(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】ギヤードモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20240111BHJP
F16H 1/46 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H02K7/116
F16H1/46
(21)【出願番号】P 2019221980
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】397001396
【氏名又は名称】ツカサ電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博之
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 晃男
(72)【発明者】
【氏名】浦島 佳吾
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-118375(JP,U)
【文献】特開2013-241175(JP,A)
【文献】特開2019-158036(JP,A)
【文献】特開2007-135342(JP,A)
【文献】特開2013-071698(JP,A)
【文献】特開2017-163723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
F16H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸を有する電動モータと、当該電動モータの駆動軸を入力軸として入力される駆動力を変速して出力軸から出力する変速部とが一体的に設けられ、当該変速部が少なくとも1段の遊星歯車減速機構を有するギヤードモータであって、
前記遊星歯車減速機構が、前記電動モータによる回転力を受けて回転する太陽歯車と、当該太陽歯車に外接噛合し、回転に伴って前記出力軸を駆動する複数の遊星歯車と、前記変速部の円筒体からなる筐体内周面に固着支持され、前記遊星歯車と内接噛合する固定内歯車とを備え、
前記筐体と前記固定内歯車との間に、弾性体からなる緩衝部が配設され
、
前記太陽歯車、前記遊星歯車及び前記固定内歯車が、斜歯歯車であり、
前記緩衝部が、前記筐体における前記電動モータ側の端部内径を拡大して形成される大径部、及び前記筐体の収納部と前記大径部とをつなぎ、前記大径部から前記収納部に向かって縮径するテーパ状に形成される段差部に沿って配設されることを特徴とするギヤードモータ。
【請求項2】
請求項
1に記載のギヤードモータにおいて、
前記大径部と前記段差部との間に、環状凹部が形成されていることを特徴とするギヤードモータ。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のギヤードモータにおいて、
前記電動モータが、モータ本体と、当該モータ本体を収容するモータ筐体とを備え、
前記モータ本体と前記モータ筐体との間に、弾性体からなる軸受保持緩衝部が配設されていることを特徴とするギヤードモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静音性に優れ、低振動のギヤードモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽歯車、当該太陽歯車と外接噛合する遊星歯車及び当該遊星歯車が内接噛合する固定内歯車を備えた遊星歯車減速機構を採用した変速機(減速機)と、モータとが一体的に設けられたギヤードモータが広く実用化されている。
【0003】
例えば、従来のギャードモータの減速機構は、外周面を浮動不能にかつ回転可能に支承され、一側に太陽歯車を取着した内歯車とモータ軸先端に形成した外歯車とを正規の歯車噛合位置に保持するように噛み合わせ、一方、出力軸基端部に回転盤を固着し、その回転盤にギャードモータのカバーに固定された固定内歯車と噛み合う遊星歯車を少なくとも3個以上等角度間隔に回転可能に軸支し、その3個以上の遊星歯車で太陽歯車の中心を保持するように互いに噛み合わせている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来の遊星ギヤードモータは、駆動歯車を備えたモータの回転軸と、減速機構部の遊星キャリアとに、それぞれ、互いに回転自在かつモータの回転軸の軸方向にそって移動自在に係合する係合部を設け、駆動歯車と遊星歯車とを噛み合わせてモータ部と減速機構部とを連結させたとき、モータの回転軸の駆動歯車取付位置より先の回転軸先端の長さ寸法が、少なくとも第一段遊星歯車の軸方向長さ寸法より大きく、かつモータの回転軸先端が第一段遊星キャリアの回転中心の係合部内まで挿入され、該遊星キャリアを回転軸支するように配置されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭55-119249号公報
【文献】特開2002-349643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような遊星歯車減速機構を利用したギヤードモータは各種用途に用いられており、使用環境によって静音性や低振動が要求される場合がある。
【0007】
ところが、上述したようなギヤードモータでは、歯車同士の噛み合いによりラジアル荷重が発生すると、固定内歯車と筐体内周面とが接触することで騒音や振動が発生してしまうという課題がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決すためになされたもので、静音性に優れ、低振動のギヤードモータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るギヤードモータは、駆動軸を有する電動モータと、当該電動モータの駆動軸を入力軸として入力される駆動力を変速して出力軸から出力する変速部とが一体的に設けられ、当該変速部が少なくとも1段の遊星歯車減速機構を有するギヤードモータであって、遊星歯車減速機構が、電動モータによる回転力を受けて回転する太陽歯車と、当該太陽歯車に外接噛合し、回転に伴って出力軸を駆動する複数の遊星歯車と、変速部の円筒体からなる筐体内周面に固着支持され、遊星歯車と内接噛合する固定内歯車とを備え、筐体と固定内歯車との間に、弾性体からなる緩衝部が配設されていることを特徴とする。
【0010】
このように本発明においては、遊星歯車減速機構が、電動モータによる回転力を受けて回転する太陽歯車と、当該太陽歯車に外接噛合し、回転に伴って出力軸を駆動する複数の遊星歯車と、変速部の円筒体からなる筐体内周面に固着支持され、遊星歯車と内接噛合する固定内歯車とを備え、筐体と固定内歯車との間に、弾性体からなる緩衝部が配設されていることから、遊星歯車減速機構の歯車同士の噛み合いにより発生するラジアル荷重が伝達される、軸線から径方向最外側に配設される固定内歯車が筐体内周面と接触するに際し、このラジアル荷重を弾性体からなる緩衝部によって吸収することとなり、固定内歯車と筐体内周面との直接的な接触に起因する騒音及び振動を抑制することができるという効果を有する。
【0011】
本発明に係るギヤードモータは、必要に応じて、緩衝部が、筐体における電動モータ側の端部内径を拡大して形成される大径部に配設されている。
【0012】
このように本発明においては、緩衝部が、筐体における電動モータ側の端部内径を拡開して形成される大径部に配設されていることから、変速部によって減速される前の電動モータによる高速回転の影響を最も受ける部位において生じるラジアル荷重を緩衝部により吸収することとなり、ギヤードモータで発生する騒音及び振動を抑制することができるという効果を有する。
【0013】
本発明に係るギヤードモータは、必要に応じて、緩衝部が、筐体における電動モータ側の端部内径を拡開して形成される大径部、及び筐体の収納部と前記大径部とをつなぐ段差部とに配設されている。
【0014】
このように本発明においては、緩衝部が、筐体における電動モータ側の端部内径を拡開して形成される大径部、及び筐体の収納部と大径部とをつなぐ段差部とに配設されていることから、遊星歯車減速機構の歯車同士の噛み合いにより発生するスラスト荷重が伝達される、軸線から径方向最外側に配設される固定内歯車が筐体内周面と接触するに際し、このスラスト荷重を弾性体からなる緩衝部によって吸収することとなり、固定内歯車と筐体内周面との直接的な接触に起因する騒音及び振動を抑制することができるという効果を有する。
【0015】
本発明に係るギヤードモータは、必要に応じて、段差部が、大径部から収納部に向かって縮径するテーパ状に形成されている。
【0016】
このように本発明においては、段差部が、大径部から収納部に向かって縮径するテーパ状に形成されていることから、各種歯車に設計誤差等がある場合であっても、スラスト荷重により固定内歯車が段差部のテーパ面に沿って出力軸側に押し込まれ、固定内歯車を段差部の緩衝部に固定することができることとなり、設計誤差等による噛み合い率低下に起因する騒音及び振動を抑制することができるという効果を有する。
【0017】
本発明に係るギヤードモータは、必要に応じて、大径部と段差部との間に、環状凹部が形成されている。
【0018】
このように本発明においては、大径部と段差部との間に、環状凹部が形成されていることから、当該環状凹部に沿って弾性体からなる緩衝部を配設することにより、緩衝部を筐体に安定して固定するとともに、弾性体が熱膨張した際の伸長した部分の逃げ機構として機能することができることとなり、緩衝部の剥がれ等による騒音及び振動を抑制することができるという効果を有する。
【0019】
本発明に係るギヤードモータは、必要に応じて、太陽歯車、遊星歯車及び固定内内歯車が、斜歯歯車又は山歯歯車である。
【0020】
このように本発明においては、太陽歯車、遊星歯車及び固定内内歯車が、斜歯歯車又は山歯歯車であることから、歯車同士の噛み合い率等を向上させることができることとなり、騒音及び振動を抑制することができるという効果を有する。
【0021】
本発明に係るギヤードモータは、必要に応じて、電動モータが、モータ本体と、当該モータ本体を収容するモータ筐体とを備え、モータ本体とモータ筐体との間に、弾性体からなる軸受保持緩衝部が配設されている。
【0022】
このように本発明においては、電動モータが、モータ本体と、当該モータ本体を収容するモータ筐体とを備え、モータ本体とモータ筐体との間に、弾性体からなる軸受保持緩衝部が配設されていることから、電動モータの構成部材間で発生する騒音や電動モータの駆動により発生する振動、遊星歯車減速機構から駆動軸を介して伝達されるラジアル荷重やスラスト荷重に起因する電動モータの騒音や振動を弾性体からなる軸受保持緩衝部によって吸収することとなることから、電動モータでの騒音や振動を抑制することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係るギヤードモータの軸線に沿った縦断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る1段目の遊星歯車減速機構部分の軸線に沿った拡大縦断面図である。
【
図3】第2の実施形態に係る1段目の遊星歯車減速機構部分の軸線に沿った拡大縦断面図である。
【
図4】第3の実施形態に係る1段目の遊星歯車減速機構部分の軸線に沿った拡大縦断面図である。
【
図5】第4の実施形態に係る1段目の遊星歯車減速機構部分の軸線に沿った拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を説明する。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0025】
(第1の実施形態)
本実施形態に係るギヤードモータについて、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は本実施形態に係るギヤードモータの軸線に沿った縦断面図であり、
図2は1段目の遊星歯車減速機構部分の軸線に沿った拡大縦断面図である。
【0026】
図1及び
図2に示すように、ギヤードモータ1は、電動モータ2と変速部3とを備え、当該電動モータ2と変速部3とは一体的に設けられている。ギヤードモータ1は、軸線Aを中心軸とする略円筒状の外形を有している。
電動モータ2は、その一端面の中央から軸線Aに沿って変速部3側まで延出した駆動軸21を有している。
変速部3は、軸線Aに沿って突出した、電動モータ2の駆動軸21を入力軸として入力される駆動力を変速して出力する出力軸31を有している。
【0027】
電動モータ2は、モータ本体22と、モータ本体22をその内部に収容する、略円筒体からなるモータ筐体23とを備えている。駆動軸21は、ベアリング24を介して、モータ筐体23に回動可能に軸支されている。
また、電動モータ2は、モータ本体22とモータ筐体23との間に、弾性体からなる軸受保持緩衝部25を備えている。軸受保持緩衝部25は、少なくとも駆動軸21の両端部において、駆動軸21を軸支するベアリング24とモータ筐体23の蓋部26との間に介装され、ベアリング24と蓋部25とを離間させている。
【0028】
変速部3は、電動モータ2の端面に固定されたマウントプレート32と、マウントプレート32上にネジ33によって固定されたフランジ34と、フランジ34上方に配設された歯車機構40と、この歯車機構40をその内部に収容し、フランジ34をスプリングピン35によって固定する筐体36とを備えている。
マウントプレート32及びフランジ34の中央部には、軸線Aを中心とする貫通孔が形成され、この貫通孔に電動モータ2の駆動軸21が挿通されている。
【0029】
歯車機構40は、3段の遊星歯車減速機構50、60、70を備えている。
【0030】
1段目の遊星歯車減速機構50は、電動モータ2の駆動軸21に固定されて、電動モータ2の回転力を受けて駆動軸21とともに回転する第1の太陽歯車51と、第1の太陽歯車51の周囲に配設され、第1の太陽歯車51と外接噛合する複数(例えば、4つ)の遊星歯車52と、円筒体からなる筐体36の内周面全周にわたって固着支持され、複数の遊星歯車52と内接噛合する固定内歯車53と、筐体36と固定内歯車53との間に設けられた弾性体からなる緩衝部54とを備えている。複数の遊星歯車52は、第1のキャリア55により回動可能に保持されている。
【0031】
筐体36は、後述する2段目の遊星歯車減速機構60近傍から出力軸31側に設けられる、軸線Aを中心とする収納部38と、1段目の遊星歯車減速機構50近傍から電動モータ2側の内周面に端部内径を拡大して収納部38よりも径が大きく、軸線Aを中心とする大径部37と、大径部37と収納部38とをつなぐ段差部39を有している。
【0032】
緩衝部54は、筐体36の大径部37に沿って配設された円周部54aと、ワッシャ56を介してフランジ34上に固定され、円環状を呈する底部54bとを備えている。緩衝部54の材質・種類は特に制限されず、1段目の遊星歯車減速機構からのラジアル荷重を支持し、このラジアル荷重に起因する振動を抑制・吸収するものであればいずれでもよく、例えばブチルゴム等の合成ゴムである。なお、緩衝部54は、筐体36と固定内歯車53との間に設けられていればよく、すなわち、少なくとも円周部54aを有していればよい。
【0033】
第1のキャリア55は、各遊星歯車52を回動自在に支持する複数の入力保持軸55aと、この各入力保持軸55aが軸線Aを中心として周方向に等間隔で一側面に固着される円板体からなる円板部55bと、この円板部55bの円板体の他側面に軸線Aを中心として2段目の遊星歯車減速機構60の第2の太陽歯車61を回動自在に固定支持する出力保持軸55cとを備えて形成される。第2の太陽歯車61は、第1のキャリア55と同期して回転する。
【0034】
2段目の遊星歯車減速機構60は、第2の太陽歯車61と、第2の太陽歯車61の周囲に配設され、第2の太陽歯車61と外接噛合する複数(例えば、3つ)の遊星歯車62と、筐体36の収納部38に固着支持され、複数の遊星歯車62と内接噛合する固定内歯車63と、複数の遊星歯車62を回動可能に保持する第2のキャリア64とを備えている。
【0035】
第2のキャリア64は、各遊星歯車62を回動自在に支持する複数の入力保持軸64aと、この各入力保持軸64aが軸線Aを中心として周方向に等間隔で一側面に固着される円板体からなる円板部64bと、この円板部64bの円板体の他側面に軸線Aを中心として3段目の遊星歯車減速機構70の第3の太陽歯車71を回動自在に固定支持する出力保持軸64cとを備えて形成される。第3の太陽歯車71は、第2のキャリア64と同期して回転する。
【0036】
3段目の遊星歯車減速機構70は、第3の太陽歯車71と、第3の太陽歯車71の周囲に配設され、第3の太陽歯車71と外接噛合する複数(例えば、4つ)の遊星歯車72と、筐体36の収納部38に固着支持され、複数の遊星歯車72と内接噛合する固定内歯車73と、複数の遊星歯車72を回動可能に保持する第3のキャリア74とを備えている。
【0037】
第3のキャリア74は、各遊星歯車72を回動自在に支持する複数の入力保持軸74aと、この各入力保持軸74aが軸線Aを中心として周方向に等間隔で一側面に固着される円板体からなる円板部74bとを備えて形成される。円板部64bの円板体の他側面には、軸線Aを中心として変速部3の出力軸31が固定支持されている。出力軸31は、第3のキャリア74と同期して回転する。
【0038】
太陽歯車、遊星歯車及び固定内歯車の種類は特に限定されず、平歯車(スパーギヤ)、斜歯歯車(ヘリカルギヤ)又は山歯歯車(ダブルヘリカルギヤ)のいずれでもよいが、噛み合い率、強度(面圧強度)、静音性等の観点から、斜歯歯車又は山歯歯車であることが好ましい。例えば、1段目の遊星歯車減速機構では斜歯歯車を採用し、2段目及び3段目の遊星歯車減速機構では平歯車を採用することもできる。
【0039】
なお、本実施形態に係るギヤードモータ1は、少なくとも上記した1段目の遊星歯車減速機構50を備えていればよい。
【0040】
次に、本実施形態に係るギヤードモータ1の動作について説明する。
【0041】
電動モータ2に通電して電動モータ2を作動させると、駆動軸21の回転により第1の太陽歯車51が回転する。すると、第1の太陽歯車51に外接噛合している複数の遊星歯車52が入力保持軸55aを軸として回転(自転)する。同時に、遊星歯車52は、固定内歯車53に内接噛合しているため、固定内歯車53に沿って第1の太陽歯車51のまわりを回転(公転)する。この固定内歯車53が筐体36の大径部37に固定され、複数の遊星歯車52の回転を支持していることから、この遊星歯車52と第1の太陽歯車51との回転応力に基づいて固定内歯車53と筐体36との間で発生する振動をこの固定内歯車53と大径部37との間に介装される緩衝部54の弾性力により吸収して振動を抑制するとともに、騒音を低減できることとなる。
このように、振動が抑制された遊星歯車52に回転力を付与し、この遊星歯車52の公転に伴い、第1のキャリア55、すなわち、第2の太陽歯車61が回転する。
【0042】
第2の太陽歯車61が回転すると、第2の太陽歯車61に外接噛合している複数の遊星歯車62が入力保持軸64aを軸として回転(自転)する。同時に、遊星歯車62は、固定内歯車63に内接噛合しているため、固定内歯車63に沿って第2の太陽歯車61のまわりを回転(公転)する。そして、遊星歯車62の公転に伴い、第2のキャリア64、すなわち、第3の太陽歯車71が回転する。
【0043】
第3の太陽歯車71が回転すると、第3の太陽歯車71に外接噛合している複数の遊星歯車72が入力保持軸74aを軸として回転(自転)する。同時に、遊星歯車72は、固定内歯車73に内接噛合しているため、固定内歯車73に沿って第3の太陽歯車71のまわりを回転(公転)する。そして、遊星歯車72の回転に伴い、第3のキャリア74、すなわち、変速部3の出力軸31が回転する。
【0044】
このように、歯車機構40が3段の遊星歯車減速機構50、60、70を備えていることにより、電動モータ2の駆動軸21の回転速度を効果的に減速し、変速部3の出力軸31のトルクを増大させることができるとともに、固定内歯車53と筐体36の大径部37との間に介装される緩衝部54の弾性力により振動を吸収することで、全体として振動、騒音、共振に伴う「うなり」等を防止し、装置の静音性を実現可能とする。
【0045】
(第2の実施形態)
本実施形態に係るギヤードモータについて、
図3を用いて説明する。
図3は、第2の実施形態に係る1段目の遊星歯車減速機構部分の軸線に沿った拡大縦断面図である。
なお、本実施形態において上記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0046】
本実施形態に係るギヤードモータは、上記第1の実施形態と異なり、太陽歯車、遊星歯車及び固定内歯車を斜歯歯車又は山歯歯車で形成するとともに、緩衝部を断面略コ字形状に形成される構成である。
以下では、太陽歯車、遊星歯車及び固定内歯車として、斜歯歯車を用いた例について説明する。
【0047】
第1の太陽歯車81は、歯すじが左あがりの左ねじれの斜歯歯車であり、電動モータ2の駆動軸21の回転に伴って、変速部3の出力軸31側から見て時計回りに回転する。
複数の遊星歯車82は、歯すじが右上がりの右ねじれの斜歯歯車であり、出力軸31側から見て反時計回りに回転(自転)し、変速部3の出力軸31側から見て時計回りに第1の太陽歯車81のまわりを回転(公転)する。
固定内歯車83は、歯すじが左あがりの左ねじれの斜歯歯車である。
【0048】
図3に示すように、緩衝部84は、筐体36の大径部37に沿って円周状に配設された円周部84aと、ワッシャ56を介してフランジ34上に固定され、円環状を呈する底部84bと、筐体36の段差部39に沿って配設された、円環状を呈する天板部84cとを有している。すなわち、本実施形態では、固定内歯車83と筐体36とが直接的に接触しないように、緩衝部84が固定内歯車83を取り囲むようにして、少なくとも筐体36の大径部37及び段差部39に配設されている。
【0049】
上述したように、太陽歯車、遊星歯車及び固定内歯車として斜歯歯車(又は山歯歯車)を採用すれば、噛み合い率、強度(面圧強度)、静音性等の利点を享受できるが、その一方で歯車同士の噛み合いによるスラスト荷重の問題が発生する。
すなわち、電動モータ2を作動させると、上述の例では、第1の太陽歯車81には出力軸31側にスラスト荷重が発生し、第1の太陽歯車81と噛み合う複数の遊星歯車82には出力軸31とは反対側(駆動軸21側)にスラスト荷重が発生する。そして、この遊星歯車82と噛み合う固定内歯車83には、出力軸31側にスラスト荷重が発生する。
この固定内歯車83の出力軸31側スラスト荷重によって、固定内歯車83と段差部39とが接触し、この接触による騒音・振動が懸念される。これに対し、本実施形態に係るギヤードモータ1は、当該段差部39にも緩衝部84が設けられているため、複数の遊星歯車82より発生する駆動軸21側へのスラスト荷重を底部84bで支持して振動等を吸収し、他方固定内歯車83より発生する出力軸31側へのスラスト荷重を天板部84cで支持して振動等を吸収できることとなり、固定内歯車83の段差部39への衝突を抑制・吸収し、その結果、モータ駆動時の静音性、低振動を確保することができるものである。
【0050】
(第3の実施形態)
本実施形態に係るギヤードモータについて、
図4を用いて説明する。
図4は、第3の実施形態に係る1段目の遊星歯車減速機構部分の軸線に沿った拡大縦断面図である。
なお、本実施形態において上記各実施形態と重複する説明は省略する。
【0051】
図4に示すように、本実施形態に係るギヤードモータ1が上記第2の実施形態に係るギヤードモータ1と異なる点は、変速部3の筐体36内周面の段差部85が駆動軸21側から出力軸31側に向かって縮径するテーパ状に形成されている点である。
【0052】
上述したように、電動モータ2の駆動により、固定内歯車83には出力軸31側のスラスト荷重が発生する。このとき、第1又は第2の実施形態における垂直の側壁からなる段差部39と固定内歯車83との間に隙間がなければ、モータ駆動時の騒音等をより抑えることができるが、設計誤差や組立誤差等によりこの隙間を完全になくすのは困難な場合もある。
本実施形態では、段差部85がテーパ状に形成されているため、駆動時に固定内歯車83にスラスト荷重がかかり、固定内歯車83が段差部85のテーパ面に沿って出力軸31側に押し込まれることによって、設計誤差等を解消し、駆動時の騒音・振動の発生をより抑制することができる。
【0053】
(第4の実施形態)
本実施形態に係るギヤードモータについて、
図5を用いて説明する。
図5は、第4の実施形態に係る1段目の遊星歯車減速機構部分の軸線に沿った拡大縦断面図である。
なお、本実施形態において上記各実施形態と重複する説明は省略する。
【0054】
図5に示すように、本実施形態に係るギヤードモータ1が上記第3の実施形態に係るギヤードモータ1と異なる点は、段差部85と大径部37との間に環状凹部86が形成されている点である。緩衝部84は、この環状凹部86側面に沿うようにして、大径部37から段差部85にかけて屈曲した状態となっている。
【0055】
なお、上述の各実施形態に示した構成は、適宜組み合わせて適用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 ギヤードモータ
2 電動モータ
3 変速部
21 駆動軸
22 モータ本体
23 モータ筐体
24 ベアリング
25 軸受保持緩衝部
26 蓋部
31 出力軸
32 マウントプレート
33 ネジ
34 フランジ
35 スプリングピン
36 筐体
37 大径部
38 収納部
39、85 段差部
40 歯車機構
50、60、70 遊星歯車減速機構
51、81 第1の太陽歯車
52、82 遊星歯車
53、83 固定内歯車
54 緩衝部
54a 円周部
54b 底部
55 第1のキャリア
55a 入力保持軸
55b 円板部
55c 出力保持軸
56 ワッシャ
61 第2の太陽歯車
62 遊星歯車
63 固定内歯車
64 第2のキャリア
64a 入力保持軸
64b 円板部
64c 出力保持軸
71 第2の太陽歯車
72 遊星歯車
73 固定内歯車
74 第2のキャリア
74a 入力保持軸
74b 円板部
84 緩衝部
84a 円周部
84b 底部
84c 天板部
86 環状凹部
A 軸線