(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】ブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具
(51)【国際特許分類】
B60K 26/02 20060101AFI20240111BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20240111BHJP
【FI】
B60K26/02
G05G1/30 E
(21)【出願番号】P 2019148991
(22)【出願日】2019-08-14
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】319010516
【氏名又は名称】加瀬 龍男
(74)【代理人】
【識別番号】100133547
【氏名又は名称】木戸 基文
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 龍男
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特許第6435448(JP,B1)
【文献】特開2018-177194(JP,A)
【文献】特開2014-206962(JP,A)
【文献】中国実用新案第202557298(CN,U)
【文献】特開平09-267666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 26/00 - 26/04
G05G 1/00 - 25/04
B60T 1/00 - 7/10
F02D 11/04
B60W 50/00 - 50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具であって、
アクセルペダルとブレーキペダルとを連結するくの字形のテコ部材と、ブレーキペダルより左側に突出した形状のワイドブレーキペダルカバーとからなり、
前記テコ部材が、その一端にコの字形のアクセルペダル挟着部を
一体成形して備え、その他端に環状のワイドブレーキペダルカバー軸着部を備えており、
前記テコ部材が、ワイドブレーキペダルカバー軸着部から支点までの長さが、アクセルペダル挟着部から支点までの長さよりも長いことを特徴とするブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具。
【請求項2】
前記ワイドブレーキペダルカバーが、コの字形のブレーキペダル挟着部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具。
【請求項3】
前記テコ部材が、その支点が車体床面に当接する位置に緩衝部材を備えていることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載のブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブレーキペダルを踏むつもりで誤ってアクセルペダルを踏んで急発進や急加速することを防止するブレーキとアクセルの踏み間違い防止装置に関し、特に簡単に後付けでき、踏み間違えたアクセルペダルを戻す機構を備えて、ブレーキとアクセルの踏み間違いを修正できる器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキとアクセルの踏み間違い防止装置としては、ブレーキペダルに、左側に突出したカバーをかぶせたブレーキペダルカバーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このブレーキペダルカバーでは、ブレーキペダルを幅広にして、左足でブレーキペダルを踏むことで踏み間違わないようになっている。
【0003】
別のブレーキとアクセルの踏み間違い防止装置としては、アクセルペダルとブレーキペダルの間の一部を覆う踏み板部材を備えたペダル操作補足器具が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このペダル操作補足器具では、駐車するときに踏み板部材を介してアクセルペダルとブレーキペダルの上に同時に足を置けるようにして、ペダル操作に伴う横移動をなくすことで踏み間違わないようになっている。
【0004】
また別のブレーキとアクセルの踏み間違い防止装置としては、アクセルペダルの上に支柱からなる台を取り付けた踏み間違い事故防止対策装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この踏み間違い事故防止対策装置では、ブレーキを踏むように右足を上げてアクセルを踏むと、台が邪魔してアクセルペダルを踏めないようになっている。
【0005】
踏み間違い防止装置ではないものの、ブレーキとアクセルの踏み間違い防止システムとして、アクセルの踏み間違いを検出すると、車両の急加速を抑えるための複数段階の制御レベルのうち対応する制御内容を車両制御手段に出力する踏み間違い対応装置用のプログラムが提案されている(例えば、特許文献4参照)。この踏み間違い対応装置用のプログラムでは、アクセルの踏み間違いを検出すると、制御内容を決定し、アクセルの踏み込み量に対して加速度を0.2倍や、アクセルの踏み込み量に関わらず加速度をゼロとするようにエンジンを制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-177194号公報(段落0010、
図2)
【文献】実用新案登録第3188111号公報(段落0013、
図1A)
【文献】特開2018-162048号公報(段落0012、
図1)
【文献】特開2012-166631号公報(段落0051,0052、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に係るブレーキとアクセルの踏み間違い防止装置では、ブレーキペダルを幅広にして、左足でブレーキペダルを踏むようになっているところ、自動車教習所では右足でブレーキを踏むように指導しているために、左足ブレーキを練習することなくいきなり左足でブレーキペダルを踏み始めると微妙なペダル調整ができなくて危険である。また、左足ブレーキを練習しても、右足でブレーキペダルを踏むことを体が覚えているために、とっさに右足がアクセルペダルを踏んでしまうおそれもある。
【0008】
さらに、発明者の経験によると、パニック状態になると足を突っ張ってしまうことがあり、右足でアクセルペダルを、左足でブレーキペダルを同時に踏んでしまうおそれがある。
【0009】
前記特許文献2に係るブレーキとアクセルの踏み間違い防止装置では、踏み板部材を介してアクセルペダルとブレーキペダルの上に同時に足を置けるようになっているために、アクセルペダルとブレーキペダルを同時に踏んでしまうおそれがある。
【0010】
前記特許文献3に係るブレーキとアクセルの踏み間違い防止装置では、台が邪魔してアクセルペダルを踏めないようになっているところ、台の上に新たにブレーキが必要になるために、後付けできない。
【0011】
前記特許文献4に係るブレーキとアクセルの踏み間違い防止システムでは、アクセルを強く踏み込むとアクセルの踏み間違いを検出して、加速しないようエンジンを制御するようになっているために、例えば、高速道路で本線に進入するときや、前走車を抜いて前走車の前に入る追い越しのときなど、アクセルを強く踏み込まなくてはならないときに、アクセルの踏み間違いと判断されて加速できないおそれがある。
【0012】
そこで、この発明では、前記した課題を解決し、簡単に後付けでき、踏み間違えたアクセルペダルを戻す機構を備えて、ブレーキとアクセルの踏み間違いを修正できる器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明では、ブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具を、アクセルペダルとブレーキペダルとを連結するくの字形のテコ部材と、ブレーキペダルより左側に突出した形状のワイドブレーキペダルカバーとから構成した。テコ部材は、その一端にコの字形のアクセルペダルを挟んだ状態で取り付ける(以下、挟着(きょうちゃく)という。)アクセルペダル挟着部を備え、その他端に環状のワイドブレーキペダルカバー軸着部を備えるようにした。そして、テコ部材を、ワイドブレーキペダルカバー軸着部から支点までの長さが、アクセルペダル挟着部から支点までの長さよりも長くした。
【0014】
請求項2に係る発明では、ワイドブレーキペダルカバーに、コの字形のブレーキペダル挟着部を備えるようにした。
【0015】
請求項3に係る発明では、テコ部材の支点が車体床面に当たった状態で接する(以下、当接(とうせつ)という。)位置に緩衝部材を備えるようにした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、ブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具を、アクセルペダルとブレーキペダルとを連結するくの字形のテコ部材を有して構成したので、アクセルペダルとブレーキペダルを連動させることができる。そのため、請求項1に係る発明によれば、右足がブレーキペダルを踏むつもりで誤ってアクセルペダルを踏んでいても、左足でブレーキペダルを踏むと、ブレーキペダルが踏み込まれたことに連動して、踏み間違えたアクセルペダルを戻すことができる。
【0017】
ここで、請求項1に係る発明によれば、テコ部材について、ワイドブレーキペダルカバー軸着部から支点までの長さを、アクセルペダル挟着部から支点までの長さよりも長くしたので、ブレーキペダルとアクセルペダルを一緒に踏むと、てこの原理によって、アクセルペダルを起こすことができ、踏み間違えたアクセルペダルを戻すことができる。
【0018】
このように、請求項1に係る発明によれば、右足がブレーキペダルを踏むつもりで誤ってアクセルペダルを踏んでいても、左足でブレーキペダルを踏むと、ブレーキがかかると同時に踏み間違えたアクセルペダルを戻せるので、ブレーキを確実に利かせることができる。そのため、請求項1に係る発明によれば、「ブレーキをかけたが利かなかった」と説明するようなブレーキとアクセルの踏み間違い事故を防ぐことができる。つまり、請求項1に係る発明によれば、ブレーキをかけたが利かなければ、左足でブレーキペダルを踏むことで、ブレーキをかけると当時に踏み間違えたアクセルペダルを戻して、ブレーキとアクセルの踏み間違いを修正することができる。
【0019】
また、請求項1に係る発明によれば、ブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具を、ブレーキペダルより左側に突出した形状のワイドブレーキペダルカバーを有して構成したので、既存のブレーキペダルにワイドブレーキペダルカバーを取り付けて、ブレーキペダルのペダル面を左側に幅広く延伸させることができる。ここで、既存のブレーキペダルは、右足で踏みやすいよう、ハンドルに対して右側に寄っているところを、請求項1に係る発明によれば、ワイドブレーキペダルカバーを取り付けてペダル面を左側に幅広く延伸させたので、左足でブレーキペダルを踏みやすくすることができる。
【0020】
そして、請求項1に係る発明によれば、ブレーキペダル面を左側に幅広く延伸させて左足でブレーキペダルを踏みやすくしたので、左足を突っ張るだけでブレーキペダルを確実に踏むことができる。ここで、左足を突っ張る動作は、左足でかかとを付けずに踏み込むというクラッチペダルの踏み方と同じなので、マニュアル車の運転経験のある方、例えばブレーキとアクセルの踏み間違い事故を起こしやすい高齢者の方にはなじみの動作であり、体が覚えている。そのため、ブレーキをかけたが利かないと思うような、ブレーキとアクセルを踏み間違えた緊急時には、反射的に左足でブレーキペダルを踏み込むことができる。
【0021】
さらに、請求項1に係る発明によれば、ワイドブレーキペダルカバーを取り付けてペダル面を左側に幅広く延伸させたので、言い換えると、既存のブレーキペダルの位置はそのままでペダル面を左側に幅広く延伸させたので、平常時は従来どおり右足でブレーキペダルを踏むことができる。そのため、請求項1に係る発明によれば、踏み間違い修正器具を取り付けても、平常時には変わりなくペダルの操作をすることができる。
【0022】
加えて、請求項1に係る発明によれば、テコ部材の一端にコの字形のアクセルペダル挟着部を備えるようにしたので、アクセルペダル挟着部で既存のアクセルペダルを挟んで、アクセルペダルに簡単に取り付けることができる。
【0023】
請求項2に係る発明によれば、ワイドブレーキペダルカバーに、コの字形のブレーキペダル挟着部を備えるようにしたので、ブレーキペダル挟着部で既存のブレーキペダルを挟んで、ブレーキペダルに簡単に取り付けることができる。
【0024】
このように、請求項1と請求項2に係る発明によれば、アクセルペダル挟着部でアクセルペダルを挟み、ブレーキペダル挟着部でブレーキペダルを挟むだけなので、踏み間違い修正器具を簡単に後付けすることができる。
【0025】
請求項3に係る発明によれば、テコ部材の支点が車体床面に当接する位置に緩衝部材を備えるようにしたので、テコ部材がずれ動いても車体床面を傷つけることがない。
【0026】
また、請求項3に係る発明によれば、テコ部材の支点が車体床面に当接する位置に緩衝部材を備えるようにしたので、緩衝部材の厚みを変えて、車種ごとに異なる各ペダルまでの高さに対応させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具の斜視図である。
【
図2】実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具を取り付けた状態の斜視図である。
【
図3】実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具のブレーキとアクセルを踏み間違えたときの対応を説明するイメージ図である。
【
図4】実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具を取り付けた状態の側面図である。
【
図5】実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具のアクセルペダルを戻す機構を説明するイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、この発明の創作の基礎となる事項について簡単に説明する。この発明は、発明者がブレーキとアクセルを踏み間違った体験から、具体的には、すぐに踏み間違いに気づき、とっさに左足でブレーキペダルを踏んで事故にならなくて済んだものの、右足がアクセルペダルを踏み続けていたために、発進時で低速だったにもかかわらず、なかなかブレーキが利かなくてヒヤヒヤした体験から創作されたものである。
【0029】
発明者は、この体験から、踏み間違いに気づいても、パニック状態になると足に力が入るために、とっさに右足をアクセルペダルから離せないことに気づいた。また、発明者は、踏み間違えたアクセルペダルを戻さないと、ブレーキを作動させるだけではブレーキが利きにくいために、踏み間違い事故につながってしまうことにも気づいた。
【0030】
そこで、発明者は、アクセルペダルとブレーキペダルとをてこの原理を使って連結させることができれば、ブレーキペダルを踏み込むという一つの動作で、ブレーキをかけると同時に踏み間違えたアクセルペダルを戻すことができることを見いだし、この発明を創作するに至ったものである。
【0031】
次に、この発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具の斜視図である。
図1に示すように、ブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1は、アクセルペダルとブレーキペダルとを連結するくの字形のテコ部材2と、ブレーキペダルより左側に突出した形状のワイドブレーキペダルカバー3と、緩衝部材4とで構成されている。
【0032】
テコ部材2は、くの字形の部材であり、その一端にコの字形のアクセルペダル挟着部21を備え、その他端に環状のワイドブレーキペダルカバー軸着部22を備えている。そして、テコ部材2は、ワイドブレーキペダルカバー軸着部22から支点23までの長さが、アクセルペダル挟着部21から支点23までの長さよりも長くなっている。ここでは、テコ部材2は、ワイドブレーキペダルカバー軸着部22から支点23までの長さと、アクセルペダル挟着部21から支点23までの長さの比が2対1になっている。
【0033】
ワイドブレーキペダルカバー3は、ブレーキペダルよりも幅の広い、ブレーキペダルより左側に突出した形状のカバーであり、その一端にコの字形のブレーキペダル挟着部31を備え、その他端に軸32を備えている。そして、ワイドブレーキペダルカバー3は、軸32をワイドブレーキペダルカバー軸着部22に通して、テコ部材2に回転可能に支持されている。
【0034】
緩衝部材4は、テコ部材2が車体床面と擦れ合うことを緩和する部材であり、アクセルペダルを加減せず思い切り踏み込んだ、いわゆるベタ踏みのときに支点23が緩衝部材4に当たった状態で接するように、ここでは両面テープで車体床面に貼り付けられている。
【0035】
図2は、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1を取り付けた状態の斜視図である。
図2に示すように、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1は、コの字形のアクセルペダル挟着部21をアクセルペダルAに引っ掛け、コの字形のブレーキペダル挟着部31をブレーキペダルBに引っ掛けて、簡単に後付けできるようになっている。
【0036】
ここでは、ブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1は、アクセルペダル挟着部21をアクセルペダルAに引っ掛けてから、アクセルペダル挟着部21の開口近くをボルトとナットでねじ止めして、アクセルペダルAから外れないようになっている。また、ブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1は、ブレーキペダル挟着部31をブレーキペダルBに引っ掛けてから、ブレーキペダル挟着部31の開口近くをボルトとナットでねじ止めして、ブレーキペダルBから外れないようになっている。
【0037】
図2に示すように、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1は、アクセルペダルAとブレーキペダルBとをくの字形のテコ部材2で連結しているために、アクセルペダルAとブレーキペダルBを連動させられる。
【0038】
図3は、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1のブレーキとアクセルを踏み間違えたときの対応を説明するイメージ図である。
図3に示すように、右足RでブレーキペダルBを踏むつもりで誤ってアクセルペダルAを踏んでしまったとき、言い換えると、運転手が「ブレーキをかけたが利かない」と思うときには、左足Lでワイドブレーキペダルカバー3を踏み込む。そうすると、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1では、右足RがアクセルペダルAを踏んでいても、左足Lでワイドブレーキペダルカバー3を踏み込むと、ブレーキペダルBが下がってブレーキがかかると同時に、踏み間違えたアクセルペダルAが起き上がりアクセルが戻る。このように、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1では、ブレーキがかかると同時に踏み間違えたアクセルペダルAが戻るために、ブレーキがよく利く。
【0039】
ここで、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1は、テコ部材2は、ワイドブレーキペダルカバー軸着部22(ここでは、力点に相当する。)から支点23までの長さが、アクセルペダル挟着部21(ここでは、作用点に相当する。)から支点23までの長さよりも長いために、右足RがアクセルペダルAを踏んでいても、左足Lでワイドブレーキペダルカバー3を踏み込むと、てこの原理によって、アクセルペダルAが起き上がるものである。
【0040】
また、
図3に示すように、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1は、ワイドブレーキペダルカバー3がブレーキペダルBより左側に突出した形状であるために、左足Lをまっすぐに踏み込むだけでワイドブレーキペダルカバー3を踏める。ここで、ワイドブレーキペダルカバー3を、足元スペースの左側いっぱいに、少なくとも隙間が靴の幅よりも狭くなるように左側に幅広くしておくと、踏み込んだ左足Lがワイドブレーキペダルカバー3から踏み外れることがない。
【0041】
図4は、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1を取り付けた状態の側面図である。
図4に示すように、アクセルペダル挟着部21は、アクセルペダルAに引っ掛けてアクセルペダルAを挟んだ状態で着けられているところ、厚み方向に意図的に設けられた隙間(以下、遊びという。)が設けられている。
【0042】
また、
図4に示すように、ワイドブレーキペダルカバー軸着部22は、軸32を通してワイドブレーキペダルカバー3をテコ部材2に回転可能に支持しているところ、軸32に対して遊びが設けられている。
【0043】
さらに、
図4に示すように、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1は、支点23が車体床面に当接する位置に緩衝部材4を備えているために、支点23がずれ動いても車体床面を傷つけない。また、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1は、緩衝部材4の厚みを変えて、車種ごとに異なる車体床面からアクセルペダルAやブレーキペダルBまでの高さに対応させられる。
【0044】
図5は、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1のアクセルペダルAを戻す機構を説明するイメージ図である。
図5の(a)は、アクセルペダルAとブレーキペダルBを共に踏んでいない状態のイメージ図である。
図5の(b)は、正しく右足でアクセルペダルAを踏んだ状態と、右足でブレーキペダルBを踏むつもりで誤ってアクセルペダルAを踏んでしまった状態のイメージ図である。
図5の(c)は、正しく右足でブレーキペダルBを踏んだ状態と、ブレーキをかけたが利かないと思い、左足でワイドブレーキペダルカバー3を踏み込んだ状態のイメージ図である。
【0045】
まずは、正しく右足でアクセルペダルAや、ブレーキペダルBを踏んだ状態について説明する。
図5の(a)は、アクセルペダルAとブレーキペダルBを共に踏んでいない状態のイメージ図である。
図5の(a)に示すように、アクセルペダルAとブレーキペダルBを共に踏んでいない状態では、アクセルペダル挟着部21はアクセルペダルAに力を加えないように、ブレーキペダル挟着部31はブレーキペダルBに力を加えないように位置決めされている。なお、アクセルペダル挟着部21は、アクセルペダルAの下側に遊びを設けて位置決めされている。
【0046】
図5の(b)は、正しく右足でアクセルペダルAを踏んだ状態のイメージ図である。
図5の(b)に示すように、正しく右足でアクセルペダルAを踏むと、
図5の(a)に示す位置からアクセルペダルAが下がり、テコ部材2が矢印で示すように時計回りにずれ傾くところ、ワイドブレーキペダルカバー軸着部22は軸32に対して遊びが設けられているために、遊びがテコ部材の時計回りの傾きを吸収して、ワイドブレーキペダルカバー3はそのままの位置に保たれる。また、テコ部材2が矢印で示すように時計回りに傾くことで、アクセルペダル挟着部21も傾くところ、アクセルペダル挟着部21は厚み方向に遊びが設けられているために、遊びがアクセルペダル挟着部21の傾きを吸収して、アクセルペダルAの動きを邪魔しない。そのため、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1は、正しく右足でアクセルペダルAを踏むと、アクセルペダルAは正常に動き、ブレーキペダルBには余計な力は加わらない。
【0047】
図5の(c)は、正しく右足でブレーキペダルBを踏んだ状態のイメージ図である。
図5の(c)に示すように、正しく右足でブレーキペダルBを踏むと、
図5の(a)に示す位置からブレーキペダルBが下がり、テコ部材2が矢印で示すように反時計回りにずれ傾いて、アクセルペダル挟着部21の位置が上がり、角度も傾くところ、アクセルペダル挟着部21はアクセルペダルAの下側に遊びが設けられているために、遊びがアクセルペダル挟着部21の上がりと傾きを吸収して、アクセルペダルAはそのままの位置に保たれる。そのため、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1は、正しく右足でブレーキペダルBを踏むと、ブレーキペダルBは正常に動き、アクセルペダルAには余計な力は加わらない。そこで、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1は、正しくペダルを操作している限り、アクセルペダルAとブレーキペダルBの動きを邪魔しない。
【0048】
次に、
図5の(b)に示す右足でブレーキペダルBを踏むつもりで誤ってアクセルペダルAを踏んでしまった状態から、アクセルペダルAを戻す機構を説明する。
図5の(c)は、ブレーキをかけたが利かないと思い、左足でワイドブレーキペダルカバー3を踏み込んだ状態のイメージ図である。
図5の(c)に示すように、誤って右足がアクセルペダルAを踏んでいても、左足でワイドブレーキペダルカバー3を踏み込むと、ブレーキペダルBが下がり、てこの原理によって、アクセルペダルAが起き上がるものである。詳細に説明すると、左足でワイドブレーキペダルカバー3を踏み込むと、右足がアクセルペダルAを踏んでいても、てこの原理によってテコ部材2が矢印で示すように反時計回りにずれ傾く。このとき、アクセルペダル挟着部21も反時計回りに傾くために、アクセルペダルAに下から押し上げる力が加わり、アクセルペダルAが起き上がるものである。
【0049】
以上のように構成される実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1は、運転手が「ブレーキをかけたが利かない」と思えば、左足でワイドブレーキペダルカバー3を踏み込むだけで、踏み間違えたアクセルペダルAを戻して、ブレーキとアクセルの踏み間違いを修正することができる。
【0050】
実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1では、運転手が「ブレーキをかけたが利かない」と思えば、言い換えると運転手の判断でブレーキとアクセルの踏み間違いを修正するので、システム制御のように誤作動の心配がない。
【0051】
また、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1では、てこの原理を使った機械的な器具なので、電気的な故障の心配もない。
【0052】
さらに、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1では、運転を始める前などにブレーキとアクセルを踏み間違えたときの対応を繰り返し練習できるので、緊急時のペダル操作に対する不安感も解消できる。
【0053】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は前記実施形態には限定されない。例えば、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1では、テコ部材2は、ワイドブレーキペダルカバー軸着部22から支点23までの長さと、アクセルペダル挟着部21から支点23までの長さの比が2対1になっていると説明したところ、ワイドブレーキペダルカバー軸着部22から支点23までの長さが、アクセルペダル挟着部21から支点23までの長さよりも長ければかまわない。
【0054】
また、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1では、支点23が車体床面に当接する位置に緩衝部材4を備えると説明したところ、支点23がフロアマットを間に置いて車体床面に当接する場合や支点23が車体床面に当接しない場合などには、緩衝部材はなくてもかまわない。
【0055】
さらに、実施形態に係るブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具1では、アクセルペダル挟着部21とブレーキペダル挟着部31は、その開口近くをボルトとナットでねじ止めしていると説明したところ、アクセルペダルAやブレーキペダルBから外れないようになっていれば、どのような止め方でもかまわない。
【符号の説明】
【0056】
1 ブレーキとアクセルの踏み間違い修正器具
2 テコ部材
21 アクセルペダル挟着部
22 ワイドブレーキペダルカバー軸着部
23 支点
3 ワイドブレーキペダルカバー
4 緩衝部材
A アクセルペダル
B ブレーキペダル
L 左足
R 右足