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特許7417245無線送電装置、ルータ、無線送電制御プログラム及び無線送電方法
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  • 特許-無線送電装置、ルータ、無線送電制御プログラム及び無線送電方法 図1
  • 特許-無線送電装置、ルータ、無線送電制御プログラム及び無線送電方法 図2
  • 特許-無線送電装置、ルータ、無線送電制御プログラム及び無線送電方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】無線送電装置、ルータ、無線送電制御プログラム及び無線送電方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/20 20160101AFI20240111BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H02J50/20
H02J7/00 301D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019193423
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2021069201
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】三枝 健二
(72)【発明者】
【氏名】小林 一彦
(72)【発明者】
【氏名】矢込 花純
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-75863(JP,A)
【文献】特開2017-22876(JP,A)
【文献】特開2013-247807(JP,A)
【文献】特開2018-157430(JP,A)
【文献】特開2020-25400(JP,A)
【文献】特開2018-125815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/20
H02J 7/00
H04W 84/12
H04W 4/00
H04W 72/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信機器により実行されている無線通信に使用されている電波が属する使用チャンネル及び当該電波の周波数の少なくとも一方を示すデータである使用チャンネルデータを取得する使用チャンネルデータ取得部と、
チャンネルごとに中心周波数と帯域幅が定義されたデータと前記使用チャンネルデータに基づいて前記無線通信に使用されていない不使用チャンネルを少なくとも一つ特定する不使用チャンネル特定部と、
前記不使用チャンネル特定部により特定された前記不使用チャンネルの少なくとも一つに属する周波数を有する電波を使用して無線受電装置への無線送電を実行させる無線送電制御部と、
を備える無線送電装置。
【請求項2】
前記無線送電制御部は、前記無線送電に使用する電波が属する前記不使用チャンネルが前記無線通信に使用されている電波が属する使用チャンネルから離れている程、前記無線送電の送電電力レベルを高くして前記無線送電を実行させる、
請求項1に記載の無線送電装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の無線送電装置を備えるルータ。
【請求項4】
コンピュータに、
無線通信機器により実行されている無線通信に使用されている電波が属する使用チャンネル及び当該電波の周波数の少なくとも一方を示すデータである使用チャンネルデータを取得する使用チャンネルデータ取得機能と、
チャンネルごとに中心周波数と帯域幅が定義されたデータと前記使用チャンネルデータに基づいて前記無線通信に使用されていない不使用チャンネルを少なくとも一つ特定する不使用チャンネル特定機能と、
前記不使用チャンネル特定機能により特定された前記不使用チャンネルの少なくとも一つに属する周波数を有する電波を使用して無線受電装置への無線送電を実行させる無線送電制御機能と、
を実現させる無線送電制御プログラム。
【請求項5】
無線通信機器により実行されている無線通信に使用されている電波が属する使用チャンネル及び当該電波の周波数の少なくとも一方を示すデータである使用チャンネルデータを取得する使用チャンネルデータ取得ステップと、
チャンネルごとに中心周波数と帯域幅が定義されたデータと前記使用チャンネルデータに基づいて前記無線通信に使用されていない不使用チャンネルを少なくとも一つ特定する不使用チャンネル特定ステップと、
前記不使用チャンネル特定ステップにおいて特定された前記不使用チャンネルの少なくとも一つに属する周波数を有する電波を使用して無線受電装置への無線送電を実行させる無線送電制御ステップと、
を含む無線送電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送電装置、ルータ、無線送電制御プログラム及び無線送電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線電力伝送に関する技術開発が急速に進展している。無線電力伝送は、配線が不要になる、金属接点が無くなることによりショートや感電の危険性が低減される、自動車、携帯端末等の移動体に電力を供給し得る、電池の残量を気にする必要が無くなる等、様々な利点を有する。また、特に、マイクロ波を利用した無線電力伝送は、無線送電装置と無線受電装置との距離が数kmであっても送電可能である、マイクロ波から電力への変換効率が最大で90%期待できる等の利点も有する。一方、マイクロ波を利用した無線電力伝送は、ISM(Industry Science and Medical)バンドを使用することが多いため、ISMバンドを使用する無線通信に使用されている電波と干渉し、無線通信の通信品質を低下させてしまうことがあるという欠点を有する。ここで、ISMバンドを使用する無線通信は、例えば、WiFi(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信である。
【0003】
このような欠点を解消する技術の一例として、特許文献1に記載された無線給電装置が挙げられる。この無線給電装置は、出力抑制手段と、抑制度合い設定手段とを備える。出力抑制手段は、無線給電手段から給電出力が行われる動作周波数帯のうち所定周波数を含む該所定周波数近傍の給電出力を抑制する。ここで言う所定周波数は、例えば、車載機とスマート携帯機との間で実行される通信に使用される電波の周波数である。抑制度合い設定手段は、出力抑制手段により所定周波数近傍の給電出力を抑制する抑制度合いを、無線給電手段と無線機との離間距離に基づいて設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-075863号公報
【0005】
しかし、上述した無線給電装置は、周囲に存在する無線通信機器が実行する無線通信に使用されている電波の周波数を示すデータに基づいて出力抑制手段及び抑制度合い設定手段を動作させるわけではない。このため、上述した無線給電装置は、当該無線通信に使用されている電波の周波数を認識し得ず、無線送電を実行することにより当該無線通信の通信品質を低下させてしまうことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、周囲に存在する無線通信機器により実行されている無線通信の通信品質を低下させてしまう事態を避けることができる無線送電装置、ルータ、無線送電制御プログラム及び無線送電方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、無線通信機器により実行されている無線通信に使用されている電波が属するチャンネルを示す使用チャンネルデータを取得する使用チャンネルデータ取得部と、前記使用チャンネルデータに基づいて前記無線通信に使用されていない不使用チャンネルを少なくとも一つ特定する不使用チャンネル特定部と、前記不使用チャンネル特定部により特定された前記不使用チャンネルの少なくとも一つに属する周波数を有する電波を使用して無線受電装置への無線送電を実行させる無線送電制御部と、を備える無線送電装置である。
【0008】
本発明の一態様は、コンピュータに、無線通信機器により実行されている無線通信に使用されている電波が属するチャンネルを示す使用チャンネルデータを取得する使用チャンネルデータ取得機能と、前記使用チャンネルデータに基づいて前記無線通信に使用されていない不使用チャンネルを少なくとも一つ特定する不使用チャンネル特定機能と、前記不使用チャンネル特定機能により特定された前記不使用チャンネルの少なくとも一つに属する周波数を有する電波を使用して無線受電装置への無線送電を実行させる無線送電制御機能と、を実現させる無線送電制御プログラムである。
【0009】
本発明の一態様は、無線通信機器により実行されている無線通信に使用されている電波が属するチャンネルを示す使用チャンネルデータを取得する使用チャンネルデータ取得ステップと、前記使用チャンネルデータに基づいて前記無線通信に使用されていない不使用チャンネルを少なくとも一つ特定する不使用チャンネル特定ステップと、前記不使用チャンネル特定ステップにおいて特定された前記不使用チャンネルの少なくとも一つに属する周波数を有する電波を使用して無線受電装置への無線送電を実行させる無線送電制御ステップと、を含む無線送電方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、周囲に存在する無線通信機器により実行されている無線通信の通信品質を低下させてしまう事態を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る無線通信機器、無線送電装置及び無線受電装置の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る無線通信及び無線送電の少なくとも一方に使用される電波が属するチャンネルの一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る無線送電装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び図2を参照しながら実施形態に係る無線送電装置について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る無線通信機器、無線送電装置及び無線受電装置の一例を示す図である。図1は、無線通信機器10-1、…、無線通信機器10-N(N:1以上の整数)、無線受電装置20-1、…及び無線受電装置20-M(M:1以上の整数)、無線送電装置30を示している。無線通信機器10-1、…、無線通信機器10-N、無線受電装置20-1、…、無線受電装置20-M及び無線送電装置30は、住宅、オフィス等の一室に配置される。ただし、無線通信機器10-1、…、無線通信機器10-N、無線受電装置20-1、…、無線受電装置20-M及び無線送電装置30各々は、屋内に配置されていてもよいし、屋外に配置されていてもよい。
【0013】
無線通信機器10-1、…及び無線通信機器10-Nは、いずれも電波を使用した無線通信を実行している機器、例えば、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンである。また、ここで言う無線通信は、例えば、ISMバンドを使用するWiFi(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信である。なお、無線通信機器10-1、…及び無線通信機器10-N各々は、WiFiによる無線通信を実行する場合、ルータを介して無線通信を実行する。
【0014】
無線受電装置20-1、…及び無線受電装置20-Mは、例えば、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンに搭載されている。また、無線受電装置20-1、…及び無線受電装置20-Mは、それぞれ受電用アンテナ25-1、…及び受電用アンテナ25-M(M:1以上の整数)を使用して無線送電装置30から無線送電を受けることが可能である。さらに、無線受電装置20-1、…及び無線受電装置20-Mの少なくとも一つは、無線通信機器10-1、…又は無線通信機器10-Nに搭載されていてもよい。なお、無線受電装置20-1、…及び無線受電装置20-Mは、それぞれ無線通信に使用するアンテナを受電用アンテナ25-1、…及び受電用アンテナ25-Mとして使用してもよい。
【0015】
また、無線受電装置20-1、…又は無線受電装置20-Mが搭載されている機器は、例えば、自身の現在位置を示すデータ、自身に割り当てられている固有の識別データ、自身に電力を供給するバッテリーの残量を示すデータ、無線送電の必要の有無を示すデータをビーコン信号として周囲に任意のタイミングで発信する。ビーコン信号は、WiFi等の無線LAN、Bluetooth等の近距離無線通信のために割り当てられているチャンネルのうち空いているチャンネルを使用して発信されてもよい。また、ビーコン信号は、無線送電装置30により実行される無線電力伝送に使用される電波が属するチャンネルを使用して発信されてもよい。
【0016】
図2は、本発明の実施形態に係る無線通信及び無線送電の少なくとも一方に使用される電波が属するチャンネルの一例を示す図である。具体的には、図2は、WiFiに使用されている2.4GHz帯に含まれるチャンネルを示している。2.4GHz帯は、産業、科学又は医療の分野で利用される機器に割り当てられているISMバンドの一つであり、主に、屋内で実行される無線電力伝送及び無線通信に使用される周波数帯である。2.4GHz帯は、国際的な取り決めにより免許不要で自由に利用できるよう開放されているため、チャンネルが密集して割り当てられており、電波の干渉が発生し易い周波数帯である。
【0017】
図2に示すように、2.4GHz帯は、中心周波数が5MHzずつ離れており、帯域幅が22MHzであるチャンネルch1からチャンネルch13と、中心周波数がチャンネルch13よりも12MHzだけ高く、帯域幅が22MHzであるチャンネルch14を含んでいる。なお、チャンネルch1の中心周波数は、2412MHzである。また、チャンネルch14の中心周波数は、2484MHzである。
【0018】
図2に示したチャンネルは、いずれも帯域の一部が他のチャンネルと重複している。例えば、チャンネルch1は、チャンネルch2からチャンネルch5と帯域の一部が重複している。また、例えば、チャンネルch14は、チャンネルch12及びチャンネルch13と帯域の一部が重複している。帯域の一部が重複している二つのチャンネルを同時に使用した場合、これら二つのチャンネルの間で電波の干渉が発生し、無線通信の通信品質が低下してしまうことがある。
【0019】
したがって、一般的には、例えば、無線通信機器10-1、…及び無線通信機器10-Nの少なくとも二つが同時に無線通信を実行する場合、無線通信機器10-1、…又は無線通信機器10-Nが無線通信を実行し、かつ、無線送電装置30が無線送電を実行する場合、帯域が互いに重複しない複数のチャンネルが同時に使用される。帯域が互いに重複しないチャンネルの組み合わせとしては、例えば、チャンネルch1、チャンネルch6、チャンネルch11及びチャンネルch14が挙げられる。
【0020】
無線送電装置30は、受信用アンテナ31と、使用チャンネルデータ生成部32と、使用チャンネルデータ取得部33と、不使用チャンネル特定部34と、無線送電制御部35と、送電電力生成部36と、送電用アンテナ37とを備える。
【0021】
受信用アンテナ31は、無線通信機器10-1、…及び無線通信機器10-N各々により実行されている無線通信に使用されている電波を受信する。例えば、受信用アンテナ31は、図2に示したチャンネルch2の中心周波数2417MHzに等しい周波数を有する電波を無線通信機器10-2から受信する。なお、受信用アンテナ31は、無線送電装置30に含まれていなくてもよい。
【0022】
使用チャンネルデータ生成部32は、受信用アンテナ31により受信された電波に基づいて使用チャンネルデータを生成する。使用チャンネルデータは、無線通信機器10-1、…及び無線通信機器10-N各々により実行されている無線通信に使用されている電波が属する使用チャンネルを示すデータである。具体的には、使用チャンネルデータは、受信用アンテナ31により受信された電波が属するチャンネル及び当該電波の周波数の少なくとも一方を示すデータである。
【0023】
例えば、チャンネルch2の中心周波数2417MHzに等しい周波数を有する電波が無線通信機器10-2から受信された場合、使用チャンネルデータは、当該電波がチャンネルch1からチャンネルch4に属することを示すデータとなる。或いは、チャンネルch2の中心周波数2417MHzに等しい周波数を有する電波が無線通信機器10-2から受信された場合、使用チャンネルデータは、当該電波の周波数が2417MHzであることを示すデータとなる。
【0024】
なお、使用チャンネルデータ生成部32は、使用チャンネルデータを任意の場所に設置された記憶媒体に格納してもよいし、使用チャンネルデータを使用チャンネルデータ取得部33に送信してもよい。また、使用チャンネルデータ生成部32は、無線送電装置30に含まれていなくてもよい。
【0025】
使用チャンネルデータ取得部33は、使用チャンネルデータを取得する。
【0026】
不使用チャンネル特定部34は、当該使用チャンネルデータに基づいて無線通信機器10-1、…及び無線通信機器10-N各々により実行されている無線通信のいずれにも使用されていない不使用チャンネルを少なくとも一つ特定する。例えば、チャンネルch2の中心周波数2417MHzに等しい周波数を有する電波が無線通信機器10-2から受信された場合、不使用チャンネル特定部34は、チャンネルch5からチャンネルch14を不使用チャンネルとして特定する。なお、この場合、不使用チャンネル特定部34は、チャンネルch5からチャンネルch14の少なくとも一つを不使用チャンネルとして特定しなくてもよい。
【0027】
無線送電制御部35は、不使用チャンネル特定部34により特定された不使用チャンネルの少なくとも一つに属する周波数を有する電波を使用して無線受電装置20-1、…及び無線受電装置20-Mの少なくとも一つへの無線送電を実行するよう送電電力生成部36及び送電用アンテナ37を制御する。例えば、無線送電制御部35は、チャンネルch9からチャンネルch13に属しており、チャンネルch11の中心周波数2462MHzに等しい周波数を有する電波を無線送電に使用するよう送電電力生成部36及び送電用アンテナ37を制御する。
【0028】
また、無線送電制御部35は、不使用チャンネルが使用チャンネルから離れている程、無線送電の送電電力レベルを高くするよう送電電力生成部36及び送電用アンテナ37を制御してもよい。言い換えると、無線送電制御部35は、不使用チャンネルが使用チャンネルに近い程、無線送電の送電電力レベルを低くするよう送電電力生成部36及び送電用アンテナ37を制御してもよい。ここで、無線送電の送電電力レベルが高い場合、送電される電力量が多くなり、無線送電の送電電力レベルが低い場合、送電される電力量が少なくなる。例えば、無線送電制御部35は、チャンネルch11からチャンネルch13に属しており、チャンネルch13の中心周波数2472MHzに等しい周波数を有する電波を無線送電に使用するよう送電用アンテナ37を制御する場合、周波数が2462MHzである電波を使用する場合よりも送電電力レベルを高くするよう送電電力生成部36及び送電用アンテナ37を制御してもよい。
【0029】
なお、無線送電制御部35は、無線受電装置20-1、…及び無線受電装置20-Mの少なくとも二つに対して無線送電を実行するよう送電用アンテナ37を制御する場合、これらの無線受電装置同士の間で電波の周波数を統一することが好ましい。
【0030】
また、無線送電制御部35は、不使用チャンネル特定部34により不使用チャンネルが特定されなかった場合、電波を出射しないよう送電電力生成部36及び送電用アンテナ37を制御する。さらに、無線送電制御部35は、無線送電が不要であることを示すビーコン信号を受信した場合、当該ビーコン信号を発信した機器に搭載されている無線受電装置への電波の出射を停止するよう送電用アンテナ37を制御する。
【0031】
送電電力生成部36は、無線送電装置30により実行される無線電力伝送に使用される電波の周波数及び当該無線電力伝送で送電される電力を決定する。送電電力生成部36は、周波数変換器及び電力増幅器を備える。
【0032】
送電用アンテナ37は、無線送電制御部35が実行する制御に従って無線受電装置20-1、…及び無線受電装置20-Mの少なくとも一つに対して無線送電を実行する。例えば、送電用アンテナ37は、フェイズドアレイアンテナであり、チャンネルch11の中心周波数2462MHzに等しい周波数を有する電波を受電用アンテナ25-1、…及び受電用アンテナ25-Mの少なくとも一つに向けて出射して無線送電を実行する。
【0033】
なお、送電用アンテナ37により出射される電波は、例えば、マイクロ波である。また、送電用アンテナ37は、フェイズドアレイアンテナではなく、スロットアンテナ、ダイポールアンテナ、アダプティブアレイアンテナであってもよい。さらに、送電用アンテナ37は、適宜、ビームフォーミングを実行し、電波を出射する方向、電波を出射する範囲、ヌル点の方向及び電波のサイドローブレベルの少なくとも一つを調整してもよい。また、送電用アンテナ37は、無線送電装置30に含まれていなくてもよい。
【0034】
送電用アンテナ37により出射される電波は、受電用アンテナ25-1、…及び受電用アンテナ25-Mの少なくとも一つによって受信され、レクテナにより直流電力に変換される。レクテナは、例えば、マイクロ波を受信して誘導電流を発生させるダイポールアンテナ、当該誘導電流を整流して直流電流に変換するショットキーダイオード等の整流器を備える。なお、上述したダイポールアンテナは、WiFi等の無線LANに使用されるアンテナで代用されてもよい。
【0035】
なお、無線送電装置30は、無線通信機器10-1により実行される無線通信、…及び無線通信機器10-Nにより実行される無線通信の少なくとも一つに使用されるルータに含まれていてもよい。
【0036】
次に、図3を参照しながら、無線送電装置30が実行する処理の一例を説明する。図3は、本発明の実施形態に係る無線送電装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。無線送電装置30は、例えば、無線受電装置20-1、…又は無線受電装置20-Mが搭載された機器から無線送電が必要であることを示すデータをビーコン信号として受信する度に、図3に示した処理を実行する。
【0037】
ステップS10において、使用チャンネルデータ取得部33は、無線通信機器10-1により実行されている無線通信に使用されている電波が属する使用チャンネルを示す使用チャンネルデータを取得する。同様に、ステップS10において、使用チャンネルデータ取得部33は、無線通信機器10-2、…及び無線通信機器10-N各々により実行されている無線通信に使用されている電波が属する使用チャンネルを示す使用チャンネルデータを取得する。
【0038】
ステップS20において、不使用チャンネル特定部34は、ステップS10で取得された使用チャンネルデータに基づいて無線通信に使用されていない不使用チャンネルを少なくとも一つ特定する。
【0039】
ステップS30において、無線送電制御部35は、ステップS20で特定された不使用チャンネルの少なくとも一つに属する周波数を有する電波を使用して無線受電装置20-1、…及び無線受電装置20-Mの少なくとも一つへの無線送電を実行するよう送電電力生成部36及び送電用アンテナ37を制御する。
【0040】
以上、実施形態に係る無線送電装置30について説明した。無線送電装置30は、使用チャンネルデータに基づいて特定される不使用チャンネルの少なくとも一つに属する周波数を有する電波を使用して無線受電装置20-1、…及び無線受電装置20-Mの少なくとも一つに対する無線送電を実行するよう送電電力生成部36及び送電用アンテナ37を制御する。つまり、無線送電装置30は、周囲に存在する無線通信機器10-1、…及び無線通信機器10-N各々が実行する無線通信のいずれにも使用されていないチャンネルに属する電波を使用して無線受電装置20-1、…及び無線受電装置20-Mの少なくとも一つに対する無線送電を実行する。
【0041】
これにより、無線送電装置30は、無線送電に使用されている電波が無線通信に使用されている電波と干渉し、当該無線通信の通信品質を低下させてしまう事態を避けることができる。また、無線送電装置30は、当該無線通信の通信品質を低下させてしまう事態を避け易くするため、送電電力レベルを高くして無線送電を実行することにより、無線送電に要する時間を短縮することもできる。さらに、無線送電装置30は、複数の無線通信機器10-1、…及び無線通信機器10-Nが存在している場合であっても、ビームフォーミングを使用すること無く、無線通信に使用されている電波との干渉を避け、無線送電に要する時間を短縮することができる。
【0042】
また、無線送電装置30は、無線送電に使用する電波が属する不使用チャンネルが無線通信に使用されている電波が属する使用チャンネルから離れている程、無線送電の送電電力レベル高くして無線送電を実行させる。これにより、無線送電装置30は、無線受電装置20-1、…及び無線受電装置20-Mの少なくとも一つに対する無線送電に要する時間を更に短縮することができる。
【0043】
さらに、無線送電装置30が奏する効果は、今後、モノのインターネット(IOT:Internet of Things)が更に進展し、上述した無線通信及び無線送電が多用されるようになると更に重要となる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、置換及び設計変更の少なくとも一つを加えることができる。また、上述した実施形態に記載の構成は、適宜組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10-1,…,10-N…無線通信機器、20-1,…,20-M…無線受電装置、25-1,…,25-M…受電用アンテナ、30…無線送電装置、31…受信用アンテナ、32…使用チャンネルデータ生成部、33…使用チャンネルデータ取得部、34…不使用チャンネル特定部、35…無線送電制御部、36…送電電力生成部、37…送電用アンテナ
図1
図2
図3