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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 63/00 20060101AFI20240111BHJP
   A01B 35/04 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A01B63/00 Z
A01B35/04 A
A01B35/04 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019233730
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021101632
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】河原 文雄
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】末平 直土
(72)【発明者】
【氏名】坂口 熙
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-103613(JP,A)
【文献】特開平09-201105(JP,A)
【文献】特開2012-055197(JP,A)
【文献】特開2005-269918(JP,A)
【文献】登録実用新案第366665(JP,Z2)
【文献】特開昭63-080871(JP,A)
【文献】実公昭44-030655(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 63/00
A01B 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向にスライド移動可能に接続された第1フレーム及び第2フレームを含むメインフレームと、
前記第1フレームに接続された前輪フレームと、
前記第2フレームに接続された後輪フレームと、
前記前輪フレームに支持された前輪と、
前記後輪フレームに支持された後輪と、
前記前輪と前記後輪との間に設けられ、圃場を耕す作業部と、
前記前輪と前記後輪との距離を変化させるホイールベース可変機構と、
を有し、
前記ホイールベース可変機構は、前記第1フレームと前記第2フレームとをスライド移動させ、前記前輪と前記後輪との距離が短くなる動作に連動して前記作業部を上昇させる農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農作業機に関する。特に、本発明は自走式の農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、農作業の労働時間を軽減するために農業用機械のオートマチック化が進められ、様々な農業用機械が開発されている。特に、トラクタ等の走行機体の後方に装着され、耕耘や代かきなど、作業の種類に応じて交換可能な農作業機(耕耘機や代かき機)は、トラクタ等の走行機体に対してアタッチメントのように交換するだけで様々な農作業に対応することが可能であり、農作業のコスト低減に大きく寄与している。
【0003】
特に、近年無人で農作業を行う自走式の農業用機械の開発が進められている。現在、無人の自走式の農業用機械の開発は、走行機体を主体として進められており、例えば耕耘や代かきなどの農作業を無人で実現する場合、これらを走行機体に牽引させる構成のものしかなかった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-201444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような牽引式の農業用機械の場合、大面積の圃場では作業効率が良いが、多くの小面積の圃場が分散して存在する場合、圃場の数が多い分、全体の作業時間に対する圃場間の移動に要する時間の割合が大きくなるため、効率的な作業を行うことができなかった。また、上記のような農業用機械は非常に大きいため、移動するためには大型トラックを準備する必要があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされた発明であり、走行機体による牽引を必要としない、新たな構成の自走式農作業機を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態における農作業機(100)は、前輪(300)と、後輪(400)と、前記前輪と前記後輪との間に設けられ、圃場を耕す作業部(500)と、前記前輪と前記後輪との距離を変化させるホイールベース可変機構(600)と、を有する。
【0008】
メインフレーム(210)と、前記メインフレームから下方に延びて前記前輪を支持する前輪フレーム(220)と、前記メインフレームから下方に延びて前記後輪を支持する後輪フレーム(230)と、をさらに有し、前記ホイールベース可変機構は、前記メインフレームに対する前記前輪フレーム及び前記後輪フレームの少なくとも一方の傾きを変化させてもよい。
【0009】
前記ホイールベース可変機構は、前記前輪と前記後輪との距離が短くなる動作に連動して前記作業部を上昇させてもよい。
【0010】
前記後輪の後方に設けられた整地部材(700B)と、前記メインフレーム及び前記後輪フレームに接続された昇降機構(800B)と、をさらに有し、前記昇降機構は、前記メインフレームに対する前記後輪フレームの傾きを変化させる動作に連動して前記整地部材を上昇させてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、走行機体による牽引を必要としない、新たな構成の自走式農作業機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る農作業機の構成を示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る農作業機の構成を示す側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る農作業機において、ホイールベース可変機構の詳細な構成を示す側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る農作業機の構成を示す側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る農作業機において、ホイールベース可変機構の詳細な構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の農作業機について説明する。但し、本発明の農作業機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号又は同一の符号の後にアルファベットを付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、「上」は圃場から垂直に遠ざかる方向を示し、「下」は圃場に向かって垂直に近づく方向を示す。また、「前」は農作業機が圃場に対して作業をしながら進行する方向を示し、「後」は前とは180°反対の方向を示す。また、「左」又は「右」は、農作業機が前方を向いた状態における左右方向を示す。
【0015】
また、本願の明細書及び特許請求の範囲において、平面視における農作業機の中心線(進行方向に平行な線)を基準としたとき、相対的に、中心線に近い側を「内側」と呼び、中心から遠い側を「外側」という。「耕す」は、少なくとも「代かき」、「耕耘」、及び「砕土」を含む。
【0016】
以下の実施形態では、農作業機として代かき機を代表的に例示するが、この例に限定されない。例えば、代かき機以外にも耕耘機、砕土機など、圃場を耕す農作業機に本発明を適用することができる。また、特に技術的な矛盾が生じない限り、異なる実施形態間の技術を組み合わせることができる。また、特に技術的な矛盾が生じない限り、ある実施形態の変形例として挙げられた技術思想は、他の実施形態にも適用することができる。
【0017】
[第1実施形態]
本実施形態の農作業機100は、前進しながら無人で作業を行う自走式の作業機である。農作業機100は、圃場を耕す作業状態では、作業や作業中の走行安定性を考慮して前輪と後輪との間の距離(ホイールベース)をある程度確保する必要がある。一方で、農作業機100が旋回する旋回状態では、旋回の曲率半径を小さくするためにホイールベースを小さくする必要がある。特に、左右の駆動輪の回転差で旋回を行うスキッドステア方式を農作業機100に採用する場合、平面視における前後左右の4輪の位置関係をできるだけ正方形に近づけることが好ましい。上記のように、安定した農作業と優れた旋回性能を両立するために、農作業中にホイールベースを調整できる構成が望ましい。
【0018】
[農作業機100の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る農作業機の構成を示す側面図である。図1に示すように、農作業機100は、フレーム200、前輪300、後輪400、作業部500、及びホイールベース可変機構600を有する。図1の直線101は、前輪300及び後輪400の各々の下端を結ぶ直線である。直線103は、農作業機100が圃場を作業する場合に想定される圃場表面を示す直線である。図1の(A)はホイールベース可変機構600が伸長した作業状態を示し、(B)はホイールベース可変機構600が収縮した旋回状態を示す。
【0019】
フレーム200は、メインフレーム210、前輪フレーム220、及び後輪フレーム230を備える。図示しないが、前輪フレーム220及び後輪フレーム230は、それぞれ左右に一対で(2つ)設けられている。メインフレーム210は、農作業機100の骨格を構成する部材である。メインフレーム210は、前輪300と後輪400との間に設けられており、前輪300と後輪400とを結ぶ方向に伸縮可能である。メインフレーム210は、第1フレーム211及び第2フレーム213を含む。第2フレーム213は第1フレーム211に対してスライド移動可能に接続されている。図1では、第2フレーム213が第1フレーム211の内部に入れ子式に入り込むことで、スライド移動する。ただし、第1フレーム211と第2フレーム213とのスライド移動は上記の構成に限定されない。
【0020】
第1フレーム211及び第2フレーム213の少なくともいずれか一方に、第1フレーム211又は第2フレーム213と摺動する摺動部材が設けられていてもよい。摺動部材は、側面視又は上面視において、第1フレーム211と第2フレーム213とが重なる領域の一部に設けられている。この摺動部材によって、上記のスライド移動の際の摺動面積を小さくすることができ、その結果、上記スライド移動の際の摩擦抵抗を小さくすることができる。摺動部材として、樹脂素材のものが用いられてもよい。例えば、第1フレーム211と第2フレーム213との間において、第1フレーム211の開口端部及び第2フレーム213の先端部に摺動部材が設けられてもよい。
【0021】
一対の前輪フレーム220は、メインフレーム210の前方側(第1フレーム211)に接続されており、メインフレーム210から前方及び下方に延びている。各前輪フレーム220は、その下端付近で前輪300を支持している。一対の後輪フレーム230は、メインフレーム210の後方側(第2フレーム213)に接続されており、メインフレーム210から後方及び下方に延びている。各後輪フレーム230は、その下端付近で後輪400を支持している。前輪フレーム220及び後輪フレーム230はメインフレーム210に固定されている。具体的には、前輪フレーム220は第1フレーム211に固定されており、後輪フレーム230は第2フレーム213に固定されている。つまり、メインフレーム210の伸縮方向に対する前輪フレーム220及び後輪フレーム230のそれぞれの延びる方向の傾きは固定されている。
【0022】
ホイールベース可変機構600はシリンダを含む。シリンダはシリンダチューブ611及びピストンロッド613を有する。ホイールベース可変機構600は、メインフレーム210に接続されている。具体的には、シリンダチューブ611の端部(前方側の端部)は第1フレーム211に固定された取付部215に接続されている。ピストンロッド613の端部(後方側の端部)は第2フレーム213に固定された取付部217に接続されている。ホイールベース可変機構600は前後方向(前輪300と後輪400とを結ぶ方向)に伸縮する動力源であり、ホイールベース可変機構600が伸縮することでメインフレーム210が伸縮する。具体的には、ホイールベース可変機構600が収縮し、第2フレーム213が第1フレーム211に対してスライド移動することで、前輪300と後輪400との距離が短くなる。つまり、上記の構成によってホイールベースが変化する。
【0023】
作業部500は、前輪300と後輪400との間に設けられている。つまり、農作業機100はミッドマウント方式の農作業機である。例えば、作業部500は、代かき、耕耘、及び砕土などの作業を行う部材である。作業部500は、上記の作業のうち、複数の作業を行う機能を有していてもよい。作業部500は、接続部材590を介してメインフレーム210に接続(支持)されている。具体的には、接続部材590の上端がメインフレーム210に接続されており、接続部材590の下端が作業部500に接続されている。図示省略したが、接続部材590には、作業部500を上下に移動する作業部昇降機構が設けられており、接続部材590は作業部昇降機構を介して作業部500を昇降自在に支持している。
【0024】
作業部500が上方に移動した状態において、接続部材590の一部がメインフレーム210よりも上方に突出してもよい。また、ホイールベース可変機構600の伸縮動作に伴い、作業部昇降機構が作業部500を昇降させてもよい。例えば、メインフレーム210と作業部500との間、又はホイールベース可変機構600と作業部500との間がリンク機構によって連結されており、メインフレーム210及びホイールベース可変機構600の収縮に伴い、当該リンク機構が作業部500を上昇させてもよい。ホイールベース可変機構600が収縮したときに作業部昇降機構が作業部500を上昇させ、ホイールベース可変機構600が伸長したときに作業部昇降機構が作業部500を下降させてもよい。
【0025】
作業部500は、フレーム510、ロータ520、シールドカバー530、及びエプロン540を備える。作業部500は、エプロン540のさらに後方に、エプロン540に対して回動可能に接続された整地部材を備えていてもよい。ロータ520はフレーム510に対して回転自在に取り付けられている。ロータ520は回転する爪軸と、爪軸に取り付けられた複数の作業爪を有しており、その作業爪を回転させながら所定の作業幅で圃場を耕耘又は攪拌する。エプロン540はロータ520の後方において、シールドカバー530に対して回動可能に設けられている。なお、シールドカバー530とフレーム510との位置関係は固定されているため、シールドカバー530をフレーム510の一部と見なすこともできる。エプロン540は、圃場に接触することで、ロータ520による作業によって耕耘又は攪拌された圃場を均平化する。
【0026】
図示しないが、メインフレーム210には、農作業機100を動作させるために各種機能部材が設けられている。各種機能部材として、例えば、エンジン、トランスミッション、旋回機構、駆動制御機構、通信機構、及び燃料タンクなどの部材が備えられている。通信機構がサーバとの通信によってサーバ又はリモコンから制御信号を受信する。サーバから受信した制御信号に基づいて、駆動制御機構がエンジン、トランスミッション、及び旋回機構を駆動する。これらの動作によって農作業機100の自動走行が実行される。なお、旋回機構は、前輪300だけを左右に旋回してもよく、後輪400だけを左右に旋回してもよく、両輪を旋回してもよい。
【0027】
以上のように、本実施形態に係る農作業機によると、ミッドマウント方式の農作業機において、作業状態と旋回状態とにおいてホイールベースを変更することができる。この構成によって、作業時の安定性能と小回りが可能な高性能な旋回性能を得ることができる。さらに、ホイールベースを小さくすることで、農作業機100を小型化することができ、軽トラックなどを用いて農作業機100を運搬することが可能になる。
【0028】
また、作業部500が前輪300と後輪400との間にあることで、農作業機100の前後方向における重量バランスが安定し、農作業機100の移動を安定化することができる。
【0029】
[第2実施形態]
図2及び図3を用いて、第2実施形態に係る農作業機100Aについて説明する。第2実施形態に係る農作業機100Aは、第1実施形態に係る農作業機100と類似しているが、前輪フレーム220A及び後輪フレーム230Aがメインフレーム210Aに対して回動可能に接続されている点において、農作業機100と相違する。以下の説明において、第1実施形態の構成と同様の構成については詳細な説明を省略する場合がある。図2は、本発明の一実施形態に係る農作業機の構成を示す側面図である。図3は、本発明の一実施形態に係る農作業機において、ホイールベース可変機構の詳細な構成を示す側面図である。図2及び図3の(A)はホイールベース可変機構600Aが収縮してホイールベースが大きくなった作業状態を示し、(B)はホイールベース可変機構600Aが伸長してホイールベースが小さくなった旋回状態を示す。
【0030】
[農作業機100Aの構成]
図2に示すように、農作業機100Aの前輪フレーム220A及び後輪フレーム230Aの各々は、メインフレーム210Aに対して回動可能に接続されている。前輪フレーム220Aの上端は接続部221Aでメインフレーム210Aに接続されている。後輪フレーム230Aの上端は接続部231Aでメインフレーム210Aに接続されている。接続部221Aは作業部500Aよりも前方に設けられており、接続部231Aは作業部500Aよりも後方に設けられている。前輪フレーム220Aは接続部221Aから下方かつ前方に延びている。後輪フレーム230Aは接続部231Aから下方かつ後方に延びている。
【0031】
農作業機100Aは、ホイールベース可変機構600Aを備えている。ホイールベース可変機構600Aは第1ホイールベース可変機構620A及び第2ホイールベース可変機構630Aを有する。第1ホイールベース可変機構620Aは前輪フレーム220Aを回動させる。第2ホイールベース可変機構630Aは後輪フレーム230Aを回動させる。第1ホイールベース可変機構620Aと第2ホイールベース可変機構630Aとは、互いに連動してもよく、各々が独立に動作してもよい。本実施形態では、両者が連動する構成を例示する。
【0032】
第1ホイールベース可変機構620Aは、メインフレーム210A及び前輪フレーム220Aの各々に回動可能に接続されている。具体的には、第1ホイールベース可変機構620Aの一端(上方側かつ後方側の端部)は、メインフレーム210Aに固定された取付部215Aに対して回動可能に接続されている。第1ホイールベース可変機構620Aの他端(下方側かつ前方側の端部)は、前輪フレーム220Aに対して回動可能に接続されている。第2ホイールベース可変機構630Aは、メインフレーム210A及び後輪フレーム230Aに回動可能に接続されている。具体的には、第2ホイールベース可変機構630Aの一端(上方側かつ前方側の端部)は、メインフレーム210Aに固定された取付部217Aに対して回動可能に接続されている。第2ホイールベース可変機構630Aの他端(下方側かつ後方側の端部)は、後輪フレーム230Aに対して回動可能に接続されている。
【0033】
第1ホイールベース可変機構620Aが、図2の(A)の状態から(B)の状態に伸長すると、メインフレーム210Aに対する前輪フレーム220Aの傾きが変化し、前輪300Aと後輪400Aとの距離が短くなり、メインフレーム210Aの前方が上昇する。第2ホイールベース可変機構630Aが上記と同様に伸長すると、メインフレーム210Aに対する後輪フレーム230Aの傾きが変化し、前輪300Aと後輪400Aとの距離が短くなり、メインフレーム210Aの後方が上昇する。図2では、両方のホイールベース可変機構が連動して伸長するため、メインフレーム210Aが圃場表面に対して平行に上昇する。つまり、第1ホイールベース可変機構620A及び第2ホイールベース可変機構630Aは、前輪300Aと後輪400Aとの距離が短くなる動作に連動して作業部500Aを上昇させる。
【0034】
図3は、図2の第2ホイールベース可変機構630Aを拡大した図である。図3に示すように、第2ホイールベース可変機構630Aは、シリンダチューブ631A及びピストンロッド633Aを有する。シリンダチューブ631Aの上端はメインフレーム210Aに固定された取付部217Aに回動可能に接続されている。ピストンロッド633Aの下端は後輪フレーム230Aに固定された取付部219Aに回動可能に接続されている。第2ホイールベース可変機構630Aが、図3の(A)の状態から(B)の状態に伸長すると、ピストンロッド633Aが後輪フレーム230Aを下方に押し下げながら、第2ホイールベース可変機構630Aは回動軸218Aを中心に下方に回動する。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る農作業機100Aによると、第1実施形態に係る農作業機100と同様の効果に加え、ホイールベースを小さくすると共に作業部500Aを上昇させることができる。例えば、農作業機100Aの旋回時には作業部500Aを圃場から離して旋回するが、旋回のためのホイールベースの縮小と作業部500Aの上昇とを、両者に共通する動力源を用いて実現することができる。
【0036】
なお、一対の前輪フレーム220A、一対の後輪フレーム230Aのうち、片方の前輪フレーム220A又は片方の後輪フレーム230Aのみがメインフレーム210Aに対して回動可能に接続されていてもよい。左右方向の一方のみの前輪フレーム220A又は後輪フレーム230Aをメインフレーム210Aに対して回動可能に接続することによって、農作業機100Aの幅方向(左右方向)の姿勢も制御することができる。これによって、前輪300A又は後輪400Aの圃場に対する接地性が改善されて、圃場が荒れていたとしても前輪300A又は後輪400Aが浮き上がることが防止され、より一層作業時の安定性能を向上させることができる。
【0037】
[第3実施形態]
図4及び図5を用いて、第3実施形態に係る農作業機100Bについて説明する。第3実施形態に係る農作業機100Bは、第1実施形態に係る農作業機100と類似しているが、後輪フレーム230Bのみがメインフレーム210Bに対して回動可能に接続されている点、後輪フレーム230Bが前輪フレーム220Bよりも長い点、及び後輪400Bのさらに後方に後輪フレーム230Bの回動に連動して昇降する整地部材700Bが設けられている点において、農作業機100と相違する。以下の説明において、第1実施形態の構成と同様の構成については詳細な説明を省略する場合がある。図4は、本発明の一実施形態に係る農作業機の構成を示す側面図である。図5は、本発明の一実施形態に係る農作業機において、ホイールベース可変機構の詳細な構成を示す側面図である。図4及び図5の(A)はホイールベース可変機構630Bが収縮した作業状態を示し、(B)はホイールベース可変機構630Bが伸長した旋回状態を示す。
【0038】
[農作業機100Bの構成]
図4に示す農作業機100Bにおいて、前輪フレーム220Bの上端はメインフレーム210Bに固定されているのに対して、後輪フレーム230Bの上端は、接続部231Bにおいて、メインフレーム210Bに対して回動可能に接続されている。農作業機100Bは、後輪フレーム230Bに対してのみホイールベース可変機構630Bを備えている。
【0039】
図2の農作業機100Aと同様に、ホイールベース可変機構630Bが伸縮することでメインフレーム210Bに対する後輪フレーム230Bの傾きが変化する。本実施形態の場合、前輪フレーム220Bはメインフレーム210Bに固定されているため、ホイールベース可変機構630Bが伸長すると、農作業機100Bの後方だけ高さが変化し、農作業機100Bの前方側の高さは変化しない。その結果、農作業機100Bは前方に傾いた姿勢になる。
【0040】
農作業機100Bは、後輪400Bのさらに後方に後輪フレーム230Bの回動に連動して昇降する整地部材700Bを有している。整地部材700Bは昇降機構800Bを介して後輪フレーム230B及びメインフレーム210Bに接続されている。昇降機構800Bは、ホイールベース可変機構630Bの動作に伴い整地部材700Bを昇降移動させる。つまり、昇降機構800Bは、メインフレーム210Bに対する後輪フレーム230Bの傾きを変化させる動作に連動して整地部材700Bを上昇させる。図4の(A)に示す作業状態では、整地部材700Bは下降しており、図4の(B)に示す旋回状態では、整地部材700Bは上昇している。
【0041】
なお、後輪フレーム230Bが前輪フレーム220Bよりも長いことで、上記の後輪フレーム230Bの傾きの変化によって作業部500B及び整地部材700Bを十分な高さに上昇させることができる。
【0042】
[昇降機構800Bの構成]
図5は、図4のホイールベース可変機構630B及び昇降機構800Bを拡大した図である。ホイールベース可変機構630Bの構成は図3の第2ホイールベース可変機構630Aの構成と同じなので、説明を省略する。図5の(A)は下降状態(作業状態)における昇降機構800Bの側面図を示す。図5の(B)は上昇状態(旋回状態)における昇降機構800Bの側面図を示す。
【0043】
図5に示すように、平行リンク810Bは、上側リンクアーム811B及び下側リンクアーム813Bを有する。上側リンクアーム811B及び下側リンクアーム813Bは2対設けられており、それぞれの対は農作業機100Bの中心線(進行方向に平行な線)に対して左右に設けられている。上側リンクアーム811Bの一端(上方かつ前方の端部)は、接続部815Bにおいて回動規制部840Bに回動可能に接続されている。上側リンクアーム811Bの他端(下方かつ後方の端部)は、接続部819Bにおいて整地部材700Bに回動可能に接続されている。下側リンクアーム813Bの一端(上方かつ前方の端部)は、接続部817Bにおいて後輪フレーム230B及び回動規制部840Bに回動可能に接続されている。下側リンクアーム813Bの他端(下方かつ後方の端部)は、接続部821Bにおいて整地部材700Bに回動可能に接続されている。上側リンクアーム811B及び下側リンクアーム813Bは、それぞれの一端から他端に向かって略平行に延びている。なお、回動規制部840Bは接続部817Bにおいて後輪フレーム230Bに対して回動可能に接続されている。図示しないが、回動規制部840Bは、一対の後輪フレーム230Bの間をかけ渡すように設けられた連結フレームに接続されている。
【0044】
接続部815B、817B、819B、821Bの4点を結ぶ形状は略平行四辺形である。この構成により、平行リンク810Bは、それぞれの接続部を頂点とする平行四辺形の回動機構を構成する。上記の4つの頂点のうち接続部815B、817Bは回動規制部840Bに接続されており、接続部819B、821Bは整地部材700Bに接続されている。この回動機構により、平行リンク810Bは、回動規制部840Bに対する整地部材700Bの傾きを維持したまま、整地部材700Bを昇降させることができる。なお、本実施形態では、平行リンク810Bが後輪フレーム230Bに接続された構成を例示したが、平行リンク810Bはメインフレーム210Bに接続されてもよい。
【0045】
回動規制部840Bの上端に設けられた接続部843Bには、リンクロッド920Bの一端(下方かつ後方の端部)が接続されている。つまり、リンクロッド920Bが前方及び上方に引っ張られると、回動規制部840Bは接続部817Bを中心に上方に回動する。回動規制部840Bは係止部845Bを有する。回動規制部840Bは上側リンクアーム811Bを左右から挟む2つの板状部材で構成されており、係止部845Bはこれらの板状部材の間に設けられている。回動規制部840Bは、上側リンクアーム811Bに対して係止可能に設けられているが、下側リンクアーム813Bに対しては設けられていない。図5の(A)及び(B)に示す状態において、係止部845Bは上側リンクアーム811Bに対して、上側リンクアーム811Bの下方から接することで係止している。つまり、回動規制部840Bが上方に回動すると、係止部845Bによって上側リンクアーム811Bが上方に回動する。
【0046】
リンクロッド920Bの他端(上方かつ前方の端部)はメインフレーム210Bに対して回動可能に接続されている。ホイールベース可変機構630Bが伸長すると、後輪フレーム230Bが下方に回動し、メインフレーム210Bと後輪フレーム230Bとのなす角θが大きくなる。リンクロッド920Bは上方かつ前方に引っ張られ、回動規制部840Bが接続部817Bを中心として上方に回動する。その結果、係止部845Bによって上側リンクアーム811Bが持ち上げられ、整地部材700Bが上昇する。このように、ホイールベース可変機構630Bは、メインフレーム210Bに対する後輪フレーム230Bの傾きを変化させることでホイールベースを小さくし、その動作に連動して整地部材700Bを上昇させることができる。
【0047】
なお、上記のように、回動規制部840Bは上側リンクアーム811Bの下方への回動を規制しているが、上方への回動は規制していない。したがって、図5の(A)の作業状態において、上側リンクアーム811Bは上方へ回動可能であるため、整地部材700Bを上方に持ち上げることができる。
【0048】
ホイールベース可変機構630Bによってメインフレーム210Bに対する後輪フレーム230Bの傾きが変化すると、作業部500Bも前方に傾く。このとき、エプロン540Bにかかる負荷の方向も変化するため、エプロン540Bの回動を規制する部材が設けられていてもよい。例えば、ホイールベース可変機構630Bの伸長に連動してエプロン540Bの回動を規制する機構が設けられていてもよい。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る農作業機100Bによると、第1実施形態及び第2実施形態に係る農作業機100、100Aと同様の効果に加え、ホイールベースを小さくし、作業部500Bを上昇させると共に、整地部材700Bを上昇させることができる。例えば、農作業機100Bの旋回時には作業部500B及び整地部材700Bを圃場から離して旋回するが、旋回のためのホイールベースの縮小と作業部500B及び整地部材700Bの上昇とを、これらの部材に共通する動力源を用いて実現することができる。
【0050】
また、後輪400Bの後方に整地部材700Bが設けられていることで、作業部500Bの作業の後に後輪400Bによって発生した轍を均平化することができる。このような構成によって、走行機体による牽引を必要としない、新たな構成の自走式農作業機を実現することができる。
【0051】
なお、上記の実施形態では、整地部材700Bに設けられた接地部材が板状の部材である構成が例示されているが、この構成に限定されない。例えば、これらの接地部材は、板状部材の他にローラー、カゴローラー、ケンブリッジローラーなど、轍を均平化することができる他の部材であってもよい。
【0052】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本実施形態の作業機を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、上述した各実施形態は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、各実施形態に共通する技術事項については、明示の記載がなくても各実施形態に含まれる。
【0053】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0054】
100:農作業機、 101:直線、 200:フレーム、 210:メインフレーム、 211:第1フレーム、 213:第2フレーム、 215、217、219A:取付部、 218A:回動軸、 220:前輪フレーム、 221A、231A:接続部、 230:後輪フレーム、 300:前輪、 400:後輪、 500:作業部、 510:フレーム、 520:ロータ、 530:シールドカバー、 540:エプロン、 590:接続部材、 600、630B:ホイールベース可変機構、 611、631A:シリンダチューブ、 613、633A:ピストンロッド、 700B:整地部材、 800B:昇降機構、 810B:平行リンク、 811B:上側リンクアーム、 813B:下側リンクアーム、 815B、817B、819B、821B、843B:接続部、 840B:回動規制部、 845B:係止部、 920B:リンクロッド
図1
図2
図3
図4
図5