ポリエチレングリコールの官能基の一部をカルボニル基で置換したポリエチレングリコール誘導体として上記した(化1)から(化4)のものを特許請求の範囲とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のポリエチレングリコール組成物およびポリエチレングリコール誘導体組成物は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などの抗アレルゲン作用を備え、抗原の存在と抗体の存在により引き起こされる症状を効果的に抑制することができる。
本発明のポリエチレングリコール誘導体組成物は、抗ウイルス作用を備え、ウイルスにより引き起こされる症状を効果的に抑制することができる。
また、本発明のポリエチレングリコール組成物およびポリエチレングリコール誘導体組成物を有効成分とする疾患の抑制用または予防用の組成物は、抗原抗体反応を伴う疾患、例えば、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、ウイルスによる感染症などを効果的に抑制または予防し得る。また、繊維の抗ウイルス加工処理に用いることができる。
本発明のポリエチレングリコール誘導体とポリエチレングリコールとの混合物状態であっても効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ポリエチレングリコール組成物が抗アレルギー性を示すin vivo 実験結果を示す図である。
【
図2】M群、PEG1群、PEG2群の個体において多く見られた皮膚の状態を示す図である。
【
図3】HP群、ビオスタAD群の個体において多く見られた皮膚の状態を示す図である。
【
図4】本発明のポリエチレングリコール組成物が奏する効果が皮膚炎などの炎症に対する治療効果を有さず予防効果をもつ実験結果を示す図である。
【
図5】ダニの主要抗原に対する抗原抗体反応後に検出された抗原量を示す図である。
【
図6】加温による酸化促進が及ぼしたポリエチレングリコールへの化学的変化の確認(FT-IR)を示す図である。
【
図7】熱履歴の有無を比較したPEGの質量スペクトル並びにKendrick mass defect(KMD)プロット法を用いて可視化した図である。
【
図8】熱履歴によるPEG誘導体の推定構造を示す図である。
【
図9】抗原抗体反応の抑制実験結果を示した図である。
【
図10】抗原抗体反応抑制効果を示すポリエチレングリコール誘導体組成物の分子量範囲を求めた結果を示す図である。
【
図11】カルボニル価の測定結果を示したものである。
【
図13】ポリエチレングリコール誘導体におけるカルボニル価(COV)の影響範囲の実験結果を示す図である。
【
図14】ポリエチレングリコール誘導体の濃度が抗原に与える影響の実験結果を示す図である。
【
図15】ポリエチレングリコール誘導体(官能基別、分子量別)が抗原に与える影響の実験結果を示す図である。
【
図16】ポリエチレングリコール誘導体の濃度が抗原に与える影響の測定結果を示す図である。
【
図17】血清非存在下における検体1のインフルエンザウイルス(A/Udorn/307 /72 (H3N2))に対する不活化効果の実験結果を示す図である。
【
図18】血清存在下における検体1の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2/JP/Hiroshima-46059T/2020)に対する不活化効果の実験結果を示す図である。
【
図19】血清非存在下における検体1の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2/JP/Hiroshima-46059T/2020)に対する不活化効果の実験結果を示す図である。
【
図20】血清存在下、血清非存在下における検体2の新型コロナウイルスに対する不活化効果の実験結果を示す図である。
【
図21】検体2のQβバクテリオファージに対する抗ウイルス作用の実験結果を示す図である。
【
図22】本発明のポリエチレングリコール誘導体を抗ウイルス剤とする場合のポリエチレングリコール濃度に関する実験結果を示す図(その1)である。
【
図23】本発明のポリエチレングリコール誘導体を抗ウイルス剤とする場合のポリエチレングリコール濃度に関する実験結果を示す図(その2)である。
【
図24】本発明のポリエチレングリコール誘導体を繊維の抗ウイルス処理剤として加工した場合の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明にかかるポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール誘導体を有効成分とする組成物が物質の抗アレルゲン作用および抗ウイルス作用を備えていることを説明する。なお、以下の実施形態は一例に過ぎず本発明の技術的範囲を制限するものではない。
ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)は、エチレングリコールが重合した構造をもつ高分子化合物(ポリエーテル)であり、一般的な構造式は、HO-CH2-CH2-O-(CH2-CH2-O)n-2-CH2-CH2-OHと表されるものである。その分子量は多様であり、数百から数十万に及ぶものが多い。ここでは、平均分子量200から60000程度のものを対象とする。なお、本明細書中、マクロゴールと記載されている物質は、ポリエチレングリコールの医薬品・医薬品添加物記載名称である。例えば、製剤名で「マクロゴール400」とは平均分子量400のポリエチレングリコールの物質を意味するものとなる。
以下の説明において、ポリエチレングリコールを有効成分とする組成物を「ポリエチレングリコール組成物」としている。
ポリエチレングリコールのうち一部のポリエチレングリコールの官能基をカルボニル基で置換したポリエチレングリコール誘導体を「ポリエチレングリコール誘導体」とする。特に、ここでは、ポリエチレングリコール誘導体は、(化1)から(化4)に示したものとする。
また、ポリエチレングリコール誘導体と、ポリエチレングリコール(官能基が置換されていない)との混合物を「ポリエチレングリコール誘導体組成物」と記載していることがある。
以下、先に「ポリエチレングリコール組成物」について述べる。ポリエチレングリコールがアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患予防剤または皮膚疾患重症化抑制剤として有効であることを示している。
次に「ポリエチレングリコール誘導体」について述べる。後述するように、本発明にかかる「ポリエチレングリコール誘導体」の実証実験において、ポリエチレングリコールのうち一部のポリエチレングリコールの官能基をカルボニル基とした(化1)から(化4)の方が抗原抗体反応の抑制効果が向上し、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、ウイルスによる感染症等を予防する薬剤の有効成分として有効であることを示している。
【0022】
[ポリエチレングリコール組成物]
[ポリエチレングリコール組成物の持つ抗アレルギー性確認実験]
本発明のポリエチレングリコールを有効成分とするポリエチレングリコール組成物の持つ抗アレルギー性について述べる。
実験用マウスを用いて、本発明にかかるポリエチレングリコール組成物が抗アレルギー性を示すin vivo 実験を行った。
(対象動物)
NC/Ngaマウス(各群20匹ずつ)
(試験区分)
試験区分として下記表1を用意して実験に用いた。
【表1】
なお、アレルギー誘発試薬ピオスタADは、NC/Ngaマウスに効率的にアトピー様皮膚炎を誘発する試薬である。屋内塵性ダニ(コナヒョウヒダニ)由来の抗原を高濃度で含む、親水ワセリンを基剤とした製品である。国内製薬企業や研究機関にて利用され、ヒトの病態に近いモデルが作製できるとの評価が得られている試薬である。
【0023】
(試験方法)
イソフルラン麻酔下でNC/Ngaマウスの背部、耳介部をバリカンで毛刈りした後、除毛剤(エピラット、クラシエホームプロダクツ)を適量塗布し除毛した。除毛剤をふき取った後、約0.1gの検体をプラスチック製さじの裏部で背部及び耳介部に均一に塗布した。
引き続き、2~6回目として、以下の手順を5回繰り返した。つまり、イソフルラン麻酔下で全個体を必要に応じてバリカン、シェーバーで除毛した後、4(w/v)%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液(SDS溶液)150μlをマイクロピペットで背部及び耳介部に滴下しながらプラスチック製さじの裏部で均一に塗布した。ドライヤー(冷風)で風乾後、約1時間自然に乾燥させた。約0.1gの検体をプラスチック製さじの裏部で背部及び耳介部に均一に塗布した。全ての処理は1週間に2回のペースで行った。3週間、計6回の処理でアトピー性皮膚炎マウスを作製した。
皮膚炎誘発後(試験区分の試薬塗布後)から惹起初日をDay0とし、経日的に背部及び耳介皮膚炎重症度を目視により皮膚炎を数値化し、各群の平均を求めた。
(スコアリング)
皮膚炎誘発後(試験区分の試薬塗布後)、経日的に背部並びに耳介部の皮膚炎状況を確認し、下記表2に示す基準にてスコアリングを行った。皮膚炎誘発後、14日と21日の判定時に、背部皮膚炎スコア3以上を維持した個体の出現率を重症化率とした。
(皮膚炎重症化度合いのスコアリング)
【表2】
【0024】
(実験結果)
実験結果を表3に示す。表3は、本発明のポリエチレングリコール組成物がマウスなどの生体において抗アレルギー性を示す実験結果を示したものである。
【表3】
表3に示すように、アレルギー誘発試薬(ビオスタAD)基剤を本発明のポリエチレングリコール組成物(マクロゴール1500:ポリエチレングリコール平均分子量1500)にしたものでは重症化率が0%であったが、試験区分2の基剤を親水ワセリンにしたものでは重症化率が65%で、用いたコナヒョウヒダニが同一ロットにも関わらず、顕著な差が認められた。試験区分3のビオスタAD(市販品)では、軟膏基剤は試験区分2と同じ親水ワセリンであるものの、用いたコナヒョウヒダニのロットが異なるため、重症化率は79%であった。各試験区分の背部皮膚炎スコア平均値を見てもその差は明らかであり、この結果から、生体を用いたin vivo 実験において、本発明のポリエチレングリコール組成物は極めて良好に抗アレルギー作用を持つことが確認できた。
【0025】
[ポリエチレングリコール組成物のアレルギー性疾患の抑制・予防実験]
さらに、ポリエチレングリコール組成物が持つアレルギー性疾患の抑制・予防実験をin vivoにて行った。
上記ではアレルギー誘発試薬の基剤をポリエチレングリコール組成物に置換した組成物の抗アレルギー性をin vivo 実験において確認したが、アレルギー性疾患の抑制・予防効果を確認するため、先に生体にポリエチレングリコール組成物を予防薬として塗布しておき、その後にアレルギー誘発試薬に触れさせてアレルギー誘発をどの程度抑制するのかを確認した。
つまり、これは、アレルギー性疾患の治療効果を確認する実験ではなく、アレルギー性疾患の重症化を抑制する効果や予防する効果の持続性を確認する実験である。
(対象動物)
NC/Ngaマウス(各群10匹ずつ)
(試験区分)
試験区分として下記表4を用意して実験に用いた。
【表4】
ここで、試験に用いた各区分は以下の通りである。
ビオスタAD群
予防試薬の塗布なしに、アレルギー試薬(ビオスタAD)をマウスに塗布する。
PEG1群
予防試薬の塗布なしに、アレルギー試薬(ビオスタAD)基剤を本発明のポリエチレングリコール組成物(ポリエチレングリコール平均分子量1500)にしたものをマウスに塗布する。
PEG2群
予防試薬の塗布なしに、アレルギー試薬(ビオスタAD)基剤を本発明のポリエチレングリコール組成物(ポリエチレングリコール平均分子量1500)にしたものをマウスに塗布する。但し、ポリエチレングリコール組成物の製造ロットがPEG1群とは異なる。
HP群
予防試薬として先にマウスに親水ワセリンを塗布した後に、アレルギー試薬(ビオスタAD)をマウスに塗布する。
M群
予防試薬として先にマウスに本発明のポリエチレングリコール組成物(PEG2)を塗布した後に、アレルギー試薬(ビオスタAD)をマウスに塗布する。
【0026】
(試験方法)
試験方法は、前述した「ポリエチレングリコール組成物が抗アレルギー性を示すin vivo 実験」と同様の方法にて行った。
【0027】
(in vivo 実験結果)
ポリエチレングリコール組成物が抗アレルギー性を示すin vivo 実験結果を
図1に示す。
図1(a)は、各試験区分の結果(ビオスタAD群、PEG1群、PEG2群、HP群、M群)として、各群の皮膚炎重症度スコアの経日変化が示されている。
図1(b)は、各試験群の皮膚炎の重症化率が示されている。
図1(a)に示すように、予防試薬の塗布がない群同士(ビオスタAD群、PEG1群、PEG2群)の比較において、基剤が親水ワセリンであるビオスタAD群に対して、基剤をポリエチレングリコール(マクロゴール1500)とした群(PEG1群、PEG2群)では、マクロゴール1500の製造ロットに関わらず皮膚炎重症度スコアは顕著に低下した。
また、
図1(a)に示すように、予防試薬の塗布があった群同士(M群とHP群)の比較において、予防試薬として親水ワセリンを塗布したHP群では抗原感作や皮膚炎を予防する効果はないが、予防試薬として本発明のポリエチレングリコール組成物を塗布したM群では、皮膚炎重症度のスコアが顕著に低下しており、抗原感作や皮膚炎を予防する効果が確認できた。
また、
図1(a)に示すように、予防試薬の塗布があった群と無かった群同士の比較において、予防試薬の塗布があったM群がもっとも皮膚炎重症度のスコアが低く、あらかじめ本発明の抗原抗体反応抑制組成物を予防試薬として塗布することの優位性が確認され、皮膚炎重症化を予防する効果が確認できた。なお、若干であるが、ビオスタAD群よりもHP群の方が皮膚炎重症度のスコアが低く軽症に抑えられている。
また、
図1(b)に示すように、予防試薬としてあらかじめ本発明のポリエチレングリコール組成物を塗布したM群において皮膚炎の重症化率が0%に抑えられていることから、本発明のポリエチレングリコール組成物の持つアレルギー性疾患に対する予防効果が確認できた。また、予防試薬は塗布しないが、抗原とともに基剤としてポリエチレングリコール組成物を用いたPEG1群、PEG2群において皮膚炎の重症化率が0~10%に抑えられていることから、本発明のポリエチレングリコール組成物の持つアレルギー性疾患に対する抑制効果が確認できた。
【0028】
図1(b)に示した皮膚炎重症度を数値化したスコアでも明らかなように、M群、PEG1群、PEG2群の個体の皮膚炎重症度のスコアが顕著に低下しており、本発明のポリエチレングリコール組成物の持つアレルギー性疾患に対する抑制効果が確認できたが、参考までに各試験群を代表する皮膚炎重症度を画像で示す。
図2は、M群、PEG1群、PEG2群の個体において多く見られた皮膚の状態を示す図である。
図3は、HP群、ビオスタAD群の個体において多く見られた皮膚の状態を示す図である。
図2に示すように、M群、PEG1群、PEG2群の個体においては皮膚炎は見られず、本発明のポリエチレングリコール組成物の持つアレルギー性疾患に対する抑制効果が確認できる。一方、比較実験の結果を示す
図3のHP群、ビオスタAD群の個体においては皮膚炎が重症化した。
このように、実際のマウス個体の皮膚状態の観察からも、本発明のポリエチレングリコール組成物がアレルギー性疾患皮膚炎の重症化を抑制することは明らかである。
【0029】
次に、本発明のポリエチレングリコール組成物が奏する効果が、皮膚炎などの炎症に対する治療効果を有さず、抗原抗体反応等を抑制する予防効果を示すことを確認した。
(対象動物)
NC/Ngaマウス(各群6匹ずつ)
(試験区分)
試験区分として下記表5を用意して実験に用いた。
毛剃り後に皮膚炎誘発剤であるビオスタAD軟膏を用いてマウスの背部に皮膚炎スコア3以上の皮膚炎を誘発させた個体18匹を選抜し、皮膚炎重症度が各群で同程度になるよう、3群に分けた。
【表5】
試験区分1(PEG塗布群)
マウスごとに皮膚炎発症箇所に1回あたり100mgのポリエチレングリコールを週3回塗布して治療効果を観察した。
試験区分2(治療薬プロトピック軟膏塗布群)
マウスごとに皮膚炎発症箇所に1回あたり100mgの皮膚炎治療薬である治療薬プロトピック軟膏を塗布して治療効果を観察した。
試験区分3(治療薬投与なし。無処理コントロール群)
マウスごとに皮膚炎発症箇所に特に薬剤を投与することなく観察した。
【0030】
(実験結果)
実験結果を
図4に示した。
試験区分3の無処理コントロール群は経時的に皮膚炎が軽微に改善した。これはマウスの持つ自然治癒による改善と考えられる。
試験区分2の治療薬であるプロトピックは、顕著に皮膚炎を治癒させた。
試験区分1のPEG塗布群には治癒効果は特に認められなかった。
ポリエチレングリコール組成物には皮膚炎を消炎するなどの治療効果は特に認められないことが分かった。
【0031】
次に、上記のアレルギー性疾患皮膚炎の重症化を抑制する効果を示すポリエチレングリコール組成物の分子量範囲について述べる。
上記マウスを用いたin vivo 実験で用いたポリエチレングリコールは、三洋化成株式会社製のマクロゴール1500であった。当該マクロゴール1500は平均分子量が1500に調製されたもので、ポリエチレングリコールは分子量282から1646の範囲の混合物となっている。また、健栄製薬株式会社のマクロゴール軟膏の場合、ポリエチレングリコールは分子量400から4000の混合物となっている。これらのことからアレルギー性疾患皮膚炎の重症化を抑制する効果を示すポリエチレングリコール組成物の分子量は200あたりから4000の範囲では確認済み言える。
なお、4000よりも高い分子量のポリエチレングリコールについても効果が期待できる。
そこで、簡易的にin vitroにて抗原抗体反応に対するポリエチレングリコールによるDer f1 濃度への作用をELISA法で測定する試験を行うことにより、ポリエチレングリコールの抗原抗体反応に対して抑制効果が有効な範囲を確認した。
被験するポリエチレングリコールとして表6に示す平均分子量400から20000の5つの試験区分を用意した。
【表6】
抗原抗体反応を起こす抗原と抗体は、表7の試験区分を用意した。
【表7】
(実験方法)
実験方法は、1%BSA、0.05% Tween 20を含むPBSにて2500ng/mlの精製抗原(Der f1)を調製した。l.5ml容チューブ(1% BSAを含むPBSにて非特異的吸着防止処理済み)に50ng/ml になるように検体(10w/w%として供試)で希釈した。混合直後、供試液の抗原濃度をELISA法で測定した。コントロールは、各種精製抗原を希釈したのと同一緩衝液にて 50ng/mlに調製して実験を行った。
(測定方法、使用機器)
測定方法:サンドイッチELISA法
測定機器:VERSA max microplate reader(日本モレキュラーデバイス社製)
測定波長:405nmあるいは450nm/630nm
1検体につきn=2~3(2~3 ウェル)で測定を行った。
(実験プロトコル)
実験プロトコルは、サンドイッチELISA法に基づき、試験区分1~4それぞれに応じて適切なものとした。
抗Der f1モノクローナル抗体6A8をPBSで希釈し、96ウェルマイクロプレートの各ウェルに当該抗体を加えた。4℃で一晩静置後、洗浄液(PBST)で3回洗浄し、固相化してない抗体を除去した。
その後、非特異的吸着を阻害するため、各ウェルにブロッキング剤(1 % BSA含有PBST)を入れ、37℃にて1時間室温でインキュベートし、ブロッキングした。その後、洗浄液(PBST)で3回洗浄した。
次に、検量線用に標準品(キット付属のDer f1)、測定試料を適宜希釈し、ウェルに加え、37℃で1時間静置した。その後、洗浄液(PBST)で3回洗浄した。
次に、ビオチン標識抗Der f1モノクローナル抗体4C1を加え、37℃で1時間静置した。その後、洗浄液(PBST)で3回洗浄した。
次に、標識抗体を検出するための試薬((ストレプトアビジンペルオキシダーゼ:Streptavidin Peroxidase)を加え、37℃で30分間静置した。洗浄液(PBST)で3回洗浄した。
次に、発色試薬(ABTS:2,2'-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸]-ジアンモニウム塩)を加え、37℃で30分間反応後、吸光度を測定した。
(実験結果)
実験結果を
図5に示す。
図5は皮膚炎を発症させる原因となるダニの主要抗原に対する抗原抗体反応後に検出された抗原量を示している。試験に供した検体において抗原性を中和したことが確認された。
これらの実験から、本発明のポリエチレングリコール組成物におけるポリエチレングリコールの分子量は200~20000の範囲で発揮され得るものと確認できた。
【0032】
(ポリエチレングリコール組成物に関するまとめ)
以上の実験結果から、以下のことが導き出される。
本発明のポリエチレングリコール組成物が、NC/Ngaマウスを用いた生体のin vivo実験で皮膚炎誘発に対する抑制効果や予防効果が認められたことより、本発明のポリエチレングリコール組成物は抗アレルギー作用を備える効果が確認できる。
本発明のポリエチレングリコール組成物には、次の効果が期待できる。
・抗原自体の失活
・抗原抗体結合反応の抑制
・皮膚に塗布した抗原の浸透の抑制
・皮膚表皮に塗布した抗原が生体認識されにくくなる様な作用
・軟膏類塗布時の違和感の緩和
【0033】
[ポリエチレングリコール誘導体]
次に、ポリエチレングリコール誘導体について述べる。
本発明にかかるポリエチレングリコール誘導体は、一部のポリエチレングリコールの官能基をカルボニル基としたもので(化1)から(化4)に示したものを有効成分とし、ポリエチレングリコールとの混合物(つまり、ポリエチレングリコールの官能基がカルボニル基であるものとポリエチレングリコールとの混合物)である。
ポリエチレングリコール誘導体の有効成分の割合において、ポリエチレングリコール組成物であるポリエチレングリコールが大きいので、上記で説明したポリエチレングリコール組成物の性質、つまり、抗原抗体反応抑制効果に基づく抗アレルギー作用については包含している。ここでは、(化1)から(化4)を有効成分とするものが発揮する優れた抗原抗体反応抑制効果に基づく抗アレルギー作用効果が奏されることを説明する。
ポリエチレングリコールは分子構造から官能基を伴うことができる。その官能基の違いにより性質や効果の程度がより優れたものとなることも考えられる。
発明者厳原美穂は、ポリエチレングリコールを有効成分とする抗原抗体反応抑制組成物を鋭意研究する中、一部のポリエチレングリコールの官能基がカルボニル基である組成物の優位性も見出した。つまり、ポリエチレングリコールがカルボニル化した化合物(ポリエチレングリコール誘導体)を有効成分としたものが、さらに優位な抗アレルギー作用を備え、抗原抗体反応を抑制する抗原抗体反応抑制組成物となり得ることを見出した。
【0034】
本発明では、一部のポリエチレングリコールの官能基をカルボニル基に置換する方法は限定されない。様々な合成方法があり得る。
ここでは、一部のポリエチレングリコールの官能基をカルボニル基に置換した化合物の有効性を確認するため、下記のポリエチレングリコールに熱履歴を与えたもので簡便に試験検体を得て、当該試験検体を用いて抗原抗体反応を示すことの基礎実験を行う。ここで、熱履歴を与えた変性で得られる可能性のある候補が(化1)から(化6)など複数あるが、後述するように、それら候補から絞り込んだ(化1)から(化4)を別途合成したものを入手調製して、化合物を特定した形で(化1)から(化4)について抗原抗体反応抑制に関する試験を行った。
【0035】
まずは、ポリエチレングリコールに熱履歴を与えたもので試験検体を得ること、そしてその試験検体を用いて基礎実験を行ったことについて説明する。
(ポリエチレングリコール誘導体組成物の官能基)
PEGのような混合系試料において、他の化合物を投与せずに熱履歴を与えることにより得られる変性は、熱分解と酸化、つまり、空気中の酸素との結合などによりカルボニル基に置換するという末端の官能基の変性しかあり得ず、そのバリエーションもある程度限られる。
図6は、加温による酸化促進が及ぼした化学的変化の確認(FT-IR)を示す図である。それぞれの試験区分1~4について、上側が加温前のFT-IRグラフ、下側が加温後のFT-IRグラフである。
図6に示すように、抗原抑制性を示す低分子量ポリエチレングリコールのFT-IRにおいて、いずれも1720cm
-1付近に特異的な吸収が認められる。この波長帯は官能基がケトン、アルデヒド、カルボン酸のC=O伸縮由来の吸収帯である。本試験においても、加温後のサンプルから同波長に吸収が認められることが分かった。つまり、ポリエチレングリコール誘導体組成物は、ポリエチレングリコール組成物中のポリエチレングリコールの一部において、加温による酸化により官能基がカルボニル基に化学的に変化していることが確認できた。
【0036】
次に、さらに官能基として置換されたカルボニル基の内容を特定する。
熱履歴によるPEGの構造変化をマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI/TOFMS、JMS-S3000、日本電子)を用いて推定した。
熱履歴を与えていないフレッシュなPEG(マクロゴール1500)を加熱撹拌(80度で50時間)したものをMALDI/TOFMSで分析した。
図7は、熱履歴の有無を比較したPEGの質量スペクトル並びにKendrick mass defect(KMD)プロット法を用いて可視化した図である。
図8は、測定結果より得られた4つの化合物の推定構造である。
これらのMALDI/TOFMSによる精密質量測定法による測定結果とKendrick mass defect(KMD)プロット法を組み合わせ、解析ソフトウェアmsRepeatFinderにより末端構造を推測した。
【0037】
これらの解析結果から、官能基は、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、メトキシ基として置換により得られた化合物として下記の(化1)から(化4)の化学式で示される化合物、さらに、その他にも理論上(化5)から(化6)の化学式で示される化合物が考えられる。官能基の置換としては、ヘテロ型、ホモ型の両者があり得る。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
上記において、nは2以上の自然数である。
【0038】
[ポリエチレングリコール誘導体組成物の持つ抗原抗体反応抑制効果確認実験]
上記したように得られた検体を用いて抗原抗体反応抑制効果を確認した。
【0039】
[表8]は、ポリエチレングリコール誘導体の組成および試験に用いた試験区分を示したものである。試験区分ごとの実験プロトコルの概略は実施例1と同様とする。
(検体)
被験するポリエチレングリコール誘導体として、[表8]に示すように、ロットの異なるポリエチレングリコール平均分子量400を3種類と平均分子量1500の1種類の4つを用意し、それぞれにおいて熱履歴の異なる3種類のものを用意した。つまり合計12個の検体とした。
【表8】
調製方法は、各種ポリエチレングリコール約5gを15mlチューブ(本体:PP、キャップ:HDPE、IWAKI)に入れ、暗条件、60°Cに設定した恒温器(DKM600、ヤマト、あるいは、MIR-162、サンヨー)内で保管した。湿度調整はしなかった。経日的に開封後に転倒混和した。0,1,2,4週間静置後、サンプルを回収し、-80°Cで保管した。加温後の検体を滅菌水で10(w/w)%に調製した。
(抗原抗体)
抗原抗体反応を起こす抗原と抗体は、表9に示すものを用意した。
【表9】
【0040】
(実験方法)
実験方法は、1% BSA-PBSTで約2500ng/ml Der f1 溶液を調製した。1% BSA-PBSで事前にコーティング処理を施し乾燥した1.5ml容チューブでDer f1 溶液を10(w/w) %ポリエチレングリコール溶液で100倍希釈したものを用意した。混合後、速やかにDer f1 濃度をELISA法で測定した。検体反復は3とした。
(測定方法、使用機器)
測定方法:サンドイッチELISA法
測定機器:MULTISKAN FC (Thermo)
測定波長:405nm
1検体につきn=2で測定を行った。
【0041】
医薬品の安定性予測に利用される苛酷試験に倣い、58.5~62.1°C(1% RH)でサンプルを保管した。薬物の分解は温度依存的にアレニウスの法則[数1]に従うものとし、試験期間を設定した。
【数1】
上記より、k60/k25=Exp(E/R*(1/(T25)-1/(T60)))=50.52と算出され、60°Cの反応速度は室温25°Cの約50倍となるため、60℃1週を室温約1年に読み替えることが可能となった。尚、化学品メーカーの多くで採用される40℃ 6か月を3年に読み替えるとの加速試験も同一条件(E:92466.4 J/mol)より算出される。
【0042】
(ポリエチレングリコール誘導体組成物の持つ抗原抗体反応抑制効果確認実験結果)
図9は抗原抗体反応の抑制実験結果を示したものである。
図9に示すように、Der f1溶液を1% BSA-PBSTで100倍希釈した場合、検出された抗原量は26.92ng/mlであった。これに対し、O_400群を除く全てのポリエチレングリコールが加温期間の長さに比例して抗原性を抑制した。O_400群は、熱履歴による化学的変化を経ていないサンプルにおいても、抗原を検出できなかった。つまり、これらポリエチレングリコール誘導体のいずれの試験区分においても優れた抗原抗体反応抑制効果が確認できた。
次に、上記の抗原抗体反応抑制効果を示すポリエチレングリコール誘導体組成物の分子量範囲を求めた。実施方法は前述の通りに行った。
図10は、抗原抗体反応抑制効果を示すポリエチレングリコール誘導体組成物の分子量範囲を求めた結果を示す図である。
図10に示すように、加温による酸化促進2週間後、平均分子量200~20000の全てのPEGにおいて、controlに対して検出されるDer f1量は顕著に減少した。即ち、抗原の不活性化が確認された。
【0043】
[カルボニル価の測定実験]
次に、ポリエチレングリコール誘導体組成物において抗原抗体反応抑制効果が向上すると見込まれるカルボニル価の範囲を確認する。
カルボニル価を測定することにより、官能基がカルボニル基になっている割合が確認できる。カルボニル価(COV)の測定は食品衛生検査指針(ブタノール法)に準じて、実施した。なお、従来のベンゼン法によるカルボニル価は、0.67×COV(ブタノール法)で求められる。
(試験区分)
表10は、カルボニル価の測定実験に用いたポリエチレングリコール誘導体組成物の試験区分を示したものである。表10に見るように、ロットと分子量の異なるポリエチレングリコールを検体とした。
【表10】
【0044】
(カルボニル価測定プロトコル)
カルボニル価測定方法は、食品衛生検査指針に準じて測定した。即ち、加温による酸化促進後の検体をメスフラスコに正しく秤量し、1-ブタノールで標線まで満たし、試験溶液を調製した。10ml試験管に試験溶液、または各濃度の2-デセナール標準溶液0.5mlを正しく量り採り、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン溶液1mlを加えて撹持した。40℃、20分間加熱後、水冷して室温に戻し、8%水酸化カリウム溶液4mlを加えて撹持した。3000rpm (1700×g)で5分間遠心した。遠心分離後、96ウェルプレートに上層を 150μl採り、450nmにおける吸光度を測定した。検体反復は2とした。カルボニル価は下記[数2]より算出した。
【数2】
ポリスチレン製96ウェルプレートに1-ブタノールが影響を及ぼさないことを事前に確認した。食品衛生検査指針では420nmの吸光度を求めるが、405nmよりも450nmの方が検量線の直線性が高いことを確認し、試験に採用した。
(使用機器)
測定機器:MULTISKAN FC (Thermo)
測定波長:450nm
1検体につきn=2で測定を行った。
【0045】
(カルボニル価の測定結果)
図11はそれらのカルボニル価の測定結果を示したものである。
図12(a)と
図12(b)は吸光度の測定で検出された検線量である。なお、
図11中のwは、加温(58.5~62.1℃、1%RH)した期間を週単位(w)で表記した数字である。
図11に示すように、すべての試験区分において、加温期間の長さに応じてカルボニル価が向上していることが確認できた。つまり、加温期間の長さに応じて官能基がカルボニル基となったポリエチレングリコールの割合が増えていることが確認できた。
【0046】
次に、ポリエチレングリコール誘導体組成物において抗原抑制性を担保し、抗アレルギー作用が向上すると見込まれるカルボニル価の範囲を確認する実験を行った。
(検体)
表11は、カルボニル価の範囲を確認する測定実験に用いたポリエチレングリコール誘導体の試験区分を示したものである。
上記で作成した各種のポリエチレングリコール誘導体から、ポリエチレングリコール400(ロット:KCM1491、富士フイルム和光純薬:以下、W_400)を使用し、下記の4つの試験区分とした。
【表11】
なお、試験区分1のカルボニル価は0.62~0.57、試験区分2のカルボニル価は13.84~14.47であった。また、試験区分3のCOV5、試験区分4のCOV2.5の調製方法はCOV15をCOV0で希釈後、滅菌水を用いて10(w/w)%溶液を調製した。
【0047】
(抗原抗体)
抗原と抗体は、[表12]~[表14]に示す3つのキットを用意した。
【表12】
【表13】
【表14】
【0048】
(実験方法)
(カルボニル価(COV)の影響の測定実験)
それぞれの試験区分を100倍希釈した際、検量線に納まるよう各種抗原を1% BSA-PBSTで希釈した。1% BSA-PBSで事前にコーティング処理を施し乾燥した1.5ml容チューブを用い、それぞれの抗原溶液をCOVの異なる10(w/w)% ポリエチレングリコール溶液で100倍希釈した。混合後、速やかに抗原濃度をELISA法で測定した。検体反復は3とした。
(ポリエチレングリコール誘導体組成物濃度の影響の測定実験)
滅菌水を用い、0.01,0.1,1及び10(w/w)% COV15溶液を調製した。100倍希釈した際、検量線に納まるよう抗原(Der f1またはDer f2)を1% BSA-PBSTで希釈した。1% BSA-PBSで事前にコーティング処理を施し乾燥した1.5ml容チューブを用いて各抗原溶液を異なる濃度のCOV15溶液で100希釈した。混合後、速やかに抗原濃度をELISA法で測定した。検体反復は3とした。
(測定方法)
各測定実験ともサンドイッチELISA法による。
(測定機器)
・測定機器: MULTISKANFC (Thermo)
・測定波長: 405nm
1検体につきn=2(2ウェル)で測定を行った。
【0049】
(カルボニル価(COV)が抗原に与える影響の測定結果)
1% BSA-PBSTで100倍希釈した抗原をcontrolとした。
図13は、ポリエチレングリコール誘導体組成物におけるカルボニル価(COV)の影響範囲の実験結果を示す図である。
実験の結果、
図13に示すように、COV15は、抗原の種類を問わず、顕著に抗原抗体反応を抑制した。カルボニル価が低下すると本抑制効果は減弱し、特にDer f1に対してはCOV5で、その効果は認められなかった。この実験結果からポリエチレングリコール誘導体において抗アレルギー作用が向上すると見込まれるカルボニル価の範囲は、COV5が下限値と考えられることが確認できた。
【0050】
(ポリエチレングリコール誘導体組成物の濃度が抗原に与える影響の測定結果)
1%BSA-PBSTで100倍希釈した抗原をcontrolとした。
図14は、ポリエチレングリコール誘導体組成物の濃度が抗原に与える影響の実験結果を示す図である。実験の結果、
図14に示すように、COV15は、10(w/w) %溶液で抗原抗体反応を顕著に抑制したが、1(w/w) %溶液ではDer f1及びDer f2に対して、その作用は認められなかった。
図11に示したように、加温8週間後のW_400のCOV(ブタノール法)は、平均で23.96 μ mol/gであった。本ポリエチレングリコールを用いた同試験において、ポリエチレングリコール誘導体組成物の濃度が10から2.5(w/w) %ではDer f2 は検出限界以下であった。1.25(w/w)%ポリエチレングリコール溶液ではcontrolに対し Der f2が51.9%検出された。
【0051】
(ポリエチレングリコール誘導体の濃度が抗原に与える影響の測定結果)
次に、被験物質として、ポリエチレングリコール誘導体の両末端の官能基がカルボキシル基となったHOOC-PEG-COOH(分子量1000)(化4)を市販のものから調製したものを用いた。つまり、熱履歴による変性物質ではなく、化合物が特定されている合成品を用いて実験した。
図15は、各種ポリエチレングリコール誘導体が抗原に与える影響の実験結果を示す図である。カルボキシル基を有するポリエチレングリコール誘導体は抗原抗体反応を顕著に抑制した。
【0052】
以上の実験により、COV5以上、特に、15以上において、抗原抗体反応抑制効果、引いては、抗アレルギー作用が向上することが確認できる。つまり、ポリエチレングリコール誘導体組成物として、COV5以上のカルボニル価を示すポリエチレングリコール誘導体組成物において、抗原抗体反応抑制効果が向上することが確認できた。
本発明のポリエチレングリコール誘導体(官能基においてカルボニル化されたポリエチレングリコール)に抗原抗体反応抑制効果が認められたことから、末端がカルボキシル基あるいはアルデヒド基に変化したポリエチレングリコール誘導体と抗原側の遊離アミノ基が反応する可能性が示唆された。
本発明のポリエチレングリコール誘導体の濃度については、0.01(w/w) %以上であれば抗原抑制効果を発揮する。
以上の実験から、本発明のポリエチレングリコール誘導体の組成物、それとポリエチレングリコールとの混合物の組成物が持つ抗原抗体反応の抑制効果、抗アレルギー作用が確認された。
【0053】
以上の基礎実験からポリエチレングリコールに熱履歴を与えて官能基が変性して生成される可能性がある化合物である(化1)から(化6)の化学式で示したポリエチレングリコール誘導体のもつ抗原抗体反応の抑制効果、抗アレルギー作用が確認されたが、この知見をもとにさらに具体的にポリエチレングリコールの置換基のうち抗原抗体反応の抑制効果、抗アレルギー作用が高い有効成分となる化学物質を絞り込んだ。
発明者厳原美穂は、数々の実験を繰り返す中、ポリエチレングリコール誘導体のうち官能基がカルボキシル基であるものが有効性が高いと見定めた。その理由としては、
図15に示した実験結果において、ポリエチレングリコール誘導体の両末端の官能基がカルボキシル基となったHOOC-PEG-COOH(分子量1000)(化4)は化合物が特定された形で抗原抗体反応の抑制効果が確認されたからである。
ポリエチレングリコール誘導体のうち少なくとも一端がカルボキシル基であるもの、または、一端がアルデヒド基であるものについて確認実験を行った。
具体的には、(化1)から(化3)の化学式で示したポリエチレングリコール誘導体を用いて実験した。
上記に行った熱履歴による変性による化合物ではなく、ターゲットとなる(化1)から(化3)の化合物を市場から入手して使用した。これら化合物は入手困難なものではなく比較的容易に入手できるものである。また、一端がアルデヒド基に置換されたポリエチレングリコール誘導体も市場から入手して使用した。
【0054】
使用した被験物質および抗原・抗体
[被験物質]
1. HO-PEG-COOH (分子量1000)(化2)
2. HO-PEG-aldehyde (分子量1000)
3. Me-PEG-COOH (分子量1000)(化3)
4. Me-PEG-aldehyde (分子量1000)
5. 減菌水(コントロール)
[抗原・抗体]
精製ダニ抗原rDer f2(アサヒフードアンドヘルスケア)
抗Der f2モノクローナル抗体15E11(富士フイルム和光)
Der f2 ELISA Kit(INDOOR biotechnologies)
精製スギ花粉抗原Cry j1(バイオダイナミクス研究所)
抗Cry j1モノクローナル抗体013(バイオダイナミクス研究所)
ペルオキシダーゼ標識 抗Cry j1モノクローナル抗体053(バイオダイナミクス研究所)
実験は前述と同様に行った。
【0055】
図16は、ポリエチレングリコール誘導体の濃度が抗原に与える影響の測定結果を示す図である。
31.7 ng/ml(Control)で検出されるべきDer f2が、各化合物が高濃度で共存する場合、検出されなくなった。特に、末端官能基がカルボキシル基である場合、0.1 (w/w) %でも検出限界以下であった。末端官能基がアルデヒド基の場合、抗原抗体抑制効果はカルボキシル基よりも減弱した。
以上より、(化1)から(化3)の化学式で示したポリエチレングリコール誘導体についても抗原抗体反応抑制効果、抗アレルギー作用が向上することが確認できた。
先に効果が確認できていた(化4)と併せれば、(化1)から(化4)の化学式で示したポリエチレングリコール誘導体についても抗原抗体反応抑制効果、抗アレルギー作用が向上することが確認できた。
【0056】
[抗ウイルス作用についての確認実験]
以上までの実験により、本発明のポリエチレングリコール誘導体について、抗原抗体反応抑制効果が確認された。ここで、発明者厳原美穂は、宿主細胞の受容体をウイルス表面の蛋白の特異的結合も抑制し得ることを想起した。そこで、発明者厳原美穂は、引き続き、本発明のポリエチレングリコール誘導体組成物について抗ウイルス作用についても確認した。
ウイルスには、エンベロープを有するものとエンベロープの無いものに大別される。いわゆる新型コロナウイルスはエンベロープを有するウイルスに分類される。エンベロープは脂溶性の外膜であり、一般には、エンベロープを有するウイルスの方がアルコール等の消毒薬への抵抗性が弱い(アルコール等の消毒薬で消毒されやすい)とされている。以下、本発明の抗原抗体反応抑制組成物はエンベロープを有するウイルスにもエンベロープの無いウイルスにも有効であることを示す。
まず、エンベロープを有するウイルスに対する不活化の実証実験から述べ、その後にエンベロープの無いウイルスに対する実証実験について述べる。
【0057】
[エンベロープを有するウイルスに対する不活化の実証実験]
エンベロープを有するウイルスに対する不活化の実証実験は以下の[表15]に示す検体、[表16]に示すウイルス、[表17]に示す供試細胞を用いて実験を行った。
【表15】
ここで、検体1の柿タンニン抽出液を用いた汎用の抗ウイルス薬 5%水溶液は市販されている代表的な抗ウイルス剤である。検体2は本発明のポリエチレングリコール誘導体組成物である。検体3は滅菌水でありコントロールである。検体2の持つ抗ウイルス作用と検体1の持つ抗ウイルス作用とを比較することにより、本発明のポリエチレングリコール誘導体組成物の優れた抗ウイルス作用を確認する。
【表16】
両ウイルスとも、エンベロープを有する。
【表17】
【0058】
[検体1のインフルエンザウイルス不活化試験]
まず、市販されている代表的な抗ウイルス剤の抗ウイルス作用を確認した。
試験前に10%FCS含有DMEMで培養した細胞を96ウェルプレートに100μlずつ分注し、CO2インキュベーター内で培養した。
試験当日、培養上清を吸引除去後、100μlDMEMを加え、再度吸引除去した。50μlDMEMを分注し、CO2インキュベーター内に保管した。
検体をウイルス溶液と9:1(容量比)で混合し、室温で30分間反応させた(本反応時、血清は存在しない)。本反応液から50μlを回収し、450μlDMEMと混合した。DMEMで10倍希釈を繰り返し、8段階希釈系を作成した。細胞毒性確認用にはウイルスを加えず、DMEMで10倍希釈を繰り返し、4段階希釈系を作成した。培養上清を吸引除去した細胞に各希釈液50μlを加え、37℃、5%CO2下で1時間感染処理を行った。上清を吸引除去し、20μg/ml Trypsin含有DMEMを100μl分注し、CO2インキュベーター内で 4日間培養した。経日的に顕微鏡下で細胞変性効果(cytopathic effect: CPE)を確認した。
細胞がウェルからはがれたことを確認後、培養上清を吸引除去し、100μl固定液(エタノール:酢酸=5:1) を加え、10分静置した。固定液を捨て、染色液(0.5%アミドブラック含有エタノール酢酸混液、エタノール:酢酸:水=45:10:45)を各ウェルに30μl分注し、ウェル全体に行き渡らせ、1分程度おいて流水で濯ぎ、ウイルス感染の有無を目視で判定した。50%感染量(TCID50/ml)は、Behrens-Karber法で算出した。
【0059】
[検体1のインフルエンザウイルス不活化試験の結果]
インフルエンザウイルスの感染実験は、上記の血清非存在下の実験プロトコルで実測した。
図17は、血清非存在下における検体1のインフルエンザウイルス(A/Udorn/307 /72 (H3N2))に対する不活化効果の実験結果を示す図である。
mockは細胞毒性を反映する。細胞障害性のない滅菌水においても検出限界の感染価が示される。
図17に示すように、コントロールである検体3(滅菌水)に対して、検体1は血清非存在下でインフルエンザウイルスに対して顕著に感染価を減少させた。また、mockの感染価の比較により、検体1の細胞障害性は滅菌水と同程度であった。即ち、細胞障害性は認められなかった。
このように、市販の代表的な抗インフルエンザ剤である検体1(柿タンニン抽出液を用いた汎用の抗ウイルス薬 5%水溶液(市販品))は、インフルエンザウイルスに対して抗ウイルス効果を発揮するものであることが確認できる。
【0060】
[検体1(市販の抗ウイルス薬)の新型コロナウイルス不活化試験]
次に、検体1(市販の抗ウイルス薬)の新型コロナウイルス不活化試験を行って、市販の代表的な抗インフルエンザ剤である検体1(柿タンニン抽出液を用いた汎用の抗ウイルス薬 5%水溶液(市販品))が持つ抗ウイルス作用が新型コロナウイルスに対してどの程度有効であるのかを確認する。
【0061】
[血清存在下の実験プロトコル]
試験前に10%FCS含有DMEMで培養した細胞を96ウェルプレートに100μlずつ分注し、CO2インキュベーター内で培養した。
検体をウイルス溶液と9:1(容量比)で混合し、室温で30分間反応させた(本反応時、血清は存在しない)。本反応液から50μlを回収し、450μl 10%FCS含有DMEMと混合した。10%FCS含有DMEMで10倍希釈を繰り返し、8段階希釈系を作成した。細胞毒性確認用にはウイルスを加えず、10%FCS含有DMEMで10倍希釈を繰り返し、4段階希釈系を作成した。
培養上清を吸引除去した細胞に各希釈液50μlを加え、37℃、5%CO2下で 1時間感染処理を行った。上清を吸引除去し、10%FCS含有DMEMを100μl分注した後、CO2インキュベーター内で4日間培養した。
【0062】
[血清非存在下の実験プロトコル]
試験前に10%FCS含有DMEMで培養した細胞を96ウェルプレートに100μlずつ分注し、CO2インキュベーター内で培養した。
試験当日、培養上清を吸引除去後、100μlDMEMを加え、再度吸引除去した。100μlDMEMを分注し、CO2インキュベーター内に保管した。
検体をウイルス溶液と9:1(容量比)で混合し、室温で30分間反応させた(本反応時、血清は存在しない)。本反応液から50μlを回収し、450μlDMEMと混合した。DMEMで10倍希釈を繰り返し、8段階希釈系を作成した。細胞毒性確認用にはウイルスを加えず、DMEMで10倍希釈を繰り返し、4段階希釈系を作成した。
培養上清を吸引除去した細胞に各希釈液50μlを加え、37℃、5%CO2下で1時間感染処理を行った。上清を吸引除去し、DMEMを100μl分注し、CO2インキュベーター内で4日間培養した。
経日的に顕微鏡下で細胞変性効果(cytopathic effect: CPE)を確認した。細胞がウェルからはがれたことを確認後、培養上清を吸引除去し、100μl固定液(エタノール:酢酸=5:1)を加え、10分静置した。固定液を捨て、アミドブラック染色液を各ウェルに30μl分注し、ウェル全体に行き渡らせ、1分程度おいて流水で濯ぎ、ウイルス感染の有無を目視で判定した。
50%感染量(TCID50/ml)は、上記したBehrens-Karber法で算出した。
【0063】
(検体1(市販の抗ウイルス薬)の新型コロナウイルス不活化試験の結果)
新型コロナウイルスの感染実験は血清存在下で成立するため、通常プロトコルに従い、10%FCS含有DMEMで希釈後、ウイルスを細胞に感染させた結果を示す。
図18は、血清存在下における検体1の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2/JP/Hiroshima-46059T/2020)に対する不活化効果の実験結果を示す図である。
図18に示すように、血清存在下での新型コロナウイルスの感染実験結果では、コントロールである検体3(滅菌水)に比べて、検体1は血清存在下で新型コロナウイルスに対して感染価はほぼ同じであり、新型コロナウイルスへの抗ウイルス効果は認められなかった。なお、すでに確認した通り、mockの感染価の比較により検体1の細胞障害性は滅菌水と同程度であり、細胞障害性は認められなかった。
このように、市販の代表的な抗インフルエンザ剤である検体1(柿タンニン抽出液を用いた汎用の抗ウイルス薬 5%水溶液(市販品))は、新型コロナウイルスに対して抗ウイルス効果、感染抑制効果は認められなかった。
【0064】
図19は、血清非存在下における検体1の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2/JP/Hiroshima-46059T/2020)に対する不活化効果の実験結果を示す図である。
図19に示すように、検体1は血清非存在下では新型コロナウイルスに対する抗ウイルス活性を示した。なお、すでに確認した通り、mockの感染価の比較により検体1の細胞障害性は滅菌水と同程度であり、細胞障害性は認められなかった。
このように、市販の代表的な抗インフルエンザ剤である検体1(柿タンニン抽出液を用いた汎用の抗ウイルス薬 5%水溶液(市販品))は、血清成分などの過剰の蛋白質がある状態では、ウイルスとの結合能が減弱する、または、結合が可逆的であると推測された。
【0065】
[検体2(ポリエチレングリコール誘導体組成物)の新型コロナウイルス不活化試験]
次に、本発明のポリエチレングリコール誘導体についての新型コロナウイルスへの抗ウイルス作用を確認した。
試験は検体1と同様に行った。
【0066】
[検体2(ポリエチレングリコール誘導体組成物)の新型コロナウイルス不活化試験の結果]
図20は、血清存在下、血清非存在下における検体2の新型コロナウイルスに対する不活化効果の実験結果を示す図である。
上記したように、mockは細胞毒性を反映する。細胞障害性がない滅菌水においても検出限界の感染価が示されている。
図20に示すように、コントロールである検体3(滅菌水)に対して、本発明の抗原抗体反応抑制組成物である検体2は血清存在下、血清非存在下いずれでも、つまり検体希釈時の血清の有無に左右されずに、新型コロナウイルスに対して感染価を有意に減少させた。なお、mockの感染価の比較により、検体2の細胞障害性は滅菌水と同程度であり、細胞障害性は認められなかった。
以上の実験から、本発明の抗原抗体反応抑制効果を有するポリエチレングリコール誘導体組成物である検体2はウイルス不活化効果をも有し、エンベロープを有する新型コロナウイルスに対して血清存在下、血清非存在下のいずれでもその効果が得られることが実証できた。尚、インフルエンザウイルスに対しても有効性は確認した。
【0067】
[エンベロープの無いウイルスに対する不活化の実証実験]
次に、エンベロープの無いウイルスに対する本発明のポリエチレングリコール誘導体組成物である検体2の抗ウイルス剤としての効果を確認する。
(Qβバクテリオファージを用いた抗ウイルス作用の実証実験)
エンベロープの無いウイルスの一例はノロウイルスがあり、バクテリオファージではQβバクテリオファージがある。ここでは、Qβバクテリオファージを用いてエンベロープの無いウイルスに対する抗ウイルス作用を確認した。なお、エンベロープが無いウイルスは、アルコールや界面活性剤に対して抵抗性があるとされており、その点においてエンベロープを有するウイルスよりも耐性が強いと言える。
実験は[表18]に示すバクテリオファージを用いた。
【表18】
(実験プロトコル)
検体をQβ溶液と9:1(容量比)で混合し、混合直後、あるいは、室温30分間反応させた。滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で10倍希釈を繰り返し、5段階希釈系を作成した。ここで事前に培養した100μl指示菌(E. coli)に各希釈液100μlを加え、混合した。ファージ感染後、半流動培地3mlを加え、平板培地へ重層した。37℃で一晩培養し、溶菌斑(プラーク) を目視で計数した。
【0068】
図21は、検体2のQβバクテリオファージに対する抗ウイルス作用(ウイルス不活化)の実験結果を示す図である。
本試験系では、ウイルス感染価は1.5×10^8 PFU/mlで検出される(コントロール)。Qβバクテリオファージと本発明のポリエチレングリコール誘導体である検体2との混合直後のものでは、ウイルス感染価は1.7×10^4 PFU/mlまで減少し、さらに、30分経過後のものでは、ウイルス感染価は検出限界以下となった。
図21に示すように、コントロールである検体3(滅菌水)に対して、Qβバクテリオファージに対して感染価を有意に減少させた。
以上の実験から、本発明のポリエチレングリコール誘導体組成物である検体2は、エンベロープの無いウイルスに対する不活化効果が得られることが実証できた。
【0069】
次に、本発明のポリエチレングリコール誘導体組成物である検体2を抗ウイルス剤とする場合の濃度について検討する。
まず、エンベロープの無いウイルスに対する抗ウイルス剤とする場合の濃度について検討した。
実験は前述の[表18]に示すエンベロープの無いウイルスを用いた。
(実験プロトコル)
検体2を滅菌水で希釈し、0.1、1、10(w/w)%水溶液を調製した。各検体をQβ溶液と9:1(容量比)で混合し、室温30分間反応させた。滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で10倍希釈を繰り返し、5段階希釈系を作成した。ここで事前に培養した100μl指示菌(E. coli)に各希釈液100 μlを加え、混合した。ファージ感染後、半流動培地3mlを加え、平板培地へ重層した。37℃で一晩培養し、溶菌斑(プラーク) を目視で計数した。
【0070】
図22は、本発明のポリエチレングリコール誘導体組成物を抗ウイルス剤とする場合のポリエチレングリコール濃度に関する実験結果を示す図である。
10%ポリエチレングリコール水溶液(10%ES1)で、ウイルス感染価は検出限界以下となった。ノロウイルス対策で推奨される5%過炭酸ナトリウムに比較しても、その抑制効果は高く、エンベロープの無いウイルスに対する不活化効果が得られることが実証できた。
【0071】
次に、本発明のポリエチレングリコール誘導体組成物である検体2をエンベロープを有するウイルスに対する抗ウイルス剤とする場合の濃度について検討する。
以下、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスと同様にエンベロープを有する代替ウイルスであるシュードモナスファージφ6を用いて代替の確認実験を行った。実験は以下の[表19]に示す検体、[表20]に示すウイルスを用いた。
【表19】
【表20】
【0072】
(実験プロトコル)
検体とφ6溶液を9:1(容量比)で混合し、室温で30分間反応させた。
10倍希釈を繰り返し、4段階希釈系を作成した。ここで事前に調製した100μl指示菌(PS)に各希釈液10μlを90μlのsPBSと混合した。10倍希釈を繰り返し、2段階希釈系を作成した。ここで事前に調製した100μl指示菌(PS)に各希釈液10 μlを加え、室温で10分間感染処理を行った。ウイルス感染後、半流動培地3mlを加え、平板培地へ重層した。室温で一晩培養し、溶菌斑(プラーク) を目視で計数した。平板培養はN=3で実施した。
【0073】
(実験結果)
図23は、本発明のポリエチレングリコール誘導体組成物を抗ウイルス剤とする場合の濃度に関する実験結果を示す図である。
官能基においてカルボニル基を有するように加温したポリエチレングリコール誘導体は、区分1,3,4のいずれの試験区分においてもφ6の感染を明確に抑制し、良好な結果を示した。その濃度は、2.5%の低濃度でもφ6の感染を明確に抑制することが分かった。
【0074】
[繊維への抗ウイルス加工処理]
次に、ポリエチレングリコール誘導体組成物を用いて繊維への抗ウイルス加工を施した場合の効果について、ISO 18184(JIS L 1922)に準じて検証した。
実験は以下の[表21]に示す検体、[表22]に示すウイルスを用いた。
【表21】
【表22】
【0075】
(繊維の抗ウイルス加工処理の効果検証実験プロトコル)
繊維を0.4g切り取り、オートクレーブ滅菌後、乾燥した。次に、0.2mlウイルス溶液を生地全体に接種し、室温で2時間静置した。次に、SCDLP培地を20ml加え、ボルテックスで撹拌抽出した。本抽出液50 μlにEMEM(イーグル最小必須培地)を450 μl加え、10倍希釈を繰り返し、6段階希釈系列を作成した。事前に準備したVeroE6/TMPRSS2細胞の培養上清を吸引除去し、希釈した検体(原液から6乗希釈)をウェル当たり100 μl 添加し、CO2インキュベーター内で37℃、1時間静置した。原液検体(上清)のみ吸引除去し、上清除去したウェルにEMEMを100 μl添加し(他は検体希釈液を入れたまま培養)、CO2インキュベーター内で37℃、3~4日間培養した。固定液を捨て、アミドブラック染色液を各ウェルに30μl分注し、ウェル全体に行き渡らせ、1分程度おいて流水で濯ぎ、ウイルス感染の有無を目視で判定した。50%感染量(TCID50/ml)は、上記したBehrens-Karber法で算出した。
【0076】
(繊維の抗ウイルス加工処理の実験結果)
図24は、本発明のポリエチレングリコール誘導体組成物を繊維の抗ウイルス処理剤として加工した場合の実験結果を示す図である。
本試験系では、ウイルス感染価は1×10^7 TCID
50/mlで検出されるところ、本発明の加工処理綿の抗ウイルス効果は、茶カテキン類加工処理綿とクレンゼ(登録商標)(綿)との間の抗ウイルス効果が得られており、有意に効果があることが分かった。
以上の検証結果から、本発明のポリエチレングリコール誘導体組成物は、繊維の抗ウイルス処理剤として利用できることが実証できた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のポリエチレングリコール組成物、ポリエチレングリコール誘導体組成物は、抗原抗体反応抑制効果を有し、抗原抗体反応に起因する疾患の抑制用、予防用組成物として広く提供することができる。抗アレルギー作用により、アトピー性皮膚炎用、アレルギー性鼻炎用、抗ウイルス用と幅広く適用できる。
また、本発明にかかるポリエチレングリコール組成物、ポリエチレングリコール誘導体組成物は、その他の薬剤、例えばステロイド剤、抗アレルギー剤、免疫抑制剤、抗炎症薬剤等の薬効成分を同時に含有させることができる。