(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】落橋防止装置
(51)【国際特許分類】
E01D 19/04 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
E01D19/04 101
(21)【出願番号】P 2020096591
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】509199007
【氏名又は名称】株式会社川金コアテック
(73)【特許権者】
【識別番号】503121088
【氏名又は名称】株式会社ビー・ビー・エム
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新名 裕
(72)【発明者】
【氏名】合田 裕一
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-244815(JP,A)
【文献】特開2020-045710(JP,A)
【文献】特開2012-122287(JP,A)
【文献】特開2014-231721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁構造物同士を連結する落橋防止装置であって、
一方の前記橋梁構造物に形成された第一取付部に固定された支圧板と、
前記支圧板から間隔をあけた位置に配設された支圧ブロックと、
前記支圧板と前記支圧ブロックとの間に介設された台座と、
前記支圧ブロックに固定された第一接続部と、
前記支圧板に形成された貫通孔を貫通して、一方の前記橋梁構造物と他方の前記橋梁構造物との間に横架された線材と、
前記線材の一端に固定された第二接続部と、
前記第一接続部と前記第二接続部とを連結する連結部材と、を備えており、
前記第二接続部は、前記貫通孔の内径よりも大きな幅を有しているとともに、前記支圧板と隙間をあけた位置において前記第一接続部と連結されていて、
前記連結部材の降伏点又は耐力が設計地震力以上であるとともに、当該連結部材の引張強さの上限値が前記第一取付部の耐力および他方の前記橋梁構造物に形成された前記線材の他端を取り付けるための第二取付部の耐力よりも小さいことを特徴とする、落橋防止装置。
【請求項2】
前記線材は、前記第一取付部に形成された第一貫通孔および前記第二取付部に形成された第二貫通孔を貫通しているとともに、他端が前記第二取付部に緩衝材を介して取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の落橋防止装置。
【請求項3】
前記緩衝材が螺旋状のバネ材であり、
前記緩衝材の一端は、前記第二取付部に固定された支圧板に当接されていて、
前記緩衝材の他端には、当該緩衝材を挿通した前記線材の他端が係止されていることを特徴とする、請求項2に記載の落橋防止装置。
【請求項4】
前記台座が、鋼管であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の落橋防止装置。
【請求項5】
前記第一接続部および前記第二接続部が、外面に係止部が形成されたブロック材であって、
前記第一接続部および前記第二接続部は、端面同士を突き合せた状態で前記係止部に係止された連結部材により連結されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の落橋防止装置。
【請求項6】
前記第一接続部が、ボルトを介して前記支圧ブロックに固定されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の落橋防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋桁の落下を防止するための落橋防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁では、地震時等の大きな揺れによって橋桁が下部工から落下するのを防止するために落橋防止装置が設けられている。このような落橋防止装置としては、並設された橋桁同士の間や橋桁と下部構造との間にワイヤーロープにより、大きな地震力が作用した際に橋桁が下部構造から落下することを防止するものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところが、ワイヤーロープは、設計地震力以上の耐力を有していればよく、ワイヤーロープの耐力の上限値は規定されていないのが一般的である。そのため、橋梁に想定外の力(設計地震力を超える力)が作用した際に、ワイヤーロープの耐力が橋梁構造物(取付部)の耐力よりも大きいがために、落橋防止装置よりも先に橋梁構造物に破損が生じるおそれがある。橋梁構造物が破損すると、復旧等に手間と費用がかかる。
【0004】
そのため、本出願人等は、橋梁構造物である橋桁に設けられた第一線材と、他の橋梁構造物に設けられた第二線材と、第一線材と第二線材とを連結する連結部材とを備える落橋防止装置を開示している。この落橋防止装置の連結部材の降伏点又は耐力は、設計地震力以上であるとともに当該連結部材の引張強さの上限値が第一線材の橋桁との取付部の耐力および第二線材の他の橋梁構造物との取付部の耐力よりも小さいため、想定外の地震力が作用した場合は、連結部材が先に破断することで、橋梁構造物が破損することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-231721号公報
【文献】特開2020-045710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の落橋防止装置は、連結部材が破断することで、橋梁構造物の取付部が破損することを防止するものの、橋梁構造物同士の連結が解除されてしまう。橋梁構造物同士の連結が解除された状態で橋桁が大きく移動すると、橋桁が下部構造から落下するおそれがある。そのため、特許文献2の落橋防止装置を採用する場合には、橋桁が大きく移動した場合であっても、橋桁が落下しない程度の桁かかり長を確保している。一方、桁かかり長を大きくすると、下部構造の構造が大規模になり、施工時の費用や手間がかかる場合がある。
【0007】
このような観点から、本発明は、想定外の地震力が作用した場合であっても、橋梁構造物に損傷が生じることがなく、かつ、橋桁の落下を防止することを可能とした落橋防止装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明は、橋梁構造物同士を連結して橋梁構造物の落下を防止する落橋防止装置であって、一方の前記橋梁構造物に形成された第一取付部に固定された支圧板と、前記支圧板から間隔をあけた位置に配設された支圧ブロックと、前記支圧板と前記支圧ブロックとの間に介設された台座と、前記支圧ブロックに固定された第一接続部と、前記支圧板に形成された貫通孔を貫通して一方の前記橋梁構造物と他方の前記橋梁構造物との間に横架された線材と、前記線材の一端に固定された第二接続部と、前記第一接続部と前記第二接続部とを連結する連結部材とを備えている。前記第二接続部は、前記貫通孔の内径よりも大きな幅を有しているとともに、前記支圧板と隙間をあけた位置において前記第一接続部と連結されている。また、前記連結部材の降伏点又は耐力が設計地震力以上であるとともに、当該連結部材の引張強さの上限値が前記第一取付部の耐力および他方の前記橋梁構造物に形成された前記線材の他端を取り付けるための第二取付部の耐力よりも小さい。
【0009】
かかる落橋防止装置によれば、連結部材の引張強さが既知であるため、橋梁構造物(橋桁、橋台、橋脚等)の落橋防止装置の取付部の強度を落橋防止装置の耐力以上にすることができる。そのため、橋梁に想定外の地震力が作用した場合は、連結部材が先に破断することで、橋梁構造物が破損することを防止できる。また、連結部材の破損後に橋梁構造物(橋桁)が大きく移動した場合であっても、第二接続部材が支圧板に係止されることで制御されるため、橋桁の落下を防止することができる。
【0010】
また、前記線材は、前記第一取付部に形成された第一貫通孔および前記第二取付部に形成された第二貫通孔を貫通しているとともに、他端が前記第二取付部に緩衝材を介して取り付けられているのが望ましい。このとき、前記緩衝材として螺旋状のバネ材を使用する場合には、前記緩衝材の一端を前記第二取付部に固定された支圧板に当接させて、前記緩衝材の他端には当該緩衝材を挿通した前記線材の他端が係止させるとよい。かかる落橋防止装置によれば、緩衝材によりレベル2地震動以下の地震により生じる地震エネルギーを吸収することで、橋梁構造物への負担を軽減することができる。
【0011】
また、前記台座が鋼管であれば、支圧ブロックを支持するとともに、落橋防止装置の取付部同士の間において露出する部分(接続部および連結部材)を覆うことで、風雨等に起因する腐食等を抑制し、メンテナンスに要する手間を省略あるいは低減することができる。
【0012】
また、前記第一接続部および前記第二接続部は、外面に係止部が形成されたブロック材であって、前記第一接続部および前記第二接続部は、端面同士を突き合せた状態で前記係止部に係止された連結部材により連結されているのが望ましい。
さらに、前記第一接続部は、ボルトを介して前記支圧ブロックに固定すればよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の落橋防止装置によれば、想定外の地震力が作用した場合であっても、橋梁構造物に損傷が生じることがなく、また、橋桁の落下を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る落橋防止装置を模式的に示す縦断面図である。
【
図2】本発明の落橋防止装置の一方の端部を示す拡大縦断面図である。
【
図3】本発明の落橋防止装置の接続部と連結部材を示す斜視図である。
【
図4】本発明の落橋防止装置の接続部を一部断面にして示す側面図である。
【
図5】本発明の落橋防止装置の連結部材を示す平面図である。
【
図6】本発明の落橋防止装置の他方の端部を示す拡大縦断面図である。
【
図7】(a)は本発明の通常時の落橋防止装置を示す縦断面図、(b)は連結部材が破断した後の落橋防止装置を示す縦断面図、(c)は連結部材の破断後にさらに橋梁鉱物が移動した際の落橋防止装置を示す縦断面図である。
【
図8】(a)~(c)は本発明の他の形態に係る接続部と線材との接合例を示す断面図である。
【
図9】本発明の他の形態に係る接続部と連結部材を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
【
図10】本発明のその他の形態に係る接続部と連結部材を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)平断面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態では、橋梁Bの橋桁B1の落下を防止するための落橋防止装置1について説明する。落橋防止装置1は、
図1に示すように、橋脚B2の上部に連設された2つの橋桁(橋梁構造物)B1,B1を連結している。なお、落橋防止装置1は、橋桁B1と橋台または橋桁B1と橋脚B2を連結してもよく、橋桁B1同士を連結する場合に限定されるものではない。
【0016】
橋桁B1は、隣り合う橋脚B2同士(
図1では、一方の橋脚B2のみが表示されている)または橋脚B2と橋台(図示せず)との間に横架されている。橋桁B1は、支承Sを介して橋脚B2に上載されている。支承Sの構成は限定されるものではなく、例えば、ゴム支承やすべり支承が使用可能である。隣り合う橋桁B1,B1同士の間には、隙間が形成されている。橋桁B1同士の間に隙間が形成されていることで、振動等により橋桁B1が移動した際に互いに接触することが防止されている。
【0017】
橋桁B1の端部には、落橋防止装置1を取り付けるための取付部2が形成されている。本実施形態の取付部2は、橋桁B1の橋軸方向端部において、主桁21と交差するように形成された横桁であって、主桁21に固定された桁材22と、桁材22を周囲に打設された巻立コンクリート23とにより構成されている。なお、取付部2の構成は限定されるものではない。
【0018】
落橋防止装置1は、隣り合う橋桁B1,B1の取付部2,2に横架されている。本実施形態では、落橋防止装置1が、上下に2段配設されている。なお、落橋防止装置1の数および配置は限定されるものではなく、例えば、1段であってもよい。
【0019】
取付部2には、落橋防止装置1を設置するためのシース管24が埋設されていることで、取付部2を橋軸方向(
図1において左右方向)に貫通する貫通孔(第一貫通孔または第二貫通孔)が形成されている。また、取付部2には、補強筋25が配筋されている。補強筋25は、取付部2の他方の橋桁B1と反対側の面に沿って配筋されている。補強筋25を配筋する範囲、鉄筋径、配筋ピッチ等は限定されるものではないが本実施形態では、取付部2に添設する支圧板3に対向するように配筋する。
【0020】
落橋防止装置1は、
図1及び
図2に示すように、支圧板3と、支圧ブロック4と、台座5と、接続部6と、連結部材7と、線材8とを備えている。
支圧板3は、一方の橋桁(
図1において左側の橋桁)B1の取付部(第一取付部)2に固定されている。支圧板3は、取付部2の一方の側面(
図1において左側面であって、他方の橋桁B1側とは逆側の面)に固定されている。支圧板3は、矩形状の鋼板により構成されている。支圧板3の中央には、貫通孔31が形成されている。貫通孔31は、線材8の外径よりも大きな内径を有している。支圧板3の四隅にはアンカー孔(図示せず)が形成されている。支圧板3は、取付部2に打ち込まれた打ち込みアンカー32をアンカー孔に挿通させた状態で係止することで、取付部2に固定されている。なお、支圧板3の固定方法は限定されるものではない。また、支圧板3の形状は限定されるものではなく、例えば、円形であってもよい。
【0021】
支圧ブロック4は、
図2に示すように、支圧板3の取付部2と反対側の面から台座5を介して間隔をあけた位置に配設されている。支圧ブロック4は、鋼材を組み合わせることにより側面視台形状、正面視円形に形成された部材であって、支圧板3側に配設された底板41と、底板41の板面に立設された複数の台形状のリブ42と、リブ42の先端(底板41と反対側の端部)に固定された天板43と、底板41と天板43との間に介設された筒材44とを備えている。底板41および天板43の中央には、ボルト用貫通孔(図示せず)が形成されている。ボルト用貫通孔は、接続部6(第一接続部61)を支圧ブロック4に固定するための接続部固定用ボルト(ボルト)63を挿通する内径を有している。筒材44は、ボルト用貫通孔の位置に対応するように配設されている。なお、支圧ブロック4の構成は限定されるものではなく、例えば、密実な部材であってもよいし、直方体状を呈していてもよい。また、支圧ブロック4に接続部6を固定するための部材は、ボルト(接続部固定用ボルト63)に限定されるものではなく、例えば、ワイヤーや鋼棒等を使用してもよい。
【0022】
台座5は、
図2に示すように、支圧板3と支圧ブロック4との間に介設されている。台座5は、軸力に対する耐力が連結部材7の引張耐力よりも大きな鋼管により構成されている。本実施形態の台座5は、上下に配設された鋼製の半割管51,51を組み合わせることにより円筒状に形成されている。台座5(半割管51)の端部には、継手用のフランジ52が形成されている。台座5(半割管51)は、フランジ52を挿通させたボルト(打ち込みアンカー32)を支圧板3または支圧ブロック4(底板41)に螺着することで、固定されている。台座5は、接続部6(第二接続部62)と支圧板3との間に、所定の大きさの間隔を確保できる長さを有している。なお、台座5は、円筒状に限定されるものではなく、例えば、角筒状であってもよい。また、台座5の構成は、連結部材7の引張耐力よりも大きな軸方向の耐力を有していれば筒状に限定されるものではなく、例えば、鋼材を組み合わせることにより形成された架台であってもよい。
【0023】
接続部6は、
図2に示すように、台座5の内部に配設されている。対向する一対の接続部6,6(第一接続部61および第二接続部62)は、一例として同一の形状を有している。本実施形態の接続部6(第一接続部61および第二接続部62)は、
図3に示すように、外面に係止部64が形成されたブロック材である。係止部64は、直方体状のブロック材である接続部6の他方の接続部6側の角部において、側方に突出するように形成されている。本実施形態の係止部64は、平面視で矩形と四分円とを組み合わせた形状を呈している。係止部64の高さ(接続部6の側面からの突出長)は、連結部材7の厚さよりも大きい。
図4に示すように、接続部6の中央部には、挿通孔65が形成されている。挿通孔65は、対向する他の接続部6側が拡径していることにより段差を有している。
【0024】
本実施形態では、接続部6として、支圧ブロック4に固定された第一接続部61と、第一接続部61に接続された第二接続部62とを有している。第一接続部61および第二接続部62は、
図3に示すように、端面同士を突き合せた状態で、係止部64に係止された連結部材7により連結されている。
【0025】
図2に示すように、第一接続部61は、接続部固定用ボルト63を介して支圧ブロック4に固定されている。接続部固定用ボルト63の一端は、支圧ブロック4の天板43の表面においてナット66が螺着されることで支圧ブロック4に固定されている。また、接続部固定用ボルト63の他端は、第一接続部61の挿通孔65の段差部に係止されたナット(図示せず)に螺着されることで、第一接続部61に固定されている。
【0026】
図2に示すように、第二接続部62(接続部6)は、支圧板3の貫通孔31の内径よりも大きな幅を有している。また、第二接続部62は、支圧板3との間に、所定の間隔をあけた位置において第一接続部61と連結されている。
【0027】
連結部材7は、
図3に示すように、第一接続部61と第二接続部62とを連結する。連結部材7は、端面同士を突き合せた第一接続部61と第二接続部62とにまたがった状態で、両接続部6の外面に添設されている。本実施形態の連結部材7は、接続部6の各面に添設された4枚の連結用板材71,71,…(
図3では2枚のみ表示されている)により構成されている。連結用板材71は、低降伏点鋼により形成されている。
図5に示すように、連結用板材71の橋軸方向に沿った一対の辺に凹部72が形成されている。本実施形態の凹部72は、半円状を呈しているが、凹部72の形状は、接続部6の係止部64の形状に応じた形状であれば限定されるものではない。連結用板材71の各角部には、それぞれ長孔73が形成されている。長孔73は、橋軸方向が長くなる向きに形成されている。連結用板材71は、
図3に示すように、長孔73を挿通させたボルト74を接続部6に螺着することにより、接続部6の側面に固定されている。
【0028】
4枚の連結用板材71,71,…(連結部材7)の降伏点又は耐力の合計は、設計地震力以上である。なお、一対の接続部6,6を1枚の連結用板材71により連結する場合には、1枚の連結用板材71の降伏点又は耐力を設計地震力以上とする。連結用板材71は、低降伏点鋼からなる板材であるため、引張強さの上限値が既知である。なお、連結用板材71(連結部材7)を構成する材料は、引張強さの上限値が既知であれば限定されるものではなく、必ずしも低降伏点鋼である必要はない。取付部2(橋桁B1の横桁等)は、4枚の連結用板材71,71,…(連結部材7)の引張強さの合計(連結用板材71が1枚の場合は、1枚の連結用板材71の引張強さ)よりも大きな耐力を確保する必要がある。本実施形態では、巻立コンクリート23によって断面寸法を大きくすることで、横桁の耐力を連結部材7の耐力よりも大きくしている。連結部材7(連結用板材71)の引張強さは、連結用板材71を構成する材料の引張り強さと、想定外の地震力が作用した際に破断させる位置の断面積によって算出することができる。なお、取付部2の構成は、橋桁B1の構成に応じて適宜決定すればよく、例えば、鋼構造であってもよい。また、巻立コンクリート23は必要に応じて形成すればよい。
【0029】
線材8は、亜鉛めっきワイヤーロープにより構成されている。なお、線材8を構成するワイヤーロープは、必ずしも亜鉛メッキされている必要はない。また、線材8を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、鋼棒等を使用してもよい。線材8は、
図1に示すように、一方の橋桁B1の取付部2に埋設されたシース管24(第一貫通孔)および他方の橋桁B1の取付部2に埋設されたシース管24(第二貫通孔)を貫通している。すなわち、線材8は、両橋桁B1,B1の間に横架されている。
【0030】
線材8の一端は、
図2に示すように、支圧板3の貫通孔31を貫通して台座5内に配設されている。線材8の他端は、
図6に示すように、他方の橋桁B1の取付部2(第二取付部)に緩衝材82を介して取り付けられている。また、線材8の一端には、
図2に示すように、第二接続部62が固定されている。
図4に示すように、線材8の一端には、線材8の外径よりも大きな外径を有した定着ナット81が固定されている。線材8の端部は、定着ナット81を第二接続部62の挿通孔65の段差に係止することで、第二接続部62に係止(固定)されている。なお、線材8と第二接続部62との固定方法は限定されるものではない。
【0031】
線材8の他端は、他方の橋桁(
図1において右側の橋桁)B1の取付部(第二取付部)2および取付部2に固定された支圧板3を貫通して、当該取付部2から所定の長さ突出している。線材8の他端には、
図6に示すように、線材8の外径よりも大きな外径を有した定着ナット81が固定されている。ここで、支圧板3(他方の橋桁B1に固定された支圧板3)と定着ナット81との間隔は、第二接続部62と支圧板3(一方の橋桁B1に固定された支圧板3)との間隔との合計が橋桁B1の桁かかり長よりも小さくなるようにする。
【0032】
支圧板3と定着ナット81との間には、緩衝材82が介設されている。本実施形態では、緩衝材82として、螺旋状のパネ材を使用するが、緩衝材82の構成は限定されるものではなく、例えば、ゴム等の弾性材やシリンダー状の部材であってもよい。緩衝材82の中央部は中空で、線材8は緩衝材の中央部を挿通している。緩衝材82の一端は支圧板3に当接し、緩衝材82の他端には線材8の他端が軽視されている。線材8の取付部2からの突出部分は、保護カバー83により覆われている。保護カバー83は筒状部材からなり、保護カバー83の一端は、支圧板3に固定されていて、保護カバー83の他端は遮蔽されている。保護カバー83を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、鋼管、塩化ビニル管、ポリエチレン管等により構成すればよい。
【0033】
橋梁Bに設計地震力以下の地震力が作用すると、支承Sにより揺れを吸収する。橋桁B1同士が離隔した場合であっても、線材8それぞれ取付部2に対して摺動するとともに、緩衝材82によって地震エネルギーを吸収することで、連結部材7に応力が作用することはない。そのため、
図7(a)に示すように、接続部6同士の接続が維持され、第二接続部62と支圧板3との間の間隔も維持されている。
【0034】
また、橋梁Bに設計地震力以上(レベル2以上)の地震力が作用して、支承Sに破損が生じた場合であっても、橋桁B1同士が落橋防止装置1によって連結されているため、橋桁B1が橋脚B2から落下することが防止される。
【0035】
さらに、連結部材7の引張強さよりも大きな地震力が橋梁Bに作用した場合には、
図7(b)に示すように、連結部材7が破断する。連結部材7が破断することで、橋桁B1の取付部2(橋桁B1の横桁)に破損が生じることが防止される。
【0036】
また、連結部材7の破断後の橋桁B1の移動量が大きい場合であっても、
図7(c)に示すように、第二接続部62が支圧板3に係止されることで、橋桁B1の橋脚B2からの落下が防止させる。支圧板3(他方の橋桁B1に固定された支圧板3)と定着ナット81との間隔(
図6参照)と、第二接続部62と支圧板3(一方の橋桁B1に固定された支圧板3)との間隔(
図2参照)との合計が、橋桁B1の桁かかり長よりも小さいため、橋桁B1が最大限に移動した場合であっても、橋桁B1の落下が防止される。
【0037】
以上、落橋防止装置1によれば、連結部材7の引張強さが既知であるため、橋梁構造物(橋桁B1、橋台、橋脚B2等)の落橋防止装置1の取付部2の強度を、落橋防止装置1の耐力以上にすることができる。そのため、橋梁Bに想定外の地震力が作用した場合は、連結部材7が先に破断することで、橋梁構造物(取付部2)が破損することを防止できる。また、連結部材7の破損(分断)後も、接続部6が支圧板3に係止されることで、橋桁B1同士の連結状態が維持されて、橋桁B1が橋脚B2から落下(落橋)することが防止される。
【0038】
また、連結部材7(連結用板材71は、接続部6に着脱可能に固定されているため、連結部材7が破断した場合であっても連結部材7の交換が容易である。
また、連結部材7には、幅を減縮させてた半円状の凹部72が橋軸方向中間部に形成されているため、連結部材7の中間部(所定の位置)において破断させることができる。そのため、連結部材7の引張強さを算出して、取付部2の強度を確実に連結部材7の引張強さよりも大きくすることができる。
【0039】
落橋防止装置1の取付部2同士の間の区間(接続部6および連結部材7)は、筒状の台座5により覆われているため、紫外線劣化や雨水等による劣化に対して保護されている。同様に、線材8の他端も保護カバー83により覆われているため、紫外線劣化や雨水等による劣化に対して保護されている。
線材8の他端に設けられた緩衝材82により地震時等の揺れを吸収する。
【0040】
以上、本発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、線材8と接続部6との固定方法は限定されるものではない。例えば、
図8(a)に示すように、線材8の端部を分岐させた状態で、それぞれを挿通孔65内において定着ナット81を介して固定してもよい。
【0041】
また、
図8(b)に示すように、接続部6は、線材8または接続部固定用ボルト63の端部に螺合することにより固定してもよい。このとき、接続部6の挿通孔65の内面に雌ネジ加工を施しておくとともに、線材8の端部に雄ネジ加工を施しておく。
さらに、
図8(c)に示すように、接続部6の挿通孔65を挿通させた線材8の端部に、ナットを螺合することにより、線材8と接続部6とを固定してもよい。
【0042】
また、接続部6の構成は、前記実施形態で示したものに限定されるものではない接続部6の係止部64は、
図9(a)および(b)に示すように、接続部6の側面に形成された凹部であってもよい。この場合には、連結部材7を接続部6の係止部64に嵌め込んだ状態で固定すればよい。
【0043】
また、接続部6は、
図10(a)および(b)に示すように、線材8または接続部固定用ボルト63の端部に形成された(固定された)ボルトが挿通可能ないわゆるアイエンドスリーブやフォークエンドスリーブであってもよい。このとき、連結部材7は、両端部にボルトを挿通するための貫通孔が形成された小判型の低降伏点鋼からなる連結用板材71により構成すればよい接続部6がアイエンドスリーブの場合には、接続部6の上下に配設された2枚の連結用板材71を配設すればよく、接続部6がフォークエンドスリーブの場合は接続部6によって連結用板材71を挟むように配設すればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 落橋防止装置
2 取付部(第一取付部、第二取付部)
24 シース管
3 支圧板
31 貫通孔
4 支圧ブロック
5 台座
6 接続部
61 第一接続部
62 第二接続部
63 接続部固定用ボルト(ボルト)
64 係止部
7 連結部材
71 連結用板材
8 線材
82 緩衝材
B 橋梁
B1 橋桁(橋梁構造物)