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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】清掃用ブラシ
(51)【国際特許分類】
   B08B 9/043 20060101AFI20240111BHJP
   B08B 1/32 20240101ALI20240111BHJP
   A46B 13/02 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B08B9/043 436
B08B1/04
A46B13/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019129519
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021013889
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000150006
【氏名又は名称】日本総合住生活株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598171508
【氏名又は名称】株式会社秀カンパニー
(73)【特許権者】
【識別番号】515306585
【氏名又は名称】株式会社アプト
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】弁理士法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 治久
(72)【発明者】
【氏名】野口 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】本田 哲生
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3167211(JP,U)
【文献】登録実用新案第3205767(JP,U)
【文献】特開平07-144183(JP,A)
【文献】特開2018-012081(JP,A)
【文献】特開2007-167365(JP,A)
【文献】特開2007-330298(JP,A)
【文献】特開2003-191159(JP,A)
【文献】特開2005-040730(JP,A)
【文献】登録実用新案第3117085(JP,U)
【文献】特開2002-035708(JP,A)
【文献】特開2017-080368(JP,A)
【文献】特開平10-128260(JP,A)
【文献】特表2006-511351(JP,A)
【文献】米国特許第05142725(US,A)
【文献】中国特許出願公開第107928097(CN,A)
【文献】中国実用新案第207357720(CN,U)
【文献】実開昭61-016030(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/043
B08B 1/04
A46B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動ドリルに装着して用いられ、パイプの内部を清掃するための清掃用ブラシであって、
シャフト本体と、同軸上において前記シャフト本体の基端側に連なるドリル装着部と、を有するシャフトと、
前記シャフト本体の周囲に、前記シャフト本体と平行に配設した複数の個別ブラシと、
前記複数の個別ブラシを保持すると共に、中心部で前記シャフト本体に固定されたブラシホルダと、を備え、
前記各個別ブラシは、複数の線材を縒り合せたブラシ軸と、前記ブラシ軸に固定された円柱状のブラシ体とから成り、
前記ブラシホルダは、前記シャフト本体の基端部に固定された基端ホルダおよび先端部に固定された先端ホルダを有すると共に、前記シャフト本体と同軸上に配設され、複数の前記ブラシ体が全長にわたって接触し且つ前記パイプに対し前記各ブラシ体が所定の接触圧となるように前記シャフト本体側から支える筒状スペーサを有し、前記複数の個別ブラシを前記シャフト本体と同心円上であって、且つ周方向に均等間隔となるように保持していることを特徴とする清掃用ブラシ。
【請求項2】
前記基端ホルダは、前記各ブラシ軸の基端側が係止される基端ホルダ本体を有し、
前記先端ホルダは、前記各ブラシ軸の先端側が係止される先端ホルダ本体と、前記シャフト本体の先端部に締結され、前記先端ホルダ本体を介して前記各ブラシ軸に軸方向の引張り力および圧縮力のいずれか一方を作用させる締結部と、を有し、
前記基端ホルダ本体および前記先端ホルダ本体には、前記引張り力または前記圧縮力に基づいて、前記各ブラシ軸に前記シャフト本体側に向かう分力を生じさせる傾斜部が、それぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の清掃用ブラシ。
【請求項3】
複数の前記ブラシ体の為す輪郭円の外径が、前記パイプの内径よりも大きい径に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の清掃用ブラシ。
【請求項4】
複数の前記ブラシ体の軸方向の長さが、複数の前記ブラシ体の為す輪郭円の外径の略2倍であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の清掃用ブラシ。
【請求項5】
フレキシブルシャフトを介して前記電動ドリルに装着され、
複数の前記ブラシ体の為す輪郭円の外径に対し、軸方向の全長が短く形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の清掃用ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ドリルに装着して用いられ、パイプの内面を清掃するための清掃用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の清掃用ブラシとして、構造体に穿孔したアンカーボルト用の下穴等に対し、穴内に残った切り粉を取り除くためのものが知られている(特許文献1参照)。
この清掃用ブラシは、ブラシ体と、ブラシ体を電動工具に装着するための取付部材とを備え、ブラシ体は、2本の線材を捩じって構成した支持部と、支持部に固定した螺旋状のブラシ部とを有し、取付部材は、電動工具と接続されるシャンク部と、ブラシ体の支持部がカシメにより挿入結合されるジョイント部とを有している。
これにより、製造が容易で、回転駆動時に芯ブレが生じ難いものとすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3205767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、既設の排水管(例えば、呼び径50mmや呼び径65mmの雑排水管:鋼管)の改修を行う場合、腐食が進んでいる継手廻り等では交換を余儀なくされるが、腐食が進んでいない直管部分等において、壁貫通部分やスラブ貫通部分は、コンクリートの斫り工事が必要となるため、これを避けるべく残置する場合がある。かかる場合には、この残置配管部分の内部を清掃し、コーティング等を行って再利用することとなる。
一方、上記従来の清掃用ブラシは、主として、コンクリートに穿孔した下穴を清掃するためのものであるが、ブラシ体を、いわゆるワイヤーブラシで構成すれば、この種の排水管の内部清掃が可能になると考えられる。
しかし、このようにすると、2本の線材を捩じって構成した支持部に対し、多数のブラシ毛から成るブラシ部は、極端に毛足の長いものとなり、ブラシ毛が「へたり」易いだけでなく、管内壁への接触力が弱く、コーティング等を可能とする所望の清掃効果を得ることができないことが想定される。一方で、ブラシ毛を太くすることや、円筒状のブラシ台にブラシ毛を植設することも考えられる。しかし、ブラシ毛を太くすると回転抵抗が大きくなって、一般的な電動ドリルではパワー不足となることが想定される。また、円筒状のブラシ台にブラシ毛を植設するものは、コスト高になることが想定される。
【0005】
本発明は、低コストで且つ一般的な電動ドリルで使用可能であって、パイプの内部を適切に清掃することができる清掃用ブラシを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の清掃用ブラシは、電動ドリルに装着して用いられ、パイプの内部を清掃するための清掃用ブラシであって、シャフト本体と、同軸上においてシャフト本体の基端側に連なるドリル装着部と、を有するシャフトと、シャフト本体の周囲に、シャフト本体と平行に配設した複数の個別ブラシと、複数の個別ブラシを保持すると共に、中心部でシャフト本体に固定されたブラシホルダと、を備え、各個別ブラシは、複数の線材を縒り合せたブラシ軸と、ブラシ軸に固定された円柱状のブラシ体とから成り、ブラシホルダは、シャフト本体の基端部に固定された基端ホルダおよび先端部に固定された先端ホルダを有すると共に、シャフト本体と同軸上に配設され、複数の前記ブラシ体が全長にわたって接触し且つ前記パイプに対し前記各ブラシ体が所定の接触圧となるように前記シャフト本体側から支える筒状スペーサを有し、複数の個別ブラシをシャフト本体と同心円上であって、且つ周方向に均等間隔となるように保持していることを特徴とする。

【0007】
この構成によれば、電動ドリルに装着した状態で、電動ドリルを駆動すると、シャフトが回転し、ブラシホルダを介してシャフトに取り付けた複数の個別ブラシがシャフト廻りに回転(円運動)する。この回転する複数の個別ブラシをパイプに挿入してゆくと、複数の個別ブラシにおける複数のブラシ体が、パイプの内面に回転接触し、パイプ内面の付着物を掻き取ってこれを清掃する。
この場合、ブラシホルダを介して、シャフト本体の周囲に複数の個別ブラシを配置しているため、各個別ブラシのブラシ体は、ブラシ毛の短いものとなり、適度な接触力を持って、付着物を適切に掻き取ることができる。また、ブラシ毛は、一般的な太さの線材でよく、回転接触による負荷が極端に大きくなることがなく、一般的な電動ドリルにおいて、いわゆるブラシビット的に使用することができる。さらに、ブラシ軸とブラシ体とから成る個別ブラシは、市販品或いは市販品に一部改良を加えたものを用いることが可能であり、全体として製造コストを抑制することができる。したがって、低コストで且つ一般的な電動ドリルで使用可能であって、パイプの内部を適切に清掃することができる。
また、パイプの内面に強固に付着した付着物を適切に掻き取ることができだけでなく、パイプの内面を荒げることもできる。したがって、排水管等の金属のパイプを適切に清掃することができると同時に、内面コーティング等の下地も形成することができる。
さらに、各個別ブラシは、基端ホルダと先端ホルダとにより両持ちで支持される。これにより、ブラシ軸のバネ性を利用して、パイプの内面にブラシ体を弾力的に押し当てることができる。したがって、パイプの内面を均一に且つムラ無く清掃することができる。
しかも、筒状スペーサにより、ブラシ体の内側部位を撓ませた状態で、複数の個別ブラシを配置することができ、この内側部位の撓みによるバネ性により、パイプの内面にブラシ体を弾力的に押し当てることができる。したがって、パイプの内面を均一に且つムラ無く清掃することができる。また、弾力性を考慮した筒状スペーサとブラシ毛の硬さをバランスさせることにより、パイプに対するブラシ体の硬さを調整することができる。さらに、筒状スペーサの外径とブラシホルダとの協働により、4つのブラシ体の輪郭径(外径)をパイプの内径に合うように調整することができる。
なお、ブラシ体のブラシ毛は、パイプの材質や付着物のこびり付き状態等により、スチール、ステンレス、真鍮、樹脂等の線材から選択される。
【0012】
この場合、基端ホルダは、各ブラシ軸の基端側が係止される基端ホルダ本体を有し、先端ホルダは、各ブラシ軸の先端側が係止される先端ホルダ本体と、シャフト本体の先端部に締結され、先端ホルダ本体を介して各ブラシ軸に軸方向の引張り力および圧縮力のいずれか一方を作用させる締結部と、を有し、基端ホルダ本体および先端ホルダ本体には、引張り力または圧縮力に基づいて、各ブラシ軸にシャフト本体側に向かう分力を生じさせる傾斜部が、それぞれ設けられていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、回転に伴う遠心力に抗するように、複数の個別ブラシを、ガタツキ無く強固に保持することができる。一方、締結部の締結状態を解くことにより、基端ホルダ本体および先端ホルダ本体に対する各ブラシ軸の係止状態を容易に解くことができる。したがって、個別ブラシの交換等を容易に行うことができる。
【0014】
一方、複数のブラシ体の為す輪郭円の外径が、パイプの内径よりも大きい径に形成されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、複数のブラシ体をパイプの内面を均一に接触させることができる。また、この接触力の反力を受けるシャフトは、常にパイプの軸心に位置するため、回転ブレを生ずることがない。したがって、パイプの内面を均一に且つ円滑に清掃することができる。
【0018】
また、複数のブラシ体の軸方向の長さが、複数のブラシ体の為す輪郭円の外径の略2倍であることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、複数のブラシ体の軸方向の長さとその輪郭円の外径と、をバランスさせることにより、回転負荷を抑制しつつ、回転(円運動)する複数のブラシ体のセルフガイド性を生かすことができる。したがって、一般的な電動ドリルで使用可能であって、回転ブレを生ずることなくパイプの内面を円滑に清掃することができる。
【0020】
また、フレキシブルシャフトを介して電動ドリルに装着され、複数のブラシ体の軸方向の長さが、複数のブラシ体の為す輪郭円の外径よりも短く、且つ複数のブラシ体の為す輪郭円の外径に対し、軸方向の全長が短く形成されていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、パイプの内径に対し、複数のブラシ体の軸方向の長さを短くすることができる。したがって、フレキシブルシャフトとの協働により、パイプの曲り部分をも適切に清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係る清掃用ブラシの外観斜視図であって、斜め基端側から見た図(a)、および斜め先端側から見た図(b)である。
図2】実施形態に係る清掃用ブラシの分解斜視図であって、斜め基端側から見た図(a)、および斜め先端側から見た図(b)である。
図3】個別ブラシ単体の斜視図である。
図4】シャフト廻りの斜視図である。
図5】ブラシホルダ廻りの斜視図である。
図6】清掃用ブラシによるパイプの清掃方法を表した説明図である。
図7】第1実施形態の第1変形例に係る清掃用ブラシの側面図である。
図8】第1実施形態の第2変形例に係る清掃用ブラシの側面図である。
図9】第2実施形態に係る清掃用ブラシの側面図である。
図10】第3実施形態に係る清掃用ブラシの外観斜視図であって、斜め基端側から見た図(a)、および斜め先端側から見た図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る清掃用ブラシについて説明する。この清掃用ブラシは、パイプの内面を清掃するものであり、電動ドリルに装着して用いられるブラシビット的な形態を有している。実施形態のものは、既設の排水管の内面を清掃するために開発されたものである。
【0024】
例えば、排水管の改修工事において、スラブ貫通部や壁貫通部の配管部分では、貫通部の前後を切断して残置し、この部分のみ再利用することが行われる。残置される排水管は、立て管および横引き管を問わず、数十センチのものから数メートル程度のものとなるが、再利用を考慮して内面を清掃する(こびり付いたスライム等を除去する)必要がある。本実施形態の清掃用ブラシは、排水管(パイプ)を、簡易且つ適切に清掃するためのものであり、その清掃面は、付着物が除去されるだけでなく、金属製のパイプにあっては、荒げられてコーティング下地とすることも可能としている。以下、パイプ(排水管)の直管部分を清掃する清掃用ブラシについて説明すると共に、曲り部分を清掃する清掃用ブラシについて説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1は清掃用ブラシの外観斜視図であり、図2はその分解斜視図である。両図に示すように、この清掃用ブラシ10は、パイプPの直管部分を清掃するものであり、シャフト本体12と、同軸上においてシャフト本体12の基端側に連なるドリル装着部13と、を有するシャフト11と、シャフト本体12の周囲に、シャフト本体12と平行に配設した複数(実施形態のものは、4本)の個別ブラシ14と、4本の個別ブラシ14を保持すると共に、中心部でシャフト本体12に固定されたブラシホルダ15と、を備えている。
【0026】
ブラシホルダ15は、基端ホルダ17と先端ホルダ18とを有し、各個別ブラシ14を2箇所で保持している。各個別ブラシ14は、錆落とし等に用いる市販のワイヤーブラシが用いられており、ブラシホルダ15に対し着脱可能に、すなわち交換可能に保持されている。詳細は後述するが、作業者は、この清掃用ブラシ10を電動ドリルDに装着し、回転させながら清掃対象のパイプPに挿入すると共に前後に往復動させて、パイプPの内面を清掃する。これにより、パイプPの内面に付着したスライム等は、粉塵を伴って掻き取られる。なお、個別ブラシ14の本数は、2以上であればよく、その本数は任意である。
【0027】
[個別ブラシ]
図1図2および図3に示すように、個別ブラシ14は、スチールやステンレス等の複数本の線材を縒り合せたブラシ軸21と、ブラシ軸21に固定された円柱状のブラシ体22とから成るワイヤーブラシで構成されている。ブラシ軸21は、断面矩形の2本の線材(平針金)を縒り合せたものであり、ブラシ体22は、多数のブラシ毛22a(実施形態のものは、鋼線)を、縒り合せた線材に挟み込むようにして螺旋状に固定されている。したがって、ブラシ体22は、多数のブラシ毛22aを、螺旋状を為すように配置したものであり、全体として円柱状の輪郭を為している。
【0028】
ブラシ軸21の先端部は、ブラシ体22から先方にわずかに突出し(5~10mm程度)、この突出部分が先端ホルダ18に保持されている。ブラシ軸21の基端側は、その「柄」に相当する部分がブラシ体22から長く延びており、その基端部には、線材を折り曲げて形成したリング部23が設けられている。そして、このリング部23が、基端ホルダ17に係止(保持)されている。
【0029】
本実施形態の個別ブラシ14は、市販品或いは市販品に一部改良を加えたものであり、例えば呼び径50mmのパイプPを清掃するための清掃用ブラシ10では、ブラシ体22が、径が30mm、長さが100mm程度のものであり、ブラシ軸21の「柄」に相当する部分(リング部23を含む)の長さが120~150mm程度のものとなっている。
【0030】
本実施形態の清掃用ブラシ10では、4つのブラシ体22の為す輪郭円の外径が、パイプPの内径よりも大きい径に形成されている。例えば、呼び径50mmのパイプP用の清掃ブラシ10では、4つのブラシ体22の為す輪郭円の外径を55~60mmとしている。また、4つのブラシ体22の軸方向の長さが、4つのブラシ体22の為す輪郭円の外径の略2倍としている。例えば、呼び径50mmのパイプP用の清掃用ブラシ10では、4つのブラシ体22の輪郭径55~60mmに対し、4つのブラシ体22の軸方向の長さを100mm程度としている。
【0031】
[シャフト]
図1図2および図4に示すように、シャフト11は、個別ブラシ14と略同長のシャフト本体12と、シャフト本体12の先端に連なる雄ネジ部25と、シャフト本体12の基端に連なるドリル装着部13とから成り、スチールやステンレス等で一体に形成されている。そして、雄ネジ部25には、先端ホルダ18の一部を構成する締結ナット44(締結部)が螺合している(詳細は後述する)。ドリル装着部13は、電動ドリルDの3つ爪型チャックやワンタッチ型チャックに対応可能なホール溝付きの六角軸で構成されている。この場合の六角軸は、一般的な電動ドリルDに対応させるべく、二面幅が6.35mmのものとなっている。
【0032】
なお、図示のシャフト11は、長さが30~40cmのパイプPに対応させたものであるが、これを長く形成する(基端ホルダ17以降を延長)ことで、1m程度のパイプPにも対応可能である。もっとも、1mを越えるパイプPに対しては、後述する変形例において説明するが、シャフト11と電動ドリルDとの間に、アタッチメントとしてワイヤ等で構成された延長シャフト55を介在させるようにしている。
【0033】
[ブラシホルダ]
図1図2および図5に示すように、ブラシホルダ15は、シャフト本体12の基端部に固定された基端ホルダ17と、シャフト本体12の先端部に固定された先端ホルダ18と、シャフト本体12と同軸上において、基端ホルダ17および先端ホルダ18間に渡した筒状スペーサ28と、を有している。
【0034】
基端ホルダ17と先端ホルダ18とは、4本の個別ブラシ14をシャフト本体12と同心円上であって且つ周方向に均等間隔となるように保持している。また、基端ホルダ17と先端ホルダ18とは、ブラシ軸21に軸方向の圧縮力を加えるようにして、各個別ブラシ14を保持している。そして、筒状スペーサ28には、基端ホルダ17と先端ホルダ18とにより保持された各個別ブラシ14のブラシ体22が、シャフト本体12側(内側)において接触するようになっている。
【0035】
基端ホルダ17は、4本の個別ブラシ14の基端部を保持する基端ホルダ本体31と、シャフト本体12に固着され、基端ホルダ本体31が装着される基端ホルダ受け32と、を有している。基端ホルダ本体31は、金属或いは樹脂で形成され、基端ホルダ受け32は、シャフト11と同種の金属で形成されている。基端ホルダ受け32は、円板状の受け板部33と、受け板部33に添設した方形の角板部34とを有し、シャフト本体12の基端部に軸着されている。
【0036】
基端ホルダ本体31は、環状ベース部36と、環状ベース部36から放射状に外方に延びる4つの係止突起部37と、で一体に形成されている。環状ベース部36の中心部には、上記の角板部34に対応する方形の基端角孔部38が形成され、また環状ベース部36の軸方向内面側には、基端角孔部38を縁取るように基端環状段部39が形成されている。詳細は後述するが、基端環状段部39には、筒状スペーサ28の基端部が嵌合している。
【0037】
環状ベース部36の軸方向外面側は平坦に形成されており、基端ホルダ受け32に基端ホルダ本体31を装着した状態で、基端ホルダ受け32の受け板部33にこの環状ベース部36の外面側が当接する。また、この状態で、基端ホルダ受け32の角板部34に基端角孔部38が嵌合する。これにより、基端ホルダ本体31は、基端ホルダ受け32に対し、軸方向に位置決めされると共にシャフト11廻りの周方向においても位置決め(回転止め)される。
【0038】
4つの係止突起部37は、それぞれ基端角孔部38の各辺に直交するように外方へ延びると共に、それぞれ軸方向の内側にわずかに傾斜している。各係止突起部37には、個別ブラシ14のリング部23が掛け止めされるようにして係止されている。上述のように、各個別ブラシ14のブラシ軸21には、先端ホルダ18側から軸方向の圧縮力が作用する。
【0039】
このため、傾斜した係止突起部37に係止されたリング部23は、その付け根側が係止突起部37に突き当たると共に、環状ベース部36側に寄せられるようにして保持されている。これにより、基端ホルダ17に対し4本の個別ブラシ14の基端側は、シャフト本体12と同心円上であって且つ周方向に均等間隔となるように、強固に保持されている。なお、係止突起部37により、請求項に言う「傾斜部」が構成されている。
【0040】
先端ホルダ18は、4本の個別ブラシ14の先端部を保持する先端ホルダ本体41と、シャフト本体12に固着され、先端ホルダ本体41が装着される先端ホルダ受け42と、軸方向の外側から先端ホルダ本体41にキャッピングされる先端キャップ43と、先端キャップ43を挿通して延びる上記シャフト11の雄ネジ部25に螺合する締結ナット44(締結部)と、を有している。この場合も、先端ホルダ本体41および先端キャップ43は、金属或いは樹脂で形成され、先端ホルダ受け42および締結ナット44は、シャフト11と同種の金属で形成されている。
【0041】
先端ホルダ受け42は、基端ホルダ受け32の角板部34と同形の、いわゆる板ナットで構成されている。また、先端ホルダ受け42は、その4辺が、周方向において角板部34の4辺と合致するようにして、シャフト11の雄ネジ部25に螺合している。この場合、板ナットで構成された先端ホルダ受け42は、基端ホルダ受け32に対する周方向の角度調整、および先端ホルダ本体41に対する軸方向の位置調整可能に構成されている。また、先端ホルダ受け42(板ナット)は、締結ナット44と協働してダブルナットの機能(緩み止め)を奏する。
【0042】
先端ホルダ本体41は、円板状ベース部46と、円板状ベース部46に十字状に切り込むように形成した4つの係止スリット部47と、を有している。円板状ベース部46の外面側は中心部が盛り上がった緩いテーパー形状に形成されている。また、円板状ベース部46の中心部には方形の先端角孔部48が形成されている。さらに、円板状ベース部46の軸方向内面側には、先端角孔部48を縁取るように先端環状段部49が形成されている。詳細は後述するが、先端環状段部49には、筒状スペーサ28の先端部が嵌合している。
【0043】
先端ホルダ受け42に先端ホルダ本体41を装着した状態では、基端ホルダ受け42に円板状ベース部46の先端角孔部48が嵌合する。これにより、先端ホルダ本体41は、先端ホルダ受け42に対し、軸方向に微小移動可能に係合すると共にシャフト11廻りの周方向において位置決め(回転止め)される。もっとも、詳細は後述するように、先端ホルダ本体41は、上記の筒状スペーサ28により、軸方向の位置決めが為される。
【0044】
4つの係止スリット部47は、それぞれ先端角孔部48の各辺に直交するように延びている。各係止スリット部47のスリット幅は、個別ブラシ14のブラシ軸21に径に対応しており、係止スリット部47には、ブラシ軸21の先端部が入り込むようにして係止されている。4つの係止スリット部47は、上記の4つの係止突起部37と、周方向において同位置に配設されている。そして、この場合も、先端ホルダ18に対し4本の個別ブラシ14の先端側は、シャフト本体12と同心円上であって且つ周方向に均等間隔となるように保持されている。
【0045】
先端キャップ43は、中心部にシャフト11の雄ネジ部25が挿通するバカ孔51を有している。先端キャップ43の内面43a側(先端ホルダ本体41側)は、円板状ベース部46の外面側と相補的な緩いテーパー形状に形成されている。
【0046】
そして、先端キャップ43の内面43a側が、係止スリット部47に係止されたブラシ軸21の先端に当接しており、この状態で、雄ネジ部25に締結ナット44を螺合することにより、各ブラシ軸21に圧縮力が加えられる。また、先端キャップ43の内面43a側のテーパー形状により、ブラシ軸21の先端側も基端側と同様に、シャフト11の中心に向かう分力を受ける。これにより、各ブラシ軸21は、係止スリット部47の径方向内端側に寄せられるようにして保持されている。なお、先端ホルダ本体41と先端キャップ43とにより、請求項に言う「先端ホルダ本体」が構成されると共に、先端キャップ43(の内面43a)により、請求項に言う「傾斜部」が構成されている。
【0047】
[筒状スペーサ]
筒状スペーサ28は、円筒状に形成され、シャフト本体12に被せた状態で、基端ホルダ17と先端ホルダ18とに渡すように支持されている。具体的には、筒状スペーサ28は、基端部を基端ホルダ本体31の基端環状段部39に嵌合すると共に、先端部を先端ホルダ本体41の先端環状段部49に嵌合し、シャフト本体12と同軸上において、基端ホルダ17および先端ホルダ18に支持されている。そして、筒状スペーサ28は、4本の個別ブラシ14のブラシ体22をシャフト本体12側からバックアップするように支えている。
【0048】
ところで、パイプPの内面を清掃する場合、付着物(スライム)を効率良く掻き取るためには、ブラシ体22のブラシ毛22aを、適度に湾曲させ(撓ませ)適度な接触圧をもってパイプPの内面に接触させる必要がある。これは、ブラシ毛22aの「へたり」を抑制するためにも必要なこととされている。一方、個別ブラシ14として市販のものを用いた場合、接触圧はブラシ軸21の曲げ剛性でほぼ決定されてしまう。また、パイプPの材質(鋼管、樹脂管等)や、付着物のこびり付き度合いによっても、ブラシ体22(ブラシ毛22a)の接触圧を調整できることが好ましい。加えて、4つのブラシ体22の輪郭径をパイプPの内径に対応させるべく調整できることが好ましい。
【0049】
そこで、本実施形態では、ブラシ毛22aの材質や線径だけでなく、4つのブラシ体22の中心に筒状スペーサ28を配置し、接触圧や4つのブラシ体22の輪郭径を適宜調整できるようになっている。例えば、筒状スペーサ28の材質(金属や樹脂(ゴムやシリコンを含む))、外径、肉厚を、接触圧調整の因子として、本実施形態では、硬質なものから軟質なものまで硬さ(弾力性)の異なる複数種の筒状スペーサ28が、加えて径の異なる複数種の筒状スペーサ28が用意されている。
【0050】
例えば、本実施形態のように、パイプPが呼び径50mmの金属管である場合、筒状スペーサ28を径17mm程度の金属管とし、各ブラシ体22を輪郭径30mmの鋼線のブラシ毛22aとする(個別ブラシ14は4本)。
また、パイプPが呼び径65mmの樹脂管である場合、筒状スペーサ28を径30mm程度の樹脂管とし、各ブラシ体22を輪郭径30mmの樹脂線のブラシ毛22aとする(個別ブラシ14は4本)。
さらに、パイプPが呼び径100mmの金属管である場合、筒状スペーサ28を径50mm程度の金属管とし、各ブラシ体22を輪郭径30mmの鋼線のブラシ毛22aとする(この場合には、個別ブラシ14を6本とする)。
【0051】
筒状スペーサ28にバックアップされた各ブラシ体22は、ブラシホルダ15による上記の分力とバランスして、筒状スペーサ28の外周面に押し付けられた状態となる。この場合、各ブラシ体22は、シャフト本体12側となる内側部位22aaのブラシ毛22aが、筒状スペーサ28に接触して撓み、適度にバネ性を発揮する。また、隣接するブラシ体22において内側部位22aaのブラシ毛22aは、相互の隙間に入り込んで噛み合わされた状態となる。これにより、筒状スペーサ28の周りに4つのブラシ体22が隙間なく並び一体化する。
【0052】
なお、筒状スペーサ28は、ブラシ体22と同長の短いものであってもよい。かかる場合には、筒状スペーサ28の内径をシャフト本体12の外径と同径のものとし、筒状スペーサ28をシャフト本体12に嵌合固定する。また、ブラシ体22に対応するシャフト本体12の部分を、筒状スペーサ28の外径と同径に形成し、この太径部分が筒状スペーサ28を兼ねる形態としてもよい。
【0053】
このように構成されたブラシホルダ15に4本の個別ブラシ14を組み付ける場合には、先ずシャフト11に基端ホルダ受け32および先端ホルダ受け42を取り付ける。次に、シャフト11を起立させておいて、上側から基端ホルダ本体31を基端ホルダ受け32にセットし、更に筒状スペーサ28を基端ホルダ本体31に嵌め込んでセットする。次に、先端ホルダ本体41を、筒状スペーサ28に嵌め入れると共に先端ホルダ受け42にセットする。
【0054】
ここで、各個別ブラシ14のリング部23を基端ホルダ本体31の係止突起部37に係止すると共に、ブラシ軸21の先端部を先端ホルダ本体41の係止スリット部47に係止する。このとき、各個別ブラシ14のブラシ体22を筒状スペーサ28に押し付け、ブラシ体22の内側部位22aa同士を相互に噛み合わせるようにする。この噛み合わせにより、4本の個別ブラシ14は、基端ホルダ17および先端ホルダ18に仮セットされた状態となる。
【0055】
4本の個別ブラシ14をブラシホルダ15に組み付けたら、先端ホルダ本体41に先端キャップ43を被せ、シャフト11の雄ネジ部25に締結ナット44を螺合する。締結ナット44を締め付けると、先端キャップ43が4本のブラシ軸21をそれぞれ軸方向に押圧し、4本の個別ブラシ14が基端ホルダ17および先端ホルダ18に本固定される。これにより、各ブラシ軸21には、圧縮力とシャフト11の中心に向かう圧縮力の分力が作用し、4本の個別ブラシ14は、それぞれ基端ホルダ17および先端ホルダ18に両持ちの状態で不動に固定される。
【0056】
一方、個別ブラシ14を交換する場合には、締結ナット44を緩め、各個別ブラシ14を基端ホルダ17および先端ホルダ18から取り外す。そして、上記と同様の手順で新しい個別ブラシ14を、基端ホルダ17および先端ホルダ18にセットし、締結ナット44を締め付けるようにする。
【0057】
次に、図6を参照して、上記の清掃用ブラシ10を用いて行うパイプPの清掃方法について、簡単に説明する。なお、清掃作業に先行して、パイプPの内部をドライヤー等により乾燥させておくことが好ましい。
【0058】
同図に示すように、先ず清掃用ブラシ10を電動ドリルDのチャックに装着する。次に、4つのブラシ体22をパイプPの端部に宛がい、その先端部分をパイプPに浅く挿入する。ここで、電動ドリルDを駆動し、清掃用ブラシ10を回転させる。清掃用ブラシ10の正常な回転を確認したら、清掃用ブラシ10をパイプPに押し入れてゆく(前進:往動)。ブラシ体22の先端部がパイプPの逆側の端から顔を出すと、電動ドリルDの負荷が軽減し、ブラシ体22の先端部がパイプPの逆側の端に達したことが体感される。ここで、今度は清掃用ブラシ10を回転させながらゆっくり引き戻す(後退:復動)。
【0059】
このようにして、清掃用ブラシ10のブラシ体22をパイプP内で複数回往復動させる。清掃の初期においては、パイプPの内面に付着しているスライムが、粉塵を伴って掻き取られてゆくが、粉塵が極端に少なくなることで、スライムが除去されたことが体感される。スライムが除去されたら、清掃用ブラシ10をパイプPから引き抜き、電動ドリルDを停止させる。なお、この清掃作業において、電動ドリルDと同期駆動する集塵機等を用い、粉塵を吸引処理することが好ましい。
【0060】
[変形例]
次に、図7を参照して、第1実施形態の第1変形例に係る清掃用ブラシ10について説明する。同図に示すように、この清掃用ブラシ10は、長いパイプPを清掃するためのものであり、シャフト11の基端部に延長シャフト55が接続され、この延長シャフト55の基端部が電動ドリルDに装着される。
【0061】
延長シャフト55は、清掃用ブラシ10のアタッチメントを構成するものであり、太いワイヤで構成された延長シャフト本体56と、延長シャフト本体56の基部側に連なる六角装着部57と、延長シャフト本体56の先端側に連なるジョイント部58と、延長シャフト本体56をガイドするシャフトガイド59と、を有している。
【0062】
延長シャフト本体56は、長いパイプPに対応する長さを有し、電動ドリルD側からの回転力と推進力を伝達可能であって、適度なフレキシブル性を有するワイヤで構成されている。六角装着部57は、上記シャフト11のドリル装着部13と同様に、二面幅が6.35mmの六角軸で構成されている。ジョイント部58は、ドリル装着部13が装着されるワンタッチチャックの形態を有している。また、シャフトガイド59は、パイプPの端部に装着され、中心部に形成されたガイド孔59aにより、延長シャフト本体56の回転と往復動とをガイドする。
【0063】
作業者は、清掃用ブラシ10のシャフト11(ドリル装着部13)に、ジョイント部58を介して延長シャフト55を接続し、更に六角装着部57を介して延長シャフト55に電動ドリルDを装着する。この状態で、4つブラシ体22をパイプPに嵌め入れると共に、シャフトガイド59をパイプPの端部に装着する。ここで、電動ドリルDを駆動し、ブラシ体22を往復動させてパイプPの清掃を行う。
【0064】
次に、図8を参照して、第1実施形態の第2変形例に係る清掃用ブラシ10について説明する。同図に示すように、この清掃用ブラシ10では、基端ホルダ本体31が先端ホルダ本体41と同一の皿状の形態を有している。また、各係止スリット部47のスリット幅は、ブラシ軸21に径よりも細幅に形成されている。一方、ブラシ軸21にはリング部23が無く、これに代えて、ブラシ軸21の基端部および先端部には、係止スリーブ53が装着されている。
【0065】
各係止スリーブ53は、ブラシ軸21に装着される装着部53aと、突当て段部53bを介して、装着部53aに連なり断面長円形に「カシメ」られた係止部53cと、を有している。この場合、係止部53cの幅は、係止スリット部47のスリット幅に対応しており、各個別ブラシ14は、一対の係止スリーブ53を介して、基端ホルダ本体31および先端ホルダ本体41の係止スリット部47に側方からセットされる。
【0066】
この状態で、締結ナット44をネジ込むことにより、ブラシ軸21の両外端部が両係止スリット部47に固定され、且つ先端キャップ43により、ブラシ軸21に圧縮力が付与される。この構成では、個別ブラシ14の着脱(交換)を容易に行うことができ、且つ部品点数を削減することができる。
【0067】
以上のように、第1実施形態によれば、ブラシホルダ15を介して、シャフト11に4本の個別ブラシ14を取り付けているため、各個別ブラシ14のブラシ体22は、ブラシ毛22a(毛足)の短いものとなり、適度な接触力を持って、付着物を適切に掻き取ることができる。また、ブラシ毛22aは、一般的な太さの線材でよく、回転接触による負荷が極端に大きくなることがなく、一般的な電動ドリルDにおいて、いわゆるブラシビット的に使用することができる。さらに、ブラシ軸21とブラシ体22とから成る個別ブラシ14は、市販品或いは市販品に一部改良を加えたものを用いることが可能であり、全体として製造コストを抑制することができる。
【0068】
また、基端ホルダ17および先端ホルダ18により、各個別ブラシ14のブラシ軸21に圧縮力とシャフト11の中心に向かう分力とが作用させるようにしている。このため、4本の個別ブラシ14はブラシホルダ15に強固に保持され、清掃の際に強い負荷抵抗を受けることがあっても、ガタツキを生ずることがない。また、ブラシ軸21に作用させた分力と筒状スペーサ28との協働により、4つのブラシ体22をパイプPの内面に均一に押し付けることができ、パイプPの内面にムラなく均一に清掃することができる。しかも、締結ナット44を緩めることで、4本の個別ブラシ14は、基端ホルダ17および先端ホルダ18から簡単に取り外すことができ、ブラシ体22に「へたり」や摩耗が生じた場合に、簡単且つ迅速に交換することができる。
【0069】
なお、上記の基端ホルダ本体31と先端ホルダ本体41とを同一形状(第2変形例とは異なる)とすることも可能である。例えば、ブラシ軸21の先端部にもリング部23を形成すると共に、先端ホルダ本体41を基端ホルダ本体31と同一の形状とし、それぞれの係止突起部37を向い合せるように配置する。この状態で締結ナット44をネジ込むことにより(先端キャップ43は不要)、各リング部23が係止突起部37に固定される。
【0070】
同様に、ブラシ軸21をリング部23のない形態とし、基端ホルダ本体31および先端ホルダ本体41を、いずれも基端ホルダ本体31と先端キャップ43とを一体としたような形態とする。この場合も、締結ナット44をネジ込むことにより、ブラシ軸21の両外端部が係止スリット部47に固定される。
これらの構成では、個別ブラシ14の着脱(交換)を容易に行うことができ、且つ部品点数を削減することができる。
【0071】
[第2実施形態]
次に、図9を参照して、第2実施形態に係る清掃用ブラシ10Aについて説明する。なお、この実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。
第2実施形態の清掃用ブラシ10Aでは、基端ホルダ17Aと先端ホルダ18Aとにより、ブラシ軸21に軸方向の引張り力を加えるようにして、各個別ブラシ14を保持している。また、この清掃用ブラシ10Aには、上記のような先端キャップ43は無く、また締結ナット44に代えてナット状部材60が設けられている。なお、この実施形態でも、筒状スペーサ28は設けられているが、図示では省略されている。
【0072】
この場合のブラシ軸21は、先端および基端にそれぞれリング部23を有している。一方、基端ホルダ17Aの基端ホルダ本体31Aは、軸方向の外面側が緩いテーパー形状に窪入形成され、全体として皿状に形成されている。また、基端ホルダ本体31Aには、十字状を為すように、各ブラシ軸21が係止される4つの基端スリット部61が形成されている。
【0073】
同様に、先端ホルダ18Aの先端ホルダ本体41Aは、基端ホルダ本体31Aと同様に、軸方向の外面側が緩いテーパー形状に窪入形成され、全体として皿状に形成されている。また、先端ホルダ本体41Aには、十字状を為すように、各ブラシ軸21が係止される4つの先端スリット部62が形成されている。そして、先端ホルダ本体41Aの中心部には貫通孔63が形成され、先端ホルダ本体41Aは、貫通孔63の部分で後述するナット部材60の環状溝部64に回転可能に係合している。
【0074】
ナット部材60は、内周面にシャフト11の雄ネジ部25に螺合する雌ネジが形成され、外周面に六角工具掛け部に連なる環状溝部64を有している。そして、この環状溝部64に先端ホルダ本体41Aが回転自在に装着されている。基端ホルダ本体31Aおよび先端ホルダ本体41Aに各個別ブラシ14を係止し、ナット部材60を逆転させると、先端ホルダ本体41Aが外方に引かれ、ブラシ軸21が両リング部23の基部において、いわゆる首つり状態となる。
【0075】
すなわち、ブラシ軸21には引張り力が作用する。また、基端ホルダ本体31Aおよび先端ホルダ本体41Aのテーパー形状により、ブラシ軸21にシャフト11の中心に向かう分力が作用する。これにより、各ブラシ軸21は、基端スリット部61および先端スリット部62の径方向内端に向かって寄せられ、各ブラシ体22が筒状スペーサ28に押し付けられる。
【0076】
このように、第2実施形態にあっても、各個別ブラシ14のブラシ体22は、適度な接触力を持って、付着物を適切に掻き取ることができる。また、ブラシ毛22aは、一般的な太さの線材でよく、回転接触による負荷が極端に大きくなることがなく、ブラシビット的に使用することができる。さらに、個別ブラシ14は、市販品等を用いることが可能であり、全体として製造コストを抑制することができる。
【0077】
また、この実施形態では、各個別ブラシ14のブラシ軸21に、引張り力とシャフト11の中心に向かう分力とが作用させるようにしているため、4本の個別ブラシ14をブラシホルダ15に強固に保持することができると共に、簡単に取り外しすることができる。また、筒状スペーサ28との協働により、パイプPの内面にムラなく均一に清掃することができる。
【0078】
なお、第1実施形態および第2実施形態のブラシホルダ15では、ブラシ軸21に圧縮力や引張り力を作用させた状態で固定しているが、単純に固定する構造のものであってもよい。例えば、基端ホルダ17,17Aおよび先端ホルダ18,18Aを、外縁部に半円形の4つの係止溝を有して円板状に形成し、係止溝に係止した4つのブラシ軸21を基端ホルダ17,17Aの近傍および先端ホルダ18,18Aの近傍において、まとめてバンド止めし、或いは線材で巻き締めるようしてもよい。
【0079】
さらに、簡易な固定構造として、シャフト11に固定した筒状スペーサ28(この場合には角筒型が好ましい。)に、4つのブラシ体22を抱合せるように押し付けておいて、ブラシ毛22aの隙間を縫うようにして線材をからげ、4本の個別ブラシ14を直接、筒状スペーサ28に固定するものであってもよい。この場合、筒状スペーサ28をシャフト11に嵌合固定すれば、基端ホルダ17,17Aおよび先端ホルダ18,18Aは不要となる。
【0080】
[第3実施形態]
次に、図10を参照して、第3実施形態に係る清掃用ブラシ10Bについて説明する。なお、この実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。
この清掃用ブラシ10Bは、パイプPの曲り部分(例えば90°エルボ)の清掃を可能とするものであり、電動ドリルDに接続したフレキシブルシャフトFC(市販品)の先端部に装着して、用いられる。
【0081】
清掃用ブラシ10Bは、パイプPの曲り部分を通過できるように、各ブラシ体22の長さが短く、且つ4つのブラシ体22の輪郭径に対し、清掃用ブラシ10B全体の軸方向の長さが短く形成されている。例えば、呼び径50mmのパイプP(90°エルボ)用のものでは、ブラシ体22を15~20mm程度の長さとし、清掃用ブラシ10Bの全長を50mm程度としている。
【0082】
また、ブラシ軸21は基端側が切り詰められ、先端側と同様に、ブラシ体22から5~10mm程度突出し、その基端端には、上記のリング部23に代えて、フランジ部71が設けられている。そして、ブラシ軸21は、その短い基端部で基端ホルダ17Bに保持され、先端部で先端ホルダ18Bに保持されている。また、締結ナット44には、丈の短いもの(3種ナット)が用いられている。
【0083】
これにより、清掃用ブラシ10Bの軸方向の長さを極力短く形成して、パイプPの曲り部分を通過できるようにしている。なお、この清掃用ブラシ10Bは、パイプPの曲り部分だけでなく、直管部分も清掃可能である。
【0084】
このように、第3実施形態によれば、パイプPの曲り部分も適切且つ円滑に清掃することができる。加えて、上記の実施形態と同様に、各個別ブラシ14のブラシ体22は、適度な接触力を持って、付着物を適切に掻き取ることができる。また、ブラシ毛22aは、一般的な太さの線材でよく、回転接触による負荷が極端に大きくなることがなく、ブラシビット的に使用することができる。さらに、個別ブラシ14は、市販品等を加工して用いることが可能であり、全体として製造コストを抑制することができる。
【符号の説明】
【0085】
10,10A,10B…清掃用ブラシ、11…シャフト、12…シャフト本体、13…ドリル装着部、14…個別ブラシ、15…ブラシホルダ、17,17A,17B…基端ホルダ、18,18A,18B…先端ホルダ、21…ブラシ軸、22…ブラシ体、22a…ブラシ毛、22aa…内側部位、25…雄ネジ部、28…筒状スペーサ、31,31A…基端ホルダ本体、37…係止突起部、41,41A…先端ホルダ本体、43…先端キャップ、43a…内面、44…締結ナット、47…係止スリット部、55…延長シャフト、60…ナット部材、D…電動ドリル、FC…フレキシブルシャフト、P…パイプ
図1
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図4
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図10