(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】軸流型のファン、圧縮機及びタービンの翼の改造方法、及び当該改造により得られる翼
(51)【国際特許分類】
F01D 9/02 20060101AFI20240111BHJP
F01D 5/14 20060101ALI20240111BHJP
F04D 29/38 20060101ALI20240111BHJP
F04D 29/54 20060101ALN20240111BHJP
F01D 25/00 20060101ALN20240111BHJP
F02C 7/00 20060101ALN20240111BHJP
【FI】
F01D9/02 101
F01D5/14
F04D29/38 A
F04D29/54 F
F01D25/00 X
F02C7/00 D
(21)【出願番号】P 2022566760
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 JP2021029885
(87)【国際公開番号】W WO2022118500
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2020200993
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 泰博
(72)【発明者】
【氏名】浜辺 正昭
(72)【発明者】
【氏名】西井 大亮
(72)【発明者】
【氏名】古川 樹生
【審査官】古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/064761(WO,A1)
【文献】特表2012-505340(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0206527(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0129515(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D9/02
5/14
F04D29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼端側チップ領域と当該翼端側チップ領域より翼中央部側に位置するミッドスパン側チップ領域とからなるチップ領域、及び、翼端側ハブ領域と当該翼端側ハブ領域より翼中央部側に位置するミッドスパン側ハブ領域とからなるハブ領域を有するベース翼部と、
前記ベース翼部の前記翼端側チップ領域及び前記翼端側ハブ領域の少なくともいずれか一方において後縁の近傍の負圧面に設けられた負圧側隆起部と、
前記ベース翼部の前記ミッドスパン側チップ領域及び前記ミッドスパン側ハブ領域の少なくともいずれか一方において後縁の近傍の正圧面に設けられた正圧側隆起部と、
から成り、
前記ベース翼部は、スパン方向の各位置において、前縁部曲線と、円弧である後縁部曲線と、前記前縁部曲線と前記後縁部曲線の間をそれぞれ延びる凹状の正圧側曲線及び凸状の負圧側曲線と、から構成されるベース翼型を具備する、軸流型のファン、圧縮機またはタービンの翼において、
前記翼は、前記負圧側隆起部及び前記正圧側隆起部のいずれも設けられていないスパン方向の領域においてはベース翼型を具備する一方、前記負圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域においては負圧面修正翼型を、前記正圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域においては正圧面修正翼型を、それぞれ具備し、
前記負圧面修正翼型は、前記負圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記前縁部曲線、前記正圧側曲線及び前記負圧側曲線と、負圧面修正後縁部曲線と、から構成され、
前記正圧面修正翼型は、前記正圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記前縁部曲線、前記正圧側曲線及び前記負圧側曲線と、正圧面修正後縁部曲線と、から構成され、
前記負圧面修正後縁部曲線は、前記負圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記後縁部曲線のうち前記後縁より正圧側曲線側の部分と、隆起部曲線と、から構成され、
前記正圧面修正後縁部曲線は、前記正圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記後縁部曲線のうち前記後縁より負圧側曲線側の部分と、隆起部曲線と、から構成され、
前記隆起部曲線は、凹状の前側曲線と、凸状の後側曲線と、から構成される、
軸流型のファン、圧縮機またはタービンの翼。
【請求項2】
前記後側曲線は、楕円または円の一部であり、前記前側曲線は、前記後側曲線と前記正圧側曲線とを滑らかに接続する曲線であることを特徴とする請求項1に記載の翼。
【請求項3】
前記後側曲線は、
長軸が、前記後縁を端点とすると共に、前記ベース翼型の前記後縁部曲線に前記後縁において接する仮想の直線と直交し、短径が、前記ベース翼型の前記後縁部曲線を構成する円弧の直径より大きい楕円の一部、または、
短軸が、前記後縁を端点とすると共に、前記ベース翼型の前記後縁部曲線に前記後縁において接する仮想の直線と直交し、長径が、前記ベース翼型の前記後縁部曲線を構成する円弧の直径より大きい楕円の一部、または、
中心が、前記ベース翼型の前記後縁部曲線を構成する円弧の中心及び前記後縁を通る直線上に位置し、直径が、前記ベース翼型の前記後縁部曲線を構成する円弧の直径より大きい円の一部
であることを特徴とする請求項2に記載の翼。
【請求項4】
前記正圧側隆起部は、スパン方向に分布する高さを有し、当該高さの分布は、前記ベース翼部のみが単独で構成する翼列の流出角が設計値を下回って極小となるスパン方向位置において最大となり、その両側で滑らかに0まで減少するような分布であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の翼。
【請求項5】
前記負圧側隆起部は、スパン方向に分布する高さを有し、当該高さの分布は、前記ベース翼部のみが単独で構成する翼列の流出角が設計値を上回って極大となるスパン方向位置において最大となり、その両側で滑らかに0まで減少するような分布であることを特徴とする請求項4に記載の翼。
【請求項6】
前記負圧側隆起部は、スパン方向に分布する高さを有し、当該高さの分布は、前記翼端側チップ領域の翼中央部側端部において0であり、そこから前記翼端側チップ領域の翼端側端部に向かって単調に増加するような分布であることを特徴とする請求項4に記載の翼。
【請求項7】
前記ハブ領域は、前記ベース翼部のハブ側端部からの距離が前記ベース翼部の全スパンの0~50%の領域であり、前記チップ領域は、前記ベース翼部のチップ側端部からの距離が前記ベース翼部の全スパンの0~50%の領域である、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の翼。
【請求項8】
軸流型のファン、圧縮機またはタービンの翼の改造方法であって、
(1)スパン方向の各位置において、前縁部曲線と、円弧である後縁部曲線と、前記前縁部曲線と前記後縁部曲線の間をそれぞれ延びる凹状の正圧側曲線及び凸状の負圧側曲線と、から構成されるベース翼型を具備し、改造の対象となるベース翼を決定するステップ
(2)前記ベース翼における流出角を適正化すべく、当該ベース翼のハブ領域及びチップ領域の少なくともいずれか一方において、後縁の近傍の正圧面に正圧側隆起
部を、後縁の近傍の負圧面に負圧側隆起
部を設けるにあたり、それぞれの隆起部を設けるべきスパン方向の領域を決定するステップ
(3)前記ベース翼のうち、前記正圧側隆起部を設けるべきスパン方向の領域の翼型を前記ベース翼型から正圧面修正翼型に、前記負圧側隆起部を設けるべきスパン方向の領域の翼型を前記ベース翼型から負圧面修正翼型に、それぞれ変更するステップ
から成り、
前記正圧面修正翼型は、前記正圧側隆起部を設けるべきスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記後縁部曲線を正圧面修正後縁部曲線に変更したものであり、
前記負圧面修正翼型は、前記負圧側隆起部を設けるべきスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記後縁部曲線を負圧面修正後縁部曲線に変更したものであり、
前記正圧面修正後縁部曲線は、前記後縁を境界として前記負圧側曲線側は前記正圧側隆起部を設けるべきスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記後縁部曲線と同一の曲線として構成され、前記正圧側曲線側は隆起部曲線として構成されており、
前記負圧面修正後縁部曲線は、前記後縁を境界として前記正圧側曲線側は前記負圧側隆起部を設けるべきスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記後縁部曲線と同一の曲線として構成され、前記負圧側曲線側は隆起部曲線として構成されており、
前記隆起部曲線は、凹状の前側曲線と、凸状の後側曲線と、から構成されている方法。
【請求項9】
前記負圧側隆起部は、スパン方向に分布する高さを有し、当該高さの分布は、前記ベース
翼のみが単独で構成する翼列の流出角が設計値を上回って極大となるスパン方向位置において最大となり、その両側で滑らかに0まで減少するような分布であることを特徴とする請求項8に記載の翼。
【請求項10】
前記チップ領域は、翼端側チップ領域と当該翼端側チップ領域より翼中央部側に位置するミッドスパン側チップ領域とからなり、前記負圧側隆起部は、スパン方向に分布する高さを有し、当該高さの分布は、前記翼端側チップ領域の翼中央部側端部において0であり、そこから前記翼端側チップ領域の翼端側端部に向かって単調に増加するような分布であることを特徴とする請求項8に記載の翼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸流型のファン、圧縮機及びタービンの翼の流出角を適正化するための改造方法、及び、当該改造により得られる翼に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばターボファンエンジンの構成要素である軸流型のファン、圧縮機及びタービンは、軸方向に配列された1または複数の段を備えており、それぞれの段は、動翼が周方向に等間隔で配置されることにより形成される動翼列と、静翼が周方向に等間隔で配置されることにより形成される静翼列とから成っている。なお、ファン及び圧縮機においては動翼列が各段の上流側に、タービンにおいては静翼列が各段の上流側に、それぞれ配置される。
【0003】
翼列(動翼列及び静翼列)を通過する作動流体(圧縮機においては空気、タービンにおいては燃焼ガス)は、隣り合う翼の間に形成された翼間流路を流れる。翼間流路は、径方向内側を流路内壁によって、径方向外側を流路外壁によって、周方向の両側を隣り合う翼の対向する翼面(正圧面及び負圧面)によって、それぞれ境界付けられている。なお、動翼列においては、通常、動翼のプラットフォームが流路内壁を、ケーシング(または、動翼の先端に設けられたチップシュラウド)が流路外壁を、それぞれ構成している。また、静翼列においては、通常、静翼の内側バンドが流路内壁を、静翼の外側バンドが流路外壁を、それぞれ構成している。
【0004】
なお、本明細書において、「翼」という用語は、動翼または静翼の全体ではなく、その一部である翼部(Aerofoil)を表すものとして用いられる。
【0005】
ところで、翼間流路内の流れは、当該翼間流路の周縁を境界付ける固体壁に沿うものとなることが理想的である。翼間流路のうち固体壁から離れた部分の流れ(主流)は、このような理想的な流れに近いものとなるが、固体壁の近傍では、粘性の影響により、理想的な流れとは異なる流れ、すなわち二次流れが生じる。二次流れが生じると、流出角が設計値からずれ、下流に配置された翼の性能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
このような二次流れに起因する流出角の設計値からのずれを是正するための設計手法として、翼のハブ領域又はチップ領域における後縁の近傍の正圧面に隆起部を設ける手法が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
一般に、翼のハブ領域及びチップ領域においては、それぞれ流路内壁及び流路外壁の近傍に生じる二次流れの影響により、翼間流路内において設計時に想定したとおりの流れの転向(曲がり)が得られず、流出角が局所的に小さくなる傾向がある。
【0008】
特許文献1で提案された手法により設計された翼では、ハブ領域又はチップ領域における後縁の近傍の正圧面に隆起部が設けられ、当該隆起部の高さのスパン方向分布は、流出角が局所的に小さくなるスパン方向位置において最大となるようなものとされている。このように、後縁の近傍の正圧面に隆起部が設けられていることで、一種のコアンダ効果により、負圧面側の流れが隆起部の後縁部に沿って正圧面側へ回り込み、流れの転向が大きくなって流出角が増大する。その結果、流出角の設計値からのずれが是正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、特許文献1で提案された手法によって設計された翼によれば、流出角が設計値と比較して局所的に小さくなるスパン方向の領域において、流出角を増大させる作用が得られる。しかしながら、隆起部に起因する流出角の増大は、隆起部が設けられた領域のみならず、その周辺の領域においても生じる。
【0011】
一般に、翼のハブ領域及びチップ領域のうち、それぞれ流路内壁及び流路外壁に極めて近い領域(それぞれ翼端側ハブ領域及び翼端側チップ領域;以下、翼端領域と総称する。)においては、二次流れの影響により、翼間流路内において設計時の想定を上回る流れの転向(曲がり)が生じ、流出角が局所的に大きくなる傾向がある。
【0012】
そのため、特許文献1で提案された手法によって設計された翼では、翼端領域において、二次流れの影響による流出角の増大と隆起部に起因する流出角の増大が重ね合わされて流出角が過大となる可能性がある。
【0013】
特許文献1で提案された手法によって設計された翼では、従来の翼(すなわち、隆起部を設けない翼)と比較して翼端領域における過大な流出角の是正を通じて、ハブ領域及びチップ領域の実質的に全域において、特に翼端側ハブ領域及び翼端側チップ領域において流出角を適正化する余地が残されている。
【0014】
本開示は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであって、ハブ領域及びチップ領域の実質的に全域において、特に翼端側ハブ領域及び翼端側チップ領域において流出角を適正化し得る翼の改造方法、及び、当該改造により得られる翼を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本開示の第1の態様の軸流型のファン、圧縮機及びタービンの翼は、翼端側チップ領域と当該翼端側チップ領域より翼中央部側に位置するミッドスパン側チップ領域とからなるチップ領域、及び、翼端側ハブ領域と当該翼端側ハブ領域より翼中央部側に位置するミッドスパン側ハブ領域とからなるハブ領域を有するベース翼部と、前記ベース翼部の前記翼端側チップ領域及び前記翼端側ハブ領域の少なくともいずれか一方において後縁の近傍の負圧面に設けられた負圧側隆起部と、前記ベース翼部の前記ミッドスパン側チップ領域及び前記ミッドスパン側ハブ領域の少なくともいずれか一方において後縁の近傍の正圧面に設けられた正圧側隆起部と、から成り、前記ベース翼部は、スパン方向の各位置において、前縁部曲線と、円弧である後縁部曲線と、前記前縁部曲線と前記後縁部曲線の間をそれぞれ延びる凹状の正圧側曲線及び凸状の負圧側曲線と、から構成されるベース翼型を具備し、前記翼は、前記負圧側隆起部及び前記正圧側隆起部のいずれも設けられていないスパン方向の領域においてはベース翼型を具備する一方、前記負圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域においては負圧面修正翼型を、前記正圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域においては正圧面修正翼型を、それぞれ具備し、前記負圧面修正翼型は、前記負圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記前縁部曲線、前記正圧側曲線及び前記負圧側曲線と、負圧面修正後縁部曲線と、から構成され、前記正圧面修正翼型は、前記正圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記前縁部曲線、前記正圧側曲線及び前記負圧側曲線と、正圧面修正後縁部曲線と、から構成され、前記負圧面修正後縁部曲線は、前記負圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記後縁部曲線のうち前記後縁より正圧側曲線側の部分と、隆起部曲線と、から構成され、前記正圧面修正後縁部曲線は、前記正圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記後縁部曲線のうち前記後縁より負圧側曲線側の部分と、隆起部曲線と、から構成され、前記隆起部曲線は、凹状の前側曲線と、凸状の後側曲線と、から構成される。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、ベース翼に隆起部を付加するだけでハブ領域及びチップ領域の実質的に全域において、特に翼端側ハブ領域及び翼端側チップ領域において流出角を適正化することができ、また、ベース翼の空力設計を変更する必要がないので、空力解析と構造強度解析の反復実施により多くの時間を費やすことを回避することが可能であるという、優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本開示の実施形態の方法による改造の対象となる翼、すなわちベース翼によって構成される翼列を後側(下流側)から見た概略斜視図である。
【
図1B】
図1AにおけるT部の拡大図であって、ベース翼のチップ領域を後側(下流側)から見た斜視図である。
【
図1C】ベース翼の断面の形状(翼型)を示す図である。
【
図2】ベース翼、並びに、本開示の実施形態の方法によって改造された翼のそれぞれにより構成される翼列の翼間流路内の流れの解析により得られた流出角のスパン方向分布を示す図である。
【
図3A】本開示の実施形態の方法による改造の概念を説明する図であって、翼の後縁近傍の正圧面に設けられる隆起部を示している。
【
図3B】本開示の実施形態の方法による改造の概念を説明する図であって、翼の後縁近傍の負圧面に設けられる隆起部を示している。
【
図4A】本開示の実施形態の方法によって改造された翼を説明する図であって、第1改造翼のチップ領域を後側(下流側)から見た斜視図(ベース翼に関する
図1Bに対応する図)である。
【
図4B】本開示の実施形態の方法によって改造された翼を説明する図であって、第2改造翼のチップ領域を後側(下流側)から見た斜視図(ベース翼に関する
図1Bに対応する図)である。
【
図5A】本開示の実施形態の方法によって改造された翼を説明する図であって、隆起部が設けられていないスパン方向の領域における各改造翼の翼型を示している。
【
図5B】本開示の実施形態の方法によって改造された翼を説明する図であって、正圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域における各改造翼の翼型を示している。
【
図5C】本開示の実施形態の方法によって改造された翼を説明する図であって、負圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域における各改造翼の翼型を示している。
【
図6A】修正翼型(正圧面修正翼型)を構成する修正後縁部曲線(正圧面修正後縁部曲線)について説明する図(
図5BのZ部の拡大図)であって、正圧面修正後縁部曲線のうち隆起部曲線を構成する後側曲線が楕円である場合を示している。
【
図6B】修正翼型(正圧面修正翼型)を構成する修正後縁部曲線(正圧面修正後縁部曲線)について説明する図(
図5BのZ部の拡大図)であって、正圧面修正後縁部曲線のうち隆起部曲線を構成する後側曲線が楕円である場合を示している。
【
図6C】修正翼型(正圧面修正翼型)を構成する修正後縁部曲線(正圧面修正後縁部曲線)について説明する図(
図5BのZ部の拡大図)であって、正圧面修正後縁部曲線のうち隆起部曲線を構成する後側曲線が円である場合を示している。
【
図7】本開示の実施形態の方法によって改造された翼における隆起部の高さのスパン方向分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1A~
図1Cは、本開示の実施形態の方法による改造の対象となる翼、すなわちベース翼A
Bを説明する図であって、
図1Aはベース翼A
Bによって構成される翼列を後側(下流側)から見た概略斜視図、
図1Bは
図1AにおけるT部の拡大図であって、ベース翼A
Bのチップ領域を後側(下流側)から見た斜視図、
図1Cはベース翼A
Bの断面の形状(翼型)を示す図である。なお、ここでは、ベース翼A
Bがターボファンエンジンを構成する低圧タービンの静翼である場合を例にとって説明する。
【0020】
ここで、「翼型」という用語は、一般的には、翼のある断面における形状(すなわち、単一の形状)を表す語として用いられているが、本明細書においては、翼の各断面における形状であって所定の特徴を有するものの集合を表す語として用いられる。後述する「ベース翼型」及び「修正翼型」という語も、このような意味で用いられる。
【0021】
図1Aに示すように、ベース翼A
Bは、流路外壁TWと流路内壁HWの間で周方向に等間隔で配置されることにより、翼列を構成する。このとき、隣り合うベース翼A
Bの対向する翼面(正圧面PSと負圧面SS)の間には、それぞれ翼間流路CPが形成されている。
【0022】
ここで、ベース翼ABは、任意の手法により設計された翼であって、2次元設計翼、3次元設計翼のいずれであってもよい。また、新規に設計された翼に限らず、既存の翼も、ベース翼ABとすることができる。
【0023】
また、ベース翼A
Bは、スパン方向の各位置において、構成曲線の組み合わせに関して以下の特徴を有するベース翼型AF
Bを具備している。すなわち、ベース翼型AF
Bは、
図1Cに示すように、前縁部曲線LCと、後縁部曲線TCと、前縁部曲線LCと後縁部曲線TCの間をそれぞれ延びる凹状の正圧側曲線PC及び凸状の負圧側曲線SCと、から構成されている。そして、後縁部曲線TCは、円弧として構成されている。なお、
図1Cにおいては、上述した各曲線の端部(換言すれば、隣接する2つの曲線の接続部)を、便宜的に点で示している(後述する
図5A~
図5C及び
図6A~
図6Cにおいても同様)。
【0024】
ベース翼A
Bは、上述したとおり、スパン方向のあらゆる位置において同一の翼型(ベース翼型AF
B)を具備している。すなわち、ベース翼A
Bは、
図1Bに示されるチップ領域においても、他の領域と同一の翼型(ベース翼型AF
B)を具備している。
【0025】
このベース翼A
Bによって構成される翼列の翼間流路CP内の流れを、粘性の影響を考慮したCFD(Computational Fluid Dynamics;数値流体力学)を用いて解析し、流出角のスパン方向分布を求めた結果を、
図2に示す。
【0026】
図2は、翼の出口(後縁の下流)における流出角のスパン方向分布を示している。なお、縦軸にプロットされているスパン方向位置は、翼のハブ側端部から計った高さを翼の全高(ハブ側端部からチップ側端部までの高さ)で除した無次元値である(グラフでは、これをパーセンテージで表示している)。なお、図中に示したように、本明細書においては、ハブ側端部からの距離が全スパンの0~50%、50~100%の領域を、それぞれハブ領域HR、チップ領域TRとしている。
【0027】
図2に示すように、ハブ領域HRの約6%スパン位置及びチップ領域TRの約84%スパン位置では、ベース翼A
Bの流出角が設計値(design)を大きく下回っている一方、ハブ領域HRの約4%スパン位置よりも流路内壁HW側及びチップ領域TRの約90%スパン位置においては、ベース翼A
Bの流出角が設計値(design)を大きく上回っている。これらは、流路内壁HW及び流路外壁TWの近傍に生じた二次流れの影響により、翼間流路CP内における流れの転向(曲がり)が設計時の想定どおりとはならず、流出角が局所的に設計値からずれているためである。このような流出角の設計値からのずれは、下流に配置された翼の性能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0028】
そのため、上述したようにハブ領域HR及びチップ領域TRにおいて局所的に設計値からずれている流出角を設計値に近づけることが望ましい。
【0029】
そこで、本開示の実施形態の翼の改造方法においては、流出角が設計値を下回って極小となっているスパン方向位置を中心として、ベース翼の後縁近傍の正圧面に隆起部が設けられると共に、流出角が設計値を上回って極大となっているスパン方向位置を中心として、ベース翼の後縁近傍の負圧面に隆起部が設けられる。このような改造の概念を、
図3A及び
図3Bに示す。
【0030】
流出角が設計値を下回っているスパン方向の領域においては、
図3Aに示すように、後縁TEの近傍の正圧面PSに正圧側隆起部EPPが設けられる。これにより、一種のコアンダ効果が働き、負圧面SS側の流れが正圧側隆起部EPPの後縁部に沿って矢印で示すように正圧面PS側へ回り込む。その結果、流れの転向(曲がり)が大きくなり、流出角が増大して設計値に近づくと考えられる。
【0031】
また、流出角が設計値を上回っているスパン方向の領域においては、
図3Bに示すように、後縁TEの近傍の負圧面SSに負圧側隆起部EPSが設けられる。これにより、一種のコアンダ効果が働き、正圧面PS側の流れが負圧側隆起部EPSの後縁部に沿って矢印で示すように負圧面SSへ回り込む。その結果、流れの転向(曲がり)が小さくなり、流出角が減少して設計値に近づくと考えられる。
【0032】
次に、ベース翼A
Bに対して、上述した方法による改造を施すことで得られる翼(改造翼)Aについて、
図4A~
図4B及び
図5A~
図5Cを参照して詳細に説明する。
【0033】
図4A、
図4Bは、それぞれ第1改造翼A
1、第2改造翼A
2のチップ領域を後側(下流側)から見た斜視図であり、ベース翼A
Bに関する
図1Bに対応する図である。
【0034】
また、
図5Aは隆起部が設けられていないスパン方向の領域における各改造翼A(A
1、A
2)の翼型を、
図5Bは正圧側隆起部EPPが設けられたスパン方向の領域における各改造翼A(A
1、A
2)の翼型を、
図5Cは負圧側隆起部EPSが設けられたスパン方向の領域における各改造翼A(A
1、A
2)の翼型を、それぞれ示している。
【0035】
図4A及び
図4Bに示すように、改造翼A(第1改造翼A
1及び第2改造翼A
2)は、チップ領域TRのうち流路外壁TWに隣接する領域(翼端側チップ領域TRe)においてベース翼A
Bの後縁近傍の負圧面SSに負圧側隆起部EPSを、チップ領域TRのうち翼端側チップ領域TReよりも翼中央部側(ハブ領域HR側)の領域(ミッドスパン側チップ領域TRm)においてベース翼A
Bの後縁近傍の正圧面PSに正圧側隆起部EPPを、それぞれ付加した形状を有している。
【0036】
図示した実施例において、正圧側隆起部EPPの形状は、第1改造翼A1と第2改造翼A2とで共通である。一方、負圧側隆起部EPSの形状については、図示したように、第1改造翼A1と第2改造翼A2とで異なっている。この負圧側隆起部EPSの形状の差異については、後述する。
【0037】
なお、改造翼Aには、チップ領域TRに限らずハブ領域HBにも、隆起部(正圧側隆起部EPP及び負圧側隆起部EPS)を付加することができる。この場合、負圧側隆起部EPSは、ハブ領域HBのうち流路内壁HWに隣接する領域(翼端側ハブ領域)に、正圧側隆起部EPPは、翼端側ハブ領域よりも翼中央部側(チップ領域TR側)の領域(ミッドスパン側ハブ領域)に、それぞれ付加される。また、改造翼Aは、チップ領域TR及びハブ領域HBの何れか一方の領域のみにおいて隆起部を有していてもよい。
【0038】
また、ベース翼ABに隆起部を付加することにより得られる改造翼Aにおいては、ベース翼ABは改造翼Aの一部となっており、独立した翼ではなくなっている。したがって、改造翼Aの構成について記述する場合には、ベース翼部ABという表現も用いることにする。この場合において、上述したCFDによる解析は、改造翼Aのうち(隆起部を除く)ベース翼部ABのみが単独で構成する翼列を対象として行われるものといえる。
【0039】
改造翼Aは、隆起部が設けられていないスパン方向の領域においては、
図5Aに示すように、
図1Cに示したベース翼型AF
B(と同一の翼型)を具備している。
【0040】
一方、正圧側隆起部EPPが設けられたスパン方向の領域(ミッドスパン側チップ領域TRm及びミッドスパン側ハブ領域)並びに負圧側隆起部EPSが設けられたスパン方向の領域(翼端側チップ領域TRe及び翼端側ハブ領域)において、改造翼Aは、構成曲線の組み合わせに関して以下の特徴を有する修正翼型AF
Mを具備している(
図5B及び
図5C参照)。
【0041】
すなわち、修正翼型AFMは、前縁部曲線LCと、修正後縁部曲線TCMと、前縁部曲線LCと修正後縁部曲線TCMの間をそれぞれ延びる凹状の正圧側曲線PC及び凸状の負圧側曲線SCと、から構成されている。
【0042】
なお、正圧側隆起部EPPが設けられたスパン方向の領域における修正翼型AF
M、修正後縁部曲線TC
Mを、それぞれ正圧面修正翼型AF
MP、正圧面修正後縁部曲線TC
MPと称することにする(
図5B参照)。同様に、負圧側隆起部EPSが設けられたスパン方向の領域における修正翼型AF
M、修正後縁部曲線TC
Mを、それぞれ負圧面修正翼型AF
MS、負圧面修正後縁部曲線TC
MSと称することにする(
図5C参照)。
【0043】
ここで、修正翼型AFM(正圧面修正翼型AFMP及び負圧面修正翼型AFMS)の前縁部曲線LC、正圧側曲線PC(ただし、正圧面修正翼型AFMPにおいては、後述する正圧面修正後縁部曲線TCMPとの接続点より前方の部分)、負圧側曲線SC(ただし、負圧面修正翼型AFMSにおいては、後述する負圧面修正後縁部曲線TCMSとの接続点より前方の部分)は、それぞれ、対応するスパン方向位置におけるベース翼型AFBの前縁部曲線LC、正圧側曲線PC、負圧側曲線SCと同一の曲線である。
【0044】
次に、修正後縁部曲線TC
Mのうち、正圧面修正後縁部曲線TC
MPについて、
図5BのZ部の拡大図である
図6A~
図6Cを参照して、以下に詳述する。なお、
図6A~
図6Cにおいては、ベース翼型AF
Bを構成する曲線は長破線で、修正翼型AF
M(正圧面修正翼型AF
MP)を構成する曲線は実線で、それぞれ示されているが、両曲線が同一となる部位は、実線で示されている。
【0045】
図6A~
図6Cのそれぞれに示すように、正圧面修正後縁部曲線TC
MPは、後縁TEを境界として負圧側曲線SC側はベース翼型AF
Bの後縁部曲線TCと同一の曲線、すなわち円弧として構成されており、正圧側曲線PC側は隆起部曲線ECとして構成されている。
【0046】
そして、隆起部曲線ECは、凹状の前側曲線FCと凸状の後側曲線RCとから構成されている。
【0047】
後側曲線RCは、楕円または円の一部とすることができ、以下の(1)~(3)のいずれであってもよい。
(1)楕円の一部であって、当該楕円は、以下の条件を満足する:長軸が、後縁TEを端点とすると共に、ベース翼型AF
Bの後縁部曲線TC(円弧)に後縁TEにおいて接する仮想の直線TLと直交し、短径が、ベース翼型AF
Bの後縁部曲線TCを構成する円弧の直径より大きい(
図6A参照)。
(2)楕円の一部であって、当該楕円は、以下の条件を満足する:短軸が、後縁TEを端点とすると共に、ベース翼型AF
Bの後縁部曲線TC(円弧)に後縁TEにおいて接する仮想の直線TLと直交し、長径が、ベース翼型AF
Bの後縁部曲線TCを構成する円弧の直径より大きい(
図6B参照)。
(3)円の一部であって、当該円は、以下の条件を満足する:中心が、ベース翼型AF
Bの後縁部曲線TCを構成する円弧の中心O及び後縁TEを通る直線CL上に位置し、直径が、ベース翼型AF
Bの後縁部曲線TCを構成する円弧の直径より大きい(
図6C参照)。
【0048】
ただし、チップ領域TR及びハブ領域HBの両方に隆起部を設ける場合、そのうちの正圧側隆起部EPPの後側曲線RCとしては、上記(1)~(3)のうち何れか1つのみが選択されるものとする。
【0049】
一方、前側曲線FCは、ベース翼型AF
Bの正圧側曲線PCと上述した後側曲線RCとを滑らかに接続する曲線であれば、如何なる曲線であってもよい。一実施例として、前側曲線FCは、
図6A~
図6Cに示すように、ベース翼型AF
Bの正圧側曲線PC及び後側曲線RCの両者に接する円の一部(すなわち円弧)とすることができる。
【0050】
このように構成された隆起部曲線ECによって、正圧面修正翼型AF
MPは、ベース翼型AF
Bと比較して、後縁TEの近傍に、正圧面側への突出部BGを有することになる(
図5B参照)。この正圧面修正翼型AF
MPにおける突出部BGが、ベース翼A
Bに付加された正圧側隆起部EPPに対応する。
【0051】
ここで、正圧面修正翼型AFMPの正圧面修正後縁部曲線TCMPを構成する後側曲線RCの形状パラメータ(楕円の場合は長径及び短径、円の場合は直径)は、ベース翼型AFBの形状やベース翼ABの周りの流れの条件(レイノルズ数など)を考慮し、流出角の増大に関して所望の効果が得られるよう選定される。また、当該形状パラメータは、正圧側隆起部EPPの高さ(改造翼Aの厚さ方向への突出量)を代表するパラメータであり、これをスパン方向に連続的に変化させることにより、スパン方向に高さが滑らかに変化する正圧側隆起部EPPを得ることができる。なお、前側曲線FCの形状パラメータ(円弧として構成する場合には、その直径)は、前側曲線FCによって形成される局所的な凹部における流れが円滑なものとなるよう選定される。
【0052】
なお、以上においては、修正後縁部曲線TC
Mのうち、正圧面修正後縁部曲線TC
MPについて、
図6A~
図6Cを参照して説明したが、負圧面修正後縁部曲線TC
MSも、正圧面修正後縁部曲線TC
MPと同様に構成されている。
【0053】
すなわち、負圧面修正後縁部曲線TCMSについての説明は、以上の正圧面修正後縁部曲線TCMPについての説明において、正圧面修正翼型AFMP、正圧面修正後縁部曲線TCMP、正圧側隆起部EPP、正圧側曲線PC、負圧側曲線SCを、それぞれ負圧面修正翼型AFMS、負圧面修正後縁部曲線TCMS、負圧側隆起部EPS、負圧側曲線SC、正圧側曲線PCと読み替えたものである。
【0054】
次に、第1改造翼A
1及び第2改造翼A
2における隆起部の形状の差異について、
図7を参照して、以下で説明する。なお、ここでは簡単のため、隆起部をチップ領域TRにのみ設けた場合について説明する。
【0055】
図7は、2種類の改造翼A
1及びA
2における隆起部(正圧側隆起部EPP及び負圧側隆起部EPS)の高さのスパン方向分布を示す図である。
【0056】
まず、第1改造翼A1及び第2改造翼A2のいずれにおいても、70~88%スパン位置の領域(ミッドスパン側チップ領域TRm)に正圧側隆起部EPPが設けられており、その高さは、84%スパン位置で最大とされている。これは、ベース翼ABにおいて、流出角が設計値を下回って極小となるスパン方向位置で、正圧側隆起部EPPの高さを最大にすることを意図したものである。
【0057】
次に、第1改造翼A
1では、88~100%スパン位置の領域(翼端側チップ領域TRe)に負圧側隆起部EPSが設けられており、その高さは、90%スパン位置で最大とされている。これは、ベース翼A
Bにおいて、流出角が設計値を上回って極大となるスパン方向位置で、負圧側隆起部EPSの高さを最大にすることを意図したものである。このように構成された第1改造翼A
1の隆起部の形状は、
図4Aに示されるとおりである。
【0058】
一方、第2改造翼A
2でも、88~100%スパン位置の領域(翼端側チップ領域TRe)に負圧側隆起部EPSが設けられているが、その高さは、88%スパン位置(翼端側チップ領域TReのミッドスパン側端部)において0であり、そこから100%スパン位置(翼端側チップ領域TReの翼端側端部;チップ領域TRの外端)に向かって単調に増加している。これは、二次流れの影響が、流路外壁TWに近づくほど大きくなるという単純化されたモデルを想定したものである。このように構成された第2改造翼A
2の側隆起部の形状は、
図4Bに示されるとおりである。
【0059】
以上のように構成された第1改造翼A
1では、
図2に示すように、ベース翼A
Bの流出角が設計値(design)を大きく下回っているチップ領域TRの約84%スパン位置において、流出角が増大し、同時に、ベース翼A
Bの流出角が設計値(design)を大きく上回っているチップ領域TRの約90%スパン位置において、流出角が減少することにより、全体として、流出角の設計値からのずれが是正されていることが分かる。
【0060】
以上で説明した本開示の実施形態の方法による改造を、新規に設計されたベース翼ABに適用する場合、ベース翼ABのハブ領域HR及びチップ領域TRの少なくともいずれか一方に隆起部(正圧側隆起部EPP及び負圧側隆起部EPS)を付加した形態を具備する翼を、任意の方法により新規に製造することによって、改造翼Aを得ることができる。もちろん、ベース翼ABを任意の方法により新規に製造したうえで、ベース翼ABのハブ領域HR及びチップ領域TRの少なくともいずれか一方に隆起部(正圧側隆起部EPP及び負圧側隆起部EPS)を、溶着等の適宜の方法により付加することによっても、改造翼Aを得ることができる。また、本開示の実施形態の方法による改造を、既存の翼をベース翼ABとして適用する場合は、上述した2つの方法のうち後者を採用すればよい。
【0061】
以上の説明では、ベース翼ABにおける流出角のスパン方向分布を求める手段として、粘性の影響を考慮したCFDによる翼間流路内の流れ解析を挙げた。しかしながら、例えば既存の翼をベース翼ABとして適用する場合において、CFDによる解析よりも利便性が高いと判断される場合には、当該既存の翼を用いた翼列試験を行って、流出角のスパン方向分布を実測により求めてもよい。
【0062】
ここで、以上で説明した本開示の実施形態の翼の改造方法を整理すると、当該方法は以下のステップから成っている。ただし、以下の記載は、隆起部(正圧側隆起部EPP及び負圧側隆起部EPS)をチップ領域TRにのみ設ける場合に対応する。
(1)改造の対象となるベース翼ABを決定する。ここで、ベース翼ABは、スパン方向の各位置において、前縁部曲線LCと、円弧である後縁部曲線TCと、前縁部曲線LCと後縁部曲線TCの間をそれぞれ延びる凹状の正圧側曲線PC及び凸状の負圧側曲線SCと、から構成されるベース翼型AFBを具備している。
(2)ベース翼ABにおける流出角を適正化すべく、ベース翼ABのチップ領域TRにおいて、後縁TEの近傍の正圧面PSに正圧側隆起部EPPを、負圧面SSに負圧側隆起部EPSを、それぞれ設けるにあたり、これらの隆起部を設けるべきスパン方向の領域(それぞれ、ミッドスパン側チップ領域TRm及び翼端側チップ領域TRe)を決定する。
(3-1)ベース翼ABのうちミッドスパン側チップ領域TRmの翼型を、ベース翼型AFBから正圧面修正翼型AFMPに変更する。ここで、正圧面修正翼型AFMPは、ミッドスパン側チップ領域TRmにおけるベース翼型AFBの後縁部曲線TCを正圧面修正後縁部曲線TCMPに変更したものである。そして、正圧面修正後縁部曲線TCMPは、後縁TEを境界として負圧側曲線SC側はミッドスパン側チップ領域TRmにおけるベース翼型AFBの後縁部曲線TCと同一の曲線、すなわち円弧として構成され、正圧側曲線PC側は隆起部曲線ECとして構成されており、当該隆起部曲線ECは、凹状の前側曲線FCと、凸状の後側曲線RCと、から構成されている。
(3-2)ベース翼ABのうち翼端側チップ領域TReの翼型を、ベース翼型AFBから負圧面修正翼型AFMSに変更する。ここで、負圧面修正翼型AFMSは、翼端側チップ領域TReにおけるベース翼型AFBの後縁部曲線TCを負圧面修正後縁部曲線TCMSに変更したものである。そして、負圧面修正後縁部曲線TCMSは、後縁TEを境界として正圧側曲線PC側は翼端側チップ領域TReにおけるベース翼型AFBの後縁部曲線TCと同一の曲線、すなわち円弧として構成され、負圧側曲線SC側は隆起部曲線ECとして構成されており、当該隆起部曲線ECは、凹状の前側曲線FCと、凸状の後側曲線RCと、から構成されている。
【0063】
ここで、(3-1)及び(3-2)における後側曲線RC及び前側曲線FCは、それぞれ以下のように定義される。
・後側曲線RCは、以下の(A)~(C)のいずれかである。
(A)長軸が、後縁TEを端点とすると共に、ベース翼型AFBの後縁部曲線TCに後縁TEにおいて接する仮想の直線TLと直交し、短径が、ベース翼型AFBの後縁部曲線TCを構成する円弧の直径より大きい楕円の一部
(B)短軸が、後縁TEを端点とすると共に、ベース翼型AFBの後縁部曲線TCに後縁TEにおいて接する仮想の直線TLと直交し、長径が、ベース翼型AFBの後縁部曲線TCを構成する円弧の直径より大きい楕円の一部
(C)中心が、ベース翼型AFBの後縁部曲線TCを構成する円弧の中心及び後縁TEを通る直線上に位置し、直径が、ベース翼型AFBの後縁部曲線TCを構成する円弧の直径より大きい円の一部
・前側曲線FCは、後側曲線RCと正圧側曲線PCとを滑らかに接続する曲線である。
【0064】
また、(2)における隆起部を設けるべきスパン方向の領域(ミッドスパン側チップ領域TRm及び翼端側チップ領域TRe)の決定は、以下のように行われる。
(2-1)ベース翼ABによって構成されるベース翼列について、粘性の影響を考慮したCFDによる翼間流路内の流れ解析により、または、翼列試験における実測により、流出角のスパン方向分布を求める。
(2-2)(2-1)で求めた流出角が設計値を下回って極小となっているスパン方向位置を求める。
(2-3)正圧側隆起部EPPの高さのスパン方向分布を、(2-2)で求めたスパン方向位置において最大、かつ、当該スパン方向位置の両側で滑らかに0まで減少するようなものとして決定する。当該分布において、正圧側隆起部EPPの高さが0でないスパン方向の領域が、ミッドスパン側チップ領域TRmである。
(2-4)(2-1)で求めた流出角が設計値を上回って極大となっているスパン方向位置を求める。
(2-5)負圧側隆起部EPSの高さのスパン方向分布を、(2-4)で求めたスパン方向位置において最大、かつ、当該スパン方向位置の両側で滑らかに0まで減少するようなものとして決定する。当該分布において、負圧側隆起部EPSの高さが0でないスパン方向の領域が、翼端側チップ領域TReである。
【0065】
なお、(2-5)の記載は、第1改造翼A1に対応するものであるが、第2改造翼A2を得ようとする場合には、負圧側隆起部EPSの高さのスパン方向分布を、(2-3)で得られたミッドスパン側チップ領域TRmの翼端側端部(最もチップ領域TR側)において0であり、そこからチップ領域TRの外端(100%スパン位置)に向かって単調に増加する態様のものとすればよい。
【0066】
ここで、隆起部(正圧側隆起部EPP及び負圧側隆起部EPS)の高さのスパン方向分布は、後側曲線RCの形状パラメータ(上記(A)の場合は楕円の短径、(B)の場合は楕円の長径、(C)の場合は円の直径)のをスパン方向に分布させることにより実現される。
【0067】
また、上述した方法により改造された翼Aの形状を整理すると、以下のとおりである。ただし、以下の記載は、隆起部(正圧側隆起部EPP及び負圧側隆起部EPS)をチップ領域TRにのみ設ける場合に対応する。
・ベース翼部ABと、ベース翼部ABの翼端側チップ領域TReにおいて後縁TEの近傍の負圧面SSに設けられた負圧側隆起部EPSと、ベース翼部ABの翼端側チップ領域TReよりも翼中央部側(ハブ領域HR側)の領域(ミッドスパン側チップ領域TRm)において後縁TEの近傍の正圧面PSに設けられた正圧側隆起部EPPと、から成る。すなわち、負圧側隆起部EPSと正圧側隆起部EPPは、スパン方向において同一の領域には設けられていない。
・ベース翼部ABは、スパン方向の各位置において、前縁部曲線LCと、円弧である後縁部曲線TCと、前縁部曲線LCと後縁部曲線TCの間をそれぞれ延びる凹状の正圧側曲線PC及び凸状の負圧側曲線SCと、から構成されるベース翼型AFBを具備する。
・改造翼Aは、隆起部(正圧側隆起部EPP及び負圧側隆起部EPS)が設けられていないスパン方向の領域においてはベース翼型AFBを具備する一方、隆起部(正圧側隆起部EPP及び負圧側隆起部EPS)が設けられたスパン方向の領域においては、修正翼型AFM(正圧面修正翼型AFMP及び負圧面修正翼型AFMS)を具備する。
・修正翼型AFM(正圧面修正翼型AFMP及び負圧面修正翼型AFMS)は、隆起部(正圧側隆起部EPP及び負圧側隆起部EPS)が設けられたスパン方向の領域におけるベース翼型AFBの前縁部曲線LC、正圧側曲線PC(ただし、正圧面修正翼型AFMPにおいては、正圧面修正後縁部曲線TCMPとの接続点より前方の部分)及び負圧側曲線SC(ただし、負圧面修正翼型AFMSにおいては、負圧面修正後縁部曲線TCMSとの接続点より前方の部分)と、修正後縁部曲線TCM(正圧面修正後縁部曲線TCMP及び負圧面修正後縁部曲線TCMS)と、から構成される。
・正圧面修正後縁部曲線TCMPは、ミッドスパン側チップ領域TRmにおけるベース翼型AFBの後縁部曲線TCのうち後縁TEより負圧側曲線SC側の部分と、隆起部曲線ECと、から構成される。
・負圧面修正後縁部曲線TCMSは、翼端側チップ領域TReにおけるベース翼型AFBの後縁部曲線TCのうち後縁TEより正圧側曲線PC側の部分と、隆起部曲線ECと、から構成される。
・隆起部曲線ECは、凹状の前側曲線FCと、凸状の後側曲線RCと、から構成される。
【0068】
ここで、後側曲線RC及び前側曲線FCは、それぞれ以下のように定義される。
・後側曲線RCは、以下の(A)~(C)のいずれかである。
(A)長軸が、後縁TEを端点とすると共に、ベース翼型AFBの後縁部曲線TCに後縁TEにおいて接する仮想の直線TLと直交し、短径が、ベース翼型AFBの後縁部曲線TCを構成する円弧の直径より大きい楕円の一部
(B)短軸が、後縁TEを端点とすると共に、ベース翼型AFBの後縁部曲線TCに後縁TEにおいて接する仮想の直線TLと直交し、長径が、ベース翼型AFBの後縁部曲線TCを構成する円弧の直径より大きい楕円の一部
(C)中心が、ベース翼型AFBの後縁部曲線TCを構成する円弧の中心及び後縁TEを通る直線上に位置し、直径が、ベース翼型AFBの後縁部曲線TCを構成する円弧の直径より大きい円の一部
・前側曲線FCは、後側曲線RCと正圧側曲線PCとを滑らかに接続する曲線である。
【0069】
また、正圧側隆起部EPPの高さは、ベース翼ABのみが単独で構成する翼列の流出角が設計値を下回って極小となるスパン方向位置において最大となり、その両側で滑らかに0まで減少するような分布を有する。一方、負圧側隆起部EPS高さは、ベース翼ABのみが単独で構成する翼列の流出角が設計値を上回って極大となるスパン方向位置において最大となり、その両側で滑らかに0まで減少するような分布(第1改造翼A1の場合)、又は、翼端側チップ領域TReのミッドスパン側端部において0、そこから100%スパン位置(翼端側チップ領域TReの翼端側端部;チップ領域TRの外端)に向かって単調に増加するような分布(第2改造翼A2の場合)を有する。
【0070】
ベース翼の流出角を適正化するために、その空力設計を変更した場合、変更後の形状に対して構造強度解析を再度実施し、当該形状が構造強度設計上の要求を満足することを確認しなければならない。そして、変更後の形状が構造強度設計上の要求を満足しない場合は、空力設計上の要求(すなわち、流出角の適正化)と構造強度設計上の要求の両者を満足する形状を得るべく、その都度形状を変更しながら空力解析と構造強度解析を反復実施する必要が生じ、非常に多くの時間が必要となる。
【0071】
これに対して、以上で説明した本開示の実施形態の翼の改造方法によれば、ベース翼に隆起部(正圧側隆起部及び負圧側隆起部)を付加するだけでハブ領域及びチップ領域の実質的に全域において、特に翼端側ハブ領域及び翼端側チップ領域において流出角を適正化することができ、ベース翼の空力設計を変更する必要がないので、空力解析と構造強度解析の反復実施により多くの時間を費やすことを回避することが可能である。
【0072】
また、本開示の実施形態の翼の改造方法は、新規に設計された翼に限らず、既存の翼にも適用可能である。
【0073】
(本開示の態様)
本開示の第1の態様の軸流型のファン、圧縮機及びタービンの翼は、翼端側チップ領域と当該翼端側チップ領域より翼中央部側に位置するミッドスパン側チップ領域とからなるチップ領域、及び、翼端側ハブ領域と当該翼端側ハブ領域より翼中央部側に位置するミッドスパン側ハブ領域とからなるハブ領域を有するベース翼部と、前記ベース翼部の前記翼端側チップ領域及び前記翼端側ハブ領域の少なくともいずれか一方において後縁の近傍の負圧面に設けられた負圧側隆起部と、前記ベース翼部の前記ミッドスパン側チップ領域及び前記ミッドスパン側ハブ領域の少なくともいずれか一方において後縁の近傍の正圧面に設けられた正圧側隆起部と、から成り、前記ベース翼部は、スパン方向の各位置において、前縁部曲線と、円弧である後縁部曲線と、前記前縁部曲線と前記後縁部曲線の間をそれぞれ延びる凹状の正圧側曲線及び凸状の負圧側曲線と、から構成されるベース翼型を具備し、前記翼は、前記負圧側隆起部及び前記正圧側隆起部のいずれも設けられていないスパン方向の領域においてはベース翼型を具備する一方、前記負圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域においては負圧面修正翼型を、前記正圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域においては正圧面修正翼型を、それぞれ具備し、前記負圧面修正翼型は、前記負圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記前縁部曲線、前記正圧側曲線及び前記負圧側曲線と、負圧面修正後縁部曲線と、から構成され、前記正圧面修正翼型は、前記正圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記前縁部曲線、前記正圧側曲線及び前記負圧側曲線と、正圧面修正後縁部曲線と、から構成され、前記負圧面修正後縁部曲線は、前記負圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記後縁部曲線のうち前記後縁より正圧側曲線側の部分と、隆起部曲線と、から構成され、前記正圧面修正後縁部曲線は、前記正圧側隆起部が設けられたスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記後縁部曲線のうち前記後縁より負圧側曲線側の部分と、隆起部曲線と、から構成され、前記隆起部曲線は、凹状の前側曲線と、凸状の後側曲線と、から構成される。
【0074】
本開示の第2の態様の翼において、前記後側曲線は、楕円または円の一部であり、前記前側曲線は、前記後側曲線と前記正圧側曲線とを滑らかに接続する曲線である。
【0075】
本開示の第3の態様の翼において、前記後側曲線は、長軸が、前記後縁を端点とすると共に、前記ベース翼型の前記後縁部曲線に前記後縁において接する仮想の直線と直交し、短径が、前記ベース翼型の前記後縁部曲線を構成する円弧の直径より大きい楕円の一部、または、短軸が、前記後縁を端点とすると共に、前記ベース翼型の前記後縁部曲線に前記後縁において接する仮想の直線と直交し、長径が、前記ベース翼型の前記後縁部曲線を構成する円弧の直径より大きい楕円の一部、または、中心が、前記ベース翼型の前記後縁部曲線を構成する円弧の中心及び前記後縁を通る直線上に位置し、直径が、前記ベース翼型の前記後縁部曲線を構成する円弧の直径より大きい円の一部である。
【0076】
本開示の第4の態様の翼において、前記正圧側隆起部は、スパン方向に分布する高さを有し、当該高さの分布は、前記ベース翼部のみが単独で構成する翼列の流出角が設計値を下回って極小となるスパン方向位置において最大となり、その両側で滑らかに0まで減少するような分布である。
【0077】
本開示の第5の態様の翼において、前記負圧側隆起部は、スパン方向に分布する高さを有し、当該高さの分布は、前記ベース翼部のみが単独で構成する翼列の流出角が設計値を上回って極大となるスパン方向位置において最大となり、その両側で滑らかに0まで減少するような分布である。
【0078】
本開示の第6の態様の翼において、前記負圧側隆起部は、スパン方向に分布する高さを有し、当該高さの分布は、前記翼端側チップ領域の翼中央部側端部において0であり、そこから前記翼端側チップ領域の翼端側端部に向かって単調に増加するような分布である。
【0079】
本開示の第7の態様の翼において、前記ハブ領域は、前記ベース翼部のハブ側端部からの距離が前記ベース翼部の全スパンの0~50%の領域であり、前記チップ領域は、前記ベース翼部のチップ側端部からの距離が前記ベース翼部の全スパンの0~50%の領域である。
【0080】
本開示の第1の態様の軸流型のファン、圧縮機またはタービンの翼の改造方法は、(1)スパン方向の各位置において、前縁部曲線と、円弧である後縁部曲線と、前記前縁部曲線と前記後縁部曲線の間をそれぞれ延びる凹状の正圧側曲線及び凸状の負圧側曲線と、から構成されるベース翼型を具備し、改造の対象となるベース翼を決定するステップ、(2)前記ベース翼における流出角を適正化すべく、当該ベース翼のハブ領域及びチップ領域の少なくともいずれか一方において、後縁の近傍の正圧面に正圧側隆起部隆起部を、後縁の近傍の負圧面に負圧側隆起部隆起部を設けるにあたり、それぞれの隆起部を設けるべきスパン方向の領域を決定するステップ、及び、(3)前記ベース翼のうち、前記正圧側隆起部を設けるべきスパン方向の領域の翼型を前記ベース翼型から正圧面修正翼型に、前記負圧側隆起部を設けるべきスパン方向の領域の翼型を前記ベース翼型から負圧面修正翼型に、それぞれ変更するステップから成り、前記正圧面修正翼型は、前記正圧側隆起部を設けるべきスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記後縁部曲線を正圧面修正後縁部曲線に変更したものであり、前記負圧面修正翼型は、前記負圧側隆起部を設けるべきスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記後縁部曲線を負圧面修正後縁部曲線に変更したものであり、前記正圧面修正後縁部曲線は、前記後縁を境界として前記負圧側曲線側は前記正圧側隆起部を設けるべきスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記後縁部曲線と同一の曲線として構成され、前記正圧側曲線側は隆起部曲線として構成されており、前記負圧面修正後縁部曲線は、前記後縁を境界として前記正圧側曲線側は前記負圧側隆起部を設けるべきスパン方向の領域における前記ベース翼型の前記後縁部曲線と同一の曲線として構成され、前記負圧側曲線側は隆起部曲線として構成されており、前記隆起部曲線は、凹状の前側曲線と、凸状の後側曲線と、から構成されている。
【0081】
本開示の第2の態様の方法において、前記負圧側隆起部は、スパン方向に分布する高さを有し、当該高さの分布は、前記ベース翼部のみが単独で構成する翼列の流出角が設計値を上回って極大となるスパン方向位置において最大となり、その両側で滑らかに0まで減少するような分布である。
【0082】
本開示の第3の態様の方法において、前記負圧側隆起部は、スパン方向に分布する高さを有し、当該高さの分布は、前記翼端側チップ領域の翼中央部側端部において0であり、そこから前記翼端側チップ領域の翼端側端部に向かって単調に増加するような分布である。
【符号の説明】
【0083】
A 翼
AB ベース翼(または、ベース翼部)
AFB ベース翼型
AFMP 正圧面修正翼型
AFMS 負圧面修正翼型
EC 隆起部曲線
EPP 正圧側隆起部
EPS 負圧側隆起部
FC 前側曲線
HR ハブ領域
LC 前縁部曲線
PC 正圧側曲線
PS 正圧面
RC 後側曲線
SC 負圧側曲線
SS 負圧面
TC 後縁部曲線
TCMP 正圧面修正後縁部曲線
TCMS 負圧面修正後縁部曲線
TE 後縁
TR チップ領域
TRe 翼端側チップ領域
TRm ミッドスパン側チップ領域