(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】圧電発音部品
(51)【国際特許分類】
G10K 9/122 20060101AFI20240111BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G10K9/122 150
H04R17/00
(21)【出願番号】P 2022534901
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2021009308
(87)【国際公開番号】W WO2022009473
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2020118493
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】山内 政和
(72)【発明者】
【氏名】キッタヤワニチ サッハブーン
(72)【発明者】
【氏名】ズリントン ポンサコーン
(72)【発明者】
【氏名】草開 重雅
【審査官】西村 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-066819(JP,A)
【文献】特開平11-052958(JP,A)
【文献】実開平02-055297(JP,U)
【文献】特開平08-044368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 9/00- 9/22
H04R 17/00-17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動板と、
開口を有するケース本体及び前記ケース本体の開口を閉じる蓋を有し、前記ケース本体及び前記蓋によって構成された内部空間に、前記圧電振動板を格納するケースと、
前記圧電振動板と当接するように前記蓋に設けられたピン端子と、
を備え、
前記ケース本体は、前記圧電振動板の一方側の主面に対向する第1天壁部と、前記第1天壁部の端部に設けられた第1周壁部と、を有し、
前記蓋は、前記圧電振動板の他方側の主面に対向する第2天壁部と、前記第2天壁部の端部に設けられ、前記圧電振動板を保持する保持面を有する第2周壁部と、前記ケース本体の前記第1周壁部と接触する突起部と、を有し、
前記突起部は、前記第1周壁部における前記第1天壁部を向く面と当接可能な第1面と、前記第1面と前記第2周壁部とを連結し前記第1周壁部と離間している第2面と、を有
し、
前記突起部の前記第1面は、曲面状をなしている、
圧電発音部品。
【請求項2】
前記突起部の前記第2面は、前記保持面に対して平行している、請求項
1に記載の圧電発音部品。
【請求項3】
前記突起部の前記第2面は、前記保持面に向かって傾斜している、請求項
1に記載の圧電発音部品。
【請求項4】
前記突起部の前記第2面は、前記突起部の前記第1面と、前記第2周壁部の前記保持面とを連結し、
前記第2面と前記保持面とが挟む角度は、鈍角である、請求項
3に記載の圧電発音部品。
【請求項5】
前記第1周壁部における前記第1天壁部を向く面は、前記圧電振動板の2つの主面に対して傾斜しており、
前記突起部の前記第1面は、前記突起部の先端側にある先端面である、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の圧電発音部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発音部品に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電発音部品は、例えば、家庭用電化製品や火災報知設備等の民生用及び業務用電子機器や自動車等において、警報音や動作音を発する電気音響変換器として用いられている。圧電発音部品のうちには、ピンタイプと呼ばれる針状の実装端子を備えた圧電発音部品が含まれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧電振動板と、蓋と、蓋の外側に嵌合されて蓋と共に圧電振動板を格納するケース本体とを備える圧電ブザーが開示されている。このような圧電ブザーでは、圧電振動板は、蓋とケース本体とによって挟持されることで、蓋の天壁部とケースの天壁部との間に形成された内部空間に保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された圧電ブザーのような圧電発音部品は、ケース本体と接触するための、蓋の突起部の先端部分の形状に起因する蓋とケース本体との取付の安定性の低下問題により、圧電振動板の振動特性への影響について考慮されていない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みて発明されたものであり、本発明の目的は、良好な信頼性を得ることができる圧電発音部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る圧電発音部品は、圧電振動板と、開口を有するケース本体及びケース本体の開口を閉じる蓋を有し、ケース本体及び蓋によって構成された内部空間に、圧電振動板を格納するケースと、圧電振動板と当接するように蓋に設けられたピン端子と、を備え、ケース本体は、圧電振動板の一方側の主面に対向する第1天壁部と、第1天壁部の端部に設けられた第1周壁部と、を有し、蓋は、圧電振動板の他方側の主面に対向する第2天壁部と、第2天壁部の端部に設けられ、圧電振動板を保持する保持面を有する第2周壁部と、ケース本体の第1周壁部と接触する突起部と、を有し、突起部は、第1周壁部における第1天壁部を向く面と当接可能な第1面と、第1面と第2周壁部とを連結し第1周壁部と離間している第2面と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好な信頼性を得ることができる圧電発音部品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る圧電発音部品の構成を示す分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る圧電発音部品の構成を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る蓋がケース本体に取り付けられる前のケース本体及び圧電振動板の構成を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係るケース本体に取り付けられる前の蓋の一部の構成を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る蓋とケース本体との取付状態を示す拡大断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る蓋とケース本体との取付状態を示す拡大断面図である。
【
図9】第3実施形態に係る蓋とケース本体との取付状態を示す拡大断面図である。
【
図11】比較例に係る蓋とケース本体との取付状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0011】
[第1実施形態]
<圧電発音部品1>
まず、
図1及び
図2を参照しつつ、第1実施形態に係る圧電発音部品1の概要について説明する。
図1は、第1実施形態に係る圧電発音部品1の構成を説明するための分解斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る圧電発音部品1の構成を説明するための断面図である。
【0012】
圧電発音部品1は、ピンタイプの発音部品の一例である。
図1及び
図2に示すように、圧電発音部品1は、圧電振動板2と、圧電振動板2を収容するケース6と、圧電振動板2と当接することで圧電振動板2に電圧を印加する2つのピン端子5とを備える。
【0013】
ケース6は、ケース本体3と、蓋4とを有する。ケース本体3は、開口を有する。蓋4は、ケース本体3に取り付けられることで、ケース本体3の開口を閉じることができる。言い換えれば、ケース本体3及びケース本体3に取り付けられた蓋4によって、ケース6の内部空間30が構成される。圧電振動板2は、ケース本体3及び蓋4に挟まれた状態で、内部空間30に格納される。
【0014】
2つのピン端子5は、蓋4に設けられている。圧電振動板2が内部空間30に格納されている場合、2つのピン端子5は、圧電振動板2と当接する。こうして、圧電振動板2は、2つのピン端子5から印加された交流電圧によって、内部空間30において、往復振動をし、発音(鳴動)する。
【0015】
以下では、圧電振動板2、ケース本体3、蓋4及び2つのピン端子5が組み立てられて圧電発音部品1を構成した状態を「組立状態」と呼ぶことがある。
【0016】
<圧電発音部品1の詳細>
次に、
図1乃至
図4を参照しつつ、圧電発音部品1の各構成の詳細について説明する。
図3は、第1実施形態に係る蓋4がケース本体3に取り付けられる前のケース本体3及び圧電振動板2の構成を示す図である。
図4は、第1実施形態に係るケース本体3に取り付けられる前の蓋4の一部の構成を示す図である。
【0017】
(圧電振動板2)
図1及び
図2に示すように、圧電振動板2は、基板10と、振動素子20とを有する。基板10及び振動素子20のいずれも、円板状部材である。基板10の直径は、振動素子20の直径よりも大きい。また、振動素子20は、接着剤によって、基板10の一方側の主面(後述する第1基板主面11)の中央部分に貼りつけられている。
【0018】
基板10は、良導電性及びバネ弾性を有する材料、例えば弾性率が1GPa以上の金属によって構成されている。具体的には、基板10は、42アロイ、SUS(ステンレス鋼)、黄銅、リン青銅等によって構成されることが好ましい。なお、基板10の材料は、金属以外のもの、例えば弾性率が1GPa以上のガラスエポキシ基板等の樹脂系材料であってもよく、複数の材料が積層された多層構造であってもよい。
【0019】
また、基板10は、厚み方向の両側にある、第1基板主面11と、第2基板主面12とを有する。組立状態において、第1基板主面11が第1方向を向いており、第2基板主面12が第2方向を向いている。また、第1基板主面11は、2つのピン端子5のうちの1つ(後述する第2ピン端子52)と当接する。
【0020】
振動素子20は、圧電板23と、圧電板23を挟むように圧電板23の両主面に設けられている一対の電極24とを有する。圧電板23は、円板状部材である。また、圧電板23は、PZT等の圧電セラミックスによって構成されている。
【0021】
一対の電極24は、電圧を圧電板23に印加することで圧電振動板2を振動させるための円状の薄膜である。また、一対の電極24は、Ag(焼付け銀)、又は、CuやCu及びNiの合金等の金属によって構成されている。組立状態において、第1方向側に位置する電極24は、2つのピン端子5のうちの他の1つ(後述する第1ピン端子51)と当接する。第2方向に位置する電極24は、導電性接着剤によって、基板10の第1基板主面11に貼りつけられる。
【0022】
(ケース本体3)
ケース本体3は、セラミックや樹脂等の絶縁性材料によって構成されている。また、ケース本体3は、箱状をなしている。
図1及び
図2に示すように、ケース本体3は、第1天壁部31と、第1天壁部31の端部に設けられた第1周壁部32とを有する。
【0023】
第1天壁部31は、円板状をなしている。
図2に示すように、第1天壁部31は、厚み方向の両側にある、天壁主面311と、天壁主面312とを有する。組立状態において、天壁主面311が第1方向を向い、圧電振動板2の第
2基板主面
12に対向している。天壁主面312が第2方向を向いている。
【0024】
第1天壁部31の中央に、放音孔313が設けられている。放音孔313は、厚み方向にて第1天壁部31を貫通し、ケース本体3の内部と外部とを連通する。こうして、組立状態において、放音孔313は、圧電振動板2が振動するときに生じる音をケース6の外部に放出することができる。
【0025】
第1周壁部32は、円筒状をなしている。
図2に示すように、第1周壁部32は、内周面35と、外周面36と、第1天壁部31から離れた先端側に設けられた開口部33とを有する。
【0026】
内周面35は、開口部33側に位置する第1内周面351と、第1天壁部31と接続している第2内周面352と、第1内周面351及び第2内周面352を連結する連結面353とを有する。組立状態において、第2内周面352は、天壁主面311及び圧電振動板2とともに、内部空間30の第2方向側に位置する音響空間302を構成する。
【0027】
連結面353は、第2内周面352と第1内周面351との間の段差面であり、第1天壁部31と平行するように設けられている。組立状態において、連結面353は、圧電振動板2の基板10における第2基板主面12と当接する。こうして、連結面353は、後述する蓋4の保持面423とともに、圧電振動板2をその厚み方向の両側から挟むように保持することができる。
【0028】
第1内周面351は、
図3に示すように、開口部33側に設けられた爪部34と、爪部34よりも第2内周面352側に設けられた溝部354及び斜面355とを有する。爪部34は、第1内周面351の開口部33側の全周に亘るように設けられている。また、爪部34は、組立状態において、蓋4と接触する接触面341を有する。
【0029】
接触面341は、第1周壁部32における第1天壁部31を向く面である。具体的には、
図2に示すように、組立状態において、接触面341は、第1天壁部31及び圧電振動板2に対して傾斜するように設けられている。
【0030】
溝部354及び斜面355は、ニゲ部とする機能を有する。溝部354及び斜面355によって、組立状態において、蓋4の接触面341と接触する部分の以外の部分は、ケース本体3の第1周壁部32と離間するように設けられることができる。
【0031】
(蓋4)
蓋4は、例えば、ケース本体3と同様の材料、すなわちセラミックや樹脂等の絶縁性材料によって構成されている。また、蓋4は、箱状をなしている。
図2及び
図4に示すように、蓋4は、第2天壁部41と、第2天壁部41の端部に設けられた第2周壁部42と、ケース本体3の第1周壁部32と接触する突起部44とを有する。
【0032】
第2天壁部41は、円板状をなしている。
図2に示すように、第2天壁部41は、厚み方向の両側にある、底壁主面411と、底壁主面412とを有する。組立状態において、底壁主面
412が第
2方向を向い、圧電振動板2の第
1基板主面
11に対向している。底壁主面
411が第
1方向を向いている。また、第2天壁部41に、2つのピン端子5を固定するための2つの貫通孔(図示せず)が設けられている。これらの貫通孔は、厚み方向において第2天壁部41を貫通する。
【0033】
第2周壁部42は、円筒状をなしている。
図4に示すように、第2周壁部42は、内周面45と、外周面46と、第2天壁部41から離れた先端側に設けられた開口部43とを有する。また、第2周壁部42は、第2周壁部42の先端側に設けられている保持面423を有する。
【0034】
内周面45は、組立状態において、底壁主面412及び圧電振動板2とともに、内部空間30の第1方向側に位置する音響空間301を構成する。また、内周面45及び外周面46のそれぞれの先端側に、ニゲ部451及びニゲ部461が設けられている。ニゲ部451及びニゲ部461によって、組立状態において、2つのピン端子5と蓋4との干渉や、蓋4とケース本体3の第1周壁部32との干渉を回避することができる。
【0035】
保持面423は、平面状をなしている。また、保持面423は、底壁主面412に対して平行するように設けられている。組立状態において、保持面423は、圧電振動板2の基板10における第1基板主面11と当接する。こうして、保持面423は、ケース本体3の連結面353とともに、圧電振動板2をその厚み方向の両側から挟むように保持することができる。
【0036】
突起部44は、
図1に示すように、第2天壁部41の主面方向にて、第2天壁部41及び第2周壁部42よりも外周側に設けられている。組立状態において、突起部44は、ケース本体3の接触面341と接触する部分である。
図4に示すように、突起部44は、第1面441と、第2面442と、第3面443とを有する。
【0037】
第1面441は、突起部44の最も外周側に位置する先端面である。また、第1面441は、曲面状をなしている。なお、第1面441は、平面状をなしてもよい。組立状態において、第1面441は、ケース本体3の第1周壁部32に設けられた爪部34の接触面341と当接する。
【0038】
第2面442は、第1面441と、第2周壁部42とを連結する連結面である。また、第2面442は、第2周壁部42の保持面423に向かって傾斜している。組立状態において、第2面442は、ケース本体3の第1周壁部32と離間している。こうして、第2面442は、ケース本体3の第1周壁部32によって押圧されることがない。
【0039】
第3面443は、第1面441と、第2天壁部41とを連結する連結面である。また、第3面443は、第2周壁部42の保持面423に対して平行している。組立状態において、第3面443は、ケース本体3の第1周壁部32と離間している。こうして、第3面443は、ケース本体3の第1周壁部32によって押圧されることがない。
【0040】
(ピン端子5)
2つのピン端子5は、第1ピン端子51と、第2ピン端子52とを含む。第1ピン端子51及び第2ピン端子52のそれぞれは、横断面形状がほぼ円形をなしているリード線が折り曲げられることによって構成される。このような折り曲げられた形状によって、第1ピン端子51及び第2ピン端子52は、バネ性を得られている。また、リード線は、例えば、表面にSnメッキが施されたリン青銅の線材によって構成されている。
【0041】
第1ピン端子51及び第2ピン端子52のそれぞれは、蓋4の第2天壁部41に設けられた2つの貫通孔を介して、蓋4に固定される。組立状態において、第1ピン端子51及び第2ピン端子52のそれぞれは、圧電振動板2と当接して、その圧電振動板2と電気的に接続される。
【0042】
具体的には、
図2に示すように、第1ピン端子51は、圧電振動板2の第1方向側に位置する電極24と電気的に接続する。第2ピン端子52は、圧電振動板2の基板10との接続を介して、圧電振動板2の第2方向側に位置する電極24と電気的に接続する。こうして、第1ピン端子51及び第2ピン端子52は、圧電振動板2の一対の電極24に交流電圧を印加することができる。
【0043】
<蓋4とケース本体3との取付>
次に、
図3乃至
図5を参照しつつ、蓋4とケース本体3との取付について説明する。
図5は、第1実施形態に係る蓋4とケース本体3との取付状態を示す拡大断面図である。
【0044】
図5に示すように、組立状態において、蓋4は、ケース本体3に取り付けられて固定されている。また、この場合、ケース本体3及び蓋4は、圧電振動板2を挟まることで、圧電振動板2を内部空間30に保持している。このため、蓋4とケース本体3との取付は、蓋4とケース本体3との固定と、固定された蓋4及びケース本体3による圧電振動板2への保持とを含む。
【0045】
蓋4とケース本体3との取付過程において、まず、圧電振動板2の基板10の第2基板主面12をケース本体3の連結面353と接触させるように、圧電振動板2をケース本体3の連結面353に載置する。次に、蓋4の第2周壁部42の保持面423を、連結面353に載置された圧電振動板2の基板10の第1基板主面11と接触させるように、ケース本体3の開口部33を介して、蓋4をケース本体3の内部に向かって挿入する。
【0046】
ここで、
図3に示すように、蓋4がケース本体3に挿入される前、ケース本体3の連結面353に圧電振動板2が載置された場合、圧電振動板2の第1基板主面11からケース本体3の接触面341までの直線距離は、L1である。また、
図4に示すように、ケース本体3に挿入される前の蓋4では、蓋4の保持面423から突起部44の第1面441までの直線距離は、L2である。ここで、距離L2は、距離L1よりも大きい。このため、
図5に示すように、蓋4がケース本体3の内部に挿入されて圧電振動板2と当接すると、蓋4の第2周壁部42及び突起部44が、連結面353に載置された圧電振動板2の第1基板主面11と、ケース本体3の接触面341との間に嵌め込まれる。
【0047】
このような嵌込状態において、蓋4の突起部44の第1面441は、この第1面441と当接する、爪部34の接触面341からの第2方向成分を有する方向に向かう圧力を受ける。蓋4の第2周壁部42の保持面423は、この保持面423と当接する、連結面353に載置された圧電振動板2からの第1方向に向かう圧力を受ける。言い換えれば、蓋4は、爪部34の接触面341からの圧力によって、連結面353に載置された圧電振動板2に押し付けられている。それとともに、蓋4は、連結面353に載置された圧電振動板2からの、接触面341からの圧力の反力によって、爪部34の接触面341に押し付けられている。
【0048】
こうして、蓋4の第2周壁部42及び突起部44は、ケース本体3の連結面353及び接触面341によって拘束される。その結果、蓋4は、ケース本体3に対して取り付けられ、固定されている。それとともに、圧電振動板2は、蓋4及びケース本体3によって挟まれ保持されている。また、嵌込状態において、蓋4の突起部44の第1面441は、受けた圧力によって、一部が曲面状から平面状に変形している。
【0049】
<蓋4を採用する場合に係る効果>
続いて、
図5、
図6、
図11及び
図12を参考しつつ、比較例に係る蓋50がケース本体3に取り付けられた場合の応力分布と比較しながら、第1実施形態に係る蓋4がケース本体3に取り付けられた場合の応力分布を説明し、第1実施形態に係る蓋4を採用する場合の効果について説明する。
図6は、
図5の応力分布図である。
図11は、比較例に係る蓋50とケース本体3との取付状態を示す拡大断面図である。
図12は、
図11の応力分布図である。
【0050】
(比較例)
比較例に係る圧電発音部品と、第1実施形態に係る圧電発音部品1との相違は、比較例に係る圧電発音部品の蓋50の突起部54である。
図11に示すように、比較例に係る突起部54は、先端541と、第2面542と、第3面543とを有する。突起部54の先端541は、組立状態において、ケース本体3と接触する部分である。一方、第1実施形態に係る突起部44の第1面441と異なり、比較例に係る先端541は、第2面542と第3面543との交差線である。すなわち、比較例に係る先端541は、面状をなしておらず、線状をなしている。
【0051】
このように、組立状態において、比較例に係る先端541とケース本体3の接触面341との接触は、線接触である。また、ケース本体3の爪部34の接触面341の形状におけるばらつきがある場合、先端541の一部は、ケース本体3の接触面341と接触できない場合がある。このような場合、比較例に係る先端541とケース本体3の接触面341との接触は、点接触になることがある。従って、組立状態において、比較例に係る先端541とケース本体3の接触面341との接触面積は小さい。また、先端541の形状によって、比較例に係る突起部54の接触面341と接触する先端側の先端部分、すなわち、交差している第2面542及び第3面543が挟まれた先端部分の寸法も小さい。
【0052】
こうして、
図12に示すように、組立状態において、ケース本体3の接触面341からの圧力によって、比較例に係る先端541に大きな応力が発生している。また、先端541の先端部分の寸法が小さいため、先端541が受けた圧力は、突起部54の先端部分の内部において十分に拡散することができない。よって、
図12に示すように、比較例に係る突起部54の先端部分に、応力集中が発生している。こうして、比較例に係る蓋50の突起部54は、大きな内部応力によって、構成が不安定になり、構成の破壊が生じる可能性がある。このような突起部54の破壊が発生すると、突起部54は、ケース本体3の接触面341と確実に接触することができなくなる。よって、蓋50は、圧電振動板2を確実に押さえることができなくなる。その結果、圧電振動板2の固定状態が安定しないため、圧電振動板2の振動特性のばらつきが大きくなり、圧電発音部品の信頼性が低下してしまうことがある。
【0053】
(第1実施形態)
これに対して、第1実施形態に係る蓋4は、第1面441を有する突起部44を採用することで、上記した比較例に係る問題を解決している。第1実施形態に係る第1面441は、曲面状をなしている。このため、ケース本体3の爪部34の接触面341の形状に
おけるばらつきがあっても、蓋4の突起部44は、第1面441の曲面形状を利用し、第1面441と接触面341との接触箇所を調整することができる。こうして、第1面441と接触面341とは、確実に接触することができ、両者の点接触の発生を防ぐことができる。また、組立状態において、突起部44の第1面441は、ケース本体3の接触面341からの圧力によって、一部が平面状に変形している。よって、組立状態において、蓋4の突起部44の第1面441と、ケース本体3の接触面341との接触のうちの少なくとも一部は、面接触になっている。こうして、比較例に係る蓋50の先端541とケース本体3の接触面341との線又は点接触に比べて、第1実施形態に係る蓋4の第1面441とケース本体3の接触面341との接触面積が大きい。その結果、
図6に示すように、比較例に係る蓋50を採用する場合に比べて、第1実施形態に係る蓋4を採用する場合、蓋4の突起部44の第1面441に生じた応力が小さい。
【0054】
また、
図5に示すように、比較例に係る先端541と異なり、第1面441は一定の面積を有する。このため、第1面441の両側に設けられた第2面442及び第3面443によって挟まれた突起部44の先端部分の寸法は、比較例に係る第2面542及び第3面543によって挟まれた突起部54の先端部分の寸法よりも大きい。従って、比較例に比べて、第1面441が受けた圧力は、突起部44の先端部分の内部において十分に拡散することができる。この場合、
図6に示すように、第1実施形態に係る突起部44の先端部分に、応力集中が発生していない。こうして、第1実施形態に係る蓋4の突起部44は、過剰な内部応力によって、破壊することがない。よって、第1実施形態に係る蓋4の突起部44は、ケース本体3の接触面341との接触の安定性を維持することができる。よって、蓋4は、圧電振動板2を確実に押さえることができる。その結果、圧電振動板2の固定状態が安定であるため、圧電振動板2の振動特性のばらつきを軽減することができ、圧電発音部品の信頼性を向上させることが可能になっている。
【0055】
さらに、突起部44の第2面442のガイドによって、ケース本体3の接触面341からの圧力の一部は、蓋4の第2周壁部42の保持面423に向かって伝達することができる。その結果、比較例に比べて、蓋4の第2周壁部42の保持面423は、圧電振動板2に作用する力が大きくなる。従って、蓋4は、より安定かつ確実に圧電振動板2を保持することができる。その結果、圧電振動板2の振動特性のばらつきをさらに軽減することができ、圧電発音部品の信頼性の向上を実現することができる。
【0056】
このように、第1実施形では、上述した特徴を有する突起部44を採用することで、良好な信頼性を得ることができる圧電発音部品を提供することができる。
【0057】
[第2実施形態]
続いて、
図7及び
図8を参照しつつ、第2実施形態に係る蓋7とケース本体3との取付について説明する。
図7は、第2実施形態に係る蓋7とケース本体3との取付状態を示す拡大断面図である。
図8は、
図7の応力分布図である。
【0058】
なお、以下の説明では、第2実施形態の第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点、すなわち蓋7の突起部74の構成を説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については言及しない。
【0059】
図7に示すように、第1実施形態に係る蓋4の突起部44の第2面442の構成と異なり、第2実施形態に係る蓋7の突起部74の第2面742は、突起部74の第1面741と、第2周壁部72の保持面723とを連結するように設けられている。こうして、第1実施形態に係る突起部44に比べて、第2実施形態に係る突起部74は、大きくなっている。第2面742は、第2周壁部72の外周面を構成している。また、第2面742と保持面723とが挟む角度は、鈍角である。
【0060】
こうして、
図8に示すように、第2実施形態では、上述した突起部74を有する蓋7を採用することで、突起部74の第1面741が受けた、ケース本体3の接触面341からの圧力を直接的に保持面723に伝達するようにガイドすることができる。よって、蓋7の保持面723が圧電振動板2に与える保持力が大きくなるため、蓋7は、圧電振動板2を確実に保持することができる。また、突起部74の第2面742は、第2周壁部72の外周面を構成しているため、第1実施形態に係る突起部44及び突起部44の先端部分に比べて、第2実施形態に係る突起部74及び突起部74の先端部分の寸法は、大きくなっている。このため、第2実施形態に係る突起部74の強度を向上させることができる。それとともに、突起部74の第1面741が受けた圧力は、突起部74の先端部分の内部において十分に拡散することができる。その結果、第2実施形態に係る突起部74の先端部分に、応力集中の発生をより確実に軽減することができる。
【0061】
[第3実施形態]
続いて、
図9及び
図10を参照しつつ、第3実施形態に係る蓋8とケース本体3との取付について説明する。
図9は、第3実施形態に係る蓋8とケース本体3との取付状態を示す拡大断面図である。
図10は、
図9の応力分布図である。
【0062】
なお、以下の説明では、第3実施形態の第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点、すなわち蓋8の突起部84の構成を説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については言及しない。
【0063】
図9に示すように、第1実施形態に係る蓋4の突起部44の第2面442の構成と異なり、第3実施形態に係る蓋8の突起部84の第2面842は、蓋8の第2周壁部82の保持面823に対して平行するように設けられている。こうして、第1実施形態に係る突起部44に比べて、第
3実施形態に係る突起部84は、小さくなっている。一方、第
3実施形態に係る突起部84の第1面841は、第1実施形態に係る突起部44の第1面441よりも大きくなっている。
【0064】
こうして、
図10に示すように、第3実施形態では、上述した突起部84を有する蓋8を採用することで、突起部84の第1面841と、ケース本体3の接触面341と接触できる範囲は、大きくなっている。よって、蓋8に係る、ケース本体3の接触面341のばらつきを調整できる範囲が大きくなる。また、第1実施形態に係る突起部44に比べて、第3実施形態に係る突起部84は小さい。このため、組立状態において、ケース本体3と蓋8の突起部84との干渉を回避するために、ケース本体3に設けることが必要なニゲ空間は少なくなる。その結果、ケース本体3の強度を強化することができるとともに、ケース本体3の設計の自由度を向上させることができる。
【0065】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。
本発明の一実施形態に係る圧電発音部品1では、圧電振動板2と、開口を有するケース本体3及びケース本体3の開口を閉じる蓋4を有し、ケース本体3及び蓋4によって構成された内部空間30に、圧電振動板2を格納するケース6と、圧電振動板2と当接するように蓋4に設けられたピン端子5と、を備え、ケース本体3は、圧電振動板2の主面に対向する第1天壁部31と、第1天壁部31の端部に設けられた第1周壁部32と、を有し、蓋4は、圧電振動板2の別の主面に対向する第2天壁部41と、第2天壁部41の端部に設けられ、圧電振動板2を保持する保持面423を有する第2周壁部42と、ケース本体3の第1周壁部32と接触する突起部44と、を有し、突起部44は、第1周壁部32における第1天壁部31を向く面である接触面341と当接可能な第1面441と、第1面441と第2周壁部42とを連結し第1周壁部32と離間している第2面と442、を有する。
上記構成によれば、蓋とケース本体との取付の安定性を向上させることで、圧電振動板の振動特性のばらつきを軽減し、良好な信頼性を有する圧電発音部品を得ることができる。
【0066】
また、突起部44の第1面441は、曲面状又は平面状をなしてもよい。
上記構成によれば、突起部の接触ための面の面積を拡大することで、取付の安定性を向上させることができる。
【0067】
また、上記構成において、突起部44の第2面442は、保持面423に対して平行してもよい。
上記構成によれば、突起部の形状を小さく形成することで、圧電発音部品の全体の設計自由度を向上させることができる。
【0068】
また、上記構成において、突起部44の第2面442は、保持面423に向かって傾斜してもよい。
上記構成によれば、突起部の内部に生じた力を保持面に伝達させることができ、取付の安定性を向上させることができる。
【0069】
また、上記構成において、突起部44の第2面442は、突起部44の第1面441と第2周壁部42の保持面423とを連結し、第2面442と保持面423とが挟む角度は、鈍角であってもよい。
上記構成によれば、突起部の内部に生じた力を保持面に直接伝達させることで取付の安定性を向上させるとともに、突起部の強度を強化することができる。
【0070】
また、上記構成において、第1周壁部32における第1天壁部31を向く面である接触面341は、圧電振動板2の主面に対して傾斜しており、突起部44の第1面441は、突起部44の先端側にある先端面であってもよい。
上記構成によれば、圧電振動板の固定状態を安定にさせることで、圧電振動板の振動特性のばらつきを軽減し、圧電発音部品の信頼性を向上させることができる。
【0071】
なお、以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0072】
1…圧電発音部品、2…圧電振動板、3…ケース本体、4…蓋、5…ピン端子、6…ケース、10…基板、20…振動素子、23…圧電板、24…電極、30…内部空間、31…第1天壁部、32…第1周壁部、34…爪部、41…第2天壁部、42…第2周壁部、44…突起部、341…接触面、441…第1面、442…第2面