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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】プラズマ生成装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20240111BHJP
   F01N 3/028 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H05H1/24
F01N3/028
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020083481
(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公開番号】P2021180081
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】505402581
【氏名又は名称】株式会社イー・エム・ディー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江部 明憲
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-107781(JP,A)
【文献】国際公開第2009/091065(WO,A1)
【文献】特開2017-073375(JP,A)
【文献】特表2009-535208(JP,A)
【文献】特表2006-510187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0134947(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24
F01N 3/028
B01D 53/92
B01J 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流路内を流れる気体を電離してプラズマを生成するための、ガス処理装置に設けられるプラズマ生成装置であって、
a) 交流電源と、
b) 一方が前記ガス流路内に配置され、他方が該ガス流路を構成する導電体製の壁である、電源電極及び接地電極と、
c) 前記交流電源と前記電源電極を電気的に接続する非可撓性の接続材と、
d) 前記電源電極と前記接地電極のうちの一方の、他方の電極に対向する側を覆う絶縁材と
を備えることを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項2】
さらに、前記接続材と離間して該接続材を覆う保護カバーを備えることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項3】
さらに、
前記交流電源から出力される交流電力を測定する電力測定部と、
前記電力測定部で測定される交流電力に応じて該交流電力の交流電圧を制御する電圧制御部と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ生成装置。
【請求項4】
さらに、
前記交流電源から出力される交流電流の波形を取得する電流波形取得部と、
前記電流波形取得部で取得される交流電流の波形から放電によるパルス電流を検出するパルス電流検出部と、
前記パルス電流検出部で検出されるパルス電流のパルス繰り返し周波数に応じて前記交流電源から出力される交流電力の交流電圧を制御する第2電圧制御部と
を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のプラズマ生成装置。
【請求項5】
前記電源電極と前記接地電極の組み合わせを複数組有し、該電源電極の各々に共通の接続材が接続されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のプラズマ生成装置。
【請求項6】
前記電源電極と前記接地電極のいずれか一方が直線状の管状電極であり、
複数の前記管状電極が互いに平行に配置され、
さらに、隣接する前記管状電極の隣接する開口同士を接続する接続流路を有する
ことを特徴とする請求項5に記載のプラズマ生成装置。
【請求項7】
前記電源電極と前記接地電極が交互に1個ずつそれぞれ複数個配置されており、
該電源電極の各々に共通の接続材が接続されている
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のプラズマ生成装置。
【請求項8】
前記電源電極及び前記接地電極が平板電極であり、
さらに、該電源電極と該接地電極のいずれか一方と他方の間に形成されるガス流路につき、隣接するガス流路間を接続する接続流路を有する
ことを特徴とする請求項7に記載のプラズマ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ生成装置に関し、特に略大気圧中でプラズマを生成することができる誘電体バリア放電型のプラズマ生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディーゼルエンジン等から排出される排ガスを煤等の粒子状物質(particulate matter:PM)が含まれた状態で大気中に放出することを抑制するために、排ガスの流路中に、プラズマ生成装置を備える排ガス処理装置が設けられている(例えば特許文献1参照)。このような排ガスの流路中にプラズマを生成し、PMをプラズマに接触させることにより、PMを二酸化炭素等に分解する。
【0003】
多くのプラズマ生成装置では真空に近いプラズマ生成室(真空容器)内でプラズマを生成するが、排ガスの流路内は真空よりも十分に高い、大気圧に近い圧力を有するため、排ガス処理装置で用いるプラズマ生成装置には略大気圧中でプラズマを生成することができる装置を用いる。そのような装置の1つに、誘電体バリア放電を用いてプラズマを生成する誘電体バリア放電型のプラズマ生成装置がある。
【0004】
誘電体バリア放電型のプラズマ生成装置は、一対の電極のうちの少なくとも一方の電極の、他方の電極に対向する側に絶縁材を被覆したものである。これらの電極間を略大気圧にした状態で、周波数が数十Hz~100kHzの範囲内であって500V~10kVの範囲内の交流電圧を隣接電極間に印加すると、交流の1周期内で隣接電極間の電位差の絶対値が閾値を超えると隣接電極間に放電が生じる。この放電により、電荷が絶縁材に付着し、両電極の絶縁材間の電位差が小さくなって放電が停止する。その状態から該1周期内で隣接電極間の電位差の絶対値がさらに大きくなると再び放電が生じるが、それによってさらに電荷が絶縁材に付着して両電極の絶縁材間の電位差が小さくなり、再び放電が停止する。このように、交流電圧の1周期内で電極間の電圧の絶対値が大きくなる間に、パルス状の放電が該交流電圧の周波数よりも高い繰り返し周波数で生じる。
【0005】
このような誘電体バリア放電型のプラズマ生成装置が有する一対の電極の一方を排ガス処理装置のガス流路内に配置し、他方を該ガス流路を構成する導電体製の壁とする。これにより、隣接電極間の空間であるガス流路内に放電が生じ、ガス流路内を流れる気体が電離してプラズマが生成される。そして、PMがこのプラズマに接触することにより、PMが分解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-071403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のプラズマ生成装置では、各電極は、交流配線を通して交流電源に、又は接地配線を通して接地に接続される。交流配線には通常、取り回しを容易にするために、可撓性を有する金属線を可撓性を有する被覆材で被覆したケーブルが用いられる。このようなケーブルは、長期間使用している間に被覆材が経年劣化してしまう。そして、ガス流路内の電極又はガス流路の壁である電極がガス流路内のガスの流れから振動を受けることにより、ケーブルにもそれが接続された電極を介して振動が伝わる。被覆材が経年劣化したケーブルがこの振動によって該ケーブルが接続された電極以外の部材に接触又は接近してしまうと、漏電又は不所望の(プラズマを生成するための放電以外の)放電が生じてしまうおそれがある。
【0008】
ここでは、ディーゼルエンジン等から排出される排ガス中のPMを分解する排ガス処理装置を例に説明したが、それ以外の、ガス流路内を流れる気体を電離してプラズマを生成することによって該気体に対する処理を行うガス処理装置に設けられた誘電体バリア放電型のプラズマ生成装置においても同様の問題が生じる。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、ガス処理装置に設けられ、漏電や不所望の放電が生じることを防ぐことができる誘電体バリア放電型のプラズマ生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された本発明は、ガス流路内を流れる気体を電離してプラズマを生成するための、ガス処理装置に設けられるプラズマ生成装置であって、
a) 交流電源と、
b) 一方が前記ガス流路内に配置され、他方が該ガス流路を構成する導電体製の壁である、電源電極及び接地電極と、
c) 前記交流電源と前記電源電極を電気的に接続する非可撓性の接続材と、
d) 前記電源電極と前記接地電極のうちの一方の、他方の電極に対向する側を覆う絶縁材と
を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るプラズマ生成装置では、交流電源と電源電極を電気的に接続するために、非可撓性の接続材を用いる。ここで言う「非可撓性の」とは、容易に変形しないことをいい、さらに詳しくは、振動が加えられても弾性範囲内で振動し、当初の設置状態が維持されることをいう。すなわち、当初、他の部材等に接触しないように設置されていれば、長期間振動等を受けてもそのように他の部材に接触しない状態が維持される。従って、ガス流路内を流れる気体から電源電極(ガス流路内に配置された電極、又はガス流路を構成する導電体製の壁である電極)を介して接続材に振動が伝わっても、接続材がプラズマ生成装置中の電源電極以外の部材に不意に接触又は接近することがないため、漏電や不所望の放電が生じることを防ぐことができる。
【0012】
本発明に係るプラズマ生成装置では、このように非可撓性の接続材を用いることで漏電や不所望の放電を防ぐため、接続材を被覆材で被覆する必要はない。一方、点検時等の安全性を考慮して、接続材を被覆材で被覆してもよい。あるいは、接続材と離間して該接続材を覆う保護カバーを設置してもよい。
【0013】
前記絶縁材は、電源電極と接地電極のいずれか一方にのみ設けてもよいし、それらの双方に設けてもよい。
【0014】
前記接地電極を接地するために、前記接続材と同様の非可撓性の接続材を用いてもよい。
【0015】
前記交流電源には、従来の誘電体バリア放電型のプラズマ生成装置と同様に、周波数が数十Hz(日本の商用周波数である50Hz及び60Hzを含む)~100kHzの範囲内であって500V~10kVの範囲内の交流電圧を発生させるものを用いることができる。
【0016】
本発明に係るプラズマ生成装置においてさらに、前記交流電源から出力される交流電力を測定する電力測定部と、該電力測定部で測定される交流電力に応じて該交流電力の交流電圧を制御する電圧制御部とを備えることができる。これにより、電源電極と接地電極の間の気体の密度や成分等が変化すること等によって交流電力が変動したときに、交流電力が所定の範囲内になるように制御することができる。
【0017】
本発明に係るプラズマ生成装置においてさらに、前記交流電源から出力される交流電流の波形を取得する電流波形取得部と、該電流波形取得部で取得される交流電流の波形から放電によるパルス電流を検出するパルス電流検出部と、前記パルス電流検出部で検出されるパルス電流のパルス繰り返し周波数に応じて前記交流電源から出力される交流電力の交流電圧を制御する第2電圧制御部とを備えることができる。これにより、電源電極と接地電極の間の気体の密度や成分等が変化すること等によってパルス繰り返し周波数が変動したときに、パルス繰り返し周波数が所定の範囲内になるように制御することができる。
【0018】
本発明に係るプラズマ生成装置において、前記電源電極と前記接地電極の組み合わせを複数組有し、該電源電極の各々に共通の接続材が接続されている、という構成を取ることができる。この構成によれば、複数組の電源電極と接地電極の間に同時にプラズマを生成することができるため、ガスの処理能力を高くすることができる。
【0019】
このように電源電極と接地電極の組み合わせを複数組有する場合において、該電源電極と該接地電極のいずれか一方が直線状の管状電極であり、さらに、複数の管状電極のうちの2つを接続する接続流路を有する、という構成を取ることができる。これにより、管状電極の長手方向のサイズを抑えつつ、ガスの流路を長くすることができるため、より確実にガスの処理を行うことができる。
【0020】
本発明に係るプラズマ生成装置において、前記電源電極と前記接地電極が交互に1個ずつそれぞれ複数個配置されており、該電源電極の各々に共通の接続材が接続されている、という構成を取ることができる。これにより、互いに隣接する電源電極と接地電極の間でプラズマが生成され、複数組の隣接電極間に同時にプラズマを生成することができるため、ガスの処理能力を高くすることができる。なお、各電源電極では、両隣の(すなわち2個の)接地電極との間でプラズマが生成されることとなる。
【0021】
前記電源電極と前記接地電極が交互に1個ずつそれぞれ複数個配置されている場合において、該電源電極及び該接地電極が平板電極であって、さらに、該電源電極と該接地電極のいずれか一方と他方の間に形成されるガス流路につき、隣接するガス流路間を接続する接続流路を有する、という構成を取ることができる。これにより、平板電極の板に平行な方向のサイズを抑えつつ、ガスの流路を長くすることができるため、より確実にガスの処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、ガス処理装置に設けられるプラズマ生成装置において、漏電や不所望の放電が生じることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るプラズマ生成装置の第1実施形態を示す概略図。
図2】第1実施形態のプラズマ生成装置の変形例を示す概略図。
図3】第1実施形態のプラズマ生成装置の他の変形例を示す概略図。
図4】本発明に係るプラズマ生成装置の第2実施形態を示すA-A断面図。
図5】第2実施形態のプラズマ生成装置のB-B断面図。
図6】第2実施形態のプラズマ生成装置の変形例を示すA-A断面図。
図7】本発明に係るプラズマ生成装置の第3実施形態を示すA-A断面図。
図8】第3実施形態のプラズマ生成装置のB-B断面図。
図9】第3実施形態のプラズマ生成装置の変形例を示すA-A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1図9を用いて、本発明に係るプラズマ生成装置の実施形態を説明する。
【0025】
(1) 第1実施形態のプラズマ生成装置
(1-1) 第1実施形態のプラズマ生成装置の構成
図1に、第1実施形態のプラズマ生成装置10の概略構成を示す。第1実施形態のプラズマ生成装置10は、ガス処理装置内に設けられるものであって、処理対象のガス(被処理ガス)の流路となる管を有する。この管の管壁は導電体製であって、接地されている。この管壁がプラズマ生成装置10の接地電極112に該当する。接地電極112の管内、すなわちガス流路内には、電源電極111が配置されている。本実施形態では、接地電極112の管は円筒であって、電源電極111はこの円筒の中心に配置された円柱形の導電体である。電源電極111の一方(図1の左側)の端は接地電極112の管の一方(同左側)の端まで延びており、他方(同右側)の端は接地電極112の管の他方(同右側)の端よりも外側まで延出している。
【0026】
電源電極111の円柱の側面には、その全体を覆うように絶縁体(誘電体)製の電源側絶縁材121が設けられている。また、接地電極112の管の内面には、その全体を覆うように絶縁体(誘電体)製の接地側絶縁材122が設けられている。なお、本実施形態では電源側絶縁材121と接地側絶縁材122を設けたが、それらのうちのいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。
【0027】
電源電極111のうち、接地電極112の管よりも外側まで延出している部分には、導電体であって非可撓性の材料から成る棒材である接続材13の一方(図1の下側)の端が接続されている。また、プラズマ生成装置10は交流電源14を有しており、この交流電源14の一方の電極141に接続材13の他方(同上側)の端が接続されている。接続材13は、被覆材で被覆されておらず、電源電極111及び交流電源14の電極141以外の部材には接触していない。
【0028】
交流電源14の他方の電極142は、接地電極112の管の周囲を覆うように形成されており、接地電極112と共に接地されている。交流電源14には、周波数が数十Hz~100kHzの範囲内であって出力電圧が500V~10kVであるものを用いる。日本の商用電源(周波数が50Hz又は60Hz、電圧が100V又は200V)を交流電源14に用いてもよい。
【0029】
電源電極111、接地電極112及び接続材13の材料にはいずれも、例えば銅やステンレス鋼を用いることができる。
【0030】
接続材13の外側には、該接続材13から離間してそれを覆うように、絶縁体(誘電体)の板材製の保護カバー16が設けられている。なお、点検時等に、接続材13に通電している状態で人が接続材13に触れるおそれがない場合には、保護カバー16は省略してもよい。また、保護カバー16を設ける代わりに、接続材13を被覆材で被覆してもよい。
【0031】
接地電極112の管の前記他方の端には、電源電極111を通過させつつ該他方の端の開口を気密に閉鎖するフィードスルー17が設けられている。この他方の端の手前には、接地電極112の管の管壁に開口が設けられており、この開口がガス排出口182となる。接地電極112の管における前記一方の端の開口はガス導入口181となる。
【0032】
(1-2) 第1実施形態のプラズマ生成装置の動作
第1実施形態のプラズマ生成装置10の動作を説明する。ガス導入口181からガス流路となる接地電極112の管内に被処理ガス(例えばディーゼルエンジンから排出される排ガス)を導入する。それと共に、交流電源14により、電源電極111と接地電極112の間に交流電圧を印加する。これにより、従来の誘電体バリア放電型のプラズマ生成装置と同様に、交流電圧の1周期内で電極間の電圧の絶対値が大きくなる間に、パルス状の放電が該交流電圧の周波数よりも高い繰り返し周波数で生じる。このパルス状の放電によって、接地電極112の管内を流れる被処理ガスが電離してプラズマが生成され、このプラズマに接触したPM等の分解対象の含有物が分解される。このようにプラズマによる処理がなされた被処理ガスは、ガス排出口182から排出される。
【0033】
このように処理される被処理ガスが接地電極112の管内を流れる際に、ガス流路内の電源電極111は被処理ガスの流れから振動を受ける。そして、この振動は、電源電極111から接続材13に伝わる。
【0034】
従来のガス処理装置に設けられたプラズマ生成装置では、可撓性を有する金属線を可撓性を有する被覆材で被覆したケーブルによって電源電極と交流電源が接続されていたため、被覆材が経年劣化したケーブルが電源電極から受ける振動によってプラズマ生成装置のうちの電極以外の部材に接触又は接近し、漏電や不所望の放電が生じてしまうおそれがあった。それに対して本実施形態のプラズマ生成装置10では、非可撓性の接続材13によって電源電極111と交流電源14を電気的に接続しているため、電源電極111から振動を受けても接続材13がプラズマ生成装置10のうちの電極以外の部材に接触あるいは接近することがなく、漏電や不所望の放電が生じることを防ぐことができる。
【0035】
(1-3) 第1実施形態のプラズマ生成装置の変形例
図2に、第1実施形態の変形例のプラズマ生成装置10Aの概略構成を示す。このプラズマ生成装置10Aは、上記第1実施形態のプラズマ生成装置10に、電力測定部191及び電圧制御部192が追設されたものである。
【0036】
電力測定部191は電流入力端子1911及び電圧入力端子1912を有する。電流入力端子1911には接続材13及び交流電源14の前記一方の電極141を接続する。電圧入力端子1912には、接続材13及び接地電極142にそれぞれ電気的に接続された2本のケーブルを接続する。なお、これら2本のケーブルに流れる電流は接続材13に流れる電流よりも十分に小さい。電力測定部191は、電流入力端子1911及び電圧入力端子1912から入力される、電流の大きさ及び電圧の高さを示す電気信号に基づいて電力を求め、求めた電力に対応する電気信号を出力端子1913から出力するものである。この出力端子1913は電圧制御部192に接続されている。電圧制御部192は、電力測定部191からの出力信号に応じて、後述のように交流電源14から出力される電圧を制御するものである。
【0037】
変形例のプラズマ生成装置10Aは、上記第1実施形態のプラズマ生成装置10と同様の動作によって接地電極112の管内にプラズマを生成する。プラズマを生成している間、随時、電力測定部191は交流電源14が出力する電力を測定し、その測定結果を示す出力信号を電圧制御部192に送信する。電圧制御部192は、電力測定部191から入力された信号に基づいて、交流電源14が出力する電力の値が所定の範囲を上回ったときには交流電源14に電圧を低くさせる指示の信号を送信し、電力の値が所定の範囲を下回ったときには交流電源14に交流電圧を高くさせる指示の信号を送信する。これにより、電源電極111と接地電極112の間の気体の密度や成分等が変化すること等によって交流電源14から出力される交流電力が変動しても、該交流電力が所定の範囲内となるように制御することができる。
【0038】
図3に、第1実施形態の他の変形例であるプラズマ生成装置10Bの概略構成を示す。このプラズマ生成装置10Bは、上記第1実施形態のプラズマ生成装置10に、電流波形取得部193、パルス電流検出部194及び第2電圧制御部195が追設されたものである。
【0039】
電流波形取得部193は、電流入力端子1931と出力端子1932が設けられており、電流入力端子1931から入力される交流電流の波形を取得し、電流の大きさを示す電気信号に変換して出力端子1932から出力するものである。電流入力端子1931には接続材13及び交流電源14の前記一方の電極141を接続する。出力端子1932にはパルス電流検出部194を接続する。パルス電流検出部194は、電流波形取得部193から入力された電気信号に基づいて、電流のパルスを検出するものである。第2電圧制御部195は、検出された電流のパルスの繰り返し周波数に基づいて、後述のように交流電源14から出力される電圧を制御するものである。
【0040】
この変形例のプラズマ生成装置10Bは、上記第1実施形態のプラズマ生成装置10と同様の動作によって接地電極112の管内にプラズマを生成する。プラズマを生成している間、随時、電流波形取得部193は交流電流の波形を取得し、パルス電流検出部194は電流のパルスを検出する。第2電圧制御部195は、パルス電流検出部194で検出された電流のパルスの繰り返し周波数が所定の範囲外に変動したときに、該パルス繰り返し周波数が所定の範囲内になるように、交流電源14から出力される電圧を高く又は低くする。これにより、電源電極111と接地電極112の間の気体の密度や成分等が変化すること等によってパルス繰り返し周波数が変動しても、パルス繰り返し周波数が所定の範囲内になるように制御することができる。
【0041】
なお、プラズマ生成装置10Aが有する電力測定部191及び電圧制御部192と、プラズマ生成装置10Bが有する電流波形取得部193、パルス電流検出部194及び第2電圧制御部195とを併設してもよい。この場合、電力測定部191として、電流入力端子1911から入力される交流電流の波形を取得する機能を有するものを用いれば、電力測定部191と電流波形取得部193を兼用することができる。また、電圧制御部192と第2電圧制御部195を兼用するようにしてもよい。
【0042】
(2) 第2実施形態のプラズマ生成装置
(2-1) 第2実施形態のプラズマ生成装置の構成
図4図6を用いて、第2実施形態のプラズマ生成装置について説明する。第2実施形態のプラズマ生成装置は、電源電極及び接地電極をそれぞれ複数個有する。
【0043】
図4及び図5は、第2実施形態のプラズマ生成装置20の概略構成を示す図である。図4図5中に示したA-A断面での構成を示し、図5図4中に示したB-B断面での構成を示している。
【0044】
このプラズマ生成装置20では、導電体(例えばステンレス鋼)製のブロック201に孔を複数本設け、各孔に電源電極211と接地電極212を組み合わせたものを1組ずつ挿入している。各電源電極211及び接地電極212は、第1実施形態の電源電極111及び接地電極112と同様の構成を有する。すなわち、接地電極212は管状の形状を有し、電源電極211は接地電極212の管内に挿入されている。接地電極212はブロック201に接触しており、ブロック201が接地されることにより接地電極212も接地されている。電源電極211の側面には電源側絶縁材221が、接地電極212の管の内面には接地側絶縁材222が、それぞれ設けられている。
【0045】
各電源電極211の一方の端は各接地電極212の管よりも外側まで延びており、共通の接続材23に電気的に接続されている。接続材23は、交流電源24の一方の電極241に接続されている。交流電源24の他方の電極242は接地されている。なお、図4に示した例では設けていないが、接続材23を非接触の保護カバーで覆ったり、接続材23を被覆材で覆ってもよい。
【0046】
ブロック201にはさらに、接地電極212の一方(図4の左側)の端の開口であるガス導入口281と連通するガス導入路251、及び他方(同右側)の端の開口であるガス排出口282と連通するガス排出路252が設けられている。ガス導入路251は複数の接地電極212が各々有するガス導入口281の全てと連通し、ガス排出路252は複数の接地電極212が各々有するガス排出口282の全てと連通している。
【0047】
なお、図4及び図5では電源電極211と接地電極212を12組有する例を示したが、電源電極211と接地電極212の組み合わせの数はこれには限定されない。電源側絶縁材221と接地側絶縁材222のいずれか一方は省略してもよい。さらに、本実施形態ではブロック201とは別に接地電極212を設けたが、ブロック201に設けた孔に電源電極211(必要に応じて電源側絶縁材221で被覆)のみを挿入し、ブロック201自体を接地電極として用いてもよい。その場合には、ブロック201に設けた孔の内面を絶縁材で覆うことにより接地側絶縁材を形成することができる。
【0048】
(2-2) 第2実施形態のプラズマ生成装置の動作
第2実施形態のプラズマ生成装置20の動作を説明する。被処理ガスをガス導入路251に導入すると、被処理ガスは、複数設けられた接地電極212の管の各々に分かれて該管内を流れ、共通のガス排出路252から排出される。その間、交流電源24により、各電源電極211と接地電極212の間に交流電圧を印加する。これにより、第1実施形態の場合と同様に、各電源電極211と接地電極212の間にパルス状の放電が生じ、被処理ガスが電離してプラズマが生成される。このプラズマに接触した分解対象の含有物が分解される。
【0049】
第2実施形態のプラズマ生成装置20によれば、複数組の電源電極211と接地電極212の間に同時にプラズマを生成することができるため、被処理ガスの処理能力を高くすることができる。
【0050】
(2-3) 第2実施形態のプラズマ生成装置の変形例
図6に、第2実施形態の変形例のプラズマ生成装置20AをA-A断面図で示す。プラズマ生成装置20AのB-B断面は図5に示したものと同様である。このプラズマ生成装置20Aでは、隣接する電源電極211と接地電極212の組同士では互いに逆向きにブロック201の孔に挿入されている。具体的には、直線状の管である接地電極212の開口であるガス導入口281が、一方の組では図6の左側に配置され、他方の組では図6の右側に配置されている。各電源電極211は、図6の右側(ガス導入口281側であるかガス排出口282側であるかを問わず)に、接地電極212の管よりも外側まで延びており、共通の接続材23に電気的に接続されている。
【0051】
上記のように各電源電極211と接地電極212の組が配置されていることにより、隣接する組同士では、一方の組のガス導入口281と他方の組のガス排出口282が隣接している。ブロック201内には、これら隣接する一方の組のガス導入口281と他方の組のガス排出口282を接続する接続流路253が設けられている。
【0052】
これにより、図6に4個示された接地電極212の管が接続流路253で接続され、1つのガス流路が形成される。これら4個1組の接地電極212の管から成るガス流路が、図6の奥行き方向(図5の横方向)に3本形成されることとなる。なお、これら3本のガス流路をさらに接続するようにブロック201に孔を設け、プラズマ生成装置20A全体で1本のガス流路を形成するようにしてもよい。
【0053】
このように、複数本の接地電極212の管を接続してガス流路を形成することにより、接地電極212の長手方向のサイズを抑えつつ、より長い時間、被処理ガスをプラズマに接触させることができるため、被処理ガス中の分解対象の含有物をより確実に分解することができる。
【0054】
(3) 第3実施形態のプラズマ生成装置
(3-1) 第3実施形態のプラズマ生成装置の構成
図7図9を用いて、第3実施形態のプラズマ生成装置について説明する。第3実施形態のプラズマ生成装置は、いずれも平板状である電源電極311及び接地電極312をそれぞれ複数個有する。
【0055】
図7及び図8は、第3実施形態のプラズマ生成装置30の概略構成を示す図である。図7図8中に示したA-A断面での構成を示し、図8図7中に示したB-B断面での構成を示している。
【0056】
プラズマ生成装置30では、導電体製のブロック301に、図8の右側から左側に向かって平板状の孔が3個、縦方向に並んで設けられている。これら3個の孔のそれぞれに、平板状の電源電極311が1個ずつ、前記孔の形状である平板に平行に挿入されている。ブロック301の上面及び下面、並びに各孔の間に残されたブロック301の導電体は、平板状の接地電極312としての役割を有する。従って、この実施形態では、平板状の電源電極311と接地電極312が交互に平行に配置されている。電源電極311の両面には電源側絶縁材321が、接地電極312の電源電極311と対向する面には接地側絶縁材322が、それぞれ設けられている。また、これら孔の開口は導電体製の蓋331で気密に閉鎖されている。蓋331はブロック301とは絶縁材37によって電気的に絶縁されている。各電源電極311は蓋331に接触している。蓋331にはさらに棒状の接続材33が接触している。接続材33は交流電源34の一方の電極341に接続されている。交流電源34の他方の電極342は接地されている。なお、接続材33を非接触の保護カバーで覆ったり、接続材33を被覆材で覆ってもよい。
【0057】
各電源電極311及び接地電極312の間は被処理ガスが流れる流路となっている。図7において、各電源電極311及び接地電極312の左端はガス導入口381、右端はガス排出口382となっている。各電源電極311及び接地電極312の左側には各ガス導入口381と連通するガス導入路351が設けられ、右側には各ガス排出口382と連通するガス排出路352が設けられている。
【0058】
なお、図7及び図8では電源電極311と接地電極312を3組設けた例を示したが、それらの組の数は3組には限定されない。電源側絶縁材321と接地側絶縁材322のいずれか一方は省略してもよい。さらに、本実施形態ではブロック301の一部を接地電極312として用いているが、ブロック301とは別に接地電極312を設けてもよい。
【0059】
(3-2) 第3実施形態のプラズマ生成装置の動作
第3実施形態のプラズマ生成装置30の動作を説明する。被処理ガスをガス導入路351に導入すると、被処理ガスは、複数形成されている電源電極311と接地電極312の間のガス流路の各々に分かれて流れ、共通のガス排出路352から排出される。その間、交流電源34により、各電源電極311と接地電極312の間に交流電圧を印加する。これにより、第1及び第2実施形態の場合と同様に、各電源電極311と接地電極312の間にパルス状の放電が生じ、被処理ガスが電離してプラズマが生成される。このプラズマに接触した分解対象の含有物が分解される。
【0060】
第3実施形態のプラズマ生成装置30によれば、複数組の電源電極311と接地電極312の間に同時にプラズマを生成することができるため、被処理ガスの処理能力を高くすることができる。
【0061】
(3-3) 第3実施形態のプラズマ生成装置の変形例
図9に、第3実施形態の変形例のプラズマ生成装置30AをA-A断面図で示す。プラズマ生成装置30AのB-B断面は図8に示したものと同様である。このプラズマ生成装置30Aでは、3枚の電源電極311のうち上から1枚目の電源電極311の上下両側に形成されたガス流路と、上から2枚目の電源電極311の上下両側に形成されたガス流路を、それら電源電極311の右側に接続流路353を設けることにより接続している。同様に、上から2枚目の電源電極311の上下両側に形成されたガス流路と、上から3枚目の電源電極311の上下両側に形成されたガス流路を、それら電源電極311の左側に接続流路353を設けることにより接続している。これにより、上から1枚目の電源電極311から3枚目の電源電極311に向かってジグザグのガス流路が形成される。なお、図9の例では電源電極311が3枚の場合について説明したが、2枚あるいは4枚以上の場合にも同様にしてジグザグのガス流路を形成することができる。
【0062】
このようなジグザグのガス流路に被処理ガスを流しつつ、各電源電極311と接地電極312の間にパルス状の放電を生成することにより、電源電極311に平行な方向のサイズを抑えつつ、より長い時間、被処理ガスをプラズマに接触させることができるため、被処理ガス中の分解対象の含有物をより確実に分解することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態及び変形例を説明したが、上に述べた例以外にも、例えば複数の実施形態及び/又は変形例を組み合わせたり、本発明の主旨の範囲内で更なる構成要素の追加及び/又は変更を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0064】
10、10A、10B、20、20A、30、30A…プラズマ生成装置
111、211、311…電源電極
112、212、312…接地電極
121、221、321…電源側絶縁材
122、222、322…接地側絶縁材
13、23、33…接続材
14、24、34…交流電源
141、241、341…交流電源の電極
142、242、342…交流電源の接地電極
16…保護カバー
17…フィードスルー
181、281、381…ガス導入口
182、282、382…ガス排出口
191…電力測定部
1911…電流入力端子
1912…電圧入力端子
1913…出力端子
192…電圧制御部
193…電流波形取得部
1931…電流入力端子
1932…出力端子
194…パルス電流検出部
195…第2電圧制御部
201、301…ブロック
251、351…ガス導入路
252、352…ガス排出路
253、353…接続流路
33…接続材
331…蓋
37…絶縁材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9