(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】飛行体
(51)【国際特許分類】
B64C 29/00 20060101AFI20240111BHJP
B64C 25/32 20060101ALI20240111BHJP
B64C 27/26 20060101ALI20240111BHJP
B64C 27/28 20060101ALI20240111BHJP
B64D 9/00 20060101ALI20240111BHJP
B64U 10/25 20230101ALI20240111BHJP
【FI】
B64C29/00 A
B64C25/32
B64C27/26
B64C27/28
B64D9/00
B64U10/25
(21)【出願番号】P 2019189143
(22)【出願日】2019-10-16
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】517331376
【氏名又は名称】株式会社エアロネクスト
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-526270(JP,A)
【文献】国際公開第2019/180304(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/186918(WO,A1)
【文献】特開平04-221295(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0225333(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0045765(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 29/00
B64C 25/32
B64C 27/26
B64D 9/00
B64C 27/28
B64U 10/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
一以上の推力手段が設けられた推力部と、
前記本体部と前記推力部とを所定範囲において変位可能に接続する接続部と、
前記本体部又は前記推力部の少なくともいずれか一方に設けられた翼部と、を備え、
前記翼部は、機首方向に分割可能な構成であって、
前記接続部は、前記翼部を前記機首方向に分割するように変位させる、
飛行体。
【請求項2】
本体部と、
一以上の推力手段が設けられた推力部と、
前記本体部と前記推力部とを所定範囲において変位可能に接続する接続部と、
前記本体部又は前記推力部の少なくともいずれか一方に設けられた翼部と、を備え、
前記本体部は、機首方向に分割可能な構成であって、
前記接続部は、前記本体部を機首方向に分割するように変位させる、
飛行体。
【請求項3】
請求項1
または2のいずれかに記載の飛行体であって、
少なくとも水平飛行時において前記推力部と前記本体部との相対的な位置関係が固定される第1状態と、少なくとも下降時において前記推力部と前記本体部との相対的な位置関係は前記接続部を介して変位可能にされる第2状態と、を遷移可能に制御する制御部とを更に備える、
飛行体。
【請求項4】
請求項
3に記載の飛行体であって、
前記第1状態において、前記推力手段は進行方向を向いており、
前記第2状態において、前記推力手段は垂直方向と斜交する方向を向いている、
飛行体。
【請求項5】
請求項
4に記載の飛行体であって、
前記推力部は、夫々に推力を発生させる回転翼部を有する両端部を有しており、
前記接続部は、前記本体部の前部と、前記推力部の略中央とを接続している、
飛行体。
【請求項6】
請求項
5に記載の飛行体であって、
前記両端部は、夫々翼部を有しており、
前記両翼部は、後方に傾斜する前端部を有しており、
前記推力手段は、前記前端部に設けられている、
飛行体。
【請求項7】
請求項1乃至請求項
6の何れか一項に記載の飛行体であって、
前記本体部には、当該飛行体を支持する支持脚機構が設けられる、
飛行体。
飛行体。
【請求項8】
請求項
3乃至請求項
7の何れか一項に記載の飛行体であって、
荷物を前方から後方に移動可能に構成された格納部を備え、
少なくとも第1状態においては、前記荷物が前方に位置している、
飛行体。
【請求項9】
請求項
8に記載の飛行体であって、
少なくとも着陸時において、前記荷物を後方に位置させる、
飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な用途に利用されるドローン(Drone)や無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)などの回転翼機(以下、単に「飛行体」と総称する)を利用した様々なサービスが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このよう飛行体のうち、荷物を搭載するための搭載部を備えたものが特許文献2に開示されている飛行体が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-15697号公報
【文献】特開2017-159751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した荷物を運ぶ場合、特許文献2に記載の技術では、構造が複雑なことに加えて、下降時の横風対策等がなされておらず、安全性に問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、より基本的な構造でかつ安全対策のとられた飛行体を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
本体部と、
一以上の推力手段が設けられた推力部と、
前記本体部と前記推力部とを所定範囲において変位可能に接続する接続部と、
前記本体部又は前記推力部の少なくともいずれか一方に設けられた翼部と、を備える、
飛行体が得られる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より基本的な構造でかつ安全対策のとられた飛行体を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1に係る飛行体の図である。図示される飛行体は水平飛行時の状態である。
【
図2】本発明の実施例1に係る飛行体の図である。図示される飛行体は着陸時の状態である。
【
図3】本発明の実施例1に係る飛行体の図である。図示される飛行体は着陸時の状態である。
【
図4】本発明の実施例1に係る飛行体の図である。図示される飛行体は着陸時の状態である。
【
図5】本発明の実施例2に係る飛行体の図である。図示される飛行体は水平飛行時の状態である。
【
図6】本発明の実施例2に係る飛行体の図である。図示される飛行体は着陸時の状態である。
【
図7】
図1又は
図5に示す飛行体の飛行部の機能ブロックを示す図である。
【
図8】本発明の変形例に係る飛行体の説明図である(その1)。
【
図9】本発明の変形例に係る飛行体の説明図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態による発明は、以下の構成を備える。
[項目1]
本体部と、
一以上の推力手段が設けられた推力部と、
前記本体部と前記推力部とを所定範囲において変位可能に接続する接続部と、
前記本体部又は前記推力部の少なくともいずれか一方に設けられた翼部と、を備える、
飛行体。
[項目2]
項目1に記載の飛行体であって、
少なくとも水平飛行時において前記推力部と前記本体部との相対的な位置関係が固定される第1状態と、少なくとも下降時において前記推力部と前記本体部との相対的な位置関係は前記接続部を介して変位可能にされる第2状態と、を遷移可能に制御する制御部とを更に備える、
飛行体。
[項目3]
項目2に記載の飛行体であって、
前記第1状態において、前記推力手段は進行方向を向いており、
前記第2状態において、前記推力手段は垂直方向と斜交する方向を向いている、
飛行体。
[項目4]
項目3に記載の飛行体であって、
前記推力部は、夫々に推力を発生させる回転翼部を有する両端部を有しており、
前記接続部は、前記本体部の前部と、前記推力部の略中央とを接続している、
飛行体。
[項目5]
項目4に記載の飛行体であって、
前記本体部は、両翼部を有しており、
前記両翼部は、後方に傾斜する前端部を有しており、
前記両端部は、前記接続部を起点として前記前端部に沿うように変位可能である、
飛行体。
[項目6]
項目4に記載の飛行体であって、
前記両端部は、夫々翼部を有しており、
前記両翼部は、後方に傾斜する前端部を有しており、
前記推力手段は、前記前端部に設けられている、
飛行体。
[項目7]
項目1乃至項目6の何れか一項に記載の飛行体であって、
前記本体部には、当該飛行体を支持する支持脚機構が設けられる、
飛行体。
[項目8]
項目1乃至項目7の何れか一項に記載の飛行体であって、
前記変位の方向には、少なくともヨー方向が含まれる、
飛行体。
[項目9]
項目8に記載の飛行体であって、
前記変位の方向は、ヨー方向のみである、
飛行体。
[項目10]
項目2乃至項目9の何れか一項に記載の飛行体であって、
荷物を前方から後方に移動可能に構成された格納部を備え、
少なくとも第1状態においては、前記荷物が前方に位置している、
飛行体。
[項目11]
項目10に記載の飛行体であって、
少なくとも着陸時において、前記荷物を後方に位置させる、
飛行体。
【0011】
次に、図を参照して、本発明の実施の形態による飛行体について説明する。
【0012】
<構造>
図1及び
図2に示されるように、本実施の形態による飛行体1は、本体部10と、推力部20と、接続部30と、翼部40と、制御部(不図示)と、を備えている。推力部20は、一以上の推力手段が設けられる。本実施形態では、推力部20は、接続部30を中心として左右二基のモータ21を推力手段として備える。モータ21は、後述するプロペラ22の回転を生じさせるものであり、例えば、駆動ユニットは、電気モータ又はエンジン等を含むことが可能である。
【0013】
接続部30は、本体部10と推力部20とを所定範囲において変位可能に接続する。本実施形態では、接続部30には、一軸回りに揺動自在なジンバルが採用される。
【0014】
制御部は、第1状態と第2状態とを遷移可能に制御する。第1状態とは、少なくとも水平飛行時において推力部20と本体部10との相対的な位置関係が固定される状態である。第2状態とは、少なくとも下降時において推力部20と本体部10との相対的な位置関係が接続部30を介して変位可能にされる状態である。
【0015】
翼部40は、本体部10又は推力部20の少なくともいずれか一方に設けられる。すなわち、翼部40は、本体部10に設けられる場合(実施例1)と、推力部20に設けられる場合(実施例2)とがあり、以下これらについて説明する。
【0016】
(実施例1)
推力部20は、夫々に推力を発生させるプロペラ22(回転翼部)を有する両端部23を有している。プロペラ22は、モータ21によって駆動可能であり、時計方向に及び/または反時計方向に、モータ21の回転軸(例えば、モータの長軸)の周りに回転する。
【0017】
接続部30は、本体部10の前部と、推力部20の略中央とを接続している。本体部10は、両翼部40を有している。両翼部40は、後方に傾斜する前端部40Aを有している。両端部23は、接続部30を起点として前端部40Aに沿うように変位可能である。
【0018】
<飛行の形態>
以下、
図1乃至
図4を参照して、本実施の形態による飛行体の離陸、飛行及び着陸の際の飛行体の形態について説明する。
【0019】
図1に示されるように、着陸時の状態(初期状態)から上昇しようとする場合、プロペラ22は上向き(=上方向に推進力が生じる向き)にされている。上昇する場合には、図示される状態でモータ21を回転させる。飛行体1の上昇時及びホバリング時においては、
図1に示される状態でそのまま垂直上昇を行う。
【0020】
ホバリング時から水平飛行に移行が完了すると、飛行体1は第1状態に遷移する。第1状態では、推力部20と本体部10との相対的な位置関係が固定される。
図1に示すように、第1状態においては、モータ21が進行方向(前方)を向いている。モータ21の向きを前方に向けることによって、飛行体1は、前方へ進むための推進力を得ることができるようになる。
【0021】
なお、目的地上空などに到着した場合には、再度ホバリングを行うために
図1と同様の姿勢に変位する。そして、その状態で飛行体1は下降し着陸を行う。下降時においては、飛行体1は第1状態から
図3に示す第2状態に遷移する。第2状態においては、推力部20と本体部10との相対的な位置関係は接続部30を介して変位可能とされる。また、第2状態においては、モータ21が垂直方向と斜交する方向を向いている。すなわち、第2状態においては、本体部10は着陸面に垂直なままで、モータ21のみが傾くことになる。このため、風が吹いていても機体の姿勢保持と機体位置の制御を両立させることができる。
【0022】
また、第2状態においては、推力部20が前方に移動するので、推力部20の移動に伴い、重心Gが後方にずれることとなる。このため、機体の姿勢を安定させることができる。さらに、モータ21が垂直方向と斜交する方向を向くことで、前方へ進むための推進力の垂直方向成分を
図1に示す状態よりも小さくすることができ、降下速度を上昇させることができる。加えて、モータ21の回転数を必要以上に下げることなく飛行体1を着陸させることができる。このため、上昇気流対策を図りつつモータ21の最低回転数を上げることができる。
【0023】
(実施例2)
次に、
図3及び
図4を参照して、本発明の第2実施形態に係るガス発生器について説明する。なお、第1実施形態と下2桁が同じ符号の部位は、特に示すことがない限り、第1実施形態で説明したものと同様であるので、説明を省略することがある。次に、
図5及び
図6を参照して、実施例2に係る飛行体について説明する。なお、実施例1と下2桁が同じ符号の部位は、特に示すことがない限り、実施例1で説明したものと同様であるので、説明を省略することがある。
【0024】
両端部123は、夫々翼部140を有している。両翼部140は、後方に傾斜する前端部140Aを有している。推力手段21は、前端部140Aに設けられている。
【0025】
本体部110には、飛行体2を支持する支持脚機構150が設けられる。本体部110には、支持脚機構150を本体部110に対して展開又は収納するための開口160が形成される。開口160は、支持脚機構150が本体部110に対して展開された状態にあるときに、接続部30から下方へ向かって末広がりに拡大された形状を有する。
【0026】
飛行体2は、荷物Lを前方から後方に移動可能に構成された格納部170を備える。少なくとも第1状態においては、荷物Lが前方に位置している。第1状態とは、少なくとも水平飛行時において推力部20と本体部10との相対的な位置関係が固定される状態である。第1状態において、モータ21は進行方向(前方)を向いている。
【0027】
飛行体2は、少なくとも着陸時において、荷物Lを後方に位置させる。これにより、重心Gが後方にずれることとなる。
【0028】
上述した回転翼機は、
図7に示される機能ブロックを有している。なお、
図7の機能ブロックは最低限の参考構成である。フライトコントローラは、所謂処理ユニットである。処理ユニットは、プログラマブルプロセッサ(例えば、中央処理ユニット(CPU))などの1つ以上のプロセッサを有することができる。
【0029】
処理ユニットは、図示しないメモリを有しており、当該メモリにアクセス可能である。メモリは、1つ以上のステップを行うために処理ユニットが実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。
【0030】
メモリは、例えば、SDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラやセンサ類から取得したデータは、メモリに直接に伝達されかつ記憶されてもよい。例えば、カメラ等で撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。
【0031】
処理ユニットは、回転翼機の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。例えば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θx、θy及びθz)を有する回転翼機の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために回転翼機の推進機構(モータ等)を制御する。制御モジュールは、搭載部、センサ類の状態のうちの1つ以上を制御することができる。
【0032】
処理ユニットは、1つ以上の外部のデバイス(例えば、端末、表示装置、または他の遠隔の制御器)からのデータを送信および/または受け取るように構成された送受信部と通信可能である。送受信機は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。
【0033】
例えば、送受信部は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用することができる。
【0034】
送受信部は、センサ類で取得したデータ、処理ユニットが生成した処理結果、所定の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンドなどのうちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。
【0035】
本実施の形態によるセンサ類は、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、GPSセンサ、近接センサ(例えば、ライダー)、またはビジョン/イメージセンサ(例えば、カメラ)を含み得る。
【0036】
本発明の回転翼機は、中長距離における宅配業務専用の飛行体としての利用、及び広域の監視業務、山岳領域の偵察・救助業務における産業用の回転翼機としての利用が期待できる。また、本発明の回転翼機は、マルチコプター・ドローン等の飛行機関連産業において利用することができ、さらに、本発明に、カメラ等を搭載し空撮任務も遂行可能な飛行体としても好適に使用することができる他、セキュリティ分野、農業、インフラ監視等の様々な産業にも利用することができる。
【0037】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【0038】
上述した実施例では、変位の方向がヨー方向(Y軸回り)のみである例について述べた。本発明はこれに限らず、変位の方向には、少なくともヨー方向が含まれていれば良い。すなわち、ヨー方向に加えて、ロール方向やピッチ方向に変位させても良い。
【0039】
上述した実施例では、接続部30として、一軸回りに揺動自在なジンバルを採用する例を示した。しかし、本発明はこれに限らない。例えば、接続部30として、二軸、三軸回りに揺動自在なジンバルを採用しても良い。
【0040】
上述した実施例では、翼部40が、本体部10に設けられる場合(実施例1)と、推力部20に設けられる場合(実施例2)とがあり、これらについて説明したが、勿論、本体部10と推力部20の両方に翼部40を設けてもよい。
【0041】
(変形例)
図8に示すように、両端部23を部分的に可動させても良い。すなわち、両端部23のうちの紙面左側部分23Lを翼部40に固定し、紙面右側部分23Rのみがヨー方向(Y軸回り)に可動する構成であっても良い。この構成によれば、
図9に示すように、紙面右側部分23Rに設けたモータ21を回転させるとともに、紙面左側部分23Lに設けたモータ21の回転を停止させることで、飛行体は風下にたなびくようにホバリングが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1、2 飛行体
10、110 本体部
20 推力部
21 モータ(推力手段)
22 プロペラ(回転翼部)
23、123 両端部
40 翼部
40A、140A 前端部
140 両翼部
150 支持脚機構
170 格納部
L 荷物